JP2004170704A - 光ファイバ、分散補償器及び光伝送路 - Google Patents
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Abstract
【課題】伝送用光ファイバの波長分散をより精度よく補償可能な光ファイバと、これを用いた分散補償器及び光伝送路を提供すること。
【解決手段】1535〜1565nm、1565〜1610nm、1554〜1608nm、または、1535〜1610nmの波長帯において波長分散が下に凸であると共に、当該波長帯において波長分散が負であることを特徴とする光ファイバである。従来のシングルモードファイバ等の伝送用光ファイバの波長分散は所定の波長帯で上に凸であるため、この波長帯で波長分散が下に凸となる分散補償光ファイバを用いることにより伝送用光ファイバの波長分散を好適に補償できる。
【選択図】 図1
【解決手段】1535〜1565nm、1565〜1610nm、1554〜1608nm、または、1535〜1610nmの波長帯において波長分散が下に凸であると共に、当該波長帯において波長分散が負であることを特徴とする光ファイバである。従来のシングルモードファイバ等の伝送用光ファイバの波長分散は所定の波長帯で上に凸であるため、この波長帯で波長分散が下に凸となる分散補償光ファイバを用いることにより伝送用光ファイバの波長分散を好適に補償できる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、波長分割多重光通信システム等に好適な光ファイバ、分散補償器及び光伝送路に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、伝送用光ファイバの1530〜1610nmの波長帯における波長分散を補償する分散補償器が開示されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
このような分散補償器により伝送用光ファイバの波長分散を補償した場合、伝送用光ファイバと分散補償器とを含む光伝送路の波長分散は、波長に対して二つの極値を有し、上に凸の部分と下に凸の部分とを有する。
【非特許文献1】
L. V. Jorgensen, et al., Next Generation Dispersion Compensating Modules for 40GBit/s, Proceedings of NFOEC2002, USA, Sept. 2002, P.262
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
最近では、光通信において伝送容量のさらなる拡大や高ビットレート化が求められている。このためには、分散補償光ファイバを用いて伝送用光ファイバの波長分散を広い波長帯でより精度よく補償する必要がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、伝送用光ファイバの波長分散をより精度よく補償可能な光ファイバと、これを用いた分散補償器及び光伝送路を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討した結果、シングルモードファイバ等の伝送用光ファイバの波長分散は所定の波長帯で上に凸であるため、その波長帯で波長分散が上に凸である従来の分散補償光ファイバを用いるより、その波長帯で波長分散が下に凸である分散補償光ファイバを用いる方が伝送用光ファイバの波長分散を好適に補償することができることを見出し、本発明に想到した。
【0007】
本発明に係る光ファイバは1535〜1565nmの波長帯において基底モードの波長分散が下に凸であると共に、この波長帯において波長分散が負であることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る他の光ファイバは、1565〜1610nmの波長帯において基底モードの波長分散が下に凸であると共に、この波長帯において波長分散が負であることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る他の光ファイバは、1554〜1608nmの波長帯において基底モードの波長分散が下に凸であると共に、この波長帯において波長分散が負であることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る他の光ファイバは、1535〜1610nmの波長帯において基底モードの波長分散が下に凸であると共に、この波長帯において波長分散が負であることを特徴とする。
【0011】
ここで、上記の光ファイバにおいて、上記波長帯にわたって、分散スロープが負であることが好ましい。
【0012】
また、上記波長帯の両端以外の波長で波長分散が最小値となってもよい。
【0013】
また、上記波長帯における波長分散の最大値と最小値との差の絶対値が10ps/nm/km以下であることが好ましい。
【0014】
また、60mmの内径のコイルとしたときの1550nmの波長における曲げによる伝送損失の増加量が0.1dB/km以下であることが好ましい。
【0015】
本発明に係る分散補償器は、上記光ファイバを筐体内に収納したことを特徴とする。
【0016】
上記分散補償器において、光ファイバは、内径40〜100mmのコイル状に巻かれたことが好ましい。
【0017】
また、上記の光ファイバと接続され、1550nmの波長における分散スロープが−0.2ps/nm2/km以下である第二光ファイバを備えることが好ましい。
【0018】
また、上記の光ファイバと接続され、1550nmの波長における分散スロープが−0.5ps/nm2/km以下である第二光ファイバを備えてもよい。
【0019】
本発明に係る光伝送路は、上記の分散補償器と、この分散補償器と接続され1535〜1610nmの波長帯における波長分散が正である伝送用光ファイバと、を備えることを特徴とする。
【0020】
なお、本明細書において、光ファイバの長さをLとし、長さLの光ファイバを波長λの光が伝播時間T(λ)で伝播する場合、この光ファイバの波長分散Dは(1/L)・(∂T/∂λ)と定義される。また、分散スロープSは、(∂2T/∂λ2)と定義される。さらに、総波長分散はD・L、総分散スロープはS・Lと定義される。
【0021】
そして、波長分散Dが波長帯λ1〜λ2(λ1<λ2)の範囲で下に凸とは、D(λ)をY軸に、λをX軸に表した場合に、波長λ1<λ<λ2の範囲内では、波長分散D(λ)が、D(λ1)とD(λ2)とを結ぶ直線よりも下にある、すなわち、D(λ)<D(λ1)+((D(λ2)―D(λ1)/(λ2−λ1))×(λ−λ1)となることである。
【0022】
また、波長分散Dが波長帯λ1〜λ2(λ1<λ2)の範囲で上に凸とは、D(λ)をY軸に、λをX軸に表した場合に、波長λ1<λ<λ2の範囲内では、波長分散D(λ)が、D(λ1)とD(λ2)とを結ぶ直線よりも上にある、すなわち、D(λ)>D(λ1)+((D(λ2)―D(λ1)/(λ2−λ1))×(λ−λ1)となることである。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0024】
(第一実施形態)
本実施形態に係る分散補償光ファイバを説明する。図1は、本実施形態に係る分散補償光ファイバA,B,Cの波長分散を説明する図である。図1に示すように、本実施形態に係る分散補償光ファイバA,B,Cは、1520〜1620nmにわたる広い波長帯で、基底モードの波長分散が下に凸となると共に、波長分散が負となっている。
【0025】
ここで、この1520〜1620nmの波長帯は、Cバンド(波長帯1535〜1565nm)、Lバンド(波長帯1565〜1610nm)、拡張Lバンド(波長帯1554〜1608nm)、及び、C及びLバンド(波長帯1535〜1610nm)を含んでいる。
【0026】
従来のシングルモードファイバ等の伝送用光ファイバの基底モードの波長分散は上に凸であるため、各波長域で波長分散が上に凸である従来の分散補償ファイバを用いて光伝送路の波長分散を補償すると、光伝送路全体の波長分散は上に凸となってしまい好適な分散補償ができない場合があった。
【0027】
ところが、本実施形態に係る、基底モードの波長分散が下に凸でありかつ負である分散補償光ファイバによれば、光伝送路の波長分散を好適に補償することができる。
【0028】
ここで、これらの分散補償光ファイバA,B,Cでは、1520〜1620nmにわたる広い波長帯で、波長分散が下に凸となると共に波長分散が負となっているが、伝送用光ファイバの使用波長帯域に応じて、Cバンドのみ、Lバンドのみ、拡張Lバンドのみ、または、C及びLバンドのみで、波長分散が下に凸となると共に波長分散が負となっていてもよい。
【0029】
このような分散補償光ファイバを用いた伝送用光ファイバの波長分散の補償としては、第一には、各波長帯にわたって分散スロープを含めて波長分散を補償し補償後の光伝送路全体の波長分散の絶対値を各波長帯にわたってほぼ0にする補償が挙げられ、また、第二には、分散スロープを残したまま光伝送路の波長分散の絶対値を各波長帯にわたって減少させる補償があげられる。次に、第一、第二それぞれの場合においてより好適な分散補償光ファイバについて説明する。
【0030】
まず、第一の場合である、伝送用光ファイバの波長分散を分散スロープも含めて補償する場合の分散補償光ファイバの好適な条件について説明する。
【0031】
本実施形態の分散補償光ファイバのみを伝送用光ファイバと接続することによって、分散補償ファイバと伝送用光ファイバとを含む光伝送路の波長分散を上記の各波長帯にわたってほぼ0に補償することができる。この場合、分散補償光ファイバは、図1のBのように、上述のCバンド、Lバンド、拡張Lバンド、又は、C及びLバンドの波長帯において負の分散スロープを有する、すなわち、波長分散が波長と共に単調減少するものであることが好ましい。これによれば、この分散補償光ファイバのみで、各波長帯にわたって波長分散が上に凸である伝送用光ファイバの波長分散を好適に補償できる。
【0032】
また、本実施形態に係る分散補償光ファイバと、各波長帯において波長分散が上に凸かつ負である従来型の分散補償光ファイバと、を組み合わせて伝送用ファイバを含む光伝送路の波長分散を上記の各波長帯においてほぼ0に補償することもできる。
【0033】
この場合も、分散補償光ファイバは、図1のBのように、上述のCバンド、Lバンド、拡張Lバンド、又は、C及びLバンドの波長帯において負の分散スロープを有していてもよい。
【0034】
