JP2004177419A - 能動回折音制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】壁体から離れた受音位置にエラーマイクを配置しないで、受音位置における制御対象音の音圧レベルを低減できる能動回折音制御装置を提供すること。
【解決手段】遮音壁Kの騒音源S側の騒音情報を計測するリファレンスマイク13と、遮音壁Kの受音位置U側の騒音情報を計測する第1エラーマイク14と、遮音壁K近傍に設置され、受音位置Uにおける制御対象音を低減化するための制御音を発生するスピーカ12と、前記リファレンスマイク13及び第1エラーマイク14の出力に基づいて、スピーカ12の出力を制御する制御装置20とを備え、制御装置20は、騒音源Sに関する第1エラーマイク14と第2エラーマイク15間の第1音伝達特性H3と、スピーカ12に関する第1エラーマイク14と第2エラーマイク15間の第2音伝達特性G2とに基づいて演算する。
【選択図】 図1
【解決手段】遮音壁Kの騒音源S側の騒音情報を計測するリファレンスマイク13と、遮音壁Kの受音位置U側の騒音情報を計測する第1エラーマイク14と、遮音壁K近傍に設置され、受音位置Uにおける制御対象音を低減化するための制御音を発生するスピーカ12と、前記リファレンスマイク13及び第1エラーマイク14の出力に基づいて、スピーカ12の出力を制御する制御装置20とを備え、制御装置20は、騒音源Sに関する第1エラーマイク14と第2エラーマイク15間の第1音伝達特性H3と、スピーカ12に関する第1エラーマイク14と第2エラーマイク15間の第2音伝達特性G2とに基づいて演算する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、本発明は、特に防音や遮音のために設置される壁を回折して到達する騒音等の制御対象音を低減化する能動回折音制御装置に関し、特に設置スペースを小さくできるものに関する。
【0002】
【従来の技術】
騒音(制御対象音)を生じる騒音源のある騒音源領域と、騒音を低減させたい受音領域との間に壁を設けることで、防音や遮音を達成することは建築物騒音対策や道路騒音対策等において一般に用いられる遮音技術である。また、スピーカ(制御音源)から発生した音で騒音を低減する能動騒音制御技術は、騒音をフィードフォワード制御して低減する技術として知られている。
【0003】
遮音壁を設置したとしても、これらの壁体を乗り越えて回折してくる騒音が存在することから、回折音に対して、一般的な能動騒音制御技術を適用するという方法(例えば、特許文献1参照)が提案されている。この方法では、遮音壁の騒音源側に設置された騒音源計測センサと制御音源を用いて、騒音計測センサで検出する音圧レベルを低減化することによって、壁体の受音領域側における回折音の低減化が行われている。しかし、この方法を用いると遮音壁から離れた場所に騒音源計測センサと制御音源を設置する必要があり、騒音源と遮音壁との間にそれらを設置する空間が必要であった。
【0004】
この理由を説明する。図8の(a)〜(d)は、前述した能動騒音制御技術を適用した結果を示す図である。図8の(a)におけるY−Z平面の0〜1000[Hz]バンドの音圧分布である。能動騒音制御手法についてはよく知られているFiltered−X手法などを適用できる。
【0005】
壁による回折効果がもたらす騒音低減に加えて、制御音源が出力する音によって騒音が相殺されることによって騒音が低減される。遮音壁から近いエラーマイクM1を用いて行われた結果Q1と、遮音壁から比較的遠いエラーマイクM2を用いて行われた結果Q2の差がQ3で表される。Q3が全て正であることから明らかなように、エラーマイクは遮音壁から離れているほうが騒音低減領域が広がるとともに、騒音低減効果が増すことは明らかである。
【0006】
これは一般的な音の減衰特性から判断しても明らかである。壁からある程度の距離にある騒音源からエラーマイクまでの距離に対して壁上端に設置されたスピーカからエラーマイクまでの距離は相対的に著しく短い。音のパワーは距離に対して距離の長さの二乗に反比例して減衰するため、距離が近い場所ではその勾配が急峻であり、このポイントで騒音源からと制御音源からのゲインをあわせこんだとしてもそこから先の領域でのパワーの差は著しく、エラーマイクの場所のみが騒音低減化されるだけで、騒音低減領域はごくわずかに限られる。
【0007】
図9の(a),(b)は、上述した現象を簡単に説明したものである。すなわち、図9の(a)に示すように、遮音壁から近い場所で交差させた場合、交差以降における音のパワーの差が大きくなる。一方、図9の(b)に示すように、遮音壁から遠い場所で交差させた場合には、交差以降における音のパワーの差がのように小さくなる。以上のことから、回折された音が到達する領域において騒音低減の効果を高めるにはエラーマイクは遮音壁から離して設置したほうが好ましいことがわかる。
【0008】
なお、上述した能動回折音制御方法の他にも各種方法が考えられている。例えば、遮音壁の上端に回折音を抑制するスピーカを設置する方法(例えば、特許文献2参照)では、壁上端にスピーカ(制御音源)を設置することが記載され、そのスピーカの大きさと向きについて限定してあるが、そのスピーカに対して、受音領域におけるどの場所の騒音を低減化するためにどのように処理された信号を出力させるかについての具体的な記述はない。
