JP2004161956A - Fluorine-based ion-exchange membrane - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フッ素系イオン交換膜に関するものであり、特に、固体高分子電解質型燃料電池の電解質、かつ、隔膜として性能が優れたフッ素系イオン交換膜に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池は、水素、メタノール等の燃料を電気化学的に酸化することによって電気エネルギーを取り出す一種の発電装置であり、近年、クリーンなエネルギー供給源として注目されている。燃料電池は、用いる電解質の種類によって、リン酸型、溶融炭酸塩型、固体酸化物型、固体高分子電解質型等に分類されるが、このうち、固体高分子電解質型燃料電池は、標準的な作動温度が100℃以下と低く、かつ、エネルギー密度が高いことから、電気自動車等の電源として幅広い応用が期待されている。
【0003】
固体高分子電解質型燃料電池の基本構成は、イオン交換膜とその両面に接合された一対のガス拡散電極からなっており、一方の電極に水素、他方に酸素を供給し、両電極間を外部負荷回路に接続することによって発電を起こすものである。より具体的には、水素側電極でプロトンと電子が生成され、プロトンは、イオン交換膜の内部を移動して酸素側電極に達した後、酸素と反応して水を生成する。一方、水素側電極から導線を伝って流れ出した電子は、外部負荷回路において電気エネルギーが取り出された後、さらに導線を伝って酸素側電極に達し、前記水生成反応の進行に寄与する。
【0004】
イオン交換膜の要求特性としては、第一に、高いイオン伝導性が挙げられるが、プロトンがイオン交換膜の内部を移動する際は、水分子が水和することによって安定化すると考えられるため、イオン伝導性と共に、高い含水性と水分散性も重要な要求特性となっている。また、イオン交換膜は、水素と酸素の直接反応を防止するバリアとしての機能を担うため、ガスに対する低透過性が要求される。その他の要求特性としては、燃料電池運転中の強い酸化雰囲気に耐えるための化学的安定性や、更なる薄膜化に耐え得る機械強度を挙げることができる。
【0005】
固体高分子電解質型燃料電池に使用されるイオン交換膜の材質としては、高い化学的安定性を有することからフッ素系イオン交換樹脂が広く用いられており、中でも、主鎖がパーフルオロカーボンで、側鎖末端にスルホン酸基を有するデュポン社製の「ナフィオン(登録商標)」が広く用いられている。こうしたフッ素系イオン交換樹脂は、固体高分子電解質材料として概ねバランスのとれた特性を有するが、当該電池の実用化が進むにつれて、更なる物性の改善が要求されるようになってきた。
【0006】
例えば、高電流密度化や膜内水分均一化を高いレベルで達成すべく、イオン交換膜の薄膜化は、今後、一層重要性を増すものと考えられるが、このためには、イオン交換膜の機械強度を向上させる必要がある。同様に、長期耐久性改良の観点からも高強度化への要求が高まりつつある。延伸技術は、膜やフィルムの機械強度を向上させるための有効な手段の一つであり、延伸によって高強度のイオン交換膜を得る方法は既に知られている。特許文献1には、イオン交換樹脂を液状有機化合物で膨潤させたもの、又はイオン交換樹脂の溶融加工可能な前駆体を含フッ素液状有機化合物で膨潤させたものに対して、少なくとも1つの平面方向に延伸する製造方法が開示されている。
【0007】
特許文献1の実施例1には、フッ素系イオン交換樹脂を125℃で縦・横方向に2×2倍に延伸することにより、機械強度が2.8×107Paから6.3×107Paに上昇することが開示されている。しかしながら、この実施例による延伸膜は熱収縮が大きいことが明らかになっており、例えば、膜電極接合体(MEA)作成時の熱プレス相当温度に暴露すると大きな熱収縮が発生し、配向が緩和する、熱水中において膜が収縮する、等の問題点があった。
【0008】
特許文献2には、延伸配向させたフッ素イオン交換膜を熱固定することにより、熱収縮を低減させることが開示されている。しかしながら、熱固定により配向が緩和して強度が低下する等の問題点があった。また、この熱固定によりイオン伝導性が低下することから、後工程として洗浄処理が必要となり、工程が複雑であった。
このように、延伸配向したフィルムは高い機械強度を発現するが、多くの場合、熱収縮が大きく、配向が緩和するために、高温加工を伴うような用途、特に、燃料電池用途への適用に対して制限があった。
【0009】
以上のように、高強度化に関する従来技術は単純な延伸への試みにとどまっており、特に、延伸配向の安定化が不十分で熱収縮が大きいことから、イオン交換膜として産業上有用な技術の開示とはなり得ていなかった。
【0010】
【特許文献1】
特開昭60−149631号公報
【特許文献2】
国際公開特許第02/062879号パンフレット
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、機械強度に優れ、かつ、熱寸法安定性に優れたフッ素系イオン交換膜及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
フッ素系イオン交換膜を配向することによって、その機械強度は上昇するが、一方で熱収縮が大きくなる。本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、フッ素系イオン交換膜の面配向度、α分散温度シフト等を適切に設定することによって、高強度と熱寸法安定性を両立できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1] 膜厚が1〜500μm、面配向度(ΔP)が0.0005以上、25℃における水平イオン伝導度が0.05S/cm以上、かつ、α分散温度シフト(ΔT)が1以上であることを特徴とするフッ素系イオン交換膜。
[2] 160℃における熱収縮率が45%以下であることを特徴とする[1]に記載のフッ素系イオン交換膜。
[3] イオン交換基の対イオンが、プロトン、ならびにアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンおよび遷移金属イオンから選ばれた少なくとも一種のカチオンであることを特徴とする[1]又は[2]に記載のフッ素系イオン交換膜。
【0014】
[4] 配向されたフッ素系イオン交換膜のイオン交換基の対イオンを、プロトン及び少なくとも一種のカチオンで置換することを特徴とするフッ素系イオン交換膜の製造方法。
[5] [4]に記載の配向されたフッ素系イオン交換膜が、下記を含む工程により製造されることを特徴とする[4]に記載のフッ素系イオン交換膜の製造方法。
(1) イオン交換膜前駆体を有するフッ素系イオン交換樹脂前駆体から、フッ素系イオン交換樹脂前駆体膜を成膜する工程、
(2) フッ素系イオン交換樹脂前駆体膜を配向させる工程、及び
(3) (2)で得られたフッ素系イオン交換樹脂前駆体膜を、配向状態を維持しながら拘束下でイオン交換樹脂前駆体を加水分解する工程。
【0015】
[6] [4]に記載の配向されたフッ素系イオン交換膜が下記を含む工程により製造されることを特徴とする[4]に記載のフッ素系イオン交換膜の製造方法。
(1) イオン交換膜前駆体を有するフッ素系イオン交換樹脂前駆体から、フッ素系イオン交換樹脂前駆体膜を成膜する工程、
(2) フッ素系イオン交換樹脂前駆体膜を加水分解してフッ素系イオン交換樹脂膜を得る工程、及び
(3) (2)で得られたフッ素系イオン交換樹脂膜を配向させる工程。
[7] [1]〜[3]のいずれか1項に記載のフッ素系イオン交換膜を備えることを特徴とする膜電極接合体。
[8] [1]〜[3]のいずれか1項に記載のフッ素系イオン交換膜を備えることを特徴とする固体高分子電解質型燃料電池。
【0016】
以下に、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明のフッ素系イオン交換膜について説明する。
(膜厚)
本発明のフッ素系イオン交換膜の膜厚は1μm以上であり、好ましくは5μm以上、より好ましくは8μm以上、最も好ましくは10μm以上である。膜厚が1μm未満の場合は、水素と酸素の直接反応のような不都合が発生しやすく、そして燃料電池製造時の取り扱い時や燃料電池運転中の差圧・歪み等によって膜の損傷等も発生しやすい。一方、膜厚の上限は500μm以下であり、好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下、最も好ましくは50μm以下である。膜厚が500μmを越えると、イオン透過性が低くなるため、イオン交換膜として十分な性能を発揮することができない。
【0017】
(面配向度)
本発明のフッ素系イオン交換膜の特徴として挙げられるのが面配向度である。この値が一定値以上を示さなければ、単なる薄膜化に過ぎず、機械強度の向上が望めない。
本発明のフッ素系イオン交換膜の面配向度は0.0005以上であり、好ましくは0.0010以上、より好ましくは0.0015以上、最も好ましくは0.0020以上である。面配向度が0.0005未満では機械強度が不足し、イオン交換膜として十分な性能を持たない。
【0018】
(25℃水中における水平イオン伝導度)
本発明のフッ素系イオン交換膜の25℃水中における水平イオン伝導度は0.05S/cm以上であり、好ましくは0.06S/cm以上、より好ましくは0.07S/cm以上、さらに好ましくは0.08S/cm以上、最も好ましくは0.09S/cm以上である。水平イオン伝導度が0.05S/cm未満の場合は、燃料電池用イオン交換膜として使用する場合に内部抵抗が上昇する。
(α分散温度シフト)
本発明のフッ素系イオン交換膜のα分散温度シフトは1以上であり、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは15以上、最も好ましくは20以上である。α分散温度シフトが1未満の場合は、高温において熱収縮が起こり、例えば、膜電極接合体の製造収率が低下する。
【0019】
(160℃における熱収縮率)
本発明のフッ素系イオン交換膜の160℃における熱収縮率は、好ましくは45%以下であり、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは35%以下、さらに好ましくは30%以下、最も好ましくは25%以下である。熱収縮率が45%を越えると、高温加工を伴うような用途において熱収縮が起こる場合があり、例えば、MEAの製造時等に支障をきたす場合がある。
(当量重量)
本発明のフッ素系イオン交換膜の当量重量(EW)は限定されないが、好ましくは400以上、より好ましくは600以上、最も好ましくは700以上である。当量重量が低すぎると強度の低下が起きる場合がある。一方、EWの上限は、好ましくは1400以下、より好ましくは1200以下、最も好ましくは1000以下である。当量重量が大きくなると未配向膜でも機械強度が向上するが、同時にイオン交換基の密度が低くなるためにイオン伝導性が低下する場合がある。
【0020】
(塩置換率)
本発明のフッ素系イオン交換膜の塩置換率は限定されないが、好ましくは0.1%以上、より好ましくは1%以上、さらに好ましくは5%以上、さらに好ましくは10%以上、最も好ましくは20%以上である。塩置換率が0.1%未満の場合は、α分散温度シフトが小さいために、高温において熱収縮が起こりやすく、例えば、膜電極接合体の製造収率が低下する場合がある。塩置換率の上限は、好ましくは99%以下、より好ましくは90%以下、さらに好ましくは80%以下、さらに好ましくは70%以下、最も好ましくは60%以下である。塩置換率が99%を越えると、塩置換率を有する膜は一般にイオン伝導性が低いと考えられるため、イオン交換膜として十分な性能を持たない場合がある。
【0021】
(換算突刺強度)
本発明のフッ素系イオン交換膜の換算突刺強度(乾燥状態での突刺強度を25μmあたりに換算)は限定されないが、好ましくは300g以上、より好ましくは350g以上、最も好ましくは400g以上である。換算突刺強度が300g未満の場合、薄膜化したときに十分な機械強度が得られない場合がある。換算突刺強度の上限は特にないが、3000g以上の強度を有する膜は、一般的に含水率が低いことが予想されるため、イオン交換膜として十分な性能を持たない場合がある。
