JP2004117106A - 核種変換用構造体及びその形成方法 - Google Patents

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伊藤 岳彦
Mitsuru Sakano
坂野 充
Tomotsugu Sakai
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Yasuhiro Iwamura
岩村 康弘
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    • Y02E30/10Nuclear fusion reactors

Abstract

【課題】相対的に小規模な装置で核種変換を行うための構造体とそれを製作するための手段を提供する。
【解決手段】Pd又はPdの合金、或いはその他の水素を吸蔵する金属又はこれらの合金等からなる基板上に、Pd層とPdよりも仕事関数の小さな物質層との積層体からなる混合層を設け、さらにその上にPd層を設けた略板状の構造体とし、この構造体のPd層に核種変換を施す物質を付与する。Pd層に付与される核種変換を施す物質は、金属質になっていれば良く、表面に塩が付着していても良い。核種変換を施す物質を付与する手段は電着やイオン打ち込みが利用できる。
【選択図】   図6

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば長寿命の放射性廃棄物を短寿命核種或いは安定核種に変換する消滅処理や自然界に豊富な元素から希少な元素を生成する技術等に係る核種変換用構造体及びその形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば重イオン加速器を用いた核融合反応による重元素合成等のように、微量の核種を核種変換する方法に対して、例えば高レベル放射性廃棄物等に含まれる多量の長寿命放射性核種を短時間のうちに効率的かつ効果的に核種変換する方法として、いわゆる消滅処理が知られている。
消滅処理は、高レベル放射性廃棄物に含まれるNP、Am、Cm等のマイナーアクチナイドや、Tc−99及びI−129等の長寿命核分裂生成物や、発熱性のSr−90、Cs−137やRh、Pd等の有用な白金族元素を、各元素の特性に応じて分離(群分離)した後に、半減期の長いマイナーアクチナイド及び核分裂生成物に対して中性子等を照射して核反応を発生させて、短寿命又は非放射性の核種に変換する核種変換処理であり、高レベル放射性廃棄物中に含まれる有用元素や長寿命放射性核種を分離及び回収して有用元素の有効利用を図ると共に、長寿命放射性核種を短寿命或いは安定な核種に変換する処理である。
【0003】
消滅処理では、高速増殖炉等の原子炉やアクチノイド専焼炉での中性子照射によるアクチノイド等の消滅処理と、加速器での陽子照射によるアクチノイド等の核破砕処理と、加速器でのガンマ線照射による例えばセシウム、ストロンチウム等の消滅処理との3種類の方法が知られている。
原子炉等での中性子照射では、中性子反応断面積が大きいマイナーアクチナイドを合理的に処理することができ、特に、高速の中性子を照射することで核分裂が起こりにくい超ウラン元素を直接核分裂させることができる。
ただし、原子炉等の中性子照射では消滅しにくい長寿命核分裂生成物、例えば中性子反応断面積が小さいSr−90、Cs−137等については、加速器を利用した消滅処理が適用される。
【0004】
加速器による消滅処理では、原子炉と異なって未臨界で運転できるため、臨界に関わる安全性に優れていること、設計上の自由度が大きい等の利点があり、陽子加速器と電子線加速器が利用される。
陽子加速器を用いる消滅処理では、例えば500MeV〜2GeV程度の高エネルギー陽子を照射して標的核を破砕する核破砕反応を利用しており、核破砕反応を直接利用して核種変換を起こすと共に、標的核の破砕に伴って発生する多数の中性子を標的核周りの未臨界ブランケットに投入して核分裂反応を発生させたり、中性子の捕獲反応によって核種変換反応を発生させる。これにより、例えばネプツニウム、アメリシウム等の超ウラン元素及び長寿命核分裂生成物を消滅させることができ、しかも、未臨界ブランケットで発生した熱を回収して発電を行い、陽子加速器の運転に必要な電力を自給することができる。
【0005】
また、電子線加速器を用いる消滅処理では、例えば電子線の制動輻射で発生するガンマ線や、例えば電子蓄積リングと光キャビティーを組み合わせて逆コンプトン散乱により発生させたガンマ線等による光核反応、例えば(γ、N)反応や(γ、核分裂)反応等の巨大共鳴を利用することによって、ストロンチウム、セシウム等の長寿命核分裂生成物や超ウラン元素等を消滅処理する。
【0006】
ところで、上記従来技術の例による消滅処理のように、原子炉や加速器を利用して核種変換を行う場合、大規模かつ高価な装置を用いなければならず、核種変換に要する費用が嵩むという問題がある。
しかも、例えば長寿命核分裂生成物であるCs−137を処理する場合において、100万KW程度の原子力発電所から放出されるCs−137を加速器を利用して他の核種に変換する場合に、必要な電力は数100万KWに達してしまい、高強度かつ大電流の加速器が必要になって効率が悪いという問題がある。
【0007】
