JP2004129572A - 疎水性担体への菌体の固定化 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の菌体の固定化方法は、疎水性担体を複数のペンダントアミンを有するポリマーで処理する工程、および該処理した担体と菌体とを接触させる工程、を含む。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、菌体の固定化に関する。より詳細には、疎水性担体に菌体を固定化する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
酵素を多量に含む細胞を工業的に効率よく利用するために、細胞を固定化することが試みられている。細胞を固定化する方法としては、次の3つに大別される:1)不溶性の担体に菌体を結合させる担体結合法、2)架橋剤を用いる架橋法、3)高分子ゲルマトリクス格子中に包み込む、または半透膜マイクロカプセルに封じ込める包括法。確実に固定化するためには、包括法が好ましいが、固定化された細胞周辺の物質移動などを考慮して、多孔性担体を用いる担体結合法が種々検討されている。特に、凝集性または接着性を有する細胞の場合は、一般的に、入手しやすい多孔性の担体と細胞とを混ぜるという簡単な操作による担体結合法によって、非常に簡便に固定化が行われている。例えば、凝集性酵母は、ポリウレタンフォーム片と混合するだけで、容易に固定化できる(非特許文献1および2参照)。しかし、凝集性または付着性があまり強くない細胞の場合は、担体への固定化は困難であった。
【0003】
例えば、付着性動物細胞については、多孔性セルロース担体を用いてインキュベートするだけで固定化できたこと(非特許文献3参照)、および陽荷電基を有するポリエチレンイミンあるいは細胞付着因子を導入した多孔性セルロース担体(特許文献1参照)において、高濃度の浮遊性細胞を固定化できたこと(非特許文献4および非特許文献5参照)が報告されている。これらの方法によって固定化は可能となったが、固定化され得る細胞数は十分とはいえなかった。また、動物細胞に比べてサイズが小さく、凝集性または付着性があまり強くない細菌などの他の菌体については、未だ簡便かつ有効な固定化方法は見出されていない。
【0004】
【特許文献1】
特開平5−252941号公報
【非特許文献1】
フルタ(H. Furuta)、外,「ジャーナル・オブ・ファーメンテーション・アンド・バイオエンジニアリング(Journal of Fermentation and Bioengineering)」,1997年,第84巻,第2号,p.169−171
【非特許文献2】
リュウ(Y. Liu)、外,「バイオケミカル・エンジニアリング・ジャーナル(Biochemical Engineering Journal)」,1998年,第2巻,第3号,p.229−235
【非特許文献3】
タツヤ・オガワ(Tatsuya Ogawa)、外5名,「ジャーナル・オブ・ファーメンテーション・アンド・バイオエンジニアリング(Journal of Fermentation and Bioengineering)」,1992年,第74巻,第1号,p.27−31
【非特許文献4】
寺嶋修司、外5名,「生物工学会誌」,1993年,第71巻,第3号,p.165−170
【非特許文献5】
シュージ・テラシマ(Shuji Terashima)、外5名,「ジャーナル・オブ・ファーメンテーション・アンド・バイオエンジニアリング(Journal of Fermentation and Bioengineering)」,1994年,第77巻,第1号,p.52−56
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、凝集性を有する菌体の場合と同様に、凝集性または付着性があまり強くない菌体を、簡便にかつ高密度で担体に固定化する方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、種々検討を重ねた結果、固定化に通常用いられている疎水性担体を、複数のペンダントアミンを有するポリマーで前処理することにより、菌体を容易に高密度で固定化できることを見出した。
【0007】
本発明は、疎水性担体を複数のペンダントアミンを有するポリマーで処理する工程、および該処理した担体と菌体とを接触させる工程、を含む、菌体の固定化方法を提供する。
【0008】
好適な実施態様では、上記複数のペンダントアミンを有するポリマーは、ポリ−L−リシンである。
【0009】
他の好適な実施態様では、上記疎水性担体は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリビニリデンジフルオリド、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリエステル、ナイロン、ポリビニルホルマール、アセタール樹脂、フェノール樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、ガラス、セラミックス、および金属からなる群より選択される。
