JP2004113317A - 希ガスポーラライザ装置および磁気共鳴撮像装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】高圧下で希ガスを超偏極状態として抽出できる希ガスポーラライザ装置および磁気共鳴撮像装置を実現する。
【解決手段】セル110、トラップ部20、アキュムレータ300の容器、並びに、パイプ40を、ガラス材質の内壁とステンレススチールの外壁とを有する2重構造とし、内壁および外壁の間隙に、超偏極を行う際の混合ガスと同程度の圧力の窒素ガスを封入することとしているので、高圧下において、同位体キセノンの超偏極および抽出を行うことができ、ひいては同位体キセノンの超偏極度を向上させることを実現させる。
【選択図】 図2
【解決手段】セル110、トラップ部20、アキュムレータ300の容器、並びに、パイプ40を、ガラス材質の内壁とステンレススチールの外壁とを有する2重構造とし、内壁および外壁の間隙に、超偏極を行う際の混合ガスと同程度の圧力の窒素ガスを封入することとしているので、高圧下において、同位体キセノンの超偏極および抽出を行うことができ、ひいては同位体キセノンの超偏極度を向上させることを実現させる。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、希ガスを超偏極状態とする希ガスポーラライザ装置および磁気共鳴撮像装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、Xe,He等の希ガス同位体を超偏極状態とし、吸引あるいは注射により被検体に吸収させることにより、高感度の磁気共鳴画像を取得することが行われている。ここで、希ガス同位体を超偏極状態とするために、希ガスポーラライザ装置が用いられる。
【0003】
希ガスポーラライザ装置では、高温のセル内において希ガス同位体を超偏極状態とし、その後、液体窒素の恒温槽において、希ガスの昇華現象を利用して、希ガス同位体のみの抽出が行われる。
【0004】
そこでは、高温のセルと、液体窒素の恒温槽とが、ガラスパイプを用いて接続され、希ガスを含む混合ガスが、セルから恒温槽へと輸送されている。また、高温のセルおよび混合ガスを入れる恒温槽の容器の内壁は、超偏極を維持するために、金属ではなくガラス材が用いられている。(例えば、特許文献1参照)
【0005】
【特許文献1】
特表2000−507688号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術によれば、希ガス同位体の超偏極度を向上することが難しかった。すなわち、希ガスがガラス内壁に衝突し、超偏極度が低下する現象が知られており、この現象の改善のために高圧下で希ガスを超偏極状態とすることが望まれる。しかし、高温のセル、混合ガスを入れる恒温槽の容器およびガラスパイプは、ガラス材を用いているので、強度的に弱く、混合ガスを高圧化することが難しかった。
【0007】
特に、セルは高温であり、またガラスパイプは、混合ガスを輸送する関係上、複数の屈曲部が存在し、局所的に高い圧力が偏在する可能性もあり、ガラス材にとって過酷な条件下にある。このため、混合ガスを高圧化することは、ガラス材の破損、爆発を生じさせ、ひいては安全性を低下させる要因となる。
【0008】
これらのことから、高圧下で希ガスを超偏極状態として抽出できる希ガスポーラライザ装置および磁気共鳴撮像装置をいかに実現するかが重要となる。
【0009】
この発明は、上述した従来技術による課題を解決するためになされたものであり、高圧下で希ガスを超偏極状態として抽出できる希ガスポーラライザ装置および磁気共鳴撮像装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、第1の観点の発明にかかる希ガスポーラライザ装置は、混合ガスに含まれる希ガスを超偏極状態にする偏極部と、前記混合ガスに含まれるアルカリ金属を除去するトラップ部と、前記混合ガスから前記希ガスを抽出する抽出部と、前記偏極部から前記抽出部に、前記トラップ部を介して前記混合ガスを輸送するパイプと、を備える希ガスポーラライザ装置であって、前記偏極部、前記トラップ部および前記抽出部の前記混合ガスを内蔵する容器、並びに、前記パイプは、前記混合ガスを封入するガラス材質の内壁および金属材質の外壁を有し、密封構造をなす前記内壁と前記外壁との間隙に、前記混合ガスの圧力と概ね等しい圧力の気体状物質を備えることを特徴とする。
【0011】
この第1の観点による発明によれば、偏極部、トラップ部および抽出部の混合ガスを内蔵する容器、並びに、パイプは、混合ガスを封入するガラス材質の内壁および金属材質の外壁を有し、密封構造をなす内壁と外壁との間隙に、気体状物質を備え、混合ガスの圧力と概ね等しい圧力にしているので、ガラス材質の内壁にかかる差圧を減らし、高圧下において混合ガスを超偏極状態とすることができ、希ガス同位体の超偏極度の向上とともに、内壁が破損することを防ぎ、また仮に破損した場合でも、金属材質の外壁により、内壁が飛び散ることを防ぎ、安全性を向上することができる。
【0012】
また、第2の観点の発明にかかる希ガスポーラライザ装置は、前記間隙が、前記抽出部と前記パイプとの境界に隔壁を有し、前記抽出部の間隙部分に、気体状物質を注入あるいは排出する注排出手段を備えることを特徴とする。
【0013】
この第2の観点の発明によれば、間隙が、抽出部とパイプとの境界に隔壁を有し、抽出部の間隙部分に、注排出手段により、気体状物質を注入あるいは排出することとしているので、抽出部に超偏極された希ガスを蓄積あるいは取り出す際に、抽出部の容器をジャッキ等で動かすこと無く、希ガスの蓄積および取り出しを行うことができ、しかも容器の温度変化を緩和することができるので、パイプ等のガラス材部分の、温度変化に対する負荷を軽減することができる。
【0014】
また、第3の観点の発明にかかる希ガスポーラライザ装置は、前記間隙部分に、前記気体状物質が、前記希ガスを抽出する際に注入され、抽出された前記希ガスを取り出す際に排出されることを特徴とする。
【0015】
この第3の観点の発明によれば、間隙部分に、気体状物質が、希ガスを抽出する際に注入され、抽出された希ガスを取り出す際に排出されることとしているので、希ガスの抽出および取り出しの際に、抽出部の容器に加えられる温度変化を、緩和することができ、ひいては、抽出部の容器あるいはパイプ等に加わる熱的ストレスを軽減することができる。
【0016】
また、第4の観点の発明にかかる希ガスポーラライザ装置は、前記偏極部の前記外壁に、耐熱ガラス窓を備えることを特徴とする。
【0017】
この第4の観点の発明によれば、偏極部の外壁に、耐熱ガラス窓を備えることとしているので、レーザー光を混合ガスに照射することができる。
【0018】
また、第5の観点の発明にかかる希ガスポーラライザ装置は、前記金属材質に、ステンレススチールを用いることを特徴とする。
【0019】
この第5の観点の発明によれば、金属材質に、ステンレススチールを用いることとしているので、強度的に強く、高圧下でも使用に耐える外壁とすることができる。
【0020】
また、第6の観点の発明にかかる希ガスポーラライザ装置は、前記気体状物質に、不活性ガスを用いることを特徴とする。
【0021】
この第6の観点の発明によれば、気体状物質に、不活性ガスを用いることとしているので、取り扱いが容易で、しかも容器を安全なものとすることができる。
【0022】
また、第7の観点の発明にかかる希ガスポーラライザ装置は、前記注排出手段に、真空ポンプを備えることを特徴とする。
【0023】
この第7の観点の発明によれば、注排出手段に、真空ポンプを備えることとしているので、効率的に気体状物質の排出を行うことができる。
【0024】
また、第8の観点の発明にかかる磁気共鳴撮像装置は、静磁場を形成する静磁場形成手段と、勾配磁場を形成する勾配磁場形成手段と、前記静磁場内の被検体に高周波磁場を送信する送信手段と、前記被検体からの磁気共鳴信号を受信あるいは送受信するRFコイルと、前記勾配磁場形成手段、前記送信手段および前記RFコイルを制御し、前記磁気共鳴信号から画像再構成により画像情報を生成する制御処理部と、前記被検体に超偏極状態の希ガスを供給する希ガスポーラライザ装置と、を備える磁気共鳴撮像装置であって、前記希ガスポーラライザ装置は、希ガスを超偏極状態にする偏極部、アルカリ金属を除去するトラップ部および前記希ガスを抽出する抽出部の容器、並びに、前記偏極部と前記抽出部とを前記トラップ部を介して接続するパイプに、ガラス材質の内壁および金属材質の外壁を有し、密封構造をなす前記内壁と前記外壁との間隙に、内壁圧力と概ね等しい圧力の気体状物質を備えることを特徴とする。
【0025】
この第8の観点の発明によれば、希ガスポーラライザ装置は、希ガスを超偏極状態にする偏極部、アルカリ金属を除去するトラップ部および希ガスを抽出する抽出部の容器、並びに、偏極部と抽出部とをトラップ部を介して接続するパイプに、ガラス材質の内壁および金属材質の外壁を有し、密封構造をなす内壁と外壁との間隙の気体状物質を、内壁圧力と概ね等しい圧力にすることとしているので、ガラス材質の内壁にかかる差圧を減らし、高圧下において混合ガスを超偏極状態とすることができ、希ガス同位体の超偏極度の向上とともに、内壁が破損することを防ぎ、また仮に破損した場合でも、金属材質の外壁により、内壁が飛び散ることを防ぎ、安全性を向上することができる。
