JP2004168262A - 無重力発生方法及び無重力発生装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】鉛直上方向へ打ち上げると同時に真東方向へ初速度を与えることにより、コリオリの力による内カプセルの真西方向への変位を相殺させることによって、外カプセルを大きくすることなく、無重力時間を増加させる無重力発生方法及びその装置を提供する。
【解決手段】地球鉛直方向に延びるガイドレール1に沿って移動可能に設けられた外カプセル2に、空間的余裕をもって内カプセル3を収納し、外カプセル2と内カプセル3との間の空間を減圧して真空にした後、外カプセル2及び内カプセル3を鉛直上方向に打ち上げ、これらが自由落下して着地するまでの間、内カプセル3内部に無重力状態を発生させる無重力発生方法及びその装置であって、外カプセル2及び内カプセル3を打ち上げるときに、内カプセル3に対して、真東方向に所定の初速度を与える。
【選択図】 図1
【解決手段】地球鉛直方向に延びるガイドレール1に沿って移動可能に設けられた外カプセル2に、空間的余裕をもって内カプセル3を収納し、外カプセル2と内カプセル3との間の空間を減圧して真空にした後、外カプセル2及び内カプセル3を鉛直上方向に打ち上げ、これらが自由落下して着地するまでの間、内カプセル3内部に無重力状態を発生させる無重力発生方法及びその装置であって、外カプセル2及び内カプセル3を打ち上げるときに、内カプセル3に対して、真東方向に所定の初速度を与える。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、地球での自由落下を利用した無重力発生方法及び無重力発生装置に関するものであり、特にコリオリの力による東西方向への変位を減少させる技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
無重力状態においては、沈降や対流がなくなる等、重力の作用する地上とは異なる現象が発生するので、その環境を生かして、燃焼、新材料の生成等の実験が行われている。
【0003】
このような無重力状態となるのは、例えば、地球上空の大気圏外を周回する人工衛星内が知られているが、人工衛星を打ち上げるには多額の費用が必要とされるので、その内部ではごく限られた少数の実験しか行えなかった。
【0004】
ところで、真空中を自由落下する物体には重力による加速度のみが働き、その物体内では何らの加速度運動も生じないので、無重力状態を作り出せる事が知られている。
【0005】
そこで、この現象を利用して、特開平6−16200号公報(特許文献1)に示されているように、自由落下型無重力発生装置が地上に設けられ、無重力状態の中で無重力実験が行われていた。この自由落下型無重力発生装置は、真空状態にした外カプセルの内部に、中空の内カプセルを収納し、外カプセルをガイドレールに沿って自由落下させるものである。このようにすると自由落下時には内カプセルの内部では無重力状態となる。
【0006】
ところが、上記のような自由落下型無重力発生装置では、ガイドレールの鉛直方向長さにより落下距離が定まるので、落下時間が制限されてしまう。現在、世界最大級の落下距離を持つ地下無重力実験センターにおいても、落下距離は490(m)であるので、落下時間が10秒といった極めて短い時間しか無重力状態が得られない。そのため、その内部で行える無重力実験は限られていた。このような自由落下型無重力発生装置で落下時間を2倍の20秒にするには、落下距離を4倍の1960(m)にする必要があり、その長さのガイドレールを設けるには、費用や技術上の問題より極めて困難であった。
【0007】
そこで、無重力状態の時間を更に長くするために、特開平11−34999号公報(特許文献2)に示されているような打上げ型無重力発生装置が提案された。この打上げ型無重力発生装置は、上記のような外カプセル及び内カプセルを、ガイドレールに沿って鉛直上方向へ打ち上げて、そのまま自由落下させるものである。このようにすると、打ち上げてから着地するまでの間、無重力状態となるので、自由落下型無重力発生装置と比較して、同じ落下距離であっても、2倍の無重力状態の時間が得られる。
【0008】
【特許文献1】
特開平6−16200号公報
【特許文献2】
特開平11−34999号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような自由落下型無重力発生装置及び打上げ型無重力発生装置のいずれにおいても、無重力状態を得るためには、上昇及び落下時に内カプセルが外カプセルの内壁面に触れないようにして、内カプセルに加速度が生じないようにすることが必要である。
【0010】
ところが、内カプセルにはコリオリの力が作用するので、上昇及び落下時に外カプセルに対して東西方向へ変位する。北緯43度の地点にある地下無重力実験センターでは、490(m)自由落下させた場合には、内カプセルは真東方向へ174(mm)変位する。また、1960(m)自由落下させた場合では、内カプセルは真東方向へ1390(mm)変位してしまう。
【0011】
従って、内カプセルを外カプセルに接触しないようにするために、変位する分の余裕を考慮して、内カプセルを外カプセルの内部の空間より小さくしなければならない。地下無重力実験センターでは、490(m)落下させたときに、内カプセルは174(mm)真東方向へ変位するので、落下前に外カプセル中心から87(mm)真西方向へ変位して設置させることで、490(m)落下後には、外カプセル中心から87(mm)真東方向へ変位した地点に着地するようになっている。なお、ここで使用されている外カプセルの内径は1800(mm)、内カプセルの外径は1400(mm)であるので、東西方向の余裕は400(mm)ある。従って、490(m)の自由落下に対しては、十分な余裕があるが、1960(m)自由落下させるには、東西方向の余裕が大幅に不足し、落下時に内カプセルが外カプセルに接触してしまう。
【0012】
このため、従来の施設を改造して、内カプセルを小さくせずに無重力時間を増加させるには、外カプセルの内径を大きくしなければならない。すると、外カプセルの外形も大きくしなければならず、それに合わせて、ガイドレールの間隔も広げなければならない。地下無重力実験センターでは、ガイドレールは鉛直下方向へ向かって掘り下げられた縦穴に沿って設けられているので、縦穴の直径を広げるなど大幅な改造が必要となり、多大な改造費用が必要となってしまう。
【0013】
そこで、本発明は以上のような従来の問題点に鑑み、鉛直上方向へ打ち上げると同時に真東方向へ初速度を与えることにより、コリオリの力による内カプセルの東西方向への変位を減少させることによって、外カプセルを大きくすることなく、無重力時間を増加させる無重力発生方法及びその装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
このため、請求項1記載の発明では、地球鉛直方向に延びるガイドレールに沿って移動可能に設けられた外カプセルに、空間的余裕をもって内カプセルを収納し、前記外カプセルと内カプセルとの間の空間を減圧して真空にした後、前記外カプセル及び内カプセルを鉛直上方向に打ち上げ、これらが自由落下して着地するまでの間、前記内カプセルの内部に無重力状態を発生させる無重力発生方法であって、前記外カプセル及び内カプセルを打ち上げるときに、前記内カプセルに対して、真東方向に所定の初速度を与えることを特徴とする。
【0015】
かかる構成によれば、外カプセル及び内カプセルを鉛直上方向へ打ち上げるときに、内カプセルに対して真東方向に所定の初速度を与えるので、コリオリの力による内カプセルの真西方向への変位が相殺され、東西方向への変位が減少する。これにより、外カプセルを大きくすることなく、無重力時間を増加させることができる。
【0016】
請求項2記載の発明は、前記所定の初速度は、自由落下距離をZ(m)、地球の自転に係る角速度をω(rad/sec)、打上げ地点の緯度をφ(rad)としたときに、(3/2)ZωCOSφ(m/sec)で表されることを特徴とする。
【0017】
かかる構成によれば、外カプセル及び内カプセルが鉛直上方向に打ち上げられ自由落下して着地するまでの間の前記内カプセルの東西方向への変位が最小となる。
