JP2004138447A - 岩盤の物性評価方法 - Google Patents

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桑原 徹
Kenichiro Suzuki
鈴木 健一郎
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Abstract

【課題】ボーリング調査によって広範囲に及ぶ調査エリアを調査すると、コストがかかる。
【解決手段】本発明の岩盤評価方法は、岩盤の物性を評価するための岩盤評価方法であって、岩盤内に存在する複数の層のそれぞれの物性値を取得する取得工程と、岩盤内に弾性波を発生させ、その反射波を利用して前記複数の層の分布を解析する解析工程と、前記解析工程において解析された各層の物性値として、前記取得工程において取得した各層の物性値を適用し、前記岩盤の物性を評価する評価工程とを有することを特徴とする。これにより、広範囲の岩盤物性評価を、高い信頼性を確保しつつ、低コストにて可能とする岩盤評価方法を提供するものである。
【選択図】   図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は岩盤の物性を評価するための岩盤評価方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
地下構造物やトンネルを構築するに際して、あるいは単に地質状況を調査するに際して、様々な岩盤調査方法が採用されている。例えば、岩盤の性状を調査する方法として、ボーリング調査および反射法探査がある。
【0003】
(1)ボーリング調査は、コアサンプルを採取可能な装置(例えばボーリング機械等)を調査エリアに配して、対象岩盤について適宜ポイントにおけるコアサンプル採取を行う方法である。ボーリング調査によれば、採取したコアサンプルは岩盤から直接得られたものであるので、実際の亀裂状況(頻度、密度、方向性など)を反映して比較的明確に岩盤性状を把握することができる。
【0004】
(2)反射法探査は、地表面に設置された起震源から弾性波を発生し、亀裂帯や地層面で反射された弾性波を測定し、測定された反射波の応答時間等を解析し、岩盤内部の亀裂を評価するものである(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−148355号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
岩盤の物性評価の調査エリアが広範囲にわたる場合、従来の岩盤評価方法では以下のような課題を有していた。
【0007】
(1)ボーリング調査によって広範囲におよぶ調査エリアを調査すると、ボーリングポイントを多数設ける必要がある。しかし、ボーリングポイントを多数設けると、コストが増大し、作業時間が長くなってしまう。特に、ボーリング調査はその性質上、深度に応じてコストが上昇するので、例えば地下100〜1000mについての調査を多数行うことは膨大なコストアップにつながる。
一方、ボーリングポイントを削減し、少ないデータを広範囲の岩盤全体に外挿すれば、調査範囲全体の岩盤の物性等の評価の信頼性が低下する。
【0008】
(2)反射法探査による岩盤の評価では、岩盤中の反射面を亀裂集中部と新鮮岩盤部(亀裂が少ない部分)の境界面として推定することができるが、岩盤の物性(弾性係数や透水係数など)までは調査できない。そのため、反射法探査では、岩盤の物性評価を行うことが困難であった。
【0009】
本発明はこのような従来の課題に着目してなされたもので、広範囲の岩盤物性評価を、高い信頼性を確保しつつ、低コストにて可能とする岩盤評価方法を提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するためになされたもので、岩盤の物性を評価するための岩盤評価方法であって、岩盤内に存在する複数の層のそれぞれの物性値を取得する取得工程と、岩盤内に弾性波を発生させ、その反射波を利用して前記複数の層の分布を解析する解析工程と、前記解析工程において解析された各層の物性値として、前記取得工程において取得した各層の物性値を適用し、前記岩盤の物性を評価する評価工程とを有することを特徴とする。
