JP2004129683A - 歯ブラシ - Google Patents
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Abstract
【課題】毛先の歯間進入性が高く、当たり心地と刷掃実感に優れ、しかも口腔内の隅々まで歯垢除去能力の高い歯ブラシを提供する。
【解決手段】毛束1をテーパー毛によって構成し、ヘッド部2の側面から見たとき、該テーパー毛からなる毛束1群を一束一山からなる山切りカット部分と二束一山からなる山切りカット部分に形成するとともに、二束一山からなる山切りカット部分と一束一山からなる山切りカット部分の山頂の高さを異ならしめる。また、二束一山からなる山切りカット部分の毛束1,1を山切りカットの山頂側に向かって傾斜する。また、少なくとも二束一山からなる山切りカット部分に隣接する前後いずれか一方の側の山切りカット部分を一束一山からなる山切りカットとする。さらに、各山切りカット部分において、毛丈の高いテーパー毛ほど毛先の先鋭度を鋭く形成する。
【選択図】 図1
【解決手段】毛束1をテーパー毛によって構成し、ヘッド部2の側面から見たとき、該テーパー毛からなる毛束1群を一束一山からなる山切りカット部分と二束一山からなる山切りカット部分に形成するとともに、二束一山からなる山切りカット部分と一束一山からなる山切りカット部分の山頂の高さを異ならしめる。また、二束一山からなる山切りカット部分の毛束1,1を山切りカットの山頂側に向かって傾斜する。また、少なくとも二束一山からなる山切りカット部分に隣接する前後いずれか一方の側の山切りカット部分を一束一山からなる山切りカットとする。さらに、各山切りカット部分において、毛丈の高いテーパー毛ほど毛先の先鋭度を鋭く形成する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、毛束にテーパー毛を用い、このテーパー毛からなる毛束を山切りカットした歯ブラシに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から山切りカットを採用した歯ブラシは広く知られており、様々な検討がなされてきた。また、テーパー毛を刷毛とする歯ブラシも広く知られており、同様に様々な検討がなされてきた。しかし、テーパー毛を用いた歯ブラシは、そのトリミングや毛先加工が困難であるため、テーパー毛を刷毛とする山切りカットの歯ブラシの検討はほとんどなされていないのが現状である。また、山切りカットに関しても、山自体の形状の工夫はなされているものの、複雑な異種山切り形状との混合パターンはほとんど検討されていない。以下に、従来の山切りカットを利用した歯ブラシの例を挙げる。
【0003】
▲1▼実開昭61−97924号公報
二束一山に山切りカットした歯ブラシにおいて、山の頂部を形成するブリッスルの先端に、そのブリッスル径よりも大きな球状物を形成した歯ブラシが示されている。この歯ブラシの場合、毛先が球状のため、当たり心地はよくなるが、山頂部分の毛先進入性はかなり損なわれる。
【0004】
▲2▼実開昭58−14732号公報
柄部とヘッド部植毛面とのなす角度が180度より小さくされた歯ブラシにおいて、ブリッスル束を段切りとした歯ブラシが示されている。この歯ブラシの場合、基本的にはブリッスル束の一束毎に山切りカットしており、山切りプロファイルの最適化が図られておらず、また、ブリッスル束を構成するブリッスルも特にテーパー毛を指定していない。
【0005】
▲3▼特開2001−299452号公報
毛束をテーパー毛で構成するとともに、山切りカットした歯ブラシが示されている。この歯ブラシの場合、毛束は傾斜配置されておらず、また、山切り形状もオーソドックスな二束一山カットであり、カットの最適条件も追求されていない。
【0006】
▲4▼特開平6−141923号公報
両端がテーパー形状の刷毛を用い、テーパー先端部から1mm、3mm、5mm、8mmの各位置における刷毛径が基部の刷毛径に対して25〜30%、55〜70%、80〜90%、90%〜100%とした歯ブラシが示されている。この歯ブラシの場合、両端テーパー毛のため、狭い隙間への毛先進入性能が非常に高く、また毛先の当たり心地もソフトであるが、刷掃実感に不足を感じることがある。
【0007】
▲5▼特願2001−054838号
二束一山からなる山切りカット部分と一束一山からなる山切りカット部分とが混在し、植毛部を側面から見て略中央部分に二束一山カット、外側に一束一山カットのプロファイルとした歯ブラシが示されている。この発明は本出願人の出願(未公開)に係るものであるが、この歯ブラシの場合、内側に配置した二束一山からなる山切りカット部分の歯間進入性は高いが、外側に配置した一束一山からなる山切りカット部分は歯間の奥まで進入できないため、磨き残しを生じることがあり、改良の余地があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記したように、単に山切りカットを採用しただけでは、毛先の歯間進入性に優れると同時に当たり心地のよい歯ブラシを得ることは難しく、また、単にテーパー毛の刷毛を採用しただけでは、歯間進入性は高いが、刷掃実感や口腔内の隅々までの歯垢除去能力を向上させることが困難であった。
【0009】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、毛先の歯間進入性が高く、当たり心地と刷掃実感に優れ、しかも口腔内の隅々まで歯垢除去能力の高い歯ブラシを提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
一般に、テーパー毛を用いた歯ブラシはその歯間到達度が高いことは以前から知られており、数々の製品化が開発されている。また、歯間到達度の高い刷毛プロファイルの代表としては山切りカットが知られているが、これも以前から数多くの製品が開発されている。さらに、前述した特開2001−299452号公報に記載されているように、テーパー毛からなる毛束を用い、このテーパー毛からなる毛束を二束一山で1つの山切りカットとした場合、歯間到達度がさらに高いことが知られていた。
