【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は転がり軸受に関し、より詳細には、自動車の電装部品、エンジン補機であるオルタネータやカーエアコン用電磁クラッチ、コンプレッサ用プーリ、アイドラプーリ、電動ファンモータ等のような高温高速高荷重条件下で使用される部品、あるいは水ポンプのように水と接触する部品に組み込まれる転がり軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車は小型軽量化を目的としたFF車の普及により、更には居住空間拡大の要望により、エンジンルーム空間の減少を余儀なくされ、オルタネータやカーエアコン用電磁クラッチ、コンプレッサ用プーリ、アイドラプーリ、電動ファンモータ、水ポンプ等の電装部品・エンジン補機の小型軽量化がより一層進められており、これらの部品にも高性能化、高出力化が益々求められている、しかし、小型化により出力の低下は避けられず、例えばオルタネータやカーエアコン用電磁クラッチでは高速化することにより出力の低下分を補っており、それに伴ってアイドラプーリも高速化することになる。更に、静粛性向上の要望によりエンジンルームの密閉化が進み、エンジンルーム内の高温化が促進されるため、これらの部品は高温に耐えることも必要となっている。
【0003】
また、これらの部品はエンジンルームの下部に取り付けられていることが多いことから、軸受には走行中に路面より跳ね上げられる泥水や雨水等がかかりやすく、更に水ポンプ用軸受ではエンジン冷却用循環水の浸入も受けやすい。軸受に接触ゴムシールを装着することにより水の浸入をある程度抑えることはできるが、完全な浸水防止はできていない状況にある。更に、自動車のエンジンは稼動と休止とを繰り返すため、エンジンが休止しているときに軸受のハウジング内の温度が低下して露点に達すると、周囲の空気中の水分が凝縮して水滴となり、軸受に付着したり、封入しているグリース等の潤滑剤に混入することがある。
【0004】
上記の部品は、上記のように高温、高速、高荷重下で使用されるため、組み込まれる転がり軸受では内外輪と転動体とが高面圧での接触状態となり、その表面に金属の新生面が発生しやすい。金属新生面は活性が高いため、グリースに混入した水分が分解して水素が発生し、この水素が軸受鋼中に侵入して水素脆性による白色組織変化剥離(以下、「白色組織剥離」という。)を誘発することがあり、新たな重要課題となってきている。
【0005】
このような白色組織剥離の発生を抑制するために、グリースに特殊な防錆剤を添加したり(例えば、特許文献1、特許文献2参照)、軸受材料として特殊な鋼材を用いたる(例えば、特許文献3参照)、等の対策が講じられている。また、グリースの増ちょう剤組成を変更することも数多く試みられており、ウレア化合物を増ちょう剤に用いることも行われている(例えば、特許文献4、特許文献5参照)。
【特許文献1】
特開2001−234935号公報(第2頁〜第4頁)
【特許文献2】
特開2002−121577号公報(第2頁〜第3頁)
【特許文献3】
特開2002−21856号公報(第2頁〜第3頁)
【特許文献4】
特開平5−98280号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】
特許第1817330号公報(特許請求の範囲)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、自動車の電装部品やエンジン補機等に組み込まれる転がり軸受では、白色組織剥離の発生が新たな重要課題となってきているが、従来の対処法では使用条件等によっては抑制効果が十分に得られないことがある。
【0007】
そこで、本発明は、今後益々高温高速高荷重化が進むことが予測される中で、この白色組織剥離の発生がより抑えられ、特に自動車の電装部品やエンジン補機等に好適な転がり軸受を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
水分と潤滑性との関係に関して、例えば古村らは、潤滑油(#180タービン油)に6%の水が混入すると、混入が無い場合に比べて数分の1〜20分の1に転がり疲れ強さが低下することを報告している(古村恭三郎、城田伸一、平川清;表面起点および内部起点の転がり疲れについて、NSK Bearing Journal, No.636, pp.1−10, 1977)。また、Schatzbergらは、潤滑油中に僅か100ppmの水分が混入するだけで鋼の転がり強さが32〜48%も低下することを報告している(P.Schatzberg, I.M.Felsen ; Effects of water and oxygen during rolling contact lubrication, wear, 12, pp.331−342, 1968)。
【0009】
