JP2004127080A - 全方位カメラ運動と空間情報の復元方法、装置、プログラム、およびそのプログラムを記録した記録媒体 - Google Patents

全方位カメラ運動と空間情報の復元方法、装置、プログラム、およびそのプログラムを記録した記録媒体 Download PDF

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宮川 勲
Shiro Ozawa
小澤 史朗
Yoshiori Wakabayashi
若林 佳織
Tomohiko Arikawa
有川 知彦
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Abstract

【課題】Roll回転、Pitch回転を含めてカメラ運動と物体形状を、雑音の多い画像から高精度に復元する。
【解決手段】データベース1に取得した全方位カメラの時系列画像に特徴点計測部2で特徴点を設定し、計測行列変換部3は各時系列画像中の特徴点の時間的変動を行列表示した計測行列を求め、行列分解処理部5は計測行列をカメラ視点の運動を表現する運動行列と、外界の物体形状を表現する形状行列に分解し、変換行列算出部6は運動行列の成分において、運動を規定するために設定した条件を満足するように変換行列を求め、カメラ運動復元部7は変換行列を使って、全方位カメラ視点の回転運動に対応する情報と、並進運動に対応する情報を取り出し、空間情報復元部8は変換行列を使って形状行列を変換し、物体形状を構成する空間情報を復元する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、全方位カメラを使って取得した車載画像または室内画像、船上からの海上画像、空撮などの時系列画像全般に対して利用可能であり、全方位カメラで取得した時系列画像から、全方位カメラ視点に関するRoll,Pitch,Yaw回転に基づくカメラ姿勢、並びに並進運動、並びに、時系列映像に写っている外界の形状、すなわち、被写体(物体)の外観形状を構成する空間情報を復元する全方位カメラ運動と空間情報の復元方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンピュータビジョン分野では、時系列画像データから、対象物の形状を計測、または、獲得する手法には、ステレオ計測やエピポーラ面解析を用いた3次元解析手法がある。
【0003】
一方、全方位カメラは、一度に全周囲の景観を撮像できるという特徴のため、従来からロボットナビゲーションに応用されてきた。そのため、全方位画像からのカメラ運動と物体形状を復元する場合でも、従来はロボットナビゲーションで必要となる精度を確保することに主眼が置かれており、「計測」の観点からは、精度が不十分であった(例えば、非特許文献1、2参照)。
【0004】
また、最近では、カメラの運動と被写体(物体)の形状に関する3次元情報を、同時に、計測、または獲得する手法の代表的な手法として、因子分解法がある(例えば、非特許文献3、4参照)。これらの手法によれば、物体が撮影されている複数の時系列画像から、空間形状または空間構造に関する3次元位置情報、並びに、カメラ視点に関する運動を獲得、復元することができる。
【0005】
しかし、移動手段などを利用して撮影カメラを動かしながら撮影した時系列映像においては、撮影時の環境、撮影カメラの微小な動きによりシームレスに映像取得が困難であり、時系列映像中にランダム性の雑音が混入し、カメラ運動や物体形状を正確に復元することが困難な場合がある。
【0006】
さらに、画像面が平面とした直交座標系で表現できる画像座標値から、因子分解法(非特許文献3、4)などを利用して、ユークリッド空間でのカメラ運動と物体形状の復元が可能であるが、有限画角のカメラを使用する場合は、フレームイン、または、フレームアウトするため、画像入力装置の回転運動を大域的に、または、長期的に復元する、さらに、外界の物体の形状を大規模に、大域的に、復元することは困難である。
【0007】
一方、このような有限画角の問題を回避するために、一度に360度の景観を取得する手段として、全方位カメラによる撮像が考えられる。しかし、全方位カメラの使用は、カメラ光軸が鉛直上向きに設置してあるような理想状態では、全方位カメラ視点の姿勢推定や外界に関する空間計測には便利(非特許文献5参照)であるが、Yaw回転以外に、Roll回転やPitch回転を含む場合、全方位カメラによる簡便な計算が使えず、計算が複雑になり、上記のような全方位カメラに関する微小なカメラ姿勢変化を検出、または、復元できないなどの問題があった。
【0008】
