JP2004144668A - 欠陥検出方法 - Google Patents

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中元 茂実
Akira Kazama
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Abstract

【課題】輝度信号の局所的周波数、欠陥の広がりの方向性について、有効な特徴量を用いて有害欠陥の検出と分類を行う欠陥検出方法を提供する。
【解決手段】工業製品の表面に生じる欠陥を光学的方法で検出する欠陥検出方法において、撮像によって得られた画像信号を2次元ウェーブレット変換により多重解像度成分に分解し、欠陥の特徴に予め対応する多重解像度成分を選択して、2次元逆ウェーブレット変換により画像を復元し、固有の局所的周波数および固有の形状をもった欠陥および非欠陥要素の画像を選択的に抽出することを特徴とする欠陥検出方法。復元した画像を2値化してHough変換により直線要素を抽出して鋼板エッジを検出すること、多重解像度成分の異なる組合せ、2値化した画像の残存画素数を用いること、さらに残存画素数に最尤決定法を適用して欠陥の分類を行うこともできる。
【選択図】   図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フィルム、紙、鉄鋼の圧延プロセスなど、平板状の製品を作る生産工程における表面検査技術における欠陥の検出および分類を行う欠陥検出方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、工業製品の表面に生じる欠陥を光学的方法で検出する装置においては、撮像によって得られた画像信号に対し、欠陥候補信号の面積、輝度積算値、半値幅等の各種特徴量によるツリー型の論理によりノイズ等から有害な欠陥を抽出し、その分類をおこなってきた。
【0003】
例えば特開平8−82604号公報(特許文献1)には、寸法情報と強度情報に当たる多次元の特徴量を検出することにより、特に油汚れ、白色汚れ等にも高精度の表面欠陥と判別可能とする鋼板表面欠陥検査方法が提案されている。この技術は、鋼板表面に照明光を照射し、該鋼板表面をカメラにより撮像し、捉えられた鋼板表面欠陥幅、欠陥部面積、縦横比及び最大強度の4次元を主要特徴量として検出し、該検出された主要特徴量抽出から欠陥を判定することを特徴としている。欠陥の判定は、複数段の判定ステップにより分岐を繰返すツリー型の論理により構成されている。
【0004】
しかしながら、欠陥種類または欠陥程度を分類するために重要な因子である欠陥の鋭さと欠陥の広がりの方向性については、有効な特徴量を得る手段がなく、分類は不完全であった。
【0005】
また欠陥の自動検出の際、輝度むらのある画像信号の正規化のため、2値化前にシェーディング処理を施す場合、小さい急峻な信号は強調するものの、薄く広がっている欠陥の信号がノイズに埋もれてしまうという副作用がある。これは、移動平均の幅に比べて大きい欠陥信号は、移動平均値が信号の値に追随し、差が小さくなるためである。
【0006】
特開平9−218957号公報(特許文献2)には、画像信号からの欠陥の検出にウェーブレット変換を用いる手法が提案されている。これは、画像を構成する画面上でウェーブレット変換を行うウェーブレット変換段階と、画像データ中のハイパス情報とローパス情報との組合せ部分に対して、その各画素の画素値をしきい値処理して活性画素と非活性画素の二値画像データを得る二値化処理段階と、その中の活性画素の数を計数する画素数計数段階とを有している。
【0007】
【特許文献1】
特開平8−82604号公報
【0008】
【特許文献2】
特開平9−218957号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来技術においては、欠陥候補信号から有害な欠陥の抽出および分類をする上で、重要な因子である欠陥の鋭さに対応する輝度信号の局所的周波数、欠陥の広がりの方向性について、有効な特徴量を得る手段がなく、有害欠陥の検出と分類は不完全であった。実際には、欠陥の鋭さ、即ち輝度信号の局所的周波数によって、欠陥の種類および有害度は異なる。また、欠陥が長手方向に広がっているか、幅方向に広がっているか、あるいは斜め方向に広がっているかによっても、欠陥の種類および有害度は異なる。
【0010】
特許文献2(特開平9−218957号公報)記載の技術は、ウェーブレット変換を使用しているものの、実際の欠陥信号は、x方向、y方向、あるいは斜め方向それぞれの広がりのある周波数域に存在しており、これらの情報を再構成または統合することができない。