【0022】
次に、本発明のフッ素系イオン交換膜の製造方法について説明する。
(原料ポリマー)
本発明で使用されるフッ素系イオン交換樹脂前駆体は、一般式CF2=CF−O(CF2CFXO)n−(CF2)m−Wで表されるフッ化ビニル化合物と、一般式CF2=CFZで表されるフッ化オレフィンとの、少なくとも二元共重合体からなる。ここで、Xは、F原子又は炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基、nは、0〜3の整数、mは、1〜3の整数、Zは、H、Cl、F又は炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基である。Wは、加水分解によりCO2H又はSO3Hに転換し得る官能基であり、このような官能基としては、SO2F、SO2Cl、SO2Br、COF、COCl、COBr、CO2CH3、CO2C2H5が、通常、好ましく使用される。
【0023】
このようなフッ素系イオン交換樹脂前駆体は公知の手段により合成可能なものである。例えば、上記フッ化ビニル化合物をフロン等の溶媒に溶かした後、フッ化オレフィンのガスと反応させ重合する方法(溶液重合)、フッ化ビニル化合物を界面活性剤とともに水中に仕込んで乳化させた後、フッ化オレフィンのガスと反応させ重合する方法(乳化重合)、更には懸濁重合等が知られているが、いずれも好適な方法として用いることができる。
【0024】
(成膜工程)
フッ素系イオン交換樹脂前駆体を膜状に成形する方法としては、溶融成形法(Tダイ法、インフレーション法、カレンダー法等)、キャスト法等、成形法として一般的に知られている方法であればいずれも好適に用いることができる。キャスト法としては、フッ素系イオン交換樹脂を適当な溶媒に分散させたもの、又は重合反応液そのものをシート状に成形した後、分散媒を除去する方法を挙げることができる。
【0025】
Tダイ法による溶融成形を行う際の樹脂温度は100℃以上が好ましく、より好ましくは200℃以上である。樹脂の耐熱性を考慮すると300℃以下が好ましく、より好ましくは280℃以下である。インフレーション法による溶融成形を行う際の樹脂温度は100℃以上が好ましく、より好ましくは160℃以上である。樹脂の耐熱性を考慮すると300℃以下が好ましく、より好ましくは240℃以下である。
【0026】
これらの方法で溶融成形されたシートは、冷却ロール等を用いることによって溶融温度以下の温度にまで冷却される。
前駆体膜の膜厚は、配向工程における膜厚減少を見越した上で最適の膜厚に調整することが好ましい。したがって、延伸して面配向させた際に、面配向度0.0005以上、かつ、膜厚1〜500μmの膜が得られるように、膜厚を調整する。例えば、配向工程で4×4倍延伸を行うとき、配向膜の膜厚を25μmとするためには前駆体膜の膜厚を400μm付近で調整する必要がある。
【0027】
(加水分解工程)
加水分解の方法としては、例えば、特許第2753731号明細書に記載のように、水酸化アルカリ溶液を用いて配向膜のイオン交換基前駆体をイオン交換基の対イオンが金属塩カチオンであるイオン交換樹脂に変換し、次に、塩酸のような酸性水溶液を用いてイオン交換基の対イオンをプロトン(SO3H又はCOOH)に変換する方法等を使用することができる。
【0028】
加水分解に際して、イオン交換基前駆体を、イオン交換基の対イオンが金属塩カチオンであるイオン交換樹脂に変換した後、金属塩カチオンの一部をプロトンに置換する。その際に、プロトンへの置換率を調節することによって、一度の加水分解で、25℃における水平イオン伝導度が0.05S/cm以上、かつ、α分散温度シフト(ΔT)が1以上のイオン交換樹脂膜に変換することができる。また、プロトンへの置換率を調節することによって、加水分解により、一旦、α分散温度シフト(ΔT)が1以下のイオン交換樹脂膜に変換した後、後のカチオンへ置換する工程でカチオンへの置換率を調節することによって、25℃における水平イオン伝導度が0.05S/cm以上、かつ、α分散温度シフト(ΔT)が1以上のイオン交換樹脂膜に変換することができる。
【0029】
一般的に、イオン交換膜は、イオン交換樹脂前駆体を膜状に成形した後、高温で加水分解を行うことによって製造される。したがって、本発明において延伸を行う対象としては「加水分解前のフッ素系イオン交換樹脂前駆体」と「加水分解後のフッ素系イオン交換樹脂」に大別できる。本発明においては、目的に応じていずれの膜に対しても延伸を行うことができる。
【0030】
(フッ素系イオン交換樹脂前駆体の延伸)
本発明における好ましい延伸の形態の第一は、フッ素系イオン交換樹脂前駆体に対して為されるものである。フッ素系イオン交換樹脂前駆体の延伸において特に重視されるべき点は、延伸終了に伴う配向緩和の防止である。これは次のような理由による。
一般的に、フィルムの延伸温度は粘弾性測定におけるα分散温度を参考にして設定されることが多い。α分散温度とは、ポリマー主鎖が熱運動を開始すると考えられる温度であり、延伸のように、ポリマーに対して大きな歪みを与えながら加工する際の指標として広く用いられている。
【0031】
フッ素系イオン交換樹脂前駆体のα分散温度は室温近辺に存在するため、延伸状態から拘束を外すと急速に収縮して延伸配向を失うことが多い。本発明者らは、フッ素系イオン交換樹脂前駆体の配向緩和に関して、前駆体に特有な製造工程である加水分解に着目して、α分散温度に依らない延伸固定方法を見出した。すなわち、本発明においては、フッ素系イオン交換樹脂前駆体を延伸した後、延伸配向を拘束した状態で加水分解することを特徴とする。
【0032】
このような方法によって、延伸固定が達成できる理由は明らかではないが、加水分解によって生成するフッ素系イオン交換樹脂のα分散温度は、前駆体よりもはるかに高く、120℃近辺に存在すると考えられているので、延伸配向を維持しながら加水分解を行うことによって、その進行と共に配向膜のα分散温度が上昇する過程で主鎖の熱運動が減少し、延伸固定を達成できたのではないかと考えられる。こうした延伸固定の方法を本発明においては、「ケン化固定」、と呼称する。
【0033】
ケン化固定が達成できる理由としては、さらに次のように考えることもできる。フッ素系イオン交換樹脂前駆体を加水分解すると多量の水を吸水するようになるが、こうした水は樹脂内部に均一に存在するのではなく、微視的な水滴を形成しつつ局所的に存在すると考えられている。このような水滴はクラスターと呼ばれ、小角X線回折や透過型電子顕微鏡によって具体的に観察することができる。1つのクラスターには複数の側鎖末端が含まれると予想されるが、フッ素系イオン交換樹脂前駆体を延伸した後、拘束を維持した状態でクラスターを形成させると、これらの側鎖末端どうしが互いに水を介して結びつく、一種の架橋点として機能することが期待できる。すなわち、α分散温度の上昇に加えて、延伸配向後に形成されるクラスターが疑似架橋点として機能することにより、ケン化固定がより良好に機能するものと考えられる。
一方、ケン化固定を施さない配向膜は、拘束を解いた時及び高温のケン化液に触れた時に延伸配向が大きく開放されるため、強い延伸配向を維持できずに、未配向膜と同程度にまで機械強度が低下する。
【0034】
(フッ素系イオン交換樹脂の延伸)
本発明における好ましい延伸の形態の第二は、フッ素系イオン交換樹脂に対して為されるものである。前記のように、フッ素系イオン交換樹脂のα分散温度は120℃近辺に存在すると考えられるため、冷却による延伸固定が容易であり、拘束を解いたあとも延伸配向を維持しやすい。特に、フッ素系イオン交換樹脂に対する延伸はケン化固定のような特殊な処理を必要としないために、一般的な延伸技術を適用することができ、燃料電池用イオン交換膜の生産性向上の観点から好ましい。すなわち、本発明においては、その好ましい延伸の形態の第二として、フッ素系イオン交換樹脂前駆体を加水分解した後に延伸することを特徴とする。
【0035】
(配向工程)
上記したとおり、延伸配向させる対象としては、「加水分解前のフッ素系イオン交換樹脂前駆体」と「加水分解後のフッ素系イオン交換樹脂」に大別できる。いずれの膜に対しても、フィルムの延伸方法として一般的に知られている方法を用いることができるが、このうち、テンターによる横1軸延伸、テンター及び縦延伸ロールによる逐次2軸延伸、同時2軸テンターによる同時2軸延伸、及びインフレーション製膜装置によるブロー延伸が好ましく、同時2軸延伸及びブロー延伸がより好ましい。
【0036】
本発明における延伸とは、延伸応力の発生を伴う伸長を意味しており、延伸応力の発生を伴わない伸長は、拡幅、と呼称される。例えば、加水分解工程の前に配向工程を実施しない場合は、加水分解に伴う吸水によって膜が水平方向に大きく膨潤するが、この変化に追従して膜を伸長する場合は拡幅と考えることができる。
延伸は、膜の面配向度(ΔP)が0.0005以上、かつ、膜厚が1〜500μmとなるように、延伸倍率、延伸温度等の条件を適宜選定して行う。
【0037】
延伸倍率は、面積倍率で、下限については、好ましくは1.1倍以上、より好ましくは2倍以上、最も好ましくは4倍以上、上限については、好ましくは50倍以下、より好ましくは16倍以下、最も好ましくは9倍以下である。このうち、横方向(機械方向に対して直角な方向)の延伸倍率は、下限については、好ましくは1.1倍以上、より好ましくは1.5倍以上、最も好ましくは2倍以上、上限については、好ましくは50倍以下、より好ましくは9倍以下、最も好ましくは3倍以下である。好適な延伸温度は、前駆体膜の溶融温度以下であり、下限については、好ましくは(α分散温度−100℃)以上、より好ましくは(α分散温度−80℃)以上、最も好ましくは(α分散温度−50℃)以上、上限については、好ましくは(α分散温度+100℃)以下、より好ましくは(α分散温度+80℃)以下、最も好ましくは(α分散温度+50℃)以下である。
【0038】
(イオン交換基の対イオンのカチオンによる変換(塩置換))
ここでいう塩置換とは、フッ素系イオン交換樹脂前駆体膜の加水分解により、イオン交換基の対イオンが金属塩カチオンであるイオン交換樹脂に変換した後、金属塩カチオンの一部をプロトンに置換して、α分散温度シフト(ΔT)が1以下のイオン交換樹脂膜を製造した後に、残留するプロトンに対して行う処理である。この塩置換によって、25℃における水平イオン伝導度が0.05S/cm以上、かつ、α分散温度シフト(ΔT)が1以上である本発明のフッ素系イオン交換膜が製造される。
【0039】
本発明で使用されるカチオンの種類としては、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属、遷移金属イオン等、α分散温度シフトが1以上を示すカチオンであればどのような種類でも用いることができる。α分散温度シフトは、置換するカチオンの種類や量によって制御することができる。特に、イオン価数が大きいほどその効果が大きい。
塩置換率は、イオン交換樹脂膜の水平イオン伝導度が0.05S/cm以上、かつ、α分散温度シフト(ΔT)が1以上となるように、適宜、塩の種類とそれに伴う塩置換率等を設定する。塩置換率が低すぎると熱収縮が大きく、MEAの製造時等に支障をきたす場合がある。160℃での熱収縮率を45%以下にするためには、塩置換率を5%以上に設定する。塩置換率は、その塩置換率が大きいほどα分散温度シフトが大きくなるが、塩置換率が大きすぎるとイオン伝導性が低下し、電解質膜として好ましくない場合がある。したがって、多価イオンを使用すると、低い塩置換率で良好な熱寸法安定性改善を達成できるために好ましい。具体的には、対イオンが一価のカチオンの場合、塩置換率10〜90%が好ましく、より好ましくは20〜80%、最も好ましくは30〜70%である。二価のカチオンの場合、塩置換率は5〜60%が好ましく、より好ましくは10〜50%、最も好ましくは20〜40%である。
【0040】
塩置換の方法としては、フッ素系イオン交換膜を、置換するカチオンを所定の濃度含む塩水溶液に浸漬、又は塩水溶液を塗布若しくは噴霧することによって行うことができる。