【0009】
また、遮音壁の上端に設置され、観測された騒音の位相を反転して出力する方法(例えば、特許文献3参照)では、騒音源計測手段と制御音源を一体化させ、観測された騒音の位相を反転させて制御音源に出力するようにしている。この方法においては、騒音源計測手段と制御音源との間の音の伝達特性における位相をどのように反転させるのかについては明らかにされていない。
【0010】
さらに、遮音壁の上端ではなく、騒音源側表面付近にスピーカを設置する方法(例えば、特許文献4参照)では、回折音だけでなく直接音を低減するためのスピーカ設置方法とその制御出力演算について記載されている。この方法においては、受音側の騒音を低減させたい領域と騒音計測場所との間の関係について明らかにされていない。
【0011】
【特許文献1】
特公平7−82347号公報(第2頁及び第1図)
【0012】
【特許文献2】
特開平9−54593号公報(第2頁及び第1図)
【0013】
【特許文献3】
特開平7−234689号公報(図1及び図3)
【0014】
【特許文献4】
特開2001−172925号公報(図2及び図7)
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
上述した能動回折音制御装置であると次のような問題があった。すなわち、従来の回折して到達する騒音を低減化する能動騒音制御技術においては、制御音源を騒音源側に壁から離れた場所に設置する必要があるという空間的な制約をもつ問題があった。しかし、一般に遮音壁の両側にそのような設置スペースが存在しないことが多い。既設の遮音壁に付加的にこの回折音制御装置を設置するような場合、設置のための新たなスペースの確保や、エラーマイクを支える長い支柱等が必要になる。
【0016】
また、遮音壁上端に制御音源たるスピーカを設置されたとしても、その制御方法が明確にされていない。さらに、遮音壁近傍に配せられた騒音計測場所の騒音を低減化した場合、遮音壁の受音側でどのように騒音低減化領域が形成されるかが明らかにされておらず、効果範囲が定まらないという問題があった。
【0017】
そこで本発明は、壁体から離間した受音位置にエラーマイクを配置することなく、壁体近傍にリファレンスマイク、エラーマイク、スピーカ等を設置するのみで受音位置における制御対象音の音圧レベルを低減することができる能動回折音制御装置を提供することを目的としている。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決し目的を達成するために、本発明の能動回折音制御装置は次のように構成されている。
【0019】
(1)制御対象音源領域と受音領域との間に設けられた壁体に取付けられるとともに、前記制御対象音源領域で発生した制御対象音を低減させる能動回折音制御装置において、前記壁体の前記制御対象音源領域側に配置され、前記壁体の近傍における制御対象音情報を計測する音源計測手段と、前記壁体の前記受音領域側に配置され、前記壁体の近傍における制御対象音情報を計測する直接制御対象音計測手段と、前記壁体近傍に設置され、前記受音領域の仮想制御対象音計測位置における制御対象音を低減化するための制御音を発生する制御音源と、前記制御対象音計測手段からの出力に基づいて、前記制御音の出力を制御する制御対象音制御手段とを備え、前記制御対象音制御手段は、制御対象音源に関する前記直接制御対象音計測位置と前記仮想制御対象音計測位置間の第1音伝達特性と、前記制御音源に関する前記直接制御対象音計測位置と前記仮想制御対象音計測位置間の第2音伝達特性とに基づいて演算するものであることを特徴とする。
【0020】
(2)上記(1)に記載された能動回折音制御装置であって、前記制御対象音制御手段は、制御音を発生させる制御区間と、前記制御対象音源に関する前記制御対象音源計測手段と前記直接音計測手段との間の第3音伝達特性を得るための同定区間とを交互に行うものであることを特徴とする。
【0021】
(3)上記(1)に記載された能動回折音制御装置であって、前記音源計測手段と前記直接制御対象音計測手段と前記制御音源とが一体として構成され、前記壁体に対して、着脱自在に設置できることを特徴とする。
【0022】
(4)上記(1)に記載された能動回折音制御装置であって、前記制御音源は壁体上端部に設置され、前記直接制御対象音計測手段は、前記壁上端部から前記制御対象音の周波数の最短波長の距離以内に設置されていることを特徴とする。
【0023】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の一実施の形態に係る能動回折音制御装置10の概要を示す図であって、(a)は能動回折音制御装置10を遮音壁Kに取付けた状態を示す斜視図、(b)は遮音壁Kに取付けた状態を示す側面図である。また、図2は、遮音壁K、騒音源S及び能動回折音制御装置10の相互の位置関係を模式的に示す説明図である。なお、Sは騒音源、Uは受音位置、Pは騒音領域、Qは受音領域を示している。
【0024】
