JP2004113151A - 癌遺伝子及びその用途 - Google Patents

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Toshinori Azuma
我妻 利紀
Keisuke Fukuchi
福地 圭介
Satoko Nishimura
西村 聡子
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Abstract

【課題】癌遺伝子を用いた癌細胞の製造方法、該癌遺伝子を用いた癌治療及び/または予防効果を有する化合物のスクリーニング方法、及び癌治療及び/または予防用医薬医薬組成物を提供すること。
【解決手段】TMEFF2遺伝子を細胞で過剰発現させ、細胞の増殖能に変化が生じた細胞株を選択すること、TMEFF2を用いた新規癌治療及び/または癌予防効果を有する化合物のスクリーニング方法、及び、TMEFF2を特異的に認識する抗体を含む医薬組成物の提供等。
【選択図】なし

Description

【0001】
【従来の技術】癌は、欧米や日本などの先進諸国において、依然として主たる死亡原因の一つである。臨床的には、外科的癌組織の切除、放射線治療及び化学療法を含む種々の医学的方法がとられてきているが、悪性形質転換及び癌細胞の増殖に関する十分正確な理解に基づくものとは言えず、多くの場合、その効果は部分的で多くの患者を満足させるものではない。そのような悪性形質転換及び癌細胞の増殖機構に関し、過去10数年に渡り多くの研究施設において精力的な研究が進められてきた。現在では、正常細胞の増殖は、癌遺伝子(Oncogene)(増殖促進遺伝子)と癌抑制遺伝子(Tumor suppressor gene)(増殖阻害遺伝子)のバランスによって制御されていると考えられている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0002】
細胞内在性の癌遺伝子は、一般的にそれ自体は正常細胞を癌化させる効果は必ずしも強いものではないが、構造変異によりその調節機能が失われると、癌遺伝子となり異常増殖、癌化の直接的な原因となる。例えば、点突然変異で癌を引き起こすRasや、染色体転座により酵素活性の異常亢進を引き起こすAbl遺伝子などがその一例である。また、変異を生じなくとも、癌遺伝子の発現亢進が、癌化の引き金となる場合も多い。増殖因子受容体HER2/neuの遺伝子増幅などによる発現亢進が転移性乳癌で惹起され、その阻害剤が転移性乳癌の治療に用いられているのはその一例である。以上のような事実は、これら癌遺伝子が、癌治療の標的として、極めて妥当な標的分子を提供するという作業仮説を強く示唆している。
【0003】
癌疾患の中でも前立腺癌は、特に米国で最も頻繁に診断される癌であり、かつ男性の癌死原因の第二番目である。年間およそ300,000人の男性が新規に前立腺癌と診断され、また40,000人以上の男性が本疾患で死亡している。前立腺癌による死亡は主に転移した疾患に起因しているにも関わらず、新しく診断された患者の60%近くは前立腺に限局した一次腫瘍を有している。こうした限局癌の患者に対しては外科手術及び放射線治療がしばしば有効であるが、転移伝播した癌患者の場合は、ほとんどの場合治療不能である。現在まで精力的な研究が進められてきているものの、前立腺癌の発生及び進行を引き起こす生物学的な機構に関してはごく僅かしか知られていない。
【0004】
以上のように、これら(前立腺癌をはじめとする)癌の発生、進行に関わる前癌遺伝子、癌遺伝子の発見は、その機構の解明及び治療薬開発の上で極めて有用である。
【0005】
上皮細胞増殖因子Epidermal growth factor(以下、「EGF」という。)は、1962年にCohenらによってその存在が指摘され(例えば、非特許文献2参照。)、1983年にGrayらとUrdeaらによりマウス及びヒトのcDNAが取得されている(例えば、非特許文献3及び4参照。)。EGFは、EGF受容体を発現する細胞に作用してその増殖を促進する。EGF受容体からの増殖シグナルは、ある種の癌細胞では必須であることが知られており、その阻害剤は抗癌剤として臨床試験が進められている(例えば、非特許文献5参照。)。また、EGFに特徴的なドメイン構造と類似性の高いEGF様ドメインを持つ分子が多数同定されている。
【0006】
トランスメンブレン・プロテイン・ウィズ・EGF−ライク・アンド 2・フォリスタチン−ライク・ドメイン 2(Transmembrane protein with EGF−like and 2 follistatin−like domain 2:以下、「TMEFF2」という)は、ヒト脳のcDNAライブラリーからEGF様ドメインを有する新規蛋白質としてUchidaらにより発見された(例えば、非特許文献6参照。)。TMEFF2は、シグナルペプチドと膜貫通領域という典型的な膜蛋白としての構造を持ち、細胞外領域には、2つのFollistatin様ドメインと1つのEGF様ドメインを、細胞質内領域にはG蛋白活性化モチーフを有する。TMEFF2の正常組織での発現については、マウスでは、脳、特に、嗅球、海馬、黒質で(例えば、非特許文献7参照。)、また、ラットでは、腸粘膜固有層に存在する間葉系細胞や繊維芽細胞で発現が認められている(例えば、非特許文献6参照。)。
【0007】
TMEFF2については少なくともスプライシングの違いによるものと思われる細胞質内領域の異なる3種の変異体が存在し、一部は分泌蛋白質として存在する。この分泌蛋白質を、ヒト胃癌細胞株に作用させると、EGF受容体ファミリーの一つERBB4のリン酸化を誘導することが報告されている(例えば、非特許文献6参照。)。また、海馬、中脳の初代培養細胞においてはその生存を促進することが報告されている(例えば、非特許文献7参照。)。
【0008】
大腸癌でTMEFF2の発現低下が見られ、その発現制御はTMEFF2遺伝子5’上流領域に存在するCpG部位のメチル化によるものであることが、Youngらにより報告されているが(例えば、非特許文献8参照)、TMEFF2の活性化あるいは発現上昇と、癌化あるいは形質転換との関係は明らかになっていない。
【0009】
TMEFF2は、前立腺および脳で高発現すること、そして前立腺癌株の増殖を阻害することが報告されているが(例えば、非特許文献9参照。)、TMEFF2が、細胞の癌化を促進する癌遺伝子である可能性(癌標的分子である可能性)については明らかにはなっていない。
【0010】
【非特許文献1】
新津洋司郎、横田淳編、「臨床家のための癌遺伝子/癌抑制遺伝子」、南江堂、1999年10月15日、p.1−46
【非特許文献2】
ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(Journal of Biological Chemistry)、1962年5月、第237巻、p.1555−1562
【非特許文献3】
ネイチャー(Nature)、1983年6月23日、第303巻、p.722−725
【非特許文献4】
プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシィーズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)、1983年12月、第80巻、p.7461−7465
【非特許文献5】
ジャーナル・オブ・クリニカル・オンコロジー(Journal of Clinical Oncology)、2002年5月1日)、第20巻、p.2240−2250
【非特許文献6】
バイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーションズ(Biochemical and Biophysical Research Communications)、1999年12月20日、第266巻、p.593−602
【非特許文献7】
ジェノミックス(Genomics)、2000年7月15日、第67巻、p.146−152
【非特許文献8】
プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシィーズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)、2001年1月2日、第98巻、p.265−270
【非特許文献9】
オンコジーン(Oncogene)2002年7月18日、第21巻、p.4739−4746
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は癌遺伝子を用いた癌細胞の製造方法、該癌遺伝子を用いた癌治療及び/または予防効果を有する化合物のスクリーニング方法、及び、癌治療及び/または予防効果を有する医薬組成物を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、TMEFF2遺伝子を過剰発現させることで癌細胞を製造することができることを見出し、また、TMEFF2を用いた新規癌治療及び/または癌予防効果を有する化合物のスクリーニング方法を開発し、更に、TMEFF2の発現を抑制させる物質を提供し本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、
(1) 下記の工程1)乃至2)を含むことからなる癌細胞の製造方法:
1)下記の▲1▼乃至▲5▼のいずれか一つに記載のポリヌクレオチドを用いて細胞を形質転換する工程;
▲1▼配列表の配列番号1のヌクレオチド番号395乃至1519からなるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、
▲2▼配列表の配列番号3のヌクレオチド番号395乃至1519からなるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、
▲3▼配列表の配列番号5のヌクレオチド番号393乃至1433からなるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、
▲4▼配列表の配列番号7のヌクレオチド番号351乃至1475からなるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、
▲5▼上記▲1▼乃至▲4▼のいずれか一つに記載のポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、TMEFF2と同一の生物活性を有する蛋白質をコードするヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、
2)1)に記載の細胞より増殖能に変化が生じた細胞株を選択する工程、
(2) 細胞が、動物細胞であることを特徴とする、(1)に記載の癌細胞の製造方法、
(3) 動物細胞が、哺乳類由来であることを特徴とする、(2)に記載の癌細胞の製造方法、
(4) 哺乳類がヒト、サル、マウス、ラットであることを特徴とする(3)に記載の癌細胞の製造方法、
(5) 哺乳類がヒトであることを特徴とする(3)に記載の癌細胞の製造方法、
(6) 動物細胞がマウス繊維芽細胞株NIH3T3細胞であることを特徴とする(1)に記載の癌細胞の製造方法、
(7)組換えベクターで細胞を形質転換することを特徴とする(1)乃至(7)のいずれか一つに記載の癌細胞の製造方法、
(8) (1)乃至(7)のいずれか一つに記載の癌細胞の製造方法によって得られた癌細胞、
(9) (8)に記載の癌化された癌細胞を有する非ヒト哺乳動物、
(10) 被験者または被験動物より採取した検体における下記の1)乃至10)のいずれか一つに記載のポリヌクレオチドまたは蛋白質の発現量を解析する工程を含む、癌の検出方法:
1)配列表の配列番号1のヌクレオチド番号395乃至1519からなるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド;
2)配列表の配列番号3のヌクレオチド番号395乃至1519からなるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド;
3)配列表の配列番号5のヌクレオチド番号393乃至1433からなるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド;
4)配列表の配列番号7のヌクレオチド番号351乃至1475からなるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド;
5)上記1)乃至4)のいずれか一つに記載のポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、TMEFF2と同一の生物活性を有する蛋白質をコードするヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド;
6)配列表の配列番号2のアミノ酸番号1乃至374のアミノ酸配列からなる蛋白質;
7)配列表の配列番号4のアミノ酸番号1乃至374のアミノ酸配列からなる蛋白質;
8)配列表の配列番号6のアミノ酸番号1乃至346のアミノ酸配列からなる蛋白質;
9)配列表の配列番号8のアミノ酸番号1乃至374のアミノ酸配列からなる蛋白質;
10)上記6)乃至9)のいずれか一つに記載の蛋白質のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、TMEFF2と同一の生物活性を有する蛋白質、
(11)下記の工程1)乃至4)を含む、癌の検出方法:
1)被験者または被験動物より採取した検体より、全RNA画分を抽出する工程;
2)正常人または正常動物より採取した検体より、全RNA画分を抽出する工程;
3)上記1)に記載の検体由来の全RNA画分と上記2)に記載の検体由来の全RNA画分の間における、下記の▲1▼乃至▲5▼のいずれか一つに記載のポリヌクレオチドの発現量の差を検出する工程;
▲1▼配列表の配列番号1のヌクレオチド番号395乃至1519からなるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、
▲2▼配列表の配列番号3のヌクレオチド番号395乃至1519からなるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、
▲3▼配列表の配列番号5のヌクレオチド番号393乃至1433からなるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、
▲4▼配列表の配列番号7のヌクレオチド番号351乃至1475からなるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、
▲5▼上記▲1▼乃至▲4▼に記載のポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、TMEFF2と同一の生物活性を有する蛋白質をコードするヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド;
4)上記2)に記載のポリヌクレオチドの発現量の差を解析し、上記1)に記載の被験者または被験動物の癌を検出する工程、
(12) 下記の工程1)乃至3)を含む、癌の検出方法:
1)被験者または被験動物から採取した検体における、下記の▲1▼乃至▲5▼のいずれか一つに記載の蛋白質の発現量を該蛋白質に特異的に結合する抗体またはリガンドを用いて検出する工程;
▲1▼配列表の配列番号2のアミノ酸番号1乃至374のアミノ酸配列からなる蛋白質、
▲2▼配列表の配列番号4のアミノ酸番号1乃至374のアミノ酸配列からなる蛋白質、
▲3▼配列表の配列番号6のアミノ酸番号1乃至346のアミノ酸配列からなる蛋白質、
▲4▼配列表の配列番号8のアミノ酸番号1乃至374のアミノ酸配列からなる蛋白質、
▲5▼上記▲1▼乃至▲4▼のいずれか一つに記載の蛋白質のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、TMEFF2と同一の生物活性を有する蛋白質、
2)正常人または正常動物から採取した検体における、上記1)の▲1▼乃至▲5▼のいずれか一つに記載の蛋白質の発現量を該蛋白質に特異的に結合する抗体またはリガンドを用いて検出する工程;
3)上記1)で検出された蛋白質の発現量と上記2)で検出された該蛋白質の発現量の差を解析し、被験者または被験動物の癌を検出する工程。
(13) 下記の工程1)乃至3)を含むことからなる、癌に対する治療効果及び/または予防効果を有する物質のスクリーニング方法:
1)被験物質を添加した培地で培養した哺乳動物由来培養細胞より、全RNA画分を抽出する工程;
2)上記1)由来の全RNA画分と被験物質を添加しないで培養した哺乳動物培養細胞由来全RNA画分の間における、下記の▲1▼乃至▲5▼のいずれか一つに記載のポリヌクレオチドの発現量の差を検出する工程;
▲1▼配列表の配列番号1のヌクレオチド番号395乃至1519からなるポリヌクレオチド、
▲2▼配列表の配列番号3のヌクレオチド番号395乃至1519からなるポリヌクレオチド、
▲3▼配列表の配列番号5のヌクレオチド番号393乃至1433からなるポリヌクレオチド、
▲4▼配列表の配列番号7のヌクレオチド番号351乃至1475からポリヌクレオチド、
▲5▼上記▲1▼乃至▲4▼に記載のポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、TMEFF2と同一の生物活性を有する蛋白質をコードするヌクレオチド配列からなるDNA;
3)TMEFF2遺伝子の発現量の差を解析し、被験物質の、癌に対する治療効果及び/または予防効果を判定する工程。
(14) 下記の工程1)乃至4)を含むことからなる、癌の治療効果及び/または予防効果を有する物質のスクリーニング方法:
1)被験物質を投与した哺乳動物個体より採取した検体より、全RNA画分を抽出する工程;
2)被験物質を投与しなかった動物より採取した検体より、全RNA画分を抽出する工程;
3)上記1)由来の全RNA画分と上記2)由来の全RNA画分の間における、下記の▲1▼乃至▲5▼のいずれか一つに記載のポリヌクレオチドの発現量の差を検出する工程;
▲1▼配列表の配列番号1のヌクレオチド番号395乃至1519からなるポリヌクレオチド、
▲2▼配列表の配列番号3のヌクレオチド番号395乃至1519からなるポリヌクレオチド、
▲3▼配列表の配列番号5のヌクレオチド番号393乃至1433からなるポリヌクレオチド、
▲4▼配列表の配列番号7のヌクレオチド番号351乃至1475からポリヌクレオチド、
▲5▼上記▲1▼乃至▲4▼に記載のポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、TMEFF2と同一生物活性を有する蛋白質をコードするヌクレオチド配列からなるDNA;
4)上記3)に記載のポリヌクレオチドの発現量の差を解析し、被験物質の癌に対する治療効果及び/または予防効果を判定する工程、
(15) 下記の工程1)乃至3)を含むことからなる、癌の治療効果及び/または予防効果を有する物質のスクリーニング方法:
1)被験物質を添加した培地で培養した哺乳動物由来培養細胞における、下記の▲1▼乃至▲5▼のいずれか一つに記載の蛋白質の発現量を該蛋白質に特異的に結合する抗体またはリガンドを用いて検出する工程;
▲1▼配列表の配列番号2のアミノ酸番号1乃至374のアミノ酸配列からなる蛋白質、
▲2▼配列表の配列番号4のアミノ酸番号1乃至374のアミノ酸配列からなる蛋白質、
▲3▼配列表の配列番号6のアミノ酸番号1乃至346のアミノ酸配列からなる蛋白質、
▲4▼配列表の配列番号8のアミノ酸番号1乃至374のアミノ酸配列からなる蛋白質、
▲5▼上記▲1▼乃至▲4▼のいずれか一つに記載の蛋白質のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、TMEFF2と同一の生物活性を有する蛋白質;
2)被験物質を添加しない培地で培養した哺乳動物由来培養細胞における、上記1)の▲1▼乃至▲5▼のいずれか一つに記載の蛋白質の発現量を該蛋白質に特異的に結合する抗体またはリガンドを用いて検出する工程;
3)上記1)で検出された蛋白質の発現量と、上記2)で検出された該蛋白質の発現量の差を解析し、被験物質の癌に対する治療効果及び/または予防効果を判定する工程、
(16) 下記の工程1)乃至3)を含むことからなる、癌の治療効果及び/または予防効果を有する物質のスクリーニング方法:
1)被験物質を投与された哺乳動物個体より採取した検体における、下記の▲1▼乃至▲5▼のいずれか一つに記載の蛋白質の発現量を該蛋白質に特異的に結合する抗体またはリガンドを用いて検出する工程;
▲1▼配列表の配列番号2のアミノ酸番号1乃至374のアミノ酸配列からなる蛋白質、
▲2▼配列表の配列番号4のアミノ酸番号1乃至374のアミノ酸配列からなる蛋白質、
▲3▼配列表の配列番号6のアミノ酸番号1乃至346のアミノ酸配列からなる蛋白質、
▲4▼配列表の配列番号8のアミノ酸番号1乃至374のアミノ酸配列からなる蛋白質、
▲5▼上記▲1▼乃至▲4▼のいずれか一つに記載の蛋白質のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、TMEFF2と同一の生物活性を有する蛋白質;
2)被験物質を投与されなかった哺乳動物個体より採取した検体における、上記1)の▲1▼乃至▲5▼のいずれか一つに記載の蛋白質の発現量を該蛋白質に特異的に特異的に結合する抗体またはリガンドを用いて検出する工程;
3)1)で検出された蛋白質の発現量と、2)で検出された該蛋白質の発現量の差を解析し、被験物質の癌に対する治療効果及び/または予防効果を判定する工程、
(17) 哺乳動物培養細胞が(8)に記載の癌細胞であることを特徴とする(13)または(15)に記載のスクリーニング方法。
(18) 哺乳動物個体が(9)に記載の非ヒト哺乳動物であることを特徴とする(14)または(16)に記載のスクリーニング方法。
(19) 下記の1)乃至5)からなる群から選択される少なくとも一つ以上を含む、被験物質の癌に対する治療効果及び/または予防効果判定用、及び/または、癌の検出用、キット:
1)配列表の配列番号1、3、5乃至7からなる群から選択されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドを特異的に増幅するための15乃至30塩基長の連続したオリゴヌクレオチドプライマー;
2)配列表の配列番号1、3、5乃至7からなる群から選択されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドにストリンジェントな条件でハイブリダイズし、該ポリヌクレオチドを検出するための15ヌクレオチド以上の連続したポリヌクレオチドプローブ;
3)配列表の配列番号1、3、5乃至7からなる群から選択されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドが固定された固相化試料;