また、例えば軽水炉等の原子炉では熱中性子束が1×1014/cm /sec程度であるのに対して、中性子反応断面積が小さいCs−137の核種変換に必要な中性子束は1×1017〜1×1018/cm/sec 程度となり、必要な中性子束を得ることができないという問題がある。
【0008】
本出願人は先に上記の問題を解決して加速器や原子炉等の大規模な装置を使用することなしに、相対的に小規模な装置で核種変換を行うことが可能な核種変換方法として、パラジウム又はパラジウム合金或いはその他の水素を吸蔵する金属又はそれらの合金等からなる略板状の構造体の両面のうち、一方の表面に核種変換を施す物質を付着させ、該核種変換を施す物質を付着させた構造体の表面側を重水素の圧力が高い領域とし、前記構造体の他方の表面側を重水素の圧力が低い領域として、前記構造体内に重水素の流れを生成させて重水素と核種変換を施す物質とを反応させることを特徴とする核種変換方法を提案した(例えば、特許文献1参照。)。
【0009】
【特許文献1】
特願2001−201875号明細書、第1〜3頁
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記の方法においては、板状の構造体の表面に核種変換を施す物質を添加するが、この添加方法によっては重水素と核種変換を施す物質との反応が円滑かつ効率的に生起しないという問題点がある。
本発明は略板状の構造体の両面のうち、一方の表面に核種変換を施す物質を付加し、該核種変換を施す物質を付加した構造体の表面側を重水素の圧力が高い領域とし、前記構造体の他方の表面側を重水素の圧力が低い領域として、前記構造体内に重水素の流れを生成させて重水素と核種変換を施す物質とを反応させる核種変換方法において、確実かつ効率的に変換反応を生起させるための核種変換を施す物質を付加した核種変換用構造体及び適正な付加方法を明らかにする必要があった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、例えば加速器や原子炉等の大規模な装置に比べて、相対的に小規模な装置で核種変換を行うことが可能な核種変換用構造体及びその形成方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明の核種変換用構造体ではパラジウムもしくはパラジウム合金或いはパラジウム以外の水素吸蔵金属もしくはパラジウム合金以外の水素吸蔵合金からなる基材と、前記基材の表面に形成された、パラジウムもしくはパラジウム合金或いはパラジウム以外の水素吸蔵金属もしくはパラジウム合金以外の水素吸蔵合金とそれらの金属又は合金よりも仕事関数が低い物質とからなる混合層と、該混合層の表面に形成され、パラジウム又はパラジウム合金或いはパラジウム以外の水素吸蔵金属又はパラジウム合金以外の水素吸蔵合金からなる表面層とを備えて構成されている構造体であって、パラジウムもしくはパラジウム合金或いはパラジウム以外の水素吸蔵金属もしくはパラジウム合金以外の水素吸蔵合金からなる前記表面層に核種変換を施す物質を付加させてなる核種変換用構造体を採用することとした。
【0012】
上記構成の核種変換用構造体によれば、多層構造をなす構造体の一方の表面に核種変換を施す物質が内部に侵入可能な状態で接触しており、構造体の一方の表面側と他方の表面側との間に重水素の圧力差を設けて、構造体の内部で一方の表面側から他方の表面側へと向かう重水素の流束を生成することで、重水素と核種変換を施す物質との間で、再現性良く核種変換反応を発生させることができる。
【0013】
さらに、請求項2に記載の本発明の核種変換用構造体では、前記混合層がパラジウムと仕事関数が3eV未満の物質との積層構造からなる核種変換用構造体を採用することとした。仕事関数が3eV未満の物質としては、酸化カルシウム(CaO、仕事関数=1.6〜1.86eV)、酸化イットリウム(Y、仕事関数=2.0eV)、硼化ランタン(LaB、 仕事関数=2.66〜2.76eV )などが利用できる。
さらに、請求項3に記載の本発明の核種変換用構造体では、前記仕事関数が3eV未満の物質のうち、酸化カルシウムを採用したものである。酸化カルシウムは安定した物質で、手軽に調達でき安価である。
上記構成の核種変換用構造体によれば、多層構造をなす構造体に仕事関数が低い物質を含む混合層を設けることで電子密度に濃度差を設け、構造体内に生ずる重水素の圧力差を利用した核種変換反応の発生の再現性を向上させることができる。
また、上記物質のうち酸化カルシウムは仕事関数が1.6〜1.86eVと低く、Pdの電子密度との濃度差が大きくなり、反応を一層促進させる利点を有する。
【0014】
さらに、請求項4に記載の本発明の核種変換用構造体では、前記表面層に付加した核種変換を施す物質として金属状態の物質を含んでいる核種を使用することができる。
また、請求項5に記載の本発明の核種変換用構造体では、金属状態の物質として電着金属を採用することとした。
金属状態をなしていれば、構造体表面のPd又はPd合金中に容易に拡散侵入するので、重水素との反応が容易となり核種変換が効率良く行われるからである。また、電着金属を採用すれば核種変換をすべき物質を含んだ再処理廃液から、金属状態の核種変換をすべき物質を、構造体表面層に容易かつ確実に付加させることができる利点を有する。
【0015】
また、請求項6に記載の本発明の核種変換用構造体では、前記表面層に付着した核種変換を施す物質が、電着金属及び核種変換を施す物質の塩からなるものを利用することができることとした。
