JP2004141154A - 腫瘍抗原 - Google Patents
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Abstract
【課題】 HLA−B52拘束性に腫瘍特異的細胞傷害性T細胞により認識される分子(腫瘍抗原)を見出すこと。
【解決手段】 HLA−B52分子と腫瘍抗原ペプチドとを認識して活性化されるHLA−B52拘束性腫瘍特異的細胞傷害性T細胞を用い、この腫瘍特異的細胞傷害性T細胞を活性化する腫瘍抗原を、遺伝子発現クローニング法を用いて、ヒト肺腺癌細胞株のcDNAライブラリーから同定し、さらにHLA−B52拘束性および/またはHLA−B62拘束性に細胞傷害性T細胞(CTL)により認識されるおよび/またはCTLを誘導することのできる、該腫瘍抗原のエピトープを有するペプチドを見出した。
【解決手段】 HLA−B52分子と腫瘍抗原ペプチドとを認識して活性化されるHLA−B52拘束性腫瘍特異的細胞傷害性T細胞を用い、この腫瘍特異的細胞傷害性T細胞を活性化する腫瘍抗原を、遺伝子発現クローニング法を用いて、ヒト肺腺癌細胞株のcDNAライブラリーから同定し、さらにHLA−B52拘束性および/またはHLA−B62拘束性に細胞傷害性T細胞(CTL)により認識されるおよび/またはCTLを誘導することのできる、該腫瘍抗原のエピトープを有するペプチドを見出した。
Description
本発明は、腫瘍抗原に関し、さらに詳しくはHLA−B52拘束性またはHLA−B62拘束性に腫瘍特異的細胞傷害性T細胞により認識されるペプチドに関する。また、該ペプチドからなる医薬、該ペプチドを含有してなる癌ワクチンおよび該ペプチドからなる細胞傷害性T細胞誘導剤に関する。さらに、該ペプチドを用いる細胞傷害性T細胞の誘導方法に関する。また、該ペプチドに対する抗体および該ペプチドの細胞傷害性T細胞による認識を増強する化合物に関する。さらに、該ペプチド、該抗体および該化合物から選ばれる少なくとも1つを含む医薬組成物に関する。また、該ペプチドをコードするポリヌクレオチド、DNAまたはその相補鎖、およびRNAまたはその相補鎖に関する。さらに、該ポリヌクレオチドの部分塩基配列から設計して得たオリゴヌクレオチドに関する。また、該ペプチドの細胞傷害性T細胞による認識を増強する化合物の同定方法に関する。さらに、該ペプチド、該抗体、該ポリヌクレオチド、該DNAまたは該RNAの測定方法に関する。また、該RNAの測定に基づく癌の検査方法に関する。さらに、該ペプチド、該抗体、該ポリヌクレオチド、該DNAおよび該RNAのうちの少なくとも1を含む試薬キットに関する。
生体における癌の排除には免疫系、特に細胞性免疫に係る細胞傷害性T細胞(Cytotoxic T Lymphocyte、以下CTLと略称することもある。)が重要な役割を果たしている。癌患者の腫瘍局所には腫瘍細胞に対して細胞傷害活性を示す細胞傷害性T細胞の浸潤が認められている(非特許文献1)。腫瘍特異的な細胞傷害性T細胞の標的分子(腫瘍抗原)は、メラノーマにおいて初めて発見された。腫瘍細胞内で生成された腫瘍抗原は、細胞内で分解されて8個乃至11個のアミノ酸からなるペプチド(腫瘍抗原ペプチド)になり、主要組織適合性抗原(MHC)であるヒト白血球抗原(HLA)分子と結合して腫瘍細胞表面上に提示される。細胞傷害性T細胞はHLA分子と腫瘍抗原ペプチドとの複合体を認識して腫瘍細胞を傷害する。すなわち、細胞傷害性T細胞はHLA拘束性に腫瘍細胞を認識する。
HLAは細胞膜抗原であり、ほとんど全ての有核細胞上に発現している。HLAはクラスI抗原とクラスII抗原に大別されるが、細胞傷害性T細胞により抗原ペプチドと共に認識されるHLAはクラスI抗原である。HLAクラスI抗原はさらにHLA−A、HLA−B、およびHLA−C等に分類され、ヒトでは有核細胞がそれぞれ異なった量のHLA−A、HLA−B、およびHLA−C抗原等を有する。また、その遺伝子は多型性に富むことが報告されている。例えば、HLA−AにはA1、A2、およびA24等の、HLA−BにはB8、B27、B52、およびB62等の、HLA−CにはCw3やCw6等の多型が存在する。そのため、それぞれの個体が有するHLAの型は必ずしも同一ではない。
細胞傷害性T細胞はHLAクラスI抗原と腫瘍抗原ペプチドとの複合体を認識するとき、HLAの型をも認識する。また、HLA分子と結合する腫瘍抗原ペプチドのアミノ酸配列には、HLAの型により異なるモチーフ(規則的配列)が存在することが知られている。そのため、細胞傷害性T細胞を誘導するおよび/または活性化するためには、各型のHLAに結合するペプチドを選択する必要がある。
近年、腫瘍拒絶抗原遺伝子およびT細胞抗原受容体(T cell receptor)等の特異免疫に関与する分子が、種々の癌、例えばメラノーマや食道癌等で同定されてきており、進行癌または転移性癌においてペプチドによる特異的免疫療法が検討されている(非特許文献2−7)。例えば欧米では、腫瘍抗原投与により癌患者の体内の細胞傷害性T細胞を活性化させる癌ワクチン療法が開発されつつあり、メラノーマ特異的腫瘍抗原については臨床試験における成果が報告されている。具体的には、メラノーマ抗原gp100ペプチドをメラノーマ患者に皮下投与し、インターロイキン−2を静脈内投与することにより、42%の患者で腫瘍の縮小が認められている(非特許文献8)。さらに、複数ペプチドを用いた免疫治療(multi−peptide based immunotherapy)が、癌治療において有効であることが報告されている(非特許文献9−11)。このように腫瘍抗原は、癌ワクチンとして利用することにより、有効な癌治療効果を期待できる。
今までに同定されている腫瘍抗原遺伝子は、HLA−A拘束性のものが多い。しかしながら、HLA−B拘束性の腫瘍抗原遺伝子に関する報告は少ない。既に同定されているHLA−B拘束性抗原性ペプチドの代表例として、HLA−B44により提示されるMAGE−3由来ペプチドおよびチロシナーゼ由来ペプチド、HLA−B7により提示されるRAGE1由来ペプチドおよびMAGE−A1由来ペプチド、HLA−B45により提示されるMART−1由来ペプチド、そしてHLA−B27分子により提示されるCEA由来ペプチドが挙げられる(非特許文献12−17)。また、MAGE−3およびMAGE−12に共通のペプチドでHLA−B40によって提示されるペプチドも報告されている(非特許文献18)。
HLA−B7拘束性にCTLにより認識される腫瘍抗原として、腎細胞癌で見出されている異常転写物であるRU2遺伝子のリバースストランド(reverse strand)にコードされる抗原性ペプチドが同定されている(非特許文献19)。このアンチセンス転写物(anti−sense transcript)の発現は、悪性腫瘍細胞特異的であり、ほとんどの正常組織では認めらなかったことが報告されている。
別な種類の異常転写物として、近年、幾つかの遺伝子のイントロンが悪性腫瘍細胞においてmRNAに転写されていることが明らかになり、これらの翻訳産物から新規腫瘍特異抗原が見出されている(非特許文献20−22)。例えば、N−アセチルグルコースアミニルトランスフェラーゼVがコードする抗原性ペプチド、およびTRP−2(tyrosinase−related protein−2)の異なったイントロンにコードされる2つのペプチド等の腫瘍抗原を挙げることができる。これらイントロンの転写産物は、正常組織および正常細胞では認められず、腫瘍において特異的に検出された。
一方、腫瘍抑制遺伝子と考えられているテスティン遺伝子は、そのmRNAが全ての正常ヒト組織で発現している。しかし、多数の悪性腫瘍細胞では、5′末端のメチル化によりその発現が抑制されている(非特許文献23)。テスティンはまた、ラットのセルトリ細胞の細胞周期において調整機能を果たすことが報告されている(非特許文献24)。しかしながら、テスティンが腫瘍抑制遺伝子として作用するという直接的な証拠は未だに得られていない。
以下に本明細書において引用した文献を列記する。
「アーカイブス オブ サージェリー(Archives of Surgery)」,1990年,第126巻,p.200−205。 「サイエンス(Science)」,1991年,第254巻,p.1643−1647。 「ジャーナル オブ エクスペリメンタル メディシン(Journal of Experimental Medicine)」,1996年,第183巻,p.1185−1192。 「ジャーナル オブ イムノロジー(Journal of immunology)」,1999年,第163巻,p.4994−5004。 「プロシーディング オブ ザ ナショナル アカデミー オブ サイエンシズ オブ ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)」,1995年,第92巻,p.432−436。 「サイエンス(Science)」,1995年,第269巻,p.1281−1284。 「ジャーナル オブ エクスペリメンタル メディシン(Journal of Experimental Medicine)」,1997年,第186巻,p.785−793。 「ネイチャー メディシン(Nature Medicine)」,1998年,第4巻,p.321−327。 「クリニカル キャンサー リサーチ(Clinical Cancer Research)」,2001年,第7巻,p.3950−3962。 「ジャーナル オブ クリニカル オンコロジー(Journal of Clinical Oncology)」,2001年,第19巻,p.3836−3847。 「ネイチャー メディシン(Nature Medicine)」,1998年,第4巻,p.328−332。 「ヨーロピアン ジャーナル オブ イムノロジー(European Journal of Immunology)」,1996年,第26巻,p.224−230。 「イムノジェネティクス(Immunogenetics)」,1996年,第43巻,p.377−383。 「イムノジェネティクス(Immunogenetics)」,1996年,第44巻,p.323−330。 「インターナショナル ジャーナル オブ キャンサー(International Journal of Cancer)」,1998年,第75巻,p.451−458。 「ティッシュー アンチジェンズ(Tissue Antigens)」,2000年,第55巻,p.149−152。 「インターナショナル ジャーナル オブ キャンサー(International Journal of Cancer)」,2002年,第97巻,p.58−63。 「ジャーナル オブ エクスペリメンタル メディシン(Journal of Experimental Medicine)」,2002年,第195巻,p.391−399。 「ジャーナル オブ エクスペリメンタル メディシン(Journal of Experimental Medicine)」,1999年,第190巻,p.1793−1800。 「ジャーナル オブ エクスペリメンタル メディシン(Journal of Experimental Medicine)」,1996年,第183巻,p.1173−1183。 「ジャーナル オブ エクスペリメンタル メディシン(Journal of Experimental Medicine)」,1998年,第188巻,p.1005−1016。 「ジャーナル オブ イムノロジー(Journal of Immunology)」,2002年,第168巻,p.951−956。 「ゲノミクス(Genomics)」,2002年,第68巻,p.1−12。 「ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー(Journal of Biological Chemistry)」,1997年,第272巻,p.6499−6509。 「キャンサー リサーチ(Cancer Research)」,2000年,第60巻,p.3550−3558。 「キャンサー リサーチ(Cancer Research)」,2001年,第61巻,p.6459−6466。 「サイエンス(Science)」,1983年,第219巻,p.666−671。 「ペプチド合成」,丸善株式会社,1975年。 「ペプチド シンテシス(Peptide Synthesis)」,インターサイエンス(Interscience),ニューヨーク(New York),1996年。 「エイチエルエー(HLA)1991」,第1巻,p.1065−1220,オックスフォード サイエンティフィック パブリケーションズ(Oxford Scientific Publication),1992年。 「ジャーナル オブ エクスペリメンタル メディシン(Journal of Experimental Medicine)」,1998年,第187巻,p.277〜288。 「イムノジェネティクス(Immunogenetics)」,1995年,第41巻,p.178−228。 「ジャーナル オブ イムノロジー(Journal of Immunology)」,2000年,第164巻,p.2565−2574。 「ゲノム リサーチ(Genome Research)」,1996年,第6巻,p。986−994。