能動回折音制御装置10は、遮音壁Kに取付けられる本体部11と、この本体部11に設けられたスピーカ(制御音源)12と、本体部11からアーム11aを介して取付けられるとともに、騒音領域Pに配置され騒音源Sからの騒音を直接計測するリファレンスマイク(音源計測手段)13と、本体部11からアーム11bを介して取付けられるとともに、受音領域Qに配置され騒音源Sからの騒音を直接計測する第1エラーマイク(直接制御対象音計測手段)14と、本体部11内部に設けられ、リファレンスマイク13及び第1エラーマイク14からの入力に基づいてスピーカ12からの制御音の出力レベルを算出する制御装置(制御対象音制御手段)20とを備えている。
【0025】
なお、第1エラーマイク14を支持するアーム11bは、遮音壁Kから第1エラーマイク14までの距離が制御対象音の周波数の最短波長の距離以内に設置されている。例えば、制御対象音の周波数が最大1000Hzの場合には、最短波長は約34cmとなる。リファレンスマイク13を支持するアーム11aも同様の長さとすれば、リファレンスマイク13、スピーカ12、第1エラーマイク14はすべて遮音壁Kから近傍(数十cm以内)に設置されることになり、一体化された状態で設置することが可能である。
【0026】
制御装置20は、リファレンスマイク13及び第1エラーマイク14からの入力に基づいてスピーカ12からの制御音の出力レベルを算出する際、伝達特性H3,G2を用いる。すなわち、伝達特性H3,G2は、能動回折音制御装置10による制御対象音の制御を行う前の段階で、受音位置Uに第2エラーマイク15を設置し、伝達特性H3,G2を取得し、制御装置20内部に記憶しておく。
【0027】
この記憶された伝達特性H3,G2と、制御が開始された時点から得られるリファレンスマイク13及び第1エラーマイク14との情報に基づいて演算を行い、スピーカ12からの出力を決定する。
【0028】
ここで、制御装置20における制御原理について説明する。図3は騒音源Sから第2エラーマイク15までの騒音及び制御音の伝達特性を表す説明図である。ここで、H1は騒音源Sからスピーカ12までの騒音についての伝達特性、H2はスピーカ12から第1エラーマイク14までの騒音についての伝達特性、H3は第1エラーマイク14から第2エラーマイク15までの騒音についての伝達特性を示している。一方、G1は騒音源Sから第1エラーマイク14までの制御音についての伝達特性、G2は第1エラーマイク14から第2エラーマイク15までの制御音についての伝達特性を示している。
【0029】
ここで、第1エラーマイク14における騒音についての音圧レベルを低減化するような能動回折音制御を行うと、制御装置20において伝達特性W1を取得することができる。しかし、実際に低減すべきなのは受音位置Uにおける騒音の音圧レベルであるため、第2エラーマイク15までの伝達特性H3を含めた伝達特性W2を取得しなければ第2エラーマイク15が設置された受音位置Uの騒音は低減化されない。そこで、第1エラーマイク14と第2エラーマイク15の間の音の伝達特性H3,G2を予め計測してデータとして保持し、これらのデータと伝達特性W1とを用いて次式により伝達特性W2を決定する。
【0030】
W2 =W1 H3 −1・G2 …(1)
この伝達特性W2を用いると、あたかも第2エラーマイク15が受音位置Uに存在したかのような騒音制御が可能となる。
【0031】
図4は、上述した方法によって得られた結果の一例を示す図である。M1は伝達特性W1、M2は(伝達特性G2)/(伝達特性H3)、M3はM1及びM2から算出した伝達特性W2、M4は実際に第2エラーマイク15を用いて算出された伝達特性W2である。M3とM4とがほぼ等しいことから、本手法の実効性を有することがわかる。
【0032】
次に、第1エラーマイク14及び第2エラーマイク15の配置、すなわち遮音壁Kから距離をどの程度離間させるのかについて説明する。上述したように、伝達特性H3,G2を予め計測しデータとして保持すれば騒音制御可能であることとなるが、時間変化に伴って伝達特性H3,G2が予め計測したデータから変動する場合もある。例えば、第1エラーマイク14と第2エラーマイク15との間の距離が極端に離れている場合には、温度変化等に伴って伝達特性H3,G2が大きく変動し、騒音低減効果の減少が予想される。
【0033】
図5の(a)は1000[Hz]までの音を低減対象とした時の、第2エラーマイク15と遮音壁Kとの間の絶対距離と、騒音低減効果との関係を表したものである。このように第2エラーマイク15は遮音壁Kから離れるほど騒音低減効果は大きい。但し、実用的には3から4dB減程度が望ましいことから、0.3[m]以上、すなわち第2エラーマイク15は遮音壁Kから制御対象音の周波数の最短波長λより離れた場所に設置することが望ましいことが分かる。第2エラーマイク15が壁上端部から最短波長λより離れた場所に設置されることから、第1エラーマイク14は遮音壁Kの上端部から最短波長λの距離以内に配置する必要がある。
【0034】