一方、屋外においては、近年、高精度になりつつあるGPS、ディファレンシャルGPS、ジャイロなどのセンシング装置を使うことで、画像入力の位置情報、姿勢情報に関する状態を測位することができる。しかし、ディファレンシャルGPSの受信状態が悪い場所ではセンシングデータが欠落するため、ジャイロセンサや磁気センサ等を駆使した自律航法計測によるデータ補間などの対策がとられてきた。しかし、このような自律航法計測では、移動観測手段のバースト的な揺れに対するカメラ姿勢を正確に検出することはできない。さらに、市街地のようなロケーションでは、品質の高い測位データを取得する条件として、GPS衛星の幾何的配置が整った時間帯に限定されるのが現状の技術である。
【0009】
【非特許文献1】
岩佐英彦、粟飯原述宏、横矢直和、竹村治雄、「全方位画像を用いた記憶に基づく位置推定」、信学論(D−II)、Vol.J84−D−II,No.2,pp.310−320.2001。
【0010】
【非特許文献2】
P.Chang,M.Hebert、「Omni−directional Structure From Motion」、Proc.IEEE Workshop on Omnidirectional Vision,pp.127−133.2000。
【0011】
【非特許文献3】
C.Tomasi,T.Kanade、「Shape and Motion from Image Streams Under Orthography: A Factorization Method」、International Journal of Computer Vision,Vol.9,No.2,1992。
【0012】
【非特許文献4】
C.J Poelman,T.Kanade、「A Paraperspective Factorization Method for Shape and Motion Recovery」,IEEE Transactions on Pattern Analysis andMachine Intelligence,Vol.19,No.3,pp.206−218,1997。
【0013】
【非特許文献5】
宮川勲、若林佳織、有川知彦、「全方位射影型因子分解法による全方位画像からの運動と形状復元」、信学技報、PRMU2002−37,pp.45−52,6,2002.
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、画像入力装置(カメラ)から取得した時系列画像から、カメラの動き、並びに、対象物の形状を同時に復元する場合、時系列画像に混入するランダム雑音の影響により、撮影時のカメラの微小な動きを正確に復元することは困難である。このような問題を扱うべく、コンピュータビジョンでは因子分解法(非特許文献3、4)が存在する。
【0015】
一方、GPS装置などを利用した位置情報計測において、GPS衛星の幾何学的配置、または、測位条件の良好な時間帯に限定される。また、位置計測の周囲の環境において、市街地一般には街路樹が立ち並び、大都市などのような高層な建物が立ち並ぶ環境では、GPSセンサを利用した測位は不利である。
【0016】
また、移動手段を使って、全方位カメラのような一度に360度の景観を映像化する撮影環境で取得した時系列画像において、ステレオ視の原理を応用した計測方法により、外界の物体の空間情報を獲得、復元できるが、様々な撮影環境の中での移動撮影においては、カメラが微小に動くため、容易にシームレスな時系列画像を取得できない。そのため、ランダム性雑音の影響も大きく、常に、安定的に、カメラの動きと物体の形状を、同時に、かつ、高精度に復元することは困難である。
【0017】
本発明の目的は、全方位カメラを使ったカメラ運動推定(自己位置推定を含む)と空間計測のために、因子分解法を基本手法として採用し、この方法を全方位カメラの射影モデル(カメラモデル)に適用可能なものに改良し、従来技術と比較して、雑音に対しロバストであり、安定的にカメラ運動と物体形状とを同時に、かつ高精度に復元でき、さらにRoll回転、Pitch回転が生じる屋外撮影でもカメラ運動と物体形状を復元できる全方位カメラ運動と空間情報の復元方法、装置、プログラム、および記録媒体を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明は、画像入力装置で取得した時系列の全方位画像中において、対象とする画像に配置した特徴点に関する画像座標値の時間的変化量から、対象物の形状、並びに、時系列に関する全方位カメラ視点の運動、並びに、外界の物体の形状、または物体形状を構成する空間情報を復元する方法、装置、プログラムおよびそのプログラムを記録した記録媒体であって、