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近年、癌ワクチン療法の開発が試みられているが、HLA−B分子によって提示されるペプチドワクチンの癌患者に対する臨床試験は、文献レベルで見る限り開始されていない。その理由の1つは、種々のHLAクラスI対立遺伝子(allele)の中で、HLA−B対立遺伝子が非常に高い多様性を有することにある。そのため、各HLA−B対立遺伝子の抗原頻度は、一般的に他の遺伝子座(locus)、例えばHLA−AやHLA−Cのものより低い。例えば、HLA−B52対立遺伝子およびHLA−B62対立遺伝子の抗原頻度は、日本人ではそれぞれ21.4%および16.6%である。他方、HLA−A24は、日本人の約60%、白人の約20%、アフリカ人の約12%でみられる。HLA−A2は、日本人の約38%、中国人の約53%、北コーカサス人の49%、南コーカサス人の38%、黒人アフリカ人の23%においてみられる。
HLA遺伝子の多型により各個体において機能する腫瘍抗原ペプチドの種類が異なることを考えると、頻度が少ないとはいえ、HLA−B拘束性に腫瘍特異的細胞傷害性T細胞を誘導および/または活性化し得る腫瘍抗原ペプチドを同定することは、癌治療において患者の多様なHLAに対応するためには重要である。
さらに、癌の多様性を考えると、全ての癌細胞において同一の腫瘍抗原が同程度発現されているとは考えられない。癌細胞の種類や組織の違いにより、発現している腫瘍抗原の種類や発現量が異なる。勿論、単一の腫瘍抗原を用いて細胞傷害性T細胞を活性化させる癌ワクチン療法によっても、該腫瘍抗原を有する癌の治療効果は得られる。しかし、癌の治療において抗原特異的な細胞傷害性T細胞を惹起し、且つ癌の多様性に対応して高い治療効果を得るためには、HLA拘束性および癌の多様性に応じた数多くの新たな腫瘍抗原を発見し利用することが必要である。
本発明が解決しようとする課題は、新規な腫瘍抗原を見出し提供することである。具体的には少なくともHLA−B52拘束性に細胞傷害性T細胞により認識される腫瘍抗原を提供することである。さらに詳しくはHLA−B52拘束性に細胞傷害性T細胞によって認識されるペプチド、該ペプチドからなる医薬、該ペプチドを含有してなる癌ワクチン、該ペプチドからなる細胞傷害性T細胞誘導剤、該ペプチドに対する抗体、該ペプチドの細胞傷害性T細胞による認識を増強する化合物、これらの1種以上を含む医薬組成物、該ペプチドと相互作用する化合物の同定方法、該ペプチドを用いる細胞傷害性T細胞の誘導方法、該ペプチドまたは該抗体の測定方法、並びに該ペプチドおよび/または該抗体を含む試薬キットを提供することである。
上記課題を解決すべく本発明者らは鋭意努力し、HLA−B52分子と腫瘍抗原ペプチドとを認識して活性化されるHLA−B52拘束性腫瘍特異的細胞傷害性T細胞GK−B−CTLを肺腺癌患者由来の腫瘍浸潤リンパ球から樹立し、GK−B−CTLをHLA−B52拘束性に活性化する腫瘍抗原をコードするDNAを、ヒト肺腺癌細胞株11−18のcDNAライブラリーから遺伝子発現クローニング法を用いて単離・同定した。そして該腫瘍抗原のアミノ酸配列に基づいてHLA−B52拘束性に細胞傷害性T細胞により認識されるエピトープを有するペプチドを取得し、また該ペプチドの1つがHLA−B62拘束性に細胞傷害性T細胞により認識されることを見出した。さらにこれらペプチドが、HLA表現型がHLA−B52あるいはHLA−B62である癌患者の末梢血単核細胞からペプチド特異的細胞傷害性T細胞を誘導することを見出して本発明を完成した。
すなわち本発明は、
1.配列表の配列番号1または配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるペプチド、
2.配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列からなり、HLA−B52拘束性またはHLA−B62拘束性に、細胞傷害性T細胞を誘導するおよび/または細胞傷害性T細胞により認識されるペプチド、
3.配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列からなり、HLA−B52拘束性に、細胞傷害性T細胞を誘導するおよび/または細胞傷害性T細胞により認識されるペプチド、
4.配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるペプチドおよび/または配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるペプチドを有効成分とする医薬、
5.配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるペプチドおよび/または配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるペプチドを含有してなる癌ワクチン、
6.HLA−B遺伝子座の特異性がHLA−B52および/またはHLA−B62である癌の治療に用いる前記5.の癌ワクチン、
7.上皮癌の治療に用いる前記5.または6.の癌ワクチン、
8.肺癌、胃癌、大腸癌、前立腺癌および/またはメラノーマの治療に用いる前記5.または6.の癌ワクチン、
9.配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるペプチドおよび/または配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるペプチドを含有する細胞傷害性T細胞の誘導剤、
10.配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるペプチドおよび/または配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるペプチドを使用することを特徴とする細胞傷害性T細胞の誘導方法、
11.配列表の配列番号1または配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるペプチドを免疫学的に認識する抗体、
12.配列表の配列番号1若しくは配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるペプチドおよび/またはHLA−B52と相互作用して少なくともHLA−B52拘束性細胞傷害性T細胞による該ペプチドの認識を増強する化合物の同定方法であって、該ペプチド、HLA−B52陽性細胞およびHLA−B52拘束性細胞傷害性T細胞を少なくとも用いることを特徴とする同定方法、
13.配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるペプチドおよび/またはHLA−B62と相互作用して少なくともHLA−B62拘束性細胞傷害性T細胞による該ペプチドの認識を増強する化合物の同定方法であって、該ペプチド、HLA−B62陽性細胞およびHLA−B62拘束性細胞傷害性T細胞を少なくとも用いることを特徴とする同定方法、
14.前記12.または13.の方法により同定された化合物、
15.配列表の配列番号1または配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるペプチドに対するHLA−B52拘束性細胞傷害性T細胞の認識を増強する化合物、
16.配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるペプチドに対するHLA−B62拘束性細胞傷害性T細胞の認識を増強する化合物、
17.前記1.から3.のいずれかのペプチド、前記11.の抗体および前記14.から16.のいずれかの化合物のうち、少なくとも1つを含有することを特徴とする癌治療に用いる医薬組成物、
18.前記1.から3.のいずれかのペプチドをコードするポリヌクレオチドまたはその相補鎖、
19.配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるDNAまたはその相補鎖、
20.配列表の配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAまたはその相補鎖、
21.配列表の配列番号5から配列番号9のいずれか1に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、
22.前記1.から3.のいずれかのペプチド、前記11.の抗体、前記18.のポリヌクレオチド、前記19.のDNAまたは前記20.のRNAを定量的あるいは定性的に測定する方法、
23.前記19.に記載のDNAまたは前記20.に記載のRNAを定量的あるいは定性的に測定する方法であって、配列表の配列番号5および配列番号6に記載の各塩基配列からなる2つのオリゴヌクレオチドを用いて、該DNAまたはRNAの部分塩基配列を増幅し、増幅産物を検出することを含む測定方法、
24.前記19.に記載のDNAまたは前記20.に記載のRNAを定量的あるいは定性的に測定する方法であって、配列表の配列番号7および配列番号8に記載の各塩基配列からなる2つのオリゴヌクレオチドを用いて、該DNAまたはRNAの部分塩基配列を増幅し、増幅産物を配列番号9に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを用いて検出することを含む測定方法、
25.癌組織あるいは癌細胞における前記20.に記載のRNAの発現量を測定し、検査することを特徴とする癌の検査方法、
26.前記1.から3.のいずれか1項に記載のペプチド、前記11.に記載の抗体、前記18.に記載のポリヌクレオチド、前記19.に記載のDNA、前記20.に記載のRNAおよび前記21.に記載のオリゴヌクレオチドのうち少なくとも1つを含んでなる試薬キット、
に関する。
1.配列表の配列番号1または配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるペプチド、
2.配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列からなり、HLA−B52拘束性またはHLA−B62拘束性に、細胞傷害性T細胞を誘導するおよび/または細胞傷害性T細胞により認識されるペプチド、
3.配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列からなり、HLA−B52拘束性に、細胞傷害性T細胞を誘導するおよび/または細胞傷害性T細胞により認識されるペプチド、
4.配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるペプチドおよび/または配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるペプチドを有効成分とする医薬、
5.配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるペプチドおよび/または配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるペプチドを含有してなる癌ワクチン、
6.HLA−B遺伝子座の特異性がHLA−B52および/またはHLA−B62である癌の治療に用いる前記5.の癌ワクチン、
7.上皮癌の治療に用いる前記5.または6.の癌ワクチン、
8.肺癌、胃癌、大腸癌、前立腺癌および/またはメラノーマの治療に用いる前記5.または6.の癌ワクチン、
9.配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるペプチドおよび/または配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるペプチドを含有する細胞傷害性T細胞の誘導剤、
10.配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるペプチドおよび/または配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるペプチドを使用することを特徴とする細胞傷害性T細胞の誘導方法、
11.配列表の配列番号1または配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるペプチドを免疫学的に認識する抗体、
12.配列表の配列番号1若しくは配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるペプチドおよび/またはHLA−B52と相互作用して少なくともHLA−B52拘束性細胞傷害性T細胞による該ペプチドの認識を増強する化合物の同定方法であって、該ペプチド、HLA−B52陽性細胞およびHLA−B52拘束性細胞傷害性T細胞を少なくとも用いることを特徴とする同定方法、
13.配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるペプチドおよび/またはHLA−B62と相互作用して少なくともHLA−B62拘束性細胞傷害性T細胞による該ペプチドの認識を増強する化合物の同定方法であって、該ペプチド、HLA−B62陽性細胞およびHLA−B62拘束性細胞傷害性T細胞を少なくとも用いることを特徴とする同定方法、
14.前記12.または13.の方法により同定された化合物、
