JP2004154175A - 健康維持管理のための総合的呼吸機能検査方法および装置 - Google Patents
健康維持管理のための総合的呼吸機能検査方法および装置 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】安静呼吸中の指先部へのパルスオキシメータの装着による酸素飽和度SaO2の計測を行う。既知濃度FI(CO)の一酸化炭素と、既知濃度FI(He)のヘリウムとを含む空気をテストガスとして用い、最大呼気位RVから最大吸気位TLCまで一挙に吸入する吸入動作と、これに続く10秒間の呼吸停止と、その後、最大呼出による最大呼気位RVまでの呼出動作とをこの順序で行う。呼出動作時の流量を計測してメモリにストアしておき、換気機能の指標である%FVC、FEV1%(1秒率)、RAT(係数勾配指数)を算出し、ガス交換機能の指標であるDLCO、DLCO/VAを算出し、代謝代替機能の指標P′CO(22)およびガス輸送機能の指標SPo2を算出する。その後、総合呼吸機能容積A、健康度B、呼吸機能危険度Cを算出する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、公衆衛生の分野における健康維持管理のための気相系呼吸機能検査方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
生活習慣の評価と管理を中心とした健康維持管理を進めるには、呼吸機能検査の各種の指標を算出し、これによって、たとえば健康青年期を基準値としたときの呼吸機能の維持のされ方、あるいは呼吸機能の低下による健康レベルの程度を知ることができる。この気相系呼吸機能は、換気機能、ガス交換機能、ガス輸送機能、代謝代替機能が挙げられる。
【0003】
先行技術では、換気機能の検査測定、ガス交換機能、ガス輸送機能の各検査測定は、個別的に行われている(特許文献1,2)。たとえば、呼出後半の呼出努力が不充分ならば測定が繰返され、換気機能の検査測定で3回程度以上繰返し、またガス交換機能の検査測定を、たとえば3回程度繰返し、こうして各機能の検査測定値の正確な値を求める。各測定回数毎に被験者は、たとえば立位で、できるだけ多く吸気し、マウスピースを口にくわえた状態で、できるだけ早く呼気を排出する。したがって老人、病人を含めた全ての被験者に対して、被験者の呼出努力の負担を軽減することが望まれている。また測定時間の短縮も望まれている。すなわち換気機能の検査のために少なくとも1回の測定を行わなければならず、またガス交換機能の検査のために少なくとも1回の測定を行わなければならず、一般には、換気機能のために3回程度以上の測定を行う。ガス交換機能のために2〜3回程度の測定を繰返し、合計5〜6回ないしは10回程度の測定を行って正確な測定値を得ている。したがって被験者の負担が非常に大きい。このことは、老人および病人などにおいて、特に呼出努力の負担の軽減が望まれている。また、ガス輸送の検査測定も別途に行われるため、ID(識別)データの入力、被験者に対する測定説明、ならびに計測のための時間がさらに必要となり、測定時間が延長することとなる。
【0004】
【特許文献1】
特許第2786807号公報
【特許文献2】
特許第2786808号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、4種類の気相系呼吸機能の検査を、一連の1回の測定で行って、被験者の呼出努力の負担を軽減して、短時間に完了することができるようにした、健康維持管理のための気相系呼吸機能検査方法および装置を提供することである。
【0006】
したがって、気相系呼吸機能検査実施に際して、諸種IDデータ入力時の安静呼吸の際にSPO2の計測を行い、計測データを電気信号にてコンピュータに入力する。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、呼吸機能計測状態で、安静呼吸中に、
パルスオキシメータを用いて、
被験者の光透過性のよい指先部に、光を照射して、その透過光の拍動成分を求め、これに基づいてSaO2(動脈血酸素飽和度)を計測し、
SaO2を表わす電気信号を、健康維持管理のための総合的呼吸機能検査方法に組込まれている解析用コンピュータに与えることを特徴とする検査方法である。
【0008】
また本発明は、被験者が行う最大呼気位RVから最大吸気位TLCまで一挙に吸入する吸入動作と、
これに続くt秒間の呼吸停止と、
その後、最大呼出による最大呼気位RVまでの呼出動作との一連の1回呼吸動作を利用して、
気相系呼吸機能の評価データを収集するに際し、
既知濃度FI(CO)の一酸化炭素と、既知濃度FI(He)のヘリウムとを含む空気を、テストガスとして使用し、
吸入時にテストガスの吸入分量VIを計測し、
吸気から終了すれば、t秒間呼吸を停止し、
その後、分析用呼出ガスを収集するとともに、呼気の最大流量気量曲線の下行脚をメモリに記憶し、
その採取ガス中の一酸化炭素の濃度FE(CO)と、
ヘリウムの濃度FE(He)とを計測し、
一連の1回の呼吸動作によって、少なくとも換気機能と、ガス交換機能と酸素消費の要求度とを表わす指標を算出することを特徴とする健康維持管理のための総合的呼吸機能検査方法である。
【0009】
また本発明は、被験者が行う最大呼気位RVから最大吸気位TLCまで一挙に吸入する吸入動作と、
これに続くt秒間の呼吸停止と、
その後、最大呼出による最大呼気位RVまでの呼出動作との一連の1回呼吸動作を利用して、
気相系呼吸機能の評価データを収集するに際して使用される健康維持管理のための総合的呼吸機能検査装置であって、
既知濃度FI(CO)の一酸化炭素と、既知濃度FI(He)のヘリウムとを含む空気を、テストガスとして、被験者のマウスピースに供給するガス供給源と、
マウスピースに流れる流量を計測する流量計と、
流量計の出力を時間経過に伴ってストアするメモリと、
分析用呼出ガスを収集するサンプリングバッグと、
サンプリングバッグの採取ガス中の一酸化炭素の濃度FE(CO)と、ヘリウムの濃度FE(He)とを計測する分析計と、
メモリのストア内容と分析計の出力とを用いて演算し、少なくとも換気機能とガス交換機能と酸素消費要求度とを表わす指標を算出する処理回路とを含むことを特徴とする健康維持管理のための総合的呼吸機能検査装置である。
【0010】
本発明は、一連の1回の呼吸機能検査において、4種類の呼吸機能、すなわち換気機能、ガス交換機能、ガス輸送機能、代謝機能の各指標の計測・算出を行い、被験者の呼出努力の負担の軽減を図るとともに、検査に必要な時間の短縮化を図り、健康増進の維持管理指導を行うことを可能にする。
【0011】
