JP2004123722A - コンドロモジュリン−i遺伝子からなる医薬 - Google Patents
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Abstract
【課題】眼内の血管増殖による視野障害の治療・改善・予防剤を提供する。
【解決手段】コンドロモジュリン-I遺伝子またはコンドロモジュリン-Iを発現するウイルスベクターあるいはプラスミドからなる医薬は、眼内の血管増殖に基づく視野障害、特に糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性、網膜剥離、緑内障に起因する視野障害の治療・改善・予防に有用である。さらに例えばセンダイウィルス・エンベロープなどの遺伝子導入試薬を併用することにより一層高い導入効果が得られる。また本発明では少ない投与回数ならびに投与液量で効果が期待できる。
【選択図】 なし
【解決手段】コンドロモジュリン-I遺伝子またはコンドロモジュリン-Iを発現するウイルスベクターあるいはプラスミドからなる医薬は、眼内の血管増殖に基づく視野障害、特に糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性、網膜剥離、緑内障に起因する視野障害の治療・改善・予防に有用である。さらに例えばセンダイウィルス・エンベロープなどの遺伝子導入試薬を併用することにより一層高い導入効果が得られる。また本発明では少ない投与回数ならびに投与液量で効果が期待できる。
【選択図】 なし
Description
本発明は、コンドロモジュリン-I遺伝子またはコンドロモジュリン-Iを発現するウイルスベクターあるいはプラスミド、より好ましくはこれらに細胞への遺伝子導入促進剤を加えた、視野障害治療・改善・予防剤に関する。
コンドロモジュリンは軟骨組織より分離された蛋白質で、軟骨細胞に対しては増殖促進作用があり、血管内皮細胞に対しては増殖抑制作用があることが明らかとなっている(Hiraki(開ら):J. Biological Chemistry 272: 32419-32426, 1997)。また、コンドロモジュリン-Iの遺伝子発現は、主に軟骨、眼および小脳で認められる事が明らかとなっている(Funaki:Invest Ophthalmol Vis. Sci. 42: (6) 1193, 2001)。
一方、眼内の血管増殖は種々の疾病で認められており、重篤な視野障害の原因となることが示唆されている。例えば糖尿病患者では、合併症として血管増殖による網膜症(糖尿病性網膜症)が高頻度に認められ、加齢黄斑変性、網膜剥離、緑内障等の疾病においても眼内の血管増殖が視野障害の原因となることが明らかとなっている。眼内の血管増殖が原因である疾患の治療には一般にレーザー光凝固術が施されるが、血管だけでなくその周囲の正常な網膜組織も破壊されるため凝固部が絶対暗点となり、視野の一部が欠失してしまうことがある。また、血管増殖が速いために新生血管数が多くなってしまった場合には、レーザー光による治療が困難な場合もある。
眼内の血管増殖による視野障害の治療には、血管新生を阻害する、或いは抑制する物質の投与が有効であると考えられるが、未だ有効性の高い治療薬は開発されていない。
毛細血管の新生を抑制する作用を有する蛋白質は知られているが、そのような蛋白質を全身投与した場合に、臨床上十分な治療効果が認められたという報告例はない。毛細血管の新生を抑制する蛋白質を眼内に直接投与すれば有効性が高まる事が期待できるが、有効濃度を維持することが困難であるため、頻繁に蛋白質を投与する必要がある。それに対して、蛋白質そのもので投与するのではなく、その蛋白質をコードする遺伝子を治療部位の細胞に導入する治療法であれば、治療用蛋白質の持続的発現が期待できるため、投与回数ならびに投与液量を少なくすることが出来る。それにより、硝子体内の白濁などの副作用を回避できるため、治療上も有利であると考えられる。
本発明は具体的には、例えば以下の態様にて実施することができる。
