JP2004161905A - 樹脂組成物及び多層構造体 - Google Patents

樹脂組成物及び多層構造体 Download PDF

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Abstract

【課題】極めて優れたガスバリア性を有し、耐衝撃剥離性、延伸性及び熱成形性にも優れた樹脂組成物を提供する。
【解決手段】式(I)を0.3〜40モル%含有するエチレン含有量5〜55モル%の変性エチレン−ビニルアルコール共重合体(C)及び酸素を吸収することが可能な熱可塑性樹脂(F)からなる樹脂組成物とする。さらに、遷移金属塩(G)、式(I)を含有しないエチレン含有量5〜55モル%のエチレン−ビニルアルコール共重合体(H)あるいは相溶化剤(J)を含有することが好ましく、当該樹脂組成物からなる層を少なくとも1層含む共射出ブロー成形容器及び熱成形容器は、ガスバリア性、透明性及び外観に優れる。
Figure 2004161905

(式中、R、R、R及びRは、水素原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を表す。)
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、変性エチレン−ビニルアルコール共重合体(C)及び酸素を吸収することが可能な熱可塑性樹脂(F)からなる樹脂組成物に関する。また、該樹脂組成物からなる層を少なくとも1層含む多層構造体に関する。さらに、該多層構造体からなる共射出ブロー成形容器及び熱成形容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
エチレン−ビニルアルコール共重合体(以下EVOHと略することがある)は、溶融成形が可能で、酸素及び炭酸ガスバリア性に優れている。そのため、例えばEVOHからなる層と、耐湿性、機械的特性等に優れた熱可塑性樹脂(例えば、ポリエステル樹脂やポリオレフィン樹脂)の層とを含む多層構造体が、ガスバリア性を必要とする各種成形体(例えば、フィルム、シート、ボトル、容器等)に利用されている。例えば、このような多層構造体は、多層容器として、とりわけバッグ、ボトル、カップ、パウチ等の形態で種々の分野で使用されている。例えば、食品、化粧品、医化学薬品、トイレタリー等の分野で広く使用されている。
【0003】
前記の多層容器は、酸素、炭酸ガス等のバリア性に優れるものの、缶詰め等に使用される金属素材や、瓶詰め等に使用されるガラスのように、酸素等のガスの透過性はゼロに限りなく近いというわけではなく、無視し得ない量のガスを透過する。特に、食品等の容器においては、長期間保存した場合の内容物の酸化による品質の低下が懸念されるため、酸素バリア性の改良が強く望まれている。
【0004】
一方、内容物を充填する時に、内容物とともに酸素が容器内に混入することがある。内容物が酸化されやすいものである場合、この微量の酸素によっても、内容物の品質が低下するおそれがあり、これを防ぐために、容器の材料に酸素掃去機能を付与することが提案されている。この場合、容器外部から内部に侵入しようとする酸素も掃去されるので、包装材料のガスバリア性も向上するという利点がある。
【0005】
特開2001−106920号公報(特許文献1)には、EVOH、炭素−炭素二重結合を有する熱可塑性樹脂及び遷移金属塩を含有し、酸素吸収速度が0.01ml/m・day以上であるガスバリア性樹脂組成物が記載されている。当該樹脂組成物は、ガスバリア性に極めて優れ、しかも透明性も良好であり、該樹脂組成物層を中間層とし熱可塑性ポリエステル層を内外層とする共射出ブロー成形容器が、好適な実施態様として記載されている。
【0006】
特開2002−146142号公報(特許文献2)には、EVOH、炭素−炭素二重結合を有する熱可塑性樹脂及び遷移金属塩を含有する樹脂組成物であって、酸素吸収速度が0.01ml/m・day以上であり、かつEVOHのケン化度が90〜99%である樹脂組成物が記載されている。これは前記特許文献1記載の樹脂組成物において使用するEVOHのケン化度を低くしたものであり、該樹脂組成物層を中間層とし熱可塑性ポリエステル層を内外層とする共射出ブロー成形容器において、その耐衝撃剥離性を改善できるものであるとしている。
【0007】
特開2002−146217号公報(特許文献3)には、EVOH、炭素−炭素二重結合を有する熱可塑性樹脂、遷移金属塩及び相容化剤を含有する樹脂組成物であって、酸素吸収速度が0.001ml/m・day以上である樹脂組成物が記載されている。これは前記特許文献1記載の樹脂組成物において、さらに相容化剤を配合したものであり、該樹脂組成物層を中間層とし熱可塑性ポリエステルを内外層とする共射出ブロー成形容器において、その耐衝撃剥離性を改善できるものであるとしている。
【0008】
【特許文献1】
特開2001−106920号公報
(特許請求の範囲、第2〜3頁)
【特許文献2】
特開2002−146142号公報
(特許請求の範囲、第3〜4頁)
【特許文献3】
特開2002−146217号公報
(特許請求の範囲、第3〜4頁)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記各樹脂組成物層を中間層とし熱可塑性ポリエステルを内外層とする共射出ブロー成形容器においては、その耐衝撃剥離性のさらなる改善が求められている。またさらに、延伸性や熱成形性などの二次加工性にも優れた樹脂組成物が要求されている。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、極めて優れたガスバリア性を有し、耐衝撃剥離性、延伸性及び熱成形性にも優れた樹脂組成物を提供することを目的とするものである。また、該樹脂組成物からなる層を少なくとも1層含む多層構造体、並びに該多層構造体からなる共射出ブロー成形容器及び熱成形容器を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、下記構造単位(I)を0.3〜40モル%含有するエチレン含有量5〜55モル%の変性エチレン−ビニルアルコール共重合体(C)及び酸素を吸収することが可能な熱可塑性樹脂(F)からなる樹脂組成物を提供することによって解決される。
【0012】
【化2】
Figure 2004161905
【0013】
(式中、R、R、R及びRは、水素原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を表す。R、R、R及びRは同じ基でも良いし、異なっていても良い。また、RとRとは結合していても良い。またR、R、R及びRは水酸基、カルボキシル基又はハロゲン原子を有していても良い。)
【0014】
このとき、熱可塑性樹脂(F)が炭素−炭素二重結合を有することが好適である。熱可塑性樹脂(F)が芳香族ビニル化合物からなる単量体とジエン化合物からなる単量体を共重合してなるものであることも好適である。また、さらに遷移金属塩(G)、上記構造単位(I)を含有しないエチレン含有量5〜55モル%のEVOH(H)あるいは相溶化剤(J)の1種以上を含有することも好ましい。
【0015】
上記樹脂組成物からなる層を少なくとも1層含む多層構造体が好適な実施態様である。また、前記多層構造体からなる共射出ブロー成形容器あるいは熱成形容器も好適な実施態様である。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明は、下記構造単位(I)を0.3〜40モル%含有するエチレン含有量5〜55モル%の変性エチレン−ビニルアルコール共重合体(C)及び酸素を吸収することが可能な熱可塑性樹脂(F)からなる樹脂組成物である。
【0017】
【化3】
Figure 2004161905
【0018】
(式中、R、R、R及びRは、水素原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基(アルキル基又はアルケニル基など)、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基(シクロアルキル基、シクロアルケニル基など)、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基(フェニル基など)を表す。R、R、R及びRは同じ基でもよいし、異なっていても良い。また、RとRとは結合していてもよい(ただし、R及びRがともに水素原子の場合は除かれる)。また上記のR、R、R及びRは他の基、例えば、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子などを有していてもよい。)
【0019】
[変性EVOH(C)]
本発明で使用する変性EVOH(C)は、上記構造単位(I)を0.3〜40モル%含有するエチレン含有量5〜55モル%の変性エチレン−ビニルアルコール共重合体(C)である。
【0020】
より好適な実施態様では、前記R及びRがともに水素原子である。さらに好適な実施態様では、前記R及びRがともに水素原子であり、前記R及びRのうち、一方が炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基であって、かつ他方が水素原子である。好適には、前記脂肪族炭化水素基がアルキル基又はアルケニル基である。ガスバリア性を特に重視する観点からは、前記R及びRのうち、一方がメチル基又はエチル基であり、他方が水素原子であることがより好ましい。
【0021】
また、ガスバリア性の観点からは、前記R及びRのうち、一方が(CHOHで表される置換基(ただし、i=1〜8の整数)であり、他方が水素原子であることも好ましい。ガスバリア性を特に重視する場合は、前記の(CHOHで表される置換基において、i=1〜4の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、1であることがさらに好ましい。
【0022】
変性EVOH(C)に含まれる上述の構造単位(I)の量は0.3〜40モル%の範囲内であることが必要である。構造単位(I)の量の下限は、0.5モル%以上であることが好ましく、1モル%以上であることがより好ましく、2モル%以上であることがさらに好ましい。一方、構造単位(I)の量の上限は、35モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であることがより好ましく、25モル%以下であることがさらに好ましい。含まれる構造単位(I)の量が上記の範囲内にあることで、ガスバリア性、透明性、延伸性、熱成形性、柔軟性及び耐屈曲性に優れた変性EVOH(C)を得ることができ、多層構造体としたときに層間接着性、特に耐衝撃剥離性にも優れる。
【0023】
変性EVOH(C)のエチレン含有量は5〜55モル%であることが好ましい。変性EVOH(C)が、良好な延伸性、層間接着性、熱成形性、柔軟性及び耐屈曲性を得る観点からは、変性EVOH(C)のエチレン含有量の下限はより好適には10モル%以上であり、さらに好適には20モル%以上であり、特に好適には25モル%以上であり、さらに好適には31モル%以上である。一方、変性EVOH(C)のガスバリア性の観点からは、変性EVOH(C)のエチレン含有量の上限はより好適には50モル%以下であり、さらに好適には45モル%以下である。エチレン含有量が5モル%未満の場合は溶融成形性が悪化するおそれがあり、55モル%を超えるとガスバリア性が不足するおそれがある。
【0024】
変性EVOH(C)を構成する、上記構造単位(I)及びエチレン単位以外の構成成分は、主としてビニルアルコール単位である。このビニルアルコール単位は、通常、原料のEVOH(A)に含まれるビニルアルコール単位のうち、一価エポキシ化合物(B)と反応しなかったビニルアルコール単位である。また、EVOH(A)に含まれることがある未ケン化の酢酸ビニル単位は、通常そのまま変性EVOH(C)に含有される。変性EVOH(C)は、これらの構成成分を含有するランダム共重合体であることが、NMRの測定や融点の測定結果からわかった。さらに、本発明の目的を阻害しない範囲内で、その他の構成成分を含むこともできる。
【0025】
変性EVOH(C)の好適なメルトフローレート(MFR)(190℃、2160g荷重下)は0.1〜30g/10分であり、より好適には0.3〜25g/10分、更に好適には0.5〜20g/10分である。但し、融点が190℃付近あるいは190℃を超えるものは2160g荷重下、融点以上の複数の温度で測定し、片対数グラフで絶対温度の逆数を横軸、MFRの対数を縦軸にプロットし、190℃に外挿した値で表す。
【0026】
上記の変性EVOH(C)を製造する方法は特に限定されない。本発明者らが推奨する方法は、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)と分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)とを反応させることにより、変性EVOH(C)を得る方法である。
【0027】
また、本発明が解決しようとする課題は、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)と分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)とを反応させて得られた変性エチレン−ビニルアルコール共重合体(C)及び酸素を吸収することが可能な熱可塑性樹脂(F)からなる樹脂組成物を提供することによっても達成される。
【0028】
[EVOH(A)]
本発明で変性EVOH(C)の原料として用いられるEVOH(A)としては、エチレン−ビニルエステル共重合体をケン化して得られるものが好ましい。EVOHの製造時に用いるビニルエステルとしては酢酸ビニルが代表的なものとして挙げられるが、その他の脂肪酸ビニルエステル(プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニルなど)も使用できる。また、本発明の目的が阻害されない範囲であれば、他の共単量体、例えば、プロピレン、ブチレン、イソブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのα−オレフィン;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの不飽和カルボン酸又はそのエステル;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシラン系化合物;不飽和スルホン酸又はその塩;アルキルチオール類;N−ビニルピロリドンなどのビニルピロリドン等を共重合することもできる。
【0029】
EVOH(A)として、共重合成分としてビニルシラン化合物を共重合したEVOHを用いる場合、共重合量として0.0002〜0.2モル%を含有することが好ましい。かかる範囲でビニルシラン化合物を共重合成分として有することにより、共押出成形を行う際の、基材樹脂と変性EVOH(C)との溶融粘性の整合性が改善され、均質な共押出多層成形物の製造が可能となる場合がある。特に、溶融粘度の高い基材樹脂を用いる場合、均質な共押出多層成形物を得ることが容易となる場合がある。ここで、ビニルシラン系化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルメトキシシラン等が挙げられる。なかでも、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランが好適に用いられる。
【0030】
本発明に用いられるEVOH(A)のエチレン含有量は5〜55モル%であることが好ましい。得られる変性EVOH(C)が、良好な延伸性、層間接着性、熱成形性、柔軟性及び耐屈曲性を有するためには、EVOH(A)のエチレン含有量の下限はより好適には10モル%以上であり、さらに好適には20モル%以上であり、特に好適には25モル%以上であり、さらに好適には31モル%以上である。一方、変性EVOH(C)のガスバリア性の観点からは、EVOH(A)のエチレン含有量の上限はより好適には50モル%以下であり、さらに好適には45モル%以下である。エチレン含有量が5モル%未満の場合は溶融成形性が悪化するおそれがあり、55モル%を超えるとガスバリア性が不足するおそれがある。なおここで、EVOH(A)がエチレン含有量の異なる2種類以上のEVOHの配合物からなる場合には、配合重量比から算出される平均値をエチレン含有量とする。
【0031】
さらに、本発明に用いられるEVOH(A)のビニルエステル成分のケン化度は好ましくは90%以上である。ビニルエステル成分のケン化度は、より好ましくは95%以上であり、さらに好ましくは98%以上であり、最適には99%以上である。ケン化度が90%未満では、ガスバリア性、特に高湿度時のガスバリア性が低下するおそれがあるだけでなく、熱安定性が不十分となり、成形物にゲル・ブツが発生しやすくなるおそれがある。なおここで、EVOH(A)がケン化度の異なる2種類以上のEVOHの配合物からなる場合には、配合重量比から算出される平均値をケン化度とする。
【0032】
なお、EVOH(A)のエチレン含有量及びケン化度は、核磁気共鳴(NMR)法により求めることができる。
【0033】
さらに、EVOH(A)として、本発明の目的を阻外しない範囲内で、ホウ素化合物をブレンドしたEVOHを用いることもできる。ここでホウ素化合物としては、ホウ酸類、ホウ酸エステル、ホウ酸塩、水素化ホウ素類等が挙げられる。具体的には、ホウ酸類としては、オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸などが挙げられ、ホウ酸エステルとしてはホウ酸トリエチル、ホウ酸トリメチルなどが挙げられ、ホウ酸塩としては上記の各種ホウ酸類のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ホウ砂などが挙げられる。これらの化合物のうちでもオルトホウ酸(以下、単にホウ酸と表示する場合がある)が好ましい。
【0034】
EVOH(A)として、ホウ素化合物をブレンドしたEVOH(A)を用いる場合、ホウ素化合物の含有量は好ましくはホウ素元素換算で20〜2000ppm、より好ましくは50〜1000ppmである。この範囲内でホウ素化合物をブレンドすることで加熱溶融時のトルク変動が抑制されたEVOH(A)を得ることができる。20ppm未満ではそのような効果が小さく、2000ppmを超えるとゲル化しやすく、成形性不良となる場合がある。
【0035】
また、EVOH(A)として、リン酸化合物を配合したEVOH(A)を用いてもよい。これにより樹脂の品質(着色等)を安定させることができる場合がある。本発明に用いられるリン酸化合物としては特に限定されず、リン酸、亜リン酸等の各種の酸やその塩等を用いることができる。リン酸塩としては第一リン酸塩、第二リン酸塩、第三リン酸塩のいずれの形で含まれていても良いが、第一リン酸塩が好ましい。そのカチオン種も特に限定されるものではないが、アルカリ金属塩であることが好ましい。これらの中でもリン酸二水素ナトリウム及びリン酸二水素カリウムが好ましい。リン酸化合物を配合したEVOH(A)を用いる場合の、リン酸化合物の含有量は、好適にはリン酸根換算で200ppm以下であり、より好適には5〜100ppmであり、最適には5〜50ppmである。
【0036】
ただし、後述のように周期律表第3〜12族に属する金属のイオンを含む触媒(D)の存在下にEVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)とを反応させる場合には、リン酸塩が触媒を失活させるのでできるだけ少ないことが好ましい。その場合のEVOH(A)のリン酸化合物の含有量は、好適にはリン酸根換算で200ppm以下であり、より好適には100ppm以下であり、最適には50ppm以下である。
【0037】
また、後述する通り、変性EVOH(C)は、好適にはEVOH(A)と分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)との反応を、押出機内で行わせることによって得られるが、その際に、EVOHは加熱条件下に晒される。この時に、EVOH(A)が過剰にアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩を含有していると、得られる変性EVOH(C)に着色が生じるおそれがある。また、変性EVOH(C)の粘度低下等の問題が生じ、成形性が低下するおそれがある。また、後述のように触媒(D)を使用する場合には、触媒(D)を失活させるため、それらの添加量はできるだけ少ないことが好ましい。
【0038】
上記の問題を回避するためには、EVOH(A)が含有するアルカリ金属塩が金属元素換算値で50ppm以下であることが好ましい。より好ましい実施態様では、EVOH(A)が含有するアルカリ金属塩が金属元素換算値で30ppm以下であり、さらに好ましくは20ppm以下である。また、同様な観点から、EVOH(A)が含有するアルカリ土類金属塩が金属元素換算値で20ppm以下であることが好ましく、10ppm以下であることがより好ましく、5ppm以下であることがさらに好ましく、EVOH(A)にアルカリ土類金属塩が実質的に含まれていないことが最も好ましい。
【0039】
また、本発明の目的を阻外しない範囲内であれば、EVOH(A)として、熱安定剤、酸化防止剤を配合したものを用いることもできる。
【0040】
本発明に用いられるEVOH(A)の固有粘度は0.06L/g以上であることが好ましい。EVOH(A)の固有粘度はより好ましくは0.07〜0.2L/gの範囲内であり、さらに好ましくは0.075〜0.15L/gであり、特に好ましくは0.080〜0.12L/gである。EVOH(A)の固有粘度が0.06L/g未満の場合、機械的強度、延伸性、柔軟性あるいは耐屈曲性が低下するおそれがある。また、EVOH(A)の固有粘度が0.2L/gを越える場合、変性EVOH(C)を含む成形物においてゲル・ブツが発生しやすくなるおそれがある。
【0041】
本発明に用いられるEVOH(A)の好適なメルトフローレート(MFR)(190℃、2160g荷重下)は0.1〜30g/10分であり、より好適には0.3〜25g/10分、更に好適には0.5〜20g/10分である。但し、融点が190℃付近あるいは190℃を超えるものは2160g荷重下、融点以上の複数の温度で測定し、片対数グラフで絶対温度の逆数を横軸、MFRの対数を縦軸にプロットし、190℃に外挿した値で表す。MFRの異なる2種以上のEVOHを混合して用いることもできる。
【0042】
[一価エポキシ化合物(B)]
本発明に用いられる分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)は、一価のエポキシ化合物であることが必須である。すなわち、分子内にエポキシ基を一つだけ有するエポキシ化合物でなければならない。二価又はそれ以上の、多価のエポキシ化合物を用いた場合は、本発明の効果を奏することができない。ただし、一価エポキシ化合物の製造工程において、ごく微量に多価エポキシ化合物が含まれることがある。本発明の効果を阻害しない範囲であれば、ごく微量の多価エポキシ化合物が含まれる一価のエポキシ化合物を、本発明における分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)として使用することも可能である。
【0043】
本発明に用いられる分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)は特に限定されない。具体的には、下記式(III)〜(IX)で示される化合物が、好適に用いられる。
【0044】
【化4】
Figure 2004161905
【0045】
【化5】
Figure 2004161905
【0046】
【化6】
Figure 2004161905
【0047】
【化7】
Figure 2004161905
【0048】
【化8】
Figure 2004161905
【0049】
【化9】
Figure 2004161905
【0050】
【化10】
Figure 2004161905
【0051】
(式中、R、R、R、R及びRは、水素原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基(アルキル基又はアルケニル基など)、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基(シクロアルキル基、シクロアルケニル基など)、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基(フェニル基など)を表す。また、i、j、k、l及びmは、1〜8の整数を表す。)
【0052】
上記式(III)で表される分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)としては、エポキシエタン(エチレンオキサイド)、エポキシプロパン、1,2−エポキシブタン、2,3−エポキシブタン、3−メチル−1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシペンタン、2,3−エポキシペンタン、3−メチル−1,2−エポキシペンタン、4−メチル−1,2−エポキシペンタン、4−メチル−2,3−エポキシペンタン、3−エチル−1,2−エポキシペンタン、1,2−エポキシヘキサン、2,3−エポキシヘキサン、3,4−エポキシヘキサン、3−メチル−1,2−エポキシヘキサン、4−メチル−1,2−エポキシヘキサン、5−メチル−1,2−エポキシヘキサン、3−エチル−1,2−エポキシヘキサン、3−プロピル−1,2−エポキシヘキサン、4−エチル−1,2−エポキシヘキサン、5−メチル−1,2−エポキシヘキサン、4−メチル−2,3−エポキシヘキサン、4−エチル−2,3−エポキシヘキサン、2−メチル−3,4−エポキシヘキサン、2,5−ジメチル−3,4−エポキシヘキサン、3−メチル−1,2−エポキシへプタン、4−メチル−1,2−エポキシへプタン、5−メチル−1,2−エポキシへプタン、6−メチル−1,2−エポキシへプタン、3−エチル−1,2−エポキシへプタン、3−プロピル−1,2−エポキシへプタン、3−ブチル−1,2−エポキシへプタン、4−エチル−1,2−エポキシへプタン、4−プロピル−1,2−エポキシへプタン、5−エチル−1,2−エポキシへプタン、4−メチル−2,3−エポキシへプタン、4−エチル−2,3−エポキシへプタン、4−プロピル−2,3−エポキシへプタン、2−メチル−3,4−エポキシへプタン、5−メチル−3,4−エポキシへプタン、5−エチル−3,4−エポキシへプタン、2,5−ジメチル−3,4−エポキシへプタン、2−メチル−5−エチル−3,4−エポキシへプタン、1,2−エポキシヘプタン、2,3−エポキシヘプタン、3,4−エポキシヘプタン、1,2−エポキシオクタン、2,3−エポキシオクタン、3,4−エポキシオクタン、4,5−エポキシオクタン、1,2−エポキシノナン、2,3−エポキシノナン、3,4−エポキシノナン、4,5−エポキシノナン、1,2−エポキシデカン、2,3−エポキシデカン、3,4−エポキシデカン、4,5−エポキシデカン、5,6−エポキシデカン、1,2−エポキシウンデカン、2,3−エポキシウンデカン、3,4−エポキシウンデカン、4,5−エポキシウンデカン、5,6−エポキシウンデカン、1,2−エポキシドデカン、2,3−エポキシドデカン、3,4−エポキシドデカン、4,5−エポキシドデカン、5,6−エポキシドデカン、6,7−エポキシドデカン、エポキシエチルベンゼン、1−フェニル−1,2−エポキシプロパン、3−フェニル−1,2−エポキシプロパン、1−フェニル−1,2−エポキシブタン、3−フェニル−1,2−エポキシブタン、4−フェニル−1,2−エポキシブタン、1−フェニル−1,2−エポキシペンタン、3−フェニル−1,2−エポキシペンタン、4−フェニル−1,2−エポキシペンタン、5−フェニル−1,2−エポキシペンタン、1−フェニル−1,2−エポキシヘキサン、3−フェニル−1,2−エポキシヘキサン、4−フェニル−1,2−エポキシヘキサン、5−フェニル−1,2−エポキシヘキサン、6−フェニル−1,2−エポキシヘキサン等が挙げられる。
【0053】