時系列画像上に設定した画像座標系において、各時系列画像中の特徴点の時間的変動量を集計したデータ(以降、計測行列と称する)を、カメラ視点の運動を表現する運動行列と、外界の物体の外観を表現する形状行列に分解し、前記運動行列の成分において、運動を規定するために設定した条件を満足するように変換行列を求め、この変換行列を使って、全方位カメラ視点の回転運動に対応する情報と、並進運動に対応する情報を復元し、この変換行列を使って、物体の外観を表現する形状行列を変換し、物体形状を構成する空間情報として復元し、さらに形状行列や運動行列上で雑音除去しておくことを特徴とする。
【0019】
この本発明の方法、装置によれば、全方位カメラを使って取得した時系列画像全般(移動手段を利用して撮影した車載画像、海上画像、空撮画像、屋内画像など)から、対象物に関する物体形状を高精度に獲得、復元することが可能となる。また、これまでの測量技術並の高精度な3次元立体視が可能となる。さらに、屋外での微小なカメラ姿勢の変動、並びに、ディファレンシャルGPSを補間する精度の並進運動を正確に計測することが可能となる。また、本発明で使用する計算は、大半が線形演算で構成されるため、コンピュータ言語での実装が容易となる。
【0020】
したがって、本発明は、以下の全方位カメラ運動と空間情報の復元方法、装置、プログラム、および記録媒体を特徴とする。
【0021】
(方法の発明)
(1)全方位カメラで取得した時系列の全方位画像中において、特徴点に関する画像座標値の時間的変化から、全方位カメラ視点の運動、並びに外界の物体形状を構成する空間情報を復元する方法であって、
時系列画像上に設定した座標系において、各時系列画像中の特徴点の時間的変動を行列表示した計測行列を行列分解し、カメラ視点の運動を表現する運動行列と、外界の物体形状を表現する形状行列に分離するステップと、
前記ステップで得た運動行列の成分において、運動を規定するために設定した条件を満足するように変換行列を求め、この変換行列を使って、全方位カメラ視点の回転運動に対応する情報と、並進運動に対応する情報を取り出すステップと、
前記ステップで得た変換行列を使って、物体形状を表現する形状行列を変換し、物体形状を構成する空間情報を復元するステップを有することを特徴とする。
【0022】
(2)上記(1)記載の全方位カメラ運動と空間情報の復元方法であって、
時系列画像上に設定した座標系を、射影中心を原点とした別の座標系に座標変換し、その変換した座標系で表現した特徴点座標値の計測行列を行列分解し、全方位カメラ視点に関する運動と物体形状を構成する空間情報を復元するステップを有することを特徴とする。
【0023】
(3)上記(1)記載の全方位カメラ運動と空間情報の復元方法であって、
前記ステップで得た運動行列の成分において、運動を規定するために設定した条件を満足するように変換行列を求め、この変換行列を使って得た運動行列において、進行方向の軸に関する回転、または、カメラ光軸周りの回転運動、または、それ以外の軸周りの回転を復元するステップを有することを特徴とする。
【0024】
(4)上記(1)記載の全方位カメラ運動と空間情報の復元方法であって、
前記ステップで得た運動行列の成分において、運動を規定するために設定した条件を満足するように変換行列を求め、この変換行列を使って、全方位カメラ視点の並進運動に対応する情報を取り出し、さらに全方位カメラの回転運動を復元した情報を利用してユークリッド空間における並進運動を復元するステップを有することを特徴とする。
【0025】
(5)上記(1)記載の全方位カメラ運動と空間情報の復元方法であって、
前記ステップで得た変換行列を使って、物体形状を表現する形状行列を変換し、形状行列の中の要素を使って、ユークリッド空間での物体形状を構成する空間情報を復元するステップを有することを特徴とする。
【0026】
(6)上記(1)〜(5)のいずれか1つにおいて、前記特異値分解処理で得る各行列に対して、ランク5以上の行または列を雑音として削除するステップを有することを特徴とする。
【0027】
(装置の発明)
(7)全方位カメラで取得した時系列の全方位画像中において、特徴点に関する画像座標値の時間的変化から、全方位カメラ視点の運動、並びに外界の物体形状を構成する空間情報を復元する装置であって、
時系列画像上に設定した座標系において、各時系列画像中の特徴点の時間的変動を行列表示した計測行列を行列分解し、カメラ視点の運動を表現する運動行列と、外界の物体形状を表現する形状行列に分離する手段と、
前記手段で得た運動行列の成分において、運動を規定するために設定した条件を満足するように変換行列を求め、この変換行列を使って、全方位カメラ視点の回転運動に対応する情報と、並進運動に対応する情報を取り出す手段と、
前記手段で得た変換行列を使って、物体形状を表現する形状行列を変換し、物体形状を構成する空間情報を復元する手段を備えたことを特徴とする。
【0028】
(8)上記(7)記載の全方位カメラ運動と空間情報の復元装置であって、
時系列画像上に設定した座標系を、射影中心を原点とした別の座標系に座標変換し、その変換した座標系で表現した特徴点座標値の計測行列を行列分解し、全方位カメラ視点に関する運動と物体形状を構成する空間情報を復元する手段を備えたことを特徴とする。