【0010】
より好適な実施態様では、上記疎水性担体は、多孔性である。
【0011】
別の好適な実施態様では、上記菌体は、凝集性または付着性が弱い菌体である。
【0012】
さらに好適な実施態様では、上記菌体は、細菌である。
【0013】
本発明はまた、複数のペンダントアミンを有するポリマーで前処理した疎水性担体に固定化された、固定化菌体を提供する。
【0014】
【発明の実施の形態】
(担体)
本発明において用いられる担体は、疎水性の固体であれば、特に限定されない。疎水性担体は、菌体を多数保持し得る点で、多孔性であることが好ましい。その場合、孔径は、特に限定されず、菌体のサイズに応じて、適宜決定され得る。その孔径は、好ましくは0.1〜1,000μm、より好ましくは1〜100μmである。
【0015】
疎水性担体の材料としては、多孔性担体として凝集性菌体の固定化に通常用いられている材料が好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリビニリデンジフルオリド、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリエステル、ナイロン、ポリビニルホルマール、アセタール樹脂、フェノール樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、ガラス、セラミックス、および金属が挙げられる。なお、ポリビニルホルマールは、親水性であるポリビニルアルコールにホルマール化処理を施して疎水性にしたものであり、好ましくは疎水性が高い高ホルマール化度のものが用いられる。入手容易性および取り扱いやすさの点から、ポリエステル、ポリウレタン、ナイロン、ポリプロピレン、およびポリビニルホルマールが好ましい。特に好ましい疎水性担体としては、ポリビニルホルマールスポンジ、ポリエステルフォーム、ポリウレタンフォーム、およびポリプロピレンフォームが挙げられる。
【0016】
このような担体の形状および大きさは、特に限定されない。例えば、ブロック状、シート状などの形状であり得る。また、取り扱いの容易さの点で、数mm角の細片が最もよく用いられ得る。
【0017】
(複数のペンダントアミンを有するポリマー)
本発明で用いられる複数のペンダントアミンを有するポリマーは、培養液中で菌体の活性に悪影響を及ぼすことなく、疎水性相互作用によって他の疎水性物質と結合する能力を有するものであれば、特に限定されない。具体的には、ポリ−L−リシン、ポリ−D−リシン、ポリ−DL−リシン、ポリ−L−オルニチン、ポリ−D−オルニチン、ポリ−DL−オルニチン、ポリ−L−アルギニン、ポリ−D−アルギニン、ポリ−DL−アルギニンなどが挙げられる。複数のペンダントアミンを有するポリマーは、疎水性相互作用の能力を考慮すると大きい分子であることが好ましく、その粘度平均分子量は、好ましくは10,000以上、より好ましくは70,000以上かつ150,000以下である。
【0018】
(菌体)
本発明において、固定化され得る菌体は、微小な単細胞生物をいい、細菌、酵母、単細胞の藻類、シアノバクテリアなどが挙げられる。本発明の固定化方法は、凝集性の菌体やカビ類などの多細胞生物に対しても用いられ得るが、凝集性または付着性が弱い菌体に、特に好適に用いられ得る。ここで、凝集性または付着性が弱いとは、培養中に凝集塊の形成や容器への付着が少なく、培養液中に浮遊する傾向があることをいう。
【0019】
(固定化方法)
本発明の菌体の固定化方法は、疎水性担体を、複数のペンダントアミンを有するポリマーで処理する工程、および該処理した担体と菌体とを接触させる工程を含む。
【0020】
まず、疎水性担体の処理は、担体を複数のペンダントアミンを有するポリマーの水溶液中に浸漬することによって行われる。この複数のペンダントアミンを有するポリマーの水溶液の濃度は、特に限定されない。0.01〜10mg/mlの濃度が好適である。担体の浸漬時間は、複数のペンダントアミンを有するポリマーの水溶液の濃度、担体の種類などに応じて適宜決定され得る。通常、5分〜24時間、振盪または攪拌しながら浸漬される。
【0021】
なお、得られた担体は、菌体と接触させる直前に滅菌処理を行うことが好ましい。滅菌処理は、どのような方法で行ってもよく、容易である点で、通常のオートクレーブ処理が好ましい。
【0022】
次に、処理した担体と菌体とを接触させる。この工程は、菌体を含む培地に処理した担体を加え、振盪培養したり、あるいは培養槽中で撹拌することによって行われる。培地は、通常の組成であり、特別な組成を必要としない。菌体の量、培地の量、担体の量などは、菌体の種類、担体の種類などに応じて適宜決定され得る。接触させる時間は、通常、数時間〜数日間である。菌体を含む培地と接触させて菌体を担体に播種した後、担体を取り出して新鮮培地に加え、さらに培養を数日間行うことによって、菌体を担体に高密度で固定化することができる。必要に応じて、適時、培地を新鮮培地に交換し得る。