また、このように2つの分散補償光ファイバを組み合わせて波長分散が正の伝送用光ファイバの波長分散を補償する場合には、伝送用光ファイバの分散スロープを主として従来型分散補償光ファイバで補償する一方、伝送用ファイバの各波長帯での波長分散の絶対値を引き下げるような補償を本実施形態に係る分散補償光ファイバで行ってもよい。
【0035】
この場合、本実施形態に係る分散補償光ファイバは、分散スロープが0になる波長があってもよい。言い換えると、例えば、図1のA,Cのように波長分散の最小値が波長帯の両端以外にあってもよい。
【0036】
この図1のA,Cのような分散光ファイバの場合、各波長帯における波長分散の最大値と最小値との差の絶対値を大きくすると、従来型分散補償光ファイバと組み合わせる本実施形態に係る分散補償光ファイバを短くでき、分散補償器(詳しくは後述)を小さくできて好ましい。ここで、最大値と最小値との差は10ps/nm/km以上であることが好ましい。
【0037】
具体的には、例えば、図1の分散補償光ファイバCの方が、図1の分散補償光ファイバAよりも波長分散の最大値と最小値との差が大きいので、従来型の分散補償光ファイバと組み合わせるのに好適である。
【0038】
従来型分散補償光ファイバを伝送用光ファイバと接続して、120kmの光伝送路のC及びLバンドの残留波長分散を、例えば、0.2ps/nm/km以下等の、問題ない程度の小さな値とすることは従来は困難であった。ここで、ある波長帯の残留波長分散とは、当該波長帯の波長分散の最大値と最小値との差の絶対値である。
【0039】
しかしながら、本実施形態の分散補償光ファイバと従来型分散補償光ファイバとを組み合わせて伝送用光ファイバと接続して、光伝送路の波長分散の補償を行うと、光伝送路の波長分散曲線は、波長に対して従来より水平な直線に近づく。
【0040】
従って、C及びLバンドでの波長分散が正の値、例えば、1550nmの波長における波長分散が16〜21ps/nm/km、である伝送用シングルモード光ファイバに本実施形態の分散補償光ファイバと従来型分散補償光ファイバとを接続して光伝送路の分散補償を行った場合、光伝送路のC及びLバンドでの残留波長分散は、従来にない小さな値、例えば、0.2ps/nm/km以下とすることができる。
【0041】
また、100kmの伝送用シングルモードファイバに、本実施形態の分散補償光ファイバと従来型分散補償光ファイバとを接続して光伝送路を成せば、Cバンド、Lバンド、拡張Lバンド、または、C及びLバンドの波長帯で、残留波長分散を0.2ps/nm/km以下とすることもできる。このような伝送路では、40Gbpsの伝送速度で信号を伝送できる。
【0042】
次に、第二の場合である、本実施形態に係る分散補償光ファイバを用いて伝送用光ファイバの波長分散の絶対値を各波長帯にわたって減少させるような補償について説明する。
【0043】
例えば、距離の短い光伝送ファイバ(例えば50km程度)を含む光伝送路の波長分散を補償する場合、必ずしも光伝送路の分散スロープを補償して、各波長帯に亘って波長分散をほぼ0とする必要はなく、各波長帯の波長分散が減算されるような補償を行った方が、光伝送路の設計が容易となる場合がある。
【0044】
また、距離の長い光伝送ファイバ(例えば、数千km)を含む光伝送路の波長分散を補償する場合は、分散補償器を光伝送路に複数配置するが、それでも補償後の光伝送路に、特定の波長帯における大きな波長分散が残る場合がある。この場合、残留する分散が大きく所望の伝送速度が得られなかった波長帯においては、その波長帯を個別に分散補償する必要があるが、この場合もその個別の波長帯にわたって、波長分散を減算するような分散補償を行った方がよい。
【0045】
このように各波長帯において波長分散を減算する補償をする場合は、本実施形態の分散補償光ファイバのみを正の波長分散を有する伝送用光ファイバと接続して分散補償することが好ましい。
【0046】
また、分散補償光ファイバは、波長分散が上記の各波長帯において平坦であることが好ましい。言い換えると、波長分散の最大値と最小値との差の絶対値が小さいことが好ましい。例えば、波長分散の最小値が各波長帯の両端以外にあると、各波長帯における波長分散の最大値と最小値との差の絶対値を小さくし易い。具体的には、最大値と最小値との差の絶対値が10ps/nm/km未満であることが好ましい。図1において、Cの波長分散特性を有する分散補償光ファイバCよりもAの波長分散特性を有する分散補償光ファイバAが好ましい。
【0047】
また、各波長帯の中間の波長で波長分散が最小値となることが好ましい。これによれば、各波長帯の両端での波長分散がほぼ同じとなるので、この波長帯の分散スロープが0に近くなりやすい。
【0048】
以下、さらに、上記第一の場合及び第二の場合も含めて、本実施形態に係る分散補償光ファイバのより好適な条件について説明する。
【0049】
本実施形態に係る分散補償光ファイバにおいて、各波長帯において、波長分散が−100ps/nm/km以下であることが好ましい。波長分散の値を低くすることで、伝送用光ファイバの波長分散の補償に必要な分散補償光ファイバの長さを短くすることができ、分散補償器を小さくすることができる。
【0050】
また、本実施形態に係る分散補償光ファイバにおいて、コアとクラッドとを含むガラス部分の径(以下ガラス径とする)を60〜125μmとし、このガラス部分を被覆する被服の厚さを15〜65μmとすることが好ましい。ガラス部分の径を小さくして被服の厚さを薄くした細径の光ファイバであれば、当該光ファイバを巻いてコイルを形成し、このコイルを筐体内に収容した分散補償器において、光ファイバが占める容積を小さくできる。
【0051】
なお、分散補償器を収容する中継局内の場所に限りがあるため、分散補償器の小型化に対する市場の要求は強い。通常使用される分散補償光ファイバの被覆径は250μmであるが、本実施形態に係る分散補償光ファイバは、被覆径を90μm程度にまで細くできる。
【0052】
本実施形態に係る分散補償光ファイバは、さらに、曲げ径を40〜100mmとすることができる。曲げ径を小さくすることで、分散補償光ファイバを巻いてコイルとしたときに光ファイバが占める容積を小さくでき、このコイルを収納する筐体も小さくできる。すなわち、本実施形態の分散補償光ファイバを筐体に収容した分散補償器を小型化できる。
【0053】
本実施形態に係る分散補償光ファイバは、曲げ径を60mmとしても1550nmの波長における曲げによる伝送損失増加量(以下曲げ損失増加量とする)が0.1dB/km以下であり、曲げに対して優れた耐性を有する。
【0054】
なお、光ファイバを60mmの径のコイルに巻いたときの1550nmの波長における曲げ損失増加量が0.1dB/kmを超えると、そのコイルは損失が大きすぎて実用に向かない。ところが、本実施形態に係る分散補償光ファイバは、60mmの径に巻いたときの1550nmの波長における曲げ損失増加量を0.1dB/km以下にすることができる。40mmの径に巻いた場合でも1550nmの波長における曲げ損失増加量を0.1dB/km以下にすることができる。
【0055】
また、本実施形態に係る分散補償光ファイバにおいては、C及びLバンドの波長帯を使用する場合には、実効カットオフ波長を1.53μm以下にすることができる。
【0056】
次に、本実施形態に係る分散補償光ファイバの構成及び屈折率プロファイルの好適な例について図2(a)及び図2(b)を参照して説明する。図2(a)は、光ファイバ2の光軸と直交する断面を示し、図2(b)は、図2(a)中の線Lに沿った各ガラス領域の屈折率を示す屈折率プロファイルである。
【0057】
本実施形態に係る分散補償光ファイバ2は、光軸中心を含み屈折率n1を有するコア部211と、コア部211を取り囲みn1よりも低い屈折率n2を有する第一クラッド部212と、第一クラッド部212を取り囲みn2よりも高い屈折率n3を有する第二クラッド部213と、第二クラッド部213を取り囲みn3よりも低い屈折率n4を有する第三クラッド部214と、第三クラッド部214を取り囲むように設けられた被覆層220と、を備えることが好ましい。
【0058】
ここで、コア径を2a、第一クラッド径を2b、第二クラッド径を2c、第三クラッド径(ガラス径)をdとすると共に、第三クラッド部214の屈折率n4を基準としたときのコア部211の比屈折率差をΔn1、第三クラッド部214の屈折率n4を基準としたときの第一クラッド部212の比屈折率差をΔn2、第三クラッド部214の屈折率n4を基準としたときの第二クラッド部213の比屈折率差をΔn3とする。
【0059】
なお、比屈折率差Δn1は(n1−n4)/n4で与えられ、比屈折率差Δn2は(n2−n4)/n4で与えられ、比屈折率差Δn3は(n3−n4)/n4で与えられる。
【0060】
ここで、コア部211の比屈折率差Δn1が2.0〜4.0%であり、第一クラッド部212のΔn2が−0.2〜−0.9%であることが好ましい。
【0061】
さらに、第二クラッド部213のΔn3が0.2〜0.9%であると共に、コア径をA、第一クラッド径をB、第二クラッド径をCとしたときに、
0.2≦(A/C)<0.4 かつ 0.4≦(B/C)≦0.8
を満たすことが好ましい。
【0062】
(第二実施形態)
次に、本発明の実施形態に係る分散補償器について図3を参照して説明する。
【0063】
本実施形態に係る分散補償器19は、上述の実施形態に係る分散補償光ファイバ2と、従来型分散補償光ファイバ3と、を組み合わせて、伝送用光ファイバの波長分散を補償する分散補償器である。
【0064】
この分散補償器19は円筒状の筐体1内の中央に上記実施形態に係る分散補償光ファイバ2が巻回されたコイルが収納され、その周囲に従来型分散補償光ファイバ3が巻回されたコイルが収納され、これらのコイルは充填材7により保持されている。この分散補償器19において、各コイルは、予めボビンに巻き取られた状態から、ボビンを抜き去って光ファイバの固まり状のコイルとすると共に、このコイルをほぐして側圧を減じた状態で筐体1内に保持されている。2つの光ファイバ2、3の一端同士は融着接続部8で融着接続されている。充填材7の上で、融着接続部8等はさらに充填材11により保持されている。
【0065】
その製造に際しては、上述の実施形態に係る分散補償光ファイバ2のコイルと、従来型分散補償光ファイバ3のコイルを、筐体1内に収容した後、光ファイバ2,3の各々の両端を除いて充填材7を充填し、その後、分散補償光ファイバ2の一端と従来型分散補償光ファイバ3の一端とを融着接続する。このときの融着接続部8が図3中に示されている。融着接続後、融着接続部8の近傍には、余長部分12が確保される。さらに、分散補償光ファイバ2の他端と従来型分散補償光ファイバ3の他端には、端部にコネクタ(図示せず)が取り付けられたピグテールファイバ(不図示)を融着接続する。このときの融着接続部10も図3中に示されている。ピグテールファイバは、分散補償器19への光ファイバの接続を容易にするためのものである。さらに、これらの融着接続部8、10及び余長部分12を先ほど硬化させた充填材7の上部に載置させ、さらに、筐体1内に充填材11を充填させて硬化させ、融着接続部8,10及び余長部分12も充填材11によって保持させる。
