JP2004133113A - 光合分波器 - Google Patents
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Abstract
【課題】低コストで耐熱性のある光合分波器を提供するものであるとともに、この光合分波器の作製方法を提供する。
【解決手段】ポリマ光導波路を用いることで低コスト化をはかり、ポリマ光導波路の屈折率温度依存性をなくすよう光導波路や基板のポリマを選択し、耐熱性のあるポリマの複屈折による偏波依存性の問題をTEモードとTMモードを分けて扱うことで解消する。
【選択図】 図1
【解決手段】ポリマ光導波路を用いることで低コスト化をはかり、ポリマ光導波路の屈折率温度依存性をなくすよう光導波路や基板のポリマを選択し、耐熱性のあるポリマの複屈折による偏波依存性の問題をTEモードとTMモードを分けて扱うことで解消する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、WDM(wavelength division multiplexer)(波長分割多重)用光合分波器のに関し、特にポリマ光導波路と回折格子を用いた低コストで分波特性の安定した光合分波器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インターネットの普及とともに、通信技術は著しく発展したが、この中の一つに波長多重光通信が存在する。この波長多重通信は、将来の大容量光通信システムを支える伝送方式として期待されているものであり、その実現が強く望まれているものである。
【0003】
波長多重通信によって、光ファイバ一本当たりの伝送容量が増え、伝送の大容量化が可能となる。また、光配線においても高速・高密度の配線を実現する技術として注目される。波長多重通信を実現するためには、各チャンネルの送信機を一本のファイバに束ねて、かつ、波長分離して各受信機に光信号を導く光合分波器が不可欠である。
光合分波器の中でも一本の光ファイバーで複数の信号を送ることを可能にするCWDMの需要の伸びが予測されている。これは光ファイバーを通ってくる1.3μmまたは1.5μm近傍の波長多重信号を、数十nm間隔で分波するものである。一般に、CWDMの特性としてクロストークが少なくかつ伝搬損失が少ないという分波特性が望まれる。また、常に良好な分波特性を得るためには温度変化、入射光の偏波の変化に対して、あまり特性が変化しないことも重要である。WDM用分波器としてはAWG(arrayed waveguide grating)(アレイ光導波路格子形光合分波器)が広く使われているが、分波特性が光源の波長変化に対して変りやすいので、分波の数は少ないが、波長による特性変化の少ないしかも低コストのCWDMが求められている。また、この分波器は、製造プロセス上の問題から、一般に、耐熱性がある材料を使うことが必要である。
【0004】
光合分波器として、石英を光導波路に用いたAWGが最も一般的であるが、コストが高いという問題と、コストを下げようとすると分波特性や耐熱性が悪化するという問題があった。コストを下げるためには、光導波路材料としてポリマを用い、製造コストを下げることが有効である。例えば,AWGの光導波路にアクリル系やシリコン系のポリマを使う試みがなされている。これらのポリマは、屈折率に温度依存性があるため、それを補償する必要がある。N.KEILらはAppl. Phys. B 73,619−622(2001) に、温度無依存のAWGを、フッ化アクリレートの光導波路とポリマ基板を用いて実現したことを報告している。この報告では偏波依存性のないフッ化アクリレートを用いて、基板と光導波路の温度特性を調整している。
一方、AWGに関し、特開2001−83339では、屈折率温度変化の符号が異なる二種類のポリマで温度変化を互いに打ち消すことによって見かけ上の屈折率の温度依存性をなくしている。しかし、これらのポリマ材料は、半導体プロセスに耐える耐熱性がない。一方、耐熱性のある材料は複屈折率が大きく分波特性が悪い。
【0005】
耐熱性のある材料として、ポリイミドに代表される、芳香族複素環高分子を用いる必要性がある。ところが、芳香族複素環高分子は一般に、複屈折率が大きいので、TEモードとTMモードで光路差が大きくなり、このままでは分波特性の悪化をまねく。
【0006】
複屈折の解決方法として、回折格子を用いた分波でなく、波長フィルタを用いて分波する方法がある。この方法では、分波特性の温度依存性や偏波依存性をあまり考慮しなくてよい。しかし、分波の数が4以上に増えると製造プロセスが煩雑になり高コストになるという欠点があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
以上詳述したように、従来の光合分波器においては、石英光導波路を用い、それを加工していたためにコストが高く、他方、低コスト化のために用いたポリマは、耐熱性、屈折率温度依存性、複屈折による偏波依存性の三つの問題を同時には解決できていなかった。つまり、従来は偏波依存性をなくすために複屈折率を抑えた材料を用いていたため、耐熱性がなかった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、低コストで分波特性の良い光合分波器を提供することを目的としている。
【0009】
【問題を解決するための手段】
上述のように、低コストでありかつ耐熱性であるという両方の特性を満足する材料は少ない。耐熱性のポリマ材料はこの二つの特性を満たすが、偏波依存性、温度依存性の問題を解決する必要がある。温度依存性に関しては、すでに述べたようにAppl. Phys. B 73,619−622(2001) や特開2001−83339に記載された方法で解決できる。他方、偏波依存性に関しては、光導波路を通過したり、回折格子で反射・回折したりしても、TEモードがTMモードと混合することはないという知見に基づき、以下のような方法で解決した。
解決手段1)入射側の偏波を分けて違う場所から入射させる。
解決手段2)入射側の偏波を固定する。
解決手段3)TEモードとTMモードで異なる信号とし、出射側で信号を受ける光導波路を別にする。