ヒト−コンドロモジュリン-I遺伝子(GenBank Accession Number XM_007132等)をpVAX1プラスミド(Invitorogen社、Carlsbad、USA)あるいはpcDNA3プラスミド(Invitorogen社)等のCMVプロモーターの下流に組み込むか、pCNX2プラスミド(Niwa et al., Gene 1991,108:193-199)の場合はニワトリβアクチン・プロモーターの下流に組み込み、ヒト−コンドロモジュリン-Iを発現するプラスミドを構築する。これらのプラスミドを常法により大腸菌で複製して、プラスミドを単離・精製する。
ヒト−コンドロモジュリン-I遺伝子(GenBank Accession Number XM_007132等)をpVAX1プラスミド(Invitorogen社、Carlsbad、USA)あるいはpcDNA3プラスミド(Invitorogen社)等のCMVプロモーターの下流に組み込むか、pCNX2プラスミド(Niwa et al., Gene 1991,108:193-199)の場合はニワトリβアクチン・プロモーターの下流に組み込み、ヒト−コンドロモジュリン-Iを発現するプラスミドを構築する。これらのプラスミドを常法により大腸菌で複製して、プラスミドを単離・精製する。
またウイルスベクターを作成する場合にも、常法に従って行うことができる。
一方、ヒトの網膜血管より分離した内皮細胞を、前記Funakiらの文献記載の方法に従って、管状の形体形成(管腔形成)が誘導される条件下で培養を行なう。
細胞への遺伝子導入効率を上げるため、上記のウイルスベクターあるいはプラスミドを例えばセンダイウィルス・エンベロープであるGenomONE(HVJ Envelopeベクターキット[石原産業(株)販売]、WO01/57204号公報)などの遺伝子導入試薬を用いて内皮細胞に導入することもでき、より高い導入効果を得ることができる。
ヒト−コンドロモジュリン-I発現ウイルスベクターあるいはプラスミドを導入した血管内皮細胞では、管状構造の形成が抑制される。
ラットの網膜上の血管より血管内皮細胞を分離して、3H-チミジン存在下においてFunakiらの方法により培養して、上記の例と同様にヒト−コンドロモジュリン-I発現プラスミドを導入する。
ヒト−コンドロモジュリン-I発現ウイルスベクターあるいはプラスミドを導入した血管内皮細胞では、3H-チミジンの取り込みが抑制される。
これらの結果からヒト−コンドロモジュリン-I遺伝子の導入により、眼内の新生血管の形成を抑制できることが明らかとなる。
以上詳述したように、本発明にかかるコンドロモジュリン遺伝子からなる医薬は、眼内の血管増殖による視野障害の治療に有用である。
また糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性、網膜剥離、緑内障等の治療・改善・予防剤としても有用である。
本発明に使用されるコンドロモジュリン-I遺伝子とは、ヒト−コンドロモジュリン-Iを発現しうる遺伝子であり、発現される蛋白質がヒト−コンドロモジュリン-Iと実質的に同効である限り、その遺伝子配列の一部が欠失又は他の塩基に置換されていたり、他の塩基配列が一部挿入されていたり、5’末端及び/又は3’末端に塩基が付加されたような遺伝子も包含される。かかるコンドロモジュリン-I遺伝子としては、たとえばGenBankのAccession Number XM_007132、AB006000等を本発明で使用することができる。なお本発明においては、XM_007132、AB006000等の全塩基配列によって規定される蛋白質をコードする遺伝子を用いてもよいし、部分配列によって規定される蛋白質をコードする遺伝子を用いてもよい。
また部分配列の具体例としては、例えば配列表の配列番号1に記載されたXM_007132のNo.643→1002の配列によって規定される蛋白質(Gln215-Val334)をコードする遺伝子や、配列番号2に記載されたGln264-Val334コードする遺伝子等を挙げることができる。
コンドロモジュリン-Iの血管新生抑制作用の本体は、上記C端のGln264-Val334のポリペプチドにあることがわかったが、非常に水に難溶である。