上記式(IV)で表される分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)としては、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、n−プロピルグリシジルエーテル、イソプロピルグリシジルエーテル、n−ブチルグリシジルエーテル、イソブチルグリシジルエーテル、tert−ブチルグリシジルエーテル、1,2−エポキシ−3−ペンチルオキシプロパン、1,2−エポキシ−3−ヘキシルオキシプロパン、1,2−エポキシ−3−ヘプチルオキシプロパン、1,2−エポキシ−3−オクチルオキシプロパン、1,2−エポキシ−3−フェノキシプロパン、1,2−エポキシ−3−ベンジルオキシプロパン、1,2−エポキシ−4−メトキシブタン、1,2−エポキシ−4−エトキシブタン、1,2−エポキシ−4−プロポキシブタン、1,2−エポキシ−4−ブトキシブタン、1,2−エポキシ−4−ペンチルオキシブタン、1,2−エポキシ−4−ヘキシルオキシブタン、1,2−エポキシ−4−ヘプチルオキシブタン、1,2−エポキシ−4−フェノキシブタン、1,2−エポキシ−4−ベンジルオキシブタン、1,2−エポキシ−5−メトキシペンタン、1,2−エポキシ−5−エトキシペンタン、1,2−エポキシ−5−プロポキシペンタン、1,2−エポキシ−5−ブトキシペンタン、1,2−エポキシ−5−ペンチルオキシペンタン、1,2−エポキシ−5−ヘキシルオキシペンタン、1,2−エポキシ−5−フェノキシペンタン、1,2−エポキシ−6−メトキシヘキサン、1,2−エポキシ−6−エトキシヘキサン、1,2−エポキシ−6−プロポキシヘキサン、1,2−エポキシ−6−ブトキシヘキサン、1,2−エポキシ−6−ヘプチルオキシヘキサン、1,2−エポキシ−7−メトキシへプタン、1,2−エポキシ−7−エトキシへプタン、1,2−エポキシ−7−プロポキシへプタン、1,2−エポキシ−7−ブチルオキシへプタン、1,2−エポキシ−8−メトキシへプタン、1,2−エポキシ−8−エトキシへプタン、1,2−エポキシ−8−ブトキシへプタン、グリシドール、3,4−エポキシ−1−ブタノール、4,5−エポキシ−1−ペンタノール、5,6−エポキシ−1−ヘキサノール、6,7−エポキシ−1−へプタノール、7,8−エポキシ−1−オクタノール、8,9−エポキシ−1−ノナノール、9,10−エポキシ−1−デカノール、10,11−エポキシ−1−ウンデカノール等が挙げられる。
【0054】
上記式(V)で表される分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)としては、エチレングリコールモノグリシジルエーテル、プロパンジオールモノグリシジルエーテル、ブタンジオールモノグリシジルエーテル、へプタンジオールモノグリシジルエーテル、ヘキサンジオールモノグリシジルエーテル、へプタンジオールモノグリシジルエーテル、オクタンジオールモノグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0055】
上記式(VI)で表される分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)としては、3−(2,3−エポキシ)プロポキシ−1−プロペン、4−(2,3−エポキシ)プロポキシ−1−ブテン、5−(2,3−エポキシ)プロポキシ−1−ペンテン、6−(2,3−エポキシ)プロポキシ−1−ヘキセン、7−(2,3−エポキシ)プロポキシ−1−ヘプテン、8−(2,3−エポキシ)プロポキシ−1−オクテン等が挙げられる。
【0056】
上記式(VII)で表される分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)としては、3,4−エポキシ−2−ブタノール、2,3−エポキシ−1−ブタノール、3,4−エポキシ−2−ペンタノール、2,3−エポキシ−1−ペンタノール、1,2−エポキシ−3−ペンタノール、2,3−エポキシ−4−メチル−1−ペンタノール、2,3−エポキシ−4,4−ジメチル−1−ペンタノール、2,3−エポキシ−1−ヘキサノール、3,4−エポキシ−2−ヘキサノール、4,5−エポキシ−3−ヘキサノール、1,2−エポキシ−3−ヘキサノール、2,3−エポキシ−4−メチル−1−ヘキサノール、2,3−エポキシ−4−エチル−1−ヘキサノール、2,3−エポキシ−4,4−ジメチル−1−ヘキサノール、2,3−エポキシ−4,4−ジエチル−1−ヘキサノール、2,3−エポキシ−4−メチル−4−エチル−1−ヘキサノール、3,4−エポキシ−5−メチル−2−ヘキサノール、3,4−エポキシ−5,5−ジメチル−2−ヘキサノール、3,4−エポキシ−2−ヘプタノール、2,3−エポキシ−1−ヘプタノール、4,5−エポキシ−3−ヘプタノール、2,3−エポキシ−4−ヘプタノール、1,2−エポキシ−3−ヘプタノール、2,3−エポキシ−1−オクタノール、3,4−エポキシ−2−オクタノール、4,5−エポキシ−3−オクタノール、5,6−エポキシ−4−オクタノール、2,3−エポキシ−4−オクタノール、1,2−エポキシ−3−オクタノール、2,3−エポキシ−1−ノナノール、3,4−エポキシ−2−ノナノール、4,5−エポキシ−3−ノナノール、5,6−エポキシ−4−ノナノール、3,4−エポキシ−5−ノナノール、2,3−エポキシ−4−ノナノール、1,2−エポキシ−3−ノナノール、2,3−エポキシ−1−デカノール、3,4−エポキシ−2−デカノール、4,5−エポキシ−3−デカノール、5,6−エポキシ−4−デカノール、6,7−エポキシ−5−デカノール、3,4−エポキシ−5−デカノール、2,3−エポキシ−4−デカノール、1,2−エポキシ−3−デカノール等が挙げられる。
【0057】
上記式(VIII)で表される分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)としては、1,2−エポキシシクロペンタン、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシシクロヘプタン、1,2−エポキシシクロオクタン、1,2−エポキシシクロノナン、1,2−エポキシシクロデカン、1,2−エポキシシクロウンデカン、1,2−エポキシシクロドデカン等が挙げられる。
【0058】
上記式(IX)で表される分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)としては、3,4−エポキシシクロペンテン、3,4−エポキシシクロヘキセン、3,4−エポキシシクロヘプテン、3,4−エポキシシクロオクテン、3,4−エポキシシクロノネン、1,2−エポキシシクロデセン、1,2−エポキシシクロウンデセン、1,2−エポキシシクロドデセン等が挙げられる。
【0059】
本発明に用いられる分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)としては、炭素数が2〜8のエポキシ化合物が特に好ましい。化合物の取り扱いの容易さ、及びEVOH(A)との反応性の観点からは、一価エポキシ化合物(B)の炭素数は好適には2〜6であり、より好適には2〜4である。また、一価エポキシ化合物(B)が、上記式(III)又は(IV)で表される化合物であることが好ましい。EVOH(A)との反応性、及び得られる変性EVOH(C)のガスバリア性の観点からは、1,2−エポキシブタン、2,3−エポキシブタン、エポキシプロパン、エポキシエタン及びグリシドールが好ましい。また、耐衝撃剥離性の観点からは、1,2−エポキシブタン及びグリシドールが好ましい。食品包装用途、飲料包装用途、医薬品包装用途などの、衛生性を要求される用途では、エポキシ化合物(B)として1,2−エポキシブタン、2,3−エポキシブタン、エポキシプロパン又はエポキシエタンを用いることが好ましく、特にエポキシプロパン又は1,2−エポキシブタンを用いることが好ましい。
【0060】
[変性EVOH(C)の製法]
上記EVOH(A)と上記一価エポキシ化合物(B)とを反応させることにより変性EVOH(C)が得られる。このときの、EVOH(A)及び一価エポキシ化合物(B)の好適な混合比は、(A)100重量部に対して(B)1〜50重量部であり、さらに好適には(A)100重量部に対して(B)2〜40重量部であり、特に好適には(A)100重量部に対して(B)5〜35重量部である。
【0061】
EVOH(A)と分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)とを反応させることにより、変性EVOH(C)を製造する方法は特に限定されないが、EVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)とを溶液で反応させる製造法、及びEVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)とを押出機内で反応させる製造法などが好適な方法として挙げられる。
【0062】
溶液反応による製造法では、EVOH(A)の溶液に酸触媒あるいはアルカリ触媒存在下で一価エポキシ化合物(B)を反応させることによって変性EVOH(C)が得られる。また、EVOH(A)及び一価エポキシ化合物(B)を反応溶媒に溶解させ、加熱処理を行うことによっても変性EVOH(C)を製造することができる。反応溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド及びN−メチルピロリドン等のEVOH(A)の良溶媒である極性非プロトン性溶媒が好ましい。
【0063】
反応触媒としては、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、硫酸及び3フッ化ホウ素等の酸触媒や水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、ナトリウムメトキサイド等のアルカリ触媒が挙げられる。これらの内、酸触媒を用いることが好ましい。触媒量としては、EVOH(A)100重量部に対し、0.0001〜10重量部程度が適当である。反応温度としては室温から150℃の範囲が適当である。
【0064】
EVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)とを押出機内で反応させる製造法では、使用する押出機としては特に制限はないが、一軸押出機、二軸押出機又は二軸以上の多軸押出機を使用し、180℃〜300℃程度の温度でEVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)とを反応させることが好ましい。後述のように、押出機内で反応させる際に触媒(D)を存在させる場合には、低めの溶融温度とすることが好ましいが、触媒(D)を使用しない場合の好適な温度は200℃〜300℃程度である。
【0065】
二軸押出機又は二軸以上の多軸押出機を用いた場合、スクリュー構成の変更により、反応部の圧力を高めることが容易であり、EVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)との反応を効率的に行えるようになる。一軸押出機では2台以上の押出機を連結し、その間の樹脂流路にバルブを配置することにより、反応部の圧力を高めることが可能である。また同様に二軸押出機又は二軸以上の多軸押出機を2台以上連結して製造してもよい。
【0066】
押出機内で反応させる製造法と、溶液反応による製造法を比較した場合、溶液反応の場合は、EVOH(A)を溶解させる溶媒が必要であり、反応終了後に該溶媒を反応系から回収・除去する必要があり、工程が煩雑なものとなる。また、EVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)との反応性を高めるためには、反応系を加熱及び/又は加圧条件下に維持することが好ましいが、溶液反応の場合と比較して、押出機内での反応ではかかる反応系の加熱及び/又は加圧条件の維持が容易であり、その観点からも押出機内での反応のメリットは大きい。
【0067】
さらに、溶液反応によってEVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)との反応を行った場合、反応の制御が必ずしも容易ではなく、過剰に反応が進行してしまうおそれがある。すなわち、EVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)との反応の結果、上述の構造単位(I)を有する変性EVOH(C)が得られるが、前記構造単位(I)に含まれる水酸基に、さらに一価エポキシ化合物(B)が反応することにより、本発明で特定する構造単位とは異なるものが得られるおそれがあった。具体的には、一価エポキシ化合物(B)がエチレンオキサイドである場合、上述した過剰な反応の進行により、下記に示す構造単位(II)を含有するEVOHが生じることになる。
【0068】
【化11】
Figure 2004161905
【0069】
(式中、nは1以上の自然数を表す。)
【0070】
本発明者らが検討を行った結果、本発明で特定する構造単位(I)とは異なる、上記に示した構造単位(II)を含有する割合が多くなることにより、得られる変性EVOH(C)のガスバリア性が低下することが明らかになった。さらに、押出機内でEVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)との反応を行った場合は、このような副反応の発生を効果的に抑制可能であることを見出した。かかる観点からも、押出機内でEVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)との反応を行うことにより、変性EVOH(C)を製造する方法が好ましい。
【0071】
また、本発明で用いられる分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)は、必ずしも沸点の高いものばかりではないため、溶液反応による製造法では、反応系を加熱した場合、系外に一価エポキシ化合物(B)が揮散するおそれがある。しかしながら、押出機内でEVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)とを反応させることにより、一価エポキシ化合物(B)の系外への揮散を抑制することが可能である。特に、押出機内に一価エポキシ化合物(B)を添加する際に、加圧下で圧入することにより、EVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)との反応性を高め、かつ一価エポキシ化合物(B)の系外への揮散を顕著に抑制することが可能である。
【0072】
押出機内での反応の際の、EVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)の混合方法は特に限定されず、押出機にフィードする前のEVOH(A)に一価エポキシ化合物(B)をスプレー等を行う方法や、押出機にEVOH(A)をフィードし、押出機内で一価エポキシ化合物(B)と接触させる方法などが好適なものとして例示される。この中でも、一価エポキシ化合物(B)の系外への揮散を抑制できる観点から、押出機にEVOH(A)をフィードした後、押出機内で一価エポキシ化合物(B)と接触させる方法が好ましい。また、押出機内への一価エポキシ化合物(B)の添加位置も任意であるが、EVOH(A)とエポキシ化合物(B)との反応性の観点からは、溶融したEVOH(A)に対して一価エポキシ化合物(B)を添加することが好ましい。
【0073】
本発明者が推奨する、EVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)との、押出機内での反応による製造法は、(1)EVOH(A)の溶融工程、(2)一価エポキシ化合物(B)の添加工程及び(3)ベント等による、未反応の一価エポキシ化合物(B)の除去工程、からなる。反応を円滑に行う観点からは、系内から水分及び酸素を除去することが好適である。このため、押出機内へ一価エポキシ化合物(B)を添加するより前に、ベント等を用いて水分及び酸素を除去してもよい。
【0074】
また、前述の通り、一価エポキシ化合物(B)の添加工程においては、一価エポキシ化合物(B)を加圧下で圧入することが好ましい。この際に、この圧力が不十分な場合、反応率が下がり、吐出量が変動する等の問題が発生する。必要な圧力は一価エポキシ化合物(B)の沸点や押出温度によって大きく異なるが、通常0.5〜30MPaの範囲が好ましく、1〜20MPaの範囲がより好ましい。
【0075】
[触媒(D)]
本発明の製造方法では、EVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)とを、周期律表第3〜12族に属する金属のイオンを含む触媒(D)の存在下に押出機中で溶融混練することが好適である。周期律表第3〜12族に属する金属のイオンを含む触媒(D)を存在させることによって、より低い温度で溶融混練しても効率良くEVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)とを反応させることができる。すなわち、比較的低温での溶融混練によっても、変性量の大きい変性EVOH(C)を容易に得ることができる。EVOHは高温での溶融安定性が必ずしも良好な樹脂ではないことから、このように低温で溶融混練できることは、樹脂の劣化を防止できる点から好ましい。触媒(D)を使用せずにEVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)とを反応させた場合には、得られる変性EVOH(C)のMFRが原料のEVOH(A)のMFRよりも低下する傾向があるが、触媒(D)を使用した場合には、MFRはほとんど変化しない。
【0076】
本発明で使用される触媒(D)は、周期律表第3〜12族に属する金属のイオンを含むものである。触媒(D)に使用される金属イオンとして最も重要なことは適度のルイス酸性を有することであり、この点から周期律表第3〜12族に属する金属のイオンが使用される。これらの中でも、周期律表第3族又は第12族に属する金属のイオンが適度なルイス酸性を有していて好適であり、亜鉛、イットリウム及びガドリニウムのイオンがより好適なものとして挙げられる。なかでも、亜鉛のイオンを含む触媒(D)が、触媒活性が極めて高く、かつ得られる変性EVOH(C)の熱安定性が優れていて、最適である。
【0077】
周期律表第3〜12族に属する金属のイオンの添加量はEVOH(A)の重量に対する金属イオンのモル数で0.1〜20μmol/gであることが好適である。多すぎる場合には、溶融混練中にEVOHがゲル化するおそれがあり、より好適には10μmol/g以下である。一方、少なすぎる場合には、触媒(D)の添加効果が十分に奏されないおそれがあり、より好適には0.5μmol/g以上である。なお、周期律表第3〜12族に属する金属のイオンの好適な添加量は、使用する金属の種類や後述のアニオンの種類によっても変動するので、それらの点も考慮した上で、適宜調整されるべきものである。
【0078】
周期律表第3〜12族に属する金属のイオンを含む触媒(D)のアニオン種は特に限定されるものではないが、その共役酸が硫酸と同等以上の強酸である1価のアニオンを含むことが好ましい。共役酸が強酸であるアニオンは、通常求核性が低いので一価エポキシ化合物(B)と反応しにくく、求核反応によってアニオン種が消費されて、触媒活性が失われることを防止できるからである。また、そのようなアニオンを対イオンに有することで、触媒(D)のルイス酸性が向上して触媒活性が向上するからである。
【0079】
共役酸が硫酸と同等以上の強酸である1価のアニオンとしては、メタンスルホン酸イオン、エタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン等のスルホン酸イオン;塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン等のハロゲンイオン;過塩素酸イオン;テトラフルオロボレートイオン(BF )、ヘキサフルオロホスフェートイオン(PF )、ヘキサフルオロアルシネートイオン(AsF )、ヘキサフルオロアンチモネートイオン等の4個以上のフッ素原子を持つアニオン;テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイオン等のテトラフェニルボレート誘導体イオン;テトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、ビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)コバルト(III)イオン、ビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)鉄(III)イオン等のカルボラン誘導体イオンなどが例示される。
【0080】
上記例示したアニオン種のうち、ヘキサフルオロホスフェートやテトラフルオロボレート等のアニオン種を含む触媒(D)を使用した場合には、アニオン種そのものは熱的に安定で求核性も非常に低いものの、当該アニオン種がEVOH中の水酸基と反応してフッ化水素が発生し、樹脂の熱安定性に悪影響を与えるおそれがある。また、コバルトのカルボラン誘導体イオン等はEVOHと反応することがなく、アニオン種自体も熱的に安定ではあるが、非常に高価である。
【0081】
EVOHと反応することがなく、アニオン種自体も熱的に安定であり、かつ価格も適切なものであることから、触媒(D)のアニオン種としてはスルホン酸イオンが好ましい。好適なスルホン酸イオンとしては、メタンスルホン酸イオン及びトリフルオロメタンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオンが例示され、トリフルオロメタンスルホン酸イオンが最適である。
【0082】
触媒(D)のカチオン種として亜鉛イオンを、アニオン種としてトリフルオロメタンスルホン酸イオンをそれぞれ使用した場合の、EVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)との反応の推定メカニズムを下記式(X)に示す。
【0083】
【化12】
Figure 2004161905
【0084】
すなわち、EVOHの水酸基と金属アルコキシドの形で結合した亜鉛イオンに一価エポキシ化合物(B)のエポキシ基の酸素原子が配位し、6員環遷移状態を経て、エポキシ基が開環すると推定している。ここで、遷移状態における亜鉛イオンの対イオンであるトリフルオロメタンスルホン酸イオンの共役酸が強酸であることによって、亜鉛イオンのルイス酸性が大きくなり、触媒活性が向上する。一方、対イオンとして存在するトリフルオロメタンスルホン酸イオン自体は、EVOHの水酸基あるいは一価エポキシ化合物(B)のエポキシ基と反応することがなく、それ自体熱的に安定であるから、副反応を生じることなく円滑に開環反応が進行する。
【0085】
上述のように、本発明で使用される触媒(D)はその共役酸が硫酸と同等以上の強酸である1価のアニオンを含むものであることが好適であるが、触媒(D)中の全てのアニオン種が同一のアニオン種である必要はない。むしろ、その共役酸が弱酸であるアニオンを同時に含有するものであることが好ましい。前記式(X)で示されたような反応メカニズムであれば、EVOHが触媒(D)と反応して金属アルコキシドを形成する際にアニオンの一つが共役酸として系内に遊離する。これが強酸であった場合には、一価エポキシ化合物(B)と反応するおそれがあるとともに、EVOHの溶融安定性にも悪影響を及ぼすおそれがある。
【0086】
共役酸が弱酸であるアニオンの例としては、アルキルアニオン、アリールアニオン、アルコキシド、アリールオキシアニオン、カルボキシレート並びにアセチルアセトナート及びその誘導体が例示される。なかでもアルコキシド、カルボキシレート並びにアセチルアセトナート及びその誘導体が好適に使用される。
【0087】
触媒(D)中の金属イオンのモル数に対する、共役酸が硫酸と同等以上の強酸であるアニオンのモル数は、0.2〜1.5倍であることが好ましい。上記モル比が0.2倍未満である場合には触媒活性が不十分となるおそれがあり、より好適には0.3倍以上であり、さらに好適には0.4倍以上である。一方、上記モル比が1.5倍を超えるとEVOHがゲル化するおそれがあり、より好適には1.2倍以下である。前記モル比は最適には1倍である。なお、原料のEVOH(A)が酢酸ナトリウムなどのアルカリ金属塩を含む場合には、それと中和されて消費される分だけ、共役酸が硫酸と同等以上の強酸であるアニオンのモル数を増やしておくことができる。
【0088】
触媒(D)の調製方法は特に限定されるものではないが、好適な方法として、周期律表第3〜12族に属する金属の化合物を溶媒に溶解又は分散させ、得られた溶液又は懸濁液に、共役酸が硫酸と同等以上の強酸(スルホン酸等)を添加する方法が挙げられる。原料として用いる周期律表第3〜12族に属する金属の化合物としては、アルキル金属、アリール金属、金属アルコキシド、金属アリールオキシド、金属カルボキシレート、金属アセチルアセトナート等が挙げられる。ここで、周期律表第3〜12族に属する金属の化合物の溶液又は懸濁液に、強酸を加える際には、少量ずつ添加することが好ましい。こうして得られた触媒(D)を含有する溶液は押出機に直接導入することができる。
【0089】
周期律表第3〜12族に属する金属の化合物を溶解又は分散させる溶媒としては有機溶媒、特にエーテル系溶媒が好ましい。押出機内の温度でも反応しにくく、金属化合物の溶解性も良好だからである。エーテル系溶媒の例としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等が例示される。使用される溶媒としては、金属化合物の溶解性に優れ、沸点が比較的低くて押出機のベントでほぼ完全に除去可能なものが好ましい。その点においてジエチレングリコールジメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン及びテトラヒドロフランが特に好ましい。
【0090】
また、上述の触媒(D)の調整方法において、添加する強酸の代わりに強酸のエステル(スルホン酸エステル等)を用いても良い。強酸のエステルは、通常強酸そのものより反応性が低いために、常温では金属化合物と反応しないことがあるが、200℃前後に保った高温の押出機内に投入することにより、押出機内において活性を有する触媒(D)を生成することができる。
【0091】
触媒(D)の調製方法としては、以下に説明する別法も採用可能である。まず、水溶性の周期律表第3〜12族に属する金属の化合物と、共役酸が硫酸と同等以上の強酸(スルホン酸等)とを、水溶液中で混合して触媒水溶液を調製する。なおこのとき、当該水溶液が適量のアルコールを含んでいても構わない。得られた触媒水溶液をEVOH(A)と接触させた後、乾燥することによって触媒(D)が配合されたEVOH(A)を得ることができる。具体的には、EVOH(A)ペレット、特に多孔質の含水ペレットを前記触媒水溶液に浸漬する方法が好適なものとして挙げられる。この場合には、このようにして得られた乾燥ペレットを押出機に導入することができる。
【0092】
触媒(D)を使用する場合には、押出機内の温度は180〜250℃とすることが好ましい。この場合、EVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)を反応させる際に触媒(D)が存在するために、比較的低温で溶融混練しても、効率良くEVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)の反応を進行させることができる。温度が250℃を超える場合にはEVOHが劣化するおそれがあり、より好適には240℃以下である。一方、温度が180℃未満の場合にはEVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)の反応が十分に進行しないおそれがあり、より好適には190℃以上である。
【0093】
EVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)を反応させる際に触媒(D)を存在させる方法は特に限定されない。好適な方法として、触媒(D)の溶液を調製し、その溶液を押出機内に添加する方法が挙げられる。触媒(D)の溶液の調製方法は前述したとおりである。この方法によれば、後述の別法に比べて生産性が高く、触媒(D)を安定的に供給できるために製品の品質を安定化することもできる。触媒(D)の溶液を押出機に導入する位置は特に限定されないが、EVOH(A)が完全に溶融している場所で添加することが、均一に配合できて好ましい。特に、一価エポキシ化合物(B)を添加する場所と同じ場所又はその近傍で添加することが好ましい。触媒(D)と一価エポキシ化合物(B)をほぼ同時に配合することにより、ルイス酸である触媒(D)の影響によるEVOH(A)の劣化を最小限に抑制することができるとともに、十分な反応時間を確保できるからである。したがって、触媒(D)の溶液と一価エポキシ化合物(B)とを混合した液を予め作成しておいて、それを一箇所から押出機中に添加することが最適である。
【0094】
溶融混練時に触媒(D)を存在させる別の方法として、EVOH(A)の含水ペレットを触媒(D)の溶液に浸漬した後、乾燥させる方法が挙げられる。この方法については、触媒(D)の調製方法の別法として前述したとおりである。この場合には、得られた乾燥ペレットがホッパーから押出機内に導入されることになる。但し、高価な触媒が廃液として処理されることになりコストアップに繋がりやすい点が問題である。また更に別の方法としては、乾燥後のペレットに、液体状態の触媒を含浸させるか、固体状態の触媒を混合するかした後、必要に応じて乾燥させる方法が挙げられる。この方法においては、工程数が増えることからコストアップに繋がりやすい点が問題であるとともに、触媒を均一に配合することも必ずしも容易ではない。また、上記いずれの別法においても、一価エポキシ化合物(B)が存在せず、ルイス酸である触媒(D)のみが存在する状態で溶融混練される際に、EVOH(A)が劣化するおそれがある。
【0095】
[触媒失活剤(E)]
上述のように、EVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)とを、触媒(D)の存在下に押出機中で溶融混練することが好適であるが、その後で触媒失活剤(E)を添加して更に溶融混練することがより好ましい。触媒(D)を失活させなかった場合には、得られる変性EVOH(C)の熱安定性が悪くなるおそれがあり、用途によっては使用に問題をきたす可能性がある。
【0096】
使用される触媒失活剤(E)は、触媒(D)のルイス酸としての働きを低下させるものであればよく、その種類は特に限定されない。好適にはアルカリ金属塩が使用される。その共役酸が硫酸と同等以上の強酸である1価のアニオンを含む触媒(D)を失活させるには、当該アニオンの共役酸よりも弱い酸のアニオンのアルカリ金属塩を使用することが必要である。こうすることによって、触媒(D)を構成する周期律表第3〜12族に属する金属のイオンの対イオンが弱い酸のアニオンに交換され、結果として触媒(D)のルイス酸性が低下するからである。触媒失活剤(E)に使用されるアルカリ金属塩のカチオン種は特に限定されず、ナトリウム塩、カリウム塩及びリチウム塩が好適なものとして例示される。またアニオン種も特に限定されず、カルボン酸塩、リン酸塩及びホスホン酸塩が好適なものとして例示される。
【0097】
触媒失活剤(E)として、例えば酢酸ナトリウムやリン酸一水素二カリウムのような塩を使用しても熱安定性はかなり改善されるが、用途によっては未だ不十分である場合がある。この原因は、周期律表第3〜12族に属する金属のイオンにルイス酸としての働きがある程度残存しているため、変性EVOH(C)の分解及びゲル化に対して触媒として働くためであると考えられる。この点をさらに改善する方法として、周期律表第3〜12族に属する金属のイオンに強く配位するキレート化剤を添加することが好ましい。このようなキレート化剤は当該金属のイオンに強く配位できる結果、そのルイス酸性をほぼ完全に失わせることができ、熱安定性に優れた変性EVOH(C)を与えることができる。また、当該キレート化剤がアルカリ金属塩であることによって、前述のように触媒(D)に含まれるアニオンの共役酸である強酸を中和することもできる。
【0098】
触媒失活剤(E)として使用されるキレート化剤として、好適なものとしては、オキシカルボン酸塩、アミノカルボン酸塩、アミノホスホン酸塩などが挙げられる。具体的には、オキシカルボン酸塩としては、クエン酸二ナトリウム、酒石酸二ナトリウム、リンゴ酸二ナトリウム等が例示される。アミノカルボン酸塩としては、ニトリロ三酢酸三ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸三ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸三カリウム、ジエチレントリアミン五酢酸三ナトリウム、1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸三ナトリウム、エチレンジアミン二酢酸一ナトリウム、N−(ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸一ナトリウム等が例示される。アミノホスホン酸塩としては、ニトリロトリスメチレンホスホン酸六ナトリウム、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)八ナトリウム等が例示される。なかでもポリアミノポリカルボン酸が好適であり、性能やコストの面からエチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩が最適である。エチレンジアミン四酢酸三ナトリウムを使用した場合の推定反応メカニズムを下記式(XI)に示す。
【0099】
【化13】
Figure 2004161905
【0100】
触媒失活剤(E)の添加量は特に限定されず、触媒(D)に含まれる金属イオンの種類や、キレート剤の配位座の数等により適宜調整されるが、触媒(D)に含まれる金属イオンのモル数に対する触媒失活剤(E)のモル数の比(E/D)が0.2〜10となるようにすることが好適である。比(E/D)が0.2未満の場合には、触媒(D)が十分に失活されないおそれがあり、より好適には0.5以上、さらに好適には1以上である。一方、比(E/D)が10を超える場合には、得られる変性EVOH(C)が着色するおそれがあるとともに、製造コストが上昇するおそれがあり、より好適には5以下であり、さらに好適には3以下である。
【0101】
触媒失活剤(E)を押出機へ導入する方法は特に限定されないが、均一に分散させるためには、溶融状態の変性EVOH(C)に対して、触媒失活剤(E)の溶液として導入することが好ましい。触媒失活剤(E)の溶解性や、周辺環境への影響などを考慮すれば、水溶液として添加することが好ましい。
【0102】
触媒失活剤(E)の押出機への添加位置は、EVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)とを、触媒(D)の存在下に溶融混練した後であればよい。しかしながら、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)と一価エポキシ化合物(B)とを、触媒(D)の存在下に溶融混練し、未反応の一価エポキシ化合物(B)を除去した後に触媒失活剤(E)を添加することが好ましい。前述のように、触媒失活剤(E)を水溶液として添加する場合には、未反応の一価エポキシ化合物(B)を除去する前に触媒失活剤(E)を添加したのでは、ベント等で除去して回収使用する一価エポキシ化合物(B)の中に水が混入することになり、分離操作に手間がかかるからである。なお、触媒失活剤(E)の水溶液を添加した後で、ベント等によって水分を除去することも好ましい。
【0103】
本発明の製造方法において、触媒失活剤(E)を使用する場合の好適な製造プロセスとしては、
(1)EVOH(A)の溶融工程;
(2)一価エポキシ化合物(B)と触媒(D)の混合物の添加工程;
(3)未反応の一価エポキシ化合物(B)の除去工程;
(4)触媒失活剤(E)水溶液の添加工程;
(5)水分の減圧除去工程;
の各工程からなるものが例示される。
【0104】
変性EVOH(C)は、周期律表第3〜12族に属する金属のイオンを0.1〜20μmol/g含有することが好ましい。かかる金属のイオンは、前述の製造方法において触媒(D)を使用した際の触媒残渣として含有され得るものであり、その好適な金属のイオンの種類については、前述の触媒(D)の説明のところで述べたとおりである。より好適には0.5μmol/g以上である。また、より好適には10μmol/g以下である。
【0105】
また、変性EVOH(C)は、スルホン酸イオンを含有することが好適である。かかるスルホン酸イオンは、前述の製造方法において触媒(D)を使用した際の触媒残渣として含有され得るものであり、その好適なスルホン酸イオンの種類については、前述の触媒(D)の説明のところで述べたとおりである。スルホン酸イオンの含有量は0.1〜20μmol/gであることが好適である。より好適には0.5μmol/g以上である。また、より好適には10μmol/g以下である。
【0106】
さらに、変性EVOH(C)中のアルカリ金属イオンの含有量がスルホン酸イオンの含有量の1〜50倍(モル比)であることが好適である。アルカリ金属イオンは、前述の製造方法において触媒失活剤(E)を使用した際の残渣として含有され得るとともに、原料のEVOH(A)に由来して含有され得るものである。当該アルカリ金属イオンの含有量がスルホン酸イオンの含有量の1倍未満である場合には、製造工程において、触媒(D)の失活が十分に行われておらず、変性EVOH(C)の熱安定性に問題を生じる場合があり、より好適には2倍以上である。一方、アルカリ金属イオンの含有量がスルホン酸イオンの含有量の50倍を超える場合には、変性EVOH(C)が着色するおそれがあり、好適には30倍以下である。
【0107】
変性EVOH(C)には、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、カルボン酸及びリン酸化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を、EVOH(A)とエポキシ化合物(B)との反応によって変性EVOH(C)が得られた後に添加することもできる。一般に、接着性の改善や着色の抑制など、EVOHの各種物性を改善するために、EVOHには必要に応じてアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、カルボン酸及びリン酸化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種が添加されることが多い。しかしながら、上記に示した各種化合物の添加は、前述の通り、押出機によるEVOH(A)とエポキシ化合物(B)との反応の際に、着色や粘度低下等の原因となるおそれがある。このため、EVOH(A)とエポキシ化合物(B)との反応後に、残存するエポキシ化合物(B)をベントで除去した後、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、カルボン酸及びリン酸化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を、得られた変性EVOH(C)に添加することが好ましい。この添加方法を採用することにより、着色や粘度低下等の問題を生じることなく、変性EVOH(C)が得られる。
【0108】
こうして得られた変性EVOH(C)の融点は160℃以下であることが好ましい。これによって、ポリオレフィン(G)など融点の低い樹脂との融点の差を小さくすることができ、樹脂組成物を溶融成形する際の成形温度を低くすることができる。より好適には150℃以下であり、さらに好適には140℃以下である。
【0109】
[熱可塑性樹脂(F)]
本発明の樹脂組成物は、前記変性EVOH(C)及び酸素を吸収することが可能な熱可塑性樹脂(F)からなる樹脂組成物である。変性EVOH(C)と配合される熱可塑性樹脂(F)は、酸素を吸収することが可能なものである。熱可塑性樹脂(F)は、変性EVOH(C)に単独で、又は遷移金属塩(C)や他の樹脂と共に配合することによって、得られる樹脂組成物の酸素掃去機能が増加するものであればよく、その種類は変性EVOH(C)以外であれば特に限定されない。この熱可塑性樹脂(F)は、好適には炭素−炭素二重結合を含有する。この炭素−炭素二重結合部分は酸素と効率よく反応するので、このような熱可塑性樹脂(F)は酸素掃去機能を有する。なお、本発明において、炭素−炭素二重結合は、共役二重結合を包含するが、芳香環に含まれる多重結合は包含しない。
【0110】
この炭素−炭素二重結合は、好適には熱可塑性樹脂(F)に0.0001eq/g以上、より好適には0.0005eq/g(当量/g)以上、さらに好適には0.001eq/g以上含有される。炭素−炭素二重結合の含有量が0.0001eq/g未満である場合、得られる樹脂組成物の酸素掃去機能が不十分となる場合がある。
【0111】
炭素−炭素二重結合は、熱可塑性樹脂(F)の主鎖に含まれてもよく、側鎖に含まれてもよいが、側鎖に含まれる二重結合の量が多い方が(すなわち、炭素−炭素二重結合を有している基が側鎖に多い方が)、酸素との反応の効率の観点から好ましい。側鎖に含まれる炭素−炭素二重結合として、下記構造式(a)で示される構造単位に含まれる二重結合が好ましい:
【0112】
【化14】
Figure 2004161905
【0113】
(式中、Rは水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基、Rは水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基又はアルコキシ基であり、R及びRは各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、置換されていてもよいアリール基、−COOR、−OCOR、シアノ基、又はハロゲン原子であり、R及びRは各々独立して炭素原子数1〜10のアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基又はアルコキシ基である)。
【0114】
上記アリール基の炭素原子数は、好ましくは6〜10であり、アルキルアリール基及びアリールアルキル基の炭素原子数は好ましくは7〜11であり、アルコキシ基の炭素原子数は好ましくは1〜10である。アルキル基の例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が、アリール基の例としてはフェニル基が、アルキルアリール基の例としてはトリル基が、アリールアルキル基の例としてはベンジル基が、アルコキシ基の例としてはメトキシ基、エトキシ基が、ハロゲン原子の例としては塩素原子が、それぞれ挙げられる。
【0115】
構造式(a)で示される構造単位の中でも、ジエン化合物由来の構造単位が好ましい。該構造を有する熱可塑性樹脂の製造が容易であるためである。このようなジエン化合物としては、イソプレン、ブタジエン、2−エチルブタジエン、2−ブチルブタジエン等が挙げられる。これらの1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。ジエン化合物の例と、該ジエン化合物から誘導される構造式(a)における基の種類との関係を表1に示す。
【0116】
【表1】
Figure 2004161905
【0117】
これらの中でも、酸素との反応の効率の観点から、Rが炭素数1〜5のアルキル基であるものが好ましく、Rがメチル基であるもの(すなわち、イソプレン由来の構造単位)がより好ましい。イソプレンは入手が容易であり、他の単量体との共重合も可能であるので、熱可塑性樹脂(F)の製造コストの点からも好適である。また、入手が容易であり、他の単量体との共重合が可能であるという観点からは、ブタジエンも好ましい。
【0118】
構造式(a)で示される構造単位がジエン化合物由来である場合、ジエン化合物由来の全構造単位に対する、構造式(a)で示される構造単位の割合は、10%以上であることが好ましく、20%以上がより好ましく、30%以上がさらにより好ましい。前記割合を10%以上にするためには、不活性な有機溶媒中で、ルイス塩基を共触媒として用いてジエン化合物をアニオン重合する、当該分野で一般に用いられる方法が採用される。
【0119】
構造式(a)で示される構造単位を有する熱可塑性樹脂(F)を得るためには、ジエン化合物を含む単量体を重合させる際に、共触媒としてルイス塩基を使用することが好ましい。ルイス塩基としては、例えばジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、トリエチレンジアミン等の第三級アミン類、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等のエーテル含有アミン類等が挙げられる。これらのルイス塩基は、通常、後述の開始剤100重量部あたり0.1〜400重量部使用される。
【0120】
本発明の樹脂組成物に含有される熱可塑性樹脂(F)は、芳香族ビニル化合物と上記ジエン化合物との共重合体であることが好ましい。熱可塑性樹脂(F)が該共重合体である場合、ジエン化合物に由来する炭素−炭素二重結合部分が酸素と反応し易くなり、得られる組成物の酸素バリア性及び酸素掃去機能が向上する。さらに、芳香族ビニル化合物とジエン化合物との共重合比率を調節することにより、熱可塑性樹脂(F)の硬度、成形性及び加工性を制御することができる。加えて、熱可塑性樹脂(F)の屈折率を所望の値にすることができる。従って、変性EVOH(C)の屈折率と熱可塑性樹脂(F)の屈折率との差を小さくすることができ、その結果、透明性に優れた製品が得られる。
【0121】
上記芳香族ビニル化合物としては、スチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、3−ビニルナフタレン、3−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン等が挙げられる。これらの中でも、コスト及び重合の容易さの観点からスチレンが最も好ましい。一方、ジエン化合物としては、前述の化合物が例として挙げられる。
【0122】
芳香族ビニル化合物とジエン化合物の共重合体の形態としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、又はそれらの複合物等いずれの形態であってもよい。製造の容易さ、得られる熱可塑性樹脂(F)の機械的特性、取り扱いの容易さ、及び酸素掃去機能の観点から、ブロック共重合体であることが好ましい。
【0123】
上記ブロック共重合体において、芳香族ビニル化合物ブロックの分子量は、好適には300〜100000であり、より好適には1000〜50000であり、さらに好適には3000〜50000である。芳香族ビニル化合物ブロックの分子量が300未満の場合は、熱可塑性樹脂(F)の溶融粘度が低くなり、得られる樹脂組成物の成形性、加工性及びハンドリング性に問題が生じる場合がある。さらに、成形物とした場合の機械的特性が低下する場合がある。加えて、熱可塑性樹脂(F)の変性EVOH(C)への分散性が低下し、透明性、ガスバリア性及び酸素掃去機能が低下する場合がある。一方、芳香族ビニル化合物ブロックの分子量が100000を越える場合には、熱可塑性樹脂(F)の溶融粘度が高くなって熱可塑性が損なわれるので、得られる樹脂組成物の成形性及び加工性が低下する場合がある。また、上記と同様に熱可塑性樹脂(F)の変性EVOH(C)への分散性が低下し、透明性、ガスバリア性及び酸素掃去機能が低下する場合がある。
【0124】
ブロック共重合体のブロック形態としては、例えばX(YX)n、(XY)n等が挙げられる。ここで、Xは芳香族ビニル化合物ブロック、Yはジエン化合物ブロックを示し、nは1以上の整数である。これらの中でも、2元ブロック共重合体及び3元ブロック共重合体が好ましく、機械的特性の観点から3元ブロック共重合体がより好ましい。中でも、芳香族ビニル化合物ブロックがポリスチレンブロックであり、ジエン化合物ブロックがポリイソプレンブロックであることがコスト及び重合の容易さの観点から好適である。
【0125】
上記ブロック共重合体の製造方法は特に限定されないが、アニオン重合法が好適である。具体的には、アルキルリチウム化合物を開始剤として芳香族ビニル化合物とジエン化合物とを共重合し、カップリング剤によってカップリングする方法、ジリチウム系化合物を開始剤として、ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを逐次重合する方法等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。アルキルリチウム化合物としては、アルキル基の炭素原子数が1〜10のアルキルリチウム化合物、例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、ベンジルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム等が好ましい。
【0126】
カップリング剤としてはジクロロメタン、ジブロモメタン、ジクロロエタン、ジブロモエタン等が用いられる。ジリチウム化合物としては、例えば、ナフタレンジリチウム、オリゴスチリルジリチウム、ジリチオヘキシルベンゼン等が挙げられる。使用量は、重合に用いられる全モノマー100重量部に対し、開始剤0.01〜0.2重量部、カップリング剤0.04〜0.8重量部が適当である。
【0127】
熱可塑性樹脂(F)を製造するための溶媒としては、上記の開始剤、カップリング剤及びルイス塩基に対して不活性な有機溶媒が使用される。これらの中でも、炭素原子数が6〜12の飽和炭化水素、環状飽和炭化水素、芳香族炭化水素が好ましい。例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、トルエン、ベンゼン、キシレン等が挙げられる。熱可塑性樹脂(F)を製造するための重合反応は通常−20〜80℃の温度範囲で、1〜50時間行われる。
【0128】
例えば、重合反応液をメタノール等の貧溶媒中に滴下し、沈殿物を析出させた後、該沈殿物を加熱又は減圧乾燥するか、重合反応液を沸騰水中に滴下し、溶媒を共沸・除去した後、加熱又は減圧乾燥することにより、熱可塑性樹脂(F)が得られる。なお、重合後に存在する二重結合は、本発明の樹脂組成物の効果を阻害しない範囲で、その一部が水素により還元されていても構わない。
【0129】
こうして得られた熱可塑性樹脂(F)の、ジエン化合物ブロックにおけるtanδの主分散ピーク温度は、得られる樹脂組成物の酸素掃去機能の観点から、−40℃〜60℃であることが好ましく、−20℃〜40℃がより好ましく、−10℃〜30℃がさらにより好ましい。tanδの主分散ピーク温度が−40℃未満である場合、得られる樹脂組成物の酸素掃去機能が低下する場合がある。一方、tanδの主分散ピーク温度が60℃を超える場合、得られる樹脂組成物の特に低温における酸素掃去機能が低下する場合がある。
【0130】
熱可塑性樹脂(F)の分子量は、好適には1000〜500000であり、より好適には10000〜250000であり、さらに好適には40000〜200000の範囲である。熱可塑性樹脂(F)の分子量が1000未満の場合には、変性EVOH(C)への分散性が低下し、透明性、ガスバリア性及び酸素掃去機能が低下する場合がある。分子量が500000を超える場合、同様の問題に加えて樹脂組成物の加工性も悪くなる場合がある。
【0131】
熱可塑性樹脂(F)は、単一の樹脂であっても複数の樹脂からなる混合物であってもよい。いずれの場合にも、透明性の良好な成形物を得たい場合には、厚み20μmのフィルムにおいて、その内部ヘイズ値が10%以下であるのが好ましい。
【0132】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂(F)の屈折率については、変性EVOH(C)との屈折率の差が0.01以下であることが好ましい。変性EVOH(C)と熱可塑性樹脂(F)との屈折率の差が0.01を超える場合、得られる多層構造体の透明性が悪化する場合がある。屈折率の差は0.007以下がより好ましく、0.005以下がさらに好ましい。
【0133】
熱可塑性樹脂(F)は、酸化防止剤を含有していてもよい。酸化防止剤としては、例えば次の化合物が挙げられる:2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4’−チオビス−(6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’−チオビス−(6−t−ブチルフェノール)、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、2,6−ジ−(t−ブチル)−4−メチルフェノール(BHT)、2,2′−メチレンビス−(6−t−ブチル−p−クレゾール)、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸トリス−(ノニルフェニル)、チオジプロピオン酸ジラウリル等。
【0134】
酸化防止剤の添加量は、樹脂組成物中の各成分の種類、含有量、樹脂組成物の使用目的、保存条件等を考慮して適宜決定される。通常、熱可塑性樹脂(F)に含有される酸化防止剤の量は、熱可塑性樹脂(F)と酸化防止剤の合計重量を基準として、0.01〜1重量%であることが好ましく、0.02〜0.5重量%であることがより好ましい。酸化防止剤の量が多すぎると、熱可塑性樹脂(F)と酸素との反応が妨げられるため、本発明の樹脂組成物の酸素バリア性及び酸素掃去機能が不十分となる場合がある。一方、酸化防止剤の量が少なすぎると、熱可塑性樹脂(F)の保存時又は溶融混練時に、酸素との反応が進行し、本発明の樹脂組成物の実使用前に酸素掃去機能が低下してしまう場合がある。
【0135】
例えば、熱可塑性樹脂(F)を比較的低温で、もしくは不活性ガス雰囲気下で保存する場合、又は窒素シールした状態で溶融混練して樹脂組成物を製造する場合等は、酸化防止剤の量は少なくてもよい。また、酸化を促進するために溶融混合時に酸化触媒を添加する場合、熱可塑性樹脂(F)がある程度の量の酸化防止剤を含んでいても、良好な酸素掃去機能を有する樹脂組成物を得ることができる。
【0136】
酸化防止剤は、熱可塑性樹脂(F)にあらかじめ添加されていてもよいが、後述の他の添加剤と同様に本発明の樹脂組成物の各成分を混合するときに加えてもよい。
【0137】
[遷移金属塩(G)]
本発明の樹脂組成物は、さらに遷移金属塩(G)を含有していることが好ましい。遷移金属塩(G)は、熱可塑性樹脂(F)の酸化反応を促進することにより、樹脂組成物の酸素掃去機能を向上させる効果がある。例えば、本発明の樹脂組成物から得られる包装材料内部に存在する酸素及び包装材料中を透過しようとする酸素と熱可塑性樹脂(F)との反応を促進し、包装材料の酸素バリア性及び酸素掃去機能が向上する。
【0138】
遷移金属塩(G)は好適には金属元素換算で1〜5000ppmの割合で含有される。つまり、樹脂組成物全体の合計量1,000,000重量部に対して、金属元素換算で1〜5000重量部の割合で含有される。より好適には、遷移金属塩(G)は5〜1000ppm、さらに好適には10〜500ppmの範囲で含有される。遷移金属塩(G)の含有量が1ppmに満たない場合は、その添加の効果が不十分となる場合がある。一方、遷移金属塩(G)の含有量が5000ppmを超えると、樹脂組成物の熱安定性が低下し、分解ガスの発生やゲル・ブツの発生が著しくなる場合がある。
【0139】
遷移金属塩(G)に用いられる遷移金属としては、例えば鉄、ニッケル、銅、マンガン、コバルト、ロジウム、チタン、クロム、バナジウム、ルテニウム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、鉄、ニッケル、銅、マンガン、コバルトが好ましく、マンガン及びコバルトがより好ましく、コバルトがさらにより好ましい。
【0140】
