JP2004148364A - 板体の仕様決定方法および板体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】平面方向に貫通孔を有する板体の曲げ加工に際して発生する不具合を評価する手法を提供する。
【解決手段】曲げ加工に供される平面方向に貫通孔を有する板体の仕様決定方法に関する。この板体は、ストライプ状に形成された複数の溝を有する第1の板材と、前記第1の板材の前記溝が形成された面側に接合される平坦な第2の板材とから構成される。そして、前記板体について、所定の曲げ試験による実測値を求め、前記板体について前記溝を有する部分と有しない部分とに前記板体の平面方向に分割した要素からなる複数の解析モデルについて、有限要素法によって前記所定の曲げ試験による解析値を求め、しかる後に複数の前記解析値のなかで前記実測値と所定の関係にある解析値が得られた解析モデルについて所定の条件による加工をシミュレーションする。
【選択図】 図1
【解決手段】曲げ加工に供される平面方向に貫通孔を有する板体の仕様決定方法に関する。この板体は、ストライプ状に形成された複数の溝を有する第1の板材と、前記第1の板材の前記溝が形成された面側に接合される平坦な第2の板材とから構成される。そして、前記板体について、所定の曲げ試験による実測値を求め、前記板体について前記溝を有する部分と有しない部分とに前記板体の平面方向に分割した要素からなる複数の解析モデルについて、有限要素法によって前記所定の曲げ試験による解析値を求め、しかる後に複数の前記解析値のなかで前記実測値と所定の関係にある解析値が得られた解析モデルについて所定の条件による加工をシミュレーションする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、平面方向に貫通孔を有する板体を曲げ加工する技術に関し、特にストライプ状に溝が形成された板材と平板を接合して得られた板体を曲げ加工する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
図9は一般的なガスタービンの概略構造を示す断面図、図10はガスタービンの燃焼器の概略構造を示す断面図である。図9および図10において、1は圧縮機であり空気を圧縮して燃焼用の空気や、ロータ、翼の冷却用の空気を発生させる。2は車室、3は車室2内でロータ周りに配設された多数の燃焼器である。燃焼器3は、例えば16個が配置され、各々には、ノズル部3a、燃焼筒3b、尾筒3cから構成される。100はガスタービンのガスパスであり、多段の動翼101、静翼102から構成され、動翼101はロータに、静翼102は車室2側にそれぞれ配置されている。燃焼器3の尾筒3cから流出する高温の燃焼ガスはガスパス100に流入し、ロータを回転させる。
【0003】
燃料は、メインノズル33から予め空気と混合した予混合気として燃焼筒3bに噴射され、燃焼筒3b内でパイロットノズル31により生成したパイロット炎により着火されて燃焼筒3b内に予混合炎を生成する。
【0004】
燃焼筒3bと尾筒3cとは、板体を曲げ加工することにより得られている。そして、高温の燃焼ガスと直接接触するために、この板体にはその平面方向に冷却空気を流す貫通孔が形成されている。燃焼筒3b、尾筒3cを構成する板体20の概略断面を図2に示す。この板体20は、溝22aが形成されている溝付き板22と平板21とから構成される。平板21で封止された溝22aが、冷却空気が流通する貫通孔となる。溝付き板22に対する平板21の接合は、ろう付けその他の接合方法によって行なわれる。
溝付き板22に対して平板21を接合して板体20を得た後に、例えばプレス加工により板体20は図11に示す尾筒部材3c1に形成される。図11に示す尾筒部材3c1は、尾筒3cの下側半分を構成する部材であり、図示しない上側半分の部材を別途作製して、尾筒部材3c1と接合することにより尾筒3cを構成する。
図11に示す尾筒部材3c1の曲げ加工においては、曲げ半径の小さな部分では、板体20割れ、平板21と溝付き板22との剥離、あるいは溝22a(貫通孔)形状の変形、および平板21の溝22aの上部での減肉率の増大による割れの発生等の不具合が懸念される。
【0005】