そこで水溶性を増すことなどを目的として、配列表の配列番号2の配列に他のアミノ酸配列を結合させたポリペプチドを用いることも可能である。
この際、部分配列の生体内での発現のために開始コドンや細胞外への分泌を促すため分泌に必要な配列、たとえばpreprotrypsinの分泌配列等を結合させてもよい。
コンドロモジュリン-I遺伝子は、適当なウイルスベクター又はプラスミドに組み込んで使用することが好ましい。
本発明により眼組織の細胞にコンドロモジュリン-I遺伝子が導入された後、該細胞でヒト−コンドロモジュリン-Iが発現され、ヒト−コンドロモジュリン-Iが眼内で血管増殖の抑制を起こす。
眼内に投与されるコンドロモジュリン-I遺伝子は裸のまま、ウイルスベクターあるいはプラスミド単独であってもよいし、眼内投与で許容される細胞への遺伝子導入促進剤と併用されてもかまわない。これらは種々の製剤形態(例えば液剤等をとりうるが、一般的には有効成分であるコンドロモジュリン-I遺伝子を含有する注射剤等とされる。また、必要に応じて慣用の担体を加えてもよい。当該注射剤等は常法により調製することができ、例えば、コンドロモジュリン-I遺伝子を適切な溶剤(例えば、滅菌蒸留水、緩衝液、生理食塩水等)に溶解後、ろ過滅菌して、無菌容器に充填して調製できる。
製剤中のコンドロモジュリン-I遺伝子の含量は、通常コンドロモジュリン-I遺伝子として0.0001mgないし100mg、好ましくは0.001mgないし10mgであり、これを数日ないし数ヶ月に一回眼内投与するのが適当である。
従って本発明は、ヒト−コンドロモジュリン-Iの薬理作用に基づいた眼における血管増殖を伴う疾患の治療剤、改善または予防剤を提供するものである。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実験例あるいは実施例によりなんら限定されるものではない。なお、使用した実験材料及び方法の概要は以下のとおりである。
実験例1 コンドロモジュリン-I発現ベクター
コンドロモジュリン-I発現ベクターは、pVAX1発現ベクター(Invitorogen社、Carlsbad、USA)にヒト−コンドロモジュリン-IのcDNA(GenBank Accession Number XM_007132、特開平7-138,925号)を挿入することにより調製した。このXM_007132の配列を含むプラスミドベクターにおいて、ヒト−コンドロモジュリン-I cDNAの転写はCMVプロモーターにより制御される。
コンドロモジュリン-I発現ベクターは、pVAX1発現ベクター(Invitorogen社、Carlsbad、USA)にヒト−コンドロモジュリン-IのcDNA(GenBank Accession Number XM_007132、特開平7-138,925号)を挿入することにより調製した。このXM_007132の配列を含むプラスミドベクターにおいて、ヒト−コンドロモジュリン-I cDNAの転写はCMVプロモーターにより制御される。
実験例2 内皮細胞培養
正常ヒト網血管内皮細胞は大日本製薬より購入した(カタログNo. CS-ABI-181)。細胞は用途によりCS-C培地キット(大日本製薬、カタログNo. CS-4ZO-500)に10%の血清を添加した培地、CS-C無血清培地キット(大日本製薬、カタログNo. CS-SF-4ZO-500)、バイオコートE-STIM血管内皮細胞培地キット(日本ベクトン・ディキンソン社、カタログNo. 355054)、血管新生専用培地-2(倉敷紡績株式会社、KZ-1500)等を用いてそれぞれ培養した。継代には継代試薬セット(大日本製薬、カタログNo. CS-4ZO-800)を用いた。細胞の培養と継代の方法は、大日本製薬の「正常細胞取扱説明書」に従って行った。細胞の培養にはコラーゲンType Iをコートした培養容器を用いて、1平方cmあたり10,000細胞から80,000細胞の細胞密度の条件で、摂氏37度、5%CO2存在下で培養を行った。
