JP2004182664A - 糖質のフッ素化方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】糖質のフッ素化を高選択的、効率的、かつ安全に行う方法を提供する。
【解決手段】糖質を特定のフッ素化合物を用いて熱的、若しくはマイクロ波及び/又はマイクロ波近傍の電磁波照射下に反応させることによって、糖質の特定部位を選択的に、保護基に影響与えず、しかも簡便にフッ素化することができる。
【選択図】 無し

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は糖質のフッ素化方法に関する。特に、医薬原料、化粧品や健康食品等の機能化学品として有用な糖質の熱反応、若しくはマイクロ波及び/又はマイクロ波近傍の電磁波の照射下で行うフッ素化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
糖質は、エネルギー源、糖鎖蛋白として細胞間コミュニケーションや免疫機構等の生命活動に於いて重要な役割を演じるのみならず、皮膚や骨格等の組織形成能を有する事から広範な応用・展開が期待されている。例えば、グルコサミン構造を繰り返し単位とする高次縮合物であるキトサンは、甲殻類やブドウ糖を原料に加水分解、または発酵によって製造されるが、食品分野では添加剤、防腐剤、ペット用飼料等として、医療分野では人工皮膚、縫合糸、人工透析膜、除放性フィルム等に用いられ、また抗ガン剤、免疫賦活剤、血糖上昇抑制、コレステロール吸収抑制等の医薬として、農業分野では土壌改良剤、抗ウイルス剤、殺虫剤として、工業分野では石鹸、毛髪剤、化粧品、歯磨き粉等、環境分野では廃液捕集剤や重金属・汚水処理用途等に使われている。
特定の単糖類を高次に結合する事、或いはアミノ基、アセチル基やフッ素原子等を糖質に導入する事で、食品分野、医薬・医療分野、農業、各種工業分野や環境分野等に於いて有用な機能を有する製品の開発が進められている。
この中、人体への適合性の高い糖質をフッ素化したフッ素化糖は抗ガン剤や免疫抑制剤等としての応用が盛んに研究されている。この目的の為に用いられるフッ素化技術としては、フッ素ガスによる直接フッ素化法、ハロゲン−フッ素交換法、フッ化水素とピリジンやトリエチルアミン等の塩基類を用いる方法、IF、SF、DAST、或いはYarovenko試薬の様なフッ素化剤を用いる方法等が挙げられる(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
しかし、糖質は活性な水酸基等を複数持つ事から特定部位に選択的にフッ素を導入する事は困難な場合が多い。例えば、DASTを用いてMethyl 2,3−O−isopropylidene−β−D−ribofuranosideをフッ素化すると転位生成物である 2,3−O−isopropylidene−5−O−methyl−β−D−ribofuranosyl fluorideが得られるのみで、目的とする水酸基のフッ素化は進行しない事が知られている(非特許文献2参照)。また簡便なフッ素化剤であるHF−ピリジンやHF−トリエチルアミン等のHF−塩基類を用いる方法でも目的の反応は進行しない。反応を進行させる為に、より酸性度の大きなものを用いると保護基の解裂等の副反応が生じる。
更には、反応性の高いフッ素ガスでは選択的なフッ素導入は不可能であり、目的物を得る為には、反応性の低い他のハロゲンを用いてハロゲン化した後、次にハロゲン−フッ素交換を行う等の手段を講じる必要がある。
この様に、従来技術では糖質の特定部位を、しかも保護基に影響を与えず簡便にフッ素化する事は相当困難であった。
【0004】
【非特許文献1】
Chemistry of Organic Fluorine CompoundsII,Monograph,American Chem.Society,1995,p.187
【非特許文献2】
Journal of Fluorine Chemistry, 1993, 60, 239.
