JP2004180583A - シアン汚染土壌の事前確認評価方法及びそれを利用した原位置修復方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】シアン化合物により汚染された地下領域を、土着微生物を利用して原位置修復する際、なるべく早いステップで適用可能性の高さを判定でき、必要な情報を十分得ながらコストを圧縮できる、合理的で無駄のないシアン汚染土壌の事前確認評価方法及び原位置修復方法の提供。
【解決手段】シアン汚染土壌を土着微生物によって原位置修復する可能性をフラスコレベルの評価段階で事前確認評価する方法において、シアン分解活性をもつ土着微生物に対する生物活動阻害要因の有無を確認する第1の工程、土着微生物によるシアン分解活動の促進が可能か否かを確認する第2の工程、その促進に最適な条件を探索する第3の工程、及び分解に伴う副生成分を分析し環境への安全性を確認する第4の工程を含み、しかも、第1〜4の工程のいずれかで否定的な結果が確認されると、直ちにそれ以降の工程を中止するシアン汚染土壌の事前確認評価方法。
【選択図】 図1
【解決手段】シアン汚染土壌を土着微生物によって原位置修復する可能性をフラスコレベルの評価段階で事前確認評価する方法において、シアン分解活性をもつ土着微生物に対する生物活動阻害要因の有無を確認する第1の工程、土着微生物によるシアン分解活動の促進が可能か否かを確認する第2の工程、その促進に最適な条件を探索する第3の工程、及び分解に伴う副生成分を分析し環境への安全性を確認する第4の工程を含み、しかも、第1〜4の工程のいずれかで否定的な結果が確認されると、直ちにそれ以降の工程を中止するシアン汚染土壌の事前確認評価方法。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シアン汚染土壌の事前確認評価方法及び原位置修復方法に関し、シアン化合物により汚染された地下領域を土着シアン分解微生物(以下、土着微生物又は土着菌群ともいう)を利用して原位置修復する際、なるべく早いステップで適用可能性の高さを判定でき、必要な情報を十分得ながらコストを圧縮できる、合理的で無駄のないシアン汚染土壌の事前確認評価方法及び原位置修復方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
シアン化合物を含有する土壌は、その毒性が生態系に悪影響を及ぼすため、土壌中にシアンイオン(CN−)又は金属錯体として存在するシアン化合物を処理して、無害化しなければならない。
【0003】
排水中のシアン化合物を処理するには、物理化学的手法及び微生物による生物学的手法が既に確立しており、物理化学的手法として、紫外線を照射して難分解性の鉄シアノ錯体を易分解性の遊離シアンに分解したのち、酸化処理する方法、あるいは第一鉄塩と第二鉄塩とを添加し、アルカリ剤によりpHを調整することで難溶性の鉄シアノ錯体を形成させ、沈殿除去した後、活性汚泥を用いて未反応のシアンイオンを分解除去する方法が知られている。
【0004】
また、微生物による生物学的手法として、バチリス・ズブチリス・クボタという分解菌を用いてシアンイオンを生物的に分解除去する方法(例えば、特許文献1参照)、あるいはニッケルシアノ錯体には、それを分解菌できるフザリウム・オキシスポルムを用いて処理する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
地下の汚染土壌の修復手段としても、最近では、微生物活動による有害物質の分解または改質を利用する生物学的修復法、すなわちバイオレメディエーションによる浄化処理が検討されている。
特に原位置処理としてのバイオレメディエーション(以下、原位置バイオレメディエーションともいう)は、汚染物質を地上に取り出すことなく、原位置において恒久的に分解除去または無害化することができるため有望視され、本出願人も、シアンで汚染した地下領域、特に不飽和層部分に酸素および栄養物質を注入して、微生物活動を効率的に活性化することができる地下汚染修復方法を提案した(特許文献3、4参照)。
【0006】
この原位置バイオレメディエーションを実際の汚染サイトで実施する際には、その適用可能性を客観的に評価する、トリータビリティ−試験を実施することが望ましい。米国環境保護省のガイドラインでは、その実施が必須となっており、国内でもこれに類した評価を求める方向で検討されている。
【0007】
しかし、有機塩素化合物や石油系炭化水素などの原位置バイオレメディエーションの研究は進んでいるが、それ以外の有害物質を浄化対象とした検討例は少ない。特に、シアン化合物による地下汚染については、原位置バイオレメディエーションの検討例は殆ど発表されていないのが現状である。
【0008】
従って、トリータビリティー試験の具体的方法についても、シアン化合物の場合には全く前例がない。汚染物質の性質や分解・無害化機構がかなり異なるため、有機塩素化合物や石油系炭化水素の事例をそのまま踏襲することも難しい。
鉄シアノ錯体などの難分解性のシアン化合物は、土壌又は地下水から速やかに除去することが望まれ、さらに環境問題やコスト的な観点から、環境負荷及び処理コストが比較的少ない原位置修復方法の早期開発が望まれている。
【0009】
【特許文献1】
特開平1−293195号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特開平10−262651号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】
特開平2002−45841号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】
特願2002−2959(特許請求の範囲)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、前述した従来技術の問題点に鑑み、シアン化合物により汚染された地下領域を、土着微生物を利用して原位置修復する際、なるべく早いステップで適用可能性の高さを判定でき、必要な情報を十分得ながらコストを圧縮できる、合理的で無駄のないシアン汚染土壌の事前確認評価方法及び原位置修復方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため、フラスコレベルの評価段階における各評価手順について鋭意検討を重ね、先ず、シアン化合物を分解する土着菌群に対し生物活動を阻害する要因が無いかどうかを確認しておくことが重要であり、その後、土着菌群によるシアン分解活動の促進が可能か否かを迅速に確認し、分解活動の促進に最適な条件を探索し、さらに分解副生成分が環境へ危険を及ぼさないかを確認することにより、土着菌群による原位置修復の可能性を確実に判断でき、いずれかの段階で修復可能性について否定的な結果が確認されると、直ちにそれ以降の評価作業を中止することにより合理的で無駄の少ない適用性評価を行うことができることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、シアン分解活性をもつ土着微生物に対する生物活動阻害要因の有無を確認する第1の工程、第1の工程で生物活動阻害要因がないと確認されると、土着微生物によるシアン分解活動の促進が可能か否かを確認する第2の工程、第2の工程でシアン分解活動の促進が可能であると確認されると、その促進に最適な条件を探索する第3の工程、及び第3の工程で最適な条件が探索されると、分解に伴う副生成分を分析し環境への安全性を確認する第4の工程を含み、しかも、第1〜4の工程のいずれかで否定的な結果が確認されると、直ちにそれ以降の工程を中止することを特徴とする、シアン汚染土壌の事前確認評価方法が提供される。
【0013】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、第1の工程では、生物活動阻害要因物質を重金属、可溶性毒物、可溶性塩類及び還元性物質とした上で、シアン汚染土壌中に共存するこれらの物質の存在量を測定し、その総合的な評価から生物活動阻害要因の有無を確認することを特徴とするシアン汚染土壌の事前確認評価方法が提供される。
【0014】
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、第1の工程と第2の工程の間に、シアン分解活性をもつ土着微生物の存在を確認する工程を付加することを特徴とするシアン汚染土壌の事前確認評価方法が提供される。
【0015】
さらに、本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、第2の工程では、好気性微生物の活動を阻害しない範囲内で最大限の酸素および各種栄養源を土着微生物に与えるように条件設定して行うことを特徴とするシアン汚染土壌の事前確認評価方法が提供される。
【0016】
一方、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかのシアン汚染土壌の事前確認評価方法により修復可能性が確認されると、次にカラム試験を行ってから、地下領域の土着微生物に対して最適量の酸素および各種栄養源を与えてシアン化合物を分解することを特徴とする原位置修復方法が提供される。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のシアン汚染土壌の事前確認評価方法及び原位置修復方法について、詳細に説明する。