【0066】
ここで、筐体1内のコイルは、ボビンに保持された状態でもよく、単にボビンが抜き取られた固まり状の状態であってもよい。また、図3においては、分散補償光ファイバ2のコイルの外径が、従来型分散補償光ファイバ3のコイルの内径よりも小さくされているが、分散補償光ファイバ2のコイルの内径を、従来型分散補償光ファイバ3のコイルの外径よりも大きくして分散補償光ファイバ2のコイルよりも内側に従来型分散補償光ファイバ3のコイルを配置してもよい。また、これら2つのコイルを筐体1内で上下に積むようにしてもよい。また、分散補償光ファイバ2と従来型分散補償型光ファイバ3とを各々別々の筐体に入れてもよい。
【0067】
なお、本実施形態においては、光ファイバ2,3をボビンに巻き取った状態、その状態からボビンを抜き去って光ファイバの固まりとした状態、または、ボビンを抜き去った後の光ファイバの固まりをほぐして各光ファイバ同士が及ぼしあう側圧を減じた場合の何れもをコイルと呼ぶ。
【0068】
本実施形態に係る分散補償器の分散補償光ファイバ2は、曲げ径を40〜100mmとすることが好ましい。曲げ径を小さくすることで、分散補償光ファイバを巻いてコイルとしたときに光ファイバが占める容積を小さくでき、このコイルを収納する筐体も小さくできる。すなわち、本実施形態の分散補償光ファイバを筐体に収容した分散補償器を小型化できる。
【0069】
ここで、本実施形態に係る分散補償光ファイバの曲げ径を40〜80mmとすることがより好ましく、40〜60mmとすることが一層好ましい。
【0070】
コイルの周囲及び内側に充填する充填材としては、柔らかい樹脂が好ましい。特に、JIS K 2220−1993の規定による1/4コーンを用いたときの硬化後のちょう度が、−20℃以上70℃以下の温度範囲で5以上200以下であることが好ましい。なお、充填材は、コイル内に浸透させることが好ましい。硬化前の粘度が常温で0.01〜0.6Pa・sである充填材を使用すると、コイルの周辺だけでなく光ファイバ同士の隙間にも充填材を容易に満たすことができ、光ファイバの一本一本を充填材によって覆うことができるので好適である。このような充填材としては、シリコーンゲル等が利用できる。また、充填材として、樹脂の代わりにスポンジ等のクッション材を筐体1内のコイルの周囲及び内側に入れてもよい。
【0071】
また、このような充填材の筐体1内への充填の仕方としては、光ファイバ同士の融着接続部8に不必要な外力がかからないように工夫することが好ましい。例えば、充填材7の上で融着接続部8や余長部分12に対して充填材11を導入して硬化させる際、充填材7の表面と融着接続部8や光ファイバの余長部分12とがなす角が、30度以下になるようにすることが好ましい。さらに、融着接続部8の前後の余長部分12の光ファイバの曲げ径を、例えば、60mm以上と大きくすることが好ましい。また、充填材11に代えて、融着接続部8や余長部分12を充填材7上に固定してもよい。
【0072】
このような分散補償器で用いる分散補償ファイバ2は、第一実施形態に係る分散補償光ファイバである。
【0073】
第1実施形態で述べたように、分散補償光ファイバ2と組み合わせて使用する従来型分散補償光ファイバ3の分散スロープは、伝送用光ファイバの分散スロープを補償する波長分散特性であることが好ましい。
【0074】
また、伝送用光ファイバが、非ゼロ分散シフトファイバのように分散スロープが大きな物であれば、従来型分散補償光ファイバ3として、分散スロープが小さく総分散スロープが大きいものとすることが好ましい。
【0075】
例えば、コーニング社のLEAF(登録商標)等のCバンドの通信光が伝送される非ゼロ分散シフト光ファイバの波長分散を補償する場合、分散補償光ファイバ2と組み合わせる従来型分散補償光ファイバ3は、分散スロープが1550nmにおいて、―0.5ps/nm2/km以下であることが好ましい。
【0076】
一方、上述のLEAF等のLバンド、拡張Lバンド、または、C及びLバンドの通信光が伝送される非ゼロ分散シフト光ファイバの波長分散を補償する場合には、分散補償光ファイバ2と組み合わせる従来型分散補償光ファイバ3は、1550nmにおける分散スロープが−0.2ps/nm2/km以下であることが好ましい。
【0077】
また、上記以外の伝送用光ファイバの波長分散を補償する場合でも、分散補償光ファイバ2と組み合わせる従来型分散補償光ファイバ3は、1550nmにおける分散スロープが−0.2ps/nm2/km以下であることが好ましい。
【0078】
また、第一実施形態に係る分散補償光ファイバ2のみを用いて波長分散が正の伝送用光ファイバの波長分散を補償する場合には、筐体1内に、分散補償光ファイバ2のコイルのみを収容した構成の分散補償器とすればよい。
【0079】
このような分散補償器において、短い伝送用光ファイバの波長分散を補償する場合は、上述の分散補償光ファイバの長さが短くてすむ。このため、分散補償器の大きさを小さくすることができる。
【0080】
例えば、補償する伝送用光ファイバの総波長分散が、1550nmにおいて−1200ps/nm以上−600ps/nm未満である場合は、分散補償器の体積を500cm3以下とすることができ、このとき、例えば、外寸を170mm以下×170mm以下×17mm以下とできる。
【0081】
また、補償する伝送用光ファイバの総波長分散が、1550nmにおいて−600ps/nm以上0ps/nm未満である場合は、分散補償器の体積を310cm3以下とすることができ、このとき、例えば、外寸を130mm以下×130mm以下×17mm以下とできる。
【0082】
また、補償する伝送用光ファイバの総波長分散が、1550nmにおいて−300ps/nm以上0ps/nm未満である場合は、分散補償器の体積を260cm3以下とすることができ、このとき、例えば、外寸を120mm以下×120mm以下×18mm以下とできる。
【0083】
さらに、補償する伝送用光ファイバの総波長分散が、1550nmにおいて−80ps/nm以上0ps/nm未満である場合は、分散補償器の体積を140cm3以下とすることができ、このとき、例えば、外寸を100mm以下×100mm以下×14mm以下とできる。
【0084】
以上説明したように、本実施形態に係る分散補償器によれば、上述の実施形態に係る分散補償光ファイバを用いているので、伝送用ファイバの波長分散を好適に補償することができる。
【0085】
(第3実施形態)
次に、図4を参照して、本実施形態に係る光伝送システム151について説明する。
【0086】
光伝送システム151は、C及びLバンドの信号光を送信する送信機53からこの信号光を受信する受信機57に到る信号光の伝送経路の少なくとも一部に、光伝送路170として伝送用光ファイバ55、中継器58及び中継器59を備えている。
【0087】
伝送用光ファイバ55は、上述のC及びLバンドで上に凸の波長分散を有するシングルモード光ファイバであり、C及びLバンドで波長分散が正の値である。
【0088】
中継器58は、送信機53からの信号光をCバンドとLバンドとに分光する分波器101と、分光された内のCバンドの信号光を増幅する光アンプ102と、分光された内のLバンドの信号光を増幅する光アンプ103と、光アンプ102及び光アンプ103で送信された信号光を合波して伝送用光ファイバ55に送る合波器104と、を備えている。
【0089】
中継器59は、伝送用光ファイバ55を伝播してきたC及びLバンドの信号光をCバンドとLバンドとに分光する分波器111と、分光された内のCバンドの信号光を増幅する光アンプ112と、光アンプ112で増幅された信号光が入射される上述の構成の分散補償器115と、分波器111で分光された内のLバンドの信号光を増幅する光アンプ113と、光アンプ113で増幅された信号光が入射される上述の構成の分散補償器116と、分散補償器115及び分散補償器116で送信された信号光を合波して受信機57に送る合波器114と、を有している。
【0090】
これらの光アンプ102、103、112、113としては、例えば、エルビウム添加光ファイバ(Erbium Doped optical−Fiber:EDF)等を用いたものが利用できる。
【0091】
送信機53からは、C及びLバンドの多波長の信号光が波長多重されて送出され、この信号光は、中継器58において各バンド毎に増幅され、伝送用光ファイバ55を伝搬する。そして、中継器59に到達した信号光は、再び、各バンド毎に増幅されると共に各バンド毎に分散補償器115、116によって分散補償が行われる。そして、分散補償がされた送信光は合波されて受信機57に到達する。そして、受信機20は、これら波長多重された多波長の信号光を分波して、各波長の信号光を受信する。
【0092】
このように構成される光伝送システム151における光伝送路170では、上述の構成の分散補償器115、116を備えるので、光伝送路170全体の波長分散を好適に補償することができる。このため、信号光の波形劣化を抑制することができる。具体的には、例えば、光伝送路170の各波長帯の残留波長分散を0.2ps/nm/km以下にできる。
【0093】
なお、このような分散補償器115、116は、光伝送路150km毎に少なくとも1つ配置することが好ましい。
【0094】
(実施例)
次に、上述の構成の分散補償光ファイバ、分散補償器、光伝送路を作成して評価した。
【0095】
(分散補償光ファイバの実施例F1,F2、分散補償光ファイバの参考例F3)分散補償光ファイバF1は、3重クラッド型であり、コア径2aを2.6μm、第一クラッド径2bを5.2μm、第二クラッド径2cを10.8μmとした。また、コア部の比屈折率差Δn1を2.8%、第一クラッド部の比屈折率差Δn2を−0.74%、第二クラッド部の比屈折率差Δn3を0.32%とした。
【0096】
この分散補償型光ファイバF1は、波長1520nmにおいて、波長分散が−172ps/nm/km、分散スロープが−0.16ps/nm2/kmであり、波長1550nmにおいて、波長分散が−176ps/nm/km、分散スロープが−0.08ps/nm2/km、モードフィールド径(MFD)が4.0μmであった。また、この分散補償型光ファイバF1の2mでの実効カットオフ波長は1.28μm、曲げ径40mmでの1550nmの波長における曲げ損失増加量は0.01dB/km以下、曲げ径60mmでの1550nmの波長における曲げ損失増加量は0.01dB/km以下であった。
