JP2004154169A - 透析用水の製造方法および透析用水製造装置 - Google Patents

透析用水の製造方法および透析用水製造装置 Download PDF

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Abstract

【課題】外因性内分泌撹乱物質を含まない透析用水を調製する方法を提供する。
【解決手段】外因性内分泌撹乱物質の含有量がガスクロマトグラフ質量分析法にて検出限界以下の自然水を原水とし、該原水を殺菌処理および軟水化処理することを特徴とする透析用水の製造方法である。特に第4層および/または第5層地下水を原水として使用し、各種配管を外因性内分泌撹乱物質を溶出しない安定材料で構成する。第4層地下水等は実質的に外因性内分泌撹乱物質を含有しないため、得られる透析用水にも実質的に外因性内分泌撹乱物質を含まない透析用水を簡便、迅速かつ安価に製造することができる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、迅速かつ短時間に大量の透析用水を製造できる透析用水の製造方法であって、より詳細には透析用水原水として自然水を使用する透析用水の製造方法、および地下水をくみ上げて透析用水を製造する透析用水製造装置、透析液供給装置を含む透析用水製造システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
血液透析は患者の血液を体外に導き、透析液中に浸したセロハン管の中を通過させ、血液中の有毒成分を透析液中に排出させ、再び血液を生体内に戻す療法である。透析液としては、塩化カリウム溶液、塩化ナトリウム溶液等を主成分とする透析原液からなるA液と、重炭酸ナトリウム溶液からなるB液、および逆浸透膜を通過させて雑菌等を除去したRO水を透析用水として、A液、B液、透析用水=1:1.26:32.74の割合で調製し濃度監視をしたものが使用されている。急性の腎不全や薬物中毒などでは、腎機能が回復するまで短時間の透析処理が行われるが、慢性の腎不全患者では長期間反復多数の透析処理が必要となるため、透析用水の品質が問題となる。
【0003】
従来から、血液透析では、血液は透析膜の内を流れ透析液は外を流れるため、血液と透析液の直接の接触は起こらず、また透析膜の細孔は30Åとウイルスよりも小さいので、この膜を介する細菌の感染も生じないとの考えがある。しかしながら、細菌の産生する毒素などは透析膜を通過する可能性があり、なかでも細菌の菌体内毒素であるエンドトキシン、その一種であるパイロジェンなどが混在する場合があり、これらによるショック、悪寒戦慄を伴う高熱、敗血症を発症するなどの問題がある。
【0004】
一方、透析用監視装置は高度な制御を必要とするため、一台の機器を複数の患者が交互に使用する環境にある。具体的には、複数の透析用監視装置を設置した施設において、一台の透析用監視装置を複数の患者が交互に使用する。このため、透析用監視装置を介する感染等に対する十分な注意が必要となり、従来から、透析作業を行った直後に透析液を廃棄し、浄水にて事後水洗作業を行い、浄水を廃棄し、次いで消毒液による消毒作業を行って次の透析作業に備えている。なお、新たな透析処理に入る前には再度水洗作業を行い、透析装置を介した感染症の発生を防止している。このような透析装置の洗浄方法として、透析用監視装置内の洗浄殺菌に、電解により得られる酸性水を使用して透析用監視装置内の細菌、真菌、ウイルス等を完全に除去する方法が開示されている(特許文献1)。該方法によれば、配管内に付着するカルシウムやタンパク質などの栄養源を確実に除去でき、エンドトキシンなどの体内発生物質が透析液を通じて体内に混入することがない、とされている。
【0005】
一方、透析用水は入手が容易な水道水を原水とすることが一般的であるが、水道水は河川水などに特定の処理を施したものであり、地方や季節によってその成分が相違する。特に、炭酸カルシウムや硫酸カルシウムを含んだ硬度の高い水を使用して透析を行えば、硬水症候群を呈し危険な状態に陥る可能性があり、軟水化処理が必要となる。一般には、水道水または地下水を原水とし、これを軟水化し、微粒子を瀘過し、次いで逆浸透膜(以下、RO膜と称す。)によって透析用水を得ているが、原水の塩素殺菌によってもRO膜は汚染され、塩素濃度を高めるとRO膜の劣化を招くという問題がある。このようなRO膜を用いた装置を用いた精製水の製造方法として、原水の軟化手段と、塩素除去手段と、懸濁物質除去手段とをこの順序で配置してなる第1次処理システムと、第1次処理システムによる処理水をさらに浄化する、中空糸膜モジュールを備えた第2次処理システムとを含む精製水の製造装置がある(特許文献2)。該装置によれば、中空糸膜モジュールを使用するため、塩素による膜の損傷が少なく、RO膜を用いた装置では行なえなかった逆洗や消毒を頻繁に行なうことができ、製造される精製水の水質が高い、と記載されている。
【0006】
【特許文献1】
特開平8−252310号公報
【特許文献2】