正常ヒト網血管内皮細胞は大日本製薬より購入した(カタログNo. CS-ABI-181)。細胞は用途によりCS-C培地キット(大日本製薬、カタログNo. CS-4ZO-500)に10%の血清を添加した培地、CS-C無血清培地キット(大日本製薬、カタログNo. CS-SF-4ZO-500)、バイオコートE-STIM血管内皮細胞培地キット(日本ベクトン・ディキンソン社、カタログNo. 355054)、血管新生専用培地-2(倉敷紡績株式会社、KZ-1500)等を用いてそれぞれ培養した。継代には継代試薬セット(大日本製薬、カタログNo. CS-4ZO-800)を用いた。細胞の培養と継代の方法は、大日本製薬の「正常細胞取扱説明書」に従って行った。細胞の培養にはコラーゲンType Iをコートした培養容器を用いて、1平方cmあたり10,000細胞から80,000細胞の細胞密度の条件で、摂氏37度、5%CO2存在下で培養を行った。
実験例3 正常ヒト網血管内皮細胞へのヒト−コンドロモジュリン-I遺伝子発現ベクターの導入
ヒト−コンドロモジュリン-I遺伝子を組み込んだpVAX1プラスミド(以下、本発現ベクターという)を、市販のGenomONEキット(石原産業株式会社)を用いて使用説明書に従って封入を行った。6ウェルプレートの1ウェルに対する試薬の使用量は以下のとおりである。すなわち市販のHVJ-E 40μlと封入エンハンサー10μlとを混合した溶液に、本発現ベクター(1mg/mlの濃度の溶液)10μlと封入剤6μlを加えて封入を行った。封入後にサンプル溶液を遠心操作により(摂氏4度、10,000gで5分間)沈殿させ、本発現ベクターを含むHVJ-Eを回収して、緩衝液30μlで懸濁して遺伝子導入に使用した。24ウェルプレートや96ウェルプレートなど他のプレートを用いて遺伝子導入を行った場合には、仕様説明書に従ってそれぞれの試薬容量を使用した。また、本発現ベクターの導入効率が低い場合には、他の遺伝子導入試薬であるリポフェクトアミン プラス(Invitrogen、10964-013)やTransFast Transfection Reagent(Promega、E2421)、Effectene Transfection Reagent(QIAGEN、301425)を使用した。
ヒト−コンドロモジュリン-I遺伝子を組み込んだpVAX1プラスミド(以下、本発現ベクターという)を、市販のGenomONEキット(石原産業株式会社)を用いて使用説明書に従って封入を行った。6ウェルプレートの1ウェルに対する試薬の使用量は以下のとおりである。すなわち市販のHVJ-E 40μlと封入エンハンサー10μlとを混合した溶液に、本発現ベクター(1mg/mlの濃度の溶液)10μlと封入剤6μlを加えて封入を行った。封入後にサンプル溶液を遠心操作により(摂氏4度、10,000gで5分間)沈殿させ、本発現ベクターを含むHVJ-Eを回収して、緩衝液30μlで懸濁して遺伝子導入に使用した。24ウェルプレートや96ウェルプレートなど他のプレートを用いて遺伝子導入を行った場合には、仕様説明書に従ってそれぞれの試薬容量を使用した。また、本発現ベクターの導入効率が低い場合には、他の遺伝子導入試薬であるリポフェクトアミン プラス(Invitrogen、10964-013)やTransFast Transfection Reagent(Promega、E2421)、Effectene Transfection Reagent(QIAGEN、301425)を使用した。
実施例1
管状構造誘導抑制
本発現ベクターを導入した正常ヒト網血管内皮細胞の懸濁液0.5mlあたりMatrigel 0.25ml(摂氏37度)を添加して、摂氏37度、5% CO2存在下で6時間培養して、管状構造の誘導を顕微鏡下で観察した。なお、対照としては、本発現ベクターではなくpVAX1プラスミドを同様の処理により導入した細胞を用いた。この結果、ヒトーコンドロモジュリンーI遺伝子を組み込んだpVAX1プラスミドを導入した場合のみ、完全に管状構造の誘導が抑制された。
更に、血管新生キット(倉敷紡績株式会社、KZ-1000)を用いて繊維芽細胞と本発現ベクターを導入した正常ヒト網血管内皮細胞との共培養を行ない、コンドロモジュリン-I遺伝子の発現による効果を検討したところ、ヒトーコンドロモジュリンーI遺伝子を組み込んだpVAX1プラスミドを導入した場合のみ管腔形成が抑制されることが明らかとなった。