【0026】
【0027】
【発明の属する技術分野】
この発明は、希ガスを超偏極状態とする希ガスポーラライザ装置および磁気共鳴撮像装置に関する。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる希ガスポーラライザ装置および磁気共鳴撮像装置の好適な実施の形態について説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1にかかる磁気共鳴撮像装置の全体構成について説明する。図1は、この発明の実施の形態1である磁気共鳴撮像装置の全体構成を示すブロック図である。図1において、この磁気共鳴撮像装置は、マグネットシステム(magnet system)700、データ(data)収集部750、送信駆動部740、勾配駆動部730、制御処理部800および希ガスポーラライザ(gas polarizer)装置3を有する。ここで、制御処理部800は、さらにスキャンコントローラ(scan controller)部760、データ管理部770、表示部780、操作部790を含む。
【0029】
マグネットシステム700は、主磁場コイル(coil)部702、勾配コイル部706、送信コイル部708およびRFコイル710を有する。これら各コイル部は概ね円筒状の形状を有し、互いに同軸的に配置されている。マグネットシステム700の概ね円柱状の内部空間(ボア:bore)に、撮像の被検体1が(cradle)720に搭載されて図示しない搬送手段により搬入および搬出される。
【0030】
ここで、制御情報の入力は、操作部790からデータ管理部770に対して行われ、この制御情報はスキャンコントローラ部760に転送された後に、スキャンコントローラ部760によりデータ収集部750、送信駆動部740、勾配駆動部730に出力される。
【0031】
主磁場コイル部702はマグネットシステム700の内部空間に静磁場を形成する。静磁場の方向は、概ね被検体1の体軸の方向に平行である。すなわち、いわゆる水平磁場を形成する。主磁場コイル部702は、例えば超伝導コイルを用いて構成される。なお、超伝導コイルに限らず常伝導コイル等を用いて構成してもよいのはもちろんである。
【0032】
勾配コイル部706は、互いに垂直な3軸すなわちスライス(slice)軸、位相軸および周波数軸の方向において、それぞれ静磁場強度に勾配を持たせるための3つの勾配磁場を発生させる。
【0033】
送信コイル部708は、静磁場空間にある被検体1の体内に磁気共鳴を励起するための高周波磁場を形成する。また、RFコイル710は、クレードル720上に置かれ、被検体1と共にマグネットシステム700の中心部に配置される。このRFコイル710は、送信コイル部708により被検体1の体内に励起された磁気共鳴信号を受信する。
【0034】
勾配コイル部706には勾配駆動部730が接続されている。勾配駆動部730は勾配コイル部706に駆動信号を与えて勾配磁場を発生させる。勾配駆動部730は、勾配コイル部706における3系統の勾配コイルに対応して、図示しない3系統の駆動回路を有する。
【0035】
送信コイル部708には送信駆動部740が接続されている。送信駆動部740は、送信コイル部708に駆動信号を与えてRFパルスを送信し、送信コイル部708は、送信されたRFパルスからRF磁場をマグネットシステム700の中心部に形成し、被検体1を磁気共鳴の励起状態にする。
【0036】
RFコイル710には、データ収集部750が接続されている。データ収集部750は、RFコイル710が受信した受信信号をサンプリング(sampling)によって取り込み、それをディジタルデータ(digital data)として収集する。
【0037】
勾配駆動部730、送信駆動部740およびデータ収集部750にはスキャンコントローラ部760が接続されている。受信制御部であるスキャンコントローラ部760は、勾配駆動部730ないしデータ収集部750をそれぞれ制御して撮影を遂行する。
【0038】
データ収集部750の出力側は、データ管理部770に接続されている。データ収集部750が収集したデータは、データ管理部770に入力される。データ管理部770は、例えば計算機等を用いて構成される。データ管理部770は、図示しないメモリ(memory)を有する。メモリはデータ管理部770用のプログラム(program)および各種のデータを記憶している。
【0039】
データ管理部770は、スキャンコントローラ部760に接続されている。データ管理部770は、スキャンコントローラ部760の上位にあってそれを統括する。本装置の機能は、データ管理部770がメモリに記憶されたプログラムを実行することによりを実現される。
【0040】
データ管理部770は、データ収集部750が収集したデータをメモリに記憶する。メモリ内にはデータ空間が形成される。このデータ空間は2次元フーリエ(Fourier)空間を構成する。データ管理部770は、この2次元フーリエ空間のデータを2次元逆フ−リエ変換することにより被検体1の画像を再構成する。
【0041】
データ管理部770には表示部780および操作部790が接続されている。表示部780は、グラフィックディスプレー(graphic display)等で構成される。操作部790はポインティングデバイス(pointingdevice)を備えたキーボード(keyboard)等で構成される。
【0042】
表示部780は、データ管理部770から出力される再構成画像および各種の情報を表示する。操作部790は、使用者によって操作され、各種の指令や情報等をデータ管理部770に入力する。使用者は表示部780および操作部790を通じてインタラクティブ(interactive)に本装置を操作する。
【0043】
RFコイル710は、被検体1に励起された磁気共鳴信号を受信するコイルで、例えばバードケイジ(birdcage)型等のコイルで構成される。
【0044】
希ガスポーラライザ装置3は、被検体1に超偏極された希ガス、例えば同位体キセノン(Xe)を供給する。以下に、超偏極状態について若干の説明を行う。希ガスである同位体ルビジウム(Rb)あるいはキセノンは、核磁気モーメント(moment)を有しており、静磁場が印加された状態において、エネルギー(energy)状態の異なる幾つかの状態に分布する。通常の温度平衡状態では、すべての状態にほぼ均等に同位体ルビジウムあるいはキセノンが分布する。これとは逆に、あるエネルギー状態に多くの同位体ルビジウムあるいはキセノンが偏在する状態を超偏極状態と称する。この超偏極状態では、より多くの同位体ルビジウムあるいはキセノンが磁気共鳴現象に関与することができ、信号感度を向上することができる。
【0045】
希ガスポーラライザ装置3は、被検体1に装着されたマスク(mask)を介して、気体状の超偏極状態にある同位体キセノンを被検体1に供給する。被検体1は、この同位体キセノンを吸引し、肺を通して血中に取り込む。その後、被検体1の磁気共鳴撮像を行うことにより、高い感度で同位体キセノンを画像化することができる。
【0046】
つぎに、希ガスポーラライザ装置3の構成について詳細に説明する。図2は、本実施の形態1にかかる希ガスポーラライザ装置3のブロック構成および各ブロック部の断面を示す図である。希ガスポーラライザ装置3は、大きくは、ガス供給部50、偏極部10、トラップ(trap)部20、抽出部30、希ガス収集部60、偏極部10とトラップ部20と抽出部30とを接続するパイプ(pipe)40、および抽出部30と希ガス収集部60とを接続するガラス管70からなる。ここで、偏極部10および抽出部30は、静磁場B1および静磁場B2が印加された状態にあり、これら静磁場は、図示しない永久磁石等により形成される。
【0047】
ガス供給部50は、外部からの同位体ルビジウムの供給を調節する開閉弁520、タンク(tank)510および偏極部10に混合ガスを供給する金属パイプからなる。タンク510には、キセノン同位体、窒素およびヘリウム(He)の混合ガスが、概ね1%、1%、98%の比率で、高圧下に圧縮、貯蔵されている。この混合ガスは、タンク510の出口で、同位体ルビジウムと概ね1MPa(メガパスカル)の圧力下で混合され、偏極部10に導入される。
【0048】
偏極部10は、セル(cell)110、オーブン(oven)100、弁120を含んでいる。オーブン100は、セル110を内包しており、セル110を概ね200℃の高温状態とする。また、偏極部10には、円偏向レーザー(razor)光が照射される。このレーザー光は、図示しないレーザーダイオードアレイ(razor diode array)等により生成され、混合ガスにふくまれるアルカリ(alkaline)金属により決まる波長を有する。例えば、ルビジウムの場合には、概ね795nm(ナノメートル)の波長となる。なお、オーブン100およびセル110は、レーザー光をセル110内部に導き入れるガラス窓を有している。
【0049】