ところで、特開平8−117870号公報には、金属板面上に帯状リブ材をほぼ垂直に一体に延設してなるパネルを、回転ロール間に挿入して、リブ材を延設した面を内側にしてその延設方向に曲げ加工する際に有効なリブ材付き金属パネルの曲げ加工方法が開示されている。この曲げ加工方法は、リブ材に対面するロールの周面に設けられた条溝中にリブ材を収容し、かつリブ材の頂部は条溝の底面または条溝中のスペーサ面に当接し、ロールの回転に伴ってリブ材の側面を抑制すると共に、リブ材頂部にロール面圧を印加しつつ曲げ加工を行なうものである。この曲げ加工方法によれば、帯状リブの曲がり、基部の挫折を防止することができる。
【0006】
【特許文献1】
特開平8−117870号公報(第1頁、図1、図7)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
特開平8−117870号公報に開示された曲げ加工方法はリブ材付き金属パネルの曲げ加工に対して有効な手法である。しかし、尾筒3cを構成する板体20を曲げ加工する場合にこれを適用することはできない。板体20を構成する溝付き板22は、特開平8−117870号公報で言うところのリブ材付き金属パネルと同等の部材とみなすことができるが、板体20は溝22aを封止する平板21が設けられているためである。
【0008】
一方で、板体20を作製する場合に、曲げ加工時に発生する割れ、貫通孔形状の変形等の不具合を予め評価できることが望ましい。そうすれば、例えば、加工条件、溝22aの形状・寸法を所定のものとすることにより、割れ、貫通孔形状の変形等の不具合を抑制できる。ところが、これまでこのような評価手法は存在していない。そこで本発明は、板体20のようにその平面方向に貫通孔を有する板体の曲げ加工に際して発生する不具合を評価する手法を提供することを目的とする。また、本発明はこの手法によって得られた評価結果に基づいて貫通孔を有する板体を製造する方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
かかる目的のもとになされた本発明は、曲げ加工に供される平面方向に複数の孔が並設される板体の仕様決定方法であって、前記板体は、ストライプ状に形成された複数の溝を有する第1の板材と、前記第1の板材の前記溝が形成された面側に接合される平坦な第2の板材とから構成され、前記板体について前記溝を有する部分と有しない部分とに前記板体の厚さ方向に分割した要素からなる複数の解析モデルについて、有限要素法によって所定の曲げ試験による解析値を求め、複数の前記解析値のなかで前記板体について前記所定の曲げ試験により求めた実測値と所定の関係にある解析値が得られた解析モデルについて所定の条件による加工をシミュレーションすることを特徴としている。
本発明は、実測値と解析値がマッチングする解析モデルを選定する。この解析モデルを用いて行なう加工シミュレーションは、実態の板体を用いて行なう加工を反映した結果をもたらす。
本発明において、曲げ変位−荷重曲線および曲げ変位−曲げ角度曲線を前記実測値および前記解析値として求めることができる。
【0010】
また本発明において、複数の前記解析モデルは、前記第1の板材の厚さをt1(mm)、前記第2の板材の前記溝をのぞく部分の厚さをt2(mm)とすると、t1および/またはt2を下記の式にしたがって変動させたものとすることができる。
1≦t1/t2≦5
【0011】
選定された解析モデルについて行なう加工シミュレーションは、実際に行なう曲げ加工を模擬したものとすることが望ましいが、簡易的なものとすることもできる。この加工シミュレーションを行なうことにより、板体の割れを予測し、割れの発生しないt1、t2を板体の仕様として採用することができる。
【0012】
本発明は、曲げ加工に供される平面方向に貫通孔を有する以下の板体の製造方法をも提供する。この板体は、ストライプ状に形成された複数の溝を有する第1の板材と、前記第1の板材の前記溝が形成された面側に接合される平坦な第2の板材とから構成される。そして、前記板体について前記溝を有する部分と有しない部分とに前記板体の平面方向に分割した要素からなる複数の解析モデルについて、有限要素法によって所定の曲げ試験による解析値を求め、かつ複数の前記解析値のなかで前記板体について前記所定の曲げ試験により求めた実測値と所定の関係にある解析値が得られた解析モデルについて行なわれた加工シミュレーションの結果により設定された前記第1の板材の寸法および前記第2の板材の寸法に基づく前記第1の板材および前記第2の板材を用意し、これらを接合することによって前記板体を得るというものである。
【0013】