特開平11−277062号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、透析用水製造装置の開発が進み、透析用水の品質が向上しても、一回に使用される透析用水量が変化するものでなく、通常、4時間の透析で120リットルにも及ぶ大量の透析用水が消費される。患者によっては治療期間が長期間に渡り、多数回の透析処置が必要とされ、透析専門施設などにおいては、高品質の透析用水を、簡便かつ大量に提供できる方法の開発が急務となっている。特に頻回に透析処理を行うため、高品質の透析用水を安価に提供する必要がある。
【0008】
また、実際の臨床状態として、透析患者の中には原因不明のかゆみを発症する場合がある。また、統計的には、健常人と比べて癌の発生率がおよそ5倍と高いとのデータや、患者によっては不妊傾向があり妊娠後も流産しやすい等の症例も存在する。原因不明の発熱の原因として、従来からパイロジェンやエンドトキシンの存在が見出されてきたが、現在のところ上記臨床症状の原因等は不明であり、原因解明が急がれている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、透析時に血液と直接的または間接的な接触を行う透析用水による透析患者への影響を詳細に検討した結果、特定の物質を除去することで透析患者に発生する原因不明の痒み、効率の癌発生率、不妊または流産傾向などを減少し得ること、および透析用水の原水として特定の地下水を使用すると、簡便かつ迅速に高品質の透析用水が製造できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち本発明は、以下の(1)〜(6)を提供するものである。
【0010】
(1) 外因性内分泌撹乱物質の含有量がガスクロマトグラフ質量分析法にて検出限界以下の自然水を原水とし、該原水を殺菌処理し、軟水化処理し、およびRO膜で瀘過することを特徴とする、透析用水の製造方法。
【0011】
(2) 第3層〜第5層のいずれかの地下水を原水とし、該原水を殺菌処理し、軟水化処理し、および逆浸透膜で瀘過することを特徴とする、透析用水の製造方法。
【0012】
(3) 該原水に次亜塩素酸ナトリウムを添加して殺菌し、イオン交換樹脂によって軟水化処理し、塩素除去処理を行い、次いでRO膜で瀘過することを特徴とする、上記(1)または(2)記載の透析用水の製造方法。
【0013】
(4) 該RO膜で瀘過した後に、エンドトキシン除去処理を行なうことを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の透析用水の製造方法。
【0014】
(5) 上記(1)〜(4)のいずれかの方法で得た透析用水を用いて透析液を製造する方法であって、該透析用水および/または透析液に含まれるエンドトキシン除去処理を行うことを特徴とする、透析液の製造方法。
【0015】
(6) 地下水をくみ上げて透析用水を製造する透析用水製造装置、透析液供給装置、エンドトキシン除去装置および透析用監視装置とを含み、該透析用水製造装置により製造された透析用水と該透析液供給装置で調製された透析原液とを混合して透析液を調製する工程、該透析液をエンドトキシン除去処理した後に透析用監視装置に供給する工程、透析用監視装置で使用されなかった透析液をエンドトキシン除去処理した後に透析用監視装置に循環させることを特徴とする、透析液製造システム。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の第一は、外因性内分泌撹乱物質の含有量がガスクロマトグラフ質量分析法にて検出限界以下の自然水を原水とし、該原水を殺菌処理し、軟水化処理し、およびRO膜で瀘過することを特徴とする透析用水の製造方法、および第3層〜第5層のいずれかの地下水を原水とし、該原水を殺菌処理し、軟水化処理し、およびRO膜で瀘過することを特徴とする、透析用水の製造方法である。
【0017】
透析患者たるヒトは、体重の1/11〜1/14が血液であり、その約80%が水分となっている。従って、体重50kgの被検者では、およそ3.6〜4.5kgの血液が体内を巡っている勘定になる。血液透析が必要な被検者では、1回の透析処理に120リットルの透析液を用いて透析するため、使用する透析用水に不純物が含まれていると、27〜33倍に濃縮されて患者の体内に蓄積する計算となる。このような不純物として、近年その含有量が増加している外因性内分泌撹乱物質に着目し、透析用水製造装置における外因性内分泌撹乱物質の発生機序並びに発生予防策について検討したところ以下のことが判明した。
【0018】
まず、従来の透析用水の製造方法は、原水に含まれる粗大な夾雑物を除去するための瀘過法、イオン交換樹脂を用いる軟水化処理、活性炭などによる微粒子の吸着除去、およびRO膜による浄化が一般的であるが、RO膜の孔径は5Å程度であるため、これ以下のサイズの物質は膜を通過する可能性がある。一方、外因性内分泌撹乱物質は河川水に含まれており、エンドトキシンなどと同様に水溶性であり、原水として河川水や河川水を処理して得た水道水を使用すると、従来法の浄化処理を潜り抜けて透析用水として透析装置に供給される虞れがある。一方、外因性内分泌撹乱物質を除去するには、化学的、物理的処理が必要となり工程が複雑化し、処理時間も長くなり、処理時間の延長に伴う新たな細菌感染の虞れも生じ、極めて不利である。また、水道水を透析用水の原水として使用する場合、塩化ビニルの水道用配管を経て透析用水製造装置に供給されるため、消毒用の酸によって新たな塩化ビニル分解産物(外因性内分泌撹乱物質)を溶出させる虞れがある。本発明では、透析用水として外因性内分泌撹乱物質の含有量がガスクロマトグラフ質量分析法にて検出限界以下の自然水、または第3層〜第5層のいずれかの地下水を原水として使用することで、外因性内分泌撹乱物質の除去操作を行うことなく実質的に外因性内分泌撹乱物質フリーの透析用水を製造することにした。以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