これらの報告にもあるように、潤滑剤中に水分が混入すると軸受寿命の低下が見られる。本発明はこのような知見に基づき、グリースの含水率と白色組織剥離との関係を検証した結果、グリースの含水率が特定値以下であれば白色組織剥離を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、上記目的を達成するために、内輪と外輪との間に保持器により複数の転動体を転動自在に保持してなり、かつ、JIS K2275で規定されるカール・フィッシャー法による含水率が2質量%以下であるグリースをシール部材により封止したことを特徴とする転がり軸受を提供する。
【0011】
軸受の内輪や外輪、転動体は軸受鋼等で形成されているが、その表面状態は一様ではなく、腐食形態としては局部腐食となる。具体的には、表面(軌道面、転動体)の非金属介在物とマトリクス(素材)との界面は引張り応力下で微小な隙間となり、このとき水が存在すると、毛細管現象によりこの微小隙間に水が入り込み、腐食反応が起こる。そして、腐食生成物が微小隙間の入り口を塞ぎ、微小隙間の内部の酸素が不足するようになり、その後の微小隙間の腐食反応は水素発生型となる。尚、微小隙間に引張り応力が負荷されるのは、微小隙間の近くに転がり接触部が存在するときや、内輪と軸との嵌め合いが締まりばめのときである。従って、転がり軸受の軌道面や転動面上の非金属介在物とマトリクスとの界面は必ず引張り応力を受ける。
【0012】
上記の水素発生型の腐食反応は、具体的には以下のように進行する。微小隙間内では隙間最深部のマトリクスがアノードとなり、隙間最深部以外のマトリクス及び炭化物がカソードとなる。そして、アノード部では下記(1)式に示す反応が起こり、カソードでは下記(2)〜(4)式に示す反応が起こり、水素が発生する。尚、Hadsは表面に吸着する水素原子を表し、Habsは内部に吸収される水素原子を表す。
Fe+2H2O → Fe(OH)2+2e−+2H+ (1)
2H++2e− → 2Hads (2)
2Hads → 2Habs (3)
2Habs → H2↑ (4)
【0013】
即ち、(3)式で表される反応は、表面に吸着された水素原子が内部に拡散していく反応であり、(4)式で表される反応は、表面に吸着された水素原子同士が結合して分子(ガス)として外部に放出される反応である。カソードでは、第1ステップとして(2)式で表される反応が起こり、第2ステップとして(3)式または(4)式で表される反応が起こる。炭化物上では(3)式で表される反応は無視でき、(4)式で表される反応が進行する。また、マトリックス上では(3)式及び(4)式で表される反応が起こる。従って、稼動中の転がり軸受では、僅かでも腐食が起こると、水素の吸収反応が起こる。そして、鋼に水素が僅かでも吸収されると、鋼は水素脆化するため、転がり疲れ強さが大きく低下して白色組織剥離が発生する。
【0014】
そのため、白色組織剥離を抑えるには、上記(1)〜(4)式で表される反応の何れかの進行を抑制すればよく、本発明ではグリース中の水分量を抑えることにより(1)式で表されるアノード反応の進行を抑制する。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に関して図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
本発明の転がり軸受は、グリースを封止し、かつ外部からの水分の浸入を防止するためのシール部材を備えること以外は、特に構造上の制限は無く、例えば図1に断面図として示される玉軸受1を例示することができる。この玉軸受1は、内輪10と外輪11との間に、保持器12を介して複数の転動体である玉13を転動自在に保持し、更に、内輪10と外輪11と玉13とで形成される軸受空間Sに、後述されるグリース(図示せず)を充填し、シール部材14により封止して構成されている。
【0017】
本発明において、グリースは、含水率が2質量%以下、好ましくは1質量%に規定されている。グリースの含水率が2質量%を超えると、後述される実施例にも示すように白色組織剥離の抑制効果が得られなくなる。尚、本発明において含水率とは、JIS K2275で規定されているカール・フィッシャー法によるものである。このカール・フィッシャー法は、水と選択的かつ定量的に反応するカール・フィッシャー試薬(ヨウ素、二酸化硫黄、塩素及びアルコール等の溶剤により構成)を用いて被検体中の水分を測定する方法である。また、このカール・フィッシャー法は、(1)電量滴定法と(2)容量滴定法とに大別されているが、本発明においては何れの滴定法によってもよい。
【0018】
グリースは、含水率が2質量%以下であれば、その組成には制限されないが、好適には以下の基油、増ちょう剤を用いる。
【0019】
[基油]
ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノエーテル、ポリプロピレングリコールモノエーテル等のポリグリコールは吸湿性が高いことから、本発明ではポリグリコール以外の潤滑油を基油に用いる。また、グリースの低温流動性不足による低温起動時の異音発生や、高温で油膜が形成され難いために起こる焼付きを避けるために、40℃における動粘度が、好ましくは10〜400mm2/sec、より好ましくは20〜250mm2/sec、さらに好ましくは40〜150mm2/secである基油が望ましい。
【0020】
このような観点から、基油として具体的には、鉱油系、合成油系または天然油系の潤滑油等が挙げられる。鉱油系潤滑油としては、鉱油を、減圧蒸留、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、硫酸洗浄、白土精製、水素化精製等を適宜組み合わせて精製したものが好ましい。合成油系潤滑油としては、炭化水素系油、芳香族系油、エステル系油、エーテル系油等が挙げられる。炭化水素系油としては、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、ポリブテン、ポリイソブチレン、1−デセンオリゴマー、1−デセンとエチレンコオリゴマー等のポリ−α−オレフィンまたはこれらの水素化物等が挙げられる。芳香族系油としては、モノアルキルベンゼン、ジアルキルベンゼン等のアルキルベンゼン、あるいはモノアルキルナフタレン、ジアルキルナフタレン、ポリアルキルナフタレン等のアルキルナフタレン等が挙げられる。エステル系油としては、ジブチルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート、ジオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジトリデシルグルタレート、メチル・アセチルシノレート等のジエステル油、あるいはトリオクチルトリメリテート、トリデシルトリメリテート、テトラオクチルピロメリテート等の芳香族エステル油、更にはトリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール−2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールベラルゴネート等のポリオールエステル油、更にはまた、多価アルコールと二塩基酸・一塩基酸の混合脂肪酸とのオリゴエステルであるコンプレックスエステル油等が挙げられる。エーテル系油としては、モノアルキルトリフェニルエーテル、アルキルジフェニルエーテル、ジアルキルジフェニルエーテル、ペンタフェニルエーテル、テトラフェニルエーテル、モノアルキルテトラフェニルエーテル、ジアルキルテトラフェニルエーテル等のフェニルエーテル油等が挙げられる。その他の合成潤滑油としては、トリクレジルフォスフェート、シリコーン油、パーフルオロアルキルエーテル等が挙げられる。天然油系潤滑油としては、牛脂、豚脂、大豆油、菜種油、米ぬか油、ヤシ油、パーム油、パーム核油等の油脂系油またはこれらの水素化物が挙げられる。これらの基油は、単独または混合物として用いることができ、上述した好ましい動粘度に調整される。
【0021】
[増ちょう剤]
増ちょう剤は、吸湿性が低く、更には耐熱性に優れることから、ウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物、ウレタン化合物及びこれらの混合物を用いる。これらの具体例としては、ジウレア化合物、トリウレア化合物、テトラウレア化合物、ポリウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物、ジウレタン化合物及びこれらの混合物が挙げられる。音響特性を考慮すると、ジウレア化合物を配合することが特に好ましい。
【0022】
また、増ちょう剤の配合量は、上記基油とともにグリースを形成し得る量であれば制限されるものではないが、グリース全量の10〜35質量%とすることが好ましい。
【0023】
[添加剤]
グリースには、各種性能を高めるために各種の添加剤を添加することができるが、吸湿性の低いものを選択する必要がある。好適には、アミン系、フェノール系、イオウ系、ジチオリン酸亜鉛等の酸化防止剤;塩素系、イオウ系、リン系、ジチオリン酸亜鉛、有機モリブテン等の極圧剤;脂肪酸、動植物油等の油性剤;石油スルフォネート、ジノニルナフタレンスルフォネート、ソルビタンエステル等の防錆剤;ベンゾトリアゾール等の金属不活性剤;ポリメタクリレート、ポリイソブチレン、ポリスチレン等の粘度指数向上剤等を単独または2種以上組み合わせて添加することができる。また、これら添加剤の添加量は本発明の所期の目的を達成できれば特に制限されるものではないが、通常、グリース全量の20質量%以下である。
【0024】
[製法]
上記のグリースを調製する方法には特に制限はないが、一般的には基油中で増ちょう剤を反応させて得られる。この操作は、外気からの水分の混入を防ぐために、より低露点の空気中で行うことが望ましい。尚、加熱時間や攪拌・混合時間等の製造条件は、使用する基油や増ちょう剤、添加剤等により適宜設定される。