本発明に従えば、テストガスを用い、少なくとも1回の、少ない測定回数で気相系呼吸機能の検査を行って指標を算出することができる。これによって被験者の呼出努力の負担を軽減することができ、測定時間を短縮することができる。
【0012】
換気機能の検査のためには、従来では、前述の吸入動作および呼出動作を行い、呼吸のためのガスは、空気である。これに対してガス交換機能の検査では、従来では前述の吸入動作、呼吸停止および呼出動作をこの順序で行い、一酸化炭素およびヘリウムが混合されたテストガスを用いる。
【0013】
換気機能の検査のための吸入動作と呼出動作は、ガス交換機能の検査のための吸入動作と呼出動作とにそれぞれ類似する。ガス交換機能検査における呼吸停止の時間tは、10秒間と規定され、たとえば10.3秒間である。しかもガス交換機能の検査のために用いられるテストガスに混合される一酸化炭素の濃度FI(CO)は0.3%と規定され、たとえば0.298%であり、ヘリウムの濃度FI(He)は10%と規定され、たとえば9.997%である。このようなテストガスに混合されている一酸化炭素およびヘリウムの割合は小さいので、テストガスは、換気機能の検査のために用いられる空気の組成に類似した組成を有する。したがって本発明では、ガス交換機能のためのテストガスを用い、被験者が吸入動作、呼吸停止および呼出動作を行い、この呼出動作は、最大呼気位RVまで行うことによって、そのガス交換機能の検査を行うことができるのはもちろん、換気機能の検査も、無視できる程度のわずかな誤差の範囲内で、換気機能検査の諸指標を得ることができる。
【0014】
本件発明者の実験によれば、前述の呼吸停止を行うことなく吸入動作と呼出動作とを空気を用いて行うことによって得られた正確な従来からの換気機能の検査結果に比べて、本発明によって得られた換気機能検査結果は、数%の誤差を含み、実用上、問題がないことが確認された。こうして本発明によれば、少ない測定回数で、たとえば2〜3回の測定回数で、少なくとも換気機能とガス交換機能の検査を終了することができるという、画期的な優れた効果が達成される。
【0015】
また本発明は、換気機能指標は、%FVC(努力肺活量比)、FEV1%(1秒率)、最大流量気量曲線に基づく諸指標またはRAT(係数勾配指数)であり、
ガス交換指標は、
DLCO(肺CO拡散能力)、
DLCO/VA、
D′LCO/V′A、
P′CO(22)、
D′LCO/V′A(22)、
P′CO(22)、または
D′LCO/V′A(22)であることを特徴とする。
【0016】
また本発明は、処理回路は、代謝代替機能とガス輸送機能とを表わす指標SaO2(動脈血酸素飽和度)をさらに算出することを特徴とする。
【0017】
また本発明は、代謝代替機能の指標は、P′CO(22)であり、
ガス輸送機能の指標は、SPO2(指先酸素飽和度)であることを特徴とする。
【0018】
また本発明は、前述の健康維持管理のための総合的呼吸機能検査装置によって得られる6つの指標(%FVC、FEV1%、RAT、D′LCO/V′A(22)、SPO2、P′CO(22))を用いて、メモリに予めストアされている呼吸機能基準値(青年期の一般人の前記6つの各指標の平均値と標準偏差)とともに、前記6つの各指標の偏差値w1〜w6を算出し、
前述の指標%FVCをX1で表し、その指標%FVCの平均値をX1−で表し、
指標FEV1%をY1で表し、その指標FEV1%の平均値をY1−で表し、
指標RATをZ1で表し、その指標RATの平均値をZ1−で表し、
指標D′LCO/V′A(22)をX2で表し、その指標D′LCO/V′A(22)の平均値をX2−で表し、
指標SPO2をY2で表し、その指標SPO2の平均値をY2−で表し、
指標P′CO(22)をZ2で表し、その指標P′CO(22)の平均値をZ2−で表し、
各標準偏差をσX1,σX2,σY1,σY2,σZ1,σZ2でそれぞれ表し、
各偏差値をw1〜w6でそれぞれ表すとき、
w1 = (X1−X1−)・100/σX1+100
w2 = (X2−X2−)・100/σX2+100
w3 = (Y1−Y1−)・100/σY1+100
w4 = (Y2−Y2−)・100/σY2+100
w5 = (Z1−Z1−)・100/σZ1+100
w6 = (Z2−Z2−)・100/σZ2+100
8つのブロックの呼吸機能の容積の総和(すなわち総合呼吸機能容積)Aを算出し、
A = w1・w3・w5+w2・w3・w5
+w1・w4・w5+w2・w4・w5
+w1・w3・w6+w2・w3・w6
+w1・w2・w6+w2・w4・w6
その後、健康度B、呼吸機能危険度Cを算出し、
B(%) = A・100/2003
ここで2003は、青年期の一般人の総合呼吸機能容積を表す、
C(%) = 100−B
こうして算出した前記総合呼吸機能容積Aと健康度Bと呼吸機能危険度Cとを用いて、生活習慣改善のための処方を表示出力して、
健康維持管理を効果的、効率的に進めることを可能にする健康維持管理の方法である。
【0019】
換気機能の指標としては、FV(最大流量気流量曲線)解析およびVT(最大努力性呼出曲線)解析を通して得られる%FVC、FEV1%(1秒率)が挙げられる。さらにピークフロー値から最大呼気位までの最大流量気量関係から、RAT(係数勾配指数)、dV/dFが算出される。その結果、FEV1%、RATのダイアグラムを、表示手段の2次元表示面に描画することができる。換気機能は、素因変化(気道過敏性)、形態的変化(気道および肺胞)、過膨張、末梢気道閉塞等の健康管理上の問題点に関連がある。
【0020】
ガス交換機能の指標としては、DLCO、DLCO/VA(DLCOを測定時の肺気量VAで割った値DLCO/VAは、Permeabilityの指標として用いられ、肺胞の破壊の程度を反映して低下する値であり、慢性肺気腫の診断に用いられる)、D′LCO/V′A、D′LCO/V′A(22)等が挙げられる。ダッシュ記号は、後述のテストガスのようなHeによる希釈空気ガスを用いたときの測定値を示す。ガス交換機能は、総合ガス交換能力を表し、代謝代替機能の指標であるPCOあるいはPCO(22)は末梢組織における酸素消費要求度と関連がある。
【0021】
代謝機能の指標としては、V′O2(酸素消費摂取量(毎分))、V′CO2(二酸化炭素産生量(毎分))、R(ガス交換比=V′CO2/V′O2)、AT(Anaerobic Threshold)、さらに運動消費エネルギー(E1)および1日消費推定エネルギー(E2)等が挙げられる。代謝代替機能PCO(22)(CO分圧、22は後述のように標準体重基準化された値を示す)は酸素消費量、運動(活動)消費エネルギーと関連がある。
【0022】