請求項3記載の発明は、地球に固定されつつ鉛直方向に延びるガイドレールと、前記ガイドレールに沿って移動可能に設けられる外カプセルと、前記外カプセルに空間的余裕を持って収納される内カプセルと、前記外カプセルと内カプセルとの間の空間を減圧して真空にする真空手段と、前記外カプセル及び内カプセルを鉛直上方向へ打ち上げる打上げ手段と、前記打上げ手段により前記外カプセル及び内カプセルが打ち上げられるときに、前記内カプセルに対して、真東方向に所定の初速度を与える初速度付与手段と、を含んで構成されたことを特徴とする。
【0018】
かかる構成によれば、外カプセル及び内カプセルが打ち上げられ自由落下して着地するまでの間、内カプセル内部に無重力状態が発生する。そして、打上げ手段により外カプセル及び内カプセルが打ち上げられるときに、初速度付与手段により内カプセルが真東方向に所定の初速度を与えられるので、内カプセルのコリオリの力による東西方向への変位が相殺され、減少する。これにより、外カプセルを大きくすることなく、無重力時間を増加させることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、添付された図面を参照して本発明を詳述する。
本発明に係る無重力発生装置は、図1に示すように、地表から鉛直下方向へ掘削された断面が略円形の縦穴に沿って、一対のガイドレール1が設けられている。そして、この縦穴の中をガイドレール1に沿って鉛直方向へ移動可能に、上下端が閉塞された略円筒形状の外カプセル2が設けられている。
【0020】
外カプセル2の内部は、減圧されて真空空間2aとなっている。更に、真空空間2a内には上下端が閉塞された略円筒形状の内カプセル3が設けられている。内カプセル3は、真空空間2a内で自由に移動できるように、外カプセル2より小さくなっている。
【0021】
一方、ガイドレール1の下端近傍には、打上げ装置4(打上げ手段)が設置されている。打上げ装置4は、外カプセル2を鉛直上方向へ打ち上げることができる。
【0022】
更に、ガイドレール1の下端近傍には、制動装置5が設けられている。制動装置5は、例えば、エアダンパであり、落下してきた外カプセル2を制動し、停止させる。
【0023】
また、内カプセル3には、初速度付与装置3a(初速度付与手段)が設けられている。初速度付与装置3aは、内カプセル3を図中右方向である真東方向へ加速し、所定の初速度を与えることができる。ここでの真東方向とは、地球の自転軸に対して直交する方向であって、自転方向をいう(以下同様)。なお、初速度付与装置3aは、内カプセル3に設けられるだけではなく、外カプセル2に設けられてもよい。
【0024】
以下、このような無重力発生装置を用いた無重力発生方法について説明する。
まず、内カプセル3内の空間3bに実験装置を設置し、空間3bを閉塞する。
次に、内カプセル3を外カプセル2内に収納する。そして、外カプセル2内の空間を閉塞し、例えば真空ポンプを用いて真空状態にし、真空空間2aとする。
【0025】
それから、外カプセル2をガイドレール1の下端に位置させる。このとき、内カプセル3は、重力により外カプセル2内部の底面2bに接触している。
ここで、打上げ装置4を用いて、外カプセル2を鉛直上方向へ打ち上げる。すると、内カプセル3も同時に外カプセル2と同じ初速度で鉛直上方向へ打ち上げられることとなる。
【0026】
すると、外カプセル2は重力及び空気抵抗により徐々に速度が低下する。しかし、内カプセル3は真空空間2a内にあるので、空気抵抗による速度低下は発生せず、重力のみにより速度が低下し、内カプセル3の鉛直上方向への速度が外カプセル2の鉛直上方向への速度より大きくなる。これにより、内カプセル3は外カプセル2の真空空間2a内を浮遊することとなる。
【0027】
それから、外カプセル2及び内カプセル3は、ガイドレール1の上端近傍まで上昇し、ここで鉛直方向の速度が0となって、重力により落下する。このときも、空気抵抗により、外カプセル2の落下速度は内カプセル3の落下速度より小さくなるので、内カプセル3は、外カプセル2に対し徐々に落下する。
【0028】
そして、外カプセル2は、ガイドレール1の下端近傍まで落下すると、制動装置5により減速され、内カプセル3とともに着地する。
なお、打上げ時には、更に、初速度付与装置3aにより、内カプセル3を真東方向へ加速させ、所定の初速度を与える。これにより、内カプセル3は、外カプセル2に対し、コリオリの力により東西方向へ変位するだけでなく、初速度付与装置3aによって真東方向へ変位する。従って、コリオリの力による内カプセル3の真西方向への変位が相殺され、東西方向への変位を減少させることができる。
【0029】
このようにして、打上げから着地までの間、内カプセル3は、外カプセル2内の内壁に触れることなく真空空間2a内を浮遊するので、内カプセル3の空間3b内は、無重力状態となる。つまり、打上げから着地までの間に内カプセル3内に設置された実験装置により無重力実験が可能となる。
【0030】
ここで、打上げ時に内カプセル3に真東方向へ初速度を与えることによって、内カプセルの東西方向への変位が減少する効果を確認する。
まず、図2を参考にして、物体が地表から打ち上げられ、自由落下するときの運動方程式を求める。
【0031】
図中のPは、自由落下する物体の時間t=0のときの位置、Oは地球中心かつ重力中心、Nは北極点、Qは緯度φ面での地球中心、iはベクトルQPの単位ベクトル、kはベクトルONの単位ベクトル(緯度φ面の法線方向)、jはベクトルiとkに直交する単位ベクトル(j=k×i)(×はベクトル積を表す、以下同様)、Iは点Pにおける真東方向の単位ベクトル(jに一致する)、Kは点Pにおける鉛直上方向の単位ベクトル、Jは点Pにおける真北方向の単位ベクトル(J=K×I)である。すなわち、点Pに人が立った時にその人から見て真東方向がI、真北方向がJ、真上方向がKとなる。
【0032】
また、ωは地球自転角速度でありω=2π/(24×3600)=7.272×10−5(rad/sec)、tは時間(sec)、φは緯度(rad)、rはOからPに向かうベクトルでOからの距離がr1(m)、xはrのi方向成分、yはrのj方向成分、zはrのk方向成分、GはPからOに向かい、大きさが重力の加速度g(9.8(m/sec2))であるベクトル(Kと逆方向であり、G=−gK)、R1は地球の半径(40000(km)/(2π)=6366×103(m))、Fはijk座標系における物体に作用する外力ベクトル、mは自由落下する物体の質量(kg)、RはOからPに向かうベクトル(Oからの距離がr1(m))、XはRのI方向成分、YはRのJ方向成分、ZはRのK方向成分、Ωは角速度ベクトル(大きさがωでk方向のベクトル、Ω=ωk)、VXはI方向への初速度(真東方向への初速度)、VyはJ方向の初速度(真北方向への初速度)、VzはK方向の初速度(鉛直上方向への初速度)とする。
【0033】
物体の運動方程式はijk座標系で表すと、以下の(1)式で表される。
mr”=F+2mr’×Ω+mΩ×(r×Ω)・・・(1)
なお、’は1回微分、”は2回微分することを表す(以下同様)。
【0034】
この(1)式の右辺の第1項であるFはこの物体に作用する外力、第2項である2mr’×Ωはコリオリの力、第3項であるmΩ×(r×Ω)は遠心力である。第1項の大きさはmg程度であるが、第3項の大きさはm10−10(m/sec2)程度であるので、第3項は第1項と比較して極めて小さいので無視できる。
【0035】
また、物体に作用する外力Fは、質量mの物体が自由落下もしくは自由飛行をする場合には、重力方向のみの力が働くので、F=λmG(λは地球の場合λ=1、月の場合λ=0.167、火星の場合λ=0.333となるスカラー量)となる。
【0036】
これにより、(1)式の第3項を省き両辺からmを消去すると、以下の(2)式となる。
r”=λG+2r’×Ω・・・(2)
ここで、ijk座標系で表された(1)式をIJK座標系に変換する。IJK座標系とは、地上において、東西、南北、鉛直の方向で表した座標系である。
r”=R”、r’=R’、G=−g(COSφ)i+0j−g(SINφ)k=−gK、
Ω=ωk=0I+ω(COSφ)J+ω(SINφ)Kであるので、
【0037】
【数1】
【0038】
すると、(2)式は、以下の式となる。
【0039】
【数2】
【0040】
一方、R”=(X”I+Y”J+Z”K)であるので、上記の式から各成分ごとに書き出すと、以下の(3)、(4)、(5)式になる。
X”=2(Y’ωSINφ−Z’ωCOSφ)・・・(3)
Y”=−2X’ωSINφ・・・(4)
Z”=−λg+2X’ωCOSφ・・・(5)