本発明では、外因性内分泌撹乱物質の含有量がガスクロマトグラフ質量分析法にて検出限界以下の自然水を透析用水の原水として使用する。本発明において外因性内分泌撹乱物質とは、ダイオキシン、スチレンダイマー、スチレントリマー、ビスフェノールA、ポリ塩化ビニル類、ヘキサクロロベンゼン、ペンタクロロフェノール、2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸、シマジン、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸、ジ−n−ブチル等の平成12年度環境庁公表の67物質をいう。外因性内分泌撹乱物質の含有量は0ppmであることが好ましいが、食事や飲料による外因性内分泌撹乱物質の経口摂取量が存在することから、透析処理による許容量として例えば、PCBの排水基準は0.003ppm以下と規定したものであり、地下水の水質汚濁に係る環境基準としては、検出されないこと、つまり現存の方法では0.0003〜0.00003ppm、特に好ましくは0ppmである。
【0020】
本願明細書における「自然水」とは、自然界から直接採取した用水であり、湧き水、河川水、雨水、融雪水、地下水、岩石の節理、亀裂あるいは破砕帯の間隙に存在する裂罅水、石灰岩や溶岩の空洞中にある空洞水、後記する通気層中の懸遊水等のいずれであってもよい。なお、海水も自然水であるが、ナトリウム濃度、塩素濃度が高いため、海水を使用する場合には他のイオンの除去工程が必要となり不利である。本発明においては、該自然水の一種である、第3層〜第5層のいずれかの地下水を透析用水製造用の原水として使用することが好ましい。ここに第3層、第4層、第5層の地下水とは、地表から地下に掘り進んだ場合に、第3番目、第4番目、第5番目の地下水脈に由来する地下水である。
【0021】
ここに、地下水とは地下に存在する水の総称であり、一般には地表水や降水と循環関係にある循環水をさす。地中に浸透した水は砂、砂礫中を降下し、地下のある深度に達すると地下水の飽和層に滞水する。この飽和層とその上の通気層の境を地下水面という。地下水面は砂、砂礫などの透水層中にあるが、その下層には泥、粘土などの不透水層があり、地下水は多く透水層中にあり層状水とも呼ばれる。地下水面から下の地下水は、自由地下水と被圧地下水とに区分されるが、自由地下水は地下水面と地表から最初の不透水層との間にある水であり、大気の圧力と釣り合っている。一方、被圧地下水は二つ以上の不透水層間の透水層中にたまっている水で、一般には透水層は付近の高地まで続き、途中の砂、砂礫の摩擦によって圧力が減ずることはあっても本水の圧力よりも高い。本発明で使用する第3層〜第5層地下水は、このような被圧地下水であり、地表から数えて第3層〜第5層の不透水層上の層上水である。調査の結果、実際にこれらの地下水には、外因性内分泌撹乱物質含有量が極めて低値である。
【0022】
このような第3層地下水、第4層地下水、第5層地下水は、地下水調査によって探索することができる。地下水調査とは、地下水のありかたを科学的に調査することであり、測水、探水、揚水調査などの作業からなる。測水は透水層中に含まれる地下水の勾配や流れの方向を知ることである。井戸、河川、湖沼などで地面から水面までの深さを測り、別に地面の高さを測って、水面の高度を計算し、高度の等しい点を結んで地下水面図をつくる。その等高線に対して直角の方向が地下水流動方向である。なお、流動方向、水位変化などから河川水との関係もわかる。探水は透水層の性質、厚さ、どういう深さに何層あるかなどについて知ることである。ボーリングや物理探査を行ない、ボーリングの穴の中の電気抵抗を測る電気検層、地温を測る温度検層などで滞水層の細かい性質を知る。揚水調査では井戸で実際に揚水し、汲出量と水位の低下の具合から透水係数を計算する。日本の沖積層、洪積層の平均透水係数は、毎秒1×10−2センチ、第三紀層の平均は毎秒1×10−3センチ程度である。
【0023】
本発明では、少なくとも上記特定の自然水、第3層、第4層および/または第5層地下水を原水とし、これを殺菌処理し、軟水化処理し、およびRO膜で瀘過して透析用水とする。更に、エンドトキシン除去処理を行うことが好ましい。第4層地下水を原水として使用した本発明の透析用水の製造方法の態様の一例を図1を用いて説明する。
【0024】
まず、第3層地下水をポンプで汲み上げて配管1を経て受水槽9に導入する。
【0025】