かかる岩盤評価方法において、前記解析工程は、前記複数の層の分布を3次元情報として解析するが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、添付図面を参照して詳細に説明する。以下に説明するとおり、本実施形態の岩盤評価方法によれば、広範囲における岩盤の物性のデータを取得することができる。
図1は、本実施形態の岩盤評価方法を説明するためのフロー図である。
【0012】
<ボーリング調査等について(S101、S102)>
本実施形態の岩盤評価方法では、まず、ボーリング調査によって、岩盤の物性値を取得している(S101,S102)。
【0013】
ボーリング調査では、実際に岩盤に孔を掘り、岩盤の状態を直接観察する。ボーリング調査では、先端に掘削用の歯が付いた管を地面に突き立て、機械で縦孔を掘る。ボーリング調査では、実際の岩盤の物性値を測定することができるので、他の調査方法と比較して、正確な岩盤の物性値を取得することができる。
【0014】
ボーリング調査では、コアサンプルを採取するだけでなく、掘削孔を利用して、岩盤の性状を観察することができる。例えば、ボアホールレーダーなどを用いてアンテナからの反射信号を測定すれば、孔壁より奥に広がる岩盤中の亀裂の長さ・方位・幅・密度などを検知することができる。なお、ボアホールレーダーとは、掘削孔内にアンテナを配置し、掘削孔から離れた場所の反射体を検出する地中レーダの一種である。さらに、例えば、ボアホールカメラなどを用いて孔壁の画像を撮影し、コンピュータ処理によって展開画像を作成すれば、孔壁の亀裂などを特定することができる。
【0015】
図2は、ボーリング調査によって得られた岩盤の物性値の入力画面である。同図において、「亀裂番号」とは、ボーリング孔内の亀裂に付けられた番号である。「方位」とは、ボーリング調査によって検知された亀裂の方位である。また、「幅」とは、ボーリング調査によって検知された亀裂の幅である。また、「長さ」とは、ボーリング調査によって検知された亀裂の長さである。本実施形態では、ボーリング調査によって検知された亀裂の長さ・方位・幅・密度などの情報に基づいて、「亀裂方位のテンソル量Nij」、「亀裂の量のテンソル量Fij」及び「透水性のテンソル量Pij」が算出される。また、検知された亀裂の長さ・方位・幅に関する情報に基づいて、岩盤内の弾性係数や透水係数などの物性値を算出することもできる。
【0016】
なお、ボーリング調査の結果に基づいて、RQD値(ボーリング1m区間につき得られた10cm以上のコアの総和)を求めることができる。RQD=90〜100である層は、ほとんど亀裂のない層と考えられる。また、RQD=50〜80である層は、亀裂が多い層と考えられる。一方、後に説明される反射法探査による層区分と、ボーリング調査による層区分が対応していると考えられるので、本実施形態では、RQD値の変換点を基準にして各層を区分し、各層の物性値の平均を求めている。例えば、第1層の透水係数(Kx、Ky、Kz)は、亀裂番号1〜4に対応する透水性のテンソル量Pijの平均に基づいて、算出される。また、第1層の弾性係数Ezは、亀裂番号1〜4に対応する亀裂の量のテンソル量FijのF33の値に基づいて、算出される。各層の透水係数Kや弾性係数Eも、同様に算出される。
【0017】
本実施形態では、ボーリング調査によって検知された亀裂の方位・幅・長さ等は、解析装置に設けられた入力手段によって、亀裂番号毎に入力される。そして、解析装置は、入力された亀裂に関する情報に基づいて、亀裂番号毎に亀裂に関するテンソル量(Nij、Fij、Pij)を算出することができる。また、解析装置は、算出されたテンソル量に基づいて、各層の物性値(例えば、弾性係数や透水係数など)を取得することができる。
【0018】
図3は、上記の調査によって測定された物性値を示すグラフである。縦軸は、岩盤の物性値の一例としてI値(=E×K×1000[kN/s・m])を示している(なお、Kは透水係数、Eは弾性係数である)。また、横軸は、岩盤内に存在する複数の層の番号を示している。層の番号は、小さい番号ほど地表に近い層であることを示す。同図のグラフは、ほぼ右下がりのグラフとなっている。つまり、岩盤の中の深い層は、透水性が低い(透水係数が小さい)。また、岩盤の中の浅い層は、透水性が高い(透水係数が大きい)。
【0019】