ガス輸送機能の指標としては、SPO2が挙げられる。ガス輸送機能は、末梢組織へのO2の輸送性と関連がある。
【0023】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施の一形態の健康維持管理のための気相系呼吸機能の検査方法を説明するための図である。図1の横軸は時間を表わし、図1の縦軸は気量(単位mL)である。被験者は、1回の検査測定で、図1の参照符a〜d3に対応した動作を行う。このような少なくとも1回の検査測定によって、換気機能、ガス交換機能、代謝代替機能、ガス輸送機能などの気相系呼吸機能の検査を行って、各検査の指標を算出することができる。
【0024】
図2は、被験者の最大流量気量曲線を示す図である。この図2に示される曲線には、前述の図1に示されるグラフの対応する参照符a〜d3が示される。図2の横軸は気量(単位L、リットル)であり、縦軸は流量(単位L/sec)である。Lはリットルを表わす。この最大流量気量曲線(FV曲線と略称することがある)を用いて換気機能の指標を算出することができる。
【0025】
図3は、本発明の実施の一形態の健康維持管理のための気相系呼吸機能検査装置の全体の電気的構成を示すブロック図である。被験者の換気機能およびガス交換機能の同時的な、したがって同一検査体系での測定を行うために、被験者は口に管であるマウスピース21をくわえる。混合ガス源40からは第1切換え弁41に混合ガスであるテストガスを供給する。前記テストガスは、0.3%CO、10%He、20%O2および70%N2の4者混合ガスである。第1切換え弁41には呼気の流量を計測する流量計22が接続され、その流量計22の出力は処理回路23に与えられ、流量と気量とが時間経過に伴ってサンプリングされて読取られる。流量計22からの呼気は、管路42から第2切換え弁43に導かれ、この第2切換え弁43は、管路42からの呼気を管路44から大気放散し、または管路45を経て可撓性のあるサンプリングバッグ39に導く。バッグ39内の呼気のCO濃度は、CO濃度検出手段46によって検出され、またHeの濃度はHe濃度検出手段47によって検出され、それらの各濃度検出手段46,47の出力は処理回路23に与えられる。被験者の上述の気相系呼吸機能検査とほぼ同時に、SPO2の測定手段31によって代謝代替機能とガス輸送機能とを表す指標SaO2およびSPO2を検査して測定し、その測定結果を、マイクロコンピュータによって実現される処理回路23に与え、これらの測定結果、およびその他の測定結果は全て、メモリ24にストアされる。処理回路23は、このメモリ24のストア内容を読出して前述および後述の演算処理を行い、検査を行う。サンプリングバッグ39のガスは、酸素濃度を検出するO2センサによって検出され、その測定結果は、処理回路23に与えられる。
【0026】
図4は、図3に示される処理回路23の動作を説明するためのフローチャートである。ステップs1からステップs2に移り、第1切換え弁41を第1位置41aから第2位置41bに切換え、被験者は管21を口にくわえた状態で、図1および図2の参照符aでは、通常の呼吸をしている。次に、参照符bから参照符cで示されるように、混合ガス源40からの混合ガスを最大呼気位RVから最大吸気位TLCまで一挙に吸入して吸入動作を行う。この位置で、吸気の始めから正確に10秒間の呼吸停止努力をさせる。次に、ステップs3において第1切換え弁41を第1位置41aに切換え、このとき第2切換え弁43は第1位置43aとしておき、図1および図2の参照符d1〜d3で示されるように、急速に最大呼出させて呼出動作を行い、最大呼気位RVに至らせる。このときステップs4では、流量計22によって計測される呼気の流量の時間経過を測定し、メモリ24にストアする。
【0027】
ステップs5において呼気の最初から750mLを測定し、その750mL分の呼気は、第2切換え弁43の第1位置43aから管路44を経て大気放散される。次のステップs6では、第2切換え弁43を第2位置43bに切換え、ステップs7では、残りの呼気ガスをバッグ39に管路45を経て1000mLを貯留し、そのときにおいてもまたステップs8では、流量計22の計測値を時間経過に伴って測定してメモリ24にストアしておく。ステップs9では、ステップs7において1000mLの計測後に、第1位置43aに切換えて、最大呼気位RVまで、残りの呼気を大気放散させ、このときにおいてもまた流量計22の計測値は処理回路23からメモリ24にストアされる。こうして気量と流量とが対応づけられてメモリ24にストアされることになる。
【0028】
処理回路23には、陰極線管または液晶表示素子などを用いた目視表示手段25が接続され、その表示面26には、前述の表示図面などを表示することができる。また記録紙27に、既に測定してある最大流量気量曲線が描かれているときには、その記録紙27を、光学的に読取る読取手段28に供給してその記録紙27に記録されている流量気量曲線を読取り、メモリ24にストアすることもまた可能である。
【0029】
処理回路23は、ステップs10でメモリ24にストアされている最大流量気量曲線の下行脚101(図2のd2,d3)のピーク位置である最大吸気位TLCを検出し、そのときの最大流量PEFRおよびそのときの気量V1を求める。ステップs11では、最大流量気量曲線の気量に関して、相対気量Rを求める。このようにして相対気量Rと、それに対応する流量との組合わせを求めた後、ステップs12において、求められた相対気量と流量とから、後述の式1の2次式のあてはめを行う。
【0030】
ステップs13では、下行脚にあてはめられた2次式の1次項の係数a1と2次項の係数a2とを演算した結果の値を採用して、係数勾配指数RATを求める。
【0031】
次のステップs14に従って、1秒率FEV1.0%を計算する。ステップs11で相対気量Rの代りに絶対気量が選択されることもでき、このときには、2次式変数xは、絶対気量となる。
【0032】
再び図2の最大流量気量曲線を参照して、流量は、初期の短時間に急速に増大し、流量最大値PEFRに達し、その後は比較的緩やかに最大呼気位の残気量点RVまで低下する。この流量最大値PEFRから点RVまでの範囲が、下行脚と呼ばれ、被験者の気道の状態によって曲線101が変化する。
【0033】
この図2において、FV曲線の下行脚を示す曲線101は次式1を用いて2次曲線に近似することができる。
y = a0+a1・x+a2・x2 …(1)
【0034】
式1において、yは流量であり、xは相対気量Rであり、a0は定数である。式1中の定数項a0、1次項の係数a1、2次項の係数a2をそれぞれ計算する。
【0035】
