JP2004143558A - 高周波誘導加熱による鋼および鋼合金組織の微細化方法、及びその微細化装置、金属構造物の加工方法、金属構造物 - Google Patents

高周波誘導加熱による鋼および鋼合金組織の微細化方法、及びその微細化装置、金属構造物の加工方法、金属構造物 Download PDF

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西尾 一政
Masahiro Toyosada
豊貞 雅宏
Susumu Osada
長田 進
Hiroki Kawaguchi
川口 寛樹
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Abstract

【課題】作業性、安全性、経済性に優れ、金属材料の疲労寿命を延命化することが可能な鋼および鋼合金組織の微細化方法およびその装置を提供する。
【解決手段】鋼および鋼合金に対する加熱の手段として高周波誘導加熱を用い、鋼および鋼合金表面が溶融しない温度範囲において加熱と冷却とを繰り返すことにより、鋼および鋼合金の組織を微細化する。加熱は、高周波整合トランス2から高周波電流を供給される加熱用コイル3によって行い、冷却は、冷却ユニット8から水、空気を供給される冷却用ノズル7により行う。
高周波誘導加熱を行う回数は1回から20回であることが好ましく、高周波誘導加熱の周波数は10kHzから1000kHzの範囲で選択することが好ましい。また、加熱の際の加熱速度は、100℃/秒から1000℃/秒であり、冷却の際の冷却速度は、10℃/秒から800℃/秒であることが好ましい。
【選択図】     図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼および鋼合金の組織を微細化する方法および装置に関し、特に、溶接止端部等の疲労亀裂を生じやすい部位や、局所的に強度を必要とする部位の鋼および鋼合金組織を微細化するための方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の鋼および鋼合金の組織を微細化する方法としては、加工熱処理制御プロセス(Thermo Mechanical Control Process 以下「TMCP」と略記する)によるものが知られている。また、近年、大歪熱間加工と磁場中熱処理を組み合わせたメゾスコピック組織制御技術によって極微細複相組織を得る手段の実用化が進んでいる。このような金属組織の微細化によって、鉄基金属、特に、低炭素鋼の高張力化が可能となっている。
しかし、このようにして形成される高張力鋼であっても、複数の材料を溶接する場合には、溶接割れや溶接止端部の結晶粒が粗大化して溶接継手部の疲労強度が低下し、高張力化した利点を生かしきれないという問題点がある。また、局所的に強度を必要とする部位の金属組織を微細化することは、上述の方法によっても不可能である。
このような目的のために、溶接継手部にレーザ光を繰り返し照射して加熱領域のフェライト粒の微細化を行うことによって、溶接部の疲労寿命を延命化する方法を本発明者らは発明し、その技術が特許文献1に記載されている。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−256335号公報(段落番号0006から0026)
【0004】
この技術は、局所的な加熱が可能なレーザ光を、鋼および鋼合金表面が溶融しない条件で繰り返し照射して急速加熱と急速冷却を繰り返し、鋼および鋼合金組織の微細化を行って、構造物の構成材料の強度を高め、疲労寿命の延命化を図るものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、レーザ光照射によって鋼および鋼合金組織の微細化を行うためには、高出力のYAGレーザを用いるのが通常であり、大型のレーザ光発生装置を必要とするため可搬性に欠け、作業上の安全性において問題がある。また、レーザ光発生装置が高価である上に、レーザ光発生装置からレーザ光を導波するための光ケーブルの可撓性が悪く、取扱いの点でも問題がある。
