JP2004130238A - 塗装方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】層間ハガレが生じることなく、耐候性及び耐水付着性に優れた複層塗膜を形成できる塗装方法を提供する。
【解決手段】被塗物面に、水溶性樹脂及び/又は水分散性樹脂(a)、着色顔料及び/又は光輝顔料(b)を主成分として含有する水性ベースコート塗料を塗装し、次いでその上にマクロモノマーを5〜50重量%含有するモノマー混合物を共重合してなる水酸基価60〜130mgKOH/gのアクリル系共重合体(c)、及びイソシアネート硬化剤(d)を含有する有機溶剤型クリヤーコート塗料を塗装する。マクロモノマーは、メチルメタクリレート系マクロモノマーであることが望ましい。
【選択図】 なし
【解決手段】被塗物面に、水溶性樹脂及び/又は水分散性樹脂(a)、着色顔料及び/又は光輝顔料(b)を主成分として含有する水性ベースコート塗料を塗装し、次いでその上にマクロモノマーを5〜50重量%含有するモノマー混合物を共重合してなる水酸基価60〜130mgKOH/gのアクリル系共重合体(c)、及びイソシアネート硬化剤(d)を含有する有機溶剤型クリヤーコート塗料を塗装する。マクロモノマーは、メチルメタクリレート系マクロモノマーであることが望ましい。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐候性及び耐水付着性に優れた複層塗膜を形成できる塗装方法に関する。本発明の塗装方法は、特に自動車外板やバンパー等の塗装、自動車補修塗装用に好適である。
【0002】
【従来技術及びその課題】
自動車ボディ等における上塗り塗膜の形成方法には、通常、ベースコート塗料及びクリヤーコート塗料を用いた2コート1ベイク方式や3コート1ベイク方式等が採用されている。近年、環境保全の点からベースコート塗料として水性塗料が採用されつつあり、自動車補修塗装においても種々検討がなされてきた(例えば、特許文献1など)。
【0003】
しかしながらこのような方法によって形成された複層塗膜は、屋外での経年の暴露で、特に水性ベースコート塗膜と有機溶剤希釈型のクリヤーコート塗膜との間で層間ハガレが生じる場合があり、さらに耐水付着性にも劣るという問題があった。
【0004】
本発明の目的は、層間ハガレが生じることなく、耐候性及び耐水付着性に優れた複層塗膜を形成できる塗装方法を提供することにある。
【特許文献1】
特開平10−306236号公報
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
1.被塗物面に、水溶性樹脂及び/又は水分散性樹脂(a)、着色顔料及び/又は光輝顔料(b)を主成分として含有する水性ベースコート塗料(I)を塗装し、次いでその上にマクロモノマーを5〜50重量%含有するモノマー混合物を共重合してなる水酸基価60〜130mgKOH/gのアクリル系共重合体(c)、及びイソシアネート硬化剤(d)を含有する有機溶剤型クリヤーコート塗料(II)を塗装することを特徴とする塗装方法、
2.マクロモノマーが、メチルメタクリレート系マクロモノマーである1項記載の塗装方法、
3.水溶性樹脂及び/又は水分散性樹脂(a)が、ポリオキシアルキレン鎖を有するものである請求項1記載の塗装方法、
4.1ないし3のいずれか1項記載の塗装方法によって得られる塗装物品、
に関する。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明方法に使用する水性ベースコート塗料(I)は、水溶性樹脂及び/又は水分散性樹脂(a)、着色顔料及び/又は光輝顔料(b)を主成分として含有するものである。
【0007】
上記水溶性樹脂及び/又は水分散性樹脂(a)としては、特に制限なく従来公知のものが使用でき、例えばポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂などが挙げられ、これらは単独で又は2種以上混合して使用できる。これらのうち、特に水性ポリウレタン樹脂やアクリルエマルション、水溶性アクリル樹脂が好適である。
【0008】
上記水性ポリウレタン樹脂は、例えば、イソシアネート基含有化合物と水酸基含有化合物とを反応させることにより得られるウレタン結合を含むポリウレタン樹脂の水性分散体、又は水溶液である。該水性ポリウレタン樹脂の製造に用いられるイソシアネート基含有化合物は、1分子中に2個以上、好ましくは2〜4個のイソシアネート基を有する脂肪族系、脂環式系又は芳香族系等の化合物であり、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類;キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の環含有ジイソシアネート類等;これらのポリイソシアネート化合物の過剰量に水、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物を反応させて得られる末端イソシアネート含有化合物;これらのポリイソシアネート化合物のビューレットタイプ付加物、イソシアヌル環タイプ付加物等を挙げることができ、上記ポリイソシアネート化合物は、それぞれ単独で使用してもよく、又は2種以上混合して用いることもできる。
【0009】
また、イソシアネート基含有化合物と反応させる水酸基含有化合物は、1分子中に水酸基を2個以上、好ましくは2〜4個有する化合物であり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、3−メチル−4,3−ペンタンジオール、1,6ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等のグリコール類;これらグリコール類にε−カプロラクトン等のラクトン類を付加したポリラクトンジオールや、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のポリエステルジオール類;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリエーテルジオール類;α−オレフィンエポキシド等のモノエポキシ化合物などの2価アルコール;グリセリン、トリメチロールプロパン、トリグリセリン、ペンタエリスリトール等;これら3価以上のアルコールにε−カプロラクトン等のラクトン類を付加したポリラクトンポリオール類等の3価以上のアルコール;1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノール等の脂環族多価アルコール;パラオキシ安息香酸、ジメチロールプロピオン酸等のオキシ酸等を含有する化合物を挙げることができ、上記水酸基含有化合物は、それぞれ単独で使用してもよく、又は2種以上混合して用いることもできる。
【0010】
以上に述べたイソシアネート基含有化合物と水酸基含有化合物からのポリウレタン樹脂の製造は、通常のポリウレタン樹脂の製造の場合と同様にして行なうことができ、得られる樹脂の水分散化又は水溶液化は、製造されるポリウレタン樹脂の特性に応じて、例えば、水分散化は、得られるポリウレタン樹脂をそのまま水中に混入し分散せしめることによって行なうことができ、水溶化は該ポリウレタン樹脂中に有せしめたカルボキシル基を中和し、それを水に溶解することによって行なうことができる。
【0011】
得られる水性ポリウレタン樹脂は、その分子中には遊離のイソシアネート基が実質的に残存していないことが望ましい。
【0012】
上記アクリルエマルションとしては、重合性不飽和モノマーを用いて、従来公知の乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法等によって製造されたものが使用できる。乳化重合は、通常、水及び乳化剤の存在下に重合開始剤を用いて重合性不飽和モノマ−混合物を共重合するものであり、該乳化重合は多段階で行われても良い。
【0013】