【0011】
そこで、本発明者は、歯間到達度についてさらに検討するため、非テーパー毛からなる毛束を用いて二束一山に山切りカットした歯ブラシと、テーパー毛からなる毛束を用いて二束一山に山切りカットとした歯ブラシを用い、それぞれの歯間到達度の試験を行った。その結果を図7(a)(b)に示す。図7(a)は歯間到達度の測定結果を示す棒グラフ、図7(b)は試験に用いた各歯ブラシの仕様である。
【0012】
図7(a)から明らかなように、同じ二束一山の山切りカットでも、毛束を構成する刷毛としてテーパー毛を用いれば、毛先の歯間到達度はブラッシング荷重の大小にかかわらず向上することが分かった。
【0013】
本発明者は、上記試験結果を参考に、さらに実験を行った結果、毛束にテーパー毛を用いるとともに、このテーパー毛からなる毛束を二束一山の山切りカットと一束一山の山切りカットの2種類にプロファイリングして混在させ、さらに、この二束一山の山切りカット部分と一束一山の山切りカット部分の山頂部の毛丈に段差(以下、「山間段差」という)を与えれば、さらに歯間到達度を上げることができることを見い出した。
【0014】
そして、さらに実験を重ねた結果、上記したように二束一山と一束一山の山切りカット部分を混在させ、これらの山切りカット間に山間段差を与えた上で、さらに、二束一山の山切りカット部分を構成する2つの毛束に山頂方向に向かう傾斜を与えれば、歯間到達度をさらに向上できることを見い出した。この試験結果を図8(a)(b)に示す。図8(a)は歯間到達度の測定結果を示す棒グラフ、図8(b)は試験に用いた各歯ブラシの仕様である。
【0015】
図8(a)から明らかなように、従来から知られた二束一山の歯ブラシの場合、歯間到達度は57%であるが、一束一山+二束一山+山間段差を与えた歯ブラシの場合、歯間到達度は70%にも達し、さらに、一束一山+二束一山+山間段差+傾斜を与えた歯ブラシの場合には、歯間到達度はさらに向上し、77%にも達することが確認された。従来の二束一山の歯ブラシの歯間到達度が57%であることを考えると、一束一山+二束一山+山間段差とした場合、および一束一山+二束一山+山間段差+傾斜とした場合、その歯間到達能度を格段に向上できることを発見した。
【0016】
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであって、毛束をテーパー毛によって構成し、ヘッド部側面から見たとき、該テーパー毛からなる毛束群を一束一山からなる山切りカット部分と二束一山からなる山切りカット部分に形成するとともに、二束一山からなる山切りカット部分と一束一山からなる山切りカット部分の山頂の高さを異ならしめたこと特徴とするものである。さらに、この構成に加え、二束一山からなる山切りカット部分の毛束を山切りカットの山頂側に向かって傾斜させ、さらに、少なくとも二束一山からなる山切りカット部分に隣接する前後いずれか一方の側の山切りカット部分を一束一山からなる山切りカットとし、さらにまた、各山切りカット部分において、毛丈の高いテーパー毛ほど毛先の先鋭度を鋭く形成したものである。
【0017】
上記のような構成とすれば、毛先の歯間進入性が高く、当たり心地と刷掃実感に優れ、しかも口腔内の隅々まで歯垢除去能力の高い歯ブラシとすることができる。
【0018】
1.山切りカットのプロファイル
本発明の場合、毛束二束で一山を形成するものと、毛束一束で一山を形成するものとを混在させる。これら山切りプロファイルは、ヘッド部側面から毛束群を見たときに山形をなすようにトリミングし、ヘッド部短軸方向に沿って山頂部が並ぶように植毛する。1つの山切りプロファイルにおける山頂部と谷部との高低差(「山谷差」という)は、二束一山の場合、1.0〜5.0mmの範囲が好ましく、2.5〜3.5mmがより好ましい。一束一山の場合、1.0〜4.0mmの範囲が好ましく、1.5〜3mmがより好ましい。この山谷差は、大き過ぎると毛先の当たり心地を悪化させるばかりでなく、毛腰が適正値から外れ、清掃効果を低下させる。逆に、山谷差が小さ過ぎる場合は山切りプロファイルを形成する意味がなくなり、これもまた清掃効果を低下させる。
【0019】
2.山部の配置パターン
一束一山の山切りカットと二束一山の山切りカットは、その目的からある程度配置を考慮する必要がある。一山一束の山切りカットだけとした場合、刷掃実感は高いが歯間進入性にやや劣り、二束一山の山切りカットだけとした場合ではその逆となるため、一束一山の山切りカット部分と二束一山の山切りカット部分の比率は、一束一山:二束一山=2:1〜1:2、好ましくは1:1となるように設計する。また、同様の理由から、二束一山と一束一山の山切りカット部分は、ヘッド部側面から見て、交互に配置することが望ましく、少なくとも二束一山の山切りカット部分に隣接する前後いずれか一方の山切りカット部分は、一束一山の山切りカットとすることが好ましい。
【0020】
また、歯間進入性を向上させるため、一束一山と二束一山との間には山間段差(山頂間の高低差)を与える。この山間段差は0.5〜3.0mmの範囲がよく、1.0〜2.mm程度の範囲がより好ましい。また、この山間段差は二束一山の方が一束一山の方よりも高くなるように設定することが好ましい。山間段差があまり大き過ぎると、毛先の当たり心地を悪化させ、使用感に悪影響を及ぼす。
【0021】
3.毛束の傾斜角度
毛束はヘッド部植毛面に対して垂直でもよいが、毛先の歯間進入性をより向上させるために、山切りカットの山頂に向かって内傾していることが望ましい。基本的に、傾斜させる毛束は二束一山部分の毛束とし、一束一山部分の毛束は垂直のままでもよい。毛束の傾斜角度は、大き過ぎると毛先の当たり心地の悪化を招くため、毛束のヘッド部植毛面の法線に対して15度以下がよく、5度以下とすればより望ましい。なお、毛束に傾斜を与えるには、ヘッド部植毛面に形成する植毛穴を指定の角度だけ傾斜させればよい。