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、鋼および鋼合金組織の微細化を高周波誘導加熱によって行うことにより、作業性、安全性、経済性に優れ、鋼および鋼合金材料の疲労寿命を延命化することが可能な鋼および鋼合金組織の微細化方法およびその装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するために、本発明は、鋼および鋼合金に対する加熱の手段として高周波誘導加熱を用い、前記鋼および鋼合金表面が溶融しない温度範囲で加熱し、その後冷却することにより、前記鋼および鋼合金の組織を微細化することを特徴とする高周波誘導加熱による鋼および鋼合金組織の微細化方法である。これにより、レーザ光照射による場合と比較して、鋼および鋼合金材料の表面から深い部位まで加熱することができ、広い領域に亘って鋼および鋼合金の疲労寿命の延命化を実現することができる。また、作業性、安全性、経済性に優れた鋼および鋼合金組織の微細化方法を実現できる。
【0007】
本発明の高周波誘導加熱による鋼および鋼合金組織の微細化方法においては、前記加熱と冷却を1回から20回の範囲で行うことを特徴とする。
高周波誘導加熱の回数が20回を超えると、組織の微細化が飽和状態となって本発明の効果が得られにくい。そのため、高周波誘導加熱を1回から20回の範囲で行うことが好ましい。
本発明の高周波誘導加熱による鋼および鋼合金組織の微細化方法においては、前記高周波誘導加熱の周波数は10kHzから1000kHzの範囲内であることを特徴とする。
高周波誘導加熱の周波数が10kHz未満であると、加熱領域が増大するために、加熱速度が小さくなって本発明の効果が得られにくい。一方、高周波誘導加熱の周波数が1000kHzを超えると、装置が高価なものとなって好ましくない。
従って、高周波誘導加熱の周波数は10kHzから1000kHzの範囲内であることが好ましい。
【0008】
本発明の高周波誘導加熱による鋼および鋼合金組織の微細化方法においては、前記加熱の際の加熱速度は、100℃/秒から1000℃/秒の範囲内であり、前記冷却の際の冷却速度は、10℃/秒から800℃/秒の範囲内であることを特徴とする。
加熱速度が100℃/秒未満であると、オーステナイト粒が成長して本発明の効果が得られにくい。一方、加熱速度が1000℃/秒を超えると、オーステナイト粒が十分に生じないので本発明の効果が得られにくい。
また、冷却速度が10℃/秒未満であると、オーステナイトから変態したフェライト粒が成長し、本発明の効果が得られにくい。一方、冷却速度が800℃/秒を超えると、冷却装置が大掛りとなり、経済的に好ましくない。
従って、加熱の際の加熱速度は、100℃/秒から1000℃/秒の範囲内であり、冷却の際の冷却速度は、10℃/秒から800℃/秒の範囲内であることが好ましい。
本発明の高周波誘導加熱による鋼および鋼合金組織の微細化方法においては、前記加熱と冷却の後に焼鈍を行って残留応力を緩和することを特徴とする。
これにより、加熱処理によって生じる引張り残留応力を低減することができる。
【0009】
本発明は、鋼および鋼合金からなる金属構造物の溶接部または形状急変部に対して、高周波誘導加熱による鋼および鋼合金組織の微細化方法を用いて金属構造物を加工することを特徴とする金属構造物の加工方法である。
これにより、鋼および鋼合金からなる金属合金構造物の疲労寿命の延命化を実現することができ、安全確認のための保守点検の回数を低減することができる。
本発明は、上述した金属構造物の加工方法を用いて加工されていることを特徴とする金属構造物である。
【0010】
本発明は、高周波誘導加熱電源と、この高周波誘導加熱電源から電力の供給を受けて鋼および鋼合金を加熱するための加熱部と、前記鋼および鋼合金を冷却するための冷却部と、前記鋼および鋼合金の温度を測定し、記録し、制御するための温度制御部とを有することを特徴とする高周波誘導加熱による鋼および鋼合金組織の微細化装置である。