これらの微分方程式に初期条件(t=0において、X=Y=Z=0、X’=VX、Y’=Vy、Z’=Vz)を代入して解く。
【0041】
まず、(3)、(4)、(5)式の左辺と右辺を夫々比較すると、左辺はg程度すなわち10程度の大きさであり、右辺はωが10−4程度であるので、(3)、(4)、(5)式は近似的に以下の式となる。
【0042】
X”=0、Y”=0、Z”=−λg
これらの式を1回積分して初期条件を代入すると、以下の式となる。
X’=VX、Y’=Vy、Z’=−λgt+Vz
そして、これらの式を(3)、(4)、(5)式に代入すると、以下の(6)、(7)、(8)式になる。
【0043】
X”=2(VyωSINφ−(−λgt+Vz)ωCOSφ)・・・(6)
Y”=−2VXωSINφ・・・(7)
Z”=−λg+2VXωCOSφ・・・(8)
これらの式を2回積分し、初期条件及びλ=1を代入すると以下の(9)、(10)、(11)式になる。
【0044】
X=VXt+ω(VySINφ−VzCOSφ)t2+(1/3)gω(COSφ)t3・・・(9)
Y=Vyt−VXω(SINφ)t2・・・(10)
Z=Vzt+2VXω(COSφ)t2−(1/2)gt2・・・(11)
ここで、(9)、(10)、(11)式を用いて、例えば、緯度(φ)が北緯43度の地点に、落下距離490(m)の、各種無重力発生装置を設けたときに得られる無重力時間及び東西方向への変位を求める。なお、北緯43度の地点では、φ=0.7505(rad)であるので、COSφ=0.7314、SINφ=0.682である。
1)自由落下型無重力発生装置
まず、本装置により得られる無重力時間を求める。得られる無重力時間は、内カプセル3が落下距離490(m)を落下するときの落下時間tである。自由落下なのでVz=0、Z=−490の条件を(11)式に代入すると以下の式となる。
【0045】
−490=0t+0ω(COSφ)t2−(1/2)gt2=−(1/2)gt2
これを解くとt=10となる。
これにより、落下距離490(m)での落下時間tつまり得られる無重力時間は10秒となる。
【0046】
次に、内カプセル3の東西方向への変位を求める。これは、内カプセル3が着地した時間t=10のときの東西方向への変位X1に一致する。VX=Vy=Vz=0、COSφ=0.7314などの条件を(9)式に代入してX1を求める。
【0047】
内カプセル3の南北方向への変位Y1を求める。(10)式にVX=Vy=0を代入して求める。
【0048】
Y1=0t−0ω(SINφ)t2=0
これにより、内カプセル3の東西方向への変位は真東方向へ0.1737(m)であり、南北方向へは変位しないことがわかる。
2)従来の打上げ型無重力発生装置
まず、鉛直上方向へ490(m)打ち上げる鉛直方向の初速度Vzを求める。Vx=0なので、これを(11)式に代入すると以下の式となる。
【0049】
Z=Vzt−(1/2)gt2・・・(12)
一方、490(m)上昇時には鉛直方向の速度が0になるので、この式を微分してZ’=0を代入すると、以下の式となる。
【0050】
0=Vz−gt・・・(13)
この(13)式を(12)式に代入する。
Z=gtt−(1/2)gt2=(1/2)gt2
この式にZ=490を代入して、tを求める。
【0051】
490=(1/2)gt2=(1/2)9.8t2
これを解くとt=10となる。
従って、打ち上げてから10秒後に、内カプセル3は490(m)上昇して、その後落下する。t=10を(13)式に代入すれば、鉛直方向の初速度Vzが求められる。
【0052】
0=Vz−10g
Vz=10g=98(m/sec)
これにより、490(m)上昇するために必要な鉛直方向の初速度は、上方向へ98(m/sec)であることがわかる。
【0053】
そして、490(m)落下する時間は、1)で求めたように10秒であるから、打ち上げてから490(m)上昇して、着地するまでの時間は10+10=20秒である。つまり、得られる無重力時間は20秒である。
【0054】
次に、内カプセル3の東西方向への変位を求める。これは、内カプセル3が着地したときの東西方向への変位X2と一致する。t=20のときの東西方向への変位X2を求めればよいので、(9)式にVx=Vy=0、Vz=10g等の条件を代入して計算する。
【0055】
内カプセル3の南北方向への変位Y2を求める。(10)式にVx=Vy=0を代入して求める。
【0056】
Y2=0t−0ω(SINφ)t2=0
これにより、内カプセル3の東西方向への変位は真西方向へ0.695(m)であり、南北方向へは変位しないことがわかる。
3)本発明の打上げ型無重力発生装置
まず、南北方向への初速度Vyについて検討する。
【0057】
東西方向への変位Xに対するVyによる影響は、(9)式中のωVy(SINφ)t2により表される。このωVy(SINφ)t2と(9)式中の他項のVxtとを比較すると、ωVy(SINφ)t2はVxtに対し極めて小さい。すなわち、Xを0に近づけようと、Vyを大きな値としても、Vxに対して極めて大きな値としなければならない。そうすると、(10)式で求められる南北方向への変位Yが極めて大きな値となってしまう。これにより、Vyの最適値は0であることがわかる。
【0058】
次に、内カプセル3の真東方向への初速度Vxについて検討する。
(9)式にVy=0、Vz=10gを代入してまとめる。
X=Vxt−ω10g(COSφ)t2+(1/3)gω(COSφ)t3
ここで、Vx=χgωCOSφとすると、
この(14)式は、tに関する原点を通る3次曲線であり、横軸をt、縦軸をXとしてグラフに表すと図3のようになる。
【0059】
χ<0であるときは、コリオリの力による東西方向への変位と同じ方向へ初速を与えることであるので、2)のときのような真東方向へ初速を与えないときより更に真西方向への変位が増加してしまう。
【0060】
χ=0であるときは、2)のときのように真東方向へ初速を与えないときを表す。
0<χ<75であるときは、Xは0以外の実解t1、t2を持つ。そして、0〜t1の間及びt1〜t2の間に、極値Xa(>0)、Xb(<0)が存在する。つまり、t=0〜20秒までの間の東西方向への変位の最大差Hは、H=Xa−Xbとなる。
【0061】
χ=75であるときは、t1=t2の場合であり、0<χ<75のときと同様に内カプセル3の東西方向への変位の最大差Hが求められる。
75<χであるときは、0以外のtの実解がない。この場合の曲線は極値を持たない単調増加曲線となる。これは、真東方向へ極めて大きい初速度を与えた場合に相当し、上昇時も下降時も真東方向へ移動しつづける。従って、このときは、東西方向への変位の最大差Hは、t=20のときの真東方向への変位Xと一致する。
【0062】
ここで、東西方向への変位の最大差Hを最小にするχを求める。0<χ≦75のときには、X=0となる実根0、t1、t2(0<t1≦t2)が存在して、0〜t1、t1〜t2の間に夫々、極大点、極小点が存在する。その値をそれぞれ、極大値(t01、Xa)、極小値(t12、Xb)とする。
【0063】
Xa≧0、Xb≦0であるので、H=Xa−Xbとして、このHが最小になるχを求めればよい。つまり、dH/dχ=0となるχを求めればよい。なお、式を分かりやすくするために、E=(1/3)gωCOSφとすると、(14)式は、以下の(15)式となる。
【0064】
X=Et(3χ−30t+t2)・・・(15)
この式の実根t1、t2は、3χ−30t+t2=0から、t1=15−(152−3χ)1/2、
t2=15+(152−3χ)1/2となる。従って、t1−t2=−2(152−3χ)1/2、
t1+t2=30、t1t2=3χとなる。
【0065】
(15)式を微分すると以下の式となる。
X’=E(3χ−60t+3t2)=3E(χ−20t+t2)
この式より、極値を取る実根t01、t12は、χ−20t+t2=0から、
t01=10−(102−χ)1/2、t12=10+(102−χ)1/2となる。
【0066】
H=Xa−Xbを計算する。
【0067】
【数3】
【0068】
ここで、t01−t12=−2(10−χ)1/2、t01+t12=20、t01t12=χを(16)式に代入すると、以下の式となる。
この(17)式により、χが与えられたときの内カプセル3の東西方向への変位の最大差Hが求められる。
【0069】