上記重合性不飽和モノマーとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどのアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステル;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等の多価アルコールとアクリル酸又はメタクリル酸とのモノエステル化物、該多価アルコールとアクリル酸又はメタクリル酸とのモノエステル化物にε− カプロラクトンを開環重合した化合物などの水酸基含有重合性不飽和モノマー;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸などのカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどのアミノアルキル(メタ)アクリレート;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドメチルエーテル、N−メチロールアクリルアミドブチルエーテルなどの(メタ)アクリルアミド又はその誘導体;2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムブロマイドなどの第4級アンモニウム塩基含有モノマー;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などの(メタ)アクリルアミド−アルカンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレートなどのスルホアルキル(メタ)アクリレート;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン;アリルメタクリレート等の多ビニル化合物;2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンなどの紫外線吸収性もしくは紫外線安定性重合性不飽和モノマーなどが挙げられ、これらは1種又は2種以上用いることができる。
【0014】
尚、本明細書において、「(メタ)アクリレート」等は、「アクリレート」又は「メタクリレート」等を意味するものとする。
【0015】
乳化重合時に用いられる乳化剤としては、所望の特性等に応じて、例えば、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム及びアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のアニオン性乳化剤;ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル及びポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のノニオン性乳化剤が挙げられ、さらにラジカル重合性二重結合を有するアニオン性又はカチオン性の反応性乳化剤が挙げられる。
【0016】
上記乳化重合時には、通常、水及び上記乳化剤の存在下で重合開始剤を用いて乳化重合を行うことが好ましく、必要に応じてメルカプタン類などの連鎖移動剤を用いてもよい。使用可能な重合開始剤としては、例えばペルオキソ硫酸カリウム、ペルオキソ硫酸ナトリウム、ペルオキソ硫酸アンモニウム、アゾビスシアノ吉草酸、2、2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、等の有機アゾ系化合物類、過酸化ベンゾイル、ジt−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物類等が挙げられる。
【0017】
上記水溶性アクリル樹脂としては、通常、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー及び/又はポリオキシアルキレン鎖を有する非イオン性重合性不飽和モノマー、さらにその他の重合性不飽和モノマーを含む重合性不飽和モノマーの混合物を有機溶剤中でラジカル重合開始剤の存在下に共重合して得られるカルボキシル基及び/又はポリオキシアルキレン鎖を有するアクリル共重合体を、必要に応じて塩基性中和剤で中和し水溶化ないしは水分散化して製造されたものが使用できる。
【0018】
上記カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーやこれと共重合させるその他の重合性不飽和モノマーとしては、上述のアクリルエマルションの説明で列記した重合性不飽和モノマーの中から適宜選択して使用することができる。
【0019】
ポリオキシアルキレン鎖を有する非イオン性重合性不飽和モノマーとしては、例えばポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられ、これらは1種のみ又は2種以上組み合わせて使用することができる。これらのうち特にポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートが好適である。
【0020】
塩基性中和剤としては、例えば水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基や、アミノメチルプロパノール、アミノエチルプロパノール、ジメチルエタノールアミン、トリエチルアミン、ジエチルエタノールアミン、ジメチルアミノプロパノール、アミノメチルプロパノールなどのアミン類を挙げることができる。
【0021】
上記水溶性樹脂及び/又は水分散性樹脂(a)としては、水性ポリウレタン樹脂と水溶性アクリル樹脂を併用することが望ましい。また上記水溶性樹脂及び/又は水分散性樹脂(a)が、ポリオキシアルキレン鎖を有するものであることが後述のクリヤーコート(II)による塗膜との付着性の点から望ましい。
【0022】
上記着色顔料及び/又は光輝顔料(b)としては、例えばピンクEB、アゾ系やキナクリドン系、シアニンブルー、シアニングリーン、ベンゾイミダゾロン系、イソインドリン系及びキノフタロン系等の有機着色顔料;酸化チタン、チタンイエロー、ベンガラ、カーボンブラック、黄鉛、酸化鉄、及び各種焼成顔料等の無機着色顔料;アルミニウム粉、銅粉、ニッケル粉、ステンレス粉、クロム粉、雲母状酸化鉄、酸価チタン被覆マイカ粉、酸化鉄被覆マイカ粉及び光輝性グラファイト等の光輝性顔料等が挙げられる。また体質顔料を含んでもよい。これらの顔料は、夫々、公知の表面処理、例えば酸・塩基処理、カップリング剤処理、プラズマ処理、酸化/還元処理などが施されたものであってもよい。また、これらの顔料は1種のみ又は2種以上組合せて使用することができる。
【0023】
上記着色顔料(b)の配合量は、形成される単独塗膜により被塗面の色調がこの塗膜を透かして見えない程度に隠蔽する範囲であることが好ましく、具体的には、形成される硬化塗膜の重量を基準に0.1〜70重量%、特に1〜60重量%であることが適している。
【0024】
上記着色顔料及び/又は光輝顔料(b)の分散には、従来公知の顔料分散用樹脂や分散助剤が使用可能である。
【0025】
該顔料分散用樹脂としては、通常、上記(a)成分としての水溶性アクリル樹脂が用いられ、特に着色顔料に対しては高顔料濃度での濡れ性や分散安定性、さらに得られる塗膜の光沢や耐水性等の点から、3級アミノ基、4級アンモニウム塩基及びスルホン酸基から選ばれる少なくとも1種のイオン性官能基を含有する重合性不飽和モノマー、ポリオキシアルキレン鎖を有する非イオン性重合性不飽和モノマー、及びその他のエチレン性不飽和モノマーからなるモノマー混合物をラジカル重合開始剤の存在下に共重合して得られるアクリル共重合体が好適に使用できる。
【0026】
3級アミノ基、4級アンモニウム塩基及びスルホン酸基から選ばれる少なくとも1種のイオン性官能基を含有する重合性不飽和モノマー、ポリオキシアルキレン鎖を有する非イオン性重合性不飽和モノマー、及びその他の重合性不飽和モノマーとしては、上述のアクリルエマルションの説明で列記した重合性不飽和モノマーの中から適宜選択して使用することができる。これらの共重合に際してのモノマー混合物の組成は、イオン性官能基を含有する重合性不飽和モノマー1〜40重量%、好ましくは1〜35重量%、ポリオキシアルキレン鎖を有する非イオン性重合性不飽和モノマー5〜40重量%、好ましくは7.5〜30重量%、及びその他の重合性不飽和モノマー20〜94重量%、好ましくは35〜91.5重量%の範囲内が好適である。
【0027】
また顔料分散用樹脂として、特にアルミニウムフレークなどのメタリック顔料に対しては、該メタリック顔料と水との反応を抑制するのに、りん酸基含有樹脂が好適に使用できる。
【0028】
上記顔料分散用樹脂を用いて、着色顔料及び/又は光輝顔料(b)を分散する際には水、または水に水溶性有機溶媒などの有機溶媒を溶解してなる水−有機溶媒混合溶液などの水性媒体、塩基性中和剤、分散助剤、及びその他の添加剤などを配合し、公知の分散機を用いて分散処理することにより水性顔料分散液を調製することができる。
【0029】
上記水性ベースコート塗料(I)には、さらに必要に応じて、水、有機溶剤、ポリマー微粒子、硬化触媒、塩基性中和剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、塗面調整剤、酸化防止剤、流動性調整剤、シランカップリング剤等の塗料用添加剤等を配合することができる。
【0030】
