JP2004149808A - 2つの基材を接着する方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 表面エネルギーの低い基材を接着する方法を提供すること。
【解決手段】 2つの基材を接着する方法であって、
(a)45mJ/m未満の表面エネルギーを有する表面エネルギーの低いポリマー第1基材及び第2基材を供給する工程;
(b)(i)少なくとも1種の重合性アクリルモノマー;
(ii)有効量の、窒素原子とホウ素原子の比が1:1〜2:1である有機ホウ素アミン錯体;及び
(iii )前記少なくとも1種のアクリルモノマーの重合を開始するのに有効な量の酸;
を少なくとも第1基材に塗布する工程;
(c)第1基材と第2基材の間に工程(b)の各構成材料を使用して第1基材と第2基材とを貼り合わせる工程;次いで
(d)前記少なくとも1種のアクリルモノマーを重合させ、それによって第1基材と第2基材とを接着させる工程;
の各工程を含んでなる方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、概して、有機ホウ素アミン錯体、より詳細には重合性組成物、特に有機ホウ素アミン錯体に基づく重合開始剤システムを含むアクリル接着剤に関する。更に、本発明はこのような組成物を使用し、基材、特に表面エネルギーの低い基材を接着する方法に関する。
ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリテトラフルオロエチレン(例えば、テフロン(TEFLON))のような表面エネルギーの低い基材を接着するのに十分且つ有効な手段が古くから研究されている。これらの材料を接着する困難は良く知られている。例えば、Progress in Rubber and Plastics Technology, 第1巻、第1頁(1985年)のD.M. Brewis による“Adhesion Probrems at Polymer Surfaces ”を参照されたい。従来の方法は典型的には、(1)基材の表面エネルギーを増加させること(基材の表面エネルギーと接着剤の表面エネルギーとがほぼ一致するようにし、それによって基材が接着剤で濡れやすくなるようにするため)及び/又は(2)基材表面に移行して弱い境界層を形成することにより接着に悪影響を及ぼす基材中の添加剤及び低分子量ポリマー部分を除去することにより達成される。
その結果として、従来の方法は、往々にして複雑且つ費用のかかる基材の表面前処理技術、例えば火炎処理、コロナ放電、プラズマ処理、オゾン又は酸化作用のある酸による酸化処理、及びスパッターエッチングを使用する。代法として、基材表面は、表面エネルギーの高い物質を使用するコーティングにより下塗りされてもよい。しかしながら、プライマーの適切な接着を達成するためには、上記のような表面前処理技術を最初に使用する必要がある。これらの技術は全て、Treatise on Adhesion and Adhesives(J.D.Minford 、第7巻、第333 頁〜第435 頁、編集者Marcel Dekker 、ニューヨーク、1991年)に報告されているように広く知られている。公知の方法は、特定の基材の使用に適するように往々にして誂えられている。その結果として、公知の方法は、一般に、表面エネルギーの低い基材を接着するのに有用でない。
更に、現在公知の方法の複雑さ及びコストは、最終消費者(例えば、家屋の修繕屋、日曜大工をする人等)による使用又は少量での使用に対し、特に適するものではない。一つの難問は、ごみかご、洗濯かご及び玩具のような、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリスチレン製の多くの安価な日常家庭用品の修理である。
従って、複雑な表面前処理、下塗り等を必要とせずに、種々の基材、特にポリエチレン、ポリプロピレン及びポリテトラフルオロエチレンのような表面エネルギーの低い材料を容易に接着できる簡単に使用できる接着剤に対するかなりの要求が長い間存在した。
本発明は、有機ホウ素アミン錯体に基づく重合開始剤システム並びにそれを使用して製造される接着剤及び他の組成物に向けられたものである。この接着剤は、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリテトラフルオロエチレンのような表面エネルギーの低い基材を接着するのに特に有用である。
1957年にG.S. Kolesnikov 等によって、スチレン及びメチルメタクリレートの重合用触媒としてのトリブチルボランの使用が報告されている(Bull. Acad. Sci. USSR, Div. Chem. Sci. 1957, 第653 頁)。2モル%のトリブチルボランをメチルメタクリレートに加えると、急速に重合し、60〜90分間以内に透明固形物の塊が形成された。ほぼ同じ時期に、J. Furakawa 等によって、トリエチルボランは、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル及びアクリロニトリルのような幾つかのビニル化合物の重合を開始することが見出された(Journal of Polymer Science、第26巻、第113 号、第234 頁、1957年)。後にJ. Furakawa 等は、トリエチルボランにより触媒されるビニル重合が、酸素又は酸素化合物、例えば過酸化水素及び金属酸化物により著しく促進されることを報告している(Journal of Polymer Science、第28巻、第116 号、1958年)。酸素の存在は、重合を起こすためには明らかに必要であり、一方、これらの文献に記載されている種類の有機ホウ素化合物は空気中で非常に発火しやすいことが知られている。従って、酸素の存在は必要であると同時に望ましくない。
1966年9 月27日にE.H. Mottus 等に付与された米国特許第3,275,611 号“Process for Polymerizing Unsaturated Monomers with a Catalyst Comprising an Organoboran Compound, a Peroxygen Compound and an Amine ”は、オレフィン化合物、特にα−オレフィン不飽和化合物を重合する方法を開示している。エステル基中に20個以下の炭素原子を有するメタクリレートモノマーが特に好ましい。有機ホウ素化合物及びアミンは反応混合物に別々に加えられても予備形成された錯体として加えられてもよい。後者の方法は、ホウ素化合物をより扱いやすいものにする利点を有し、特に空気中で発火する傾向があるが、錯体になった場合には発火性でなくなるホウ素化合物にとって都合良いとされている。特に有用なホウ素触媒は、次の一般式:R3 B、RB(OR)2 、R2 B(OR)、R2 BOBR2 、R2 BX、及びR2 BH[式中、Rは炭化水素基、好ましくは1〜10個又はそれ以上(より好ましくは6個以下)の炭素原子を有するアルキル基であり、そしてXはハロゲンである]により表されるものであるとされている。
有用なアミン錯化剤は、好ましくは約10-6又は10-7から5×10-10 又は10-10 の範囲の塩基性度を有するものであるとされている。種々のアミン錯化剤が記載されており、ピリジン、アニリン、トルイジン、ジメチルベンジルアミン及びニコチンが実施例において使用されている。アミン及びホウ素化合物は、ホウ素官能基1個当たり1個の窒素官能基が存在すると仮定して約1:1のモル比で使用されている。どのような過酸化物又はヒドロペルオキシド化合物も触媒成分として使用されてよいことが報告されている。
Mottus等はメタクリレートモノマーを重合することに言及しているが、生成するポリマーが接着剤として有用であることは示されていない。種々の酸が重合しうるモノマーとして言及されているが、酸が重合システムの成分であるという示唆はない。