15.配列表の配列番号1または配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるペプチドに対するHLA−B52拘束性細胞傷害性T細胞の認識を増強する化合物、
16.配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるペプチドに対するHLA−B62拘束性細胞傷害性T細胞の認識を増強する化合物、
17.前記1.から3.のいずれかのペプチド、前記11.の抗体および前記14.から16.のいずれかの化合物のうち、少なくとも1つを含有することを特徴とする癌治療に用いる医薬組成物、
18.前記1.から3.のいずれかのペプチドをコードするポリヌクレオチドまたはその相補鎖、
19.配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるDNAまたはその相補鎖、
20.配列表の配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAまたはその相補鎖、
21.配列表の配列番号5から配列番号9のいずれか1に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、
22.前記1.から3.のいずれかのペプチド、前記11.の抗体、前記18.のポリヌクレオチド、前記19.のDNAまたは前記20.のRNAを定量的あるいは定性的に測定する方法、
23.前記19.に記載のDNAまたは前記20.に記載のRNAを定量的あるいは定性的に測定する方法であって、配列表の配列番号5および配列番号6に記載の各塩基配列からなる2つのオリゴヌクレオチドを用いて、該DNAまたはRNAの部分塩基配列を増幅し、増幅産物を検出することを含む測定方法、
24.前記19.に記載のDNAまたは前記20.に記載のRNAを定量的あるいは定性的に測定する方法であって、配列表の配列番号7および配列番号8に記載の各塩基配列からなる2つのオリゴヌクレオチドを用いて、該DNAまたはRNAの部分塩基配列を増幅し、増幅産物を配列番号9に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを用いて検出することを含む測定方法、
25.癌組織あるいは癌細胞における前記20.に記載のRNAの発現量を測定し、検査することを特徴とする癌の検査方法、
26.前記1.から3.のいずれか1項に記載のペプチド、前記11.に記載の抗体、前記18.に記載のポリヌクレオチド、前記19.に記載のDNA、前記20.に記載のRNAおよび前記21.に記載のオリゴヌクレオチドのうち少なくとも1つを含んでなる試薬キット、
に関する。
本発明によれば、HLA−B52拘束性および/またはHLA−B62拘束性に細胞傷害性T細胞を誘導および/または活性化し得るペプチドを提供可能である。これらペプチドは、癌患者の末梢血単核細胞において癌細胞を標的とする細胞傷害性T細胞を誘導し得るため、癌の特異的免疫療法に用いることができる。例えばHLA−B52陽性および/またはHLA−B62陽性の癌、さらにHLA−B52陽性および/またはHLA−B62陽性であり且つこれらペプチドを発現している癌の予防および/または治療に有用である。HLA−B52対立遺伝子あるいはHLA−B62対立遺伝子は、日本人の34%、朝鮮人の25%、中国人の27%および北アメリカ白人の13%で認められる。また、当該ペプチドをコードするmRNAの発現が正常細胞では低レベルであるかほとんど検出されないため、これらペプチドが示す副作用は少ないと考えられる。したがって、本発明は癌の予防および/または治療において多大な貢献を期待できる。
本発明の理解のために、本明細書において用いる用語についてまず説明する。「腫瘍抗原」とは腫瘍特異的な細胞傷害性T細胞に認識されるおよび/または細胞傷害性T細胞を誘導し得るものであり、腫瘍細胞が有する蛋白質またはペプチドを意味する。また「腫瘍抗原ペプチド」とは、該腫瘍抗原が腫瘍細胞内で分解されて生じるペプチドであり、HLA分子と結合して細胞表面上に提示されることにより腫瘍特異的な細胞傷害性T細胞に認識されるおよび/または細胞傷害性T細胞を誘導し得るペプチドを意味する。さらに、腫瘍抗原が有する腫瘍特異的な細胞傷害性T細胞を誘導および/または活性化し得るアミノ酸配列の部位を腫瘍抗原エピトープ(腫瘍抗原決定基)という。
ここで、「認識する(recognize)」とは、認識するものが、認識される対象を他のものと見分けて認知し、例えば認知した対象に結合することを意味する。特に、本明細書において、細胞傷害性T細胞が腫瘍細胞あるいは腫瘍抗原ペプチドを認識するとは、細胞傷害性T細胞がHLA分子により提示された腫瘍抗原ペプチドにT細胞抗原受容体を介して結合することを意味する。「活性化する」とは、ある活性若しくは作用を有するものまたは状態を、さらに増強するまたは作動させることを意味する。特に、本明細書において、細胞傷害性T細胞が活性化するとは、細胞傷害性T細胞がHLA分子により提示された抗原を認識することにより、例えばインターフェロン−γ(以下、IFN−γと略称する。)を産生すること、あるいは細胞傷害性T細胞が認識した標的細胞(ターゲットともいう)に対し細胞傷害活性を示すことを意味する。「誘導する」とは、ある活性若しくは作用をほとんど持たないものまたは状態から、該活性若しくは該作用を発生させることを意味する。特に、本明細書において、抗原特異的な細胞傷害性T細胞を誘導するとは、インビトロあるいはインビボにおいて、ある抗原を特異的に認識する細胞傷害性T細胞を分化および/または増殖させることを意味する。また、本明細書において「細胞傷害性T細胞の誘導剤」とは、ある抗原を特異的に認識するCD8陽性T細胞が存在しないあるいは非常に低い割合でしか存在しない状態から、該抗原を認識する細胞傷害性T細胞が非常に多い割合で存在するような状態へと変化させる作用を示す薬剤を意味する。
本明細書においては、単離された若しくは合成の完全長蛋白質;単離された若しくは合成の完全長ポリペプチド;または単離された若しくは合成の完全長オリゴペプチドを意味する総称的用語として「ペプチド」という用語を使用し、ここで蛋白質、ポリペプチド若しくはオリゴペプチドはペプチド結合または修飾されたペプチド結合により互いに結合している2個以上のアミノ酸を含むものである。以降、アミノ酸配列を表記する場合、1文字にて表記する場合と3文字にて表記する場合がある。
以下、本発明について発明の実施の態様を説明する。以下の詳細な説明は例示であり、説明のためのものに過ぎず、本発明を何ら限定するものではない。
本発明においては、配列表の配列番号1または配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるペプチドを提供する。配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるペプチドは、HLA−B52拘束性またはHLA−B62拘束性に腫瘍特異的細胞傷害性T細胞に認識され、該細胞傷害性T細胞を誘導するおよび/または活性化することができる。配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるペプチドは、HLA−B52拘束性に腫瘍特異的細胞傷害性T細胞に認識され、該細胞傷害性T細胞を誘導するおよび/または活性化することができる。
本発明に係るペプチドをコードするポリヌクレオチドは、HLA−B52分子および/またはHLA−B62分子を細胞表面上に有する細胞に導入することにより、HLA−B52拘束性またはHLA−B62拘束性に腫瘍特異的細胞傷害性T細胞に認識され、該細胞傷害性T細胞を誘導するおよび/または活性化することができる。かかるポリヌクレオチドまたはその相補鎖も本発明の範囲に含まれる。
本発明に係るペプチドをコードするポリヌクレオチドとして、具体的には配列番号3に記載の塩基配列からなるDNAが挙げられる。本発明に係るポリヌクレオチドは当該DNAに限定されず、本発明に係るペプチドをコードする限りにおいて該DNAの相同物も包含する。相同物には、上記DNAの塩基配列において1個以上、例えば1〜100個、好ましくは1〜30個、より好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜10個、特に好ましくは1個ないし数個のヌクレオチドの欠失、置換、付加または挿入といった変異が存する塩基配列からなるDNAが含まれる。かかる変異を有するDNAは、天然に存在するものであってよく、また天然由来の遺伝子に基づいて変異を導入して得たものであってもよい。変異を導入する手段は自体公知であり、例えば、部位特異的変異導入法、遺伝子相同組換え法、プライマー伸長法またはPCRなどを単独でまたは適宜組合せて用いることができる。本発明に係るDNAの相同物にはまた、上記DNAにストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションするDNAが挙げられる。これらDNAは目的のDNAにハイブリダイゼーションするものであれば目的のDNAの相補的配列でなくてもよい。
配列番号3に記載の塩基配列からなるDNAは、ヒト肺腺癌細胞株11−18のcDNAライブラリーから、遺伝子発現クローニング法を用いて単離・同定した。当該DNAの塩基配列は、1952bp長であり、テスティン遺伝子(GenBank アクセッション番号:AF260225)の第6エクソンと第7エクソンの間に存在するイントロンの配列と同一であった。以下、この塩基配列からなるDNAをテスティン関連遺伝子(Testin−related gene)と呼称し、TRGと略称する。TRGは、GenBankにアクセッション番号:AY143171として登録した。
TRG mRNAは、多数の癌細胞株および癌組織で検出されたが、正常細胞および正常組織においてはわずかに心臓、肝臓および膵臓等で低レベルの発現が認められた他はほとんど検出されなかった(実施例5および6並びに表1〜3を参照。)。例えば、TRG mRNAは、試験した上皮癌細胞株(非小細胞肺癌、食道癌、胃癌、大腸癌、頭頚部癌、膀胱癌および膵臓癌由来の細胞株)の約80%、非上皮癌細胞株(小細胞肺癌、肝臓癌、白血病および骨肉腫由来の細胞株)の約18%において検出された。一方、腫瘍抑制遺伝子であると考えられているテスティン遺伝子のmRNA発現は全ての正常ヒト組織および多数の悪性腫瘍細胞で認められた。本発明において初めて明らかにしたTRG由来のRNA、すなわち配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAまたはその相補鎖、あるいはその相同物も本発明の範囲に包含される。
近年、幾つかの遺伝子のイントロンが悪性腫瘍細胞においてmRNAに転写されていることが明らかになり、それらの翻訳産物から新規腫瘍特異抗原が提供されている(非特許文献20−22)。これらイントロンの転写物は、もっぱら腫瘍で検出され、正常組織や正常細胞では検出されない。また、別な種類の異常転写物が腎細胞癌で見出されている。これはRU2遺伝子のリバースストランドにコードされる抗原性ペプチドであり、該ペプチドはHLA−B7拘束性にCTLにより認識される腫瘍抗原として同定された(非特許文献19)。このアンチセンス転写産物の発現はまた、悪性腫瘍細胞に限局している。
腫瘍細胞において選択的に検出されるこのような遺伝子産物は、免疫療法にとってマザー遺伝子の本来の転写物よりふさわしい標的分子である。従って、TRGの遺伝子産物は、テスティン遺伝子の転写産物より免疫療法にとって有用である。
TRGは、HLA−B52拘束性の腫瘍特異的CTLにより認識される腫瘍抗原をコードしており、細胞で発現させると、HLA−B52拘束性にCTLに認識され、CTLを誘導するおよび/または活性化する。具体的には、TRG cDNAをHLA−B52遺伝子と共に遺伝子導入したサル腎癌細胞株COS7は、HLA−B52拘束性の腫瘍特異的細胞傷害性T細胞GK−B−CTLにより認識され、GK−B−CTLからのIFN−γ産生をプラスミド用量依存的に促進した。
GK−B−CTLは、HLA−B52分子と腫瘍抗原ペプチドとを認識して活性化されるHLA−B52拘束性の腫瘍特異的細胞傷害性T細胞であり、既報(非特許文献25および26)記載の方法に従って、肺腺癌患者(HLA−A0206/2402,B39/52,Cw7)の腫瘍浸潤リンパ球から樹立した。GK−B−CTLは、細胞表面マーカーがCD3+CD4−CD8+であり、その抗原認識はHLA−B遺伝子座拘束性である。すなわち、HLA−B52陽性(以下、HLA−B52+と表記する)細胞を認識するが、HLA−B52陰性(以下、HLA−B52−と表記する)細胞を認識しない。「HLA−B52陽性」とは、HLA−B対立遺伝子の抗原特異性がB52であることを意味する。「HLA−B52陰性」とは、HLA−B対立遺伝子の抗原特異性がB52以外のものであることを意味する。
配列表の配列番号1または配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるペプチドは、TRGがコードする推定アミノ酸配列に基づいてHLA−B5201分子結合モチーフに適合するペプチドとして同定し合成した10種類のペプチド(配列番号1、配列番号2および配列番号10〜17)から、実際にHLA−B52拘束性にCTLにより認識されるペプチドを選択して得たものである。以下、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるペプチドをTRG1−20と呼称し、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるペプチドをTRG2−41と呼称する。