電解方法を利用して核種変換を施す物質を構造体表面に沈着させるに際して、電着金属と電解浴の結晶が晶出するが、電着金属が存在していれば、その表面に核種変換を施す物質の塩があっても核種変換処理には支障は起こらない。
【0016】
次に、請求項7に記載の本発明の核種変換用構造体の形成方法は、パラジウムもしくはパラジウム合金或いはパラジウム以外の水素吸蔵金属もしくはパラジウム合金以外の水素吸蔵合金からなる基材と、前記基材の表面に形成された、パラジウムもしくはパラジウム合金或いはパラジウム以外の水素吸蔵金属もしくはパラジウム合金以外の水素吸蔵合金と、それらの金属又は合金よりも仕事関数が低い物質とからなる混合層と、前記混合層の表面に形成され、パラジウム又はパラジウム合金或いはパラジウム以外の水素吸蔵金属又はパラジウム合金以外の水素吸蔵合金からなる表面層とを備えて構成されている構造体の表面層に、核種変換を施す物質を含む電解浴を使用して核種変換を施す物質を電解析出させる核種変換用構造体の形成方法を採用した。
【0017】
上記方法を採用すれば、核種変換をすべき物質を含んだ再処理廃液から、金属状態の核種変換をすべき物質を構造体表面層に容易かつ強固に析出させて、核種変換用構造体を得ることができる利点を有する。
【0018】
また、請求項8に記載の本発明の核種変換用構造体の形成方法は、パラジウムもしくはパラジウム合金或いはパラジウム以外の水素吸蔵金属もしくはパラジウム合金以外の水素吸蔵合金からなる基材と、前記基材の表面に形成された、パラジウムもしくはパラジウム合金或いはパラジウム以外の水素吸蔵金属もしくはパラジウム合金以外の水素吸蔵合金と、それらの金属又は合金よりも仕事関数が低い物質とからなる混合層と、前記混合層の表面に形成され、パラジウム又はパラジウム合金或いはパラジウム以外の水素吸蔵金属又はパラジウム合金以外の水素吸蔵合金からなる表面層とを備えて構成されている構造体の表面層に、イオン打ち込みにより核種変換を施す物質を沈着させる方法を採用した。
【0019】
上記構成の核種変換用構造体によれば、多層構造をなす構造体に仕事関数が低い物質を含む混合層を設けることで、核種変換反応の発生の再現性を向上させることができる。
この方法によれば、核種変換をすべき物質を含んだ再処理廃液から、金属状態の核種変換をすべき物質を構造体表面層に容易かつ確実に付着させて、核種変換用構造体を得ることができる利点を有する。
【0020】
請求項9に記載の本発明の核種変換用構造体の形成方法は、パラジウムもしくはパラジウム合金或いはパラジウム以外の水素吸蔵金属もしくはパラジウム合金以外の水素吸蔵合金からなる基材と、前記基材の表面に形成された、パラジウムもしくはパラジウム合金或いはパラジウム以外の水素吸蔵金属もしくはパラジウム合金以外の水素吸蔵合金と、それらの金属又は合金よりも仕事関数が低い物質とからなる混合層と、前記混合層の表面に形成され、パラジウム又はパラジウム合金或いはパラジウム以外の水素吸蔵金属又はパラジウム合金以外の水素吸蔵合金からなる表面層とを備えて構成されている構造体の表面層に、真空蒸着により核種変換を施す物質を付加する方法を採用した。
【0021】
また、請求項10に記載の本発明の核種変換用構造体の形成方法は、パラジウムもしくはパラジウム合金或いはパラジウム以外の水素吸蔵金属もしくはパラジウム合金以外の水素吸蔵合金からなる基材と、前記基材の表面に形成された、パラジウムもしくはパラジウム合金或いはパラジウム以外の水素吸蔵金属もしくはパラジウム合金以外の水素吸蔵合金と、それらの金属又は合金よりも仕事関数が低い物質とからなる混合層と、前記混合層の表面に形成され、パラジウム又はパラジウム合金或いはパラジウム以外の水素吸蔵金属又はパラジウム合金以外の水素吸蔵合金からなる表面層とを備えて構成されている構造体の表面層に、スパッタ法により核種変換を施す物質を付加する方法を採用した。
【0022】
これらの薄膜製造方法によっても核種変換元素を核種変換用構造体の内部に拡散浸透させて、核種変換を起こさせることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る核種変換用構造体及びその形成方法ついて添付図面を参照しながら説明する。
図1は本発明に係る核種変換方法の原理を説明する図であり、図2は、図1で示した構造体11を示す断面構成図であり、図3は、本発明で使用する核種変換装置30の構成図であり、図4は、本発明で使用する核種変換用の構造体1を示す断面構成図であり、図5は、図4に示した核種変換用の構造体1における混合層3の断面構成図であり、図6は、核種変換装置30で使用する核種変換用構造体20の断面構成図であり、図7は、構造体1に核種変換を施す物質を付加する装置の構成図である。
【0024】
先ず、本発明における核種変換方法の原理について説明する。
本発明における核種変換方法を実現する核種変換装置10は、例えば図1に示すように、パラジウム(Pd)またはPdの合金、あるいはその他の水素を吸蔵する金属(例えば、Ti等)またはこれらの合金等からなる、略板状の構造体11と、この構造体11の両面のうち、一方の表面11A上に付着された核種変換を施す物質14とを備え、構造体11の一方の表面11A側が加圧あるいは電気分解等により重水素の圧力が高い領域12とされ、他方の表面11B側が例えば真空排気等により重水素の圧力が低い領域13とされることで構造体11内に重水素の流れ15が生成され、重水素と核種変換を施す物質14とが反応することによって核種変換が行われる装置である。