【0029】
(9)上記(7)記載の全方位カメラ運動と空間情報の復元装置であって、
前記手段で得た運動行列の成分において、運動を規定するために設定した条件を満足するように変換行列を求め、この変換行列を使って得た運動行列において、進行方向の軸に関する回転、または、カメラ光軸周りの回転運動、または、それ以外の軸周りの回転を復元する手段を備えたことを特徴とする。
【0030】
(10)上記(7)記載の全方位カメラ運動と空間情報の復元装置であって、
前記手段で得た運動行列の成分において、運動を規定するために設定した条件を満足するように変換行列を求め、この変換行列を使って、全方位カメラ視点の並進運動に対応する情報を取り出し、さらに全方位カメラの回転運動を復元した情報を利用してユークリッド空間における並進運動を復元する手段を備えたことを特徴とする。
【0031】
(11)上記(7)記載の全方位カメラ運動と空間情報の復元装置であって、
前記手段で得た変換行列を使って、物体形状を表現する形状行列を変換し、形状行列の中の要素を使って、ユークリッド空間での物体形状を構成する空間情報を復元する手段を備えたことを特徴とする。
【0032】
(12)上記(7)〜(11)のいずれか1つにおいて、前記特異値分解処理で得る各行列に対して、ランク5以上の行または列を雑音として削除する手段を備えたことを特徴とする。
【0033】
(プログラムの発明)
(13)上記(1)〜(6)のいずれか1つに記載の全方位カメラ運動または空間情報の復元方法における処理手順をコンピュータで実行可能に構成したことを特徴とするプログラム。
【0034】
(記録媒体の発明)
(14)上記(1)〜(6)のいずれか1つに記載の全方位カメラ運動または空間情報の復元方法における処理手順をコンピュータに実行させるためのプログラムを、該コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録したことを特徴とする。
【0035】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の請求項1等に対応する基本構成図である。また、図2は請求項5等に対応する空間情報復元のための構成図、図3は請求項4等に対応するカメラ運動復元のための構成図である。また、図4は本発明の復元方法に対応する全体処理フローであり、その各ステップS1〜S8は図1の各部1〜8に対応する。
【0036】
なお、本実施形態では、等距離射影(光軸からの入射角に比例した射影)で光学的に設計された魚眼レンズを使用した全方位カメラ撮像装置の場合を説明するが、他の射影(立体角射影、等立体角射影)で設計された魚眼レンズを使用した全方位カメラ撮像装置、並びに、六角錘ミラーや双曲線ミラーなどで構成した全方位カメラ撮像装置で取得した時系列画像に対しても適用可能である。
【0037】
まず、図9において、本発明で復元する対象の形状を構成する点P(X,Y,Z)と、全方位カメラの運動、すなわち、Roll回転(ω)、Pitch回転(ψ)、Yaw回転(θ)、並びに、並進運動(Tx,Ty,Tz)を説明する。この図は、全方位カメラの初期状態を表しており、説明の都合上、全方位カメラが進行する軸をY軸とする。全方位カメラは、並進運動(Tx,Ty,Tz)で移動しながら、Roll回転(ω)、Pitch回転(ψ)、Yaw回転(θ)の回転をする。このとき、初期状態での全方位カメラのカメラ光軸をZ軸方向に向けている。また、射影中心Cの位置は運動の中心であるとし、初期状態での全方位カメラの位置を(0,0,0)とし、第iフレームでの並進運動後の位置を(Tx,Ty,Tz)とする。さらに、進行軸周りのりの回転をRoll回転ω(初期状態ではY軸周りの回転)、カメラ光軸周りの回転をYaw回転θ(初期状態ではZ軸周りの回転)、カメラ光軸と進行軸で張られる面の法線周りの回転をPitch回転ψ(初期状態ではX軸周りの回転)とする。一方、外界の対象物上の点P(X,Y,Z)は、イメージサークル内の画像面において画像座標値pij(xij,yij)へ射影されるとする。下記の式(1)は等距離射影と呼ばれる光学的射影であり、図9中の位相角ρijは、画像座標値(xij,yij)から、式(2)を使って得ることができる。ただし、画像面での射影中心Cの画像座標値を(Cx,Cy)としている。また、本願では、全方位カメラのZ軸方向の並進運動はない(Tz=0)とする。また、fは焦点距離、Rはイメージサークルの半径である。
【0038】
【数1】
Figure 2004127080
【0039】
【数2】
Figure 2004127080
【0040】