弁120は、開閉式の弁であり、開くことによりガス供給部50で生成される混合ガスをセル110内部に導入する。セル110は、混合ガスを円偏向レーザーと相互作用させる内部空間と、この内部空間を囲む内壁および外壁からなる。ここで、内壁は、ガラスにより構成され、外壁は、ステンレススチールで構成される。そして、この内壁および外壁の中間に位置する間隙には、不活性ガス、例えば窒素が、概ね1MPaの圧力で充填されている。
【0050】
また、セル110の外壁の円偏向レーザーが入射する側面には、耐熱ガラスの窓130が設けられている。この窓130から、オーブン100の窓を通して進入した円偏向レーザー光がさらにセル110内部にも進入し、混合ガスと相互作用を行う。
【0051】
パイプ40は、セル110内部の混合ガスをトラップ部20を介して抽出部30へ輸送する。図3に、図2のパイプ40の垂直断面を示す。パイプ40は、同心円状に位置する内壁400、外壁410およびこれらの中間に間隙420を備えている。内壁400は、ガラスで構成されており、外壁410は、ステンレススチールで構成されている。間隙420には、希ガス、例えば窒素ガスが、概ね1MPaの圧力で封入されている。
【0052】
また、内壁400の内部には、混合ガスが流れている。ここで、混合ガスは、概ね1MPaの圧力を有しているので、内壁400に内側から及ぼす圧力Pinは、外側から及ぼす圧力Poutと概ね一致する。これにより、内壁400にかかる圧力は、概ね零となり、混合ガスが流れる際の圧力負荷は、ほぼ解消される。
【0053】
図2に戻り、トラップ部20は、パイプ40のガラス材質からなる内壁に低温槽21を有している。この低温槽21は、例えば水流を流す冷却管が、パイプ40の内壁に巻き付けられたものである。これにより、内壁内部の混合ガスを冷却し、混合ガスに含まれる気体状のルビジウムを液化あるいは固化し除去する。
【0054】
抽出部30は、アキュムレータ(accumulator)300、恒温槽310、液体窒素330、昇降台320、ニードル(needle)弁190および弁140〜160を含んでいる。ここで、アキュムレータ300は図示しない保持具により保持され、恒温槽310との相対位置はオペレータが自由に設定できるものとする。
【0055】
アキュムレータ300は、トラップ部20の混合ガスをパイプ40を介して入力する。アキュムレータ300の容器は、セル110およびパイプ40と同様のガラス材質の内壁および金属材質の外壁を有し、これら内壁および外壁の間隙には、概ね1MPaの希ガスが充填されている。
【0056】
また、アキュムレータ300とパイプ40とは脱着可能となっており、パイプ40のアキュムレータ300入力部は、内壁のガラス管部分のみが伸張している。このガラス管部分は、アキュムレータ300がパイプ40に装着された際に、アキュムレータ300の底部に達する長さを有し、パイプ40内部の混合ガスをアキュムレータ300底部に直接吹き付ける。
【0057】
また、アキュムレータ300の上部には、残留ガスを廃棄する排出口および希ガス収集部60への接続口がある。この排出口には、開閉弁160およびニードル弁190が、金属管等を介して装着されている。ニードル弁190は、針穴を有する隔壁により、入力部と出力部が仕切られている。これにより、弁160を開放後にニードル弁190の入力側のアキュムレータ300を高圧力に保ち、出力側を大気圧とすることができる。
【0058】
恒温槽310は、例えばデュワー瓶で構成され、内部には、アキュムレータ300を冷却する液体窒素330が貯蔵される。また、恒温槽310は、昇降台320上に載置され、昇降台320を上昇させた状態で、液体窒素330にアキュムレータ300が浸された状態となり、昇降台320を下降させた状態で、液体窒素330とアキュムレータ300とが接しない状態となる。
【0059】
希ガス収集部60は、アキュムレータ300と弁150およびガラス管70を介して接続され、エアーバッグ600、弁170および180を含む。エアーバッグ600は、弁170に脱着され、抽出される超偏極状態にある気体状の同位体キセノンが、被検体に吸引される際に使用される。
【0060】
つづいて、本実施の形態1にかかる希ガスポーラライザ装置3の動作について説明する。まず、超偏極状態の同位体キセノンをアキュムレータ300で抽出する動作について説明する。この抽出動作を行うにあたっては、昇降台320を上昇させアキュムレータ300を液体窒素330に浸した状態とし、トラップ部20の低温槽21に水流を流し動作状態とし、セル110に円偏向レーザーが入射状態とし、セル110を含むオーブン100内部は概ね200℃とし、偏極部10に概ね10mT(テスラ)の静磁場B1が印加状態とし、抽出部30に、概ね0.2Tの静磁場B2が印加状態とする。
【0061】
ここで、弁520、120、140、160を開放状態とし、弁150を閉じた状態とする。これにより、ガス供給部50で生成される、同位体ルビジウムを含む混合ガスを、セル110内部に導入する。この際、混合ガスの圧力は、概ね1MPaに調整される。
【0062】
セル110内部において、混合ガス内の同位体ルビジウムは、照射される円偏向レーザーを吸収し、高いエネルギー状態に多くのルビジウム同位体が存在する超偏極状態となる。その後、超偏極状態となったルビジウム同位体は、スピン交換移動として知られる現象により、混合ガス中の同位体キセノンに、この超偏極状態を移転する。これにより、同位体キセノンは、高いエネルギー状態に多くの同位体キセノンが存在する超偏極状態となる。
【0063】
なお、混合ガス中のヘリウムは、緩衝ガスとしての役割を有し、主としてルビジウム同位体が円偏向レーザー光を吸収する帯域を広げ、吸収効率を高めるものである。また、混合ガス中の窒素ガスは、円偏向レーザーの吸収効率を高める効果もあるが、主として、同位体ルビジウム発する蛍光を消光する機能を有する。
【0064】
なお、超偏極された同位体キセノンは、セル110の内壁に衝突する際にエネルギー状態の遷移を起こし、減偏極が生じる。この減偏極は、同位体キセノンを概ね1MPaの高圧下において超偏極状態とすることにより減少させることができ、ひいては、超偏極率を向上することができる。また、以下に記述するパイプ40、トラップ部20、アキュムレータ300の内壁でも同様の現象が生じ、これらに含まれる混合ガスは、概ね1MPaの高圧下におかれるので、同位体キセノンが内壁と衝突する際の減偏極を減少させることができる。
【0065】
その後、セル110内の混合ガスは、トラップ部20の導入され、低温槽21により混合ガスの低温化がはかられ、ルビジウム同位体の液化あるいは固化による除去がおこなわれる。
【0066】
その後、トラップ部20の混合ガスは、パイプ40を介してアキュムレータ300に導入される。この混合ガスは、パイプ40の伸張管によりアキュムレータ300の底部に直接吹き付けられる。ここで、アキュムレータ300の底部は、恒温槽310の液体窒素330に浸されているので、概ね液体窒素温度にあり、吹きつけられた混合ガスの同位体キセノンは、昇華現象により、固化し、キセノン氷となる。
【0067】
また、混合ガスのその他の成分、ヘリウム、窒素ガスは、固化することなくアキュムレータ300からニードル弁190を介して排出される。このプロセスを、タンク510から混合ガスを導入しつつ連続的に行う。しかも、ニードル弁190により排気口に差圧を生じさせているので、高圧下で行うことができる。
【0068】
つづいて、アキュムレータ300に蓄積された超偏極状態の同位体キセノンを取り出す動作について説明する。この取り出し動作を行うにあたって、弁520,120、140、160、180は閉じた状態にあり、弁150、170は開いた状態にあり、昇降台320は下降された状態にあり、恒温槽310の液体窒素330はアキュムレータ300と接しない状態にある。
【0069】
アキュムレータ300は、液体窒素330と接しない状態にあるので、高温状態となる。ここで、アキュムレータ300の底部に存在する超偏極状態のキセノン氷は、昇華現象により気化し、この気化した同位体キセノンは、弁150からガラス管を介してエアーバッグ600に導入され、蓄積される。この状態を、アキュムレータ300の底部に存在するキセノン氷が無くなる迄維持する。
【0070】
その後、エアーバッグ600に蓄積された超偏極状態の同位体キセノンは、被検体に吸引され、磁気共鳴撮像装置による撮像が行われる。なお、本実施の形態1では、同位体キセノンがエアーバッグ600に一時的に蓄積されることとしたが、直接被検体に吸引させることもできる。また、アキュムレータ300は、パイプ40に着脱可能としているので、パイプ40から取り外した後に、キセノン氷を取り出すことも出来る。そして、この同位体キセノンを溶媒に溶かし、注射器により被検体の血中に注入することもできる。
【0071】
上述してきたように、本実施の形態1では、セル110、トラップ部20、アキュムレータ300の容器、並びに、パイプ40を、ガラス材質の内壁とステンレススチールの外壁とを有する2重構造とし、内壁および外壁の間隙に、超偏極を行う際の混合ガスと同程度の圧力の窒素ガスを封入することとしているので、高圧下において、同位体キセノンの超偏極および抽出を行うことができ、ひいては同位体キセノンの超偏極度を向上することができる。