本発明方法に使用するクリヤーコート塗料(II)は、マクロモノマーを5〜50重量%含有するモノマー混合物を共重合してなる水酸基価60〜130mgKOH/gのアクリル系共重合体(c)、及びイソシアネート硬化剤(d)を含有する。
【0031】
上記マクロモノマーは、分子鎖末端に重合性不飽和基を有するオリゴマー又はポリマーであり、それ自体既知の製造方法により製造でき、その製造方法は特に限定されるものではない。例えば重合性不飽和モノマーを3−メルカプトプロピオン酸に代表されるカルボキシル基含有連鎖移動剤、必要に応じてラジカル重合開始剤、有機溶剤の存在下で共重合を行い、末端にカルボキシル基を有する共重合体を得、ついでこの共重合体にグリシジルメタクリレートなどのエポキシ基含有重合性不飽和モノマーを反応させてカルボキシル基とエポキシ基との反応によって共重合体末端に重合性二重結合を導入することによって得ることができる。また例えば触媒的連鎖移動剤である金属錯体又は付加開裂型連鎖移動剤、及び必要に応じてラジカル重合開始剤の存在下に、有機溶剤中での溶液重合法、あるいは水中でのエマルション重合法などの方法で、重合性不飽和モノマーを共重合して製造することもできる。付加開裂型連鎖移動剤を用いる場合には、ラジカル的付加開裂型連鎖移動重合によって共重合反応が行われる。付加開裂型連鎖移動剤としては、例えば、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(「α−メチルスチレンダイマー」と略称される)などを挙げることができる。
【0032】
上記マクロモノマーは、通常、数平均分子量が500〜15,000の範囲内にあることが好ましい。
【0033】
上記重合性不飽和モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルやスチレンなどが挙げられる。
【0034】
上記マクロモノマーとしては、水性ベースコート塗膜との層間付着性の点から、特にメチルメタクリレート系マクロモノマーが好適である。
【0035】
上記マクロモノマーとして使用可能なものの市販品としては、具体的には、東亞合成(株)製の「マクロモノマーAA−6」(ポリマー鎖末端にメタクロイル基を有するポリメチルメタクリレート、数平均分子量約6,000)、「マクロモノマーAW−6」(ポリマー鎖末端にメタクロイル基を有するポリイソブチルメタクリレート、数平均分子量約6,000)、「マクロモノマーAB−6」(ポリマー鎖末端にメタクロイル基を有するポリブチルメタクリレート、数平均分子量約6,000)、「マクロモノマーAS−6」(ポリマー鎖末端にメタクロイル基を有するポリスチレン、数平均分子量約6,000)等が挙げられる。
【0036】
アクリル系共重合体(c)は、上記マクロモノマーを5〜50重量%、好ましくは10〜30重量%含有するモノマー混合物を共重合して得られる。マクロモノマーの含有率が5重量%未満では水性ベースコート塗膜との親和性効果が得られず、50重量%を越えると共重合性が低下するので好ましくない。
【0037】
上記マクロモノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーとしては、水酸基含有重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーが挙げられ、これらは上述の水溶性樹脂及び/又は水分散性樹脂(a)におけるアクリルエマルションの説明で列記した重合性不飽和モノマーの中から適宜選択して使用することができる。
【0038】
アクリル系共重合体(c)は、上記マクロモノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーを含む重合性不飽和モノマーの混合物を有機溶剤中でラジカル重合開始剤の存在下に共重合して得られる。得られるアクリル系共重合体(c)は、水酸基価60〜150mgKOH/g、好ましくは80〜130mgKOH/gの範囲内である。
【0039】
イソシアネート硬化剤(d)は、ブロック化されていてもよいポリイソシアネート化合物であり、フリーのイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物、イソシアネート基がブロックされたポリイソシアネート化合物のいずれでもよい。
【0040】
上記ポリイソシアネート化合物としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートの如き脂肪族ジイソシアネート類;水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートの如き環状脂肪族ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートの如き芳香族ジイソシアネート類;トリフェニルメタン−4,4′,4″−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン、4,4′−ジメチルジフェニルメタン−2,2′,5,5′−テトライソシアネートなどの3個以上のイソシアネ−ト基を有するポリイソシアネート化合物の如き有機ポリイソシアネートそれ自体、またはこれらの各有機ポリイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂もしくは水等との付加物、あるいは上記した各有機ポリイソシアネート同志の環化重合体、更にはイソシアネート・ビウレット体等を挙げることができる。これらは、1種で又は2種以上混合して使用することができる。
【0041】
上記イソシアネート硬化剤(d)の使用量は、この中に含まれるイソシアネート基(NCO)が、上記アクリル系共重合体(c)中の水酸基(OH)に対して、NCO/OHの当量比で、通常、0.2〜2.0、好ましくは0.5〜1.5となる範囲内となるように選択されることが適当である。
【0042】
上記クリヤーコート塗料(II)は、有機溶剤型塗料であり、該有機溶剤としては、例えばヘプタン、トルエン、キシレン、オクタン、ミネラルスピリット等の炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、 sec−ブタノール、イソブタノール等のアルコール系溶剤;n−ブチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル系;スワゾール310、スワゾール1000、スワゾール1500(以上、いずれもコスモ石油(株)製)、SHELLSOL A(シェルゾールA、シェル化学(株)製)等の芳香族石油系溶剤等を挙げることができる。これらの有機溶剤は1種で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0043】
上記クリヤーコート塗料(II)には、さらに必要に応じて、顔料類、非水分散樹脂、ポリマー微粒子、硬化触媒、紫外線吸収剤、光安定剤、塗面調整剤、酸化防止剤、流動性調整剤、ワックス等を適宜含有することができる。
【0044】
硬化触媒としては、例えばジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジラウレートなどの有機錫化合物、トリエチルアミン、ジエタノールアミン等が挙げられる。
【0045】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、サリシレート系、蓚酸アニリド系などの化合物を挙げることができる。紫外線安定剤としては、ヒンダードアミン系化合物を挙げることができる。
【0046】
本発明方法は、被塗物面に、前記水性ベースコート塗料(I)を塗装し、次いでその上に上記クリヤーコート塗料(II)を塗装する。
【0047】
被塗物面とは、鉄、アルミニウム、真鍮、銅板、ステンレス鋼板、ブリキ板、亜鉛めっき鋼板、合金化亜鉛(Zn−Al、Zn−Ni、Zn−Feなどの)めっき鋼板などの金属;これらの金属表面に燐酸塩処理、クロメート処理などの化成処理を施した表面処理金属;プラスチック、木材、コンクリート、モルタル等の被塗物素材面、又はこれら被塗物素材面にプライマー等の下塗及び/又は中塗及び/又は上塗塗料を塗装した塗膜面などである。
【0048】
水性ベースコート塗料(I)及びクリヤーコート塗料(II)の塗装方法としては、従来公知の手法であれば特に制限なく、例えば静電塗装、流動浸漬塗装、エアスプレ−塗装、エアレススプレ−塗装等が挙げられ、膜厚は、ベースコート塗膜が乾燥膜厚で5〜200μm、好ましくは10〜100μm、クリヤーコート塗膜が乾燥膜厚で10〜200μm、好ましくは20〜100μmの範囲内に塗装するのが望ましい。
【0049】