【0022】
4.植毛穴
植毛穴の穴径は0.8〜3.0mmφの範囲が好ましく、1.0〜2.0mmφの範囲がより好ましい。0.8mmφ未満では毛腰が弱くなり過ぎるか、高密度植毛となり、ヘッド部の衝撃強度の低下を招く。3.0mmφ超では毛束が大きくなり過ぎ、毛先の歯間進入性を逆に悪化させることとなり、本発明の効果が発揮されにくくなる。植毛穴の形状は毛立ちの良さから丸穴が好ましいが、四角形や星形などでもよく、特に大きな制約はない。
【0023】
5.毛丈
毛丈(植毛面から山切りカット山頂部までの高さ)は5〜15mmの範囲が好ましいが、8〜13mmがより好ましい。短過ぎると毛先の歯間進入性の悪化を招き、長過ぎると口腔内での操作性を損なう結果となる。
【0024】
6.穴間隔
隣接する植毛穴の穴間距離(穴縁から穴縁までの距離)は、大き過ぎると毛腰が不足し、粗雑な磨き心地になりやすく、小さ過ぎると毛腰が強くなり、歯間進入性を妨げやすい。したがって、穴間距離は0.3〜2.0mmの範囲が好ましく、0.5〜1.5mmの範囲がより好ましい。傾斜植毛された二束一山の毛束部分では、山頂部で毛束の先端同士が重なりやすい。したがって、この重なりは0.1〜1.0mmの範囲に留めるのがよく、好ましくは0.5mm以下とする。毛束同士の重なりが大き過ぎると、山頂部での刷毛の量が多くなり過ぎ、歯間進入性をお互いに妨げる結果となる。また、二束一山の毛束が傾斜とされている場合、一束一山周辺の刷毛密度が小さくなる。したがって、このような場合には、一束一山の毛束とその周辺の毛束との穴間隔を若干狭く設定し、一束一山周辺の刷毛密度を上げることが望ましい。
【0025】
7.刷毛
本発明の場合、毛束を構成する刷毛(フィラメント)はすべてテーパー毛とすることが好ましい。刷毛径は、その基部径0.1〜0.3mmφの範囲が好ましく、0.15〜0.25mmφの範囲がさらに好ましい。テーパー毛の毛先先端径は限りなく細く鋭いものでもよいが、毛先先端径5〜150μmφ程度でもよい。また、テーパー形状は、一定のテーパー度で毛先に向かって細くなるものでもよいが、毛先に向かうに従ってテーパー曲率が変化するものや、段階的に細くなっていくものでもよい。刷毛の断面形状は丸形が好ましいが、四角形、星形などでもよく、特に制約はない。
【0026】
刷毛の材質は、ナイロンやポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)など特に制約はないが、テーパー形状への加工性を考慮すると、PET、PBT、PTTなどのポリエステル樹脂が好ましい。刷毛はすべて同じ材質でもよいが、目的に応じて複数種類用いてもよい。また、前記材質を組み合わせた二重芯鞘構造用毛などでも構わない。
【0027】
8.毛先形状
毛束を構成するテーパー毛の先端形状は、毛束全体で同じ形状でもよいが、山切りカットの山頂側と谷部側でテーパー毛の先端形状を変えてもよい。この場合、刷毛としての歯間進入性と刷掃実感の両立から、山頂部に近いほど用毛先端径が小さいか、テーパーの鋭い刷毛を用い、谷部側に向かうに従ってテーパー先端径が大きいか、テーパーの鋭くない刷毛を用いることが好ましい。
【0028】
さらに、毛先の当たり心地を向上させるため、刷毛の毛先には研磨加工などによって毛先丸め処理を施しておく方が好ましい。また、毛先進入性向上のために、山切りカットの山頂から中腹にかけての刷毛の毛先は再加工を施して再テーパー化することが望ましい。再テーパー化処理は、研磨など物理的加工でも、薬品などを用いた化学的加工でもよい。再テーパー化処理時、山頂部の先端径は限りなく鋭く細くしてもよいが、前述したように先端径5〜150μmφ程度でもよい。より好ましい範囲は、5〜80μmφ程度である。谷部側の刷毛の毛先は目的により任意の先端径とすればよい。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1に、本発明に係る歯ブラシの第1の実施の形態を示す。
この第1の実施の形態は、二束一山からなる山切りカット部分と、一束一山からなる山切りカット部分を交互に並べた場合の例を示すものである。
【0030】
すなわち、この第1の実施の形態に係る歯ブラシは、各毛束1を構成する刷毛として、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)製の基部径0.19mmφ、長さ31mmのテーパー毛を用い、このテーパー毛を所定本束ねた毛束1を、公知の平線式植毛機によって歯ブラシヘッド部2の植毛面3に植毛する。
【0031】
次いで、ロータリーカッターを用いて、植毛した各毛束1を所定の山切り形状にカットする。この第1の実施の形態の場合、一束一山からなる山切りカット部分を▲1▼、二束一山からなる山切りカット部分を▲2▼とすると、ヘッド部側面から見て、▲2▼▲1▼▲2▼▲1▼▲2▼の山切り配列となるように各毛束1をカットするとともに、一束一山の毛束ついては植毛面3に対して垂直植毛し、二束一山の毛束については植毛面3の法線に対して2度だけそれぞれ山頂側に内傾させて植毛した。
【0032】
そして、その毛丈(植毛面3から山切りカットの山頂部までの高さ)については、二束一山部分を12mm、一束一山部分を11mmとし、両者間の山間段差を1.0mmとし、二束一山の方が一束一山よりも1mmだけ高くなるようにカットした。また、山切りカット部分の山谷差は、一束一山部分で2.0mm、二束一山部分で3.0mmにプロファイリングした。
【0033】
上記プロファイリング後、荒い研磨粒度からなるドラム式自公転丸め装置を用いて各毛束の山部中腹から頂部までの刷毛の毛先部分を再テーパー化するとともに、谷部側の刷毛の毛先をラウンド加工する。その後、さらに細かい研磨粒度からなる自公転丸め装置を用いて毛束のポリッシュを行い、刷毛表面を平滑化するとともに、テーパー毛の毛先をより先鋭化し、完成品とした。
【0034】
図2に、本発明に係る歯ブラシの第2の実施の形態を示す。