【0097】
波長分散は、図1に示す通りであり、C及びLバンドにおいて、下に凸であると共に負であった。
【0098】
分散補償光ファイバF2も3重クラッド型であり、コア径2aを3.2μm、第一クラッド径2bを7.7μm、第二クラッド径2cを15.4μmとした。また、コア部の比屈折率差Δn1を2.8%、第一クラッド部の比屈折率差Δn2を−0.74%、第二クラッド部の比屈折率差Δn3を0.32%とした。
【0099】
この分散補償型光ファイバF2は、波長1520nmにおいて、波長分散が−249ps/nm/km、分散スロープが−0.64ps/nm2/kmであり、波長1550nmにおいて、波長分散が−263ps/nm/km、分散スロープが−0.28ps/nm2/km、モードフィールド径(MFD)が4.2μmであった。また、この分散補償型光ファイバF1の2mでの実効カットオフ波長は1.45μm、曲げ径40mmでの1550nmの波長における曲げ損失増加量は0.05dB/km以下、曲げ径60mmでの1550nmの波長における曲げ損失増加量は0.01dB/km以下であった。
【0100】
波長分散は、図2のCに示す通りであり、C及びLバンドにおいて、下に凸であると共に負であった。
【0101】
また、上記分散補償光ファイバF1,F2と組み合わせるための、C及びLバンドで波長分散が上に凸の従来型の分散補償ファイバとして次に示す分散補償光ファイバF3を用いた。
【0102】
この従来型分散補償光ファイバF3は3重クラッド型であり、コア径2aを4.3μm、第一クラッド径2bを11.0μm、第二クラッド径2cを15.4μmとした。また、コア部の比屈折率差Δn1を1.6%、第一クラッド部の比屈折率差Δn2を−0.50%、第二クラッド部の比屈折率差Δn3を0.30%とした。
【0103】
この従来型分散補償型光ファイバF3は、波長1520nmにおいて、波長分散が−61ps/nm/km、分散スロープが−0.25ps/nm2/kmであり、波長1550nmにおいて、波長分散が−70ps/nm/km、分散スロープが−0.36ps/nm2/km、モードフィールド径(MFD)が4.7μmであった。また、この従来型分散補償型光ファイバF3の2mでの実効カットオフ波長は1.40μm、曲げ径40mmでの1550nmの波長における曲げ損失増加量は0.5dB/km以下、曲げ径60mmでの1550nmの波長における曲げ損失増加量は0.02dB/km以下であった。
【0104】
波長分散は、図5のCに示す通りである。また、この分散補償光ファイバF1,F2及び従来型分散補償光ファイバF3の構成や特性を図6の表に示す。
【0105】
(分散補償器の実施例M1〜M8)
上述の光ファイバを用いて、分散補償器M1〜M8を作成した。
【0106】
(実施例M1)
分散補償器M1は、長さ1.7kmの分散補償光ファイバF1を用い、この分散補償光ファイバF1をボビンに巻き付けた後に当該ボビンから取り外してファイバ束状態とし、このコイルを筐体内に収容し、コイルを樹脂にて保持した構成のものである。また、分散補償光ファイバF1における第3クラッド部の外径(以下、ガラス径と言う)は80μmとし、被覆層も含んだ外径(以下、被覆径と言う)は140μmとした。樹脂はシリコーンゲルであり、このシリコーンゲルを70℃で2時間加熱することにより硬化させて、光ファイバF1のコイルを保持した。
【0107】
ボビンの分散補償光ファイバF1を巻き付ける巻胴部の外径(コイル状に巻回された分散補償光ファイバの巻内径に相当し、以下、巻胴径と言う)は40mmとした。この分散補償器M1の総波長分散は−300ps/nmであり、総分散スロープは−0.13ps/nm2であり、挿入損失は3.3dBであった。分散補償器M1の筐体の大きさは、120mm×120mm×18mmであった。
【0108】
(実施例M2)
分散補償器M2は、ガラス径を125μm、被覆径を185μmとした分散補償光ファイバF1を用いた以外は実施例1と同様の構成である。分散補償器M2の総分散値は−300ps/nmであり、総分散スロープは−0.13ps/nm2であり、挿入損失が3.3dBであった。分散補償器M2の筐体の大きさは、120mm×120mm×18mmであった。
【0109】
(実施例M3)
分散補償器M3は、長さ3.4kmの分散補償光ファイバF1を用いた以外は、実施例1と同様の波長分散器である。分散補償器M3の総波長は−600ps/nmであり、総分散スロープは−0.26ps/nm2であり、挿入損失が4.6dBであった。分散補償器M3の筐体の大きさは、130mm×130mm×17mmであった。
【0110】
(実施例M4)
分散補償器M4は、ガラス径を80μm、被覆径を185μmとし、長さを0.30kmとした分散補償光ファイバF2を用い、コイルの巻胴径を40mmとした以外は、実施例1と同様の分散補償器である。分散補償器M4の総分散値は−80ps/nmであり、総分散スロープは−0.08ps/nm2であり、挿入損失が2.1dBであった。分散補償器M4の筐体の大きさは、100mm×100mm×14mmであった。
【0111】
(実施例M5)
分散補償器M5は、ガラス径を125μm、被覆径を185μmとし、長さ1.14kmとした分散補償光ファイバF2を用いた以外は、実施例4と同様の構成の分散補償器である。分散補償器M5の総波長分散値は−300ps/nmであり、総分散スロープは−0.31ps/nm2であり、挿入損失が2.8dBである。分散補償器M5の筐体の大きさは、120mm×120mm×18mmであった。
【0112】
(実施例M6)
本例の分散補償器M6は、長さ2.28kmの分散補償光ファイバF2を用いた以外は実施例4と同様の分散補償器である。分散補償器M6の総波長分散値は−600ps/nmであり、総分散スロープは−0.63ps/nm2であり、挿入損失が3.7dBである。分散補償器M6の筐体の大きさは、130mm×130mm×17mmであった。
【0113】
(実施例M7)
本例の分散補償器M7は、長さ4.56kmの分散補償光ファイバF2を用いた以外は実施例4と同様の構成の分散補償器である。分散補償器M7の総波長分散値は−1200ps/nmであり、総分散スロープは−1.26ps/nm2であり、挿入損失が5.6dBである。分散補償器M7の筐体の大きさは、170mm×170mm×17mmであった。
【0114】
(実施例M8)
本例の分散補償器M8は、ガラス径を125μm、被覆径を185μm、長さを2.30kmとした分散補償光ファイバF2と、ガラス径を125μm、被覆径を185μm、長さを10.8kmとした従来型分散補償光ファイバF3とを融着接合し、各々のファイバを各々ボビンに巻き付けた後に当該ボビンから取り外して各々ファイバ束状態としたのち筐体内に収容し、実施例1と同様に樹脂を硬化させることにより光ファイバを保持した構成のものである。
【0115】
分散補償光ファイバF2の巻胴径を40mm、従来型分散補償光ファイバF3の巻胴径を120mm、従来型分散補償光ファイバF3のコイルの外径を200mmとし、従来型分散補償光ファイバF3内のコイルの内側に分散補償光ファイバF2のコイルを入れた状態とした。分散補償器M8の筐体の大きさは、220mm×230mm×40mmとした。
【0116】
分散補償光ファイバF2単体の総波長分散は−600ps/nmであり、総分散スロープは−0.63ps/nm2であり、従来型分散補償光ファイバF3単体の総分散値は−756ps/nmであり、総分散スロープは−3.88ps/nm2であった。また、分散補償器の総波長分散は−1360ps/nmであり、総分散スロープは−4.5ps/nm2であり、挿入損失は7dBであった。
【0117】
これら分散補償器M1〜M8の構成及び特性を図7の表に示す。また、分散補償器M8の波長分散を図8に示す。また、分散補償器M8を、100kmの伝送用シングルモードファイバと接続した場合の、光伝送路全体の波長分散を図9に示す。伝送用光ファイバの波長分散がC及びLバンドで好適に補償されたことがわかる。なお、この伝送用シングルモードファイバの波長分散を図5のEに示す。
【0118】
以上のように、本実施形態によれば、Cバンド、Lバンド、拡張Lバンド、または、C及びLバンドにおいて波長分散が下に凸かつ負である分散補償光ファイバを用いた分散補償器を用いることにより、光伝送路において波長分散を好適に補償することができる。また、コンパクトな波長分散器及び光伝送路を提供できる。
【0119】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形態様をとることが可能である。
【0120】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、伝送用光ファイバの波長分散をより精度よく補償可能な光ファイバと、これを用いた分散補償器及び光伝送路が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る分散補償光ファイバの波長分散を示す図である。
【図2】図2(a)は図1の分散補償光ファイバの断面構造を示す図であり、図2(b)は図1の分散補償光ファイバの屈折率プロファイルを示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る分散補償器を示す図である。
【図4】図3の分散補償器を用いた光伝送システムを示す概略構成図である。
【図5】実施例F3で用いる従来型分散補償光ファイバ及び伝送用光ファイバの波長分散を示す図である。
【図6】実施例F1、F2、参考例F3の光ファイバの特性を示す図表である。
【図7】実施例M1〜M8の分散補償器の特性を示す図表である。
【図8】実施例M8の分散補償器の波長分散を示す図である。
【図9】実施例M8の分散補償器を伝送用光ファイバに接続した場合の光伝送路全体の波長分散を示す図である。
【符号の説明】
1…筐体、2…分散補償光ファイバ(光ファイバ)、3…従来型分散補償光ファイバ(第二光ファイバ)、10…分散補償器、170…光伝送路、55…伝送用ファイバ。
【発明の属する技術分野】
本発明は、波長分割多重光通信システム等に好適な光ファイバ、分散補償器及び光伝送路に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、伝送用光ファイバの1530〜1610nmの波長帯における波長分散を補償する分散補償器が開示されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