塩水溶液の濃度は、以下の方法で調整することができる。例えば、対イオンをn価のカチオン、塩置換率をX%に塩置換すると仮定して説明する。まず、対イオンがプロトンのフッ素系イオン交換膜の乾燥重量W(g)を測定する。次に、このフッ素系イオン交換膜の当量重量EW(g/eq)を測定する。これらより下記の式を用いて置換基量A(mol)を求める。
A=W/EW
【0041】
この置換基量Aが、このフッ素系イオン交換膜がもつ全イオン交換基量である。塩置換率X%とは、全イオン交換基のX%の対イオンがプロトン以外の一種類以上のカチオンで置換され、残りの(100−X)%の対イオンがプロトンであることを意味する。対イオンをn価のカチオン、塩置換率をX%に塩置換するときに必要なカチオン塩の重量C(g)は、下記の式を用いて求める。
C=A×X/100×D/n
D:カチオン塩の分子量(g/mol)
カチオン塩Cを500mlの水に溶解させて、塩水溶液の濃度を調整する。
【0042】
このようして作成した塩水溶液に、イオン交換基の対イオンがプロトンのフッ素系イオン交換膜を浸漬させることにより塩置換を行うことができる。浸漬温度は、多くの場合は室温であれば十分に置換することができ、塩置換時間を短縮する場合は塩水溶液を加熱してもよい。浸漬時間は、塩水溶液の濃度及び浸漬温度に依存するが、概ね1分間〜12時間の範囲で好適に塩置換を実施することができる。塩置換が終了した後、膜をよく水洗し、乾燥させる。
上記と同様な方法で、イオン交換基の対イオンがプロトン及びそれ以外のカチオンからなるフッ素イオン交換膜を所定の濃度の酸性水溶液に浸漬させることによっても塩置換したイオン交換膜を得ることができる。
【0043】
(膨潤工程)
より高いイオン伝導性を発現させようとする場合は、必要に応じて加水分解工程の後に膨潤処理を行うことによってフッ素系イオン交換膜の含水率を向上させることができる。例えば、特開平6−342665号公報に記載のように、フッ素系イオン交換膜を水、又は水と水に可溶な有機溶剤の混合物中で加温することによって膨潤処理を行い、その後、イオン交換基の対イオンをプロトンに戻すことによって高含水率のフッ素系イオン交換膜とすることができる。
【0044】
(膜電極接合体の製造方法)
フッ素系イオン交換膜を固体高分子電解質型燃料電池に用いる場合、アノードとカソード2種類の電極が膜の両側に接合されたMEAとして使用される。
電極は、触媒金属の微粒子とこれを担持した導電剤より構成され、必要に応じて撥水剤が含まれる。電極に使用される触媒としては、水素の酸化反応及び酸素による還元反応を促進する金属であれば限定されず、白金、金、銀、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、タングステン、マンガン、バナジウム又はそれらの合金が挙げられる。これらの中では、主として白金が用いられる。
【0045】
導電剤としては、電子伝導性物質であればいずれでもよく、例えば、各種金属、炭素材料等を挙げることができる。炭素材料としては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、活性炭、黒鉛等が挙げられ、これらは、単独又は複数種を混合して使用される。
撥水剤としては、撥水性を有する含フッ素樹脂が好ましく、耐熱性及び耐酸化性に優れたものが好ましい。例えば、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体等を挙げることができる。
【0046】
前記電極とイオン交換膜よりMEAを作成するには、例えば、次のような方法が採用される。フッ素系イオン交換樹脂をアルコールと水の混合溶液に溶解したものに電極物質となる白金担持カーボンを分散させてペースト状にする。これをポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シートに一定量塗布して乾燥させる。次に、このPTFEシートの塗布面を向かい合わせにしてその間にイオン交換膜を挟み込み、熱プレスにより接合する。熱プレス温度は、イオン交換膜の種類によるが、通常は100℃以上であり、好ましくは130℃以上、より好ましくは150℃以上である。
前記以外の方法としては、電極触媒をイオン交換膜に直接塗布して触媒層を形成する方法、スプレー等を用いてイオン交換膜に直接噴霧して触媒層を形成する方法等も用いることができる。
【0047】
(酸との接触によるイオン交換基の対イオンのプロトン転化)
より高いイオン伝導性を発現させようとする場合は、必要に応じて電極触媒層を形成した後、酸と接触させることによって、置換したカチオンが洗い流され、イオン交換基の対イオンがプロトンとなり、より高いイオン伝導性を発現することができる。例えば、塩酸のような酸性水溶液に浸漬又は酸性水溶液を噴霧する公知の方法を使用することができる。
【0048】
(燃料電池の製造方法)
次に、固体高分子電解質型燃料電池の製造方法について説明する。固体高分子電解質型燃料電池は、MEA、集電体、燃料電池フレーム、ガス供給装置等より構成される。このうち、集電体(バイポーラプレート)は、表面等にガス流路を有するグラファイト製又は金属製のフランジのことであり、電子を外部負荷回路へ伝達する他に、水素や酸素をMEA表面に供給する流路としての機能を持っている。こうした集電体の間にMEAを挿入して複数積み重ねることにより、燃料電池を作成することができる。
【0049】
燃料電池の運転は、一方の電極に水素を、他方の電極に酸素又は空気を供給することによって行われる。燃料電池の作動温度が高温であるほど触媒活性が上がるために好ましいが、通常は、水分管理が容易な50℃〜100℃で運転させることが多い。一方、本発明のような補強されたイオン交換膜においては、高温高湿強度の改善によって100℃〜150℃で作動できる場合がある。酸素や水素の供給圧力は、高いほど燃料電池出力が高まるため好ましいが、膜の破損等によって両者が接触する確率も増加するため、適当な圧力範囲に調整することが好ましい。
【0050】
(燃料電池運転によるイオン交換基の対イオンのプロトン転化)
本発明において、塩置換することにより低下したフッ素系イオン交換膜のイオン伝導性は、燃料電池運転の際に膜の内部を移動するプロトンによって、置換したカチオンが洗い流され、イオン交換基の対イオンがプロトンとなり、より高いイオン伝導性を発現する場合がある。
【0051】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は実施例に制限されるものではない。
本発明において用いられる特性の評価方法は次のとおりである。
(イ)膜厚
イオン交換膜を23℃、65%の恒温室で1時間以上放置した後、膜厚計(東洋精機製作所:B−1)を用いて測定する。
【0052】
(ロ)面配向度
イオン交換膜を23℃、65%の恒温室で12時間以上放置した後、王子計測機器社製の自動複屈折計KOBRA−21ADHを用い、それぞれ3方向の屈折率を測定する。
nα:フィルムの主配向方向の屈折率
nβ:フィルムの主配向方向と直角な方向の屈折率
nγ:フィルムの厚み方向の屈折率
これらより、下記式を用いて面配向度ΔPを求める。
ΔP=(nα+nβ)/2−nγ
【0053】
(ハ)25℃水中における水平イオン伝導度
イオン交換膜を25℃の水中に30分間浸漬した後、幅1cmの短冊状に切り出し、その表面に直径0.5mmの電極線を1cm間隔で平行に6本接触させる。25℃、98%に調節した恒温恒湿槽に2時間以上保持したあと、交流インピーダンス法(10kHz)による抵抗測定を行い、電極間距離と抵抗から単位長さ当たりの抵抗値を測定する。これから、下記式を用いて25℃における水平イオン伝導度Z(S/cm)を求める。
Z=1/膜厚(cm)/膜幅(cm)/単位長さ当たりの抵抗値(Ω
/cm)
【0054】
(ニ)α分散温度シフト
イオン交換膜を23℃、65%の恒温室で12時間以上放置したあと、膜幅5mmに切り出したサンプルを動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御株式会社:DVA 200)にセットする。JIS K−7244に基づき、チャック間20mm、歪み0.1%、周波数35Hz、昇温速度5℃/分で引っ張りモードによる動的粘弾性測定を行い、tanδピークの中で、高温側のピーク温度をα分散温度TSとする。次に、イオン交換膜を膜幅5mmに切り出し、25℃、2Nの塩酸50mlに30分間以上浸漬し、イオン交換基の対イオンをプロトンにする。このイオン交換膜について、上記と同様な方法で動的粘弾性測定を行い、tanδピークの中で、高温側のピーク温度をα分散温度THとする。これらより、下記式を用いてα分散温度シフトΔTを求める。
ΔT=TS−TH
【0055】
(ホ)160℃における熱収縮率
イオン交換膜を23℃、65%の恒温室で12時間以上放置したあと、加熱前の膜面積を測定する。その後、160℃に加熱したオーブンの中で3分間放置したあとオーブンから取り出し、吸湿しないように注意しながら加熱後の膜面積を測定する。これらより、下記式を用いて160℃における熱収縮率Ha(%)を求める。
Ha=(1−(A2/A1)0.5)×100
A1:加熱前の膜面積(cm2)、A2:加熱後の膜面積(cm2)
【0056】
(ヘ)当量重量
イオン交換基の対イオンがプロトンのイオン交換膜およそ2〜10cm2を、25℃、飽和NaCl水溶液30mlに浸漬し、攪拌しながら30分間放置する。次いで、飽和NaCl水溶液中のプロトンをフェノールフタレインを指示薬として0.01N水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和滴定する。中和後、得られたイオン交換基の対イオンがナトリウムイオンのイオン交換膜を純水ですすいだ後、真空乾燥して秤量する。中和に要した水酸化ナトリウムの物質量をM(mmol)、イオン交換基の対イオンがナトリウムイオンのイオン交換膜の重量をW(mg)とし、下記式より当量重量EW(g/eq)を求める。
EW=(W/M)−22
【0057】
(ト)塩置換率
イオン交換膜およそ2〜10cm2を、25℃、飽和NaCl水溶液30mlに浸漬し、攪拌しながら30分間放置する。次いで、飽和NaCl水溶液中のプロトンをフェノールフタレインを指示薬として0.01N水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和滴定する。このとき、中和に要した水酸化ナトリウムの物質量をM2(mmol)とする。次に、中和滴定後のイオン交換膜を25℃、2Nの塩酸50mlに30分間以上浸漬し、イオン交換基の対イオンをプロトンにする。このイオン交換膜を、25℃、飽和NaCl水溶液30mlに浸漬し、攪拌しながら30分間放置した後、飽和NaCl水溶液中のプロトンをフェノールフタレインを指示薬として0.01N水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和滴定する。このとき、中和に要した水酸化ナトリウムの物質量をM1(mmol)とする。これらより、下記式を用いて塩置換率S(%)を求める。
S=(M1−M2)/M1×100
【0058】
この他の方法としては、飽和NaCl水溶液に浸漬して溶出させたイオンを誘導結合型プラズマ(ICP)により定量する方法や、プロトン核磁気共鳴(H−NMR)分析を用いて、イオン交換膜と2Nの塩酸50mlに30分間以上浸漬させてイオン交換基の対イオンをプロトンにしたイオン交換膜のH含量を求めて定量する方法も用いることができる。
【0059】
(チ)メルトインデックス
JIS K−7210に基づき、温度270℃、荷重2.16kgで測定したフッ素系イオン交換樹脂前駆体のメルトインデックスをMI(g/10分)とする。
(リ)実延伸倍率
延伸前前駆体膜の膜厚Tbと換算突刺強度測定時の膜厚Taから、下記式を用いて実延伸倍率を求める。
【0060】
実延伸倍率=(Tb/Ta)0.5
(ヌ)換算突刺強度
イオン交換膜を23℃・65%の恒温室で12時間以上放置した後、ハンディー圧縮試験器(カトーテック社製:KES−G5)を用いて針先端の曲率半径0.5mm、突刺速度2mm/secの条件で突刺試験を行い、最大突刺荷重を突刺強度(g)とした。また、突刺強度に25(μm)/膜厚(μm)を乗じることによって換算突刺強度(g/25μm)とする。