4)配列表の配列番号2、4、6乃至8からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる蛋白質に特異的に結合し、該蛋白質を検出するための抗体;
5)上記4)に記載の抗体に結合し得る二次抗体、
(20) ポリヌクレオチドの発現量を測定する方法が、ノーザンブロット法、ドットブロット法、スロットブロット法、RT−PCR、リボヌクレアーゼ保護アッセイまたはランオン・アッセイであることを特徴とする、(10)、(11)、(13)、(14)、(17)及び18のいずれか一つに記載の方法、
(21) ポリヌクレオチドの発現量を測定する方法が動物組織または動物細胞由来の相補的DNA群または該DNA群の各DNAの部分配列からなるDNAで作製された遺伝子チップまたはアレイを用いることを特徴とする(10)、(11)、(13)、(14)、(17)及び18のいずれか一つに記載の方法、
(22) 蛋白質の発現量の測定方法が、ウエスタンブロット法、ドットブロット法、スロットブロット法または固相酵素免疫定量法(ELISA法)であることを特徴とする、(10)、(12)、(15)、(16)、(17)及び(18)のいずれか一つに記載の方法、
(23) 下記の1)乃至5)からなる群から選択される少なくとも一つのヌクレオチド配列または該配列の部分配列に相補的なヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオオチドを含む癌の治療及び/または予防用医薬組成物:
1)配列表の配列番号1のヌクレオチド番号395乃至1519からなるヌクレオチド配列;
2)配列表の配列番号3のヌクレオチド番号395乃至1519からなるヌクレオチド配列;
3)配列表の配列番号5のヌクレオチド番号393乃至1433からなるヌクレオチド配列;
4)配列表の配列番号7のヌクレオチド番号351乃至1475からなるヌクレオチド配列:
(24)TMEFF2を特異的に認識する抗体を含有する癌の治療及び/または予防用医薬組成物、からなる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本明細書中において、癌治療及び/または癌予防効果を有する化合物とは、癌の増殖を抑制する活性、癌を縮小する活性、及び/または、癌の発生を予防する活性を有する化合物をいう。なお、本明細書中においては、「癌」と「腫瘍」は同じ意味に用いている。本明細書中において、「遺伝子」という語には、DNAのみならずそのmRNA、cDNA及びそのcRNAも含まれるものとする。したがって、本発明における「TMEFF2遺伝子」には、TMEFF2のDNA、mRNA、cDNA及びcRNAが含まれる。本明細書中において、「ポリヌクレオチド」という語は核酸と同じ意味で用いており、DNA、RNA、プローブ、オリゴヌクレオチド、及びプライマーも含まれている。本明細中においては、「ポリペプチド」と「蛋白質」は区別せずに用いている。また、本明細書中において、「RNA画分」とは、RNAを含んでいる画分をいう。また、本明細書中において、「細胞」には、動物個体内の細胞、培養細胞も含んでいる。本明細書中において、「細胞の癌化」とは、細胞が接触阻止現象への感受性を喪失することや、足場非依存性増殖を示すこと等、細胞が異常な増殖を示すことをいう。本明細書において、TMEFF2と同一の生物活性を有する蛋白質とは、TMEFF2が有する細胞の癌化活性等の生物活性を有する蛋白質をいう。なお本発明における癌遺伝子(Oncoge)という語には癌遺伝子の他に癌原遺伝子、前癌遺伝子(Proto−Oncogene)も含む。
1.TMEFF2遺伝子の取得
本発明で用いるヒトTMEFF2 cDNAのヌクレオチド配列は配列表の配列番号1、3、5及び7に示されている。また、アミノ酸配列は、配列表の配列番号2、4、6及び8に示されている。また、GenBankにアクセッション番号(Accession No.)AF179274(バージョン:AF179274.2)、NM_016192(バージョン:NM_016192.2)、AL157430(バージョン:AL157430.1)及びBC008973(バージョン:BC008973.1)で登録されている。すなわち、本明細書中において、「TMEFF2遺伝子」とは、配列表の配列番号1、3、5及び7のいずれかに一つに記載のヌクレオチド配列からなる遺伝子、または、該ヌクレオチド配列からなる遺伝子とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、TMEFF2と同一の生物活性を有する蛋白質をコードするヌクレオチド配列からなる遺伝子をいう。また、本明細書中において、「TMEFF2」とは、配列表の配列番号2、4、6及び8のいずれか一つに記載のアミノ酸配列からなる蛋白質、または、該蛋白質のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、TMEFF2と同一の生物活性を有する蛋白質をいう。
【0014】
TMEFF2遺伝子は以下の方法によって取得することができる。
(1)ヒトcDNAライブラリーを用いる場合
TMEFF2遺伝子を発現しているcDNAライブラリーから、コロニーハイブリダイゼーション法等、公知の方法に従い、完全長cDNAを取得する。この完全長cDNAを鋳型としてPCR法を用いてヒトTMEFF2 cDNAを取得できる。cDNAライブラリーは例えば、ヒト前立腺癌、ヒト肺癌、ヒト乳癌、ヒト胃癌、ヒト大腸癌、ヒト悪性黒色腫、ヒト膵臓癌、及びそれぞれの癌化していない正常な組織由来のcDNAライブラリーを用いることができる。市販のヒトcDNAライブラリーとしてProstate−Leiomyosarcoma cDNA(インビトロジェン(Invitrogen)社:11598−018)、Fetal Brain cDNA(インビトロジェン社:10662−013)、Marathon−Ready cDNA、 Normal Prostate、 pooled(クロンテック社:7418−1−1)を用いることもできるし、自ら調製することもできる。なお、cDNAライブラリーを鋳型として直接PCRを行なってTMEFF2 cDNAを取得することもできる。PCRプライマーとしてはTMEFF2 cDNAを増幅することができればよく、公知の方法で適当なプライマーを選択することができる。TMEFF2 cDNAを増幅するPCR用プライマーとしては例えば以下のヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドを選択することができる。
5’−caccatggtgctgtgggagt−3’(プライマー1:配列表の配列番号:9)及び、5’−ttagattaacctcgtggacgct−3’(プライマー2:配列表の配列番号:10)。
【0015】
cDNAの調製方法としては以下の方法を挙げることができる。
【0016】
ヒトより取り出した血液、各種組織、臓器から全RNA画分を抽出するに際しては、血液、各種組織、臓器をRNA抽出用の溶媒(例えばフェノール等、リボヌクレアーゼを不活性化する作用を有する成分を含むもの)で直接溶解するのが好ましい。または、該組織の細胞を破壊しないように、スクレーパーで慎重に掻きとるか、もしくはトリプシン等の蛋白質分解酵素を用いて穏やかに組織から細胞を抽出するなどの方法により、細胞を回収した後、速やかにRNA画分抽出工程に移行する。
【0017】
RNA画分の抽出方法としては、チオシアン酸グアニジン・塩化セシウム超遠心法、チオシアン酸グアニジン・ホットフェノール法、グアニジン塩酸法、酸性チオシアン酸グアニジン・フェノール・クロロホルム法(Chomczynski, P. and Sacchi, N., (1987) Anal. Biochem., 162, 156−159)などを採用しうるが、酸性チオシアン酸グアニジン・フェノール・クロロホルム法が好適である。また、市販のRNA抽出用試薬(例えば、ISOGEN(ニッポンジーン社製)、TRIzol試薬(インビトロジェン社製))等を試薬に添付のプロトコールに従って用いることもできる。例えばヒトの前立腺癌細胞株LNCaP(アメリカン・ティッシュ・カルチャー・コレクション(American Tissue Culture Collection) ATCC No.:CRL−1740)からTRIzol試薬を用いて全RNA画分を抽出することができる。
【0018】
得られた全RNA画分は、必要に応じてさらにmRNAのみに精製して用いるのが好ましい。精製方法は特に限定されないが、真核細胞の細胞質に存在するmRNAの多くは、その3’末端にポリ(A)配列を持つことが知られているので、この特徴を利用して例えばビオチン化したオリゴ(dT)プローブにmRNAを吸着させ、さらにストレプトアビジンを固定化した常磁性粒子に、ビオチン/ストレプトアビジン間の結合を利用してmRNAを捕捉し洗浄操作の後、mRNAを溶出することにより、mRNAを精製することができる。また、オリゴ(dT)セルロースカラムにmRNAを吸着させて、次にこれを溶出して精製する方法も採用し得る。さらにショ糖密度勾配遠心法などにより、mRNAをさらに分画することもできる。
【0019】
cDNAは全RNAあるいはmRNAを鋳型として逆転写酵素(Reverse transcriptase)を用いて公知の方法により合成することができ、例えば、オムニ・スクリプト・リバーストランスクリプターゼ(Omniscript Reverse Transcriptase:キアゲン(QIAGEN)社製)を添付プロトコールの方法に従って用いることでcDNAを合成することができる。得られたcDNAに対してTMEFF2遺伝子の増幅に特異的なPCRプライマー(例えば配列表の配列番号9と配列番号10のプライマーの組み合わせ)を用いてPCRを行なうことでTMEFF2 cDNAを取得することができる。PCRは通常の反応条件で行なうことができる。
【0020】
なお、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、ヒトTMEFF2遺伝子の天然型のヌクレオチド配列の一部を他のヌクレオチドへの置換やヌクレオチドの欠失、付加などの改変により、天然型のTMEFF2遺伝子と同等に細胞の癌化を促進する生物活性を有するポリヌクレオチドを調製することが可能である。このように天然型のヌクレオチド配列においてヌクレオチドが置換、欠失、もしくは付加したヌクレオチド配列を有し、天然型のTMEFF2遺伝子と同等の発現の変動を示すポリヌクレオチドもまた本発明に用いることができる。ヌクレオチド配列の改変は、例えば、制限酵素あるいはDNAエキソヌクレアーゼによる欠失導入、部位特異的変異誘発法による変異導入、変異プライマーを用いたPCR法によるヌクレオチド配列の改変、合成変異DNAの直接導入などの方法により行うことができる。また、TMEFF2遺伝子とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、TMEFF2と同様の癌細胞増殖活性を有するポリヌクレオチドを使用することもできる。
【0021】
本発明において、「ストリンジェントな条件でハイブリダイズする」とは、市販のハイブリダイゼーション溶液ExpressHyb Hybridization Solution(クローンテック社製)中、68℃でハイブリダイズすること、または、DNAを固定したフィルターを用いて0.7−1.0MのNaCl存在下68℃でハイブリダイゼーションを行なった後、0.1−2倍濃度のSSC溶液(1倍濃度SSCとは150mM NaCl、15mM クエン酸ナトリウムからなる)を用い、68℃で洗浄することにより同定することができる条件またはそれと同等の条件でハイブリダイズすることをいう。
【0022】
2.TMEFF2遺伝子の発現
TMEFF2遺伝子を動物個体内で発現させるためには、得られた完全長cDNAをウイルスベクターに組み込み、動物に投与する方法が挙げられる。ウイルスベクターによる遺伝子導入方法としては例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス等のDNAウイルス、またはRNAウイルスにcDNAを組み込んで導入する方法が挙げられる。なかでも、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ワクシニアウイルスを用いた方法が好ましい。
【0023】
非ウイルス性の遺伝子導入方法としては、発現プラスミドを直接筋肉内に投与する方法(DNAワクチン法)、リポソーム法、リポフェクション法、マイクロインジェクション法、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法等が挙げられ、なかでも、DNAワクチン法、リポソーム法が好ましい。
【0024】
また、培養細胞に対して、完全長cDNAをヒト、マウス、ラット等由来の筋肉細胞、肝細胞、脂肪細胞、前立腺細胞あるいは筋肉細胞、肝細胞、脂肪細胞に分化する細胞(例えば繊維芽細胞)等の細胞へ導入し、高発現させ、各標的細胞の有する機能、具体的には、細胞の癌化等、細胞の形態あるいは細胞の分化にどの様な影響が現れるかを検討することができる。逆に、試験する遺伝子に対するアンチセンス核酸を、細胞に導入し、各標的細胞の機能、形態あるいは細胞の分化にどの様な影響が出るかを調べることもできる。
【0025】
完全長cDNAを動物または細胞に導入するにあたっては、適当なプロモーター及び形質発現に関わる配列を含むベクターに該cDNAを組み込み、該ベクターで宿主細胞を形質転換させる。脊椎動物細胞の発現プロモーターとしては、通常発現しようとする遺伝子の上流に位置するプロモーター、RNAのスプライス部位、ポリアデニル化部位、及び転写終結配列等を有するものを使用でき、さらにこれは必要により複製起点を有してもよい。該発現ベクターの例としては、SV40の初期プロモーターを有するpSV2dhfr(Subramani、 S. et al. (1981) Mol. Cell. Biol. 1、 854−864)、レトロウイルスベクターpLNCX、pLNSX、pLXIN、pSIR(クロンテック(Clontech)社製)等が挙げられるが、これらに限定されない。該発現ベクターは、ジエチルアミノエチル(DEAE)−デキストラン法(Luthman、 H. and Magnusson、g.(1983) Nucleic Acids Res、11、1295−1308)、リン酸カルシウム−DNA共沈殿法(Graham、F.L. and van der Eb、A.J.(1973)Virology 52、456−457)、電気パルス穿孔法(Neumann、E. et al.(1982)EMBO J. 1、841−845)、あるいはLipofectamine 2000(インビトロジェン社製)、Lipofectamine PLUS (インビトロジェン社製)、DMRIE−C Reagent(インビトロジェン社社製)、FuGENE6(ロッシュ・ダイアグノスティクス社製)などによりCOS細胞やマウス繊維芽細胞株NIH3T3(ATCC No.:CRL−1658)等に取り込ませることができ、あるいは、レトロウイルスベクターの場合は、パッケージング細胞株、例えば、293−10A1(IMGENEX社製)やPT67(クロンテック社製)に取り込ませるか、293細胞(宝酒造社製)やNIH3T3細胞にpCL−10A1やpCL−Eco(IMGENEX社製)等パッケージングプラスミドを一緒に取り込ませる(コ・トランスフェクトする)ことでウイルスを産生させ、これをCOS細胞やマウス繊維芽NIH3T3等に感染させることで、所望の形質転換細胞を得ることができる。
【0026】
また、遺伝子操作により、正常動物において対象とする遺伝子を破壊したノックアウト動物を作製し、腫瘍発生及び/または腫瘍増殖メカニズムにどの様な影響が現れるかを検討することも可能である。逆に、腫瘍を有する動物において、目的とする遺伝子が高発現するようにトランスジェニック動物を作製し、その腫瘍の形態変化を観察することでTMEFF2の機能を調べることも可能である。前記トランスジェニック動物は、動物から受精卵を取得し、遺伝子導入の後、偽妊娠動物に移植し、発生させることにより得ることができ、その手順は公知の方法(発生工学実験マニュアル(野村達次 監修、勝木元也 編、1987年刊)、特開平5−48093号等参照)に従えばよい。具体的には、例えば、マウスの場合にはまずメスマウスに排卵誘起剤を投与後、同系統のオスと交配し、翌日メスマウスの卵管より前核受精卵を採取する。次いで、導入するDNA断片溶液を微小ガラス管を用いて受精卵の前核に注入する。なお、導入する遺伝子を動物細胞内で発現させるためのプロモーターやエンハンサー等の調節遺伝子は、導入された動物の細胞内で機能するものであれば特に限定されない。DNAを注入した受精卵は、偽妊娠仮親メスマウス(Slc:ICR等)の卵管に移植し、約20日後に自然分娩または帝王切開により出生させる。
【0027】
こうして得られた動物が、導入遺伝子を保持していることを確認する方法としては、例えば、前記動物の尾等からDNAを抽出し、該DNAをこれに特異的なセンス及びアンチセンスプライマーを用いてPCR増幅する方法、該DNAを制限酵素で消化後、ゲル電気泳動し、ゲル中のDNAをナイロン膜等にブロッティングした後、標識した導入遺伝子の全部または一部をプローブとしてサザンブロット解析を行なう方法等を挙げることができる。
3.TMEFF2遺伝子を用いた癌細胞の製造方法
対象とする遺伝子が、癌遺伝子として機能しうるかどうか、すなわち悪性形質能があるか否かは、それらを発現させた細胞株における接触阻止現象(Contact inhibition)への感受性、あるいは、足場非依存性増殖(Anchorage independent growth)などの有無によって調べることができる(横田淳、山本雅編、バイオマニュアルUPシリーズ 癌研究プロトコール 羊土社 168−174(1995.10.15)。すなわち、細胞に対して接触阻止現象に対する感受性を喪失させたり、足場非依存性増殖を示させたりする遺伝子は癌遺伝子といえる。
【0028】
例えば、マウス繊維芽細胞株NIH3T3細胞株中でTMEFF2遺伝子を過剰に発現させると、上記の接触阻止能に対する感受性の喪失及び足場非依存性増殖が確認され、TMEFF2遺伝子は癌遺伝子として機能することが明らかとなった。多くの場合、癌遺伝子を過剰発現しているNIH3T3細胞をヌードマウスに注射すると注射部位に腫瘍を形成するので、TMEFF2遺伝子を過剰発現する細胞株は腫瘍形成実験に用いることもできる。
【0029】
すなわち、TMEFF2遺伝子を用いることで、癌細胞を製造することができる。癌細胞の製造方法としては、例えば、以下の工程1)及び2)を含む癌細胞の製造方法を挙げることができる。
1)下記の▲1▼乃至▲5▼のいずれか一つに記載のポリヌクレオチドを用いて細胞を形質転換する工程;
▲1▼配列表の配列番号1のヌクレオチド番号395乃至1519からなるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、
▲2▼配列表の配列番号3のヌクレオチド番号395乃至1519からなるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、
▲3▼配列表の配列番号5のヌクレオチド番号393乃至1433からなるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、
▲4▼配列表の配列番号7のヌクレオチド番号351乃至1475からなるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、
▲5▼上記▲1▼乃至▲4▼のいずれか一つに記載のポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、TMEFF2と同一の生物活性を有する蛋白質をコードするヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、
2)1)に記載の細胞より増殖能に変化が生じた細胞株を選択する工程。
【0030】
上記、1)の工程の細胞の形質転換では、動物個体内の細胞を形質転換し、動物個体内に癌細胞を発生させることもできるし、培養細胞を形質転換し癌細胞化することもできる。細胞の形質転換は、例えば、上記「2.TMEFF2遺伝子の発現」の項に記載した方法によって、動物あるいは培養細胞を用いて行なうことができる。
【0031】
上記、2)の工程における細胞の増殖能の変化とは、形質転換細胞が、細胞に対する接触阻止現象に対する感受性を喪失したり、足場非依存性増殖を示したりすることをいう。細胞の増殖能の変化は、また、形質転換していない細胞に比べて形質転換した細胞において、以下に示すフォーカス形成試験によってフォーカス数が顕著に増加していること、コロニー形成試験においてコロニー数が顕著に増加していること、及び/または、スフェロイド増殖試験において、スフェロイドの直径の顕著な増加が観察されること等によって確認することもできるが、細胞の増殖能の変化を調べることができる限りにおいてこれらの方法に限定されない。細胞の増殖能に変化を生じた細胞株を癌細胞として選択することができる。
【0032】
なお、TMEFF2を過剰に発現する細胞株では、以下の(1)乃至(3)に示すいずれか1つまたは2つ以上の性質を有する。
(1)フォーカス形成
NIH3T3をはじめとする正常繊維芽細胞は、通常、増殖して密集状態になっても細胞が重なり合うことはなく、単層を形成したところで増殖は止まる。一方、形質転換した細胞、癌細胞では、接触阻止現象への感受性が喪失しており、重なり合いながら増殖を続けることが可能であり、何層にも重なった細胞集団を形成し、単層の細胞の広がりの中に高密度の細胞塊であるフォーカス(Focus)を作るという特性を持つ(横田淳、山本雅編、バイオマニュアルUPシリーズ 癌研究プロトコール 羊土社 168−174(1995.10.15)。この現象は、例えば、培養細胞に癌ウイルスを感染させた場合に観察されることから、癌ウイルスの定量にも用いられる場合もあるのみならず(Fundamental Techniques in Virology,AcademicPress(1969),p198−211)、ウイルスや細胞由来の癌遺伝子を含むDNA断片を細胞にトランスフェクションすることによっても観察することができることから、癌遺伝子、癌抑制遺伝子のスクリーニングに用いられる。
【0033】
TMEFF2遺伝子を過剰発現させた細胞株と過剰発現させなかった細胞株を通常の方法で培養し、新鮮な培養液に置換した後にマルチウェルプレート(例えば96穴プレート:コーニング−コスター社製3598)に分注し一定時間培養した後に各ウェルあたりのフォーカス数を測定する。各ウェルあたりのフォーカス数を集計した後統計処理を行ない、各ウェルあたりの平均フォーカス数及び標準偏差を算出する。
【0034】
TMEFF2遺伝子を過剰発現させたNIH3T3細胞ではTMEFF2遺伝子を過剰発現させなかった細胞に比べ、フォーカス数が顕著に増加していることが観察される。