このような分散補償器により伝送用光ファイバの波長分散を補償した場合、伝送用光ファイバと分散補償器とを含む光伝送路の波長分散は、波長に対して二つの極値を有し、上に凸の部分と下に凸の部分とを有する。
【非特許文献1】
L. V. Jorgensen, et al., Next Generation Dispersion Compensating Modules for 40GBit/s, Proceedings of NFOEC2002, USA, Sept. 2002, P.262
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
最近では、光通信において伝送容量のさらなる拡大や高ビットレート化が求められている。このためには、分散補償光ファイバを用いて伝送用光ファイバの波長分散を広い波長帯でより精度よく補償する必要がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、伝送用光ファイバの波長分散をより精度よく補償可能な光ファイバと、これを用いた分散補償器及び光伝送路を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討した結果、シングルモードファイバ等の伝送用光ファイバの波長分散は所定の波長帯で上に凸であるため、その波長帯で波長分散が上に凸である従来の分散補償光ファイバを用いるより、その波長帯で波長分散が下に凸である分散補償光ファイバを用いる方が伝送用光ファイバの波長分散を好適に補償することができることを見出し、本発明に想到した。
【0007】
本発明に係る光ファイバは1535〜1565nmの波長帯において基底モードの波長分散が下に凸であると共に、この波長帯において波長分散が負であることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る他の光ファイバは、1565〜1610nmの波長帯において基底モードの波長分散が下に凸であると共に、この波長帯において波長分散が負であることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る他の光ファイバは、1554〜1608nmの波長帯において基底モードの波長分散が下に凸であると共に、この波長帯において波長分散が負であることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る他の光ファイバは、1535〜1610nmの波長帯において基底モードの波長分散が下に凸であると共に、この波長帯において波長分散が負であることを特徴とする。
【0011】
ここで、上記の光ファイバにおいて、上記波長帯にわたって、分散スロープが負であることが好ましい。
【0012】
また、上記波長帯の両端以外の波長で波長分散が最小値となってもよい。
【0013】
また、上記波長帯における波長分散の最大値と最小値との差の絶対値が10ps/nm/km以下であることが好ましい。
【0014】
また、60mmの内径のコイルとしたときの1550nmの波長における曲げによる伝送損失の増加量が0.1dB/km以下であることが好ましい。
【0015】
本発明に係る分散補償器は、上記光ファイバを筐体内に収納したことを特徴とする。
【0016】
上記分散補償器において、光ファイバは、内径40〜100mmのコイル状に巻かれたことが好ましい。
【0017】
また、上記の光ファイバと接続され、1550nmの波長における分散スロープが−0.2ps/nm2/km以下である第二光ファイバを備えることが好ましい。
【0018】
また、上記の光ファイバと接続され、1550nmの波長における分散スロープが−0.5ps/nm2/km以下である第二光ファイバを備えてもよい。
【0019】
本発明に係る光伝送路は、上記の分散補償器と、この分散補償器と接続され1535〜1610nmの波長帯における波長分散が正である伝送用光ファイバと、を備えることを特徴とする。
【0020】
なお、本明細書において、光ファイバの長さをLとし、長さLの光ファイバを波長λの光が伝播時間T(λ)で伝播する場合、この光ファイバの波長分散Dは(1/L)・(∂T/∂λ)と定義される。また、分散スロープSは、(∂2T/∂λ2)と定義される。さらに、総波長分散はD・L、総分散スロープはS・Lと定義される。
【0021】
そして、波長分散Dが波長帯λ1〜λ2(λ1<λ2)の範囲で下に凸とは、D(λ)をY軸に、λをX軸に表した場合に、波長λ1<λ<λ2の範囲内では、波長分散D(λ)が、D(λ1)とD(λ2)とを結ぶ直線よりも下にある、すなわち、D(λ)<D(λ1)+((D(λ2)―D(λ1)/(λ2−λ1))×(λ−λ1)となることである。
【0022】
また、波長分散Dが波長帯λ1〜λ2(λ1<λ2)の範囲で上に凸とは、D(λ)をY軸に、λをX軸に表した場合に、波長λ1<λ<λ2の範囲内では、波長分散D(λ)が、D(λ1)とD(λ2)とを結ぶ直線よりも上にある、すなわち、D(λ)>D(λ1)+((D(λ2)―D(λ1)/(λ2−λ1))×(λ−λ1)となることである。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0024】
(第一実施形態)
本実施形態に係る分散補償光ファイバを説明する。図1は、本実施形態に係る分散補償光ファイバA,B,Cの波長分散を説明する図である。図1に示すように、本実施形態に係る分散補償光ファイバA,B,Cは、1520〜1620nmにわたる広い波長帯で、基底モードの波長分散が下に凸となると共に、波長分散が負となっている。
【0025】
ここで、この1520〜1620nmの波長帯は、Cバンド(波長帯1535〜1565nm)、Lバンド(波長帯1565〜1610nm)、拡張Lバンド(波長帯1554〜1608nm)、及び、C及びLバンド(波長帯1535〜1610nm)を含んでいる。
【0026】
従来のシングルモードファイバ等の伝送用光ファイバの基底モードの波長分散は上に凸であるため、各波長域で波長分散が上に凸である従来の分散補償ファイバを用いて光伝送路の波長分散を補償すると、光伝送路全体の波長分散は上に凸となってしまい好適な分散補償ができない場合があった。
【0027】
ところが、本実施形態に係る、基底モードの波長分散が下に凸でありかつ負である分散補償光ファイバによれば、光伝送路の波長分散を好適に補償することができる。
【0028】
ここで、これらの分散補償光ファイバA,B,Cでは、1520〜1620nmにわたる広い波長帯で、波長分散が下に凸となると共に波長分散が負となっているが、伝送用光ファイバの使用波長帯域に応じて、Cバンドのみ、Lバンドのみ、拡張Lバンドのみ、または、C及びLバンドのみで、波長分散が下に凸となると共に波長分散が負となっていてもよい。
【0029】
このような分散補償光ファイバを用いた伝送用光ファイバの波長分散の補償としては、第一には、各波長帯にわたって分散スロープを含めて波長分散を補償し補償後の光伝送路全体の波長分散の絶対値を各波長帯にわたってほぼ0にする補償が挙げられ、また、第二には、分散スロープを残したまま光伝送路の波長分散の絶対値を各波長帯にわたって減少させる補償があげられる。次に、第一、第二それぞれの場合においてより好適な分散補償光ファイバについて説明する。
【0030】
まず、第一の場合である、伝送用光ファイバの波長分散を分散スロープも含めて補償する場合の分散補償光ファイバの好適な条件について説明する。
【0031】
本実施形態の分散補償光ファイバのみを伝送用光ファイバと接続することによって、分散補償ファイバと伝送用光ファイバとを含む光伝送路の波長分散を上記の各波長帯にわたってほぼ0に補償することができる。この場合、分散補償光ファイバは、図1のBのように、上述のCバンド、Lバンド、拡張Lバンド、又は、C及びLバンドの波長帯において負の分散スロープを有する、すなわち、波長分散が波長と共に単調減少するものであることが好ましい。これによれば、この分散補償光ファイバのみで、各波長帯にわたって波長分散が上に凸である伝送用光ファイバの波長分散を好適に補償できる。
【0032】
また、本実施形態に係る分散補償光ファイバと、各波長帯において波長分散が上に凸かつ負である従来型の分散補償光ファイバと、を組み合わせて伝送用ファイバを含む光伝送路の波長分散を上記の各波長帯においてほぼ0に補償することもできる。
【0033】
この場合も、分散補償光ファイバは、図1のBのように、上述のCバンド、Lバンド、拡張Lバンド、又は、C及びLバンドの波長帯において負の分散スロープを有していてもよい。
【0034】
また、このように2つの分散補償光ファイバを組み合わせて波長分散が正の伝送用光ファイバの波長分散を補償する場合には、伝送用光ファイバの分散スロープを主として従来型分散補償光ファイバで補償する一方、伝送用ファイバの各波長帯での波長分散の絶対値を引き下げるような補償を本実施形態に係る分散補償光ファイバで行ってもよい。
【0035】
この場合、本実施形態に係る分散補償光ファイバは、分散スロープが0になる波長があってもよい。言い換えると、例えば、図1のA,Cのように波長分散の最小値が波長帯の両端以外にあってもよい。
【0036】
この図1のA,Cのような分散光ファイバの場合、各波長帯における波長分散の最大値と最小値との差の絶対値を大きくすると、従来型分散補償光ファイバと組み合わせる本実施形態に係る分散補償光ファイバを短くでき、分散補償器(詳しくは後述)を小さくできて好ましい。ここで、最大値と最小値との差は10ps/nm/km以上であることが好ましい。
【0037】
具体的には、例えば、図1の分散補償光ファイバCの方が、図1の分散補償光ファイバAよりも波長分散の最大値と最小値との差が大きいので、従来型の分散補償光ファイバと組み合わせるのに好適である。
【0038】
従来型分散補償光ファイバを伝送用光ファイバと接続して、120kmの光伝送路のC及びLバンドの残留波長分散を、例えば、0.2ps/nm/km以下等の、問題ない程度の小さな値とすることは従来は困難であった。ここで、ある波長帯の残留波長分散とは、当該波長帯の波長分散の最大値と最小値との差の絶対値である。
【0039】
しかしながら、本実施形態の分散補償光ファイバと従来型分散補償光ファイバとを組み合わせて伝送用光ファイバと接続して、光伝送路の波長分散の補償を行うと、光伝送路の波長分散曲線は、波長に対して従来より水平な直線に近づく。
【0040】