この第2の実施の形態に係る歯ブラシは、各毛束1を構成する刷毛としてポリブチレンテレフタレート(PBT)製のテーパー毛を用い、一束一山部分は基部径0.19mmφ、長さ29mmのテーパー毛とするとともに、二束一山部分は基部径0.22mmφ、長さ29mmのテーパー毛とし、これらのテーパー毛を所定本束ねた毛束1を公知の平線式植毛機によって歯ブラシヘッド部2の植毛面3に植毛する。
【0035】
次いで、ロータリーカッターを用いて、植毛した各毛束1を所定の山切り形状にカットする。この第2の実施の形態の場合、一束一山からなる山切りカット部分を▲1▼、二束一山からなる山切りカット部分を▲2▼とすると、ヘッド部側面から見て、▲2▼▲1▼▲2▼▲2▼▲1▼▲2▼の山切り配列となるように各毛束1をカットするとともに、一束一山の毛束ついては植毛面3に対して垂直植毛し、二束一山の毛束については植毛面3の法線に対して4度だけそれぞれの山頂側に内傾させて植毛した。
【0036】
そして、その毛丈については、二束一山部分を11mm、一束一山部分を9mmとし、両者間の山間段差を2.0mmとし、二束一山の方が一束一山よりも2.0mmだけ高くなるようにカットした。また、山切りカット部分の山谷差は、一束一山部分で1.0mm、二束一山部分で3.0mmにプロファイリングした。
【0037】
上記プロファイリング後、荒い研磨粒度からなるドラム式自公転丸め装置を用いて各毛束の山部中腹から頂部までの刷毛の毛先部分を再テーパー化するとともに、谷部側の刷毛の毛先をラウンド加工する。その後、さらに薬品加工(加温した高濃度NaOHに浸漬)して刷毛表面を平滑化するとともに、テーパー毛の毛先をより先鋭化し、完成品とした。
【0038】
図3に、本発明に係る歯ブラシの第3の実施の形態を示す。
この第3の実施の形態に係る歯ブラシは、前記第1の実施の形態(図1)と同様に▲2▼▲1▼▲2▼▲1▼▲2▼の山切り配列とするとともに、一束一山部分は基部径0.20mmφ、毛丈11mmのテーパー毛とし、さらに、二束一山部分については、真ん中の二束一山部分が基部径0.22mmφ、毛丈10mmのテーパー毛、左右の二束一山部分が基部径0.19mmφ、毛丈12mmのテーパー毛とし、真ん中の二束一山部分の毛丈を他の部分よりも低くしたものである。
【0039】
図4に、本発明に係る歯ブラシの第4の実施の形態を示す。
この第4の実施の形態に係る歯ブラシは、前記第2の実施の形態(図2)と同様に▲2▼▲1▼▲2▼▲2▼▲1▼▲2▼の山切り配列とするとともに、一山一束部分は基部径0.15mmφ、毛丈13mmのテーパー毛、二束一山部分は基部径0.22mmφ、毛丈10mmのテーパー毛とし、前述までの例とは逆に、一山一束部分の毛束の毛丈を二束一山部分よりも3mm高くしたものである。
【0040】
図5に、本発明に係る歯ブラシの第5の実施の形態を示す。
この第5の実施の形態に係る歯ブラシは、傾斜毛束の説明のためのものであって、二束一山部分の毛束1を植毛面3の法線nに対して山頂側に向けて5度だけ傾斜させた歯ブラシの例を示すものである。このように毛束を傾斜させた場合、二束一山部分の植毛穴の穴間距離gは前述したように0.3〜2.0mmの範囲とすることが好ましい。また、毛束を傾斜させた場合、山頂部で毛束の先端同士が重なりやすいが、この重なりは前述したように0.1〜1.0mmの範囲に設定するのがよい。
【0041】
図6(a)〜(d)に、毛束1を構成するテーパー毛4の毛先先端の形状例を示す。(a)は毛束1を構成する全ての刷毛4の先端部分を同じ形状(刷毛の毛先先端径10μm)に尖らせた場合の例、(b)は山の頂上にいくほど毛先のテーパーが鋭く(山部頂点の刷毛の毛先先端径30μm)、谷部にいくほど鈍角な形状とした場合の例、(c)は山の頂上にいくほど毛先のテーパーが鋭く、谷部にいくほど鈍角な形状とするとともに、各刷毛4の先端部分に水平部(先端水平部径80μm)を残した場合の例、(d)は山の頂上にいくほど毛先のテーパーが鋭く、谷部にいくほど鈍角かつ毛先丸め加工を施した場合の例をそれぞれ示すものである。
【0042】
なお、参考のため、上記した本発明構成の毛束が植毛される歯ブラシハンドルの具体的な形状例を図9(a)〜(c)に示す。(a)は歯ブラシハンドル全体の平面図、(b)はその側面図、(c)はその背面図である。
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、毛束をテーパー毛によって構成し、ヘッド部側面から見たとき、該テーパー毛からなる毛束群を一束一山からなる山切りカット部分と二束一山からなる山切りカット部分に形成するとともに、二束一山からなる山切りカット部分と一束一山からなる山切りカット部分の山頂の高さを異ならしめたので、毛先の歯間進入性が高く、当たり心地と刷掃実感に優れ、しかも口腔内の隅々まで歯垢除去能力の高い歯ブラシを得ることができる。
【0044】
また、二束一山からなる山切りカット部分の毛束を山切りカットの山頂側に向かって傾斜させ、さらに、少なくとも二束一山からなる山切りカット部分に隣接する前後いずれか一方の側の山切りカット部分を一束一山からなる山切りカットとし、さらにまた、各山切りカット部分において、毛丈の高いテーパー毛ほど毛先の先鋭度が鋭く形成したので、前記効果をさらに高めた歯ブラシを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る歯ブラシの第1の実施の形態を示す図である。
【図2】本発明に係る歯ブラシの第2の実施の形態を示す図である。
【図3】本発明に係る歯ブラシの第3の実施の形態を示す図である。
【図4】本発明に係る歯ブラシの第4の実施の形態を示す図である。
【図5】本発明に係る歯ブラシの第5の実施の形態を示す図である。
【図6】(a)〜(d)はそれぞれ毛束を構成するテーパー毛の毛先先端の形状例を示す図である。
【図7】従来の歯ブラシの歯間到達度の試験結果を示すもので、(a)は歯間到達度の測定結果の棒グラフ、(b)は試験に用いた各歯ブラシの仕様を示す図である。