【0072】
また、本実施の形態1では、アキュムレータ300に、排気口につながるニードル弁190と、希ガス収集部60に接続される弁150とを別個に設けたが、共通の取り出し口により取り出し、その後、開閉弁を用いて切り替えることもできる。
【0073】
また、本実施の形態1では、図2に示したように、セル110、トラップ部20、アキュムレータ300の内壁および外壁は、一体構造を持つものとしたが、各部ごとに分離、独立した構造とし、組み立て製造を容易なものとすることもできる。
(実施の形態2)
ところで、上記実施の形態1では、恒温槽310を昇降台320を用いて上下させ、アキュムレータ300を液体窒素330に浸したり、あるいは液体窒素330から引き離したりしたが、アキュムレータ300の容器の内壁と外壁の間隙部分に注入されている希ガスを注入排出することで、アキュムレータ300と液体窒素330とを熱的に接触させたり、あるいは熱的に非接触とすることができる。そこで本実施の形態では、アキュムレータ300の容器の内壁と外壁の間隙部分に希ガスを注入排出する場合を示すことにする。
【0074】
図4は、この実施の形態2にかかる抽出部400および注排出部500の具体的な構成を示す断面図である。なお、この抽出部400は、図2に示した抽出部30に対応するものであり、その他の構成については、図2に示したものと同様のものとなるので、ここではその詳細な説明を省略する。
【0075】
抽出部400は、アキュムレータ450、恒温槽310、液体窒素330、ニードル弁190、弁140〜160を含んでおり、注排出部500は、タンク480、ポンプ430、弁460、470を含んでいる。また、抽出部400のアキュムレータ450は、注排出部500と金属パイプ440により接続されている。
【0076】
アキュムレータ450は、トラップ部20の混合ガスをパイプ40を介して入力する。アキュムレータ450の容器は、セル110およびパイプ40と同様のガラス材質の内壁およびステンレススチールの外壁を有している。この内壁と外壁に挟まれた間隙部分411は、注排出部500のタンク480およびポンプ430と、金属パイプ440および開閉弁460、470を介して接続されている。
【0077】
なお、アキュムレータ450の内壁および外壁は、パイプ40の内壁および外壁と同様の材質、構造を有しているが、アキュムレータ450の間隙部分411は、パイプ40の間隙とは、隔壁により隔絶しており、分離独立した構造を有している。
【0078】
注排出部500では、金属パイプ440が2つに分岐され、一方は、タンク480に接続され弁460により開閉され、他方は、ポンプ430に接続され弁470により開閉される。タンク480には、希ガス、例えば窒素ガスが高圧で封入されている。
【0079】
つぎに、抽出部400および注排出部500の動作について説明する。まず、超偏極状態の同位体キセノンをアキュムレータ450で抽出する動作について説明する。この抽出動作を行うにあたっては、弁460を開放し、弁470および150を閉じる。なお、弁140、160は開いた状態にされる。そして、タンク480内部の高圧の窒素ガスは、アキュムレータ450の間隙部分411に充填される。この際、トラップ部20から注入される混合ガスと同程度の高圧力、例えば1MPa程度の圧力で充填されることが好ましい。
【0080】
この結果、アキュムレータ450の内壁底部と、液体窒素330とは、間隙部分411の高圧の窒素ガスを介して熱的に接続状態となり、アキュムレータ450の内壁底部が低温に冷やされる。
【0081】
その後、パイプ40から注入される混合ガスは、パイプ40の伸張したガラス管により、アキュムレータ450の内壁底部に吹き付けられ、昇華現象により、超偏極状態の同位体キセノンが固化し、キセノン氷として抽出される。
【0082】
つづいて、アキュムレータ300に蓄積された超偏極状態の同位体キセノンを取り出す動作について説明する。この取り出し動作を行うにあたって、注排出部500の弁460を閉じ、弁470は開放される。また、弁140、160は閉じた状態にされ、弁470、150は開いた状態にされる。これにより、ポンプ430により、アキュムレータ450の間隙部分411は、高圧窒素ガスが排出され、さらに概ね真空状態となる。
【0083】
この結果、アキュムレータ450の内壁底部と、液体窒素330とは、間隙部分411が概ね真空状態となるため熱的に絶縁状態となり、アキュムレータ450の内壁底部は、液体窒素温度から、徐々に常温に変化していく。
【0084】
そして、アキュムレータ450の内壁底部に存在するキセノン氷は、昇華現象により、気化し、希ガス収集部60へ送られエアーバッグ600等に収集され、利用に供される。
【0085】
上述してきたように、本実施の形態2では、アキュムレータ450は、容器の内壁と外壁の間隙部分411に、窒素ガスを注入あるいは排出することとしているので、アキュムレータ450の内壁と恒温槽310内の液体窒素330とを、熱的に導通状態あるいは絶縁状態とすることができ、しかも窒素ガスを介する導通あるいは真空状態を介する絶縁であるため、急激な温度変化をアキュムレータ450が被ること無く安全に、トラップ部20から注入される混合ガスから超偏極状態の同位体キセノンをキセノン氷として抽出し、さらにキセノン氷を昇華現象により気化し被検体に吸引させることができる。
【0086】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、偏極部、トラップ部および抽出部の混合ガスを内蔵する容器、並びに、パイプは、混合ガスを封入するガラス材質の内壁および金属材質の外壁を有し、密封構造をなす内壁と外壁との間隙に、気体状物質を備え、混合ガスの圧力と概ね等しい圧力とされるので、ガラス材質の内壁にかかる差圧を減らし、高圧下において混合ガスを超偏極状態とすることができ、希ガス同位体の超偏極度の向上とともに、内壁が破損することを防ぎ、また仮に破損した場合でも、金属材質の外壁により、内壁が飛び散ることを防ぎ、安全性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】磁気共鳴撮像装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1にかかる希ガスポーラライザ装置のブロック図である。
【図3】実施の形態1のパイプの断面を示す図である。
【図4】実施の形態2にかかる希ガスポーラライザ装置の抽出部および注排出部を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 被検体
3 希ガスポーラライザ装置
10 偏極部
20 トラップ部
21 低温槽
30 抽出部
40 パイプ
50 ガス供給部
60 希ガス収集部
70 ガラス管
100 オーブン
110 セル
120、140、150、170、460、470、520 弁
130 窓
190 ニードル弁
300、450 アキュムレータ
310 恒温槽
320 昇降台
330 液体窒素
400 内壁
400 抽出部
410 外壁
411 間隙部分
420 間隙
430 ポンプ
440 金属パイプ
500 注排出部
480、510 タンク
600 エアーバッグ
700 マグネットシステム
702 主磁場コイル部
706 勾配コイル部
708 送信コイル部
710 RFコイル部
720 クレードル
730 勾配駆動部
740 送信駆動部
750 データ収集部
760 スキャンコントローラ部
770 データ管理部
780 表示部
790 操作部
800 制御処理部
【発明の属する技術分野】
この発明は、希ガスを超偏極状態とする希ガスポーラライザ装置および磁気共鳴撮像装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、Xe,He等の希ガス同位体を超偏極状態とし、吸引あるいは注射により被検体に吸収させることにより、高感度の磁気共鳴画像を取得することが行われている。ここで、希ガス同位体を超偏極状態とするために、希ガスポーラライザ装置が用いられる。
【0003】
希ガスポーラライザ装置では、高温のセル内において希ガス同位体を超偏極状態とし、その後、液体窒素の恒温槽において、希ガスの昇華現象を利用して、希ガス同位体のみの抽出が行われる。
【0004】
そこでは、高温のセルと、液体窒素の恒温槽とが、ガラスパイプを用いて接続され、希ガスを含む混合ガスが、セルから恒温槽へと輸送されている。また、高温のセルおよび混合ガスを入れる恒温槽の容器の内壁は、超偏極を維持するために、金属ではなくガラス材が用いられている。(例えば、特許文献1参照)
【0005】
【特許文献1】
特表2000−507688号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術によれば、希ガス同位体の超偏極度を向上することが難しかった。すなわち、希ガスがガラス内壁に衝突し、超偏極度が低下する現象が知られており、この現象の改善のために高圧下で希ガスを超偏極状態とすることが望まれる。しかし、高温のセル、混合ガスを入れる恒温槽の容器およびガラスパイプは、ガラス材を用いているので、強度的に弱く、混合ガスを高圧化することが難しかった。