【0025】
また、このようにして調製されるグリースの混和ちょう度は、NLGI No.1〜3であることが好ましい。
【0026】
【実施例】
以下に実施例を挙げて更に具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
【0027】
(試験グリースの調製)
第1の容器にポリα−オレフィン油(PAO:動粘度50mm2/s、40℃)の半量とp−トルイジンとを入れ、70〜80℃に加温した。第2の容器にPAOの半量とジフェニルメタンジイソシアネートとを入れ、70〜80℃に加温し、内容物を第1の容器に加えて攪拌した。反応熱のため反応物の温度は上昇するが、約30分間この状態で攪拌を続け、反応を十分に行った後、昇温して170〜180℃で30分間保持し、冷却した。その後、酸化防止剤と防錆剤とを合計で5質量%となるように添加し、十分混練した後、ロールミルを通し、混和ちょう度NLGI No.2となるように調整してベースグリースを得た。これら一連の操作は、乾燥空気中で行った。
【0028】
そして、ベースグリースに蒸留水を0.1〜5質量%となるように混入し、試験グリースを得た。尚、蒸留水混入後の含水量をカール・フィッシャー法にて測定した。試験グリースの性状を表1にまとめて示す。
【0029】
【表1】
【0030】
(急加減速試験)
内径φ17mm、外径φ47mm、幅14mmの接触ゴムシール付き単列深溝玉軸受(図1参照)に、上記試験グリースを2.3g封入して試験軸受を作製した。そして、図2に示す試験装置を用いて剥離発生確率を求めた。図示される試験装置では、一対の支持用軸受71,71で支持されたシャフト70の端部に試験軸受75の内輪を嵌合させ、更に外輪をホルダー72に固定し、プーリ73を介してモータ(図示せず)からの回転を試験軸受75に伝達する構成となっている。試験は、室温にて、内輪回転速度2000〜14000min−1までの急加速と14000〜2000min−1までの急減速との繰り返し、プーリ荷重1570Nの条件で試験軸受75を連続回転させ、試験軸受75の外輪転走面に剥離が生じて振動が発生したとき、あるいは振動が発生しない場合には1000時間経過した時点で試験を終了し、白色組織変化の有無を観察した。試験数は各試験軸受とも10回であり、剥離及び白色組織変化の発生回数から剥離発生確率及び白色組織変化発生確率を下式により算出した。
剥離発生確率(%)=(剥離発生回数/試験数)×100
白色組織変化発生確率(%)=(白色組織変化発生数/試験数)×100
【0031】
上記の急加減速試験による剥離及び白色組織変化の発生の結果を図3に示すが、含水率が2質量%以下であれば、剥離及び白色組織変化の発生が少なく、特に1質量%以下であれば殆ど発生しないことがわかる。尚、剥離発生の軸受軌道面の内部には全て白色組織変化が観察された。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、白色組織剥離の抑制効果に優れ、特にオルタネータやカーエアコン用電磁クラッチ、コンプレッサ用プーリ、アイドラプーリ、電動ファンモータ、水ポンプ等の自動車用電装部品、エンジン補機用の転がり軸受に好適に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の転がり軸受の一実施形態を示す断面図である。
【図2】実施例において、急加減速試験に用いた試験装置を示す概略断面図である。
【図3】実施例で得られた、グリースの含水率と、剥離または白色組織変化の発生確率との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 玉軸受
10 内輪
11 外輪
12 保持器
13 玉
14 シール[0001]
TECHNICAL FIELD OF THE INVENTION
The present invention relates to rolling bearings, and more specifically, to high-speed, high-speed, high-load conditions such as electric components of automobiles, alternators that are engine accessories, electromagnetic clutches for car air conditioners, compressor pulleys, idler pulleys, and electric fan motors. The present invention relates to a rolling bearing incorporated in a component used in a vehicle or a component that comes into contact with water such as a water pump.