塗装後の塗膜の硬化、乾燥は、常温乾燥、強制乾燥のいずれであっても良く、各層毎に行ってもよいが、未硬化の下層の塗面に上層の塗膜を設けて各塗膜を一度に硬化させる2コート1ベークを行なってもよい。
【0050】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、本発明の範囲は、これらの実施例にのみ限定されるものではない。また、実施例中の「部」および「%」は、それぞれ、「重量部」および「重量%」を示す。
【0051】
アクリル系共重合体溶液の製造
製造例1〜5
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入口を備えた四ツ口フラスコにトルエン32部を仕込み、114℃に昇温し、同温度にて下記表1に示すモノマーと重合開始剤(t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート)4.9部とトルエンとからなる組成配合の滴下モノマー混合物を3時間かけて滴下し、滴下が終了した後、約30分間114℃で保持して、次いで追加触媒(t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート)0.5部とトルエン8部との混合溶液を1時間かけて滴下し、滴下が終了した後、約1時間114℃で保持して、固形分55%の各アクリル共重合体溶液(c−1)〜(c−5)を得た。得られた各アクリル共重合体溶液の固形分及び樹脂性状値を同表に示す。表1における(注1)は、下記の意味を有する。
【0052】
(注1)「マクロモノマーAA−6」:東亞合成(株)製、ポリマー鎖末端にメタクロイル基を有するポリメチルメタクリレート、数平均分子量約6,000、45%トルエン溶液
【0053】
【表1】
【0054】
クリヤーコート塗料の作成
上記製造例1〜5で得られたアクリル共重合体溶液などを用いて、後記表2に示す配合にて塗装直前に混合し、塗料化を行い各クリヤコート塗料▲1▼〜▲5▼を作成した。表2における(注2)〜(注4)は、それぞれ下記の意味を有する。
【0055】
(注2)「スミジュールN−3300」:住友バイエルウレタン(株)製、ヘキサメチレンジイソイシアネートのイソシアヌレート体、NCO含量21.5%(注3)「Scat2L」:三共有機合成(株)製、有機金属触媒混合物(ジ−n−ブチル錫脂肪酸塩及び脂肪酸亜鉛類の50%キシレン溶液)
(注4)「BYK306」:ビックケミー(株)製、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、固形分12.5%
【0056】
【表2】
【0057】
水性ベースコート塗料の作成
固形分66%のアルミペースト(注5)45.5部とエチレングリコールモノブチルエーテル35部と固形分50%リン酸基含有樹脂溶液(注6)3部を加えて攪拌混合し、さらに固形分50%の水溶性アクリル樹脂溶液(注7)40部を加えて混合撹拌し、さらに脱イオン水210部、固形分35%のウレタンディスパージョン(注8)230部と増粘剤(注9)100部を加えて攪拌混合して固形分20%の水性メタリックベースコート塗料を得た。
【0058】
(注5)アルミペースト:旭化成メタルズ(株)製、固形分66%。
【0059】
(注6)リン酸基含有樹脂溶液:攪拌器、温度調整器及び冷却器を備えた反応容器にメトキシプロパノール27.5部及びイソブタノール27.5部の混合溶剤を入れ、110℃に加熱し、同温度に保持してから、スチレン25部、n−ブチルメタクリレート27.5部、「イソステアリルアクリレート」(大阪有機化学工業(株)製、商品名)20部、4−ヒドロキシブチルアクリレート7.5部、りん酸基含有重合性モノマー(a1)15部、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート12.5部、イソブタノール10部及びt−ブチルパーオキシオクタノエート4部からなる混合物121.5部を4時間を要して上記の混合溶剤に滴下し、さらにt−ブチルパーオキシオクタノエート0.5部とイソプロパノール20部とからなる混合物を1時間を要して滴下した。その後、1時間攪拌熟成して固形分50%のリン酸基含有樹脂溶液を得た。本樹脂のりん酸基による酸価は83mgKOH/g、4−ヒドロキシブチルアクリレートに由来する水酸価は29.2mgKOH/g、重量平均分子量は10000であった。
【0060】
尚、上記りん酸基含有重合性モノマー(a1)は次の通りに得たものである。攪拌器、温度調整器及び冷却器を備えた反応容器にモノブチルリン酸57.55部及びイソブタノール41.1部を仕込み、空気通気下で、グリシジルメタクリレート42.45部を2時間を要して滴下した後、さらに1時間攪拌熟成した。その後、イソプロパノール58.88部を加えて希釈して固形分50%のりん酸基含有重合性モノマー溶液を得た。りん酸基による酸価は285mgKOH/gであった。
【0061】
(注7)水溶性アクリル樹脂溶液:撹拌機、温度計、還流冷却管の備わった通常のアクリル樹脂反応槽に、エチレングリコールモノブチルエーテル55部を仕込み、加熱撹拌して110℃に保持した。この中に、メチルメタクリレート19部、イソボルニルアクリレート35部、n−ブチルメタクリレート22部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部、「NFバイソマーS20W」(第一工業製薬(株)製、商品名、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートの50%水希釈品、分子量約2080)20部、アクリル酸4部、アゾビスイソブチロニトリル1部及びイソブチルアルコール5部からなる混合物を3時間かけて滴下した。滴下終了後、110℃で30分間熟成し、次にエチレングリコールモノブチルエーテル20部及びアゾビスイソブチロニトリル0.5部からなる追加触媒混合液を1時間かけて滴下した。ついで110℃で1時間熟成したのち冷却し、固形分50%のアクリル樹脂溶液を得た。
【0062】
(注8)ウレタンディスパージョン:第一工業製薬(株)製、固形分35%
(注9)増粘剤:クラリアントポリマー(株)製、アルカリ増粘型エマルション、固形分5%。
【0063】
塗 装
実施例1〜3及び比較例1、2
新車用クリヤー塗料を塗装した工程板を、#800耐水ペーパーで研磨後脱脂し、被塗板とした。この脱脂面に上記で作成した水性メタリックベースコート塗料を脱イオン水で25秒(イワタカップ/25℃)に粘調し、20℃・60%RH雰囲気下で乾燥膜厚が20μmとなるようエアスプレー塗装を行い、エアブロー後、表3の組合せで上記で作成したクリヤーコート塗料を混合シンナーにて13〜14秒(フォードカップ#4/25℃)に粘調し、20℃・60%RH雰囲気下で乾燥膜厚が40μmとなるようエアスプレー塗装を行い、60℃で30分間乾燥させて各試験塗板を作成した。
【0064】
得られた各試験塗板を下記性能試験に供した。結果を表3に示す。
【0065】
(*1)初期付着性:各試験板上の複層塗膜に素地に達するようにカッターで切り込みを入れ、大きさ1mm×1mmのゴバン目を100個作り、その表面に粘着セロハンテープを貼着し、20℃においてそのテープを急激に剥離した跡のゴバン目塗膜の残存数を調べた。○は100個残存、△は99〜81個残存、□は80〜41個残存、×は40個以下残存していたことを示す。
【0066】
(*2)耐水性:各試験塗板を40℃の温水に10日間浸漬し、引き上げてから各塗膜表面を観察した(○:異常なし、×:フクレ、白化などの異常がみられる)。
【0067】
(*3)耐水付着性:各試験塗板を40℃の温水に10日間浸漬し、引き上げ、室温で12時間乾燥してから、上記(*1)の付着性と同様にしてゴバン目試験を行なった。評価基準も(*1)と同じである。
【0068】
(*4)促進耐候性試験:各試験塗板を、Qパネル(株)製促進耐候性試験機(QUV)を用いた促進耐候性試験に供した。試験条件は、(紫外線照射:70℃で8時間〜湿潤:4時間)の繰り返しを100時間行なった後、試験後の塗板を40℃の温水に2日間浸漬するのを1サイクルとした。この1サイクル後と2サイクル後の塗板を夫々、上記(*1)の付着性と同様にしてゴバン目試験に供した。評価基準も(*1)と同じである。
【0069】
(*5)塗膜外観:各試験板の塗膜面を目視で評価した。○はメタリック顔料が塗面に対して平行かつ均一に配向し、メタリックムラの発生が全く認められない、△はメタリックムラの発生が少し認められた、×はメタリックムラの発生が多く認められたことを示す。
【0070】
【表3】
【0071】
【発明の効果】