遷移金属塩(G)に含まれる金属の対イオンとしては、有機酸又は塩化物由来のアニオンが挙げられる。有機酸としては、酢酸、ステアリン酸、アセチルアセトン、ジメチルジチオカルバミン酸、パルミチン酸、2−エチルへキサン酸、ネオデカン酸、リノール酸、トール酸、オレイン酸、樹脂酸、カプリン酸、ナフテン酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。特に好ましい塩としては、2−エチルへキサン酸コバルト、ネオデカン酸コバルト及びステアリン酸コバルトが挙げられる。また、金属塩は重合体性対イオンを有する、いわゆるアイオノマーであってもよい。
【0141】
[EVOH(H)]
本発明の樹脂組成物が、さらに前記構造単位(I)を含有しないエチレン含有量5〜55モル%のEVOH(H)を含有していることも好ましい。EVOH(H)が有するバリア性や透明性を大きく低下させることなく、延伸性、熱成形性、柔軟性及び耐屈曲性に優れた樹脂組成物とすることができ、多層構造体としたときに層間接着性、特に耐衝撃剥離性にも優れる。EVOH(H)としては、変性EVOH(C)の原料として使用される前述のEVOH(A)と同じものが使用できるが、配合する変性EVOH(C)の組成や、樹脂組成物の用途によって適宜選択される。
【0142】
例えば、熱安定性、延伸性、熱成形性、柔軟性、耐屈曲性及び層間接着性の観点からはEVOH(H)のエチレン含有量は20モル%以上であることが好ましく、25モル%以上であることがより好ましく、27モル%以上であることがさらに好ましい。ガスバリア性の観点からは、50モル%以下であることが好ましく、45モル%以下であることがより好ましく、38モル%以下であることがさらに好ましい。また、EVOH(H)のケン化度は99%以上であることが好ましく、99.5%以上であることがより好ましい。
【0143】
変性EVOH(C)とEVOH(H)のそれぞれのエチレン含有量の組み合わせは、樹脂組成物の用途と目的に対応して調整される。透明性及び耐衝撃剥離性の観点からは、変性EVOH(C)とEVOH(H)の両者のエチレン含有量の差が小さい方が好ましく、その差が15モル%以下であることが好適である。より好適には10モル%以下であり、さらに好適には5モル%以下であり、最適には2モル%以下である。
【0144】
[相溶化剤(J)]
本発明の樹脂組成物は、さらに相溶化剤(J)を含有していることが好ましい。本発明の樹脂組成物に含有される相容化剤(J)は、変性EVOH(C)又はEVOH(H)と熱可塑性樹脂(F)との相容性を向上させ、得られる樹脂組成物に安定したモルフォロジーを形成させる化合物である。相容化剤(J)の種類は特に限定されず、使用する変性EVOH(C)又はEVOH(H)と熱可塑性樹脂(F)との組み合わせにより適宜選択される。
【0145】
相容化剤(J)としては極性基を含有する炭化水素系重合体であることが好ましく、重合体のベースとなる炭化水素重合体部分により、該相容化剤(J)と熱可塑性樹脂(F)との親和性が良好となる。同時に極性基により、該相容化剤(J)と変性EVOH(C)又はEVOH(H)との親和性が良好となる。その結果、得られる樹脂組成物に安定したモルフォロジーを形成させることができる。
【0146】
上記の極性基を含有する炭化水素系重合体のベースとなる炭化水素重合体部分を形成する単量体としては、次の化合物が挙げられる:エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、3−メチルペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン類;スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、モノフルオロスチレン、ジフルオロスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、メトキシスチレン、tert−ブトキシスチレン等のスチレン類;1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン等のビニルナフタレン類;インデン、アセナフチレン等のビニレン基含有芳香族化合物;ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチルブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエン等の共役ジエン化合物等。上記炭化水素系重合体は、これらの単量体の一種を主として含有していてもよいし、二種以上を主として含有していてもよい。
【0147】
上記単量体を用いて、後述のように、極性基を含有する炭化水素系重合体が調製され、該単量体は次のようなポリマーでなる炭化水素重合体部分を形成する:ポリエチレン(超低密度、低密度、直鎖状低密度、中密度、高密度)、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(メチルエステル、エチルエステル等)共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のオレフィン系重合体;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ジエン系ブロック共重合体(スチレン−イソプレン−ブロック共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体等)、その水添物等のスチレン系重合体;ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系重合体;ポリ塩化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル系重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の半芳香族ポリエステル;ポリバレロラクトン、ポリカプロラクトン、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート等の脂肪族ポリエステル等。これらの中でも、熱可塑性樹脂(F)を構成する単量体を構成成分として含有することが好ましい場合が多い。例えば、熱可塑性樹脂(F)がポリスチレンを含む場合、相容化剤(J)の炭化水素重合体部分を構成するポリマーとしては、ポリスチレン、スチレン−ジエン系ブロック共重合体(スチレン−イソプレン−ブロック共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体等)、その水添物等のスチレン系重合体が好ましい。
【0148】
相容化剤(J)に含有される極性基としては特に限定されないが、酸素原子を含有する官能基が好ましい。具体的には、活性水素含有極性基(−SOH、−SOH、−SOH、−CONH、−CONHR、−CONH−、−OH等)、窒素を含有し活性水素を含有しない極性基(−NCO、−OCN、−NO、−NO、−CONR、−CONR−等)、エポキシ基、カルボニル基含有極性基(−CHO、−COOH、−COOR、−COR、>C=O、−CSOR、−CSOH等)、リン含有極性基(−P(OR)、−PO(OR)、−PO(SR)、−PS(OR)、−PO(SR)(OR)、−PS(SR)(OR)等)、ホウ素含有極性基等が挙げられる。(上記一般式中、Rはアルキル基、フェニル基又はアルコキシ基を表す。)
【0149】
極性基を含有する炭化水素系重合体の製造法は特に限定されない。例えば、次の方法が挙げられる:1)上記炭化水素重合体部分を形成し得る単量体と、極性基(又は、該極性基を形成し得る基)を含有する単量体とを共重合する方法;2)上記炭化水素重合体部分を形成し得る単量体を重合する際に、上記極性基(又は、該極性基を形成し得る基)を有する開始剤又は連鎖移動剤を利用する方法;3)上記炭化水素重合体部分を形成し得る単量体をリビング重合し、上記極性基(又は、該極性基を形成し得る基)を有する単量体を停止剤(末端処理剤)として利用する方法;及び4)上記炭化水素重合体部分を形成し得る単量体を重合して重合体を得、該重合体中の反応性の部分、例えば炭素−炭素二重結合部分に、上記極性基(又は、該極性基を形成し得る基)を有する単量体を反応により導入する方法。上記1)の方法において、共重合を行う際には、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合のいずれの重合方法も採用され得る。
【0150】
相容化剤(J)が炭化水素系重合体である場合に、特に好ましい極性基としては、カルボキシル基及びホウ素含有極性基(ボロン酸基、及び、水の存在下でボロン酸基に転化し得るホウ素含有基)が挙げられる。以下、これらの極性基、及び該極性基を含有する炭化水素系重合体について順次説明する。
【0151】
本明細書においては、「カルボキシル基」とは、カルボキシル基に加えて、カルボン酸無水物基及びカルボン酸塩基をも包含する。これらのうちカルボン酸塩基とは、カルボン酸の全部又は一部が金属塩の形で存在しているものである。上記金属塩の金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属、亜鉛、マンガン、コバルト等の遷移金属等が挙げられる。これらの中でも、亜鉛が相容性の観点から好ましい。
【0152】
カルボキシル基を含有する炭化水素系重合体を調製する方法は特に限定されないが、上記1)の方法により、炭化水素重合体部分を形成し得る単量体と、カルボキシル基又はカルボン酸無水物基を含有する単量体とを共重合するのが好適である。このような方法に用いられ得る単量体のうち、カルボキシル基を有する単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、イタコン酸等が挙げられる。これらの中でも、アクリル酸及びメタクリル酸が好ましい。重合体中のカルボキシル基の含有量は、好ましくは0.5〜20モル%、より好ましくは2〜15モル%、さらに好ましくは3〜12モル%である。
【0153】
また、カルボン酸無水物基を有する単量体としては、無水イタコン酸、無水マレイン酸等が挙げられ、特に無水マレイン酸が好適である。重合体中のカルボン酸無水物基の含有量としては、好ましくは0.0001〜5モル%、より好ましくは0.0005〜3モル%、さらにより好ましくは0.001〜1モル%である。
【0154】
カルボン酸塩基は、例えば、上記方法により調製されたカルボキシル基又はカルボン酸無水物基を有する重合体と低分子金属塩との塩交換反応により、重合体に導入される。このときの低分子金属塩は上記した金属の1種を含有していてもよいし、2種以上を含有していてもよい。
【0155】
低分子金属塩における金属の対イオンとしては、有機酸又は塩化物由来のアニオンが挙げられる。有機酸としては、例えば、酢酸、ステアリン酸、ジメチルジチオカルバミン酸、パルミチン酸、2−エチルへキサン酸、ネオデカン酸、リノール酸、トール酸、オレイン酸、樹脂酸、カプリン酸、ナフテン酸等が挙げられる。特に好ましい低分子金属塩としては、2−エチルへキサン酸コバルト、ネオデカン酸コバルト、ステアリン酸コバルト及び酢酸コバルトが挙げられる。
【0156】
得られるカルボン酸塩基の中和度は、好適には100%未満、より好適には90%以下、さらに好適には70%以下である。また、好適には5%以上、より好適には10%以上、さらに好適には30%以上である。例えば、好適には5〜90%、より好適には10〜70%である。
【0157】
カルボキシル基を含有する炭化水素系重合体の種類は、特に限定されないが、炭化水素重合体部分を形成し得る単量体として、α−オレフィンを用い、上記のカルボキシル基又はカルボン酸無水物基を有する単量体との共重合により得られる共重合体が好ましい。中でも、得られる樹脂組成物の熱安定性の観点から、ランダム共重合体が好ましい。
【0158】
上記のランダム共重合体としては、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、及びこれらの金属塩が挙げられる。これらの中でも、EMAA及びその金属塩が好ましい。
【0159】
また、ポリオレフィンに上記のカルボキシル基又はカルボン酸無水物基を有する単量体をグラフトさせた共重合体も好適に使用される。このときのポリオレフィンとしては、ポリエチレン(例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)など)、ポリプロピレン、共重合ポリプロピレン及びエチレン−酢酸ビニル共重合体が好適なものとして挙げられる。グラフトする単量体としては、無水マレイン酸が好ましい。
【0160】
カルボキシル基を含有する炭化水素系重合体には、次のような単量体を教重合成分として含有していてもよい:酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソブチル、マレイン酸ジエチル等の不飽和カルボン酸エステル;一酸化炭素等。
【0161】
上記のカルボキシル基を含有する重合体のメルトフローレート(MFR)(190℃、2160g荷重下)は、通常0.01g/10分以上であり、好適には0.05g/分以上、より好適には0.1g/10分以上である。また、MFRは通常50g/10分以下であり、好適には30g/10分以下、より好適には10g/10分以下である。
【0162】
相容化剤(J)に含有される極性基がホウ素含有極性基である場合には、上述のように、ボロン酸基、及び、水の存在下でボロン酸基に転化し得るホウ素含有基が好適である。ボロン酸基とは下記式(b)で示されるものである。
【0163】
【化15】
Figure 2004161905
【0164】
上記水の存在下でボロン酸基に転化し得るホウ素含有基とは、水の存在下で加水分解を受けて上記式(b)で示されるボロン酸基に転化し得るホウ素含有基を指す。より具体的には、水単独、水と有機溶媒(トルエン、キシレン、アセトン等)との混合物、又は5%ホウ酸水溶液と有機溶媒との混合物を溶媒とし、室温〜150℃の条件下で10分〜2時間加水分解したときに、ボロン酸基に転化し得る官能基を意味する。このような官能基の代表例としては、下記式(c)で示されるボロン酸エステル基、下記式(d)で示されるボロン酸無水物基、下記式(e)で示されるボロン酸塩基等が挙げられる。
【0165】
【化16】
Figure 2004161905
【0166】
【化17】
Figure 2004161905
【0167】
【化18】
Figure 2004161905
【0168】
{式中、X及びXは水素原子、脂肪族炭化水素基(炭素数1〜20の直鎖状、又は分岐状アルキル基、又はアルケニル基等)、脂環式炭化水素基(シクロアルキル基、シクロアルケニル基等)、芳香族炭化水素基(フェニル基、ビフェニル基等)を表わし、X及びXは同じでもよいし異なっていてもよい。ただし、X及びXがともに水素原子の場合は除かれる。また、XとXは結合していてもよい。またR、R及びRは上記X及びXと同様の水素原子、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基を表わし、R、R及びRは同じでもよいし異なっていてもよい。またMtはアルカリ金属を表わす。さらに、上記のX、X、R、R及びRは他の基、例えばカルボキシル基、ハロゲン原子等を有していてもよい。}
【0169】
上記ホウ素含有極性基を有する炭化水素系重合体は、相容化剤として非常に優れた性能を示す。例えば、このような重合体を含む樹脂組成物でなる層とPES層とが直接接触してなる多層容器を作製した場合、耐衝撃剥離性が顕著に改善される。
【0170】
一般式(c)で示されるボロン酸エステル基の具体例としては、次の基が挙げられる:ボロン酸ジメチルエステル基、ボロン酸ジエチルエステル基、ボロン酸ジプロピルエステル基、ボロン酸ジイソプロピルエステル基、ボロン酸ジブチルエステル基、ボロン酸ジヘキシルエステル基、ボロン酸ジシクロヘキシルエステル基、ボロン酸エチレングリコールエステル基、ボロン酸プロピレングリコールエステル基、ボロン酸1,3−プロパンジオールエステル基、ボロン酸1,3−ブタンジオールエステル基、ボロン酸ネオペンチルグリコールエステル基、ボロン酸カテコールエステル基、ボロン酸グリセリンエステル基、ボロン酸トリメチロールエタンエステル基等。
【0171】
上記一般式(e)で示されるボロン酸塩基としては、ボロン酸のアルカリ金属塩基等が挙げられる。具体的には、ボロン酸ナトリウム塩基、ボロン酸カリウム塩基等が挙げられる。
【0172】
上記ホウ素含有極性基を有する熱可塑性樹脂(F)中の上記ホウ素含有極性基の含有量は特に制限はないが、0.0001〜1meq/g(ミリ当量/g)が好ましく、0.001〜0.1meq/gがより好ましい。
【0173】
上記ホウ素含有極性基を有する炭化水素系重合体の製法は特に限定されない。上記1)〜4)の方法のいずれもが適用され得る。それらのうち、1)、2)、及び4)の方法の代表例について次に記載する。
【0174】
上記1)の方法(炭化水素重合体部分を形成し得る単量体と、極性基、又は、該極性基を形成し得る基を含有する単量体とを共重合する方法)により、ホウ素含有極性基を有する単量体と、上記炭化水素重合体部分(オレフィン系重合体、ビニル系重合体、ジエン系重合体等)を形成し得る単量体とを共重合させることにより、ホウ素含有極性基を有する炭化水素系重合体が得られる。上記ホウ素含有極性基を有する単量体としては、例えば、3−アクリロイルアミノベンゼンボロン酸、3−アクリロイルアミノベンゼンボロン酸エチレングリコールエステル、3−メタクリロイルアミノベンゼンボロン酸、3−メタクリロイルアミノベンゼンボロン酸エチレングリコールエステル、4−ビニルフェニルボロン酸、4−ビニルフェニルボロン酸エチレングリコールエステル等が挙げられる。
【0175】
ホウ素含有極性基を有する炭化水素系重合体はまた、上記2)の方法により、ホウ素含有極性基を有するチオールを連鎖移動剤として、炭化水素重合体部分を形成し得る単量体(オレフィン系重合体、ビニル系重合体、ジエン系重合体等を形成し得る単量体)をラジカル重合することにより得られる。得られた重合体は、末端にホウ素含有極性基を有する。
【0176】
上記ホウ素含有極性基(例えばボロン酸基)を有するチオールは、例えば、窒素雰囲気下で二重結合を有するチオールとジボラン又はボラン錯体とを反応させた後、アルコール類又は水を加えることによって得られる。原料となる二重結合を有するチオールとしては、2−プロペン−1−チオール、2−メチル−2−プロペン−1−チオール、3−ブテン−1−チオール、4−ペンテン−1−チオール等が挙げられる。これらの中でも、2−プロペン−1−チオール及び2−メチル−2−プロペン−1−チオールが好ましい。ボラン錯体としては、ボラン−テトラヒドロフラン錯体、ボラン−ジメチルスルフィド錯体、ボラン−ピリジン錯体、ボラン−トリメチルアミン錯体、ボラン−トリエチルアミン錯体等が好ましい。これらの中でもボラン−テトラヒドロフラン錯体及びボラン−ジメチルスルフィド錯体が好ましい。ジボラン又はボラン錯体の添加量は、二重結合を有するチオールに対して等量程度が好ましい。反応温度としては室温〜200℃の範囲が好ましい。溶媒としてはテトラヒドロフラン(THF)、ジグライム等のエーテル系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、エチルシクロヘキサン、デカリン等の飽和炭化水素系溶媒等が挙げられる。これらの中でもTHFが好ましい。反応後に添加するアルコール類としては、メタノール、エタノール等の低級アルコールが好ましく、メタノールがより好ましい。
【0177】
末端にホウ素含有極性基を有する重合体を得るための重合条件としては、アゾ系又は過酸化物系の開始剤を用い、重合温度は室温〜150℃の範囲が好ましい。上記のホウ素含有極性基を有するチオールの添加量としては単量体1g当たり0.001〜1ミリモル程度が好ましい。該チオールの添加方法としては、特に制限はないが、単量体として酢酸ビニル、スチレン等の連鎖移動しやすいものを使用する場合は、重合時にチオールを添加することが好ましく、メタクリル酸メチル等の連鎖移動しにくいものを使用する場合は、チオールを最初から加えておくことが好ましい。
【0178】
上記4)の炭化水素重合体部分を形成し得る単量体を重合して重合体を得、該重合体中の反応性の部分に、上記極性基(ホウ素含有極性基)を有する単量体を反応により導入する方法としては、次の二つの方法が挙げられる。
【0179】
4−1)の方法:上記ホウ素含有極性基を有する炭化水素系重合体は、窒素雰囲気下で、炭素−炭素二重結合を有する重合体に、ボラン錯体及びホウ酸トリアルキルエステルを反応させることによってボロン酸ジアルキルエステル基を有する熱可塑性樹脂を得た後、必要に応じて水又はアルコール類を反応させることによって得られる。この方法においては、上記炭素−炭素二重結合を有する重合体の炭素−炭素二重結合にホウ素含有極性基が付加反応により導入される。この製法において、原料として末端に二重結合を有する重合体を使用すれば、末端にホウ素含有極性基を有する炭化水素系重合体が得られ、原料として側鎖又は主鎖に二重結合を有する重合体を使用すれば、側鎖にホウ素含有極性基を有する炭化水素系重合体が得られる。
【0180】
通常のオレフィン系重合体は、その末端にわずかながらも二重結合を有するので、上記の製法の原料として使用できる。その他、炭素−炭素二重結合を有する重合体を得る方法としては、通常のオレフィン系重合体を無酸素条件下、熱分解し、末端に二重結合を有するオレフィン系重合体を得る方法、オレフィン系単量体とジエン系重合体とを原料として、これらの共重合体を得る方法、等が挙げられる。
【0181】
上記反応に使用するボラン錯体としては、上記2)の方法で記載したボラン錯体が挙げられる。これらの中でも、ボラン−トリメチルアミン錯体及びボラン−トリエチルアミン錯体がより好ましい。ボラン錯体の仕込み量は、熱可塑性樹脂の炭素−炭素二重結合1モルに対して1/3〜10モルの範囲が好ましい。
【0182】
上記ホウ酸トリアルキルエステルとしては、トリメチルボレート、トリエチルボレート、トリプロピルボレート、トリブチルボレート等のホウ酸低級アルキルエステルが好ましい。ホウ酸トリアルキルエステルの仕込み量は、熱可塑性樹脂の炭素−炭素二重結合1モルに対して1〜100モルの範囲が好ましい。溶媒は特に使用する必要はないが、使用する場合は、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカリン等の飽和炭化水素系溶媒が好ましい。
【0183】
反応温度は通常、室温〜300℃の範囲であり、100〜250℃が好ましく、この範囲の温度で、1分〜10時間、好ましくは5分〜5時間反応を行うのがよい。
【0184】
上記の反応によって熱可塑性樹脂に導入されたボロン酸ジアルキルエステル基は、当該分野で一般に使用される方法により加水分解させてボロン酸基とすることができる。また、通常の方法によりアルコール類とエステル交換反応させて任意のボロン酸エステル基とすることができる。さらに、加熱により脱水縮合させてボロン酸無水物基とすることができる。そしてさらに、公知の方法により金属水酸化物又は金属アルコラートと反応させてボロン酸塩基とすることができる。
【0185】
このようなホウ素含有官能基の変換反応は、通常、トルエン、キシレン、アセトン、酢酸エチル等の有機溶媒を用いて行われる。アルコール類としては、メタノール、エタノール、ブタノール等のモノアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の多価アルコール類等が挙げられる。上記金属水酸化物としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の水酸化物等が挙げられる。さらに、上記金属アルコラートとしては、上記金属と上記アルコールとからなる金属アルコラートが挙げられる。これらはいずれも例示したものに限定されるものではない。これらの使用量は、通常ボロン酸ジアルキルエステル基1モルに対して1〜100モルである。
【0186】
4−2)の方法:ホウ素含有極性基を有する炭化水素系重合体はまた、当該分野で一般に知られているカルボキシル基を含有する重合体と、m−アミノフェニルベンゼンボロン酸、m−アミノフェニルボロン酸エチレングリコールエステル等のアミノ基含有ボロン酸又はアミノ基含有ボロン酸エステルとを、通常の方法によってアミド化反応させることによって得られる。反応に際しては、カルボジイミド等の縮合剤を用いてもよい。
【0187】
上記カルボキシル基を含有する熱可塑性樹脂としては、半芳香族ポリエステル樹脂(PET等)、脂肪族ポリエステル樹脂等であって、末端にカルボキシル基を含有する重合体、ポリオレフィン樹脂、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、ハロゲン化ビニル系樹脂等の重合体に、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基を有する単量体単位が共重合により導入された重合体、前記したオレフィン性二重結合を含有する熱可塑性樹脂に、無水マレイン酸等を付加反応により導入した重合体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0188】
上記のホウ素含有極性基を有する炭化水素系重合体のメルトフローレート(MFR)(230℃、荷重2160g)は好適には0.1〜100g/10分の範囲であり、より好適には0.2〜50g/10分の範囲である。
【0189】
相容化剤(J)として、エチレン含有量の多いEVOHも使用され得る。このとき、エチレン含有量70〜99モル%、ケン化度40%以上のエチレン−ビニルアルコール共重合体が相容性の改良の観点から好ましい。エチレン含有量はより好適には72〜96モル%、さらに好適には72〜94モル%である。エチレン含有量が70モル%に満たない場合、熱可塑性樹脂(F)との親和性が低下することがある。また、エチレン含有率が99モル%を超える場合、変性EVOH(C)又はEVOH(H)との親和性が低下することがある。またケン化度はより好適には45%以上である。ケン化度の上限に特に制限はなく、実質的に100%のケン化度のものも使用できる。ケン化度が40%に満たない場合、変性EVOH(C)又はEVOH(H)との親和性が低下することがある。
【0190】
上記のエチレン含有量の多いEVOHのメルトフローレート(MFR)(210℃、荷重2160g)は好適には0.1g/10分以上、より好適には0.5g/10分以上である。また、好適には100g/10分以下、より好適には50g/10分以下、さらに好適には30g/10分以下である。
【0191】
以上に述べた相容化剤(J)は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0192】
上記相容化剤(J)を含有する本発明の樹脂組成物からなる層とPES層とが直接接触する多層体で構成されるボトル等の多層容器を、例えば共射出延伸ブロー成形により作製すると、樹脂組成物とPESとの密着性が高くなり、高い耐衝撃剥離性が得られる。このような観点からも、相容化剤(J)を使用する意義は大きい。
【0193】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、前記構造単位(I)を0.3〜40モル%含有する変性EVOH(C)及び酸素を吸収することが可能な熱可塑性樹脂(F)からなるものである。このとき、各成分の含有量は、通常、変性EVOH(C)を0.1〜99.9重量%、熱可塑性樹脂(F)を0.1〜99.9重量%含有する。
【0194】
樹脂組成物が、EVOH(H)を含有しない場合には、変性EVOH(C)を70〜99.9重量%、熱可塑性樹脂(F)を0.1〜30重量%含有することが好適である。変性EVOH(C)を主たる成分とすることで、樹脂組成物のガスバリア性が良好になり、酸素吸収性能が維持される期間も長くできる。また、熱可塑性樹脂(F)の含有量が0.1重量%未満である場合には、酸素掃去性能の発揮が十分ではない場合が多く、高度なガスバリア性が得られない場合がある。より好適には変性EVOH(C)を80〜99重量%、熱可塑性樹脂(F)を1〜20重量%含有し、さらに好適には変性EVOH(C)を90〜98重量%、熱可塑性樹脂(F)を2〜10重量%含有する。
【0195】