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、糖質の特定部位を選択的に、或いは保護基に影響を与えず、広い温度範囲で安全かつ簡便にフッ素化する方法を提供する事にある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決する為に鋭意検討を重ねた結果、例えば単糖類、オリゴ糖類、多糖類、及びこれらの糖類がタンパク質や脂質と結合した複合糖質等、或いはポリアルコール、ポリアルコールのアルデヒド、ケトン、酸、及びこれらの誘導体や縮合体等を含む糖質を、特定のフッ素化アミンを用いて、熱的若しくはマイクロ波及び/又はマイクロ波近傍の電磁波の照射下に反応させると、位置選択的に、かつ従来困難であった150から200℃の温度範囲に於いてもフッ素化反応を安全に行うことができることを見出し、本発明に到達した。即ち本発明は糖質を一般式1で表されるフッ素化剤を用いてフッ素化する(1)から(3)に示す方法である。
(1)糖質を一般式1で表されるフッ素化剤を用いてフッ素化する方法。
【化2】
Figure 2004182664
(但し、式中、Xは窒素又はリン原子を表し、R、R及びRは、水素、若しくは置換
を有する事のあるアルキル基又はアリール基であり、それぞれ同一でも異なっていても
い。また、R、R、Rのうちの2つ以上が結合して環を形成していても良い)
(2)一般式1に於けるXが窒素原子であり、Rが3−メチルフェニル基又は2−メトキ
フェニル基であり、R及びRがエチル基である、(1)記載の糖質のフッ素化方法。
(3)反応を熱的に、若しくはマイクロ波及び/又はマイクロ波近傍の電磁波の照射下で行う、(1)から(2)の何れかに記載の糖質のフッ素化方法。
【0007】
【発明の実施の様態】
本発明で用いる糖質としては、ポリアルコール等以外に、例えば、グルコース、フコース、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン、N−アセチルノイラミン酸、エリトロース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、アロース、リキソース、アルトロース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース、不飽和結合を有するヘキサエノース等の不飽和糖、アピオースの様な分岐糖、デオキシ糖、アミノ糖、チオ糖や縮合糖、単糖無水物等の各種誘導体である単糖類、或いは他の糖類単位とグリコシド結合をしたマルトース、ショ糖、ラクトース等の二糖類を含む単糖が二から数個程度結合したオリゴ糖類、デンプン、グリコーゲン、セルロース等の多糖類、これら糖類がタンパク質や脂質等と結合した複合糖質、核酸塩基と結合したヌクレオシドやオリゴヌクレオシド、リボ核酸やデオキシリボ核酸等が使用できる。
【0008】
フッ素化に用いるフッ素化剤は、一般式1で表される化合物であり、R、R、Rは、水素、置換基を有する事のあるアルキル基、またはアリール基であり、其々、同一でも異なっていても良く2つ以上が結合して環を形成しても良い。アルキル基の具体的な例として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、へキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、シクロヘキシル、シクロヘキシルオキシ、デカリル、ノルボルニル、ビシクロヘキシル、アダマンチル、及びこれらの異性体があり、その他にもヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル基等が挙げられる。
【0009】