ここで、(17)式を1回微分すると、dH/dχ=−6E(102−χ)1/2となる。dH/dχ=0とすると、χ=100となる。従って、χが100に近づくにつれてHは小さくなる。しかしながら、χ>75の範囲ではH=Xa−Xbではなく、Hはt=20のときの真東方向への変位Xと一致するので、χ=75のときがHの最小値となる。
【0070】
一方、(11)式に示されているように、鉛直方向の変位Zは、Vxによって影響を受ける。それは、(11)式の第2項の2Vxω(COSφ)t2によって表される。ところが、この値は第3項の(1/2)gt2と比較すると、極めて小さいので無視できる。
【0071】
従って、(11)式は以下の(18)式としても問題ない。
Z=Vzt−(1/2)gt2・・・(18)
次に、χ=75のときの内カプセル3の軌跡について検討する。χ=75のときの真東方向への初速度Vxを計算する。
【0072】
これにより、χ=75のときの真東方向への初速度Vxは、0.03909(m/sec)であることがわかる。
【0073】
内カプセル3の東西方向への変位X3を計算する。(14)式にχ=75を代入して計算する。
これをグラフに表すと 図4のようになる。
【0074】
すなわち、真上方向へ初速度Vz=98(m/sec)、真東方向へ初速度Vx=0.03909(m/sec)で打ち上げると、鉛直上方向へ上昇しながら、真東方向へ移動し、5秒後に、打上げ地点から真東方向へ0.08685(m)の位置に到達する。その後、真西方向へ移動しながら、上昇を続け、10秒後に真東方向へ0.035043(m)の位置に到達する。このとき、鉛直方向の速度が0となり、真西方向へ移動しながら自由落下を始める。打上げから15秒後に東西方向への変位が0となり、以後再び真東方向へ移動しながら、20秒後に真東方向へ0.08685(m)の位置に着地する。
【0075】
このときの内カプセル3の南北方向への変位Y3を計算する。(10)式にVy=0、Vx=χgωCOSφを代入して計算する。
これにより、t=20のときは、Y3=1.933×10−6×202=−0.7732×10−3(m)となるので、真南方向へ0.7732(mm)変位することとなる。これは東西方向の変位X3と比較して極めて小さいので、設計上は考慮する必要がない。
【0076】
次に、内カプセル3が打上げ地点と同じ位置に着地する場合を検討する。これは、初速を与える機構を内カプセル3または外カプセル2内に設ける際に、設計の自由度を確保する上で重要である。
【0077】
このような場合は、t=20で、X=0となるχを求めればよい。(14)式にこの条件を代入してχを求める。
0=(1/3)gω(COSφ)20(3χ−30×20+202)
従って、0=3χ−600+400となる。これを解くとχ=200/3となる。
【0078】
χ=200/3のときの内カプセル3の真東方向への初速度Vxを求める。
これにより、χ=200/3のときの内カプセル3の真東方向の初速度Vxは、0.03475(m/sec)であることがわかる。
【0079】
このときの内カプセル3の東西方向への変位X4を求める。(14)式にχ=200/3を代入して計算する。
これをグラフに表すと 図4のようになる。
【0080】
すなわち、内カプセル3を真上方向へ初速度Vz=98(m/sec)、真東方向へ初速度Vx=0.03475(m/sec)で打ち上げると、鉛直上方向へ上昇しながら、真東方向へ変位し、4.226秒後に、真東方向へ0.06684(m)の位置に到達する。その後、真西方向へ変位しながら上昇を続け、10秒後に東西方向へ0(m)の位置に到達する。このとき、鉛直方向の速度が0となり、真西方向へ移動しながら自由落下を始める。そして、打上げから15.77秒後に真西方向へ0.06684(m)の位置に到達する。以後再び真東方向へ変位しながら、20秒後に東西方向へ0(m)の位置つまり打上げ地点へ着地する。なお、以上の場合における東西方向の変位の最大差は、0.06684−(−0.06684)=0.1337(m)となる。
【0081】
これは、(17)式からも同様に求められる。
なお、このときの内カプセル3の南北方向への変位Y4を求める。(10)式にVy=0、Vx=χgωCOSφを代入して計算する。
【0082】
これにより、t=20(sec)のときは、
Y4=1.718×10−6×202=−0.6872×10−3(m)となるので、真南方向へ0.6872(mm)変位することとなる。これは、東西方向への変位X4と比較しても極めて小さいので、設計上は考慮する必要がない。
【0083】
以上の実施例においては、北緯43度の地点にあり、落下距離が490(m)の地下無重力実験センターにおいて本発明の無重力発生装置を使用した無重力発生方法を実施した場合を述べたが、地球の他の場所で、落下距離が相違する場合でも同様に実施できる。
【0084】
以下、北緯48度の地点に706(m)の落下距離を有する打上げ型無重力発生装置の場合について、内カプセル3の真東方向への初速及び東西方向への変位を求める。
【0085】
まず、得られる無重力時間を求める。Z=(1/2)gt2にZ=706を代入すると、706=(1/2)gt2となり、これを解くとt=12となる。このtは706(m)を自由落下する時間である。従って、無重力時間は落下時間の2倍であるので24秒となる。そして、706(m)打ち上げるのに必要な上方向への初速度Vzは、(13)式よりVz=gt=12gとなる。
【0086】
真東方向へ初速度を与えない場合の、内カプセル3の東西方向への変位X5を求める。(9)式にVx=Vy=Vz=0、COS48(度)=COS0.8378(rad)=0.6691などの条件を代入する。
【0087】
次に、東西方向への変位差を最も小さくする初速度Vxを与えたときの、内カプセル3の東西方向への変位の最大差Hを求める。なお、Hを最小にするχは、χ=(3/4)t2で求められるので、χ=108である。
【0088】
このときの内カプセル3の真東方向への初速度Vxを求める。
【0089】
すなわち、打上げと同時に真東方向へ初速度Vx=0.05150(m/sec)を内カプセル3に与えると、コリオリの力による内カプセル3の東西方向への変位を最大1.098(m)から0.1373(m)へ減少させることができる。
【0090】
なお、Z=(1/2)gt2及びχ=(3/4)t2を用いて、上記のVx=χgωCOSφを変形するとVx=(3/2)ZωCOSφとなる。これにより、真東方向への初速度Vxは、この式を用いて容易に算出することもできる。
【0091】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1または3記載の発明によれば、コリオリの力による内カプセルの東西方向への変位が減少するので、外カプセルを大きくすることなく、無重力時間を増加させることができる。これにより、大幅な改造を必要とせずに、自由落下型無重力発生装置を打上げ型無重力発生装置に改造できる。
【0092】
請求項2記載の発明によれば、内カプセルの東西方向への変位が最小となる。また、内カプセルの真東方向への初速度を自由落下距離及び打上げ地点の緯度に応じて容易に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の無重力発生装置の構造図
【図2】内カプセルの座標系の説明図
【図3】内カプセルの東西方向への変位を示すグラフ
【図4】内カプセルの東西方向及び鉛直方向への移動経過を示すグラフ
【符号の説明】
1 ガイドレール
2 外カプセル
2a 真空空間
3 内カプセル
3a 初速度付与装置
3b 空間
4 打上げ装置
【発明の属する技術分野】
本発明は、地球での自由落下を利用した無重力発生方法及び無重力発生装置に関するものであり、特にコリオリの力による東西方向への変位を減少させる技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
無重力状態においては、沈降や対流がなくなる等、重力の作用する地上とは異なる現象が発生するので、その環境を生かして、燃焼、新材料の生成等の実験が行われている。
【0003】
このような無重力状態となるのは、例えば、地球上空の大気圏外を周回する人工衛星内が知られているが、人工衛星を打ち上げるには多額の費用が必要とされるので、その内部ではごく限られた少数の実験しか行えなかった。
【0004】
ところで、真空中を自由落下する物体には重力による加速度のみが働き、その物体内では何らの加速度運動も生じないので、無重力状態を作り出せる事が知られている。