管状構造誘導抑制
本発現ベクターを導入した正常ヒト網血管内皮細胞の懸濁液0.5mlあたりMatrigel 0.25ml(摂氏37度)を添加して、摂氏37度、5% CO2存在下で6時間培養して、管状構造の誘導を顕微鏡下で観察した。なお、対照としては、本発現ベクターではなくpVAX1プラスミドを同様の処理により導入した細胞を用いた。この結果、ヒトーコンドロモジュリンーI遺伝子を組み込んだpVAX1プラスミドを導入した場合のみ、完全に管状構造の誘導が抑制された。
更に、血管新生キット(倉敷紡績株式会社、KZ-1000)を用いて繊維芽細胞と本発現ベクターを導入した正常ヒト網血管内皮細胞との共培養を行ない、コンドロモジュリン-I遺伝子の発現による効果を検討したところ、ヒトーコンドロモジュリンーI遺伝子を組み込んだpVAX1プラスミドを導入した場合のみ管腔形成が抑制されることが明らかとなった。
実施例2
本発現ヘ゛クターを導入した正常ヒト網血管内皮細胞の培養液中に、3H-チミジン(0.5から2.5μCi/ml)、発色基質(WST-8、Cell Counting Kit-HS、同仁、CK-08)、蛍光色素(Calcein-AM、Cell Counting Kit-F、同仁、CK-06)を添加して、摂氏37度、5% CO2下で1時間から72時間培養した。3H-チミジンを使用した場合には細胞のDNAにとりこまれた放射活性をシンチレーションカウンターで計測することで細胞によるDNA合成の定量を行ない、発色基質を使用した場合にはマイクロプレートリーダーで450nmの吸光度を測定することで細胞の増殖を測定した。また、蛍光色素使用した場合にはマイクロプレートリーダーで蛍光強度(励起波長480nm〜500nm、蛍光波長500nm〜535nm)を測定することで細胞の増殖を測定した。対照としては、本発現ベクターではなくpVAX1プラスミドを同様の処理により導入した細胞を用いた。この結果、ヒト−コンドロモジュリン-I遺伝子を組み込んだpVAX1プラスミドを加えた場合には、正常ヒト網血管内皮細胞のDNA合成および細胞増殖が抑制された。
本発現ヘ゛クターを導入した正常ヒト網血管内皮細胞の培養液中に、3H-チミジン(0.5から2.5μCi/ml)、発色基質(WST-8、Cell Counting Kit-HS、同仁、CK-08)、蛍光色素(Calcein-AM、Cell Counting Kit-F、同仁、CK-06)を添加して、摂氏37度、5% CO2下で1時間から72時間培養した。3H-チミジンを使用した場合には細胞のDNAにとりこまれた放射活性をシンチレーションカウンターで計測することで細胞によるDNA合成の定量を行ない、発色基質を使用した場合にはマイクロプレートリーダーで450nmの吸光度を測定することで細胞の増殖を測定した。また、蛍光色素使用した場合にはマイクロプレートリーダーで蛍光強度(励起波長480nm〜500nm、蛍光波長500nm〜535nm)を測定することで細胞の増殖を測定した。対照としては、本発現ベクターではなくpVAX1プラスミドを同様の処理により導入した細胞を用いた。この結果、ヒト−コンドロモジュリン-I遺伝子を組み込んだpVAX1プラスミドを加えた場合には、正常ヒト網血管内皮細胞のDNA合成および細胞増殖が抑制された。
以下に、続けて実験例および実施例を述べる。
実験材料及び方法
コンドロモジュリン-I発現ベクター(pCNX2/FLAG-hChM-I(Glu 215 )
コンドロモジュリン-I発現ベクターはヒト−コンドロモジュリン-I前駆蛋白質(Met1-Val334)(GenBank Accession Number AB006000)から生成される、成熟型ヒト−コンドロモジュリン-I蛋白質(Glu215-Val334)に相当するDNA配列にプレプロトリプシンの分泌配列とFLAG配列を結合し、pCNX2発現ベクターのEcoR1制限サイトに挿入することにより調整した。成熟型ヒト−コンドロモジュリン-I cDNAの転写はニワトリβ−アクチンプロモーターに支配される。
コンドロモジュリン-I発現ベクター(pCNX2/FLAG-hChM-I(Glu 215 )