またアリール基としては、フェニル、o−トリル、m−トリル、p−トリル、ジメチルフェニル、及びその位置異性体、クミル、メシチル、トリメチルフェニル、ヒドロキシフェニル、メトキシフェニル及びその位置異性体、ナフチル、メチルナフチル、ジメチルナフチル、ヒドロキシナフチル、ビフェニル、テトラリル、t−フェニル、アンスリル、ベンゾチエニル、クロメニル、インドイル基等が挙げられる。これらのアルキル基およびアリール基には、他の官能基、例えば、水酸基、ハロゲン、ニトロ基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、アセチル基、アシル基、アルコキシ基やスルホン基、或いは他の原子団等が含まれる事があっても良い。
【0010】
これらの中、Rが3−メチルフェニル基、または2−メトキシフェニル基であり、R、及びRがエチル基である、N,N−ジエチル−α,α−ジフルオロ−(3−メチル)ベンジルアミン、及びN,N−ジエチル−α,α−ジフルオロ−(2−メトキシ)ベンジルアミンは熱安定性が高く、150℃以上の高温でも安定であるので特に好ましい。
【0011】
反応は、回分式、半回分式、或いは連続方式での実施が可能であり、通常の熱反応、若しくはマイクロ波及び/又はマイクロ波近傍の電磁波の照射下に反応を行う事が出来る。反応温度は、所謂、熱暴走温度(ARC試験による発熱開始温度)以下であれば安全に実施できる。通常、200℃以下で実施する事が好ましく、室温から150℃の温度範囲が特に好ましい。反応は、該温度範囲の熱暴走温度以下で実施する事が望ましい。また振動数が0.3から300GHzの範囲のマイクロ波、或いは1GHz以下又は30から300GHzのマイクロ波近傍の電磁波を照射して反応を行う事が出来る。該電磁波は、連続的、或いは断続的に温度を制御しながら行うなどして照射する事が出来る。
【0012】
含フッ素化合物の使用量は、対象となる基質の官能基1モルに対して1モル以上を用いる事が好ましいが、過剰、或いは化学量論的に不足のまま反応させても良い。
反応時間は、熱反応では10から360分の範囲が好ましい。マイクロ波及び/又はマイクロ波近傍の電磁波の照射下に反応を行い場合は、0.1分から180分の範囲が好ましいが、さらに長時間照射する事も出来る。
該フッ素化反応を進行させる上で溶媒を用いる必要は無いが、攪拌を充分行う為や温度上昇を防ぐ為に溶媒を用いても良い。好ましい溶媒は、基質、フッ素化合物や生成物に対して不活性な脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、芳香族ハロゲン化炭化水素、ニトリル、エーテル類等であり、適宜これらから選択して組み合わせて用いる事も出来る。
フッ素化反応終了後、フッ素化剤は対応するアミドとして回収する事が出来るので循環再使用可能なフッ素化プロセスが容易に構築できる。
【0013】
【実施例】
本発明を実施例によってさらに詳しく説明する。但し、本発明は実施例のみに限定されるものでは無い。
フッ素化剤の合成
)N,N−ジエチル−α−クロロメタトルイルアミジウムクロリド
三口フラスコ(300ml)に、窒素雰囲気下、オキサリルクロリド(25g、0.197mol)を含む四塩化炭素(125g)溶液を仕込む。フラスコを氷水で冷却し攪拌しながらN,N−ジエチルメタトルアミド(45g、0.236mol、以下、DEETと略記)を20分かけて滴下した。滴下終了後、同温度で10分保持し、内容物温度を50℃とした後、一時間反応を行った。反応時にガスの発生が認められ、その後、白色の析出物が得られた。得られた析出物を濾過で分別し、四塩化炭素、n−ヘキサンで洗浄後、乾燥して、N,N−ジエチル−α−クロロメタトルイルアミジウムクロリドを得た。得られたN,N−ジエチル−α−クロロメタトルイルアミジウムクロリドを、キャピラリーチューブ中(封管)200℃まで徐々に昇温した。分解などは観察されず熱的に安定であった。
TG−DTAによる熱分析から融点が54.6℃である事が分かった。
【0014】
)N,N−ジエチル−α,α−ジフルオロ−(3−メチル)ベンジルアミン