本発明では、受水槽9導入前に、原水を次亜塩素酸ナトリウムによって殺菌する。受水槽9内の次亜塩素酸ナトリウム濃度は、0.1〜2.0質量ppmであることが好ましく、より好ましくは0.2〜1.0ppm、特に好ましくは、0.4〜0.6ppmである。2.0ppmを超えると塩素除去工程に負荷がかかり、例えば次工程以降で使用するRO膜の劣化を促進する場合があり好ましくない。一方、0.4ppmを下回ると殺菌効果が不十分な場合がある。一般には受水槽9内の上記次亜塩素酸ナトリウム濃度での滞留時間は、次亜塩素酸ナトリウムによる殺菌効果が発揮される時間が確保されていればよい。次いで、殺菌処理した原水は原水タンク10に送る。原水タンク10には加熱器を設置し、タンク内の原水を加熱し、RO膜の透過効率を向上させる。原水温度は5〜40℃であることが好ましく、より好ましくは10〜30℃、特に好ましくは20〜25℃である。5℃を下回るとRO膜の透過効率が低下し、RO水生成効率が低下する場合がある。一方、40℃を超えるとRO膜に異常をきたし、透析治療に支障が生じる場合がある。
【0026】
次いで、殺菌処理し加温した原水をプレフィルター20に通過し、含まれる微粒子などを分離、除去する。プレフィルターは、原水に含まれる微粒子を除去するために使用され、フィルタエレメント自体からの溶出や価格等の面から、ポリプロピレンやコットンからなるカートリッジ式糸巻きフィルタエレメントが、1〜数本配置されていることが好ましい。また、除去物質の大きさや目詰まりによって圧力損失が上昇して濾過水量が低下することを考慮すると、濾過精度が1〜20μmであることが好ましい。20μmを超えると大きな微粒子が次工程に移行するため、後工程の負荷を増大させる。一方、1μmを下回ると、瀘過能力が低下するため製造効率が低下する場合がある。
【0027】
プレフィルター20によって微粒子を除去した原水を軟水化処理装置30に導入し、含まれるカルシウム、マグネシウムなどの硬水成分を除去する。軟水化処理装置30は、含まれる硬水成分を除去するものであり、一般には陽イオン交換樹脂を充填したイオン交換装置である。イオン交換樹脂は、小球状または不定形粒状で、硬水の軟化、純水の製造などに広く用いられている機能性樹脂であり、本発明では、陽イオン交換作用を示す合成樹脂を用いる。陽イオン交換樹脂は、樹脂母体にスルホン酸基−SOHが結合した強酸型と、カルボキシル基−COOHやフェノール性水酸基−OHの結合した弱酸型に分類され、いずれを使用することもできる。ただし、広いpH範囲にわたって有効であるため、強酸型イオン交換樹脂を使用することが好ましい。
【0028】
軟水化処理は陽イオン交換樹脂によって行われるため、含まれる塩素などの陰イオンは除去することができない。そこで、軟水化処理後の原水に含まれる塩素を除去するため、次いで塩素除去装置40によって脱塩素処理を行う。脱塩素除去の方法は、特に制限されるものでなく、陰イオン交換樹脂によるイオン交換法や活性炭による吸着除去法、その他のいずれであってもよい。ただし、その後の処理工程に支障のない範囲で他の成分を含んでいてもよく、短時間あたりの処理能力に優れる点で、活性炭による吸着除去が簡便である。なお、活性炭は、吸着力の強い炭素物質の総称であり、おがくず、木材、ヤシ殻などを塩化亜鉛やリン酸などの活性化剤で処理して炭化させるか、木炭を赤熱し、水蒸気で活性化して作られ、多孔質で表面積がきわめて大きい。本発明では、外筒に、粒状活性炭と、抵抗を小さくして集水しやすいようにするための珪砂とを充填したものを使用することができる。これらが外筒容積の60%程度まで充填されている。また、このような活性炭を使用した脱塩素除去装置として、市販の繊維状活性炭カートリッジを使用することもできる。例えば、賦活収率の高い特殊ピッチを使用したピッチ系繊維状活性炭を素材としたジュラコール(登録商標)を充填した繊維状活性炭カートリッジフィルター(セントラルフィルター工業株式会社製)などを使用することができる。なお、本発明では、複数本の軟水化処理装置を並列に配置してもよく、複数の配置によって処理水量を増加でき、切替え運転も行えるため該処理を停止することがなく好ましい。
【0029】
塩素イオン、その他の成分を除去した原水は、RO膜50によって更にその他のイオンやブドウ糖、タンパク質などの成分を瀘過、除去する。RO膜は、浸透圧以上の圧力をかけて逆浸透を起こさせ分離するものである。膜素材は、芳香族ポリアミド、アリル−アルキルポリアミド/ポリ尿素、ポリピペラジンアミド、酢酸セルロース、架橋ポリエーテル、スルホン化ポリスルホン等がありいずれも使用できる。一方、RO膜は、膜素材を最適膜形態にして性能を発現し、形態としては平膜と中空糸膜とがある。また、膜を構成する孔径が均一に配されている均一膜の他、膜表面が緻密層であり膜裏面が多孔層となる非対称膜や、超薄膜層と支持層とからなる複合膜などがあり、モジュールの形態に併せて至適なものを選択することができる。
【0030】
RO膜50で処理した後は、透析用水として透析液の調製に使用できる。この場合、調製した透析液についてエンドトキシン除去処理を行ない、その後に透析装置に該透析液を供給してもよいが、一方、予め透析用水にエンドトキシン処理を行い、その後に透析液の調製を行なってもよい。このようなエンドトキシン除去方法としては、限外瀘過が簡便である。これによって、細菌、微粒子、水溶性成分、塩素イオン、硬水成分、エンドトキシンなどを除去した透析用水を得ることができる。なお、該透析用水は透析用水供給タンク70に貯蔵し、必要時に使用するが、該透析用水供給タンク70には、タンク内での細菌の発生およびエンドトキシン放出を防止するため、紫外線殺菌灯60を配備することが好ましい。
【0031】