図5の(b)は、1000[Hz]までの音を低減対象としたときの、第1エラーマイク14と遮音壁Kとの間の絶対距離と、第1エラーマイク14と第2エラーマイク15との間の相対距離と、これらに対する(伝達特性G2)/(伝達特性H3)のゲイン値との関係を示すグラフであり、図中E2はゲイン値の平均を表したものである。第1エラーマイク14と第2エラーマイク15との間の相対距離が大きいほど、伝達特性H3,G2の変動に敏感になるので、この値はできるだけ小さいこと(2dB以下程度)が好ましい。このグラフから、第1エラーマイク14を遮音壁Kから制御対象周波数の最短波長λ以内に設置した場合には、第1エラーマイク14と第2エラーマイク15との間の相対距離は波長λの2波長以内にあることが望ましいことが分かる。
【0035】
上述したことから、例えば1000Hzまでを騒音制御対象の周波数と考えた場合、1波長は34cmとなる。このため、遮音壁Kから30cmあまりに第1エラーマイク14を設置することになり、一体型のものを容易に製造することができる。さらに第1エラーマイク14からさらに2波長(70cm)離れた場所にあたかも第2エラーマイク15が存在するかのような騒音制御が可能であり、この数十cmの違いが騒音低減領域、低減効果に大きな違いをもたらすことになる。
【0036】
上述したように本実施の形態に係る能動回折音制御装置10を用いることにより、遮音壁Kから離間し、かつ、騒音レベルを低下させたい位置である受音位置Uに第2エラーマイク15を実際に設置しない場合であっても、受音位置Uにおける騒音レベルを低下させることができる。すなわち、リファレンスマイク13、スピーカ12、第1エラーマイク14を遮音壁K近傍(数十cm程度)に設置するだけで、受音位置Uにおける騒音レベルを低下させることができる。このため、設置の自由度が広がる。さらに、リファレンスマイク13、スピーカ12、第1エラーマイク14を一体的な構造のものとすれば、図1に示すように、遮音壁Kの上端部に載置する等の簡単な方法で設置することができることから、設置利便性が向上する。
【0037】
図6は、上述した能動回折音制御装置10における運用例を示す説明図である。すなわち、実際に能動消音制御装置が取得する伝達特性W1と実際に騒音低減させるときに用いる伝達特性W2とは異なる状況下で取得する必要がある。このため、第1エラーマイク14の音圧レベルがゼロとなるように伝達特性W1を取得する同定区間と、第2エラーマイク15の音圧レベルがゼロとなるように伝達特性W2を適用して制御を行う制御区間とを別々に設定する必要がある。この同定区間は、W1を調整するに足りる十分な長さがあればよい。また、環境や伝達特性が大きく変化しないのであれば、最初に一度だけ伝達特性W1を取得し伝達特性W2を算出すれば十分である。
【0038】
図7は上述した能動回折音制御装置10を、建築物の壁材Lの開口部La等に適用した例である。能動回折音制御装置10は道路等に設置される遮音壁や防音壁に限られず、壁体であれば同じように適用することが可能である。したがって、建築物の開口部Laから外部に漏れ出す騒音を低減化することが可能である。
【0039】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではない。例えば、能動回折音制御装置は一体型のものについて説明したが、分離型であっても構わない。また、第2エラーマイクは伝達関数H3,G2取得後は撤去するとして説明したが、設置可能な条件を満たせば実際に設置してもよく、また、所定の条件を満たす場合、例えば伝達関数H3,G2が既知であるような場合には設置する必要がない。この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能であるのは勿論である。
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば、壁体から離間した受音位置にエラーマイクを配置することなく、壁体近傍にリファレンスマイク、エラーマイク、スピーカ等を設置するのみで受音位置における制御対象音の音圧レベルを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態係る能動回折音制御装置の概要を示す図であって、(a)は遮音壁に取付けた状態を示す斜視図、(b)は遮音壁Kに取付けた状態を示す側面図。
【図2】遮音壁、騒音源、受音位置及び能動回折音制御装置の相互の位置関係を模式的に示す説明図。
【図3】騒音源から第2エラーマイクまでの騒音及び制御音の伝達特性を表す説明図。
【図4】同能動回折音制御装置によって得られた制御結果の一例を示す図。
【図5】遮音壁、第1エラーマイク、第2エラーマイク相互の位置関係と、騒音低減量、ゲインとの関係を示す図。
【図6】同能動回折音制御装置における同定区間と制御区間との関係を示す説明図。
【図7】同能動回折音制御装置を建築物開口部に適用した例を示す斜視図。
【図8】エラーマイクの位置と騒音低減効果との関係を示す説明図。
【図9】騒音レベルと距離との関係を示す説明図。
【符号の説明】
S…騒音源
U…受音位置
P…騒音領域
Q…受音領域
10…能動回折音制御装置
11…本体部
12…スピーカ(制御音源)
13…リファレンスマイク(音源計測手段)
14…第1エラーマイク(直接制御対象音計測手段)
15…第2エラーマイク(仮想制御対象音計測手段)
20…制御装置(制御対象音制御手段)
【発明の属する技術分野】