【0023】
担体に固定化された菌体数または菌体濃度は、種々の方法によって測定され得る。
【0024】
例えば、MTTアッセイ(ティム・モスマン(Tim Mosmann)、「ジャーナル・オブ・イムノロジカル・メソッド(Journal of Immunological Methods)」,1983年,第65巻,p.55−63)によって、固定化菌体の濃度を精度よく測定することができる。MTTアッセイは、詳細には、黄色のMTT(3−(4,5−ジメチル−2−チアゾリル)−2,5−ジフェニル−2H−テトラゾリウムブロミド)が生細胞内のミトコンドリア内に存在する脱水素酵素により還元され、その結果生じる紫色のMTTホルマザンの量が生細胞数に対応することに基づく。生成したMTTホルマザンは、水に不溶であるため、通常2−プロパノールで溶解した後、吸光度を測定する。
【0025】
あるいは、所定の溶液中で菌体を担体から物理的に剥がし、その前後の担体の乾燥重量または湿重量の差から、担体に固定された菌体の量を測定することもできる。また、菌体を剥がした後、得られた懸濁液の濁度を測定したり、血球計算盤を用いて懸濁液中の細胞数を計数してもよい。
【0026】
(固定化菌体)
上記の方法によって、固定化菌体が得られる。固定化菌体は、培地中であるいは乾燥して保存され得る。
【0027】
得られた固定化菌体は、各菌体に応じた酵素反応に用いられ、適切な反応系で使用され得る。担体に高密度で固定化され得るので、反応効率がよい。また、繰り返し使用も可能である。
【0028】
【実施例】
(実施例1:ポリ−L−リシン処理疎水性担体への細菌の固定化)
菌体として、通性嫌気性の光合成細菌である紅色非硫黄性細菌Rhodovulum sulfidophilum strain W−1S(以下W−1S株と略す;マエダ,外、「バイオテクノロジー・レターズ(Biotechnology Letters)」,1997年,第19巻,第12号,p.1209−1212を参照のこと)を使用した。なお、本細菌の平均粒径をレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(LA−300、(株)堀場製作所)を用いて測定すると、0.84μm(球相当直径が0.84μm)であった。
【0029】
固定化担体粒子(BSP)として、高ホルマール化度のポリビニルアルコール(PVA)スポンジシートDA(A)(孔径60μm)(厚さ2mm、アイオン(株))を、2×2×2mmの粒子状に細切して使用した。
【0030】
まず、容量50mlのねじ口振盪三角フラスコに、担体粒子125個および純水約20mlを入れ、121℃で20分間オートクレーブして滅菌を行った。純水を除去した後、0.1mg/mlの濃度のポリ−L−リシン(ポリ−L−リシン臭化水素酸塩(平均分子量>70,000、和光純薬工業(株))を純水に溶解したもの)10mlを加えて、室温にて90回/分の振盪速度で4時間往復振盪した。ポリ−L−リシン溶液を除去した後、W−1Sを懸濁した培地(波長660nmにおける培養液の濁度が1.5になるように調製した培地)を10ml加え、30℃の水浴中光照射条件下、振盪速度90回/分で往復振盪培養を2日間行った。なお、用いた培地は、NaCl(30g/l)、MgSO4・7H2O(0.25g/l)、CaCl2・2H2O(0.2g/l)、FeSO4・7H2O(0.02g/l)、H3BO4(2.86mg/l)、MnCl2・4H2O(1.81mg/l)、ZnSO4・7H2O(0.22mg/l)、CuSO4・5H2O(0.08mg/l)、Na2MoO4(0.021mg/l)、CoCl2・6H2O(0.01mg/l)、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(0.05g/l)、ピルビン酸ナトリウム(1g/l)、コハク酸ナトリウム(1g/l)、DL−リンゴ酸ナトリウム(1g/l)、酢酸ナトリウム(1g/l)、およびNH4Cl(5mM)を含む水溶液に、リン酸緩衝液(チアミン塩酸塩(100mg/l)、ニコチン酸(100mg/l)、p−アミノ安息香酸(60mg/l)、ビオチン(10mg/l)、KH2PO4(8.16g/l)、K2HPO4(99g/l)、pH=8.0)を5ml/lの割合で添加することにより調製した。この播種操作の後、菌体懸濁培地を除去し、新鮮培地を10ml加えて、往復振盪培養を再開した。培地を全量新鮮培地と適時交換し、振盪培養を継続した。担体粒子を、培養2日目および5日目に5個ずつサンプリングし、担体粒子に固定化された菌体濃度を、MTTアッセイにより評価した。また、7日目にもサンプリングし、実体顕微鏡で目視観察した。