本発明によれば、外因性内分泌撹乱物質を実施的に含まず、細菌、エンドトキシン、金属イオンなどの透析治療に不適な成分を含まない透析用水を簡便に製造することができる。なお、透析用水供給タンク70に貯蔵された透析用水は、透析液供給装置やエンドトキシン除去装置を含む大規模の透析液製造装置140に供給され、または、特に透析液供給装置等を有しない小規模の個人用透析装置170に供給される。
【0032】
上記透析用水は、地下水をくみ上げて透析用水を製造する透析用水製造装置において、第3層地下水、第4層地下水、および/または第5層地下水に達する汲み上げ用配管を有する透析用水製造装置によって製造できる。上記したように、第3層〜第5層の地下水には、実質的に外因性内分泌撹乱物質が含まれておらず、該地下水を透析用水の原水として使用すると、外因性内分泌撹乱物質を除去するための特別の処理を行なうことなく実質的に外因性内分泌撹乱物質を含まない透析用水を製造することができる。また、本発明では、該配管の内壁および該製造装置内に使用される第3層〜第5層の地下水が流通する配管の内壁が、外因性内分泌撹乱物質を溶出させない安定材料からなることが好ましい。従来では、原水として水道水を使用していたが、水道水の配管は塩化ビニルであるため、熱や消毒液によって外因性内分泌撹乱物質を生成する虞れがあった。一方、透析用水製造装置は、細菌感染やエンドトキシンなどによる汚染を防止するため、附属装置の殺菌洗浄が不可欠である。この洗浄には、水道水の消毒にも使用される次亜塩素酸等が使用され、配管の素材によっては、洗浄剤その他の作用によって含まれる成分を溶出する場合がある。そこで、該装置を構成する配管の内壁にも外因性内分泌撹乱物質を溶出させない安定材料を使用し、原水の処理工程、および頻繁に行なわれる装置の洗浄後においても、配管からの新たな外因性内分泌撹乱物質の発生を防止し、併せて十分な装置や配管内の洗浄を可能とする。このような装置の好ましい態様の一例を、図1を用いて説明する。
【0033】
まず、第3層地下水は、配管1を経て受水槽9に貯蔵される。本発明では、このような配管1の素材として、外因性内分泌撹乱物質を溶出させない安定材料を使用する。本願においては、「外因性内分泌撹乱物質を溶出させない」とは、透析用水の製造工程において原水や処理途中の原水によって外因性内分泌撹乱物質を溶出させないこと、および装置や配管を洗浄剤や洗浄後の汚染水など、通常の操作において使用される薬剤によって外因性内分泌撹乱物質を実質的に溶出させないことを意味する。透析装置、これらに附属する装置、設備、システム等は、透析用監視装置介する感染等を回避するために透析装置のみならず各装置の洗浄が必須である。このような洗浄剤としては、0.1%次亜塩素酸ナトリウムや0.5%酢酸による洗浄が一般的であり、透析液または透析用水に代えて次亜塩素酸ナトリウム濃度0.05〜0.1%の消毒液を注入して洗浄する。このため、洗浄後の、排水には、500ppm程度の残留塩素が残ることになり、この高い残留塩素により新たな外因性内分泌撹乱物質の発生が生ずる恐れがある。そこで、本発明では、このような装置の洗浄に使用される薬剤環境下においても外因性内分泌撹乱物質を溶出させない安定材料を用い、透析液製造装置の安全性も確保することにした。
【0034】
具体的には、四フッ化エチレン樹脂、PVDF製、ポリビニルフルオライド製を好ましく使用することができ、特に四フッ化エチレン樹脂であることが好ましい。ここに、四フッ化エチレンは、炭素鎖の周囲をほとんど隙間なく埋めるフッ素原子同士の反発によって全体としてらせん構造をとり、分岐のないリニアな分子鎖を有する樹脂であり、熱的・化学的にも安定な構造であり、耐熱性、耐薬品性にも優れる。また、塩素を含まないため、ダイオキシンの発生がない。なお、PVDF、ポリビニルフルオライドは、四フッ化エチレン樹脂のフッ素原子の一部が水素原子に置換したものであり、塩素原子を含まず、本発明において好ましく使用できる。
【0035】
原水の処理方法およびそのために配設する設備は、上記透析用水製造方法に制限されるものではない。しかしながら、好ましくは受水槽9、原水タンク10、プレフィルター20、軟水化処理装置30、塩素除去装置40、RO膜50、透析用水供給タンク60、紫外線殺菌灯70を含むことが好ましい。更には、処理水を次工程に移送するためのポンプ、圧力センサー、温度センサー、処理水の一部を採取して処理状況をチャックするためのサンプル採取口、処理水に含まれる成分をチェックする純度センサー、各種制御弁、pHセンサー等を有していてもよい。本発明においては、このような設備間を接続する配管としても、上記外因性内分泌撹乱物質を溶出させない安定材料を使用する。具体的には、四フッ化エチレン樹脂製、PVDF製、ポリビニルフルオライド製である。その理由は、塩素を含まず、装置を次亜塩素酸や酢酸で洗浄した場合にも、装置や配管からの外因性内分泌撹乱物質の発生がないからである。なお、各設備にも外因性内分泌撹乱物質を溶出させない安定材料を使用することが好ましいが、特にこれらの素材に制限されない。透析用水製造装置に含まれる各設備は、所定の機能、例えば、微粒子除去機能、イオン交換機能、塩素除去機能等の発揮が必要とされ、特定の素材によってのみ該機能が発揮されることが一般的だからである。
【0036】