これらの方法と、基板と従来の光導波路の温度特性を調整する方法を組み合わせることで耐熱性のあるポリマ材料で安価に光導波路を作製することができる。
【0010】
本発明は以下の光合分波器を提供するものである。
(1)複屈折を持つポリマを材料とするチャンネル光導波路およびスラブ光導波路を光の経路とし、分光や集光を目的とする回折格子を使用した光合分波器において、回折格子に入射する一つの光信号の偏波を固定するか、または、信号の検出が偏波に依存しないようにしたことを特徴とする、温度無依存の光合分波器。
(2)スラブ光導波路の中央部でTMモードとTEモードを入れ替えることを目的とした波長板を使用したことを特徴とする上記1記載の光合分波器。
(3)スラブ光導波路の屈折率温度依存性を調整することで、温度無依存にしたことを特徴とする上記1又は2記載の光合分波器。
(4)分波特性を温度無依存にするために、光導波路の屈折率の温度変化が、光導波路基板の膨張で打ち消されるように膨張係数を調整したことを特徴とする上記1〜3のいずれか1項記載の光合分波器。
【0011】
(5)分波特性を温度無依存にするために2種以上の屈折率の温度変化を持つ材料をポリマ光導波路に使用したことを特徴とする上記1〜3のいずれか1項記載の光合分波器。
(6)TEモードとTMモードで入射側の偏波を分けて、光導波路からスラブ光導波路に入るところで、それぞれ異なる場所から入射させるようにしたことを特徴とする上記1、3〜5のいずれか1項記載の光合分波器。
(7)TEモードとTMモードで入射側の偏波を分けるために、光導波路型上記を用いたことを特徴とする上記1、3ないし5記載の光合分波器
(8)TEモードとTMモードで入射側の偏波を分けるために、偏波依存性フィルタを用いたことを特徴とする上記1、3〜5のいずれか1項記載の光合分波器。
(9)入射側の偏波を固定するようにしたことを特徴とする上記1、3〜5のいずれか1項記載の光合分波器。
【0012】
(10)光導波路への入射光がTEモードかTMモードかで、出射側の光導波路の受け口を別にする上記1、3〜5のいずれか1項記載の光合分波器。
(11)複屈折を持つポリマが250℃以上のガラス転移温度を持つことを特徴とする上記1〜9のいずれか1項記載の光合分波器。
(12)光導波路のTEモードとTMモードでポリマの屈折率差が0.002以上であることを特徴とする上記1〜10のいずれか1項記載の光合分波器。
(13)回折格子が分光と集光を同時にできるように、格子周期が単調に短くあるいは長くなることを特徴とする上記1〜11のいずれか1項記載の光合分波器。
(14)回折格子を反射型にするために、表面を金属または誘電率1.6以上の誘電体で覆ったことを特徴とする上記1〜12のいずれか1項記載の光合分波器。
【0013】
【発明の実施の形態】
請求項1の複屈折を持つポリマは融点及び熱分解温度が200℃以上の耐熱性の高分子であることが望ましい。このようなポリマとしては、芳香族複素環ポリマが一般的である。これは、ポリイミド、マレインイミドやポリフェニルキノキサリン、ポリオキシジアゾール、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリチアゾール及びそれらの置換体、それらの位置異性体、それらの元素置換体から構成される高分子である。
【0014】
この分波器は例えば図1に示したようにチャンネル光導波路12、18およびスラブ光導波路14、16、透過型回折格子22で構成されている。チャンネル光導波路12、18のコア径は、5〜50μm、光導波路のコア材料の屈折率は1.5〜1.6、スラブ光導波路14、16の長さは0.2〜1cm、チャンネル光導波路12、18の長さは、0.1〜1cmが好ましい。
また、回折格子22は、平面または曲面に光を回折できる溝や屈折率分布のある、光信号を分光または集光することが可能な、光学素子である。回折格子22は望ましくは表面レリーフ型ホログラムであり、周期は0.9〜3μm、深さは0.2〜5μmが好ましい。
【0015】
光合分波器とは合波器または分波器として使用できる機器である。
一つの信号の偏波を固定するとは、スラブ光導波路に入射する信号をTEモードだけあるいはTMモードだけにするか、それぞれのモードを別の信号として扱うことを意味する。
また、ここでいう温度無依存とは、分波の波長間隔をxnmとするとき、温度変化がx/1000(nm/K)以下であるような分波特性である。
【0016】
請求項2のように波長板を用いることで、TMモードとTEモードを入れ替え、複屈折の影響をなくすことができる。
図3のような透過型回折格子であれば、1/2波長板を用い、中央の回折格子22に並べる。このとき、入射側光導波路24の光路の長さliと出射側光導波路26の光路の長さloを同じくらいにする。図8のような反射型回折格子であれば、1/4波長板を回折格子60の前に配置し、往復で1/2波長となるようにする。このとき、入射側スラブ光導波路24の光路の長さliと出射側スラブ光導波路26の光路の長さloを同じくらいにする。
【0017】
請求項3、4、5のようにすることで、安価に温度無依存の分波特性を得ることができる。ここでいう温度無依存とは、分波の波長間隔をxnmとするとき、温度変化がx/1000(nm/K)以下であるような分波特性である。分波の波長間隔が10nm以上であれば、特に何もしなくとも温度無依存であるが、分波の波長間隔が5nm以下になると、屈折率温度依存性の対策が必要になる。
請求項4では、図2に示したように光導波路のコアの屈折率が温度上昇で大きくなるものを、光導波路基板には温度上昇で膨張するものを用いることができる。具体的には基板の熱膨張係数αsubと光導波路の有効屈折率ncの温度Tに対する依存性を(1)式のdnc/dT(熱光学定数)のように設定することで可能となる。
nc・αsub = −dnc/dT ・・・(1)
この原理は文献Appl. Phys. B73,619−622(2001)に詳しく述べられている。コア材料としては、例えば、OPI(フッ素化ポリイミド)が使える。dnc/dTは−15ppm/Kである。(1)式より、このとき基板材料の膨張率は、屈折率ncが1.5のときは10ppm/Kとなる必要がある。このような基板材料としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と2、5−ジアミノピリジンの共重合体が使用できる。