1968年5 月15日に公開された英国特許出願第1,113,722 号“Aerobically Polymerizable Compositions, ”は、ラジカル触媒(例えば、過酸化物)及び一般式:(R3 )B−Am[式中、Rは6〜12個の炭素原子を有するアリール基であり、そしてAmは数ある中でヘキサメチレンジアミン又はエタノールアミンのようなアミンである]により表されるトリアリールボラン錯体の使用によるアクリレートモノマーの重合を開示している。この重合は、加熱又は酸の添加により開始される。生成する組成物は、報告によれば接着剤として有用である。
ケミカル・アブストラクトNo. 88532r(第73巻、1970年)“Dental Self-curing Resin”及びその本文によると、トリブチルボランは、アンモニア又は特定のアミン(例えば、アニリン、n−ブチルアミン、ピペリジン、エチレンジアミン)と1のモル比で錯体形成することにより空気中で安定に存在することができ、そしてトリブチルボランは、イソシアネート、酸塩化物、塩化スルホニル又は無水酢酸のようなアミン受容体により再活性化されることが報告されている。その結果、歯科用接着剤を提供するために、この錯体を使用し、メチルメタクリレートとポリ(メチルメタクリレート)の混合物を重合させることができる。アミン受容体としてそれぞれp−トルエンスルホニルクロリドを有するトリブチルボラン−エチレンジアミン錯体及びトリエチルボラン−アンモニア錯体が詳細に記述されている。
ケミカル・アブストラクトNo. 134385q (第80巻、1974年)“Bonding Polyolefin or Vinyl Polymers”は、10部のメチルメタクリレート、0.2部のトリブチルボラン及び10部のポリ(メチルメタクリレート)の混合物を使用し、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリ酢酸ビニルの棒を接着することを報告している。
1992年4 月21日にM.M. Skoultchi等に付与された米国特許第5,106,928 号“Acrylic Adhesive Composition and Organoboran Initiator System,”は、報告によればアクリル接着剤組成物、特にエラストマーアクリル接着剤に有用な2液型開始剤システムを開示している。前記2液型開始剤システムの第1部分は、安定な有機ホウ素アミン錯体であり、その第2部分は有機酸活性剤である。この錯体の有機ホウ素化合物は下記一般式:
Figure 2004149808
(上式中、R、R1 及びR2 は、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基又はフェニル基のいずれかであるが、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基が好ましい)
により表される構造を有する。前記錯体のアミン部分は、アンモニア、第1級アミン、第2級アミン、又は第1級アミン若しくは第2級アミンを含有するポリアミンであってもよい。有用なアミンには、n−オクチルアミン、1,6−ジアミノヘキサン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン及び1,2−プロピレンジアミンが含まれる。
有機酸活性剤は、アミン基を除去することにより、遊離の有機ホウ素化合物を不安定にさせるか又は遊離させ、それによって重合プロセスが開始される。好ましくは、有機酸は、一般式:R−COOH[式中、Rは、水素、1〜8個(好ましくは1〜4個)の炭素原子を有するアルキル基若しくはアルケニル基、又は6〜10個(好ましくは6〜8個)の炭素原子を有するアリール基である]により表される。
12種の有機ホウ素アミン錯体が実施例Iに関連して記述されている。ジアミン又はトリアミンに基づく錯体において、窒素原子とホウ素原子の比は2:1〜4:1におよぶ。ジエチルアミン及びn−オクチルアミンに基づく錯体において、窒素原子とホウ素原子の比は1.5:1である。
その接着剤組成物は、構造用及び半構造用接着、例えばスピーカーの磁石、金属と金属との接着、(自動車用の)ガラスと金属との接着、ガラスとガラスとの接着、印刷回路板の部品の接着、特定のプラスチックと金属、ガラス、木等及び電磁石との接着に特に有用であることが報告されている。
本発明は、有機ホウ素アミン錯体に基づく重合開始剤システムを含む重合性アクリル組成物、特にアクリル接着剤に関する。この接着剤は、以前は複雑且つ費用のかかる表面前処理技術を使用して接着されていた表面エネルギーの低い基材(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン等)を接着するのに特に有用である。
この重合性アクリル組成物は、基本的に、少なくとも1種のアクリルモノマー(好ましくはブチルアクリレートのようなアルキルアクリレート及び/又はメチルメタクリレートのようなアルキルメタクリレート)、有効量の有機ホウ素アミン錯体、及びアクリルモノマーの重合を開始するための有効量の有機又は無機酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸又はSnCl4 )を含んでなるか、又はより好ましくはこれらからなる。
有用な有機ホウ素アミン錯体は、下記一般式:
Figure 2004149808
[上式中、R1 は1〜10個(好ましくは2〜5個)の炭素原子を有するアルキル基である;
2 及びR3 は、独立に、フェニル含有基及び1〜10個の炭素原子を有するアルキル基から選ばれ、2〜5個の炭素原子を有するアルキル基が好ましい;
4 は、CH2 CH2 OH及び(CH2X NH2 (式中、xは2以上の整数、好ましくは2〜6の整数であり、最も好ましくは6である)からなる群より選ばれる;
5 は、水素(より好ましい)又は1〜10個の炭素原子を有するアルキル基である;及び
窒素原子とホウ素原子の比は約1:1〜2:1、より好ましくは約1:1〜1.5:1、そして最も好ましくは約1:1である]
により表される。
有機ホウ素アミン錯体は、典型的には、アクリル基、アクリル部分又はアクリル官能基のモル数に基づいて約0.15〜3モル%(より好ましくは約0.2〜2.5モル%、最も好ましくは約1〜1.5モル%)の量で供給される。有効量の酸は、アミン基、アミン部分又アミン官能基の当量数を基準にして約30〜540モル%(最も好ましくは約230モル%)である。
これらの組成物中に含まれていてもよい有用な添加剤は、増粘剤(例えばポリメチルメタクリレート)及び少量(アクリル官能基のモル数に基づいて約0.1〜7モル%の量)の実質的に錯体を形成していない有機ホウ素であり、錯体を形成していない有機ホウ素は、有機ホウ素アミン錯体がモノエタノールアミンに基づくものであるときに特に有用である。
もう一つの態様において、本発明は、上記のような重合性アクリル組成物を使用して表面エネルギーの低いポリマー基材を接着する方法に関する。基材表面は、最初に不活性な有機溶剤中に有機ホウ素アミン錯体(例えば約5〜15重量%)を含んでなる組成物により下塗りされてもよく、この場合には、重合性組成物中に有機ホウ素アミン錯体を含めることは任意である。
本発明の更に他の態様において、フッ素樹脂基材に引き続き塗布される接着剤の接着力を高めるためのプライマーとしてある組成物が有用である。そのような有用なプライマーには、アクリルモノマー、有機ホウ素及び酸素源(例えば、過酸化物又は原子状酸素)に基づくもの、並びにアクリルモノマー、有機ホウ素アミン錯体及び酸に基づくものがある。
広い観点において、本発明は有機ホウ素アミン錯体に基づく重合開始剤システムを用いて製造される重合性アクリル組成物、特にアクリル接着剤に関する。この接着剤は、以前は複雑で費用のかかる表面前処理技術を使用して接着されてきた表面エネルギーの低い基材(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン等)を接着するのに特に有用である。
本発明に有用な重合開始剤システムは、基本的に、有効量の有機ホウ素アミン錯体、及び有機ホウ素を遊離させ、重合を開始するための有効量の酸を含んでなるか、又はより好ましくはこれらからなる。