次に,図1〜図3の構成および図4の処理フローについて説明する。時系列画像データベース1には、ハードディスク、RAID装置、CD−ROMなどの記録媒体を利用したり、または、ネットワークを介したリモートなデータ資源を利用する形態でもどちちでも構わない。また、全方位カメラ撮像装置からリアルタイムで画像情報が取り込まれ、画像処理での一時的なデータ保管として利用することもできる。
【0041】
まず、特徴点計測部2において、全方位カメラで景観を撮影した全方位画像を時系列画像データベース1から取り出し、全方位画像上に特徴点を設定する。この特徴点設定には、濃淡の1次元的、または、2次元的変化による勾配値が大きくなる画素を検出したり、またはエッジ検出やハフ変換などの画像処理手法により特徴点を自動的に発生させるか、または、オペレータが介在して適当に特徴点をマークするなどして初期画像上に特徴点を配置する。このとき配置する特徴点の数をP個(j=1,2,…,P)とし、配置したときの特徴点の2次元座標値として、図9での画像座標系での原点からの座標値(xij,yij),〔j=1,2,…,P〕を記録しておく。
【0042】
次に、初期画像に続く時系列画像をデータベース1から1枚ずつ読み込み、初期画像に配置した特徴点を、時系列画像間の濃淡の変化に着目した手法、特徴点を中心とした画素パターンを各フレーム間で追跡する方法、または、全方位画像特有の射影歪みを考慮した手法を駆使して追跡し、各時系列画像(初期画像から第i番目の画像)の特徴点の画像座標値として図9での画像座標系での原点からの2次元座標値(xij,yij)を記録する。時系列画像を読出し続けた場合、特徴点が画像間で消失したり、障害物(オクルージョン)などにより隠れてしまったときは追跡を停止し、特徴点追跡を終了する。特徴点追跡が終了した時点で、読み出した時系列画像の数は、初期画像を含めてF枚とする(i=1,2,…,F)。特徴点計測部2では、各時系列画像における特徴点の時間的な画像座標的配置の変化量は下記式(3)のデータ形式に配列して、計測行列[A]として保持しておく。
【0043】
【数3】
Figure 2004127080
【0044】
次に、計測行列変換部3では、特徴点計測部で取得した画像座標値を要素とする計測行列[A]から、第iフレームでの第j番目の特徴点の画像座標値(xij,yij)を取り出し、下記式(4)の変換により座標変換し、全方位座標値(uij,vij)を得る。即ち、図9において、射影中心(Cx,Cy)を中心とした相対的な画像座標値に一次変換し、前記式(1)(2)を使ってρijとφijを求める。
【0045】
【数4】
Figure 2004127080
【0046】
次に、式(4)の変換により座標変換し、全方位座標値(uij,vij)を得る。この変換を全フレーム、全特徴点に対して行う。変換後のデータ形式として、下記式(5)に示す要素形式の計測行列[B]を計測行列入力部4において保持しておく。
【0047】
【数5】
Figure 2004127080
【0048】
上記のように、画像座標値(xij,yij)から位相角ρijと仰角φijを求めて、(uij,vij)に座標変換すると、図9に示す点Pの奥行きRijおよび高さhijがそれぞれ互いに等しい点の集合を表す全方位画像上のR−h曲線が、v軸に対して平行な直線に変換される。したがって、特徴点として奥行きRijおよび高さhijがそれぞれ互いに等しい点の集合(建物中で高さhijが同じ点、例えばPとQ)を設定し、uv平面上の直線を用いることにより、xy平面上のR−h曲線を用いる場合に比べ、カメラ視点の運動および空間情報をはるかに高精度に計測することが可能となる。
【0049】
また、本座標変換では、仰角φijが小さい特徴点(建物の底に近い点)ほど、v軸から離れた点に、測定誤差が強調されて変換される。すなわち、同じ操作により特徴点を測定した場合、xy平面上では分かりづらかった誤差や不一致がuv平面上ではより正確に把握できるようになる。従って、この強調された誤差が最小となるようにカメラ視点の運動および空間情報を求めれば、やはり高精度な計測が可能となる。
【0050】
次に、計測行列入力部4に保持しておいた行列[B]のデータは、行列分解処理部5において、図5に示すように、行列[B]を読み込み(S11)、特異値分解処理(S12)により下記式(6)のように3つの行列[U],[W],[V]に行列分解する。ここで、[U]は2F×Pサイズの行列、[W]はP×Pサイズの対角行列、[V]はP×Pサイズの行列である。さらに、各行列から雑音除去のため、下記式(7)の第二項に示されるランク5以上の各行列の成分を削除する。
【0051】
【数6】
Figure 2004127080
【0052】
【数7】
Figure 2004127080
【0053】