TRG1−20(配列番号1)およびTRG2−41(配列番号2)は、HLA−B52+細胞またはHLA−B52を発現させた細胞にパルスしたときに、HLA−B52拘束性CTLにより認識され、該CTLを活性化する。具体的には、TRG1−20(配列番号1)またはTRG2−41(配列番号2)は、HLA−B5201を発現させた細胞(エプスタインバーウイルスで形質転換したB細胞)にパルスしたとき、GK−B−CTLにより認識され、GK−B−CTLからのIFN−γ産生をペプチド用量依存的に促進した。
TRG1−20(配列番号1)およびTRG2−41(配列番号2)はさらに、癌患者由来の末梢血単核細胞(以下、PBMCと略称することもある。)から、HLA−B52拘束性且つペプチド特異的な腫瘍特異的CTLを誘導することができる。すなわち、TRG1−20(配列番号1)またはTRG2−41(配列番号2)で予め刺激したHLA−B52+癌患者(非小細胞肺癌患者、大腸腺癌患者および胃腺癌患者)由来PBMCは、刺激に用いたペプチドと同じペプチドをパルスしたSS−EBB細胞(エプスタインバーウイルスで形質転換したHLA−B52+ヒトB細胞)を認識し、有意なレベルのIFN−γを産生した。また、TRG1−20(配列番号1)で刺激した上記PBMCは、肺腺癌細胞株11−18を認識し、有意なレベルのIFN−γを産生した。さらに、TRG1−20(配列番号1)またはTRG2−41(配列番号2)で刺激したPBMCは、HLA−B52+TRG+腫瘍細胞、例えば11−18細胞を認識して細胞傷害活性を示した。しかし、HLA−B52−腫瘍細胞またはTRG−腫瘍細胞には反応しなかった。これらから、TRG1−20(配列番号1)またはTRG2−41(配列番号2)は、TRGを発現している腫瘍細胞をHLA−B52拘束性に認識して細胞傷害活性を示すCTLを、癌患者PBMCにおいて誘導することが判明した。当該CTLは、HLA−B52+TRG+PHA芽球化細胞には細胞傷害活性を示さなかった。PHA芽球化細胞は、ヒト正常T細胞をフィトヘマグルチニン(phytohemagglutinin)で芽球化した細胞である。このことから、当該CTLは正常細胞に対しては、細胞傷害活性を示さない、あるいは細胞傷害活性が弱いことが明らかになった。また、TRG1−20(配列番号1)で刺激したPBMCがTRG1−20(配列番号1)をパルスしたSS−EBB細胞を認識して細胞傷害活性を示したが、ペプチドをパルスしないSS−EBB細胞には細胞傷害活性を示さなかったことから、該PBMCにおいて誘導されたおよび/または活性化されたCTLはTRG1−20(配列番号1)特異的であることが判明した。同様に、TRG2−41(配列番号2)により癌患者PBMCにおいて誘導されたおよび/または活性化されたCTLはTRG2−41(配列番号2)特異的であることが判明した。
TRG1−20(配列番号1)はさらに、HLA−B1501(血清学的に決定されたHLA−B62と同一の分子)に比較的高い親和性を持つため、HLA−B62+癌患者由来のPBMCから、HLA−B62拘束性且つペプチド特異的な腫瘍特異的CTLを誘導することができる。すなわち、TRG1−20(配列番号1)で予め刺激したHLA−B62+癌患者(非小細胞肺癌患者、前立腺癌患者およびメラノーマ患者)由来PBMCは、刺激に用いたペプチドと同じペプチドをパルスしたAY−EBB細胞(エプスタインバーウイルスで形質転換したHLA−B62+ヒトB細胞)を認識し、有意なレベルのIFN−γを産生した。また、TRG1−20(配列番号1)で刺激した上記PBMCは、HLA−B1501+(B62+)TRG+腫瘍細胞を認識し、有意なレベルのIFN−γを産生した。さらに、TRG1−20で刺激したPBMC(HLA−B62+/B52−)は、TRG cDNAとHLA−B1501 cDNAとを共遺伝子導入した細胞をTRGの用量依存的に且つHLA−B1501拘束性に認識して有意なレベルのIFN−γを産生した。しかし、TRG cDNAとコントロールであるHLA−B5201 cDNAとを共遺伝子導入した細胞は認識しなかった。これらから、TRG1−20(配列番号1)は、HLA−B62拘束性且つペプチド特異的なCTLをも誘導できることが明らかになった。
TRG1−20(配列番号1)およびTRG2−41(配列番号2)はこのように、HLA−B52拘束性またはHLA−B62拘束性のペプチド特異的なCTLに認識されるので、該CTLを誘導するおよび/または活性化する腫瘍抗原ペプチドとして使用できる。従って、これらペプチドは、癌の予防および/または治療、特にTRGを発現している癌の予防および/または治療に使用できる。TRGの発現は、試験した大多数の癌細胞株、特に上皮癌細胞株、並びに癌組織で認められた。また、正常組織では、心臓、肝臓、膵臓、精巣およびPHA芽球化細胞でわずかに検出された他は、いずれの組織でもほとんど発現していなかった。これらから、TRG1−20(配列番号1)およびTRG2−41(配列番号2)は、好ましくはTRGを発現している癌、より好ましくはTRGを発現している上皮癌の予防および/または治療に用いることができる。健常人由来PBMCにおいては、TRG1−20(配列番号1)またはTRG2−41(配列番号2)によりCTLが誘導される例が少ないこと、またTRGの発現が正常組織ではほとんど認められないことから、これらペプチドの癌の予防および/または治療における副作用が少ないことが予想される。このことは、これらペプチドの癌の予防および/または治療への使用において大きな利点であると考える。
本発明に係るペプチドには、TRG1−20(配列番号1)およびTRG2−41(配列番号2)のアミノ酸配列において1個乃至数個のアミノ酸の欠失、置換、付加、または挿入等の変異が存するものも包含される。好ましくは、このような変異を有するペプチドであって、少なくともHLA−B52拘束性CTLにより認識されるおよび/またはHLA−B52拘束性のCTLを誘導するペプチドである。また、TRG1−20(配列番号1)アミノ酸配列においてかかる変異を有するペプチドであって、少なくともHLA−B62拘束性CTLにより認識されるおよび/またはHLA−B62拘束性のCTLを誘導するペプチドも本発明に範囲に包含される。変異を有するペプチドは天然に存在するものであってよく、また変異を導入したものであってもよい。欠失、置換、付加、挿入等の変異を導入する手段は自体公知であり、例えばウルマーの技術(非特許文献27)を利用できる。このような変異の導入において、当該ペプチドの基本的な性質(物性、活性または免疫学的活性等)を変化させないという観点から、例えば、同族アミノ酸(極性アミノ酸、非極性アミノ酸、疎水性アミノ酸、親水性アミノ酸、陽性荷電アミノ酸、陰性荷電アミノ酸、芳香族アミノ酸等)の間での相互置換は容易に想定される。さらに、これら利用できるペプチドは、その構成アミノ基若しくはカルボキシル基等を修飾する等、機能の著しい変更を伴わない程度に改変が可能である。
本発明に係るペプチドは、CTLを誘導するおよび/または活性化するために単独で使用してもよいし、組合わせて使用してもよい。CTLは種々の抗原を認識する複数種類の細胞集団であることから、好ましくはこれらを組合わせて用いることが推奨される。
ペプチドの製造は、通常のペプチド化学において知られる方法で実施可能である。例えば成書に記載の方法(非特許文献28および29)が例示できるが、無論既知の方法が広く利用可能である。具体的には、通常の液相法および固相法によるペプチド合成法、例えばFmoc法等を挙げることができる。または市販のアミノ酸合成装置を用いて製造可能である。あるいは遺伝子工学的手法により取得することもできる。例えば目的とするペプチドをコードする遺伝子を宿主細胞中で発現できる組換えDNA(発現ベクター)を作成し、これを適当な宿主細胞、例えば大腸菌にトランスフェクションして形質転換した後に該形質転換体を培養し、次いで得られる培養物から目的とするペプチドを回収することにより製造可能である。
ペプチドの精製および/または回収は、ペプチドの機能、例えばCTLの誘導能および/または活性化能を指標にして実施できる。より具体的には、例えばCTLからのIFN−γ産生を指標に行なうことができる。精製および/または回収の方法としては、硫安やアルコール等を用いた溶解度差に基づく分画手段、ゲルろ過、イオンカラムクロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー等が挙げられ、これらを単独でまたは組合わせて使用する。より好ましくは、ペプチドのアミノ酸配列情報に基づき、該アミノ酸配列に対する抗体を作製し、得られたポリクローナル抗体またはモノクロ−ナル抗体により特異的に吸着回収する方法を用いる。
本発明においては、本発明に係るペプチドを免疫学的に認識する抗体を提供することができる。抗体は、上記ペプチドを抗原として用いて作製する。抗原は上記ペプチド自体でもまたはその断片でもよく、少なくとも5個、より好ましくは8個以上のアミノ酸で構成される。上記ペプチドに特異的な抗体を作製するためには、該ペプチドに固有なアミノ酸配列からなる領域を用いることが好ましい。このアミノ酸配列は、必ずしも該ペプチドのアミノ酸配列と相同である必要はなく、該ペプチドの立体構造上の外部への露出部位が好ましく、露出部位のアミノ酸配列が一次構造上で不連続であっても、該露出部位について連続的なアミノ酸配列であればよい。抗体は、免疫学的に該ペプチドを結合または認識する限り特に限定されない。この結合または認識の有無は、公知の抗原抗体結合反応によって決定できる。
抗体の産生には、自体公知の抗体作製法を利用できる。例えば、抗原をアジュバントの存在下または非存在下で、単独でまたは担体に結合して動物に投与し、体液性応答および/または細胞性応答等の免疫誘導を行なうことにより得られる。担体は、それ自体が宿主に対して有害な作用を及ぼさず且つ抗原性を増強せしめるものであれば特に限定されず、例えばセルロース、重合アミノ酸、アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン等を例示できる。アジュバントとしては、フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント、Ribi(MPL)、Ribi(TDM)、Ribi(MPL+TDM)、百日咳ワクチン(Bordetella pertussis vaccine)、ムラミルジペプチド、アルミニウムアジュバント(ALUM)、およびこれらの組合わせが例示できる。免疫される動物は、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ウマ等が好適に用いられる。
ポリクローナル抗体は、免疫手段を施された動物の血清から自体公知の抗体回収法によって取得できる。好ましい抗体回収手段として免疫アフィニティクロマトグラフィー法が挙げられる。
モノクロ−ナル抗体は、免疫手段が施された動物から抗体産生細胞(例えば、脾臓またはリンパ節由来のリンパ球)を回収し、自体公知の永久増殖性細胞(例えば、P3−X63−Ag8細胞等のミエローマ株)への形質転換手段を導入することにより生産できる。例えば、抗体産生細胞と永久増殖性細胞とを自体公知の方法で融合させてハイブリドーマを作成してこれをクローン化し、目的のペプチドを特異的に認識する抗体を産生するハイブリドーマを選別し、該ハイブリドーマの培養液から抗体を回収する。
かくして得られた、本発明に係るペプチドを認識し結合するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体は、該ペプチドの精製用抗体、試薬、または標識マーカー等として利用できる。
本発明に係るペプチドおよび該ペプチドを免疫学的に認識する抗体は、単独でまたは複数種類を組合わせることにより、CTLによる該ペプチドの認識を増強し得る物質の同定に有効な手段を提供する。同定方法は、自体公知の医薬品スクリーニングシステムを利用して構築可能である。例えば、ペプチドをパルスしたHLA−B52+細胞とCTLとを共に培養し、CTLによるペプチドの認識および/またはCTLの活性化を測定する実験系を用いて、被検物質を評価することにより、CTLによるペプチドの認識を増強する物質を同定できる。ペプチドをパルスするHLA−B52+細胞としては、例えばHLA−B52+B細胞等、またはHLA−B52 cDNAを常法により遺伝子導入して細胞表面上に発現させた細胞を用いることができる。細胞へのペプチドのパルスは、細胞とペプチドとを常法にしたがって共に培養することにより実施可能である(実施例2参照。)。CTLとしては、自体公知のHLA−B52拘束性CTL培養細胞株、例えばGK−B−CTLを挙げることができる。CTLによるペプチドの認識および/またはCTLの活性化は、簡便にはCTLからのIFN−γ産生量を指標にして測定できる。また、自体公知のHLA−B62拘束性CTL培養細胞株、並びにHLA−B62+細胞を用いて同様の実験系を構築することにより、CTLによる上記ペプチドのHLA−B62拘束性の認識を増強し得る物質を同定できる。上述の実験系は同定方法の1つを説明するものであり、本発明に係る同定方法はこれに限定されない。