【0018】
請求項5は屈折率温度依存性の異なる二種類の材料を使うことで光導波路における集光点を温度に対して不変にするものである。例えば、図3のように透過型の回折格子22を用いた分光を考える。屈折率温度変化がΔnを
Δno・sinθo = Δni・sinθi ・・・(2)
となるようにすれば、y軸方向(上下方向)の集光位置を温度によらず一定にできる。ここで、Δni、Δnoはそれぞれ、入射側の光導波路屈折率の温度変化、出射側の光導波路屈折率の温度変化である。θi、θoはそれぞれ、回折格子への入射角、回折格子からの出射角である。θi、θoを適当に設定することにより、(2)式を成立させることができる。(2)式は次の回折角の関係式から導かれる。λを波長、dを回折格子の周期として、一次の回折角について一般に、
no・sinθo − ni・sinθi = λ/d ・・・(3)
である。
回折格子22を温度依存性の小さい誘電体でコートし、dが温度に依存しないようにする。与式の両辺を温度Tで微分すると(2)式が導かれる。出射側のコア材としては、4、4’−ジアミノビフェニルと3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸無水物の共重合体(Δno=1.4ppm/K)を、それに対応する入射側のコア材としてはピロメリット酸無水物と4、4’−ビス(4−アミノベンゾアミド)−3,3’−ジメチルビフェニルの共重合体(Δni=−0.23ppm/K)を使う。このとき、θo=5°、θi=31.5°であればよい。
【0019】
また、屈折率温度変化を
Δni/Δno = −ni・ni・li/(no・no・lo) ・・・(4)
とすれば、x軸方向(左右方向)の集光位置は温度によらず一定にできる。ここで、li、loはそれぞれ、光導波路入射端から回折格子中心までの光路の長さ、回折格子中心から光導波路出射端までの光路の長さである。(4)式の条件にあてはまるようなlo、liを設定すればよい。これは次の焦点距離の関係式から導かれる。回折格子の焦点距離をfとして、
1/f = 1/(ni・li) + 1/(no・lo) ・・・(5)
回折格子のピッチは温度変化せず焦点距離fは一定であるとする。また、基板の熱膨張を抑えることで、li、loは温度によらないとする。このとき、両辺を温度Tで微分すると(4)式が導かれる。
【0020】
請求項6のようにすることで、図4に示したようにTEモードとTMモードの出射側集光点の位置を同じにできる。TEモードとTMモードの出射端の間隔は10〜50μmが好ましい。
【0021】
請求項7、8のようにすることで、TEモードとTMモードを分離することができる。
請求項7の光合分波器は、TEモードとTMモードで入射側の偏波を分離するための光導波路型偏波分離素子を有する。この光導波路型偏波分離素子は、例えば、図5に示すように結合層42をはさんで、二つの光導波路40a、40bを平行に並べたものである。片方の光導波路にTMモード、TEモードの混じった光を伝搬させると、光が伝搬するとともにモードが移動するが、その移動速度がモードによって違うため、TMとTEのモードの分離が可能となる。
このようにして、例えば、左側の光導波路にTEモード、右側の光導波路にTMモードが導波するようにできる。このとき、二つのコア40a、40b間の距離は1〜5μm、チャンネル光導波路の長さは10〜30mmが好ましい。
【0022】
請求項8の偏波依存性フィルタ(偏光分離機能を有する薄板型素子)46は図6に示すように光導波路44に対して斜めに配置し、TEモードとTMモードを分離する。偏波依存性フィルタ46は例えば、TMモードだけを反射し、TEモードを透過させることができる。反射したTMモードの光は鏡48で反射されて、TEモードと同じ方向に出射する。
【0023】
請求項9のように入射側の偏波をTEモードかTMモードで固定することで、安定した分波特性を得ることができる。これは、光導波路チャンネルに信号を入れる光ファイバとして偏波面保存光ファイバを用いるか、図7のようにレーザーダイオード58から直接光導波路12に入射させることで実現できる。波長を変えたレーザー光源を並列につなぐことで、偏波を固定し、偏波依存性を回避するものである。
【0024】
請求項10のように偏波を分離することで、各偏波で別の信号を送ることができる。また、TEモードとTMモードの両方に対応したチャンネルで受けた信号を合波して検出すれば、入射光の偏波によらない信号検出も可能である。ただし、TMモードとTEモードの屈折率の違いによる光路差を考慮して光導波路の設計をする必要がある。TEとTMの屈折率をそれぞれne、nmとしたとき、(ne−nm)/(ne+nm)=0.5% のときには、TEとTMの光路長の違いは0.25%である。スラブ光導波路の光路長が10mmのときは、この違いは25μmである。この分の光路差を出射側および入射側チャンネル光導波路の光路長で調整する必要がある。
【0025】
請求項11のように耐熱性を持った材料を使えば、はんだ付けのような半導体プロセスにも耐えられる光合分波器ができる。これにより、光源となるレーザーダイオードや受光素子のフォトダイオードを同一基板上に載せることができる。
【0026】
請求項12のように複屈折が存在することで、回折格子による集光点の位置をTEモードとTMモードで分ける事ができ、それぞれに対応したチャンネル光導波路を設けることによって、偏光の違う信号を別々に検出できる。
【0027】
請求項13のようにすることでレンズが不要となり、光学系が簡単になるので製造コストを下げることができる。
【0028】
請求項14のようにすることで反射型の回折格子で分波することができる。これは、図8に示したように斜めから入射光10を入れ、回折格子60で反射することで、透過型の場合と比較して光導波路部分が折り返した形になるので、光学素子のサイズを小さくすることができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態を説明する。
【0030】