【0031】
MTTアッセイは、以下のように行った。まず、MTT((株)同仁化学研究所)を1g/lの濃度となるように培地に溶解し、孔径0.22μmのフィルターを用いてろ過滅菌することにより、MTT溶液を調製した。このMTT溶液に、サンプリングした担体粒子を加えて、20℃のインキュベーター内で4時間静置した。4時間後MTT溶液を除去し、2−プロパノールを加え、担体粒子内で生成したMTTホルマザンを抽出した。分光光度計を用いて抽出液の560nmおよび700nmにおける吸光度を測定し、MTTホルマザンのモル吸光係数を用いて、吸光度差から固定化細胞によるMTTホルマザンの生成量を算出した。一方、予めW−1S懸濁培地を用いて同様にMTTの変換反応を行い、菌体濃度とMTTホルマザンの生成量との間に比例関係があることを確認した。両者の比例関係に基づいて、固定化細胞によるMTTホルマザンの生成量から固定化菌体濃度を求めた。培養2日目および5日目のMTTアッセイの結果を表1に示す。また、培養7日目の観察については、担体粒子をサンプリングし、MTT溶液中で4時間インキュベートし、純水で洗浄した後行った。結果を図1に示す。
【0032】
(比較例1:無処理疎水性担体への細菌の固定化)
固定化担体粒子をポリ−L−リシンで処理しなかったこと以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1および図1に示す。
【0033】
(比較例2:ポリエチレンイミン添加による疎水性担体への細菌の固定化)
固定化担体粒子をポリ−L−リシンで処理しなかったこと、ならびに菌体を2日間振盪培養する際にポリエチレンイミン(平均分子量70,000、和光純薬工業(株))を0.02%(w/w)の濃度で培地に添加したこと以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0034】
(比較例3:ポリ−L−リシン処理親水性担体への細菌の固定化)
固定化担体粒子として、ホルマール化度が低いため親水性であるポリビニルアルコール(PVA)スポンジシートD(D)(孔径80μm)(厚さ2mm、アイオン(株))をこと以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0035】
(比較例4:無処理親水性担体への細菌の固定化)
比較例3と同様の固定化担体粒子を用いたこと、ならびに固定化担体粒子をポリ−L−リシンで処理しなかったこと以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0036】
(比較例5:ポリエチレンイミン添加による親水性担体への細菌の固定化)
比較例3と同様の固定化担体粒子を用いたこと、固定化担体粒子をポリ−L−リシンで処理しなかったこと、ならびに菌体を2日間振盪培養する際にポリエチレンイミン(平均分子量70,000、和光純薬工業(株))を0.02%(w/w)の濃度で培地に添加したこと以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
ポリ−L−リシン処理した疎水性の固定化担体粒子を用いた場合(実施例1)は、無処理の場合(比較例1)と比べて、非常に高い濃度の固定化菌体が得られた。また、図1に示すように、ポリ−L−リシン処理した場合の方が、明らかにMTTホルマザンによる染色が濃く、担体の表面だけでなく、内部まで十分に菌体が保持されていた。
【0039】
一方、W−1Sを懸濁した培地に、ポリエチレンイミンを最終濃度が0.02%(w/w)となるように添加して静置すると、W−1Sが凝集し沈降することが観察された。ポリエチレンイミンはカチオン性残基を有しているため、菌体表面の負電荷との静電的な相互作用により細菌の凝集が促進されたものと考えられる。そこで、菌体の播種時にポリエチレンイミンを添加して、ポリ−L−リシン処理の場合と比較した(比較例2)。表1からわかるように、ポリエチレンイミンを添加しても、無処理の場合とあまり変わらなかった。
【0040】
次いで、ホルマール化度が低いため親水性である同種の担体を用いて、同様にポリ−L−リシン処理、無処理、およびポリエチレンイミン添加について検討を行った(比較例3〜5)。表1からわかるように、いずれの場合も、固定された菌体量は少なかった。ポリ−L−リシン処理した場合(比較例3)でも、無処理の疎水性担体の場合(比較例1)と同等またはそれ以下であった。
【0041】
ポリ−L−リシン処理した疎水性担体においては、ポリ−L−リシンが疎水的相互作用によりポリビニルホルマール多孔性担体の表面に吸着し、さらにポリ−L−リシンのカチオン性残基とW−1S菌体表面の負電荷との静電的な相互作用によって、W−1S菌体が効率よく担体に固定化されたと考えられる。
【0042】
(実施例2:ポリ−L−リシン処理疎水性担体に固定化した細菌による水素生産)