【0005】
そこで、この現象を利用して、特開平6−16200号公報(特許文献1)に示されているように、自由落下型無重力発生装置が地上に設けられ、無重力状態の中で無重力実験が行われていた。この自由落下型無重力発生装置は、真空状態にした外カプセルの内部に、中空の内カプセルを収納し、外カプセルをガイドレールに沿って自由落下させるものである。このようにすると自由落下時には内カプセルの内部では無重力状態となる。
【0006】
ところが、上記のような自由落下型無重力発生装置では、ガイドレールの鉛直方向長さにより落下距離が定まるので、落下時間が制限されてしまう。現在、世界最大級の落下距離を持つ地下無重力実験センターにおいても、落下距離は490(m)であるので、落下時間が10秒といった極めて短い時間しか無重力状態が得られない。そのため、その内部で行える無重力実験は限られていた。このような自由落下型無重力発生装置で落下時間を2倍の20秒にするには、落下距離を4倍の1960(m)にする必要があり、その長さのガイドレールを設けるには、費用や技術上の問題より極めて困難であった。
【0007】
そこで、無重力状態の時間を更に長くするために、特開平11−34999号公報(特許文献2)に示されているような打上げ型無重力発生装置が提案された。この打上げ型無重力発生装置は、上記のような外カプセル及び内カプセルを、ガイドレールに沿って鉛直上方向へ打ち上げて、そのまま自由落下させるものである。このようにすると、打ち上げてから着地するまでの間、無重力状態となるので、自由落下型無重力発生装置と比較して、同じ落下距離であっても、2倍の無重力状態の時間が得られる。
【0008】
【特許文献1】
特開平6−16200号公報
【特許文献2】
特開平11−34999号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような自由落下型無重力発生装置及び打上げ型無重力発生装置のいずれにおいても、無重力状態を得るためには、上昇及び落下時に内カプセルが外カプセルの内壁面に触れないようにして、内カプセルに加速度が生じないようにすることが必要である。
【0010】
ところが、内カプセルにはコリオリの力が作用するので、上昇及び落下時に外カプセルに対して東西方向へ変位する。北緯43度の地点にある地下無重力実験センターでは、490(m)自由落下させた場合には、内カプセルは真東方向へ174(mm)変位する。また、1960(m)自由落下させた場合では、内カプセルは真東方向へ1390(mm)変位してしまう。
【0011】
従って、内カプセルを外カプセルに接触しないようにするために、変位する分の余裕を考慮して、内カプセルを外カプセルの内部の空間より小さくしなければならない。地下無重力実験センターでは、490(m)落下させたときに、内カプセルは174(mm)真東方向へ変位するので、落下前に外カプセル中心から87(mm)真西方向へ変位して設置させることで、490(m)落下後には、外カプセル中心から87(mm)真東方向へ変位した地点に着地するようになっている。なお、ここで使用されている外カプセルの内径は1800(mm)、内カプセルの外径は1400(mm)であるので、東西方向の余裕は400(mm)ある。従って、490(m)の自由落下に対しては、十分な余裕があるが、1960(m)自由落下させるには、東西方向の余裕が大幅に不足し、落下時に内カプセルが外カプセルに接触してしまう。
【0012】
このため、従来の施設を改造して、内カプセルを小さくせずに無重力時間を増加させるには、外カプセルの内径を大きくしなければならない。すると、外カプセルの外形も大きくしなければならず、それに合わせて、ガイドレールの間隔も広げなければならない。地下無重力実験センターでは、ガイドレールは鉛直下方向へ向かって掘り下げられた縦穴に沿って設けられているので、縦穴の直径を広げるなど大幅な改造が必要となり、多大な改造費用が必要となってしまう。
【0013】
そこで、本発明は以上のような従来の問題点に鑑み、鉛直上方向へ打ち上げると同時に真東方向へ初速度を与えることにより、コリオリの力による内カプセルの東西方向への変位を減少させることによって、外カプセルを大きくすることなく、無重力時間を増加させる無重力発生方法及びその装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
このため、請求項1記載の発明では、地球鉛直方向に延びるガイドレールに沿って移動可能に設けられた外カプセルに、空間的余裕をもって内カプセルを収納し、前記外カプセルと内カプセルとの間の空間を減圧して真空にした後、前記外カプセル及び内カプセルを鉛直上方向に打ち上げ、これらが自由落下して着地するまでの間、前記内カプセルの内部に無重力状態を発生させる無重力発生方法であって、前記外カプセル及び内カプセルを打ち上げるときに、前記内カプセルに対して、真東方向に所定の初速度を与えることを特徴とする。
【0015】
かかる構成によれば、外カプセル及び内カプセルを鉛直上方向へ打ち上げるときに、内カプセルに対して真東方向に所定の初速度を与えるので、コリオリの力による内カプセルの真西方向への変位が相殺され、東西方向への変位が減少する。これにより、外カプセルを大きくすることなく、無重力時間を増加させることができる。
【0016】
請求項2記載の発明は、前記所定の初速度は、自由落下距離をZ(m)、地球の自転に係る角速度をω(rad/sec)、打上げ地点の緯度をφ(rad)としたときに、(3/2)ZωCOSφ(m/sec)で表されることを特徴とする。
【0017】
かかる構成によれば、外カプセル及び内カプセルが鉛直上方向に打ち上げられ自由落下して着地するまでの間の前記内カプセルの東西方向への変位が最小となる。
請求項3記載の発明は、地球に固定されつつ鉛直方向に延びるガイドレールと、前記ガイドレールに沿って移動可能に設けられる外カプセルと、前記外カプセルに空間的余裕を持って収納される内カプセルと、前記外カプセルと内カプセルとの間の空間を減圧して真空にする真空手段と、前記外カプセル及び内カプセルを鉛直上方向へ打ち上げる打上げ手段と、前記打上げ手段により前記外カプセル及び内カプセルが打ち上げられるときに、前記内カプセルに対して、真東方向に所定の初速度を与える初速度付与手段と、を含んで構成されたことを特徴とする。
【0018】
かかる構成によれば、外カプセル及び内カプセルが打ち上げられ自由落下して着地するまでの間、内カプセル内部に無重力状態が発生する。そして、打上げ手段により外カプセル及び内カプセルが打ち上げられるときに、初速度付与手段により内カプセルが真東方向に所定の初速度を与えられるので、内カプセルのコリオリの力による東西方向への変位が相殺され、減少する。これにより、外カプセルを大きくすることなく、無重力時間を増加させることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、添付された図面を参照して本発明を詳述する。
本発明に係る無重力発生装置は、図1に示すように、地表から鉛直下方向へ掘削された断面が略円形の縦穴に沿って、一対のガイドレール1が設けられている。そして、この縦穴の中をガイドレール1に沿って鉛直方向へ移動可能に、上下端が閉塞された略円筒形状の外カプセル2が設けられている。
【0020】
外カプセル2の内部は、減圧されて真空空間2aとなっている。更に、真空空間2a内には上下端が閉塞された略円筒形状の内カプセル3が設けられている。内カプセル3は、真空空間2a内で自由に移動できるように、外カプセル2より小さくなっている。
【0021】
一方、ガイドレール1の下端近傍には、打上げ装置4(打上げ手段)が設置されている。打上げ装置4は、外カプセル2を鉛直上方向へ打ち上げることができる。
【0022】
更に、ガイドレール1の下端近傍には、制動装置5が設けられている。制動装置5は、例えば、エアダンパであり、落下してきた外カプセル2を制動し、停止させる。
【0023】
また、内カプセル3には、初速度付与装置3a(初速度付与手段)が設けられている。初速度付与装置3aは、内カプセル3を図中右方向である真東方向へ加速し、所定の初速度を与えることができる。ここでの真東方向とは、地球の自転軸に対して直交する方向であって、自転方向をいう(以下同様)。なお、初速度付与装置3aは、内カプセル3に設けられるだけではなく、外カプセル2に設けられてもよい。
【0024】
以下、このような無重力発生装置を用いた無重力発生方法について説明する。