【0007】
特に、セルは高温であり、またガラスパイプは、混合ガスを輸送する関係上、複数の屈曲部が存在し、局所的に高い圧力が偏在する可能性もあり、ガラス材にとって過酷な条件下にある。このため、混合ガスを高圧化することは、ガラス材の破損、爆発を生じさせ、ひいては安全性を低下させる要因となる。
【0008】
これらのことから、高圧下で希ガスを超偏極状態として抽出できる希ガスポーラライザ装置および磁気共鳴撮像装置をいかに実現するかが重要となる。
【0009】
この発明は、上述した従来技術による課題を解決するためになされたものであり、高圧下で希ガスを超偏極状態として抽出できる希ガスポーラライザ装置および磁気共鳴撮像装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、第1の観点の発明にかかる希ガスポーラライザ装置は、混合ガスに含まれる希ガスを超偏極状態にする偏極部と、前記混合ガスに含まれるアルカリ金属を除去するトラップ部と、前記混合ガスから前記希ガスを抽出する抽出部と、前記偏極部から前記抽出部に、前記トラップ部を介して前記混合ガスを輸送するパイプと、を備える希ガスポーラライザ装置であって、前記偏極部、前記トラップ部および前記抽出部の前記混合ガスを内蔵する容器、並びに、前記パイプは、前記混合ガスを封入するガラス材質の内壁および金属材質の外壁を有し、密封構造をなす前記内壁と前記外壁との間隙に、前記混合ガスの圧力と概ね等しい圧力の気体状物質を備えることを特徴とする。
【0011】
この第1の観点による発明によれば、偏極部、トラップ部および抽出部の混合ガスを内蔵する容器、並びに、パイプは、混合ガスを封入するガラス材質の内壁および金属材質の外壁を有し、密封構造をなす内壁と外壁との間隙に、気体状物質を備え、混合ガスの圧力と概ね等しい圧力にしているので、ガラス材質の内壁にかかる差圧を減らし、高圧下において混合ガスを超偏極状態とすることができ、希ガス同位体の超偏極度の向上とともに、内壁が破損することを防ぎ、また仮に破損した場合でも、金属材質の外壁により、内壁が飛び散ることを防ぎ、安全性を向上することができる。
【0012】
また、第2の観点の発明にかかる希ガスポーラライザ装置は、前記間隙が、前記抽出部と前記パイプとの境界に隔壁を有し、前記抽出部の間隙部分に、気体状物質を注入あるいは排出する注排出手段を備えることを特徴とする。
【0013】
この第2の観点の発明によれば、間隙が、抽出部とパイプとの境界に隔壁を有し、抽出部の間隙部分に、注排出手段により、気体状物質を注入あるいは排出することとしているので、抽出部に超偏極された希ガスを蓄積あるいは取り出す際に、抽出部の容器をジャッキ等で動かすこと無く、希ガスの蓄積および取り出しを行うことができ、しかも容器の温度変化を緩和することができるので、パイプ等のガラス材部分の、温度変化に対する負荷を軽減することができる。
【0014】
また、第3の観点の発明にかかる希ガスポーラライザ装置は、前記間隙部分に、前記気体状物質が、前記希ガスを抽出する際に注入され、抽出された前記希ガスを取り出す際に排出されることを特徴とする。
【0015】
この第3の観点の発明によれば、間隙部分に、気体状物質が、希ガスを抽出する際に注入され、抽出された希ガスを取り出す際に排出されることとしているので、希ガスの抽出および取り出しの際に、抽出部の容器に加えられる温度変化を、緩和することができ、ひいては、抽出部の容器あるいはパイプ等に加わる熱的ストレスを軽減することができる。
【0016】
また、第4の観点の発明にかかる希ガスポーラライザ装置は、前記偏極部の前記外壁に、耐熱ガラス窓を備えることを特徴とする。
【0017】
この第4の観点の発明によれば、偏極部の外壁に、耐熱ガラス窓を備えることとしているので、レーザー光を混合ガスに照射することができる。
【0018】
また、第5の観点の発明にかかる希ガスポーラライザ装置は、前記金属材質に、ステンレススチールを用いることを特徴とする。
【0019】
この第5の観点の発明によれば、金属材質に、ステンレススチールを用いることとしているので、強度的に強く、高圧下でも使用に耐える外壁とすることができる。
【0020】
また、第6の観点の発明にかかる希ガスポーラライザ装置は、前記気体状物質に、不活性ガスを用いることを特徴とする。
【0021】
この第6の観点の発明によれば、気体状物質に、不活性ガスを用いることとしているので、取り扱いが容易で、しかも容器を安全なものとすることができる。
【0022】
また、第7の観点の発明にかかる希ガスポーラライザ装置は、前記注排出手段に、真空ポンプを備えることを特徴とする。
【0023】
この第7の観点の発明によれば、注排出手段に、真空ポンプを備えることとしているので、効率的に気体状物質の排出を行うことができる。
【0024】
また、第8の観点の発明にかかる磁気共鳴撮像装置は、静磁場を形成する静磁場形成手段と、勾配磁場を形成する勾配磁場形成手段と、前記静磁場内の被検体に高周波磁場を送信する送信手段と、前記被検体からの磁気共鳴信号を受信あるいは送受信するRFコイルと、前記勾配磁場形成手段、前記送信手段および前記RFコイルを制御し、前記磁気共鳴信号から画像再構成により画像情報を生成する制御処理部と、前記被検体に超偏極状態の希ガスを供給する希ガスポーラライザ装置と、を備える磁気共鳴撮像装置であって、前記希ガスポーラライザ装置は、希ガスを超偏極状態にする偏極部、アルカリ金属を除去するトラップ部および前記希ガスを抽出する抽出部の容器、並びに、前記偏極部と前記抽出部とを前記トラップ部を介して接続するパイプに、ガラス材質の内壁および金属材質の外壁を有し、密封構造をなす前記内壁と前記外壁との間隙に、内壁圧力と概ね等しい圧力の気体状物質を備えることを特徴とする。
【0025】
この第8の観点の発明によれば、希ガスポーラライザ装置は、希ガスを超偏極状態にする偏極部、アルカリ金属を除去するトラップ部および希ガスを抽出する抽出部の容器、並びに、偏極部と抽出部とをトラップ部を介して接続するパイプに、ガラス材質の内壁および金属材質の外壁を有し、密封構造をなす内壁と外壁との間隙の気体状物質を、内壁圧力と概ね等しい圧力にすることとしているので、ガラス材質の内壁にかかる差圧を減らし、高圧下において混合ガスを超偏極状態とすることができ、希ガス同位体の超偏極度の向上とともに、内壁が破損することを防ぎ、また仮に破損した場合でも、金属材質の外壁により、内壁が飛び散ることを防ぎ、安全性を向上することができる。
【0026】
【0027】
【発明の属する技術分野】
この発明は、希ガスを超偏極状態とする希ガスポーラライザ装置および磁気共鳴撮像装置に関する。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる希ガスポーラライザ装置および磁気共鳴撮像装置の好適な実施の形態について説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1にかかる磁気共鳴撮像装置の全体構成について説明する。図1は、この発明の実施の形態1である磁気共鳴撮像装置の全体構成を示すブロック図である。図1において、この磁気共鳴撮像装置は、マグネットシステム(magnet system)700、データ(data)収集部750、送信駆動部740、勾配駆動部730、制御処理部800および希ガスポーラライザ(gas polarizer)装置3を有する。ここで、制御処理部800は、さらにスキャンコントローラ(scan controller)部760、データ管理部770、表示部780、操作部790を含む。
【0029】
マグネットシステム700は、主磁場コイル(coil)部702、勾配コイル部706、送信コイル部708およびRFコイル710を有する。これら各コイル部は概ね円筒状の形状を有し、互いに同軸的に配置されている。マグネットシステム700の概ね円柱状の内部空間(ボア:bore)に、撮像の被検体1が(cradle)720に搭載されて図示しない搬送手段により搬入および搬出される。
【0030】
ここで、制御情報の入力は、操作部790からデータ管理部770に対して行われ、この制御情報はスキャンコントローラ部760に転送された後に、スキャンコントローラ部760によりデータ収集部750、送信駆動部740、勾配駆動部730に出力される。
【0031】
主磁場コイル部702はマグネットシステム700の内部空間に静磁場を形成する。静磁場の方向は、概ね被検体1の体軸の方向に平行である。すなわち、いわゆる水平磁場を形成する。主磁場コイル部702は、例えば超伝導コイルを用いて構成される。なお、超伝導コイルに限らず常伝導コイル等を用いて構成してもよいのはもちろんである。
【0032】
勾配コイル部706は、互いに垂直な3軸すなわちスライス(slice)軸、位相軸および周波数軸の方向において、それぞれ静磁場強度に勾配を持たせるための3つの勾配磁場を発生させる。
【0033】