【0011】
本発明は、以上の問題点を解決し、輝度信号の局所的周波数、欠陥の広がりの方向性について、有効な特徴量を得ることにより、有害欠陥の検出と分類を行うことが可能な欠陥検出方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の課題は次の発明により解決される。その発明は、工業製品の表面に生じる欠陥を光学的方法で検出する欠陥検出方法において、撮像によって得られた画像信号を2次元ウェーブレット変換により多重解像度成分に分解し、欠陥の特徴に予め対応づけられた多重解像度成分を選択して、2次元逆ウェーブレット変換により画像を復元し、固有の局所的周波数および固有の形状をもった欠陥および非欠陥要素の画像を選択的に抽出することを特徴とする欠陥検出方法である。
【0013】
この発明において、鋼板エッジに対応する多重解像度成分を選択して、2次元逆ウェーブレット変換により画像を復元して2値化し、Hough変換により直線要素を抽出して鋼板エッジを検出することを特徴とする欠陥検出方法とすることもできる。
【0014】
またこの発明において、同一の元画像に対して、多重解像度成分の異なる組合せにより複数の画像を復元して比較し、欠陥および非欠陥要素の種類とそれらの有害度を分類することを特徴とする欠陥検出方法とすることもできる。
【0015】
さらにこれらの発明において、復元した画像を2値化して比較し、欠陥および非欠陥要素の種類とそれらの有害度を分類することを特徴とする欠陥検出方法とすることもできる。
【0016】
この発明において、2値化した画像のさらに残存画素数に基づき、欠陥および非欠陥要素の種類とそれらの有害度を分類することを特徴とする欠陥検出方法とすることもできる。また、得られた残存画素数に最尤決定法を適用して欠陥の分類を行うことを特徴とする欠陥検出方法とすることもできる。
【0017】
以上のように本発明は、撮像によって得られた画像信号をウェーブレット変換(Wavelet Transform)により多重解像度成分に分解し、適当な成分を選択して、逆ウェーブレット変換により画像の復元をおこなうことにより、固有の局所的周波数、固有の形状をもった欠陥の画像のみを選択的に抽出することを特徴とするものである。
【0018】
ウェーブレット変換は図3に示すとおり画像を低周波成分とy方向高周波成分、x方向高周波成分、45°方向高周波成分、に分解するものであり、逆ウェーブレット変換はこれらウェーブレット変換により分解された成分から画像を復元するものである。
【0019】
そこで画像を復元する際に使用する成分を選択することにより固有の局所的周波数、固有の形状をもった欠陥の画像のみを選択的に抽出することができる。また異なった成分の組により、評価したい局所的周波数と形状に応じた複数の画像を復元して比較することにより欠陥の種類と有害度別の分類が可能となる。また多重解像度成分の選択によっては画像が圧縮されるため後の信号処理が軽くなるという副次的効果がある。
【0020】
装置は概ね撮像系と画像メモリ及び処理系で構成される。例えば光源とカメラ等を用いた撮像系で検査対象表面の画像信号を画像メモリに記憶する。本発明では得られた画像信号を離散ウェーブレット変換で多重解像度成分に分解し、適当な成分を選択して、逆離散ウェーブレット変換で画像の再構成をおこなうことにより、固有の局所的周波数、固有の形状をもった欠陥の画像のみを選択的に抽出し分類する。
【0021】
図2に従って画像処理装置内での演算の流れを説明すると、先ず画像メモリに採取された画像データから、欠陥候補の近傍の画像データを切出し、図3に示した離散ウェーブレット変換による多重解像度分解で画像S(j)を低周波成分S(j+1)と垂直方向高周波成分W(j+1,v)、対角方向高周波成分W(j+1,d)、水平方向高周波成分W(j+1,h)に逐次分解していく。切り出す画像データのサイズは多重解像度分解の性質上、縦横とも2の冪乗である。ここで次数jが高いほど低周波成分となる。
【0022】
画像データsk,l(j)(k,lは画素を表す)の離散ウェーブレット変換による多重解像度分解は、
m,n(j+1)  = ΣΣpk−2ml−2nk,l(j)
m,n(j+1,h)= ΣΣpk−2ml−2nk,l(j)
m,n(j+1,v) = ΣΣqk−2ml−2nk,l(j)
m,n(j+1,d) = ΣΣqk−2ml−2nk,l(j)
ここで、総和はk,lについてとる。
【0023】
また、逆離散ウェーブレット変換による再構成は、
m,n(j)= ΣΣ[ pm−2kn−2lk,l(j+1)+ pm−2kn−2lk,l(j+1,h)+ qm−2kn−2lk,l(j+1,v)+qm−2kn−2lk,l(j+1,d) ]