本発明の板体の製造方法において、設定された前記寸法に基づいて作製された前記第1の板材および前記第2の板材を接合して得られた板体に所定の曲げ加工を施すことができる。この曲げ加工において、割れ等の不具合の発生が抑制される。
本発明の板体の製造方法において、解析モデルについて、前述した分割の仕方等を採用できることは言うまでもない。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1は、本実施の形態における板体の仕様決定方法の手順を示すフローチャートである。はじめに、このフローチャートに基づいて、本実施の形態における板体の仕様決定方法の概要を説明する。
図1に示すように、本実施の形態における割れの発生予測方法は、評価対象となる板体について、ストローク−荷重曲線、ストローク−曲げ角度曲線の実測値を取得する(図1 S101)。ストローク−荷重曲線、ストローク−曲げ角度曲線の実測置の取得方法については後述する。評価対象となる板体は、図2に示すように、溝付き板22と平板21とを接合した形態を有する。
次に、ストローク−荷重曲線、ストローク−曲げ角度曲線の解析値を取得する(図1 S103)。解析値の取得は、有限要素法を用いて行なう。ここで、評価対象となる板体20は図2に示すものであるが、この板体20に基づく複数の解析モデルについて、ストローク−荷重曲線、ストローク−曲げ角度曲線の解析値を取得する。解析モデルについては後述する。なお、図1ではストローク−荷重曲線、ストローク−曲げ角度曲線の実測値の取得を、ストローク−荷重曲線、ストローク−曲げ角度曲線の解析値の取得よりも先に行なう例を示したが、本発明はこの逆、または両者を並行して行なってもよいことは言うまでもない。
【0015】
次に、ストローク−荷重曲線、ストローク−曲げ角度曲線の実測値と解析値とを比較する。この比較を行ない、実測値とマッチングする解析値が得られた解析モデルを割れ発生を予測するための解析モデルとして選定する(図1 S105)。
解析モデルが選定されると、この解析モデルを用いて割れの発生を予測する(図1 S107)。割れの発生予測は、引張り試験における破断歪を基準として行なわれる。つまり、板体20を構成する材料の引張り試験で得られる破断歪よりも解析モデルについて行なった加工シミュレーションによる引張り試験(加工)で得られる破断歪が大きい場合に、板体20について割れが発生するものと認定する。
【0016】
本実施の形態においては、図3に示すように、板体20を溝22a(貫通孔)が存在しない部分と存在する部分に分割した解析モデルMaを形成する。この分割は、板体20の平面方向に平行に行なわれる。また、解析モデルMaは、溝22aが存在しない部分と存在する部分とが各々金属板m1、m2とするソリッド(Solid)要素から構成される。金属板m1とm2にはそれぞれ異なる材料物性値を与えて、有限要素法の解析モデルMaとする。
【0017】
図3に示す解析モデルMaはソリッド要素から構成されるが、他の形式の要素、例えば図4に示すようにシェル(shell)要素から解析モデルMbを構成することができる。この解析モデルMbは、溝22aが存在しない部分と存在する部分とを各々金属板m3、m4とするシェル要素から構成される。金属板m3とm4にはそれぞれ異なる材料物性値を与えて、有限要素法の解析モデルMbとする。
【0018】
ストローク−荷重曲線、ストローク−曲げ角度曲線は、以上の解析モデルMaまたはMbを用いるが、さらに図5に示すように、平板21の厚さt2と、溝付き板22の厚さt1を変化させる。このとき、t1、t2は、1≦t1/t2≦5に従って設定する。
以上の解析モデルMaあるいはMbを用いて、有限要素法によりストローク−荷重曲線、ストローク−曲げ角度曲線を取得する。ここで、ストローク−荷重曲線、ストローク−曲げ角度曲線の求め方を図6に示してある。ベース40上に、ベース40の端部から所定長さだけ突出させて板体20を固定する。ポンチ41を板体20に押し付けて所定の荷重を付加する。このときの図6に示す荷重、ストロークおよび曲げ角度からストローク−荷重曲線、ストローク−曲げ角度曲線を求める。
【0019】
解析のパラメータとしては、以上のt1およびt2の他に、ベース40の曲げ半径R1、ポンチ41の荷重付与部分の半径R2を用いることもできる。
【0020】
以上のようにして求められた実測値および解析値によるストローク−荷重曲線、ストローク−曲げ角度曲線の例を図7および図8に示している。