本発明の高周波誘導加熱による鋼および鋼合金組織の微細化装置においては、前記冷却部は、内管と外管とからなる冷却ノズルを有し、前記内管に水、前記外管に空気、あるいはその逆を供給して前記冷却ノズルから水と空気のいずれか一方または両方を噴出し、かつ移動可能であることを特徴とする。
本発明の高周波誘導加熱による鋼および鋼合金組織の微細化装置においては、前記加熱部を構成する加熱用コイルの移動速度が10mm/分から600mm/分の範囲内であることを特徴とする。
加熱用コイルの移動速度が10mm/分未満であると、加熱領域が増大し、オーステナイト粒が成長するため本発明の効果が得られにくい。一方、加熱用コイルの移動速度が600mm/分を超えると、十分な加熱が得られず本発明の効果が得られにくい。
従って、加熱用コイルの移動速度が10mm/分から600mm/分の範囲内であることが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施の形態に基づいて詳細に説明する。
本発明の鋼および鋼合金組織の微細化方法は、鋼および鋼合金に対する加熱の手段として高周波誘導加熱を用い、鋼および鋼合金表面が溶融しない温度範囲で加熱しその後冷却することにより、鋼および鋼合金の組織を微細化するものである。
ここで用いられる高周波誘導加熱とは、高周波電力を低電圧、高電流の高周波電流に変換し、被加熱体である鋼および鋼合金の近傍に配置された加熱用コイルに電流を流して高周波磁束を発生させ、被加熱体内部に渦電流を誘起させて、この電流が被加熱体の金属抵抗中を流れることによって発熱させる加熱方法である。
【0012】
図1に、本発明の鋼および鋼合金組織の微細化方法を実現するための装置の構成の一例を示す。
図1中、符号1は高周波誘導加熱電源であり、供給電力が10〜20kW、周波数が10〜1000kHzの電源が通常用いられる。符号2はこの高周波誘導加熱電源1から供給される電力を変換するための高周波整合トランスであり、この高周波整合トランス2で得られる高周波電流が加熱用コイル3に供給される。これらの高周波整合トランス2と加熱用コイル3とによって加熱部が構成されている。高周波整合トランス2によって得られる高周波電流の電流値は例えば320〜800Aの範囲である。高周波整合トランス2には、高周波整合トランス冷却用の冷却水循環装置4が接続され、加熱用コイル3には、加熱用コイル冷却用の冷却水循環装置5が接続されている。
【0013】
符号6は金属、特に、鋼および鋼合金からなる被加熱体であり、加熱用コイル3に流れる電流によって発生する高周波磁束により生じる渦電流がこの被加熱体6の金属抵抗中を流れることによって、被加熱体6が加熱される。
符号7は、上述した方法により加熱された被加熱体6を冷却するための冷却用ノズルであり、この冷却用ノズル7には、冷却ユニット8から冷却用の水、空気等が供給される。これらの冷却用ノズル7と冷却ユニット8とによって冷却部が構成されている。
被加熱体6表面の温度は、放射温度計9によって測定され、温度データは温度記録計10によって記録される。符号11は、このようにして測定、記録された温度データに基づいて、被加熱体6の温度を制御するための温度制御器であり、制御の方法は、例えば、高周波誘導加熱電源1からの電気信号を利用して行うことができる。これらの放射温度計9、温度記録計10、温度制御器11によって温度制御部が構成されている。
【0014】
以上のような装置を用いて鋼および鋼合金組織の微細化を行うためには、後述の実施例において説明するように、被加熱体の急速加熱と急速冷却とを一定回数以上繰り返すことが必要であるが、その効果は、被加熱体の構造や厚さによって異なり、高周波誘導加熱を1回から20回の範囲で繰り返すことが好ましい。
また、高周波誘導加熱によると、高周波誘導加熱の周波数によって被加熱体の加熱される深さが異なる。高周波誘導加熱における浸透深さp(mm)は、式(1)
【0015】
【数1】
Figure 2004143558
【0016】
に示すように、被加熱体の透磁率μ、固有抵抗ρ(μΩ・cm)、周波数f(Hz)によって定まり、被加熱体の表面から浸透深さpまでの領域で誘導電流の90%が流れ、この誘導電流によって被加熱体が発熱し、その温度が上昇する。