本発明は、本発明は、特に防音や遮音のために設置される壁を回折して到達する騒音等の制御対象音を低減化する能動回折音制御装置に関し、特に設置スペースを小さくできるものに関する。
【0002】
【従来の技術】
騒音(制御対象音)を生じる騒音源のある騒音源領域と、騒音を低減させたい受音領域との間に壁を設けることで、防音や遮音を達成することは建築物騒音対策や道路騒音対策等において一般に用いられる遮音技術である。また、スピーカ(制御音源)から発生した音で騒音を低減する能動騒音制御技術は、騒音をフィードフォワード制御して低減する技術として知られている。
【0003】
遮音壁を設置したとしても、これらの壁体を乗り越えて回折してくる騒音が存在することから、回折音に対して、一般的な能動騒音制御技術を適用するという方法(例えば、特許文献1参照)が提案されている。この方法では、遮音壁の騒音源側に設置された騒音源計測センサと制御音源を用いて、騒音計測センサで検出する音圧レベルを低減化することによって、壁体の受音領域側における回折音の低減化が行われている。しかし、この方法を用いると遮音壁から離れた場所に騒音源計測センサと制御音源を設置する必要があり、騒音源と遮音壁との間にそれらを設置する空間が必要であった。
【0004】
この理由を説明する。図8の(a)〜(d)は、前述した能動騒音制御技術を適用した結果を示す図である。図8の(a)におけるY−Z平面の0〜1000[Hz]バンドの音圧分布である。能動騒音制御手法についてはよく知られているFiltered−X手法などを適用できる。
【0005】
壁による回折効果がもたらす騒音低減に加えて、制御音源が出力する音によって騒音が相殺されることによって騒音が低減される。遮音壁から近いエラーマイクM1を用いて行われた結果Q1と、遮音壁から比較的遠いエラーマイクM2を用いて行われた結果Q2の差がQ3で表される。Q3が全て正であることから明らかなように、エラーマイクは遮音壁から離れているほうが騒音低減領域が広がるとともに、騒音低減効果が増すことは明らかである。
【0006】
これは一般的な音の減衰特性から判断しても明らかである。壁からある程度の距離にある騒音源からエラーマイクまでの距離に対して壁上端に設置されたスピーカからエラーマイクまでの距離は相対的に著しく短い。音のパワーは距離に対して距離の長さの二乗に反比例して減衰するため、距離が近い場所ではその勾配が急峻であり、このポイントで騒音源からと制御音源からのゲインをあわせこんだとしてもそこから先の領域でのパワーの差は著しく、エラーマイクの場所のみが騒音低減化されるだけで、騒音低減領域はごくわずかに限られる。
【0007】
図9の(a),(b)は、上述した現象を簡単に説明したものである。すなわち、図9の(a)に示すように、遮音壁から近い場所で交差させた場合、交差以降における音のパワーの差が大きくなる。一方、図9の(b)に示すように、遮音壁から遠い場所で交差させた場合には、交差以降における音のパワーの差がのように小さくなる。以上のことから、回折された音が到達する領域において騒音低減の効果を高めるにはエラーマイクは遮音壁から離して設置したほうが好ましいことがわかる。
【0008】
なお、上述した能動回折音制御方法の他にも各種方法が考えられている。例えば、遮音壁の上端に回折音を抑制するスピーカを設置する方法(例えば、特許文献2参照)では、壁上端にスピーカ(制御音源)を設置することが記載され、そのスピーカの大きさと向きについて限定してあるが、そのスピーカに対して、受音領域におけるどの場所の騒音を低減化するためにどのように処理された信号を出力させるかについての具体的な記述はない。
【0009】
また、遮音壁の上端に設置され、観測された騒音の位相を反転して出力する方法(例えば、特許文献3参照)では、騒音源計測手段と制御音源を一体化させ、観測された騒音の位相を反転させて制御音源に出力するようにしている。この方法においては、騒音源計測手段と制御音源との間の音の伝達特性における位相をどのように反転させるのかについては明らかにされていない。
【0010】
さらに、遮音壁の上端ではなく、騒音源側表面付近にスピーカを設置する方法(例えば、特許文献4参照)では、回折音だけでなく直接音を低減するためのスピーカ設置方法とその制御出力演算について記載されている。この方法においては、受音側の騒音を低減させたい領域と騒音計測場所との間の関係について明らかにされていない。
【0011】
【特許文献1】
特公平7−82347号公報(第2頁及び第1図)
【0012】
【特許文献2】
特開平9−54593号公報(第2頁及び第1図)
【0013】
【特許文献3】
特開平7−234689号公報(図1及び図3)
【0014】
【特許文献4】
特開2001−172925号公報(図2及び図7)
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
上述した能動回折音制御装置であると次のような問題があった。すなわち、従来の回折して到達する騒音を低減化する能動騒音制御技術においては、制御音源を騒音源側に壁から離れた場所に設置する必要があるという空間的な制約をもつ問題があった。しかし、一般に遮音壁の両側にそのような設置スペースが存在しないことが多い。既設の遮音壁に付加的にこの回折音制御装置を設置するような場合、設置のための新たなスペースの確保や、エラーマイクを支える長い支柱等が必要になる。