同じ層では、物性値はほぼ均一であると考えられる。ただし、ボーリング調査では、岩盤内部の層の分布を把握することはできない。そこで、本実施形態では、岩盤内部の層の分布を把握するため、以下に説明する通り、反射法探査を行っている。
【0020】
<反射法探査等について(S111、S112)>
反射法探査は、弾性波を起振源によって発生し、亀裂帯や地層面で反射された弾性波を受振器によって測定し、弾性波速度や応答時間等を考慮して測定データを解析し、岩盤内に存在する亀裂帯や地層面の位置を解析するものである。
図4は、反射法探査の一例を説明するための図である。同図において、20は起振源であり、21は受振器である。
【0021】
起振源20は、地表下に弾性波を発振するための装置である。例えば、起振源20として、重錘落下装置、打撃装置、バイブレータなどが用いられる。重錘落下装置や打撃装置は、パルス状の衝撃波を発振することができる。重錘落下装置は、例えば、油圧インパクターによって、錘を地表に落下させ、P波(縦波)の発振が可能である。打撃装置は、加圧板に連結された打撃装置の角度を斜め方向に変更することでP波(縦波)とS波(横波)の発振が可能である。また、バイブレ−タは、例えば、大型トラックに積んだ油圧制御の振動板を地面に押し付けて人工的に地震を起こす装置である。このバイブレータは、振動数が連続変化するスイープ波を発振することが可能である。バイブレータは、振動を鉛直下方に発生させて主にP波を発振することが可能であり、また振動を水平方向に発生させてS波を発振することが可能である。
【0022】
なお、P波は、伝播速度が速く、また、発生させやすいという特徴がある。そのため、P波を用いた反射法探査は、深い地層までの調査に適している。また、S波は、P波と比較して、伝播速度が遅いという特徴がある。そのため、S波を用いた反射法探査は、岩盤内の詳細な状況の調査に適している。なお、S波を用いれば土木建造物の設計に必要なS波速度を直接知ることができるので、S波を用いた反射法探査は、土木建築物の構築の際の調査に適している。
【0023】
受振器21は、計測器として機能し、起振源20によって発振された弾性波の反射波を計測する。例えば、水平動2成分と上下動1成分の計3成分を観測可能な地震計等が用いられる。受振器21は、地表面の複数の箇所に分布させて配置される。
【0024】
図5は、反射法探査の他の一例を説明するための図である。この反射法探査では、探査孔31内に坑内受振器32をクレーン車33を介して吊下し、適宜深度にて反射波を受振する。そして検層車34や測定車35をもってデータ処理を行う構成となっている。受振器としては、水平動2成分と上下動1成分の計3成分を観測可能な地震計等が用いられる。なお、この探査孔31は、前述のボーリング調査によって形成された孔であっても良い。
【0025】
受振器21や受振器32で測定される反射波は、断層や節理などの亀裂部F(又は地層境界面C)からの多数の反射波が重ね合わされたかたちで地表G(もしくは探査抗31内)にて測定される。このような弾性波測定により、受振器21等が受信した反射波は、波形信号として増幅器などに伝送され、適宜レベルにまで増幅される。その後、輻輳する不要な波形を除去し、受振器21までの応答時間と弾性波速度とに基づいて反射面の存在位置を解析する。この処理においては、各種演算処理が解析装置などにより行われ、解析結果が解析装置に接続された表示装置に画面表示される。
【0026】
図6は、岩盤中に存在する亀裂集中部の分布と反射波との関係を説明するための図である。同図の左側には、岩盤内に存在する亀裂帯の分布のモデルが示されている。また、同図の右側には、各周波数における反射波のグラフが示されている。
【0027】
新鮮岩盤部における弾性波速度は、亀裂集中部における弾性波速度よりも速い。すなわち、亀裂集中部における弾性波速度と新鮮岩盤部における弾性波速度とでは弾性波速度が異なっている。このため、亀裂集中部と新鮮岩盤部との境界面に入射した弾性波は、反射される。したがって、受振器が測定したデータを解析し、弾性波の反射面の存在位置を解析すれば、亀裂集中部と新鮮岩盤部との境界面の存在位置が解析されるのである。
【0028】
なお、各周波数における反射波のグラフから分かる通り、弾性波の周波数が高くなると、グラフ中のピークが鋭くなり解像度が増すため、高い精度で境界面の存在位置を解析することができる。ただし、弾性波の周波数が高くなりすぎると、深い位置まで弾性波のエネルギーが到達できなくなり、深い位置の境界面の測定が困難となる。したがって、境界面の測定は、複数の周波数を利用して行うことが好ましい。