【図8】本発明の歯ブラシと従来の歯ブラシの歯間到達度の比較結果を示すもので、(a)は歯間到達度の測定結果の棒グラフ、(b)は試験に用いた各歯ブラシの仕様を示す図である。
【図9】本発明構成の毛束が植毛される歯ブラシハンドルの具体的な形状例を示すもので、(a)は歯ブラシハンドル全体の平面図、(b)はその側面図、(c)はその背面図である。
【符号の説明】
1 毛束
2 ヘッド部
3 植毛面
4 刷毛
【発明の属する技術分野】
本発明は、毛束にテーパー毛を用い、このテーパー毛からなる毛束を山切りカットした歯ブラシに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から山切りカットを採用した歯ブラシは広く知られており、様々な検討がなされてきた。また、テーパー毛を刷毛とする歯ブラシも広く知られており、同様に様々な検討がなされてきた。しかし、テーパー毛を用いた歯ブラシは、そのトリミングや毛先加工が困難であるため、テーパー毛を刷毛とする山切りカットの歯ブラシの検討はほとんどなされていないのが現状である。また、山切りカットに関しても、山自体の形状の工夫はなされているものの、複雑な異種山切り形状との混合パターンはほとんど検討されていない。以下に、従来の山切りカットを利用した歯ブラシの例を挙げる。
【0003】
▲1▼実開昭61−97924号公報
二束一山に山切りカットした歯ブラシにおいて、山の頂部を形成するブリッスルの先端に、そのブリッスル径よりも大きな球状物を形成した歯ブラシが示されている。この歯ブラシの場合、毛先が球状のため、当たり心地はよくなるが、山頂部分の毛先進入性はかなり損なわれる。
【0004】
▲2▼実開昭58−14732号公報
柄部とヘッド部植毛面とのなす角度が180度より小さくされた歯ブラシにおいて、ブリッスル束を段切りとした歯ブラシが示されている。この歯ブラシの場合、基本的にはブリッスル束の一束毎に山切りカットしており、山切りプロファイルの最適化が図られておらず、また、ブリッスル束を構成するブリッスルも特にテーパー毛を指定していない。
【0005】
▲3▼特開2001−299452号公報
毛束をテーパー毛で構成するとともに、山切りカットした歯ブラシが示されている。この歯ブラシの場合、毛束は傾斜配置されておらず、また、山切り形状もオーソドックスな二束一山カットであり、カットの最適条件も追求されていない。
【0006】
▲4▼特開平6−141923号公報
両端がテーパー形状の刷毛を用い、テーパー先端部から1mm、3mm、5mm、8mmの各位置における刷毛径が基部の刷毛径に対して25〜30%、55〜70%、80〜90%、90%〜100%とした歯ブラシが示されている。この歯ブラシの場合、両端テーパー毛のため、狭い隙間への毛先進入性能が非常に高く、また毛先の当たり心地もソフトであるが、刷掃実感に不足を感じることがある。
【0007】
▲5▼特願2001−054838号
二束一山からなる山切りカット部分と一束一山からなる山切りカット部分とが混在し、植毛部を側面から見て略中央部分に二束一山カット、外側に一束一山カットのプロファイルとした歯ブラシが示されている。この発明は本出願人の出願(未公開)に係るものであるが、この歯ブラシの場合、内側に配置した二束一山からなる山切りカット部分の歯間進入性は高いが、外側に配置した一束一山からなる山切りカット部分は歯間の奥まで進入できないため、磨き残しを生じることがあり、改良の余地があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記したように、単に山切りカットを採用しただけでは、毛先の歯間進入性に優れると同時に当たり心地のよい歯ブラシを得ることは難しく、また、単にテーパー毛の刷毛を採用しただけでは、歯間進入性は高いが、刷掃実感や口腔内の隅々までの歯垢除去能力を向上させることが困難であった。
【0009】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、毛先の歯間進入性が高く、当たり心地と刷掃実感に優れ、しかも口腔内の隅々まで歯垢除去能力の高い歯ブラシを提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
一般に、テーパー毛を用いた歯ブラシはその歯間到達度が高いことは以前から知られており、数々の製品化が開発されている。また、歯間到達度の高い刷毛プロファイルの代表としては山切りカットが知られているが、これも以前から数多くの製品が開発されている。さらに、前述した特開2001−299452号公報に記載されているように、テーパー毛からなる毛束を用い、このテーパー毛からなる毛束を二束一山で1つの山切りカットとした場合、歯間到達度がさらに高いことが知られていた。
【0011】
そこで、本発明者は、歯間到達度についてさらに検討するため、非テーパー毛からなる毛束を用いて二束一山に山切りカットした歯ブラシと、テーパー毛からなる毛束を用いて二束一山に山切りカットとした歯ブラシを用い、それぞれの歯間到達度の試験を行った。その結果を図7(a)(b)に示す。図7(a)は歯間到達度の測定結果を示す棒グラフ、図7(b)は試験に用いた各歯ブラシの仕様である。
【0012】
図7(a)から明らかなように、同じ二束一山の山切りカットでも、毛束を構成する刷毛としてテーパー毛を用いれば、毛先の歯間到達度はブラッシング荷重の大小にかかわらず向上することが分かった。
【0013】
本発明者は、上記試験結果を参考に、さらに実験を行った結果、毛束にテーパー毛を用いるとともに、このテーパー毛からなる毛束を二束一山の山切りカットと一束一山の山切りカットの2種類にプロファイリングして混在させ、さらに、この二束一山の山切りカット部分と一束一山の山切りカット部分の山頂部の毛丈に段差(以下、「山間段差」という)を与えれば、さらに歯間到達度を上げることができることを見い出した。
【0014】