実測値および解析値によるストローク−荷重曲線、ストローク−曲げ角度曲線の比較は以下の基準による。つまり、ストローク−荷重曲線では曲げの最大荷重が、実測値と解析値との差が5%以内のものを解析モデルMa,Mbとして選定する。また、ストローク−曲げ角度曲線ではその挙動が、実測値と解析値との差が5%以内のものを解析モデルMa,Mbとして選定する。ストローク−荷重曲線、ストローク−曲げ角度曲線は、いずれか一方または双方を用いることができる。
図7のストローク−荷重曲線においては、解析モデルM1は実測値との曲げの最大荷重の差が5%以内であるのに対して、解析モデルM2は実測値との曲げの最大荷重の差が5%を超えているため、解析モデルM1を解析モデルMa,Mbとして選定することになる。また、図8のストローク−曲げ角度曲線においては、解析モデルM1は実測値との挙動の差が5%以内であるのに対して、解析モデルM2は実測値との挙動の差が5%を超えているため、解析モデルM1を解析モデルMa,Mbとして選定することになる。
ここで、図11に尾筒部材3c1を示すように、尾筒3cは、各部位ごとに曲げ半径が異なる。そこで、本実施の形態においては、異なる曲げ半径に対応して解析モデルMa,Mbを決定する。
【0021】
次に、決定された解析モデルMa,Mbを用いて割れの発生予測を行なう。この予測は、解析モデルMa,Mbに所定の条件が与えられた加工シミュレーションを施した結果に基づく。
【0022】
以上の実施の形態においては、割れの発生予測は、所定の加工として引張り試験をシミュレーションにより行なったが、本発明はこれに限らない。例えば、図11に示した尾筒部材3c1を板体20から得る場合には、実際の加工条件、例えば金型の曲げ半径等の形状、成形荷重、上・下金型のクリアランスといった加工時に用いられる条件を設定した加工シミュレーションとすることができる。
【0023】
以上の本実施の形態によれば、実態に近い解析モデルMa,Mbに基づいて割れの予測を行なうことができるため、実際の曲げ加工時に供される部材を、割れ等の不具合が生じない形状、寸法を含む仕様とすることができる。この仕様に基づいて平板21および溝付き板22を作成し、かつこれらを接合した後にプレス成形による曲げ加工を施すことにより、図11に示す尾筒部材3c1を得ることができる。
以上の開示以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択し、あるいは他の構成に適宜変更することが可能である。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、平面方向に貫通孔を有する板材の曲げ加工に際して、割れ等の不具合の発生が防止される板材の仕様を予測することができるため、実際の曲げ加工における不具合の発生を防止または抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態における板体の仕様決定方法の手順を示すフローチャートである。
【図2】本実施の形態において曲げ加工の対象となる板体の断面構造を示す図である。
【図3】本実施の形態において用いる解析モデルの形態一例を示す図である。
【図4】本実施の形態において用いる解析モデルの形態の他の例を示す図である。
【図5】本実施の形態において曲げ加工の対象となる板材の解析のための寸法を示す図である。
【図6】本実施の形態において、ストローク−荷重曲線、ストローク−曲げ角度曲線の測定手法を説明するための図である。
【図7】本実施の形態において得られる、ストローク−荷重曲線の一例を示す図である。
【図8】本実施の形態において得られる、ストローク−曲げ角度曲線の一例を示す図である。
【図9】一般的なガスタービンの概略構造を示す断面図である。
【図10】ガスタービンの燃焼器の概略構造を示す断面図である。
【図11】燃焼器の尾筒を構成する部材を示す斜視図である。
【符号の説明】
1…圧縮機、2…車室、3…燃焼器、3a…ノズル部、3b…燃焼筒、3c…尾筒、100…ガスパス、101…動翼、102…静翼、31…パイロットノズル、33…メインノズル、20…板材、21…平板、22…溝付き板、22a…溝
【発明の属する技術分野】
本発明は、平面方向に貫通孔を有する板体を曲げ加工する技術に関し、特にストライプ状に溝が形成された板材と平板を接合して得られた板体を曲げ加工する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