【0018】
1.シアン汚染土壌の事前確認評価方法
本発明は、シアン汚染土壌の土着微生物による修復可能性をフラスコレベルで評価する事前確認評価方法であり、シアン分解活性をもつ土着微生物に対する生物活動阻害要因の有無を確認する第1の工程(以下、第1の工程ともいう)、土壌中に生物活動阻害要因がないと確認されると、必要により、土着微生物の存在を確認してから、土着微生物によるシアン分解活動の促進が可能か否かを確認する第2の工程(以下、第2の工程ともいう)、シアン分解活動の促進が可能と確認されると、促進に最適な条件を探索する第3の工程(以下、第3の工程ともいう)、及び促進に最適な条件でシアン分解できると、分解に伴う副生成分を分析し環境への安全性を確認する第4の工程(以下、第4の工程ともいう)を実施し、第1〜4の工程のいずれかで否定的な結果が確認されると、直ちにそれ以降の工程を中止するシアン汚染土壌の事前確認評価方法である。
【0019】
本発明において「シアン」とは、無機シアン化合物及び有機シアン化合物のいずれをも意味する。これらシアン化合物としては、金属シアノ錯体、ニトリル化合物等が挙げられ、また、金属シアノ錯体としては鉄シアノ錯体、銅シアノ錯体又はニッケルシアノ錯体が、ニトリル化合物としてはジニトリルがそれぞれ挙げられる。
【0020】
原位置バイオレメディエーション技術を実際の汚染サイトに適用する際、まず問題となるのは、トリータビリティー試験の第一段階であるフラスコレベルの評価段階で、いかにすれば、合理的に必要かつ十分な評価試験が実施できるか、ということである。
【0021】
評価試験全体で必要と考えられる評価項目はかなり多く、フラスコレベルに限定しても、全てを実施するとなれば、かなりのコストがかかる。この評価段階においては、対象汚染サイトに生息している土着菌群の中にシアン分解菌が存在し、その働きを人工的に促進し得るか否かを確認できることが、要件として求められる。また、トリータビリティー試験の第二段階として実施が求められるカラム試験を計画・設計するに際して、必要かつ十分な予見をフラスコレベルの評価試験と現地状況調査で得たいというニーズがある。
【0022】
対象となる汚染サイトの土壌または地下水に土着のシアン分解菌が生息していなければ、目的とする修復法は適用できないので、常識的には、第一段階として「土着シアン分解微生物の存在確認」を行うところであるが、この試験は、結果が出るまでに最低2ヶ月、平均で3ヶ月近くの期間がかかり、その間、絶えず観察する人手も必要とする。
土壌中の微生物は、休眠状態で存在することが多く、試験初期になかなか生育が認められない際、休眠から脱するのに時間がかかっているのか、そもそも対象とする微生物が殆ど生息しないのかを容易に見極められず、徒にコストがかかる例もあった。
【0023】
また、「土着菌群によるシアン分解活動の促進」を確認するための試験を行う場合、設定する条件数がそのまま分析検体数などコストの係数に直結するため、シアン分解活動が人工的に促進し得るか否かを確認するのに必要な条件を厳選する必要がある反面、条件数を絞るあまりカラム試験段階を計画・設計するに際しての予見が不足しては、かえって効率が悪く全体のコストがかかる。
【0024】
更に、いくら効率的にシアン分解が促進できても、その際に好ましくない副生成分が多量に生成する場合は、その促進条件を採用できない。このため、促進による副生成分増加の有無についても確認する必要があるが、全ての試験条件について詳細に経時変化を追おうとすると、膨大なコストが発生するという問題がある。
【0025】
このようにして確認を進めた結果、適用できる見込みが少ないサイトであった場合は、この評価試験の初期にそれが判定すれば、無駄になるコストが少なくて済む。適用できる可能性が高いサイトであった場合は、効果的な次段階試験を計画するのに十分な予見をこの評価試験段階で得ることができ、評価試験全体を効率化できるメリットが生まれる。
【0026】
また、土着微生物によりシアン分解を促進した際に副次的に生成する、副生成分の増加有無を確認する安全性確認は、この浄化手法の適用性を評価する上で重要な要素であるが、分析成分と検体数がコストに直結するため、必要最小限に抑える工夫が必要となる。
【0027】
本発明のシアン汚染土壌の事前確認評価方法は、このような利害得失を十分に考慮した末に生み出された方法であって、その基本的考え方を図1の工程図によって説明する。
【0028】
(1)生物活動阻害要因の有無の確認
はじめに「生物活動阻害要因の有無」を確認する。これにより著しく生物活動を阻害する要因を有するがために、土着シアン分解菌が存在しない確率が高かったり、存在してもその活動を人工的に活性化させることが困難と予測される場合、人手と期間を必要とする「土着シアン分解微生物の存在確認」試験の実施を取り止めることができる。
【0029】
ここで、著しい生物活動阻害要因を有する状態とは、重金属や有機系毒性成分などの可溶性毒性物質が大量に存在して、特殊な耐毒性が高い微生物しか繁殖できそうにない生物阻害状態や、可溶性塩類の濃度が高く、一般的な土壌微生物の活動を停止させるほどに細胞膜への浸透圧を押し上げている状態や、還元性物質が大量に存在して人工的に酸素を地下に送り込んでも土着のシアン分解微生物が活性化するに足るレベルの好気的環境が維持できそうにない状態などを指す。
【0030】
重金属としては、Hg、As、Cd、Pb、Cr+6、Seなどが挙げられ、その有機化合物も包含される。可溶性塩類としては、Na、Ca、Kなどの塩化物、水酸化物などが挙げられる。還元性物質とは、2価鉄化合物のように、それ自身が酸化されやすい物質を指す。
著しい生物活動阻害要因を有する状態とは、いずれか一成分が大量に存在した状態だけでなく、各成分は許容限度内にあっても複数成分が介在したような状態も含まれる。
【0031】
この工程では、重金属、可溶性毒性物質、可溶性塩類又は還元性物質の存在量(濃度)で判断するわけであるが、分析対象となる物質の種類が多く、影響の度合いも微妙に異なっている。また、別途行われる土壌汚染の原因と分布状況、現地の地盤状況および土地利用状況などの調査結果も加味して総合的に判断すべきことから、得られたデータをコンピュータの記憶装置に蓄え、各種の処理を行えるようにする。
入力したデータは、分析した各成分毎にウエイト付けを行い、演算、解析し、基準値と対比し、その結果を出力するようにプログラム化されることが望ましい。
【0032】
本発明において、「生物活動阻害要因の有無」試験を最初に着手することにしたのは、これらが一般的な分析装置によって容易かつ比較的短時間で測定できるためである。これら濃度が少ないだけでなく、一般的な好気性微生物の存在が確認できれば、「生物活動阻害要因」が小さいといえる可能性が高いので、次の評価工程に進む。
【0033】
一方、上記の重金属は、それ自体が土壌の汚染物質として有害なので、その存在を理由にシアン汚染土壌の土着微生物による修復可能性確認評価作業の中止を決定した場合は、シアン汚染土壌を原位置バイオレメディエーション以外の手段で修復することを検討するとともに、重金属の浄化処理を優先的に進めることが選択肢に入ってくる。
【0034】
(2)土着シアン分解微生物の存在確認
次に、シアン汚染土壌中の「土着シアン分解微生物の存在確認」を行うことができる。一般に、土壌は、その環境での生物活動に適した多種多様な微生物が生息した状態にある。
【0035】
シアン分解微生物としては、金属シアノ錯体などを分解できるとされるバチリス・ズブチリス・クボタ、フザリウム・オキシスボルム、ゴルドナ属もしくはバークホルデリア属に属する微生物、アルカリゲネス属、さらにはシュードモナス属に属する微生物などで有効性が確認されている。これらシアン分解微生物群が土着菌として存在しているかどうかを確認しておくことが望ましい。
【0036】
この土着シアン分解菌の存在確認手段として、サンプリングした土壌や地下水からのシアン分解微生物の単離を行う。この際に用いる選択培地中のシアンは、評価対象となるシアン汚染の性質にあわせて選択する。
土着シアン分解微生物は様々であり、シアン化合物を構成する炭素原子、窒素原子のいずれを栄養源とするかなど、その特徴(性質)もことなることから、この工程で得られたデータも記憶装置に入力し、データベース化して随時参照できるようにしておくことが望ましい。
【0037】
なお、前記「生物活動阻害要因の有無確認」試験と、この「土着シアン分解微生物の存在確認」試験は同時に開始してもよいが、「生物活動阻害要因の有無確認」試験の結果が先に出るので、これを踏まえて「土着シアン分解微生物の存在確認」試験を継続するか否かを決定すればよい。
【0038】
また、他の調査などにより既に土着シアン分解微生物の存在が確認されている場合は、この「土着シアン分解微生物の存在確認」試験を省略できることは言うまでもない。これにより、適用性が著しく低いサイトの評価にコストを費やす無駄を避けることができる。