そして、さらに実験を重ねた結果、上記したように二束一山と一束一山の山切りカット部分を混在させ、これらの山切りカット間に山間段差を与えた上で、さらに、二束一山の山切りカット部分を構成する2つの毛束に山頂方向に向かう傾斜を与えれば、歯間到達度をさらに向上できることを見い出した。この試験結果を図8(a)(b)に示す。図8(a)は歯間到達度の測定結果を示す棒グラフ、図8(b)は試験に用いた各歯ブラシの仕様である。
【0015】
図8(a)から明らかなように、従来から知られた二束一山の歯ブラシの場合、歯間到達度は57%であるが、一束一山+二束一山+山間段差を与えた歯ブラシの場合、歯間到達度は70%にも達し、さらに、一束一山+二束一山+山間段差+傾斜を与えた歯ブラシの場合には、歯間到達度はさらに向上し、77%にも達することが確認された。従来の二束一山の歯ブラシの歯間到達度が57%であることを考えると、一束一山+二束一山+山間段差とした場合、および一束一山+二束一山+山間段差+傾斜とした場合、その歯間到達能度を格段に向上できることを発見した。
【0016】
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであって、毛束をテーパー毛によって構成し、ヘッド部側面から見たとき、該テーパー毛からなる毛束群を一束一山からなる山切りカット部分と二束一山からなる山切りカット部分に形成するとともに、二束一山からなる山切りカット部分と一束一山からなる山切りカット部分の山頂の高さを異ならしめたこと特徴とするものである。さらに、この構成に加え、二束一山からなる山切りカット部分の毛束を山切りカットの山頂側に向かって傾斜させ、さらに、少なくとも二束一山からなる山切りカット部分に隣接する前後いずれか一方の側の山切りカット部分を一束一山からなる山切りカットとし、さらにまた、各山切りカット部分において、毛丈の高いテーパー毛ほど毛先の先鋭度を鋭く形成したものである。
【0017】
上記のような構成とすれば、毛先の歯間進入性が高く、当たり心地と刷掃実感に優れ、しかも口腔内の隅々まで歯垢除去能力の高い歯ブラシとすることができる。
【0018】
1.山切りカットのプロファイル
本発明の場合、毛束二束で一山を形成するものと、毛束一束で一山を形成するものとを混在させる。これら山切りプロファイルは、ヘッド部側面から毛束群を見たときに山形をなすようにトリミングし、ヘッド部短軸方向に沿って山頂部が並ぶように植毛する。1つの山切りプロファイルにおける山頂部と谷部との高低差(「山谷差」という)は、二束一山の場合、1.0〜5.0mmの範囲が好ましく、2.5〜3.5mmがより好ましい。一束一山の場合、1.0〜4.0mmの範囲が好ましく、1.5〜3mmがより好ましい。この山谷差は、大き過ぎると毛先の当たり心地を悪化させるばかりでなく、毛腰が適正値から外れ、清掃効果を低下させる。逆に、山谷差が小さ過ぎる場合は山切りプロファイルを形成する意味がなくなり、これもまた清掃効果を低下させる。
【0019】
2.山部の配置パターン
一束一山の山切りカットと二束一山の山切りカットは、その目的からある程度配置を考慮する必要がある。一山一束の山切りカットだけとした場合、刷掃実感は高いが歯間進入性にやや劣り、二束一山の山切りカットだけとした場合ではその逆となるため、一束一山の山切りカット部分と二束一山の山切りカット部分の比率は、一束一山:二束一山=2:1〜1:2、好ましくは1:1となるように設計する。また、同様の理由から、二束一山と一束一山の山切りカット部分は、ヘッド部側面から見て、交互に配置することが望ましく、少なくとも二束一山の山切りカット部分に隣接する前後いずれか一方の山切りカット部分は、一束一山の山切りカットとすることが好ましい。
【0020】
また、歯間進入性を向上させるため、一束一山と二束一山との間には山間段差(山頂間の高低差)を与える。この山間段差は0.5〜3.0mmの範囲がよく、1.0〜2.mm程度の範囲がより好ましい。また、この山間段差は二束一山の方が一束一山の方よりも高くなるように設定することが好ましい。山間段差があまり大き過ぎると、毛先の当たり心地を悪化させ、使用感に悪影響を及ぼす。
【0021】
3.毛束の傾斜角度
毛束はヘッド部植毛面に対して垂直でもよいが、毛先の歯間進入性をより向上させるために、山切りカットの山頂に向かって内傾していることが望ましい。基本的に、傾斜させる毛束は二束一山部分の毛束とし、一束一山部分の毛束は垂直のままでもよい。毛束の傾斜角度は、大き過ぎると毛先の当たり心地の悪化を招くため、毛束のヘッド部植毛面の法線に対して15度以下がよく、5度以下とすればより望ましい。なお、毛束に傾斜を与えるには、ヘッド部植毛面に形成する植毛穴を指定の角度だけ傾斜させればよい。
【0022】
4.植毛穴
植毛穴の穴径は0.8〜3.0mmφの範囲が好ましく、1.0〜2.0mmφの範囲がより好ましい。0.8mmφ未満では毛腰が弱くなり過ぎるか、高密度植毛となり、ヘッド部の衝撃強度の低下を招く。3.0mmφ超では毛束が大きくなり過ぎ、毛先の歯間進入性を逆に悪化させることとなり、本発明の効果が発揮されにくくなる。植毛穴の形状は毛立ちの良さから丸穴が好ましいが、四角形や星形などでもよく、特に大きな制約はない。
【0023】
5.毛丈
毛丈(植毛面から山切りカット山頂部までの高さ)は5〜15mmの範囲が好ましいが、8〜13mmがより好ましい。短過ぎると毛先の歯間進入性の悪化を招き、長過ぎると口腔内での操作性を損なう結果となる。
【0024】
6.穴間隔
隣接する植毛穴の穴間距離(穴縁から穴縁までの距離)は、大き過ぎると毛腰が不足し、粗雑な磨き心地になりやすく、小さ過ぎると毛腰が強くなり、歯間進入性を妨げやすい。したがって、穴間距離は0.3〜2.0mmの範囲が好ましく、0.5〜1.5mmの範囲がより好ましい。傾斜植毛された二束一山の毛束部分では、山頂部で毛束の先端同士が重なりやすい。したがって、この重なりは0.1〜1.0mmの範囲に留めるのがよく、好ましくは0.5mm以下とする。毛束同士の重なりが大き過ぎると、山頂部での刷毛の量が多くなり過ぎ、歯間進入性をお互いに妨げる結果となる。また、二束一山の毛束が傾斜とされている場合、一束一山周辺の刷毛密度が小さくなる。したがって、このような場合には、一束一山の毛束とその周辺の毛束との穴間隔を若干狭く設定し、一束一山周辺の刷毛密度を上げることが望ましい。