コンドロモジュリン-I発現ベクターはヒト−コンドロモジュリン-I前駆蛋白質(Met1-Val334)(GenBank Accession Number AB006000)から生成される、成熟型ヒト−コンドロモジュリン-I蛋白質(Glu215-Val334)に相当するDNA配列にプレプロトリプシンの分泌配列とFLAG配列を結合し、pCNX2発現ベクターのEcoR1制限サイトに挿入することにより調整した。成熟型ヒト−コンドロモジュリン-I cDNAの転写はニワトリβ−アクチンプロモーターに支配される。
内皮細胞培養
マウス脾臓由来の内皮細胞株(MSS31)を用いた。10%の牛胎児血清(FBS)を含むα変型イーグル培地(αMEM)で5%CO2下、摂氏37度で培養した。
マウス脾臓由来の内皮細胞株(MSS31)を用いた。10%の牛胎児血清(FBS)を含むα変型イーグル培地(αMEM)で5%CO2下、摂氏37度で培養した。
内皮細胞へのトランスフェクション
pCNX2/FLAG-hChM-I(Glu215)をLipofectamine 2000 (Gibco BRL, Gaitherburg, MD)を用いて使用説明書に従ってMSS31細胞にトランスフェクトした。安定トランスフェクタントを800 μg/mlのgeneticin (Gibco BRL)を用いて選択し、10%のFBSと400 μg/mlのgeneticinを含むαMEMで維持した。
pCNX2/FLAG-hChM-I(Glu215)をLipofectamine 2000 (Gibco BRL, Gaitherburg, MD)を用いて使用説明書に従ってMSS31細胞にトランスフェクトした。安定トランスフェクタントを800 μg/mlのgeneticin (Gibco BRL)を用いて選択し、10%のFBSと400 μg/mlのgeneticinを含むαMEMで維持した。
管状構造誘導抑制
48穴培養プレートに生長因子を減少させたMatrigel(0.25ml; Becton Dikinson, Labware, Bedford, MA)を被覆し、30分間、摂氏37度で放置した。これにMSS31細胞をトリプシン−EDTAで処理し、4 x 104ヶずつ1% FBSを含むαMEMと共に重層した。10時間摂氏37度で培養後、位相差顕微鏡下で写真撮影した。管状構造の定量化のためにランダムに視野を選択し、視野(230μm × 340μm)当たりの毛細管様構造の全長をNIH image analyzer (version 1.61, National Institute of Health, Bethesda, MD, USA)を用いて測定した。
48穴培養プレートに生長因子を減少させたMatrigel(0.25ml; Becton Dikinson, Labware, Bedford, MA)を被覆し、30分間、摂氏37度で放置した。これにMSS31細胞をトリプシン−EDTAで処理し、4 x 104ヶずつ1% FBSを含むαMEMと共に重層した。10時間摂氏37度で培養後、位相差顕微鏡下で写真撮影した。管状構造の定量化のためにランダムに視野を選択し、視野(230μm × 340μm)当たりの毛細管様構造の全長をNIH image analyzer (version 1.61, National Institute of Health, Bethesda, MD, USA)を用いて測定した。
DNA合成の抑制
MSS31細胞を48穴培養プレートで10%の牛胎児血清(FBS)を含むαMEMで密集するまで培養後、FBSを0.1%に落としたαMEMで48時間した。これをFGF-2(10ng/ml)で24時間処理した。最後の6時間の間5-ブロモ-デオキシウリジン(BrdU)で標識した。DNAに取り込まれたBrdUをブロモ-デオキシウリジン キットIII(Boehringer Mannheim GmbH, Mannheim, Germany)の説明書によって測定した。405 nmの吸収はBio-Rad(Hercules, CA)のModel450 Microplate Readerを用いて測定した。