図9は一般的なガスタービンの概略構造を示す断面図、図10はガスタービンの燃焼器の概略構造を示す断面図である。図9および図10において、1は圧縮機であり空気を圧縮して燃焼用の空気や、ロータ、翼の冷却用の空気を発生させる。2は車室、3は車室2内でロータ周りに配設された多数の燃焼器である。燃焼器3は、例えば16個が配置され、各々には、ノズル部3a、燃焼筒3b、尾筒3cから構成される。100はガスタービンのガスパスであり、多段の動翼101、静翼102から構成され、動翼101はロータに、静翼102は車室2側にそれぞれ配置されている。燃焼器3の尾筒3cから流出する高温の燃焼ガスはガスパス100に流入し、ロータを回転させる。
【0003】
燃料は、メインノズル33から予め空気と混合した予混合気として燃焼筒3bに噴射され、燃焼筒3b内でパイロットノズル31により生成したパイロット炎により着火されて燃焼筒3b内に予混合炎を生成する。
【0004】
燃焼筒3bと尾筒3cとは、板体を曲げ加工することにより得られている。そして、高温の燃焼ガスと直接接触するために、この板体にはその平面方向に冷却空気を流す貫通孔が形成されている。燃焼筒3b、尾筒3cを構成する板体20の概略断面を図2に示す。この板体20は、溝22aが形成されている溝付き板22と平板21とから構成される。平板21で封止された溝22aが、冷却空気が流通する貫通孔となる。溝付き板22に対する平板21の接合は、ろう付けその他の接合方法によって行なわれる。
溝付き板22に対して平板21を接合して板体20を得た後に、例えばプレス加工により板体20は図11に示す尾筒部材3c1に形成される。図11に示す尾筒部材3c1は、尾筒3cの下側半分を構成する部材であり、図示しない上側半分の部材を別途作製して、尾筒部材3c1と接合することにより尾筒3cを構成する。
図11に示す尾筒部材3c1の曲げ加工においては、曲げ半径の小さな部分では、板体20割れ、平板21と溝付き板22との剥離、あるいは溝22a(貫通孔)形状の変形、および平板21の溝22aの上部での減肉率の増大による割れの発生等の不具合が懸念される。
【0005】
ところで、特開平8−117870号公報には、金属板面上に帯状リブ材をほぼ垂直に一体に延設してなるパネルを、回転ロール間に挿入して、リブ材を延設した面を内側にしてその延設方向に曲げ加工する際に有効なリブ材付き金属パネルの曲げ加工方法が開示されている。この曲げ加工方法は、リブ材に対面するロールの周面に設けられた条溝中にリブ材を収容し、かつリブ材の頂部は条溝の底面または条溝中のスペーサ面に当接し、ロールの回転に伴ってリブ材の側面を抑制すると共に、リブ材頂部にロール面圧を印加しつつ曲げ加工を行なうものである。この曲げ加工方法によれば、帯状リブの曲がり、基部の挫折を防止することができる。
【0006】
【特許文献1】
特開平8−117870号公報(第1頁、図1、図7)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
特開平8−117870号公報に開示された曲げ加工方法はリブ材付き金属パネルの曲げ加工に対して有効な手法である。しかし、尾筒3cを構成する板体20を曲げ加工する場合にこれを適用することはできない。板体20を構成する溝付き板22は、特開平8−117870号公報で言うところのリブ材付き金属パネルと同等の部材とみなすことができるが、板体20は溝22aを封止する平板21が設けられているためである。
【0008】
一方で、板体20を作製する場合に、曲げ加工時に発生する割れ、貫通孔形状の変形等の不具合を予め評価できることが望ましい。そうすれば、例えば、加工条件、溝22aの形状・寸法を所定のものとすることにより、割れ、貫通孔形状の変形等の不具合を抑制できる。ところが、これまでこのような評価手法は存在していない。そこで本発明は、板体20のようにその平面方向に貫通孔を有する板体の曲げ加工に際して発生する不具合を評価する手法を提供することを目的とする。また、本発明はこの手法によって得られた評価結果に基づいて貫通孔を有する板体を製造する方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