【0016】
また、遮音壁上端に制御音源たるスピーカを設置されたとしても、その制御方法が明確にされていない。さらに、遮音壁近傍に配せられた騒音計測場所の騒音を低減化した場合、遮音壁の受音側でどのように騒音低減化領域が形成されるかが明らかにされておらず、効果範囲が定まらないという問題があった。
【0017】
そこで本発明は、壁体から離間した受音位置にエラーマイクを配置することなく、壁体近傍にリファレンスマイク、エラーマイク、スピーカ等を設置するのみで受音位置における制御対象音の音圧レベルを低減することができる能動回折音制御装置を提供することを目的としている。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決し目的を達成するために、本発明の能動回折音制御装置は次のように構成されている。
【0019】
(1)制御対象音源領域と受音領域との間に設けられた壁体に取付けられるとともに、前記制御対象音源領域で発生した制御対象音を低減させる能動回折音制御装置において、前記壁体の前記制御対象音源領域側に配置され、前記壁体の近傍における制御対象音情報を計測する音源計測手段と、前記壁体の前記受音領域側に配置され、前記壁体の近傍における制御対象音情報を計測する直接制御対象音計測手段と、前記壁体近傍に設置され、前記受音領域の仮想制御対象音計測位置における制御対象音を低減化するための制御音を発生する制御音源と、前記制御対象音計測手段からの出力に基づいて、前記制御音の出力を制御する制御対象音制御手段とを備え、前記制御対象音制御手段は、制御対象音源に関する前記直接制御対象音計測位置と前記仮想制御対象音計測位置間の第1音伝達特性と、前記制御音源に関する前記直接制御対象音計測位置と前記仮想制御対象音計測位置間の第2音伝達特性とに基づいて演算するものであることを特徴とする。
【0020】
(2)上記(1)に記載された能動回折音制御装置であって、前記制御対象音制御手段は、制御音を発生させる制御区間と、前記制御対象音源に関する前記制御対象音源計測手段と前記直接音計測手段との間の第3音伝達特性を得るための同定区間とを交互に行うものであることを特徴とする。
【0021】
(3)上記(1)に記載された能動回折音制御装置であって、前記音源計測手段と前記直接制御対象音計測手段と前記制御音源とが一体として構成され、前記壁体に対して、着脱自在に設置できることを特徴とする。
【0022】
(4)上記(1)に記載された能動回折音制御装置であって、前記制御音源は壁体上端部に設置され、前記直接制御対象音計測手段は、前記壁上端部から前記制御対象音の周波数の最短波長の距離以内に設置されていることを特徴とする。
【0023】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の一実施の形態に係る能動回折音制御装置10の概要を示す図であって、(a)は能動回折音制御装置10を遮音壁Kに取付けた状態を示す斜視図、(b)は遮音壁Kに取付けた状態を示す側面図である。また、図2は、遮音壁K、騒音源S及び能動回折音制御装置10の相互の位置関係を模式的に示す説明図である。なお、Sは騒音源、Uは受音位置、Pは騒音領域、Qは受音領域を示している。
【0024】
能動回折音制御装置10は、遮音壁Kに取付けられる本体部11と、この本体部11に設けられたスピーカ(制御音源)12と、本体部11からアーム11aを介して取付けられるとともに、騒音領域Pに配置され騒音源Sからの騒音を直接計測するリファレンスマイク(音源計測手段)13と、本体部11からアーム11bを介して取付けられるとともに、受音領域Qに配置され騒音源Sからの騒音を直接計測する第1エラーマイク(直接制御対象音計測手段)14と、本体部11内部に設けられ、リファレンスマイク13及び第1エラーマイク14からの入力に基づいてスピーカ12からの制御音の出力レベルを算出する制御装置(制御対象音制御手段)20とを備えている。
【0025】
なお、第1エラーマイク14を支持するアーム11bは、遮音壁Kから第1エラーマイク14までの距離が制御対象音の周波数の最短波長の距離以内に設置されている。例えば、制御対象音の周波数が最大1000Hzの場合には、最短波長は約34cmとなる。リファレンスマイク13を支持するアーム11aも同様の長さとすれば、リファレンスマイク13、スピーカ12、第1エラーマイク14はすべて遮音壁Kから近傍(数十cm以内)に設置されることになり、一体化された状態で設置することが可能である。
【0026】
制御装置20は、リファレンスマイク13及び第1エラーマイク14からの入力に基づいてスピーカ12からの制御音の出力レベルを算出する際、伝達特性H3,G2を用いる。すなわち、伝達特性H3,G2は、能動回折音制御装置10による制御対象音の制御を行う前の段階で、受音位置Uに第2エラーマイク15を設置し、伝達特性H3,G2を取得し、制御装置20内部に記憶しておく。
【0027】
この記憶された伝達特性H3,G2と、制御が開始された時点から得られるリファレンスマイク13及び第1エラーマイク14との情報に基づいて演算を行い、スピーカ12からの出力を決定する。