本発明は、上記同定方法によって得られた化合物も包含する。該化合物は、本発明に係るペプチド、例えばTRG1−20(配列番号1)若しくはTRG2−41(配列番号2)および/またはHLA−B52分子と相互作用してHLA−B52拘束性CTLによる該ペプチドの認識を増強する化合物であり得る。あるいは、TRG1−20(配列番号1)および/またはHLA−B62分子と相互作用してHLA−B62拘束性CTLによる該ペプチドの認識を増強する化合物であり得る。かくして選別された化合物は、生物学的有用性と毒性のバランスを考慮して選別することにより、医薬組成物として調製可能である。
本発明に係るペプチドは、腫瘍抗原ペプチドとしてHLA−B52拘束性またはHLA−B62拘束性にペプチド特異的なCTLを誘導するおよび/または活性化するために使用できる。したがって、本ペプチドを含有する細胞傷害性T細胞の誘導剤、並びに本ペプチドを用いることを特徴とする細胞傷害性T細胞の誘導方法も本発明の範囲に包含される。本誘導剤および誘導方法により誘導される細胞傷害性T細胞としては、HLA−B52拘束性またはHLA−B62拘束性細胞傷害性T細胞が例示できる。本ペプチドは、細胞傷害性T細胞を誘導および/または活性化するために、単独で使用してもよいし、2つ以上を組合わせて使用してもよい。細胞傷害性T細胞は種々の抗原を認識する複数の細胞集団であることから、好ましくはこれらを2つ以上組合わせて用いることが推奨される。
細胞傷害性T細胞の誘導方法は、その一態様として、本発明に係るペプチドを細胞にパルスする工程、および該工程で得られた細胞を用いて細胞傷害性T細胞の前駆細胞を含む細胞集団を刺激する工程を含む。ペプチドをパルスする細胞としては、HLA−B52表現型および/またはHLA−B62表現型を示す細胞、例えば該表現系を示す公知の細胞株が例示できる。あるいは、HLA−B52またはHLA−B62以外の表現型を示す細胞に、HLA−B52 cDNAまたはHLA−B62 cDNAを常法により遺伝子導入して細胞表面上に目的のHLA分子を発現させた細胞を用いることもできる。細胞へのペプチドのパルスは、細胞と腫瘍抗原ペプチドとを常法にしたがって共に培養することにより実施可能である(実施例2参照。)。細胞傷害性T細胞の前駆細胞を含む細胞集団は、例えばヒト末梢血より調製した末梢血細胞、より好ましくは末梢血単核細胞、さらに好ましくはHLA−B52表現型および/またはHLA−B62表現型を示す末梢血単核細胞が挙げられる。当該細胞集団の刺激は、当該細胞集団とペプチドをパルスしたHLA−B52+および/またはHLA−B62+細胞とを常法にしたがって共に培養することにより実施可能である(実施例3参照。)。細胞集団と標的細胞との組合わせは、好ましくは両細胞のHLA−B表現型の少なくとも一方が一致することが望ましい。
本発明に係るペプチド、該ペプチドを免疫学的に認識する抗体、該ペプチドおよび/またはHLA−B52分子若しくはHLA−B62分子と相互作用してCTLによる該ペプチドの認識を増強する化合物は、医薬組成物の有効成分として有用である。本発明に係るペプチド、抗体または化合物は、これらのうち少なくともいずれか1つを有効成分としてその有効量含む医薬となしてもよいが、通常は、1種または2種以上の医薬用担体を用いて医薬組成物を製造することが好ましい。さらに他の抗腫瘍ペプチドをその有効量含むことも可能である。他の抗腫瘍ペプチドとしては、HLA−B52拘束性またはHLA−B62拘束性に細胞傷害性T細胞を誘導し得るものであることができ、これらHLA表現型以外のHLAクラスI拘束性に細胞傷害性T細胞を誘導し得るものであってもよい。好ましくは、患者のPBMCからペプチド特異的細胞傷害性T細胞を誘導し得るものが好ましい。ペプチドによるPBMCからの特異的細胞傷害性T細胞の誘導は、PBMCとペプチドとを適当な期間培養し、対応するペプチドをパルスしたHLA分子を細胞表面に有する細胞と反応させて、産生されるIFN−γ量を測定することにより評価できる(実施例3参照。)。例えば、IFN−γ産生量が、ペプチド非存在下で培養したPBMCと比較して多ければ、細胞傷害性T細胞が誘導されたと判断できる。
上記医薬、医薬組成物、CTLの誘導剤、およびCTLの誘導方法は、例えば癌の予防および/または治療において有用である。特にTRGを発現している癌、より好ましくはTRGを発現している上皮癌で予防効果および/または治療効果が期待できる。具体的には、肺癌、胃癌、大腸癌、前立腺癌およびメラノーマ等が例示できる。これらは、好ましくは、HLA−B52対立遺伝子および/またはHLA−B62対立遺伝子を有する癌患者に適用できる。HLA−B52対立遺伝子は日本人の人口の約21.4%、アメリカ白人の2.4%、朝鮮人の4.8%、北方中国人の4.2%に見られる(非特許文献30)。また、HLA−B62対立遺伝子は日本人の人口の約16.6%、アメリカ白人の11.0%、朝鮮人の21.0%、北方中国人の23.6%に見られる(非特許文献30)。これらから、本発明に係る医薬、医薬組成物、CTLの誘導剤、およびCTLの誘導方法は多数の患者においてその効果を期待できる。
具体的には、例えば上記ペプチドから選ばれた1種以上からなる医薬、さらに上記ペプチドから選ばれた1種以上を含有する医薬組成物は、いわゆる癌ワクチンとして使用できる。ここでいう癌ワクチンとは、癌細胞に対する特異的免疫応答を誘導するおよび/または増強することにより、癌細胞を選択的に傷害し得る薬物を意味する。癌ワクチンとして使用するとき、免疫応答の誘導および/または増強のために、適当なアジュバントの存在下または非存在下に、ペプチドを単独でまたは担体に結合して用いることができる。担体は、それ自体が人体に対して有害な作用を及ぼさず且つ抗原性を増強せしめるものであれば特に限定されず、例えばセルロース、重合アミノ酸、アルブミン等が例示される。アジュバントは、通常のペプチドワクチン接種に用いられるものであればよく、フロイント不完全アジュバント、ALUM、百日咳ワクチン、鉱物油等が例示される。
癌ワクチンとして上記ペプチドを使用する場合、1種類のペプチドのみでも癌ワクチンとして有効であるが、複数種類の上記ペプチドを組合せて使用することもできる。最近、複数ペプチドに基づく免疫治療が有効であることが報告されている(非特許文献9−11)。癌患者のCTLはペプチド特異的なCTLの複数種類からなる細胞集団であるため、1種類のペプチドを癌ワクチンとして使用するより複数を組合せて癌ワクチンとして使用する方が、より高い効果が得られるときがある。
製剤中に含有されるべき有効成分の量およびその用量範囲は、特に限定されないが、成分の有効性、投与形態、疾病の種類、対象の性質(体重、年齢、病状および他の医薬の使用の有無等)、および担当医師の判断により適宜選択することが望ましい。一般的には、適当な用量範囲は、例えば1用量当り約0.01μg〜100mg程度、好ましくは約0.1μg〜10mg程度、さらに好ましくは1μg〜1mg程度とするのが望ましい。しかしながら、当該分野においてよく知られた最適化のための一般的な常套的実験を用いてこれらの用量の変更を行なうことができる。
投与形態は、公知の医療用ペプチドの投与方法に準じて行えばよく、局所投与または全身投与のいずれも選択することができる。いずれにおいても、疾患、症状等に応じた適当な投与形態を選択する。全身投与は例えば、経口、静脈内、動脈内等への投与により実施できる。局所投与は例えば、皮下、皮内、筋肉内等に投与することができる。
その他、患者の末梢血より単核細胞画分を採取して、本発明に係るペプチドを用いて刺激した後に、細胞傷害性T細胞の誘導および/または細胞傷害性T細胞の活性化が認められた該単核細胞画分、あるいは該単核細胞画分から精製した細胞傷害性T細胞を、当該患者の血液中に戻すことによっても、有効な癌ワクチン効果が得られる。ペプチドによる刺激は、単核細胞画分をペプチド、ペプチドを発現させた細胞、またはペプチドをパルスした細胞と共に培養することにより行なうことができる。培養の条件、例えば単核細胞濃度、ペプチド濃度またはペプチドをパルスした細胞の濃度、培養時間等は、簡単な実験により決定できる。培養時に、インターロイキン−2等のリンパ球増殖能を有する物質を添加してもよい。細胞傷害性T細胞の精製は常法により行なうことができるが、例えばCD8+細胞を回収することにより実施可能である。
また、本発明に係るペプチドをコードするポリヌクレオチドまたはその相補鎖を、癌の遺伝子治療に利用することも可能である。これらポリヌクレオチドをベクターに担持させ、直接体内に導入して発現させる方法またはヒトから細胞を採取した後に体外で細胞内に導入して発現させる方法のいずれも利用可能である。ベクターとしては、レトロウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス等が知られているが、レトロウイルス系が推奨される。これらウイルスは複製欠陥性のものを用いる。投与量は、CTLによる該ペプチドの認識の程度により変化するが、一般的には本発明に係る腫瘍抗原ペプチドをコードするDNA含量として0.1μg〜100mg/日/成人ヒト、好ましくは1μg〜50mg/日/成人ヒトである。これを数日乃至数月に1回投与する。
本発明に係るペプチド、抗体または化合物を医薬組成物として製造する場合、医薬製剤中に含まれるこれら有効成分の量は、広範囲から適宜選択されるが、通常約0.00001〜70重量%、好ましくは0.0001〜5重量%程度の範囲とするのが適当である。
医薬用担体としては、製剤の使用形態に応じて通常使用される、充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤等の希釈剤や賦形剤等を例示でき、これらは得られる製剤の投与形態に応じて適宜選択使用される。
例えば水、医薬的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトース等が挙げられる。これらは、本発明に係る剤形に応じて適宜1種類または2種類以上を組合せて使用される。
所望により、通常の蛋白質製剤に使用され得る各種の成分、例えば安定化剤、殺菌剤、緩衝剤、等張化剤、キレート剤、pH調整剤、界面活性剤等を適宜使用して調製することもできる。
安定化剤としては、例えばヒト血清アルブミンや通常のL−アミノ酸、糖類、セルロース誘導体等を例示でき、これらは単独でまたは界面活性剤等と組合せて使用できる。特にこの組合せによれば、有効成分の安定性をより向上させ得る場合がある。上記L−アミノ酸は、特に限定はなく、例えばグリシン、システイン、グルタミン酸等のいずれでもよい。糖類も特に限定はなく、例えばグルコース、マンノース、ガラクトース、果糖等の単糖類、マンニトール、イノシトール、キシリトール等の糖アルコール、ショ糖、マルトース、乳糖等の二糖類、デキストラン、ヒドロキシプロピルスターチ、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸等の多糖類等およびそれらの誘導体等のいずれでもよい。セルロース誘導体も特に限定はなく、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のいずれでもよい。界面活性剤も特に限定はなく、イオン性および非イオン性界面活性剤のいずれも使用できる。これには、例えばポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル系、ポリオキシエチレンアルキルエ−テル系、ソルビタンモノアシルエステル系、脂肪酸グリセリド系等が包含される。
緩衝剤としては、ホウ酸、リン酸、酢酸、クエン酸、ε−アミノカプロン酸、グルタミン酸および/またはそれらに対応する塩(例えばそれらのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩)等を例示できる。
等張化剤としては、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、糖類、グリセリン等を例示できる。
キレート剤としては、例えばエデト酸ナトリウム、クエン酸等を例示できる。
本発明に係る医薬および医薬組成物は、溶液製剤として使用できる他に、これを凍結乾燥化し保存し得る状態にした後、用時、水や生埋的食塩水等を含む緩衝液等で溶解して適当な濃度に調製した後に使用することも可能である。
本発明においてはまた、上記ペプチド、ポリヌクレオチド、DNA、RNAまたは抗体の定量的若しくは定性的な測定方法を提供する。当該測定の方法は、当業者に周知の方法を利用して構築できる。利用できる方法としては、ラジオイムノアッセイ、競争結合アッセイ、ウェスタンブロット分析および酵素免疫固相法(ELISA)等が例示できる。また、ポリヌクレオチド、DNAまたはRNAは、例えば増幅、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、リアルタイムPCR(real time PCR)、RNアーゼ保護、ノーザンブロッティングおよびその他のハイブリダイゼーション法等を用いて検出および定量が可能である。
測定される試料としては、個体由来の細胞、血液、尿、唾液、髄液、組織生検または剖検材料等があげられる。また、測定される核酸は、上記各試料から自体公知の核酸調製法で得られる。