ポリマ光導波路を透過型平面回折格子に用いた場合である。透過型のポリマ光導波路は図3に示したようになる。入射側スラブ光導波路24の材料はNTTのFLUPI−10(フッ素化ポリイミド)を用い、出射側スラブ光導波路26の材料は日立化成工業のOPI(品番N3265:フッ素化ポリイミド)を用いた。熱光学定数は、それぞれ、1.3ppm/K、−15ppm/Kであるので、θoは−0.9°、θiは30°である。入射光10の波長は、λ1:1300nmとλ2:1340nmであり、それぞれの波長に光導波路のTEモードとTMモードの偏波がある。信号は計4波である。
【0031】
入射光10はチャンネル光導波路12を出るとスラブ光導波路24中で拡散する。回折格子22を通った後、スラブ光導波路26中で集光して4本あるチャンネルのうちの一つに入る。この4つのチャンネルが各波長・偏波に対応する。光導波路の作製は露光とRIE(Reactive Ion Etching)で行った。回折格子22の位置合わせは、出射光が出射側の回折格子に入るのをモニターしながら、回折格子22の位置をずらすことで行った。TMモードでみると1300nmと1340nmの回折のなす角度は、1°である。TEモードのスラブ光導波路の実効屈折率が1.551、TMモードのスラブ光導波路の実効屈折率が1.527である。
【0032】
入射光の波長をλ、入射角をθi、出射角をθo(但しθi>θo)、スラブ光導波路のコア屈折率をn、回折格子の中心の周期をpとすると、
θo = sin−1[λ/(n・p) − sinθi] ・・・(6)
となる。出射角が同じなら屈折率が増加すると、見かけ上、分波される波長λが長くなるように見える。屈折率の変化を波長の変化に置き換えると、TEモードはTMモードよりも屈折率が大きいので、20nmだけ波長が長くなった1320nmの光の位置で集光する。したがって、1300、1320、1340、1360nmのTMモードでみた光の集光点にチャンネル光導波路18を設置することで分波ができる。この様子をλ1:1300nm、λ2:1340nmとして、図9に模式的に示した。4つに分波された光は、それぞれCH1からCH4に入る。TEモードとTMモードの入射光と出射光を測定した結果、隣接するチャンネル間のクロストークは6dB、各チャンネルの出射光に対する入射光の平均伝搬損失は12dBを達成した。また、温度を20℃から60℃まで変化させたとき集光点は波長に換算して、わずか0.1nmだけ移動した。
【0033】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を説明する。ポリマ光導波路を反射型平面回折格子に用いた場合である。光導波路のコアには日立化成工業のOPIを用いた。また、光導波路基板には、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と2,5−ジアミノピリジンの共重合体を用いた。反射型のポリマ光導波路は図8に示したようになる。入射光10の波長は、1300nmと1340nmであり、それぞれの波長に光導波路のTEモードとTMモードの偏波がある。信号は計4波である。入射光10はチャンネル光導波路12を出るとスラブ光導波路26中で拡散する。反射型回折格子60で反射・分光した後、スラブ光導波路26中で集光して4本あるチャンネルのうちの一つに入る。この4つのチャンネルが各波長・偏波に対応する。作り方は透過型と同じである。反射型回折格子60は回折格子表面にAlを蒸着させて作る。隣接チャンネル間の平均クロストークは13dB、各チャンネルの入射光10に対する出射光20の平均伝搬損失は9dBを達成した。また、温度を20℃から60℃まで変化させたとき集光点は波長に換算して、わずか0.1nmだけ移動した。
【図面の簡単な説明】
【図1】透過型回折格子を用いた光合分波器の構成図である。
【図2】光導波路の屈折率の温度変化と光導波路基板の膨張を示す説明図である。
【図3】2種の屈折率温度変化を持つポリマの配置を示す構成図である。
【図4】TEモードとTMモードの偏波を分離してから入射する光導波路の説明図である。
【図5】TEモードとTMモードの偏波を分離する分波器の断面図である。
【図6】TEモードとTMモードの偏波を分離する分波器の説明図である。
【図7】入射する偏波を固定する分波器の説明図である。
【図8】反射型回折格子を用いた光合分波器の構成図である。
【図9】分波器によるλ1、λ2、TEモード、TMモードの分波を示す説明図である。
【符号の説明】
θ は、光がホログラムによって回折されて出射する回折光の出射角度。
10: 入射光
12: 入射側チャンネル光導波路
14: 入射側スラブ光導波路中光路
16: 出射側スラブ光導波路中光路
18: 出射側チャンネル光導波路
20: 出射光
22: 回折格子
24: 入射側スラブ光導波路
26: 出射側スラブ光導波路
28: クラッド
30: コア
32: 基板
34: 偏波制御器
36: 基板
38: 上部クラッド
40a: 左側の光導波路のコア
40b: 右側の光導波路のコア
42: 結合層
44: チャンネル光導波路
46: 偏光分離機能を有する薄板型素子
48: 鏡
50: TEモードとTMモードの混じった入射光
52: 偏波が分離された出射光
54: 入射端
56: 出射端
58: レーザーダイオード
60: 反射型回折格子
【発明の属する技術分野】
本発明は、WDM(wavelength division multiplexer)(波長分割多重)用光合分波器のに関し、特にポリマ光導波路と回折格子を用いた低コストで分波特性の安定した光合分波器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インターネットの普及とともに、通信技術は著しく発展したが、この中の一つに波長多重光通信が存在する。この波長多重通信は、将来の大容量光通信システムを支える伝送方式として期待されているものであり、その実現が強く望まれているものである。
【0003】
波長多重通信によって、光ファイバ一本当たりの伝送容量が増え、伝送の大容量化が可能となる。また、光配線においても高速・高密度の配線を実現する技術として注目される。波長多重通信を実現するためには、各チャンネルの送信機を一本のファイバに束ねて、かつ、波長分離して各受信機に光信号を導く光合分波器が不可欠である。