【0029】
図7は、本実施形態における反射法探査の際の測定の様子を説明するための説明図である。そして、本実施形態では、岩盤内に存在する複数の層の境界面の分布を解析するため、反射法探査によって、反射面の2次元情報および3次元情報を取得している。
【0030】
同図において、黒い印で示される21は、反射波を受信する受振器である。受振器21は、測定ライン上に複数個設置されている。そして、起振源となる油圧インパクターによって岩盤内に弾性波を発生させて、測定ラインを含む2次元平面内の反射面の分布を解析する。これにより、本実施形態では、平面距離70mの範囲で深度100mの岩盤内部の反射面の分布を解析している。
【0031】
さらに、本実施形態では、測定ラインが第1測定ラインから第8測定ラインまであるので、複数の2次元の反射情報を重ね合わせることによって、岩盤内の反射面の分布を3次元情報として解析することができる。ただし、受振器21をライン上(1次元的)に設置して2次元の情報を複数回に分けて取得するのではなく、はじめから受振器21を2次元的に設置して、岩盤内の反射面の分布を3次元情報として解析しても良い。
【0032】
また、本実施形態では、反射法探査によって、岩盤内の反射面の分布を解析している。本実施形態の反射法探査では、起振源となるバイブレータによって岩盤内に弾性波を発生させて、探査孔31を含む2次元平面内の反射面の分布を解析する。これにより、本実施形態では、平面距離200mの範囲で深度100mの岩盤内部の反射面の分布を解析している。
【0033】
図8は、反射面の2次元の解析結果の一例である。縦軸は深度を示しており、横軸は平面距離である。ここでは、平面距離200mの範囲について解析している。同図において、反射面40は色調の濃い帯となって表示されており、視覚的にも亀裂帯の存在を明らかにしている。亀裂帯評価を行う際にはこの反射面40を認識することで容易に亀裂帯の存在位置を推認・特定することが可能なのである。
【0034】
本実施形態では、反射法探査を行った範囲内に複数の反射面が存在している。そして、上述した通り、これらの反射面は、岩盤内に存在する複数の層の境界面(例えば、亀裂集中部と新鮮岩盤部との境界面)と考えられる。つまり、岩盤内の各層は、境界面の間に存在している。そのため、岩盤内の境界面の分布が把握できれば、岩盤内に存在する複数の層の分布を把握できる。特に、本実施形態では、反射面を3次元的に把握することができるので、岩盤内に存在する複数の層の3次元の分布を把握することができる。なお、本実施形態では、反射面はRQD値の変換点に相当していると考えている。
【0035】
<物性値の外挿(S121)>
図9は、反射法探査の結果に対して、ボーリング調査の結果(物性値)を外挿するときの説明図である。
同図において、左図は、反射面の分布についての説明図である。左図の白色の点線は、上述の反射法探査によって解析された反射面の分布を示している。反射法探査の結果によれば、この白色の点線において、RQD値が変化していると考えられる。
また、右図は、ボーリング調査の結果の説明図である。右図では、RQD値の変換点を基準に、各層が区分されている。なお、各層の物性値は、図3における表内の値が用いられる。本実施形態では、外挿する物性値は、前述のI値(=E×K×1000)である。しかし、外挿する物性値はI値に限られるものではなく、例えば、弾性係数や透水係数の一方であってもよい。
【0036】
例えば、本実施形態では、この沖積層の下の層(第1層)の物性値として、ボーリング調査によって取得された第1層の物性値の平均値が外挿される。つまり、反射法探査によって解析された第1層の物性値として、ボーリング調査によって取得された第1層の物性値を適用する。これにより、本実施形態では、反射法探査によって解析された第1層が、低いRQD値の層であるものとして、評価される。
【0037】
また、例えば、本実施形態では、第1層の下の層(第2層)の物性値として、ボーリング調査によって取得された第2層の物性値の平均値が外挿される。つまり、反射法探査によって解析された第2層の物性値として、ボーリング調査によって取得された第2層の物性値を適用する。これにより、本実施形態では、反射法探査によって解析された第2層が、高いRQD値の層であるものとして評価される。