【0035】
(2)コロニー形成試験
正常な細胞は、血液細胞を除き、接着する足場のない状態におくと増殖できないことが知られる。これに対して形質転換した細胞、癌細胞は、足場のない状態でも増殖しうる特性をもつ。この特性変化は、これは軟寒天培地中における増殖コロニーの形成で容易に調べることが可能である(横田淳と山本雅,1995)。
【0036】
TMEFF2遺伝子を過剰発現させた細胞株と過剰発現させなかった細胞株を通常の方法で培養し、新鮮な培養液に置換した後に軟寒天培地(例えば0.33% Bactoagar(Difco社製)及び20%FCS含有RPMI1640)に懸濁し、寒天培地(例えば0.66% Bactoagar及び20%FCS含有RPMI1640)の上に重層する。通常の条件(例えば37℃、5%CO)で培養し、形成された軟寒天中の増殖コロニー数を測定する。マルチウェルプレート(例えば12穴プレート:コーニング−コスター社製3512)を用いて培養した場合には、一定時間培養した後に各ウェルあたりのコロニー数を測定する。各ウェルあたりのコロニー数を集計した後統計処理を行ない、各ウェルあたりの平均コロニー数及び標準偏差を算出する。
【0037】
TMEFF2遺伝子を過剰発現させたNIH3T3細胞株ではTMEFF2遺伝子を過剰発現させなかった細胞に比べ、コロニー数が顕著に増加していることが観察される。
【0038】
(3)スフェロイド(Spheroid)増殖試験
形質転換した細胞、癌細胞の足場非依存的な増殖という特性は、スフェロイド(Spheroid)状態での培養によっても容易に評価することができる。スフェロイドは細胞が多数集合した凝集体のことであり、細胞接着を極めて低く抑えた培養プレートでの培養によって容易に形成しうる。スフェロイド状態での培養は、通常の単層培養とは異なり、3の(2)に示したのと同様に足場非依存的な状態での培養に類似し、生体内に近い条件下で機能を観察することができる(住友ベークライト社SUMILON理化学機器総合カタログ)。
【0039】
TMEFF2遺伝子を過剰発現させた細胞株と過剰発現させなかった細胞株を通常の方法で培養し、新鮮な培養液に置換し、細胞非付着性マルチウェルプレート(例えばスフェロイド96U:住友ベークライト社製MS−0096S)に分注する。通常の条件(例えば、37℃、5%CO)で培養し、培養開始後一定時間経過後にプレート上に形成されるスフェロイドの大きさを測定する。スフェロイドの大きさは例えば顕微鏡下、接眼方眼ミクロメータ−(三啓社製:S−6)を用いて測定することができ、スフェロイドの大きさの指標としてスフェロイドの直径を用いることができる。
【0040】
TMEFF2遺伝子を過剰発現させたNIH3T3細胞株ではTMEFF2遺伝子を過剰発現させなかった細胞に比べ、スフェロイドの直径の顕著な増加が観察される。
4.腫瘍形成マーカー遺伝子
TMEFF2は細胞の癌化及び/または癌細胞の増殖に関与していると考えられる。したがって、TMEFF2の各細胞、及び/または各組織における発現量を測定することでTMEFF2の過剰発現に起因して発生する癌化及び/または癌細胞の増殖の状態を判定することができる。このような癌としては、例えば、前立腺癌、精巣癌、陰茎癌、膀胱癌、腎臓癌、口腔癌、咽頭癌、口唇癌、舌癌、歯肉癌、鼻咽頭癌、食道癌、胃癌、小腸癌、大腸癌、結腸癌、肝臓癌、胆嚢癌、膵臓癌、鼻腔癌、肺癌、骨肉腫、軟部組織癌、皮膚癌、黒色腫、乳癌、子宮癌、卵巣癌、脳腫瘍、甲状腺癌、リンパ腫、白血病などを挙げることができる。
【0041】
すなわち、TMEFF2遺伝子は腫瘍形成のマーカー遺伝子として用いることができる。遺伝子の発現量を測定する方法としては、検体より抽出した全RNAよりcRNAまたはcDNAを調製し、これを適当な標識でラベルすることにより、そのシグナル強度として検出することができる。
【0042】
以下に、遺伝子の発現量の解析方法として、固相化試料を用いた解析方法と、その他のいくつかの解析方法について説明する。
【0043】
(1) 固相化試料を用いた解析方法
i)固相化試料
前記固相化試料としては、例えば以下のものが挙げられる。
a)遺伝子チップ:
データベース上のEST(expressed sequence tag)配列またはmRNA配列をもとに合成したアンチセンスオリゴヌクレオチドが固相化された遺伝子チップを用いることができる。このような遺伝子チップとしてはアフィメトリックス社製の遺伝子チップ(Lipshutz, R. J. et al. (1999) Nature genet. 21, suppliment、20−24)を用いることができるが、これに限定されず、公知の方法に基づき作製してもよい。遺伝子チップ上に固相化するアンチセンスオリゴヌクレオチドの基となるEST配列またはmRNA配列は、解析対象の動物あるいは動物細胞と、同種の動物由来のものであることが最も好ましい。マウスやマウス由来培養細胞を用いるときはマウス由来のものが望ましく、ヒト検体やヒト由来培養細胞を用いるときはヒト由来のものが望ましい。マウス腫瘍のmRNAを解析する場合はマウス由来のものが最も好ましく、例えば、アフィメトリックス社製マウス19Kセット(Murine 19K set: 19KA, 19KB,19KC)やマウス11Kセット(Murine 11K set: 11KA, 11kB)を用いることができる。ヒト腫瘍(例えば前立腺癌細胞株LNCaP:ATCC番号CRL−1740、PC−3:ATCC番号CRL−1435、DU−145:ATCC番号HTB−81など)のmRNAを解析する場合には、ヒト由来のものが好ましく、例えば、アフィメトリックス社製ヒトU95セットまたはU133セットを用いることができる。しかしながら、それらに限定されず、例えば近縁種の動物由来のものも使用可能である。近縁種としては、例えば哺乳類同士を挙げることができ、ヒトとマウス、ヒトとサル等組み合わせを挙げることができるがこれらに限定されない。
【0044】
b)マウスまたはヒト、全RNAあるいは特定の組織から得た全RNAより作製されたcDNAまたはRT−PCR産物が固相化された、アレイまたはメンブレンフィルター:
上記cDNAまたはRT−PCR産物は、マウスまたはヒトのESTデータベース等の配列情報を基に作製されたプライマーで逆転写酵素反応やPCRを実施することによりクローン化されたものである。このcDNAやRT−PCR産物は、TMEFF2遺伝子のみとハイブリダイズするものであってもよい。また、アレイやフィルターは市販のもの(例えば、インテリジーン:宝酒造社製等)を使用してもよいし、上記cDNAやRT−PCR産物を市販のスポッターで(例えば、GMS417アレイヤー:宝酒造社製等)を用いて固相化することにより作製してもよい。
【0045】
ii)プローブの作製と解析
標識プローブは、特定のmRNAクローンではなく、発現している全てのmRNAを標識したものを用いる。プローブ作製のための出発材料としては精製していないmRNAを用いてもよいが、前述の方法で精製したポリ(A)+RNAを用いることが望ましい。以下に、各種固相化試料を用いた場合の、標識プローブの調製方法と検出、解析方法について説明する。
【0046】
a)アフィメトリックス社製遺伝子チップ:
アフィメトリクス社製遺伝子チップに添付されたプロトコール(アフィメトリックス社発現解析技術マニュアル)に従ってビオチン標識したcRNAプローブを作製する。次いでアフィメトリックス社製遺伝子チップに添付のプロトコール(発現解析技術マニュアル)に従って、アフィメトリックス社製の解析装置(GeneChip Fluidics Station 400)を用いてハイブリダイゼーションを行い、アビジンによる発光を検出、解析を行なう。
【0047】
b)アレイ:
逆転写酵素反応でポリ(A)RNAからcDNAを作製する際に、cDNAの検出ができるようにcDNAを標識しておくことが必要であり、蛍光色素で標識する場合には、蛍光色素(例えばCy3、Cy5など)で標識されたd−UTPなどを加えておくことによりcDNAを蛍光標識する。このとき、被験物質添加細胞由来のポリ(A)RNAと対照細胞由来のポリ(A)RNAをそれぞれ異なる色素で標識しておけば、後のハイブリダイゼーション時には両者を混合して用いることができる。アレイとして例えば、宝酒造(株)社の市販アレイを用いる場合、同社のプロトコールに従いハイブリダイゼーション及び洗浄を行って、蛍光シグナル検出機(例えばGMS418アレイスキャナー(宝酒造社製)等)で蛍光シグナルを検出後、解析を行う。ただし、使用するアレイとしては市販のものに限定されず、自家製のもの、特別に作製したのもでもよい。
【0048】
c)メンブレンフィルター:
逆転写酵素でポリ(A)RNAからcDNAを作製する際に、放射性同位元素(例えば、d−CTP[α−33P])等を加えることにより標識プローブを調製し、常法によりハイブリダイゼーションを行ない、例えば、市販のフィルター製マイクロアレーである、アトラスシステム(クローンテック社製)を用いてハイブリダイゼーション及び洗浄を行なった後、解析装置(例えば、アトラスイメージ:クローンテック社製等)を用いて検出、解析を行なう。
【0049】
蛍光標識プローブを用いる場合には、それぞれのプローブを異なる蛍光色素で標識しておけば一つの固相化試料に両プローブの混合物を一度にハイブリダイズさせて蛍光強度を読み取ることができる(Brown, P. O. et al. (1999) Nature genet, 21, supplement, 33−37)。
【0050】
(2)その他の解析方法
a) RT−PCR
まずTMEFF2のmRNAを鋳型とする逆転写酵素反応を行ってから、PCRを実施して特異的にDNA断片を増幅する。この方法において、目的のヌクレオチド配列を特異的に増幅するためには、目的のmRNAの特定の部分配列に相補的なアンチセンスプライマーと、該アンチセンスプライマーから逆転写酵素により生成されるcDNAの配列中の特定の部分配列に相補的なセンスプライマーが用いられる。RT−PCRは市販のキット(例えば、RNA PCRキット AMV ver2.1:宝酒造社製等)を用いて、キットに添付のマニュアルに従って行なうことができる。
【0051】
逆転写酵素反応及びPCRの両方に用いられるアンチセンスプライマーは、実質的にTMEFF2遺伝子のヌクレオチド配列のアンチセンス配列中の、連続した15ヌクレオチド乃至40ヌクレオチド、好ましくは少なくとも18ヌクレオチド乃至30ヌクレオチド、更に好ましくは23ヌクレオチド乃至30ヌクレオチドのヌクレオチド配列からなる。
【0052】
一方、PCRにおいて用いられるセンスプライマーの配列は、TMEFF2遺伝子のヌクレオチド配列において、上記アンチセンスプライマーの相補鎖にあたる配列中の最も5’末端側の位置よりもさらに5’末端側領域に存在する配列中の連続した15乃至40ヌクレオチド、好ましくは18乃至35ヌクレオチド、更に好ましくは21乃至30ヌクレオチドの任意の部分配列からなる。ただし、センスプライマーとアンチセンスプライマーに互いに相補的な配列が存在すると、プライマー同士がアニーリングすることにより非特異的な配列が増幅され、特異的なポリヌクレオチド検出の妨げとなるおそれがあるので、そのような組み合わせを避けたプライマーの設計を行うことが好ましい。
【0053】
これらアンチセンスプライマー及びセンスプライマーには、いずれも上記で規定したそれらヌクレオチド配列の5’末端に、TMEFF2遺伝子のヌクレオチド配列とは無関係のヌクレオチド配列がリンカーとして付加されていてもよい。ただし、特異的なポリヌクレオチド検出の妨げとならないよう、該リンカーは反応中に反応液内の核酸と非特異的アニーリングを起こさないようなものであることが好ましい。
【0054】
RT−PCRによって核酸の検出を行う態様における、各反応の条件は以下に記載する通りである。なお、RT−PCRによる検出のための試料は、通常ポリ(A)RNAにまで精製されている必要はない。
【0055】
i)逆転写酵素反応
反応液組成の例(全量20μl):
全RNA 適宜;
塩化マグネシウム 2.5乃至5mM(好ましくは5mM);
1×RNA PCR緩衝液(10mM トリス−塩酸(25℃におけるpH8.3乃至9.0(好ましくは8.3))、50mM 塩化カリウム);
dNTPs 0.5乃至1mM(好ましくは1mM);
アンチセンスプライマー 1μM (アンチセンスプライマーの代用として、市販のランダムプライマーやオリゴ(dT)プライマー(12−20ヌクレオチド)を2.5μM添加することもできる);
逆転写酵素 0.25乃至1単位/μl(好ましくは0.25単位/μl);
滅菌水で20μlに調整する。
【0056】
反応温度条件:
30℃で10分間保温(ランダムプライマー使用時のみ)した後、42乃至60℃(好ましくは42℃)で15乃至30分間(好ましくは30分間)保温し、さらに99℃で5分間加熱して酵素を失活させてから、4乃至5℃(好ましくは5℃)で5分間冷却する。
【0057】
ii)PCR
反応液組成の例:
塩化マグネシウム 2乃至2.5mM(好ましくは2.5mM);
1×PCR緩衝液(10mM トリス−塩酸(25℃におけるpH8.3乃至9.0(好ましくは8.3))、50mM 塩化カリウム;
dNTPs 0.2乃至0.25mM(好ましくは0.25mM);
アンチセンスプライマー及びセンスプライマー 0.2乃至0.5μM(好ましくは0.2μM);
Taqポリメラーゼ 1乃至2.5単位(好ましくは2.5単位);
滅菌水を加えて全量を80μlに調整し、その全量を、逆転写反応を終了した反応液全量に加えてからPCRを開始する。
【0058】
反応温度条件: まず94℃で2分間加熱した後、90乃至95℃(好ましくは94℃)で30秒間、40乃至60℃(好ましくは、プライマーの特性から算出される解離温度(Tm)からそれより20度低い温度までの範囲内で30秒間、70乃至75℃(好ましくは72℃)で1.5分間の温度サイクルを28乃至50サイクル(好ましくは28サイクル)繰り返してから、4℃に冷却する。
【0059】
PCR終了後、反応液を電気泳動し、目的の大きさのバンドが増幅されているか否かを検出する。定量的検出を行うためには、予め段階希釈したcDNAクローンを標準の鋳型DNAとして同条件でPCRを実施し、定量的検出が可能な温度サイクル数を定めておくか、または、例えば5サイクル毎に一部反応液をサンプリングしてそれぞれ電気泳動を行う。また例えばPCR反応時に放射標識dCTPを用いることにより、バンド中に取り込まれた放射能の量を指標に定量を行うこともできる。遺伝子定量の信頼性を高めた方法として、上記RT−PCR法を改良した競合RT−PCR法(Souaze et al.、BioTechniques 21、280−285(1996))や、TaqMan PCR法(Heid et al.、Genom.  Res.  6、986−994(1996))なども利用可能である。
b) リボヌクレアーゼ保護アッセイ(RNase protection assay): RNA試料中の、上記1)乃至5)のいずれか一つに記載のヌクレオチド配列を有するmRNA(ただし配列中のtはuに読み替える)のみに標識プローブをハイブリダイズさせ、二本鎖ポリヌクレオチドを形成させておいてから、試料にリボヌクレアーゼを添加してインキュベーションすると、プローブがハイブリダイズしたmRNAは二本鎖を形成していることによってリボヌクレアーゼによる消化を免れ、それ以外のRNAは消化されるので、該二本鎖ポリヌクレオチドのみが残る(検出されるmRNAよりプローブが短ければ、プローブの鎖長に相当する二本鎖ポリヌクレオチドが残る)。この二本鎖ポリヌクレオチドを定量することにより、目的のポリヌクレオチドの発現量を測定する。具体的には、例えば以下に記載する方法に従う。
【0060】
二本鎖を形成せずに余った標識プローブを二本鎖ポリヌクレオチドと確実に分離して定量を容易にするために、余った標識プローブはリボヌクレアーゼに消化されることが好ましいが、リボヌクレアーゼとして一本鎖DNAも消化できるようなものを使用すれば、標識プローブはDNAでもRNAでもよい。標識プローブの調製方法は上記常法に従って行なうことができるが、リボヌクレアーゼアッセイにおいて用いられるプローブの長さは50乃至500ヌクレオチド程度が好ましい。また、二本鎖DNAを直接標識して熱変性したのみのプローブ等、相補鎖が混在するようなプローブは本法には好適ではない。
【0061】
RNAプローブは、例えば下記の方法に従って調製される。まず鋳型DNAをバクテリオファージのプロモーター(T7、SP6、T3プロモーター等)を有するプラスミドベクター(例えばpGEM−T(プロメガ社製)など)に挿入する。次にこの組換えプラスミドベクターを、制限酵素で、挿入断片のすぐ下流で一ヶ所だけ切断されるように消化する。得られた直鎖DNAを鋳型として、放射能標識されたリボヌクレオチド存在下で、イン・ビトロ転写反応を行う。この反応には、ベクター中のプロモーターに合わせてT7、SP6またはT3ポリメラーゼ等の酵素を用いる。以上の操作は例えばリボプローブシステム−T7、同−SP6または同−T3(いずれもプロメガ社製)を用いて行うことができる。
【0062】
RNA試料を調製するまでの工程は「1.TMEFF2遺伝子の取得」の項に示した方法にしたがって実施することができ、抽出された全RNAはさらに精製してmRNAとして使用することが望ましい。調製された全RNA試料10乃至20μg相当分と、5×10cpm相当の過剰量の標識プローブとを用いてリボヌクレアーゼ保護アッセイを行う。この操作は市販のキット(HybSpeed RPA Kit、アンビオン社製)を用いて行うことができる。得られたリボヌクレアーゼ消化後の試料を、8M 尿素を含む4乃至12%ポリアクリルアミドゲルで電気泳動した後、ゲルを乾燥させ、X線フィルムでオートラジオグラフィーを行う。以上の操作により、リボヌクレアーゼ消化を免れた二本鎖ポリヌクレオチドのバンドを検出することができ、またその定量は常法に従って実施することができる。さらに、各試料間のRNA量の差等に起因するばらつきを補正する目的で、β−アクチン遺伝子の発現量を同時に測定しておけば、より精密な評価を行うことができる。
【0063】
c) ランオン・アッセイ(Run−on assay、Greenberg, M. E. and Ziff, E. B.B. (1984) Nature 311, 433−438、Groudine, M. et al. (1981) Mol. Cell Biol. 1, 281−288参照):本方法は、細胞から核を単離して目的の遺伝子の転写活性を測定する方法であり、細胞内のmRNAを検出する方法ではないが、本発明においては「遺伝子の発現量を測定する方法」に包含される。単離された細胞核を用いて、試験管内で転写反応を行わせると、核を単離する前に既に転写が開始されmRNA鎖が生成されている途中のものが伸長していく反応のみが進行する。この反応時に放射標識したリボヌクレオチドを添加して、伸長していくmRNAを標識しておき、その中に含まれる、非標識プローブにハイブリダイズするmRNAを検出することにより、核を単離した時点における目的のポリヌクレオチドの転写活性を測定することができる。なお具体的操作方法は、標識しないプローブを調製する他は、上記参照文献の記載に準ずる。被験者または被験動物から採取した検体由来の試料と、正常人または正常動物由来の試料との間で測定結果を比較し、TMEFF2遺伝子の転写活性が正常人または正常動物より高い場合、腫瘍を有していると判断することができる。
【0064】
d) TMEFF2遺伝子のプロモーター支配下に、該プロモーター活性の検出を可能にする遺伝子(以下「レポーター遺伝子」という。)を利用して、間接的にTMEFF2遺伝子やTMEFF2の発現を検出することもできる。以下、レポーター遺伝子を利用した検出方法について説明する。
【0065】
d−1)レポーター遺伝子
レポーター遺伝子は、宿主細胞が本試験方法の一連の過程において産生し得る他のいかなる蛋白質とも特異的に区別可能な、レポーター蛋白質をコードするものであればよい。好ましくは、形質転換前の細胞が該レポーター蛋白質と同一または類似の蛋白質をコードする遺伝子を持たないようなものがよい。例えば、レポーター蛋白質が該細胞に対して毒性を有するようなものや、該細胞が感受性を有する抗生物質の耐性を付与するものであるような場合でも、レポーター遺伝子の発現の有無は細胞の生存率で判定することが可能である。しかしながら、本発明で用いられるレポーター遺伝子としてより好ましいものは、発現量を特異的かつ定量的に検出することができる(例えば、該レポーター遺伝子にコードされる蛋白質に対する特異的抗体が取得されているような)構造遺伝子である。より好ましくは、外来の基質と特異的に反応することにより定量的測定が容易な代謝産物を生じるような酵素等をコードする遺伝子である。そのようなレポーター遺伝子としては、例えば、以下の蛋白質をコードする遺伝子を例示することができるが、本発明はそれらに限定されない。
【0066】
d−1−1)クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ:
クロラムフェニコールにアセチル基を付加する酵素で、いわゆるCATアッセイ等で検出することができる。プロモーターを組み込むだけでレポーターアッセイ用のベクターを調製できるベクターとして、pCAT3−Basicベクター(プロメガ社製)が市販されている。
【0067】
d−1−2)ホタルルシフェラーゼ:
ルシフェリンを代謝した際に生じる生物発光を測定することにより定量できる。レポーターアッセイ用のベクターとしては、pGL3−Basicベクター(プロメガ社製)が市販されている。
【0068】
d−1−3)β−ガラクトシダーゼ:
呈色反応、蛍光または化学発光でそれぞれ測定可能な基質がある。レポーターアッセイ用のベクターとしては、pβgal−Basic(プロメガ社製)が市販されている。
【0069】
d−1−4)分泌型アルカリホスファターゼ:
呈色反応、生物発光または化学発光でそれぞれ測定可能な基質がある。レポーターアッセイ用のベクターとしては、pSEAP2−Basic(クロンテック社製)が市販されている。
【0070】
d−1−5)緑色蛍光蛋白質(green−fluorescent protein):
酵素ではないが、自らが蛍光を発するので直接定量できる。同じくレポーターアッセイ用のベクターとしてpEGFP−1(クロンテック社製)が市販されている。
【0071】
d−2)レポーター遺伝子の導入
公知の方法に従い、TMEFF2遺伝子のプロモーター支配下にレポーター遺伝子を発現し得るレポーター発現プラスミドを細胞にトランスフェクションする。
【0072】