[0002]
[Prior art]
The spread of FF vehicles for the purpose of reducing the size and weight of automobiles, and the demand for larger living spaces has forced the reduction of engine room space, and alternators, electromagnetic clutches for car air conditioners, compressor pulleys, idler pulleys, and electric fans Electric components such as motors and water pumps, as well as engine accessories, are becoming smaller and lighter, and these components are also required to have higher performance and higher output. The decrease is inevitable. For example, in an alternator or an electromagnetic clutch for a car air conditioner, the speed is increased to compensate for the decrease in output, and the idler pulley is also accelerated accordingly. Further, the demand for improved quietness increases the sealing of the engine room and promotes a high temperature in the engine room. Therefore, these parts also need to withstand high temperatures.
[0003]
In addition, since these parts are often installed in the lower part of the engine room, the bearings are apt to be exposed to muddy water and rainwater that jump up from the road surface during traveling. It is also susceptible to water ingress. Although the infiltration of water can be suppressed to some extent by mounting a contact rubber seal on the bearing, it is not yet possible to completely prevent water from entering. Further, since the engine of the automobile repeatedly starts and stops, when the temperature inside the housing of the bearing decreases and reaches the dew point when the engine is stopped, moisture in the surrounding air condenses to form water droplets. It may adhere to the bearings or mix into the lubricating agent such as grease.
[0004]
Since the above parts are used under high temperature, high speed and high load as described above, in the rolling bearings incorporated, the inner and outer rings and the rolling elements are in contact with high surface pressure, and a new metal surface is formed on the surface. Likely to happen. Since the surface of the newly formed metal has high activity, water mixed in the grease is decomposed to generate hydrogen, and this hydrogen penetrates into the bearing steel and causes white structure change peeling due to hydrogen embrittlement (hereinafter, referred to as “white structure peeling”). And may become a new important issue.
[0005]
In order to suppress the occurrence of such white structure peeling, a special rust inhibitor is added to the grease (for example, see Patent Documents 1 and 2), or a special steel material is used as a bearing material (for example, (Refer to Patent Document 3). Also, many attempts have been made to change the thickener composition of grease, and urea compounds have been used as thickeners (for example, see Patent Documents 4 and 5).
[Patent Document 1]
JP 2001-234935 A (pages 2 to 4)
[Patent Document 2]
JP-A-2002-121577 (pages 2 to 3)
[Patent Document 3]
JP-A-2002-21856 (pages 2 to 3)
[Patent Document 4]
JP-A-5-98280 (Claims)
[Patent Document 5]
Japanese Patent No. 1817330 (Claims)
[0006]
[Problems to be solved by the invention]
As described above, the occurrence of white-texture has become a new important issue in rolling bearings that are incorporated into electrical components of automobiles and engine accessories, but the conventional countermeasures have the effect of suppressing the effect depending on the use conditions. May not be obtained sufficiently.
[0007]
In view of the above, the present invention is expected to further increase the temperature and the speed and the load in the future, and further suppresses the occurrence of the white-texture separation. In particular, the present invention proposes a rolling bearing suitable for electric components of automobiles and engine accessories. The purpose is to provide.
[0008]
[Means for Solving the Problems]
Regarding the relationship between moisture and lubricity, for example, Furumura et al. Reported that when 6% of water was mixed in lubricating oil (# 180 turbine oil), rolling fatigue was reduced to a fraction of one to one-twentieth of that in the case where there was no mixing. It is reported that the strength decreases (Kyosaburo Furumura, Shinichi Shirota, Kiyoshi Hirakawa; rolling fatigue at the surface origin and the internal origin, NSK Bearing Journal, No. 636, pp. 1-10, 1977). Schattzberg et al. Also report that the incorporation of only 100 ppm of water in lubricating oil reduces the rolling strength of steel by as much as 32 to 48% (P. Schatzberg, IM Felsen; Effects). of water and oxygen dur- ing rolling contact lubrication, wear, 12, pp. 331-342, 1968).
[0009]
As described in these reports, when water is mixed in the lubricant, the life of the bearing is reduced. Based on such knowledge, the present invention has verified the relationship between the water content of grease and the peeling of the white structure.As a result, it has been found that if the water content of the grease is equal to or less than a specific value, the white structure can be suppressed, and the present invention has been completed. I came to.
[0010]
That is, in order to achieve the above object, the present invention comprises a plurality of rolling elements rotatably held by a retainer between an inner ring and an outer ring, and the Karl Fischer method specified in JIS K2275. A grease having a water content of 2% by mass or less is sealed by a seal member.