の関係で表される。なおここで、p,qはjレベルの解像度成分と、1つ低いj+1レベルの解像度成分を結んでいる解像度成分のレベルによらない数列であり、総和はk,lについてとる。
【0024】
ここでは上の多重解像度分解の関係を満たす数列p,qとしてHarrのウェーブレットまたはDaubechiesのウェーブレットの数列を使用する。HarrのウェーブレットおよびDaubechiesのウェーブレットの数列においてはq=(−1)−kの関係が成立し、その値は文献「ウェーブレットによる信号処理と画像処理」(共立出版株式会社)など記載されている。HarrのウェーブレットおよびDaubechiesのウェーブレットは正規直交基底であり分解後の全ての成分から元画像が再構成され、また局在性においても優れている。
【0025】
解像度成分への分解後、抽出したい欠陥の特徴に応じて分解された成分の適当なものを選択する。局所的周波数が低い欠陥を抽出したいときにはW(j,v)、W(j,d)、W(j,h)の次数jの高いものを、水平方向に不連続部がある欠陥、すなわちその法線方向である垂直方向に広がった欠陥を抽出したい場合はW(j,v) を選択すればよい。
【0026】
同様に、垂直方向に不連続部がある欠陥すなわちその法線方向である水平方向に広がった欠陥を抽出したい場合はW(j,h)、対角方向に不連続部がある欠陥すなわちその法線方向である対角方向に広がった欠陥を抽出したい場合はW(j,d)を選択すればよい。
【0027】
次に、このようにして選択されたW(j,v)、W(j,d)、W(j,h)の組について逆離散ウェーブレット変換を施し画像を再構成する。この結果、固有の局所的周波数すなわち鋭さ、固有の広がりをもった欠陥の画像のみが選択的に抽出される。この手法によれば、薄く広がった欠陥信号も高いS/Nで検出することができる。
【0028】
ここで多重解像度成分の選択によっては、サイズが圧縮されるため、後の信号処理において処理速度を高めかつ記憶装置の容量を節約できるという副次的効果がある。例えば、フィルタリング処理後の画像を2値化し、孤立点除去や画素連結をする際には、処理時間が短縮される。
【0029】
これまでの説明は、特定形態欠陥の抽出または有害欠陥の検出に、主眼をおいて述べたが、同様の原理から得られた処理後画像を、生産工程における処理むら等の無害な信号を欠陥候補から、除外するために用いてもよい。また、画像上の鋼板エッジを検出するために用いてもよい。画像上の鋼板エッジを自動検出するための簡単な手法としては、幅方向に鋼板内部から鋼板外部に向かって輝度信号の微分値や2回微分値を求め、この絶対値が最初に閾値を越える位置を求めればよい。
【0030】
撮像が2次元エリアセンサカメラによる場合など、必ずしもエッジが垂直方向または水平方向でなく傾いている可能性がある場合に、正確にその位置を求めるには、エッジ成分に対応する局所的周波数成分から再構成した画像を2値化し、Hough変換で直線を検出することも考えられる。Hough変換は、画像からの直線抽出手法としてよく知られたものであり、概要は次のようになる。
【0031】
まず、鋼板エッジに対応する局所周波数成分から再構成した画像を、所定の閾値で2値化してエッジ点候補を求める。エッジ点候補の座標(X,Y)に対して、変数θ,ρからなるパラメータ平面(θ,ρ)上に曲線、
ρ=Xcosθ+Ysinθ  (1)
を定義し、Hough曲線と呼ぶ。この(θ,ρ)平面上のHough曲線(1)を、多数のエッジ点候補(X,Y)に対して描くと、それらはXとYをパラメータとする曲線群(Hough曲線群)ということになる。
【0032】
エッジに対応する直線は、一般性を損なうことなく、
Xcosθ+Ysinθ=ρ  (2)
と表すことができる。一方、式(1)で表される上記Hough曲線群は、パラメータ(X,Y)がエッジ点候補であれば、式(2)よりθ=θのときρ=ρとなる。すなわち、Hough曲線群はすべて点(θ,ρ)を通過することになるので、Hough曲線群の交点(θ,ρ)を求めれば、エッジに対応する直線の式(2)が決定できる。
【0033】
実際には、(θ,ρ)パラメータ平面をセルに分割してHough曲線群の軌跡をカウントし、カウント数が最大となるセルが、曲線群の交点(θ,ρ)を含むセルとなる。以下、必要な精度に応じてセルを分割し、この操作を繰返してパラメータ(θ,ρ)を求めることにより、エッジに対応する直線の式(2)を決定することができる。
【0034】