光合分波器の中でも一本の光ファイバーで複数の信号を送ることを可能にするCWDMの需要の伸びが予測されている。これは光ファイバーを通ってくる1.3μmまたは1.5μm近傍の波長多重信号を、数十nm間隔で分波するものである。一般に、CWDMの特性としてクロストークが少なくかつ伝搬損失が少ないという分波特性が望まれる。また、常に良好な分波特性を得るためには温度変化、入射光の偏波の変化に対して、あまり特性が変化しないことも重要である。WDM用分波器としてはAWG(arrayed waveguide grating)(アレイ光導波路格子形光合分波器)が広く使われているが、分波特性が光源の波長変化に対して変りやすいので、分波の数は少ないが、波長による特性変化の少ないしかも低コストのCWDMが求められている。また、この分波器は、製造プロセス上の問題から、一般に、耐熱性がある材料を使うことが必要である。
【0004】
光合分波器として、石英を光導波路に用いたAWGが最も一般的であるが、コストが高いという問題と、コストを下げようとすると分波特性や耐熱性が悪化するという問題があった。コストを下げるためには、光導波路材料としてポリマを用い、製造コストを下げることが有効である。例えば,AWGの光導波路にアクリル系やシリコン系のポリマを使う試みがなされている。これらのポリマは、屈折率に温度依存性があるため、それを補償する必要がある。N.KEILらはAppl. Phys. B 73,619−622(2001) に、温度無依存のAWGを、フッ化アクリレートの光導波路とポリマ基板を用いて実現したことを報告している。この報告では偏波依存性のないフッ化アクリレートを用いて、基板と光導波路の温度特性を調整している。
一方、AWGに関し、特開2001−83339では、屈折率温度変化の符号が異なる二種類のポリマで温度変化を互いに打ち消すことによって見かけ上の屈折率の温度依存性をなくしている。しかし、これらのポリマ材料は、半導体プロセスに耐える耐熱性がない。一方、耐熱性のある材料は複屈折率が大きく分波特性が悪い。
【0005】
耐熱性のある材料として、ポリイミドに代表される、芳香族複素環高分子を用いる必要性がある。ところが、芳香族複素環高分子は一般に、複屈折率が大きいので、TEモードとTMモードで光路差が大きくなり、このままでは分波特性の悪化をまねく。
【0006】
複屈折の解決方法として、回折格子を用いた分波でなく、波長フィルタを用いて分波する方法がある。この方法では、分波特性の温度依存性や偏波依存性をあまり考慮しなくてよい。しかし、分波の数が4以上に増えると製造プロセスが煩雑になり高コストになるという欠点があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
以上詳述したように、従来の光合分波器においては、石英光導波路を用い、それを加工していたためにコストが高く、他方、低コスト化のために用いたポリマは、耐熱性、屈折率温度依存性、複屈折による偏波依存性の三つの問題を同時には解決できていなかった。つまり、従来は偏波依存性をなくすために複屈折率を抑えた材料を用いていたため、耐熱性がなかった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、低コストで分波特性の良い光合分波器を提供することを目的としている。
【0009】
【問題を解決するための手段】
上述のように、低コストでありかつ耐熱性であるという両方の特性を満足する材料は少ない。耐熱性のポリマ材料はこの二つの特性を満たすが、偏波依存性、温度依存性の問題を解決する必要がある。温度依存性に関しては、すでに述べたようにAppl. Phys. B 73,619−622(2001) や特開2001−83339に記載された方法で解決できる。他方、偏波依存性に関しては、光導波路を通過したり、回折格子で反射・回折したりしても、TEモードがTMモードと混合することはないという知見に基づき、以下のような方法で解決した。
解決手段1)入射側の偏波を分けて違う場所から入射させる。
解決手段2)入射側の偏波を固定する。
解決手段3)TEモードとTMモードで異なる信号とし、出射側で信号を受ける光導波路を別にする。
これらの方法と、基板と従来の光導波路の温度特性を調整する方法を組み合わせることで耐熱性のあるポリマ材料で安価に光導波路を作製することができる。
【0010】
本発明は以下の光合分波器を提供するものである。
(1)複屈折を持つポリマを材料とするチャンネル光導波路およびスラブ光導波路を光の経路とし、分光や集光を目的とする回折格子を使用した光合分波器において、回折格子に入射する一つの光信号の偏波を固定するか、または、信号の検出が偏波に依存しないようにしたことを特徴とする、温度無依存の光合分波器。
(2)スラブ光導波路の中央部でTMモードとTEモードを入れ替えることを目的とした波長板を使用したことを特徴とする上記1記載の光合分波器。
(3)スラブ光導波路の屈折率温度依存性を調整することで、温度無依存にしたことを特徴とする上記1又は2記載の光合分波器。
(4)分波特性を温度無依存にするために、光導波路の屈折率の温度変化が、光導波路基板の膨張で打ち消されるように膨張係数を調整したことを特徴とする上記1〜3のいずれか1項記載の光合分波器。
【0011】
(5)分波特性を温度無依存にするために2種以上の屈折率の温度変化を持つ材料をポリマ光導波路に使用したことを特徴とする上記1〜3のいずれか1項記載の光合分波器。
(6)TEモードとTMモードで入射側の偏波を分けて、光導波路からスラブ光導波路に入るところで、それぞれ異なる場所から入射させるようにしたことを特徴とする上記1、3〜5のいずれか1項記載の光合分波器。
(7)TEモードとTMモードで入射側の偏波を分けるために、光導波路型上記を用いたことを特徴とする上記1、3ないし5記載の光合分波器
(8)TEモードとTMモードで入射側の偏波を分けるために、偏波依存性フィルタを用いたことを特徴とする上記1、3〜5のいずれか1項記載の光合分波器。
(9)入射側の偏波を固定するようにしたことを特徴とする上記1、3〜5のいずれか1項記載の光合分波器。
【0012】
(10)光導波路への入射光がTEモードかTMモードかで、出射側の光導波路の受け口を別にする上記1、3〜5のいずれか1項記載の光合分波器。