三口フラスコ(500ml)に、先に合成したN,N−ジエチルクロロメタトルイルアミジウムクロリド(25g、0.1mol)とフッ化カリウムのスプレードライ品(森田化学23.5g、0.4mol)、アセトニトリル(250g)を仕込み、窒素雰囲気下にアセトニトリルの還留温度で18時間反応を行った。反応終了後、室温迄冷却して濾過を行い、N,N−ジエチルクロロメタトルイルアミジウムクロリドのフッ素交換物を含むアセトニトリル溶液を得た。この溶液を理論段数80段の回転バンド式精密蒸留器を用いて蒸留した。温度50℃から60℃の留分(圧力2mmHg)としてN,N−ジエチル−α,α−ジフルオロ−(3−メチル)ベンジルアミン(以下、この化合物はDEET−Fと略記する)13gを得た。蒸留による単離収率は、N,N−ジエチルクロロメタトルイルアミジウムクロリド基準で約60%であった。
得られた留分は無色透明の液体であり、以下の性状を有していた。
(熱安定性、及び熱暴走温度)
キャピラリーチューブ中(封管)200℃まで徐々に昇温し、1時間保持した、分解等は観察されず熱的に安定であった。またTG/DTA熱分析装置を用いて毎分10℃で400℃迄、温度を上げて行った熱分析では、210℃で発熱が始まり、緩やかな重量減少が観察された。発熱のピーク温度は280℃であった。また断熱状態で物質の熱安定を評価するJIS暴走反応測定試験(ARC試験)に基づく発熱開始温度は180℃であった。
(フッ素含有量)
計算値:17.8wt%、実測値:17.6wt%
【0015】
)N,N−ジエチル−2−メトキシベンズアミド
三口フラスコ(200ml)に、ジエチルアミン(25.80g、0.352mol)を含むトルエン溶液(56g)を仕込み、フラスコを氷水で冷却し攪拌しながら2−メトキシベンゾイルクロリド(20.00g、0.117mol)のトルエン溶液(30g)をゆっくり30分かけて滴下した。滴下終了後、水を加えて過剰のジエチルアミン及びジエチルアミン塩酸塩を除去した。得られたトルエン層をMgSOで脱水し、溶媒を留去して淡黄色液体を得た(収量22.81g、収率94%)。
【0016】
)N,N−ジエチル−α−クロロ−(2−メトキシフェニル)アミジウムクロリドの合成
三口フラスコ(200ml)に、窒素雰囲気下、オキサリルクロリド(24.50g、0.193mol)
を含む四塩化炭素(54g)溶液を仕込む。室温でN,N−ジエチル−2−メトキシベンズアミド(20.05g、0.0965mol)を20分かけて滴下した。滴下終了後、内容物温度を50℃とした後、5時間反応を行った。反応時にガスの発生が認められ、その後、反応液は二層分離した。反応終了後、溶媒を留去して静置させると茶色の固体が得られた。取得した固体を四塩化炭素、n−ヘキサンで洗浄後、乾燥してN,N−ジエチル−α−クロロ−(2−メトキシフェニル)アミジウムクロリドを得た(収量21.40g、収率80%)。
得られたN,N−ジエチル−α−クロロ−(2−メトキシフェニル)アミジウムクロリドの塩素化能を確認するため、グローブボックス中でベンジルアルコールとの反応を行った。試験管にN,N−ジエチル−α−クロロ−(2−メトキシフェニル)アミジウムクロリド(0.20g、0.465mmol)、ベンジルアルコール(0.11g、1.017mmol)、アセトニトリル1.10gを仕込み、室温で4時間反応させた。反応液をGCで分析した結果、ベンジルクロリドの生成を確認した。
【0017】
)N,N−ジエチル−α,α−ジフルオロ−(2−メトキシ)ベンジルアミン
グローブボックス中で、三口フラスコ(100ml)に、先に合成したN,N−ジエチル−