【0039】
いずれにしても土着シアン分解微生物が存在しなければ、土着菌群によるシアン分解活動の促進は不可能なので、土着シアン分解菌の存在が把握できてから、次に、「土着菌群によるシアン分解活動の促進可否確認」試験を実施する。
【0040】
(3)土着菌群によるシアン分解活動の促進可否の確認
この試験は、微生物活動を阻害しない範囲内で最大限の酸素および各種栄養源を与えるような条件設定とし、人工的な促進が可能か否かの判定に支障がない範囲で試験条件数を最低限に絞って実施する。試験対象試料には、評価対象となる汚染サイトから採取した汚染地下水および汚染土壌を用いる。
【0041】
酸素は、ガスの状態で土壌試料に供給することもできるが、通常、スラリー化した土壌に水相を介して供給する。水に酸素を最大限溶存させた状態、または大気飽和の状態で供給することが好ましい。
栄養源の添加量は、各種栄養源を配合する幾つかの代表的パターンについて、微生物活動を阻害しない範囲内(例えば、浸透圧が高まりすぎない範囲内)で最大限の量を与える。これら条件設定のもと、現地で採取した地下水または土壌のシアン汚染分析値を経時的に追い、土着菌群によるシアン分解活動が促進されるか否かを確認する。
【0042】
土着微生物の増殖を促進するための栄養源として、グルコース、フルクトース、ガラクトース、サッカロース、マルトース、ラクトース、トレハロース、メリビオース、ラフィノース、スタキオースなどの糖類、でん粉、エタノール、有機酸などを適量添加することができる。供給期間は、シアン化合物や栄養源の種類や量により異なるが、6〜60日間、好ましくは10〜30日間継続すればよい。
各種栄養源配合の代表的パターンの選定は、事前に調査した土壌の性状や、確認された土着シアン分解微生物の性質などに基づいて行うため、正確な判断と能率化が要求されるため、上記で構築したデータベースを活用することが望ましい。
土着菌群によるシアン分解活動の促進が困難と確認されれば評価は、この時点で中止される。
【0043】
(4)活動促進の最適条件の探索
土着菌群によるシアン分解活動の促進が可能と確認されれば、次いで、「活動促進の最適条件を探索する試験」を実施する。この際、同時にカラム試験段階を計画・設計する際に必要な予見が十分得られるよう考慮した条件設定とする。
【0044】
すなわち、第2の工程でシアン分解活動の促進が可能と確認されているが、酸素、各種栄養源を最大限の条件で供給しているので、ここでは、例えば、各種栄養源について、添加効果が認められる最小量を、これまでの試験結果から推定し、各種栄養源の配合比率最適化を行い、必要かつ十分な知見が得られる条件に設定される。
この条件のもと、現地採取の地下水または土壌のシアン汚染分析値を経時的に追い、土着菌群によるシアン分解活動の促進程度を比較し、評価作業の中止か継続かを判断すればよい。
【0045】
(5)環境への安全性の確認
この「安全性確認」は、土着菌群によるシアン分解活動を促進する際、並行して好ましくない現象も促進されないかを確認するものであり、「土着菌群によるシアン分解活動促進の最適条件探索」試験において、シアン分解が最も促進された検体について行うと、被検体数を抑えることができコストが圧縮できる。
【0046】
この際の確認項目としては、シアン分解促進の前後で、シアン酸、チオシアン酸、硝酸、亜硝酸、変異原性物質などの物質の有無や濃度を確認すること、シアン分解活動促進後の土着菌群において優占種を同定することなどが挙げられる。シアン酸、チオシアン酸、硝酸、または亜硝酸は、評価試験前の濃度よりも増えていないこと、変異原性物質は、それが生成していないことが判定基準である。これらの各分析データも個別な濃度の変動を、判定基準と対比するようにプログラム化しておくことが望ましい。判断基準を超えれば評価作業を中止する。
【0047】
このように、本発明は、第1の工程から第4の工程までの一連の手順で評価を行い、シアン汚染土壌を土着微生物の活性化により修復できるかどうかを的確、迅速かつ経済的に評価することができる方法であるが、これに伴う生物活動阻害要因の測定値を基準値と対比し、評価の続行または中止を判断する手段、単離した土着微生物の種類や性質を、既知のシアン分解微生物のデータベースと照合する手段、また、土着微生物に対して供給すべき各種栄養源の配合比率の最適値を算出する手段、さらに、シアンの分解に伴う副生成分の濃度変動を基準と対比する手段などをプログラム化したシステムとして設けることが望ましい。
このようにプログラム化されたシステムを用いることで得られたデータは、後続のカラム試験で随時参照できるだけでなく、実際の原位置修復作業に際しても有効に活用することが可能である。
【0048】
2.原位置修復方法
本発明は、上記の方法でシアン汚染土壌の修復可能性を事前確認評価し、その結果、修復可能性が確認された場合は、さらにカラム試験を行ってから、地下領域の土着微生物に対して最適量の酸素および各種栄養源を与えて、シアン化合物を分解する原位置修復方法である。
【0049】
本発明においてシアン汚染土壌とは、シアン分解処理の対象となる土壌であって、シアン化合物を含む地下土壌である。めっき工場、選鉱製錬所、鉄鋼熱処理工場、コークス製造工場などの工場跡地の地下にはシアン化合物が含まれる可能性が高いので、これらの土壌には本発明を有効に適用できる。
【0050】
原位置バイオレメディエーションの手段を適用するには、前記のフラスコ試験によって土着微生物によるシアン分解の可能性を調べるだけでなく、対象となる汚染土壌や、そこに生息する土着微生物などの特性をカラム試験によって詳細に把握しておくことも重要である。
【0051】
すなわち、カラム試験は、サイトキャラクタリゼーション(原位置地下環境の把握)およびフラスコ試験で得られた情報を反映して実施され、現地での施工設計に必要なデータ(施工技術、コスト、時間など)を取得することを目的としている。
【0052】
これまで我国では約10年間にわたって、バイオレメディエーション技術の開発が盛んに行われてきたが、カラム試験の実施に関しては、ノウハウ的な要素が多いといわれ、情報量が極めて不足しているのが現状である。
【0053】
このような状況にあって、本出願人は、原位置バイオレメディエーションを効果的に検討しうるカラム試験方法を提案した(特願2001−363766号)。
これは、実汚染サイトの地下環境に模した土壌充填カラムに、フラスコ試験で得られた結果に基づき、修復に効果的な条件の栄養源を修復実施時に想定される地下流速で連続供給し、これにより対象となる土着菌群の活性化条件を求め、施工方法を決定し、修復に必要なコストや時間について信頼性のより高いデータを収集することを意図したものである。
【0054】
現在、カラム試験としては、円筒状の土壌充填カラム(以下、単にカラムという)の内部に、汚染された土地と同様になるよう対象土壌・砂を詰め、カラムを立てた状態で設置したカラム試験装置を用いることができる。栄養源貯蔵タンクから、栄養源をポンプによってカラムに供給すると、栄養源は、カラム内部を上昇して流れ、土壌に生息する微生物によって一部消費された後、流出液タンクへと排出される。
【0055】
この際、カラム内の土壌温度は、温度雰囲気調整手段によって実際の土壌地下温度に近似させ、一方、貯蔵タンクおよび流出液は、雑菌の繁殖を抑制するために密閉された状態で低温下に保存すれば、試験の精度を大幅に向上できる。
【0056】
このカラム試験によって、シアン汚染サイトの土壌中シアン化合物を土着菌群で効率的に分解できる条件が十分に把握できれば、土壌に栄養成分と酸素を最適条件となるように送り込んで、土着菌群の活動を促進させて原位置修復を行う。
【0057】
本発明の原位置修復方法では、シアン処理に必要とされる量まで土着微生物を増殖しておくことが望ましい。土着微生物を増殖させるには、通常の培養法でよく、好気的条件で培養することが好ましく、無機塩、その他栄養源を含む無機栄養培地、有機栄養培地等に土着微生物を接種し、例えば振盪培養法、通気攪拌培養法などにより培養を行う。
上記培養における温度条件は、使用する土着微生物の生育温度の範囲(例えば10〜35℃)、好ましくは最適生育温度の範囲(15〜25℃)に設定することができる。なお、培地のpHは6.0〜9.5の範囲に設定すればよい。
無機塩として培地に添加する物質、微生物の増殖を促進するための栄養源などは前記のとおりであり、これらの物質は1種でもよく、2種以上を適宜組合わせて用いてもよい。
【0058】
原位置修復の際には、土着微生物に酸素や栄養源などを供給する注入井のストレーナーと、地下の気体を吸引抽出する真空抽出井のストレーナーとを不飽和層汚染領域中または周辺の不飽和層部分に位置するように施工することが望ましい。
【0059】
以上の準備が整ったところで修復作業を始める。単一の土着微生物又は混合微生物群の適当な量(例えば102〜1010個/g)を土壌に散布することもできるが、通常は土壌に生息する土着微生物の活動によって修復作業を行う。
【0060】
少なくとも2ヶ所に設けた真空抽出井を間欠的に運転し、地下気体を吸引すれば、毛細管作用によって栄養物質が拡散するので土着微生物の活動を一層促進することが可能となる。