a1,a2を求める演算を以下に略述する。処理回路23は、メモリ24にストアされている最大流量気量曲線の下行脚のピーク位置を検出し、そのときの最大流量PEFRおよびそのときの気量V1(図2参照)を求める。流量気量曲線の気量に関して、相対気量または絶対気量のいずれかの選択をする。相対気量Rは、式2で示される。
R = VCX/VC1 …(2)
【0036】
ここでVC1は、図8において下行脚のピーク時の気量V1から最大呼気位RVの気量VCまでの気量であり、
VC1 = VC−V1 …(2a)
【0037】
VCXは、それらのPEFR位とRV位との間におけるRV位からさかのぼる気量を示す。したがって前述の相対気量Rは、下行脚のピーク時の気量VC1を1.0とし、RV位を零としたときの気量の度合いを表している。このような相対気量を採用することによって、多数の被験者相互間の下行脚の評価を相対的に行うことができる。絶対気量というのは、各被験者固有の気量であって、絶対気量に基づく演算をすることによって、各被験者毎の評価を行うことができる。
【0038】
このようにして相対気量Rと、それに対応する流量との組合わせを求めた後、求められた相対気量と流量とから、式1の2次式のあてはめを行う。下行脚にあてはめられた2次式の1次項の係数a1と2次項の係数a2とを演算した結果の値を採用する。
【0039】
次に、係数勾配指数(RAT)を算出する。前記のように式1の1次項係数a1と2次項係数a2を計算し、2次元座標軸にa1を縦軸、a2を横軸として表せば図5のようになる。図5は、処理回路23によって、a1,a2に基づいてRATを算出する原理を説明するための図である。原点Oと点P(a2,a1)とを結ぶ直線OPが横軸(a2軸)となす角をθとすれば
θ = tan−1(a1/a2) …(3)
となる。θを度で表し、a1とa2の正負によって異なる次の式で表されたものを係数勾配指数(RAT)とする。
【0040】
RAT = θ°/180° (a1>0,a2>0:第I象限)…(4)
RAT = 1+(θ°/180°) (a1>0,a2<0:第II象限)…(5)
RAT = −(1−θ°/180°) (a1<0,a2<0:第III象限)…(6)
RAT = θ°/180° (a1<0,a2>0:第IV象限)…(7)
【0041】
1秒率FEV1.0%は、できるだけ多くを吸気し、これをできるだけ速やかに呼気として排出したときの最初の1秒間の呼気量(FEV1.0と略すこともある)と全呼気量(努力肺活量)(FVCと略すこともある)との比(百分率)で表示される。
【0042】
FEV1.0,RATは、メモリ24のストア内容に基づいて、以下に述べるようにして算出する。流量計22による呼気10mL毎の出力が得られ、その気量と時計による経過した時間とは前述のようにメモリ24にストアされ、これらの値から、10mL毎の流量を計算し、この気量と流量との値は、メモリ24にストアされる。処理回路23によって、1秒経過したかどうかを判断し、1秒が経過しておれば、その時までの気量を1秒量として計算し、メモリ24に記憶する。流量が零になったかどうかを判断し、流量が零になっておれば気量が最大呼気位RVの残量となったと判断し、全呼気量(努力肺活量)を計算し、でメモリ24に記憶する。流量が零にならなければ、流量が零になるまで、前述の流量計算の動作と、流量と気量のメモリ24へのストアとを繰返す。
【0043】
メモリ24に記憶されている流量と気量とからFV曲線を求め、これを記録紙27上に記録する。FV曲線を前述の2次曲線で近似させ、第1次項と第2次項との係数を求め、さらにRATを求め、これをメモリ24に記憶する。記憶されている1秒量と努力肺活量とからFEV1%を求める。このFEV1%とRATとをグラフ化し、これを記録紙27上に記録する。こうして一連の操作を終了する。
【0044】
換気機能の評価並びに管理に関して、本発明に従うライフスタイル管理のためのFEV1%、RATの相関関係の利用について、さらに説明する。気導閉塞性、気道過敏性の評価に有用であり、被験者の病変管理を可能にする。さらに、縦軸FEV1%および横軸RATを基準にして、ゾーン化する。右斜め上向きの1次直線ラインの右上方領域とRAT≧0.2以上から成るゾーンをゾーンAと定義する。このゾーンにある被験者は健康状態にある。FEV1%80以上、RAT≧0のゾーンの内ゾーンAを除外した部分をゾーンBと定義する。このゾーンにある被験者は、ライフスタイルの変更をした方がよい。FEV1%70以上80以下、かつRAT≧0のゾーンとFEV1%70以上、RAT≦0のゾーンを併せ部分をゾーンCと定義する。このゾーンにある被験者は、疾病のスクリーニングが必要である。FEV1%55以上70以下のゾーンをゾーンD1と定義する。このゾーンにある被験者は疾病の管理を要する。FEV1%40以上55以下のゾーン,FEV1%40以下のゾーンをゾーンD2,D3とそれぞれ定義する。このゾーンにある被験者は入院、通院を要するし、救急処置が必要な場合もある。このようにライフスタイル管理を含めた換気能力評価ができる。
【0045】
次いで、本発明に従うライフスタイル管理による健康管理のための換気機能、ガス交換機能(能力とも呼ぶ)の総合評価について説明する。前述の換気機能の評価はRATとFEV(換気機能)との関係からライフスタイル管理を目指したものであるが、それにガス交換機能(P′CO、D′LCO、D′LCO/V′A、P′CO(22)、D′LCO(22)、D′LCO/V′A(22)、SPo2)をパラメータとして加え3次元的に評価すると、呼吸機能検査指標と健康管理がより論理的に関連づけられる。
【0046】
肺のガス交換機能の指標としてのCO肺拡散能力D′LCOと、そのときのHeの稀釈からV′Aとを求めて、値D′LCO/V′Aを演算して求めるための手法を説明する。
【0047】
CO肺拡散能力D′LCOの測定方法は、1回呼吸(single breath)法が採用され、これは、息こらえ(breath holding)法とも言われている。被験者は、前述のように最大呼気位RVから最大吸気位TLCまで一挙に混合ガスであるテストガスを吸入し、この位置で吸気の始めから正確に10秒間の呼吸停止をさせる。その後、急速に最大呼出させて最大呼気位RVに至らせ、このとき最初の750mLを捨てて、残りの1000mLの呼気ガスをサンプルバッグ39に集めてガス分析を行う。
【0048】
COは肺でとられるので肺胞内呼出CO濃度FACOは時間tとともに減少するが、Heは肺でとられないので時間によって変わらない。肺胞内呼出He濃度をFAHeとすると、時間t=0におけるFACO(0)は
FACO(0) = FICO・FAHe/FIIHe …(8)
として求められる。定義より
DLCO = V″CO/PACO …(9)