(11)複屈折を持つポリマが250℃以上のガラス転移温度を持つことを特徴とする上記1〜9のいずれか1項記載の光合分波器。
(12)光導波路のTEモードとTMモードでポリマの屈折率差が0.002以上であることを特徴とする上記1〜10のいずれか1項記載の光合分波器。
(13)回折格子が分光と集光を同時にできるように、格子周期が単調に短くあるいは長くなることを特徴とする上記1〜11のいずれか1項記載の光合分波器。
(14)回折格子を反射型にするために、表面を金属または誘電率1.6以上の誘電体で覆ったことを特徴とする上記1〜12のいずれか1項記載の光合分波器。
【0013】
【発明の実施の形態】
請求項1の複屈折を持つポリマは融点及び熱分解温度が200℃以上の耐熱性の高分子であることが望ましい。このようなポリマとしては、芳香族複素環ポリマが一般的である。これは、ポリイミド、マレインイミドやポリフェニルキノキサリン、ポリオキシジアゾール、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリチアゾール及びそれらの置換体、それらの位置異性体、それらの元素置換体から構成される高分子である。
【0014】
この分波器は例えば図1に示したようにチャンネル光導波路12、18およびスラブ光導波路14、16、透過型回折格子22で構成されている。チャンネル光導波路12、18のコア径は、5〜50μm、光導波路のコア材料の屈折率は1.5〜1.6、スラブ光導波路14、16の長さは0.2〜1cm、チャンネル光導波路12、18の長さは、0.1〜1cmが好ましい。
また、回折格子22は、平面または曲面に光を回折できる溝や屈折率分布のある、光信号を分光または集光することが可能な、光学素子である。回折格子22は望ましくは表面レリーフ型ホログラムであり、周期は0.9〜3μm、深さは0.2〜5μmが好ましい。
【0015】
光合分波器とは合波器または分波器として使用できる機器である。
一つの信号の偏波を固定するとは、スラブ光導波路に入射する信号をTEモードだけあるいはTMモードだけにするか、それぞれのモードを別の信号として扱うことを意味する。
また、ここでいう温度無依存とは、分波の波長間隔をxnmとするとき、温度変化がx/1000(nm/K)以下であるような分波特性である。
【0016】
請求項2のように波長板を用いることで、TMモードとTEモードを入れ替え、複屈折の影響をなくすことができる。
図3のような透過型回折格子であれば、1/2波長板を用い、中央の回折格子22に並べる。このとき、入射側光導波路24の光路の長さliと出射側光導波路26の光路の長さloを同じくらいにする。図8のような反射型回折格子であれば、1/4波長板を回折格子60の前に配置し、往復で1/2波長となるようにする。このとき、入射側スラブ光導波路24の光路の長さliと出射側スラブ光導波路26の光路の長さloを同じくらいにする。
【0017】
請求項3、4、5のようにすることで、安価に温度無依存の分波特性を得ることができる。ここでいう温度無依存とは、分波の波長間隔をxnmとするとき、温度変化がx/1000(nm/K)以下であるような分波特性である。分波の波長間隔が10nm以上であれば、特に何もしなくとも温度無依存であるが、分波の波長間隔が5nm以下になると、屈折率温度依存性の対策が必要になる。
請求項4では、図2に示したように光導波路のコアの屈折率が温度上昇で大きくなるものを、光導波路基板には温度上昇で膨張するものを用いることができる。具体的には基板の熱膨張係数αsubと光導波路の有効屈折率ncの温度Tに対する依存性を(1)式のdnc/dT(熱光学定数)のように設定することで可能となる。
nc・αsub = −dnc/dT ・・・(1)
この原理は文献Appl. Phys. B73,619−622(2001)に詳しく述べられている。コア材料としては、例えば、OPI(フッ素化ポリイミド)が使える。dnc/dTは−15ppm/Kである。(1)式より、このとき基板材料の膨張率は、屈折率ncが1.5のときは10ppm/Kとなる必要がある。このような基板材料としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と2、5−ジアミノピリジンの共重合体が使用できる。
【0018】
請求項5は屈折率温度依存性の異なる二種類の材料を使うことで光導波路における集光点を温度に対して不変にするものである。例えば、図3のように透過型の回折格子22を用いた分光を考える。屈折率温度変化がΔnを
Δno・sinθo = Δni・sinθi ・・・(2)
となるようにすれば、y軸方向(上下方向)の集光位置を温度によらず一定にできる。ここで、Δni、Δnoはそれぞれ、入射側の光導波路屈折率の温度変化、出射側の光導波路屈折率の温度変化である。θi、θoはそれぞれ、回折格子への入射角、回折格子からの出射角である。θi、θoを適当に設定することにより、(2)式を成立させることができる。(2)式は次の回折角の関係式から導かれる。λを波長、dを回折格子の周期として、一次の回折角について一般に、
no・sinθo − ni・sinθi = λ/d ・・・(3)
である。
回折格子22を温度依存性の小さい誘電体でコートし、dが温度に依存しないようにする。与式の両辺を温度Tで微分すると(2)式が導かれる。出射側のコア材としては、4、4’−ジアミノビフェニルと3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸無水物の共重合体(Δno=1.4ppm/K)を、それに対応する入射側のコア材としてはピロメリット酸無水物と4、4’−ビス(4−アミノベンゾアミド)−3,3’−ジメチルビフェニルの共重合体(Δni=−0.23ppm/K)を使う。このとき、θo=5°、θi=31.5°であればよい。
【0019】
また、屈折率温度変化を
Δni/Δno = −ni・ni・li/(no・no・lo) ・・・(4)
とすれば、x軸方向(左右方向)の集光位置は温度によらず一定にできる。ここで、li、loはそれぞれ、光導波路入射端から回折格子中心までの光路の長さ、回折格子中心から光導波路出射端までの光路の長さである。(4)式の条件にあてはまるようなlo、liを設定すればよい。これは次の焦点距離の関係式から導かれる。回折格子の焦点距離をfとして、