【0028】
ここで、制御装置20における制御原理について説明する。図3は騒音源Sから第2エラーマイク15までの騒音及び制御音の伝達特性を表す説明図である。ここで、H1は騒音源Sからスピーカ12までの騒音についての伝達特性、H2はスピーカ12から第1エラーマイク14までの騒音についての伝達特性、H3は第1エラーマイク14から第2エラーマイク15までの騒音についての伝達特性を示している。一方、G1は騒音源Sから第1エラーマイク14までの制御音についての伝達特性、G2は第1エラーマイク14から第2エラーマイク15までの制御音についての伝達特性を示している。
【0029】
ここで、第1エラーマイク14における騒音についての音圧レベルを低減化するような能動回折音制御を行うと、制御装置20において伝達特性W1を取得することができる。しかし、実際に低減すべきなのは受音位置Uにおける騒音の音圧レベルであるため、第2エラーマイク15までの伝達特性H3を含めた伝達特性W2を取得しなければ第2エラーマイク15が設置された受音位置Uの騒音は低減化されない。そこで、第1エラーマイク14と第2エラーマイク15の間の音の伝達特性H3,G2を予め計測してデータとして保持し、これらのデータと伝達特性W1とを用いて次式により伝達特性W2を決定する。
【0030】
W2 =W1 H3 −1・G2 …(1)
この伝達特性W2を用いると、あたかも第2エラーマイク15が受音位置Uに存在したかのような騒音制御が可能となる。
【0031】
図4は、上述した方法によって得られた結果の一例を示す図である。M1は伝達特性W1、M2は(伝達特性G2)/(伝達特性H3)、M3はM1及びM2から算出した伝達特性W2、M4は実際に第2エラーマイク15を用いて算出された伝達特性W2である。M3とM4とがほぼ等しいことから、本手法の実効性を有することがわかる。
【0032】
次に、第1エラーマイク14及び第2エラーマイク15の配置、すなわち遮音壁Kから距離をどの程度離間させるのかについて説明する。上述したように、伝達特性H3,G2を予め計測しデータとして保持すれば騒音制御可能であることとなるが、時間変化に伴って伝達特性H3,G2が予め計測したデータから変動する場合もある。例えば、第1エラーマイク14と第2エラーマイク15との間の距離が極端に離れている場合には、温度変化等に伴って伝達特性H3,G2が大きく変動し、騒音低減効果の減少が予想される。
【0033】
図5の(a)は1000[Hz]までの音を低減対象とした時の、第2エラーマイク15と遮音壁Kとの間の絶対距離と、騒音低減効果との関係を表したものである。このように第2エラーマイク15は遮音壁Kから離れるほど騒音低減効果は大きい。但し、実用的には3から4dB減程度が望ましいことから、0.3[m]以上、すなわち第2エラーマイク15は遮音壁Kから制御対象音の周波数の最短波長λより離れた場所に設置することが望ましいことが分かる。第2エラーマイク15が壁上端部から最短波長λより離れた場所に設置されることから、第1エラーマイク14は遮音壁Kの上端部から最短波長λの距離以内に配置する必要がある。
【0034】
図5の(b)は、1000[Hz]までの音を低減対象としたときの、第1エラーマイク14と遮音壁Kとの間の絶対距離と、第1エラーマイク14と第2エラーマイク15との間の相対距離と、これらに対する(伝達特性G2)/(伝達特性H3)のゲイン値との関係を示すグラフであり、図中E2はゲイン値の平均を表したものである。第1エラーマイク14と第2エラーマイク15との間の相対距離が大きいほど、伝達特性H3,G2の変動に敏感になるので、この値はできるだけ小さいこと(2dB以下程度)が好ましい。このグラフから、第1エラーマイク14を遮音壁Kから制御対象周波数の最短波長λ以内に設置した場合には、第1エラーマイク14と第2エラーマイク15との間の相対距離は波長λの2波長以内にあることが望ましいことが分かる。
【0035】
上述したことから、例えば1000Hzまでを騒音制御対象の周波数と考えた場合、1波長は34cmとなる。このため、遮音壁Kから30cmあまりに第1エラーマイク14を設置することになり、一体型のものを容易に製造することができる。さらに第1エラーマイク14からさらに2波長(70cm)離れた場所にあたかも第2エラーマイク15が存在するかのような騒音制御が可能であり、この数十cmの違いが騒音低減領域、低減効果に大きな違いをもたらすことになる。
【0036】
上述したように本実施の形態に係る能動回折音制御装置10を用いることにより、遮音壁Kから離間し、かつ、騒音レベルを低下させたい位置である受音位置Uに第2エラーマイク15を実際に設置しない場合であっても、受音位置Uにおける騒音レベルを低下させることができる。すなわち、リファレンスマイク13、スピーカ12、第1エラーマイク14を遮音壁K近傍(数十cm程度)に設置するだけで、受音位置Uにおける騒音レベルを低下させることができる。このため、設置の自由度が広がる。さらに、リファレンスマイク13、スピーカ12、第1エラーマイク14を一体的な構造のものとすれば、図1に示すように、遮音壁Kの上端部に載置する等の簡単な方法で設置することができることから、設置利便性が向上する。