次に、欠陥あるいは非欠陥要素(鋼板エッジ等)の種類と有害度について分類する。図3に示すように、垂直方向高周波成分W(j+1,v)、対角方向高周波成分W(j+1,d)、水平方向高周波成分W(j+1,h)に逐次分解し再構成する。これにより、欠陥あるいは非欠陥要素に固有の、局所的周波数(鋭さ)および広がりについて分類された複数の画像を得た後、それらを比較して、欠陥あるいは非欠陥要素の種類と有害度の分類を行う。
【0035】
その場合、所定の閾値で2値化した後、残存画素を計数する方法が考えられる。2次元ウェーブレット変換によるフィルタリングで、例えば、光学系に起因する輝度斑に対応する低周波成分を除いておけば、容易に中心輝度を設定でき(8ビットでは127)、欠陥部を評価することができる。
【0036】
その結果、変換に用いた高周波成分の方向により残存画素数が異なる場合は、欠陥等の方向性を評価することができる。例えば、水平方向高周波成分による変換で残存画素数が最多、垂直方向高周波成分で最少であれば、水平方向に高周波で垂直方向に低周波であり、垂直方向に伸びたテクスチャを有する欠陥であることが分かる。なお、残存画素数の計数に当たっては、必要に応じて2値化後に、ノイズ成分の影響を緩和するために孤立点除去あるいは画素連結等の処理を行ってもよい。
【0037】
このようにして、得られた残存画素数を比較して、欠陥等の種類と有害度の分類を行うには、ベイズの定理(Bayes’ theorem)に基づいた最尤(maximum likelihood)決定を行う。計算された特徴量、即ち前述の残存画素数の組を、n次元ベクトルu=(u,...,u)で表しパターンと呼ぶ。またここで分類すべき欠陥種類または欠陥程度をそれぞれカテゴリと呼ぶ。
【0038】
次に欠陥種類または欠陥程度について、カテゴリとして分類するためにベイズの定理に基づいた最尤決定を行う。この方法については例えば「パターン情報処理」(オーム社)に詳しい。この方法により、パターンuが与えられたとき、そのカテゴリをjとする確率をP(j|u)、カテゴリjがパターンuを生起する確率をP(u|j)、カテゴリjの生起確率をP(j)、パターンuの生起確率をP(u)とすれば、ベイズの定理により、
P(j|u)=P(u|j)P(j)/P(u)     (3)
となる。
【0039】
ここでP(u|j)、P(j)はあらかじめ多数のサンプルを集めて求めておくことができ、またP(u)はカテゴリによらない。jを変えてP(j|u)が最大となるカテゴリiを求めればよい。
【0040】
あらかじめ多数のサンプルからカテゴリjの生成確率P(j)とカテゴリjとなるパターンv(j)の要素v1,,...,vのそれぞれの平均m1,,...,m、分散σ11 ,σ22 ,...,σnn 及びvとvの共分散σkl =σlk を計算しておき、これらを行列要素とする 行列(σkl ) を共分散行列と呼ぶ。パターンv(j)の平均からなるベクトルをm(j)=(m,...,mは行ベクトルを示す)、共分散行列(σkl )を(Σj)、その行列式det(Σj)を|Σj|と表せば、ベイズの定理からパターンuのn次元正規分布を仮定して計算することにより、尤度(likelihood)関数は、
g(j|u) = logP(j) − [log|Σj|+n・log2π]/2− (u−m(j))(Σj)−1(u−m(j))/2             (4)
となる。ここでjを変えて、この尤度関数g(j|u)が最大となるカテゴリiを探せば、j=iのときP(j|u)も最大となり、カテゴリiに欠陥種類または欠陥程度を分類することができる。
【0041】
【発明の実施の形態】
本発明を、鉄鋼分野の熱間圧延プロセス(以下熱延と呼ぶ)に適用した例を図1に示す。この熱延装置において、圧延ロール2は7スタンドになっており、入り側最初のスタンドをNo.1、最終スタンドをNo.7スタンドとする。入り側より1300℃程度の温度のスラブ鋼材1が挿入され、次第に圧延されて、No.7スタンド出口で1mm程度にまで圧延される。ここでの鋼板移動速度は20m毎秒程度、鋼板の幅は1000mmである。
【0042】
撮像のための光源3としては、例えばメタルハライド250Wランプの光をバンドルファイバーで線状に形成し、シリンドリカルレンズで集光して鋼板表面を照らす。受光はラインセンサカメラを用いる。カメラ4の画素数は1024であり、1000mmの板幅を見るので、横方向の画素分解能は1mmである。
【0043】
カメラコントローラ6は、ロールに設けられたロータリエンコーダ5より信号を受け取って、鋼板が1mm進むごとにカメラにトリガ信号を送る。カメラはトリガ信号が入った時のみ4096データまで逐次、1024ラインの画像信号を出力するので、鋼板の運転速度が変化しても、画像メモリ内では常に1画素が実際の鋼板での縦横1mmの像に相当している。マイクロコンピュータ9は、ロータリエンコーダからの信号で鋼板の進んだ長さを測定しており、指定された時刻から指定された距離の画像を取り込むよう、画像処理装置8を制御する。