【0061】
【実施例1】
(イオン交換樹脂前駆体に対する低倍率延伸、Ca:塩置換率27%)
一般式CF2=CF−O(CF2CFXO)n−(CF2)m−Wで表されるフッ化ビニル化合物と、一般式CF2=CFZで表されるフッ化オレフィンとの共重合体(但し、XはCF3 、nは1、mは2、ZはF、WはSO2 Fである。)からなるフッ素系イオン交換樹脂前駆体(EW:950、MI:20)を、Tダイ法を用いて成膜し、厚さ110μmの前駆体膜とした。この前駆体膜を、簡易式小型延伸機を用いて、延伸温度25℃で2.0×2.0倍に同時二軸延伸して配向膜とした。延伸後、簡易式小型延伸機に拘束したままの状態で、配向膜を95℃に加温した加水分解浴(DMSO:KOH:水=5:30:65)に15分間浸漬し、イオン交換基の対イオンがカリウムイオンのフッ素系イオン交換膜を得た。
【0062】
これを充分に水洗した後、65℃に加温した2Nの塩酸浴に15分間浸漬し、イオン交換基の対イオンがプロトンのフッ素系イオン交換膜を得た。これを充分に水洗した後、膜を乾燥した。この乾燥膜を拘束から外して、所定の濃度の塩化カルシウム水溶液に浸漬させ、イオン交換基の対イオンがカルシウムイオンで置換された塩置換率27%のフッ素系イオン交換膜を得た。これを充分に水洗した後、膜を乾燥し、厚さ28.8μmの乾燥膜を得た。得られたフッ素系イオン交換膜の諸特性試験を行った。その結果を表1に示す。
【0063】
【実施例2】
(イオン交換樹脂前駆体に対する低倍率延伸、Ca:塩置換率37%)
塩置換率を37%とした以外は実施例1と同様の方法を用いて厚さ25.3μmのフッ素系イオン交換膜を得た。得られた膜の諸特性の測定結果を表1に示す。
【0064】
【実施例3】
(イオン交換樹脂前駆体に対する低倍率延伸、K:塩置換率43%)
カチオンをカリウムイオン、塩置換率を43%とした以外は実施例1と同様の方法を用いて厚さ26.0μmのフッ素系イオン交換膜を得た。得られた膜の諸特性の測定結果を表1に示す。
【0065】
【実施例4】
(イオン交換樹脂前駆体に対する低倍率延伸、K:塩置換率59%)
カチオンをカリウムイオン、塩置換率を59%とした以外は実施例1と同様の方法を用いて厚さ23.2μmのフッ素系イオン交換膜を得た。得られた膜の諸特性の測定結果を表2に示す。
【0066】
【実施例5】
(イオン交換樹脂前駆体に対する低倍率延伸、Fe:塩置換率7%)
カチオンを鉄イオン、塩置換率を7%とした以外は実施例1と同様の方法を用いて厚さ25.0μmのフッ素系イオン交換膜を得た。得られた膜の諸特性の測定結果を表2に示す。
【0067】
【実施例6】
(イオン交換樹脂前駆体に対する高倍率延伸、Ca:塩置換率38%)
延伸条件を表2に示すように、塩置換率を38%とした以外は実施例1と同様の方法を用いて厚さ11.2μmのフッ素系イオン交換膜を得た。得られた膜の諸特性の測定結果を表2に示す。
【0068】
【実施例7】
(低EWイオン交換樹脂前駆体に対する低倍率延伸、Ca:塩置換率25%)
上記(原料ポリマー)一般式のフッ化ビニル化合物とフッ化オレフィンとの共重合体(但し、XはCF3、nは0、mは2、ZはF、WはSO2Fである。)からなるフッ素系イオン交換樹脂前駆体(EW:720、MI:3.6)を用い、延伸温度90℃、延伸倍率1.9×1.9倍、塩置換率を25%とした以外は実施例1と同様の方法を用いて厚さ32.2μmのフッ素系イオン交換膜を得た。得られた膜の諸特性の測定結果を表3に示す。
【0069】
【実施例8】
(イオン交換樹脂に対する低倍率延伸、Ca:塩置換率33%)
上記(原料ポリマー)一般式のフッ化ビニル化合物とフッ化オレフィンとの共重合体(但し、XはCF3、nは1、mは2、ZはF、WはSO2Fである。)からなるフッ素系イオン交換樹脂前駆体(EW:950、MI:20)をTダイ法を用いて成膜し、厚さ110μmの前駆体膜とした。この前駆体膜を95℃に加温した加水分解浴(DMSO:KOH:水=5:30:65)に1時間浸漬し、イオン交換基の対イオンがカリウムイオンのフッ素系イオン交換膜を得た。これを充分に水洗した後、65℃に加温した2Nの塩酸浴に16時間以上浸漬し、イオン交換基の対イオンがプロトンのフッ素系イオン交換膜を得た。これを充分に水洗した後、膜を乾燥した。この乾燥膜を簡易式小型延伸機を用いて、延伸温度125℃で2×2倍に同時二軸延伸し配向膜とした。延伸後、簡易式小型延伸機より取り外した後、配向膜を、所定の濃度の塩化カルシウム水溶液に浸漬させ、イオン交換基の対イオンがカルシウムイオンで置換された塩置換率33%のフッ素系イオン交換膜を得た。これを充分に水洗した後、膜を乾燥し、厚さ36.2μmの乾燥膜を得た。得られた膜の諸特性の測定結果を表3に示す。
【0070】
【比較例1】
(未配向膜)
実施例1と同様にフッ素系イオン交換樹脂前駆体(EW:950、MI:20)をTダイ法を用いて成膜し、未配向の状態で加水分解を行うことによって厚さ31.7μmのフッ素系イオン交換膜を得た。得られた膜の諸特性の測定結果を表4に示す。
【0071】
【比較例2】
(イオン交換樹脂前駆体に対する低倍率延伸、塩置換率0%)
塩置換処理を行わないこと以外は実施例1と同様の方法を用いて厚さ25.2μmのフッ素系イオン交換膜を得た。得られた膜の諸特性の測定結果を表4に示す。
【0072】
【比較例3】
(未配向膜、Ca:塩置換率35%)
実施例1と同様にフッ素系イオン交換樹脂前駆体(EW:950、MI:20)をTダイ法を用いて成膜し、未配向の状態で加水分解を行い、フッ素系イオン交換膜を得た。当該膜を、所定の濃度の塩化カルシウム水溶液に浸漬させ、イオン交換基の対イオンがカルシウムイオンで置換された塩置換率35%のフッ素系イオン交換膜を得た。これをよく水洗した後、膜を乾燥し、厚さ31.2μmの乾燥膜を得た。得られた膜の諸特性の測定結果を表4に示す。なお、表中の「−」は未測定を示す。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【0076】
【表4】
【0077】
【発明の効果】
本発明のフッ素系イオン交換膜は、高い強度と高い熱寸法安定性を同時に満足するものであり、産業上極めて有用である。[0001]
TECHNICAL FIELD OF THE INVENTION
The present invention relates to a fluorine-based ion exchange membrane, and more particularly to a fluorine-based ion exchange membrane having excellent performance as an electrolyte of a solid polymer electrolyte fuel cell and as a diaphragm.
[0002]
[Prior art]
2. Description of the Related Art A fuel cell is a kind of power generation device that extracts electric energy by electrochemically oxidizing a fuel such as hydrogen or methanol, and has recently attracted attention as a clean energy supply source. Fuel cells are classified into phosphoric acid type, molten carbonate type, solid oxide type, solid polymer electrolyte type, etc., depending on the type of electrolyte used. Among these, solid polymer electrolyte type fuel cells are standard Because of its low operating temperature of 100 ° C. or lower and high energy density, it is expected to be widely used as a power source for electric vehicles and the like.
[0003]
The basic structure of a solid polymer electrolyte fuel cell is composed of an ion exchange membrane and a pair of gas diffusion electrodes joined to both sides of the membrane. Hydrogen is supplied to one electrode, oxygen is supplied to the other, and the space between the two electrodes is external. It generates power by connecting to a load circuit. More specifically, protons and electrons are generated at the hydrogen side electrode, and the protons move inside the ion exchange membrane and reach the oxygen side electrode, and then react with oxygen to generate water. On the other hand, the electrons that flow out of the hydrogen-side electrode through the conducting wire, after electric energy is extracted in the external load circuit, further travel through the conducting wire to reach the oxygen-side electrode, and contribute to the progress of the water generation reaction.
[0004]
As the required characteristics of the ion exchange membrane, firstly, high ion conductivity can be mentioned, but when protons move inside the ion exchange membrane, it is considered that water molecules are stabilized by hydration, Along with ion conductivity, high water content and water dispersibility are also important required characteristics. In addition, since the ion exchange membrane has a function as a barrier for preventing a direct reaction between hydrogen and oxygen, low permeability to gas is required. Other required characteristics include chemical stability for withstanding a strong oxidizing atmosphere during operation of the fuel cell and mechanical strength for withstanding further thinning.