【0038】
以下、同様の作業を繰り返し、反射法探査によって解析された各層の物性値として、ボーリング調査によって取得された物性値を適用する。ただし、同じ層内の物性値はほぼ同様であると考えられるので、反射法探査によって解析された層の物性値としてボーリング調査によって取得された物性値を適用すれば、実際の各層の物性値を推定することができる。
【0039】
反射法探査によって解析された層の物性値として、ボーリング調査結果のどの物性値を外挿するかの判断は、解析装置が自動的に行っても良いし、オペレータが解析装置に設けられた入力装置を介して解析装置に指示を与えて行っても良い。
【0040】
<物性分布の評価(S122)>
上記のように各層の物性値を外挿入すれば、各層の物性分布が把握できるので、岩盤全体の物性分布を評価することができる。特に、ボーリング調査によって各層の特性に関する情報を取得し、その情報を各層の3次元の分布情報(各層の分布の特性の情報でもある)に外挿すれば、岩盤全体の物性の特性を詳細に評価することができる。
図10は、解析された岩盤内の物性分布の出力画面である。この物性分布は、前述の本実施形態の岩盤の物性の評価方法によって解析されている。
【0041】
解析された3次元の物性分布の情報は、不図示の解析装置に設けられた表示装置(ディスプレイ)に表示される。物性の違いは、色分けによってディスプレイ上で表現される。表示装置には、3次元の調査範囲が直方体として表示されている。そして、その直方体の中に解析された物性分布が表示される。直方体内に描かれる物性分布は、3次元情報であるので、等高線を用いて表示することもできるし、陰影を付けて表示することもできる。これにより、岩盤内の構造が表現される。調査範囲内に複数の層が存在する場合、一つの直方体の中に、全ての層を表示しても良く、いずれか1つの層を表示しても良い。また、岩盤内の特定の層の物性分布を把握するため、任意の数の境界面を表示しても良い。また、図10のように、調査範囲を示す直方体を複数表示し、それぞれの直方体に任意の層の物性分布を表示しても良い。
【0042】
<本実施形態の概要>
以上まとめると、本実施形態の岩盤評価方法は、以下の工程を経ることによって達成されている。
(1)岩盤内に存在する複数の層(例えば、亀裂集中部と新鮮岩盤部(亀裂が少ない部分)など)のそれぞれの物性値(例えば、弾性係数、ポアソン比、P波速度、S波速度、減衰特性、異方性、透水係数など)を取得する取得工程。
(2)起振源(例えば、油圧インパクターやバイブレータなど)によって岩盤内に弾性波(P波又はS波)を発生させ、受振器によって反射波を測定し、弾性波の反射面を解析することによって、岩盤内部に存在する複数の層の分布を解析する解析工程。
(3)解析工程において解析された各層の物性値として、取得工程において取得した各層の物性値を適用し、岩盤の物性を評価する評価工程。
また、本実施形態の岩盤評価方法における上記の解析工程では、複数の層の分布を3次元情報として解析することを行っている。
【0043】
このような本実施形態の岩盤評価方法によれば、岩盤の物性評価の調査エリアが広範囲にわたる場合であっても、高い信頼性を確保しつつ、低コストにて行うことができる。
すなわち、本実施形態の岩盤の物性評価方法によれば、広範囲の調査にもかかわらず、ボーリングポイントを削減することができる。これにより、低コストをはかることができる。
また、本実施形態の岩盤の物性評価方法によれば、物性分布を評価する際に、直接的に取得した岩盤の物性値を利用している。これにより、高い信頼性を確保することができる。
また、本実施形態の岩盤の物性評価方法によれば、従来では困難であった岩盤内の物性分布の評価を行うことができる。
【0044】
<その他の実施形態>
以上、一実施形態に基づき、岩盤の物性評価方法を説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に係る岩盤の物性評価方法に含まれるものである。
【0045】