細胞に発現プラスミドを導入する方法としては、ジエチルアミノエチル(DEAE)−デキストラン法(Luthman、H. and Magnusson、G.(1983)Nucleic Acids Res. 11、1295−1308)、リン酸カルシウム−DNA共沈殿法(Graham、F.L. and van der Eb、A.J.(1973) Virology 52、456−457)、電気パルス穿孔法(Neumann、E. et al.(1982)EMBOJ.1、841−845)、リポフェクション法(Lopata et al.(1984)Nucl. Acids Res. 12、5707−5717、Sussman and Milman(1984) Mol.Cell. Biol. 4、1641−1643)などを挙げることができるが、これらに限定されず、本発明の属する技術分野において汎用される任意の方法を採用することができる。ただし、細胞がいわゆる浮遊細胞である場合は、リン酸カルシウム−DNA共沈殿法以外の方法を用いることが好ましい。いずれの方法においても、用いる細胞に応じて、至適化されたトランスフェクション条件を用いることが必要である。
【0073】
d−3)評価
かくして、TMEFF2遺伝子のレポーター発現プラスミドをトランスフェクションした細胞を培養すると、該TMEFF2遺伝子の発現と相関してレポーター遺伝子の転写が促進される。したがって、レポーター遺伝子の発現が可能な条件下において、培地中に任意の被検物質を添加した場合と添加しない場合でのレポーター遺伝子の発現量変化をみれば、TMEFF2遺伝子の発現量が評価できる。ここで、「レポーター遺伝子の発現が可能な条件」とは、レポーター発現ベクターによってトランスフェクトされた細胞が生存して、レポーター遺伝子の転写産物(レポーター蛋白質)の生産が可能な条件であればよい。好ましくは、使用される細胞株に適合した培地(ウシ胎児血清等の血清成分を添加してもよい)で、4〜6%(最も好適には5%)の炭酸ガスを含む空気存在下、36〜38℃(最も好適には37℃)で2〜3日間(最も好適には2日間)培養する。
5.腫瘍マーカー蛋白質
TMEFF2は細胞の癌化を引き起こし腫瘍細胞で発現量が増大していると考えられるので腫瘍の存在を検出するための腫瘍マーカー蛋白質として使用することができる。
【0074】
TMEFF2の検出方法の好適な態様として、抗体を利用した方法について説明する。まず、試料中の蛋白質を96穴プレートや384穴プレート等のマルチウエルプレートのウエル内底面やメンブレン等に固相化しておいてから、TMEFF2を特異的に認識する抗体を用いた検出が行われる。このうち、96穴プレートや384穴プレート等のマルチウエルプレートを用いるのは一般に固相酵素免疫定量法(ELISA法)や放射性同位元素免疫定量法(RIA法)と呼ばれる方法である。一方、メンブレンに固相化する方法としては、試料のポリアクリルアミド電気泳動を経てメンブレンに蛋白質を転写する方法(ウエスタンブロット法)か、または直接メンブレンに試料またはその希釈液を染み込ませる、いわゆるドットブロット法やスロットブロット法が挙げられる。
【0075】
(1)試料の調製
試料としては、ヒト全血、血清、肝臓、前立腺、精巣、陰茎、膀胱、腎臓、口腔、咽頭、口唇、舌、歯肉、鼻咽頭、食道、胃、小腸、大腸、結腸、肝臓、胆嚢、膵臓、鼻腔、肺、軟部組織、皮膚、乳房、子宮、卵巣、脳、甲状腺、リンパ等腫瘍の存在を検出する対象とする臓器または組織を任意に選択することができる。なお、試料の採取に当たっては各実験機関の実験倫理ガイドラインにしたがって行なう必要がある。上記試料は、必要に応じて高速遠心を行うことにより、不溶性の物質を除去した後、以下のようにELISA/RIA用試料やウエスタンブロット用試料として調製する。
【0076】
ELISA/RIA用試料としては、例えば回収した、血清、肝臓、前立腺、精巣、陰茎、膀胱、腎臓、口腔、咽頭、口唇、舌、歯肉、鼻咽頭、食道、胃、小腸、大腸、結腸、肝臓、胆嚢、膵臓、鼻腔、肺、軟部組織、皮膚、乳房、子宮、卵巣、脳、甲状腺、リンパ等をそのまま使用するか、緩衝液で適宜希釈したものを用いる。ウエスタンブロット用(電気泳動用)試料は、例えば、血清、肝臓、前立腺、精巣、陰茎、膀胱、腎臓、口腔、咽頭、口唇、舌、歯肉、鼻咽頭、食道、胃、小腸、大腸、結腸、肝臓、胆嚢、膵臓、鼻腔、肺、軟部組織、皮膚、乳房、子宮、卵巣、脳、甲状腺、リンパ等の抽出液をそのまま使用するか、緩衝液で適宜希釈して、SDS−ポリアクリルアミド電気泳動用の2−メルカトルエタノールを含むサンプル緩衝液(シグマ(Sigma)社製等)と混合する。ドット/スロットブロットの場合は、例えば回収した血清、肝臓、前立腺、精巣、陰茎、膀胱、腎臓、口腔、咽頭、口唇、舌、歯肉、鼻咽頭、食道、胃、小腸、大腸、結腸、肝臓、胆嚢、膵臓、鼻腔、肺、軟部組織、皮膚、乳房、子宮、卵巣、脳、甲状腺、リンパ等の抽出液そのもの、または緩衝液で適宜希釈したものを、ブロッティング装置を使用するなどして、直接メンブレンへ吸着させる。
【0077】
(2)試料の固相化
上記のようにして得られた試料中の蛋白質を特異的に検出するためには、試料を免疫沈降法、リガントの結合を利用した方法等によって、沈殿させ、固相化せずに検出することもできるし、そのまま検出する該試料を固相化することもできる。蛋白質を固相化する場合において、ウエスタンブロット法、ドットブロット法またはスロットブロット法に用いられるメンブレンとしては、ニトロセルロースメンブレン(例えば、バイオラッド社製等)、ナイロンメンブレン(例えば、ハイボンド−ECL(アマシャム・ファルマシア社製)等)、コットンメンブレン(例えば、ブロットアブソーベントフィルター(バイオラッド社製)等)またはポリビニリデン・ジフルオリド(PVDF)メンブレン(例えば、バイオラッド社製等)等が挙げられる。
【0078】
電気泳動後のゲルからメンブレンに蛋白質を移す、いわゆるブロッティング方法としては、ウエット式ブロッティング法(CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY volume 2 ed by J. E. Coligan, A. M. Kruisbeek, D. H. Margulies, E. M. Shevach, W. Strober)、セミドライ式ブロッティング法(上記CURRENT PROTOCOLSIN IMMUNOLOGY volume 2 参照)等を挙げることができる。ドットブロット法やスロットブロット法のための器材も市販されている(例えば、バイオ・ドット(バイオラッド)等)。
【0079】
一方、ELISA法/RIA法で検出・定量を行うためには、専用の96穴プレート(例えば、イムノプレート・マキシソープ(ヌンク社製)等)に試料またはその希釈液(例えば0.05% アジ化ナトリウムを含むリン酸緩衝生理食塩水(以下「PBS」という)で希釈したもの)を入れて4℃乃至室温で一晩、または37℃で1乃至3時間静置することにより、ウエル内底面に蛋白質を吸着させて固相化する。
【0080】
(3)抗体
用いられる抗体は、TMEFF2またはその一部を特異的に認識するものである。このような抗体としては、例えば、TMEFF2には結合するが、他のいかなるマウスまたはヒト由来の蛋白質とも結合しないような抗体を挙げることができる。
【0081】
前記抗体は、常法を用いて(例えば、新生化学実験講座1、蛋白質1、p.389−397、1992)、抗原となるポリペプチド、あるいはそのアミノ酸配列から選択される任意のポリペプチドを動物に免疫し、生体内に産生される抗体を採取、精製することによって得ることができる。また、公知の方法(例えば、Kohler and Milstein, Nature 256, 495−497, 1975、Kennet, R. ed., Monoclonal Antibody p.365−367, 1980, Prenum Press, N.Y.)に従って、TMEFF2に対する抗体を産生する抗体産生細胞とミエローマ細胞とを融合させることによりハイブリドーマを樹立し、モノクローナル抗体を得ることもできる。
【0082】
抗体を作製するための抗原としては、TMEFF2またはその少なくとも6個の連続した部分アミノ酸配列からなるポリペプチド、あるいはこれらに任意のアミノ酸配列や担体が付加された誘導体を挙げることができる。
【0083】
前記抗原ポリペプチドは本発明のTMEFF2をin vitroにて合成する、あるいは遺伝子操作により宿主細胞に産生させることによって得ることができる。具体的には、TMEFF2を発現可能なベクターに組み込んだ後、転写と翻訳に必要な酵素、基質及びエネルギー物質を含む溶液中で合成する、あるいは他の原核生物、または真核生物の宿主細胞を形質転換させることによってTMEFF2を発現させることにより、該蛋白質を得ることが出来る。
【0084】
ポリペプチドのイン・ビトロ(in vitro)合成としては、例えばロシュ・ダイアグノスティックス社製のラピッドトランスレーションシステム(RTS)が挙げられるが、これに限定されない。RTSを用いる場合を例に挙げると、目的の遺伝子をT7プロモーターにより制御される発現ベクターにクローニングし、これをin vitroの反応系に添加すると、最初に鋳型DNAよりT7RNAポリメラーゼによりmRNAが転写され、その後大腸菌溶解液中のリボソーム等により翻訳が行われ、目的のポリペプチドが反応液中に合成される(Biochemica,1, 20−23 (2001), Biochemica, 2, 28−29 (2001)。
【0085】
原核細胞の宿主としては、例えば、大腸菌(Escherichia coli)や枯草菌(Bacillus subtilis)などが挙げられる。目的の遺伝子をこれらの宿主細胞内で形質転換させるには、宿主と適合し得る種由来のレプリコンすなわち複製起点と、調節配列を含んでいるプラスミドベクターで宿主細胞を形質転換させる。また、ベクターとしては、形質転換細胞に表現形質(表現型)の選択性を付与することができる配列を有するものが好ましい。
【0086】
例えば、大腸菌としてはK12株などがよく用いられ、ベクターとしては、一般にpBR322やpUC系のプラスミドが用いられるが、これらに限定されず、公知の各種菌株、及びベクターがいずれも使用できる。
【0087】
プロモーターとしては、大腸菌においては、トリプトファン(trp)プロモーター、ラクトース(lac)プロモーター、トリプトファン・ラクトース(tac)プロモーター、リポプロテイン(lpp)プロモーター、ポリペプチド鎖伸張因子Tu(tufB)プロモーター等が挙げられ、どのプロモーターも目的のポリペプチドの産生に使用することができる。
【0088】
枯草菌としては、例えば207−25株が好ましく、ベクターとしてはpTUB228(Ohmura, K. et al. (1984) J. Biochem. 95, 87−93)などが用いられるが、これに限定されるものではない。枯草菌のα−アミラーゼのシグナルペプチド配列をコードするDNA配列を連結することにより、菌体外での分泌発現も可能となる。
【0089】
真核細胞の宿主細胞には、脊椎動物、昆虫、酵母などの細胞が含まれ、脊椎動物細胞としては、例えば、サルの細胞であるCOS細胞(Gluzman, Y. (1981) Cell 23, 175−182、ATCC CRL−1650)、マウス繊維芽細胞NIH3T3(ATCC No.CRL−1658)やチャイニーズ・ハムスター卵巣細胞(CHO細胞、ATCC CCL−61)のジヒドロ葉酸還元酵素欠損株(Urlaub, G. and Chasin, L. A. (1980) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77, 4126−4220)等がよく用いられているが、これらに限定されない。
【0090】
脊椎動物細胞の発現プロモーターとしては、通常発現しようとする遺伝子の上流に位置するプロモーター、RNAのスプライス部位、ポリアデニル化部位、及び転写終結配列等を有するものを使用でき、さらにこれは必要により複製起点を有してもよい。該発現ベクターの例としては、サイトメガロウイルス初期プロモーターを有するpCR3.1(インビトロジェン社製)、SV40の初期プロモーターを有するpSV2dhfr(Subramani, S. et al. (1981) Mol. Cell. Biol. 1, 854−864)等が挙げられるが、これに限定されない。
【0091】
宿主細胞として、COS細胞あるいはNIH3T3細胞を用いる場合を例に挙げると、発現ベクターとしては、SV40複製起点を有し、COS細胞あるいはNIH3T3細胞において自立増殖が可能であり、さらに、転写プロモーター、転写終結シグナル、及びRNAスプライス部位を備えたものを用いることができる。該発現ベクターは、DEAE−デキストラン法(Luthman, H. and Magnusson, G. (1983) Nucleic Acids Res, 11, 1295−1308)、リン酸カルシウム−DNA共沈殿法(Graham, F. L. and van der Eb, A. J. (1973) Virology 52, 456−457)、及び電気パルス穿孔法(Neumann, E. et al. (1982) EMBO J. 1, 841−845)などによりCOS細胞、あるいはNIH3T3細胞に取り込ませることができ、かくして所望の形質転換細胞を得ることができる。また、宿主細胞としてCHO細胞を用いる場合には、発現ベクターと共に、抗生物質G418耐性マーカーとして機能するneo遺伝子を発現し得るベクター、例えばpRSVneo(Sambrook, J. et al. (1989) : ”Molecular Cloning A Laboratory Manual” Cold Spring Harbor Laboratory, NY)やpSV2neo(Southern, P. J. and Berg, P. (1982) J. Mol. Appl. Genet. 1, 327−341)などをコ・トランスフェクトし、G418耐性のコロニーを選択することにより、目的のポリペプチドを安定に産生する形質転換細胞を得ることができる。
【0092】
昆虫細胞を宿主細胞として用いる場合には、鱗翅類ヤガ科のSpodoptera frugiperdaの卵巣細胞由来株化細胞(Sf−9またはSf−21)やTrichoplusia niの卵細胞由来High Five細胞(Wickham, T. J. et al, (1992) Biotechnol. Prog. I: 391−396)などが宿主細胞としてよく用いられ、バキュロウイルストランスファーベクターとしてはオートグラファ核多角体ウイルス(AcNPV)のポリヘドリン蛋白質のプロモーターを利用したpVL1392/1393がよく用いられる(Kidd, I. M. and V.C. Emery (1993) The use of baculoviruses as expression vectors. Applied Biochemistry and Biotechnology 42, 137−159)。この他にも、バキュロウイルスのP10や同塩基性蛋白質のプロモーターを利用したベクターも使用できる。さらに、AcNPVのエンベロープ表面蛋白質GP67の分泌シグナル配列を目的蛋白質のN末端側に繋げることにより、組換え蛋白質を分泌蛋白質として発現させることも可能である(Zhe−mei Wang, et al. (1998) Biol. Chem., 379, 167−174)。
【0093】
真核微生物を宿主細胞とした発現系としては、酵母が一般によく知られており、その中でもサッカロミセス属酵母、例えばパン酵母Saccharomyces cerevisiaeや石油酵母Pichia pastorisが好ましい。該酵母などの真核微生物の発現ベクターとしては、例えば、アルコール脱水素酵素遺伝子のプロモーター(Bennetzen,J. L. and Hall, B. D. (1982) J. Biol. Chem. 257, 3018−3025)や酸性フォスファターゼ遺伝子のプロモーター(Miyanohara, A. et al. (1983) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80, 1−5)などを好ましく利用できる。また、分泌型蛋白質として発現させる場合には、分泌シグナル配列と宿主細胞の持つ内在性プロテアーゼあるいは既知のプロテアーゼの切断部位をN末端側に持つ組換え体として発現することも可能である。例えば、トリプシン型セリンプロテアーゼのヒトマスト細胞トリプターゼを石油酵母で発現させた系では、N末端側に酵母のαファクターの分泌シグナル配列と石油酵母の持つKEX2プロテアーゼの切断部位をつなぎ発現させることにより、活性型トリプターゼが培地中に分泌されることが知られている(Andrew, L. Niles,et al. (1998) Biotechnol.Appl. Biochem. 28,
125−131)。
【0094】
上記のようにして得られる形質転換体は、常法に従い培養することができ、該培養により細胞内、または細胞外に目的のポリペプチドが産生される。該培養に用いられる培地としては、採用した宿主細胞に応じて慣用される各種のものを適宜選択でき、例えば、上記COS細胞であれば、RPMI1640培地やダルベッコ変法イーグル培地(以下「DMEM」という)などの培地に、必要に応じウシ胎児血清などの血清成分を添加したものを使用できる。
【0095】
上記培養により、形質転換体の細胞内または細胞外に産生される組換え蛋白質は、該蛋白質の物理的性質や化学的性質などを利用した各種の公知の分離操作法により分離・精製することができる。該方法としては、具体的には例えば、通常のタンパク沈殿剤による処理、限外濾過、分子ふるいクロマトグラフィー(ゲル濾過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などの各種液体クロマトグラフィー、透析法、これらの組合せなどを例示できる。また、発現させる組換え蛋白質に6残基からなるヒスチジンを繋げることにより、ニッケルアフィニティーカラムで効率的に精製することができる。上記方法を組み合わせることにより容易に高収率、高純度で目的とするポリペプチドを大量に製造できる。
【0096】
上記のようにして得られる抗体は、RIA法、ELISA法、蛍光抗体法、受身血球凝集反応法などの各種免疫学的測定法や免疫組織染色などに用いることができる。
【0097】
TMEFF2と特異的に結合する抗体の例として、TMEFF2と特異的に結合するモノクローナル抗体を挙げることができるが、その取得方法は、以下に記載する通りである。
【0098】
モノクローナル抗体の製造にあたっては、一般に下記のような作業工程が必要である。すなわち、
(a)抗原として使用する生体高分子の精製、
(b)抗原を動物に注射することにより免疫した後、血液を採取しその抗体価を検定して脾臓摘出の時期を決定してから、抗体産生細胞を調製する工程、
(c)骨髄腫細胞(以下「ミエローマ」という)の調製、
(d)抗体産生細胞とミエローマとの細胞融合、
(e)目的とする抗体を産生するハイブリドーマ群の選別、
(f)単一細胞クローンへの分割(クローニング)、
(g)場合によっては、モノクローナル抗体を大量に製造するためのハイブリドーマの培養、またはハイブリドーマを移植した動物の飼育、
(h)このようにして製造されたモノクローナル抗体の生理活性、及びその認識特異性の検討、あるいは標識試薬としての特性の検定、等である。
【0099】
以下、モノクローナル抗体の作製法を上記工程に沿って詳述するが、該抗体の作製法はこれに制限されず、例えば脾細胞以外の抗体産生細胞及びミエローマを使用することもできる。
【0100】
(a)抗原の精製
抗原としては、前記したような方法で調製したTMEFF2またはその一部を使用することができる。さらに、当業者に周知の方法を用いて、本発明の蛋白質の部分ペプチドを化学合成し、これを抗原として使用することもできる。
【0101】
(b)抗体産生細胞の調製
工程(a)で得られた抗原と、フロインドの完全または不完全アジュバント、またはカリミョウバンのような助剤とを混合し、免疫原として実験動物に免疫する。実験動物としては、マウスが最も好適に用いられるが、これに限定されない。
【0102】
マウス免疫の際の免疫原投与法は、皮下注射、腹腔内注射、静脈内注射、皮内注射、筋肉内注射いずれでもよいが、皮下注射または腹腔内注射が好ましい。
【0103】
免疫は、一回、または、適当な間隔で(好ましくは1週間から5週間間隔で)複数回繰返し行なうことができる。その後、免疫した動物の血清中の抗原に対する抗体価を測定し、抗体価が十分高くなった動物を抗体産生細胞の供給原として用いれば、以後の操作の効果を高めることができる。一般的には、最終免疫後3〜5日後の動物由来の抗体産生細胞を後の細胞融合に用いることが好ましい。
【0104】
ここで用いられる抗体価の測定法としては、RIA法、ELISA法、蛍光抗体法、受身血球凝集反応法など種々の公知技術があげられるが、検出感度、迅速性、正確性、及び操作の自動化の可能性などの観点から、RIA法またはELISA法がより好適である。
【0105】
本発明における抗体価の測定は、例えばELISA法によれば、以下に記載するような手順により行うことができる。まず、精製または部分精製した抗原をELISA用96穴プレート等の固相表面に吸着させ、さらに抗原が吸着していない固相表面を抗原と無関係な蛋白質、例えばウシ血清アルブミン(以下「BSA」という)により覆い、該表面を洗浄後、第一抗体として段階希釈した試料(例えばマウス血清)に接触させ、上記抗原に試料中のモノクローナル抗体を結合させる。さらに第二抗体として酵素標識されたマウス抗体に対する抗体を加えてマウス抗体に結合させ、洗浄後該酵素の基質を加え、基質分解に基づく発色による吸光度の変化等を測定することにより、抗体価を算出する。
【0106】
(c)ミエローマの調製工程
ミエローマとしては、一般的にはマウスから得られた株化細胞、例えば8−アザグアニン耐性マウス(BALB/c由来)ミエローマ株P3X63Ag8U.1(P3−U1)[Yelton, D.E. et al. Current Topics in Microbiology and Immunology, 81, 1−7(1978)]、P3/NSI /1−Ag4−1(NS−1) [Kohler, G. et al. European J. Immunology, 6, 511−519 (1976) ]、Sp2 /O−Ag14 (SP−2) [Shulman, M. et al. Nature, 276, 269−270 (1978)]、P3X63Ag8.653 (653) [Kearney, J. F. et al. J. Immunology, 123, 1548−1550 (1979)]、P3X63Ag8(X63) [Horibata, K. and Harris, A. W. Nature, 256, 495−497 (1975)]などを用いることが好ましい。これらの細胞株は、適当な培地、例えば8−アザグアニン培地[RPMI−1640培地にグルタミン、2−メルカプトエタノール、ゲンタマイシン、及びウシ胎児血清(以下「FCS」という)を加えた培地に8−アザグアニンを加えた培地] 、イスコフ改変ダルベッコ培地(Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium ;以下「IMDM」という)、またはダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s Modified Eagle Medium;以下「DMEM」という)で継代培養するが、細胞融合の3乃至4日前に正常培地[例えば、10% FCSを含むASF104培地(味の素(株)社製)]で継代培養し、融合当日に2×10以上の細胞数を確保しておく。