【0037】
図6は、上述した能動回折音制御装置10における運用例を示す説明図である。すなわち、実際に能動消音制御装置が取得する伝達特性W1と実際に騒音低減させるときに用いる伝達特性W2とは異なる状況下で取得する必要がある。このため、第1エラーマイク14の音圧レベルがゼロとなるように伝達特性W1を取得する同定区間と、第2エラーマイク15の音圧レベルがゼロとなるように伝達特性W2を適用して制御を行う制御区間とを別々に設定する必要がある。この同定区間は、W1を調整するに足りる十分な長さがあればよい。また、環境や伝達特性が大きく変化しないのであれば、最初に一度だけ伝達特性W1を取得し伝達特性W2を算出すれば十分である。
【0038】
図7は上述した能動回折音制御装置10を、建築物の壁材Lの開口部La等に適用した例である。能動回折音制御装置10は道路等に設置される遮音壁や防音壁に限られず、壁体であれば同じように適用することが可能である。したがって、建築物の開口部Laから外部に漏れ出す騒音を低減化することが可能である。
【0039】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではない。例えば、能動回折音制御装置は一体型のものについて説明したが、分離型であっても構わない。また、第2エラーマイクは伝達関数H3,G2取得後は撤去するとして説明したが、設置可能な条件を満たせば実際に設置してもよく、また、所定の条件を満たす場合、例えば伝達関数H3,G2が既知であるような場合には設置する必要がない。この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能であるのは勿論である。
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば、壁体から離間した受音位置にエラーマイクを配置することなく、壁体近傍にリファレンスマイク、エラーマイク、スピーカ等を設置するのみで受音位置における制御対象音の音圧レベルを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態係る能動回折音制御装置の概要を示す図であって、(a)は遮音壁に取付けた状態を示す斜視図、(b)は遮音壁Kに取付けた状態を示す側面図。
【図2】遮音壁、騒音源、受音位置及び能動回折音制御装置の相互の位置関係を模式的に示す説明図。
【図3】騒音源から第2エラーマイクまでの騒音及び制御音の伝達特性を表す説明図。
【図4】同能動回折音制御装置によって得られた制御結果の一例を示す図。
【図5】遮音壁、第1エラーマイク、第2エラーマイク相互の位置関係と、騒音低減量、ゲインとの関係を示す図。
【図6】同能動回折音制御装置における同定区間と制御区間との関係を示す説明図。
【図7】同能動回折音制御装置を建築物開口部に適用した例を示す斜視図。
【図8】エラーマイクの位置と騒音低減効果との関係を示す説明図。
【図9】騒音レベルと距離との関係を示す説明図。
【符号の説明】
S…騒音源
U…受音位置
P…騒音領域
Q…受音領域
10…能動回折音制御装置
11…本体部
12…スピーカ(制御音源)
13…リファレンスマイク(音源計測手段)
14…第1エラーマイク(直接制御対象音計測手段)
15…第2エラーマイク(仮想制御対象音計測手段)
20…制御装置(制御対象音制御手段)
Claims (4)
- 制御対象音源領域と受音領域との間に設けられた壁体に取付けられるとともに、前記制御対象音源領域で発生した制御対象音を低減させる能動回折音制御装置において、
前記壁体の前記制御対象音源領域側に配置され、前記壁体の近傍における制御対象音情報を計測する音源計測手段と、
前記壁体の前記受音領域側に配置され、前記壁体の近傍における制御対象音情報を計測する直接制御対象音計測手段と、
前記壁体近傍に設置され、前記受音領域の仮想制御対象音計測位置における制御対象音を低減化するための制御音を発生する制御音源と、
前記制御対象音計測手段からの出力に基づいて、前記制御音の出力を制御する制御対象音制御手段とを備え、
前記制御対象音制御手段は、制御対象音源に関する前記直接制御対象音計測位置と前記仮想制御対象音計測位置間の第1音伝達特性と、
前記制御音源に関する前記直接制御対象音計測位置と前記仮想制御対象音計測位置間の第2音伝達特性とに基づいて演算するものであることを特徴とする能動回折音制御装置。 - 前記制御対象音制御手段は、制御音を発生させる制御区間と、前記制御対象音源に関する前記制御対象音源計測手段と前記直接音計測手段との間の第3音伝達特性を得るための同定区間とを交互に行うものであることを特徴とする請求項1に記載の能動回折音制御装置。
- 前記音源計測手段と前記直接制御対象音計測手段と前記制御音源とが一体として構成され、前記壁体に対して、着脱自在に設置できることを特徴とする請求項1に記載の能動回折音制御装置。
- 前記制御音源は壁体上端部に設置され、
前記直接制御対象音計測手段は、前記壁上端部から前記制御対象音の周波数の最短波長の距離以内に設置されていることを特徴とする請求項1に記載の能動回折音制御装置。
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