かかる目的のもとになされた本発明は、曲げ加工に供される平面方向に複数の孔が並設される板体の仕様決定方法であって、前記板体は、ストライプ状に形成された複数の溝を有する第1の板材と、前記第1の板材の前記溝が形成された面側に接合される平坦な第2の板材とから構成され、前記板体について前記溝を有する部分と有しない部分とに前記板体の厚さ方向に分割した要素からなる複数の解析モデルについて、有限要素法によって所定の曲げ試験による解析値を求め、複数の前記解析値のなかで前記板体について前記所定の曲げ試験により求めた実測値と所定の関係にある解析値が得られた解析モデルについて所定の条件による加工をシミュレーションすることを特徴としている。
本発明は、実測値と解析値がマッチングする解析モデルを選定する。この解析モデルを用いて行なう加工シミュレーションは、実態の板体を用いて行なう加工を反映した結果をもたらす。
本発明において、曲げ変位−荷重曲線および曲げ変位−曲げ角度曲線を前記実測値および前記解析値として求めることができる。
【0010】
また本発明において、複数の前記解析モデルは、前記第1の板材の厚さをt1(mm)、前記第2の板材の前記溝をのぞく部分の厚さをt2(mm)とすると、t1および/またはt2を下記の式にしたがって変動させたものとすることができる。
1≦t1/t2≦5
【0011】
選定された解析モデルについて行なう加工シミュレーションは、実際に行なう曲げ加工を模擬したものとすることが望ましいが、簡易的なものとすることもできる。この加工シミュレーションを行なうことにより、板体の割れを予測し、割れの発生しないt1、t2を板体の仕様として採用することができる。
【0012】
本発明は、曲げ加工に供される平面方向に貫通孔を有する以下の板体の製造方法をも提供する。この板体は、ストライプ状に形成された複数の溝を有する第1の板材と、前記第1の板材の前記溝が形成された面側に接合される平坦な第2の板材とから構成される。そして、前記板体について前記溝を有する部分と有しない部分とに前記板体の平面方向に分割した要素からなる複数の解析モデルについて、有限要素法によって所定の曲げ試験による解析値を求め、かつ複数の前記解析値のなかで前記板体について前記所定の曲げ試験により求めた実測値と所定の関係にある解析値が得られた解析モデルについて行なわれた加工シミュレーションの結果により設定された前記第1の板材の寸法および前記第2の板材の寸法に基づく前記第1の板材および前記第2の板材を用意し、これらを接合することによって前記板体を得るというものである。
【0013】
本発明の板体の製造方法において、設定された前記寸法に基づいて作製された前記第1の板材および前記第2の板材を接合して得られた板体に所定の曲げ加工を施すことができる。この曲げ加工において、割れ等の不具合の発生が抑制される。
本発明の板体の製造方法において、解析モデルについて、前述した分割の仕方等を採用できることは言うまでもない。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1は、本実施の形態における板体の仕様決定方法の手順を示すフローチャートである。はじめに、このフローチャートに基づいて、本実施の形態における板体の仕様決定方法の概要を説明する。
図1に示すように、本実施の形態における割れの発生予測方法は、評価対象となる板体について、ストローク−荷重曲線、ストローク−曲げ角度曲線の実測値を取得する(図1 S101)。ストローク−荷重曲線、ストローク−曲げ角度曲線の実測置の取得方法については後述する。評価対象となる板体は、図2に示すように、溝付き板22と平板21とを接合した形態を有する。
次に、ストローク−荷重曲線、ストローク−曲げ角度曲線の解析値を取得する(図1 S103)。解析値の取得は、有限要素法を用いて行なう。ここで、評価対象となる板体20は図2に示すものであるが、この板体20に基づく複数の解析モデルについて、ストローク−荷重曲線、ストローク−曲げ角度曲線の解析値を取得する。解析モデルについては後述する。なお、図1ではストローク−荷重曲線、ストローク−曲げ角度曲線の実測値の取得を、ストローク−荷重曲線、ストローク−曲げ角度曲線の解析値の取得よりも先に行なう例を示したが、本発明はこの逆、または両者を並行して行なってもよいことは言うまでもない。
【0015】
次に、ストローク−荷重曲線、ストローク−曲げ角度曲線の実測値と解析値とを比較する。この比較を行ない、実測値とマッチングする解析値が得られた解析モデルを割れ発生を予測するための解析モデルとして選定する(図1 S105)。