[0005]
As a material of the ion exchange membrane used in the solid polymer electrolyte fuel cell, a fluorine-based ion exchange resin is widely used because of its high chemical stability. "Nafion (registered trademark)" manufactured by DuPont having a sulfonic acid group at a chain end is widely used. Such a fluorine-based ion exchange resin has generally well-balanced properties as a solid polymer electrolyte material. However, as the battery is put into practical use, further improvement in physical properties has been required.
[0006]
For example, thinning of ion-exchange membranes is expected to become even more important in the future in order to achieve a high level of current density and uniformity of moisture in the membranes. It is necessary to improve the mechanical strength. Similarly, demands for higher strength are increasing from the viewpoint of improving long-term durability. The stretching technique is one of the effective means for improving the mechanical strength of a membrane or a film, and a method of obtaining a high-strength ion exchange membrane by stretching is already known. Patent Literature 1 discloses that at least one plane direction is used for an ion exchange resin swollen with a liquid organic compound or a melt processable precursor of an ion exchange resin swollen with a fluorine-containing liquid organic compound. A production method for stretching the film is disclosed.
[0007]
In Example 1 of Patent Literature 1, the mechanical strength was 2.8 × 10 by stretching the fluorine-based ion exchange resin 2 × 2 times in the longitudinal and transverse directions at 125 ° C.76.3 × 10 from Pa7It is disclosed that it rises to Pa. However, it has been revealed that the stretched film according to this example has a large heat shrinkage. For example, when the film is exposed to a temperature equivalent to a hot press at the time of producing a membrane electrode assembly (MEA), a large heat shrinkage occurs and the orientation is relaxed. And the film shrinks in hot water.
[0008]
Patent Document 2 discloses that heat shrinkage is reduced by heat-setting a stretched and oriented fluorine ion exchange membrane. However, there was a problem that the orientation was relaxed due to the heat fixation and the strength was reduced. In addition, since the ionic conductivity is reduced by the heat fixation, a washing process is required as a post-process, and the process is complicated.
As described above, the stretch-oriented film exhibits high mechanical strength, but in many cases, has a large heat shrinkage and the orientation is alleviated. There were restrictions.
[0009]
As described above, the prior art relating to the enhancement of strength is merely an attempt at simple stretching. In particular, since the stabilization of the stretching orientation is insufficient and the heat shrinkage is large, an industrially useful technique as an ion exchange membrane is used. Could not be disclosed.
[0010]
[Patent Document 1]
JP-A-60-149631
[Patent Document 2]
WO 02/062879 pamphlet
[0011]
[Problems to be solved by the invention]
An object of the present invention is to provide a fluorine-based ion exchange membrane having excellent mechanical strength and excellent thermal dimensional stability, and a method for producing the same.
[0012]
[Means for Solving the Problems]
By orienting the fluorine-based ion exchange membrane, its mechanical strength increases, but on the other hand, thermal shrinkage increases. The present inventors have conducted intensive studies to solve the above-mentioned problems, and as a result, by appropriately setting the degree of plane orientation of the fluorine-based ion exchange membrane, α-dispersion temperature shift, etc., high strength and thermal dimensional stability Were found to be compatible, and the present invention was completed.
[0013]
That is, the present invention is as follows.
[1] When the film thickness is 1 to 500 μm, the degree of plane orientation (ΔP) is 0.0005 or more, the horizontal ionic conductivity at 25 ° C. is 0.05 S / cm or more, and the α dispersion temperature shift (ΔT) is 1 or more. A fluorine-based ion exchange membrane characterized by the following.
[2] The fluorinated ion exchange membrane according to [1], wherein the heat shrinkage at 160 ° C. is 45% or less.
[3] The method according to [1] or [2], wherein the counter ion of the ion exchange group is a proton and at least one cation selected from alkali metal ions, alkaline earth metal ions, and transition metal ions. The fluorinated ion exchange membrane according to the above.
[0014]
[4] A method for producing a fluorine-based ion-exchange membrane, comprising replacing a counter ion of an ion-exchange group of an oriented fluorine-based ion-exchange membrane with a proton and at least one kind of cation.
[5] The method for producing a fluorine-based ion-exchange membrane according to [4], wherein the oriented fluorine-based ion-exchange membrane according to [4] is produced by a process including the following.
(1) forming a fluorine-based ion-exchange resin precursor film from a fluorine-based ion-exchange resin precursor having an ion-exchange membrane precursor;
(2) a step of orienting the fluorine-based ion exchange resin precursor membrane, and
(3) a step of hydrolyzing the ion-exchange resin precursor under restraint while maintaining the orientation state of the fluorine-based ion-exchange resin precursor film obtained in (2).
[0015]
[6] The method for producing a fluorine-based ion-exchange membrane according to [4], wherein the oriented fluorine-based ion-exchange membrane according to [4] is produced by a process including the following.
(1) forming a fluorine-based ion-exchange resin precursor film from a fluorine-based ion-exchange resin precursor having an ion-exchange membrane precursor;
(2) hydrolyzing the fluorinated ion exchange resin precursor membrane to obtain a fluorinated ion exchange resin membrane; and
(3) A step of orienting the fluorine-based ion exchange resin membrane obtained in (2).
[7] A membrane electrode assembly comprising the fluorine-based ion exchange membrane according to any one of [1] to [3].
[8] A solid polymer electrolyte fuel cell comprising the fluorine-based ion exchange membrane according to any one of [1] to [3].
[0016]
Hereinafter, the present invention will be described in detail.
First, the fluorine-based ion exchange membrane of the present invention will be described.
(Thickness)
The thickness of the fluorine-based ion exchange membrane of the present invention is 1 μm or more, preferably 5 μm or more, more preferably 8 μm or more, and most preferably 10 μm or more. When the film thickness is less than 1 μm, inconveniences such as a direct reaction between hydrogen and oxygen are likely to occur, and the film may be damaged due to a difference in pressure or distortion during handling during fuel cell production or during fuel cell operation. It's easy to do. On the other hand, the upper limit of the film thickness is 500 μm or less, preferably 150 μm or less, more preferably 100 μm or less, and most preferably 50 μm or less. If the film thickness exceeds 500 μm, the ion permeability becomes low, so that sufficient performance as an ion exchange membrane cannot be exhibited.
[0017]
(Plane orientation degree)
A feature of the fluorine-based ion exchange membrane of the present invention is the degree of plane orientation. If this value does not show a certain value or more, it is merely a thin film, and improvement in mechanical strength cannot be expected.
The degree of plane orientation of the fluorine-based ion exchange membrane of the present invention is 0.0005 or more, preferably 0.0010 or more, more preferably 0.0015 or more, and most preferably 0.0020 or more. When the degree of plane orientation is less than 0.0005, the mechanical strength is insufficient and the ion exchange membrane does not have sufficient performance.
[0018]
(Horizontal ionic conductivity in 25 ° C water)
The horizontal ion conductivity of the fluorine-based ion exchange membrane of the present invention in water at 25 ° C. is 0.05 S / cm or more, preferably 0.06 S / cm or more, more preferably 0.07 S / cm or more, and further preferably 0 or more. 0.08 S / cm or more, most preferably 0.09 S / cm or more. When the horizontal ionic conductivity is less than 0.05 S / cm, the internal resistance increases when used as an ion exchange membrane for a fuel cell.
(Α dispersion temperature shift)
The α-dispersion temperature shift of the fluorine-based ion exchange membrane of the present invention is 1 or more, preferably 5 or more, more preferably 10 or more, still more preferably 15 or more, and most preferably 20 or more. When the α-dispersion temperature shift is less than 1, heat shrinkage occurs at a high temperature, and, for example, the production yield of the membrane electrode assembly decreases.
[0019]
(Thermal shrinkage at 160 ° C)
The heat shrinkage at 160 ° C. of the fluorine-based ion exchange membrane of the present invention is preferably 45% or less, more preferably 40% or less, further preferably 35% or less, further preferably 30% or less, and most preferably 25% or less. % Or less. If the heat shrinkage exceeds 45%, heat shrinkage may occur in applications involving high-temperature processing, which may hinder, for example, the production of MEAs.
(Equivalent weight)
The equivalent weight (EW) of the fluorine-based ion exchange membrane of the present invention is not limited, but is preferably 400 or more, more preferably 600 or more, and most preferably 700 or more. If the equivalent weight is too low, the strength may decrease. On the other hand, the upper limit of EW is preferably 1400 or less, more preferably 1200 or less, and most preferably 1000 or less. When the equivalent weight is increased, the mechanical strength is improved even in an unoriented film, but at the same time, the ion conductivity may be reduced due to the reduced density of ion exchange groups.
[0020]
(Salt substitution rate)
The salt substitution ratio of the fluorine-based ion exchange membrane of the present invention is not limited, but is preferably 0.1% or more, more preferably 1% or more, further preferably 5% or more, further preferably 10% or more, and most preferably 20% or more. % Or more. When the salt substitution ratio is less than 0.1%, the α-dispersion temperature shift is small, so that thermal shrinkage tends to occur at high temperatures, and for example, the production yield of the membrane / electrode assembly may decrease. The upper limit of the salt substitution rate is preferably 99% or less, more preferably 90% or less, further preferably 80% or less, further preferably 70% or less, and most preferably 60% or less. When the salt substitution ratio exceeds 99%, a membrane having a salt substitution ratio is generally considered to have low ionic conductivity, and thus may not have sufficient performance as an ion exchange membrane.
[0021]
(Converted puncture strength)
The converted puncture strength (the puncture strength in a dry state per 25 μm) of the fluorine-based ion exchange membrane of the present invention is not limited, but is preferably 300 g or more, more preferably 350 g or more, and most preferably 400 g or more. If the reduced puncture strength is less than 300 g, sufficient mechanical strength may not be obtained when the film is made thin. Although there is no particular upper limit on the converted piercing strength, a membrane having a strength of 3000 g or more is generally expected to have a low moisture content, and thus may not have sufficient performance as an ion exchange membrane.
[0022]
Next, a method for producing a fluorine-based ion exchange membrane of the present invention will be described.
(Raw polymer)
The fluorinated ion exchange resin precursor used in the present invention has a general formula CF2= CF-O (CF2CFXO)n− (CF2)mA vinyl fluoride compound represented by the general formula CF2= At least a binary copolymer with a fluorinated olefin represented by CFZ. Here, X is an F atom or a perfluoroalkyl group having 1 to 3 carbon atoms, n is an integer of 0 to 3, m is an integer of 1 to 3, Z is H, Cl, F or 1 carbon atom. To 3 perfluoroalkyl groups. W is converted to CO by hydrolysis.2H or SO3H is a functional group that can be converted to H. Such a functional group includes SO 22F, SO2Cl, SO2Br, COF, COCl, COBr, CO2CH3, CO2C2H5Is usually preferably used.
[0023]
Such a fluorine-based ion exchange resin precursor can be synthesized by known means. For example, a method of dissolving the above-mentioned vinyl fluoride compound in a solvent such as chlorofluorocarbon and polymerizing it by reacting with a fluorinated olefin gas (solution polymerization), after emulsifying the vinyl fluoride compound in water together with a surfactant, , A method of polymerizing by reacting with a fluorinated olefin gas (emulsion polymerization), and further, a suspension polymerization and the like are known, all of which can be used as a suitable method.