前述の実施形態によれば、ボーリングによって形成された掘削孔を利用し、ボアホールレーダーを用いて岩盤の性状を観察していた。しかし、ボーリング調査は、これに限られるものではない。例えば、コアサンプルを採取し、採取したコアサンプルから、岩盤の実際の亀裂状況を把握することもできる。これにより、コアサンプルの物性値(弾性係数、ポアソン比、P波速度、S波速度、減衰特性、異方性、透水係数など)を取得してもよい。また、ボーリング孔内に計測装置を挿入して、ボーリング孔壁の岩盤の物性値(弾性係数、透水係数など)を直接取得しても良い。
【0046】
また、前述の実施形態によれば、岩盤内の物性値を直接的に取得するため、ボーリング調査を行っていた。しかし、岩盤内に存在する複数の層の物性値を取得する他の方法を用いても良い。
【0047】
また、前述の実施形態によれば、反射法探査を行う範囲(受振器を配置する範囲)の外側にボーリング調査の孔が設けられていた。しかし、反射法探査を行う範囲とボーリング調査の孔との位置関係は、これに限られるものではない。例えば、反射法探査を行う範囲の内部にボーリング調査のための孔を設けてもよい。特に、反射法探査を行う範囲の中心部付近にボーリング調査のための孔を設けることが望ましい。
【0048】
また、前述の実施形態によれば、ボーリング調査のための孔は、1つだけであった。しかし、ボーリング調査は、1カ所で行うものに限られない。例えば、複数箇所にボーリング調査のための孔を形成してもよい。特に、複数箇所でボーリング調査を行えば、岩盤内の物性分布の評価を高精度に行うことができる。
【0049】
また、前述の実施形態によれば、岩盤内の層の分布を解析するために、反射法探査を行っていた。しかし、他の方法によって、弾性波を利用して岩盤内の層の分布を解析しても良い。特に、弾性波を発生させる方法は、油圧インパクターやバイブレータに限られるものではなく、他の起振源を用いて行っても良い。
【0050】
また、前述の実施形態によれば、岩盤の物性を評価するため、入力装置や表示装置が設けられた解析装置を用いていた。しかし、他の解析装置を用いて岩盤の物性を評価しても良い。特に、表示手段の表示方法は、前述の実施形態に限られるものではなく、他の表示方法を採用しても良い。
【0051】
【発明の効果】
本発明は、既に説明された実施形態の説明を通じて理解される通り、広範囲の岩盤物性評価を、高い信頼性を確保しつつ、低コストにて可能とする。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態の岩盤評価方法を説明するためのフロー図である。
【図2】本実施形態のボーリング調査によって得られた岩盤の物性値の入力画面である。
【図3】ボーリング調査によって測定された物性値を示すグラフである。
【図4】反射法探査の一例を説明するための図である。
【図5】反射法探査の他の一例を説明するための図である。
【図6】岩盤中に存在する亀裂集中部の分布と反射波との関係を説明するための図である。
【図7】本実施形態における反射法探査の際の測定の様子を説明するための説明図である。
【図8】反射面の2次元の解析結果の一例である。
【図9】本実施形態の反射法探査に対して、岩盤の物性の外挿方法を説明するための説明図である。
【図10】反射法探査によって解析された岩盤内の物性の3次元分布である。
【符号の説明】
20 起振源
21 受振器
31 探査抗
32 受振器
33 クレーン車
34 検層車
35 測定車
G  地表

Claims (2)

  1. 岩盤の物性を評価するための岩盤評価方法であって、
    岩盤内に存在する複数の層のそれぞれの物性値を取得する取得工程と、
    岩盤内に弾性波を発生させ、その反射波を利用して前記複数の層の分布を解析する解析工程と、
    前記解析工程において解析された各層の物性値として、前記取得工程において取得した各層の物性値を適用し、前記岩盤の物性を評価する評価工程と
    を有することを特徴とする岩盤評価方法。
  2. 請求項1に記載の岩盤評価方法であって、
    前記解析工程は、前記複数の層の分布を3次元情報として解析することを特徴とする岩盤評価方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2009052300A (ja) * 2007-08-28 2009-03-12 Chuo Kaihatsu Kk 地質構造調査システム及びその方法
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