構造体11は、たとえば図2に示すように好ましくはPd基板4の表面に、相対的に仕事関数が低い物質つまり電子を放出し易い物質(例えば、仕事関数が3eV未満の物質)とPdとの混合層3が形成され、この混合層3の表面にPd層2が積層されて形成されている。
さらに、Pd層2に核種変換を施すべき物質を付与して、核種変換反応を起こさせる。
ここで、仕事関数とは、金属の結晶表面から1個の電子を表面のすぐ外側に取り出すのに必要な最小のエネルギーである。金属では光電子放出のエネルギー閾値や電子親和力は仕事関数と一致する。仕事関数が低い物質は電子を放出し易く、化学反応を起こしやすい物質といえる。ちなみに、仕事関数の例を列挙すれば、Csは2.14eV、Pdは5.55eV、CaOは1.6〜1.86eV、であり、3eV未満の物質としてはCaOの他に、酸化イットリウム(Y;仕事関数=2.0eV)、硼化ランタン(LaB ;仕事関数=2.66〜2.76eV)などが利用できる。
【0025】
次に、本発明で使用する核種変換装置について説明する。
本発明で使用する核種変換装置は、図3に示すように、内部が気密保持可能とされた吸蔵室31と、この吸蔵室31の内部にて核種変換を施すべき物質を付与した多層構造体20を介して気密保持可能に設けられた放出室34と、バリアブルリークバルブ33を介して吸蔵室31内に重水素を供給する重水素ボンベ35と、放出室34内の真空度を検出する放出室真空計36と、例えば多層構造体20から生成されるガス状の反応生成物を検出すると共に放出室34内の重水素量を計測することにより多層構造体20を透過する重水素の透過量を評価する質量分析器37と、放出室34内を常に真空状態に保つターボ分子ポンプ38と、放出室34及びターボ分子ポンプ38内を荒引きするためのロータリーポンプ39とを備えて構成されている。
【0026】
さらに、核種変換装置30は、例えばX線や電子線、粒子線等の照射により励起された多層構造体20の表面の原子から放出される光電子やイオン等を検出する静電アナライザー40と、多層構造体20の両面のうち吸蔵室31内の重水素に曝される表面にX線を照射するXPS(X−ray Photo−electron Spectrometry: X線照射光電子スペクトル分析)用のX線銃41と、内部に重水素が導入された吸蔵室31内の圧力を検出する圧力計42と、例えばベリリウム窓43を有する高純度ゲルマニウム検出器44からなるX線検出器と、吸蔵室31内の真空度を検出する吸蔵室真空計45と、例えば重水素の導入以前等に吸蔵室31内を真空状態に保持する真空バルブ46と、吸蔵室31を真空状態にするターボ分子ポンプ47と、吸蔵室31及びターボ分子ポンプ47内を荒引きするためのロータリーポンプ48とを備えて構成されている。
【0027】
このような核種変換装置30を使用して核種変換処理を行うには、多層構造体20の吸蔵室31側を相対的に重水素の圧力が高い状態とし、多層構造体20の放出室34側を相対的に重水素の圧力が低い状態として、多層構造体20の両面において重水素の圧力差を形成することで、吸蔵室31側から放出室34側へ重水素の流れを作り出す。
【0028】
すなわち、多層構造体20の核種変換を施す物質を付加した面を吸蔵室31側に向けて、多層構造体20を介在させて吸蔵室31と放出室34とをそれぞれ気密状態に閉塞して、先ず、放出室34をロータリーポンプ39およびターボ分子ポンプ38により真空排気する。そして、バリアブルリークバルブ33を閉じ、真空バルブ46を開いて吸蔵室31をロータリーポンプ48およびターボ分子ポンプ47により真空排気する。
次に、吸蔵室31の真空度が充分安定した後(例えば、1×10−5Pa以下の状態)に、XPSにより吸蔵室31側の多層構造体20の表面に存在する元素を分析する。すなわち、X線銃41からのX線を多層構造体20の表面に照射して、このX線の照射により励起された多層構造体20の表面の原子から放出される光電子のエネルギーを静電アナライザー40により検出する。これにより、多層構造体20の吸蔵室31側の表面に存在する元素を同定する。
【0029】
次に、多層構造体20を、加熱装置(図示略)により例えば70℃の温度で加熱した後、真空バルブ46を閉じて吸蔵室31の真空排気を停止して、バリアブルリークバルブ33を開いて吸蔵室31内に所定のガス圧力で重水素ガスを導入して、核種変換を開始する。ここで、重水素ガスを導入する際の所定のガス圧力は例えば1.01325×10 Pa(いわゆる1気圧)とする。
そして、放出室34の質量分析器37でガス状の反応生成物(例えば、質量数A=1〜140)の測定を行い、多層構造体20を透過して放出室34内に放出された重水素の拡散挙動の評価を行う。また、多層構造体20の吸蔵室31側の高純度ゲルマニウム検出器44によりX線の測定を行う。
なお、多層構造体20を透過して放出室34内に放出された重水素量は、例えば放出室真空計36により検出される放出室34内の真空度と、ターボ分子ポンプ38の排気速度とに基づいて算出する。
【0030】
吸蔵室31内に重水素ガスの導入を開始してから所定時間、例えば数十時間後に、多層構造体20の温度を常温に戻す。そして、バリアブルリークバルブ33を閉じて吸蔵室31内への重水素ガスの導入を停止して、さらに、真空バルブ46を開いて吸蔵室31を真空排気して核種変換を終了する。