【0107】
(d)細胞融合
抗体産生細胞は、形質細胞、及びその前駆細胞であるリンパ球であり、これは個体のいずれの部位から得てもよく、一般には脾、リンパ節、末梢血、またはこれらを適宜組み合わせたもの等から得ることができるが、脾細胞が最も一般的に用いられる。
【0108】
最終免疫後、所定の抗体価が得られたマウスから抗体産生細胞が存在する部位、例えば脾臓を摘出し、抗体産生細胞である脾細胞を調製する。この脾細胞と工程(c)で得られたミエローマを融合させる手段として現在最も一般的に行われているのは、細胞毒性が比較的少なく融合操作も簡単なポリエチレングリコールを用いる方法である。この方法は、例えば以下の手順よりなる。
【0109】
脾細胞とミエローマとを無血清培地(例えばRPMI1640)、またはリン酸緩衝生理食塩液(以下「PBS」という)でよく洗浄し、脾細胞とミエローマの細胞数の比が5:1〜10:1程度になるように混合し、遠心分離する。上清を除去し、沈澱した細胞群をよくほぐした後、撹拌しながら1mlの50%(w/v)ポリエチレングリコール(分子量1000〜4000)を含む無血清培地を滴下する。その後、10mlの無血清培地をゆっくりと加えた後遠心分離する。再び上清を捨て、沈澱した細胞を適量のヒポキサンチン・アミノプテリン・チミジン(以下「HAT」という)液及びマウスインターロイキン−2(以下「IL−2」という)を含む正常培地(以下「HAT培地」という)中に懸濁して培養用プレート(以下「プレート」という)の各ウェルに分注し、5% 炭酸ガス存在下、37℃で2週間程度培養する。途中適宜HAT培地を補う。
【0110】
(e)ハイブリドーマ群の選択
上記ミエローマ細胞が、8−アザグアニン耐性株である場合、すなわち、ヒポキサンチン・グアニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT)欠損株である場合、融合しなかった該ミエローマ細胞、及びミエローマ細胞どうしの融合細胞は、HAT含有培地中では生存できない。一方、抗体産生細胞どうしの融合細胞、あるいは、抗体産生細胞とミエローマ細胞とのハイブリドーマは生存することができるが、抗体産生細胞どうしの融合細胞には寿命がある。従って、HAT含有培地中での培養を続けることによって、抗体産生細胞とミエローマ細胞とのハイブリドーマのみが生き残り、結果的にハイブリドーマを選択することができる。
【0111】
コロニー状に生育してきたハイブリドーマについて、HAT培地からアミノプテリンを除いた培地(以下「HT培地」という)への培地交換を行う。以後、培養上清の一部を採取し、例えば、ELISA法により抗体価を測定する。
【0112】
以上、8−アザグアニン耐性の細胞株を用いる方法を例示したが、その他の細胞株もハイブリドーマの選択方法に応じて使用することができ、その場合使用する培地組成も変化する。
【0113】
(f)クローニング
工程(b)の記載と同様の方法で抗体価を測定することにより、特異的抗体を産生することが判明したハイブリドーマを、別のプレートに移しクローニングを行う。このクローニング法としては、プレートの1ウェルに1個のハイブリドーマが含まれるように希釈して培養する限界希釈法、軟寒天培地中で培養しコロニーを回収する軟寒天法、マイクロマニュピレーターによって1個づつの細胞を取り出し培養する方法、セルソーターによって1個の細胞を分離する「ソータクローン」などが挙げられるが、限界希釈法が簡便でありよく用いられる。
【0114】
抗体価の認められたウェルについて、例えば限界希釈法によるクローニングを2〜4回繰返し、安定して抗体価の認められたものを本発明のモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ株として選択する。
【0115】
(g)ハイブリドーマ培養によるモノクローナル抗体の調製
クローニングを完了したハイブリドーマは、培地をHT培地から正常培地に換えて培養される。大量培養は、大型培養瓶を用いた回転培養、あるいはスピナー培養で行われる。この大量培養における上清を、ゲル濾過等、当業者に周知の方法を用いて精製することにより、本発明の蛋白質に特異的に結合するモノクローナル抗体を得ることができる。また、同系統のマウス(例えば、上記のBALB/c)、あるいはNu/Nuマウスの腹腔内で該ハイブリド−マを増殖させることにより、本発明のモノクローナル抗体を大量に含む腹水を得ることができる。精製の簡便な方法としては、市販のモノクローナル抗体精製キット(例えば、MAbTrap GIIキット;ファルマシア社製)等を利用することもできる。
【0116】
かくして得られるモノクローナル抗体は、TMEFF2に対して高い抗原特異性を有する。
【0117】
(h)モノクローナル抗体の検定
かくして得られたモノクローナル抗体のアイソタイプ及びサブクラスの決定は以下のように行うことができる。まず、同定法としてはオクテルロニー(Ouchterlony)法、ELISA法、またはRIA法が挙げられる。オクテルロニー法は簡便ではあるが、モノクローナル抗体の濃度が低い場合には濃縮操作が必要である。一方、ELISA法またはRIA法を用いた場合は、培養上清をそのまま抗原吸着固相と反応させ、さらに第二次抗体として各種イムノグロブリンアイソタイプ、サブクラスに対応する抗体を用いることにより、モノクローナル抗体のアイソタイプ、サブクラスを同定することが可能である。また、さらに簡便な方法として、市販の同定用のキット(例えば、マウスタイパーキット;バイオラッド社製)等を利用することもできる。
【0118】
さらに、蛋白質の定量は、フォーリンロウリー法、及び280nmにおける吸光度[1.4(OD280)=イムノグロブリン1mg/ml]より算出する方法により行うことができる。
【0119】
このようにして得られる本発明のモノクローナル抗体は、その特異性を利用したTMEFF2の検出や分離精製に用いることができる。
【0120】
得られた抗体をヒトに対する医薬として用いる場合、抗原性の問題からヒト型抗ヒトTMEFF2抗体を作製することが望ましい。ヒト型抗ヒトTMEFF2抗体の作製は、次に述べるような手法により得ることができる。即ち、▲1▼ヒト末梢血あるいは脾臓から採取したヒトリンパ球をin vitroでIL−4存在下、抗原であるヒトTMEFF2で感作し、感作したヒトリンパ球をマウスとヒトとのヘテロハイブリドーマであるK/B(ATCC CRL1823)と細胞融合させることにより目的の抗体産生ハイブリドーマをスクリーニングする。得られた抗体産生ハイブリドーマが生産する抗体は、ヒト型抗ヒトTMEFF2モノクローナル抗体である。これらの抗体の中からヒトTMEFF2の活性を中和する抗体を選別する。しかしながら、このようにヒトリンパ球をin vitroで感作する方法では、一般的に抗原に対して高親和性の抗体を得るのは困難である。従って、ヒトTMEFF2に高親和性のモノクローナル抗体を得るには、上記のようにして得られた低親和性のヒト型抗ヒトTMEFF2モノクローナル抗体を抗親和化する必要がある。それには、上記のようにして得られ、中和抗体であるものの低親和性であるヒト型抗ヒトTMEFF2モノクローナル抗体のCDR領域(特にCDR−3)にランダム変異を導入し、これをファージで発現させてヒトTMEFF2を固相化したプレートを用いてファージディスプレー法により、抗原であるヒトTMEFF2に強力に結合するファージを選択し、そのファージを大腸菌で増やし、その塩基配列から高親和性を有するCDRのアミノ酸配列を決定すればよい。このようにして得られたヒト型抗ヒトTMEFF2モノクローナル抗体をコードする遺伝子を一般的に使用されている哺乳動物細胞用発現ベクターに組み込んで、発現させることによりヒト型抗ヒトTMEFF2モノクローナル抗体が得られる。これらの中から、ヒトTMEFF2の生物活性を中和し、かつ高親和性である目的のヒト型抗TMEFF2モノクローナル抗体を選別することができる。また、▲2▼Balb/cマウスを用いて、本発明と同じように常法(Kohler et al.: Nature 256, p.495−497, 1975)によりマウス型抗ヒトTMEFF2モノクローナル抗体を作製し、ヒトTMEFF2の生物活性を中和し、かつ高親和性を有するモノクローナル抗体を選択する。この高親和性マウス型抗ヒトTMEFF2モノクローナル抗体のCDR−領域(CDR−1、2および3)をヒトIgGのCDR領域に移植するCDR−grafting(Winter and Milstein: Nature 349, p293−299, 1991)の手法を駆使することによりヒト型化が可能である。上記に加え、さらに▲3▼ヒト抹消血リンパ球をSevere combined immune deficiency(SCID)マウスに移植し、この移植されたSCIDマウスはヒト型抗体を生産する(Mosier D. E. et al.: Nature 335, p256−259, 1988; Duchosal M. A. et al.: Nature 355, p258−262, 1992)ので、抗原としてヒトTMEFF2を抗原として感作し、スクリーニングすることにより、ヒトTMEFF2に特異的なヒト型モノクローナル抗体を生産するリンパ球をそのマウスから採取することができる。得られたリンパ球を前述のヒト型抗体の作製法▲1▼と同様に、マウスとヒトとのヘテロハイブリドーマであるK/B(ATCC CRL1823)と細胞融合させ、得られたハイブリドーマをスクリーニングすることにより、目的のヒト型モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得ることができる。このようにして得られたハイブリドーマを培養することにより、目的のヒト型モノクローナル抗体を大量に製造でき、上述の方法と同様に精製することにより精製品を得ることができる。また、目的のヒト型モノクローナル抗体をコードする遺伝子(cDNA)をクローニングし、この遺伝子を遺伝子工学的手法により適当なベクターに組み込み、各種動物細胞、混注細胞、あるいは大腸菌などを宿主として発現させることにより、遺伝子組換えヒト型モノクローナル抗体を大量に製造することができる。得られた培養液から上述と同様の方法により精製することにより、精製されたヒト型モノクローナル抗体を大量に得ることができる。更に、上述の方法で得られた抗TMEFF2モノクローナル抗体の中から、TMEFF2の生物活性を中和する抗体を得ることができる。これらTMEFF2の生物活性を中和する抗体は、生体内でのTMEFF2の生物活性、即ち、細胞の癌化を阻害することから、医薬として、特に癌に対する治療及び/または予防剤として期待される。in vitroでの抗TMEFF2抗体によるTMEFF2の生物活性の中和活性は例えば、TMEFF2を過剰発現している細胞における細胞の癌化の抑制活性で測定することができる。例えば、TMEFF2を過剰発現しているマウス繊維芽細胞株NIH3T3を培養し、培養系に種々の濃度で抗TMEFF2抗体を添加し、フォーカス形成、コロニー形成及びスフェロイド増殖に対する抑制活性を測定することができる。in vivoでの実験動物を利用した抗TMEFF2抗体の癌に対する治療及び/または予防効果は、例えば、TMEFF2を過剰に発現しているトランスジェニック動物に同TMEFF2抗体を投与し、癌細胞の変化を測定することができる。
【0121】
このようにして得られたTMEFF2の生物活性を中和する抗体は、医薬として特に癌の治療治療及び/または予防を目的とした医薬組成物として、あるいはこのような疾患の免疫学的診断のための抗体として有用である。本発明の抗体は製剤化して経口的あるいは非経口的に投与することができる。本発明抗体を含む製剤は、TMEFF2を認識する抗体を有効成分として含有する医薬組成物として、ヒトあるいは動物に対し安全に投与されるものである。医薬組成物の形態としては、点滴を含む注射剤、坐剤、経鼻剤、舌下剤、経皮吸収剤などが挙げられる。モノクローナル抗体は高分子蛋白質であることから、バイアル瓶などのガラス容器や注射筒などへの吸着が著しい上に不安定であり、種々の物理化学的因子、例えば、熱、pH及び湿度とうにより容易に失活する。従って、安定な形で製剤化するために、安定化剤、pH調整剤、緩衝剤、可溶化剤、界面活性剤などを添加する。安定化剤としてはグリシン、アラニン等のアミノ酸類、デキストラン40及びマンノース等の糖類、ソルビトール、マンニトール、キシリトール等の糖アルコール等が挙げられ、またこれらの二種以上を併用してもよい。これらの安定化剤の添加量は、抗体の重量にたいして0.01〜100倍、特に0.1〜10倍添加するのが好ましい。これら安定化剤を加えることにより、液状製剤あるいは凍結乾燥製剤の保存安定性を向上することができる。緩衝剤としては、例えばリン酸バッファー、クエン酸バッファー等が挙げられる。緩衝剤は、液状製剤あるいは凍結乾燥製剤の再溶解後の水溶液のpHを調製し、抗体の安定性、溶解性に寄与する。緩衝剤の添加量としては、例えば液状製剤あるいは凍結乾燥製剤を採用解した後の水量に対し、1〜10mMとするのが好ましい。界面活性剤としては、好ましくはポリソルベート20、プルロニックF−68、ポリエチレングリコール等、特に好ましくはポリソルベート80が挙げられ、またこれらの2種以上を併用してもよい。抗体のような高分子蛋白質は容器の材質であるガラスや樹脂などに吸着しやすい。従って、界面活性剤を添加することによって、液状製剤あるいは凍結乾燥製剤の再溶解後の抗体の、容器への吸着を防止することができる。界面活性剤の添加量としては、液状製剤あるいは凍結乾燥製剤の再溶解後の水重量に対して0.001〜1.0%添加することが好ましい。以上のような安定化剤、緩衝剤、あるいは吸着防止剤を加えて本発明抗体の製剤を調製することができるが、特に医療用または動物用注射剤として用いる場合は、浸透圧として許容される浸透圧比は1〜2が好ましい。浸透圧比は、製剤化に際して塩化ナトリウムの増減により調製することができる。製剤中の抗体含量は、適用疾患、適用投与経路などに応じて適宜調整することができ、ヒトに対するヒト型抗体の投与量は、抗体のヒトTMEFF2に対する親和性、即ち、ヒトTMEFF2に対する解離定数(Kd値)に対し、親和性が高い(Kd値が低い)ほど、ヒトへの投与量を少なく薬効を発揮することができる。ヒト型抗TMEFF2抗体をヒトに対して投与する際には、約0.1〜100mg/kgを1〜30日間に1回投与すればよい。
【0122】
(4)検出
上記(3)記載の方法で得られる抗体は、それを直接標識するか、または該抗体を一次抗体とし、該抗体を特異的に認識する(抗体を作製した動物由来の抗体を認識する)標識二次抗体と協同で検出に用いられる。
【0123】
標識の種類として好ましいものは酵素(アルカリホスファターゼまたは西洋ワサビペルオキシダーゼ)またはビオチン(ただし二次抗体のビオチンにさらに酵素標識ストレプトアビジンを結合させる操作が加わる)であるが、これらに限定されない。標識二次抗体(または標識ストレプトアビジン)を使用する方法のための、予め標識された抗体(またはストレプトアビジン)は種々のものが市販されている。RIAの場合はI125等の放射性同位元素で標識された抗体を用い、測定は液体シンチレーションカウンター等を用いて行う。
【0124】
これら標識された酵素の活性を検出することにより、抗原であるポリペプチドの量が測定される。アルカリホスファターゼまたは西洋ワサビペルオキシダーゼの場合、それら酵素の触媒により発色する基質や発光する基質が市販されている。
【0125】
発色する基質を用いた場合、ウエスタンブロット法やドット/スロットブロット法においては目視で検出できる。ELISA法においては、好ましくは市販のマイクロプレートリーダーを用いて各ウエルの吸光度(測定波長は基質により異なる)を測定することにより定量する。また好ましくは上記(3)において抗体作製のために使用した抗原の希釈系列を調製し、これを標準抗原試料として他の試料と同時に検出操作を行って、標準抗原濃度と測定値をプロットした標準曲線を作成することにより、他の試料中の抗原濃度を定量することが可能である。
【0126】
一方、発光する基質を使用した場合は、ウエスタンブロット法やドット/スロットブロット法においてはX線フィルムまたはイメージングプレートを用いたオートラジオグラフィーや、インスタントカメラを用いた写真撮影により検出することができ、デンシトメトリーやモレキュラー・イメージャーFxシステム(バイオラッド社製)等を利用した定量も可能である。また、ELISA法で発光基質を用いる場合は、発光マイクロプレートリーダー(例えば、バイオラッド社製等)を用いて酵素活性を測定する。
【0127】
(5)測定操作
i)ウエスタンブロット、ドットブロットまたはスロットブロットの場合
まず、抗体の非特異的吸着を阻止するため、予めメンブレンをそのような非特異的吸着を阻害する物質(スキムミルク、カゼイン、ウシ血清アルブミン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン等)を含む緩衝液中に一定時間浸しておく操作(ブロッキング)を行う。ブロッキング溶液の組成は、例えば5% スキムミルク、0.05乃至0.1% ツイーン20を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)またはトリス緩衝生理食塩水(TBS)が用いられる。スキムミルクの代わりに、ブロックエース(大日本製薬)、1乃至10%のウシ血清アルブミン、0.5乃至3%のゼラチンまたは1%のポリビニルピロリドン等を用いてもよい。ブロッキングの時間は、4℃で16乃至24時間、または室温で1乃至3時間である。
【0128】
次に、メンブレンを0.05乃至0.1% ツイーン20を含むPBSまたはTBS(以下「洗浄液」という)で洗浄して余分なブロッキング溶液を除去した後、上記(3)記載の方法で作製された抗体をブロッキング溶液で適宜希釈した溶液中に一定時間浸して、抗体をメンブレン上の抗原に結合させる。このときの抗体の希釈倍率は、例えば上記3)記載の組換え抗原を段階希釈したものを試料とした予備のウエスタンブロッティング実験を行って決定することができる。この抗体反応操作は、好ましくは室温で2時間行う。抗体反応操作終了後、メンブレンを洗浄液で洗浄する。ここで、用いた抗体が標識されたものである場合は、ただちに検出操作を行うことができる。未標識の抗体を用いた場合には、引き続いて二次抗体反応を行う。標識二次抗体は、例えば市販のものを使用する場合はブロッキング溶液で2000乃至20000倍に希釈して用いる(添付の指示書に好適な希釈倍率が記載されている場合は、その記載に従う)。一次抗体を洗浄除去した後のメンブレンを二次抗体溶液に室温で45分乃至1時間浸し、洗浄液で洗浄してから、標識方法に合わせた検出操作を行う。洗浄操作は、例えばまずメンブレンを洗浄液中で15分間振盪してから、洗浄液を新しいものに交換して5分間振盪した後、再度洗浄液を交換して5分間振盪することにより行う。必要に応じてさらに洗浄液を交換して洗浄してもよい。
【0129】
ii)ELISA/RIA
まず、上記(2)の方法で試料を固相化させたプレートのウェル内底面への抗体の非特異的吸着を阻止するため、ウエスタンブロットの場合と同様、予めブロッキングを行っておく。ブロッキングの条件については、ウエスタンブロットの項に記載した通りである。
【0130】
次に、ウェル内を0.05乃至0.1% ツイーン20を含むPBSまたはTBS(以下「洗浄液」という)で洗浄して余分なブロッキング溶液を除去した後、上記(3)記載の方法で作製された抗体を洗浄液で適宜希釈した溶液を分注して一定時間インキュベーションし、抗体を抗原に結合させる。このときの抗体の希釈倍率は、例えば上記(3)記載の組換え抗原を段階希釈したものを試料とした予備のELISA実験を行って決定することができる。この抗体反応操作は、好ましくは室温で1時間程度行う。抗体反応操作終了後、ウェル内を洗浄液で洗浄する。ここで、用いた抗体が標識されたものである場合は、ただちに検出操作を行うことができる。未標識の抗体を用いた場合には、引き続いて二次抗体反応を行う。標識二次抗体は、例えば市販のものを使用する場合は洗浄液で2000乃至20000倍に希釈して用いる(添付の指示書に好適な希釈倍率が記載されている場合は、その記載に従う)。一次抗体を洗浄除去した後のウェルに二次抗体溶液を分注して室温で1乃至3時間インキュベーションし、洗浄液で洗浄してから、標識方法に合わせた検出操作を行う。洗浄操作は、例えばまずウェル内に洗浄液を分注して5分間振盪してから、洗浄液を新しいものに交換して5分間振盪した後、再度洗浄液を交換して5分間振盪することにより行う。必要に応じてさらに洗浄液を交換して洗浄してもよい。
【0131】
また本発明において、いわゆるサンドイッチ法のELISAは例えば以下に記載する方法により実施することができる。まず、TMEFF2のアミノ酸配列のいずれか一つにおいて、親水性に富む領域を2箇所選んで、それぞれの領域中のアミノ酸6残基以上からなる部分ペプチドを合成し、該部分ペプチドを抗原とした2種類の抗体を取得する。このうち一方の抗体を上記(4)記載のように標識しておく。標識しなかった方の抗体は、上記(2)記載の方法に準じて96穴ELISA用プレートのウェル内底面に固相化する。ブロッキングの後、試料液をウェル内に入れて常温で1時間インキュベーションする。ウェル内を洗浄後、標識した方の抗体希釈液を各ウェルに分注してインキュベーションする。再びウェル内を洗浄後、標識方法に合わせた検出操作を行う。
【0132】
(6)リガンド
抗体の他に、TMEFF2に特異的に結合する基質、補酵素、調節因子等のリガンドを用いることによってもTMEFF2を定量することができる。
【0133】
(7)判定
以上に記載した方法で、被験者または被験動物から採取した検体と、正常人または正常動物から採取した検体との間で検出結果を比較し、その結果上記(3)記載の方法で作製された抗体またはリガンドが特異的に結合するポリペプチドの量を各TMEFF2の発現量として、正常個体にTMEFF2の発現量が増加している場合に腫瘍を有している可能性が高いと判定することができる。
6.TMEFF2の機能
このようにしてTMEFF2遺伝子を利用して遺伝子工学的手法により得られるTMEFF2の生理機能は以下のような ウイルスを用いた発現実験で調べることができる。
【0134】