【0061】
シアンは、水への溶解度が高く移動性も高いので、水を含む不飽和層や地下水からなる飽和層にも存在し、本発明では、これらもシアン汚染土壌と同様に浄化の対象となる。
地下水へは、単一の土着微生物又は混合微生物群の適当な量(102〜106個/ml)を散布することもできるが、通常は土壌(地下水)に生息する土着微生物のみによって修復作業を行う。なお、地下水の温度は10〜35℃であることが好ましい。
【0062】
【実施例】
次に、実施例と比較例により本発明を説明するが、本発明は、これら実施例のみに限定されるものではない。なお、各評価で行う多数の実験・測定項目は汚染現場毎に設計するものであり、必ずしも一様ではない。
【0063】
(実施例1)
シアン汚染サイトAについて、図1に示す手順で事前確認評価を実施した。
はじめに「生物活動阻害要因の有無確認」を実施したところ、生物活動阻害要因となり得る重金属(Pb、Cd、As、Hg、Cr+6、Se)は、地下水および土壌ともいずれも低いレベル(環境基準値未満)でしか検出されず、各種可溶性塩類(Na、K、Caなど)の地下水中濃度は、いずれも海水レベルの1/20未満であった。土壌中の還元性物質も低く(化学的酸素要求量で10g/kg未満)、著しい阻害要因はないことが確認できた。
続いて、「土着シアン分解微生物の存在確認」試験を実施したところ、シュードモナス属に分類される土着のシアン分解微生物3株、及びアルカリゲネス属に分類されるシアン分解微生物1株を単離でき、その存在が確認できた。
次に、「土着菌群によるシアン分解活動の促進可否確認」試験を実施したところ、酸素(7mg/リットル以上に保持)と栄養源(炭素で1.5M、リンで300mg/リットル)の供給によって、土着菌群によるシアン分解活動が十分促進されることが確認された。
そこで、引き続き「土着菌群によるシアン分解活動促進の最適条件探索」試験を実施し、より好ましい促進条件、すなわち栄養源(炭素で50mM、リンで3mg/リットル)を見出した。同時に、その際最もシアン分解が促進された検体について「安全性確認」を行った結果、シアン酸、チオシアン酸、硝酸、亜硝酸、変異原性物質などの副生は起こっていないことが確認され、シアン分解活動促進後の微生物群における優占種についても有害な種類ではないことが確認された。
図1に示した下方向の実線矢印にそって、フラスコレベルの評価を全て確認できたことから、これらの結果を受け、次段階のカラム評価試験へ進む価値があると判定した。
【0064】
(実施例2)
原位置修復の可能性を評価するため、シアン汚染サイトBについて図1に示す手順で事前確認評価を試みた。
まず「生物活動阻害要因の有無確認」を実施したところ、サイトの土壌から多量の砒素(50,000mg/kg以上)が検出された。従って、この段階で土着微生物の活性化による土壌の原位置修復は困難と判断し、「土着シアン分解微生物の存在確認」試験以降の評価試験を中止した。この実施手順を図2に実線矢印で示した。
【0065】
(実施例3)
土着シアン分解微生物を利用した原位置修復の可能性を評価するため、シアン汚染サイトCについて図1に示す手順で事前確認評価を試みた。
はじめに「生物活動阻害要因の有無確認」を実施したところ、実施例1と同様に生物活動阻害要因となり得る物質は低いレベルでしか検出されず、著しい阻害要因はないことが確認できた。
続いて、「土着シアン分解微生物の存在確認」試験を実施したが、土着のシアン分解微生物を単離できず、その存在を確認できなかった。従って、この段階で土着シアン分解微生物を利用した原位置修復は困難と判断し、「土着菌群によるシアン分解活動の促進可否確認」試験以降の評価試験を中止した。実施した手順は図3に実線矢印で示した。
【0066】
(実施例4)
土着シアン分解微生物を利用した原位置修復の可能性を評価するため、シアン汚染サイトDについて図1に示す手順で事前確認評価を試みた。
まず、はじめに「生物活動阻害要因の有無確認」を実施したところ、生物活動阻害要因となり得る物質は低いレベルでしか検出されず、著しい阻害要因はないことが確認できた。続いて「土着シアン分解微生物の存在確認」試験を実施したところ、土着のシアン分解微生物を単離でき、その存在が確認できた。
次に、「土着菌群によるシアン分解活動の促進可否確認」試験を実施したが、実施例1と同様に、酸素を十分に供給した上で様々な配合の栄養を添加したにもかかわらず、土着菌群によるシアン分解活動を有意に促進できなかった。従って、この段階で土着シアン分解微生物を利用した原位置修復は困難と判断し、評価試験を中止した。実施した手順を図4に実線矢印で示した。
なお、「土着菌群によるシアン分解活動の促進可否確認」試験の条件だけをかえて、実施例1よりも、酸素を不足させて供給した場合(3〜4mg/リットル保持)と、実施例1よりも、栄養源を不足させて供給した場合(炭素20mM)も試験した。この試験の結果が出るまでに、実施例1よりも前者では3週間、後者では、5週間長くかかった。
【0067】
(実施例5)
土着シアン分解微生物を利用した原位置修復の可能性を評価するため、シアン汚染サイトEについて図1に示す手順で事前確認評価を試みた。
はじめに「生物活動阻害要因の有無確認」を実施したところ、生物活動阻害要因となり得る物質は低いレベルでしか検出されず、著しい阻害要因はないことが確認できた。続いて、「土着シアン分解微生物の存在確認」試験を実施したところ、土着のシアン分解微生物を単離でき、その存在が確認できた。
次に、「土着菌群によるシアン分解活動の促進可否確認」試験を実施したところ、酸素と栄養源の供給によって、土着菌群によるシアン分解活動が十分促進されることが確認された。そこで、引き続き「土着菌群によるシアン分解活動促進の最適条件探索」試験を実施し、実施例4と同様に、より好ましい促進条件を見出した。
ところが、これと同時に、その際最もシアン分解が促進された検体について「安全性確認」を行ったところ、変異原性を持つ有機物質類の土壌からの溶出(もともと土壌に存在していた化合物が水溶性物質に変質した)も促進されていたことが判明した。従って、この段階で土着シアン分解微生物を利用した原位置修復は困難と判断し、この時点で評価試験を中止した。実施した手順を図5に実線矢印で示した。
【0068】
(比較例1)
実施例2で対象としたシアン汚染サイトBについて、図6に示す手順で事前確認評価を実施した。
はじめに「土着シアン分解微生物の存在確認」試験を実施したところ、土着のシアン分解微生物を単離でき、その存在が確認できたが、これには7週間の期間を要した。
次に、「生物活動阻害要因の有無確認」を実施したところ、サイトの土壌から多量の砒素(50,000mg/kg以上)が検出された。したがって、この段階で、土着微生物の活性化による土壌汚染の原位置修復は困難と判断し、「土着菌群によるシアン分解活動の促進可否確認」試験以降の評価試験を中止した。しかしながら、この試験中止の判断までには、実施例2と比較して7週間の期間を余分に要したことになる。
【0069】
以上の実施例1〜6から、シアン汚染土壌に対して、先ず「生物活動阻害要因の有無確認」を実施することで、比較例1のように、はじめに「土着シアン分解微生物の存在確認」試験を実施する場合よりも、試験に要する日数の無駄を大幅に節減できることが分かる。また、実施例4によって、土着微生物に酸素、栄養源を最大限に供給すれば、「土着菌群によるシアン分解活動の促進可否確認」試験をより加速できることが分かる。
【0070】
【発明の効果】
本発明によれば、フラスコレベルの評価段階を、土着シアン分解微生物に対する生物活動阻害要因の有無確認、シアン分解活動の促進可否確認、シアン分解活動促進の最適条件探索、環境への安全性確認の順に実施するので評価の能率が向上し、途中で原位置修復の可能性がないと判断された場合は、なるべく早い段階で評価作業を中止することにより、合理的で無駄の少ない適用性評価が行なえるようになるから、その工業的価値は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のシアン汚染土壌を事前確認する評価方法の工程図である。
【図2】本発明によって事前確認評価の第1の工程までを実施した場合の工程図である。
【図3】本発明によって事前確認評価の第2の工程までを実施した場合の工程図である。
【図4】本発明によって事前確認評価の第3の工程までを実施した場合の工程図である。
【図5】本発明によって事前確認評価の第4の工程までを実施した場合の工程図である。
【図6】事前確認評価の比較例を示す工程図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、シアン汚染土壌の事前確認評価方法及び原位置修復方法に関し、シアン化合物により汚染された地下領域を土着シアン分解微生物(以下、土着微生物又は土着菌群ともいう)を利用して原位置修復する際、なるべく早いステップで適用可能性の高さを判定でき、必要な情報を十分得ながらコストを圧縮できる、合理的で無駄のないシアン汚染土壌の事前確認評価方法及び原位置修復方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