1/f = 1/(ni・li) + 1/(no・lo) ・・・(5)
回折格子のピッチは温度変化せず焦点距離fは一定であるとする。また、基板の熱膨張を抑えることで、li、loは温度によらないとする。このとき、両辺を温度Tで微分すると(4)式が導かれる。
【0020】
請求項6のようにすることで、図4に示したようにTEモードとTMモードの出射側集光点の位置を同じにできる。TEモードとTMモードの出射端の間隔は10〜50μmが好ましい。
【0021】
請求項7、8のようにすることで、TEモードとTMモードを分離することができる。
請求項7の光合分波器は、TEモードとTMモードで入射側の偏波を分離するための光導波路型偏波分離素子を有する。この光導波路型偏波分離素子は、例えば、図5に示すように結合層42をはさんで、二つの光導波路40a、40bを平行に並べたものである。片方の光導波路にTMモード、TEモードの混じった光を伝搬させると、光が伝搬するとともにモードが移動するが、その移動速度がモードによって違うため、TMとTEのモードの分離が可能となる。
このようにして、例えば、左側の光導波路にTEモード、右側の光導波路にTMモードが導波するようにできる。このとき、二つのコア40a、40b間の距離は1〜5μm、チャンネル光導波路の長さは10〜30mmが好ましい。
【0022】
請求項8の偏波依存性フィルタ(偏光分離機能を有する薄板型素子)46は図6に示すように光導波路44に対して斜めに配置し、TEモードとTMモードを分離する。偏波依存性フィルタ46は例えば、TMモードだけを反射し、TEモードを透過させることができる。反射したTMモードの光は鏡48で反射されて、TEモードと同じ方向に出射する。
【0023】
請求項9のように入射側の偏波をTEモードかTMモードで固定することで、安定した分波特性を得ることができる。これは、光導波路チャンネルに信号を入れる光ファイバとして偏波面保存光ファイバを用いるか、図7のようにレーザーダイオード58から直接光導波路12に入射させることで実現できる。波長を変えたレーザー光源を並列につなぐことで、偏波を固定し、偏波依存性を回避するものである。
【0024】
請求項10のように偏波を分離することで、各偏波で別の信号を送ることができる。また、TEモードとTMモードの両方に対応したチャンネルで受けた信号を合波して検出すれば、入射光の偏波によらない信号検出も可能である。ただし、TMモードとTEモードの屈折率の違いによる光路差を考慮して光導波路の設計をする必要がある。TEとTMの屈折率をそれぞれne、nmとしたとき、(ne−nm)/(ne+nm)=0.5% のときには、TEとTMの光路長の違いは0.25%である。スラブ光導波路の光路長が10mmのときは、この違いは25μmである。この分の光路差を出射側および入射側チャンネル光導波路の光路長で調整する必要がある。
【0025】
請求項11のように耐熱性を持った材料を使えば、はんだ付けのような半導体プロセスにも耐えられる光合分波器ができる。これにより、光源となるレーザーダイオードや受光素子のフォトダイオードを同一基板上に載せることができる。
【0026】
請求項12のように複屈折が存在することで、回折格子による集光点の位置をTEモードとTMモードで分ける事ができ、それぞれに対応したチャンネル光導波路を設けることによって、偏光の違う信号を別々に検出できる。
【0027】
請求項13のようにすることでレンズが不要となり、光学系が簡単になるので製造コストを下げることができる。
【0028】
請求項14のようにすることで反射型の回折格子で分波することができる。これは、図8に示したように斜めから入射光10を入れ、回折格子60で反射することで、透過型の場合と比較して光導波路部分が折り返した形になるので、光学素子のサイズを小さくすることができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態を説明する。
【0030】
ポリマ光導波路を透過型平面回折格子に用いた場合である。透過型のポリマ光導波路は図3に示したようになる。入射側スラブ光導波路24の材料はNTTのFLUPI−10(フッ素化ポリイミド)を用い、出射側スラブ光導波路26の材料は日立化成工業のOPI(品番N3265:フッ素化ポリイミド)を用いた。熱光学定数は、それぞれ、1.3ppm/K、−15ppm/Kであるので、θoは−0.9°、θiは30°である。入射光10の波長は、λ1:1300nmとλ2:1340nmであり、それぞれの波長に光導波路のTEモードとTMモードの偏波がある。信号は計4波である。
【0031】
入射光10はチャンネル光導波路12を出るとスラブ光導波路24中で拡散する。回折格子22を通った後、スラブ光導波路26中で集光して4本あるチャンネルのうちの一つに入る。この4つのチャンネルが各波長・偏波に対応する。光導波路の作製は露光とRIE(Reactive Ion Etching)で行った。回折格子22の位置合わせは、出射光が出射側の回折格子に入るのをモニターしながら、回折格子22の位置をずらすことで行った。TMモードでみると1300nmと1340nmの回折のなす角度は、1°である。TEモードのスラブ光導波路の実効屈折率が1.551、TMモードのスラブ光導波路の実効屈折率が1.527である。
【0032】
入射光の波長をλ、入射角をθi、出射角をθo(但しθi>θo)、スラブ光導波路のコア屈折率をn、回折格子の中心の周期をpとすると、
θo = sin−1[λ/(n・p) − sinθi] ・・・(6)
となる。出射角が同じなら屈折率が増加すると、見かけ上、分波される波長λが長くなるように見える。屈折率の変化を波長の変化に置き換えると、TEモードはTMモードよりも屈折率が大きいので、20nmだけ波長が長くなった1320nmの光の位置で集光する。したがって、1300、1320、1340、1360nmのTMモードでみた光の集光点にチャンネル光導波路18を設置することで分波ができる。この様子をλ1:1300nm、λ2:1340nmとして、図9に模式的に示した。4つに分波された光は、それぞれCH1からCH4に入る。TEモードとTMモードの入射光と出射光を測定した結果、隣接するチャンネル間のクロストークは6dB、各チャンネルの出射光に対する入射光の平均伝搬損失は12dBを達成した。また、温度を20℃から60℃まで変化させたとき集光点は波長に換算して、わずか0.1nmだけ移動した。