上記のランク5以上の行列成分の削除は、図5において、特異値分解処理した運動行列[U]を抽出し(S13)、この行列の要素において第5から第P列目までを削除して雑音除去し、残りの成分からなる行列[U]を保持しておく(S14)。また、行列[W]を抽出し(S15)、この行列の要素において第5から第P行目並びに第5から第P列目までを削除して雑音除去し(S16)、残りの成分からなる行列[W]を保持しておく。また、特異値分解処理した形状行列[V]を抽出し(S17)、この行列の要素において第5から第P行目までを削除して雑音除去し(S18)、残りの成分からなる行列[V]を保持しておく。なお、各行列は下記式(a)〜式(c)のようになる。
【0054】
【数8】
Figure 2004127080
【0055】
次に、第5から第P行目並びに第5から第P列目までを削除した行列[W]の対角要素の平方根をとった行列[W’]を生成し(S20)、さきほど保持しておいた行列から、行列[U’]と[V’]を生成する(S19,S21)。これら行列[W’],[U’],[V’]は下記式(9)〜(11)として得られる。
【0056】
【数9】
Figure 2004127080
【0057】
【数10】
Figure 2004127080
【0058】
【数11】
Figure 2004127080
【0059】
以上のように、特異値分解処理後の各行列からランク5以上の行列要素を削除する点が本発明の方法と従来の因子分解法との異なる点である。この処理によって雑音の多い画像から雑音が除去される。一方、カメラの微小な動きに比例した成分(後述の式(19)におけるm、n)は、運動行列[U]のランク1から4の部分に含まれているため、雑音除去処理後の行列を用いることにより、カメラの微小な動きを雑音から分離して検出・復元することが可能となる。
【0060】
次に、変換行列算出部6における処理フローを図6に示す。変換行列算出部6ではまず、図5のステップS19において、保持してある行列[U’]を取り出し(S31)、下記式(13)〜(15)に示す連立する条件式を満たす式(12)で表される対称行列[C]の各要素にかかる係数を計算する(S32)。これらの係数計算は、行列演算により容易に得られるものであり、この条件式を全フレームに対して計算する。
【0061】
【数12】
Figure 2004127080
【0062】
【数13】
Figure 2004127080
【0063】
【数14】
Figure 2004127080
【0064】
【数15】
Figure 2004127080
【0065】
次に、全フレームの式(13)〜(15)に示す連立条件式に対して、最小二乗法などの数値計算を利用するなどして3×3サイズの行列[C]の各要素を決定する(S33)。さらに、求めた行列[C]を式(16)に示すように固有値分解処理する(S34)。そして、固有ベクトルの抽出(S35)と固有値行列抽出をし(S36)、この固有値行列の平方根を計算し(S37)、この平方根と固有ベクトルから、式(17)の行列を生成し、この行列要素を成分にもつ式(18)に示す変換行列[Q]を生成する(S38)。
【0066】
【数16】
Figure 2004127080
【0067】
【数17】
Figure 2004127080
【0068】
【数18】
Figure 2004127080
【0069】
図7はカメラ運動復元部7での処理フローを示す。まず、図6のステップS38で求めた行列[Q]と、その前のステップS31で保持しておいた行列[U’]から、式(19)の行列演算により行列[M’]を計算する(S41〜S43)。
【0070】
【数19】
Figure 2004127080
【0071】
次に、行列[M’]から各フレーム(第iフレーム)の行列要素(mix,niy)を取り出し(S44)、式(20)を使って、Yaw回転θを復元する(S45)。このYaw回転θを元に、式(21)に示す回転行列[Rθ]を計算しておく(S46)。
【0072】
【数20】
Figure 2004127080
【0073】
【数21】
Figure 2004127080
【0074】
次に、行列[M’]から各フレーム(第iフレーム)の行列要素(miz,niz)を取り出し(S47)、これと回転行列[Rθ]とから式(22)を使ってRoll回転ωとPitch回転ψを復元する(S48)。
【0075】
【数22】
Figure 2004127080
【0076】
一方、行列[M’]から各フレーム(第iフレーム)の行列要素(Tiu,Tiv)を取り出す(S49)。さらに、復元したRoll回転ωとPitch回転ψと回転行列[Rθ]から、式(23)に示す要素(μiu,μiv)の計算(S50)、および式(24)に示す要素(νiu,νiv)を計算し(S51)、これらの要素を式(25)に代入し、先に取り出した(Tiu,Tiv)から、式(25)を使って、第iフレームにおけるユークリッド空間での並進運動(Tix,Tiy)を計算する(S52)。