本発明に有用な有機ホウ素アミン錯体は、下記式:
Figure 2004149808
[上式中、R1 は1〜10個の炭素原子を有するアルキル基である;並びに
2 及びR3 は、独立に、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基及びフェニル含有基から選ばれる]
により表される一般構造を有する。より好ましくはR1 、R2 及びR3 は、1〜5個の炭素原子を有するアルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル及びペンチルである。概して、R1 ,R2 及びR3 基について炭素鎖長の短いものは空気中での錯体の安定性を高めるために、炭素鎖長の短いものが好ましい。同様に、大きく嵩高い基は接着性に悪影響を及ぼすために、より小さく、より嵩高くない置換基も好ましい。「独立に選ばれる」とは、R2 及びR3 が同一であっても異なっていてもよいことを意味する。R1 は、R2 又はR3 と同一であっても異なっていても良い。R1 、R2 及びR3 が同一であることが好ましい。トリプロピルアルキルボラン、トリイソプロピルアルキルボラン及びトリ−n−ブチルアルキルボランは特に有用であることが見出された。錯体のアミン成分は、モノエタノールアミン、第1級アルキルジアミン、又は第2級アルキルジアミンのいずれであってもよい。従って、R4 は、CH2 CH2 OH及び(CH2X NH2 (式中、xは2以上の整数である)からなる群より選ばれる。R5 は、水素又は1〜10個の炭素原子を有するアルキル基のいずれかである。より好ましい錯体において、R5 は水素であり(錯体自体の形成を阻害しうる有機ホウ素アミン錯体内の立体障害を減少させるため)、そしてR4 はCH2 CH2 OH又は(CH2X NH2 (式中、xは2〜6の整数である)のいずれかである。しかしながら、R4 がCH2 CH2 OH(モノエタノールアミン)又は(CH26 NH2 (1,6−ヘキサメチレンジアミン)である錯体が最も好ましい。
重要なことは、以下でより詳細に示されるように、錯体中の窒素原子とホウ素原子の比が約1:1〜2:1、より好ましくは約1:1〜2:1未満、更に好ましくは約1:1〜1.5:1、そして最も好ましくは約1:1であることである。窒素原子とホウ素原子の比が2:1を超えると、重合時に有用な分子量を達成するために使用すべき錯体の量が増加するために、重合開始剤システム中への錯体の実際的有用性は減少する。一方、窒素原子とホウ素原子の比が1:1未満であると、遊離の有機ホウ素は発火性のまま残る。
有機ホウ素アミン錯体の有効量は、重合が起こり、所望の最終用途に適する程度に十分に高い分子量のアクリルポリマーを得ることができるほど十分に多い量である。有機ホウ素アミン錯体の量が十分に多いと、該組成物の効率的な混合及び塗布ができないほど急速に重合が進行する場合がある。実用的な重合速度は、該組成物を基材に塗布する方法に一部依存する。従って、産業用高速自動アプリケーターに適する重合速度は、該組成物がハンドアプリケーターにより塗布される場合、又は該組成物が手で混合される場合よりも速くなることができる。
これらのパラメーターの範囲内で、有機ホウ素アミン錯体の有効量は、アクリル官能基のモル数に基づいて約0.15〜3モル%、より好ましくは約0.2〜2.5モル%、最も好ましくは約1〜1.5モル%である。アミンがモノエタノールアミンにより供給される場合には、錯体の有効量は2モル%以上且つ約5モル%未満である。「アクリル官能基」なる用語は、アクリル及び置換アクリル部分又は化学基、即ち、下記式:
Figure 2004149808
(上式中、R及びR’は、同一であっても異なっていても良い有機基である)
により表される一般構造を有する基を意味する。
しかしながら、以下で説明されるように、少量の追加の実質的に錯体を形成していない有機ホウ素を含ませることが往々にして都合良い。これらの場合において、錯体の有効量はアクリル官能基のモル数に基づいて約0.3〜5モル%、より好ましくは約0.5〜4モル%、最も好ましくは約1〜3モル%である。
都合良いことに、本発明の有用な有機ホウ素アミン錯体は空気に対して安定である。「空気に対して安定である」とは、錯体が、室温(約20℃〜22℃)、且つ他の点では周囲条件下(減圧下でも不活性雰囲気中でもない条件下)で蓋をした容器内に貯蔵したときに、少なくとも約2週間の間重合開始剤として該組成物が有用のまま残り、これらの条件下で何ヵ月もの間、さらには1年以上にわたって貯蔵できることを意味する。「空気に対して安定である」とは、以下でより詳細に説明されるように、錯体が発火性でないことを意味する。この錯体の空気に対する安定性は、錯体が結晶性物質として供給された場合に高まる。この錯体は、その最も安定な形態において、透明な白色固形針状結晶として存在する。しかしながら、この錯体は、非晶質固形物又は粘性のあるシロップ状液体として供給される場合でも有用である。時間がたつと、最も好ましい白色固形針状結晶はこれらの形態をとる。
有機ホウ素アミン錯体は、公知の技術を使用して容易に調製できる。典型的には、アミンは、固形物として供給される場合には、(好ましくは不活性雰囲気中で)微粉末に粉砕され、(好ましくは不活性雰囲気中で)ゆっくり攪拌されながら有機ホウ素と組み合わされる。発熱が往々にして観測され、従って、混合物を冷却することが推奨される。使用される幾つかの材料の高い蒸気圧のために、反応温度を約70〜80℃に保つことが好ましいが、反応生成物が早期に結晶化するほど低温にならないよう保つべきである。いったん材料がよく混合したならば、錯体の結晶が形成されるように、錯体は冷却される。特別な貯蔵条件は必要とされないが、低温の暗い場所で蓋をした容器内に貯蔵することが好ましい。都合良いことに、本発明に使用される錯体は、引き続き除去しなくてはならない有機溶剤を使用しなくても調製できる。
次に、酸に関して説明する。この成分は、アミン基を除去することによって有機ホウ素を遊離させ、それにより有機ホウ素が重合を開始する。アミン基を除去することにより有機ホウ素を遊離させることができる酸のいずれを使用してもよい。有用な酸には、ルイス酸(例えば、Sn Cl4 、TiCl4 等)及びブレンステッド酸、例えば一般式:R6 −COOH(式中、R6 は、水素、1〜8個、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するアルキル基若しくはアルケニル基、又は6〜10個、好ましくは6〜8個の炭素原子を有するアリール基である)により表されるものが含まれる。前記アルキル基及びアルケニル基は、直鎖であっても枝分かれ鎖であってもよい。このような基は飽和であっても不飽和であってもよい。前記アリール基は、アルキル、アルコキシ又はハロゲン部分のような置換基を含んでいてもよい。この種の例示的な酸には、アクリル酸、メタクリル酸、酢酸、安息香酸、及びp−メトキシ安息香酸が含まれる。他の有用なブレンステッド酸には、HCl、H2 SO4 、H3 PO4 等が含まれる。SnCl4 、アクリル酸及びメタクリル酸が好ましい。
酸は、重合を促進するのに有効な量で使用すべきである。少なすぎる量の酸が使用されると、重合速度は非常に遅くなり、重合するモノマーの分子量は増加しない。しかしながら、少量の酸は重合速度を遅くするのに有用である。一方、多すぎる量の酸が使用されると、重合は非常に速く進行する傾向があり、接着剤の場合には、生成する物質は低エネルギー表面に適切に接着しない。一方、過剰の酸は、高エネルギー表面に対する接着性を高める場合がある。これらのパラメーターの範囲内で、酸は、好ましくは、錯体中のアミン官能基の当量数に基づいて約30〜540モル%、より好ましくは約100〜350モル%、そして最も好ましくは約150〜250モル%の量で供給される。メタクリル酸並びにトリプロピルボラン及び1,6−ヘキサメチレンジアミンに基づく有機ホウ素アミン錯体の場合には、該組成物の合計量に基づいて約0.5〜7重量%、より好ましくは約3重量%が有用であることが見出された。