シアン化合物を含有する土壌は、その毒性が生態系に悪影響を及ぼすため、土壌中にシアンイオン(CN−)又は金属錯体として存在するシアン化合物を処理して、無害化しなければならない。
【0003】
排水中のシアン化合物を処理するには、物理化学的手法及び微生物による生物学的手法が既に確立しており、物理化学的手法として、紫外線を照射して難分解性の鉄シアノ錯体を易分解性の遊離シアンに分解したのち、酸化処理する方法、あるいは第一鉄塩と第二鉄塩とを添加し、アルカリ剤によりpHを調整することで難溶性の鉄シアノ錯体を形成させ、沈殿除去した後、活性汚泥を用いて未反応のシアンイオンを分解除去する方法が知られている。
【0004】
また、微生物による生物学的手法として、バチリス・ズブチリス・クボタという分解菌を用いてシアンイオンを生物的に分解除去する方法(例えば、特許文献1参照)、あるいはニッケルシアノ錯体には、それを分解菌できるフザリウム・オキシスポルムを用いて処理する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
地下の汚染土壌の修復手段としても、最近では、微生物活動による有害物質の分解または改質を利用する生物学的修復法、すなわちバイオレメディエーションによる浄化処理が検討されている。
特に原位置処理としてのバイオレメディエーション(以下、原位置バイオレメディエーションともいう)は、汚染物質を地上に取り出すことなく、原位置において恒久的に分解除去または無害化することができるため有望視され、本出願人も、シアンで汚染した地下領域、特に不飽和層部分に酸素および栄養物質を注入して、微生物活動を効率的に活性化することができる地下汚染修復方法を提案した(特許文献3、4参照)。
【0006】
この原位置バイオレメディエーションを実際の汚染サイトで実施する際には、その適用可能性を客観的に評価する、トリータビリティ−試験を実施することが望ましい。米国環境保護省のガイドラインでは、その実施が必須となっており、国内でもこれに類した評価を求める方向で検討されている。
【0007】
しかし、有機塩素化合物や石油系炭化水素などの原位置バイオレメディエーションの研究は進んでいるが、それ以外の有害物質を浄化対象とした検討例は少ない。特に、シアン化合物による地下汚染については、原位置バイオレメディエーションの検討例は殆ど発表されていないのが現状である。
【0008】
従って、トリータビリティー試験の具体的方法についても、シアン化合物の場合には全く前例がない。汚染物質の性質や分解・無害化機構がかなり異なるため、有機塩素化合物や石油系炭化水素の事例をそのまま踏襲することも難しい。
鉄シアノ錯体などの難分解性のシアン化合物は、土壌又は地下水から速やかに除去することが望まれ、さらに環境問題やコスト的な観点から、環境負荷及び処理コストが比較的少ない原位置修復方法の早期開発が望まれている。
【0009】
【特許文献1】
特開平1−293195号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特開平10−262651号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】
特開平2002−45841号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】
特願2002−2959(特許請求の範囲)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、前述した従来技術の問題点に鑑み、シアン化合物により汚染された地下領域を、土着微生物を利用して原位置修復する際、なるべく早いステップで適用可能性の高さを判定でき、必要な情報を十分得ながらコストを圧縮できる、合理的で無駄のないシアン汚染土壌の事前確認評価方法及び原位置修復方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため、フラスコレベルの評価段階における各評価手順について鋭意検討を重ね、先ず、シアン化合物を分解する土着菌群に対し生物活動を阻害する要因が無いかどうかを確認しておくことが重要であり、その後、土着菌群によるシアン分解活動の促進が可能か否かを迅速に確認し、分解活動の促進に最適な条件を探索し、さらに分解副生成分が環境へ危険を及ぼさないかを確認することにより、土着菌群による原位置修復の可能性を確実に判断でき、いずれかの段階で修復可能性について否定的な結果が確認されると、直ちにそれ以降の評価作業を中止することにより合理的で無駄の少ない適用性評価を行うことができることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、シアン分解活性をもつ土着微生物に対する生物活動阻害要因の有無を確認する第1の工程、第1の工程で生物活動阻害要因がないと確認されると、土着微生物によるシアン分解活動の促進が可能か否かを確認する第2の工程、第2の工程でシアン分解活動の促進が可能であると確認されると、その促進に最適な条件を探索する第3の工程、及び第3の工程で最適な条件が探索されると、分解に伴う副生成分を分析し環境への安全性を確認する第4の工程を含み、しかも、第1〜4の工程のいずれかで否定的な結果が確認されると、直ちにそれ以降の工程を中止することを特徴とする、シアン汚染土壌の事前確認評価方法が提供される。
【0013】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、第1の工程では、生物活動阻害要因物質を重金属、可溶性毒物、可溶性塩類及び還元性物質とした上で、シアン汚染土壌中に共存するこれらの物質の存在量を測定し、その総合的な評価から生物活動阻害要因の有無を確認することを特徴とするシアン汚染土壌の事前確認評価方法が提供される。
【0014】
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、第1の工程と第2の工程の間に、シアン分解活性をもつ土着微生物の存在を確認する工程を付加することを特徴とするシアン汚染土壌の事前確認評価方法が提供される。
【0015】
さらに、本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、第2の工程では、好気性微生物の活動を阻害しない範囲内で最大限の酸素および各種栄養源を土着微生物に与えるように条件設定して行うことを特徴とするシアン汚染土壌の事前確認評価方法が提供される。
【0016】
一方、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかのシアン汚染土壌の事前確認評価方法により修復可能性が確認されると、次にカラム試験を行ってから、地下領域の土着微生物に対して最適量の酸素および各種栄養源を与えてシアン化合物を分解することを特徴とする原位置修復方法が提供される。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のシアン汚染土壌の事前確認評価方法及び原位置修復方法について、詳細に説明する。
【0018】
1.シアン汚染土壌の事前確認評価方法
本発明は、シアン汚染土壌の土着微生物による修復可能性をフラスコレベルで評価する事前確認評価方法であり、シアン分解活性をもつ土着微生物に対する生物活動阻害要因の有無を確認する第1の工程(以下、第1の工程ともいう)、土壌中に生物活動阻害要因がないと確認されると、必要により、土着微生物の存在を確認してから、土着微生物によるシアン分解活動の促進が可能か否かを確認する第2の工程(以下、第2の工程ともいう)、シアン分解活動の促進が可能と確認されると、促進に最適な条件を探索する第3の工程(以下、第3の工程ともいう)、及び促進に最適な条件でシアン分解できると、分解に伴う副生成分を分析し環境への安全性を確認する第4の工程(以下、第4の工程ともいう)を実施し、第1〜4の工程のいずれかで否定的な結果が確認されると、直ちにそれ以降の工程を中止するシアン汚染土壌の事前確認評価方法である。
【0019】
本発明において「シアン」とは、無機シアン化合物及び有機シアン化合物のいずれをも意味する。これらシアン化合物としては、金属シアノ錯体、ニトリル化合物等が挙げられ、また、金属シアノ錯体としては鉄シアノ錯体、銅シアノ錯体又はニッケルシアノ錯体が、ニトリル化合物としてはジニトリルがそれぞれ挙げられる。
【0020】
原位置バイオレメディエーション技術を実際の汚染サイトに適用する際、まず問題となるのは、トリータビリティー試験の第一段階であるフラスコレベルの評価段階で、いかにすれば、合理的に必要かつ十分な評価試験が実施できるか、ということである。
【0021】
評価試験全体で必要と考えられる評価項目はかなり多く、フラスコレベルに限定しても、全てを実施するとなれば、かなりのコストがかかる。この評価段階においては、対象汚染サイトに生息している土着菌群の中にシアン分解菌が存在し、その働きを人工的に促進し得るか否かを確認できることが、要件として求められる。また、トリータビリティー試験の第二段階として実施が求められるカラム試験を計画・設計するに際して、必要かつ十分な予見をフラスコレベルの評価試験と現地状況調査で得たいというニーズがある。