本発明方法によれば、水性ベースコート塗膜と有機溶剤希釈型のクリヤーコート塗膜との組み合わせであっても、屋外暴露での層間ハガレも生じることなく、耐候性及び耐水付着性に優れた複層塗膜を形成できる。本発明の塗装方法は、特に自動車外板やバンパー等の塗装、自動車補修塗装用に有用である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐候性及び耐水付着性に優れた複層塗膜を形成できる塗装方法に関する。本発明の塗装方法は、特に自動車外板やバンパー等の塗装、自動車補修塗装用に好適である。
【0002】
【従来技術及びその課題】
自動車ボディ等における上塗り塗膜の形成方法には、通常、ベースコート塗料及びクリヤーコート塗料を用いた2コート1ベイク方式や3コート1ベイク方式等が採用されている。近年、環境保全の点からベースコート塗料として水性塗料が採用されつつあり、自動車補修塗装においても種々検討がなされてきた(例えば、特許文献1など)。
【0003】
しかしながらこのような方法によって形成された複層塗膜は、屋外での経年の暴露で、特に水性ベースコート塗膜と有機溶剤希釈型のクリヤーコート塗膜との間で層間ハガレが生じる場合があり、さらに耐水付着性にも劣るという問題があった。
【0004】
本発明の目的は、層間ハガレが生じることなく、耐候性及び耐水付着性に優れた複層塗膜を形成できる塗装方法を提供することにある。
【特許文献1】
特開平10−306236号公報
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
1.被塗物面に、水溶性樹脂及び/又は水分散性樹脂(a)、着色顔料及び/又は光輝顔料(b)を主成分として含有する水性ベースコート塗料(I)を塗装し、次いでその上にマクロモノマーを5〜50重量%含有するモノマー混合物を共重合してなる水酸基価60〜130mgKOH/gのアクリル系共重合体(c)、及びイソシアネート硬化剤(d)を含有する有機溶剤型クリヤーコート塗料(II)を塗装することを特徴とする塗装方法、
2.マクロモノマーが、メチルメタクリレート系マクロモノマーである1項記載の塗装方法、
3.水溶性樹脂及び/又は水分散性樹脂(a)が、ポリオキシアルキレン鎖を有するものである請求項1記載の塗装方法、
4.1ないし3のいずれか1項記載の塗装方法によって得られる塗装物品、
に関する。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明方法に使用する水性ベースコート塗料(I)は、水溶性樹脂及び/又は水分散性樹脂(a)、着色顔料及び/又は光輝顔料(b)を主成分として含有するものである。
【0007】
上記水溶性樹脂及び/又は水分散性樹脂(a)としては、特に制限なく従来公知のものが使用でき、例えばポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂などが挙げられ、これらは単独で又は2種以上混合して使用できる。これらのうち、特に水性ポリウレタン樹脂やアクリルエマルション、水溶性アクリル樹脂が好適である。
【0008】
上記水性ポリウレタン樹脂は、例えば、イソシアネート基含有化合物と水酸基含有化合物とを反応させることにより得られるウレタン結合を含むポリウレタン樹脂の水性分散体、又は水溶液である。該水性ポリウレタン樹脂の製造に用いられるイソシアネート基含有化合物は、1分子中に2個以上、好ましくは2〜4個のイソシアネート基を有する脂肪族系、脂環式系又は芳香族系等の化合物であり、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類;キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の環含有ジイソシアネート類等;これらのポリイソシアネート化合物の過剰量に水、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物を反応させて得られる末端イソシアネート含有化合物;これらのポリイソシアネート化合物のビューレットタイプ付加物、イソシアヌル環タイプ付加物等を挙げることができ、上記ポリイソシアネート化合物は、それぞれ単独で使用してもよく、又は2種以上混合して用いることもできる。
【0009】
また、イソシアネート基含有化合物と反応させる水酸基含有化合物は、1分子中に水酸基を2個以上、好ましくは2〜4個有する化合物であり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、3−メチル−4,3−ペンタンジオール、1,6ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等のグリコール類;これらグリコール類にε−カプロラクトン等のラクトン類を付加したポリラクトンジオールや、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のポリエステルジオール類;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリエーテルジオール類;α−オレフィンエポキシド等のモノエポキシ化合物などの2価アルコール;グリセリン、トリメチロールプロパン、トリグリセリン、ペンタエリスリトール等;これら3価以上のアルコールにε−カプロラクトン等のラクトン類を付加したポリラクトンポリオール類等の3価以上のアルコール;1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノール等の脂環族多価アルコール;パラオキシ安息香酸、ジメチロールプロピオン酸等のオキシ酸等を含有する化合物を挙げることができ、上記水酸基含有化合物は、それぞれ単独で使用してもよく、又は2種以上混合して用いることもできる。
【0010】
以上に述べたイソシアネート基含有化合物と水酸基含有化合物からのポリウレタン樹脂の製造は、通常のポリウレタン樹脂の製造の場合と同様にして行なうことができ、得られる樹脂の水分散化又は水溶液化は、製造されるポリウレタン樹脂の特性に応じて、例えば、水分散化は、得られるポリウレタン樹脂をそのまま水中に混入し分散せしめることによって行なうことができ、水溶化は該ポリウレタン樹脂中に有せしめたカルボキシル基を中和し、それを水に溶解することによって行なうことができる。
【0011】
得られる水性ポリウレタン樹脂は、その分子中には遊離のイソシアネート基が実質的に残存していないことが望ましい。
【0012】
上記アクリルエマルションとしては、重合性不飽和モノマーを用いて、従来公知の乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法等によって製造されたものが使用できる。乳化重合は、通常、水及び乳化剤の存在下に重合開始剤を用いて重合性不飽和モノマ−混合物を共重合するものであり、該乳化重合は多段階で行われても良い。
【0013】
上記重合性不飽和モノマーとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどのアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステル;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等の多価アルコールとアクリル酸又はメタクリル酸とのモノエステル化物、該多価アルコールとアクリル酸又はメタクリル酸とのモノエステル化物にε− カプロラクトンを開環重合した化合物などの水酸基含有重合性不飽和モノマー;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸などのカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどのアミノアルキル(メタ)アクリレート;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドメチルエーテル、N−メチロールアクリルアミドブチルエーテルなどの(メタ)アクリルアミド又はその誘導体;2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムブロマイドなどの第4級アンモニウム塩基含有モノマー;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などの(メタ)アクリルアミド−アルカンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレートなどのスルホアルキル(メタ)アクリレート;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン;アリルメタクリレート等の多ビニル化合物;2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンなどの紫外線吸収性もしくは紫外線安定性重合性不飽和モノマーなどが挙げられ、これらは1種又は2種以上用いることができる。