MSS31細胞を48穴培養プレートで10%の牛胎児血清(FBS)を含むαMEMで密集するまで培養後、FBSを0.1%に落としたαMEMで48時間した。これをFGF-2(10ng/ml)で24時間処理した。最後の6時間の間5-ブロモ-デオキシウリジン(BrdU)で標識した。DNAに取り込まれたBrdUをブロモ-デオキシウリジン キットIII(Boehringer Mannheim GmbH, Mannheim, Germany)の説明書によって測定した。405 nmの吸収はBio-Rad(Hercules, CA)のModel450 Microplate Readerを用いて測定した。
実施例1 MSS31細胞を用いたDNA合成抑制
図1.に示すごとくpCNX2/FLAG-hChM-I(Glu215)をトランスフェクトしたMSS31細胞においては明らかにFGF-2によって誘導されたDNAへのBrdUの取り込みが抑制された。このことは成熟型ヒト−コンドロモジュリン-I蛋白質(Glu215-Val334)の配列を含むプラスミドを用いることによって血管内皮細胞のDNA合成を抑制できることを示す。
図1.に示すごとくpCNX2/FLAG-hChM-I(Glu215)をトランスフェクトしたMSS31細胞においては明らかにFGF-2によって誘導されたDNAへのBrdUの取り込みが抑制された。このことは成熟型ヒト−コンドロモジュリン-I蛋白質(Glu215-Val334)の配列を含むプラスミドを用いることによって血管内皮細胞のDNA合成を抑制できることを示す。
実施例2 MSS31細胞の管状構造誘導抑制
内皮細胞の管状構造の形成は血管新生のモデルとしてよく知られている。FGF-2やVEGFの存在下にMatrigelの上で内皮細胞が多細胞性の管状構造を形成する。図2.に示すごとくpCNX2/FLAG-hChM-I(Glu215)をトランスフェクトしたMSS31細胞においては管状の構造の形成が明らかに抑制された。なお、mockはFLAG-hChM-I(Glu215)を含まない元のpCNX2のみをトランスフェクトした細胞の値を示す。
内皮細胞の管状構造の形成は血管新生のモデルとしてよく知られている。FGF-2やVEGFの存在下にMatrigelの上で内皮細胞が多細胞性の管状構造を形成する。図2.に示すごとくpCNX2/FLAG-hChM-I(Glu215)をトランスフェクトしたMSS31細胞においては管状の構造の形成が明らかに抑制された。なお、mockはFLAG-hChM-I(Glu215)を含まない元のpCNX2のみをトランスフェクトした細胞の値を示す。
実施例3 ラットにおける硝子体内投与による網膜上新生血管の抑制
12週齢のロング-エヴァンスラット(オス)の網膜上の血管の主走行部位の側面の6-7ヶ所ずつ、麻酔下でクリプトン-レッド レーザーを用いて照射を行った(647nm 150mW 0.05秒)。
スポットサイズは80μmとした。
照射後、硝子体内の網膜近傍にハミルトン注射器にて、HVJ-エンベロープ(GenomONE 石原産業)に封入したヒト完全長-コンドロモジュリン遺伝子を挿入したpcDNA3プラスミドを5μlずつ注入した。
HVJ-エンベロープへのプラスミドの封入は石原産業のGenomONE取扱説明書の実験操作手順の第2法に従った。
なお、プラスミドの濃度は3.73mgDNA/mlで20μlを封入時に添加した。
1週間後にさらに同量のプラスミドを同様に硝子体内へ投与した。
対照としてはプラスミドを添加しないHVJ-エンベロープを用いた。
レーザー照射1ヶ月後に0.05mlの20%フルオレセインナトリウム溶液を靜注し、眼底を観察した。(図3,4)
対照(図4)は出現した新生血管とそれに基づく色素の漏出が見られた。
それに対しコンドロモジュリン プラスミドの投与により、新生血管と色素の漏出は抑えられていた。(図3)
12週齢のロング-エヴァンスラット(オス)の網膜上の血管の主走行部位の側面の6-7ヶ所ずつ、麻酔下でクリプトン-レッド レーザーを用いて照射を行った(647nm 150mW 0.05秒)。
スポットサイズは80μmとした。