α−クロロ−(2−メトキシフェニル)アミジウムクロリド(20.00g、0.0725mol)とフッ化カリウム(森田化学スプレードライ品:17.72g、0.3052mol)、アセトニトリル(200g)を仕込んだ。窒素雰囲気下に冷却管、電磁攪拌装置を付け、80℃で20時間反応を行った。反応終了後、室温迄冷却してグローブボックス中で濾過を行い、N,N−ジエチル−α−クロロ−(2−メトキシフェニル)アミジウムクロリドのフッ素交換物を含むアセトニトリル溶液を得た。この溶液を理論段数80段の回転バンド式精密蒸留器を用いて蒸留した。2mmHgの圧力下、温度77℃から80℃の留分としてN,N−ジエチル−α,α−ジフルオロ−(2−メトキシ)ベンジルアミンを得た(9.86g、収率55%)。
得られた留分は無色透明の液体であり、以下の性状を有していた。
(熱安定性、及び熱暴走温度)
キャピラリーチューブ中(封管)200℃まで徐々に昇温し、1時間保持した、分解等は観察されず熱的に安定であった。TG/DTA熱分析装置を用いて毎分10℃で400℃迄、温度を上げて行った熱分析では、200から210℃で発熱が始まり、緩やかな重量減少が観察された。発熱のピーク温度は255℃であった。
また、断熱状態で行う物質の熱安定性評価試験であるJIS暴走反応測定試験(ARC試験)に基づく発熱開始温度は159℃であった。
【0018】
実施例1:メチル2 3−O−イソプロピリデン−β−D−リボフラノシドのフッ素化
攪拌装置と冷却器を備えた100mlのフッ素樹脂でコーティングしたガラス反応器を設置した。基質として、メチル2,3−O−イソプロピリデン−β−D−リボフラノシド(10mmol)とフッ素化剤としてN,N−ジエチル−α,α−ジフルオロ−(3−メチル)ベンジルアミン(12mmol:2.56g)、及びヘプタン20mlを加えて室温で攪拌しながら、100℃迄温度を上げ60分間反応を行った。反応終了後、反応生成液に水50mlを加え、ジクロロメタン20mlで2回抽出を行った。抽出液を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過後、減圧蒸留して生成物を得た。生成物は、IR、NMR、質量分析等によって同定し、ガスクロマトグラフ、或いは液体クロマトグラフを用いて定量した。生成物であるメチル2,3−O−イソプロピリデン−5−デオキシ−5−フルオロ−β−D−リボフラノシドの収率は55%であった。
【0019】
実施例2:メチル2 3−O−イソプロピリデン−β−D−リボフラノシドのフッ素化
ピラミッド型分配器による均一照射が可能なマイクロ波オーブン(幅、奥行き55cm、高さ70cm、出力1KW、周波数2.45GHz)内に、攪拌装置と冷却器を備えた100mlのフッ素樹脂でコーティングしたガラス反応器を設置した。基質としてメチル2,3−O−イソプロピリデン−β−D−リボフラノシド(10mmol:2.04g)とフッ素化剤としてN,N−ジエチル−α,α−ジフルオロ−(3−メチル)ベンジルアミン(12mmol:2.56g)を加えて室温で攪拌しながら、マイクロ波を10分間照射した。マイクロ波照射終了後、実施例1と同様な処理を施し、生成物として目的とするメチル2,3−O−イソプロピリデン−5−デオキシ−5−フルオロ−β−D−リボフラノシドを収率65%で得た。また副生成物として2,3−O−イソプロピリデン−5−O−メチル−β−D−リボフラノシルフルオリドが収率20%で得られた。
【0020】
比較例1:メチル2 3−O−イソプロピリデン−β−D−リボフラノシドのフッ素化
基質としてメチル2,3−O−イソプロピリデン−β−D−リボフラノシド(10mmol)を乾燥ジクロロメタン20mlに溶解し、窒素気流下に攪拌しながら、フッ素化剤であるN,N−ジエチルアミノ3フッ化硫黄(DAST,10mmol)を徐々に滴下した。滴下終了後、15分間反応を行った。反応液に水50ml注ぎ、分液後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥してクロマトグラフ分離を行った。生成物として、転移した2,3−O−イソプロピリデン−5−デオキシ−β−D−リボフラノシルフルオリドが収率55%で得られた。しかし、目的とするメチル2,3−O−イソプロピリデン−5−デオキシ−5−フルオロ−β−D−リボフラノシドは全く得られなかった。