送信コイル部708は、静磁場空間にある被検体1の体内に磁気共鳴を励起するための高周波磁場を形成する。また、RFコイル710は、クレードル720上に置かれ、被検体1と共にマグネットシステム700の中心部に配置される。このRFコイル710は、送信コイル部708により被検体1の体内に励起された磁気共鳴信号を受信する。
【0034】
勾配コイル部706には勾配駆動部730が接続されている。勾配駆動部730は勾配コイル部706に駆動信号を与えて勾配磁場を発生させる。勾配駆動部730は、勾配コイル部706における3系統の勾配コイルに対応して、図示しない3系統の駆動回路を有する。
【0035】
送信コイル部708には送信駆動部740が接続されている。送信駆動部740は、送信コイル部708に駆動信号を与えてRFパルスを送信し、送信コイル部708は、送信されたRFパルスからRF磁場をマグネットシステム700の中心部に形成し、被検体1を磁気共鳴の励起状態にする。
【0036】
RFコイル710には、データ収集部750が接続されている。データ収集部750は、RFコイル710が受信した受信信号をサンプリング(sampling)によって取り込み、それをディジタルデータ(digital data)として収集する。
【0037】
勾配駆動部730、送信駆動部740およびデータ収集部750にはスキャンコントローラ部760が接続されている。受信制御部であるスキャンコントローラ部760は、勾配駆動部730ないしデータ収集部750をそれぞれ制御して撮影を遂行する。
【0038】
データ収集部750の出力側は、データ管理部770に接続されている。データ収集部750が収集したデータは、データ管理部770に入力される。データ管理部770は、例えば計算機等を用いて構成される。データ管理部770は、図示しないメモリ(memory)を有する。メモリはデータ管理部770用のプログラム(program)および各種のデータを記憶している。
【0039】
データ管理部770は、スキャンコントローラ部760に接続されている。データ管理部770は、スキャンコントローラ部760の上位にあってそれを統括する。本装置の機能は、データ管理部770がメモリに記憶されたプログラムを実行することによりを実現される。
【0040】
データ管理部770は、データ収集部750が収集したデータをメモリに記憶する。メモリ内にはデータ空間が形成される。このデータ空間は2次元フーリエ(Fourier)空間を構成する。データ管理部770は、この2次元フーリエ空間のデータを2次元逆フ−リエ変換することにより被検体1の画像を再構成する。
【0041】
データ管理部770には表示部780および操作部790が接続されている。表示部780は、グラフィックディスプレー(graphic display)等で構成される。操作部790はポインティングデバイス(pointingdevice)を備えたキーボード(keyboard)等で構成される。
【0042】
表示部780は、データ管理部770から出力される再構成画像および各種の情報を表示する。操作部790は、使用者によって操作され、各種の指令や情報等をデータ管理部770に入力する。使用者は表示部780および操作部790を通じてインタラクティブ(interactive)に本装置を操作する。
【0043】
RFコイル710は、被検体1に励起された磁気共鳴信号を受信するコイルで、例えばバードケイジ(birdcage)型等のコイルで構成される。
【0044】
希ガスポーラライザ装置3は、被検体1に超偏極された希ガス、例えば同位体キセノン(Xe)を供給する。以下に、超偏極状態について若干の説明を行う。希ガスである同位体ルビジウム(Rb)あるいはキセノンは、核磁気モーメント(moment)を有しており、静磁場が印加された状態において、エネルギー(energy)状態の異なる幾つかの状態に分布する。通常の温度平衡状態では、すべての状態にほぼ均等に同位体ルビジウムあるいはキセノンが分布する。これとは逆に、あるエネルギー状態に多くの同位体ルビジウムあるいはキセノンが偏在する状態を超偏極状態と称する。この超偏極状態では、より多くの同位体ルビジウムあるいはキセノンが磁気共鳴現象に関与することができ、信号感度を向上することができる。
【0045】
希ガスポーラライザ装置3は、被検体1に装着されたマスク(mask)を介して、気体状の超偏極状態にある同位体キセノンを被検体1に供給する。被検体1は、この同位体キセノンを吸引し、肺を通して血中に取り込む。その後、被検体1の磁気共鳴撮像を行うことにより、高い感度で同位体キセノンを画像化することができる。
【0046】
つぎに、希ガスポーラライザ装置3の構成について詳細に説明する。図2は、本実施の形態1にかかる希ガスポーラライザ装置3のブロック構成および各ブロック部の断面を示す図である。希ガスポーラライザ装置3は、大きくは、ガス供給部50、偏極部10、トラップ(trap)部20、抽出部30、希ガス収集部60、偏極部10とトラップ部20と抽出部30とを接続するパイプ(pipe)40、および抽出部30と希ガス収集部60とを接続するガラス管70からなる。ここで、偏極部10および抽出部30は、静磁場B1および静磁場B2が印加された状態にあり、これら静磁場は、図示しない永久磁石等により形成される。
【0047】
ガス供給部50は、外部からの同位体ルビジウムの供給を調節する開閉弁520、タンク(tank)510および偏極部10に混合ガスを供給する金属パイプからなる。タンク510には、キセノン同位体、窒素およびヘリウム(He)の混合ガスが、概ね1%、1%、98%の比率で、高圧下に圧縮、貯蔵されている。この混合ガスは、タンク510の出口で、同位体ルビジウムと概ね1MPa(メガパスカル)の圧力下で混合され、偏極部10に導入される。
【0048】
偏極部10は、セル(cell)110、オーブン(oven)100、弁120を含んでいる。オーブン100は、セル110を内包しており、セル110を概ね200℃の高温状態とする。また、偏極部10には、円偏向レーザー(razor)光が照射される。このレーザー光は、図示しないレーザーダイオードアレイ(razor diode array)等により生成され、混合ガスにふくまれるアルカリ(alkaline)金属により決まる波長を有する。例えば、ルビジウムの場合には、概ね795nm(ナノメートル)の波長となる。なお、オーブン100およびセル110は、レーザー光をセル110内部に導き入れるガラス窓を有している。
【0049】
弁120は、開閉式の弁であり、開くことによりガス供給部50で生成される混合ガスをセル110内部に導入する。セル110は、混合ガスを円偏向レーザーと相互作用させる内部空間と、この内部空間を囲む内壁および外壁からなる。ここで、内壁は、ガラスにより構成され、外壁は、ステンレススチールで構成される。そして、この内壁および外壁の中間に位置する間隙には、不活性ガス、例えば窒素が、概ね1MPaの圧力で充填されている。
【0050】
また、セル110の外壁の円偏向レーザーが入射する側面には、耐熱ガラスの窓130が設けられている。この窓130から、オーブン100の窓を通して進入した円偏向レーザー光がさらにセル110内部にも進入し、混合ガスと相互作用を行う。
【0051】
パイプ40は、セル110内部の混合ガスをトラップ部20を介して抽出部30へ輸送する。図3に、図2のパイプ40の垂直断面を示す。パイプ40は、同心円状に位置する内壁400、外壁410およびこれらの中間に間隙420を備えている。内壁400は、ガラスで構成されており、外壁410は、ステンレススチールで構成されている。間隙420には、希ガス、例えば窒素ガスが、概ね1MPaの圧力で封入されている。
【0052】
また、内壁400の内部には、混合ガスが流れている。ここで、混合ガスは、概ね1MPaの圧力を有しているので、内壁400に内側から及ぼす圧力Pinは、外側から及ぼす圧力Poutと概ね一致する。これにより、内壁400にかかる圧力は、概ね零となり、混合ガスが流れる際の圧力負荷は、ほぼ解消される。
【0053】
図2に戻り、トラップ部20は、パイプ40のガラス材質からなる内壁に低温槽21を有している。この低温槽21は、例えば水流を流す冷却管が、パイプ40の内壁に巻き付けられたものである。これにより、内壁内部の混合ガスを冷却し、混合ガスに含まれる気体状のルビジウムを液化あるいは固化し除去する。
【0054】
抽出部30は、アキュムレータ(accumulator)300、恒温槽310、液体窒素330、昇降台320、ニードル(needle)弁190および弁140〜160を含んでいる。ここで、アキュムレータ300は図示しない保持具により保持され、恒温槽310との相対位置はオペレータが自由に設定できるものとする。
【0055】
アキュムレータ300は、トラップ部20の混合ガスをパイプ40を介して入力する。アキュムレータ300の容器は、セル110およびパイプ40と同様のガラス材質の内壁および金属材質の外壁を有し、これら内壁および外壁の間隙には、概ね1MPaの希ガスが充填されている。
【0056】
また、アキュムレータ300とパイプ40とは脱着可能となっており、パイプ40のアキュムレータ300入力部は、内壁のガラス管部分のみが伸張している。このガラス管部分は、アキュムレータ300がパイプ40に装着された際に、アキュムレータ300の底部に達する長さを有し、パイプ40内部の混合ガスをアキュムレータ300底部に直接吹き付ける。