【0033】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を説明する。ポリマ光導波路を反射型平面回折格子に用いた場合である。光導波路のコアには日立化成工業のOPIを用いた。また、光導波路基板には、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と2,5−ジアミノピリジンの共重合体を用いた。反射型のポリマ光導波路は図8に示したようになる。入射光10の波長は、1300nmと1340nmであり、それぞれの波長に光導波路のTEモードとTMモードの偏波がある。信号は計4波である。入射光10はチャンネル光導波路12を出るとスラブ光導波路26中で拡散する。反射型回折格子60で反射・分光した後、スラブ光導波路26中で集光して4本あるチャンネルのうちの一つに入る。この4つのチャンネルが各波長・偏波に対応する。作り方は透過型と同じである。反射型回折格子60は回折格子表面にAlを蒸着させて作る。隣接チャンネル間の平均クロストークは13dB、各チャンネルの入射光10に対する出射光20の平均伝搬損失は9dBを達成した。また、温度を20℃から60℃まで変化させたとき集光点は波長に換算して、わずか0.1nmだけ移動した。
【図面の簡単な説明】
【図1】透過型回折格子を用いた光合分波器の構成図である。
【図2】光導波路の屈折率の温度変化と光導波路基板の膨張を示す説明図である。
【図3】2種の屈折率温度変化を持つポリマの配置を示す構成図である。
【図4】TEモードとTMモードの偏波を分離してから入射する光導波路の説明図である。
【図5】TEモードとTMモードの偏波を分離する分波器の断面図である。
【図6】TEモードとTMモードの偏波を分離する分波器の説明図である。
【図7】入射する偏波を固定する分波器の説明図である。
【図8】反射型回折格子を用いた光合分波器の構成図である。
【図9】分波器によるλ1、λ2、TEモード、TMモードの分波を示す説明図である。
【符号の説明】
θ は、光がホログラムによって回折されて出射する回折光の出射角度。
10: 入射光
12: 入射側チャンネル光導波路
14: 入射側スラブ光導波路中光路
16: 出射側スラブ光導波路中光路
18: 出射側チャンネル光導波路
20: 出射光
22: 回折格子
24: 入射側スラブ光導波路
26: 出射側スラブ光導波路
28: クラッド
30: コア
32: 基板
34: 偏波制御器
36: 基板
38: 上部クラッド
40a: 左側の光導波路のコア
40b: 右側の光導波路のコア
42: 結合層
44: チャンネル光導波路
46: 偏光分離機能を有する薄板型素子
48: 鏡
50: TEモードとTMモードの混じった入射光
52: 偏波が分離された出射光
54: 入射端
56: 出射端
58: レーザーダイオード
60: 反射型回折格子
Claims (14)
- 複屈折を持つポリマを材料とするチャンネル光導波路およびスラブ光導波路を光の経路とし、分光や集光を目的とする回折格子を使用した光合分波器において、回折格子に入射する一つの光信号の偏波を固定するか、または、信号の検出が偏波に依存しないようにしたことを特徴とする、温度無依存の光合分波器。
- スラブ光導波路の中央部でTMモードとTEモードを入れ替えることを目的とした波長板を使用したことを特徴とする請求項1記載の光合分波器。
- スラブ光導波路の屈折率温度依存性を調整することで、温度無依存にしたことを特徴とする請求項1又は2記載の光合分波器。
- 分波特性を温度無依存にするために、光導波路の屈折率の温度変化が、光導波路基板の膨張で打ち消されるように膨張係数を調整したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の光合分波器。
- 分波特性を温度無依存にするために2種以上の屈折率の温度変化を持つ材料をポリマ光導波路に使用したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の光合分波器。
- TEモードとTMモードで入射側の偏波を分けて、光導波路からスラブ光導波路に入るところで、それぞれ異なる場所から入射させるようにしたことを特徴とする請求項1、3〜5のいずれか1項記載の光合分波器。
- TEモードとTMモードで入射側の偏波を分けるために、光導波路型上記を用いたことを特徴とする請求項1、3ないし5記載の光合分波器
- TEモードとTMモードで入射側の偏波を分けるために、偏波依存性フィルタを用いたことを特徴とする請求項1、3〜5のいずれか1項記載の光合分波器。
- 入射側の偏波を固定するようにしたことを特徴とする請求項1、3〜5のいずれか1項記載の光合分波器。
- 光導波路への入射光がTEモードかTMモードかで、出射側の光導波路の受け口を別にする請求項1、3〜5のいずれか1項記載の光合分波器。
- 複屈折を持つポリマが250℃以上のガラス転移温度を持つことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項記載の光合分波器。
- 光導波路のTEモードとTMモードでポリマの屈折率差が0.002以上であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項記載の光合分波器。
- 回折格子が分光と集光を同時にできるように、格子周期が単調に短くあるいは長くなることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項記載の光合分波器。
- 回折格子を反射型にするために、表面を金属または誘電率1.6以上の誘電体で覆ったことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項記載の光合分波器。
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