【0021】
実施例3:エチル2 3−O−イソプロピリデン−β−D−リボフラノシドのフッ素化
実施例2に於いて、基質として、エチル2,3−O−イソプロピリデン−β−D−リボフラノシド(10mmol)とフッ素化剤としてN,N−ジエチル−α,α−ジフルオロ−(3−メチル)ベンジルアミン(20mmol)を用いた以外は同様に行った。生成物として、エチル2,3−O−イソプロピリデン−5−デオキシ−5−フルオロ−β−D−リボフラノシドが収率55%、2,3−O−イソプロピリデン−5−O−エチル−β−D−リボフラノシルフルオリドが収率21%で得られた。
【0022】
実施例4:イソプロピル2 3−O−イソプロピリデン−β−D−リボフラノシドのフッ素化
実施例3に於いて、基質としてイソプロピル2,3−O−イソプロピリデン−β−D−リボフラノシド(10mmol)を用いた以外は同様に行った。生成物として、イソプロピル2,3−O−イソプロピリデン−5−デオキシ−5−フルオロ−β−D−リボフラノシドが収率62%、2,3−O−イソプロピリデン−5−O−イソプロピル−β−D−リボフラノシルフルオリドが収率22%で得られた。
【0023】
実施例5:2’ 3’−O−イソプロピリデンウリジンのフッ素化
実施例3に於いて、基質として2’,3’−O−イソプロピリデンウリジン(10mmol)を用いた以外は同様に行った。生成物として、2’,3’−O−イソプロピリデン−5’−デオキシ−5’−フルオロウリジンが収率55%で得られた。
【0024】
実施例6:1,2,3,4−ジ−O−イソプロピリデン−α−D−ガラクトピラノースのフッ素化
実施例3に於いて、フッ素化剤としてN,N−ジエチル−α,α−ジフルオロ−(3−メチル)ベンジルアミン(20mmol)を用いた以外は同様に行った。生成物として1,2,3,4−ジ−O−イソプロピリデン−6−デオキシ−6−フルオロ−α−D−ガラクトピラノースが収率75%で得られた。
【0025】
実施例7:α−D−リボフラノース−1,3,5−トリベンゾエートのフッ素化
ファイバーオプティック温度センサーを取り付けたテフロン製密閉型耐圧容器(200ml)に、攪拌子、α−D−リボフラノース−1,3,5−トリベンゾエート(11mmol:5.1g)、アセトニトリル50mlを仕込み、窒素雰囲気下にN,N−ジエチル−α,α−ジフルオロ−(3−メチル)ベンジルアミン(23.2mmlo:49.5g)を徐々に加えた。その後、攪拌しながら毎分20℃で200℃まで昇温し、20分間反応させた。反応終了後、反応生成物を氷水200mlに注ぎ込み有機層を分離後、さらに水層をアセトニトリル50mlで抽出した。2つの有機層を合わせ、純水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後炉別した。有機溶液をエバポレーターで濃縮後、液体クロマトグラフで分析した。その結果、目的とする2−デオキシ−2−フルオロ−α−D−リボフラノース−1,3,5−トリベンゾエートが2.8g(収率55%)得られた。
【0026】
実施例8:2,3,5,6−ジ−O−イソプロピリデン−D−マンノフラノースのフッ素化
実施例1に於いて、基質として2,3,5,6−ジ−O−イソプロピリデン−D−マンノフラノース(10mmol)を用い、室温で1時間反応させた以外は同様にして行った。保護基であるアセトナイドは全く外れる事無く、生成物として2,3,5,6−ジ−イソプロピリデン−D−マンノフラノシルフルオリドが収率94%で得られた。
【0027】
比較例2:2,3,5,6−ジ−O−イソプロピリデン−D−マンノフラノースのフッ素化
実施例8に於いて、フッ素化剤としてHF(20mmol)を用いた以外は同様にして行った。その結果、保護基が外れ、2,3,5,6−ジ−O−イソプロピリデン−D−マンノフラノシルフルオリドは全く得られず目的とする1位のフッ素化を起こさせる事は出来なかった。
【0028】