【0025】
7.刷毛
本発明の場合、毛束を構成する刷毛(フィラメント)はすべてテーパー毛とすることが好ましい。刷毛径は、その基部径0.1〜0.3mmφの範囲が好ましく、0.15〜0.25mmφの範囲がさらに好ましい。テーパー毛の毛先先端径は限りなく細く鋭いものでもよいが、毛先先端径5〜150μmφ程度でもよい。また、テーパー形状は、一定のテーパー度で毛先に向かって細くなるものでもよいが、毛先に向かうに従ってテーパー曲率が変化するものや、段階的に細くなっていくものでもよい。刷毛の断面形状は丸形が好ましいが、四角形、星形などでもよく、特に制約はない。
【0026】
刷毛の材質は、ナイロンやポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)など特に制約はないが、テーパー形状への加工性を考慮すると、PET、PBT、PTTなどのポリエステル樹脂が好ましい。刷毛はすべて同じ材質でもよいが、目的に応じて複数種類用いてもよい。また、前記材質を組み合わせた二重芯鞘構造用毛などでも構わない。
【0027】
8.毛先形状
毛束を構成するテーパー毛の先端形状は、毛束全体で同じ形状でもよいが、山切りカットの山頂側と谷部側でテーパー毛の先端形状を変えてもよい。この場合、刷毛としての歯間進入性と刷掃実感の両立から、山頂部に近いほど用毛先端径が小さいか、テーパーの鋭い刷毛を用い、谷部側に向かうに従ってテーパー先端径が大きいか、テーパーの鋭くない刷毛を用いることが好ましい。
【0028】
さらに、毛先の当たり心地を向上させるため、刷毛の毛先には研磨加工などによって毛先丸め処理を施しておく方が好ましい。また、毛先進入性向上のために、山切りカットの山頂から中腹にかけての刷毛の毛先は再加工を施して再テーパー化することが望ましい。再テーパー化処理は、研磨など物理的加工でも、薬品などを用いた化学的加工でもよい。再テーパー化処理時、山頂部の先端径は限りなく鋭く細くしてもよいが、前述したように先端径5〜150μmφ程度でもよい。より好ましい範囲は、5〜80μmφ程度である。谷部側の刷毛の毛先は目的により任意の先端径とすればよい。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1に、本発明に係る歯ブラシの第1の実施の形態を示す。
この第1の実施の形態は、二束一山からなる山切りカット部分と、一束一山からなる山切りカット部分を交互に並べた場合の例を示すものである。
【0030】
すなわち、この第1の実施の形態に係る歯ブラシは、各毛束1を構成する刷毛として、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)製の基部径0.19mmφ、長さ31mmのテーパー毛を用い、このテーパー毛を所定本束ねた毛束1を、公知の平線式植毛機によって歯ブラシヘッド部2の植毛面3に植毛する。
【0031】
次いで、ロータリーカッターを用いて、植毛した各毛束1を所定の山切り形状にカットする。この第1の実施の形態の場合、一束一山からなる山切りカット部分を▲1▼、二束一山からなる山切りカット部分を▲2▼とすると、ヘッド部側面から見て、▲2▼▲1▼▲2▼▲1▼▲2▼の山切り配列となるように各毛束1をカットするとともに、一束一山の毛束ついては植毛面3に対して垂直植毛し、二束一山の毛束については植毛面3の法線に対して2度だけそれぞれ山頂側に内傾させて植毛した。
【0032】
そして、その毛丈(植毛面3から山切りカットの山頂部までの高さ)については、二束一山部分を12mm、一束一山部分を11mmとし、両者間の山間段差を1.0mmとし、二束一山の方が一束一山よりも1mmだけ高くなるようにカットした。また、山切りカット部分の山谷差は、一束一山部分で2.0mm、二束一山部分で3.0mmにプロファイリングした。
【0033】
上記プロファイリング後、荒い研磨粒度からなるドラム式自公転丸め装置を用いて各毛束の山部中腹から頂部までの刷毛の毛先部分を再テーパー化するとともに、谷部側の刷毛の毛先をラウンド加工する。その後、さらに細かい研磨粒度からなる自公転丸め装置を用いて毛束のポリッシュを行い、刷毛表面を平滑化するとともに、テーパー毛の毛先をより先鋭化し、完成品とした。
【0034】
図2に、本発明に係る歯ブラシの第2の実施の形態を示す。
この第2の実施の形態に係る歯ブラシは、各毛束1を構成する刷毛としてポリブチレンテレフタレート(PBT)製のテーパー毛を用い、一束一山部分は基部径0.19mmφ、長さ29mmのテーパー毛とするとともに、二束一山部分は基部径0.22mmφ、長さ29mmのテーパー毛とし、これらのテーパー毛を所定本束ねた毛束1を公知の平線式植毛機によって歯ブラシヘッド部2の植毛面3に植毛する。
【0035】
次いで、ロータリーカッターを用いて、植毛した各毛束1を所定の山切り形状にカットする。この第2の実施の形態の場合、一束一山からなる山切りカット部分を▲1▼、二束一山からなる山切りカット部分を▲2▼とすると、ヘッド部側面から見て、▲2▼▲1▼▲2▼▲2▼▲1▼▲2▼の山切り配列となるように各毛束1をカットするとともに、一束一山の毛束ついては植毛面3に対して垂直植毛し、二束一山の毛束については植毛面3の法線に対して4度だけそれぞれの山頂側に内傾させて植毛した。
【0036】
そして、その毛丈については、二束一山部分を11mm、一束一山部分を9mmとし、両者間の山間段差を2.0mmとし、二束一山の方が一束一山よりも2.0mmだけ高くなるようにカットした。また、山切りカット部分の山谷差は、一束一山部分で1.0mm、二束一山部分で3.0mmにプロファイリングした。
【0037】
上記プロファイリング後、荒い研磨粒度からなるドラム式自公転丸め装置を用いて各毛束の山部中腹から頂部までの刷毛の毛先部分を再テーパー化するとともに、谷部側の刷毛の毛先をラウンド加工する。その後、さらに薬品加工(加温した高濃度NaOHに浸漬)して刷毛表面を平滑化するとともに、テーパー毛の毛先をより先鋭化し、完成品とした。