有機ホウ素アミン錯体開始剤システムは、アクリルモノマーの重合、特に重合性アクリル接着剤を製造するのに有用である。「アクリルモノマー」なる用語は、1個以上のアクリル部分若しくは置換アクリル部分、化学基又は官能基を有する重合性モノマー、即ち、下記式:
Figure 2004149808
(上式中、R及びR’は、同一であっても異なっていても良い有機基である)
により表される一般構造を有する重合性モノマーを意味する。アクリルモノマーの混合物を使用してもよい。重合性アクリルモノマーは、一価、多価又はこれらの組合せであってもよい。
最も有用なモノマーは、一価アクリレート及びメタクリレートエステル並びにこれらの置換誘導体、例えば、ヒドロキシ、アミド、シアノ、クロロ及びシラン誘導体である。このようなモノマーには、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−tert−オクチルアクリルアミド、N−ブトキシアクリルアミド、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2−シアノエチルアクリレート、3−シアノプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルクロロアクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等が含まれる。ジメチルアミノエチルアクリレート及びジメチルアミノメタクリレートが使用されてもよい。
アルキルアクリレート(例えば、ブチルアクリレート)とアルキルメタクリレート(例えば、メチルメタクリレート)の混合物が特に好ましい。本発明に係るこのような重合性組成物は、その合計重量に基づいて、約10〜60重量%(より好ましくは約30〜40重量%)のアルキルメタクリレート、及び約10〜50重量%(より好ましくは約25〜35重量%)のアルキルアクリレートを含んでなる。
重合性モノマーの他の有用な種類は、下記一般式:
Figure 2004149808
に対応する。上式中、R7 は、水素、メチル、エチル、−CH2 OH、及び
Figure 2004149808
からなる群より選ばれる。R8 は、塩素、メチル及びエチルからなる群より選ばれる。R9 は、水素、ヒドロキシ、及び
Figure 2004149808
からなる群より選ばれる。aの値は、1以上の整数、より好ましくは1〜約8の整数、そして最も好ましくは1〜4の整数である。1〜4の整数が好ましい。bの値は、1以上の整数、より好ましくは1〜約20の整数である。cの値は0又は1である。
重合開始剤システムに有用なアクリルモノマーには、エチレングリコール、ジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ジグリセロールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、並びに他のポリエーテルジアクリレート及びジメタクリレートが含まれる。
本発明に有用な他の重合性モノマーは下記一般式:
Figure 2004149808
[上式中、R10は、水素、塩素、メチル又はエチルである;R11は2〜6個の炭素原子を有するアルキレン基である;及びR12は、eが0〜8の整数である(CH2e 、又は以下のいずれかである:
Figure 2004149808
(上式中、フェニル基は、オルト、メタ又はパラ位のいずれかにおいて置換されていても良い)]
により表される。上式中、dの値は1〜4の整数である。
この種の典型的なモノマーには、ビス(エチレングリコール)アジペートのジメタクリレート、ビス(エチレングリコール)マレエートのジメタクリレート、ビス(エチレングリコール)フタレートのジメタクリレート、ビス(テトラエチレングリコール)フタレートのジメタクリレート、ビス(テトラエチレングリコール)セバケートのジメタクリレート、ビス(テトラエチレングリコール)マレエートのジメタクリレート、並びに上記ジメタクリレートに対応するアクリレート及びクロロアクリレート等が含まれる。
イソシアネートとヒドロキシアクリレート又はイソシアネートとアミノアクリレートの反応生成物であるモノマーも有用である。これらはアクリレートを末端基とするポリウレタン及びポリウレイド又はポリウレアとして特徴付けられる。このようなモノマーは下記一般式:
Figure 2004149808
により表される。R13は、水素及び低級アルキル基(炭素原子数1〜7)からなる群より選ばれる。Tは、活性水素を含有するアクリル酸エステルの有機残基であり、活性水素は既に除去されており、そしてエステルはそれらのアルキル部分(メチル、エチル及び塩素同族体を包含する)の上にヒドロキシ又はアミノ置換されている。fの整数値は1〜6である。Lは、アルキル基、アルキレン基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルキレン基、アリール基、アラルキル基、アルカリール基、ポリ(オキシアルキレン)基、ポリ(カルボアルコキシアルキレン)基、及び複素環式基からなる群より選ばれる一価又は多価の有機基であり、双方とも置換体又は未置換体である。
この種の典型的なモノマーには、モノ又はポリイソシアネート、例えばトルエンジイソシアネートと、非アクリレート部分にヒドロキシ基又はアミノ基を含有するアクリレートエステル、例えばヒドロキシエチルメタクリレートとの反応生成物が含まれる。
本発明に有用な他の種類のモノマーには、ビスフェノール型化合物のモノ及びポリアクリレート並びにメタクリレートエステルである。
これらのモノマーは下記一般式:
Figure 2004149808
(上式中、R14は、メチル、エチル、カルボキシアルキル又は水素である;R15は、水素、メチル又はエチルである;R16は、水素、メチル又はヒドロキシルである;R17は、水素、塩素、メチル又はエチルである;及びgは0〜8の整数である)
により表される。
上記種類の代表的なモノマーには、4,4’−ビス−ヒドロキシエトキシ−ビスフェノールAのジメタクリレートエステル及びジアクリレートエステル、ビスフェノールAのジメタクリレートエステル及びジアクリレートエステル等が含まれる。
この組成物は、種々の任意の添加剤を更に含んでもよい。特に有用な添加剤は、低分子量(分子量約100,000以下)のポリメチルメタクリレートのような増粘剤であり、この増粘剤はこの組成物の重量に基づいて約20〜40重量%の量で混合されてよい。増粘剤は、この組成物の塗布が容易になるように、この組成物の粘度を粘性シロップ状のコンシステンシーになるまで増加させるために使用される。
他の有用な補助剤は、接着層の耐溶剤性を高めるために使用される架橋剤である。典型的には、この組成物の重量に基づいて約0.2〜1重量%の量で使用される有用な架橋剤には、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールビスメタクリロキシカーボネート、ポリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ジグリセロールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、並びに他のポリエーテルジアクリレート及びポリエーテルジメタクリレートが含まれる。
組成物が重合する速度を調節するため、又は重合を完全にさせるために過酸化物を含めてもよい。
貯蔵時のアクリルモノマーの分解を防止するため又は減少させるために、少量のヒドロキノンのような阻害剤を使用してもよい。阻害剤は、重合速度又はそれらを使用して製造される接着剤の接着特性を著しく低下させるような量ではなく、典型的には、重合性モノマーの重量に基づいて約0.1〜5%の量で添加される。