本発明の第二は、上記記載の方法で得た透析用水を用いて透析液を製造する方法であって、該透析用水および/または透析液に含まれるエンドトキシン除去処理を行うことを特徴とする、透析液の製造方法である。以下、上記透析用水を用いて透析液の調製後にエンドトキシン除去処理を行なう、本発明の態様の一例を図2を用いて説明する。なお、図2において、図1に示す受水槽9から透析用水供給タンク70に至る工程を透析用水製造装置100として示す。
【0037】
一般には、透析液は、塩化カリウム溶液、塩化ナトリウム溶液等を主成分とする透析原液からなるA液と、重炭酸ナトリウム溶液からなるB液を配合し、これを透析用水で希釈したものを透析液として使用する。本発明では、透析用水製造装置100に含まれる透析用水供給タンク70から、透析用水を透析液供給装置140に供給する。該透析液供給装置140には、透析原液(A)調製装置130、透析原液(B)調製装置120が接続されている。透析原液(A)調製装置130には、電解質およびブドウ糖とが貯蔵され、透析用水製造装置100から供給される透析用水を用いて所定濃度に溶解し、透析液Aを製造する装置である。また、透析原液(B)調製装置120は、重炭酸塩を貯蔵し、透析用水製造装置100から供給される透析用水を用いて所定濃度に溶解し、透析液Bを製造する装置である。透析原液(A)調製装置130、透析原液(B)調製装置120で調製された透析原液AおよびBは、透析液供給装置140内で、透析用水製造装置100からの透析用水と混合され、所定濃度に調整される。次いで、透析液はエンドトキシン除去装置150に導入され、ここでエンドトキシンが除去される。エンドトキシン除去方法としては、限外瀘過が簡便である。該装置150でエンドトキシンを除去した後は、透析用監視装置160に流入する透析液の電解質濃度、温度、pH、浸透圧等が至適範囲にあることを検査した後、各透析装置(図示せず)に供給する。なお、透析用監視装置で使用しなかった透析液は、エンドトキシン除去装置150によってエンドトキシンを除去し、循環使用することができる。
【0038】
一方、透析用水製造装置100からの透析用水は、このような透析液供給装置140に供給されるばかりでなく、小規模の個人用透析装置170に供給して使用することもできる。このような個人用透析装置170は、透析液Aおよび透析液Bを透析用水を用いて調製し、これを個人用透析装置170に供給するものである。
【0039】
上記透析液は、本発明の第三の透析液製造システムによって調製される。すなわち、本発明の第三は、地下水をくみ上げて透析用水を製造する透析用水製造装置、透析液供給装置、エンドトキシン除去装置および透析用監視装置とを含み、該透析用水製造装置により製造された透析用水と該透析液供給装置で調製された透析原液とを混合して透析液を調製する工程、該透析液をエンドトキシン除去処理した後に透析用監視装置に供給する工程、透析用監視装置で使用されなかった透析液をエンドトキシン除去処理した後に透析用監視装置に循環させることを特徴とする、透析液製造システムである。本発明の好ましい態様の一例を図2に示す。本発明において、該透析用水製造装置、該透析液供給装置、該エンドトキシン除去装置および該透析用監視装置とを連結する配管が、四フッ化エチレン樹脂、PVDF製、ポリビニルフルオライド製であることが好ましい。上記したように、実質的に外因性内分泌撹乱物質を含まない自然水を使用しても、透析用水の処理工程または装置の洗浄工程で塩素イオンが発生する。特に、従来は原水として水道水が使用され、かつ水道水の供給管は塩化ビニル製であることが一般的で、熱や消毒液によって外因性内分泌撹乱物質を生成する虞れがあった。本発明では、原水や透析用水との接触時間の長い「配管」について、塩化ビニル等の外因性内分泌撹乱物質自体や、塩素などの外因性内分泌撹乱物質関連物質を溶出しない安定材料を使用することにした。特には、このような「配管」の材質としては、PVDF製であることが好ましい。このような本発明の透析用水製造装置や透析液製造システムによれば、新たな外因性内分泌撹乱物質の発生を抑制することができ、高品質の透析用水、透析液を製造することができる。特に、洗浄剤によっても外因性内分泌撹乱物質の発生を抑制できるため、装置の洗浄を頻繁に行なうことができ、安全性に優れる。
【0040】
【実施例】
以下、本発明の実施例により具体的に説明する。
【0041】
(実施例1)
図1に示す装置を使用し、第3層地下水を汲み上げ、該井戸水(原水)を殺菌処理し、軟水化処理し、および逆浸透膜で瀘過して透析用水を調製した。
【0042】
まず、第3層地下水を毎時1800リットルで採取し、受水槽に導入した。該受水槽に次亜塩素酸ナトリウムを添加し、受水槽内の次亜塩素酸ナトリウム濃度を0.4とした。なお、受水槽内の液温は25℃であった。次いで、受水槽内の原水を毎時1200リットルの流速でプレフィルターに導入し、次いで軟水化処理装置、塩素除去装置、RO膜に順次導入し、得られた透析用水を透析用水供給タンクに貯蔵した。なお、透析用水供給タンクには常時紫外線殺菌灯を点灯した。
【0043】