【0044】
画像処理装置内での信号処理の流れを図2に沿って説明すると、先ず画像メモリに採取された画像データに対して、図3に示した離散ウェーブレット変換で画像を低周波成分S(n)とy方向高周波成分W(n,v)、x方向高周波成分W(n,h)、45°方向高周波成分W(n,d)に分解する。ここで次数nが高いほど低周波成分となる。離散ウェーブレット変換の基底関数としては例えばDaubechiesのウェーブレットの数列を使用する。
【0045】
その後、抽出したい欠陥の特徴に応じて分解された成分の適当なものを選択する。局所的周波数が低い欠陥を抽出したいときにはW(n,v)、W(n,h)、W(n,d)次数nの高いものを、y方向に不連続部がある欠陥すなわちその法線方向であるx方向に広がった欠陥を抽出したい場合はW(n,v)、x方向に不連続部がある欠陥すなわちその法線方向であるy方向に広がった欠陥を抽出したい成分を抽出したい場合はW(n,h)、45°方向に不連続部がある欠陥すなわちその法線方向である−45°方向に広がった欠陥を抽出したい成分を抽出したい場合はW(n,d)を選択すればよい。
【0046】
次に、このようにして選択されたW(n,v)、W(n,h)、W(n,d)の組について逆離散ウェーブレット変換を施し画像を復元する。この結果、固有の局所的周波数すなわち鋭さ、固有の広がりをもった欠陥の画像のみが選択的に抽出される。
【0047】
また図2の演算を異なったW(n,v)、W(n,h)、W(n,d)の複数の組について逆ウェーブレット変換を行うことにより、固有の局所的周波数すなわち鋭さ、固有の広がりについて分類された欠陥の画像を複数得ることができる。得られた画像の例を図4に示す。これらを図5に示すように適当な閾値で2値化し、ノイズ成分の影響を緩和するために孤立点除去あるいは画素連結等の処理を行い、残存画素数を比較することにより、欠陥種類および欠陥程度の分類を行う。複数の残存画素数からの欠陥等の種類と有害度の分類はベイズの定理に基づいた最尤決定により行う。
【0048】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば検査対象の画像信号について、2次元ウェーブレット変換により画像を多重解像度成分に分解し、適当な成分を選択して、2次元逆ウェーブレット変換により複数の画像の復元をおこなって比較することにより、欠陥の種類および有害度について分類することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いる欠陥検出装置の構成例を示す図。
【図2】演算の流れを示すフロー図。
【図3】2次元ウェーブレット変換と2次元逆ウェーブレット変換の概念を示す図。
【図4】2次元逆ウェーブレット変換により再構成された画像を示す図。(a)幅方向高周波成分  (b)長手方向高周波成分  (c)対角方向高周波成分  (d)元画像
【図5】高周波成分から再構成された画像から得られた2値化画像を示す図。(a)幅方向高周波成分  (b)長手方向高周波成分  (c)対角方向高周波成分

Claims (6)

  1. 工業製品の表面に生じる欠陥を光学的方法で検出する欠陥検出方法において、撮像によって得られた画像信号を2次元ウェーブレット変換により多重解像度成分に分解し、欠陥の特徴に予め対応づけられた多重解像度成分を選択して、2次元逆ウェーブレット変換により画像を復元し、固有の局所的周波数および固有の形状をもった欠陥および非欠陥要素の画像を選択的に抽出することを特徴とする欠陥検出方法。
  2. 鋼板エッジに対応する多重解像度成分を選択して、2次元逆ウェーブレット変換により画像を復元して2値化し、Hough変換により直線要素を抽出して鋼板エッジを検出することを特徴とする請求項1記載の欠陥検出方法。
  3. 同一の元画像に対して、異なる多重解像度成分の組合せにより複数の画像を復元して比較することにより、欠陥および非欠陥要素の種類とそれらの有害度を分類することを特徴とする請求項1記載の欠陥検出方法。
  4. 復元した画像を2値化して、欠陥および非欠陥要素の種類とそれらの有害度を分類することを特徴とする請求項3記載の欠陥検出方法。
  5. 2値化した画像のさらに残存画素数に基づき、欠陥および非欠陥要素の種類とそれらの有害度を分類することを特徴とする請求項4記載の欠陥検出方法。
  6. 得られた残存画素数に最尤決定法を適用して欠陥の分類を行うことを特徴とする請求項5記載の欠陥検出方法。
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