種々の可塑剤及びエラストマー充填剤(即ち、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリオレフィン、ポリウレタン及びポリエステルをベースとするゴム状ポリマー)を添加し、可撓性又は靱性を改良してもよい。他の可能な添加剤には、不反応性着色剤、充填剤(例えば、カーボンブラック)等が含まれる。任意の添加剤は、重合プロセス又はそれらを使用して製造される組成物の所望の特性に著しい悪影響を及ぼさない量で使用される。
以下で示されるように、本発明の重合性アクリル組成物は、複雑な表面前処理技術、下塗り等を要せずに接着することが歴史的に非常に困難であった表面エネルギーの低い基材を接着するのに特に有用である。「表面エネルギーの低い基材」なる用語は、45mJ/m2 未満、より典型的には40mJ/m2 未満、又は35mJ/m2 未満の表面エネルギーを有する材料を意味する。このような材料に含まれるものには、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ポリアミド、及びフッ素化ポリマー、例えば20mJ/m2 未満の表面エネルギーを有するポリテトラフルオロエチレン(TEFLON)がある。本発明の組成物により有効に接着される幾分か表面エネルギーの高い他のポリマーには、ポリカーボネート及びポリメチルメタクリレートが含まれる。しかしながら、本発明はこの程度に限定されず、いかなる熱可塑性樹脂並びに木、セラミック、コンクリート及び下塗りされた金属を接着するのに該組成物が使用されてもよい。
本発明の重合性組成物は、2液型接着剤として容易に使用される。重合性組成物の各成分は、このような材料を使用する加工時に通常行われるように配合される。重合開始剤システムの酸成分は、一般に、この混合時に酸性分が有機ホウ素アミン錯体から分離するように配合され、かようにして2液型組成物の第1部分が与えられる。重合開始剤システムの有機ホウ素アミン錯体は、該組成物の第2部分を与えるものであって、該組成物を使用することが望まれる直前に第1部分に加えられる。この錯体は第1部分に直接加えられるか、又は少量のメチルメタクリレートのような適切なキャリヤー中に予め溶かされてもよい。モノマー配合物、錯体の量及び接着がなされる温度に依存して有効な可使時間が約15分間程度であるために、いったん2つの部分を組合わせたならば、該組成物は迅速に使用されねばならない。
重合性組成物は、基材の片方又は両方に塗布され、次いで接着剤層から余分な組成物が出るような圧力により基材同士が貼り合わされる。このことは、空気に暴露され、そして酸化し始めた組成物を排除する利点も有する。概して、接着層は、該組成物が塗布された直後、好ましくは約10分間以内に形成されるべきである。典型的な接着剤層の厚さは約0.1〜0.3mmである。接着プロセスは、室温で容易に実施することができ、そして重合度を高めるために約40℃未満、好ましくは30℃未満、そして最も好ましくは約25℃未満の温度に保たれることが望ましい。
接着層は、約2〜3時間以内に接着された部材の取り扱いが可能になるような適度な生強度に硬化する。全強度は周囲条件下約24時間以内に達成され、所望であれば加熱による後硬化を行ってもよい。
フッ素樹脂を接着する場合には、2液型組成物の第1部分は、有機ホウ素アミン錯体が加えられる前に約0〜5℃に冷却されることが都合良い。接着層は、実際的に該組成物が塗布された直後に形成されるべきであり、室温以下で接着作業を行うことも有用である。
重合開始剤システムは、プライマーを形成することに対しても非常に有用である。プライマー溶液は、有機ホウ素アミン錯体を、ペンタン、ヘキサン、石油エーテル、ホワイトスピリット、ベンゼン、トルエン、エチルアセトン、ブチルアセトン等のような不活性有機溶剤中に溶かすことにより調製してよい。上記有機ホウ素アミン錯体のいずれもプライマーを調製するのに有用であるが、トリプロピルボランに基づく錯体のように有機溶剤中で更に安定なものが好ましい。
錯体の有効量は、溶剤中で約5〜15重量%、好ましくは約10重量%の濃度である。約80〜100 g/m2 で塗布される10重量%のプライマー溶液が適切である。濃度が低すぎる場合には、引き続き塗布されるアクリル組成物を効果的に重合させるのに不十分なプライマーとなる。濃度が高すぎる場合には、重合が非常に速く進行する。いずれの場合においても、得られる接着剤は低剪断接着力を示す。
プライマーは、被着体である両方の基材の表面に塗布されるべきであるが、引き続き塗布されるアクリル組成物は一方の表面にのみ塗布されればよい。いったん溶剤が蒸発すると、プライマーの酸化崩壊を防止するために、プライマーの付着後に実際的にできるだけ速く該組成物が塗布されることが望ましい。しかしながら、プライマーの使用は、アクリル組成物の塗布を約7時間又はそれ以上の時間遅らせることを可能にする特異な利点を与える。他の点では、接着プロセスは2液型組成物の使用を伴う上記したものと同様である。
接着剤としてのそれらの顕著な有用性に加え、本発明の重合性アクリル組成物は、シーラント、コーティング及び射出成形用樹脂として使用されてよい。また、本発明の重合性アクリル組成物は、例えば樹脂トランスファー成形におけるようなガラス及び金属繊維マットと共に母材樹脂として使用されてもよい。更に、本発明の重合性アクリル組成物は、電気部品、印刷回路板等の製造におけるような封入剤及び注封化合物として使用されてもよい。
本発明は、以下の無制限の例を参照することによってより完全に理解されるであろう。以下の例において、全ての重量は100重量%とした該組成物の合計重量に基づく重量%として記載されている。以下の例に記載されているデータは、小数点以下が一桁の有効数字に概数化されている。従って、全組成物の合計量は正確に100.0%にはならない。
例1〜13
例1〜13は、種々の有機ホウ素及び有機ホウ素アミン錯体の発火性を示す。不活性アルゴン雰囲気中で冷却しながら有機ホウ素とアミンを化合させ、錯体を形成させることにより有機ホウ素アミンを調製した。種々の有機ホウ素及び有機ホウ素アミン錯体の発火性を「炭化時間」試験及び「発火時間」試験により評価した。
炭化時間は、有機ホウ素又は有機ホウ素アミン錯体の1滴を30mm×30mmの綿布帛片に滴下し、布帛が炭化又は発火し始めるまでの所要時間(いずれか最初に起こった方)を測定することにより決定した。発火時間は、不活性雰囲気中でもう一つの30mm×30mmの綿布帛片を有機ホウ素又は有機ホウ素アミン錯体に浸し、この布帛を空気に暴露し、次いで布帛が発火するまでの所要時間を測定することにより決定した。炭化又は発火が起こらない場合には、約24時間後に試験を中止した。試験結果を下記表1に示す。
これらの例に使用した用語は、下記表に従って定義されたものである。
用 語 定 義
Bu ブチル
i-Bu イソブチル
Et エチル
Pr プロピル
Figure 2004149808
表1は、錯体を形成していない有機ホウ素(例1〜3)は本質的に極度に発火性が高く、そしてアンモニア、ジエチルアミン又はイソブチルアミンと錯体形成したもの(例4〜9)は、容易に使用できる錯体にせしめるほど十分にそれら固有の発火性が低下しないことを示している。しかしながら、有機ホウ素が1,6−ヘキサメチレンジアミンと錯体を形成した例10〜13において、綿布帛は炭化も発火もしなかった。例10〜13の有機ホウ素アミン錯体は、室温で、他の点では周囲条件のもとで密封された容器内に貯蔵された場合には、発火せずに少なくとも約2時間は安定のままで存在した。従って、例10〜13の有機ホウ素アミン錯体は、空気に対して安定であり、本発明に係る重合開始剤システム及びそれを使用して製造される組成物を提供するのに有用である。
例14〜53
例14〜53は、重合開始剤システムを含む重合性アクリル接着剤組成物が使用されたときに可能な、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びポリエチレン(PE)のような表面エネルギーの低い基材に対する優れた接着性を示す。