そして、吸蔵室31内の真空度が充分安定した後(例えば、1×10−5Pa以下の状態)に、XPSにより吸蔵室31側の多層構造体20の表面に存在する元素を分析して生成物の測定を行って、多層構造体20を核種変換装置30から取り出し、核種変換を終了する。
【0031】
上記の核種変換方法で使用する構造体1は、図4に示すようにPd基板4の表面に相対的に仕事関数が低い物質(例えば、仕事関数が3eV未満の物質)とPdとの混合層3が形成され、この混合層3の表面にPd層2が積層された構造体1を使用する。ここで混合層3は、例えば図5に示すようなPd層5と酸化カルシウム(CaO)層6との積層構造を使用することができる。
さらに、Pd層2の表面に核種変換を施す物質としてセシウム(Cs)を付加した核種変換を施す元素が添加されたPd層8を形成して、図6に示すような核種変換用の多層構造体20が構成される。核種変換を施す物質を添加するには、たとえば図7に示すような装置を使用する。すなわち、図7は核種変換を施す物質を付加する装置の構成図であって、陰極には前述のようにして得られた構造体1を、陽極には白金陽極18を使用し、電解液17として濃度1mmolのCsNO のDO 希薄溶液(CsNO/DO溶液)を使用して、構造体1のPd層2の表面にCsを電解析出させて付加し、図8に示す核種変換用構造体21を形成する。
【0032】
ここで核種変換を施す元素が付加されたPd層8を形成する方法によっては、核種変換の反応が効率よく行われない場合がある。
本発明者等は構造体表面に核種変換を施す物質を付加する方法について、以下のような実験を行った。すなわち、核種変換を施す物質としてはCsを選択した。また、核種変換を施す物質を付加する構造体としては図4に示す構造体1を採用した。
【0033】
先ず、図4に示すようなPd基板4(縦25mm×横25mm×厚さ0.1mm、純度99.5%以上)をアセトン中で所定時間に亘って超音波洗浄することにより脱脂した。そして、真空中(1.33×10−5Pa以下)において、900℃の温度で所定時間(例えば、10時間)に亘ってアニールを行った。
次に、室温でアニール後のPd基板4を重王水により所定時間(100秒間)に亘ってエッチング処理を施して表面の不純物を除去した。
【0034】
次に、アルゴンイオンビームによるスパッター法を用いて、エッチング処理後のPd基板4上に成膜処理を施して構造体1を作成する。ここで、仕事関数の低い物質とPdとの混合層3は、図5に示すように、厚さ100・10−10 mのCaO層6と、厚さ100・10−10 mのPd層5とを交互に積層して形成し、この混合層3の厚さを1000・10−10 mとした。そして、混合層3の表面に図4示すPd層2を厚さ400・10−10 mに成膜することにより、構造体1を形成した。
【0035】
次いで、陰極にはこのようにして得られた構造体1を、陽極には白金陽極18を使用して、図9に示す核種変換を施す物質の付与装置51により、構造体1のPd層2に核種変換を施す物質(Cs)を付加して、図8に示す核種変換用構造体21を形成した。
図9に示すとおり、核種変換を施す物質の付加装置51は、フッ素系樹脂製の電解セル53と構造体1をOリング57を介して締め付けてある。構造体1の背面はステンレス製電解セル52が接触しており、フッ素系樹脂製電解セル53とステンレス製電解セル52を締め込むことで、構造体1を固定している。
フッ素系樹脂製電解セル53と構造体1及びOリング57によって構成された容器内に、電解液54として濃度1mmol、容量1mlのCsNO のDO 希薄溶液(CsNO/DO溶液)を注入し、白金陽極55を設置した。
【0036】
次に、このようにして組み立てた核種変換を施す物質の付加装置51のステンレス製電解セル52と白金陽極55の間に、1Vの電圧を印加して10秒間通電した。これにより構造体1と白金陽極の間に電界がかかるようになる。本実験例では、電極間隔は約1mm、電解のかかる面積は約1.3cm であった。
その後電解液を抜き取り、電解液に湿潤している構造体1を真空乾燥させて、構造体1を電解槽から取り出して、図8に示す核種変換用構造体21を得た。
図8に示す核種変換用構造体21では、Pd層2の表面に核種変換を施す元素であるCsが付加されたPd層23と、電解液の結晶であるところの表面に残ったCsNO 塩24とが存在していた。
上記のような図8に示す核種変換用構造体21を得る方法を、Cs付加方法Aと呼ぶことにする。
【0037】
次に、構造体1をCs付加方法Aにおいて使用した電解液(すなわち、濃度1mmol、容量1mlのCsNO のDO 希薄溶液)中に10秒間浸漬した後、乾燥させて図10に示す核種変換用構造体25を作成した。核種変換用構造体25では、Pd層2の表面には蒸発残渣であるCsNO 塩24のみが付着していた。上記のような図10に示す核種変換用構造体25を得る方法を、Cs付加方法Bと呼ぶことにする。
【0038】
次に、Cs付加方法Aで得られた核種変換用構造体21を、さらに重水の中に10秒間浸漬し乾燥させた後、表面に残ったCsNO 塩24を水洗除去した。その後再び真空乾燥させて、図11に示す核種変換用構造体26を得た。核種変換用構造体26は構造体中のPd層2の内部に核種変換を施すCsが付加されたPd層2が生じていた。上記のような図11に示す核種変換用構造体26を得る方法を、Cs付加方法Cと呼ぶことにする。