本発明に係るDNAまたはRNAの測定は具体的には、実施例5に記載の方法により実施可能である。例えば、核酸試料について、配列番号5および配列番号6に記載の各塩基配列からなる2つのオリゴヌクレオチドを用いて、当該DNAまたはRNAの部分塩基配列を増幅し、増幅産物を検出することにより、当該DNAまたはRNAの測定が可能である。あるいは、リアルタイムPCR(real time PCR)を用いて本発明に係るDNAまたはRNAを測定し、ハウスキーピング遺伝子(β−アクチン、グリセルアルデヒド三リン酸脱水素酵素、リボソーマルプロテイン S5等)をDNA標準として用いて比較することにより、より感度高く当該DNAまたはRNAを測定できる。リアルタイムPCRは、例えば当該DNAまたはRNAの増幅に配列番号7および配列番号8に記載の各オリゴヌクレオチドを用い、増幅産物の検出に配列番号9に記載のオリゴヌクレオチドをプローブとして用いて実施できる。これら具体例は例示に過ぎず、用いることのできる測定方法はこれらに限定されない。
TRGの発現は、試験したほとんどの上皮癌細胞株および癌組織で認められたが、正常組織では、心臓、肝臓、膵臓、精巣およびPHA芽球化細胞でわずかに検出された他は、いずれの組織でもほとんど発現していなかった。このことから、TRGの発現を定量的または定性的に測定することにより、例えば癌の、より好ましくは上皮性の癌や腺癌等の検査および診断が可能になる。具体的には、個体由来試料、例えば癌の疑いがある組織または細胞について、配列番号3に記載の塩基配列からなるDNAの発現量、すなわち配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAの量を測定し、発現量が基準値よりも高いときには癌である可能性が高いと判定できる。基準値は、正常細胞および正常組織における当該RNAの発現量を測定し、その発現量を基に決定することが可能である。上記測定方法はさらに、癌治療後の予後の検査および診断にも利用可能である。
本発明に係るペプチド、ポリヌクレオチド、DNA、RNAまたは抗体、および該DNA由来のオリゴペプチドは、それ自体を単独で、診断マーカーや試薬等として使用可能である。これらは試薬であるとき、緩衝液、塩、安定化剤、および/または防腐剤等の物質を含んでいてもよい。製剤化にあたっては、ペプチド、ポリヌクレオチドまたは抗体等それぞれの性質に応じた自体公知の製剤化手段を導入すればよい。本発明はまた、これらのうちの1種またはそれ以上を充填した、1個またはそれ以上の容器を含んでなる試薬キットも提供する。これらは試薬キットであるとき、本発明に係るペプチド、ポリヌクレオチド、DNA、RNAまたは抗体を検出するための標識物質、標識の検出剤、反応希釈液、標準抗体、緩衝液、洗浄剤および反応停止液など、測定の実施に必要とされる物質を含むことができる。
試薬および試薬キットは、本発明に係る化合物の同定方法および細胞傷害性T細胞の誘導方法に使用できる。また、本発明に係る測定方法および検査方法に、測定試薬、検査試薬、測定キットまたは検査用キットとして使用可能である。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(HLA−B52拘束性腫瘍抗原をコードする遺伝子の同定)
肺腺癌細胞株11−18由来のcDNAクローンとHLA−B5201 cDNAとを共遺伝子導入したCOS7細胞を、CTLと共に培養して、該CTLを活性化せしめるcDNAクローンを得た。CTLの活性化は、CTLが産生するIFN−γ量を指標にして測定した。この方法により、腫瘍抗原をコードする遺伝子の同定が可能である(非特許文献31)。
肺腺癌細胞株11−18由来のcDNAクローンとHLA−B5201 cDNAとを共遺伝子導入したCOS7細胞を、CTLと共に培養して、該CTLを活性化せしめるcDNAクローンを得た。CTLの活性化は、CTLが産生するIFN−γ量を指標にして測定した。この方法により、腫瘍抗原をコードする遺伝子の同定が可能である(非特許文献31)。
ここで用いたCTLは、HLA−B52拘束性腫瘍特異的細胞傷害性T細胞GK−B−CTLである。この細胞は、肺腺癌患者(HLA−A0206/2402、B39/52、Cw7)の腫瘍浸潤リンパ球から、インターロイキン−2のみを用いて長期培養により樹立した(非特許文25および26)。まず、肺腺癌患者から得た腫瘍浸潤リンパ球を100U/mlの組換えヒトインターロイキン−2(IL−2)を添加して50日以上長期培養した。培養7日毎にこれらIL−2活性化腫瘍浸潤リンパ球の一部を採取し、種々の腫瘍細胞または正常細胞と共に培養して、IFN‐γ産生の測定により、そのCTL活性を検定した(非特許文献4)。IFN‐γの測定は、ELISAにより行なった。
GK−B−CTLの表現型はCD3+CD4−CD8+であり、11−18肺癌細胞(HLA−A0201/2402、B5201/54、C0102/1202)およびSq−1肺癌細胞(HLA−A1101/2402、B5201/1501、C0102/)を認識してIFN−γを産生したが、HLA−B5201−細胞、例えばCOS−7細胞およびVA13細胞に対する反応においてはこれらを認識せず、IFN−γを産生しなかった。抗HLAクラスI抗体(W6/32,IgG2a)および抗HLA−BC抗体(B1−23,IgG2a)により、Sq−1肺癌細胞に対する反応におけるGK−B−CTLによるIFN−γ産生が阻害された。これらから、GK−B−CTLの抗原認識がHLA−B遺伝子座拘束性であることが明らかになった。
肺腺癌細胞株11−18由来のcDNAライブラリーは、該細胞のmRNAをcDNAに転換し、SalIアダプターにライゲーションし、発現ベクターpCMV−SPORT2.0(Life Technology社)に挿入することにより作製した。このcDNAライブラリーの合計1×105クローンを1000ウエルにほぼ均等に分け、一次スクリーニングを次のように行なった。まず、分割した各プールの精製されたcDNAと100ngのHLA−B5201 cDNAとを、細胞数5×103のCOS7細胞に共遺伝子導入した。次いで、これら細胞とGK−B−CTLを共に培養し、培養上清中に産生されたIFN−γ量を測定した。そして、腫瘍抗原をコードする遺伝子として、GK−B−CTLからのIFN−γ産生を促進した細胞に導入したcDNAクローンを選択した。
その結果、1つのクローン、クローン12Aを見出した。クローン12Aは、HLA−B5201と共にCOS7細胞に共遺伝子導入したときにプラスミド用量依存的にGK−B−CTLからのIFN−γ産生を促進した(図1)。一方、HLA−A2601と共に共遺伝子導入したときにはクローン12AはGK−B−CTLからのIFN−γ産生を促進しなかった(図1)。HLA−B5201と空ベクターpCMVSPORT2とを共遺伝子導入した細胞もまた、GK−B−CTLにより認識されなかった。これらから、クローン12Aの遺伝子産物は、GK−B−CTLによりHLA−B52拘束性に認識され、該CTLを活性化する腫瘍抗原として作用することが判明した。
クローン12Aの塩基配列は、オートリードシーケンシングキット(Perkin−Elmer社)を用いてダイデオキシヌクレオチドシーケンシング法を行ない、ABI prism 377(Perkin−Elmer社)で分析することにより決定し、GenBankにアクセッション番号:AY143171として登録した(配列表の配列番号3)。クローン12Aは、1952bp長のcDNAインサートを含んでいた。当該塩基配列にコードされるアミノ酸配列を、フレーム1、フレーム2、およびフレーム3の全読み取り枠について推定したところ、32〜64アミノ酸をコードする短い読み取り枠(open reading frame)が7つ含まれていた。当該塩基配列はテスティン遺伝子(アクセッション番号:AF260225)の第6エクソンと第7エクソンの間に存在するイントロンの配列と同一であった。
(腫瘍抗原ペプチドの同定)
実施例1で得たクローン12Aの遺伝子産物から、腫瘍抗原ペプチドを同定した。まず、配列番号3に記載の塩基配列にコードされる推定アミノ酸配列に由来するペプチドから、HLA−B5201分子結合モチーフを有するペプチドを、BIMAS(BioInformatics and Molecular Analysis Section,Center for Information Technology,NIH)ソフトウエアを使用して検索した(非特許文献32)。これらのモチーフは第2位にQを、並びに第8および9位にI、V、M、またはFを含んでいた。かくして10種類のペプチドを同定し(配列番号1、2および10〜17)、これらの合成ペプチドをBiologica社から得た(純度>95%)。HLA−B52に結合し得るヒト免疫不全ウイルスエンベロプ蛋白質由来ペプチド(配列番号18:以下、HIVペプチドと呼称する)およびインフルエンザ由来ペプチド(配列番号19)は、それぞれ陰性コントロールおよび陽性コントロールとして用いた。
実施例1で得たクローン12Aの遺伝子産物から、腫瘍抗原ペプチドを同定した。まず、配列番号3に記載の塩基配列にコードされる推定アミノ酸配列に由来するペプチドから、HLA−B5201分子結合モチーフを有するペプチドを、BIMAS(BioInformatics and Molecular Analysis Section,Center for Information Technology,NIH)ソフトウエアを使用して検索した(非特許文献32)。これらのモチーフは第2位にQを、並びに第8および9位にI、V、M、またはFを含んでいた。かくして10種類のペプチドを同定し(配列番号1、2および10〜17)、これらの合成ペプチドをBiologica社から得た(純度>95%)。HLA−B52に結合し得るヒト免疫不全ウイルスエンベロプ蛋白質由来ペプチド(配列番号18:以下、HIVペプチドと呼称する)およびインフルエンザ由来ペプチド(配列番号19)は、それぞれ陰性コントロールおよび陽性コントロールとして用いた。
GK−B−CTLにより認識される抗原性ペプチドを同定するために、上記10種類の各合成ペプチドをSS−EBB細胞(HLA−B5201/54)に、10μMの濃度で37℃にてパルスした。2時間後にその上清を除去し、細胞数1×105のGK−B−CTLを培養に加え、37℃でさらに18時間インキュベーションした。次いで、培養上清中のIFN−γ量をELISAで測定した。トリプリケートアッセイで測定した結果を、スチューデントtテストを用いて統計的に分析した。
上記ペプチドのうち、TRG1−20(配列番号1)およびTRG2−41(配列番号2)は、GK−B−CTLにより認識され、GK−B−CTLからのIFN−γ産生を有意に且つ用量依存的に促進した(図2-Aおよび図2-B)。
(癌患者由来PBMCにおけるHLA−B52拘束性細胞傷害性T細胞の誘導)
2つのペプチド、TRG1−20(配列番号1)およびTRG2−41(配列番号2)について、PBMCからのCTL誘導能について試験した。PBMCは、HLA−B52+癌患者10例〔非小細胞肺癌(LC)5例、大腸腺癌(CC)4例および胃腺癌(SC)1例〕およびHLA−B52+健常人(HD)4例から調製した。PBMCはペプチドで3日ごとに4回刺激し、ペプチドをパルスしたSS−EBB細胞またはHLA−B5201+TRG+腫瘍細胞に対する反応におけるそれらのIFN−γ産生能を検討した。
2つのペプチド、TRG1−20(配列番号1)およびTRG2−41(配列番号2)について、PBMCからのCTL誘導能について試験した。PBMCは、HLA−B52+癌患者10例〔非小細胞肺癌(LC)5例、大腸腺癌(CC)4例および胃腺癌(SC)1例〕およびHLA−B52+健常人(HD)4例から調製した。PBMCはペプチドで3日ごとに4回刺激し、ペプチドをパルスしたSS−EBB細胞またはHLA−B5201+TRG+腫瘍細胞に対する反応におけるそれらのIFN−γ産生能を検討した。
細胞数1×105のPBMCは、既報と同様に(非特許文献25、26および33)、10μMの各ペプチドと共に96ウエルプレート中で100U/mlのインターロイキン−2存在下でインキュベーションした。培養3日目、6日目、および9日目に、細胞を10μMの対応するペプチドで再刺激した。12日目に、各ウエルの培養上清を除去し、細胞を新鮮培地に再浮遊し、2つのウエルに分配した。2つのウエルの細胞を、それぞれ対応するペプチドまたはコントロールHIVペプチドをパルスしたSS−EBB細胞あるいはHLA−B5201+TRG+腫瘍細胞11−18で刺激した。培養18時間後に、培養上清中のIFN−γ量をELISAでトリプリケートアッセイにて測定した。対応するペプチドをパルスしたSS−EBB細胞またはHLA−B5201+TRG+腫瘍細胞11−18で刺激した上清中のIFN−γ濃度から、コントロールHIVペプチドをパルスしたEBB細胞でまたはHLA−B5201−B1501−TRG+QG56細胞で刺激した培養上清中のIFN−γ濃度をそれぞれ減算した。
TRG1−20(配列番号1)をパルスしたSS−EBB細胞に対する反応において、TRG1−20(配列番号1)で刺激したPBMCからの有意なレベルのIFN−γ(>100pg/ml)産生が、癌患者10例中8例および健常人4例中1例のPBMCで認められた(図3-Aの左図)。同様の結果が11−18腫瘍細胞に対する反応で認められた(図3-Aの右図)。