以下に記載した場合を除き、各例において、必要ならば溶解を促進するための加熱を用いて、メタクリレートモノマー、アクリレートモノマー及び増粘剤が完全に溶解するまで攪拌した。次いで、酸、有機ホウ素アミン錯体、及び追加量の実質的に錯体を形成していない有機ホウ素を加え、そして混合した。組成物を調製してから約10分間以内にポリテトラフルオロエチレン及びポリエチレン基材に塗布し、次いで、(前)ソビエト連邦の国家規格(GOST)14759-69(金属の接着部における剪断強さを決定する方法)の方法に従って室温で重ね剪断強さを試験した。
より詳細には、他に記載がないかぎり、該組成物を寸法60mm×20mm×厚さ2mmの基材試験片に塗布した。試験片を貼り合わせ、200mm2 の重なり及び厚さ約0.1〜0.3mmの接着層を与えた。接着した試料は、引張試験機に取り付ける前に約24時間を要して普通に硬化させ、次いで20mm/分のクロスヘッド速度で評価した。記載されているデータは5つの試料の平均値である。メガパスカル(MPa )単位での試験結果を下記表2に示す。
ポリエチレンの接着に対し、約5MPa 以下の重ね剪断強さの値は一般に望ましくなく、約5〜8MPa の範囲の値は僅かに許容でき、そして約8MPa を超える値は優れているものと見なされる。ポリテトラフルオロエチレンの接着に対し、約3MPa 以下の重ね剪断強さは一般に望ましくなく、約3〜5MPa の範囲の値は僅かに許容でき、そして5MPa を超える値は優れているものと見なされる。
表2には、種々の接着された複合材料の破壊モードも記載されている。「A」は接着破壊(即ち、基材と接着剤の界面での破壊)を、「S」は基材破壊(即ち、基材の少なくとも一方の破壊又は破断)を、そして「M」は複合破壊(即ち、基材破壊と接着層内部の破壊との組合せ)を表す。最も好ましい破壊モードは、基材破壊及び複合破壊である。
以下に記載した場合を除き、各試料において、メタクリレートモノマーはメチルメタクリレートであり、アクリレートモノマーはn−ブチルアクリレートであり、有機ホウ素アミン錯体は、窒素原子とホウ素原子の比が1:1のトリプロピルボランとモノエタノールアミンの錯体であり、追加の有機ホウ素はトリプロピルボランであり、そして増粘剤はポリメチルメタクリレートである。
Figure 2004149808
Figure 2004149808
例14〜17は、メタクリレートモノマー、アクリレートモノマー及び増粘剤の相対量を変化させることの効果を示す。例14において、この組成物に対して不十分な増粘剤を使用し、ポリテトラフルオロエチレン及びポリエチレンに対して非常に良好な重ね剪断強さを示さない流れる傾向のあるアクリル接着剤を得た。残りの例は非常に改良された接着性を示した。約20〜40重量%のポリメチルメタクリレート増粘剤は本発明の組成物に配合するのに有効である。増粘剤の必要性の有無はアクリルモノマーの選択に依存する。十分に高い粘度及び十分に高い蒸気圧のモノマーが使用されるときには、増粘剤が必要とされない場合がある。
例16及び18〜20は、他の点では同一の配合物において、増粘剤の種類を変化させることの効果を示す(例18のポリメチルメタクリレートの供給元は異なる)。ポリエチレン及びポリテトラフルオロエチレンに対する接着性はほんの僅かに変化した。ポリメチルメタクリレート増粘剤に加え、石英粉末、ヒュームドシリカ、及びポリスチレン−ブチレンを使用してもよい。例15、21、及び22は同じく比較できる。これらの異なる増粘剤が使用された場合には、接着性に僅かな違いがある。
例15、23及び24は、アクリレートモノマーをn−ブチルアクリレートからメチルアクリレート又は1,1,5−トリヒドロオクタフルオロアミルアクリレートに変えることは、ポリテトラフルオロエチレン又はポリエチレンに対する重ね剪断強さに著しい影響を及ぼさないことを示している。例15及び25は、メチルメタクリレートモノマー及びブチルメタクリレートモノマーの双方が、本発明に係る重合性組成物中にうまく混合することを示している。
例26〜39は、メタクリレートモノマー、アクリレートモノマー、有機ホウ素アミン錯体、有機ホウ素及び増粘剤の相対量を変化させた結果、ポリテトラフルオロエチレン及びポリエチレンに対して形成される接着層の重ね剪断強さに及ぼされる影響を示している。例39がトリプロピルボランよりもトリブチルボランを使用したことによって、代替的なアルキルボランを使用してよいことが明らかになった。また、異なる量で種々の酸(塩化スズ、塩化チタン、塩酸、硫酸及びリン酸)を使用する効果も示している。種々の観点において異なるが、例30及び35は、それぞれポリテトラフルオロエチレン及びポリエチレンの双方に対する優れた接着性を示す。歴史的に接着することが非常に困難な物質であったポリテトラフルオロエチレンは、ポリエチレンよりも組成の変化について敏感であった。有機ホウ素アミン錯体、有機ホウ素及び酸の相対量を変化させることによって、ポリテトラフルオロエチレンに対する接着力が2倍以上になり、一方、ポリエチレンに対する接着性に非常に僅かな影響が及ぼされた。
例40〜42は、前記例において使用された無機酸に加え、種々の有機酸(例えば、酢酸、アクリル酸及びメタクリル酸)を本発明の重合性組成物に使用できることを示す。有機酸は取り扱いが容易なために好ましい。
例43〜48は、有機ホウ素アミン錯体を含まない種々の接着剤組成物を調製することの効果を示す。ポリエチレン及びポリテトラフルオロエチレンに対する非常に僅かな接着性を得た。
例49は、モノエタノールアミンに基づく有機ホウ素アミン錯体が含まれるが、有機ホウ素の追加の供給源が供給されなかった場合に、ポリエチレンに対して許容可能な接着性が得られるが、ポリテトラフルオロエチレンに対して非常に僅かな接着性が認められることを示す。従って、実質的に錯体を形成していない有機ホウ素の追加の供給源の存在は、ポリテトラフルオロエチレンに対する優れた接着性に対しては必要であるが、錯体がモノエタノールアミンに基づくものである場合にはポリエチレンに対しては必要でない。錯体と共に上記有機ホウ素のいずれかによって有機ホウ素が供給されてもよい。錯体で使用することが好ましい有機ホウ素も追加の有機ホウ素の供給源としての使用に好ましい。実質的に錯体を形成していない有機ホウ素の量は、アクリル官能基のモル数に基づいて好ましくは約0.1〜7モル%、より好ましくは約0.2〜6モル%、そして最も好ましくは約1〜3モル%である。しかしながら、以下で示されるように、アミノを1,6−ヘキサメチレンジアミンに変えることにより、追加の有機ホウ素供給源が供給されない場合であっても、ポリテトラフルオロエチレンに対する優れた接着性が可能である。
例50及び51は、有機ホウ素アミン錯体及び酸並びに任意の増粘剤を含まない接着剤組成物(例50)、更に任意のアクリレートモノマーを含まない接着剤組成物(例51)を調製した結果を示す。ポリエチレン又はポリテトラフルオロエチレンのいずれに対しても接着性は得られなかった。これらの例の組成物はトリブチルボランを含んでいた。
例52及び53の組成物は、非常に少量の有機ホウ素を使用する効果(例52)及び非常に少量の増粘剤を使用する効果(例53)を示す。
上記例から、本発明に係る特に望ましい重合性組成物は、該組成物の合計重量に基づいて約5〜65重量%のアルキルアクリレートモノマー(好ましくはブチルアクリレート)、約0.5〜5重量%の有機ホウ素アミン錯体(好ましくはトリプロピルボラン−モノエタノールアミン錯体)、約0.1〜5重量%の追加の有機ホウ素(好ましくはトリプロピルボラン)、約0.5〜5重量%の酸、約20〜40重量%の増粘剤(好ましくはポリメチルメタクリレート)を含んでなり、残りがアルキルメタクリレート(好ましくはメチルメタクリレート)であることが示される。
例54
42.1重量%のメチルメタクリレート、18.4重量%のブチルアクリレート及び37.0重量%のポリメチルメタクリレート増粘剤を完全に溶解するまで混合することによって、フッ素化ポリマー及びポリエチレンを接着するのに特に適する接着剤組成物を調製した。次いで、0.5重量%の酸であるSnCl4 を加え、次いで、1.5重量%のトリプロピルボランと0.5重量%のモノエタノールアミンとの混合物を加えた。混合後、この組成物をポリエチレン基材及びポリテトラフルオロエチレン基材に塗布した。この2つの基材を貼り合わせ、周囲条件下24時間を要して硬化させ、次いで上記した方法と同様にGOST 14759-69 に従って重ね剪断強さを試験した。重ね剪断強さは5.1MPa であり、基材破壊を伴った。