【0077】
【数23】
Figure 2004127080
【0078】
【数24】
Figure 2004127080
【0079】
【数25】
Figure 2004127080
【0080】
最後に、空間情報復元部8での処理フローを図8に示す。この処理では、まず、先に保持しておいた行列[V’]を読み込み(S61)、および変換行列算出部6で得られた行列[Q]を読み込み(S62)、式(26)に示す行列演算を行い、行列[S’]を求める(S63)。次に、行列[S’]の要素に対して、式(27)に示す変換を行い、これを要素とする行列を[P]を計算する(S64)。行列[P]の列ベクトルは、それぞれ第j番目の特徴点のユークリッド空間での空間情報、すなわち、3次元座標値(X,Y,Z)になっている。
【0081】
【数26】
Figure 2004127080
【0082】
【数27】
Figure 2004127080
【0083】
以上のように、本実施形態によれば、全方位映像の特徴点の時間的動きから、全方位カメラ視点の運動、すなわち、三軸周りの回転と並進運動、並びに、物体形状を構成する空間情報、すなわち、3次元座標値を復元することができる。
【0084】
なお、本発明は、図4に示した方法の一部又は全部の処理機能をプログラムとして構成してコンピュータを用いて実現することができる。また、コンピュータでその各部の処理機能を実現するためのプログラム、あるいはコンピュータにその処理手順を実行させるためのプログラムを、そのコンピュータが読み取り可能な記録媒体、例えば、フレキシブルディスク、MO、ROM、メモリカード、CD、DVD、リムーバブルディスクなどに記録して、保存したり、提供したりすることが可能であり、また、インターネットのような通信ネットワークを介して配布したりすることが可能である。
【0085】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明によれば、Roll回転、Pitch回転を含めてカメラ運動と物体形状を、雑音の多い画像から高精度に復元することができる。
【0086】
また、座標変換の適用により、計測誤差をより軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による全方位カメラ運動と空間情報の復元装置の基本構成図。
【図2】本発明における空間情報復元のための構成図。
【図3】本発明におけるカメラ運動復元のための構成図。
【図4】本発明による全方位カメラ運動と空間情報の復元方法の全体処理フロー。
【図5】本発明における行列分解処理部の処理フロー。
【図6】本発明における変換行列算出部の処理フロー。
【図7】本発明におけるカメラ運動復元部の処理フロー。
【図8】本発明における空間情報復元部の処理フローを示す図。
【図9】全方位カメラと復元する空間情報とカメラ座標系を示す図。
【符号の説明】
1…時系列画像データベース
2…特徴点計測部
3…計測行列変換部
4…計測行列入力部
5…行列分解処理部
6…変換行列算出部
7…カメラ運動復元部
8…空間情報復元部

Claims (14)

  1. 全方位カメラで取得した時系列の全方位画像中において、特徴点に関する画像座標値の時間的変化から、全方位カメラ視点の運動、並びに外界の物体形状を構成する空間情報を復元する方法であって、
    時系列画像上に設定した座標系において、各時系列画像中の特徴点の時間的変動を行列表示した計測行列を行列分解し、カメラ視点の運動を表現する運動行列と、外界の物体形状を表現する形状行列に分離するステップと、
    前記ステップで得た運動行列の成分において、運動を規定するために設定した条件を満足するように変換行列を求め、この変換行列を使って、全方位カメラ視点の回転運動に対応する情報と、並進運動に対応する情報を取り出すステップと、
    前記ステップで得た変換行列を使って、物体形状を表現する形状行列を変換し、物体形状を構成する空間情報を復元するステップを有することを特徴とする全方位カメラ運動と空間情報の復元方法。
  2. 請求項1記載の全方位カメラ運動と空間情報の復元方法であって、
    時系列画像上に設定した座標系を、射影中心を原点とした別の座標系に座標変換し、その変換した座標系で表現した特徴点座標値の計測行列を行列分解し、全方位カメラ視点に関する運動と物体形状を構成する空間情報を復元するステップを有することを特徴とする全方位カメラ視点運動と空間情報の復元方法。
  3. 請求項1記載の全方位カメラ運動と空間情報の復元方法であって、
    前記ステップで得た運動行列の成分において、運動を規定するために設定した条件を満足するように変換行列を求め、この変換行列を使って得た運動行列において、進行方向の軸に関する回転、または、カメラ光軸周りの回転運動、または、それ以外の軸周りの回転を復元するステップを有することを特徴とする全方位カメラ運動の復元方法。