【0039】
さらに、これらのCs付加方法A,B及びCによって得られた核種変換用構造体21,25及び26を使用して、図3に示す核種変換装置30を使用して、重水素透過を行い、核種変換実験を行った。核種変換の条件は、重水素圧力;1気圧、試験温度70℃、核種変換時間は48〜100時間で実施した。
【0040】
核種変換処理終了後、各核種変換用構造体21,25及び26をXPS(X線光電子分光分析)で分析を行った。すなわち、X線銃からのX線を核種変換用構造体の表面に照射して、このX線照射により励起された、核種変換用構造体の表面の原子から放出された光電子のエネルギーを静電アナライザーにより検出した。これにより、核種変換用構造体の吸蔵室側の表面に存在する元素を同定した。
【0041】
図12は、核種変換処理後のCs付加方法Aによる核種変換用構造体21のXPSで測定した結果を示すチャートである。このようにCs付加方法Aによる核種変換用構造体21では、プラセオジム(Pr)が生成していることが確認された。しかし、同様にして測定したCs付加方法Bによる核種変換用構造体25では、プラセオジム(Pr)が生成していることが確認されなかった。また、Cs付加方法Cによる核種変換用構造体26では、プラセオジム(Pr)が生成していることが確認された。
【0042】
なお、以下において、検出されたPrが不純物に由来するものであるか否かについて考察する。
上述した分析では核種変換用構造体を吸蔵室31及び放出室34からなる真空容器から取り出すことなく元素分析を行っているので、不純物が混入する原因として考えられるのは重水素ガス(D ガス)に含まれる不純物と核種変換用構造体内部の不純物である。
 ガスは例えば純度99.6%であり、不純物としては、N 及びD0が10ppm以下で、O 、CO 及びCOが5ppm以下とされており、核種変換装置30内でD ガスを分析した場合にも、これらの不純物及び炭化水素以外のガスは検出されなかった。
【0043】
一方、核種変換用構造体においては、Pdの純度は99.5%、CaO及びCsNO の純度は99.9%である。また、グロー放電質量分析法(GD−MS)によって実験開始以前の多層構造体32に対してランタノイド(La−57〜Lu−71)の定量分析を行った結果、Ndが0.02ppm検出され、Nd以外の他のランタノイドは検出限界以下、つまり0.01ppm以下であった。ここで、核種変換用構造体内に、検出限界である0.01ppmのPrが存在していると仮定すると、多層構造体32中にPrの原子が4.2×1013個存在することになる。
【0044】
この場合に検出されたPr原子は、上記仮定に基づく検出限界以下のPr原子に起因すると仮定すると、これらの検出限界以下の全てのPr原子が核種変換用構造体の表面から数10・10−10m の深さの領域に濃縮するようにして配置されていると仮定する必要があり、核種変換用構造体中に不純物として分散配置されているPr原子が、核種変換用構造体の表面近傍にのみ集中するような物理現象は熱力学的に不可能であり、検出されたPr原子が、予め核種変換用構造体中に含まれていた不純物であると結論することはできない。しかも、予め核種変換用構造体中に含まれていた不純物であれば、原子数の時間変化は観測されずに一定値を保持すると判断できる。
以上より、検出されたPrは、核種変換反応の結果として生成されたと結論できる。
【0045】
次に、XPS分析後の各核種変換用構造体21,25及び26を、10Nの濃硝酸に浸漬し10分間超音波をかけながら表面から1μm程度エッチングして、付加したCsと生成したPrを濃硝酸中に溶解させた。この溶液についてICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析)により分析を行い、溶液中のCs及びPrの濃度を測定した。
その結果、Cs付加方法Aで得られた核種変換用構造体21及びCs付加方法Cで得られた核種変換用構造体26を溶解した試料では、Csから元素変換したPrが確認されたが、Cs付加方法Bで得られた核種変換用構造体25ではPrは認められなかった。
この結果、核種変換用構造体の内部に埋め込まれたCsは核種変換するが、表面に付着しているCs塩では、Csは核種変換しないことが判る。
核種変換を起こさせるには、金属状体にしてPd層と密着させ、原子の拡散浸透が起こりうる状態にしておく必要がある。
【0046】
上記のように、核種変換用構造体のPd層内部に侵入したCsが核種変換することが判明したので、イオン打ち込みにより核種変換用構造体の内部にCsを打ち込むことを試みた。イオン打ち込みはイオンを加速して固体内に不純物原子等を導入する手段である。熱拡散による添加や溶融状体での添加等の熱的手段に比べ、低温度で不純物を非平衡状態として導入する特徴がある。イオン打ち込み法は、広範囲な各種不純物を設計した濃度で導入できるほか、不純物の空間的分布を制御できる等の利点がある。
【0047】
Csイオンの打ち込み条件は、加速電圧:18keV、ドーズ量:1.0×1015ions/cm 、イオン電流:35μAとした。イオン打ち込みによれば、Cs原子は核種変換用構造体の表面より内部に存在する。図13はTOF−SIMSにより分析した打ち込みCsの深さ方向の分布を示した図である。図に示すようにCsはPd層の表面から深さ400オングストロームに渡って単調減少しながら分布しているのが判る。