例55〜75
下記表3に示される重量百分率を用い、メチルメタクリレートモノマー、n−ブチルアクリレートモノマー、及びポリメチルメタクリレート増粘剤が完全に溶解するまで混合することによって、本発明に係る一連の接着剤組成物を調製した。次いで、攪拌しながら酸に続き有機ホウ素アミン錯体を加えた。以下に記載した場合を除き、酸はメタクリル酸であり、有機ホウ素アミン錯体はトリプロピルボラン及び1,6−ヘキサメチレンジアミンに基づくものであった(窒素原子とホウ素原子との比は1:1)。上記のようなGOST 14759-69 に従い、ポリエチレン(PE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びポリ塩化ビニル基材を使用して接着された複合材料をを作製し、周囲条件下48時間を要して硬化させ、次いで重ね剪断強さの試験を実施し、下記表3に示される結果を得た。また、表3に示される接着された複合材料の破壊モードは上記定義の通りである。
Figure 2004149808
例55〜59は、メチルメタクリレートモノマー、ブチルアクリレートモノマー、メタクリル酸及びポリメチルメタクリレート増粘剤の相対量を変化させた場合のポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン及びポリ塩化ビニルに対する接着性に及ぼされる影響を示す。同様な比較ができる例60〜64は、錯体の量が異なる。
例65〜70は、有機ホウ素アミン錯体、酸及び増粘剤を変化させた結果を示す。例65において、有機ホウ素アミン錯体は窒素原子とホウ素原子の比が1:1のトリ−イソブチルボラン及び1,6−ヘキサメチレンジアミンに基づくものである。例66において、酸はアクリル酸である。例67及び68は、異なる供給元からのポリメチルメタクリレート増粘剤を使用した。
例69は、トリ−n−ブチルボラン及び1,6−ヘキサメチレンジアミンに基づくアルキルボランアミン錯体(窒素原子とホウ素原子の比は1:1)を使用した。例70の有機ホウ素アミン錯体はトリプロピルボラン及び1,6−ヘキサメチレンジアミンに基づくものであるが、窒素原子とホウ素原子の比は2:1である。
例71及び72は、該組成物中に非常に少量又は多量の錯体及び非常に少量又は多量の酸を含ませる効果を示す。例73は、不十分な増粘剤が使用された場合に低接着性が得られることを示す。従って、例73の接着剤組成物は粘度が非常に低く、そして早期に酸化し始める。例73は、追加の有機ホウ素の存在によって早期酸化を克服した例15と対照をなす。例74は、比較的多量のアクリレートモノマーと共に比較的少量のメタクリレートモノマーを使用することを示す。例75はこれとは反対の関係を示す。
上記実施例から、本発明に係る特に望ましい重合性組成物は、該組成物の合計重量を基準にして、約10〜55重量%のアルキルアクリレート(好ましくはブチルアクリレート)、約10〜50重量%のアルキルメタクリレート(好ましくはメチルメタクリレート)、約0.5〜7重量%の有機ホウ素アミン錯体(好ましくはトリプロピルボラン−1,6−ヘキサメチレンジアミン錯体)、約0.5〜5重量%の酸(好ましくはアクリル酸又はメタクリル酸)、及び約25〜40重量%の増粘剤(好ましくはポリメチルメタクリレート)を含んでなることが示される。
例76〜98
例76〜98は、本発明の重合開始剤システムが使用されるもう一つの好ましい方法を例示する。これらの例において、被着体である基材は、有機溶剤中に有機ホウ素アミン錯体を含んでなるプライマーにより前処理(例えば、吹付又ははけ塗り)されたものである。いったんプライマーが塗布されると、プライマーの溶剤は蒸発され、次いで重合性アクリル接着剤組成物が塗布される。次いで、基材は貼り合わされ、上記したようなGOST 14759-69 の方法に従う重ね剪断強さの試験前に、24〜48時間を要して硬化される。ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)基材を使用し、各基材を同一材料の第2基材に貼り合わさたこれらの試験結果を下記表4に記載した。「暴露時間」なる用語は、プライマーが基材に塗布された後、接着剤が塗布される前にプライマーが空気に暴露された時間を意味する。
より詳細には、以下で記載がないかぎり、有機ホウ素アミン錯体は窒素原子とホウ素原子の比(N:B)が1:1のトリプロピルボラン及び1,6−ヘキサメチレンジアミンに基づくものであり、この錯体はペンタン(溶剤)中に溶解され、10%溶液とされ、そして重合性組成物は39重量%のメチルメタクリレートモノマー、35重量%のブチルアクリレートモノマー、1重量%のメタクリル酸及び25重量%のポリメチルメタクリレート増粘剤を含んでなる。
Figure 2004149808
Figure 2004149808
例76〜79は、約5%から12%の濃度のプライマー溶液を本発明に従って使用してよいことを例示する。例78及び80〜86は、いったんプライマーが塗布されると、下塗りされた基材は、その後の接着層の強度に有害な影響を及ぼさずに少なくとも7時間まで空気に暴露したまま放置されてもよいことを示す。例78及び87〜90において、窒素原子とホウ素原子の比は、接着性に悪影響を及ぼさずに0.9:1〜2.5:1の範囲で変化させた。
例91及び92は、トリ−イソブチルボラン及び1,6−ヘキサメチレンジアミンから有用な有機ホウ素アミン錯体を調製できることを示す。例93〜98は、本発明に係るプライマー組成物を調製する際に種々の有用な有機溶剤を使用してよいことを示す。
例99〜106
例99〜106は、本発明に係るプライマーの調製及び使用を例示する。プライマーは、例76〜98に関連して記載したように調製し、塗布した(ペンタン中のトリプロピルボラン及び1,6−ヘキサメチレンジアミン)。例99(N:B=4:1)及び例100(N:B=0.8:1)を除き、窒素原子とホウ素原子の比(N:B)は1:1であった。プライマー溶液の濃度、暴露時間、「硬化時間」(試験前に積層複合材料を硬化させる時間)、及び重ね剪断強さの試験結果は、全て下記表5に記載されている。
これらの例の接着剤組成物を使用し、例76〜98に関連して記載したように接着させた複合材料を作製した。
Figure 2004149808
例99は、窒素原子とホウ素原子の比が大きすぎる(4:1)場合に接着性に及ぼされる影響を示し、そして表100は、前記比が小さすぎる(0.8:1)場合に接着性に及ぼされる影響を示す。前記比は、約1:1〜2:1、より好ましくは約1:1〜2:1未満、更に好ましくは約1:1〜1.5:1の範囲内にあるべきであり、そして最も好ましくは約1:1であるべきである。
例101は、有機ホウ素アミン錯体の濃度が低いプライマーを使用した結果、接着性が低下することを示す。プライマー溶液の濃度が3%(例101)から15%(例102)に増加したときに接着性が著しく改良された。
例103〜106は、本発明のプライマー溶液は、その後に形成される接着層に悪影響を及ぼさずに少なくとも7時間は空気に暴露(基材に塗布後)してもよいことを示している。この接着層は、試験前に6か月間のエージングの後であっても、剪断強さに著しい低下を示さなかった。
例107〜110
例107〜110は、有機ホウ素アミン錯体も含む重合性アクリル組成物を含むプライマーを使用する効果を示す。
例107及び108において、ペンタン中にトリプロピルボラン−1,6−ヘキサメチレンジアミン錯体を含んでなる10%プライマー溶液を、例99〜106に関連して記載したようにポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)基材に塗布した。44.1重量%のメチルメタクリレートモノマー、29.4重量%のブチルアクリレートモノマー、3.0重量%のメタクリル酸、20重量%のポリメチルメタクリレート増粘剤、0.5重量%のトリプロピルボラン及び3.0重量%のトリプロピルボラン−モノエタノールアミン錯体(N原子:B原子=1:1)を含んでなる重合性アクリル接着剤を調製し、混合容器内に下記表6において「可使時間」と記載した時間放置した。次いで、下塗りされた基材にこのアクリル接着剤組成物を塗布した。各例において、プライマーを塗布してから10分後にアクリル接着剤を塗布した。次いで、接着させた複合材料を作製し、硬化させ、下記表6及びGOST 14759-69 に従って試験した。