  4. 請求項1記載の全方位カメラ運動と空間情報の復元方法であって、
    前記ステップで得た運動行列の成分において、運動を規定するために設定した条件を満足するように変換行列を求め、この変換行列を使って、全方位カメラ視点の並進運動に対応する情報を取り出し、さらに全方位カメラの回転運動を復元した情報を利用してユークリッド空間における並進運動を復元するステップを有することを特徴とする全方位カメラ運動の復元方法。
  5. 請求項1記載の全方位カメラ運動と空間情報の復元方法であって、
    前記ステップで得た変換行列を使って、物体形状を表現する形状行列を変換し、形状行列の中の要素を使って、ユークリッド空間での物体形状を構成する空間情報を復元するステップを有することを特徴とする空間情報の復元方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項において、前記特異値分解処理で得る各行列に対して、ランク5以上の行または列を雑音として削除するステップを有することを特徴とする全方位カメラ運動と空間情報の復元方法。
  7. 全方位カメラで取得した時系列の全方位画像中において、特徴点に関する画像座標値の時間的変化から、全方位カメラ視点の運動、並びに外界の物体形状を構成する空間情報を復元する装置であって、
    時系列画像上に設定した座標系において、各時系列画像中の特徴点の時間的変動を行列表示した計測行列を行列分解し、カメラ視点の運動を表現する運動行列と、外界の物体形状を表現する形状行列に分離する手段と、
    前記手段で得た運動行列の成分において、運動を規定するために設定した条件を満足するように変換行列を求め、この変換行列を使って、全方位カメラ視点の回転運動に対応する情報と、並進運動に対応する情報を取り出す手段と、
    前記手段で得た変換行列を使って、物体形状を表現する形状行列を変換し、物体形状を構成する空間情報を復元する手段を備えたことを特徴とする全方位カメラ運動と空間情報の復元装置。
  8. 請求項7記載の全方位カメラ運動と空間情報の復元装置であって、
    時系列画像上に設定した座標系を、射影中心を原点とした別の座標系に座標変換し、その変換した座標系で表現した特徴点座標値の計測行列を行列分解し、全方位カメラ視点に関する運動と物体形状を構成する空間情報を復元する手段を備えたことを特徴とする全方位カメラ視点運動と空間情報の復元装置。
  9. 請求項7記載の全方位カメラ運動と空間情報の復元装置であって、
    前記手段で得た運動行列の成分において、運動を規定するために設定した条件を満足するように変換行列を求め、この変換行列を使って得た運動行列において、進行方向の軸に関する回転、または、カメラ光軸周りの回転運動、または、それ以外の軸周りの回転を復元する手段を備えたことを特徴とする全方位カメラ運動の復元装置。
  10. 請求項7記載の全方位カメラ運動と空間情報の復元装置であって、
    前記手段で得た運動行列の成分において、運動を規定するために設定した条件を満足するように変換行列を求め、この変換行列を使って、全方位カメラ視点の並進運動に対応する情報を取り出し、さらに全方位カメラの回転運動を復元した情報を利用してユークリッド空間における並進運動を復元する手段を備えたことを特徴とする全方位カメラ運動の復元装置。
  11. 請求項7記載の全方位カメラ運動と空間情報の復元装置であって、
    前記手段で得た変換行列を使って、物体形状を表現する形状行列を変換し、形状行列の中の要素を使って、ユークリッド空間での物体形状を構成する空間情報を復元する手段を備えたことを特徴とする空間情報の復元装置。
  12. 請求項7〜11のいずれか1項において、前記特異値分解処理で得る各行列に対して、ランク5以上の行または列を雑音として削除する手段を備えたことを特徴とする全方位カメラ運動と空間情報の復元方法。
  13. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の全方位カメラ運動または空間情報の復元方法における処理手順をコンピュータで実行可能に構成したことを特徴とするプログラム。
  14. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の全方位カメラ運動または空間情報の復元方法における処理手順をコンピュータに実行させるためのプログラムを、該コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録したことを特徴とする全方位カメラ運動または空間情報の復元方法を記録した記録媒体。
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