照射後、硝子体内の網膜近傍にハミルトン注射器にて、HVJ-エンベロープ(GenomONE 石原産業)に封入したヒト完全長-コンドロモジュリン遺伝子を挿入したpcDNA3プラスミドを5μlずつ注入した。
HVJ-エンベロープへのプラスミドの封入は石原産業のGenomONE取扱説明書の実験操作手順の第2法に従った。
なお、プラスミドの濃度は3.73mgDNA/mlで20μlを封入時に添加した。
1週間後にさらに同量のプラスミドを同様に硝子体内へ投与した。
対照としてはプラスミドを添加しないHVJ-エンベロープを用いた。
レーザー照射1ヶ月後に0.05mlの20%フルオレセインナトリウム溶液を靜注し、眼底を観察した。(図3,4)
対照(図4)は出現した新生血管とそれに基づく色素の漏出が見られた。
それに対しコンドロモジュリン プラスミドの投与により、新生血管と色素の漏出は抑えられていた。(図3)
Claims (12)
- 下記遺伝子から選ばれたいずれか1種からなる視野障害治療・改善・予防剤。
(1) コンドロモジュリン-I遺伝子。
(2) コンドロモジュリン-Iの部分配列をコードした遺伝子。
(3) コンドロモジュリン-Iの部分配列を含むアミノ酸配列をコードした遺伝子。 - 下記蛋白質を発現するウイルスベクターあるいはプラスミドからなる視野障害治療・改善・予防剤。
(1) コンドロモジュリン-I。
(2) コンドロモジュリン-Iの部分配列からなる蛋白質。
(3) コンドロモジュリン-Iの部分配列を含むアミノ酸配列からなる蛋白質。 - 請求項1記載の遺伝子または請求項2記載のウイルスベクターあるいはプラスミド、および細胞への遺伝子導入促進剤からなる視野障害治療・改善・予防剤。
- コンドロモジュリン-Iがヒト由来のものである、請求項1ないし3記載の視野障害治療・改善・予防剤。
- コンドロモジュリン-IがGenBank Accession Number XM_007132またはAB006000の部分配列である、請求項1ないし4記載の視野障害治療・改善・予防剤。
- コンドロモジュリン-Iの部分配列が配列表の配列番号1または2によって規定される蛋白質である、請求項1ないし5記載の視野障害治療・改善・予防剤。
- コンドロモジュリン-Iの部分配列を含むアミノ酸配列が、配列表の配列番号2の配列を含むコンドロモジュリン-I活性を有する蛋白質である請求項1ないし6記載の視野障害治療・改善・予防剤。
- 遺伝子が生体内での蛋白質発現のための開始コドンや細胞外への分泌を促すため分泌に必要な配列を有する、請求項1ないし7記載の視野障害治療・改善・予防剤。
- 細胞外への分泌を促すため分泌に必要な配列が、preprotrypsinの分泌配列である請求項8記載の視野障害治療・改善・予防剤。
- 視野障害が眼内の血管増殖に基づくものである、請求項1ないし9記載の視野障害治療・改善・予防剤。
- 血管増殖性視野障害が糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性、網膜剥離または緑内障に起因するものである、請求項1ないし10記載の視野障害治療・改善・予防剤。
- 遺伝子導入促進剤がセンダイウィルス・エンベロープである、請求項3ないし11記載の視野障害治療・改善・予防剤。
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2007034753A1 (ja) * | 2005-09-22 | 2007-03-29 | Keiichi Fukuda | コンドロモジュリン-iを有効成分とする血管新生関連疾患治療剤 |
-
2003
- 2003-08-18 JP JP2003294514A patent/JP2004123722A/ja not_active Withdrawn
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2007034753A1 (ja) * | 2005-09-22 | 2007-03-29 | Keiichi Fukuda | コンドロモジュリン-iを有効成分とする血管新生関連疾患治療剤 |
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