図2に、代表的な金属であるα鉄(ρ=10、μ=100)とγ鉄(磁気変態点730℃で強磁性を失い、なお加熱されてオーステナイト組織に変わった状態で、ρ=100、μ=1)について、周波数と浸透深さとの関係を示す。
【0017】
図2からわかるように、周波数が10kHzから1000kHzの範囲において、γ鉄の浸透深さは0.5mmから5.0mm程度であり、この範囲の深さについての加熱が可能となる。これは、レーザ光照射による加熱可能な深さが0.2mm程度であることと比較すると、鋼および鋼合金組織の微細化のための加熱方法としては、高周波誘導加熱が優れていることを示している。
このように、高周波誘導加熱によると、高周波誘導加熱の周波数によって被加熱体の加熱される深さが異なり、これによって組織の微細化が進行する領域が異なるため、微細化が必要な領域の深さに応じて、周波数を10kHzから1000kHzの範囲内で選択することが好ましい。
【0018】
さらに、被加熱体を加熱する際の加熱速度と、冷却する際の冷却速度とを最適なものとすることにより、高周波誘導加熱による鋼および鋼合金組織の微細化を有効に行うことができる。
図3は、加熱、冷却の際の被加熱体の温度曲線を示しており、加熱による到達温度は800℃以上とすることが好ましい。
加熱速度は100℃/秒〜1000℃/秒の範囲であることが好ましい。この加熱速度を実現することは、加熱用コイル3の形状と、誘導加熱の周波数を適正に選択することにより、加熱面積を小さくし、加熱のエネルギー密度を向上させ、加熱用コイルの移動速度を調整することによって可能である。
【0019】
また、冷却速度は10℃/秒〜800℃/秒の範囲であることが好ましい。ただし、ここでいう冷却速度とは、被加熱体の温度が800℃から500℃まで低下する間の冷却速度の平均値をいう。自然冷却でこの冷却速度を実現することができない場合は、水と空気を冷却用ノズル7から噴出し、噴出の圧力および流量を制御することによってこの冷却速度を実現することが可能である。
例えば冷却用ノズル7に内管と外管とを設け、内管に水、外管に空気を、あるいはその逆を供給して冷却用ノズル7から水と空気のいずれか一方または両方を噴出して冷却することができる。このように、水と空気とを併用するのは、水のみによる冷却では冷却速度が大きすぎる場合があり、空気と混合することによって、容易に冷却速度を調整することが可能であるためである。ただし、常に水と空気とを併用することを必要とするものではなく、水のみまたは空気のみによって冷却してもよい。また、この冷却用ノズル7を移動可能とすることにより、加熱用コイル3の移動に対応して冷却部位を変えることができ、急速加熱後に急速冷却を行うことが可能となる。
【0020】
このような鋼および鋼合金組織の微細化によって、金属材料の疲労寿命が延命化されることが知られており、例えば、結晶粒径が23μmの場合に比べて、結晶粒径が4μmの場合には疲労寿命が10倍程度長くなることがわかっている。
従って、本発明の鋼および鋼合金組織の微細化方法を用いることにより、金属材料の疲労寿命を格段に改善することができる。
このように、高周波誘導加熱によって鋼および鋼合金組織の微細化を行うと、レーザ光照射による場合のような作業上の危険性が無く、コストの点においても、高価なYAGレーザを用いる場合と比べて安価である。また、大型のレーザ光発生装置や、可撓性の悪い光ケーブルを用いることを必要としないため、作業性が向上する。
また、このような高周波誘導加熱を行うと、高周波誘導加熱によって鋼および鋼合金組織を微細化した後に残留応力が残るが、後述する実施例において説明するように、加熱後に焼鈍を行うことによって、残留応力を緩和することができる。
【0021】
次に、本発明の金属構造物の加工方法と、この方法により加工された金属構造物について説明する。
本発明による金属構造物の加工方法の実施形態の一つは、鋼および鋼合金の溶接部に対して前述した高周波誘導加熱による結晶組織の微細化方法を用いる加工方法であり、その一例として、橋梁、高速道路照明灯などの構造物における代表的な溶接部組織の微細化を行う場合について、その実施形態の概略を図4に示す。