【0022】
対象となる汚染サイトの土壌または地下水に土着のシアン分解菌が生息していなければ、目的とする修復法は適用できないので、常識的には、第一段階として「土着シアン分解微生物の存在確認」を行うところであるが、この試験は、結果が出るまでに最低2ヶ月、平均で3ヶ月近くの期間がかかり、その間、絶えず観察する人手も必要とする。
土壌中の微生物は、休眠状態で存在することが多く、試験初期になかなか生育が認められない際、休眠から脱するのに時間がかかっているのか、そもそも対象とする微生物が殆ど生息しないのかを容易に見極められず、徒にコストがかかる例もあった。
【0023】
また、「土着菌群によるシアン分解活動の促進」を確認するための試験を行う場合、設定する条件数がそのまま分析検体数などコストの係数に直結するため、シアン分解活動が人工的に促進し得るか否かを確認するのに必要な条件を厳選する必要がある反面、条件数を絞るあまりカラム試験段階を計画・設計するに際しての予見が不足しては、かえって効率が悪く全体のコストがかかる。
【0024】
更に、いくら効率的にシアン分解が促進できても、その際に好ましくない副生成分が多量に生成する場合は、その促進条件を採用できない。このため、促進による副生成分増加の有無についても確認する必要があるが、全ての試験条件について詳細に経時変化を追おうとすると、膨大なコストが発生するという問題がある。
【0025】
このようにして確認を進めた結果、適用できる見込みが少ないサイトであった場合は、この評価試験の初期にそれが判定すれば、無駄になるコストが少なくて済む。適用できる可能性が高いサイトであった場合は、効果的な次段階試験を計画するのに十分な予見をこの評価試験段階で得ることができ、評価試験全体を効率化できるメリットが生まれる。
【0026】
また、土着微生物によりシアン分解を促進した際に副次的に生成する、副生成分の増加有無を確認する安全性確認は、この浄化手法の適用性を評価する上で重要な要素であるが、分析成分と検体数がコストに直結するため、必要最小限に抑える工夫が必要となる。
【0027】
本発明のシアン汚染土壌の事前確認評価方法は、このような利害得失を十分に考慮した末に生み出された方法であって、その基本的考え方を図1の工程図によって説明する。
【0028】
(1)生物活動阻害要因の有無の確認
はじめに「生物活動阻害要因の有無」を確認する。これにより著しく生物活動を阻害する要因を有するがために、土着シアン分解菌が存在しない確率が高かったり、存在してもその活動を人工的に活性化させることが困難と予測される場合、人手と期間を必要とする「土着シアン分解微生物の存在確認」試験の実施を取り止めることができる。
【0029】
ここで、著しい生物活動阻害要因を有する状態とは、重金属や有機系毒性成分などの可溶性毒性物質が大量に存在して、特殊な耐毒性が高い微生物しか繁殖できそうにない生物阻害状態や、可溶性塩類の濃度が高く、一般的な土壌微生物の活動を停止させるほどに細胞膜への浸透圧を押し上げている状態や、還元性物質が大量に存在して人工的に酸素を地下に送り込んでも土着のシアン分解微生物が活性化するに足るレベルの好気的環境が維持できそうにない状態などを指す。
【0030】
重金属としては、Hg、As、Cd、Pb、Cr+6、Seなどが挙げられ、その有機化合物も包含される。可溶性塩類としては、Na、Ca、Kなどの塩化物、水酸化物などが挙げられる。還元性物質とは、2価鉄化合物のように、それ自身が酸化されやすい物質を指す。
著しい生物活動阻害要因を有する状態とは、いずれか一成分が大量に存在した状態だけでなく、各成分は許容限度内にあっても複数成分が介在したような状態も含まれる。
【0031】
この工程では、重金属、可溶性毒性物質、可溶性塩類又は還元性物質の存在量(濃度)で判断するわけであるが、分析対象となる物質の種類が多く、影響の度合いも微妙に異なっている。また、別途行われる土壌汚染の原因と分布状況、現地の地盤状況および土地利用状況などの調査結果も加味して総合的に判断すべきことから、得られたデータをコンピュータの記憶装置に蓄え、各種の処理を行えるようにする。
入力したデータは、分析した各成分毎にウエイト付けを行い、演算、解析し、基準値と対比し、その結果を出力するようにプログラム化されることが望ましい。
【0032】
本発明において、「生物活動阻害要因の有無」試験を最初に着手することにしたのは、これらが一般的な分析装置によって容易かつ比較的短時間で測定できるためである。これら濃度が少ないだけでなく、一般的な好気性微生物の存在が確認できれば、「生物活動阻害要因」が小さいといえる可能性が高いので、次の評価工程に進む。
【0033】
一方、上記の重金属は、それ自体が土壌の汚染物質として有害なので、その存在を理由にシアン汚染土壌の土着微生物による修復可能性確認評価作業の中止を決定した場合は、シアン汚染土壌を原位置バイオレメディエーション以外の手段で修復することを検討するとともに、重金属の浄化処理を優先的に進めることが選択肢に入ってくる。
【0034】
(2)土着シアン分解微生物の存在確認
次に、シアン汚染土壌中の「土着シアン分解微生物の存在確認」を行うことができる。一般に、土壌は、その環境での生物活動に適した多種多様な微生物が生息した状態にある。
【0035】
シアン分解微生物としては、金属シアノ錯体などを分解できるとされるバチリス・ズブチリス・クボタ、フザリウム・オキシスボルム、ゴルドナ属もしくはバークホルデリア属に属する微生物、アルカリゲネス属、さらにはシュードモナス属に属する微生物などで有効性が確認されている。これらシアン分解微生物群が土着菌として存在しているかどうかを確認しておくことが望ましい。
【0036】
この土着シアン分解菌の存在確認手段として、サンプリングした土壌や地下水からのシアン分解微生物の単離を行う。この際に用いる選択培地中のシアンは、評価対象となるシアン汚染の性質にあわせて選択する。
土着シアン分解微生物は様々であり、シアン化合物を構成する炭素原子、窒素原子のいずれを栄養源とするかなど、その特徴(性質)もことなることから、この工程で得られたデータも記憶装置に入力し、データベース化して随時参照できるようにしておくことが望ましい。
【0037】
なお、前記「生物活動阻害要因の有無確認」試験と、この「土着シアン分解微生物の存在確認」試験は同時に開始してもよいが、「生物活動阻害要因の有無確認」試験の結果が先に出るので、これを踏まえて「土着シアン分解微生物の存在確認」試験を継続するか否かを決定すればよい。
【0038】
また、他の調査などにより既に土着シアン分解微生物の存在が確認されている場合は、この「土着シアン分解微生物の存在確認」試験を省略できることは言うまでもない。これにより、適用性が著しく低いサイトの評価にコストを費やす無駄を避けることができる。
【0039】
いずれにしても土着シアン分解微生物が存在しなければ、土着菌群によるシアン分解活動の促進は不可能なので、土着シアン分解菌の存在が把握できてから、次に、「土着菌群によるシアン分解活動の促進可否確認」試験を実施する。
【0040】
(3)土着菌群によるシアン分解活動の促進可否の確認
この試験は、微生物活動を阻害しない範囲内で最大限の酸素および各種栄養源を与えるような条件設定とし、人工的な促進が可能か否かの判定に支障がない範囲で試験条件数を最低限に絞って実施する。試験対象試料には、評価対象となる汚染サイトから採取した汚染地下水および汚染土壌を用いる。
【0041】
酸素は、ガスの状態で土壌試料に供給することもできるが、通常、スラリー化した土壌に水相を介して供給する。水に酸素を最大限溶存させた状態、または大気飽和の状態で供給することが好ましい。
栄養源の添加量は、各種栄養源を配合する幾つかの代表的パターンについて、微生物活動を阻害しない範囲内(例えば、浸透圧が高まりすぎない範囲内)で最大限の量を与える。これら条件設定のもと、現地で採取した地下水または土壌のシアン汚染分析値を経時的に追い、土着菌群によるシアン分解活動が促進されるか否かを確認する。
【0042】
土着微生物の増殖を促進するための栄養源として、グルコース、フルクトース、ガラクトース、サッカロース、マルトース、ラクトース、トレハロース、メリビオース、ラフィノース、スタキオースなどの糖類、でん粉、エタノール、有機酸などを適量添加することができる。供給期間は、シアン化合物や栄養源の種類や量により異なるが、6〜60日間、好ましくは10〜30日間継続すればよい。
各種栄養源配合の代表的パターンの選定は、事前に調査した土壌の性状や、確認された土着シアン分解微生物の性質などに基づいて行うため、正確な判断と能率化が要求されるため、上記で構築したデータベースを活用することが望ましい。
土着菌群によるシアン分解活動の促進が困難と確認されれば評価は、この時点で中止される。
【0043】
(4)活動促進の最適条件の探索
土着菌群によるシアン分解活動の促進が可能と確認されれば、次いで、「活動促進の最適条件を探索する試験」を実施する。この際、同時にカラム試験段階を計画・設計する際に必要な予見が十分得られるよう考慮した条件設定とする。
【0044】