[0024]
(Deposition process)
As a method of forming the fluorine-based ion exchange resin precursor into a film, any method generally known as a forming method such as a melt forming method (T-die method, inflation method, calendering method, etc.), a casting method, and the like can be used. Any of them can be suitably used. Examples of the casting method include a method in which a fluorinated ion exchange resin is dispersed in an appropriate solvent, and a method in which a polymerization reaction solution itself is formed into a sheet and the dispersion medium is removed.
[0025]
The resin temperature at the time of performing the melt molding by the T-die method is preferably 100 ° C. or higher, more preferably 200 ° C. or higher. In consideration of the heat resistance of the resin, the temperature is preferably 300 ° C. or lower, more preferably 280 ° C. or lower. The resin temperature at the time of performing the melt molding by the inflation method is preferably 100 ° C. or higher, more preferably 160 ° C. or higher. Considering the heat resistance of the resin, the temperature is preferably 300 ° C. or lower, more preferably 240 ° C. or lower.
[0026]
The sheet melt-formed by these methods is cooled to a temperature lower than the melting temperature by using a cooling roll or the like.
It is preferable to adjust the thickness of the precursor film to an optimum thickness in anticipation of a decrease in the thickness in the alignment step. Therefore, the film thickness is adjusted such that a film having a degree of plane orientation of 0.0005 or more and a film thickness of 1 to 500 μm is obtained when the film is oriented by stretching. For example, when performing 4 × 4 stretching in the alignment step, it is necessary to adjust the thickness of the precursor film to around 400 μm in order to make the thickness of the alignment film 25 μm.
[0027]
(Hydrolysis step)
As a hydrolysis method, for example, as described in Japanese Patent No. 2757331, an ion exchange group precursor of an alignment film is converted to an ion whose counter ion of an ion exchange group is a metal salt cation using an alkali hydroxide solution. The ion exchange group is converted to a proton exchange resin by using an acidic aqueous solution such as hydrochloric acid.3H or COOH).
[0028]
In the hydrolysis, after converting the ion exchange group precursor into an ion exchange resin in which the counter ion of the ion exchange group is a metal salt cation, a part of the metal salt cation is replaced with a proton. At that time, by controlling the substitution rate with protons, ions having a horizontal ionic conductivity of 0.05 S / cm or more at 25 ° C. and an α dispersion temperature shift (ΔT) of 1 or more can be obtained by one hydrolysis. It can be converted to an exchange resin membrane. In addition, by adjusting the rate of substitution with protons, the cation is once converted to an ion exchange resin membrane having an α dispersion temperature shift (ΔT) of 1 or less by hydrolysis, and then converted to cations in a subsequent step of substituting with cations. By adjusting the substitution rate, it is possible to convert to an ion exchange resin membrane having a horizontal ionic conductivity at 25 ° C. of 0.05 S / cm or more and an α-dispersion temperature shift (ΔT) of 1 or more.
[0029]
Generally, an ion-exchange membrane is manufactured by forming an ion-exchange resin precursor into a membrane and then performing hydrolysis at a high temperature. Therefore, in the present invention, stretching can be roughly classified into “fluorine ion exchange resin precursor before hydrolysis” and “fluorine ion exchange resin after hydrolysis”. In the present invention, any film can be stretched according to the purpose.
[0030]
(Stretching of fluorinated ion exchange resin precursor)
The first preferred form of stretching in the present invention is performed on a fluorine-based ion exchange resin precursor. A particularly important point in the stretching of the fluorine-based ion exchange resin precursor is the prevention of the relaxation of the orientation accompanying the completion of the stretching. This is for the following reasons.
Generally, the stretching temperature of a film is often set with reference to the α dispersion temperature in viscoelasticity measurement. The α-dispersion temperature is a temperature at which the polymer main chain is considered to start thermal motion, and is widely used as an index when processing while giving a large strain to a polymer such as stretching.
[0031]
Since the α-dispersion temperature of the fluorine-based ion exchange resin precursor is around room temperature, when the constraint is removed from the stretched state, the α-dispersion often rapidly shrinks and loses the stretch orientation. The present inventors have found a stretching and fixing method that does not depend on the α-dispersion temperature with respect to the relaxation of the orientation of the fluorine-based ion-exchange resin precursor, focusing on hydrolysis, which is a production process unique to the precursor. That is, the present invention is characterized in that after the fluorine-based ion exchange resin precursor is stretched, the precursor is hydrolyzed in a state where the stretching orientation is restricted.
[0032]
Although it is not clear why stretching and fixing can be achieved by such a method, it is considered that the α-dispersion temperature of the fluorine-based ion exchange resin generated by hydrolysis is much higher than that of the precursor and exists around 120 ° C. Therefore, by performing the hydrolysis while maintaining the stretched orientation, the thermal motion of the main chain was reduced in the process of increasing the α dispersion temperature of the alignment film with the progress, and it was possible to achieve stretch fixation. Conceivable. In the present invention, such a stretching fixing method is referred to as “saponification fixing”.
[0033]
The reason why the saponification fixation can be achieved can be further considered as follows. Hydrolysis of the fluorinated ion-exchange resin precursor causes a large amount of water to be absorbed.However, such water does not exist uniformly inside the resin, but rather exists locally while forming microscopic water droplets. It is considered. Such water droplets are called clusters and can be specifically observed by small-angle X-ray diffraction or a transmission electron microscope. One cluster is expected to contain a plurality of side chain terminals. However, after stretching the fluorine-based ion-exchange resin precursor and forming a cluster while maintaining the constraint, these side chain terminals may be connected to each other. It can be expected to function as a kind of cross-linking point that is linked to each other via water. That is, in addition to the increase in the α dispersion temperature, the cluster formed after the stretching orientation functions as a pseudo-crosslinking point, so that the saponification fixation functions more favorably.
On the other hand, the orientation film without the saponification fixation is largely open when the constraint is released and when the film is exposed to a high-temperature saponification solution. Mechanical strength is reduced to the extent.
[0034]
(Stretching of fluorine ion exchange resin)
The second of the preferred modes of stretching in the present invention is for a fluorine-based ion exchange resin. As described above, since the α-dispersion temperature of the fluorine-based ion exchange resin is considered to be around 120 ° C., stretching and fixing by cooling is easy, and stretching orientation is easily maintained even after the constraint is released. In particular, since stretching to a fluorine-based ion exchange resin does not require a special treatment such as saponification fixing, a general stretching technique can be applied, and a viewpoint of improving the productivity of an ion exchange membrane for a fuel cell. Is preferred. That is, in the present invention, as a second preferred mode of stretching, the fluorine-based ion-exchange resin precursor is stretched after hydrolysis.
[0035]
(Orientation step)
As described above, the objects to be stretched can be broadly classified into “fluorine ion exchange resin precursor before hydrolysis” and “fluorine ion exchange resin after hydrolysis”. For any of the films, a method generally known as a film stretching method can be used. Among them, a transverse uniaxial stretching by a tenter, a sequential biaxial stretching by a tenter and a longitudinal stretching roll, Simultaneous biaxial stretching using a biaxial tenter and blow stretching using an inflation film forming apparatus are preferred, and simultaneous biaxial stretching and blow stretching are more preferred.
[0036]
Stretching in the present invention means elongation accompanied by generation of stretching stress, and elongation without generation of stretching stress is referred to as widening. For example, when the orientation step is not performed before the hydrolysis step, the film swells largely in the horizontal direction due to water absorption accompanying the hydrolysis, but when the film is stretched following this change, it can be considered as widening. .
Stretching is performed by appropriately selecting conditions such as a stretching ratio and a stretching temperature so that the degree of plane orientation (ΔP) of the film is 0.0005 or more and the film thickness is 1 to 500 μm.
[0037]
The stretching ratio is an area ratio. The lower limit is preferably 1.1 or more, more preferably 2 or more, most preferably 4 or more, and the upper limit is preferably 50 or less, more preferably 16 or less. , Most preferably 9 times or less. Of these, the stretching ratio in the transverse direction (direction perpendicular to the machine direction) is preferably at least 1.1 times, more preferably at least 1.5 times, most preferably at least 2 times, and most preferably at least 2 times. Is preferably 50 times or less, more preferably 9 times or less, and most preferably 3 times or less. A suitable stretching temperature is equal to or lower than the melting temperature of the precursor film, and the lower limit is preferably equal to or higher than (α dispersion temperature −100 ° C.), more preferably equal to or higher than (α dispersion temperature −80 ° C.), and most preferably equal to (α). The upper limit is preferably (α dispersion temperature + 100 ° C.) or less, more preferably (α dispersion temperature + 80 ° C.) or less, and most preferably (α dispersion temperature + 50 ° C.) or less.
[0038]
(Conversion of counter ion of ion exchange group by cation (salt substitution))
The term “salt substitution” used herein means that a counter ion of an ion exchange group is converted to an ion exchange resin that is a metal salt cation by hydrolysis of a fluorine-based ion exchange resin precursor membrane, and then a part of the metal salt cation is converted to a proton. This is a process that is performed on residual protons after producing an ion exchange resin membrane having an α dispersion temperature shift (ΔT) of 1 or less. By this salt substitution, the fluorinated ion exchange membrane of the present invention having a horizontal ionic conductivity at 25 ° C. of 0.05 S / cm or more and an α-dispersion temperature shift (ΔT) of 1 or more is produced.
[0039]
As the type of cation used in the present invention, any type of cation having an α-dispersion temperature shift of 1 or more, such as an alkali metal ion, an alkaline earth metal, and a transition metal ion, can be used. The α-dispersion temperature shift can be controlled by the type and amount of the cation to be replaced. In particular, the higher the ionic valence, the greater the effect.
The salt substitution rate is appropriately determined so that the horizontal ionic conductivity of the ion exchange resin membrane is 0.05 S / cm or more and the α dispersion temperature shift (ΔT) is 1 or more. And so on. If the salt substitution ratio is too low, heat shrinkage is large, which may hinder the production of the MEA. In order to reduce the heat shrinkage at 160 ° C. to 45% or less, the salt substitution rate is set to 5% or more. As for the salt replacement ratio, the higher the salt replacement ratio, the larger the α-dispersion temperature shift. However, if the salt replacement ratio is too large, the ionic conductivity is reduced, which may be undesirable as an electrolyte membrane. Therefore, it is preferable to use a polyvalent ion because good thermal dimensional stability can be improved at a low salt substitution rate. Specifically, when the counter ion is a monovalent cation, the salt substitution rate is preferably 10 to 90%, more preferably 20 to 80%, and most preferably 30 to 70%. In the case of a divalent cation, the salt substitution rate is preferably from 5 to 60%, more preferably from 10 to 50%, and most preferably from 20 to 40%.
[0040]
The salt replacement can be performed by immersing the fluorinated ion exchange membrane in a salt solution containing a predetermined concentration of the cation to be replaced, or by applying or spraying the salt solution.
The concentration of the salt aqueous solution can be adjusted by the following method. For example, the description is made on the assumption that the counter ion is an n-valent cation and the salt substitution rate is X%. First, a dry weight W (g) of a fluorine-based ion exchange membrane having a proton as a counter ion is measured. Next, the equivalent weight EW (g / eq) of the fluorine-based ion exchange membrane is measured. From these, the substituent amount A (mol) is determined using the following formula.