【0057】
また、アキュムレータ300の上部には、残留ガスを廃棄する排出口および希ガス収集部60への接続口がある。この排出口には、開閉弁160およびニードル弁190が、金属管等を介して装着されている。ニードル弁190は、針穴を有する隔壁により、入力部と出力部が仕切られている。これにより、弁160を開放後にニードル弁190の入力側のアキュムレータ300を高圧力に保ち、出力側を大気圧とすることができる。
【0058】
恒温槽310は、例えばデュワー瓶で構成され、内部には、アキュムレータ300を冷却する液体窒素330が貯蔵される。また、恒温槽310は、昇降台320上に載置され、昇降台320を上昇させた状態で、液体窒素330にアキュムレータ300が浸された状態となり、昇降台320を下降させた状態で、液体窒素330とアキュムレータ300とが接しない状態となる。
【0059】
希ガス収集部60は、アキュムレータ300と弁150およびガラス管70を介して接続され、エアーバッグ600、弁170および180を含む。エアーバッグ600は、弁170に脱着され、抽出される超偏極状態にある気体状の同位体キセノンが、被検体に吸引される際に使用される。
【0060】
つづいて、本実施の形態1にかかる希ガスポーラライザ装置3の動作について説明する。まず、超偏極状態の同位体キセノンをアキュムレータ300で抽出する動作について説明する。この抽出動作を行うにあたっては、昇降台320を上昇させアキュムレータ300を液体窒素330に浸した状態とし、トラップ部20の低温槽21に水流を流し動作状態とし、セル110に円偏向レーザーが入射状態とし、セル110を含むオーブン100内部は概ね200℃とし、偏極部10に概ね10mT(テスラ)の静磁場B1が印加状態とし、抽出部30に、概ね0.2Tの静磁場B2が印加状態とする。
【0061】
ここで、弁520、120、140、160を開放状態とし、弁150を閉じた状態とする。これにより、ガス供給部50で生成される、同位体ルビジウムを含む混合ガスを、セル110内部に導入する。この際、混合ガスの圧力は、概ね1MPaに調整される。
【0062】
セル110内部において、混合ガス内の同位体ルビジウムは、照射される円偏向レーザーを吸収し、高いエネルギー状態に多くのルビジウム同位体が存在する超偏極状態となる。その後、超偏極状態となったルビジウム同位体は、スピン交換移動として知られる現象により、混合ガス中の同位体キセノンに、この超偏極状態を移転する。これにより、同位体キセノンは、高いエネルギー状態に多くの同位体キセノンが存在する超偏極状態となる。
【0063】
なお、混合ガス中のヘリウムは、緩衝ガスとしての役割を有し、主としてルビジウム同位体が円偏向レーザー光を吸収する帯域を広げ、吸収効率を高めるものである。また、混合ガス中の窒素ガスは、円偏向レーザーの吸収効率を高める効果もあるが、主として、同位体ルビジウム発する蛍光を消光する機能を有する。
【0064】
なお、超偏極された同位体キセノンは、セル110の内壁に衝突する際にエネルギー状態の遷移を起こし、減偏極が生じる。この減偏極は、同位体キセノンを概ね1MPaの高圧下において超偏極状態とすることにより減少させることができ、ひいては、超偏極率を向上することができる。また、以下に記述するパイプ40、トラップ部20、アキュムレータ300の内壁でも同様の現象が生じ、これらに含まれる混合ガスは、概ね1MPaの高圧下におかれるので、同位体キセノンが内壁と衝突する際の減偏極を減少させることができる。
【0065】
その後、セル110内の混合ガスは、トラップ部20の導入され、低温槽21により混合ガスの低温化がはかられ、ルビジウム同位体の液化あるいは固化による除去がおこなわれる。
【0066】
その後、トラップ部20の混合ガスは、パイプ40を介してアキュムレータ300に導入される。この混合ガスは、パイプ40の伸張管によりアキュムレータ300の底部に直接吹き付けられる。ここで、アキュムレータ300の底部は、恒温槽310の液体窒素330に浸されているので、概ね液体窒素温度にあり、吹きつけられた混合ガスの同位体キセノンは、昇華現象により、固化し、キセノン氷となる。
【0067】
また、混合ガスのその他の成分、ヘリウム、窒素ガスは、固化することなくアキュムレータ300からニードル弁190を介して排出される。このプロセスを、タンク510から混合ガスを導入しつつ連続的に行う。しかも、ニードル弁190により排気口に差圧を生じさせているので、高圧下で行うことができる。
【0068】
つづいて、アキュムレータ300に蓄積された超偏極状態の同位体キセノンを取り出す動作について説明する。この取り出し動作を行うにあたって、弁520,120、140、160、180は閉じた状態にあり、弁150、170は開いた状態にあり、昇降台320は下降された状態にあり、恒温槽310の液体窒素330はアキュムレータ300と接しない状態にある。
【0069】
アキュムレータ300は、液体窒素330と接しない状態にあるので、高温状態となる。ここで、アキュムレータ300の底部に存在する超偏極状態のキセノン氷は、昇華現象により気化し、この気化した同位体キセノンは、弁150からガラス管を介してエアーバッグ600に導入され、蓄積される。この状態を、アキュムレータ300の底部に存在するキセノン氷が無くなる迄維持する。
【0070】
その後、エアーバッグ600に蓄積された超偏極状態の同位体キセノンは、被検体に吸引され、磁気共鳴撮像装置による撮像が行われる。なお、本実施の形態1では、同位体キセノンがエアーバッグ600に一時的に蓄積されることとしたが、直接被検体に吸引させることもできる。また、アキュムレータ300は、パイプ40に着脱可能としているので、パイプ40から取り外した後に、キセノン氷を取り出すことも出来る。そして、この同位体キセノンを溶媒に溶かし、注射器により被検体の血中に注入することもできる。
【0071】
上述してきたように、本実施の形態1では、セル110、トラップ部20、アキュムレータ300の容器、並びに、パイプ40を、ガラス材質の内壁とステンレススチールの外壁とを有する2重構造とし、内壁および外壁の間隙に、超偏極を行う際の混合ガスと同程度の圧力の窒素ガスを封入することとしているので、高圧下において、同位体キセノンの超偏極および抽出を行うことができ、ひいては同位体キセノンの超偏極度を向上することができる。
【0072】
また、本実施の形態1では、アキュムレータ300に、排気口につながるニードル弁190と、希ガス収集部60に接続される弁150とを別個に設けたが、共通の取り出し口により取り出し、その後、開閉弁を用いて切り替えることもできる。
【0073】
また、本実施の形態1では、図2に示したように、セル110、トラップ部20、アキュムレータ300の内壁および外壁は、一体構造を持つものとしたが、各部ごとに分離、独立した構造とし、組み立て製造を容易なものとすることもできる。
(実施の形態2)
ところで、上記実施の形態1では、恒温槽310を昇降台320を用いて上下させ、アキュムレータ300を液体窒素330に浸したり、あるいは液体窒素330から引き離したりしたが、アキュムレータ300の容器の内壁と外壁の間隙部分に注入されている希ガスを注入排出することで、アキュムレータ300と液体窒素330とを熱的に接触させたり、あるいは熱的に非接触とすることができる。そこで本実施の形態では、アキュムレータ300の容器の内壁と外壁の間隙部分に希ガスを注入排出する場合を示すことにする。
【0074】
図4は、この実施の形態2にかかる抽出部400および注排出部500の具体的な構成を示す断面図である。なお、この抽出部400は、図2に示した抽出部30に対応するものであり、その他の構成については、図2に示したものと同様のものとなるので、ここではその詳細な説明を省略する。
【0075】
抽出部400は、アキュムレータ450、恒温槽310、液体窒素330、ニードル弁190、弁140〜160を含んでおり、注排出部500は、タンク480、ポンプ430、弁460、470を含んでいる。また、抽出部400のアキュムレータ450は、注排出部500と金属パイプ440により接続されている。
【0076】
アキュムレータ450は、トラップ部20の混合ガスをパイプ40を介して入力する。アキュムレータ450の容器は、セル110およびパイプ40と同様のガラス材質の内壁およびステンレススチールの外壁を有している。この内壁と外壁に挟まれた間隙部分411は、注排出部500のタンク480およびポンプ430と、金属パイプ440および開閉弁460、470を介して接続されている。
【0077】
なお、アキュムレータ450の内壁および外壁は、パイプ40の内壁および外壁と同様の材質、構造を有しているが、アキュムレータ450の間隙部分411は、パイプ40の間隙とは、隔壁により隔絶しており、分離独立した構造を有している。
【0078】
注排出部500では、金属パイプ440が2つに分岐され、一方は、タンク480に接続され弁460により開閉され、他方は、ポンプ430に接続され弁470により開閉される。タンク480には、希ガス、例えば窒素ガスが高圧で封入されている。