まず、内カプセル3内の空間3bに実験装置を設置し、空間3bを閉塞する。
次に、内カプセル3を外カプセル2内に収納する。そして、外カプセル2内の空間を閉塞し、例えば真空ポンプを用いて真空状態にし、真空空間2aとする。
【0025】
それから、外カプセル2をガイドレール1の下端に位置させる。このとき、内カプセル3は、重力により外カプセル2内部の底面2bに接触している。
ここで、打上げ装置4を用いて、外カプセル2を鉛直上方向へ打ち上げる。すると、内カプセル3も同時に外カプセル2と同じ初速度で鉛直上方向へ打ち上げられることとなる。
【0026】
すると、外カプセル2は重力及び空気抵抗により徐々に速度が低下する。しかし、内カプセル3は真空空間2a内にあるので、空気抵抗による速度低下は発生せず、重力のみにより速度が低下し、内カプセル3の鉛直上方向への速度が外カプセル2の鉛直上方向への速度より大きくなる。これにより、内カプセル3は外カプセル2の真空空間2a内を浮遊することとなる。
【0027】
それから、外カプセル2及び内カプセル3は、ガイドレール1の上端近傍まで上昇し、ここで鉛直方向の速度が0となって、重力により落下する。このときも、空気抵抗により、外カプセル2の落下速度は内カプセル3の落下速度より小さくなるので、内カプセル3は、外カプセル2に対し徐々に落下する。
【0028】
そして、外カプセル2は、ガイドレール1の下端近傍まで落下すると、制動装置5により減速され、内カプセル3とともに着地する。
なお、打上げ時には、更に、初速度付与装置3aにより、内カプセル3を真東方向へ加速させ、所定の初速度を与える。これにより、内カプセル3は、外カプセル2に対し、コリオリの力により東西方向へ変位するだけでなく、初速度付与装置3aによって真東方向へ変位する。従って、コリオリの力による内カプセル3の真西方向への変位が相殺され、東西方向への変位を減少させることができる。
【0029】
このようにして、打上げから着地までの間、内カプセル3は、外カプセル2内の内壁に触れることなく真空空間2a内を浮遊するので、内カプセル3の空間3b内は、無重力状態となる。つまり、打上げから着地までの間に内カプセル3内に設置された実験装置により無重力実験が可能となる。
【0030】
ここで、打上げ時に内カプセル3に真東方向へ初速度を与えることによって、内カプセルの東西方向への変位が減少する効果を確認する。
まず、図2を参考にして、物体が地表から打ち上げられ、自由落下するときの運動方程式を求める。
【0031】
図中のPは、自由落下する物体の時間t=0のときの位置、Oは地球中心かつ重力中心、Nは北極点、Qは緯度φ面での地球中心、iはベクトルQPの単位ベクトル、kはベクトルONの単位ベクトル(緯度φ面の法線方向)、jはベクトルiとkに直交する単位ベクトル(j=k×i)(×はベクトル積を表す、以下同様)、Iは点Pにおける真東方向の単位ベクトル(jに一致する)、Kは点Pにおける鉛直上方向の単位ベクトル、Jは点Pにおける真北方向の単位ベクトル(J=K×I)である。すなわち、点Pに人が立った時にその人から見て真東方向がI、真北方向がJ、真上方向がKとなる。
【0032】
また、ωは地球自転角速度でありω=2π/(24×3600)=7.272×10−5(rad/sec)、tは時間(sec)、φは緯度(rad)、rはOからPに向かうベクトルでOからの距離がr1(m)、xはrのi方向成分、yはrのj方向成分、zはrのk方向成分、GはPからOに向かい、大きさが重力の加速度g(9.8(m/sec2))であるベクトル(Kと逆方向であり、G=−gK)、R1は地球の半径(40000(km)/(2π)=6366×103(m))、Fはijk座標系における物体に作用する外力ベクトル、mは自由落下する物体の質量(kg)、RはOからPに向かうベクトル(Oからの距離がr1(m))、XはRのI方向成分、YはRのJ方向成分、ZはRのK方向成分、Ωは角速度ベクトル(大きさがωでk方向のベクトル、Ω=ωk)、VXはI方向への初速度(真東方向への初速度)、VyはJ方向の初速度(真北方向への初速度)、VzはK方向の初速度(鉛直上方向への初速度)とする。
【0033】
物体の運動方程式はijk座標系で表すと、以下の(1)式で表される。
mr”=F+2mr’×Ω+mΩ×(r×Ω)・・・(1)
なお、’は1回微分、”は2回微分することを表す(以下同様)。
【0034】
この(1)式の右辺の第1項であるFはこの物体に作用する外力、第2項である2mr’×Ωはコリオリの力、第3項であるmΩ×(r×Ω)は遠心力である。第1項の大きさはmg程度であるが、第3項の大きさはm10−10(m/sec2)程度であるので、第3項は第1項と比較して極めて小さいので無視できる。
【0035】
また、物体に作用する外力Fは、質量mの物体が自由落下もしくは自由飛行をする場合には、重力方向のみの力が働くので、F=λmG(λは地球の場合λ=1、月の場合λ=0.167、火星の場合λ=0.333となるスカラー量)となる。
【0036】
これにより、(1)式の第3項を省き両辺からmを消去すると、以下の(2)式となる。
r”=λG+2r’×Ω・・・(2)
ここで、ijk座標系で表された(1)式をIJK座標系に変換する。IJK座標系とは、地上において、東西、南北、鉛直の方向で表した座標系である。
r”=R”、r’=R’、G=−g(COSφ)i+0j−g(SINφ)k=−gK、
Ω=ωk=0I+ω(COSφ)J+ω(SINφ)Kであるので、
【0037】
【数1】
【0038】
すると、(2)式は、以下の式となる。
【0039】
【数2】
【0040】
一方、R”=(X”I+Y”J+Z”K)であるので、上記の式から各成分ごとに書き出すと、以下の(3)、(4)、(5)式になる。
X”=2(Y’ωSINφ−Z’ωCOSφ)・・・(3)
Y”=−2X’ωSINφ・・・(4)
Z”=−λg+2X’ωCOSφ・・・(5)
これらの微分方程式に初期条件(t=0において、X=Y=Z=0、X’=VX、Y’=Vy、Z’=Vz)を代入して解く。
【0041】
まず、(3)、(4)、(5)式の左辺と右辺を夫々比較すると、左辺はg程度すなわち10程度の大きさであり、右辺はωが10−4程度であるので、(3)、(4)、(5)式は近似的に以下の式となる。
【0042】
X”=0、Y”=0、Z”=−λg
これらの式を1回積分して初期条件を代入すると、以下の式となる。
X’=VX、Y’=Vy、Z’=−λgt+Vz
そして、これらの式を(3)、(4)、(5)式に代入すると、以下の(6)、(7)、(8)式になる。
【0043】
X”=2(VyωSINφ−(−λgt+Vz)ωCOSφ)・・・(6)
Y”=−2VXωSINφ・・・(7)
Z”=−λg+2VXωCOSφ・・・(8)
これらの式を2回積分し、初期条件及びλ=1を代入すると以下の(9)、(10)、(11)式になる。
【0044】
X=VXt+ω(VySINφ−VzCOSφ)t2+(1/3)gω(COSφ)t3・・・(9)
Y=Vyt−VXω(SINφ)t2・・・(10)
Z=Vzt+2VXω(COSφ)t2−(1/2)gt2・・・(11)
ここで、(9)、(10)、(11)式を用いて、例えば、緯度(φ)が北緯43度の地点に、落下距離490(m)の、各種無重力発生装置を設けたときに得られる無重力時間及び東西方向への変位を求める。なお、北緯43度の地点では、φ=0.7505(rad)であるので、COSφ=0.7314、SINφ=0.682である。
1)自由落下型無重力発生装置
まず、本装置により得られる無重力時間を求める。得られる無重力時間は、内カプセル3が落下距離490(m)を落下するときの落下時間tである。自由落下なのでVz=0、Z=−490の条件を(11)式に代入すると以下の式となる。
【0045】
−490=0t+0ω(COSφ)t2−(1/2)gt2=−(1/2)gt2
これを解くとt=10となる。
これにより、落下距離490(m)での落下時間tつまり得られる無重力時間は10秒となる。
【0046】
次に、内カプセル3の東西方向への変位を求める。これは、内カプセル3が着地した時間t=10のときの東西方向への変位X1に一致する。VX=Vy=Vz=0、COSφ=0.7314などの条件を(9)式に代入してX1を求める。
【0047】
内カプセル3の南北方向への変位Y1を求める。(10)式にVX=Vy=0を代入して求める。
【0048】
Y1=0t−0ω(SINφ)t2=0