プライマーを基材に塗布しなかったことを除き、同様にして例109及び110を作製し、次いで試験した。
Figure 2004149808
例107〜110は、本発明に係るプライマーの使用によって、重合開始剤も含む該組成物の可使時間が長くなりうることを示している。例109及び110の接着剤の有用な可使時間は、ポリエチレン及びポリテトラフルオロエチレンに対して5〜20分間であった。しかしながら、プライマーの使用によって、可使時間は30分間以上にまで長くなりうる。
例111〜114
例111〜114は、異なるプライマー及び異なる接着剤を使用したことを除き、例107〜110と同様である。これらの例のプライマー(例111及び112においてのみ塗布)は、窒素原子とホウ素原子の比が1.3:1であることを除き、例107及び108と同様である。暴露時間は60分間であった。重合性アクリル接着剤は、40.8重量%のメチルメタクリレートモノマー、27.2重量%のブチルアクリレートモノマー、1.0重量%のメタクリル酸、30.0重量%のポリメチルメタクリレート増粘剤、及び1.0重量%のトリプロピルボラン−1,6−ヘキサメチレンジアミン錯体(窒素原子:ホウ素原子=1:1)を含んでいた。例107〜110に記載したように接着させた複合材料を作製し、次いで試験した。この結果を下記表7に示す。
Figure 2004149808
プライマーの使用によって、これらの例の接着剤組成物の可使時間は、20分間未満から2時間以上に長くなった。
例115及び116
一連の重合性アクリルモノマー組成物を調製し、有機ホウ素アミン錯体を供給することに関する種々のアミンの有用性を評価した。各組成物は、19.2重量%のn−ブチルアクリレート、55.3重量%のメチルメタクリレート、22.4重量%のポリメチルメタクリレート増粘剤、0.8重量%のメタクリル酸、及び2.2重量%の窒素原子とホウ素原子の比が1:1のトリプロピルボランアミン錯体を含んでいた。ポリエチレン(PE)及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)に対する重ね剪断強さの試験結果(24時間硬化)と共に使用したアミンを下記表8に示す。
Figure 2004149808
これらの例は、ポリテトラフルオロエチレンに対する接着性を示していない。更に、有機ホウ素アミン錯体は、上記の炭化時間及び発火時間試験に従って試験した場合に発火性であったので、不適切なものであると考えられる。
例117及び118
メタクリレートモノマーを含むがアクリレートモノマーを含まない2種の重合性組成物を下記表9のように調製した。各例において、メタクリレートモノマーはメチルメタクリレートであり、増粘剤はポリメチルメタクリレートであり、酸はメタクリル酸であり、そして有機ホウ素アミン錯体はヘキサメチレンジアミン及びトリプロピルボランに基づくもの(窒素原子とホウ素原子との比は1:1)であった。上記したようにポリエチレン及びポリテトラフルオロエチレンを使用した積層複合材料を作製し、下記表9に示されるような重ね剪断試験の前に周囲条件下24時間を要して硬化させた。
Figure 2004149808
例117及び118は、メタクリレートモノマーのみを含む重合性組成物において、追加の有機ホウ素アミン錯体及び酸を使用し、ポリエチレン及びポリテトラフルオロエチレンに対して許容可能な接着性を達成することが必要であることを示している。
例119及び120
例119及び120は、本発明に係るプライマーが提供される追加の方法を説明する。例119は、0.5重量%のビス(トリ−ブチルペルオキシ)トリフェニルアンチモン、73.1重量%のメチルメタクリレートモノマー及び25.4重量%のブチルアクリレートモノマーを含んでなる。得られた組成物を脱気し、次いでこれに1.0重量%のトリプロピルボランを加えた。次いでポリテトラフルオロエチレン試験片をこの組成物を使用して下塗りし、ポリウレタン接着剤を使用して同様の試験片に接着させた。重ね剪断強さは6.3MPa であった。下塗りされなかった対照例は接着性を示さなかった。過酸化物は酸素源を与えるために、組成物を脱気した。組成物を脱気しない場合には、大気中の酸素が酸素源として十分であり、追加の過酸化物を必要としなかった。
例120において、ポリエチレン試験片は、39重量%のメチルメタクリレート、25重量%のn−ブチルアクリレート、30重量%のポリメチルメタクリレート、3重量%の有機ホウ素アミン錯体(窒素原子とホウ素原子の比が1:1の1,6−ヘキサメチレンジアミン及びトリプロピルボランに基づく)、及び3重量%のメタクリル酸を含んでなる組成物を使用して下塗りした。エポキシ接着剤を使用して同様な基材に接着させた場合に、接着された複合材料は6.0MPa の重ね剪断強さを示した。下塗りされなかった対照試料は接着性を示さなかった。
従って、アクリルモノマー、有機ホウ素及び酸素源を含んでなる組成物、又はアクリルモノマー、有機ホウ素アミン錯体及び酸を含んでなる組成物は、引き続き塗布される接着剤に対する接着性を改良するために、フッ素樹脂を下塗りするのに使用できる。
例121〜125
例121〜125は、窒素原子とホウ素原子の比(N:B)が本発明に係る重合性アクリル組成物に及ぼす効果を示す。窒素原子とホウ素原子の比が様々な1,6−ヘキサメチレンジアミン及びトリ−n−ブチルボランに基づく一連の有機ホウ素アミン錯体を調製した。0.186gの錯体を、78gのメチルメタクリレートモノマー、56gの2−ブチルアクリレートモノマー、60gの中程度の分子量のポリメチルメタクリレート増粘剤及び6gのメタクリル酸から調製された重合性アクリル組成物5gに加えた。
ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)をベースとし、161mm2 の重なり及び厚さ0.15mmの接着層を有する接着された複合材料を作製し、接着テープ及びバインダークリップにより固定し、次いで周囲条件下24時間を要して硬化させた。基材の寸法は約25mm×100mm×厚さ3mmであった。次いで、積層複合材料を引張試験機により2.5mm/分のクロスヘッド速度を用いて破壊するまで試験した。3つの試料の平均値を結果として下記表に示した。例121及び122は基材破壊を示した。他の試料は接着破壊であった。
Figure 2004149808
これらの例は、本発明の重合性組成物を使用したときに可能な種々の表面エネルギーの低い基材に対する接着性に関する驚くべき意外な改良を示す。
添付の請求の範囲に定義される本発明の精神から離れることなく、上記明細書の範囲内で種々の変形及び修飾が可能である。

Claims (1)

  1. 2つの基材を接着する方法であって、
    (a)45mJ/m未満の表面エネルギーを有する表面エネルギーの低いポリマー第1基材及び第2基材を供給する工程;
    (b)(i)少なくとも1種の重合性アクリルモノマー;
    (ii)有効量の、窒素原子とホウ素原子の比が1:1〜2:1である有機ホウ素アミン錯体;及び
    (iii )前記少なくとも1種のアクリルモノマーの重合を開始するのに有効な量の酸;
    を少なくとも第1基材に塗布する工程;
    (c)第1基材と第2基材の間に工程(b)の各構成材料を使用して第1基材と第2基材とを貼り合わせる工程;次いで
    (d)前記少なくとも1種のアクリルモノマーを重合させ、それによって第1基材と第2基材とを接着させる工程;
    の各工程を含んでなる方法。
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