A = W / EW
[0041]
The amount A of the substituent is the total amount of ion exchange groups of the fluorine-based ion exchange membrane. The salt substitution ratio X% means that X% of counter ions in all ion exchange groups are replaced with one or more cations other than protons, and the remaining (100-X)% of counter ions are protons. . The weight C (g) of the cation salt required when the counter ion is replaced with an n-valent cation and the salt replacement ratio is changed to X% is determined using the following equation.
C = A × X / 100 × D / n
D: Molecular weight of cation salt (g / mol)
The concentration of the salt aqueous solution is adjusted by dissolving the cationic salt C in 500 ml of water.
[0042]
Salt substitution can be performed by immersing the fluorine-based ion exchange membrane in which the counter ion of the ion exchange group is a proton in the aqueous salt solution thus prepared. In many cases, the immersion temperature can be sufficiently replaced at room temperature, and the salt aqueous solution may be heated to shorten the salt replacement time. Although the immersion time depends on the concentration of the salt aqueous solution and the immersion temperature, the salt substitution can be suitably performed in a range of about 1 minute to 12 hours. After completion of the salt substitution, the membrane is thoroughly washed with water and dried.
In the same manner as described above, a salt-substituted ion exchange membrane can be obtained by immersing a fluoride ion exchange membrane in which a counter ion of an ion exchange group is composed of a proton and other cations in an acidic aqueous solution having a predetermined concentration. .
[0043]
(Swelling process)
When a higher ion conductivity is to be developed, the water content of the fluorinated ion exchange membrane can be improved by performing a swelling treatment after the hydrolysis step, if necessary. For example, as described in JP-A-6-342665, swelling treatment is performed by heating a fluorine-based ion-exchange membrane in water or a mixture of water and an organic solvent soluble in water, and then ion-exchanged. By returning the counter ion of the exchange group to a proton, a fluorine-based ion exchange membrane having a high water content can be obtained.
[0044]
(Method for producing membrane electrode assembly)
When a fluorine-based ion exchange membrane is used in a solid polymer electrolyte fuel cell, an anode and a cathode are used as an MEA in which two types of electrodes are joined to both sides of the membrane.
The electrode is composed of fine particles of a catalytic metal and a conductive agent supporting the fine particles, and contains a water repellent as needed. The catalyst used for the electrode is not limited as long as it is a metal that promotes the oxidation reaction of hydrogen and the reduction reaction by oxygen.Platinum, gold, silver, palladium, iridium, rhodium, ruthenium, iron, cobalt, nickel, chromium , Tungsten, manganese, vanadium or alloys thereof. Among these, platinum is mainly used.
[0045]
The conductive agent may be any material as long as it is an electron conductive material, and examples thereof include various metals and carbon materials. Examples of the carbon material include carbon black such as furnace black, channel black, and acetylene black, activated carbon, and graphite. These may be used alone or as a mixture of two or more.
As the water repellent, a fluorine-containing resin having water repellency is preferable, and one having excellent heat resistance and oxidation resistance is preferable. For example, polytetrafluoroethylene, a tetrafluoroethylene-perfluoroalkyl vinyl ether copolymer, a tetrafluoroethylene-hexafluoropropylene copolymer and the like can be mentioned.
[0046]
In order to form an MEA from the electrode and the ion exchange membrane, for example, the following method is adopted. Platinum-supporting carbon serving as an electrode material is dispersed in a solution in which a fluorine-based ion exchange resin is dissolved in a mixed solution of alcohol and water to form a paste. A predetermined amount of this is applied to a polytetrafluoroethylene (PTFE) sheet and dried. Next, the application surfaces of the PTFE sheets are faced to each other, and an ion exchange membrane is interposed therebetween, and the sheets are joined by hot pressing. The hot pressing temperature depends on the type of the ion exchange membrane, but is usually 100 ° C. or higher, preferably 130 ° C. or higher, more preferably 150 ° C. or higher.
As a method other than the above, a method of directly applying an electrode catalyst to an ion exchange membrane to form a catalyst layer, a method of directly spraying an ion exchange membrane using a spray or the like to form a catalyst layer, or the like can also be used. .
[0047]
(Proton conversion of counter ion of ion exchange group by contact with acid)
When trying to develop higher ionic conductivity, after forming an electrode catalyst layer as necessary, by contacting with an acid, the substituted cation is washed away, and the counter ion of the ion exchange group becomes a proton, Higher ion conductivity can be exhibited. For example, a known method of dipping in an acidic aqueous solution such as hydrochloric acid or spraying the acidic aqueous solution can be used.
[0048]
(Fuel cell manufacturing method)
Next, a method for manufacturing a solid polymer electrolyte fuel cell will be described. A solid polymer electrolyte fuel cell includes an MEA, a current collector, a fuel cell frame, a gas supply device, and the like. Among these, the current collector (bipolar plate) is a graphite or metal flange having a gas flow path on the surface or the like. In addition to transmitting electrons to an external load circuit, hydrogen or oxygen is transferred to the MEA surface. It has a function as a supply channel. By inserting MEAs between such current collectors and stacking a plurality of them, a fuel cell can be produced.
[0049]
Operation of the fuel cell is performed by supplying hydrogen to one electrode and oxygen or air to the other electrode. The higher the operating temperature of the fuel cell is, the higher the catalyst activity is, which is preferable. However, usually, the fuel cell is often operated at 50 ° C. to 100 ° C. where the water management is easy. On the other hand, a reinforced ion exchange membrane as in the present invention may be able to operate at 100 ° C. to 150 ° C. by improving the high temperature and high humidity strength. The higher the supply pressure of oxygen or hydrogen, the higher the output of the fuel cell is, which is preferable. However, since the probability of contact between the two due to breakage of the membrane increases, it is preferable to adjust the pressure to an appropriate pressure range.
[0050]
(Proton conversion of counter ion of ion exchange group by fuel cell operation)
In the present invention, the ion conductivity of the fluorinated ion exchange membrane reduced by the salt substitution is such that the protons moving inside the membrane during operation of the fuel cell wash out the substituted cations, and the counter ion of the ion exchange group. Becomes a proton, and may exhibit higher ionic conductivity.
[0051]
BEST MODE FOR CARRYING OUT THE INVENTION
Hereinafter, the present invention will be specifically described based on examples, but the present invention is not limited to the examples.
The property evaluation method used in the present invention is as follows.
(B) Film thickness
After leaving the ion exchange membrane in a constant temperature chamber at 23 ° C. and 65% for 1 hour or more, measurement is performed using a film thickness meter (Toyo Seiki Seisaku-sho, Ltd .: B-1).
[0052]
(B) Plane orientation degree
After leaving the ion exchange membrane in a constant temperature chamber at 23 ° C. and 65% for 12 hours or more, the refractive index in each of three directions is measured using an automatic birefringence meter KOBRA-21ADH manufactured by Oji Scientific Instruments.
nα: refractive index in the main orientation direction of the film
nβ: refractive index in the direction perpendicular to the main orientation direction of the film
nγ: refractive index in the thickness direction of the film
From these, the plane orientation degree ΔP is determined using the following equation.
ΔP = (nα + nβ) / 2−nγ
[0053]
(C) Horizontal ionic conductivity in 25 ° C water
After immersing the ion-exchange membrane in water at 25 ° C. for 30 minutes, it is cut into strips having a width of 1 cm, and six electrode wires having a diameter of 0.5 mm are brought into parallel contact with the surface at 1 cm intervals. After holding for 2 hours or more in a thermo-hygrostat adjusted to 25 ° C. and 98%, resistance is measured by an AC impedance method (10 kHz), and the resistance value per unit length is measured from the distance between the electrodes and the resistance. From this, the horizontal ionic conductivity Z (S / cm) at 25 ° C. is determined using the following equation.
Z = 1 / film thickness (cm) / film width (cm) / resistance value per unit length (Ω
/ Cm)
[0054]
(D) α dispersion temperature shift
After leaving the ion exchange membrane in a constant temperature chamber at 23 ° C. and 65% for 12 hours or more, a sample cut to a membrane width of 5 mm is set in a dynamic viscoelasticity measuring apparatus (ITA Measurement Control Co., Ltd .: DVA 200). Based on JIS K-7244, dynamic viscoelasticity was measured in a tensile mode at a chuck distance of 20 mm, a strain of 0.1%, a frequency of 35 Hz, and a heating rate of 5 ° C./min. Is the α dispersion temperature TSAnd Next, the ion-exchange membrane is cut out to a membrane width of 5 mm, and immersed in 50 ml of 2N hydrochloric acid at 25 ° C. for 30 minutes or more to make the counter ion of the ion-exchange group a proton. The dynamic viscoelasticity of this ion exchange membrane was measured in the same manner as described above, and the peak temperature on the high temperature side among the tan δ peaks was changed to the α dispersion temperature T.HAnd From these, the α dispersion temperature shift ΔT is determined using the following equation.
ΔT = TS−TH
[0055]
(E) Heat shrinkage at 160 ° C
After leaving the ion exchange membrane in a constant temperature chamber at 23 ° C. and 65% for 12 hours or more, the membrane area before heating is measured. Then, after leaving it in an oven heated to 160 ° C. for 3 minutes, it is taken out of the oven and the film area after heating is measured while taking care not to absorb moisture. From these, the thermal shrinkage H at 160 ° C. is calculated using the following equation.a(%).
Ha= (1- (A2/ A1)0.5) × 100
A1: Film area before heating (cm2), A2: Film area after heating (cm2)
[0056]
(F) Equivalent weight
Ion exchange group counter ion is proton ion exchange membrane about 2-10cm2Is immersed in 30 ml of a saturated aqueous solution of NaCl at 25 ° C., and left for 30 minutes with stirring. Next, the protons in the saturated aqueous NaCl solution are neutralized and titrated with a 0.01 N aqueous sodium hydroxide solution using phenolphthalein as an indicator. After the neutralization, the ion-exchange group obtained is a counter ion of a sodium ion, and the ion-exchange membrane is rinsed with pure water, dried in vacuum, and weighed. The amount of sodium hydroxide required for neutralization is represented by M (mmol), the weight of the ion exchange membrane in which the counter ion of the ion exchange group is sodium ion is represented by W (mg), and the equivalent weight EW (g / eq) is obtained from the following formula. Ask for.
EW = (W / M) −22
[0057]
(G) Salt substitution rate
Ion exchange membrane about 2-10cm2Is immersed in 30 ml of a saturated aqueous solution of NaCl at 25 ° C., and left for 30 minutes with stirring. Next, the protons in the saturated aqueous NaCl solution are neutralized and titrated with a 0.01 N aqueous sodium hydroxide solution using phenolphthalein as an indicator. At this time, the amount of sodium hydroxide required for neutralization was M2(Mmol). Next, the ion-exchange membrane after the neutralization titration is immersed in 50 ml of 2N hydrochloric acid at 25 ° C. for 30 minutes or more to turn the counter ion of the ion-exchange group into a proton. This ion-exchange membrane was immersed in 30 ml of a saturated NaCl aqueous solution at 25 ° C., and allowed to stand for 30 minutes with stirring. Then, protons in the saturated NaCl aqueous solution were concentrated using phenolphthalein as an indicator using a 0.01 N sodium hydroxide aqueous solution. Perform a Japanese titration. At this time, the amount of sodium hydroxide required for neutralization was M1(Mmol). From these, the salt substitution rate S (%) is determined using the following equation.