これにより、内カプセル3の東西方向への変位は真東方向へ0.1737(m)であり、南北方向へは変位しないことがわかる。
2)従来の打上げ型無重力発生装置
まず、鉛直上方向へ490(m)打ち上げる鉛直方向の初速度Vzを求める。Vx=0なので、これを(11)式に代入すると以下の式となる。
【0049】
Z=Vzt−(1/2)gt2・・・(12)
一方、490(m)上昇時には鉛直方向の速度が0になるので、この式を微分してZ’=0を代入すると、以下の式となる。
【0050】
0=Vz−gt・・・(13)
この(13)式を(12)式に代入する。
Z=gtt−(1/2)gt2=(1/2)gt2
この式にZ=490を代入して、tを求める。
【0051】
490=(1/2)gt2=(1/2)9.8t2
これを解くとt=10となる。
従って、打ち上げてから10秒後に、内カプセル3は490(m)上昇して、その後落下する。t=10を(13)式に代入すれば、鉛直方向の初速度Vzが求められる。
【0052】
0=Vz−10g
Vz=10g=98(m/sec)
これにより、490(m)上昇するために必要な鉛直方向の初速度は、上方向へ98(m/sec)であることがわかる。
【0053】
そして、490(m)落下する時間は、1)で求めたように10秒であるから、打ち上げてから490(m)上昇して、着地するまでの時間は10+10=20秒である。つまり、得られる無重力時間は20秒である。
【0054】
次に、内カプセル3の東西方向への変位を求める。これは、内カプセル3が着地したときの東西方向への変位X2と一致する。t=20のときの東西方向への変位X2を求めればよいので、(9)式にVx=Vy=0、Vz=10g等の条件を代入して計算する。
【0055】
内カプセル3の南北方向への変位Y2を求める。(10)式にVx=Vy=0を代入して求める。
【0056】
Y2=0t−0ω(SINφ)t2=0
これにより、内カプセル3の東西方向への変位は真西方向へ0.695(m)であり、南北方向へは変位しないことがわかる。
3)本発明の打上げ型無重力発生装置
まず、南北方向への初速度Vyについて検討する。
【0057】
東西方向への変位Xに対するVyによる影響は、(9)式中のωVy(SINφ)t2により表される。このωVy(SINφ)t2と(9)式中の他項のVxtとを比較すると、ωVy(SINφ)t2はVxtに対し極めて小さい。すなわち、Xを0に近づけようと、Vyを大きな値としても、Vxに対して極めて大きな値としなければならない。そうすると、(10)式で求められる南北方向への変位Yが極めて大きな値となってしまう。これにより、Vyの最適値は0であることがわかる。
【0058】
次に、内カプセル3の真東方向への初速度Vxについて検討する。
(9)式にVy=0、Vz=10gを代入してまとめる。
X=Vxt−ω10g(COSφ)t2+(1/3)gω(COSφ)t3
ここで、Vx=χgωCOSφとすると、
この(14)式は、tに関する原点を通る3次曲線であり、横軸をt、縦軸をXとしてグラフに表すと図3のようになる。
【0059】
χ<0であるときは、コリオリの力による東西方向への変位と同じ方向へ初速を与えることであるので、2)のときのような真東方向へ初速を与えないときより更に真西方向への変位が増加してしまう。
【0060】
χ=0であるときは、2)のときのように真東方向へ初速を与えないときを表す。
0<χ<75であるときは、Xは0以外の実解t1、t2を持つ。そして、0〜t1の間及びt1〜t2の間に、極値Xa(>0)、Xb(<0)が存在する。つまり、t=0〜20秒までの間の東西方向への変位の最大差Hは、H=Xa−Xbとなる。
【0061】
χ=75であるときは、t1=t2の場合であり、0<χ<75のときと同様に内カプセル3の東西方向への変位の最大差Hが求められる。
75<χであるときは、0以外のtの実解がない。この場合の曲線は極値を持たない単調増加曲線となる。これは、真東方向へ極めて大きい初速度を与えた場合に相当し、上昇時も下降時も真東方向へ移動しつづける。従って、このときは、東西方向への変位の最大差Hは、t=20のときの真東方向への変位Xと一致する。
【0062】
ここで、東西方向への変位の最大差Hを最小にするχを求める。0<χ≦75のときには、X=0となる実根0、t1、t2(0<t1≦t2)が存在して、0〜t1、t1〜t2の間に夫々、極大点、極小点が存在する。その値をそれぞれ、極大値(t01、Xa)、極小値(t12、Xb)とする。
【0063】
Xa≧0、Xb≦0であるので、H=Xa−Xbとして、このHが最小になるχを求めればよい。つまり、dH/dχ=0となるχを求めればよい。なお、式を分かりやすくするために、E=(1/3)gωCOSφとすると、(14)式は、以下の(15)式となる。
【0064】
X=Et(3χ−30t+t2)・・・(15)
この式の実根t1、t2は、3χ−30t+t2=0から、t1=15−(152−3χ)1/2、
t2=15+(152−3χ)1/2となる。従って、t1−t2=−2(152−3χ)1/2、
t1+t2=30、t1t2=3χとなる。
【0065】
(15)式を微分すると以下の式となる。
X’=E(3χ−60t+3t2)=3E(χ−20t+t2)
この式より、極値を取る実根t01、t12は、χ−20t+t2=0から、
t01=10−(102−χ)1/2、t12=10+(102−χ)1/2となる。
【0066】
H=Xa−Xbを計算する。
【0067】
【数3】
【0068】
ここで、t01−t12=−2(10−χ)1/2、t01+t12=20、t01t12=χを(16)式に代入すると、以下の式となる。
この(17)式により、χが与えられたときの内カプセル3の東西方向への変位の最大差Hが求められる。
【0069】
ここで、(17)式を1回微分すると、dH/dχ=−6E(102−χ)1/2となる。dH/dχ=0とすると、χ=100となる。従って、χが100に近づくにつれてHは小さくなる。しかしながら、χ>75の範囲ではH=Xa−Xbではなく、Hはt=20のときの真東方向への変位Xと一致するので、χ=75のときがHの最小値となる。
【0070】
一方、(11)式に示されているように、鉛直方向の変位Zは、Vxによって影響を受ける。それは、(11)式の第2項の2Vxω(COSφ)t2によって表される。ところが、この値は第3項の(1/2)gt2と比較すると、極めて小さいので無視できる。
【0071】
従って、(11)式は以下の(18)式としても問題ない。
Z=Vzt−(1/2)gt2・・・(18)
次に、χ=75のときの内カプセル3の軌跡について検討する。χ=75のときの真東方向への初速度Vxを計算する。
【0072】
これにより、χ=75のときの真東方向への初速度Vxは、0.03909(m/sec)であることがわかる。
【0073】
内カプセル3の東西方向への変位X3を計算する。(14)式にχ=75を代入して計算する。
これをグラフに表すと 図4のようになる。
【0074】
すなわち、真上方向へ初速度Vz=98(m/sec)、真東方向へ初速度Vx=0.03909(m/sec)で打ち上げると、鉛直上方向へ上昇しながら、真東方向へ移動し、5秒後に、打上げ地点から真東方向へ0.08685(m)の位置に到達する。その後、真西方向へ移動しながら、上昇を続け、10秒後に真東方向へ0.035043(m)の位置に到達する。このとき、鉛直方向の速度が0となり、真西方向へ移動しながら自由落下を始める。打上げから15秒後に東西方向への変位が0となり、以後再び真東方向へ移動しながら、20秒後に真東方向へ0.08685(m)の位置に着地する。
【0075】
このときの内カプセル3の南北方向への変位Y3を計算する。(10)式にVy=0、Vx=χgωCOSφを代入して計算する。
これにより、t=20のときは、Y3=1.933×10−6×202=−0.7732×10−3(m)となるので、真南方向へ0.7732(mm)変位することとなる。これは東西方向の変位X3と比較して極めて小さいので、設計上は考慮する必要がない。
【0076】
次に、内カプセル3が打上げ地点と同じ位置に着地する場合を検討する。これは、初速を与える機構を内カプセル3または外カプセル2内に設ける際に、設計の自由度を確保する上で重要である。
【0077】
このような場合は、t=20で、X=0となるχを求めればよい。(14)式にこの条件を代入してχを求める。