[0011]
The inner and outer races and rolling elements of the bearing are made of bearing steel or the like, but their surface condition is not uniform, and the form of corrosion is local corrosion. Specifically, the interface between the non-metallic inclusions on the surface (track surface, rolling elements) and the matrix (material) becomes a minute gap under tensile stress. At this time, if water is present, the minute gap is formed by capillary action. Water enters, causing a corrosion reaction. Then, the corrosion product closes the entrance of the minute gap, and the oxygen inside the minute gap becomes insufficient, and the corrosion reaction of the minute gap thereafter becomes a hydrogen generating type. The tensile stress is applied to the minute gap when a rolling contact portion exists near the minute gap or when the fitting between the inner ring and the shaft is a tight fit. Therefore, the interface between the matrix and the non-metallic inclusions on the raceway surface and the rolling surface of the rolling bearing always receives a tensile stress.
[0012]
The above-mentioned hydrogen-producing corrosion reaction specifically proceeds as follows. In the minute gap, the matrix at the deepest part of the gap becomes the anode, and the matrix and carbide other than the deepest part of the gap become the cathode. Then, a reaction represented by the following formula (1) occurs at the anode portion, and a reaction represented by the following formulas (2) to (4) occurs at the cathode, and hydrogen is generated. Incidentally, H Ads represents a hydrogen atom adsorbed on the surface, H abs represents a hydrogen atom absorbed therein.
Fe + 2H 2 O → Fe (OH) 2 + 2e − + 2H + (1)
2H + + 2e - → 2H ads (2)
2H ads → 2H abs (3)
2H abs → H 2 ↑ (4)
[0013]
That is, the reaction represented by the formula (3) is a reaction in which the hydrogen atoms adsorbed on the surface are diffused inside, and the reaction represented by the formula (4) is a reaction between the hydrogen atoms adsorbed on the surface. Are combined and released outside as molecules (gas). At the cathode, the reaction represented by the formula (2) occurs as a first step, and the reaction represented by the formula (3) or (4) occurs as a second step. The reaction represented by the formula (3) can be ignored on carbides, and the reaction represented by the formula (4) proceeds. In addition, reactions represented by the formulas (3) and (4) occur on the matrix. Therefore, in the rolling bearing in operation, even if a little corrosion occurs, a hydrogen absorption reaction occurs. If even a small amount of hydrogen is absorbed by the steel, the steel is embrittled with hydrogen, so that the rolling fatigue strength is greatly reduced and white structure peeling occurs.
[0014]
Therefore, in order to suppress the white tissue exfoliation, it is only necessary to suppress the progress of any of the reactions represented by the above formulas (1) to (4). In the present invention, by suppressing the amount of water in the grease, The progress of the anode reaction represented by the formula is suppressed.
[0015]
BEST MODE FOR CARRYING OUT THE INVENTION
Hereinafter, the present invention will be described in detail with reference to the drawings.
[0016]
The rolling bearing of the present invention has no particular structural limitation except that it includes a seal member for sealing grease and preventing intrusion of moisture from the outside, and is shown, for example, as a cross-sectional view in FIG. The ball bearing 1 can be exemplified. The ball bearing 1 holds a plurality of balls 13, which are rolling elements, between an inner ring 10 and an outer ring 11 via a retainer 12 so as to freely roll. The formed bearing space S is filled with grease (not shown), which will be described later, and sealed by a seal member 14.
[0017]
In the present invention, the grease has a water content of 2% by mass or less, preferably 1% by mass. When the water content of the grease exceeds 2% by mass, the effect of suppressing white tissue peeling cannot be obtained as shown in Examples described later. In the present invention, the water content is based on the Karl Fischer method specified in JIS K2275. The Karl Fischer method is a method for measuring water in a subject using a Karl Fischer reagent (consisting of solvents such as iodine, sulfur dioxide, chlorine, and alcohol) that reacts selectively and quantitatively with water. . The Karl Fischer method is roughly classified into (1) coulometric titration and (2) volumetric titration. In the present invention, any titration may be used.
[0018]
The composition of the grease is not limited as long as the water content is 2% by mass or less, but the following base oils and thickeners are preferably used.