なお、受水槽に使用されているFRPは、JIS K−6919繊維強化プラスチック用液状不飽和ポリエステル樹脂に規定する不飽和ポリエステル樹脂を使用し、配合するガラス繊維は、JIS R 3411〜3417に規定する無アルカリのものを使用したものである。該FRPは外因性内分泌撹乱物質を原料として使用していない。また、RO膜に使用する膜、ケーシング、モジュールの構成部材、および膜製造工程で使用する物質の外因性内分泌撹乱物質についAMST−001に基づく溶出試験方法にて測定したが、外因性内分泌撹乱物質および鉛は含まれていなかった。該工程から採取した地下水、受水槽、透析用水の水質結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
Figure 2004154169
【0045】
(実施例2)
実施例1で製造した透析用水を用いて、図2に示す透析液供給装置、透析液供給装置、エンドトキシン除去装置、透析用監視装置、個人用透析装置、および各装置間を連結する配管を有する透析液製造システムに従って、透析液を製造した。まず、実施例1で得た透析用水を透析原液(A)調製装置、透析原液(B)調製装置に供給し、透析原液(A)調製装置では電解質とブドウ糖とを溶解して、電解質濃度を、Na:230mEq/L、K:4.0mEq/L、Ca:6.0mEq/L、Mg:2.0mEq/L、Cl:222mEq/L、ブドウ糖濃度2000mg/Lの透析原液A液を調製した。また、透析原液(B)調製装置では重炭酸粉末を溶解して、重炭酸濃度50mEq/LおよびNa:50mEq/Lの透析原液B液を調製した。A液とB液とを1:1体積比で混合して電解質濃度Na:140mEq/L、K:2.0mEq/L、Ca:3.0mEq/L、Mg:1.0mEq/L、Cl:111mEq/L、ブドウ糖濃度1000mg/L、pH7.0〜8.0の透析液を調製した。該透析液をエンドトキシン除去装置に導入し、ここで限外瀘過によってエンドトキシンを除去した。次いで、エンドトキシン除去後の透析液を透析用監視装置に供給し、最終的に温度、各成分の濃度、pHが所定範囲にあることを監視した後、接続する透析装置に供給した。なお、透析装置に供給されなかった透析液は、再びエンドトキシン除去装置に導入した後に透析用監視装置に供給して循環使用した。
【0046】
実施例1の第3層地下水と実施例2で調製した透析用水について、ポリ塩化ビフェニル類、ヘキサクロロベンゼン、ペンタクロロフェノール、2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸、シマジン、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジ−n−ブチルの含有量をガスクロマトグラフ−高分解能質量分析計によって測定した。各測定値および検出限界を表2に示す。
【0047】
なお、水道水を使用して調製した透析液を参考透析液として、上記測定方法による結果を表2に合わせて記載する。
【0048】
【表2】
Figure 2004154169
【0049】
(実施例3)
実施例2で製造した透析液を用いた透析患者の痒みの減少などについて評価した。
【0050】
他院で治療を受けた被検者について、実施例2で製造した透析液により透析を開始して2〜7週間たった時点で患者のアンケート調査を行なった。
【0051】
なお、被検者数は59名であり、その平均年令は、64.3歳±11.3歳(39〜87歳)、平均透析歴は、6年1ヶ月±4年9ヶ月(3ヶ月〜17年11ヶ月)であった。非糖尿病35名(59%)、糖尿病24名(41%)を原疾患とする者があった。結果を以下に示す。
【0052】
(1)実施例2で得た透析液によって透析治療する前の被検者の状態を調査し、結果を表3〜8に示す。
【0053】
(i)かゆみのある患者39名(66%)
【0054】
【表3】
Figure 2004154169
【0055】
(ii)かゆみだけがある患者29名(49%)
【0056】
【表4】
Figure 2004154169
【0057】
(iii)ムズムズ感のある患者15名(25%)
【0058】
【表5】
Figure 2004154169
【0059】
(iv)ムズムズ感だけがある患者5名(8%)
【0060】
【表6】
Figure 2004154169
【0061】
(v)かゆみとムズムズ感がどちらもある患者10名(17%)
【0062】
【表7】
Figure 2004154169
【0063】
(vi)かゆみとムズムズ感がどちらもない患者15名(25%)
【0064】
【表8】
Figure 2004154169
【0065】
(2)本院の血液透析治療でのかゆみ等の変化
(i)上記(i)かゆみのある患者(39名)を対象とした「かゆみ」の変化
【0066】
【表9】
Figure 2004154169
【0067】
(ii)上記(ii)かゆみだけのある患者(29名)を対象とした「かゆみ」の変化
【0068】
【表10】
Figure 2004154169
【0069】
(iii)上記(iii)ムズムズ感のある患者(15名)を対象とした「ムズムズ感」の変化
【0070】
【表11】
Figure 2004154169
【0071】
(iv)上記(iv)ムズムズ感だけがある患者(5名)を対象とした「ムズムズ感」の変化
【0072】
【表12】
Figure 2004154169
【0073】
(v)上記(v)かゆみとムズムズ感がどちらもある患者(10名)を対象とした「ムズムズ感」の変化
【0074】
【表13】
Figure 2004154169
【0075】
(vi)上記(v)かゆみとムズムズ感どちらもある患者(10名)を対象とした「かゆみ」の変化