【0048】
さらに、被核種変換元素をPd層の内部に侵入させる手段としては、真空蒸着法やスパッタ法が利用できる。
真空蒸着法は真空中で被変換元素を加熱蒸発させてPd層表面に蒸着させた後、加熱して拡散させる。また、スパッタ法はたとえばアルゴンなどの希ガスをプラズマ化してイオンとし、被変換元素で構成されるターゲットの衝突させて、飛散した被変換元素をPd層表面に沈着させる方法である。
【0049】
【実施例】
前述の実験で使用したのと同様にして核種変換用構造体を作成し、前述の実験と同一条件の下で核種変換処理に付した。すなわち、Cs付加方法Aの電着方法による核種変換用構造体を9個(表1のNo.1〜No.9)、Cs付加方法Cの電着方法と表面の酸洗を併用した方法による核種変換用構造体を4個(表1のNo.11〜No.14)、及びイオン打ち込み法による核種変換用構造体を1個(表1のNo.15)作成して、核種変換処理に付した。
核種変換処理終了後、各核種変換用構造体についてICP−MSで全量分析を行い、単位面積当たりのPr生成量とCs量を測定した。測定結果を表1に示した。
【0050】
【表1】
Figure 2004117106
【0051】
表1の結果から、Cs付加方法A(No.1〜No.9)及びCs付加方法C(No.11〜No.14)並びにイオン打ち込み(No.15)による核種変換用構造体を使用した場合には、Csから元素変換したPrの存在が確認された。これに対してCs付加方法B(No.10)による核種変換用構造体を使用した場合には、Csから元素変換したPrの存在は確認されなかった。
【0052】
さらに、イオン打ち込みによる核種変換用構造体を使用した(No.15)の試料について、TOF−SIMSで深さ方向の元素分布を分析した結果を図14に示す。その結果、核種変換用構造体の表面では打ち込まれたCs原子が少なくなってPr原子が生成してしているのが判る。また、核種変換用構造体の表面から100オングストロームまではCsが漸増してPrが漸減しているが、200オングストロームより深い部分ではPrはほとんど存在せず、Cs原子が漸減している。このことから核種変換は核種変換用構造体の表面近傍で行われていることが判る。
【0053】
さらに、同一試料につきTOF−SIMSで核種変換処理前後のCs原子とPr原子の平面分布を観察した結果を図15に示す。図15に示すように核種変換処理前は、Cs原子は試料全面に高濃度で存在しているため画面全体が明るくなっており(図15(a)参照)、Pr原子は存在しないため画面全体が暗くなっている(図15(c)参照)。一方、核種変換処理後には、Cs原子が減少しているので画面上に一部暗黒部分が現れている(図15(b)参照)。また、核種変換により生成したPr原子が画面全体に分散しているので画面全体が明るくなっている(図15(d)参照)。
図に示すように、核種変換の結果生成したPrは、構造体の表面で一様に分布しており、結晶粒界等の特殊な領域で反応が起こっているのではない。この結果、多層構造体の接合面積を増大させることにより、反応容量も増大させることが容易であることが判る。
【0054】
なお、上述した本実施の形態においては、Pd層の表面に核種変換を施す物質としてセシウム(Cs)を添加して多層構造体32を構成したが、これに限定されず、核種変換を施す物質としてCsの代わりに、例えば炭素(C)等のその他の物質を添加しても良い。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の核種変換用構造体を使用すれば、構造体の内部に金属質の核種変換を施す物質を付与してあるので、構造体の一方の表面側と他方の表面側との間に重水素の圧力差を設けて、構造体の内部で一方の表面側から他方の表面側へと向かう重水素の流束を生成することで、原子炉や加速器等に比べて相対的に小規模な構成で確実かつ再現性良く核種変換反応を発生させることができる。
また本発明の核種変換用構造体の形成方法によれば、構造体の内部に金属質の核種変換を施す物質を付与するので、確実に核種変換反応を発生させることができる構造体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る核種変換方法の原理を説明する図である。
【図2】図1に示した構造体1の断面構成を示す図である。
【図3】本発明で使用する核種変換装置の構成図である。
【図4】本発明で使用する構造体の断面構成図である。
【図5】図4に示す構造体1における混合層3の断面構成図である。
【図6】核種変換装置で使用する核種変換用構造体の断面構成図である。
【図7】構造体に核種変換を施す物質を付加する装置の構成図である。
【図8】実験で使用した核種変換用構造体の断面構成を示す図である。
【図9】核種変換を施す物質の付加装置の構成図である。
【図10】実験で使用した核種変換用構造体の断面構成の他の例を示す図である。
【図11】実験で使用した核種変換用構造体の断面構成の別の例を示す図である。
【図12】核種変換用構造体表面のXPSによるPrのスペクトルを示す図である。
【図13】イオン打ち込みによる深さとCs量の関係を示す図である。
【図14】深さ方向の元素分布を示す図である。
【図15】核種変換前後のCs原子とPr原子の平面分布を示す図である。