TRG2−41(配列番号2)をパルスしたSS−EBB細胞に対する反応において、TRG2−41(配列番号2)で刺激したPBMCからの有意なレベルのIFN−γ(>100pg/ml)産生が、癌患者10例中6例のPBMCで認められた(図3-B)。
ポジティブコントロールであるインフルエンザ由来ペプチドは癌患者10例中6例および健常人4例中3例のPBMCからペプチド特異的細胞傷害性T細胞を誘導した。一方、ネガティブコントロールであるHIVペプチドではCTLは全く誘導されなかった。
TRG1−20(配列番号1)またはTRG2−41(配列番号2)で刺激した上記PBMCの細胞傷害活性を、標準的な6時間の51Cr遊離試験でさらに検討した。この試験は、上記PBMCをIL−2で長期培養して充分な数の細胞を得た後に行なった。まず、TRG1−20(配列番号1)またはTRG2−41(配列番号2)で刺激した細胞を、96ウエルU底マイクロカルチャープレート中で、放射線照射して対応するペプチドでパルスした自己PBMC2×105を用いてさらに培養した。この細胞を二次培養の3日目および7日目に各ペプチドで刺激し、そしてさらにIL−2のみで培養した。培養28〜42日目に細胞を回収してエフェクターとして用い、様々なターゲットに対するそれらの細胞傷害活性を、標準的な6時間の51Cr遊離試験を様々なエフェクター:ターゲット比(E/T比)で行なうことにより測定した(非特許文献25および26)。
代表的な結果を図4-Aおよび図4-Bに示す。TRG1−20(配列番号1)またはTRG2−41(配列番号2)で刺激したPBMCはHLA−B52+TRG+肺癌細胞(11−18)に対して細胞傷害活性を示した(図4-Aおよび図4-Bの左図)。一方、これらの細胞は、HLA−B52−TRG+(QG56)またはHLA−B52+TRG−(LC65A)肺癌細胞のいずれにも細胞傷害活性を示さなかった。これらの細胞はHLA−B52+TRG+PHA芽球化細胞には反応しなかった。また、TRG1−20(配列番号1)またはTRG2−41(配列番号2)で刺激したPBMCは、それぞれTRG1−20(配列番号1)またはTRG2−41(配列番号2)をパルスしたSS−EBB細胞に対して細胞傷害活性を示した(図4-Aおよび図4-Bの右図)。この結果から、これらペプチドで刺激したPBMCのペプチド特異性が明らかになった。コントロールであるインフルエンザ由来ペプチドで刺激したPBMCはいずれのターゲットに対しても細胞傷害活性を示さなかった。図示した結果は、肺癌患者例(LC1、LC3およびLC5)並びに胃癌患者例(SC1)由来の末梢血単核細胞についての結果であるが、その他の患者例においても同様の結果が得られた。これらの細胞傷害活性は抗HLAクラスIモノクローナル抗体(W6/32,IgG2a)、抗HLA−BCモノクローナル抗体(B1−23,IgG2a)、HLA−B52分子を含むHLA−Bサブグループに反応する抗体である抗HLA−Bw4モノクローナル抗体(IgM)、または抗CD8抗体(Nu−Ts/c,IgG2a)によって阻害されたが、抗クラスII抗体(H−DR−1,IgG2a)、抗CD4抗体(Nu−Th/i,IgG1)、または抗CD14抗体(H14,IgG1)では阻害されなかった。代表的な結果を図5に示す。
これらから、2つのペプチド、TRG1−20(配列番号1)およびTRG2−41(配列番号2)は、癌患者由来のPBMCにおいて、それぞれペプチド特異的且つHLA−B52拘束性の細胞傷害性T細胞を誘導することが明らかになった。
(癌患者由来PBMCにおけるHLA−B62拘束性細胞傷害性T細胞の誘導)
TRG1−20(配列番号1)がHLA−B1501に比較的高い親和性をもつことがBIMASソフトウエアを用いた解離半減期の推定スコアを計算することにより明らかになった。そこで、TRG1−20(配列番号1)がHLA−B1501拘束性且つ腫瘍特異的なCTLを誘導するか検討した。HLA−B1501の結合モチーフは第2位がQまたはLであり、第9位がFまたはYである(非特許文献32)。また、HLA−B1501は血清学的に決定されたHLA−B62と同一である。
TRG1−20(配列番号1)がHLA−B1501に比較的高い親和性をもつことがBIMASソフトウエアを用いた解離半減期の推定スコアを計算することにより明らかになった。そこで、TRG1−20(配列番号1)がHLA−B1501拘束性且つ腫瘍特異的なCTLを誘導するか検討した。HLA−B1501の結合モチーフは第2位がQまたはLであり、第9位がFまたはYである(非特許文献32)。また、HLA−B1501は血清学的に決定されたHLA−B62と同一である。
HLA−B62+癌患者7例〔非小細胞肺癌(LC)2例、前立腺癌(Pro)4例およびメラノーマ(M)1例〕のPBMCをTRG1−20(配列番号1)で刺激し、TRG1−20(配列番号1)をパルスしたHLA−B62+AY−EBB細胞またはHLA−B1501+(B62+)TRG+腫瘍細胞に対する反応性を実施例3と同様の方法で試験した。7例中3例のPBMCからの有意なレベルのIFN−γ産生が、ペプチドをパルスしたHLA−B62+AY−EBB細胞(図6-Aの左図)およびHLA−B1501+TRG+腫瘍細胞(図6-Aの右図)に対する反応において認められた。TRG1−20(配列番号1)で刺激したPBMC(HLA−B62+/B52−)について、TRG cDNAとHLA−B1501 cDNAまたはTRG cDNAとコントロールであるHLA−B5201 cDNAを共遺伝子導入したCOS7細胞に対する反応性をさらに検討した。これらのPBMCはこれらCOS7細胞をTRGの用量依存的に且つHLA−B1501拘束性に認識して有意なレベルのIFN−γを産生した(図6-B)。
TRG1−20(配列番号1)で刺激したPBMCの細胞傷害活性をさらに実施例3と同様の方法で51Cr遊離試験により検討した。その代表的な結果を図7-Aに示す。TRG1−20(配列番号1)で刺激した肺癌患者例およびメラノーマ患者例由来のPBMCは、HLA−B1501+TRG+腫瘍細胞株である膀胱癌細胞株HT1376および膵臓癌細胞株PACA2に対して細胞傷害活性を示したが、HLA−B1501−TRG+肺癌細胞株QG56あるいはHLA−B1501+TRG−肝臓癌細胞株KIM−1には反応しなかった。細胞傷害活性は抗クラスI抗体、抗CD8抗体、抗HLA−BC抗体、またはHLA−B62分子を含むHLA−Bのサブグループに反応する抗HLA−Bw6抗体で阻害されたが、抗クラスII抗体、抗CD4抗体、または抗CD14抗体では阻害されなかった。代表的な結果を図7-Bに示す。これらから、TRG1−20(配列番号1)はHLA−B62+癌患者由来のPBMCから、ペプチド特異的且つHLA−B62拘束性のCTLを誘導することが明らかになった。
このようにTRG1−20(配列番号1)は、HLA−B52+癌患者由来のPBMCにおいてのみならず、HLA−B62+癌患者由来のPBMCからも、ペプチド特異的且つHLA−B拘束性のCTLを誘導することが判明した。
(TRGの組織発現の解析)
実施例1で得られたクローン12A(以下、TRGと呼称することもある)の組織発現をノザンブロット分析により解析した。種々の細胞および正常組織からRNAzol B(TEL−TEST社)を用いて抽出した総RNA(10μg/lane)をホルムアルデヒドアガロースゲル(formaldehyde agarose gel)上で分離し、ナイロンメンブレン(Hybond−N+;Amersham社)にトランスファーした。当該メンブレンは、ハイブリダイゼーションバッファー(7% SDS、1mM EDTA、0.5M NaH2PO4,pH7.2)中で、クローン12AのEcoRI/NcoIによる切断断片(951bp)を32Pで標識したものをプローブとして、65℃にて一晩さらにハイブリダイゼーションした。その後、このメンブレンは、洗浄用バッファー(1% SDS、40mM NaH2PO4,pH7.2)を用いて室温で3回、65℃で1回洗浄し、次いでオートラジオグラフィーで測定した。コントロールプローブとして、ヒトβ−アクチンcDNA(Clontech社)を用いて同様に検討した。その結果、TRGの発現は、図8に示すように、1.9kbのバンドとして11−18肺腺癌細胞株でのみ認められた。
実施例1で得られたクローン12A(以下、TRGと呼称することもある)の組織発現をノザンブロット分析により解析した。種々の細胞および正常組織からRNAzol B(TEL−TEST社)を用いて抽出した総RNA(10μg/lane)をホルムアルデヒドアガロースゲル(formaldehyde agarose gel)上で分離し、ナイロンメンブレン(Hybond−N+;Amersham社)にトランスファーした。当該メンブレンは、ハイブリダイゼーションバッファー(7% SDS、1mM EDTA、0.5M NaH2PO4,pH7.2)中で、クローン12AのEcoRI/NcoIによる切断断片(951bp)を32Pで標識したものをプローブとして、65℃にて一晩さらにハイブリダイゼーションした。その後、このメンブレンは、洗浄用バッファー(1% SDS、40mM NaH2PO4,pH7.2)を用いて室温で3回、65℃で1回洗浄し、次いでオートラジオグラフィーで測定した。コントロールプローブとして、ヒトβ−アクチンcDNA(Clontech社)を用いて同様に検討した。その結果、TRGの発現は、図8に示すように、1.9kbのバンドとして11−18肺腺癌細胞株でのみ認められた。
さらに、TRGの発現解析を、より検出感度の高いRT−PCR法で行なった。逆転写反応は、オリゴ−dTプライマー(oligo−dT primer)を用いてスーパースクリプトファーストストランドプレパレ−ションキット(SuperScript First Strand Preparation Kit)(Life Tech社)を使用し、その使用説明書に従って行なった。総RNA試料は、DNase(Takara社)で37℃にて20分間処理して、夾雑しているゲノムDNAを取り除いた後に逆転写反応にかけた。
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は次に示す条件で行なった:デナチュレーション(95℃で30秒間)、アニーリング(58−60℃で30秒間)およびエクステンション(72℃で90秒間)を1サイクルとして35サイクル。
PCRプライマーは次に記載のオリゴヌクレオチドを用いた(図9-A参照)。
テスティン用
フォワードプライマー:50877F(配列番号20)
リバースプライマー :51488R(配列番号21)
TRG用
フォワードプライマー:452F (配列番号5)
リバースプライマー :1167R(配列番号6)
テスティン用
フォワードプライマー:50877F(配列番号20)
リバースプライマー :51488R(配列番号21)
TRG用
フォワードプライマー:452F (配列番号5)
リバースプライマー :1167R(配列番号6)
TRG用のプライマーは、TRGの第452位から第1167位の領域を検出するために設計した(図9-A)。テスティン用のプライマーは、ゲノムDNAの夾雑がないことを証明し、且つテスティンmRNA発現を分析するために設計した。テスティン用のプライマーはテスティン遺伝子の第5エクソン中の第50877位から第6エクソン中の第51488位までの領域を検出するために設計した。第5エクソンと第6エクソンの間のイントロンの長さは342bpである。もし試料がゲノムDNAを含んでいれば、RT−PCRにより612bpの産物が増幅されると予想される。しかしながら、試料にゲノムDNAの夾雑がなければ270bpの産物が増幅される(図9-B)。
結果を表1および表2に示した。いずれの癌細胞株または正常組織から抽出したRNAについてもゲノムDNAの夾雑は認められなかった。TRG mRNAは、ほとんどの(26検体中21検体;81%)上皮癌細胞株(非小細胞肺癌細胞株12種のうち11種;食道癌細胞株3種のうち1種;胃癌細胞株3種のうち2種;大腸癌細胞株3種全て;頭頚部癌細胞株3種のうち2種;膀胱癌1種;膵臓癌細胞株1種)で検出された。一方、非上皮癌細胞株におけるTRG mRNAの発現は比較的まれであり(11検体のうち2検体;18%)、小細胞肺癌細胞株2種および肝癌細胞株3種では検出されず、白血病細胞株1種および骨肉種細胞株5種のうち1種で検出された。TRGの発現は非上皮癌細胞株と比較して上皮癌細胞株で有意に高かった(p<0.05)。TRGは、精巣およびPHA芽球化細胞で発現していたが、それ以外の試験したいずれの正常組織でも発現していなかった。
TRGの組織発現をリアルタイムPCR(Quantitative real time PCR)によりABI prism 5700(AppliedBiosystems)を用いてさらに定量的に解析した(非特許文献34)。
クローン12Aおよび全長β−アクチンプローブ(BD Biosciences Clontech)をDNA標準として用いた。cDNA試料としてヒトMTCパネルI、II、およびヒト腫瘍MTCパネル(BD Biosciences Clontech)を用いた。cDNA試料およびDNA標準のリアルタイムPCRは、1×TaqMan Master mix(Applied Biosystems)、400nMのプライマーおよび160nMのプローブを用いて総容量25μl中で行なった。