容量300mlの三角フラスコを用いたこと、担体粒子を2500個用いたこと、ならびに培地量を200mlとしたこと以外は、実施例1と同様に、光合成細菌W−1Sをポリ−L−リシン処理した疎水性担体粒子に固定化し、適時培地交換しながら5日間往復振盪培養を行った。培養液を除去し、次いでピルビン酸ナトリウム、DL−リンゴ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、およびNH4Clを含まずかつコハク酸ナトリウムの濃度を50mMとした培地を用いて、固定化菌体を2度洗浄した後、同じ培地120mlを加えた。三角フラスコに回転子を入れWキャップで密栓し、注射針を通じて30分間アルゴンガスを培地中でバブリングさせ、三角フラスコ内の空気および培地中に溶解している空気をアルゴン置換した後、密封して嫌気条件を維持した。30℃のインキュベーター内で光照射条件下、固定化担体粒子をマグネチックスターラーで攪拌しながら、2日間放置した。その後、三角フラスコ内の気体をサンプリングし、ガスクロマトグラフ(GC−8A、(株)島津製作所)を用いて熱伝導度検出器(TCD)により気体中の水素含量を測定した。結果を表2に示す。
【0043】
(比較例6:無処理疎水性担体に固定化した細菌による水素生産)
疎水性の固定化担体粒子をポリ−L−リシン処理しなかったこと以外は、実施例2と同様に行った。結果を表2に示す。
【0044】
(比較例7:固定化していない細菌による水素生産)
W−1Sを懸濁した培養液(波長660nmにおける培養液の濁度が1.5となるように調製した培養液)120mlを遠心分離して上清を除去し、得られた菌体のペレットを、ピルビン酸ナトリウム、DL−リンゴ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、およびNH4Clを含まずかつコハク酸ナトリウムの濃度を50mMとした培地に再懸濁させた。この操作をもう一度繰り返し、菌体を洗浄した。菌体を同じ培地120mlに懸濁させた後は、実施例2と同様に水素の生産および定量を行った。結果を表2に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
ポリ−L−リシン処理した疎水性の固定化担体粒子を用いた場合(実施例2)は、無処理の場合(比較例6)および固定化していない菌体を用いた場合(比較例7)と比べて、2倍以上の水素が生産されていた。これは、ポリ−L−リシン処理した疎水性の固定化担体粒子を用いた場合、菌体が高密度で担体粒子内に固定化されているため、反応系全体としてより効率的に水素生産を行うことができたためと考えられる。
【0047】
【発明の効果】
本発明の菌体の固定化方法によれば、簡便にかつ高密度で菌体を担体に固定化することが可能である。さらに、これまで固定化が困難であった凝集性または付着性の弱い菌体についても、簡便にかつ高密度で菌体を担体に固定化することができる。本発明の固定化菌体は、高密度で固定されているため、反応系全体として反応効率の上昇が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
光合成細菌W−1Sの固定化を行ったポリ−L−リシン処理または無処理の疎水性担体を、MTTアッセイにより染色した場合の、担体表面および断面の実体顕微鏡写真である。
Claims (7)
- 疎水性担体を複数のペンダントアミンを有するポリマーで処理する工程、および該処理した担体と菌体とを接触させる工程、を含む、菌体の固定化方法。
- 前記複数のペンダントアミンを有するポリマーが、ポリ−L−リシンである、請求項1に記載の方法。
- 前記疎水性担体が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリビニリデンジフルオリド、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリエステル、ナイロン、ポリビニルホルマール、アセタール樹脂、フェノール樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、ガラス、セラミックス、および金属からなる群より選択される、請求項1または2に記載の方法。
- 前記疎水性担体が、多孔性である、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
- 前記菌体が、凝集性または付着性が弱い菌体である、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
- 前記菌体が、細菌である、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
- 複数のペンダントアミンを有するポリマーで前処理した疎水性担体に固定化された、固定化菌体。
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