【0038】
図3に、本発明に係る歯ブラシの第3の実施の形態を示す。
この第3の実施の形態に係る歯ブラシは、前記第1の実施の形態(図1)と同様に▲2▼▲1▼▲2▼▲1▼▲2▼の山切り配列とするとともに、一束一山部分は基部径0.20mmφ、毛丈11mmのテーパー毛とし、さらに、二束一山部分については、真ん中の二束一山部分が基部径0.22mmφ、毛丈10mmのテーパー毛、左右の二束一山部分が基部径0.19mmφ、毛丈12mmのテーパー毛とし、真ん中の二束一山部分の毛丈を他の部分よりも低くしたものである。
【0039】
図4に、本発明に係る歯ブラシの第4の実施の形態を示す。
この第4の実施の形態に係る歯ブラシは、前記第2の実施の形態(図2)と同様に▲2▼▲1▼▲2▼▲2▼▲1▼▲2▼の山切り配列とするとともに、一山一束部分は基部径0.15mmφ、毛丈13mmのテーパー毛、二束一山部分は基部径0.22mmφ、毛丈10mmのテーパー毛とし、前述までの例とは逆に、一山一束部分の毛束の毛丈を二束一山部分よりも3mm高くしたものである。
【0040】
図5に、本発明に係る歯ブラシの第5の実施の形態を示す。
この第5の実施の形態に係る歯ブラシは、傾斜毛束の説明のためのものであって、二束一山部分の毛束1を植毛面3の法線nに対して山頂側に向けて5度だけ傾斜させた歯ブラシの例を示すものである。このように毛束を傾斜させた場合、二束一山部分の植毛穴の穴間距離gは前述したように0.3〜2.0mmの範囲とすることが好ましい。また、毛束を傾斜させた場合、山頂部で毛束の先端同士が重なりやすいが、この重なりは前述したように0.1〜1.0mmの範囲に設定するのがよい。
【0041】
図6(a)〜(d)に、毛束1を構成するテーパー毛4の毛先先端の形状例を示す。(a)は毛束1を構成する全ての刷毛4の先端部分を同じ形状(刷毛の毛先先端径10μm)に尖らせた場合の例、(b)は山の頂上にいくほど毛先のテーパーが鋭く(山部頂点の刷毛の毛先先端径30μm)、谷部にいくほど鈍角な形状とした場合の例、(c)は山の頂上にいくほど毛先のテーパーが鋭く、谷部にいくほど鈍角な形状とするとともに、各刷毛4の先端部分に水平部(先端水平部径80μm)を残した場合の例、(d)は山の頂上にいくほど毛先のテーパーが鋭く、谷部にいくほど鈍角かつ毛先丸め加工を施した場合の例をそれぞれ示すものである。
【0042】
なお、参考のため、上記した本発明構成の毛束が植毛される歯ブラシハンドルの具体的な形状例を図9(a)〜(c)に示す。(a)は歯ブラシハンドル全体の平面図、(b)はその側面図、(c)はその背面図である。
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、毛束をテーパー毛によって構成し、ヘッド部側面から見たとき、該テーパー毛からなる毛束群を一束一山からなる山切りカット部分と二束一山からなる山切りカット部分に形成するとともに、二束一山からなる山切りカット部分と一束一山からなる山切りカット部分の山頂の高さを異ならしめたので、毛先の歯間進入性が高く、当たり心地と刷掃実感に優れ、しかも口腔内の隅々まで歯垢除去能力の高い歯ブラシを得ることができる。
【0044】
また、二束一山からなる山切りカット部分の毛束を山切りカットの山頂側に向かって傾斜させ、さらに、少なくとも二束一山からなる山切りカット部分に隣接する前後いずれか一方の側の山切りカット部分を一束一山からなる山切りカットとし、さらにまた、各山切りカット部分において、毛丈の高いテーパー毛ほど毛先の先鋭度が鋭く形成したので、前記効果をさらに高めた歯ブラシを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る歯ブラシの第1の実施の形態を示す図である。
【図2】本発明に係る歯ブラシの第2の実施の形態を示す図である。
【図3】本発明に係る歯ブラシの第3の実施の形態を示す図である。
【図4】本発明に係る歯ブラシの第4の実施の形態を示す図である。
【図5】本発明に係る歯ブラシの第5の実施の形態を示す図である。
【図6】(a)〜(d)はそれぞれ毛束を構成するテーパー毛の毛先先端の形状例を示す図である。
【図7】従来の歯ブラシの歯間到達度の試験結果を示すもので、(a)は歯間到達度の測定結果の棒グラフ、(b)は試験に用いた各歯ブラシの仕様を示す図である。
【図8】本発明の歯ブラシと従来の歯ブラシの歯間到達度の比較結果を示すもので、(a)は歯間到達度の測定結果の棒グラフ、(b)は試験に用いた各歯ブラシの仕様を示す図である。
【図9】本発明構成の毛束が植毛される歯ブラシハンドルの具体的な形状例を示すもので、(a)は歯ブラシハンドル全体の平面図、(b)はその側面図、(c)はその背面図である。
【符号の説明】
1 毛束
2 ヘッド部
3 植毛面
4 刷毛
Claims (4)
- 毛束をテーパー毛によって構成し、ヘッド部側面から見たとき、該テーパー毛からなる毛束群を一束一山からなる山切りカット部分と二束一山からなる山切りカット部分に形成するとともに、二束一山からなる山切りカット部分と一束一山からなる山切りカット部分の山頂の高さを異ならしめたこと特徴とする歯ブラシ。
- 二束一山からなる山切りカット部分の毛束が山切りカットの山頂側に向かって傾斜されていることを特徴とする請求項1記載の歯ブラシ。
- 少なくとも二束一山からなる山切りカット部分に隣接する前後いずれか一方の側の山切りカット部分が一束一山からなる山切りカットであることを特徴とする請求項1または2記載の歯ブラシ。
- 各山切りカット部分において、毛丈の高いテーパー毛ほど毛先の先鋭度が鋭く形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の歯ブラシ。
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