樹脂組成物が、さらにEVOH(H)を含有する場合には、変性EVOH(C)とEVOH(H)をその合計量で70〜99.9重量%、熱可塑性樹脂(F)を0.1〜30重量%含有することが好適である。EVOH(C)あるいは変性EVOH(H)を主たる成分とすることで、樹脂組成物のガスバリア性が良好になり、酸素吸収性能が維持される期間も長くできる。より好適には変性EVOH(C)とEVOH(H)をその合計量で80〜99重量%、熱可塑性樹脂(F)を1〜20重量%含有し、さらに好適には変性EVOH(C)とEVOH(H)をその合計量で90〜98重量%、熱可塑性樹脂(F)を2〜10重量%含有する。
【0196】
このとき、変性EVOH(C)とEVOH(H)の重量比(C/H)は、用途や目的に対応して、通常1/99〜99/1の範囲で設定される。重量比(C/H)は、好適には1/99〜50/50である。すなわち、未変性のEVOH(H)が主たる成分であって、変性EVOH(C)が従たる成分であることが好ましい。こうすることによって、EVOH(H)が本来有するガスバリア性を大きく損なうことなく、樹脂組成物に耐衝撃剥離性、延伸性、柔軟性を付与することができる。また、変性EVOH(C)は未変性のEVOH(H)に比べて製造コストが高いことから、経済的にも有利である。重量比(C/H)は、より好適には5/95以上であり、さらに好適には10/90以上である。一方、重量比(C/H)は、より好適には40/60以下であり、さらに好適には30/70以下である。
【0197】
また、樹脂組成物がさらに相溶化剤(J)を含有する場合の、相溶化剤(J)の含有量は、通常0.1〜30重量%である。この範囲の含有量とすることで、耐層間剥離性や透明性の改善効果を得ながら、ガスバリア性の低下を抑えることが可能である。相溶化剤(J)の含有量は、好適には1重量%以上であり、より好適には2重量%以上である。一方、相溶化剤(J)の含有量は、好適には20重量%以下であり、より好適には10重量%以下である。
【0198】
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない程度に、上記各成分以外の熱可塑性樹脂を含有していてもよい。このような熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、例えば、次の化合物が挙げられる:ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン又はプロピレンの共重合体(エチレン又はプロピレンと以下の単量体の少なくとも1種との共重合体:1−ブテン、イソブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン;イタコン酸、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸、その塩、その部分又は完全エステル、そのニトリル、そのアミド、その無水物;ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルブチレート、ビニルオクタノエート、ビニルドデカノエート、ビニルステアレート、ビニルアラキドネート等のカルボン酸ビニルエステル類;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン系化合物;不飽和スルホン酸又はその塩;アルキルチオール類;ビニルピロリドン類等)、ポリ4−メチル−1−ペンテン、ポリ1−ブテン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアクリレート等。熱可塑性樹脂は、製造する成形物の構造及び用途に応じて選択される。
【0199】
本発明の樹脂組成物に含有される熱可塑性樹脂を選択するときには、該熱可塑性樹脂と、変性EVOH(C)、EVOH(H)あるいは熱可塑性樹脂(F)との混和性を考慮することが好ましい。これらの樹脂の混和性により、得られる製品のガスバリア性、清浄性、酸素掃去性、機械的特性、製品自体のテキスチャー等が影響を受けることがある。
【0200】
本発明の樹脂組成物には、本発明の作用効果が阻害されない範囲内で各種の添加剤を含有させてもよい。このような添加剤の例としては、酸化防止剤、可塑剤、熱安定剤(溶融安定剤)、光開始剤、脱臭剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、フィラー、充填剤、顔料、染料、加工助剤、難燃剤、防曇剤、他の高分子化合物等が挙げられる。
【0201】
上記添加剤のうち、熱安定剤(溶融安定剤)としては、ハイドロタルサイト化合物、高級脂肪族カルボン酸の金属塩の1種又は2種以上が好適に用いられる。これらの化合物は、樹脂組成物の製造時において、ゲルやフィッシュアイの発生を防止することができ、長時間の運転安定性をさらに改善することができる。これらの化合物は、樹脂組成物全体の0.01〜1重量%の割合で含有されるのが好適である。
【0202】
高級脂肪族カルボン酸の金属塩とは、炭素数8〜22の高級脂肪酸の金属塩である。炭素数8〜22の高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸等が挙げられる。塩を構成する金属としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、アルミニウム等が挙げられる。このうちマグネシウム、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属が好適である。このような高級脂肪族カルボン酸の金属塩の中でも、ステアリン酸カルシウム及びステアリン酸マグネシウムが好ましい。
【0203】
本発明の樹脂組成物の好適なメルトフローレート(MFR)(210℃、2160g荷重下、JIS K7210に基づく)は0.1〜100g/10分、より好適には0.5〜50g/10分、さらに好適には1〜30g/10分である。本発明の樹脂組成物のメルトフローレートが上記の範囲から外れる場合、溶融成形時の加工性が悪くなる場合が多い。
【0204】
本発明の樹脂組成物においては、熱可塑性樹脂(F)からなる粒子が、変性EVOH(C)及び必要に応じてEVOH(H)、遷移金属塩(C)、相容化剤(J)、その他の熱可塑性樹脂、各種添加剤などを含むマトリックス中に分散していることが好ましい。このような樹脂組成物からなる成形物は、透明性、ガスバリア性及び酸素掃去機能が良好である。このとき、熱可塑性樹脂(F)からなる粒子の平均粒径は10μm以下であることが好適である。平均粒径が10μmを超える場合には、熱可塑性樹脂(F)と変性EVOH(C)などからなるマトリックスとの界面の面積が小さくなり、酸素ガスバリア性及び酸素掃去機能が低下する場合がある。熱可塑性樹脂(F)の粒子の平均粒径は5μm以下がより好ましく、2μm以下がさらに好ましい。
【0205】
[樹脂組成物の製造方法]
本発明の樹脂組成物の各成分は混合され、所望の製品に成形される。樹脂組成物の各成分を混合する方法は特に限定されない。各成分を混合する際の順序も特に限定されない。例えば、変性EVOH(C)、熱可塑性樹脂(F)及び遷移金属塩(G)を混合する場合、これらを同時に混合してもよいし、熱可塑性樹脂(F)及び遷移金属塩(G)を混合した後、変性EVOH(C)と混合してもよい。また、変性EVOH(C)及び遷移金属塩(G)を混合した後、熱可塑性樹脂(F)と混合してもよいし、変性EVOH(C)及び熱可塑性樹脂(F)を混合した後、遷移金属塩(G)と混合してもよい。さらに、変性EVOH(C)及び熱可塑性樹脂(F)を混合して得た混合物と、変性EVOH(C)及び遷移金属塩(G)を混合して得た混合物とを混合してもよい。変性EVOH(C)及びEVOH(H)の両方を使用する場合、これらをあらかじめ混合しておいてもよいし、これらを他の成分と配合する際に同時に混合してもよい。相溶化剤(J)を使用する場合、これをあらかじめ他の一部の成分と混合しておいてもよいし、全体を配合する際に混合してもよい。例えば熱可塑性樹脂(F)と相溶化剤(J)とを予め溶融混合してから、他の成分と溶融混合する方法は、熱可塑性樹脂(F)の分散性が良好になって好適である。
【0206】
混合の具体的な方法としては、工程の簡便さ及びコストの観点から溶融混練法が好ましい。このとき、高い混練度を達成することのできる装置を使用し、各成分を細かく均一に分散させることが、酸素吸収性能、透明性を良好にすると共に、ゲル、ブツの発生や混入を防止できる点で好ましい。
【0207】
高い混練度を達成することのできる装置としては、連続式インテンシブミキサー、ニーディングタイプ二軸押出機(同方向又は異方向)、ミキシングロール、コニーダー等の連続型混練機;高速ミキサー、バンバリーミキサー、インテンシブミキサー、加圧ニーダー等のバッチ型混練機;(株)KCK製のKCK混練押出機等の石臼のような摩砕機構を有する回転円板を使用した装置;一軸押出機に混練部(ダルメージ、CTM等)を設けたもの;リボンブレンダー、ブラベンダーミキサー等の簡易型の混練機等を挙げることができる。これらの中でも、連続型混練機が好ましい。市販されている連続式インテンシブミキサーとしては、Farrel社製FCM、(株)日本製鋼所製CIM、(株)神戸製鋼所製KCM、LCM、ACM等が挙げられる。これらの混練機の下に一軸押出機を設置し、混練と押出ペレット化を同時に実施する装置を採用することが好ましい。また、ニーディングディスク又は混練用ロータを有する二軸混練押出機としては、例えば(株)日本製鋼所製TEX、Werner&Pfleiderer社製ZSK、東芝機械(株)製TEM、池貝鉄工(株)製PCM等が挙げられる。
【0208】
これらの連続型混練機においては、ローター、ディスクの形状が重要な役割を果たす。特にミキシングチャンバとローターチップ又はディスクチップとの隙間(チップクリアランス)は重要で、狭すぎても広すぎても分散性の良好な混合物は得られない。チップクリアランスとしては1〜5mmが最適である。
【0209】
混練機のローターの回転数は、通常100〜1200rpmであり、好ましくは150〜1000rpmであり、より好ましくは200〜800rpmである。また、混練機チャンバー内径(D)は通常30mm以上であり、好ましくは50〜400mmである。さらに、混練機のチャンバー長さ(L)と内径(D)との比L/Dは、4〜30が好適である。混練機は1機でもよいし、また2機以上を連結して用いることもできる。
【0210】
混練温度は、通常50〜300℃の範囲である。熱可塑性樹脂(F)の酸化防止のためには、ホッパー口を窒素シールし、低温で押出すことが好ましい。混練時間は、長い方が良い結果を得られるが、熱可塑性樹脂(F)の酸化防止及び生産効率の観点から、通常10〜600秒であり、好ましくは15〜200秒であり、より好ましくは15〜150秒である。
【0211】
[成形方法及び用途]
本発明の樹脂組成物は、各種成形方法を適宜採用することによって、種々の成形物、例えば、フィルム、シート、容器その他の包装材料等に成形することができる。このとき、本発明の樹脂組成物を一旦ペレットとしてから成形に供してもよいし、樹脂組成物の各成分をドライブレンドして、直接成形に供してもよい。
【0212】
成形方法及び成形物としては、例えば、溶融押出成形によりフィルム、シート、パイプ等に、射出成形により容器形状に、また中空成形によりボトル状等の中空容器に成形することができる。中空成形としては、押出成形によりパリソンを成形し、これをブローして成形を行う押出中空成形と、射出成形によりプリフォームを成形し、これをブローして成形を行う射出中空成形が好ましい。
【0213】
本発明においては、上記成形により得られる成形物は単層であってもよいが、機械的特性、水蒸気バリア性、さらなる酸素バリア性などの特性を付与するという観点から、他の層と積層して多層構造体として用いることが好ましい。
【0214】
多層構造体の層構成としては、本発明の樹脂組成物以外の樹脂からなる層をx層、本発明の樹脂組成物層をy層、接着性樹脂層をz層とすると、x/y、x/y/x、x/z/y、x/z/y/z/x、x/y/x/y/x、x/z/y/z/x/z/y/z/x等が例示されるが、これらに限定されるものではない。複数のx層を設ける場合は、その種類は同じであっても異なっていてもよい。また、成形時に発生するトリム等のスクラップからなる回収樹脂を用いた層を別途設けてもよいし、回収樹脂を他の樹脂からなる層にブレンドしてもよい。多層構造体の各層の厚み構成は、特に限定されるものではないが、成形性及びコスト等の観点から、全層厚みに対するy層の厚み比は2〜20%が好適である。
【0215】
上記のx層に使用される樹脂としては、加工性等の観点から熱可塑性樹脂が好ましい。かかる熱可塑性樹脂としては、次の樹脂が挙げられるが、特にこれらに限定されない:ポリエチレン;ポリプロピレン;エチレン−プロピレン共重合体;エチレン又はプロピレン共重合体(エチレン又はプロピレンと次の単量体の少なくとも1種との共重合体:1−ブテン、イソブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン;イタコン酸、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸、その塩、その部分又は完全エステル、そのニトリル、そのアミド、その無水物;ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルブチレート、ビニルオクタノエート、ビニルドデカノエート、ビニルステアレート、ビニルアラキドネート等のカルボン酸ビニルエステル類;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン系化合物;不飽和スルホン酸又はその塩;アルキルチオール類;ビニルピロリドン類等)、ポリ4−メチル−1−ペンテン、ポリ1−ブテン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル(以下、PESと略称することがある。);ポリカプロアミド、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリメタキシリレンアジパミド等のポリアミド;ポリ塩化ビニリデン;ポリ塩化ビニル;ポリスチレン;ポリアクリロニトリル;ポリカーボネート;ポリアクリレート;ポリケトン等が挙げられる。かかる熱可塑性樹脂層は無延伸のものであってもよいし、一軸もしくは二軸に延伸又は圧延されているものであっても構わない。
【0216】
これらの熱可塑性樹脂のうち、ポリオレフィンは耐湿性、機械的特性、経済性、ヒートシール性等の点で、また、ポリエステルは機械的特性、耐熱性等の点で好ましい。
【0217】
一方、z層に使用される接着性樹脂としては、各層間を接着できるものであれば特に限定されず、ポリウレタン系又はポリエステル系の一液型又は二液型硬化性接着剤、カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂などが好適に用いられる。カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂は、不飽和カルボン酸又はその無水物(無水マレイン酸など)を共重合成分として含むオレフィン系重合体又は共重合体;あるいは不飽和カルボン酸又はその無水物をオレフィン系重合体又は共重合体にグラフトさせて得られるグラフト共重合体である。
【0218】
これらの中でも、カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂がより好ましい。特に、x層がポリオレフィン樹脂である場合、y層との接着性が良好となる。かかるカルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂の例としては、ポリエチレン{低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)}、ポリプロピレン、共重合ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(メチルエステル又はエチルエステル)共重合体等をカルボン酸変性したものが挙げられる。
【0219】
多層構造体を得る方法としては、押出ラミネート法、ドライラミネート法、共射出成形法、共押出成形法等が例示されるが、特に限定されるものではない。共押出成形法としては、共押出ラミネート法、共押出シート成形法、共押出インフレーション成形法、共押出ブロー成形法等を挙げることができる。
【0220】
このようにして得られた多層構造体のシート、フィルム、パリソン等を、含有される樹脂の融点以下の温度で再加熱し、絞り成形等の熱成形法、ロール延伸法、パンタグラフ式延伸法、インフレーション延伸法、ブロー成形法等により一軸又は二軸延伸して、延伸された成形物を得ることもできる。
【0221】
本発明の樹脂組成物は、二次加工性、例えば延伸性や熱成形性が良好なので、このように二次加工される成形体に特に好適に使用される。例えば、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリアミドあるいはポリエステルからなる層及び本発明の樹脂組成物からなる層を含む熱成形容器は、特に好適な実施態様の一つである。また、ポリオレフィン、ポリアミドあるいはポリエステルからなる層及び本発明の樹脂組成物からなる層を含む延伸フィルムも好適な実施態様である。さらに、ポリオレフィンあるいはポリエステルからなる層及び本発明の樹脂組成物からなる層を含む延伸ブローボトルもまた好適な実施態様である
【0222】
本発明の樹脂組成物は透明性が良好であるから、積層する他の樹脂からなる層も透明性が良好であることが、内容物を視認しやすい包装容器を得られる点から好ましい。かかる観点から、本発明の樹脂組成物層を有する多層構造体のヘイズ値は、10%以下であることが好ましく、5%以下がより好ましく、3%以下がさらに好ましい。
【0223】
上記の多層構造体を用いた成形物は各種用途に用いられる。とりわけ、本発明の多層構造体の効果は、多層容器としたときに大きく発揮される。さらに、本発明の樹脂組成物層の両側又は高湿度側に、水蒸気バリア性の高い層を配置した多層構造体は、酸素掃去機能の持続期間が特に延長され、結果として極めて高度なガスバリア性がより長い時間継続される観点から好適である。一方、樹脂組成物層を最内層に有する多層容器は、容器内の酸素掃去機能が速やかに発揮されるという観点から好適である。
【0224】
さらに、本発明の樹脂組成物は透明性が良好であるから、内容物を視認しやすい包装容器としての用途に最適である。かかる包装容器の内でも透明性に対する要求性能が厳しく、本発明の樹脂組成物を使用することの有用性が大きい態様として、以下の2種の態様が挙げられる。すなわち、一つは本発明の樹脂組成物からなる層を含み、全層厚みが300μm以下である多層フィルムからなる容器であり、他の一つは本発明の樹脂組成物からなる層及び熱可塑性ポリエステル(PES)層をそれぞれ少なくとも1層含む多層容器である。以下、それらの実施態様について順次説明する。
【0225】
本発明の樹脂組成物からなる層を含み、全層厚みが300μm以下である多層フィルムからなる容器は、全体層厚みが比較的薄い多層構造体からなるフレキシブルな容器であり、通常パウチ等の形態に加工されている。この容器はガスバリア性に優れ、さらには持続的な酸素掃去機能を有し、かつ製造が簡便であるので、酸素に対し感受性が高く劣化し易い製品の包装に極めて有用である。
【0226】
一般に良好な透明性が要求される容器としては、多層構造体を構成する各樹脂層の厚みが薄く、全体としての厚みの薄い容器が製造される。例えば、ポリオレフィン等の結晶性の樹脂を用いる場合に、厚みが大きい場合には、結晶による散乱に由来して透明性が悪化する場合が多いのに対し、厚みの薄い容器であれば、良好な透明性が得られる。また一般に、無延伸で結晶化している樹脂は透明性が不良であっても、延伸配向して結晶化した樹脂は透明性が良好となる。かかる一軸あるいは二軸に延伸されたフィルムは通常厚みが薄く、この点からも厚みの薄い多層構造体が良好な透明性を与える場合が多い。
【0227】
本発明の樹脂組成物は透明性が良好であり、従って、透明性が要求されることの多い、厚みの薄い多層フィルムからなる容器に好適に使用することが可能である。このような薄いフィルムにおいては経時的に透明性が悪化してもその程度は小さい。このような多層フィルムの厚みは、特に限定されないが、透明性及びフレキシブル性を維持するという観点から好適には300μm以下であり、より好適には250μm以下であり、さらに好適には200μm以下である。一方、容器としての機械的特性を考慮すると、全層厚みは好適には10μm以上であり、より好適には20μm以上であり、さらに好適には30μm以上である。
【0228】
上記の多層容器を多層フィルムから製造する場合、該多層フィルムの製造方法に特に制限はなく、例えば、本発明の樹脂組成物層と他の熱可塑性樹脂層とをドライラミネート、共押出ラミネート等の方法で積層することによって多層フィルムを得ることができる。
【0229】
ドライラミネートする場合には、無延伸フィルム、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルム、圧延フィルム等が使用可能である。これらの中でも、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリカプロアミドフィルムが、機械的強度の観点から好ましく、防湿性も考慮すると、二軸延伸ポリプロピレンフィルムが特に好ましい。
【0230】
共押出ラミネートの場合や、無延伸フィルム又は一軸延伸フィルムを使用する場合、積層した後に多層フィルムを再加熱し、絞り成形等の熱成形法、ロール延伸法、パンタグラフ式延伸法、インフレーション延伸法等により一軸又は二軸延伸することによって、延伸された多層フィルムを得ることもできる。本発明の樹脂組成物は延伸性に優れるので、このような方法によって延伸フィルムを得る場合にも適している。
【0231】
得られる多層容器を密封するために、多層フィルムの製造段階において、少なくとも一方の最外層表面にヒートシール可能な樹脂からなる層を設けることも好ましい。かかる樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを挙げることができる。
【0232】
こうして得られた多層フィルムは、例えば袋状に加工され、内容物を充填するための包装容器とすることができる。フレキシブルで簡便であり、かつ透明性及び酸素掃去性に優れるので、酸素の存在により劣化しやすい内容物、特に食品等の包装に極めて有用である。本発明の樹脂組成物は、柔軟性や対屈曲性に優れるので、その点からもこのようなフレキシブルな包装体に使用することが好適である。
【0233】
本発明の樹脂組成物からなる層及びPES層をそれぞれ少なくとも1層含む多層容器は、透明性が良好でかつガスバリア性、酸素掃去機能に優れる。そのため、袋状容器、カップ状容器、中空成形容器等の種々の形態で使用される。これらの中でも、中空成形容器、特にボトルが重要である。
【0234】
PESからなるボトルは、現在広く飲料容器として使用されている。かかる用途においては内容物の劣化を防ぐ必要があるとともに、内容物である飲料を消費者が充分に視認できることが要求されている。しかも、例えばビールのような酸素による風味の劣化を極めて受けやすい内容物を充填する場合には、極めて高度なガスバリア性と酸素掃去性能を有することが望まれる。
【0235】
本発明の樹脂組成物からなる層及びPES層をそれぞれ少なくとも1層含む多層容器は、透明性を維持しながら、内容物の品質の保持性能が極めて優れているので、かかる用途に最適である。多層容器の層構成としては、樹脂組成物層とPES層との間に接着性樹脂層を配置してもよいが、PES層が樹脂組成物層の両面に直接接触するように配置されてなる多層容器は、透明性に極めて優れている上、樹脂組成物層とPES層との間の耐衝撃剥離性に優れるという本発明の効果を充分に奏し得る観点から、特に好ましい。しかも本発明の樹脂組成物は延伸性に優れているので、延伸ブロー操作時に均一に延伸されやすく、延伸ムラによるストリークなどが発生することが少ないので、外観の良好な延伸ブロー成形容器を提供することができる。
【0236】
上記本発明の樹脂組成物からなる層及びPES層からなる本発明の多層容器に用いられるPESとしては、芳香族ジカルボン酸又はそれらのアルキルエステルと、ジオールとを主成分とする縮合重合体が用いられる。特に本発明の目的を達成するには、エチレンテレフタレート成分を主とするPESが好ましい。具体的には、テレフタル酸単位とエチレングリコール単位との合計割合(モル%)が、PESを構成する全構造単位の合計モル数に対して、70モル%以上であることが好ましく、90モル%以上がより好ましい。テレフタル酸単位とエチレングリコール単位の合計割合が70モル%未満であると、得られるPESが非晶性となり、機械的強度が不足する上に、延伸して容器とした後に内容物を加熱充填(ホットフィル)すると、熱収縮が大きく使用に耐えない虞がある。また、樹脂内に含有されるオリゴマーを低減するために固相重合を行うと、樹脂の軟化による膠着が生じやすく、生産が困難になる虞がある。
【0237】
上記PESは、必要に応じてテレフタル酸単位及びエチレングリコール単位以外の二官能化合物単位を、上記の問題が発生しない範囲において含有することができる。その割合(モル%)としては、PESを構成する全構造単位の合計モル数に対して、30モル%以下であることが好ましく、20モル%以下がより好ましく、10モル%以下がさらに好ましい。このような二官能化合物単位としては、ジカルボン酸単位、ジオール単位、ヒドロキシカルボン酸単位等が挙げられ、脂肪族、脂環式、芳香族のいずれでもよい。具体的には、ネオペンチルグリコール単位、シクロヘキサンジメタノール単位、シクロヘキサンジカルボン酸単位、イソフタル酸単位、ナフタレンジカルボン酸単位等が挙げられる。
【0238】
これらの中でも、イソフタル酸単位は、得られたPESを用いた場合、良好な成形物を得ることのできる製造条件が広く、成形性に優れるため、不良品率が低いという利点を有する。結晶化速度の抑制により、成形品の白化を防止できる点からも好ましい。また、1,4−シクロヘキサンジメタノール単位又は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸単位は、得られる成形物の落下時の強度が一層優れるという点から好ましい。さらに、ナフタレンジカルボン酸単位は、得られるPESのガラス転移温度が上昇し、耐熱性が向上する上に、紫外線を吸収する能力が付与されるので好ましく、内容物が紫外線による劣化を生じやすい場合に特に有用である。例えば、ビールのように内容物が酸化によっても、紫外線によっても劣化しやすい場合に特に有用である。
【0239】
PESの製造に際して重縮合触媒を使用する場合は、PESの製造に通常用いられている触媒を使用することができる。例えば、三酸化アンチモン等のアンチモン化合物;二酸化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラ−n−ブトキシド等のゲルマニウム化合物;テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン等のチタン化合物;ジ−n−ブチル錫ジラウレート、ジ−n−ブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート等の錫化合物等を使用することができる。これらの触媒は単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。重縮合触媒の使用量としては、ジカルボン酸成分の重量に基いて0.002〜0.8重量%の範囲が好ましい。
【0240】
これらの中でも、触媒コストの面からはアンチモン化合物が好ましく、三酸化アンチモンが特に好ましい。一方、得られるPESの色調が良好となるという面からはゲルマニウム化合物が好ましく、二酸化ゲルマニウムが特に好ましい。また、成形性の観点からは、ゲルマニウム化合物がアンチモン化合物よりも好ましい。アンチモン化合物を触媒とした重合反応により得られるPESは、ゲルマニウム化合物を触媒として重合したPESよりも結晶化速度が速く、射出成形時又はブロー成形時に、加熱による結晶化が進行しやすく、結果として得られたボトルに白化が生じて透明性が損なわれる場合がある。また、延伸配向性が低下して、賦形性が悪化する場合もある。このように、良好な成形物を得ることのできる製造条件の範囲が狭くなり、不良品率が上昇しやすくなる傾向にある。