【0079】
つぎに、抽出部400および注排出部500の動作について説明する。まず、超偏極状態の同位体キセノンをアキュムレータ450で抽出する動作について説明する。この抽出動作を行うにあたっては、弁460を開放し、弁470および150を閉じる。なお、弁140、160は開いた状態にされる。そして、タンク480内部の高圧の窒素ガスは、アキュムレータ450の間隙部分411に充填される。この際、トラップ部20から注入される混合ガスと同程度の高圧力、例えば1MPa程度の圧力で充填されることが好ましい。
【0080】
この結果、アキュムレータ450の内壁底部と、液体窒素330とは、間隙部分411の高圧の窒素ガスを介して熱的に接続状態となり、アキュムレータ450の内壁底部が低温に冷やされる。
【0081】
その後、パイプ40から注入される混合ガスは、パイプ40の伸張したガラス管により、アキュムレータ450の内壁底部に吹き付けられ、昇華現象により、超偏極状態の同位体キセノンが固化し、キセノン氷として抽出される。
【0082】
つづいて、アキュムレータ300に蓄積された超偏極状態の同位体キセノンを取り出す動作について説明する。この取り出し動作を行うにあたって、注排出部500の弁460を閉じ、弁470は開放される。また、弁140、160は閉じた状態にされ、弁470、150は開いた状態にされる。これにより、ポンプ430により、アキュムレータ450の間隙部分411は、高圧窒素ガスが排出され、さらに概ね真空状態となる。
【0083】
この結果、アキュムレータ450の内壁底部と、液体窒素330とは、間隙部分411が概ね真空状態となるため熱的に絶縁状態となり、アキュムレータ450の内壁底部は、液体窒素温度から、徐々に常温に変化していく。
【0084】
そして、アキュムレータ450の内壁底部に存在するキセノン氷は、昇華現象により、気化し、希ガス収集部60へ送られエアーバッグ600等に収集され、利用に供される。
【0085】
上述してきたように、本実施の形態2では、アキュムレータ450は、容器の内壁と外壁の間隙部分411に、窒素ガスを注入あるいは排出することとしているので、アキュムレータ450の内壁と恒温槽310内の液体窒素330とを、熱的に導通状態あるいは絶縁状態とすることができ、しかも窒素ガスを介する導通あるいは真空状態を介する絶縁であるため、急激な温度変化をアキュムレータ450が被ること無く安全に、トラップ部20から注入される混合ガスから超偏極状態の同位体キセノンをキセノン氷として抽出し、さらにキセノン氷を昇華現象により気化し被検体に吸引させることができる。
【0086】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、偏極部、トラップ部および抽出部の混合ガスを内蔵する容器、並びに、パイプは、混合ガスを封入するガラス材質の内壁および金属材質の外壁を有し、密封構造をなす内壁と外壁との間隙に、気体状物質を備え、混合ガスの圧力と概ね等しい圧力とされるので、ガラス材質の内壁にかかる差圧を減らし、高圧下において混合ガスを超偏極状態とすることができ、希ガス同位体の超偏極度の向上とともに、内壁が破損することを防ぎ、また仮に破損した場合でも、金属材質の外壁により、内壁が飛び散ることを防ぎ、安全性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】磁気共鳴撮像装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1にかかる希ガスポーラライザ装置のブロック図である。
【図3】実施の形態1のパイプの断面を示す図である。
【図4】実施の形態2にかかる希ガスポーラライザ装置の抽出部および注排出部を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 被検体
3 希ガスポーラライザ装置
10 偏極部
20 トラップ部
21 低温槽
30 抽出部
40 パイプ
50 ガス供給部
60 希ガス収集部
70 ガラス管
100 オーブン
110 セル
120、140、150、170、460、470、520 弁
130 窓
190 ニードル弁
300、450 アキュムレータ
310 恒温槽
320 昇降台
330 液体窒素
400 内壁
400 抽出部
410 外壁
411 間隙部分
420 間隙
430 ポンプ
440 金属パイプ
500 注排出部
480、510 タンク
600 エアーバッグ
700 マグネットシステム
702 主磁場コイル部
706 勾配コイル部
708 送信コイル部
710 RFコイル部
720 クレードル
730 勾配駆動部
740 送信駆動部
750 データ収集部
760 スキャンコントローラ部
770 データ管理部
780 表示部
790 操作部
800 制御処理部
Claims (8)
- 混合ガスに含まれる希ガスを超偏極状態にする偏極部と、
前記混合ガスに含まれるアルカリ金属を除去するトラップ部と、
前記混合ガスから前記希ガスを抽出する抽出部と、
前記偏極部から前記抽出部に、前記トラップ部を介して前記混合ガスを輸送するパイプと、
を備える希ガスポーラライザ装置であって、
前記偏極部、前記トラップ部および前記抽出部の前記混合ガスを内蔵する容器、並びに、前記パイプは、前記混合ガスを封入するガラス材質の内壁および金属材質の外壁を有し、密封構造をなす前記内壁と前記外壁との間隙に、前記混合ガスの圧力と概ね等しい圧力の気体状物質を備えることを特徴とする希ガスポーラライザ装置。 - 前記間隙は、前記抽出部と前記パイプとの境界に隔壁を有し、前記抽出部の間隙部分に、気体状物質を注入あるいは排出する注排出手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の希ガスポーラライザ装置。
- 前記間隙部分は、前記気体状物質が、前記希ガスを抽出する際に注入され、抽出された前記希ガスを取り出す際に排出されることを特徴とする請求項1あるいは2のいずれか1つに記載の希ガスポーラライザ装置。
- 前記偏極部は、前記外壁に耐熱ガラス窓を備えることを特徴とする請求項1ないし3のいづれか1つに記載に希ガスポーラライザ装置。
- 前記金属材質は、ステンレススチールであることを特徴とする請求項1ないし4にいずれか1つに記載の希ガスポーラライザ装置。
- 前記気体状物質は、不活性ガスであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の希ガスポーラライザ装置。
- 前記注排出手段は、真空ポンプを備えることを特徴とする請求項2ないし6のいづれか1つに記載の希ガスポーラライザ装置。
- 静磁場を形成する静磁場形成手段と、
勾配磁場を形成する勾配磁場形成手段と、
前記静磁場内の被検体に高周波磁場を送信する送信手段と、
前記被検体からの磁気共鳴信号を受信あるいは送受信するRFコイルと、
前記勾配磁場形成手段、前記送信手段および前記RFコイルを制御し、
前記磁気共鳴信号から画像再構成により画像情報を生成する制御処理部と、
前記被検体に超偏極状態の希ガスを供給する希ガスポーラライザ装置と、
を備える磁気共鳴撮像装置であって、
前記希ガスポーラライザ装置は、前記希ガスを超偏極状態にする偏極部、アルカリ金属を除去するトラップ部および前記希ガスを抽出する抽出部の各容器、並びに、前記偏極部と前記抽出部とを前記トラップ部を介して接続するパイプに、ガラス材質の内壁および金属材質の外壁を有し、密封構造をなす前記内壁と前記外壁との間隙に、内壁圧力と概ね等しい圧力の気体状物質を備えることを特徴とする磁気共鳴撮像装置。
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP2295998A1 (en) * | 2009-09-10 | 2011-03-16 | Koninklijke Philips Electronics N.V. | Magnetic resonance imaging system and magnet comprising a polarizer |
CN113867427A (zh) * | 2021-09-28 | 2021-12-31 | 中国科学院精密测量科学与技术创新研究院 | 一种用于超极化气体收集的液面自动控制装置和方法 |
CN114560624A (zh) * | 2022-03-31 | 2022-05-31 | 散裂中子源科学中心 | 用于制备极化氦三玻璃气室的玻璃管路装置及玻璃气室的制备方法 |
-
2002
- 2002-09-25 JP JP2002278348A patent/JP2004113317A/ja not_active Withdrawn
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CN113867427B (zh) * | 2021-09-28 | 2023-12-12 | 中国科学院精密测量科学与技术创新研究院 | 一种用于超极化气体收集的液面自动控制装置和方法 |
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