実施例9:2,3,4,5−テトラ−O−アセチル−D−グルコピラノースのフッ素化
実施例1に於いて、基質として2,3,4,5−テトラ−O−アセチル−D−グルコピラノース(10mmol)を用い、塩化メチレン中、室温で1時間反応させた以外は同様にして行った。保護基であるアセチル基は全く外れる事無く、生成物として2,3,4,5−テトラ−O−アセチル−D−グルコピラノシルフルオリドが収率84%で得られた。
【0029】
比較例3:2,3,4,5−テトラ−O−アセチル−D−グルコピラノースのフッ素化
実施例9に於いて、フッ素化剤としてHF(20mmol)を用いた以外は同様にして行った。その結果、保護基が外れ、2,3,4,5−テトラ−O−アセチル−D−グルコピラノシルフルオリドは全く得られず目的とする1位のフッ素化を起こさせる事は出来なかった。
【0030】
実施例10:2,3,4,5−テトラ−O−アセチル−D−グルコピラノースのフッ素化
実施例2に於いて、基質として2,3,4,5−テトラ−O−アセチル−D−グルコピラノース(10mmol)を用いた以外は同様にして行った。保護基であるアセチル基は全く外れる事無く、生成物として2,3,4,5−テトラ−O−アセチル−D−グルコピラノシルフルオリドが収率84%で得られた。
【0031】
実施例11:α−D−リボフラノース 1,3,5−トリベンゾエートのフッ素化
実施例7に於いて、基質としてα−D−リボフラノース 1,3,5−トリベンゾエート(11mmol)、フッ素化剤としてN,N−ジエチル−α,α−ジフルオロ−(2−メトキシ)ベンジルアミン(23.2mmol)を用い、120℃で30分間反応させた以外は同様に行った。生成物として2−デオキシ−2−フルオロ−α−D−リボフラノース 1,3,5−トリベンゾエートが収率85%で得られた。
【0032】
実施例12:D−キシロピラノースのフッ素化
実施例9に於いて、基質としてD−キシロピラノース(10mmmol)、フッ素化剤(80mmol)を用いた以外は同様に行った。生成物として2,3,4−トリ−O−(3’−メチルベンゾイル)−D−キシロピラノシルフルオリドが収率57%で得られた。
【0033】
実施例13:1,2,3,4−ジ−O−イソプロピリデン−α−D−ガラクトピラノース
のフッ素化
実施例6に於いて、フッ素化剤としてN,N−ジエチル−α,α−ジフルオロ−(2−メトキシ)ベンジルアミン(20mmol)を用い、マイクロ波を照射せずに120℃、48時間反応を行った以外は同様に行った。生成物として1,2,3,4−ジ−O−イソプロピリデン−6−デオキシ−6−フルオロ−α−D−ガラクトピラノースが収率58%で得られた。
【0034】
【発明の効果】
以上の詳細な説明、及び実施例によって明らかな様に本発明の熱安定性に優れたフッ素化アミンを用いる熱、若しくはマイクロ波及び/又はマイクロ波近傍の電磁波の照射下で反応を行うことによって、従来は困難であった広範な温度範囲に於いて、糖質の特定部位を選択的に、保護基に影響を与えず、しかも簡便にフッ素化する事が出来る。

Claims (3)

  1. 糖質を一般式1で表されるフッ素化剤を用いてフッ素化する方法。
    Figure 2004182664
    (但し、式中、Xは窒素又はリン原子を表し、R、R及びRは、水素、若しくは置 換基を有する事のあるアルキル基又はアリール基であり、それぞれ同一でも異なっていても良い。また、R、R、Rのうちの2つ以上が結合して環を形成していても良い)
  2. 一般式1に於けるXが窒素原子であり、Rが3−メチルフェニル基又は2−メトキシフェニル基であり、R及びRがエチル基である、請求項1記載の糖質のフッ素化方法。
  3. 反応を熱的に、若しくはマイクロ波及び/又はマイクロ波近傍の電磁波の照射下で行う、請求項1から請求項2の何れかに記載の糖質のフッ素化方法。
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