【0014】
尚、本明細書において、「(メタ)アクリレート」等は、「アクリレート」又は「メタクリレート」等を意味するものとする。
【0015】
乳化重合時に用いられる乳化剤としては、所望の特性等に応じて、例えば、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム及びアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のアニオン性乳化剤;ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル及びポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のノニオン性乳化剤が挙げられ、さらにラジカル重合性二重結合を有するアニオン性又はカチオン性の反応性乳化剤が挙げられる。
【0016】
上記乳化重合時には、通常、水及び上記乳化剤の存在下で重合開始剤を用いて乳化重合を行うことが好ましく、必要に応じてメルカプタン類などの連鎖移動剤を用いてもよい。使用可能な重合開始剤としては、例えばペルオキソ硫酸カリウム、ペルオキソ硫酸ナトリウム、ペルオキソ硫酸アンモニウム、アゾビスシアノ吉草酸、2、2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、等の有機アゾ系化合物類、過酸化ベンゾイル、ジt−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物類等が挙げられる。
【0017】
上記水溶性アクリル樹脂としては、通常、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー及び/又はポリオキシアルキレン鎖を有する非イオン性重合性不飽和モノマー、さらにその他の重合性不飽和モノマーを含む重合性不飽和モノマーの混合物を有機溶剤中でラジカル重合開始剤の存在下に共重合して得られるカルボキシル基及び/又はポリオキシアルキレン鎖を有するアクリル共重合体を、必要に応じて塩基性中和剤で中和し水溶化ないしは水分散化して製造されたものが使用できる。
【0018】
上記カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーやこれと共重合させるその他の重合性不飽和モノマーとしては、上述のアクリルエマルションの説明で列記した重合性不飽和モノマーの中から適宜選択して使用することができる。
【0019】
ポリオキシアルキレン鎖を有する非イオン性重合性不飽和モノマーとしては、例えばポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられ、これらは1種のみ又は2種以上組み合わせて使用することができる。これらのうち特にポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートが好適である。
【0020】
塩基性中和剤としては、例えば水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基や、アミノメチルプロパノール、アミノエチルプロパノール、ジメチルエタノールアミン、トリエチルアミン、ジエチルエタノールアミン、ジメチルアミノプロパノール、アミノメチルプロパノールなどのアミン類を挙げることができる。
【0021】
上記水溶性樹脂及び/又は水分散性樹脂(a)としては、水性ポリウレタン樹脂と水溶性アクリル樹脂を併用することが望ましい。また上記水溶性樹脂及び/又は水分散性樹脂(a)が、ポリオキシアルキレン鎖を有するものであることが後述のクリヤーコート(II)による塗膜との付着性の点から望ましい。
【0022】
上記着色顔料及び/又は光輝顔料(b)としては、例えばピンクEB、アゾ系やキナクリドン系、シアニンブルー、シアニングリーン、ベンゾイミダゾロン系、イソインドリン系及びキノフタロン系等の有機着色顔料;酸化チタン、チタンイエロー、ベンガラ、カーボンブラック、黄鉛、酸化鉄、及び各種焼成顔料等の無機着色顔料;アルミニウム粉、銅粉、ニッケル粉、ステンレス粉、クロム粉、雲母状酸化鉄、酸価チタン被覆マイカ粉、酸化鉄被覆マイカ粉及び光輝性グラファイト等の光輝性顔料等が挙げられる。また体質顔料を含んでもよい。これらの顔料は、夫々、公知の表面処理、例えば酸・塩基処理、カップリング剤処理、プラズマ処理、酸化/還元処理などが施されたものであってもよい。また、これらの顔料は1種のみ又は2種以上組合せて使用することができる。
【0023】
上記着色顔料(b)の配合量は、形成される単独塗膜により被塗面の色調がこの塗膜を透かして見えない程度に隠蔽する範囲であることが好ましく、具体的には、形成される硬化塗膜の重量を基準に0.1〜70重量%、特に1〜60重量%であることが適している。
【0024】
上記着色顔料及び/又は光輝顔料(b)の分散には、従来公知の顔料分散用樹脂や分散助剤が使用可能である。
【0025】
該顔料分散用樹脂としては、通常、上記(a)成分としての水溶性アクリル樹脂が用いられ、特に着色顔料に対しては高顔料濃度での濡れ性や分散安定性、さらに得られる塗膜の光沢や耐水性等の点から、3級アミノ基、4級アンモニウム塩基及びスルホン酸基から選ばれる少なくとも1種のイオン性官能基を含有する重合性不飽和モノマー、ポリオキシアルキレン鎖を有する非イオン性重合性不飽和モノマー、及びその他のエチレン性不飽和モノマーからなるモノマー混合物をラジカル重合開始剤の存在下に共重合して得られるアクリル共重合体が好適に使用できる。
【0026】
3級アミノ基、4級アンモニウム塩基及びスルホン酸基から選ばれる少なくとも1種のイオン性官能基を含有する重合性不飽和モノマー、ポリオキシアルキレン鎖を有する非イオン性重合性不飽和モノマー、及びその他の重合性不飽和モノマーとしては、上述のアクリルエマルションの説明で列記した重合性不飽和モノマーの中から適宜選択して使用することができる。これらの共重合に際してのモノマー混合物の組成は、イオン性官能基を含有する重合性不飽和モノマー1〜40重量%、好ましくは1〜35重量%、ポリオキシアルキレン鎖を有する非イオン性重合性不飽和モノマー5〜40重量%、好ましくは7.5〜30重量%、及びその他の重合性不飽和モノマー20〜94重量%、好ましくは35〜91.5重量%の範囲内が好適である。
【0027】
また顔料分散用樹脂として、特にアルミニウムフレークなどのメタリック顔料に対しては、該メタリック顔料と水との反応を抑制するのに、りん酸基含有樹脂が好適に使用できる。
【0028】
上記顔料分散用樹脂を用いて、着色顔料及び/又は光輝顔料(b)を分散する際には水、または水に水溶性有機溶媒などの有機溶媒を溶解してなる水−有機溶媒混合溶液などの水性媒体、塩基性中和剤、分散助剤、及びその他の添加剤などを配合し、公知の分散機を用いて分散処理することにより水性顔料分散液を調製することができる。
【0029】
上記水性ベースコート塗料(I)には、さらに必要に応じて、水、有機溶剤、ポリマー微粒子、硬化触媒、塩基性中和剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、塗面調整剤、酸化防止剤、流動性調整剤、シランカップリング剤等の塗料用添加剤等を配合することができる。
【0030】
本発明方法に使用するクリヤーコート塗料(II)は、マクロモノマーを5〜50重量%含有するモノマー混合物を共重合してなる水酸基価60〜130mgKOH/gのアクリル系共重合体(c)、及びイソシアネート硬化剤(d)を含有する。
【0031】
上記マクロモノマーは、分子鎖末端に重合性不飽和基を有するオリゴマー又はポリマーであり、それ自体既知の製造方法により製造でき、その製造方法は特に限定されるものではない。例えば重合性不飽和モノマーを3−メルカプトプロピオン酸に代表されるカルボキシル基含有連鎖移動剤、必要に応じてラジカル重合開始剤、有機溶剤の存在下で共重合を行い、末端にカルボキシル基を有する共重合体を得、ついでこの共重合体にグリシジルメタクリレートなどのエポキシ基含有重合性不飽和モノマーを反応させてカルボキシル基とエポキシ基との反応によって共重合体末端に重合性二重結合を導入することによって得ることができる。また例えば触媒的連鎖移動剤である金属錯体又は付加開裂型連鎖移動剤、及び必要に応じてラジカル重合開始剤の存在下に、有機溶剤中での溶液重合法、あるいは水中でのエマルション重合法などの方法で、重合性不飽和モノマーを共重合して製造することもできる。付加開裂型連鎖移動剤を用いる場合には、ラジカル的付加開裂型連鎖移動重合によって共重合反応が行われる。付加開裂型連鎖移動剤としては、例えば、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(「α−メチルスチレンダイマー」と略称される)などを挙げることができる。