すなわち、第2の工程でシアン分解活動の促進が可能と確認されているが、酸素、各種栄養源を最大限の条件で供給しているので、ここでは、例えば、各種栄養源について、添加効果が認められる最小量を、これまでの試験結果から推定し、各種栄養源の配合比率最適化を行い、必要かつ十分な知見が得られる条件に設定される。
この条件のもと、現地採取の地下水または土壌のシアン汚染分析値を経時的に追い、土着菌群によるシアン分解活動の促進程度を比較し、評価作業の中止か継続かを判断すればよい。
【0045】
(5)環境への安全性の確認
この「安全性確認」は、土着菌群によるシアン分解活動を促進する際、並行して好ましくない現象も促進されないかを確認するものであり、「土着菌群によるシアン分解活動促進の最適条件探索」試験において、シアン分解が最も促進された検体について行うと、被検体数を抑えることができコストが圧縮できる。
【0046】
この際の確認項目としては、シアン分解促進の前後で、シアン酸、チオシアン酸、硝酸、亜硝酸、変異原性物質などの物質の有無や濃度を確認すること、シアン分解活動促進後の土着菌群において優占種を同定することなどが挙げられる。シアン酸、チオシアン酸、硝酸、または亜硝酸は、評価試験前の濃度よりも増えていないこと、変異原性物質は、それが生成していないことが判定基準である。これらの各分析データも個別な濃度の変動を、判定基準と対比するようにプログラム化しておくことが望ましい。判断基準を超えれば評価作業を中止する。
【0047】
このように、本発明は、第1の工程から第4の工程までの一連の手順で評価を行い、シアン汚染土壌を土着微生物の活性化により修復できるかどうかを的確、迅速かつ経済的に評価することができる方法であるが、これに伴う生物活動阻害要因の測定値を基準値と対比し、評価の続行または中止を判断する手段、単離した土着微生物の種類や性質を、既知のシアン分解微生物のデータベースと照合する手段、また、土着微生物に対して供給すべき各種栄養源の配合比率の最適値を算出する手段、さらに、シアンの分解に伴う副生成分の濃度変動を基準と対比する手段などをプログラム化したシステムとして設けることが望ましい。
このようにプログラム化されたシステムを用いることで得られたデータは、後続のカラム試験で随時参照できるだけでなく、実際の原位置修復作業に際しても有効に活用することが可能である。
【0048】
2.原位置修復方法
本発明は、上記の方法でシアン汚染土壌の修復可能性を事前確認評価し、その結果、修復可能性が確認された場合は、さらにカラム試験を行ってから、地下領域の土着微生物に対して最適量の酸素および各種栄養源を与えて、シアン化合物を分解する原位置修復方法である。
【0049】
本発明においてシアン汚染土壌とは、シアン分解処理の対象となる土壌であって、シアン化合物を含む地下土壌である。めっき工場、選鉱製錬所、鉄鋼熱処理工場、コークス製造工場などの工場跡地の地下にはシアン化合物が含まれる可能性が高いので、これらの土壌には本発明を有効に適用できる。
【0050】
原位置バイオレメディエーションの手段を適用するには、前記のフラスコ試験によって土着微生物によるシアン分解の可能性を調べるだけでなく、対象となる汚染土壌や、そこに生息する土着微生物などの特性をカラム試験によって詳細に把握しておくことも重要である。
【0051】
すなわち、カラム試験は、サイトキャラクタリゼーション(原位置地下環境の把握)およびフラスコ試験で得られた情報を反映して実施され、現地での施工設計に必要なデータ(施工技術、コスト、時間など)を取得することを目的としている。
【0052】
これまで我国では約10年間にわたって、バイオレメディエーション技術の開発が盛んに行われてきたが、カラム試験の実施に関しては、ノウハウ的な要素が多いといわれ、情報量が極めて不足しているのが現状である。
【0053】
このような状況にあって、本出願人は、原位置バイオレメディエーションを効果的に検討しうるカラム試験方法を提案した(特願2001−363766号)。
これは、実汚染サイトの地下環境に模した土壌充填カラムに、フラスコ試験で得られた結果に基づき、修復に効果的な条件の栄養源を修復実施時に想定される地下流速で連続供給し、これにより対象となる土着菌群の活性化条件を求め、施工方法を決定し、修復に必要なコストや時間について信頼性のより高いデータを収集することを意図したものである。
【0054】
現在、カラム試験としては、円筒状の土壌充填カラム(以下、単にカラムという)の内部に、汚染された土地と同様になるよう対象土壌・砂を詰め、カラムを立てた状態で設置したカラム試験装置を用いることができる。栄養源貯蔵タンクから、栄養源をポンプによってカラムに供給すると、栄養源は、カラム内部を上昇して流れ、土壌に生息する微生物によって一部消費された後、流出液タンクへと排出される。
【0055】
この際、カラム内の土壌温度は、温度雰囲気調整手段によって実際の土壌地下温度に近似させ、一方、貯蔵タンクおよび流出液は、雑菌の繁殖を抑制するために密閉された状態で低温下に保存すれば、試験の精度を大幅に向上できる。
【0056】
このカラム試験によって、シアン汚染サイトの土壌中シアン化合物を土着菌群で効率的に分解できる条件が十分に把握できれば、土壌に栄養成分と酸素を最適条件となるように送り込んで、土着菌群の活動を促進させて原位置修復を行う。
【0057】
本発明の原位置修復方法では、シアン処理に必要とされる量まで土着微生物を増殖しておくことが望ましい。土着微生物を増殖させるには、通常の培養法でよく、好気的条件で培養することが好ましく、無機塩、その他栄養源を含む無機栄養培地、有機栄養培地等に土着微生物を接種し、例えば振盪培養法、通気攪拌培養法などにより培養を行う。
上記培養における温度条件は、使用する土着微生物の生育温度の範囲(例えば10〜35℃)、好ましくは最適生育温度の範囲(15〜25℃)に設定することができる。なお、培地のpHは6.0〜9.5の範囲に設定すればよい。
無機塩として培地に添加する物質、微生物の増殖を促進するための栄養源などは前記のとおりであり、これらの物質は1種でもよく、2種以上を適宜組合わせて用いてもよい。
【0058】
原位置修復の際には、土着微生物に酸素や栄養源などを供給する注入井のストレーナーと、地下の気体を吸引抽出する真空抽出井のストレーナーとを不飽和層汚染領域中または周辺の不飽和層部分に位置するように施工することが望ましい。
【0059】
以上の準備が整ったところで修復作業を始める。単一の土着微生物又は混合微生物群の適当な量(例えば102〜1010個/g)を土壌に散布することもできるが、通常は土壌に生息する土着微生物の活動によって修復作業を行う。
【0060】
少なくとも2ヶ所に設けた真空抽出井を間欠的に運転し、地下気体を吸引すれば、毛細管作用によって栄養物質が拡散するので土着微生物の活動を一層促進することが可能となる。
【0061】
シアンは、水への溶解度が高く移動性も高いので、水を含む不飽和層や地下水からなる飽和層にも存在し、本発明では、これらもシアン汚染土壌と同様に浄化の対象となる。
地下水へは、単一の土着微生物又は混合微生物群の適当な量(102〜106個/ml)を散布することもできるが、通常は土壌(地下水)に生息する土着微生物のみによって修復作業を行う。なお、地下水の温度は10〜35℃であることが好ましい。
【0062】
【実施例】
次に、実施例と比較例により本発明を説明するが、本発明は、これら実施例のみに限定されるものではない。なお、各評価で行う多数の実験・測定項目は汚染現場毎に設計するものであり、必ずしも一様ではない。
【0063】
(実施例1)
シアン汚染サイトAについて、図1に示す手順で事前確認評価を実施した。
はじめに「生物活動阻害要因の有無確認」を実施したところ、生物活動阻害要因となり得る重金属(Pb、Cd、As、Hg、Cr+6、Se)は、地下水および土壌ともいずれも低いレベル(環境基準値未満)でしか検出されず、各種可溶性塩類(Na、K、Caなど)の地下水中濃度は、いずれも海水レベルの1/20未満であった。土壌中の還元性物質も低く(化学的酸素要求量で10g/kg未満)、著しい阻害要因はないことが確認できた。
続いて、「土着シアン分解微生物の存在確認」試験を実施したところ、シュードモナス属に分類される土着のシアン分解微生物3株、及びアルカリゲネス属に分類されるシアン分解微生物1株を単離でき、その存在が確認できた。
次に、「土着菌群によるシアン分解活動の促進可否確認」試験を実施したところ、酸素(7mg/リットル以上に保持)と栄養源(炭素で1.5M、リンで300mg/リットル)の供給によって、土着菌群によるシアン分解活動が十分促進されることが確認された。
そこで、引き続き「土着菌群によるシアン分解活動促進の最適条件探索」試験を実施し、より好ましい促進条件、すなわち栄養源(炭素で50mM、リンで3mg/リットル)を見出した。同時に、その際最もシアン分解が促進された検体について「安全性確認」を行った結果、シアン酸、チオシアン酸、硝酸、亜硝酸、変異原性物質などの副生は起こっていないことが確認され、シアン分解活動促進後の微生物群における優占種についても有害な種類ではないことが確認された。
図1に示した下方向の実線矢印にそって、フラスコレベルの評価を全て確認できたことから、これらの結果を受け、次段階のカラム評価試験へ進む価値があると判定した。