[0019]
[Base oil]
Polyglycols such as polyethylene glycol, polypropylene glycol, polyethylene glycol monoether, and polypropylene glycol monoether have high hygroscopicity. Therefore, in the present invention, a lubricating oil other than polyglycol is used as the base oil. The kinematic viscosity at 40 ° C. is preferably 10 to 400 mm 2 / sec in order to avoid generation of abnormal noise at low temperature startup due to insufficient low temperature fluidity of the grease and seizure caused by difficulty in forming an oil film at high temperature. More preferably, the base oil is 20 to 250 mm 2 / sec, more preferably 40 to 150 mm 2 / sec.
[0020]
From such a viewpoint, specific examples of the base oil include mineral oil-based, synthetic oil-based, and natural oil-based lubricating oils. As the mineral oil-based lubricating oil, those obtained by purifying mineral oil by appropriately combining vacuum distillation, solvent removal, solvent extraction, hydrocracking, solvent dewaxing, sulfuric acid washing, clay refining, hydrorefining, and the like are suitable. Examples of the synthetic oil-based lubricating oil include a hydrocarbon-based oil, an aromatic-based oil, an ester-based oil, and an ether-based oil. Examples of the hydrocarbon-based oil include normal paraffin, isoparaffin, polybutene, polyisobutylene, 1-decene oligomer, poly-α-olefin such as 1-decene and ethylene co-oligomer, and hydrides thereof. Examples of the aromatic oil include alkylbenzenes such as monoalkylbenzene and dialkylbenzene, and alkylnaphthalenes such as monoalkylnaphthalene, dialkylnaphthalene, and polyalkylnaphthalene. Examples of ester oils include dibutyl sebacate, di-2-ethylhexyl sebacate, dioctyl adipate, diisodecyl adipate, ditridecyl adipate, ditridecyl glutarate, diester oils such as methyl acetyl sinolate, and trioctyl trimellitate, Aromatic ester oils such as tridecyl trimellitate and tetraoctyl pyromellitate, and polyols such as trimethylolpropane caprylate, trimethylolpropaneperargonate, pentaerythritol-2-ethylhexanoate, and pentaerythritol belargonate Ester oils, and complex ester oils, which are oligoesters of a polyhydric alcohol and a mixed fatty acid of a dibasic acid / monobasic acid, and the like are also included. Examples of the ether oil include phenyl ether oils such as monoalkyltriphenyl ether, alkyldiphenylether, dialkyldiphenylether, pentaphenylether, tetraphenylether, monoalkyltetraphenylether, and dialkyltetraphenylether. Other synthetic lubricating oils include tricresyl phosphate, silicone oil, perfluoroalkyl ether and the like. Examples of the natural oil-based lubricating oil include oils and fats such as beef tallow, lard, soybean oil, rapeseed oil, rice bran oil, coconut oil, palm oil, palm kernel oil, and hydrides thereof. These base oils can be used alone or as a mixture, and are adjusted to the preferable kinematic viscosity described above.
[0021]
[Thickener]
As the thickener, a urea compound, a urea / urethane compound, a urethane compound, and a mixture thereof are used because the thickener has low hygroscopicity and excellent heat resistance. Specific examples thereof include a diurea compound, a triurea compound, a tetraurea compound, a polyurea compound, a urea / urethane compound, a diurethane compound, and a mixture thereof. In consideration of acoustic characteristics, it is particularly preferable to add a diurea compound.
[0022]
Further, the compounding amount of the thickener is not limited as long as it can form grease together with the base oil, but is preferably 10 to 35% by mass of the total amount of grease.
[0023]
[Additive]
Various additives can be added to the grease to enhance various performances, but it is necessary to select a grease having low hygroscopicity. Preferably, an antioxidant such as an amine, a phenol, a sulfur, or zinc dithiophosphate; an extreme pressure agent such as a chlorine, a sulfur, a phosphorous, zinc dithiophosphate, or an organic molybdenum; Rust inhibitor such as petroleum sulfonate, dinonylnaphthalene sulfonate, sorbitan ester; Metal deactivator such as benzotriazole; Viscosity index improver such as polymethacrylate, polyisobutylene, polystyrene, etc. alone or in combination of two or more Can be added. The amount of these additives is not particularly limited as long as the intended purpose of the present invention can be achieved, but is usually 20% by mass or less of the total amount of grease.