【0076】
【表14】
Figure 2004154169
【0077】
結果
症状に個人差が存在下が、「かゆみ」は他院からの転院透析患者の約3分の2の患者に認められる臨床症状であった。本院の透析液を使用して依頼、かゆみは約半数以上で「やや改善」あるいは「著明改善」となり、「悪化」は認めなかった。原疾患が糖尿病患者に改善度が大きい傾向が認められた。糖尿病患者では、メカニズムは明確にされてはいないもののかゆみを生じやすい(糖尿病性皮膚掻痒症)ことが従来から知られているが、本願発明の透析液に変更した患者に関する限り、血糖のコントロールよりも透析液に含有されている成分によるアレルギーの発現の程度が糖尿病患者の方が強く生じていると考えられる。特に、2〜7週という比較的短期間でかゆみの改善が認められ、かつ透析患者の薬剤の変更は行わず、透析システム内のダイアライザー、回路、抗凝固剤、RO装置および消毒システムは変更がない。一方、本発明では、透析液の調製に際して、フッ素樹脂PVDF(ポリビニルデンフルオライド)の配管を使用しており、このため本願の透析液を使用することでかゆみが軽減したと考えられる。
【0078】
一方、「ムズムズ感」は全体の4分の1の患者に認められ、特に糖尿病性腎症の患者の4割弱と非糖尿病患者と比べ多く認められた。これはムズムズ感が腎不全による末梢神経障害よりも糖尿病性神経症の一症状の関与が強いからだと考えられる。特に、糖尿病性神経症の原因はポリオール代謝亢進によるソルビトール蓄積といわれており、この原因の場合には透析による改善は期待できず結果も一致している。なお、非糖尿病患者の場合は約半数でムズムズ感が改善しており、この結果はかゆみと同様の傾向を示した。
【0079】
【発明の効果】
本発明によれば、簡便かつ安価に実質的に外因性内分泌撹乱物質を含有しない透析用水および透析液を製造することができる。本発明の透析用水製造装置および透析液製造システムでは、外因性内分泌撹乱物質を溶出させない安定材料からなる配管を使用しているため、配管からの外因性内分泌撹乱物質の溶出を防止することができる。このため、装置の洗浄や殺菌に次亜塩素酸ナトリウムや酢酸を使用した場合であっても、該配管からの外因性内分泌撹乱物質の溶出が防止でき、安全性に優れる。
【0080】
本発明によれば、従来の細菌、細菌内毒素、微量金属イオンに加えて、外因性内分泌撹乱物質を実質的に含まない透析用水が、迅速、簡便かつ安価に製造できる。
【0081】
また、本発明では、強力な洗浄消毒を頻繁に行なっても、透析用水製造装置や透析液製造システムから外因性内分泌撹乱物質が溶出することがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の透析用水製造方法および透析用水製造装置の好ましい態様の一例を示す図である。
【図2】図2は、本発明の透析液の製造方法および透析液製造システムの好ましい態様の一例を示す図である。
【符号の説明】
1・・・配管、8・・・次亜塩素酸、9・・・受水槽、10・・・原水タンク、20・・・プレフィルター、30・・・軟水化処理装置、40・・・塩素除去装置、50・・・RO膜、60・・・紫外線殺菌灯、70・・・透析用水供給タンク、100・・・透析用水製造装置、120・・・透析原液(B)調製装置透析原液(A)調製装置、130・・・透析原液(A)調製装置、140・・・透析液供給装置、150・・・エンドトキシン除去装置、160・・・透析用監視装置、170・・・個人用透析装置。

Claims (6)

  1. 外因性内分泌撹乱物質の含有量がガスクロマトグラフ質量分析法にて検出限界以下の自然水を原水とし、該原水を殺菌処理し、軟水化処理し、および逆浸透膜で瀘過することを特徴とする、透析用水の製造方法。
  2. 第3層〜第5層のいずれかの地下水を原水とし、該原水を殺菌処理し、軟水化処理し、および逆浸透膜で瀘過することを特徴とする、透析用水の製造方法。
  3. 該原水に次亜塩素酸ナトリウムを添加して殺菌し、イオン交換樹脂によって軟水化処理し、塩素除去処理を行い、次いで逆浸透膜で瀘過することを特徴とする、請求項1または2記載の透析用水の製造方法。
  4. 該逆浸透膜で瀘過した後に、エンドトキシン除去処理を行なうことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の透析用水の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかの方法で得た透析用水を用いて透析液を製造する方法であって、該透析用水および/または透析液に含まれるエンドトキシン除去処理を行うことを特徴とする、透析液の製造方法。
  6. 地下水をくみ上げて透析用水を製造する透析用水製造装置、透析液供給装置、エンドトキシン除去装置および透析用監視装置とを含み、該透析用水製造装置により製造された透析用水と該透析液供給装置で調製された透析原液とを混合して透析液を調製する工程、該透析液をエンドトキシン除去処理した後に透析用監視装置に供給する工程、透析用監視装置で使用されなかった透析液をエンドトキシン除去処理した後に透析用監視装置に循環させることを特徴とする、透析液製造システム。
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