従って、C及びLバンドでの波長分散が正の値、例えば、1550nmの波長における波長分散が16〜21ps/nm/km、である伝送用シングルモード光ファイバに本実施形態の分散補償光ファイバと従来型分散補償光ファイバとを接続して光伝送路の分散補償を行った場合、光伝送路のC及びLバンドでの残留波長分散は、従来にない小さな値、例えば、0.2ps/nm/km以下とすることができる。
【0041】
また、100kmの伝送用シングルモードファイバに、本実施形態の分散補償光ファイバと従来型分散補償光ファイバとを接続して光伝送路を成せば、Cバンド、Lバンド、拡張Lバンド、または、C及びLバンドの波長帯で、残留波長分散を0.2ps/nm/km以下とすることもできる。このような伝送路では、40Gbpsの伝送速度で信号を伝送できる。
【0042】
次に、第二の場合である、本実施形態に係る分散補償光ファイバを用いて伝送用光ファイバの波長分散の絶対値を各波長帯にわたって減少させるような補償について説明する。
【0043】
例えば、距離の短い光伝送ファイバ(例えば50km程度)を含む光伝送路の波長分散を補償する場合、必ずしも光伝送路の分散スロープを補償して、各波長帯に亘って波長分散をほぼ0とする必要はなく、各波長帯の波長分散が減算されるような補償を行った方が、光伝送路の設計が容易となる場合がある。
【0044】
また、距離の長い光伝送ファイバ(例えば、数千km)を含む光伝送路の波長分散を補償する場合は、分散補償器を光伝送路に複数配置するが、それでも補償後の光伝送路に、特定の波長帯における大きな波長分散が残る場合がある。この場合、残留する分散が大きく所望の伝送速度が得られなかった波長帯においては、その波長帯を個別に分散補償する必要があるが、この場合もその個別の波長帯にわたって、波長分散を減算するような分散補償を行った方がよい。
【0045】
このように各波長帯において波長分散を減算する補償をする場合は、本実施形態の分散補償光ファイバのみを正の波長分散を有する伝送用光ファイバと接続して分散補償することが好ましい。
【0046】
また、分散補償光ファイバは、波長分散が上記の各波長帯において平坦であることが好ましい。言い換えると、波長分散の最大値と最小値との差の絶対値が小さいことが好ましい。例えば、波長分散の最小値が各波長帯の両端以外にあると、各波長帯における波長分散の最大値と最小値との差の絶対値を小さくし易い。具体的には、最大値と最小値との差の絶対値が10ps/nm/km未満であることが好ましい。図1において、Cの波長分散特性を有する分散補償光ファイバCよりもAの波長分散特性を有する分散補償光ファイバAが好ましい。
【0047】
また、各波長帯の中間の波長で波長分散が最小値となることが好ましい。これによれば、各波長帯の両端での波長分散がほぼ同じとなるので、この波長帯の分散スロープが0に近くなりやすい。
【0048】
以下、さらに、上記第一の場合及び第二の場合も含めて、本実施形態に係る分散補償光ファイバのより好適な条件について説明する。
【0049】
本実施形態に係る分散補償光ファイバにおいて、各波長帯において、波長分散が−100ps/nm/km以下であることが好ましい。波長分散の値を低くすることで、伝送用光ファイバの波長分散の補償に必要な分散補償光ファイバの長さを短くすることができ、分散補償器を小さくすることができる。
【0050】
また、本実施形態に係る分散補償光ファイバにおいて、コアとクラッドとを含むガラス部分の径(以下ガラス径とする)を60〜125μmとし、このガラス部分を被覆する被服の厚さを15〜65μmとすることが好ましい。ガラス部分の径を小さくして被服の厚さを薄くした細径の光ファイバであれば、当該光ファイバを巻いてコイルを形成し、このコイルを筐体内に収容した分散補償器において、光ファイバが占める容積を小さくできる。
【0051】
なお、分散補償器を収容する中継局内の場所に限りがあるため、分散補償器の小型化に対する市場の要求は強い。通常使用される分散補償光ファイバの被覆径は250μmであるが、本実施形態に係る分散補償光ファイバは、被覆径を90μm程度にまで細くできる。
【0052】
本実施形態に係る分散補償光ファイバは、さらに、曲げ径を40〜100mmとすることができる。曲げ径を小さくすることで、分散補償光ファイバを巻いてコイルとしたときに光ファイバが占める容積を小さくでき、このコイルを収納する筐体も小さくできる。すなわち、本実施形態の分散補償光ファイバを筐体に収容した分散補償器を小型化できる。
【0053】
本実施形態に係る分散補償光ファイバは、曲げ径を60mmとしても1550nmの波長における曲げによる伝送損失増加量(以下曲げ損失増加量とする)が0.1dB/km以下であり、曲げに対して優れた耐性を有する。
【0054】
なお、光ファイバを60mmの径のコイルに巻いたときの1550nmの波長における曲げ損失増加量が0.1dB/kmを超えると、そのコイルは損失が大きすぎて実用に向かない。ところが、本実施形態に係る分散補償光ファイバは、60mmの径に巻いたときの1550nmの波長における曲げ損失増加量を0.1dB/km以下にすることができる。40mmの径に巻いた場合でも1550nmの波長における曲げ損失増加量を0.1dB/km以下にすることができる。
【0055】
また、本実施形態に係る分散補償光ファイバにおいては、C及びLバンドの波長帯を使用する場合には、実効カットオフ波長を1.53μm以下にすることができる。
【0056】
次に、本実施形態に係る分散補償光ファイバの構成及び屈折率プロファイルの好適な例について図2(a)及び図2(b)を参照して説明する。図2(a)は、光ファイバ2の光軸と直交する断面を示し、図2(b)は、図2(a)中の線Lに沿った各ガラス領域の屈折率を示す屈折率プロファイルである。
【0057】
本実施形態に係る分散補償光ファイバ2は、光軸中心を含み屈折率n1を有するコア部211と、コア部211を取り囲みn1よりも低い屈折率n2を有する第一クラッド部212と、第一クラッド部212を取り囲みn2よりも高い屈折率n3を有する第二クラッド部213と、第二クラッド部213を取り囲みn3よりも低い屈折率n4を有する第三クラッド部214と、第三クラッド部214を取り囲むように設けられた被覆層220と、を備えることが好ましい。
【0058】
ここで、コア径を2a、第一クラッド径を2b、第二クラッド径を2c、第三クラッド径(ガラス径)をdとすると共に、第三クラッド部214の屈折率n4を基準としたときのコア部211の比屈折率差をΔn1、第三クラッド部214の屈折率n4を基準としたときの第一クラッド部212の比屈折率差をΔn2、第三クラッド部214の屈折率n4を基準としたときの第二クラッド部213の比屈折率差をΔn3とする。
【0059】
なお、比屈折率差Δn1は(n1−n4)/n4で与えられ、比屈折率差Δn2は(n2−n4)/n4で与えられ、比屈折率差Δn3は(n3−n4)/n4で与えられる。
【0060】
ここで、コア部211の比屈折率差Δn1が2.0〜4.0%であり、第一クラッド部212のΔn2が−0.2〜−0.9%であることが好ましい。
【0061】
さらに、第二クラッド部213のΔn3が0.2〜0.9%であると共に、コア径をA、第一クラッド径をB、第二クラッド径をCとしたときに、
0.2≦(A/C)<0.4 かつ 0.4≦(B/C)≦0.8
を満たすことが好ましい。
【0062】
(第二実施形態)
次に、本発明の実施形態に係る分散補償器について図3を参照して説明する。
【0063】
本実施形態に係る分散補償器19は、上述の実施形態に係る分散補償光ファイバ2と、従来型分散補償光ファイバ3と、を組み合わせて、伝送用光ファイバの波長分散を補償する分散補償器である。
【0064】
この分散補償器19は円筒状の筐体1内の中央に上記実施形態に係る分散補償光ファイバ2が巻回されたコイルが収納され、その周囲に従来型分散補償光ファイバ3が巻回されたコイルが収納され、これらのコイルは充填材7により保持されている。この分散補償器19において、各コイルは、予めボビンに巻き取られた状態から、ボビンを抜き去って光ファイバの固まり状のコイルとすると共に、このコイルをほぐして側圧を減じた状態で筐体1内に保持されている。2つの光ファイバ2、3の一端同士は融着接続部8で融着接続されている。充填材7の上で、融着接続部8等はさらに充填材11により保持されている。
【0065】
その製造に際しては、上述の実施形態に係る分散補償光ファイバ2のコイルと、従来型分散補償光ファイバ3のコイルを、筐体1内に収容した後、光ファイバ2,3の各々の両端を除いて充填材7を充填し、その後、分散補償光ファイバ2の一端と従来型分散補償光ファイバ3の一端とを融着接続する。このときの融着接続部8が図3中に示されている。融着接続後、融着接続部8の近傍には、余長部分12が確保される。さらに、分散補償光ファイバ2の他端と従来型分散補償光ファイバ3の他端には、端部にコネクタ(図示せず)が取り付けられたピグテールファイバ(不図示)を融着接続する。このときの融着接続部10も図3中に示されている。ピグテールファイバは、分散補償器19への光ファイバの接続を容易にするためのものである。さらに、これらの融着接続部8、10及び余長部分12を先ほど硬化させた充填材7の上部に載置させ、さらに、筐体1内に充填材11を充填させて硬化させ、融着接続部8,10及び余長部分12も充填材11によって保持させる。
【0066】
ここで、筐体1内のコイルは、ボビンに保持された状態でもよく、単にボビンが抜き取られた固まり状の状態であってもよい。また、図3においては、分散補償光ファイバ2のコイルの外径が、従来型分散補償光ファイバ3のコイルの内径よりも小さくされているが、分散補償光ファイバ2のコイルの内径を、従来型分散補償光ファイバ3のコイルの外径よりも大きくして分散補償光ファイバ2のコイルよりも内側に従来型分散補償光ファイバ3のコイルを配置してもよい。また、これら2つのコイルを筐体1内で上下に積むようにしてもよい。また、分散補償光ファイバ2と従来型分散補償型光ファイバ3とを各々別々の筐体に入れてもよい。
【0067】
なお、本実施形態においては、光ファイバ2,3をボビンに巻き取った状態、その状態からボビンを抜き去って光ファイバの固まりとした状態、または、ボビンを抜き去った後の光ファイバの固まりをほぐして各光ファイバ同士が及ぼしあう側圧を減じた場合の何れもをコイルと呼ぶ。
【0068】
本実施形態に係る分散補償器の分散補償光ファイバ2は、曲げ径を40〜100mmとすることが好ましい。曲げ径を小さくすることで、分散補償光ファイバを巻いてコイルとしたときに光ファイバが占める容積を小さくでき、このコイルを収納する筐体も小さくできる。すなわち、本実施形態の分散補償光ファイバを筐体に収容した分散補償器を小型化できる。
【0069】
ここで、本実施形態に係る分散補償光ファイバの曲げ径を40〜80mmとすることがより好ましく、40〜60mmとすることが一層好ましい。