である。V″COはVCOの1階微分である。この式に
V″CO = −dVCO(t)/dt
PACO = PACO(t) …(10)
を代入すると
dVCO(t)/dt = −DLCO・PACO(t) …(11)
となる。ここで、VA(t)を肺胞気量(STPD、予め測定しておいたもの)とするとき、
VCO(t) = FACO(t)・VA(t) …(12)
であるから、
dVCO(t)/dt = FACO(t)・dVA(t)/dt+VA(t)・dFACO(t)/dt …(13)
であり、
VA(t) = 一定 …(14)
なら、
dVA(t)/dt = 0 …(15)
であるから
dVCO(t)/dt = VA・dFACO(t)/dt …(16)
また
PACO(t) = (PB−47)FACO(t) …(17)
この2つを上式に代入すると
【0049】
【数1】
【0050】
これがKroghの式である。呼吸停止時間tを秒にすると、
【数2】
【0051】
FACO(0)に上式(10)を代入すると、
【数3】
【0052】
VAの単位はml(0℃、1気圧、水蒸気なしの標準状態STPD)で、呼吸停止時間t=10秒として、DLCO(ml・min−1・torr−1)を計算で求めることができる。PBは、大気圧である。
【0053】
DLCOは式19で計算されるが、VAの求め方に2通りある。第1の求め方は、DLCO測定時の吸入気量(VI)に予め測定しておいた残気量(RV)を加えて、肺胞気量(VA )を求める。通常RV位からTLC位までの吸入であるので、VI は吸気肺活量に、VA は全肺気量(TLC)にほぼ等しい値となる。第2の求め方は本発明において算出する求め方であり、DLCO の測定時のHeの稀釈から次式でVA を測定する方法である。この場合には通常のVAと区別するために、V′Aで表す。′(ダッシュ記号)は、テストガスのようなHeの希釈による値を示す。
FIHe(VI+VD) = FA He・V′A …(21)
の関係が成立する。これより、
V′A = FIHe(VI+VD)/FAHe …(22)
となる。この場合VIに比べるとVDはきわめて小さいので、
VI+VD ≒ VI …(23)
とみなすことができる。
V′A = VI・FIHe/FAHe …(24)
でV′Aを求める。V′を式20のVAに代入した場合D′LCOとして、通常のDLCOと区別する。
【0054】
一酸化炭素較差CO分圧P′COおよびP′co(22)が次式25,26で示される。
【数4】
P′CO(22) = (P′co/BMI)×22 …(26)
【0055】
前式中、BMIはBody Mass Indexの略で肥満度を表し、体重(kg)/身長(m)2で算出される指標である。添え字(22)は、この標準体重基準化された値を示す。BMI=22.0は、健康的な適正体重であることを示す。
【0056】
したがってP′co (22)は標準体重基準化P′coとも呼ばれる。同様にD′LCO,D′LCO/V′Aも次式27,28に従い、標準体重基準化することができる。
D′LCO(22) = (D′LCO/BMI)×22 …(27)
D′LCO/V′A(22) = (D′LCO/V′A/BMI)×22 …(28)
D′LCO(22),D′LCO/V′A(22)は夫々標準体重基準化D′LCO(22),D′LCO/V′A(22)とも呼ばれる。
【0057】
式25は、肺胞におけるガス交換状態の推移を表し、単位時間当りの一酸化炭素の分圧差で、単位はmTorr/secである。式25の第1項(0.30/FICO)は、吸気ガス中の一酸化炭素濃度FICOを0.30(%)に補正する項である。第2項(PB−47)は、肺中における全乾ガスの圧力である。ここに47は、体温37℃における飽和水蒸気圧(単位Torr)である。第3項の前半{FICO×FAHe/FIHe}は、初期(t=0)における肺中の一酸化炭素の濃度であり、FACOは、終期における肺中の一酸化炭素の濃度である。これらに(PB−47)を掛けたものが肺中の初期と終期との一酸化炭素の分圧である。第4項の分子10は、圧力をTorrからmTorr(ミリトール)にするために1000倍し、ガス濃度が%表示であるので100で割ったもの、すなわち1000/100=10である。
【0058】
前述のように、式26は標準体重に基準化した単位時間当たりの一酸化炭素の分圧差で単位はmTorr/secである。
【0059】
式26の第1項は単位BMI当たりのP′coで身長(m)と体重(kg)で補正して、他と比較できる利点を有する。
【0060】
ステップs15では、D′LCO,D′LCO/V′A,D′LCO/V′A,P′CO(22),D′LCO/V′A(22)等パラメータの演算を行い、ステップs16では、3次元表示を行う。このようにして、図4のステップを用いて時系列的な換気機能とガス交換機能とを測定することによって、3次元の表示を行うことができる。このような3次元表示は、表示手段25によって達成される。
【0061】
FEV1%−RATの表示と同様にD′LCO/V′A,P′CO(22),D′LCO/V′A(22)をステップs15でメモリに記憶しておけば、随意にそれぞれをZ軸とする3次元表示グラフが得られる。これは、たとえばファンクションキーを押すことにより、D′LCO/V′A→P′CO(22)→D′LCO/V′A(22)とサイクルするように設定する。
【0062】
本発明の好ましい実施の形態によれば、図4のステップs16で各種パラメータを3次元表示する前にFEV1%とRATをまず2次元表示して、前述のように被験者の属するゾーンを同定する。ゾーンにより、3次元表示の際のZ軸パラメータとしてD′LCO/V′A,P′CO(22),およびD′LCO/V′A(22)の群の中から最も最適なガス交換機能指標を選び、ステップs16で3次元表示を実施する。
【0063】
したがって、ステップs15で2次元表示の結果から特定のパラメータのみを演算するような構成とすることができるし、またすべてのパラメータを計算後、メモリ24にストアし、所望のZ軸パラメータのみを取出し、3次元表示を完成するような構成とすることができる。いずれにしろ被験者の所属する健康グループにより、所望のZ軸パラメータ(ガス交換機能指標)を選択できる。
【0064】