図4中、符号21は金属構造物を構成する鋼および鋼合金母材であり、これらの鋼および鋼合金母材21は溶接部において溶接金属22を用いて溶接される。この溶接によって、鋼および鋼合金母材21のうち、溶接金属22に接する部分の組織は結晶粒が粗大化する。この溶接部に対して、加熱用コイル3を用いて高周波誘導加熱を行い、鋼および鋼合金母材21のうち、溶接金属22に接する部分の金属組織の微細化を行う。
加熱コイル3は、高周波整合トランス2を介して電源から高周波電流が供給され、この高周波電流によって溶接金属22に接する部分が加熱される。この高周波整合トランス2は、現場での作業性を考慮して、小型、軽量化されたハンドヘルドタイプのものであることが好ましい。
【0022】
符号23は冷却用の水冷ケーブルであり、この水冷ケーブル23によって、加熱後の溶接部が冷却される。高周波整合トランス2と加熱用コイル3は、固定用部材24を介して移動台車25に固定され、この移動台車25は走行レール26上に配置されているため、鋼および鋼合金母材21上を移動可能となっている。そのため、移動台車25を移動することにより、加熱、冷却部位を任意に変えることができる。
この方法は、上述した場合への適用に限定されず、海洋構造物や圧力容器の継手部の溶接部においても適用が可能であり、これらの金属構造物の溶接部の形状に合わせて、高周波整合トランス2と加熱用コイル3とを移動させるための機構を変更することによって、溶接部の金属組織の微細化を行うことができる。
【0023】
また、このような鋼および鋼合金組織の微細化は、溶接部だけに留まらず、金属構造物において形状が不連続に変化している形状急変部のように、疲労亀裂が発生しやすい部位に対して行うことによって、疲労寿命の延命化を図ることができる。そのため、本発明の鋼および鋼合金組織の微細化方法を、道路、橋梁のみならず、自動車、航空機、プラント設備、遊戯設備などのように、鋼および鋼合金材料で構成されるあらゆる金属構造体に対して適用することにより、これらの金属構造体の疲労寿命の延命化を実現することができ、安全確保のための保守点検の回数を低減することができる。
【0024】
以下、高周波誘導加熱による鋼および鋼合金の溶接部組織の微細化について具体例を示す。
(実施例1)
表1に示す化学成分を有する加工熱処理制御プロセス(TMCP)により製造された板厚40mmのLPGタンク用低温用鋼板を用いて、X開先、予熱無し、片面各5パス、パス間温度150℃以下、溶接入熱50kJ/cmの溶接条件でサブマージアーク溶接を行い、板厚中心を切断面として2枚の溶接鋼片を切り出した。
【0025】
【表1】
Figure 2004143558
【0026】
さらに、溶接時に粗大化した鋼組織が本発明の方法によっていかに効果的に微細組織化するかを把握するために、溶接各パスによる再加熱の影響を受けずに粗大組織が残る最終パス側表面を試験面とし、切り出した溶接鋼片の最終パス側表面から板厚9mmの平板を両面切削して供試材とした。
この供試材に対して、周波数200kHz、出力7kWの高周波誘導電流を、特別に作製した加熱用コイルを用いて200mm/分の移動速度で試験面に1回及び5回加熱した。
なお、加熱にあたっては鋼表面温度がAc−50℃よりも高くかつ溶融しない温度域であるようにし、繰り返し加熱する場合は加熱後の冷却速度を早めるために、試験片の温度が100℃以下に低下した後、次の加熱処理を行った。
図5に、供試材溶接部の溶接したままの状態(以下「溶接まま」と略記する)の結晶組織を示す。溶接金属の組織は、成分組成の影響でかなり微細であるが、溶接熱影響部(HZA)の組織は溶接熱によって典型的な上部ベイナイトの粗大組織になっている。なお、図5において、矢印を結んだ線が溶接ボンド部である。
【0027】
図6に、コイルの移動速度200mm/分で5回加熱した場合の結晶組織を示す。溶接ままの組織と比較して、著しく微細化していることがわかる。図6においても、矢印を結んだ線が溶接ボンド部である。