【符号の説明】
1・・・・・・構造体、2・・・・・・Pd層、3・・・・・・混合層、4・・・・・・Pd基板、5・・・・・・Pd層、6・・・・・・CaO層、8・・・・・・核種変換を施す元素が添加されたPd層、10・・・・・・核種変換方法を実現する装置、11・・・・・・構造体、15・・・・・・重水素の流れ、16・・・・・・核種変換を施す元素の付加装置、17・・・・・・電解液、18・・・・・・白金電極、20,21,25,26・・・・・・核種変換用多層構造体、30・・・・・・核種変換装置、31・・・・・・吸蔵室、34・・・・・・放出室、35・・・・・・重水素ボンベ、41・・・・・・X線銃、51・・・・・・核種変換を施す物質の付与装置

Claims (10)

  1. パラジウムもしくはパラジウム合金或いはパラジウム以外の水素吸蔵金属もしくはパラジウム合金以外の水素吸蔵合金からなる基材と、前記基材の表面に形成された、パラジウムもしくはパラジウム合金或いはパラジウム以外の水素吸蔵金属もしくはパラジウム合金以外の水素吸蔵合金とそれらの金属又は合金よりも仕事関数が低い物質とからなる混合層と、前記混合層の表面に形成され、パラジウム又はパラジウム合金或いはパラジウム以外の水素吸蔵金属又はパラジウム合金以外の水素吸蔵合金からなる表面層とを備えて構成されている構造体であって、前記表面層に核種変換を施す物質を付加してなることを特徴とする核種変換用構造体。
  2. 前記混合層がパラジウムと仕事関数が3eV未満の物質との積層構造からなることを特徴とする請求項1に記載の核種変換用構造体。
  3. 前記仕事関数が3eV未満の物質が酸化カルシウムであることを特徴とする請求項2に記載の核種変換用構造体。
  4. 前記表面層に付加した核種変換を施す物質が、金属状態の物質を含んでいることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の核種変換用構造体。
  5. 前記表面層に付加した核種変換を施す物質が、電着金属であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の核種変換用構造体。
  6. 前記表面層に付加した核種変換を施す物質が、電着金属及び核種変換を施す物質の塩からなることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の核種変換用構造体。
  7. パラジウムもしくはパラジウム合金或いはパラジウム以外の水素吸蔵金属もしくはパラジウム合金以外の水素吸蔵合金からなる基材と、前記基材の表面に形成された、パラジウムもしくはパラジウム合金或いはパラジウム以外の水素吸蔵金属もしくはパラジウム合金以外の水素吸蔵合金と、それらの金属又は合金よりも仕事関数が低い物質とからなる混合層と、前記混合層の表面に形成され、パラジウム又はパラジウム合金或いはパラジウム以外の水素吸蔵金属又はパラジウム合金以外の水素吸蔵合金からなる表面層とを備えて構成されている構造体の表面層に、核種変換を施す物質を含む電解浴を使用して核種変換を施す物質を電解析出させることを特徴とする核種変換用構造体の形成方法。
  8. パラジウムもしくはパラジウム合金或いはパラジウム以外の水素吸蔵金属もしくはパラジウム合金以外の水素吸蔵合金からなる基材と、前記基材の表面に形成された、パラジウムもしくはパラジウム合金或いはパラジウム以外の水素吸蔵金属もしくはパラジウム合金以外の水素吸蔵合金と、それらの金属又は合金よりも仕事関数が低い物質とからなる混合層と、前記混合層の表面に形成され、パラジウム又はパラジウム合金或いはパラジウム以外の水素吸蔵金属又はパラジウム合金以外の水素吸蔵合金からなる表面層とを備えて構成されている構造体の表面層に、イオン打ち込みにより核種変換を施す物質を付加することを特徴とする核種変換用構造体の形成方法。
  9. パラジウムもしくはパラジウム合金或いはパラジウム以外の水素吸蔵金属もしくはパラジウム合金以外の水素吸蔵合金からなる基材と、前記基材の表面に形成された、パラジウムもしくはパラジウム合金或いはパラジウム以外の水素吸蔵金属もしくはパラジウム合金以外の水素吸蔵合金と、それらの金属又は合金よりも仕事関数が低い物質とからなる混合層と、前記混合層の表面に形成され、パラジウム又はパラジウム合金或いはパラジウム以外の水素吸蔵金属又はパラジウム合金以外の水素吸蔵合金からなる表面層とを備えて構成されている構造体の表面層に、真空蒸着により核種変換を施す物質を付加することを特徴とする核種変換用構造体の形成方法。
  10. パラジウムもしくはパラジウム合金或いはパラジウム以外の水素吸蔵金属もしくはパラジウム合金以外の水素吸蔵合金からなる基材と、前記基材の表面に形成された、パラジウムもしくはパラジウム合金或いはパラジウム以外の水素吸蔵金属もしくはパラジウム合金以外の水素吸蔵合金と、それらの金属又は合金よりも仕事関数が低い物質とからなる混合層と、前記混合層の表面に形成され、パラジウム又はパラジウム合金或いはパラジウム以外の水素吸蔵金属又はパラジウム合金以外の水素吸蔵合金からなる表面層とを備えて構成されている構造体の表面層に、スパッタ法により核種変換を施す物質を付加することを特徴とする核種変換用構造体の形成方法。
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