【0241】
特に、本発明に使用されるPESとして、副生するジエチレングリコール以外の共重合成分を含まないポリエチレンテレフタレートを使用する場合には、該PESを製造する際に、結晶化速度を抑えるためにゲルマニウム化合物を触媒として用いることが好ましい。
【0242】
上記樹脂組成物からなる層及びPES層をそれぞれ少なくとも1層含む、本発明の多層容器の製造方法は特に限定されるものではないが、共射出ブロー成形を用いることが生産性等の観点から好適である。共射出ブロー成形においては、共射出成形によって得られた容器前駆体(パリソン)を延伸ブロー成形することにより容器が製造される。
【0243】
共射出成形においては、通常、多層構造体の各層を構成すべき樹脂を2台又はそれ以上の射出シリンダーより同心円状のノズル内に導き、同時に又はタイミングをずらして交互に、単一の金型内に射出し、1回の型締め操作を行うことにより成形が行われる。例えば(1)先に内外層用のPES層を射出し、次いで、中間層となる樹脂組成物を射出して、PES/樹脂組成物/PESの3層構成の成形容器を得る方法、(2)先に内外層用のPES層を射出し、次いで樹脂組成物を射出して、それと同時に又はその後にPES層を再度射出し、PES/樹脂組成物/PES/樹脂組成物/PESの5層構成の成形容器を得る方法等によりパリソンが製造されるが、これらの製造方法に限定されるものではない。
【0244】
射出成形の条件としては、PESは250〜330℃の温度範囲で射出することが好ましく、270〜320℃がより好ましく、280〜310℃がさらに好ましい。PESの射出温度が250℃未満である場合、PESが十分に溶融せず、成形物に未溶融物(フィッシュアイ)が混入し外観不良を生じ、同時に成形物の機械的強度の低下の原因となる虞がある。また、極端な場合はスクリュートルクが上昇し、成形機の故障を引き起こす虞がある。一方、PESの射出温度が330℃を超える場合、PESの分解が著しくなり、分子量低下による成形物の機械的強度の低下を引き起こす虞がある。また、分解時に生じるアセトアルデヒド等のガスにより成形物に充填する物質の性質を損なうだけでなく、分解時に生じるオリゴマーにより金型の汚れが激しくなり成形物の外観を損なう虞がある。
【0245】
樹脂組成物は170〜250℃の温度範囲で射出することが好ましく、180〜240℃がより好ましく、190〜230℃がさらに好ましい。樹脂組成物の射出温度が170℃未満である場合、樹脂組成物が十分に溶融せず、成形物に未溶融物(フィッシュアイ)が混入し外観不良を生じる虞がある。また、極端な場合はスクリュートルクが上昇し、成形機の故障を引き起こす虞がある。一方、樹脂組成物の射出温度が250℃を超える場合、熱可塑性樹脂(F)の酸化が進行し、樹脂組成物のガスバリア性及び酸素掃去機能が低下する虞がある。同時に、着色やゲル化物による成形物の外観不良が生じ、あるいは分解ガスやゲル化物により流動性が不均一となりあるいは阻害されて、樹脂組成物層の欠落部分を生じることもある。極端な場合には、ゲル化物の発生により、射出成形が不可能となる。溶融時の酸化の進行を抑制するためには、原料供給ホッパーを窒素でシールすることも好ましい。
【0246】
なお樹脂組成物は、前もって変性EVOH(C)と熱可塑性樹脂(F)及び必要に応じて他の成分を溶融配合したペレットの形で成形機に供給してもよいし、ドライブレンドした各成分を成形機に供給してもよい。
【0247】
PES及び樹脂組成物が流入するホットランナー部分の温度は220〜300℃の範囲が好ましく、240〜280℃がより好ましく、250〜270℃がさらに好ましい。ホットランナー部分の温度が220℃未満である場合、PESが結晶化してホットランナー部分で固化するため、成形が困難となる場合がある。一方、ホットランナー部分の温度が300℃を超える場合、熱可塑性樹脂(F)の酸化が進行し、樹脂組成物のガスバリア性及び酸素掃去機能が低下する虞がある。同時に、着色やゲル化物による成形物の外観不良が生じ、あるいは分解ガスやゲル化物により流動性が不均一となりあるいは阻害されて、樹脂組成物層の欠落部分を生じることもある。極端な場合には、ゲル化物の発生により、射出成形が不可能となる。
【0248】
金型温度としては、0〜70℃の範囲が好ましく、5〜50℃がより好ましく、10〜30℃がさらに好ましい。これにより、パリソンのPES及び樹脂組成物の結晶化が抑制され、均一な延伸性が確保されて、得られる多層容器の耐層間剥離性及び透明性が向上し、形状の安定した成形物を得ることができる。金型温度が0℃未満である場合、金型の結露によりパリソンの外観が損なわれ、良好な成形物が得られない虞がある。また、金型温度が70℃を超える場合、パリソンのPES及び樹脂組成物の結晶化が抑制されず、延伸性が不均一となり、得られる成形物の耐層間剥離性及び透明性が低下する上、意図した形に賦形された成形物を得ることが困難となる。
【0249】
こうして得られたパリソンにおいては、総厚みが2〜5mm、樹脂組成物層の厚みが合計で10〜500μmであることが好ましい。
【0250】
上記のパリソンは、高温の状態で直接、又はブロックヒーター、赤外線ヒーター等の発熱体を用いて再加熱された後、延伸ブロー工程に送られる。加熱されたパリソンを、延伸ブロー工程において縦方向に1〜5倍に延伸した後、圧縮空気等で1〜4倍に延伸ブロー成形することにより、本発明の多層射出ブロー成形容器を製造することができる。パリソンの温度は、85〜140℃が好ましく、90〜130℃がより好ましく、95〜120℃がさらに好ましい。パリソンの温度が140℃を超えると、PESが結晶化しやすくなり、得られる容器が白化して外観が損なわれたり、容器の層間剥離が増加する場合がある。一方、パリソンの温度が85℃未満であると、PESにクレーズが生じ、パール調になって透明性が損なわれる場合がある。
【0251】
こうして得られる多層容器の胴部の総厚みは、一般的には100〜2000μm、好適には150〜1000μmであり、用途に応じて使い分けられる。このときの樹脂組成物層の合計厚みは、2〜200μmの範囲であることが好ましく、5〜100μmがより好ましい。
【0252】
このようにして本発明の樹脂組成物からなる層及び熱可塑性ポリエステル層からなる多層容器が得られる。この容器は透明性が良好であり、耐衝撃剥離性に優れ、外観も美麗でありかつガスバリア性及び酸素掃去機能に極めて優れる。従って、酸素の存在により劣化しやすい内容物、例えば、食品、医薬品等の容器として有用である。特にビール等の飲料の容器として極めて有用である。
【0253】
【実施例】
以下、実施例にて本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例によって本発明は何ら限定されるものではない。EVOH(A)、変性EVOH(C)、EVOH(H)、及び樹脂組成物に関する分析は以下の方法に従って行った。
【0254】
(1)EVOH(A)及びEVOH(H)のエチレン含有量及びケン化度
重水素化ジメチルスルホキシドを溶媒としたH−NMR(核磁気共鳴)測定(日本電子社製「JNM−GX−500型」を使用)により得られたスペクトルから算出した。
【0255】
(2)EVOH(A)の固有粘度
試料とする乾燥EVOH(A)からなる乾燥ペレット0.20gを精秤し、これを含水フェノール(水/フェノール=15/85:重量比)40mlに60℃にて3〜4時間加熱溶解させ、温度30℃にて、オストワルド型粘度計にて測定し(t0=90秒)、下式により固有粘度[η]を求めた。
Figure 2004161905
【0256】
(3)EVOH(A)及びEVOH(H)中の酢酸の含有量の定量
試料とするEVOHの乾燥ペレット20gをイオン交換水100mlに投入し、95℃で6時間加熱抽出した。抽出液をフェノールフタレインを指示薬として、1/50規定のNaOHで中和滴定し、酢酸の含有量を定量した。
【0257】
(4)EVOH(A)、変性EVOH(C)及びEVOH(H)中のNaイオン、Kイオン、Mgイオン及びCaイオンの定量
試料とするEVOH又は変性EVOH(C)の乾燥ペレット10gを0.01規定の塩酸水溶液50mlに投入し、95℃で6時間撹拌した。撹拌後の水溶液をイオンクロマトグラフィーを用いて定量分析し、Na、K、Mg、Caイオンの量を定量した。カラムは、(株)横河電機製のICS−C25を使用し、溶離液は5.0mMの酒石酸と1.0mMの2,6−ピリジンジカルボン酸を含む水溶液とした。なお、定量に際してはそれぞれ塩化ナトリウム水溶液、塩化カリウム水溶液、塩化マグネシウム水溶液及び塩化カルシウム水溶液で作成した検量線を用いた。
【0258】
(5)EVOH(A)、変性EVOH(C)及びEVOH(H)中のリン酸イオン及びトリフルオロメタンスルホン酸イオンの定量
試料とするEVOH又は変性EVOH(C)の乾燥ペレット10gを0.01規定の塩酸水溶液50mlに投入し、95℃で6時間撹拌した。撹拌後の水溶液をイオンクロマトグラフィーを用いて定量分析し、リン酸イオン及びトリフルオロメタンスルホン酸イオンの量を定量した。カラムは、(株)横河電機製のICS−A23を使用し、溶離液は2.5mMの炭酸ナトリウムと1.0mMの炭酸水素ナトリウムを含む水溶液とした。なお、定量に際してはリン酸二水素ナトリウム水溶液及びトリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム水溶液で作成した検量線を用いた。
【0259】
(6)変性EVOH(C)中の亜鉛イオン及びイットリウムイオンの定量
試料とする変性EVOH(C)乾燥ペレット10gを0.01規定の塩酸水溶液50mlに投入し、95℃で6時間撹拌した。撹拌後の水溶液をICP発光分析により分析した。装置はパーキンエルマー社のOptima4300DVを用いた。測定波長は亜鉛イオンの測定においては206.20nmを、イットリウムイオンの測定においては360.07nmをそれぞれ用いた。なお、定量に際しては市販の亜鉛標準液及びイットリウム標準液をそれぞれ使用して作成した検量線を用いた。
【0260】
(7)EVOH(A)、変性EVOH(C)及びEVOH(F)の融点
EVOH及び変性EVOH(C)の融点は、セイコー電子工業(株)製示差走査熱量計(DSC)RDC220/SSC5200H型を用い、JIS K7121に基づいて測定した。但し、温度の校正にはインジウムと鉛を用いた。
【0261】
(8)EVOH(A)、変性EVOH(C)、EVOH(F)、及び樹脂組成物のメルトフローレート(MFR):
メルトインデクサーL244(宝工業株式会社製)を用いて測定した。具体的には、測定する樹脂{EVOH(A)、変性EVOH(C)、EVOH(F)、あるいは樹脂組成物}のチップを、内径9.55mm、長さ162mmのシリンダーに充填し、190℃で溶融した後(実施例10は210℃で溶融)、溶融した樹脂に対して、重さ2160g、直径9.48mmのプランジャーによって均等に荷重をかけ、シリンダーの中央に設けた径2.1mmのオリフィスより押出された樹脂の流出速度(g/10分)を測定し、これをメルトフローレート(MFR)とした。
【0262】
合成例1:変性EVOH(C−1)
エチレン含有量32モル%、ケン化度99.6%、固有粘度0.0882L/gのエチレン−ビニルアルコール共重合体からなる含水ペレット(含水率:130%(ドライベース))100重量部を、酢酸0.1g/L、リン酸二水素カリウム0.044g/Lを含有する水溶液370重量部に、25℃で6時間浸漬・攪拌した。得られたペレットを105℃で20時間乾燥し、乾燥EVOHペレットを得た。前記乾燥EVOHペレットのカリウム含有量は8ppm(金属元素換算)、酢酸含有量は53ppm、リン酸化合物含有量は20ppm(リン酸根換算値)であり、アルカリ土類金属塩含有量は0ppmであった。また、前記乾燥ぺレットのMFRは8g/10分(190℃、2160g荷重下)であった。このようにして得られたEVOHを、EVOH(A)として用いた。また、分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)としては、1,2−エポキシブタンを使用した。
【0263】
東芝機械社製TEM−35BS押出機(37mmφ、L/D=52.5)を使用し、図1に示すようにスクリュー構成及びベント及び圧入口を設置した。バレルC1を水冷し、バレルC2〜C3を200℃、バレルC4〜C15を240℃に設定し、スクリュー回転数400rpmで運転した。C1の樹脂フィード口から上記EVOH(A)を11kg/hrの割合でフィードし、溶融した後、ベント1から水及び酸素を除去し、C9の圧入口から1,2−エポキシブタンを2.5kg/hrの割合でフィードした(フィード時の圧力:6MPa)。その後、ベント2から未反応の1,2−エポキシブタンを除去し、変性EVOH(C)を得た。得られた変性EVOH(C)のMFRは、2.5g/10分(190℃、2160g荷重下)で、融点は141℃であった。
【0264】
こうして得られた、1,2−エポキシブタンで変性された変性EVOH(C)の化学構造については、以下の手順に従って変性EVOH(C)をトリフルオロアセチル化した後にNMR測定を行うことによって求めた。このとき、下記のモデル化合物を合成し、それらモデル化合物のNMR測定チャートと対比することによって、変性EVOH(C)中のNMR測定チャート中のピークを帰属した。
【0265】
(1)変性EVOH(C)のトリフルオロアセチル化及びNMR測定
上記作製した変性エチレン−ビニルアルコール共重合体(C)を粒子径0.2mm以下に粉砕後、この粉末1gを100mlナスフラスコに入れ、塩化メチレン20g及び無水トリフルオロ酢酸10gを添加し、室温で攪拌した。攪拌開始から1時間後、ポリマーは完全に溶解した。ポリマーが完全に溶解してからさらに1時間攪拌した後、ロータリーエバポレーターにより溶媒を除去した。得られたトリフルオロアセチル化された変性エチレン−ビニルアルコール共重合体(C)を2g/Lの濃度で重クロロホルムと無水トリフルオロ酢酸の混合溶媒(重クロロホルム/無水トリフルオロ酢酸=2/1(重量比))に溶解し、テトラメチルシランを内部標準として500MHzH−NMRを測定した。得られたNMR測定チャートを図3に示す。
【0266】
(2)1−イソプロポキシ−2−ブタノール及び1−(1−イソプロポキシ−2−ブトキシ)−2−ブタノールの合成
攪拌機及び冷却器を備えた1Lセパラブルフラスコにイソプロパノール180g及びエポキシブタン216g仕込み、窒素置換後、ナトリウム1.6gを添加し、16時間還流を行った。これにリン酸5gを添加後、減圧蒸留により、1−イソプロポキシ−2−ブタノール(沸点:100℃/120mmHg)及び1−(1−イソプロポキシ−2−ブトキシ)−2−ブタノール(沸点:105℃/50mmHg)を分留して得た。こうして得られた1−イソプロポキシ−2−ブタノールは、EVOHの水酸基に1,2−エポキシブタンが1分子反応した時のモデル化合物であり、1−(1−イソプロポキシ−2−ブトキシ)−2−ブタノールは、EVOHの水酸基に1,2−エポキシブタンが2分子以上反応した時のモデル化合物である。
【0267】
(3)1−イソプロポキシ−2−トリフルオロアセトキシ−ブタンの合成及びNMR測定
上記作製した1−イソプロポキシ−2−ブタノール530mg及び塩化メチレン5gを20mlナスフラスコに仕込んだ後、無水トリフルオロ酢酸1.7gを添加した。室温で1時間攪拌後、ロータリーエバポレーターにより溶媒を除去した。得られた1−イソプロポキシ−2−トリフルオロアセトキシ−ブタンについて重クロロホルムと無水トリフルオロ酢酸の混合溶媒(重クロロホルム/無水トリフルオロ酢酸=2/1(重量比))を溶媒とし、500MHzH−NMRを測定した。得られたNMR測定チャートを図4に示す。
【0268】
(4)1−(1−イソプロポキシ−2−ブトキシ)−2−トリフルオロアセトキシ−ブタンの合成及びNMR測定
上記作製した1−(1−イソプロポキシ−2−ブトキシ)−2−ブタノール820mg及び塩化メチレン5gを20mLナスフラスコに仕込んだ後、無水トリフルオロ酢酸1.7gを添加した。室温で1時間攪拌後、ロータリーエバポレーターにより溶媒を除去した。得られた、1−イソプロポキシ−2−トリフルオロアセトキシ−ブタンについて重クロロホルムと無水トリフルオロ酢酸の混合溶媒(重クロロホルム/無水トリフルオロ酢酸=2/1(重量比))を溶媒とし、500MHzH−NMRを測定した。得られたNMR測定チャートを図5に示す。
【0269】
(5)NMR測定チャートの解析
図4から明らかなように、1−イソプロポキシ−2−トリフルオロアセトキシ−ブタンのH−NMRでは、δ0.8〜1.1ppmにメチルプロトンに由来するシグナルが1つ存在していた。そして、図5から明らかなように、1−(1−イソプロポキシ−2−ブトキシ)−2−トリフルオロアセトキシ−ブタンのH−NMRでは、δ0.8〜1.1ppmにメチルプロトンに由来するシグナルが2つ存在していた。一方、図3に示すように、本合成例1で作製された変性EVOH(C)は、δ0.8〜1.1ppmにメチルプロトンに由来するシグナルが1つ存在しており、本合成例1で得られた変性EVOH(C)は、下記構造単位(XII)を有していることが明らかであった。
【0270】
【化19】
Figure 2004161905
【0271】
1,2−エポキシブタンで変性された変性EVOH(C)中の化学構造について、以下の各構造単位の含有量を求めた。
w:エチレン含有量(モル%)
x:未変性のビニルアルコール単位の含有量(モル%)
y:上記式(XII)で表される構造単位(モル%)
z:下記式(XIII)で表される構造単位(モル%)
【0272】
【化20】
Figure 2004161905
【0273】
上記w〜zの間で、下記式(1)〜(4)で示される関係が成り立つ。
Figure 2004161905
ただし、上記式(1)〜(4)中、A〜Dは、それぞれ変性EVOH(C)のH−NMR測定における下記範囲のシグナルの積分値である。
A:δ1.1〜2.4ppmのシグナルの積分値
B:δ3.1〜3.8ppmのシグナルの積分値
C:δ4.1〜4.5ppmのシグナルの積分値
D:δ4.8〜5.5ppmのシグナルの積分値
【0274】
上記式(1)〜(4)から、変性EVOH(C)のエチレン含有量が以下のように求められる。
変性EVOH(C)のエチレン含有量(モル%)
={w/(w+x+y+z)}×100
={(3A−2B−4C−6D)/(3A−2B+2C+6D)}×100
同様に、変性EVOH(C)の構造単位(I)の含有量が以下のように求められる。
変性EVOH(C)の構造単位(I)の含有量(モル%)
={(y+z)/(w+x+y+z)}×100
={(4B+2C)/(3A−2B+2C+6D)}×100
合成例1で作製した変性EVOH(C)のエチレン含有量は32モル%であり、構造単位(I)の含有量は4.8モル%であった。得られた変性EVOH(C)の製造方法及び性質について、表2にまとめて示す。
【0275】
合成例2:変性EVOH(C−2)
エチレン含量44モル%、ケン化度99.8%、固有粘度0.096L/g、MFR=5g/10分(190℃、2160g荷重下)のEVOH{酢酸含有量53ppm、ナトリウム含有量1ppm(金属元素換算)、カリウム含有量8ppm(金属元素換算)、リン酸化合物含有量20ppm(リン酸根換算値)}のペレット5kgをポリエチレン製袋に入れた。そして、酢酸亜鉛二水和物27.44g(0.125mol)及びトリフルオロメタンスルホン酸15g(0.1mol)を水500gに溶解させて水溶液を調製し、前記水溶液を袋の中のEVOHに添加した。以上のようにして触媒溶液が添加されたEVOHを、時々、振り混ぜながら袋の口を閉じた状態で90℃で5時間加熱し、EVOHに触媒溶液を含浸させた。得られたEVOHを、90℃で真空乾燥することにより、亜鉛イオンを含む触媒(D)を含有するEVOHを得た。
【0276】
EVOH(A)として、エチレン含量44モル%、ケン化度99.8%、MFR=5g/10分(190℃、2160g荷重下)のEVOH{酢酸含有量53ppm、ナトリウム含有量1ppm(金属元素換算)、カリウム含有量8ppm(金属元素換算)、リン酸化合物含有量20ppm(リン酸根換算値)}のEVOH90重量部に、前記亜鉛イオンを含む触媒(D)を含有するEVOH10重量部をドライブレンドしたものを用いた。また、分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)として1,2−エポキシブタンを用いた。
【0277】
東芝機械社製TEM−35BS押出機(37mmφ、L/D=52.5)を使用し、図2に示すようにスクリュー構成及びベント及び圧入口を設置した。バレルC1を水冷し、バレルC2〜C3を200℃、C4〜C15を220℃に設定し、スクリュー回転数200rpmで運転した。C1の樹脂フィード口から、ドライブレンドされた混合物からなり触媒(D)を含有する上記EVOH(A)を11kg/hrの割合でフィードし、ベント1を内圧60mmHgに減圧し、C8の圧入口1からエポキシブタンを2.5kg/hrの割合でフィードした(フィード時の圧力:3.5MPa)。ベント2を内圧200mmHgに減圧し、未反応のエポキシブタンを除去し、C13の圧入口2から0.14kg/hrの割合でエチレンジアミン4酢酸3ナトリウム3水和物8.2重量%水溶液を添加した。
【0278】
上記溶融混練操作における、一価エポキシ化合物(B)の混合割合は、EVOH(A)100重量部に対して22.7重量部であった。EVOH(A)の重量に対する金属イオンのモル数で2.5μmol/gの触媒(D)が添加された。触媒(D)に含まれる金属イオンのモル数に対する触媒失活剤(E)のモル数の比(E/D)は1であった。
【0279】
ベント3を内圧20mmHgに減圧し、水分を除去して、変性EVOH(C)を得た。前記変性EVOH(C)のMFRは5g/10分(190℃、2160g荷重下)であり、融点は109℃であった。また、亜鉛イオン含有量は150ppm(2.3μmol/g)であり、アルカリ金属塩含有量は金属元素換算で168ppm(7.1μmol/g)[ナトリウム:160ppm(6.9μmol/g)、カリウム:8ppm(0.2μmol/g)]であり、トリフルオロメタンスルホン酸イオンの含有量は270ppm(1.8μmol/g)であった。アルカリ金属イオンの含有量は、トリフルオロメタンスルホン酸イオンの含有量の3.9倍(モル比)であった。
【0280】
こうして得られた変性EVOH(C)のエチレン含有量は44モル%であり、構造単位(I)の含有量は7モル%であった。得られた変性EVOH(C)の製造方法及び性質について、表2にまとめて示す。
【0281】
合成例3:変性EVOH(C−3)
エチレン含量32モル%、ケン化度99.6%、固有粘度0.0882L/g、MFR=8g/10分(190℃、2160g荷重下)のEVOH{酢酸含有量53ppm、カリウム含有量8ppm(金属元素換算)、リン酸化合物含有量20ppm(リン酸根換算値)}のペレット5kgをポリエチレン製袋に入れた。そして、酢酸亜鉛二水和物27.44g(0.125mol)及びトリフルオロメタンスルホン酸15g(0.1mol)を水500gに溶解させて水溶液を調製し、前記水溶液を袋の中のEVOHに添加した。以上のようにして触媒溶液が添加されたEVOHを、時々、振り混ぜながら袋の口を閉じた状態で90℃で5時間加熱し、EVOHに触媒溶液を含浸させた。得られたEVOHを、90℃で真空乾燥することにより、亜鉛イオンを含む触媒(D)を含有するEVOHを得た。
【0282】
EVOH(A)として、エチレン含量32モル%、ケン化度99.6%、MFR=8g/10分(190℃、2160g荷重下)のEVOH{酢酸含有量53ppm、カリウム含有量8ppm(金属元素換算)、リン酸化合物含有量20ppm(リン酸根換算値)}のEVOH90重量部に、前記亜鉛イオンを含む触媒(D)を含有するEVOH10重量部をドライブレンドしたものを用いた。また、分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)として1,2−エポキシブタンを用いた。
【0283】
東芝機械社製TEM−35BS押出機(37mmφ、L/D=52.5)を使用し、図2に示すようにスクリュー構成及びベント及び圧入口を設置した。バレルC1を水冷し、バレルC2〜C15を200℃に設定し、スクリュー回転数400rpmで運転した。C1の樹脂フィード口から、ドライブレンドされた混合物からなり触媒(D)を含有する上記EVOH(A)を11kg/hrの割合でフィードし、ベント1を内圧60mmHgに減圧し、C8の圧入口1からエポキシブタンを2.5kg/hrの割合でフィードした(フィード時の圧力:3.5MPa)。ベント2を内圧200mmHgに減圧し、未反応のエポキシブタンを除去し、C13の圧入口2から0.14kg/hrの割合でエチレンジアミン四酢酸三ナトリウム三水和物8.2重量%水溶液を添加した。
【0284】
上記溶融混練操作における、一価エポキシ化合物(B)の混合割合は、EVOH(A)100重量部に対して22.7重量部であった。EVOH(A)の重量に対する金属イオンのモル数で2.5μmol/gの触媒(D)が添加された。触媒(D)に含まれる金属イオンのモル数に対する触媒失活剤(E)のモル数の比(E/D)は1であった。
【0285】
ベント3を内圧20mmHgに減圧し、水分を除去して、変性EVOH(C)を得た。前記変性EVOH(C)のMFRは7g/10分(190℃、2160g荷重下)であり、融点は135℃であった。また、亜鉛イオン含有量は150ppm(2.3μmol/g)であり、アルカリ金属塩含有量は金属元素換算で168ppm(7.1μmol/g)[ナトリウム:160ppm(6.9μmol/g)、カリウム:8ppm(0.2μmol/g)]であり、トリフルオロメタンスルホン酸イオンの含有量は270ppm(1.8μmol/g)であった。アルカリ金属イオンの含有量は、トリフルオロメタンスルホン酸イオンの含有量の3.9倍(モル比)であった。
【0286】
こうして得られた変性EVOH(C)のエチレン含有量は32モル%であり、構造単位(I)の含有量は7.8モル%であった。得られた変性EVOH(C)の製造方法及び性質について、表2にまとめて示す。
【0287】
合成例4:変性EVOH(C−4)
亜鉛アセチルアセトナート一水和物28重量部を、1,2−ジメトキシエタン957重量部と混合し、混合溶液を得た。得られた前記混合液に、攪拌しながらトリフルオロメタンスルホン酸15重量部を添加し、触媒(D)を含む溶液を得た。すなわち、亜鉛アセチルアセトナート一水和物1モルに対して、トリフルオロメタンスルホン酸1モルを混合した溶液を調製した。
【0288】
エチレン含有量32モル%、ケン化度99.6%、固有粘度0.0882L/gのエチレン−ビニルアルコール共重合体からなる含水ペレット(含水率:130%(ドライベース))100重量部を、酢酸0.1g/L、リン酸二水素カリウム0.044g/Lを含有する水溶液370重量部に、25℃で6時間浸漬・攪拌した。得られたペレットを105℃で20時間乾燥し、乾燥EVOHペレットを得た。前記乾燥EVOHペレットのカリウム含有量は8ppm(金属元素換算)、酢酸含有量は53ppm、リン酸化合物含有量は20ppm(リン酸根換算値)であり、アルカリ土類金属塩(Mg塩又はCa塩)含有量は0ppmであった。また、前記乾燥ぺレットのMFRは8g/10分(190℃、2160g荷重下)であった。このようにして得られたEVOHを、EVOH(A)として用いた。また、分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)としてエポキシプロパンを用いた。
【0289】