【0032】
上記マクロモノマーは、通常、数平均分子量が500〜15,000の範囲内にあることが好ましい。
【0033】
上記重合性不飽和モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルやスチレンなどが挙げられる。
【0034】
上記マクロモノマーとしては、水性ベースコート塗膜との層間付着性の点から、特にメチルメタクリレート系マクロモノマーが好適である。
【0035】
上記マクロモノマーとして使用可能なものの市販品としては、具体的には、東亞合成(株)製の「マクロモノマーAA−6」(ポリマー鎖末端にメタクロイル基を有するポリメチルメタクリレート、数平均分子量約6,000)、「マクロモノマーAW−6」(ポリマー鎖末端にメタクロイル基を有するポリイソブチルメタクリレート、数平均分子量約6,000)、「マクロモノマーAB−6」(ポリマー鎖末端にメタクロイル基を有するポリブチルメタクリレート、数平均分子量約6,000)、「マクロモノマーAS−6」(ポリマー鎖末端にメタクロイル基を有するポリスチレン、数平均分子量約6,000)等が挙げられる。
【0036】
アクリル系共重合体(c)は、上記マクロモノマーを5〜50重量%、好ましくは10〜30重量%含有するモノマー混合物を共重合して得られる。マクロモノマーの含有率が5重量%未満では水性ベースコート塗膜との親和性効果が得られず、50重量%を越えると共重合性が低下するので好ましくない。
【0037】
上記マクロモノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーとしては、水酸基含有重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーが挙げられ、これらは上述の水溶性樹脂及び/又は水分散性樹脂(a)におけるアクリルエマルションの説明で列記した重合性不飽和モノマーの中から適宜選択して使用することができる。
【0038】
アクリル系共重合体(c)は、上記マクロモノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーを含む重合性不飽和モノマーの混合物を有機溶剤中でラジカル重合開始剤の存在下に共重合して得られる。得られるアクリル系共重合体(c)は、水酸基価60〜150mgKOH/g、好ましくは80〜130mgKOH/gの範囲内である。
【0039】
イソシアネート硬化剤(d)は、ブロック化されていてもよいポリイソシアネート化合物であり、フリーのイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物、イソシアネート基がブロックされたポリイソシアネート化合物のいずれでもよい。
【0040】
上記ポリイソシアネート化合物としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートの如き脂肪族ジイソシアネート類;水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートの如き環状脂肪族ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートの如き芳香族ジイソシアネート類;トリフェニルメタン−4,4′,4″−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン、4,4′−ジメチルジフェニルメタン−2,2′,5,5′−テトライソシアネートなどの3個以上のイソシアネ−ト基を有するポリイソシアネート化合物の如き有機ポリイソシアネートそれ自体、またはこれらの各有機ポリイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂もしくは水等との付加物、あるいは上記した各有機ポリイソシアネート同志の環化重合体、更にはイソシアネート・ビウレット体等を挙げることができる。これらは、1種で又は2種以上混合して使用することができる。
【0041】
上記イソシアネート硬化剤(d)の使用量は、この中に含まれるイソシアネート基(NCO)が、上記アクリル系共重合体(c)中の水酸基(OH)に対して、NCO/OHの当量比で、通常、0.2〜2.0、好ましくは0.5〜1.5となる範囲内となるように選択されることが適当である。
【0042】
上記クリヤーコート塗料(II)は、有機溶剤型塗料であり、該有機溶剤としては、例えばヘプタン、トルエン、キシレン、オクタン、ミネラルスピリット等の炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、 sec−ブタノール、イソブタノール等のアルコール系溶剤;n−ブチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル系;スワゾール310、スワゾール1000、スワゾール1500(以上、いずれもコスモ石油(株)製)、SHELLSOL A(シェルゾールA、シェル化学(株)製)等の芳香族石油系溶剤等を挙げることができる。これらの有機溶剤は1種で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0043】
上記クリヤーコート塗料(II)には、さらに必要に応じて、顔料類、非水分散樹脂、ポリマー微粒子、硬化触媒、紫外線吸収剤、光安定剤、塗面調整剤、酸化防止剤、流動性調整剤、ワックス等を適宜含有することができる。
【0044】
硬化触媒としては、例えばジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジラウレートなどの有機錫化合物、トリエチルアミン、ジエタノールアミン等が挙げられる。
【0045】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、サリシレート系、蓚酸アニリド系などの化合物を挙げることができる。紫外線安定剤としては、ヒンダードアミン系化合物を挙げることができる。
【0046】
本発明方法は、被塗物面に、前記水性ベースコート塗料(I)を塗装し、次いでその上に上記クリヤーコート塗料(II)を塗装する。
【0047】
被塗物面とは、鉄、アルミニウム、真鍮、銅板、ステンレス鋼板、ブリキ板、亜鉛めっき鋼板、合金化亜鉛(Zn−Al、Zn−Ni、Zn−Feなどの)めっき鋼板などの金属;これらの金属表面に燐酸塩処理、クロメート処理などの化成処理を施した表面処理金属;プラスチック、木材、コンクリート、モルタル等の被塗物素材面、又はこれら被塗物素材面にプライマー等の下塗及び/又は中塗及び/又は上塗塗料を塗装した塗膜面などである。
【0048】
水性ベースコート塗料(I)及びクリヤーコート塗料(II)の塗装方法としては、従来公知の手法であれば特に制限なく、例えば静電塗装、流動浸漬塗装、エアスプレ−塗装、エアレススプレ−塗装等が挙げられ、膜厚は、ベースコート塗膜が乾燥膜厚で5〜200μm、好ましくは10〜100μm、クリヤーコート塗膜が乾燥膜厚で10〜200μm、好ましくは20〜100μmの範囲内に塗装するのが望ましい。
【0049】
塗装後の塗膜の硬化、乾燥は、常温乾燥、強制乾燥のいずれであっても良く、各層毎に行ってもよいが、未硬化の下層の塗面に上層の塗膜を設けて各塗膜を一度に硬化させる2コート1ベークを行なってもよい。
【0050】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、本発明の範囲は、これらの実施例にのみ限定されるものではない。また、実施例中の「部」および「%」は、それぞれ、「重量部」および「重量%」を示す。
【0051】
アクリル系共重合体溶液の製造
製造例1〜5
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入口を備えた四ツ口フラスコにトルエン32部を仕込み、114℃に昇温し、同温度にて下記表1に示すモノマーと重合開始剤(t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート)4.9部とトルエンとからなる組成配合の滴下モノマー混合物を3時間かけて滴下し、滴下が終了した後、約30分間114℃で保持して、次いで追加触媒(t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート)0.5部とトルエン8部との混合溶液を1時間かけて滴下し、滴下が終了した後、約1時間114℃で保持して、固形分55%の各アクリル共重合体溶液(c−1)〜(c−5)を得た。得られた各アクリル共重合体溶液の固形分及び樹脂性状値を同表に示す。表1における(注1)は、下記の意味を有する。