本発明の実施のさらに他の形態では、前述の健康維持管理のための呼吸機能検査装置によって得られる6つの指標(%FVC、FEV1%、RAT、D′LCO/V′A(22)、SPO2、P′CO(22))を用いて、メモリに予めストアされている呼吸機能基準値(青年期の一般人の前記6つの各指標の平均値と標準偏差)とともに、前記6つの各指標の偏差値w1〜w6を算出し、前述の指標%FVCをX1で表し、その指標%FVCの平均値をX1−で表し、指標FEV1%をY1で表し、その指標FEV1%の平均値をY1−で表し、指標RATをZ1で表し、その指標RATの平均値をZ1−で表し、指標D′LCO/V′A(22)をX2で表し、その指標D′LCO/V′A(22)の平均値をX2−で表し、指標SPO2をY2で表し、その指標SPO2の平均値をY2−で表し、指標P′CO(22)をZ2で表し、その指標P′CO(22)の平均値をZ2−で表し、各標準偏差をσX1,σX2,σY1,σY2,σZ1,σZ2でそれぞれ表し、各偏差値をw1〜w6でそれぞれ表すとき、
w1 = (X1−X1−)・100/σX1+100
w2 = (X2−X2−)・100/σX2+100
w3 = (Y1−Y1−)・100/σY1+100
w4 = (Y2−Y2−)・100/σY2+100
w5 = (Z1−Z1−)・100/σZ1+100
w6 = (Z2−Z2−)・100/σZ2+100
【0065】
図6の各軸X1,X2,Y1,Y2,Z1,Z2によって仕切られた8つのブロックの呼吸機能の容積の総和(すなわち総合呼吸機能容積)Aを算出し、
A = w1・w3・w5+w2・w3・w5
+w1・w4・w5+w2・w4・w5
+w1・w3・w6+w2・w3・w6
+w1・w2・w6+w2・w4・w6
【0066】
その後、健康度B、呼吸機能危険度Cを算出し、
B(%) = A・100/2003
ここで2003は、青年期の一般人の総合呼吸機能容積を表す、
C(%) = 100−B
【0067】
こうして算出した前記総合呼吸機能容積Aと健康度Bと呼吸機能危険度Cとを用いて、生活習慣改善のための処方を表示出力して、健康維持管理を効果的、効率的に進めることを可能にする健康維持管理の方法が実現される。図6はこの健康維持管理の方法のために用いられる3次元直交座標系を示す。
【0068】
また本発明は、流量気量曲線の下行脚の波形を、
最大吸気位TLCから最大呼出するときの呼出途中で呼出努力の不充分のための流量気量(FV)曲線の一部分と、
安静吸気から最大呼出するときの流量気量(GV)曲線の一部分とから、合成する流量気量曲線より換気機能の参考値を算出することにより、被験者の呼出負担の軽減、測定時間の軽減を図ることを特徴とする。
【0069】
FV曲線は被験者が最大吸気し、できるだけ努力して速く呼出するのをスパイロメータで測定することにより求められる。しかしながら、被験者が最大呼気位(息をすべて吐き出す)まで一気に呼気できない場合がしばしばある。これは、被験者が呼気の中途で咳をしたりして一時的に呼気を停止すれば起こる。また、被験者が老人または病人である時、呼気を継続できないこともある。このような場合、FV曲線の下行脚が曲線の終点近くで急激に減衰(降下)し、曲線を使って正確にFV解析を行うことを不可能ならしめる。ここで「下行脚」とは、流量最大位(PEFR)から流量が0になるまで、FV曲線が下降する領域を指す。
【0070】
本発明は、FV曲線が不完全であってもFV波形を合成し、参考値としてFV波形解析を行うに適する波形を得るために、被験者の呼気データに基づいてFV曲線の不完全な部分を補完し、参考FV波形を合成する。
【0071】
こうして、最大吸気から最大呼出する時の流量気量(FV)曲線の一部分と、安静吸気から最大呼出する時の流量気量(GV)曲線の一部分とから波形を合成することを特徴とするFV波形解析のためのFV波形の合成方法が提供される。好ましくは、前記FV曲線の一部分がFV曲線上、最大吸気位から流量の急速減衰領域でのFV、GV両曲線の交差点Xまでを表し、そして前記GV曲線の一部分が交差点Xから最大呼気位Yまでを表す。
【0072】
さらに本発明によれば、(a)被験者の呼気データに基づいて最大吸気から最大呼出するときの流量気量(FV)曲線と、安静吸気から最大呼出するときの流量気量(GV)曲線とを求め、
(b)流量を縦軸、気量を横軸としてFV曲線、GV曲線を2次元座標上に表示し、
(c)FV曲線の急速減衰領域でのGV曲線との交差点Xを定め、
(d)FV曲線の最大吸気位から流量最大位を経由して前記交差点Xまでの第1曲線部分を描き、
(e)GV曲線上、前記交差点XからGV曲線の最大呼気位Yまでの第2曲線部分を描き、そして
(f)前記第1曲線部分と第2曲線部分をつなぐ、前記(a)〜(f)のステップから成る。好ましくは、ステップ(d),(e),および(f)をステップ(b)の2次元座標と異なる2次元座標上で行う。
【0073】
「FV波形解析」とは、FV波形に基づいて(1)dV/dF指標を求める、(2)FV曲線を2次式に近似する、(3)2次式の近似で充分でなければ、多次式に近似すること等を指す。
【0074】
合成される合成FV曲線は実測曲線(実測値)でないので、あくまで参考値として従来のFV波形解析等を補完するものであり、「合成FV曲線とその解析による参考値」としての本発明の意義が理解されるべきである。
【0075】
まず、被験者の呼気のFV曲線を求め、2次元座標上に表示する。呼気測定中、呼気が咳、息切れ等何らかの理由で跡切れたFV曲線を模式的に図8に示す。図9は、このような場合の実測例である。両図8,9中、FVは最大吸気から最大呼出するときの流量気量曲線で、GVは安静呼気から最大呼出する時の流量気量曲線を表す。図8,9から明らかなように、FV曲線は下行脚の下流域、すなわち終点近傍で急激に減衰(降下)する。図9中、この領域でのFV曲線とGV曲線の交差点をX(図8中、点8)で表し、GV曲線の終点、すなわち最大呼気位をY(図8中、点10)で表す。FV曲線は、X−Yの域において不完全(欠落)であるので、このFV曲線から正確な波形解析を行うことは不可能である。
【0076】
したがって、X−Y域のGV曲線を部分的にFV曲線につなぎ、波形(曲線)を合成すると、正常なFV曲線(図7に例示)に近い曲線ができあがる。具体的にはFV曲線の始点(0位)から、最大流量位(FV曲線の頂点)を経て、前記交差点XまでFV曲線を描画(トレース)し、XからYまでの部分GV曲線を描画して、疑似FV曲線を完成する。
【0077】
本発明に従うと、正常なGV曲線があれば、被験者のFV曲線が図8,9に示すように不完全であっても、FV解析に必要なFV波形を合成できる。本発明の合成法は、適当な表示手段(画面)上、FV曲線を2次元座標表示し、さらに重ねて同一画面上にGV曲線を表示し、前記のように波形合成の後、残存する不要な波形(たとえばGV曲線の立上り部分、あるいはFV曲線のX以降の落下部分)を消去して画面上、必要なFV合成波形のみを表示することができる。
【0078】
また、FV曲線、GV曲線の表示画面と異なる画面上、新たにメモリに保存したFV、GV曲線データからFV波形を合成して表示してもよい。