東芝機械社製TEM−35BS押出機(37mmφ、L/D=52.5)を使用し、図2に示すようにスクリュー構成及びベント及び圧入口を設置した。バレルC1を水冷し、バレルC2〜C15を200℃に設定し、スクリュー回転数250rpmで運転した。C1の樹脂フィード口から上記EVOH(A)を11kg/hrの割合で添加し、ベント1を内圧60mmHgに減圧し、C8の圧入口1からエポキシプロパンが1.5kg/hrの割合で、また上記の方法で作製した触媒(D)溶液が0.22kg/hrの割合で添加されるように、両者を混合してからフィードした(フィード時の圧力:3MPa)。次いで、ベント2から、常圧で未反応のエポキシプロパンを除去した後、触媒失活剤(E)として、エチレンジアミン四酢酸三ナトリウム三水和物8.2重量%水溶液を、C13の圧入口2から0.11kg/hrの割合で添加した。
【0290】
上記溶融混練操作における、一価エポキシ化合物(B)の混合割合は、EVOH(A)100重量部に対して13.6重量部であった。EVOH(A)の重量に対する金属イオンのモル数で2μmol/gの触媒(D)が添加された。触媒(D)に含まれる金属イオンのモル数に対する触媒失活剤(E)のモル数の比(E/D)は1であった。
【0291】
ベント3を内圧20mmHgに減圧し、水分を除去して、変性EVOH(C)を得た。得られた変性EVOH(C)のMFRは7g/10分(190℃、2160g荷重下)であり、融点は132℃であった。また、亜鉛イオン含有量は120ppm(1.9μmol/g)であり、アルカリ金属塩含有量は金属元素換算で138ppm(5.9μmol/g)[ナトリウム:130ppm(5.7μmol/g)、カリウム:8ppm(0.2μmol/g)]であり、トリフルオロメタンスルホン酸イオンの含有量は280ppm(1.9μmol/g)であった。アルカリ金属イオンの含有量は、トリフルオロメタンスルホン酸イオンの含有量の3.1倍(モル比)であった。
【0292】
こうして得られた、エポキシプロパンで変性された変性EVOH(C)の化学構造については、以下の手順に従って変性EVOH(C)をトリフルオロアセチル化した後にNMR測定を行うことによって求めた。
【0293】
上記作製した変性EVOH(C)を粒子径0.2mm以下に粉砕した後、この粉末1gを100mlナスフラスコに入れ、塩化メチレン20g及び無水トリフルオロ酢酸10gを添加し、室温で攪拌した。攪拌開始から1時間後、前記変性EVOH(C)は完全に溶解した。前記変性EVOH(C)が完全に溶解してからさらに1時間攪拌した後、ロータリーエバポレーターにより溶媒を除去した。得られたトリフルオロアセチル化された変性EVOH(C)を2g/Lの濃度で重クロロホルムと無水トリフルオロ酢酸の混合溶媒(重クロロホルム/無水トリフルオロ酢酸=2/1(重量比))に溶解し、テトラメチルシランを内部標準として500MHzH−NMRを測定した。NMR測定チャートを図8に示す。
【0294】
エポキシプロパン変性された変性EVOH(C)中の化学構造について、以下の各構造単位の含有量を求めた。
w:エチレン含有量(モル%)
x:未変性のビニルアルコール単位の含有量(モル%)
y:下記式(XVI)で表される構造単位(モル%)
z:下記式(XVII)で表される構造単位(モル%)
【0295】
【化21】
Figure 2004161905
【0296】
【化22】
Figure 2004161905
【0297】
上記w〜zの間で、下記式(9)〜(12)で示される関係が成り立つ。
Figure 2004161905
ただし、上記式(9)〜(12)中、A〜Dは、それぞれ変性EVOH(C)のH−NMR測定における下記範囲のシグナルの積分値である。
A:δ1.1〜2.5ppmのシグナルの積分値
B:δ3.1〜4ppmのシグナルの積分値
C:δ4.1〜4.6ppmのシグナルの積分値
D:δ4.8〜5.6ppmのシグナルの積分値
【0298】
上記式(9)〜(12)から、変性EVOH(C)のエチレン含有量が以下のように求められる。
変性EVOH(C)のエチレン含有量(モル%)
={w/(w+x+y+z)}×100
={(2A−2B−3C−4D)/(2A−2B+C+4D)}×100
同様に、変性EVOH(C)の構造単位(I)の含有量が以下のように求められる。
変性EVOH(C)の構造単位(I)の含有量(モル%)
={(y+z)/(w+x+y+z)}×100
={(8B+4C)/(6A−6B+3C+12D)}×100
本合成例4で作製した変性EVOH(C)のエチレン含有量は32モル%であり、構造単位(I)の含有量は5.5モル%であった。得られた変性EVOH(C)の製造方法及び性質について、表2にまとめて示す。
【0299】
合成例5:変性EVOH(C−5)
エチレン含量44モル%、ケン化度99.8%、固有粘度0.096L/g、MFR=5g/10分(190℃、2160g荷重下)のEVOH{酢酸含有量53ppm、ナトリウム含有量1ppm(金属元素換算)、カリウム含有量8ppm(金属元素換算)、リン酸化合物含有量20ppm(リン酸根換算値)}のペレットを、EVOH(A)として用いた。また、分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)としてエポキシプロパンを用いた。
【0300】
東芝機械社製TEM−35BS押出機(37mmφ、L/D=52.5)を使用し、図2に示すようにスクリュー構成及びベント及び圧入口を設置した。バレルC1を水冷し、バレルC2〜C15を220℃に設定し、スクリュー回転数250rpmで運転した。C1の樹脂フィード口から上記EVOH(A)を11kg/hrの割合で添加し、ベント1を内圧60mmHgに減圧し、C8の圧入口1からエポキシプロパンが2.0kg/hrの割合で、また合成例4と同様の方法で作製した触媒(D)溶液が0.22kg/hrの割合で添加されるように、両者を混合してからフィードした(フィード時の圧力:3MPa)。次いで、ベント2から、常圧で未反応のエポキシプロパンを除去した後、触媒失活剤(E)として、エチレンジアミン四酢酸三ナトリウム三水和物8.2重量%水溶液を、C13の圧入口2から0.11kg/hrの割合で添加した。
【0301】
上記溶融混練操作における、一価エポキシ化合物(B)の混合割合は、EVOH(A)100重量部に対して18.3重量部であった。EVOH(A)の重量に対する金属イオンのモル数で2μmol/gの触媒(D)が添加された。触媒(D)に含まれる金属イオンのモル数に対する触媒失活剤(E)のモル数の比(E/D)は1であった。
【0302】
ベント3を内圧20mmHgに減圧し、水分を除去して、変性EVOH(C)を得た。得られた変性EVOH(C)のMFRは5g/10分(190℃、2160g荷重下)であり、融点は105℃であった。また、亜鉛イオン含有量は120ppm(1.9μmol/g)であり、アルカリ金属塩含有量は金属元素換算で138ppm(5.9μmol/g)[ナトリウム:130ppm(5.7μmol/g)、カリウム:8ppm(0.2μmol/g)]であり、トリフルオロメタンスルホン酸イオンの含有量は280ppm(1.9μmol/g)であった。アルカリ金属イオンの含有量は、トリフルオロメタンスルホン酸イオンの含有量の3.1倍(モル比)であった。こうして得られた変性EVOH(C)のエチレン含有量は44モル%であり、構造単位(I)の含有量は8モル%であった。得られた変性EVOH(C)の製造方法及び性質について、表2にまとめて示す。
【0303】
合成例6:変性EVOH(C−6)
エチレン含量32モル%、ケン化度99.6%、固有粘度0.0882L/g、MFR=8g/10分(190℃、2160g荷重下)のEVOH{酢酸含有量53ppm、カリウム含有量8ppm(金属元素換算)、リン酸化合物含有量20ppm(リン酸根換算値)}のペレットを、EVOH(A)として用いた。また、分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)としてエポキシプロパンを用いた。
【0304】
東芝機械社製TEM−35BS押出機(37mmφ、L/D=52.5)を使用し、図2に示すようにスクリュー構成及びベント及び圧入口を設置した。バレルC1を水冷し、バレルC2〜C15を200℃に設定し、スクリュー回転数300rpmで運転した。C1の樹脂フィード口から上記EVOH(A)を11kg/hrの割合で添加し、ベント1を内圧60mmHgに減圧し、C8の圧入口1からエポキシプロパンが2.0kg/hrの割合で、また合成例4と同様の方法で作製した触媒(D)溶液が0.22kg/hrの割合で添加されるように、両者を混合してからフィードした(フィード時の圧力:3MPa)。次いで、ベント2から、常圧で未反応のエポキシプロパンを除去した後、触媒失活剤(E)として、エチレンジアミン四酢酸三ナトリウム三水和物8.2重量%水溶液を、C13の圧入口2から0.11kg/hrの割合で添加した。
【0305】
上記溶融混練操作における、一価エポキシ化合物(B)の混合割合は、EVOH(A)100重量部に対して18.3重量部であった。EVOH(A)の重量に対する金属イオンのモル数で2μmol/gの触媒(D)が添加された。触媒(D)に含まれる金属イオンのモル数に対する触媒失活剤(E)のモル数の比(E/D)は1であった。
【0306】
ベント3を内圧20mmHgに減圧し、水分を除去して、変性EVOH(C)を得た。得られた変性EVOH(C)のMFRは7g/10分(190℃、2160g荷重下)であり、融点は133℃であった。また、亜鉛イオン含有量は120ppm(1.9μmol/g)であり、アルカリ金属塩含有量は金属元素換算で138ppm(5.9μmol/g)[ナトリウム:130ppm(5.7μmol/g)、カリウム:8ppm(0.2μmol/g)]であり、トリフルオロメタンスルホン酸イオンの含有量は280ppm(1.9μmol/g)であった。アルカリ金属イオンの含有量は、トリフルオロメタンスルホン酸イオンの含有量の3.1倍(モル比)であった。こうして得られた変性EVOH(C)のエチレン含有量は32モル%であり、構造単位(I)の含有量は8モル%であった。得られた変性EVOH(C)の製造方法及び性質について、表2にまとめて示す。
【0307】
合成例7:変性EVOH(C−7)
合成例1において、C1の樹脂フィード口からのEVOH(A)のフィード量を15kg/hrとし、C9の圧入口から1,2−エポキシブタンの代わりに分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)としてグリシドールを2.5kg/hrの割合でフィードした以外は合成例1と同様な条件で押出を行い、MFR=1.8g/10分(190℃、2160g荷重下)、融点135℃の変性EVOH(C)を得た。
【0308】
こうして得られた、グリシドールで変性された変性EVOH(C)の化学構造については、以下の手順に従って変性EVOH(C)をトリフルオロアセチル化した後にNMR測定を行うことによって求めた。このとき、下記のモデル化合物を合成し、それらモデル化合物のNMR測定チャートと対比することによって、変性EVOH(C)中のNMR測定チャート中のピークを帰属した。
【0309】
(1)変性EVOH(C)のトリフルオロアセチル化及びNMR測定
上記作製した変性エチレン−ビニルアルコール共重合体(C)を粒子径0.2mm以下に粉砕後、この粉末1gを100mlナスフラスコに入れ、塩化メチレン20g及び無水トリフルオロ酢酸10gを添加し、室温で攪拌した。攪拌開始から1時間後、ポリマーは完全に溶解した。ポリマーが完全に溶解してからさらに1時間攪拌した後、ロータリーエバポレーターにより溶媒を除去した。得られたトリフルオロアセチル化された変性エチレン−ビニルアルコール共重合体(C)を2g/Lの濃度で重クロロホルムと無水トリフルオロ酢酸の混合溶媒(重クロロホルム/無水トリフルオロ酢酸=2/1(重量比))に溶解し、テトラメチルシランを内部標準として500MHzH−NMRを測定した。得られたNMR測定チャートを図6に示す。
【0310】
(2)3−イソプロポキシ−1,2−プロパンジオールの合成
攪拌機及び冷却器付き3Lセパラブルにイソプロパノール1200gを仕込み、ナトリウム4.6gを添加し、80℃に加熱して溶解させた。ナトリウムを完全に溶解させた後、80℃でグリシドール300gを1時間かけて滴下した。滴下が終了してから、3時間攪拌を行った後、攪拌を止め室温に冷却した。この際、上層と下層に分離した。上層を分離し、エバポレーターにより濃縮した。さらに、減圧蒸留により3−イソプロポキシ−1,2−プロパンジオールを得た(沸点60℃/2mmHg)。こうして得られた3−イソプロポキシ−1,2−プロパンジオールは、EVOHの水酸基にグリシドールが1分子反応した時のモデル化合物である。
【0311】
(3)1−イソプロポキシ−2,3−ジトリフルオロアセトキシ−プロパンの合成及びNMR測定
上記作製した3−イソプロポキシ−1,2−プロパンジオール270mg及び塩化メチレン5gを20mlナスフラスコに仕込んだ後、無水トリフルオロ酢酸1.7gを添加した。室温で1時間攪拌後、ロータリーエバポレーターにより溶媒を除去した。得られた、1−イソプロポキシ−2,3−ジトリフルオロアセトキシ−プロパンについて重クロロホルムと無水トリフルオロ酢酸の混合溶媒(重クロロホルム/無水トリフルオロ酢酸=2/1(重量比))を溶媒とし、500MHzH−NMRを測定した。得られたNMR測定チャートを図7に示す。
【0312】
(4)NMR測定チャートの解析
図6及び図7を対比すれば明らかなように、モデル化合物である1−イソプロポキシ−2,3−ジトリフルオロアセトキシ−プロパンと、本合成例7で作製した変性EVOH(C)のH−NMRは、いずれもδ3.5〜3.9ppm、4.5〜4.8ppm及び5.3〜5.5ppmに共通する特徴的なシグナルを有していた。また、δ3.5〜3.9ppmのシグナルの積分値と、δ4.5〜4.8ppmのシグナルの積分値との比は、モデル化合物である1−イソプロポキシ−2,3−ジトリフルオロアセトキシ−プロパンと、本合成例7で作製した変性EVOH(C)とを比較した場合、いずれも約3:2であり、極めて良い一致を示した。以上のことから、本合成例7で得られた変性EVOH(C)は、下記構造単位(XIV)を有していることが明らかであった。
【0313】
【化23】
Figure 2004161905
【0314】
グリシドールで変性された変性EVOH(C)中の化学構造について、以下の各構造単位の含有量を求めた。
w:エチレン含有量(モル%)
x:未変性のビニルアルコール単位の含有量(モル%)
y:上記式(XIV)で表される構造単位(モル%)
z:下記式(XV)で表される構造単位(モル%)
【0315】
【化24】
Figure 2004161905
【0316】
上記w〜zの間で、下記式(5)〜(8)で示される関係が成り立つ。
Figure 2004161905
ただし、上記式(5)〜(8)中、A〜Dは、それぞれ変性EVOH(C)のH−NMR測定における下記範囲のシグナルの積分値である。
A:δ1.1〜2.4ppmのシグナルの積分値
B:δ4.2〜4.5ppmのシグナルの積分値
C:δ4.5〜4.8ppmのシグナルの積分値
D:δ4.8〜5.6ppmのシグナルの積分値
【0317】
上記式(5)〜(8)から、変性EVOH(C)のエチレン含有量が以下のように求められる。
変性EVOH(C)のエチレン含有量(モル%)
={w/(w+x+y+z)}×100
={(2A−B−4D)/(2A+B+4D)}×100
同様に、変性EVOH(C)の構造単位(I)の含有量が以下のように求められる。
変性EVOH(C)の構造単位(I)の含有量(モル%)
={(y+z)/(w+x+y+z)}×100
={(2B+4C)/(2A+B+4D)}×100
本合成例7で作製した変性EVOH(C)のエチレン含有量は32モル%であり、構造単位(I)の含有量は5モル%であった。得られた変性EVOH(C)の製造方法及び性質について、表2にまとめて示す。
【0318】
合成例8:変性EVOH(C−8)
エチレン含有量44モル%、ケン化度99.6%、固有粘度0.0855L/gのエチレン−ビニルアルコール共重合体からなる含水ペレット(含水率:130%(ドライベース))100重量部を、酢酸0.12g/L、リン酸二水素カリウム0.044g/Lを含有する水溶液370重量部に、25℃で6時間浸漬・攪拌した。得られたペレットを105℃で20時間乾燥し、乾燥EVOHペレットを得た。前記乾燥EVOHペレットのカリウム含有量は8ppm(金属元素換算)、酢酸含有量は62ppm、リン酸化合物含有量は20ppm(リン酸根換算値)であり、アルカリ土類金属塩含有量は0ppmであった。また、前記乾燥ぺレットのMFRは12g/10分(190℃、2160g荷重下)であった。このようにして得られたEVOHを、EVOH(A)として用いた。また、エポキシ化合物(B)としてグリシドールを用いた。
【0319】
東芝機械社製TEM−35BS押出機(37mmφ、L/D=52.5)を使用し、図1に示すようにスクリュー構成及びベント及び圧入口を設置した。バレルC1を水冷し、バレルC2〜C3を200℃、バレルC4〜C15を240℃に設定し、スクリュー回転数400rpmで運転した。C1の樹脂フィード口から上記EVOH(A)を15kg/hrの割合でフィードし、溶融した後、ベント1から水及び酸素を除去し、C9の圧入口からグリシドールを2.5kg/hrの割合でフィードした(フィード時の圧力:7MPa)。その後、ベント2から未反応のグリシドールを除去し、MFR=1.6g/10分(190℃、2160g荷重下)、構造単位(I)の含有量が6モル%、融点127℃の変性EVOH(C)からなる変性EVOH(C)を得た。得られた変性EVOH(C)の製造方法及び性質について、表2にまとめて示す。
【0320】
合成例9:熱可塑性樹脂(F)
乾燥した窒素で浄化された攪拌式オートクレーブ中にシクロヘキサン600体積部、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)0.16体積部、及び開始剤としてn−ブチルリチウム0.094体積部を投入した。温度を50℃に昇温し、スチレンモノマーを4.25体積部フィードし1.5時間重合させた。次に温度を30℃に下げ、イソプレンを120体積部フィードし2.5時間重合させた。さらに再び温度を50℃に昇温し、スチレンモノマーを4.25体積部フィードし1.5時間重合させた。
【0321】
得られた反応液に、酸化防止剤として2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート及びペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)を、それぞれスチレン及びイソプレンの合計量100重量部に対して0.15重量部ずつ加えた。反応液をメタノールに注いで生成物を沈殿させ、これを分離・乾燥して、酸化防止剤が添加されたトリブロック共重合体からなる熱可塑性樹脂(F)を得た。
【0322】
得られたスチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体からなる熱可塑性樹脂(F)の数平均分子量は85000、共重合体中のスチレンブロックの分子量はそれぞれ8500、スチレン含有量は14モル%、イソプレンブロックにおける構造式(a)で示される構造単位の割合は、55%であった。また、共重合体の炭素−炭素二重結合含有量は0.014eq/gであり、メルトフローレート(210℃−2160g荷重)は7.7g/10分であった。共重合体(F)中には、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート0.12重量%及びペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)0.12重量%が含まれていた。この共重合体(F)の屈折率は1.531、ヘイズ値(曇価)は1.0%、イソプレンブロックに由来するtanδ主分散ピーク温度は−3℃であった。
【0323】
合成例10:相容化剤(J)
スチレン−水添ブタジエン−スチレントリブロック共重合体(重量平均分子量100400、スチレン/水添ブタジエン=18/82(重量比)、ブタジエン単位の1,2−結合/1,4−結合モル比=47/53、ブタジエン単位の水添率97%、二重結合量430μeq/g、メルトインデックス5g/10分(230℃、2160g荷重)、密度0.89g/cm)を、投入口を1L/分の窒素で置換しながら7kg/時の速度で二軸押出機に供給した。次に、液体フィーダー1よりボラン−トリエチルアミン錯体(TEAB)とホウ酸1,3−ブタンジオールエステル(BBD)の混合液(TEAB/BBD=29/71、重量比)を0.6kg/時の速度で、液体フィーダー2より1,3−ブタンジオールを0.4kg/時の速度で供給し、連続的に混練した。混練の間、ベント1及びベント2のゲージが約20mmHgを示すように圧力を調節した。その結果、吐出口から7kg/時の速度で、ボロン酸1,3−ブタンジオールエステル基(BBDE)を含有するトリブロック共重合体からなる相容化剤(J)が得られた。この共重合体のボロン酸1,3−ブタンジオールエステル基量は210μeq/gであった。
【0324】
なお、反応に使用した二軸押出機の構成、運転条件は下記のとおりである。
同方向二軸押出機TEM−35B(東芝機械製)
Figure 2004161905
【0325】
実施例1
合成例9で得られた、酸素を吸収することが可能な熱可塑性樹脂(F)71.4重量部、及び合成例10で得られた相容化剤(J)28.6重量部をドライブレンドし、30mmφ二軸押出機((株)日本製鋼所製TEX−30SS−30CRW−2V)を用い、シリンダー内を窒素パージしながら、200℃でスクリュー回転数300rpm、押出樹脂量25kg/時間の条件で押出してペレット化した。30℃で8時間減圧乾燥を行い熱可塑性樹脂(F)と相容化剤(J)とからなる樹脂組成物ペレットを得た。
【0326】
エチレン含有量32モル%、ケン化度99.6%、メルトフローレート(190℃−2160g荷重)1.6g/10分、融点183℃のEVOH(H)74.4重量部、合成例3で得られた変性EVOH(C−3)18.6重量部、上記の熱可塑性樹脂(F)と相容化剤(J)とからなる樹脂組成物7重量部、及びステアリン酸コバルト(II)0.2121重量部(コバルト原子として0.0200重量部)を用いて、30mmφ二軸押出機((株)日本製鋼所製TEX−30SS−30CRW−2V)を用い、200℃でスクリュー回転数300rpm、押出樹脂量25kg/時間の条件でシリンダー内を窒素パージしながら押出してペレット化した。30℃で8時間減圧乾燥を行い、目的とする樹脂組成物ペレットを得た。この樹脂組成物のメルトフローレート(210℃、2160g荷重)は2.2g/10分であった。樹脂組成物ペレットの破断面を電子顕微鏡で観察したところ、熱可塑性樹脂(F)のおおむね1μm以下の粒子が、主としてEVOHからなるマトリックス中に分散していた。
【0327】
熱可塑性ポリエステル(PES)として、二酸化ゲルマニウムを触媒とした重合により得られたポリエチレンテレフタレート(PET)を使用した。該PETにおけるテレフタル酸単位、エチレングリコール単位、及びジエチレングリコール単位の含有率はそれぞれ50.0モル%、48.9モル%、1.1モル%であった。また、極限粘度は0.83dl/g、融点及びガラス転移温度はそれぞれ252℃、80℃であった。
【0328】
前記方法によって製造した樹脂組成物及び上記熱可塑性ポリエステルを用いてKORTEC/HUSKY製共射出成形機(SL160型4個取り)を使用し、PES側射出機温度280℃、樹脂組成物側射出機温度210℃、PESと樹脂組成物とが合流するホットランナーブロック部270℃、射出金型コア温度10℃、射出金型キャビティー温度10℃で共射出成形を行い、PES/樹脂組成物/PESの2種3層のパリソンを成形した。パリソンを目視で観察したところ、ストリークは認められず、パリソン口部における樹脂組成物層のリーディングエッジは水平であった。ここで、リーディングエッジとは、パリソン口部における樹脂組成物層の先端部分であり、均質な成形品を得るには、これが水平になることが好ましいものである。図9に、良好なリーディングエッジを有する有底パリソンの一部を表す概略図を、図10に、不良なリーディングエッジを有する有底パリソンの一部を表す概略図をそれぞれ示す。容器口部11において、PES/EVOH多層部分12とPES単層部分13との境界がリーディングエッジ14である。リーディングエッジの好ましい状態とは、有底パリソンの底の部分を下にしたときに、リーディングエッジのラインがほぼ水平になっている状態である。
【0329】
その後、CRUPP CORPOPLAST MASCHINENBAU製延伸ブロー成形機(LB01型530mL1個取り)を使用して、パリソンの表面温度を105℃に加熱し、延伸ブロー成形を行い、2種3層の多層共射出ブロー成形容器を得た。該ブロー成形容器を目視で観察したところ、ストリーク、気泡あるいはゲル物が認められず、良好な外観を有していた。得られた多層ブロー成形容器を用いて、容器のデラミ発生率、容器胴部のヘイズ及び容器の酸素透過速度を以下の方法に従って測定した。評価結果を表3にまとめて示す。
【0330】
(1)多層容器のデラミ発生率:
成形で得られたボトル100本を、各々1本ごとに内容物として水を充填し、常圧下で密栓した後、60cmの高さからボトル胴部を水平にし、90°の角度を持った長さ20cm三角形の台の上に、台の角部がボトル胴部の中央に当たるように一回のみ自然落下させた。デラミを生じたボトルの本数から、下記式にしたがってデラミ発生率を算出した。
Figure 2004161905
【0331】
(2)多層容器のヘイズ(曇価):
得られたボトル胴部中央を円周上に4分割した4箇所について、ASTM D1003−61に準じて、ポイック積分球式光線透過率・全光線反射率計(村上色彩技術研究所製「HR−100型」)を用いて各箇所における内部ヘイズを測定し、その平均値を採ってボトルのヘイズ(曇価)とした。
【0332】
(3)多層容器の酸素透過速度:
得られたボトルの形態のままで、20℃−65%RHに温湿度調整した後、酸素透過量測定装置(モダンコントロール社製、OX−TRAN−10/50A)にて、容器1個当たりの酸素透過速度(cc/container・day・atm)を測定した。
【0333】
また、上記樹脂組成物を用い、3種5層共押出装置を用いて、多層シート(ポリプロピレン樹脂/接着性樹脂/樹脂組成物/接着性樹脂/ポリプロピレン樹脂)を作製した。フィルムの層構成は、内外層のポリプロピレン樹脂(出光石油化学(株)製「出光ポリプロピレンE−203G」)が420μm、接着性樹脂(三井化学製「アドマーQF551」)が各40μm、中間層の樹脂組成物が80μmであった。
【0334】
得られた多層シートを熱成形機(浅野製作所製:真空圧空深絞り成形機FX−0431−3型)にて、シート温度を160℃にして、圧縮空気(気圧5kgf/cm)により丸カップ形状(金型形状:上部75mmφ、下部60mmφ、深さ75mm、絞り比S=1.0)に熱成形することにより、熱成形容器を得た。成形条件を以下に示す。
ヒーター温度:400℃
プラグ :45φ×65mm
プラグ温度 :150℃
金型温度 :70℃
【0335】
得られたカップ形状の熱成形容器の外観を目視にて観察したところ、ムラ及び局部的偏肉はなく均一に延伸されており、また透明性に優れており、外観についても良好だった。得られたカップの形態のままで、20℃−65%RHに温湿度調整した後、酸素透過量測定装置(モダンコントロール社製、OX−TRAN−10/50A)にて、容器1個当たりの酸素透過速度(cc/container・day・atm)を測定した。上記評価結果を表3にまとめて示す。
【0336】
実施例2
実施例1で用いたのと同じEVOH(H)76重量部、合成例3で得られた変性EVOH(C−3)19重量部、合成例9で得られた熱可塑性樹脂(F)5重量部、及びステアリン酸コバルト(II)0.2121重量部(コバルト原子として0.0200重量部)を用いて、実施例1と同様に二軸押出機を用いペレット化した後、減圧乾燥を行い、目的とする樹脂組成物ペレットを得た。この樹脂組成物のメルトフローレート(210℃、2160g荷重)は2.3g/10分であった。樹脂組成物ペレットの破断面を電子顕微鏡で観察したところ、熱可塑性樹脂(F)のおおむね1〜2μmの粒子が、主としてEVOHからなるマトリックス中に分散していた。
【0337】
この樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にして2種3層の多層共射出ブロー成形容器を得た。プリフォームにはストリークが認められず、そのリーディングエッジは水平であった。ブローボトルにもストリークは認められず、気泡あるいはゲル物も認められず、良好な外観を有していた。得られた多層ブロー成形容器を用いて、容器のデラミ発生率、容器胴部のヘイズ及び容器の酸素透過速度を実施例1と同様に測定した。
【0338】
また上記樹脂組成物を用い、実施例1と同様にして、カップ形状の熱成形容器を得た。該熱成形容器の外観を目視にて観察したところ、ムラ及び局部的偏肉はなく均一に延伸されており、また透明性に優れており、外観についても良好だった。また容器の酸素透過速度を実施例1と同様に測定した。以上の評価結果を表3にまとめて示す。
【0339】
実施例3
実施例1で用いたのと同じEVOH(H)46.5重量部、合成例3で得られた変性EVOH(C−3)46.5重量部、実施例1で用いたのと同じ熱可塑性樹脂(F)と相容化剤(J)とからなる樹脂組成物7重量部、及びステアリン酸コバルト(II)0.2121重量部(コバルト原子として0.0200重量部)を用いて、実施例1と同様に二軸押出機を用いペレット化した後、減圧乾燥を行い、目的とする樹脂組成物ペレットを得た。この樹脂組成物のメルトフローレート(210℃、2160g荷重)は3.3g/10分であった。樹脂組成物ペレットの破断面を電子顕微鏡で観察したところ、熱可塑性樹脂(F)のおおむね1μm以下の粒子が、EVOH(H)及び変性EVOH(C)からなるマトリックス中に分散していた。
【0340】
この樹脂組成物から実施例1と同様にして、2種3層の多層共射出ブロー成形容器を得た。プリフォームにはストリークが認められず、そのリーディングエッジは水平であった。ブローボトルにもストリークは認められず、気泡あるいはゲル物も認められず、良好な外観を有していた。得られた多層ブロー成形容器を用いて、容器のデラミ発生率、容器胴部のヘイズ及び容器の酸素透過速度を実施例1と同様に測定した。
【0341】
また上記樹脂組成物を用い、実施例1と同様にして、カップ形状の熱成形容器を得た。該熱成形容器の外観を目視にて観察したところ、ムラ及び局部的偏肉はなく均一に延伸されており、また透明性に優れており、外観についても良好だった。また容器の酸素透過速度を実施例1と同様に測定した。以上の評価結果を表3にまとめて示す。
【0342】
実施例4
合成例3で得られた変性EVOH(C−3)93重量部、実施例1で用いたのと同じ熱可塑性樹脂(F)と相容化剤(J)とからなる樹脂組成物7重量部、及びステアリン酸コバルト(II)0.2121重量部(コバルト原子として0.0200重量部)を用いて、実施例1と同様に二軸押出機を用いペレット化した後、減圧乾燥を行い、目的とする樹脂組成物ペレットを得た。この樹脂組成物のメルトフローレート(210℃、2160g荷重)は6.8g/10分であった。樹脂組成物ペレットの破断面を電子顕微鏡で観察したところ、熱可塑性樹脂(F)のおおむね1μm以下の粒子が、変性EVOH(C)からなるマトリックス中に分散していた。
【0343】
この樹脂組成物から実施例1と同様にして、2種3層の多層共射出ブロー成形容器を得た。プリフォームにはストリークが認められず、そのリーディングエッジは水平であった。ブローボトルにもストリークは認められず、気泡あるいはゲル物も認められず、良好な外観を有していた。得られた多層ブロー成形容器を用いて、容器のデラミ発生率、容器胴部のヘイズ及び容器の酸素透過速度を実施例1と同様に測定した。
【0344】
また上記樹脂組成物を用い、実施例1と同様にして、カップ形状の熱成形容器を得た。該熱成形容器の外観を目視にて観察したところ、ムラ及び局部的偏肉はなく均一に延伸されており、また透明性に優れており、外観についても良好だった。また容器の酸素透過速度を実施例1と同様に測定した。以上の評価結果を表3にまとめて示す。
【0345】
実施例5
実施例1で用いたのと同じEVOH(H)83.7重量部、合成例3で得られた変性EVOH(C−3)9.3重量部、実施例1で用いたのと同じ熱可塑性樹脂(F)と相容化剤(J)とからなる樹脂組成物7重量部、及びステアリン酸コバルト(II)0.2121重量部(コバルト原子として0.0200重量部)を用いて、実施例1と同様に二軸押出機を用いペレット化した後、減圧乾燥を行い、目的とする樹脂組成物ペレットを得た。この樹脂組成物のメルトフローレート(210℃、2160g荷重)は1.9g/10分であった。樹脂組成物ペレットの破断面を電子顕微鏡で観察したところ、熱可塑性樹脂(F)のおおむね1μm以下の粒子が、主としてEVOHからなるマトリックス中に分散していた。
【0346】
この樹脂組成物から実施例1と同様にして、2種3層の多層共射出ブロー成形容器を得た。プリフォームにはストリークが認められず、そのリーディングエッジは水平であった。ブローボトルにもストリークは認められず、気泡あるいはゲル物も認められず、良好な外観を有していた。得られた多層ブロー成形容器を用いて、容器のデラミ発生率、容器胴部のヘイズ及び容器の酸素透過速度を実施例1と同様に測定した。
【0347】
また上記樹脂組成物を用い、実施例1と同様にして、カップ形状の熱成形容器を得た。該熱成形容器の外観を目視にて観察したところ、ムラ及び局部的偏肉はなく均一に延伸されており、また透明性に優れており、外観についても良好だった。また容器の酸素透過速度を実施例1と同様に測定した。以上の評価結果を表3にまとめて示す。
【0348】
実施例6
実施例1で用いたのと同じEVOH(H)74.4重量部、合成例1で得られた変性EVOH(C−1)18.6重量部、実施例1で用いたのと同じ熱可塑性樹脂(F)と相容化剤(J)とからなる樹脂組成物7重量部、及びステアリン酸コバルト(II)0.2121重量部(コバルト原子として0.0200重量部)を用いて、実施例1と同様に二軸押出機を用いペレット化した後、減圧乾燥を行い、目的とする樹脂組成物ペレットを得た。この樹脂組成物のメルトフローレート(210℃、2160g荷重)は1.8g/10分であった。樹脂組成物ペレットの破断面を電子顕微鏡で観察したところ、熱可塑性樹脂(F)のおおむね1μm以下の粒子が、主としてEVOHからなるマトリックス中に分散していた。
【0349】
この樹脂組成物から実施例1と同様にして、2種3層の多層共射出ブロー成形容器を得た。プリフォームにはストリークが認められず、そのリーディングエッジは水平であった。ブローボトルにもストリークは認められず、気泡あるいはゲル物も認められず、良好な外観を有していた。得られた多層ブロー成形容器を用いて、容器のデラミ発生率、容器胴部のヘイズ及び容器の酸素透過速度を実施例1と同様に測定した。
【0350】
また上記樹脂組成物を用い、実施例1と同様にして、カップ形状の熱成形容器を得た。該熱成形容器の外観を目視にて観察したところ、ムラ及び局部的偏肉はなく均一に延伸されており、また透明性に優れており、外観についても良好だった。また容器の酸素透過速度を実施例1と同様に測定した。以上の評価結果を表3にまとめて示す。
【0351】
実施例7
実施例1で用いたのと同じEVOH(H)74.4重量部、合成例2で得られた変性EVOH(C−2)18.6重量部、実施例1で用いたのと同じ熱可塑性樹脂(F)と相容化剤(J)とからなる樹脂組成物7重量部、及びステアリン酸コバルト(II)0.2121重量部(コバルト原子として0.0200重量部)を用いて、実施例1と同様に二軸押出機を用いペレット化した後、減圧乾燥を行い、目的とする樹脂組成物ペレットを得た。この樹脂組成物のメルトフローレート(210℃、2160g荷重)は2.0g/10分であった。樹脂組成物ペレットの破断面を電子顕微鏡で観察したところ、熱可塑性樹脂(F)のおおむね1μm以下の粒子が、主としてEVOHからなるマトリックス中に分散していた。
【0352】
この樹脂組成物から実施例1と同様にして、2種3層の多層共射出ブロー成形容器を得た。プリフォームにはストリークが認められず、そのリーディングエッジは水平であった。ブローボトルにもストリークは認められず、気泡あるいはゲル物も認められず、良好な外観を有していた。得られた多層ブロー成形容器を用いて、容器のデラミ発生率、容器胴部のヘイズ及び容器の酸素透過速度を実施例1と同様に測定した。
【0353】
また上記樹脂組成物を用い、実施例1と同様にして、カップ形状の熱成形容器を得た。該熱成形容器の外観を目視にて観察したところ、ムラ及び局部的偏肉はなく均一に延伸されており、また透明性に優れており、外観についても良好だった。また容器の酸素透過速度を実施例1と同様に測定した。以上の評価結果を表3にまとめて示す。
【0354】
実施例8
実施例1で用いたのと同じEVOH(H)74.4重量部、合成例6で得られた変性EVOH(C−6)18.6重量部、実施例1で用いたのと同じ熱可塑性樹脂(F)と相容化剤(J)とからなる樹脂組成物7重量部、及びステアリン酸コバルト(II)0.2121重量部(コバルト原子として0.0200重量部)を用いて、実施例1と同様に二軸押出機を用いペレット化した後、減圧乾燥を行い、目的とする樹脂組成物ペレットを得た。この樹脂組成物のメルトフローレート(210℃、2160g荷重)は2.2g/10分であった。樹脂組成物ペレットの破断面を電子顕微鏡で観察したところ、熱可塑性樹脂(F)のおおむね1μm以下の粒子が、主としてEVOHからなるマトリックス中に分散していた。
【0355】
この樹脂組成物から実施例1と同様にして、2種3層の多層共射出ブロー成形容器を得た。プリフォームにはストリークが認められず、そのリーディングエッジは水平であった。ブローボトルにもストリークは認められず、気泡あるいはゲル物も認められず、良好な外観を有していた。得られた多層ブロー成形容器を用いて、容器のデラミ発生率、容器胴部のヘイズ及び容器の酸素透過速度を実施例1と同様に測定した。
【0356】
また上記樹脂組成物を用い、実施例1と同様にして、カップ形状の熱成形容器を得た。該熱成形容器の外観を目視にて観察したところ、ムラ及び局部的偏肉はなく均一に延伸されており、また透明性に優れており、外観についても良好だった。また容器の酸素透過速度を実施例1と同様に測定した。以上の評価結果を表3にまとめて示す。
【0357】
実施例9
実施例1で用いたのと同じEVOH(H)74.4重量部、合成例4で得られた変性EVOH(C−4)18.6重量部、実施例1で用いたのと同じ熱可塑性樹脂(F)と相容化剤(J)とからなる樹脂組成物7重量部、及びステアリン酸コバルト(II)0.2121重量部(コバルト原子として0.0200重量部)を用いて、実施例1と同様に二軸押出機を用いペレット化した後、減圧乾燥を行い、目的とする樹脂組成物ペレットを得た。この樹脂組成物のメルトフローレート(210℃、2160g荷重)は2.2g/10分であった。樹脂組成物ペレットの破断面を電子顕微鏡で観察したところ、熱可塑性樹脂(F)のおおむね1μm以下の粒子が、主としてEVOHからなるマトリックス中に分散していた。
【0358】
この樹脂組成物から実施例1と同様にして、2種3層の多層共射出ブロー成形容器を得た。プリフォームにはストリークが認められず、そのリーディングエッジは水平であった。ブローボトルにもストリークは認められず、気泡あるいはゲル物も認められず、良好な外観を有していた。得られた多層ブロー成形容器を用いて、容器のデラミ発生率、容器胴部のヘイズ及び容器の酸素透過速度を実施例1と同様に測定した。
【0359】
また上記樹脂組成物を用い、実施例1と同様にして、カップ形状の熱成形容器を得た。該熱成形容器の外観を目視にて観察したところ、ムラ及び局部的偏肉はなく均一に延伸されており、また透明性に優れており、外観についても良好だった。また容器の酸素透過速度を実施例1と同様に測定した。以上の評価結果を表3にまとめて示す。
【0360】
実施例10
実施例1で用いたのと同じEVOH(H)74.4重量部、合成例5で得られた変性EVOH(C−5)18.6重量部、実施例1で用いたのと同じ熱可塑性樹脂(F)と相容化剤(J)とからなる樹脂組成物7重量部、及びステアリン酸コバルト(II)0.2121重量部(コバルト原子として0.0200重量部)を用いて、実施例1と同様に二軸押出機を用いペレット化した後、減圧乾燥を行い、目的とする樹脂組成物ペレットを得た。この樹脂組成物のメルトフローレート(210℃、2160g荷重)は2.0g/10分であった。樹脂組成物ペレットの破断面を電子顕微鏡で観察したところ、熱可塑性樹脂(F)のおおむね1μm以下の粒子が、主としてEVOHからなるマトリックス中に分散していた。
【0361】
この樹脂組成物から実施例1と同様にして、2種3層の多層共射出ブロー成形容器を得た。プリフォームにはストリークが認められず、そのリーディングエッジは水平であった。ブローボトルにもストリークは認められず、気泡あるいはゲル物も認められず、良好な外観を有していた。得られた多層ブロー成形容器を用いて、容器のデラミ発生率、容器胴部のヘイズ及び容器の酸素透過速度を実施例1と同様に測定した。
【0362】
また上記樹脂組成物を用い、実施例1と同様にして、カップ形状の熱成形容器を得た。該熱成形容器の外観を目視にて観察したところ、ムラ及び局部的偏肉はなく均一に延伸されており、また透明性に優れており、外観についても良好だった。また容器の酸素透過速度を実施例1と同様に測定した。以上の評価結果を表3にまとめて示す。
【0363】
実施例11
実施例1で用いたのと同じEVOH(H)74.4重量部、合成例7で得られた変性EVOH(C−7)18.6重量部、実施例1で用いたのと同じ熱可塑性樹脂(F)と相容化剤(J)とからなる樹脂組成物7重量部、及びステアリン酸コバルト(II)0.2121重量部(コバルト原子として0.0200重量部)を用いて、実施例1と同様に二軸押出機を用いペレット化した後、減圧乾燥を行い、目的とする樹脂組成物ペレットを得た。この樹脂組成物のメルトフローレート(210℃、2160g荷重)は1.6g/10分であった。樹脂組成物ペレットの破断面を電子顕微鏡で観察したところ、熱可塑性樹脂(F)のおおむね1μm以下の粒子が、主としてEVOHからなるマトリックス中に分散していた。
【0364】
この樹脂組成物から実施例1と同様にして、2種3層の多層共射出ブロー成形容器を得た。プリフォームにはストリークが認められず、そのリーディングエッジは水平であった。ブローボトルにもストリークは認められず、気泡あるいはゲル物も認められず、良好な外観を有していた。得られた多層ブロー成形容器を用いて、容器のデラミ発生率、容器胴部のヘイズ及び容器の酸素透過速度を実施例1と同様に測定した。
【0365】
また上記樹脂組成物を用い、実施例1と同様にして、カップ形状の熱成形容器を得た。該熱成形容器の外観を目視にて観察したところ、ムラ及び局部的偏肉はなく均一に延伸されており、また透明性に優れており、外観についても良好だった。また容器の酸素透過速度を実施例1と同様に測定した。以上の評価結果を表3にまとめて示す。
【0366】
実施例12
実施例1で用いたのと同じEVOH(H)74.4重量部、合成例8で得られた変性EVOH(C−8)18.6重量部、実施例1で用いたのと同じ熱可塑性樹脂(F)と相容化剤(J)とからなる樹脂組成物7重量部、及びステアリン酸コバルト(II)0.2121重量部(コバルト原子として0.0200重量部)を用いて、実施例1と同様に二軸押出機を用いペレット化した後、減圧乾燥を行い、目的とする樹脂組成物ペレットを得た。この樹脂組成物のメルトフローレート(210℃、2160g荷重)は1.5g/10分であった。樹脂組成物ペレットの破断面を電子顕微鏡で観察したところ、熱可塑性樹脂(F)のおおむね1μm以下の粒子が、主としてEVOHからなるマトリックス中に分散していた。
【0367】
この樹脂組成物から実施例1と同様にして、2種3層の多層共射出ブロー成形容器を得た。プリフォームにはストリークが認められず、そのリーディングエッジは水平であった。ブローボトルにもストリークは認められず、気泡あるいはゲル物も認められず、良好な外観を有していた。得られた多層ブロー成形容器を用いて、容器のデラミ発生率、容器胴部のヘイズ及び容器の酸素透過速度を実施例1と同様に測定した。
【0368】
また上記樹脂組成物を用い、実施例1と同様にして、カップ形状の熱成形容器を得た。該熱成形容器の外観を目視にて観察したところ、ムラ及び局部的偏肉はなく均一に延伸されており、また透明性に優れており、外観についても良好だった。また容器の酸素透過速度を実施例1と同様に測定した。以上の評価結果を表3にまとめて示す。
【0369】
比較例1
実施例1で用いたのと同じEVOH(H)93重量部、実施例1で用いたのと同じ熱可塑性樹脂(F)と相容化剤(J)とからなる樹脂組成物7重量部、及びステアリン酸コバルト(II)0.2121重量部(コバルト原子として0.0200重量部)を用いて、実施例1と同様に二軸押出機を用いペレット化した後、減圧乾燥を行い、目的とする樹脂組成物ペレットを得た。この樹脂組成物のメルトフローレート(210℃、2160g荷重)は1.7g/10分であった。樹脂組成物ペレットの破断面を電子顕微鏡で観察したところ、熱可塑性樹脂(F)のおおむね1μm以下の粒子が、主としてEVOHからなるマトリックス中に分散していた。
【0370】
この樹脂組成物から実施例1と同様にして、2種3層の多層共射出ブロー成形容器を得た。プリフォームには若干のストリークが認められたが、そのリーディングエッジは水平であった。ブローボトルにも若干のストリークが認められたが、気泡あるいはゲル物は認められなかった。得られた多層ブロー成形容器を用いて、容器のデラミ発生率、容器胴部のヘイズ及び容器の酸素透過速度を実施例1と同様に測定した。
【0371】
また上記樹脂組成物を用い、実施例1と同様にして、カップ形状の熱成形容器を得た。該熱成形容器の外観を目視にて観察したところ、ムラ及び局部的偏肉が認められる個所があり、一部不均一に延伸されていた。透明性に優れていた。また容器の酸素透過速度を実施例1と同様に測定した。以上の評価結果を表3にまとめて示す。
【0372】
比較例2
実施例1で用いたのと同じEVOH(H)95重量部、実施例1で用いたのと同じ熱可塑性樹脂(F)5重量部、及びステアリン酸コバルト(II)0.2121重量部(コバルト原子として0.0200重量部)を用いて、実施例1と同様に二軸押出機を用いペレット化した後、減圧乾燥を行い、目的とする樹脂組成物ペレットを得た。この樹脂組成物のメルトフローレート(210℃、2160g荷重)は1.6g/10分であった。樹脂組成物ペレットの破断面を電子顕微鏡で観察したところ、熱可塑性樹脂(F)のおおむね1〜2μmの粒子が、EVOHからなるマトリックス中に分散していた。
【0373】
この樹脂組成物から実施例1と同様にして、2種3層の多層共射出ブロー成形容器を得た。プリフォームには若干のストリークが認められたが、そのリーディングエッジは水平であった。ブローボトルにも若干のストリークが認められたが、気泡あるいはゲル物は認められなかった。得られた多層ブロー成形容器を用いて、容器のデラミ発生率、容器胴部のヘイズ及び容器の酸素透過速度を実施例1と同様に測定した。
【0374】
また上記樹脂組成物を用い、実施例1と同様にして、カップ形状の熱成形容器を得た。該熱成形容器の外観を目視にて観察したところ、ムラ及び局部的偏肉が認められる個所があり、一部不均一に延伸されていた。透明性に優れていた。また容器の酸素透過速度を実施例1と同様に測定した。以上の評価結果を表3にまとめて示す。
【0375】
比較例3
実施例1で用いたのと同じEVOH(H)74.4重量部、エチレン含有量44モル%、ケン化度96.5%、MFR=5.0g/10分(190℃、2160g荷重下)、融点157℃の低ケン化度EVOH(C−9)18.6重量部、実施例1で用いたのと同じ熱可塑性樹脂(F)と相容化剤(J)とからなる樹脂組成物7重量部、及びステアリン酸コバルト(II)0.2121重量部(コバルト原子として0.0200重量部)を用いて、実施例1と同様に二軸押出機を用いペレット化した後、減圧乾燥を行い、目的とする樹脂組成物ペレットを得た。この樹脂組成物のメルトフローレート(210℃、2160g荷重)は2.1g/10分であった。樹脂組成物ペレットの破断面を電子顕微鏡で観察したところ、熱可塑性樹脂(F)のおおむね1μm以下の粒子が、主としてEVOHからなるマトリックス中に分散していた。
【0376】
この樹脂組成物から実施例1と同様にして、2種3層の多層共射出ブロー成形容器を得た。プリフォームにはストリークが認められず、そのリーディングエッジは水平であった。ブローボトルにもストリークは認められず、気泡あるいはゲル物も認められず、良好な外観を有していた。得られた多層ブロー成形容器を用いて、容器のデラミ発生率、容器胴部のヘイズ及び容器の酸素透過速度を実施例1と同様に測定した。評価結果を表3にまとめて示す。
【0377】
比較例4
樹脂組成物の代わりに、実施例1で用いたのと同じEVOH(H)を用いて、2種3層の多層共射出ブロー成形容器を得た。プリフォームには若干のストリークが認められたが、そのリーディングエッジは水平であった。ブローボトルにも若干のストリークが認められたが、気泡あるいはゲル物は認められなかった。得られた多層ブロー成形容器を用いて、容器のデラミ発生率、容器胴部のヘイズ及び容器の酸素透過速度を実施例1と同様に測定した。評価結果を表3にまとめて示す。
【0378】
また上記樹脂組成物を用い、実施例1と同様にして、カップ形状の熱成形容器を得た。該熱成形容器の外観を目視にて観察したところ、ムラ及び局部的偏肉が認められる個所があり、一部不均一に延伸されていた。透明性に優れていた。また容器の酸素透過速度を実施例1と同様に測定した。評価結果を表3にまとめて示す。
【0379】
比較例5
実施例1で用いたのと同じEVOH(H)80重量部、比較例3で用いたのと同じ低ケン化度EVOH(C−9)20重量部を用いて、実施例1と同様に二軸押出機を用いペレット化した後、減圧乾燥を行い、目的とする樹脂組成物ペレットを得た。この樹脂組成物のメルトフローレート(210℃、2160g荷重)は2.0g/10分であった。
【0380】
この樹脂組成物から実施例1と同様にして、2種3層の多層共射出ブロー成形容器を得た。プリフォームにはストリークが認められず、そのリーディングエッジは水平であった。ブローボトルにもストリークは認められず、気泡あるいはゲル物も認められず、良好な外観を有していた。得られた多層ブロー成形容器を用いて、容器のデラミ発生率、容器胴部のヘイズ及び容器の酸素透過速度を実施例1と同様に測定した。評価結果を表3にまとめて示す。
【0381】
【表2】
Figure 2004161905
【0382】
【表3】
Figure 2004161905
【0383】
上記結果からわかるように、本発明の樹脂組成物を使用した実施例1〜12のブロー成形容器は、対衝撃剥離性、透明性、延伸性(ストリーク発生なし)及びガスバリア性に優れていた。これに対し、変性EVOH(C)を使用しなかった比較例1、2及び4では、延伸性不良でストリークが発生するとともに、デラミ発生率が大きく上昇した。また、変性EVOH(C)の代わりに低ケン化度のEVOHを使用した比較例3及び5では、ストリークは発生しなかったものの、デラミ発生率は大きく上昇した。また、熱可塑性樹脂(F)及び遷移金属塩(G)を配合しなかった比較例4及び5ではガスバリア性が低下した。
【0384】
また、本発明の樹脂組成物を使用した実施例1〜12の熱成形容器は、延伸性(熱成形性)、透明性に優れ、外観が良好で、ガスバリア性にも優れていた。これに対し、変性EVOH(C)を使用しなかった比較例1、2及び4では、ムラ及び局所的偏肉が認められ、一部不均一な延伸個所もあった。また、熱可塑性樹脂(F)と遷移金属塩(G)を配合しなかった比較例4ではガスバリア性が低下した。
【0385】
実施例1と2の比較から、相容化剤(J)を配合することによって、熱可塑性樹脂(F)の分散粒径を小さくすることができ、デラミ発生率を低下させるとともにヘイズも低下させられることがわかる。また、実施例1、3、4及び5を比較すれば、変性EVOH(C)の含有量が多くなるほどデラミ発生率が低下する傾向が認められる。
【0386】
また、実施例1と6の比較、あるいは実施例8と9の比較から、変性EVOH(C)中の構造単位(I)の量が多いほどデラミ発生率が低下させられることがわかる。また、実施例1と7の比較、実施例8と10の比較あるいは実施例11と12の比較から、EVOH(H)と変性EVOH(C)のエチレン含有量の差が小さい方が、デラミ発生率、ヘイズともに低下させられることがわかる。さらに、変性EVOH(C)の原料の一価エポキシ化合物(B)が、1,2−エポキシブタン又はグリシドールである場合に、エポキシプロパンである場合よりもデラミ発生率を低下させられる傾向が認められる。
【0387】
【発明の効果】
本発明の樹脂組成物は、極めて優れたガスバリア性を有し、耐衝撃剥離性、延伸性、柔軟性及び熱成形性に優れている。したがって、当該樹脂組成物からなる層を少なくとも1層含む多層構造体は二次加工性に優れており、特に共射出ブロー成形容器及び熱成形容器に適している。これらの容器は、透明性、ガスバリア性、外観に優れており、酸素による劣化を受けやすい製品の包装容器として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】合成例1、7及び8において変性EVOH(C)を製造するために使用した押出機の構成の模式図である。
【図2】合成例2〜6において変性EVOH(C)を製造するために使用した押出機の構成の模式図である。
【図3】合成例1で得られた変性EVOH(C)のH−NMRチャートを示す図である。
【図4】モデル化合物の一つである、1−イソプロポキシ−2−トリフルオロアセトキシ−ブタンのH−NMRチャートを示す図である。
【図5】モデル化合物の一つである、1−(1−イソプロポキシ−2−ブトキシ)−2−トリフルオロアセトキシ−ブタンのH−NMRチャートを示す図である。
【図6】合成例7で得られた変性EVOH(C)のH−NMRチャートを示す図である。
【図7】モデル化合物の一つである、1−イソプロポキシ−2,3−ジトリフルオロアセトキシ−プロパンのH−NMRチャートを示す図である。
【図8】合成例4で得られた変性EVOH(C)のH−NMRチャートを示す図である。
【図9】良好なリーディングエッジを有する有底パリソンの一部を表す概略図である。
【図10】不良なリーディングエッジを有する有底パリソンの一部を表す概略図である。
【符号の説明】
11 容器口部
12 PES/EVOH多層部分
13 PES単層部分
14 リーディングエッジ

Claims (9)

  1. 下記構造単位(I)を0.3〜40モル%含有するエチレン含有量5〜55モル%の変性エチレン−ビニルアルコール共重合体(C)及び酸素を吸収することが可能な熱可塑性樹脂(F)からなる樹脂組成物。
    Figure 2004161905
    (式中、R、R、R及びRは、水素原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を表す。R、R、R及びRは同じ基でも良いし、異なっていても良い。また、RとRとは結合していても良い。またR、R、R及びRは水酸基、カルボキシル基又はハロゲン原子を有していても良い。)
  2. 熱可塑性樹脂(F)が炭素−炭素二重結合を有する請求項1記載の樹脂組成物。
  3. 熱可塑性樹脂(F)が芳香族ビニル化合物からなる単量体とジエン化合物からなる単量体を共重合してなるものである請求項1又は2記載の樹脂組成物。
  4. さらに、遷移金属塩(G)を含有する請求項1〜3のいずれか記載の樹脂組成物。
  5. さらに、上記構造単位(I)を含有しないエチレン含有量5〜55モル%のエチレン−ビニルアルコール共重合体(H)を含有する請求項1〜4のいずれか記載の樹脂組成物。
  6. さらに、相溶化剤(J)を含有する請求項1〜5のいずれか記載の樹脂組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれか記載の樹脂組成物からなる層を少なくとも1層含む多層構造体。
  8. 請求項7記載の多層構造体からなる共射出ブロー成形容器。
  9. 請求項7記載の多層構造体からなる熱成形容器。
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