【0070】
コイルの周囲及び内側に充填する充填材としては、柔らかい樹脂が好ましい。特に、JIS K 2220−1993の規定による1/4コーンを用いたときの硬化後のちょう度が、−20℃以上70℃以下の温度範囲で5以上200以下であることが好ましい。なお、充填材は、コイル内に浸透させることが好ましい。硬化前の粘度が常温で0.01〜0.6Pa・sである充填材を使用すると、コイルの周辺だけでなく光ファイバ同士の隙間にも充填材を容易に満たすことができ、光ファイバの一本一本を充填材によって覆うことができるので好適である。このような充填材としては、シリコーンゲル等が利用できる。また、充填材として、樹脂の代わりにスポンジ等のクッション材を筐体1内のコイルの周囲及び内側に入れてもよい。
【0071】
また、このような充填材の筐体1内への充填の仕方としては、光ファイバ同士の融着接続部8に不必要な外力がかからないように工夫することが好ましい。例えば、充填材7の上で融着接続部8や余長部分12に対して充填材11を導入して硬化させる際、充填材7の表面と融着接続部8や光ファイバの余長部分12とがなす角が、30度以下になるようにすることが好ましい。さらに、融着接続部8の前後の余長部分12の光ファイバの曲げ径を、例えば、60mm以上と大きくすることが好ましい。また、充填材11に代えて、融着接続部8や余長部分12を充填材7上に固定してもよい。
【0072】
このような分散補償器で用いる分散補償ファイバ2は、第一実施形態に係る分散補償光ファイバである。
【0073】
第1実施形態で述べたように、分散補償光ファイバ2と組み合わせて使用する従来型分散補償光ファイバ3の分散スロープは、伝送用光ファイバの分散スロープを補償する波長分散特性であることが好ましい。
【0074】
また、伝送用光ファイバが、非ゼロ分散シフトファイバのように分散スロープが大きな物であれば、従来型分散補償光ファイバ3として、分散スロープが小さく総分散スロープが大きいものとすることが好ましい。
【0075】
例えば、コーニング社のLEAF(登録商標)等のCバンドの通信光が伝送される非ゼロ分散シフト光ファイバの波長分散を補償する場合、分散補償光ファイバ2と組み合わせる従来型分散補償光ファイバ3は、分散スロープが1550nmにおいて、―0.5ps/nm2/km以下であることが好ましい。
【0076】
一方、上述のLEAF等のLバンド、拡張Lバンド、または、C及びLバンドの通信光が伝送される非ゼロ分散シフト光ファイバの波長分散を補償する場合には、分散補償光ファイバ2と組み合わせる従来型分散補償光ファイバ3は、1550nmにおける分散スロープが−0.2ps/nm2/km以下であることが好ましい。
【0077】
また、上記以外の伝送用光ファイバの波長分散を補償する場合でも、分散補償光ファイバ2と組み合わせる従来型分散補償光ファイバ3は、1550nmにおける分散スロープが−0.2ps/nm2/km以下であることが好ましい。
【0078】
また、第一実施形態に係る分散補償光ファイバ2のみを用いて波長分散が正の伝送用光ファイバの波長分散を補償する場合には、筐体1内に、分散補償光ファイバ2のコイルのみを収容した構成の分散補償器とすればよい。
【0079】
このような分散補償器において、短い伝送用光ファイバの波長分散を補償する場合は、上述の分散補償光ファイバの長さが短くてすむ。このため、分散補償器の大きさを小さくすることができる。
【0080】
例えば、補償する伝送用光ファイバの総波長分散が、1550nmにおいて−1200ps/nm以上−600ps/nm未満である場合は、分散補償器の体積を500cm3以下とすることができ、このとき、例えば、外寸を170mm以下×170mm以下×17mm以下とできる。
【0081】
また、補償する伝送用光ファイバの総波長分散が、1550nmにおいて−600ps/nm以上0ps/nm未満である場合は、分散補償器の体積を310cm3以下とすることができ、このとき、例えば、外寸を130mm以下×130mm以下×17mm以下とできる。
【0082】
また、補償する伝送用光ファイバの総波長分散が、1550nmにおいて−300ps/nm以上0ps/nm未満である場合は、分散補償器の体積を260cm3以下とすることができ、このとき、例えば、外寸を120mm以下×120mm以下×18mm以下とできる。
【0083】
さらに、補償する伝送用光ファイバの総波長分散が、1550nmにおいて−80ps/nm以上0ps/nm未満である場合は、分散補償器の体積を140cm3以下とすることができ、このとき、例えば、外寸を100mm以下×100mm以下×14mm以下とできる。
【0084】
以上説明したように、本実施形態に係る分散補償器によれば、上述の実施形態に係る分散補償光ファイバを用いているので、伝送用ファイバの波長分散を好適に補償することができる。
【0085】
(第3実施形態)
次に、図4を参照して、本実施形態に係る光伝送システム151について説明する。
【0086】
光伝送システム151は、C及びLバンドの信号光を送信する送信機53からこの信号光を受信する受信機57に到る信号光の伝送経路の少なくとも一部に、光伝送路170として伝送用光ファイバ55、中継器58及び中継器59を備えている。
【0087】
伝送用光ファイバ55は、上述のC及びLバンドで上に凸の波長分散を有するシングルモード光ファイバであり、C及びLバンドで波長分散が正の値である。
【0088】
中継器58は、送信機53からの信号光をCバンドとLバンドとに分光する分波器101と、分光された内のCバンドの信号光を増幅する光アンプ102と、分光された内のLバンドの信号光を増幅する光アンプ103と、光アンプ102及び光アンプ103で送信された信号光を合波して伝送用光ファイバ55に送る合波器104と、を備えている。
【0089】
中継器59は、伝送用光ファイバ55を伝播してきたC及びLバンドの信号光をCバンドとLバンドとに分光する分波器111と、分光された内のCバンドの信号光を増幅する光アンプ112と、光アンプ112で増幅された信号光が入射される上述の構成の分散補償器115と、分波器111で分光された内のLバンドの信号光を増幅する光アンプ113と、光アンプ113で増幅された信号光が入射される上述の構成の分散補償器116と、分散補償器115及び分散補償器116で送信された信号光を合波して受信機57に送る合波器114と、を有している。
【0090】
これらの光アンプ102、103、112、113としては、例えば、エルビウム添加光ファイバ(Erbium Doped optical−Fiber:EDF)等を用いたものが利用できる。
【0091】
送信機53からは、C及びLバンドの多波長の信号光が波長多重されて送出され、この信号光は、中継器58において各バンド毎に増幅され、伝送用光ファイバ55を伝搬する。そして、中継器59に到達した信号光は、再び、各バンド毎に増幅されると共に各バンド毎に分散補償器115、116によって分散補償が行われる。そして、分散補償がされた送信光は合波されて受信機57に到達する。そして、受信機20は、これら波長多重された多波長の信号光を分波して、各波長の信号光を受信する。
【0092】
このように構成される光伝送システム151における光伝送路170では、上述の構成の分散補償器115、116を備えるので、光伝送路170全体の波長分散を好適に補償することができる。このため、信号光の波形劣化を抑制することができる。具体的には、例えば、光伝送路170の各波長帯の残留波長分散を0.2ps/nm/km以下にできる。
【0093】
なお、このような分散補償器115、116は、光伝送路150km毎に少なくとも1つ配置することが好ましい。
【0094】
(実施例)
次に、上述の構成の分散補償光ファイバ、分散補償器、光伝送路を作成して評価した。
【0095】
(分散補償光ファイバの実施例F1,F2、分散補償光ファイバの参考例F3)分散補償光ファイバF1は、3重クラッド型であり、コア径2aを2.6μm、第一クラッド径2bを5.2μm、第二クラッド径2cを10.8μmとした。また、コア部の比屈折率差Δn1を2.8%、第一クラッド部の比屈折率差Δn2を−0.74%、第二クラッド部の比屈折率差Δn3を0.32%とした。
【0096】
この分散補償型光ファイバF1は、波長1520nmにおいて、波長分散が−172ps/nm/km、分散スロープが−0.16ps/nm2/kmであり、波長1550nmにおいて、波長分散が−176ps/nm/km、分散スロープが−0.08ps/nm2/km、モードフィールド径(MFD)が4.0μmであった。また、この分散補償型光ファイバF1の2mでの実効カットオフ波長は1.28μm、曲げ径40mmでの1550nmの波長における曲げ損失増加量は0.01dB/km以下、曲げ径60mmでの1550nmの波長における曲げ損失増加量は0.01dB/km以下であった。
【0097】
波長分散は、図1に示す通りであり、C及びLバンドにおいて、下に凸であると共に負であった。
【0098】
分散補償光ファイバF2も3重クラッド型であり、コア径2aを3.2μm、第一クラッド径2bを7.7μm、第二クラッド径2cを15.4μmとした。また、コア部の比屈折率差Δn1を2.8%、第一クラッド部の比屈折率差Δn2を−0.74%、第二クラッド部の比屈折率差Δn3を0.32%とした。
【0099】
この分散補償型光ファイバF2は、波長1520nmにおいて、波長分散が−249ps/nm/km、分散スロープが−0.64ps/nm2/kmであり、波長1550nmにおいて、波長分散が−263ps/nm/km、分散スロープが−0.28ps/nm2/km、モードフィールド径(MFD)が4.2μmであった。また、この分散補償型光ファイバF1の2mでの実効カットオフ波長は1.45μm、曲げ径40mmでの1550nmの波長における曲げ損失増加量は0.05dB/km以下、曲げ径60mmでの1550nmの波長における曲げ損失増加量は0.01dB/km以下であった。
【0100】
波長分散は、図2のCに示す通りであり、C及びLバンドにおいて、下に凸であると共に負であった。
【0101】
また、上記分散補償光ファイバF1,F2と組み合わせるための、C及びLバンドで波長分散が上に凸の従来型の分散補償ファイバとして次に示す分散補償光ファイバF3を用いた。
【0102】
この従来型分散補償光ファイバF3は3重クラッド型であり、コア径2aを4.3μm、第一クラッド径2bを11.0μm、第二クラッド径2cを15.4μmとした。また、コア部の比屈折率差Δn1を1.6%、第一クラッド部の比屈折率差Δn2を−0.50%、第二クラッド部の比屈折率差Δn3を0.30%とした。