[0024]
[Production method]
The method for preparing the above grease is not particularly limited, but is generally obtained by reacting a thickener in a base oil. This operation is desirably performed in air having a lower dew point in order to prevent the intrusion of moisture from the outside air. The production conditions such as the heating time and the stirring / mixing time are appropriately set depending on the base oil, the thickener, the additives and the like to be used.
[0025]
The grease prepared in this manner has a mixing consistency of NLGI No. It is preferably from 1 to 3.
[0026]
【Example】
Hereinafter, the present invention will be described more specifically with reference to Examples, but the present invention is not limited thereto.
[0027]
(Preparation of test grease)
A first container was charged with a half amount of poly-α-olefin oil (PAO: kinematic viscosity 50 mm 2 / s, 40 ° C) and p-toluidine, and heated to 70 to 80 ° C. Half the amount of PAO and diphenylmethane diisocyanate were placed in a second container, heated to 70 to 80 ° C., and the contents were added to the first container and stirred. Although the temperature of the reaction product increased due to the heat of the reaction, stirring was continued in this state for about 30 minutes, and after the reaction was sufficiently performed, the temperature was raised and maintained at 170 to 180 ° C. for 30 minutes, followed by cooling. Thereafter, an antioxidant and a rust preventive were added so that the total amount was 5% by mass, and after sufficient kneading, the mixture was passed through a roll mill to mix with NLGI No. 2 was obtained to obtain a base grease. These series of operations were performed in dry air.
[0028]
Then, distilled water was mixed into the base grease to a concentration of 0.1 to 5% by mass to obtain a test grease. The water content after mixing with distilled water was measured by the Karl Fischer method. Table 1 summarizes the properties of the test grease.
[0029]
[Table 1]
[0030]
(Sudden acceleration / deceleration test)
2.3 g of the above test grease was sealed in a single-row deep groove ball bearing with a contact rubber seal having an inner diameter of 17 mm, an outer diameter of 47 mm, and a width of 14 mm to prepare a test bearing. Then, the peeling occurrence probability was obtained using the test apparatus shown in FIG. In the illustrated test apparatus, an inner ring of a test bearing 75 is fitted to an end of a shaft 70 supported by a pair of support bearings 71, 71, and an outer ring is further fixed to a holder 72. The rotation from a motor (not shown) is transmitted to the test bearing 75. Test, at room temperature, repeated with rapid deceleration to rapid acceleration and 14000~2000Min -1 to inner ring rotation speed 2000~14000Min -1, the test bearing 75 is continuously rotated in the condition of the pulley load 1570, the test bearing 75 The test was terminated when vibration occurred due to peeling of the outer ring rolling surface, or when vibration did not occur, at the time when 1000 hours had passed, and the presence or absence of white structure change was observed. The number of tests was 10 for each test bearing, and the peeling occurrence probability and white structure change occurrence probability were calculated from the number of occurrences of peeling and white structure change by the following formula.
Probability of peeling (%) = (number of times of peeling / number of tests) × 100
White structure change occurrence probability (%) = (white structure change occurrence number / test number) × 100
[0031]
FIG. 3 shows the results of peeling and white structure change by the above-mentioned rapid acceleration / deceleration test. If the water content is 2% by mass or less, the occurrence of peeling and white structure change is small, and particularly 1% by mass or less. It can be seen that almost no occurrence occurs. In addition, a change in white structure was observed inside the bearing raceway surface where the peeling occurred.
[0032]
【The invention's effect】
As described above, the present invention is excellent in the effect of suppressing white tissue exfoliation, and in particular, electrical components for automobiles such as alternators, electromagnetic clutches for car air conditioners, pulleys for compressors, idler pulleys, electric fan motors, water pumps, and engine supplements. It can be suitably applied to rolling bearings for machines.
[Brief description of the drawings]
FIG. 1 is a sectional view showing one embodiment of a rolling bearing of the present invention.
FIG. 2 is a schematic cross-sectional view showing a test apparatus used for a rapid acceleration / deceleration test in an example.
FIG. 3 is a graph showing the relationship between the water content of grease and the probability of occurrence of exfoliation or white structure change, obtained in an example.
[Explanation of symbols]
DESCRIPTION OF SYMBOLS 1 Ball bearing 10 Inner ring 11 Outer ring 12 Cage 13 Ball 14 Seal