【0079】
それらの画面上、dV/dF指標等を演算の上、共に表示することも可能である。図10は、そのような一連のFV波形合成を行った結果の一例を表す。
【0080】
図10には、後述のように2次式に近似した2次曲線(13)も併せて表示してある。本発明に従うFV波形の合成方法は、以下の実施例に詳述する装置によって達成することができる。
【0081】
以下実施例でもって本発明をより具体的に説明する。前述の図2において、被験者の呼気のFV曲線を求めるためのスパイロメータなどの電気的構成が示される。肺機能が検査されるべき被験者は、たとえば立位で、できるだけ多く吸気し、鼻をおさえ口に管21をくわえて、できるだけ早く呼気を流量計22に供給する。マイクロコンピュータなどによって実現される処理回路23は、流量計22の出力に応答し、その流量と気量とを時間の経過に伴って演算して記憶し、その結果を陰極線管または液晶表示素子などを用いた目視表示手段25に表示するとともに必要があれば記録紙27に記録する。
【0082】
処理回路23は、流量計22から送られるデータの代わりに、予め記録紙27に描かれた流量気量曲線を、デジタイザなどの読取装置28で読取り数値化されたデータを取込むことも可能である。流量は、たとえば気量10ml毎に、それに要する時間が計測され、流量の計算が行われる。
【0083】
図7は、上記のようにして求められたFV曲線の模式的な例であり、流量F(l/秒)を縦軸に、気量V(l)を横軸にとる。流量は、初期の短時間に急速に増大し、流量最大値PEFRに達し、その後は比較的緩やかに最大呼気位の残気量点B(RV)まで低下する。この流量最大値PEFRから点Bまでの範囲が下行脚と呼ばれ、被験者の気道の状態によって曲線1〜曲線4のように変化する。たとえば、曲線4を描く被験者は、鼻アレルギー患者であることが多い。
【0084】
本発明に係るFV波形解析のためのFV波形の合成方法について、図8の別な模式的FV曲線を用いて詳しく説明する。
【0085】
曲線1は、図7と同様、最大吸気から最大呼出するときのFV曲線(ここでFVとも略す)を表す。曲線5は安静吸気(通常の状態)から最大呼出するときのGV曲線(ここでGVとも略す)を表す。曲線1と曲線5の交差点6,7間では、流量はGV>FVであり、交差点6,7において、FVとGVが流量において、ほぼ等しい。曲線1上の点8は、呼気が中断され、流量が急速に低下する点を示す。被験者が息切れを起こしたり、咳込むときなどに該当する。終点9は最大呼気位の残気量を表し、点10は安静呼気位の残気量を表すGVの終点で、横軸上FVの終点9より後方にある。
【0086】
したがって、何らかの理由でFVが図8に示すように中断され、滑らかな曲線を描かないとき、GVがあれば、被験者に再度の呼気を強いることなく、FV波形を合成できる。すなわち、曲線1のPEFR位11より点7までの間はFVをトレースし、点7から点8の間はFV,GVのいずれかをトレースし、そして点8から点10の間はGVをトレースする。
【0087】
これら一連の作業は、図8のようなチャート上、FVおよびGVを各々表示し、マニアルでトレースし、理想的な合成FV曲線を描き出すこともできるが、個別に測定したFVおよびGVのためのデータをメモリ24に記憶し、それらを処理回路23で再度演算した後、合成したFV曲線を画面または記録紙等の目視表示手段25に表示することが都合がよい。また既に記録紙に描かれた一方の曲線を読取装置28で読取り、メモリ24にある他方の曲線のデータと合成し、同様に合成FV曲線を得ることも考えられる。
【0088】
本発明に従うFV波形合成方法の利点は、安静呼吸からのGV曲線が得られておれば、最大呼吸からFV曲線を得るための流量、気量、測定中、測定が中断失敗しても、合成FV曲線が描けるところにある。FV曲線を得るために、測定をわざわざ繰返すことなく、FVより被験者が容易に得られるGVからFV曲線が合成できる。従って、最大呼出測定の回数を少なくすることができ、老人、病人の負担を軽減する。また必ずしも呼出を、最後まで行う必要がなく、測定時間の短縮も望める。
【0089】
実測したFV,GV曲線の一例を図9に示す。図9中、XはFVの急速減衰領域でのGVとの交差点で、図8の点8に対応する。YはGVの終点、最大呼気位を表し、図8の点10に対応する。この例では、図8の場合と全く同様にFVに、XにおいてGVを繋げば、合成FV曲線を得ることができる。
【0090】
さらに、合成したFV曲線を基にしてdV(気量)/dF(流量)指標を演算、プロットすると、たとえば図9に示すように、dV/dF分布曲線12を得る。図9は、dV/dF曲線12、実測FV曲線1、近似した2次曲線13(後述)を表す。図9,10に表示されている曲線例は、本件発明者による実測データに由来する。
【0091】
前記のように、FV波形の合成、さらに解析を行い、各種パラメータ(たとえばdV/dF)を算出し、肺機能を評価、機能不全の要因の同定を通して、究極的には、ライフスタイルを含めた健康管理が可能となる。
【0092】
前述の実施の各形態における時間経過に伴う測定結果は、処理回路23によってメモリ24に一旦、ストアされ、このメモリ24にストアされた測定結果のデータを、処理回路23によって演算して、前述の健康維持管理のための各機能の検査のための演算処理が実行される。
【0093】
【発明の効果】
本発明によれば、少なくとも一連の1回の検査測定によって、4種の気相系呼吸機能(換気機能、ガス交換、ガス輸送、代謝機能)の検査指標を算出することができる。これによって被験者の検査測定回数を減少して検査時の努力負担を軽減し、測定時間を大幅に短縮することができる。したがって、このことは特に中高年の呼吸機能低下者、老人および病人にとって好ましいことである。
【0094】
測定回数が少なくてすむので、各測定回毎の測定結果を目視表示または記録紙への印字などに必要な出力時間を短縮することもできる。また本発明によれば、総測定回数を6〜10回より2〜3回に減少することができるので、健康維持管理されるべき被験者の人数を大幅に増加することができ、先行技術の、たとえば約3倍に増加することができ、検査の作業効率が向上し、このことは検診機関にとって好ましいことである。このように健康維持管理が行われるべき被験者の数を大幅に増加することができる。さらに、そのうちの多くのリスク・グループの対象者に、本件発明による検査機器に基づくデータに基づいて健康増進の維持管理指導を推進することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態の健康維持管理のための気相系呼吸機能の検査方法を説明するための図である。