TMEFF2遺伝子を例えばPCR法で増幅し、アデノウイルス用発現ベクターあるいはレトロウイルスベクターに組み込む。その際に市販のキットを用いることもできる(例えば、アデノウイルス・エクスプレッション・ベクター・キット(宝酒造社製)やRetro−X System(クロンテック社製))。こうして得られたウイルスを例えば、糖尿病マウス(例えばBalb/cマウス(日本クレア社))に尾静脈より接種し、コントロールとして上記TMEFF2遺伝子を含まないアデノウイルスを摂取したマウスとの間で血中のALT値(アラニン アミノ トランスフェラーゼ値)、腫瘍マーカー遺伝子の発現量を測定する。また、マウスより各種組織を取り出して、組織の状態を調べる、この際、組織特異的なプロモーター(例えば、ラットプロバシンプロモーター(Greenbergら、Mol Endocrinol(1994) p.230−239)、マウス乳癌ウイルスプロモーター(Wynshaw−Boris, Cancer Handbook 2 (2002)、Nature Publishing Group、London、p.891−902等)を用いたときには該遺伝子が特異的に発現する組織を取り出して組織の状態を調べる。コントロールに比べ測定値に差が見られるとTMEFF2の生理機能を把握することができる。
7.癌の検出方法
TMEFF2は細胞の癌化及び/または癌細胞の増殖に関与しており、癌細胞で高い発現が認められると考えられる。したがって、TMEFF2が過剰に発現している細胞においてTMEFF2の発現量を抑制する物質は細胞の癌化を抑制し、また、癌細胞の増殖を抑制すると考えられる。なお、「検体」とは、被験者や臨床検体、被験動物等から得られた、血液、体液、前立腺、精巣、陰茎、膀胱、腎臓、口腔、咽頭、口唇、舌、歯肉、鼻咽頭、食道、胃、小腸、大腸、結腸、肝臓、胆嚢、膵臓、鼻、肺、骨、軟部組織、皮膚、乳房、子宮、卵巣、脳、甲状腺、リンパ節、筋肉、脂肪組織等の組織または排泄物等の試料を意味するが、本発明においては前立腺がより好ましい。
【0135】
本発明において、正常人及び正常動物とは、癌を有さない人及び動物を意味する。正常人あるいは正常動物であるか否かは、TMEFF2の濃度を測定し、あらかじめ正常人の値として決められている数値範囲に入るか否かで判定することもできる。TMEFF2の発現量と、正常人または正常動物の癌の形成度の相関をあらかじめ調べておくことによって、被験者または被験動物から採取した検体におけるTMEFF2の発現量を測定することによって被験者または被験動物が、正常人または正常動物であるか否かを判定することができる。
【0136】
7.1 TMEFF2遺伝子を利用した癌の検出方法
TMEFF2を利用した癌の検出方法は、具体的には、7.1.1または7.1.2に記載するとおりである。
【0137】
7.1.1 以下の工程1)乃至4)を含む:
1)被験者または被験動物より採取した検体より、全RNAを抽出する工程;
2)上記1)に記載の検体由来の全RNAと正常人または正常動物より採取した検体より抽出した全RNAの間における、TMEFF2遺伝子の発現量の差を検出する工程;
3)上記2)に記載の遺伝子の発現量の差を解析し、上記1)に記載の被験者または被験動物の癌を検出する工程。
【0138】
7.1.2 以下の工程1)乃至4)を含む:
1)被験者または被験動物より採取した検体より、全RNAを抽出する工程;
2)正常人または正常動物より採取した検体より、全RNAを抽出する工程;
3)上記1)に記載の全RNAと上記2)に記載の全RNAの間におけるTMEFF2遺伝子の発現量の差を検出する工程;
4)上記3)に記載の遺伝子の発現量の差を解析し、上記1)に記載の被験者または被験動物の癌を検出する工程。
【0139】
7.1.3 ここで、7.1.1の工程1)及び7.1.2の工程1)及び工程2)における全RNAの抽出は上記、「1.TMEFF2遺伝子の取得」の項に示した方法にしたがって実施することができ、抽出された全RNAはさらに精製してmRNAとして使用することが望ましい。また、7.1.1の工程2)及び7.1.2の工程3)におけるTMEFF2遺伝子の発現量の測定も上記、「2 TMEFF2遺伝子の発現」の項に記載の方法や、特に遺伝子チップ、cDNAアレイ等の固相化試料を用いた核酸ハイブリダイゼーションやRT−PCRを用いて実施することが望ましい。
【0140】
7.1.5 判定
7.1.1の工程3)及び7.1.2の工程4)における癌の検出は、発現量の差を総合的に評価して行なうことが望ましい。なお、「発現量の差」は、被験者または被験動物由来の検体と、正常人または正常動物由来の検体におけるTMEFF2の発現量を定量的に比較できる限り、発現量差であっても発現量比であってもよい。
【0141】
上記分析の結果、被験者または被験動物から採取した検体由来の試料と、正常人または正常動物由来の試料との間で測定結果を比較し、TMEFF2の発現量が正常人または正常動物より高い場合、癌を有すると判断することができる。
7.2 TMEFF2を利用した癌の検出方法
本発明のTMEFF2を利用した癌の検出方法は、具体的には以下の7.2.1、7.2.2、7.2.3または7.2.4からなる。
【0142】
7.2.1 以下の工程1)乃至2)を含む:
1)被験者または被験動物から採取した検体における、TMEFF2の発現量を該蛋白質に特異的に結合する抗体またはリガンドを用いて検出する工程;
2)上記1)で検出された蛋白質の発現量と正常人または正常動物から採取した検体における該蛋白質の発現量の差を解析し、上記1)における被験者または被験動物の癌を検出する工程。
【0143】
7.2.2 以下の工程1)乃至3)を含む:
1)被験者または被験動物より採取した検体における、TMEFF2の発現量を該蛋白質に特異的に結合する抗体またはリガンドを用いて検出する工程:
2)正常人または正常動物より採取した検体における、上記1)に記載の蛋白質の発現量を該蛋白質に特異的に結合する抗体またはリガンドを用いて検出する工程:
3)上記1)に記載の蛋白質の発現量と上記2)に記載の蛋白質の発現量の差を解析し、上記1)に記載の被験者または被験動物の癌を検出する工程。
【0144】
7.2.3 以下の工程1)乃至3)を含む:
1)被験者または被験動物より採取した検体より得た全蛋白質を固相化する工程;
2)上記1)に記載の固相化蛋白質における、TMEFF2の発現量を該蛋白質に特異的に結合する抗体またはリガンドを用いて検出する工程;
3)上記2)で検出された蛋白質の発現量と正常人または正常動物より採取した検体より得た全蛋白質における該蛋白質の発現量の差を解析し、上記1)における被験者または被験動物の癌を検出する工程。
【0145】
7.2.4 以下の工程1)乃至5)を含む、癌の検出方法:
1)被験者または被験動物より採取した検体より得た全蛋白質を固相化する工程;
2)正常人または正常動物より採取した検体より得た全蛋白質を固相化する工程;
3)上記1)に記載の固相化蛋白質における、TMEFF2の発現量を該蛋白質に特異的に結合する抗体またはリガンドを用いて検出する工程:
4)上記2)に記載の固相化蛋白質における、上記3)で発現量を測定した蛋白質の発現量を該蛋白質に特異的に結合する抗体またはリガンドを用いて測定する工程;
5)上記3)で検出した蛋白質の発現量と上記4)で検出した蛋白質の発現量の差を解析し、上記1)に記載の被験者または被験動物の癌を検出する工程。
8.TMEFF2遺伝子及び/またはTMEFF2検出用キット
TMEFF2遺伝子及び/またはTMEFF2は、以下の1)乃至5)からなる群から選択される少なくとも一つ以上を含むキットを用いて検出することができる。
1)配列表の配列番号1、3、5乃至7からなる群から選択されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドを特異的に増幅するための15乃至30塩基長の連続したオリゴヌクレオチドプライマー;
2)配列表の配列番号1、3、5乃至7からなる群から選択されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドにストリンジェントな条件でハイブリダイズし、該ポリヌクレオチドを検出するための15ヌクレオチド以上の連続したポリヌクレオチドプローブ;
3)配列表の配列番号1、3、5乃至7からなる群から選択されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドが固定された固相化試料;
4)配列表の配列番号2、4、6乃至8からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる蛋白質に特異的に結合し、該蛋白質を検出するための抗体;
5)上記4)に記載の抗体に結合し得る二次抗体。
【0146】
前記1)記載のプライマーは、TMEFF2遺伝子のヌクレオチド配列(配列表の配列番号1、3、5乃至7のいずれか一つ)に基づき市販のプライマー設計ソフト(たとえば、Wisconsin GCG package Version 10.2)を用いる等、常法により容易に設計し、増幅することができる。このようなプライマーとしては例えば、配列表の配列番号1に記載のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドを増幅するためには配列表の配列番号9に示されるヌクレオチド配列からなるオリゴヌクレオチドと配列表の配列番号10に示されるヌクレオチド配列からなるオリゴヌクレオチドの組み合わせを使用することができる。また、前記2)に記載のプローブは、TMEFF2に特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、100乃至1500塩基長、好ましくは300乃至600塩基長である。これらのプライマーやプローブは、適当な標識によりラベル(例えば、酵素標識、放射性標識、蛍光標識等)されていてもよく、また、リンカーを付加していてもよい。
【0147】
上記3)に記載の固相化試料は、上記2)に記載のプローブをガラス板、ナイロンメンブレン等の固相に固定することにより作製される。このような固相化試料の作成方法については、既に「4.癌形成マーカー遺伝子」の項中、「(1)固相化試料を用いた解析方法」の項で説明した通りであり、例えば、遺伝子チップ、cDNAアレイ、オリゴアレイ、メンブレンフィルター等を挙げることができる。
【0148】
本発明のキットには、更に耐熱性DNAポリメラーゼ、dNTP(dATP、dCTP、dGTP、dTTPの混合物)及び緩衝液を含めることもできる。耐熱性DNAポリメラーゼとしてはTaq DNAポリメラーゼ、LA Taq DAN polymerase(宝酒造社製)、Tth DNAポリメラーゼ、PfuDNAポリメラーゼなどが例示できる。緩衝液は使用するDNAポリメラーゼに応じて選ばれ、必要に応じてMg2+などが添加されている。
【0149】
前記、4)及び5)に記載の抗体は3.2に記載した方法により作製することができる。該抗体は、適当な標識によりラベル(例えば、酵素標識、放射性標識、蛍光標識等)されていてもよい。
【0150】
本発明のキットはTMEFF2遺伝子及び/またはTMEFF2の検出に用いることができ、癌の有無の判定や、癌の増殖を抑制する物質のスクリーニングにも用いることができる。
9.癌の治療効果及び/または予防効果を有する物質のスクリーニング方法
TMEFF2遺伝子またはTMEFF2の少なくとも一つの発現量を測定することによって癌に対して治療及び/または予防効果を有する物質のスクリーニングをすることができる。
【0151】
なお、「被験物質」とは、本発明のスクリーニング方法で癌の増殖抑制活性を調べる対象となる物質をいう。被験物質としては、化合物、微生物の代謝産物、植物や動物組織の抽出物、それらの誘導体またはそれらの混合物等が挙げられる。また、TMEFF2の発現量を低下するように設計された核酸またはその誘導体(アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、RNAi等を含む)を、被験物質として使用することも可能である。被験物質の投与量や濃度は適宜設定するか、または例えば希釈系列を作成するなどして複数種の投与量を設定してもよく、固体、液体等適当な状態で投与することができ、適当なバッファーに溶解したり、安定化剤等を加えてもよい。培養細胞を用いるスクリーニング方法の場合には、培地に添加して培養することができる。培地に添加する場合には培養開始時から添加してもよいし、培養途中で添加しても良く、また、添加の回数も1回に限らない。被験物質存在下で培養する期間も適宜設定してよいが、好ましくは30分乃至2週間であり、より好ましくは、30分乃至48時間である。哺乳動物個体に被験物質を投与する場合は、被験物質の物性等により経口投与、静脈注射、腹腔内注射、経皮投与、皮下注射等の投与形態を使い分ける。また、癌に直接塗布または注射することもできる。なお被験物質の投与から、検体を得るまでの時間は適当に選択することができる。
【0152】
本発明のスクリーニング方法において用いられる培養細胞は、TMEFF2を発現する哺乳動物細胞であればよく、例えば、マウス繊維芽細胞由来細胞株NIH3T3細胞、ヒト前立腺癌細胞株LnCaP、マウス、ラット及びヒト遊離脂肪細胞、マウス、ラット及びヒト初代肝細胞等を挙げることができるがこれらに限定されない。培養細胞哺乳動物種としては、ヒト、マウスまたはハムスターが好ましく、ヒトまたはマウスがより好ましいが、これらに限定されない。なお、培養細胞としてはTMEFF2を過剰発現している哺乳動物細胞を用いるのがより好ましく、例えばTMEFF2遺伝子をそのプロモーター領域とともに導入し、TMEFF2を過剰発現するNIH3T3細胞などを挙げることができる。
【0153】
本発明のスクリーニング方法には、培養細胞を用いず、哺乳動物個体に被験物質を投与して、その後該動物個体から摘出されたその臓器または組織細胞における本発明のTMEFF2遺伝子の発現を検出する方法も含まれる。遺伝子発現の検出対象となる臓器または組織は、TMEFF2を発現するものであればよいが、好ましくは癌が発生している組織である。哺乳動物種としては非ヒト哺乳動物を用いることができ、マウス、ラットまたはハムスターが好ましく、マウスまたはラットがより好ましい。なお、ヒト、サル、マウスまたはラット由来の腫瘍を皮下、皮内あるいは腹腔等に移植した腫瘍モデル動物である、担癌動物(ヒト癌株を移植したヌードマウス、同種移植マウスなど)、あるいは、癌を自然発生する系統の動物(天然に同定された動物及び遺伝子改変動物を含む。例えば、p53ノックアウトマウス(Donehowerら、Nature(1992)、356巻、p.215−221)、Mycトランスジェニックマウス(Adamsら、Nature(1985)、318巻、p.533−538)、TRAMPマウス(Fosterら、 Cancer Res.(1997)、57巻、p.3325−3330)などを用いることもできる。更に、TMEFF2を過剰発現させた動物を用いることもできる。また、癌誘発処置を行なった動物を用いることもできる。
【0154】
本発明の方法において用いられる培養細胞は、被験物質を添加しない場合にはTMEFF2を発現可能な条件であれば、いかなる条件で培養してもよい。例えば、該培養細胞について公知の培養条件が知られており、該条件下において該細胞がTMEFF2を発現する場合は、該条件で培養してもよい。また、哺乳動物個体から摘出した臓器または組織におけるTMEFF2の発現を検出する場合における、該動物の飼育条件も、被験物質を添加しない場合にTMEFF2を発現可能な条件であればよい。
【0155】
なお、被験物質の、TMEFF2遺伝子の発現に対する影響を調べるためには、TMEFF2遺伝子の発現量を測定する方法と、TMEFF2遺伝子の翻訳産物である、TMEFF2の発現量を測定する方法がある。
【0156】
培養細胞からの、全RNAの抽出、TMEFF2遺伝子の発現量の測定、TMEFF2の発現量の測定については、上記「1.TMEFF2遺伝子の取得」、「4.腫瘍マーカー遺伝子」及び「5.腫瘍マーカー蛋白質」の項に記載した方法に従って行うことができる。
【0157】
9.1 TMEFF2遺伝子を用いる方法
本発明のスクリーニング方法としては例えば、哺乳動物由来培養細胞を用いる方法、及び哺乳動物個体を用いる方法についてそれぞれ以下のようになる。
【0158】
A)哺乳動物由来培養細胞を用いる方法
A−1)以下の工程1)乃至3)を含む。
1)被験物質を添加した培地で培養した哺乳動物由来培養細胞より、全RNAを抽出する工程;
2)1)由来の全RNAと被験物質を添加しないで培養した哺乳動物培養細胞由来全RNAの間における、TMEFF2遺伝子の発現量の差を検出する工程;
3)TMEFF2遺伝子の発現量の差を解析し、被験物質の、癌に対する治療、及び/または予防効果を判定する工程。
【0159】
A−2)以下の工程1)乃至4)を含む。
1)被験物質を添加した培地で培養した哺乳動物由来培養細胞より、全RNAを抽出する工程;
2)被験物質を添加しない培地で培養した哺乳動物由来培養細胞より、全RNAを抽出する工程;
3)1)由来の全RNAと2)由来の全RNAの間における、TMEFF2遺伝子の発現量の差を検出する工程;
4)3)に記載のTMEFF2遺伝子の発現量の差を解析し、被験物質の癌に対する治療、及び/または治療効果を判定する工程。
【0160】
B)哺乳動物個体を用いる方法
B−1)以下の工程1)乃至3)を含む。
1)被験物質を投与した哺乳動物より採取した検体より、全RNAを抽出する工程;
2)1)由来の全RNAと被験物質を投与しなかった動物より採取した検体より得た全RNAの間における、TMEFF2遺伝子の発現量の差を検出する工程;3)2)に記載のTMEFF2遺伝子の発現量の差を解析し、被験物質の癌に対する治療、及び/または予防効果を判定する工程。
【0161】
B−2)以下の工程1)乃至4)を含む。
1)被験物質を投与した哺乳動物より採取した検体より、全RNAを抽出する工程;
2)被験物質を投与しなかった哺乳動物より採取した検体より、全RNAを抽出する工程;
3)1)由来の全RNAと2)由来の全RNAの間における、TMEFF2遺伝子の発現量の差を検出する工程;
4)3)に記載のTMEFF2遺伝子の発現量の差を解析し、被験物質の癌に対する治療及び/または予防効果を判定する工程。
【0162】
9.2 TMEFF2を用いる方法
TMEFF2の発現量を測定することを利用したスクリーニング方法については哺乳動物培養細胞を用いた方法と動物個体を用いた方法についてそれぞれ以下の工程を含む。
【0163】
A)哺乳動物由来培養細胞を用いる方法
A−1)以下の工程1)及び2)を含む:
1)被験物質を添加した培地で培養した哺乳動物由来培養細胞における、TMEFF2の発現量をTMEFF2に特異的に結合する抗体またはリガンドを用いて検出する工程;
2)1)で検出されたTMEFF2の発現量と、被験物質を添加しない培地で培養した哺乳動物由来培養細胞における該蛋白質の発現量の差を解析し、被験物質の癌に対する治療効果及び/または予防効果を判定する工程。
【0164】
A−2)以下の工程1)乃至3)を含む:
1)被験物質を添加した培地で培養した哺乳動物由来培養細胞における、TMEFF2の発現量を該蛋白質に特異的に結合する抗体またはリガンドを用いて検出する工程;
2)被験物質を添加しない培地で培養した哺乳動物由来培養細胞における、上記1)に記載のTMEFF2の発現量を該蛋白質に特異的に結合する抗体またはリガンドを用いて検出する工程;
3)上記1)で検出されたTMEFF2の発現量と、2)で検出されたTMEFF2の発現量の差を検出し、被験物質の癌に対する治療効果及び/または予防効果を判定する工程。
【0165】
A−3)以下の工程1)乃至3)を含む:
1)被験物質を添加した培地で培養した哺乳動物由来培養細胞から得た全蛋白質を固相化する工程;
2)上記固相化蛋白質における、本発明のTMEFF2の発現量を該蛋白質に特異的に結合する抗体またはリガンドを用いて検出する工程;
3)上記2)で検出されたTMEFF2の発現量と、被験物質を添加しない培地で培養した哺乳動物由来培養細胞から得た全蛋白質における該蛋白質の発現量の差を解析し、被験物質の癌に対する治療効果及び/または予防効果を判定する工程。
【0166】
A−4)以下の工程1)乃至5)を含む:
1)被験物質を添加した培地で培養した哺乳動物由来培養細胞から得た全蛋白質を固相化する工程;
2)被験物質を添加しない培地で培養した哺乳動物由来培養細胞から得た全蛋白質を固相化する工程;
3)上記1)に記載の固相化蛋白質におけるTMEFF2の発現量を該蛋白質に特異的に結合する抗体またはリガンドを用いて測定する工程;
4)上記2)に記載の固相化蛋白質におけるTMEFF2の発現量を該蛋白質に特異的に結合する抗体またはリガンドを用いて測定する工程;
5)3)で測定された蛋白質の発現量と、4)で測定された蛋白質の発現量の差を解析し、被験物質の、癌に対する治療効果及び/または予防効果を判定する工程。
【0167】
B)哺乳動物個体を用いる方法
B−1)以下の工程1)及び2)を含む:
1)被験物質を投与された哺乳動物個体より採取した検体における、TMEFF2タンパクの発現量を該蛋白質に特異的に結合する抗体またはリガンドを用いて検出する工程;
2)1)で検出されたTMEFF2の発現量と、被験物質を投与されなかった哺乳動物個体から採取した検体における該蛋白質の発現量の差を解析し、被験物質の癌に対する治療効果及び/または予防効果を判定する工程。
【0168】
B−2)以下の工程1)乃至3)を含む:
1)被験物質を投与された哺乳動物個体より採取した検体における、TMEFF2の発現量を該蛋白質に特異的に結合する抗体またはリガンドを用いて検出する工程;
2)被験物質を投与されなかった哺乳動物個体より採取した検体における、該蛋白質の発現量を該蛋白質に特異的に結合する抗体またはリガンドを用いて検出する工程;
3)1)で検出されたTMEFF2の発現量と、2)で検出されたTMEFF2の発現量の差を解析し、被験物質の癌に対する治療効果及び/または予防効果を判定する工程。
【0169】
B−3)以下の工程1)乃至3)を含む:
1)被験物質を投与された哺乳動物個体より採取した検体中の全蛋白質を固相化する工程;
2)上記固相化蛋白質における、TMEFF2の発現量を該蛋白質に特異的に結合する抗体またはリガンドを用いて検出する工程;
3)2)で検出されたTMEFF2の発現量と、被験物質を投与されなかった哺乳動物個体より採取した検体中における該蛋白質の発現量の差を解析し、被験物質の癌に対する治療及び/または予防効果を判定する工程。
【0170】
B−4)以下の工程1)乃至5)を含む:
1)被験物質を投与された哺乳動物個体より採取した検体中の全蛋白質を固相化する工程;
2)被験物質を投与されなかった哺乳動物個体より採取した検体中の全蛋白質を固相化する工程;
3)上記1)に記載の固相化蛋白質における、TMEFF2の発現量を該蛋白質に特異的に結合する抗体またはリガンドを用いて検出する工程;
4)上記2)に記載の固相化蛋白質における、TMEFF2の発現量を該蛋白質に特異的に結合する抗体またはリガンドを用いて検出する工程;
5)上記3)で検出されたTMEFF2の発現量と、上記4)で検出されたTMEFF2の発現量の差を解析し、被験物質の癌に対する治療効果及び/または予防効果を判定する工程。