【0052】
(注1)「マクロモノマーAA−6」:東亞合成(株)製、ポリマー鎖末端にメタクロイル基を有するポリメチルメタクリレート、数平均分子量約6,000、45%トルエン溶液
【0053】
【表1】
【0054】
クリヤーコート塗料の作成
上記製造例1〜5で得られたアクリル共重合体溶液などを用いて、後記表2に示す配合にて塗装直前に混合し、塗料化を行い各クリヤコート塗料▲1▼〜▲5▼を作成した。表2における(注2)〜(注4)は、それぞれ下記の意味を有する。
【0055】
(注2)「スミジュールN−3300」:住友バイエルウレタン(株)製、ヘキサメチレンジイソイシアネートのイソシアヌレート体、NCO含量21.5%(注3)「Scat2L」:三共有機合成(株)製、有機金属触媒混合物(ジ−n−ブチル錫脂肪酸塩及び脂肪酸亜鉛類の50%キシレン溶液)
(注4)「BYK306」:ビックケミー(株)製、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、固形分12.5%
【0056】
【表2】
【0057】
水性ベースコート塗料の作成
固形分66%のアルミペースト(注5)45.5部とエチレングリコールモノブチルエーテル35部と固形分50%リン酸基含有樹脂溶液(注6)3部を加えて攪拌混合し、さらに固形分50%の水溶性アクリル樹脂溶液(注7)40部を加えて混合撹拌し、さらに脱イオン水210部、固形分35%のウレタンディスパージョン(注8)230部と増粘剤(注9)100部を加えて攪拌混合して固形分20%の水性メタリックベースコート塗料を得た。
【0058】
(注5)アルミペースト:旭化成メタルズ(株)製、固形分66%。
【0059】
(注6)リン酸基含有樹脂溶液:攪拌器、温度調整器及び冷却器を備えた反応容器にメトキシプロパノール27.5部及びイソブタノール27.5部の混合溶剤を入れ、110℃に加熱し、同温度に保持してから、スチレン25部、n−ブチルメタクリレート27.5部、「イソステアリルアクリレート」(大阪有機化学工業(株)製、商品名)20部、4−ヒドロキシブチルアクリレート7.5部、りん酸基含有重合性モノマー(a1)15部、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート12.5部、イソブタノール10部及びt−ブチルパーオキシオクタノエート4部からなる混合物121.5部を4時間を要して上記の混合溶剤に滴下し、さらにt−ブチルパーオキシオクタノエート0.5部とイソプロパノール20部とからなる混合物を1時間を要して滴下した。その後、1時間攪拌熟成して固形分50%のリン酸基含有樹脂溶液を得た。本樹脂のりん酸基による酸価は83mgKOH/g、4−ヒドロキシブチルアクリレートに由来する水酸価は29.2mgKOH/g、重量平均分子量は10000であった。
【0060】
尚、上記りん酸基含有重合性モノマー(a1)は次の通りに得たものである。攪拌器、温度調整器及び冷却器を備えた反応容器にモノブチルリン酸57.55部及びイソブタノール41.1部を仕込み、空気通気下で、グリシジルメタクリレート42.45部を2時間を要して滴下した後、さらに1時間攪拌熟成した。その後、イソプロパノール58.88部を加えて希釈して固形分50%のりん酸基含有重合性モノマー溶液を得た。りん酸基による酸価は285mgKOH/gであった。
【0061】
(注7)水溶性アクリル樹脂溶液:撹拌機、温度計、還流冷却管の備わった通常のアクリル樹脂反応槽に、エチレングリコールモノブチルエーテル55部を仕込み、加熱撹拌して110℃に保持した。この中に、メチルメタクリレート19部、イソボルニルアクリレート35部、n−ブチルメタクリレート22部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部、「NFバイソマーS20W」(第一工業製薬(株)製、商品名、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートの50%水希釈品、分子量約2080)20部、アクリル酸4部、アゾビスイソブチロニトリル1部及びイソブチルアルコール5部からなる混合物を3時間かけて滴下した。滴下終了後、110℃で30分間熟成し、次にエチレングリコールモノブチルエーテル20部及びアゾビスイソブチロニトリル0.5部からなる追加触媒混合液を1時間かけて滴下した。ついで110℃で1時間熟成したのち冷却し、固形分50%のアクリル樹脂溶液を得た。
【0062】
(注8)ウレタンディスパージョン:第一工業製薬(株)製、固形分35%
(注9)増粘剤:クラリアントポリマー(株)製、アルカリ増粘型エマルション、固形分5%。
【0063】
塗 装
実施例1〜3及び比較例1、2
新車用クリヤー塗料を塗装した工程板を、#800耐水ペーパーで研磨後脱脂し、被塗板とした。この脱脂面に上記で作成した水性メタリックベースコート塗料を脱イオン水で25秒(イワタカップ/25℃)に粘調し、20℃・60%RH雰囲気下で乾燥膜厚が20μmとなるようエアスプレー塗装を行い、エアブロー後、表3の組合せで上記で作成したクリヤーコート塗料を混合シンナーにて13〜14秒(フォードカップ#4/25℃)に粘調し、20℃・60%RH雰囲気下で乾燥膜厚が40μmとなるようエアスプレー塗装を行い、60℃で30分間乾燥させて各試験塗板を作成した。
【0064】
得られた各試験塗板を下記性能試験に供した。結果を表3に示す。
【0065】
(*1)初期付着性:各試験板上の複層塗膜に素地に達するようにカッターで切り込みを入れ、大きさ1mm×1mmのゴバン目を100個作り、その表面に粘着セロハンテープを貼着し、20℃においてそのテープを急激に剥離した跡のゴバン目塗膜の残存数を調べた。○は100個残存、△は99〜81個残存、□は80〜41個残存、×は40個以下残存していたことを示す。
【0066】
(*2)耐水性:各試験塗板を40℃の温水に10日間浸漬し、引き上げてから各塗膜表面を観察した(○:異常なし、×:フクレ、白化などの異常がみられる)。
【0067】
(*3)耐水付着性:各試験塗板を40℃の温水に10日間浸漬し、引き上げ、室温で12時間乾燥してから、上記(*1)の付着性と同様にしてゴバン目試験を行なった。評価基準も(*1)と同じである。
【0068】
(*4)促進耐候性試験:各試験塗板を、Qパネル(株)製促進耐候性試験機(QUV)を用いた促進耐候性試験に供した。試験条件は、(紫外線照射:70℃で8時間〜湿潤:4時間)の繰り返しを100時間行なった後、試験後の塗板を40℃の温水に2日間浸漬するのを1サイクルとした。この1サイクル後と2サイクル後の塗板を夫々、上記(*1)の付着性と同様にしてゴバン目試験に供した。評価基準も(*1)と同じである。
【0069】
(*5)塗膜外観:各試験板の塗膜面を目視で評価した。○はメタリック顔料が塗面に対して平行かつ均一に配向し、メタリックムラの発生が全く認められない、△はメタリックムラの発生が少し認められた、×はメタリックムラの発生が多く認められたことを示す。
【0070】
【表3】
【0071】
【発明の効果】
本発明方法によれば、水性ベースコート塗膜と有機溶剤希釈型のクリヤーコート塗膜との組み合わせであっても、屋外暴露での層間ハガレも生じることなく、耐候性及び耐水付着性に優れた複層塗膜を形成できる。本発明の塗装方法は、特に自動車外板やバンパー等の塗装、自動車補修塗装用に有用である。
Claims (4)
- 被塗物面に、水溶性樹脂及び/又は水分散性樹脂(a)、着色顔料及び/又は光輝顔料(b)を主成分として含有する水性ベースコート塗料(I)を塗装し、次いでその上にマクロモノマーを5〜50重量%含有するモノマー混合物を共重合してなる水酸基価60〜130mgKOH/gのアクリル系共重合体(c)、及びイソシアネート硬化剤(d)を含有する有機溶剤型クリヤーコート塗料(II)を塗装することを特徴とする塗装方法。
- マクロモノマーが、メチルメタクリレート系マクロモノマーである請求項1記載の塗装方法。
- 水溶性樹脂及び/又は水分散性樹脂(a)が、ポリオキシアルキレン鎖を有するものである請求項1記載の塗装方法。
- 請求項1ないし3のいずれか1項記載の塗装方法によって得られる塗装物品。
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