解析モデルが選定されると、この解析モデルを用いて割れの発生を予測する(図1 S107)。割れの発生予測は、引張り試験における破断歪を基準として行なわれる。つまり、板体20を構成する材料の引張り試験で得られる破断歪よりも解析モデルについて行なった加工シミュレーションによる引張り試験(加工)で得られる破断歪が大きい場合に、板体20について割れが発生するものと認定する。
【0016】
本実施の形態においては、図3に示すように、板体20を溝22a(貫通孔)が存在しない部分と存在する部分に分割した解析モデルMaを形成する。この分割は、板体20の平面方向に平行に行なわれる。また、解析モデルMaは、溝22aが存在しない部分と存在する部分とが各々金属板m1、m2とするソリッド(Solid)要素から構成される。金属板m1とm2にはそれぞれ異なる材料物性値を与えて、有限要素法の解析モデルMaとする。
【0017】
図3に示す解析モデルMaはソリッド要素から構成されるが、他の形式の要素、例えば図4に示すようにシェル(shell)要素から解析モデルMbを構成することができる。この解析モデルMbは、溝22aが存在しない部分と存在する部分とを各々金属板m3、m4とするシェル要素から構成される。金属板m3とm4にはそれぞれ異なる材料物性値を与えて、有限要素法の解析モデルMbとする。
【0018】
ストローク−荷重曲線、ストローク−曲げ角度曲線は、以上の解析モデルMaまたはMbを用いるが、さらに図5に示すように、平板21の厚さt2と、溝付き板22の厚さt1を変化させる。このとき、t1、t2は、1≦t1/t2≦5に従って設定する。
以上の解析モデルMaあるいはMbを用いて、有限要素法によりストローク−荷重曲線、ストローク−曲げ角度曲線を取得する。ここで、ストローク−荷重曲線、ストローク−曲げ角度曲線の求め方を図6に示してある。ベース40上に、ベース40の端部から所定長さだけ突出させて板体20を固定する。ポンチ41を板体20に押し付けて所定の荷重を付加する。このときの図6に示す荷重、ストロークおよび曲げ角度からストローク−荷重曲線、ストローク−曲げ角度曲線を求める。
【0019】
解析のパラメータとしては、以上のt1およびt2の他に、ベース40の曲げ半径R1、ポンチ41の荷重付与部分の半径R2を用いることもできる。
【0020】
以上のようにして求められた実測値および解析値によるストローク−荷重曲線、ストローク−曲げ角度曲線の例を図7および図8に示している。
実測値および解析値によるストローク−荷重曲線、ストローク−曲げ角度曲線の比較は以下の基準による。つまり、ストローク−荷重曲線では曲げの最大荷重が、実測値と解析値との差が5%以内のものを解析モデルMa,Mbとして選定する。また、ストローク−曲げ角度曲線ではその挙動が、実測値と解析値との差が5%以内のものを解析モデルMa,Mbとして選定する。ストローク−荷重曲線、ストローク−曲げ角度曲線は、いずれか一方または双方を用いることができる。
図7のストローク−荷重曲線においては、解析モデルM1は実測値との曲げの最大荷重の差が5%以内であるのに対して、解析モデルM2は実測値との曲げの最大荷重の差が5%を超えているため、解析モデルM1を解析モデルMa,Mbとして選定することになる。また、図8のストローク−曲げ角度曲線においては、解析モデルM1は実測値との挙動の差が5%以内であるのに対して、解析モデルM2は実測値との挙動の差が5%を超えているため、解析モデルM1を解析モデルMa,Mbとして選定することになる。
ここで、図11に尾筒部材3c1を示すように、尾筒3cは、各部位ごとに曲げ半径が異なる。そこで、本実施の形態においては、異なる曲げ半径に対応して解析モデルMa,Mbを決定する。
【0021】
次に、決定された解析モデルMa,Mbを用いて割れの発生予測を行なう。この予測は、解析モデルMa,Mbに所定の条件が与えられた加工シミュレーションを施した結果に基づく。
【0022】
以上の実施の形態においては、割れの発生予測は、所定の加工として引張り試験をシミュレーションにより行なったが、本発明はこれに限らない。例えば、図11に示した尾筒部材3c1を板体20から得る場合には、実際の加工条件、例えば金型の曲げ半径等の形状、成形荷重、上・下金型のクリアランスといった加工時に用いられる条件を設定した加工シミュレーションとすることができる。
【0023】