0=(1/3)gω(COSφ)20(3χ−30×20+202)
従って、0=3χ−600+400となる。これを解くとχ=200/3となる。
【0078】
χ=200/3のときの内カプセル3の真東方向への初速度Vxを求める。
これにより、χ=200/3のときの内カプセル3の真東方向の初速度Vxは、0.03475(m/sec)であることがわかる。
【0079】
このときの内カプセル3の東西方向への変位X4を求める。(14)式にχ=200/3を代入して計算する。
これをグラフに表すと 図4のようになる。
【0080】
すなわち、内カプセル3を真上方向へ初速度Vz=98(m/sec)、真東方向へ初速度Vx=0.03475(m/sec)で打ち上げると、鉛直上方向へ上昇しながら、真東方向へ変位し、4.226秒後に、真東方向へ0.06684(m)の位置に到達する。その後、真西方向へ変位しながら上昇を続け、10秒後に東西方向へ0(m)の位置に到達する。このとき、鉛直方向の速度が0となり、真西方向へ移動しながら自由落下を始める。そして、打上げから15.77秒後に真西方向へ0.06684(m)の位置に到達する。以後再び真東方向へ変位しながら、20秒後に東西方向へ0(m)の位置つまり打上げ地点へ着地する。なお、以上の場合における東西方向の変位の最大差は、0.06684−(−0.06684)=0.1337(m)となる。
【0081】
これは、(17)式からも同様に求められる。
なお、このときの内カプセル3の南北方向への変位Y4を求める。(10)式にVy=0、Vx=χgωCOSφを代入して計算する。
【0082】
これにより、t=20(sec)のときは、
Y4=1.718×10−6×202=−0.6872×10−3(m)となるので、真南方向へ0.6872(mm)変位することとなる。これは、東西方向への変位X4と比較しても極めて小さいので、設計上は考慮する必要がない。
【0083】
以上の実施例においては、北緯43度の地点にあり、落下距離が490(m)の地下無重力実験センターにおいて本発明の無重力発生装置を使用した無重力発生方法を実施した場合を述べたが、地球の他の場所で、落下距離が相違する場合でも同様に実施できる。
【0084】
以下、北緯48度の地点に706(m)の落下距離を有する打上げ型無重力発生装置の場合について、内カプセル3の真東方向への初速及び東西方向への変位を求める。
【0085】
まず、得られる無重力時間を求める。Z=(1/2)gt2にZ=706を代入すると、706=(1/2)gt2となり、これを解くとt=12となる。このtは706(m)を自由落下する時間である。従って、無重力時間は落下時間の2倍であるので24秒となる。そして、706(m)打ち上げるのに必要な上方向への初速度Vzは、(13)式よりVz=gt=12gとなる。
【0086】
真東方向へ初速度を与えない場合の、内カプセル3の東西方向への変位X5を求める。(9)式にVx=Vy=Vz=0、COS48(度)=COS0.8378(rad)=0.6691などの条件を代入する。
【0087】
次に、東西方向への変位差を最も小さくする初速度Vxを与えたときの、内カプセル3の東西方向への変位の最大差Hを求める。なお、Hを最小にするχは、χ=(3/4)t2で求められるので、χ=108である。
【0088】
このときの内カプセル3の真東方向への初速度Vxを求める。
【0089】
すなわち、打上げと同時に真東方向へ初速度Vx=0.05150(m/sec)を内カプセル3に与えると、コリオリの力による内カプセル3の東西方向への変位を最大1.098(m)から0.1373(m)へ減少させることができる。
【0090】
なお、Z=(1/2)gt2及びχ=(3/4)t2を用いて、上記のVx=χgωCOSφを変形するとVx=(3/2)ZωCOSφとなる。これにより、真東方向への初速度Vxは、この式を用いて容易に算出することもできる。
【0091】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1または3記載の発明によれば、コリオリの力による内カプセルの東西方向への変位が減少するので、外カプセルを大きくすることなく、無重力時間を増加させることができる。これにより、大幅な改造を必要とせずに、自由落下型無重力発生装置を打上げ型無重力発生装置に改造できる。
【0092】
請求項2記載の発明によれば、内カプセルの東西方向への変位が最小となる。また、内カプセルの真東方向への初速度を自由落下距離及び打上げ地点の緯度に応じて容易に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の無重力発生装置の構造図
【図2】内カプセルの座標系の説明図
【図3】内カプセルの東西方向への変位を示すグラフ
【図4】内カプセルの東西方向及び鉛直方向への移動経過を示すグラフ
【符号の説明】
1 ガイドレール
2 外カプセル
2a 真空空間
3 内カプセル
3a 初速度付与装置
3b 空間
4 打上げ装置
Claims (3)
- 地球鉛直方向に延びるガイドレールに沿って移動可能に設けられた外カプセルに、空間的余裕をもって内カプセルを収納し、前記外カプセルと内カプセルとの間の空間を減圧して真空にした後、前記外カプセル及び内カプセルを鉛直上方向に打ち上げ、これらが自由落下して着地するまでの間、前記内カプセルの内部に無重力状態を発生させる無重力発生方法であって、
前記外カプセル及び内カプセルを打ち上げるときに、前記内カプセルに対して、真東方向に所定の初速度を与えることを特徴とする無重力発生方法。 - 前記所定の初速度は、自由落下距離をZ(m)、地球の自転に係る角速度をω(rad/sec)、打上げ地点の緯度をφ(rad)としたときに、(3/2)ZωCOSφ(m/sec)で表されることを特徴とする請求項1に記載の無重力発生方法。
- 地球に固定されつつ鉛直方向に延びるガイドレールと、
前記ガイドレールに沿って移動可能に設けられる外カプセルと、
前記外カプセルに空間的余裕を持って収納される内カプセルと、
前記外カプセルと内カプセルとの間の空間を減圧して真空にする真空手段と、
前記外カプセル及び内カプセルを鉛直上方向へ打ち上げる打上げ手段と、
前記打上げ手段により前記外カプセル及び内カプセルが打ち上げられるときに、前記内カプセルに対して、真東方向に所定の初速度を与える初速度付与手段と、
を含んで構成されたことを特徴とする無重力発生装置。
Priority Applications (1)
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JP2002339387A JP2004168262A (ja) | 2002-11-22 | 2002-11-22 | 無重力発生方法及び無重力発生装置 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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KR200456430Y1 (ko) | 2010-05-04 | 2011-10-31 | (주)미래세움 | 무중력 실험장치 |
WO2021071604A3 (en) * | 2019-08-30 | 2021-09-10 | Arizona Board Of Regents On Behalf Of Arizona State University | Universal ground-based reduced gravity system |
-
2002
- 2002-11-22 JP JP2002339387A patent/JP2004168262A/ja active Pending
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EP4022592A4 (en) * | 2019-08-30 | 2023-12-06 | Arizona Board of Regents on behalf of Arizona State University | UNIVERSAL GROUND-BASED REDUCED GRAVITY SYSTEM |
CN114787893B (zh) * | 2019-08-30 | 2024-03-26 | 亚利桑那州立大学董事会 | 通用地面失重系统 |
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