S = (M1-M2) / M1× 100
[0058]
Other methods include quantifying ions eluted by immersion in a saturated NaCl aqueous solution by inductively coupled plasma (ICP), or using an ion exchange membrane by proton nuclear magnetic resonance (H-NMR) analysis. A method of immersing in 50 ml of 2N hydrochloric acid for 30 minutes or more to determine the H content of the ion exchange membrane in which the counter ion of the ion exchange group has been made into a proton to determine the H content can also be used.
[0059]
(H) Melt index
Based on JIS K-7210, the melt index of the fluorine-based ion exchange resin precursor measured at a temperature of 270 ° C. under a load of 2.16 kg is defined as MI (g / 10 minutes).
(I) Actual stretching ratio
Thickness T of precursor film before stretchingbAnd the film thickness T when measuring the converted piercing strengthaThen, the actual stretching ratio is determined using the following equation.
[0060]
Actual stretch ratio = (Tb/ Ta)0.5
(Nu) Converted puncture strength
After leaving the ion exchange membrane in a constant temperature chamber at 23 ° C. and 65% for 12 hours or more, the radius of curvature of the needle tip is 0.5 mm and the piercing speed is 2 mm / using a handy compression tester (KES-G5, manufactured by Kato Tech). A piercing test was performed under the conditions of sec, and the maximum piercing load was defined as piercing strength (g). Further, the converted piercing strength (g / 25 μm) is obtained by multiplying the piercing strength by 25 (μm) / film thickness (μm).
[0061]
Embodiment 1
(Low magnification stretching with respect to ion exchange resin precursor, Ca: salt substitution rate 27%)
General formula CF2= CF-O (CF2CFXO)n− (CF2)mA vinyl fluoride compound represented by the general formula CF2= Copolymer with a fluorinated olefin represented by CFZ (where X is CF3 , N is 1, m is 2, Z is F, W is SO2 F. ) Was formed by using a T-die method to form a precursor film having a thickness of 110 μm. The precursor film was simultaneously biaxially stretched 2.0 × 2.0 times at a stretching temperature of 25 ° C. using a simple small stretching machine to form an alignment film. After stretching, the alignment film is immersed in a hydrolysis bath (DMSO: KOH: water = 5: 30: 65) heated to 95 ° C. for 15 minutes while being restrained by a simple small-sized stretching machine, and the ion-exchange group is removed. A fluorinated ion-exchange membrane having a counter ion of potassium ion was obtained.
[0062]
This was thoroughly washed with water and immersed in a 2N hydrochloric acid bath heated to 65 ° C. for 15 minutes to obtain a fluorine-based ion exchange membrane having a proton as a counter ion of an ion exchange group. After thoroughly washing this, the film was dried. The dried membrane was removed from the constraints and immersed in an aqueous solution of calcium chloride at a predetermined concentration to obtain a fluorine-based ion exchange membrane having a 27% salt substitution rate in which the counter ion of the ion exchange group was replaced with calcium ions. After thoroughly washing this with water, the film was dried to obtain a dry film having a thickness of 28.8 μm. Various property tests of the obtained fluorine-based ion exchange membrane were performed. Table 1 shows the results.
[0063]
Embodiment 2
(Low magnification stretching with respect to ion exchange resin precursor, Ca: salt substitution rate 37%)
A fluorine-based ion exchange membrane having a thickness of 25.3 μm was obtained in the same manner as in Example 1 except that the salt substitution rate was 37%. Table 1 shows the measurement results of various properties of the obtained film.
[0064]
Embodiment 3
(Low magnification stretching with respect to ion exchange resin precursor, K: salt substitution rate 43%)
A fluorine-based ion exchange membrane having a thickness of 26.0 μm was obtained in the same manner as in Example 1 except that the cation was potassium ion and the salt substitution rate was 43%. Table 1 shows the measurement results of various properties of the obtained film.
[0065]
Embodiment 4
(Low magnification stretching with respect to ion exchange resin precursor, K: salt substitution rate 59%)
A fluorine-based ion exchange membrane having a thickness of 23.2 μm was obtained in the same manner as in Example 1 except that the cation was potassium ion and the salt substitution rate was 59%. Table 2 shows the measurement results of the properties of the obtained film.
[0066]
Embodiment 5
(Low magnification stretching with respect to ion exchange resin precursor, Fe: salt substitution rate 7%)
A fluorine-based ion-exchange membrane having a thickness of 25.0 μm was obtained in the same manner as in Example 1 except that the cation was iron ion and the salt substitution rate was 7%. Table 2 shows the measurement results of the properties of the obtained film.
[0067]
Embodiment 6
(High magnification stretching with respect to ion exchange resin precursor, Ca: salt substitution rate 38%)
As shown in Table 2, as shown in Table 2, a fluorine-based ion exchange membrane having a thickness of 11.2 μm was obtained in the same manner as in Example 1 except that the salt substitution rate was 38%. Table 2 shows the measurement results of the properties of the obtained film.
[0068]
Embodiment 7
(Low draw ratio for low EW ion exchange resin precursor, Ca: salt substitution rate 25%)
(Raw polymer) Copolymer of vinyl fluoride compound of general formula and fluorinated olefin (where X is CF3, N is 0, m is 2, Z is F, W is SO2F. ), Except that the stretching temperature was 90 ° C., the stretching ratio was 1.9 × 1.9, and the salt replacement ratio was 25%, using a fluorine-based ion exchange resin precursor (EW: 720, MI: 3.6) consisting of A fluorine-based ion exchange membrane having a thickness of 32.2 μm was obtained in the same manner as in Example 1. Table 3 shows the measurement results of various characteristics of the obtained film.
[0069]
Embodiment 8
(Low draw ratio to ion exchange resin, Ca: salt substitution rate 33%)
(Raw polymer) Copolymer of vinyl fluoride compound of general formula and fluorinated olefin (where X is CF3, N is 1, m is 2, Z is F, W is SO2F. ) Was formed using a T-die method to form a precursor film having a thickness of 110 μm. This precursor membrane was immersed in a hydrolysis bath (DMSO: KOH: water = 5: 30: 65) heated to 95 ° C. for 1 hour to obtain a fluorine-based ion exchange membrane in which the counter ion of the ion exchange group was potassium ion. Was. After washing sufficiently with water, it was immersed in a 2N hydrochloric acid bath heated to 65 ° C. for 16 hours or more to obtain a fluorine-based ion exchange membrane in which the counter ion of the ion exchange group was proton. After thoroughly washing this, the film was dried. The dried film was simultaneously biaxially stretched 2 × 2 times at a stretching temperature of 125 ° C. using a simple small stretching machine to obtain an oriented film. After stretching, after detaching from the simple compact stretching machine, the alignment film is immersed in an aqueous solution of calcium chloride having a predetermined concentration, and the counter ion of the ion-exchange group is replaced by calcium ion, and the fluorine ion having a salt substitution rate of 33%. An exchange membrane was obtained. After thoroughly washing this with water, the film was dried to obtain a dried film having a thickness of 36.2 μm. Table 3 shows the measurement results of various characteristics of the obtained film.
[0070]
[Comparative Example 1]
(Unoriented film)
As in Example 1, a fluorine-based ion exchange resin precursor (EW: 950, MI: 20) was formed into a film using a T-die method, and was hydrolyzed in a non-oriented state to form a film having a thickness of 31.7 μm. A fluorinated ion exchange membrane was obtained. Table 4 shows the measurement results of various properties of the obtained film.
[0071]
[Comparative Example 2]
(Low magnification stretching to ion exchange resin precursor, salt substitution rate 0%)
A fluorine-based ion exchange membrane having a thickness of 25.2 μm was obtained in the same manner as in Example 1 except that the salt substitution treatment was not performed. Table 4 shows the measurement results of various properties of the obtained film.
[0072]
[Comparative Example 3]
(Unoriented film, Ca: salt substitution rate 35%)
A fluorine-based ion-exchange resin precursor (EW: 950, MI: 20) was formed by a T-die method in the same manner as in Example 1, and hydrolysis was performed in an unoriented state to obtain a fluorine-based ion-exchange membrane. Was. The membrane was immersed in an aqueous solution of calcium chloride having a predetermined concentration to obtain a fluorine-based ion-exchange membrane having a salt exchange rate of 35% in which counter ions of ion-exchange groups were replaced with calcium ions. After thoroughly washing this with water, the film was dried to obtain a dry film having a thickness of 31.2 μm. Table 4 shows the measurement results of various properties of the obtained film. In addition, "-" in a table | surface shows unmeasured.
[0073]
[Table 1]
[0074]
[Table 2]
[0075]
[Table 3]
[0076]
[Table 4]
[0077]
【The invention's effect】
The fluorine-based ion exchange membrane of the present invention satisfies both high strength and high thermal dimensional stability at the same time, and is extremely useful in industry.
Claims (8)
(1) イオン交換膜前駆体を有するフッ素系イオン交換樹脂前駆体から、フッ素系イオン交換樹脂前駆体膜を成膜する工程、
(2) フッ素系イオン交換樹脂前駆体膜を配向させる工程、及び
(3) (2)で得られたフッ素系イオン交換樹脂前駆体膜を、配向状態を維持しながら拘束下でイオン交換樹脂前駆体を加水分解する工程。The method for producing a fluorine-based ion-exchange membrane according to claim 4, wherein the oriented fluorine-based ion-exchange membrane according to claim 4 is produced by steps including the following.
(1) forming a fluorine-based ion-exchange resin precursor film from a fluorine-based ion-exchange resin precursor having an ion-exchange membrane precursor;
(2) a step of orienting the fluorine-based ion-exchange resin precursor membrane, and (3) a step of subjecting the fluorine-based ion-exchange resin precursor membrane obtained in (2) to the ion-exchange resin precursor while maintaining the alignment state. Hydrolyzing the body.
(1) イオン交換膜前駆体を有するフッ素系イオン交換樹脂前駆体から、フッ素系イオン交換樹脂前駆体膜を成膜する工程、
(2) フッ素系イオン交換樹脂前駆体膜を加水分解してフッ素系イオン交換樹脂膜を得る工程、及び
(3) (2)で得られたフッ素系イオン交換樹脂膜を配向させる工程。The method for producing a fluorine-based ion-exchange membrane according to claim 4, wherein the oriented fluorine-based ion-exchange membrane according to claim 4 is produced by steps including the following.
(1) forming a fluorine-based ion-exchange resin precursor film from a fluorine-based ion-exchange resin precursor having an ion-exchange membrane precursor;
(2) a step of hydrolyzing the fluorinated ion exchange resin precursor membrane to obtain a fluorinated ion exchange resin membrane, and (3) a step of orienting the fluorinated ion exchange resin membrane obtained in (2).
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