【0103】
この従来型分散補償型光ファイバF3は、波長1520nmにおいて、波長分散が−61ps/nm/km、分散スロープが−0.25ps/nm2/kmであり、波長1550nmにおいて、波長分散が−70ps/nm/km、分散スロープが−0.36ps/nm2/km、モードフィールド径(MFD)が4.7μmであった。また、この従来型分散補償型光ファイバF3の2mでの実効カットオフ波長は1.40μm、曲げ径40mmでの1550nmの波長における曲げ損失増加量は0.5dB/km以下、曲げ径60mmでの1550nmの波長における曲げ損失増加量は0.02dB/km以下であった。
【0104】
波長分散は、図5のCに示す通りである。また、この分散補償光ファイバF1,F2及び従来型分散補償光ファイバF3の構成や特性を図6の表に示す。
【0105】
(分散補償器の実施例M1〜M8)
上述の光ファイバを用いて、分散補償器M1〜M8を作成した。
【0106】
(実施例M1)
分散補償器M1は、長さ1.7kmの分散補償光ファイバF1を用い、この分散補償光ファイバF1をボビンに巻き付けた後に当該ボビンから取り外してファイバ束状態とし、このコイルを筐体内に収容し、コイルを樹脂にて保持した構成のものである。また、分散補償光ファイバF1における第3クラッド部の外径(以下、ガラス径と言う)は80μmとし、被覆層も含んだ外径(以下、被覆径と言う)は140μmとした。樹脂はシリコーンゲルであり、このシリコーンゲルを70℃で2時間加熱することにより硬化させて、光ファイバF1のコイルを保持した。
【0107】
ボビンの分散補償光ファイバF1を巻き付ける巻胴部の外径(コイル状に巻回された分散補償光ファイバの巻内径に相当し、以下、巻胴径と言う)は40mmとした。この分散補償器M1の総波長分散は−300ps/nmであり、総分散スロープは−0.13ps/nm2であり、挿入損失は3.3dBであった。分散補償器M1の筐体の大きさは、120mm×120mm×18mmであった。
【0108】
(実施例M2)
分散補償器M2は、ガラス径を125μm、被覆径を185μmとした分散補償光ファイバF1を用いた以外は実施例1と同様の構成である。分散補償器M2の総分散値は−300ps/nmであり、総分散スロープは−0.13ps/nm2であり、挿入損失が3.3dBであった。分散補償器M2の筐体の大きさは、120mm×120mm×18mmであった。
【0109】
(実施例M3)
分散補償器M3は、長さ3.4kmの分散補償光ファイバF1を用いた以外は、実施例1と同様の波長分散器である。分散補償器M3の総波長は−600ps/nmであり、総分散スロープは−0.26ps/nm2であり、挿入損失が4.6dBであった。分散補償器M3の筐体の大きさは、130mm×130mm×17mmであった。
【0110】
(実施例M4)
分散補償器M4は、ガラス径を80μm、被覆径を185μmとし、長さを0.30kmとした分散補償光ファイバF2を用い、コイルの巻胴径を40mmとした以外は、実施例1と同様の分散補償器である。分散補償器M4の総分散値は−80ps/nmであり、総分散スロープは−0.08ps/nm2であり、挿入損失が2.1dBであった。分散補償器M4の筐体の大きさは、100mm×100mm×14mmであった。
【0111】
(実施例M5)
分散補償器M5は、ガラス径を125μm、被覆径を185μmとし、長さ1.14kmとした分散補償光ファイバF2を用いた以外は、実施例4と同様の構成の分散補償器である。分散補償器M5の総波長分散値は−300ps/nmであり、総分散スロープは−0.31ps/nm2であり、挿入損失が2.8dBである。分散補償器M5の筐体の大きさは、120mm×120mm×18mmであった。
【0112】
(実施例M6)
本例の分散補償器M6は、長さ2.28kmの分散補償光ファイバF2を用いた以外は実施例4と同様の分散補償器である。分散補償器M6の総波長分散値は−600ps/nmであり、総分散スロープは−0.63ps/nm2であり、挿入損失が3.7dBである。分散補償器M6の筐体の大きさは、130mm×130mm×17mmであった。
【0113】
(実施例M7)
本例の分散補償器M7は、長さ4.56kmの分散補償光ファイバF2を用いた以外は実施例4と同様の構成の分散補償器である。分散補償器M7の総波長分散値は−1200ps/nmであり、総分散スロープは−1.26ps/nm2であり、挿入損失が5.6dBである。分散補償器M7の筐体の大きさは、170mm×170mm×17mmであった。
【0114】
(実施例M8)
本例の分散補償器M8は、ガラス径を125μm、被覆径を185μm、長さを2.30kmとした分散補償光ファイバF2と、ガラス径を125μm、被覆径を185μm、長さを10.8kmとした従来型分散補償光ファイバF3とを融着接合し、各々のファイバを各々ボビンに巻き付けた後に当該ボビンから取り外して各々ファイバ束状態としたのち筐体内に収容し、実施例1と同様に樹脂を硬化させることにより光ファイバを保持した構成のものである。
【0115】
分散補償光ファイバF2の巻胴径を40mm、従来型分散補償光ファイバF3の巻胴径を120mm、従来型分散補償光ファイバF3のコイルの外径を200mmとし、従来型分散補償光ファイバF3内のコイルの内側に分散補償光ファイバF2のコイルを入れた状態とした。分散補償器M8の筐体の大きさは、220mm×230mm×40mmとした。
【0116】
分散補償光ファイバF2単体の総波長分散は−600ps/nmであり、総分散スロープは−0.63ps/nm2であり、従来型分散補償光ファイバF3単体の総分散値は−756ps/nmであり、総分散スロープは−3.88ps/nm2であった。また、分散補償器の総波長分散は−1360ps/nmであり、総分散スロープは−4.5ps/nm2であり、挿入損失は7dBであった。
【0117】
これら分散補償器M1〜M8の構成及び特性を図7の表に示す。また、分散補償器M8の波長分散を図8に示す。また、分散補償器M8を、100kmの伝送用シングルモードファイバと接続した場合の、光伝送路全体の波長分散を図9に示す。伝送用光ファイバの波長分散がC及びLバンドで好適に補償されたことがわかる。なお、この伝送用シングルモードファイバの波長分散を図5のEに示す。
【0118】
以上のように、本実施形態によれば、Cバンド、Lバンド、拡張Lバンド、または、C及びLバンドにおいて波長分散が下に凸かつ負である分散補償光ファイバを用いた分散補償器を用いることにより、光伝送路において波長分散を好適に補償することができる。また、コンパクトな波長分散器及び光伝送路を提供できる。
【0119】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形態様をとることが可能である。
【0120】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、伝送用光ファイバの波長分散をより精度よく補償可能な光ファイバと、これを用いた分散補償器及び光伝送路が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る分散補償光ファイバの波長分散を示す図である。
【図2】図2(a)は図1の分散補償光ファイバの断面構造を示す図であり、図2(b)は図1の分散補償光ファイバの屈折率プロファイルを示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る分散補償器を示す図である。
【図4】図3の分散補償器を用いた光伝送システムを示す概略構成図である。
【図5】実施例F3で用いる従来型分散補償光ファイバ及び伝送用光ファイバの波長分散を示す図である。
【図6】実施例F1、F2、参考例F3の光ファイバの特性を示す図表である。
【図7】実施例M1〜M8の分散補償器の特性を示す図表である。
【図8】実施例M8の分散補償器の波長分散を示す図である。
【図9】実施例M8の分散補償器を伝送用光ファイバに接続した場合の光伝送路全体の波長分散を示す図である。
【符号の説明】
1…筐体、2…分散補償光ファイバ(光ファイバ)、3…従来型分散補償光ファイバ(第二光ファイバ)、10…分散補償器、170…光伝送路、55…伝送用ファイバ。
Claims (13)
- 1535〜1565nmの波長帯において基底モードの波長分散が下に凸であると共に、前記波長帯において波長分散が負であることを特徴とする光ファイバ。
- 1565〜1610nmの波長帯において基底モードの波長分散が下に凸であると共に、前記波長帯において波長分散が負であることを特徴とする光ファイバ。
- 1554〜1608nmの波長帯において基底モードの波長分散が下に凸であると共に、前記波長帯において波長分散が負であることを特徴とする光ファイバ。
- 1535〜1610nmの波長帯において基底モードの波長分散が下に凸であると共に、前記波長帯において波長分散が負であることを特徴とする光ファイバ。
- 前記波長帯にわたって、分散スロープが負であることを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載の光ファイバ。
- 前記波長帯の両端以外の波長で波長分散が最小値となることを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載の光ファイバ。
- 前記波長帯における波長分散の最大値と最小値との差の絶対値が10ps/nm/km以下であることを特徴とする、請求項1〜6の何れか一項に記載の光ファイバ。
- 60mmの内径のコイルとしたときの1550nmの波長における伝送損失の増加量が0.1dB/km以下であることを特徴とする、請求項1〜7の何れか一項に記載の光ファイバ。
- 請求項1〜8の光ファイバを筐体内に収納した分散補償器。
- 前記光ファイバは、内径40〜100mmのコイル状に巻かれたことを特徴とする、請求項9に記載の分散補償器。
- 前記光ファイバと接続され、1550nmの波長における分散スロープが−0.2ps/nm2/km以下である第二光ファイバを備えることを特徴とする、請求項9又は10に記載の分散補償器。
- 前記光ファイバと接続され、1550nmの波長における分散スロープが−0.5ps/nm2/km以下である第二光ファイバを備えることを特徴とする、請求項9又は10に記載の分散補償器。
- 請求項9〜12に記載の分散補償器と、前記分散補償器と接続され1535〜1610nmの波長帯における波長分散が正である伝送用光ファイバと、を備えることを特徴とする光伝送路。
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