図7は、最も粗大化している溶接金属と溶接熱影響部との境界である溶接ボンド部近傍から溶接熱影響部にかけて、加熱した表層部のフェライト粒径を測定した結果である。図7から明らかなように、溶接ままでは粗大である組織が、本発明の方法により著しく微細化している。
すなわち、溶接ボンド部から50μmの位置では、溶接ままでは約80μmのフェライト粒が、1回加熱では約25μm、5回加熱では約12μmまで微細化する。また、溶接ボンド部から350μmの位置では、溶接ままでは約34μmのフェライト粒が、5回加熱では約8μmとなり、母材に近い微細組織となることから、5回加熱によって、溶接部の粗大組織がほぼ均一に微細化することがわかる。
【0028】
図8には、この組織の変化による機械的性質の変化のうち、ビッカーズ硬さの変化を示す。
溶接ままと5回加熱の試料について、表面下0.1mmの部位を溶接金属部から溶接熱影響部を含んで母材まで測定した。TMCP鋼の溶接ままではよく知られているように、溶接ボンド部近傍に軟化部が見られるが、5回加熱の試料では、軟化部が消滅しており、本発明の目的の一つである強度の高位安定化が達成されている。
【0029】
(実施例2)
疲労破壊問題の生じやすい形状急変部に対して、本発明による組織の微細化の効果を確認するために、実施例1と同じ鋼板を用いて、同じ条件の高周波誘導電流により、1回及び5回加熱を行った。
図9は、鋼板母材を受け入れたままの状態(以下「受け入れまま」と略記する)の光学顕微鏡組織を示す。また、図10は、5回加熱後の光学顕微鏡組織を示す。
図9と図10とを比較すると、加熱による著しい微細化が生じていることは明らかである。
図11に鋼板表面から板厚方向(内部方向)に対してフェライト粒径を測定した結果を示す。原鋼板のフェライト粒径が約7μmであるのに対して、1回加熱では約5.4μm、5回加熱では約3.8μmとほぼ1/2にまで微細化していることがわかる。しかも、微細化された領域は鋼板表面から内部方向に1mm以上に亘っていることが確認された。このことは、鋼板の組織の微細化方法としても有用であることを示している。
【0030】
本発明のように、Ac変態点近傍の温度域で繰り返し、鋼を加熱すると、引張りの残留応力を生じる恐れがある。本発明の高周波誘導加熱による微細化方法によって生じる残留応力の大きさを知るために、3種類の試験片、すなわち、母材と、5回加熱後の試験片と、5回加熱後局部加熱によって625℃×1時間の応力除去焼鈍を行った試験片とについて、X線残留応力測定装置により残留応力を測定した。
母材の圧延方向をX方向、これに直角な方向をY方向とし、各方向の残留応力の大きさを(X、Y)として測定結果を表示すると、母材は(208MPa,46MPa)、5回加熱材は(307MPa,39MPa)、焼鈍材は(25MPa,−1MPa)であった。この結果、予想されたように本発明の処理により引張り残留応力が増大するが、応力除去焼鈍により低い水準に残留応力を低減できることが明らかになった。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によると、鋼および鋼合金に対する加熱の手段として高周波誘導加熱を用い、鋼および鋼合金表面が溶融しない温度範囲で加熱しその後冷却し、鋼および鋼合金の組織を微細化することにより、レーザ光照射による場合と比較して、鋼および鋼合金材料の深い部位まで加熱して金属組織を微細化することができる。
また、フェライト結晶粒を微細化すると、鋼の降伏強度と衝撃靱性が向上することから、本発明により、鋼および鋼合金の疲労寿命の延命化を実現することができる。また、作業性、安全性、経済性に優れた金属組織の微細化方法を実現できる。
【0032】
また、本発明の金属組織の微細化方法を用いて、鋼および鋼合金からなる金属構造物の溶接部または形状急変部に対して金属組織の微細化を行って金属構造物を加工することにより、金属構造物の疲労寿命の延命化を実現することができ、安全確認のための保守点検の回数を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の鋼および鋼合金組織の微細化方法を実現するための装置の構成の一例を示す図である。