以上の本実施の形態によれば、実態に近い解析モデルMa,Mbに基づいて割れの予測を行なうことができるため、実際の曲げ加工時に供される部材を、割れ等の不具合が生じない形状、寸法を含む仕様とすることができる。この仕様に基づいて平板21および溝付き板22を作成し、かつこれらを接合した後にプレス成形による曲げ加工を施すことにより、図11に示す尾筒部材3c1を得ることができる。
以上の開示以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択し、あるいは他の構成に適宜変更することが可能である。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、平面方向に貫通孔を有する板材の曲げ加工に際して、割れ等の不具合の発生が防止される板材の仕様を予測することができるため、実際の曲げ加工における不具合の発生を防止または抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態における板体の仕様決定方法の手順を示すフローチャートである。
【図2】本実施の形態において曲げ加工の対象となる板体の断面構造を示す図である。
【図3】本実施の形態において用いる解析モデルの形態一例を示す図である。
【図4】本実施の形態において用いる解析モデルの形態の他の例を示す図である。
【図5】本実施の形態において曲げ加工の対象となる板材の解析のための寸法を示す図である。
【図6】本実施の形態において、ストローク−荷重曲線、ストローク−曲げ角度曲線の測定手法を説明するための図である。
【図7】本実施の形態において得られる、ストローク−荷重曲線の一例を示す図である。
【図8】本実施の形態において得られる、ストローク−曲げ角度曲線の一例を示す図である。
【図9】一般的なガスタービンの概略構造を示す断面図である。
【図10】ガスタービンの燃焼器の概略構造を示す断面図である。
【図11】燃焼器の尾筒を構成する部材を示す斜視図である。
【符号の説明】
1…圧縮機、2…車室、3…燃焼器、3a…ノズル部、3b…燃焼筒、3c…尾筒、100…ガスパス、101…動翼、102…静翼、31…パイロットノズル、33…メインノズル、20…板材、21…平板、22…溝付き板、22a…溝
Claims (5)
- 曲げ加工に供される平面方向に複数の孔が並設される板体の仕様決定方法であって、
前記板体は、ストライプ状に形成された複数の溝を有する第1の板材と、前記第1の板材の前記溝が形成された面側に接合される平坦な第2の板材とから構成され、
前記板体について前記溝を有する部分と有しない部分とに前記板体の厚さ方向に分割した要素からなる複数の解析モデルについて、有限要素法によって所定の曲げ試験による解析値を求め、
複数の前記解析値のなかで前記板体について前記所定の曲げ試験により求めた実測値と所定の関係にある解析値が得られた解析モデルについて所定の条件による加工をシミュレーションすることを特徴とする板体の仕様決定方法。 - 前記要素をソリッド要素またはシェル要素として取り扱うことを特徴とする請求項1に記載の板体の仕様決定方法。
- 複数の前記解析モデルは、前記第1の板材の厚さをt1(mm)、前記第2の板材の前記溝をのぞく部分の厚さをt2(mm)とすると、t1および/またはt2を下記式の範囲内で設定することを特徴とする請求項1または2に記載の板体の仕様決定方法。
1≦t1/t2≦5 - 曲げ加工に供される平面方向に複数の孔が並設される板体の製造方法であって、
前記板体は、ストライプ状に形成された複数の溝を有する第1の板材と、前記第1の板材の前記溝が形成された面側に接合される平坦な第2の板材とから構成され、
前記板体について前記溝を有する部分と有しない部分とに前記板体の平面方向に分割した要素からなる複数の解析モデルについて、有限要素法によって所定の曲げ試験による解析値を求め、かつ複数の前記解析値のなかで前記板体について前記所定の曲げ試験により求めた実測値と所定の関係にある解析値が得られた解析モデルについて行なわれた加工シミュレーションの結果により設定された前記第1の板材の寸法および前記第2の板材の寸法に基づく前記第1の板材および前記第2の板材を用意し、これらを接合することを特徴とする板体の製造方法。 - 設定された前記寸法に基づいて作製された前記第1の板材および前記第2の板材を接合して得られた板体に所定の曲げ加工を施すことを特徴とする請求項4に記載の板体の製造方法。
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