【0171】
9.3 その他の方法
A)TMEFF2を過剰発現させた哺乳動物個体に被験物質を投与した場合と投与しなかった場合について、経時的に癌の発生率、癌の大きさ、及び/または生存率等を測定する。被験物質を投与した哺乳動物で癌の発生率が有意に低下している、癌の大きさが有意に小さい、及び/または、生存率が約10%以上、好ましくは約30%以上、より好ましくは、約50%以上上昇した場合に、被験物質は癌に対して癌に対する治療及び/または予防効果を有する化合物として選択することができる。
10.直接相互作用する物質の探索
本発明の他の一つの態様としては、TMEFF2の活動を抑制するような物質を得ることを目的とした、該蛋白質の立体構造をベースとしたドラッグデザインの手法を含む。このような手法は、ラショナルドラッグデザイン法として知られており、酵素活性などの機能や、リガンド、コファクター、またはDNAへの結合などを効率よく阻害もしくは活性化させるような化合物の探索に利用されている。この例として、すでに上市されている抗HIV剤であるプロテアーゼの阻害剤がよく知られている。本発明のTMEFF2の三次元構造解析においても、X―線結晶解析や核磁気共鳴法といった一般的によく知られている手法が利用できると考えられる。さらに、TMEFF2の機能を抑制する物質の探索には、コンピュータードラッグデザイン(CADD)を活用した設計も可能である。この例としては、慢性関節リウマチ治療の新たなゲノム新薬として期待されているAP−1の働きを阻害する低分子化合物(国際特許出願公開WO99/58515号)などが知られている。このような方法により、TMEFF2に直接結合したり、あるいはTMEFF2と他の因子との相互作用を阻害することにより、TMEFF2の機能を抑制するような物質を得ることができる。
【0172】
さらに、他の一つの態様は、本発明のTMEFF2が会合するポリペプチド、すなわちTMEFF2のパートナー蛋白質に関する。すなわち、本発明は、TMEFF2の活性を調節するパートナー蛋白質のスクリーニング方法に関する。
【0173】
このスクリーニング方法の一つの態様は、TMEFF2に被験蛋白質試料を接触させ、TMEFF2に結合する蛋白質を選択する工程を含む。このような方法としては、例えば、精製したTMEFF2を用いて、これに結合する蛋白質のアフィニティー精製を行う方法が挙げられる。具体的な方法の一例を示せば、TMEFF2にヒスチジン6個よりなる配列をアフィニティータグとして融合したものを作製して、これを細胞の抽出液(予めニッケル−アガロースカラムにチャージして、このカラムを素通りした画分)と4℃で12時間インキュベートし、次いで、この混合物に別途ニッケル−アガロース担体を加えて4℃で1時間インキュベートする。ニッケル−アガロース担体を洗浄バッファーで十分洗浄した後、100mMイミダゾールを加えることにより、TMEFF2と特異的に結合する細胞抽出液中の蛋白質を溶出させて精製し、この構造を決定する。このようにして、TMEFF2と直接結合する蛋白質、及びTMEFF2との結合活性は持たないが、サブユニットとしてTMEFF2に直接結合する蛋白質と複合体を形成することにより間接的にTMEFF2に結合する蛋白質が精製できる[実験医学別冊、バイオマニュアルシリーズ5「転写因子研究法」pp215−219(羊土社刊)]。
【0174】
別の方法としては、ファーウエスタンブロット法[実験医学別冊、「新遺伝子工学ハンドブック」pp76−81(羊土社刊)]や、酵母や哺乳類動物細胞を用いたツーハイブリッドシステム法[実験医学別冊、「新遺伝子工学ハンドブック」pp66−75(羊土社刊)、「チェックメイト・マンマリアン・ツーハイブリッドシステム」(プロメガ社製)]によるクローニングも可能であるが、これらの方法に限定されない。
【0175】
このようにして、TMEFF2と直接もしくは間接的に相互作用するパートナー蛋白質のcDNAが得られれば、TMEFF2と該パートナー蛋白質との相互作用を阻害する物質の機能的スクリーニングに利用することができる。具体的には、例えば、TMEFF2とグルタチオンS−トランスフェラーゼとの融合蛋白質を調製して、抗グルタチオンS−トランスフェラーゼ抗体で覆ったマイクロプレートに結合させた後、ビオチン化した該パートナー蛋白質をこの融合蛋白質と接触させ、該融合蛋白質との結合をストレプトアビジン化アルカリフォスファターゼで検出する。ビオチン化した該パートナー蛋白質添加の際、被験物質も添加し、融合蛋白質と該パートナー蛋白質との結合を促進あるいは阻害する物質を選択する。この方法では、融合蛋白質に直接作用する物質または該パートナー蛋白質に直接作用する物質が得られる。
【0176】
融合蛋白質と該パートナー蛋白質との結合が間接的であり、何らかの別の因子を介しているような場合には、例えば該因子を含むような細胞抽出液存在下で、同様に上記アッセイを行う。この場合には、該因子に対して作用するような物質も選択される可能性がある。
【0177】
また、得られたパートナー蛋白質が、TMEFF2の機能を抑制する活性を有している場合には、既に記載したTMEFF2遺伝子の発現ベクターを応用した試験方法に従って、抗癌剤、例えば、前立腺癌の治療または予防剤として有用な候補物質のスクリーニングを行うことができる。また、得られたパートナー蛋白質が、TMEFF2の機能を抑制する活性を有している場合には、このような抑制因子をコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドは、癌の遺伝子治療に用いることができる。
【0178】
そのようなポリヌクレオチドは、例えば同定された阻害因子のアミノ酸配列を解析し、該アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列からなるオリゴヌクレオチドプローブを合成してcDNAライブラリーやゲノムライブラリーのスクリーニングを行うことにより取得できる。また、TMEFF2の機能の阻害活性を有するぺプチドが、ランダムに合成された人工ペプチドライブラリー由来である場合は、該ペプチドのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列からなるDNAを化学合成する。
【0179】
遺伝子治療においては、そのようにして得られた阻害因子をコードする遺伝子を、例えばウイルスベクターに組み込んで、該組換えウイルスベクターを有するウイルス(無毒化されたもの)を患者に感染させる。患者体内では抗癌因子が産生され、癌細胞の増殖抑制機能を有するので、癌の治療が可能となる。
【0180】
遺伝子治療剤を細胞内に導入する方法としては、ウイルスベクターを利用した遺伝子導入方法、あるいは非ウイルス性の遺伝子導入方法(日経サイエンス,1994年4月号,20−45頁、実験医学増刊,12(15)(1994)、実験医学別冊「遺伝子治療の基礎技術」,羊土社(1996))のいずれの方法も適用することができる。
【0181】
ウイルスベクターによる遺伝子導入方法としては、例えばレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、シンビスウイルス等のDNAウイルスまたはRNAウイルスに、TR4あるいは変異TR4をコードするDNAを組み込んで導入する方法が挙げられる。このうち、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ワクシニアウイルスを用いた方法が、特に好ましい。非ウイルス性の遺伝子導入方法としては、発現プラスミドを直接筋肉内に投与する方法(DNAワクチン法)、リポソーム法、リポフェクチン法、マイクロインジェクション法、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法等が挙げられ、特にDNAワクチン法、リポソーム法が好ましい。
【0182】
また遺伝子治療剤を実際に医薬として作用させるには、DNAを直接体内に導入するインビボ(in vivo)法及びヒトからある種の細胞を取り出し体外でDNAを該細胞に導入し、その細胞を体内に戻すエクスビボ(ex vivo)法がある(日経サイエンス,1994年4月号,20−45頁、月刊薬事,36(1),23−48(1994)、実験医学増刊, 12 (15)(1994))。
【0183】
例えば、該遺伝子治療剤がインビボ法により投与される場合は、疾患、症状等に応じ、静脈、動脈、皮下、皮内、筋肉内等、適当な投与経路により投与される。またインビボ法により投与する場合は、該遺伝子治療剤は一般的には注射剤等とされるが、必要に応じて慣用の担体を加えてもよい。また、リポソームまたは膜融合リポソーム(センダイウイルス−リポソーム等)の形態にした場合は、懸濁剤、凍結剤、遠心分離濃縮凍結剤等のリポソーム製剤とすることができる。
【0184】
配列表の配列番号1のヌクレオチド番号395乃至1519、配列番号3のヌクレオチド番号395乃至1519、配列番号5のヌクレオチド番号393乃至1433または配列番号7のヌクレオチド番号351乃至1475に示されるヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列または該配列の部分配列に相補的なヌクレオチド配列は、いわゆるアンチセンス治療に用いることができる。アンチセンス分子は、配列表の配列番号1のヌクレオチド番号395乃至1519、配列番号3のヌクレオチド番号395乃至1519、配列番号5のヌクレオチド番号393乃至1433または配列番号7のヌクレオチド番号351乃至1475示されるヌクレオチド配列の一部に相補的な、通常15乃至30merからなるDNA、もしくはそのホスホロチオエート、メチルホスホネートまたはモルフォリノ誘導体などの安定なDNA誘導体、2’−O−アルキルRNAなどの安定なRNA誘導体として用いられ得る。そのようなアンチセンス分子を、微量注入、リポソームカプセル化により、あるいはアンチセンス配列を有するベクターを利用して発現させるなど、本発明の技術分野において周知の方法で、細胞に導入することができる。このようなアンチセンス療法は、配列表の配列番号1のヌクレオチド番号395乃至1519、配列番号3のヌクレオチド番号395乃至1519、配列番号5のヌクレオチド番号393乃至1433または配列番号7のヌクレオチド番号351乃至1475に示されるヌクレオチド配列に示されるヌクレオチド配列がコードする蛋白質の活性が増加しすぎることによって引き起こされる病気の治療または予防に有用である。
【0185】
上記アンチセンスオリゴヌクレオチドを含む医薬として有用な組成物は、医薬として許容できる担体の混合などの公知の方法によって製造され得る。このような担体と製造方法の例は、Applied Antisense Oligonucleotide Technology(1998 Wiley−Liss、Inc.)に記載されている。アンチセンスオリゴヌクレオチドを含む製剤は、それ自体あるいは適宜の薬理学的に許容される、賦形剤、希釈剤等と混合し、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤若しくはシロップ剤等により経口的に、または、注射剤、坐剤、貼付剤、若しくは、外用剤等により非経口的に投与することができる。これらの製剤は、賦形剤(例えば、乳糖、白糖、葡萄糖、マンニトール、ソルビトールのような糖誘導体;トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、α澱粉、デキストリンのような澱粉誘導体;結晶セルロースのようなセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;プルランのような有機系賦形剤;及び、軽質無水珪酸、合成珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウムのような珪酸塩誘導体;燐酸水素カルシウムのような燐酸塩;炭酸カルシウムのような炭酸塩;硫酸カルシウムのような硫酸塩等の無機系賦形剤を挙げることができる。)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムのようなステアリン酸金属塩;タルク;コロイドシリカ;ビーズワックス、ゲイ蝋のようなワックス類;硼酸;アジピン酸;硫酸ナトリウムのような硫酸塩;グリコール;フマル酸;安息香酸ナトリウム;DLロイシン;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウムのようなラウリル硫酸塩;無水珪酸、珪酸水和物のような珪酸類;及び、上記澱粉誘導体を挙げることができる。)、結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、マクロゴール、及び、前記賦形剤と同様の化合物を挙げることができる。)、崩壊剤(例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、内部架橋カルボキシメチルセルロースナトリウムのようなセルロース誘導体;カルボキシメチルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドンのような化学修飾されたデンプン・セルロース類を挙げることができる。)、乳化剤(例えば、ベントナイト、ビーガムのようなコロイド性粘土;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムのような金属水酸化物;ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウムのような陰イオン界面活性剤;塩化ベンザルコニウムのような陽イオン界面活性剤;及び、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルのような非イオン界面活性剤を挙げることができる。)、安定剤(メチルパラベン、プロピルパラベンのようなパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコールのようなアルコール類;塩化ベンザルコニウム;フェノール、クレゾールのようなフェノール類;チメロサール;デヒドロ酢酸;及び、ソルビン酸を挙げることができる。)、矯味矯臭剤(例えば、通常使用される、甘味料、酸味料、香料等を挙げることができる。)、希釈剤等の添加剤を用いて周知の方法で製造される。
【0186】
本発明の化合物を患者へ導入する方法については、上記に加えてコロイド分散系を用いることができる。コロイド分散系は化合物の生体内の安定性を高める効果や、特定の臓器、組織または細胞へ化合物を効率的に輸送する効果が期待される。コロイド分散系は、通常用いられるものであれば限定しないが、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、及び水中油系の乳化剤、ミセル、混合ミセル及びリポソームを包含する脂質をベースとする分散系を挙げる事ができ、好ましくは、特定の臓器、組織または細胞へ化合物を効率的に輸送する効果のある、複数のリポソーム、人工膜の小胞である(Mannino et al.,Biotechniques,1988,6,682;Blume and Cevc,Biochem.et Biophys.Acta,1990,1029,91;Lappalainen et al.,Antiviral Res.,1994,23,119;Chonn and Cullis,Current Op.Biotech.,1995,6,698 )。
0.2−0.4 μmのサイズ範囲をとる単膜リポソームは、巨大分子を含有する水性緩衝液のかなりの割合を被包化し得、化合物はこの水性内膜に被胞化され、生物学的に活性な形態で脳細胞へ輸送される(Fraley et al.,Trends Biochem.Sci.,1981,6,77 )。リポソームの組成は、通常、脂質、特にリン脂質、とりわけ相転移温度の高いリン脂質を1種またはそれ以上のステロイド、特にコレステロールと通常複合したものである。リポソーム生産に有用な脂質の例は、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、スフィンゴ脂質、ホスファチジルエタノールアミン、セレブロシド及びガングリオシドのようなホスファチジル化合物を包含する。特に有用なのはジアシルホスファチジルグリセロールであり、ここでは脂質部分が14−18の炭素原子、特に16−18の炭素原子を含有し、飽和している(14−18の炭素原子鎖の内部に二重結合を欠いている)。代表的なリン脂質は、ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン及びジステアロイルホスファチジルコリンを包含する。
【0187】
リポソームを包含するコロイド分散系の標的化は、受動的または能動的のいずれかであってもよい。受動的な標的化は、洞様毛細血管を含有する臓器の網内系細胞へ分布しようとするリポソーム本来の傾向を利用することによって達成される。一方、能動的な標的化は、例えば、ウイルスの蛋白質コート(Morishita etal.,Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.),1993,90,8474 )、モノクローナル抗体(またはその適切な結合部分)、糖、糖脂質または蛋白質(またはその適切なオリゴペプチドフラグメント)のような特定のリガンドをリポソームへ結合させること、または天然に存在する局在部位以外の臓器及び細胞型への分布を達成するためにリポソームの組成を変えることによってリポソームを修飾する手法等を挙げる事ができる。標的化されたコロイド分散系の表面は様々なやり方で修飾され得る。リポソームで標的したデリバリーシステムでは、脂質二重層との緊密な会合において標的リガンドを維持するために、リポソームの脂質二重層へ脂質基が取込まれ得る。脂質鎖を標的リガンドと結びつけるために様々な連結基が使用され得る。本発明のオリゴヌクレオチドのデリバリーが所望される細胞の上に支配的に見出される特定の細胞表面分子に結合する標的リガンドは、例えば、(1)デリバリーが所望される細胞によって支配的に発現される特定の細胞受容体と結合している、ホルモン、成長因子またはその適切なオリゴペプチドフラグメント、または(2)標的細胞上で支配的に見出される抗原性エピトープと特異的に結合する、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体、またはその適切なフラグメント(例えば、Fab ;F (ab’)2 )、であり得る。2 種またはそれ以上の生物活性剤は、単一のリポソーム内部で複合し、投与することもできる。内容物の細胞内安定性及び/または標的化を高める薬剤をコロイド分散系へ追加することも可能である。
【0188】
その使用量は症状、年齢等により異なるが、経口投与の場合には、1回当り下限1mg(好適には、30mg)、上限2000mg(好適には、1500mg)を、注射の場合には、1回当り下限0.1mg(好適には、5mg)、上限1000mg(好適には、500mg)を皮下注射、筋肉注射または静脈注射によって投与することができる。
【0189】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、下記実施例において、遺伝子操作に関する各操作は特に明示がない限り、「モレキュラークローニング(Molecular Cloning)」[Sambrook, J.,Fritsch, E.F.およびManiatis, T. 著、Cold Spring Harbor Laboratory Pressより1989年に発刊]に記載の方法により行うか、または、市販の試薬やキットを用いる場合には市販品の指示書に従って使用した。
実施例1 ヒトTMEFF2 cDNAクローンの取得
a)全RNAの単離
ヒト前立腺癌細胞株LNCaP(American Tissue Culture Collection ATCC No.:CRL−1740)を、10%牛胎児血清(FCS:Hyclone社製)を含むRPMI1640培地(旭テクノグラス社製)を用いて、75cmの組織培養フラスコ(住友ベークライト社製:MS−23250)中で培養した。コンフルエント(confluent)にならないよう注意しつつ5%CO、37℃条件下で培養し、対数増殖期のうちにトリプシン−EDTA溶液(シグマ社製)を用いて組織培養フラスコより剥がし回収しその一部を新しい組織培養フラスコに移して継代培養した。全RNAの単離は、対数増殖期のヒト前立腺癌細胞株LNCaPを集め、添付プロトコールに従ってTRIzol(インビトロジェン社製)を用いて行なった。
b)ファーストストランドcDNA合成
Omniscript Reverse Transcriptase(キアゲン社製)を用いて、その添付プロトコールに従って実施例1a)で得た全RNAから、ファーストストランドcDNAを合成した。なお、反応は20μlの容量で行った。
【0190】
c)PCR反応
TMEFF2 cDNAをPCRで増幅するためのプライマーとして
5’−caccatggtgctgtgggagt−3’(プライマー1:配列表の配列番号9)及び、5’−ttagattaacctcgtggacgct−3’(プライマー2:配列表の配列番号10)の配列を有するオリゴヌクレオチドを常法に従って合成した。なお、プライマー1はTMEFF2遺伝子の開始コドン上流にKozak配列として4塩基、CACCを付加したオリゴヌクレオチドであり、配列表の配列番号1のヌクレオチド番号395乃至410からなるヌクレオチド配列の5’側に4塩基配列(CACC)付加した塩基配列からなるオリゴヌクレオチドである。このCACC配列は、クローニングベクターpENTR/SD/D−TOPOへの組み込みの際にベクター3’末端と相補鎖を形成するため、遺伝子の方向性を保持したベクターへの組み込みを可能としている。プライマー2は配列表の配列番号1のヌクレオチド番号1498乃至1519ならなるヌクレオチド配列の相補鎖からなるオリゴヌクレオチドである。
PCR反応はProofStart DNA Polymerase(キアゲン社製)を添付プロトコールに従って用いて行った。具体的には、得られたファーストストランドcDNA 1μlに100pmol/μlの濃度の合成プライマー1と合成プライマー2をそれぞれ0.5μl、10X ProofStartPCR Buffer 5μl、10mM dNTP Mixを1.5μl、ProofStart DNA Polymerase 2μl、滅菌精製水29.5μlを添加し、50μlのPCR反応溶液を作製した。PCR反応は、GeneAmp PCR System 9700(アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)社製)により行なった。まず95℃で5分加熱した後、引き続き94℃で30秒、57℃で30秒、72℃で4分の温度サイクルを35回繰り返し、最後に72℃で20分間保温してから、4℃に保存した。目的cDNAは、反応物を1%のアガロースゲルで電気泳動し、TMEFF2 cDNA(1125bp)の増幅を確認後、QIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン社製)をその添付プロトコールに従って用いることによりアガロースゲルよりDNAを精製した。精製されたTMEFF2 cDNAの濃度は、吸光光度計(Gene Spec I:日立計測器サービス社製)により測定した。