【図2】高周波誘導加熱における、周波数と浸透深さとの関係を示す図である。
【図3】被加熱体である鋼および鋼合金材料を加熱、冷却する際の温度曲線を示す図である。
【図4】金属構造物の加工方法の一例を示す図である。
【図5】溶接部の溶接ままの光学顕微鏡組織を示す図である。
【図6】溶接部の5回加熱後の光学顕微鏡組織を示す図である。
【図7】熱影響部の微細化の状況を示す図である。
【図8】溶接部の硬さの分布を示す図である。
【図9】鋼板母材の加熱前の光学顕微鏡組織を示す図である。
【図10】鋼板の5回加熱後の光学顕微鏡組織を示す図である。
【図11】鋼板の板厚方向への微細化の状況を示す図である。
【符号の説明】
1 高周波誘導加熱電源
2 高周波整合トランス
3 加熱用コイル
4 高周波整合トランス冷却用冷却水循環装置
5 加熱用コイル冷却用冷却水循環装置
6 被加熱体
7 冷却用ノズル
8 冷却ユニット
9 放射温度計
10 温度記録計
11 温度制御器
21 鋼および鋼合金母材
22 溶接金属
23 水冷ケーブル
24 固定用部材
25 移動台車
26 走行レール

Claims (10)

  1. 鋼および鋼合金に対する加熱の手段として高周波誘導加熱を用い、前記鋼および鋼合金表面が溶融しない温度範囲で加熱しその後冷却し、前記鋼および鋼合金の組織を微細化することを特徴とする高周波誘導加熱による鋼および鋼合金組織の微細化方法。
  2. 前記加熱と前記冷却を1回から20回の範囲で行うことを特徴とする請求項1記載の高周波誘導加熱による鋼および鋼合金組織の微細化方法。
  3. 前記高周波誘導加熱の周波数は10kHzから1000kHzの範囲内であることを特徴とする請求項1から2までのいずれかに記載の高周波誘導加熱による鋼および鋼合金組織の微細化方法。
  4. 前記加熱の際の加熱速度は、100℃/秒から1000℃/秒の範囲内であり、前記冷却の際の冷却速度は、10℃/秒から800℃/秒の範囲内であることを特徴とする請求項1から3までのいずれかに記載の高周波誘導加熱による鋼および鋼合金組織の微細化方法。
  5. 前記加熱と前記冷却の後に焼鈍を行って残留応力を緩和することを特徴とする請求項1から4までのいずれかに記載の高周波誘導加熱による鋼および鋼合金組織の微細化方法。
  6. 鋼および鋼合金からなる金属構造物の溶接部または形状急変部に対して、請求項1から請求項5までに記載の高周波誘導加熱による鋼および鋼合金組織の微細化方法を用いて金属構造物を加工することを特徴とする金属構造物の加工方法。
  7. 請求項6記載の金属構造物の加工方法を用いて加工されていることを特徴とする金属構造物。
  8. 高周波誘導加熱電源と、この高周波誘導加熱電源から電力の供給を受けて鋼および鋼合金を加熱するための加熱部と、前記鋼および鋼合金を冷却するための冷却部と、前記鋼および鋼合金の温度を測定し、記録し、制御するための温度制御部とを有することを特徴とする高周波誘導加熱による鋼および鋼合金組織の微細化装置。
  9. 前記冷却部は、内管と外管とからなる冷却ノズルを有し、前記内管に水、前記外管に空気、あるいはその逆を供給して前記冷却ノズルから水と空気のいずれか一方または両方を噴出し、かつ移動可能であることを特徴とする請求項8記載の高周波誘導加熱による鋼および鋼合金組織の微細化装置。
  10. 前記加熱部を構成する加熱用コイルと被加熱部との相対移動速度が10mm/分から600mm/分の範囲内であることを特徴とする請求項8記載の高周波誘導加熱による鋼および鋼合金組織の微細化装置。
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JP2008095133A (ja) * 2006-10-06 2008-04-24 Shikoku Res Inst Inc 強度劣化部の強度回復方法および該強度回復方法に用いられる高周波誘導加熱装置

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