【図2】被験者の最大流量気量曲線を示す図である。
【図3】本発明の実施の一形態の健康維持管理のための気相系呼吸機能検査装置の全体の電気的構成を示すブロック図である。
【図4】図3に示される処理回路23の動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】図3に示される処理回路23より、RATを算出する図である。
【図6】本発明の健康維持管理の方法のために用いられる3次元直交座標系を示す。
【図7】被験者の呼気のFV曲線を模式的に示す図である。
【図8】本発明に従い、FV曲線を合成する模式図である。
【図9】FV,GV両曲線の一例を示す図である。
【図10】本発明に従いFV波形の解析、合成を行った一例を表示した図である。
Claims (8)
- 呼吸機能計測状態で、安静呼吸中に、
パルスオキシメータを用いて、
被験者の光透過性のよい指先部に、光を照射して、その透過光の拍動成分を求め、これに基づいてSaO2(動脈血酸素飽和度)を計測し、
SaO2を表わす電気信号を、健康維持管理のための総合的呼吸機能検査方法に組込まれている解析用コンピュータに与えることを特徴とする検査方法。 - 被験者が行う最大呼気位RVから最大吸気位TLCまで一挙に吸入する吸入動作と、
これに続くt秒間の呼吸停止と、
その後、最大呼出による最大呼気位RVまでの呼出動作との一連の1回呼吸動作を利用して、
気相系呼吸機能の評価データを収集するに際し、
既知濃度FI(CO)の一酸化炭素と、既知濃度FI(He)のヘリウムとを含む空気を、テストガスとして使用し、
吸入時にテストガスの吸入分量VIを計測し、
吸気から終了すれば、t秒間呼吸を停止し、
その後、分析用呼出ガスを収集するとともに、呼気の最大流量気量曲線の下行脚をメモリに記憶し、
その採取ガス中の一酸化炭素の濃度FE(CO)と、
ヘリウムの濃度FE(He)とを計測し、
一連の1回の呼吸動作によって、少なくとも換気機能と、ガス交換機能と酸素消費の要求度とを表わす指標を算出することを特徴とする健康維持管理のための総合的呼吸機能検査方法。 - 被験者が行う最大呼気位RVから最大吸気位TLCまで一挙に吸入する吸入動作と、
これに続くt秒間の呼吸停止と、
その後、最大呼出による最大呼気位RVまでの呼出動作との一連の1回呼吸動作を利用して、
気相系呼吸機能の評価データを収集するに際して使用される健康維持管理のための総合的呼吸機能検査装置であって、
既知濃度FI(CO)の一酸化炭素と、既知濃度FI(He)のヘリウムとを含む空気を、テストガスとして、被験者のマウスピースに供給するガス供給源と、
マウスピースに流れる流量を計測する流量計と、
流量計の出力を時間経過に伴ってストアするメモリと、
分析用呼出ガスを収集するサンプリングバッグと、
サンプリングバッグの採取ガス中の一酸化炭素の濃度FE(CO)と、ヘリウムの濃度FE(He)とを計測する分析計と、
メモリのストア内容と分析計の出力とを用いて演算し、少なくとも換気機能とガス交換機能と酸素消費要求度とを表わす指標を算出する処理回路とを含むことを特徴とする健康維持管理のための総合的呼吸機能検査装置。 - 換気機能指標は、%FVC(努力肺活量比)、FEV1%(1秒率)、最大流量気量曲線に基づく諸指標またはRAT(係数勾配指数)であり、
ガス交換指標は、
DLCO(肺CO拡散能力)、
DLCO/VA、
D′LCO/V′A、
P′CO(22)、
D′LCO/V′A(22)、
P′CO(22)、または
D′LCO/V′A(22)であることを特徴とする請求項3記載の健康維持管理のための総合的呼吸機能検査装置。 - 処理回路は、代謝代替機能とガス輸送機能とを表わす指標SaO2(動脈血酸素飽和度)をさらに算出することを特徴とする請求項3または4記載の健康維持管理のための総合的呼吸機能検査装置。
- 代謝代替機能の指標は、P′CO(22)であり、
ガス輸送機能の指標は、SPO2(指先酸素飽和度)であることを特徴とする請求項5記載の健康維持管理のための総合的呼吸機能検査装置。 - 請求項6の健康維持管理のための総合的呼吸機能検査装置によって得られる6つの指標(%FVC、FEV1%、RAT、D′LCO/V′A(22)、SPO2、P′CO(22))を用いて、メモリに予めストアされている呼吸機能基準値(青年期の一般人の前記6つの各指標の平均値と標準偏差)とともに、前記6つの各指標の偏差値w1〜w6を算出し、
前述の指標%FVCをX1で表し、その指標%FVCの平均値をX1−で表し、
指標FEV1%をY1で表し、その指標FEV1%の平均値をY1−で表し、
指標RATをZ1で表し、その指標RATの平均値をZ1−で表し、
指標D′LCO/V′A(22)をX2で表し、その指標D′LCO/V′A(22)の平均値をX2−で表し、
指標SPO2をY2で表し、その指標SPO2の平均値をY2−で表し、
指標P′CO(22)をZ2で表し、その指標P′CO(22)の平均値をZ2−で表し、
各標準偏差をσX1,σX2,σY1,σY2,σZ1,σZ2でそれぞれ表し、
各偏差値をw1〜w6でそれぞれ表すとき、
w1 = (X1−X1−)・100/σX1+100
w2 = (X2−X2−)・100/σX2+100
w3 = (Y1−Y1−)・100/σY1+100
w4 = (Y2−Y2−)・100/σY2+100
w5 = (Z1−Z1−)・100/σZ1+100
w6 = (Z2−Z2−)・100/σZ2+100
8つのブロックの呼吸機能の容積の総和(すなわち総合呼吸機能容積)Aを算出し、
A = w1・w3・w5+w2・w3・w5
+w1・w4・w5+w2・w4・w5
+w1・w3・w6+w2・w3・w6
+w1・w2・w6+w2・w4・w6
その後、健康度B、呼吸機能危険度Cを算出し、
B(%) = A・100/2003
ここで2003は、青年期の一般人の総合呼吸機能容積を表す、
C(%) = 100−B
こうして算出した前記総合呼吸機能容積Aと健康度Bと呼吸機能危険度Cとを用いて、生活習慣改善のための処方を表示出力して、
健康維持管理を効果的、効率的に進めることを可能にする健康維持管理の方法。 - 流量気量曲線の下行脚の波形を、
最大吸気位TLCから最大呼出するときの呼出途中で呼出努力の不充分のための流量気量(FV)曲線の一部分と、
安静吸気から最大呼出するときの流量気量(GV)曲線の一部分とから、合成する流量気量曲線より換気機能の参考値を算出することにより、被験者の呼出負担の軽減、測定時間の軽減を図ることを特徴とする請求項2記載の健康維持管理のための総合的呼吸機能検査方法。
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