【0064】
(実施例2)
原位置修復の可能性を評価するため、シアン汚染サイトBについて図1に示す手順で事前確認評価を試みた。
まず「生物活動阻害要因の有無確認」を実施したところ、サイトの土壌から多量の砒素(50,000mg/kg以上)が検出された。従って、この段階で土着微生物の活性化による土壌の原位置修復は困難と判断し、「土着シアン分解微生物の存在確認」試験以降の評価試験を中止した。この実施手順を図2に実線矢印で示した。
【0065】
(実施例3)
土着シアン分解微生物を利用した原位置修復の可能性を評価するため、シアン汚染サイトCについて図1に示す手順で事前確認評価を試みた。
はじめに「生物活動阻害要因の有無確認」を実施したところ、実施例1と同様に生物活動阻害要因となり得る物質は低いレベルでしか検出されず、著しい阻害要因はないことが確認できた。
続いて、「土着シアン分解微生物の存在確認」試験を実施したが、土着のシアン分解微生物を単離できず、その存在を確認できなかった。従って、この段階で土着シアン分解微生物を利用した原位置修復は困難と判断し、「土着菌群によるシアン分解活動の促進可否確認」試験以降の評価試験を中止した。実施した手順は図3に実線矢印で示した。
【0066】
(実施例4)
土着シアン分解微生物を利用した原位置修復の可能性を評価するため、シアン汚染サイトDについて図1に示す手順で事前確認評価を試みた。
まず、はじめに「生物活動阻害要因の有無確認」を実施したところ、生物活動阻害要因となり得る物質は低いレベルでしか検出されず、著しい阻害要因はないことが確認できた。続いて「土着シアン分解微生物の存在確認」試験を実施したところ、土着のシアン分解微生物を単離でき、その存在が確認できた。
次に、「土着菌群によるシアン分解活動の促進可否確認」試験を実施したが、実施例1と同様に、酸素を十分に供給した上で様々な配合の栄養を添加したにもかかわらず、土着菌群によるシアン分解活動を有意に促進できなかった。従って、この段階で土着シアン分解微生物を利用した原位置修復は困難と判断し、評価試験を中止した。実施した手順を図4に実線矢印で示した。
なお、「土着菌群によるシアン分解活動の促進可否確認」試験の条件だけをかえて、実施例1よりも、酸素を不足させて供給した場合(3〜4mg/リットル保持)と、実施例1よりも、栄養源を不足させて供給した場合(炭素20mM)も試験した。この試験の結果が出るまでに、実施例1よりも前者では3週間、後者では、5週間長くかかった。
【0067】
(実施例5)
土着シアン分解微生物を利用した原位置修復の可能性を評価するため、シアン汚染サイトEについて図1に示す手順で事前確認評価を試みた。
はじめに「生物活動阻害要因の有無確認」を実施したところ、生物活動阻害要因となり得る物質は低いレベルでしか検出されず、著しい阻害要因はないことが確認できた。続いて、「土着シアン分解微生物の存在確認」試験を実施したところ、土着のシアン分解微生物を単離でき、その存在が確認できた。
次に、「土着菌群によるシアン分解活動の促進可否確認」試験を実施したところ、酸素と栄養源の供給によって、土着菌群によるシアン分解活動が十分促進されることが確認された。そこで、引き続き「土着菌群によるシアン分解活動促進の最適条件探索」試験を実施し、実施例4と同様に、より好ましい促進条件を見出した。
ところが、これと同時に、その際最もシアン分解が促進された検体について「安全性確認」を行ったところ、変異原性を持つ有機物質類の土壌からの溶出(もともと土壌に存在していた化合物が水溶性物質に変質した)も促進されていたことが判明した。従って、この段階で土着シアン分解微生物を利用した原位置修復は困難と判断し、この時点で評価試験を中止した。実施した手順を図5に実線矢印で示した。
【0068】
(比較例1)
実施例2で対象としたシアン汚染サイトBについて、図6に示す手順で事前確認評価を実施した。
はじめに「土着シアン分解微生物の存在確認」試験を実施したところ、土着のシアン分解微生物を単離でき、その存在が確認できたが、これには7週間の期間を要した。
次に、「生物活動阻害要因の有無確認」を実施したところ、サイトの土壌から多量の砒素(50,000mg/kg以上)が検出された。したがって、この段階で、土着微生物の活性化による土壌汚染の原位置修復は困難と判断し、「土着菌群によるシアン分解活動の促進可否確認」試験以降の評価試験を中止した。しかしながら、この試験中止の判断までには、実施例2と比較して7週間の期間を余分に要したことになる。
【0069】
以上の実施例1〜6から、シアン汚染土壌に対して、先ず「生物活動阻害要因の有無確認」を実施することで、比較例1のように、はじめに「土着シアン分解微生物の存在確認」試験を実施する場合よりも、試験に要する日数の無駄を大幅に節減できることが分かる。また、実施例4によって、土着微生物に酸素、栄養源を最大限に供給すれば、「土着菌群によるシアン分解活動の促進可否確認」試験をより加速できることが分かる。
【0070】
【発明の効果】
本発明によれば、フラスコレベルの評価段階を、土着シアン分解微生物に対する生物活動阻害要因の有無確認、シアン分解活動の促進可否確認、シアン分解活動促進の最適条件探索、環境への安全性確認の順に実施するので評価の能率が向上し、途中で原位置修復の可能性がないと判断された場合は、なるべく早い段階で評価作業を中止することにより、合理的で無駄の少ない適用性評価が行なえるようになるから、その工業的価値は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のシアン汚染土壌を事前確認する評価方法の工程図である。
【図2】本発明によって事前確認評価の第1の工程までを実施した場合の工程図である。
【図3】本発明によって事前確認評価の第2の工程までを実施した場合の工程図である。
【図4】本発明によって事前確認評価の第3の工程までを実施した場合の工程図である。
【図5】本発明によって事前確認評価の第4の工程までを実施した場合の工程図である。
【図6】事前確認評価の比較例を示す工程図である。
Claims (5)
- シアン汚染土壌の土着微生物による修復可能性をフラスコレベルで評価する事前確認評価方法において、
シアン分解活性をもつ土着微生物に対する生物活動阻害要因の有無を確認する第1の工程、第1の工程で生物活動阻害要因がないと確認されると、土着微生物によるシアン分解活動の促進が可能か否かを確認する第2の工程、第2の工程でシアン分解活動の促進が可能であると確認されると、その促進に最適な条件を探索する第3の工程、及び第3の工程で最適な条件が探索されると、分解に伴う副生成分を分析し環境への安全性を確認する第4の工程を含み、しかも、第1〜4の工程のいずれかで否定的な結果が確認されると、直ちにそれ以降の工程を中止することを特徴とする、シアン汚染土壌の事前確認評価方法。 - 第1の工程では、生物活動阻害要因物質を重金属、可溶性毒物、可溶性塩類及び還元性物質とした上で、シアン汚染土壌中に共存するこれらの物質の存在量を測定し、その総合的な評価から生物活動阻害要因の有無を確認することを特徴とする、請求項1に記載のシアン汚染土壌の事前確認評価方法。
- 第1の工程と第2の工程の間に、シアン分解活性をもつ土着微生物の存在を確認する工程を付加することを特徴とする、請求項1に記載のシアン汚染土壌の事前確認評価方法。
- 第2の工程では、好気性微生物の活動を阻害しない範囲内で最大限の酸素および各種栄養源を土着微生物に与えるように条件設定して行うことを特徴とする、請求項1に記載のシアン汚染土壌の事前確認評価方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のシアン汚染土壌の事前確認評価方法により修復可能性が確認されると、次にカラム試験を行ってから、地下領域の土着微生物に対して最適量の酸素および各種栄養源を与えてシアン化合物を分解することを特徴とする原位置修復方法。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007160209A (ja) * | 2005-12-13 | 2007-06-28 | Hiroshi Yokozawa | 水質改善方法 |
JP2010214274A (ja) * | 2009-03-16 | 2010-09-30 | Ritsumeikan | バイオレメディエーションのための浄化シミュレーション方法 |
JP2019030845A (ja) * | 2017-08-08 | 2019-02-28 | 株式会社竹中工務店 | 有害物質で汚染された土壌を微生物によって原位置で浄化可能であるか否か判定する浄化判定方法 |
CN110547231A (zh) * | 2019-08-15 | 2019-12-10 | 大连海洋大学 | 一种海参池塘原位修复方法 |
-
2002
- 2002-12-03 JP JP2002351337A patent/JP2004180583A/ja active Pending
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