プライマーおよびTaqManプローブは次に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを用いた。プローブはいずれも5′末端および3′末端をそれぞれレポーター色素FAMおよびクエンチャー色素TAMRAで標識して用いた。
TRGフォワードプライマー:配列番号7
TRGリバースプライマー:配列番号8
TRGプローブ:配列番号9
β−アクチンフォワードプライマー:配列番号22
β−アクチンリバースプライマー:配列番号23
β−アクチンプローブ:配列番号24
TRGフォワードプライマー:配列番号7
TRGリバースプライマー:配列番号8
TRGプローブ:配列番号9
β−アクチンフォワードプライマー:配列番号22
β−アクチンリバースプライマー:配列番号23
β−アクチンプローブ:配列番号24
PCRは次に示す条件で行なった:50℃で2分間、95℃で10分間、40サイクルのデナチュレーションおよびアニーリング/エクステンション(デナチュレーション:95℃で15秒間、アニーリング/エクステンション:60℃で1分間)。
TRGの発現は、TRG mRNAのコピー数をβ−アクチン mRNAのコピー数×104で除して数値化し、表3に示した。表に示した数値が高いほど、TRGの発現レベルが高い。TRGは、正常組織においては心臓、肝臓および膵臓で低レベルの発現が検出された他は、大多数の組織でほとんどその発現が認められなかった。それに反して、試験した癌組織全てにおいて(乳癌、肺癌、大腸腺癌および前立腺癌)、高レベルのTRG発現が認められた。
本発明は、例えば癌の特異的免疫療法に使用することができ、医薬分野における利用可能性が非常に高く有用である。また、本発明は、T細胞による腫瘍の認識に関する分子の基礎的研究にも多大に寄与するものである。
配列表の配列番号1:HLA−B52拘束性細胞傷害性T細胞またはHLA−B62拘束性細胞傷害性T細胞により認識される設計されたペプチド。
配列表の配列番号2:HLA−B52拘束性細胞傷害性T細胞により認識される設計されたペプチド。
配列表の配列番号5:配列番号3に記載のDNAまたは配列番号4に記載のRNAを検出するためのプライマー用に設計されたオリゴヌクレオチド。
配列表の配列番号6:配列番号3に記載のDNAまたは配列番号4に記載のRNAを検出するためのプライマー用に設計されたオリゴヌクレオチド。
配列表の配列番号7:配列番号3に記載のDNAまたは配列番号4に記載のRNAを検出するためのプライマー用に設計されたオリゴヌクレオチド。
配列表の配列番号8:配列番号3に記載のDNAまたは配列番号4に記載のRNAを検出するためのプライマー用に設計されたオリゴヌクレオチド。
配列表の配列番号9:配列番号3に記載のDNAまたは配列番号4に記載のRNAを検出するためのプローブ用に設計されたオリゴヌクレオチド。
配列表の配列番号10:HLA−B52結合モチーフに適合するアミノ酸配列を有する設計されたペプチド。
配列表の配列番号11:HLA−B52結合モチーフに適合するアミノ酸配列を有する設計されたペプチド。
配列表の配列番号12:HLA−B52結合モチーフに適合するアミノ酸配列を有する設計されたペプチド。
配列表の配列番号13:HLA−B52結合モチーフに適合するアミノ酸配列を有する設計されたペプチド。
配列表の配列番号14:HLA−B52結合モチーフに適合するアミノ酸配列を有する設計されたペプチド。
配列表の配列番号15:HLA−B52結合モチーフに適合するアミノ酸配列を有する設計されたペプチド。
配列表の配列番号16:HLA−B52結合モチーフに適合するアミノ酸配列を有する設計されたペプチド。
配列表の配列番号17:HLA−B52結合モチーフに適合するアミノ酸配列を有する設計されたペプチド。
配列表の配列番号18:ヒト免疫不全ウイルスエンベロプ蛋白質由来ペプチド。
配列表の配列番号19:インフルエンザ由来ペプチド。
配列表の配列番号20:テスティン遺伝子の発現を検出するためのプライマー用に設計されたオリゴヌクレオチド。
配列表の配列番号21:テスティン遺伝子の発現を検出するためのプライマー用に設計されたオリゴヌクレオチド。
配列表の配列番号22:β−アクチンの発現を検出するためのプライマー用に設計されたオリゴヌクレオチド。
配列表の配列番号23:β−アクチンの発現を検出するためのプライマー用に設計されたオリゴヌクレオチド。
配列表の配列番号24:β−アクチンの発現を検出するためのプローブ用に設計されたオリゴヌクレオチド。
配列表の配列番号2:HLA−B52拘束性細胞傷害性T細胞により認識される設計されたペプチド。
配列表の配列番号5:配列番号3に記載のDNAまたは配列番号4に記載のRNAを検出するためのプライマー用に設計されたオリゴヌクレオチド。
配列表の配列番号6:配列番号3に記載のDNAまたは配列番号4に記載のRNAを検出するためのプライマー用に設計されたオリゴヌクレオチド。
配列表の配列番号7:配列番号3に記載のDNAまたは配列番号4に記載のRNAを検出するためのプライマー用に設計されたオリゴヌクレオチド。
配列表の配列番号8:配列番号3に記載のDNAまたは配列番号4に記載のRNAを検出するためのプライマー用に設計されたオリゴヌクレオチド。
配列表の配列番号9:配列番号3に記載のDNAまたは配列番号4に記載のRNAを検出するためのプローブ用に設計されたオリゴヌクレオチド。
配列表の配列番号10:HLA−B52結合モチーフに適合するアミノ酸配列を有する設計されたペプチド。
配列表の配列番号11:HLA−B52結合モチーフに適合するアミノ酸配列を有する設計されたペプチド。
配列表の配列番号12:HLA−B52結合モチーフに適合するアミノ酸配列を有する設計されたペプチド。
配列表の配列番号13:HLA−B52結合モチーフに適合するアミノ酸配列を有する設計されたペプチド。
配列表の配列番号14:HLA−B52結合モチーフに適合するアミノ酸配列を有する設計されたペプチド。
配列表の配列番号15:HLA−B52結合モチーフに適合するアミノ酸配列を有する設計されたペプチド。
配列表の配列番号16:HLA−B52結合モチーフに適合するアミノ酸配列を有する設計されたペプチド。
配列表の配列番号17:HLA−B52結合モチーフに適合するアミノ酸配列を有する設計されたペプチド。
配列表の配列番号18:ヒト免疫不全ウイルスエンベロプ蛋白質由来ペプチド。
配列表の配列番号19:インフルエンザ由来ペプチド。
配列表の配列番号20:テスティン遺伝子の発現を検出するためのプライマー用に設計されたオリゴヌクレオチド。
配列表の配列番号21:テスティン遺伝子の発現を検出するためのプライマー用に設計されたオリゴヌクレオチド。
配列表の配列番号22:β−アクチンの発現を検出するためのプライマー用に設計されたオリゴヌクレオチド。
配列表の配列番号23:β−アクチンの発現を検出するためのプライマー用に設計されたオリゴヌクレオチド。
配列表の配列番号24:β−アクチンの発現を検出するためのプローブ用に設計されたオリゴヌクレオチド。
Claims (26)
- 配列表の配列番号1または配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるペプチド。
- 配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列からなり、HLA−B52拘束性またはHLA−B62拘束性に、細胞傷害性T細胞を誘導するおよび/または細胞傷害性T細胞により認識されるペプチド。
- 配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列からなり、HLA−B52拘束性に、細胞傷害性T細胞を誘導するおよび/または細胞傷害性T細胞により認識されるペプチド。
- 配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるペプチドおよび/または配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるペプチドを有効成分とする医薬。
- 配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるペプチドおよび/または配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるペプチドを含有してなる癌ワクチン。
- HLA−B遺伝子座の特異性がHLA−B52および/またはHLA−B62である癌の治療に用いる請求項5に記載の癌ワクチン。
- 上皮癌の治療に用いる請求項5または6に記載の癌ワクチン。
- 肺癌、胃癌、大腸癌、前立腺癌および/またはメラノーマの治療に用いる請求項5または6に記載の癌ワクチン。
- 配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるペプチドおよび/または配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるペプチドを含有する細胞傷害性T細胞の誘導剤。
- 配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるペプチドおよび/または配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるペプチドを使用することを特徴とする細胞傷害性T細胞の誘導方法。
- 配列表の配列番号1または配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるペプチドを免疫学的に認識する抗体。
- 配列表の配列番号1若しくは配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるペプチドおよび/またはHLA−B52と相互作用して少なくともHLA−B52拘束性細胞傷害性T細胞による該ペプチドの認識を増強する化合物の同定方法であって、該ペプチド、HLA−B52陽性細胞およびHLA−B52拘束性細胞傷害性T細胞を少なくとも用いることを特徴とする同定方法。
- 配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるペプチドおよび/またはHLA−B62と相互作用して少なくともHLA−B62拘束性細胞傷害性T細胞による該ペプチドの認識を増強する化合物の同定方法であって、該ペプチド、HLA−B62陽性細胞およびHLA−B62拘束性細胞傷害性T細胞を少なくとも用いることを特徴とする同定方法。
- 請求項12または13に記載の方法により同定された化合物。
- 配列表の配列番号1または配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるペプチドに対するHLA−B52拘束性細胞傷害性T細胞の認識を増強する化合物。
- 配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるペプチドに対するHLA−B62拘束性細胞傷害性T細胞の認識を増強する化合物。
- 請求項1から3のいずれか1項に記載のペプチド、請求項11に記載の抗体および請求項14から16のいずれか1項に記載の化合物のうち、少なくとも1つを含有することを特徴とする癌治療に用いる医薬組成物。
- 請求項1から3のいずれか1項に記載のペプチドをコードするポリヌクレオチドまたはその相補鎖。
- 配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるDNAまたはその相補鎖。
- 配列表の配列番号4に記載の塩基配列からなるRNAまたはその相補鎖。
- 配列表の配列番号5から配列番号9のいずれか1に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド。
- 請求項1から3のいずれか1項に記載のペプチド、請求項11に記載の抗体、請求項18に記載のポリヌクレオチド、請求項19に記載のDNAまたは請求項20に記載のRNAを定量的あるいは定性的に測定する方法。
- 請求項19に記載のDNAまたは請求項20に記載のRNAを定量的あるいは定性的に測定する方法であって、配列表の配列番号5および配列番号6に記載の各塩基配列からなる2つのオリゴヌクレオチドを用いて、該DNAまたはRNAの部分塩基配列を増幅し、増幅産物を検出することを含む測定方法。
- 請求項19に記載のDNAまたは請求項20に記載のRNAを定量的あるいは定性的に測定する方法であって、配列表の配列番号7および配列番号8に記載の各塩基配列からなる2つのオリゴヌクレオチドを用いて、該DNAまたはRNAの部分塩基配列を増幅し、増幅産物を配列番号9に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを用いて検出することを含む測定方法。
- 癌組織あるいは癌細胞における請求項20に記載のRNAの発現量を測定し、検査することを特徴とする癌の検査方法。
- 請求項1から3のいずれか1項に記載のペプチド、請求項11に記載の抗体、請求項18に記載のポリヌクレオチド、請求項19に記載のDNA、請求項20に記載のRNAおよび請求項21に記載のオリゴヌクレオチドのうち少なくとも1つを含んでなる試薬キット。
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