d) TMEFF2 cDNAのpENTER/SD/D−TOPOベクターへのクローニング
pENTR Directional TOPO Cloning Kits (インビトロジェン社製)を添付プロトコールに従って用い、実施例1c)によって得られたTMEFF2 cDNAをpENTR/SD/D−TOPOベクターにクローニングした。TMEFF2 cDNAを、キット付属の反応バッファー中でTopoisomeraseを結合させてあるpENTR/SD/D−TOPOベクターと混合し室温で5分間インキュベートした。得られた反応物を用いて大腸菌OneShot TOP10 Chemically Competent E.coli(インビトロジェン社製)を形質転換し、50μg/mlのカナマイシンを含むLB寒天培地上で培養した。その結果カナマイシン耐性を示して生育してきた大腸菌コロニーを選択して、0.3mlの50μg/mlのカナマイシンを含む液体LB培地中で37℃で一晩培養し、BIO ROBOT9600(キアゲン社製)を利用することによりプラスミドDNAを単離精製した。得られたプラスミドDNAについて、ABI PRISM 3700 DNA Analyzer(アプライド・バイオシステムズ社製)によりヌクレオチド配列解析を行ない、GenBank アクセッション番号 AF179274に示されるヌクレオチド配列のOpen ReadingFrameを有するcDNA(配列表の配列番号1)が、pENTR/SD/D−TOPOベクターに組み込まれていることを確認した。
e)レトロウイルスベクターpLNCXへのクローニング
GATEWAY Vector Conversion System(インビトロジェン社製)に含まれるDNA断片、Reading Frame Cassette Aを、RetroXpress System(クロンテック社製)に含まれるレトロウイルスベクターpLNCX(図1)のHpaI部位に、プラスミド上のCMVプロモーターに対し順方向に挿入し、改変ベクターpLNCX−GWを作製した。LR CLONASE Enzyme Mix(インビトロジェン社製)を添付のプロトコールに従って用い、pENTR/SD/D−TOPOベクターにクローニングしたTMEFF2 cDNAをpLNCX−GWに移し換えた組換えベクターを作製した。この組換えベクターで大腸菌OneShot TOP10 Chemically Competent E.coliを形質転換し、50μg/mlのアンピシリンを含むLB寒天培地上で培養した。その結果アンピシリン耐性を示して生育してきた大腸菌コロニーを選択して、0.3mlの50μg/mlのアンピシリンを含む液体TBG培地中で37℃で一晩培養後、増殖した大腸菌クローンを150mlの容量の50μg/mlのアンピシリンを含むLB培地中で一晩培養し、この培養液よりEndo Free Plasmid Maxi Kits(キアゲン社製)を添付のプロトコールに従って用いて、プラスミドを精製した。このプラスミドをpLNCX−GW−TMEFF2と命名した。本プラスミドの挿入遺伝子がTMEFF2 cDNAであることは、制限酵素による消化後のDNA断片の長さをアガロース電気泳動で検定することで確認した。
実施例2 TMEFF2遺伝子発現レトロウイルスの作製とTMEFF2安定発現細胞株の樹立
a)細胞株とその継代培養
パッケージング細胞株293−10A1(IMGENEX社製)及びマウス繊維芽細胞株NIH3T3(American Tissue Culture Collection)の培養は、10%牛胎児血清(FCS:Hyclone社製)を含むRPMI1640培地(旭テクノグラス社製)を用いて、25、75乃至225cmの組織培養フラスコ(コーニング・コスター社製あるいは住友ベークライト社製)中で行った。コンフルエント(confluent)にならないよう注意しつつ5%CO、37℃条件下で培養し、対数増殖期のうちにトリプシン−EDTA溶液(シグマ社製)を用いて組織培養フラスコより剥がし回収しその一部を新しい組織培養フラスコに移して継代培養した。
b)遺伝子発現レトロウイルスの作製と安定発現株の樹立
I型コラーゲンをコートしてある直径10cmの組織培養シャーレ(旭テクノグラス社製)に293−10A1細胞を2x10個ずつまき、10mlの10%FCS含有RPMI1640培地中で一晩培養した。培養上清を新鮮なRPMI1640培地2mlに交換した後、Lipofectamine 2000(Invitrogen社製)を添付のプロトコールに従い用いてpLNCX−GW−TMEFF2ベクター約10μgを遺伝子導入した。6時間培養後、20%FCS含有RPMI1640培地を6ml加えさらに一晩培養した。培養液を新鮮な20%FCS含有RPMI1640培地に交換し、さらに24時間培養することでウイルスを産生させた。ウイルスを含む培養上清を回収し、ポアサイズ0.45μmのフィルター(MILLEX−HV:ミリポア社製)でろ過し、ろ液に2倍量の新鮮な10%FCS含有RPMI1640培地及び最終濃度8μg/mlのポリブレン(Polybrene、別名:Hexadimethrine bromide)(シグマ社製)を加え混合しウイルス感染溶液を調製した。1.2x10個ずつのNIH3T3細胞をまいて一晩培養した組織培養シャーレ(430293:コーニング・コスター社製)にこのウイルス感染溶液を添加し細胞をこのウイルスに感染させた。この感染の手順を12時間ごとに4回繰り返した。さらに、3日間培養後、非感染細胞すなわち目的遺伝子の発現がない細胞を除去するために、培養液をGeneticin(インビトロジェン社製)を500μg/ml含む10%FCS含有RPMI1640培地に交換した。引き続き2〜3日間に1回、培養液を新鮮なGeneticin含有培地に交換し7日間培養を継続することにより、目的遺伝子を安定発現する細胞株を樹立した。本細胞株における目的遺伝子の発現は、pLNCX−GWに挿入した断片を増幅しうるプライマーセット、
5’−ccaaaatgtcgtaacaactc−3’(プライマー3:配列表の配列番号:11)
5’−gaccttgatctgaacttctc−3’(プライマー4:配列表の配列番号:12)
を用いたRT−PCRによって確認した。プライマー3及びプライマー4はpLNCXヌクレオチド配列に基づいて設計されたオリゴヌクレオチドであり、pLNCXに挿入されたDNA断片を増幅することができる。
実施例3 フォーカス形成試験
実施例2で樹立したTMEFF2遺伝子安定発現株及び遺伝子導入を行なわなかったNIH3T3細胞株を、トリプシン−EDTA処理により回収し、新鮮培養液で2回洗浄したのち、新鮮培養液で細胞懸濁液を調整し1ウェル当り約1,000個ずつ100μlの容量で96ウェルプレート(コーニング−コスター社製3598)に分注した。同様のウェルをそれぞれ6つずつ作製した。37℃、5%CO条件下14日間培養した後1ウェル当りのフォーカス(Focus)数を測定した。
その結果、対照とした遺伝子を導入しなかったNIH3T3細胞株では、1ウェルあたりそれぞれ0.5±0.5(平均±標準偏差)個しかフォーカスを検出できなかったのに対し、TMEFF2を発現させた細胞では44.3±5.1(平均±標準偏差)個のフォーカスが検出され(表1)、TMEFF2がフォーカス形質を顕著に惹起する活性を有することが強く示唆された。
【0191】
【表1】
Figure 2004113151
【0192】
実施例4 コロニー形成試験
樹立したTMEFF2遺伝子安定発現株及び対照として非遺伝子導入親株を、トリプシン−EDTA処理により回収し、新鮮培地で2回洗浄したのち、1ウェル当り50,000個の各細胞を、約38〜39℃に暖め、液状化してある0.33%Bactoagar及び20%FCS含有RPMI1640 1mlに懸濁し、これをすばやくあらかじめ0.66%Bactoagar(Difco社製)及び20%FCS含有RPMI1640を分注固化してある12ウェルプレート(3512:コーニングーコスター社製)に全量分注した。同様のウェルをそれぞれ3つずつ作製した。室温で30分放置し、Bactoagarを完全に固化させたのち、37℃、5%CO条件下、17日間培養した後、形成された軟寒天中の増殖コロニー数を測定した
培養後の顕微鏡観察像(ニコン社製DIAPHOTO300)を図2に示す。対照としたNIH3T3親株では1ウェルあたり2.0±2.0(平均±標準偏差)個しかコロニーを検出できなかったのに対し、TMEFF2を発現させた細胞では1543.0±691.8(平均±標準偏差)個のコロニーが検出され(表2)、TMEFF2がコロニー形成を誘発する活性を有することが強く示唆された。
【0193】
【表2】
Figure 2004113151
【0194】
実施例5 スフェロイド(spheroid)増殖試験
樹立したTMEFF2遺伝子安定発現株及び遺伝子を導入しなかったNIH3T3親株を、トリプシン−EDTA処理により回収し、新鮮培養液で2回洗浄したのち、新鮮培養液で細胞懸濁液を調整し1ウェル当り約1,000個ずつ200μlの容量で細胞非付着性96ウェルプレート(スフェロイド96U:住友ベークライト社製MS−0096S)に分注した。同様のウェルをそれぞれ3つずつ作製した。37℃、5%CO条件下培養し、培養開始1、4、5、6、7、8、11日後にプレート上に形成される球状細胞塊(スフェロイド;spheroid)を、顕微鏡(ニコン社製DIAPHOTO300)下、接眼方眼ミクロメータ(三啓社製:S−6)を使用して観察しその直径を測定した。
【0195】
その結果を表2及び図3に示す。対照とした親株では、スフェロイド直径は一定のままであり、非付着性プレート上でのスフェロイド状態での増殖能は全く認められなかったのに対し、TMEFF2を発現させた細胞では、顕著なスフェロイド直径の増加が継時的に観察された。このことからTMEFF2が、NIH3T3細胞のスフェロイド状態での増殖を誘発することが強く示唆された。
【0196】
【表3】
Figure 2004113151
【0197】
【発明の効果】
本発明により、ヒトTMEFF2を用いて、癌細胞を製造することが可能となり、さらに癌の特異的検出も可能となった。また、TMEFF2遺伝子を標的とした阻害剤を開発することにより、癌に対する治療及び/または予防効果の極めて高い新規抗癌剤のスクリーニングが可能となった。更に、TMEFF2に特異的に結合する抗体は癌の治療及び/予防剤となり得る。
【0198】
【配列表フリーテキスト】
配列番号9:TMEFF2遺伝子用のPCRプライマー
配列番号10:TMEFF2遺伝子のPCRアンチセンスプライマー
配列番号11:TMEFF2遺伝子検出用PCRセンスプライマー
配列番号12:TMEFF2遺伝子検出用PCR用アンチセンスプライマー
【0199】
【配列表】
Figure 2004113151
Figure 2004113151
Figure 2004113151
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Figure 2004113151
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【図面の簡単な説明】
【図1】発現ベクターpLNCX。
【図2】TMEFF2発現株によるコロニー形成図。
【図3】スフェロイド増殖試験。

Claims (24)

  1. 下記の工程1)乃至2)を含むことからなる癌細胞の製造方法:1)下記の▲1▼乃至▲5▼のいずれか一つに記載のポリヌクレオチドを用いて細胞を形質転換する工程;
    ▲1▼配列表の配列番号1のヌクレオチド番号395乃至1519からなるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、
    ▲2▼配列表の配列番号3のヌクレオチド番号395乃至1519からなるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、
    ▲3▼配列表の配列番号5のヌクレオチド番号393乃至1433からなるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、
    ▲4▼配列表の配列番号7のヌクレオチド番号351乃至1475からなるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、
    ▲5▼上記▲1▼乃至▲4▼のいずれか一つに記載のポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、トランスメンブレン・プロテイン・ウィズ・EGF−ライク・アンド 2・フォリスタチン−ライク・ドメイン 2(Transmembrane protein with EGF−like and 2 follistatin−like domain 2:以下、「TMEFF2」という)と同一の生物活性を有する蛋白質をコードするヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、
    2)1)に記載の細胞より増殖能に変化が生じた細胞株を選択する工程。
  2. 細胞が、動物細胞であることを特徴とする、請求項1に記載の癌細胞の製造方法。
  3. 動物細胞が、哺乳類由来であることを特徴とする、請求項2に記載の癌細胞の製造方法。
  4. 哺乳類がヒト、サル、マウス、ラットであることを特徴とする請求項3に記載の癌細胞の製造方法。
  5. 哺乳類がヒトであることを特徴とする請求項3に記載の癌細胞の製造方法。
  6. 細胞がマウス繊維芽細胞株NIH3T3細胞であることを特徴とする請求項1に記載の癌細胞の製造方法。
  7. 組換えベクターで細胞を形質転換することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一つに記載の癌細胞の製造方法。
  8. 請求項1乃至7のいずれか一つに記載の癌細胞の製造方法によって得られた癌細胞。
  9. 請求項8に記載の癌細胞を有する非ヒト哺乳動物。
  10. 被験者または被験動物より採取した検体における下記の1)乃至10)のいずれか一つに記載のポリヌクレオチドまたは蛋白質の発現量を解析する工程を含む、癌の検出方法:
    1)配列表の配列番号1のヌクレオチド番号395乃至1519からなるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド;
    2)配列表の配列番号3のヌクレオチド番号395乃至1519からなるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド;
    3)配列表の配列番号5のヌクレオチド番号393乃至1433からなるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド;
    4)配列表の配列番号7のヌクレオチド番号351乃至1475からなるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド;
    5)上記1)乃至4)のいずれか一つに記載のポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、TMEFF2と同一の生物活性を有する蛋白質をコードするヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド;
    6)配列表の配列番号2のアミノ酸番号1乃至374のアミノ酸配列からなる蛋白質;
    7)配列表の配列番号4のアミノ酸番号1乃至374のアミノ酸配列からなる蛋白質;
    8)配列表の配列番号6のアミノ酸番号1乃至346のアミノ酸配列からなる蛋白質;
    9)配列表の配列番号8のアミノ酸番号1乃至374のアミノ酸配列からなる蛋白質;
    10)上記6)乃至9)のいずれか一つに記載の蛋白質のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、TMEFF2と同一の生物活性を有する蛋白質。
  11. 下記の工程1)乃至4)を含む、癌の検出方法:
    1)被験者または被験動物より採取した検体より、全RNA画分を抽出する工程;
    2)正常人または正常動物より採取した検体より、全RNA画分を抽出する工程;
    3)上記1)に記載の検体由来の全RNA画分と上記2)に記載の検体由来の全RNA画分の間における、下記の▲1▼乃至▲5▼のいずれか一つに記載のポリヌクレオチドの発現量の差を検出する工程;
    ▲1▼配列表の配列番号1のヌクレオチド番号395乃至1519からなるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、
    ▲2▼配列表の配列番号3のヌクレオチド番号395乃至1519からなるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、
    ▲3▼配列表の配列番号5のヌクレオチド番号393乃至1433からなるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、
    ▲4▼配列表の配列番号7のヌクレオチド番号351乃至1475からなるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、
    ▲5▼上記▲1▼乃至▲4▼に記載のポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、TMEFF2と同一の生物活性を有する蛋白質をコードするヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド;
    4)上記2)に記載のポリヌクレオチドの発現量の差を解析し、上記1)に記載の被験者または被験動物の癌を検出する工程。
  12. 下記の工程1)乃至3)を含む、癌の検出方法:
    1)被験者または被験動物から採取した検体における、下記の▲1▼乃至▲5▼のいずれか一つに記載の蛋白質の発現量を該蛋白質に特異的に結合する抗体またはリガンドを用いて検出する工程;
    ▲1▼配列表の配列番号2のアミノ酸番号1乃至374のアミノ酸配列からなる蛋白質、
    ▲2▼配列表の配列番号4のアミノ酸番号1乃至374のアミノ酸配列からなる蛋白質、
    ▲3▼配列表の配列番号6のアミノ酸番号1乃至346のアミノ酸配列からなる蛋白質、
    ▲4▼配列表の配列番号8のアミノ酸番号1乃至374のアミノ酸配列からなる蛋白質、
    ▲5▼上記▲1▼乃至▲4▼のいずれか一つに記載の蛋白質のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、TMEFF2と同一の生物活性を有する蛋白質、
    2)正常人または正常動物から採取した検体における、上記1)の▲1▼乃至▲5▼のいずれか一つに記載の蛋白質の発現量を該蛋白質に特異的に結合する抗体またはリガンドを用いて検出する工程;
    3)上記1)で検出された蛋白質の発現量と上記2)で検出された該蛋白質の発現量の差を解析し、被験者または被験動物の癌を検出する工程。
  13. 下記の工程1)乃至3)を含むことからなる、癌に対する治療効果及び/または予防効果を有する物質のスクリーニング方法:
    1)被験物質を添加した培地で培養した哺乳動物由来培養細胞より、全RNA画分を抽出する工程;
    2)上記1)由来の全RNA画分と被験物質を添加しないで培養した哺乳動物培養細胞由来全RNA画分の間における、下記の▲1▼乃至▲5▼のいずれか一つに記載のポリヌクレオチドの発現量の差を検出する工程;
    ▲1▼配列表の配列番号1のヌクレオチド番号395乃至1519からなるポリヌクレオチド、
    ▲2▼配列表の配列番号3のヌクレオチド番号395乃至1519からなるポリヌクレオチド、
    ▲3▼配列表の配列番号5のヌクレオチド番号393乃至1433からなるポリヌクレオチド、
    ▲4▼配列表の配列番号7のヌクレオチド番号351乃至1475からポリヌクレオチド、
    ▲5▼上記▲1▼乃至▲4▼に記載のポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、TMEFF2と同一の生物活性を有する蛋白質をコードするヌクレオチド配列からなるDNA。
    3)TMEFF2遺伝子の発現量の差を解析し、被験物質の、癌に対する治療効果及び/または予防効果を判定する工程。
  14. 下記の工程1)乃至4)を含むことからなる、癌の治療効果及び/または予防効果を有する物質のスクリーニング方法:
    1)被験物質を投与した哺乳動物個体より採取した検体より、全RNA画分を抽出する工程;
    2)被験物質を投与しなかった動物より採取した検体より、全RNA画分を抽出する工程;
    3)上記1)由来の全RNA画分と2)由来の全RNA画分の間における、下記の▲1▼乃至▲5▼のいずれか一つに記載のポリヌクレオチドの発現量の差を検出する工程;
    ▲1▼配列表の配列番号1のヌクレオチド番号395乃至1519からなるポリヌクレオチド、
    ▲2▼配列表の配列番号3のヌクレオチド番号395乃至1519からなるポリヌクレオチド、
    ▲3▼配列表の配列番号5のヌクレオチド番号393乃至1433からなるポリヌクレオチド、
    ▲4▼配列表の配列番号7のヌクレオチド番号351乃至1475からポリヌクレオチド、
    ▲5▼上記▲1▼乃至▲4▼に記載のポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、TMEFF2と同一生物活性を有する蛋白質をコードするヌクレオチド配列からなるDNA;
    4)上記3)に記載のポリヌクレオチドの発現量の差を解析し、被験物質の癌に対する治療効果及び/または予防効果を判定する工程。
  15. 下記の工程1)乃至3)を含むことからなる、癌の治療効果及び/または予防効果を有する物質のスクリーニング方法:
    1)被験物質を添加した培地で培養した哺乳動物由来培養細胞における、下記の▲1▼乃至▲5▼のいずれか一つに記載の蛋白質の発現量を該蛋白質に特異的に結合する抗体またはリガンドを用いて検出する工程;
    ▲1▼配列表の配列番号2のアミノ酸番号1乃至374のアミノ酸配列からなる蛋白質、
    ▲2▼配列表の配列番号4のアミノ酸番号1乃至374のアミノ酸配列からなる蛋白質、
    ▲3▼配列表の配列番号6のアミノ酸番号1乃至346のアミノ酸配列からなる蛋白質、
    ▲4▼配列表の配列番号8のアミノ酸番号1乃至374のアミノ酸配列からなる蛋白質、
    ▲5▼上記▲1▼乃至▲4▼のいずれか一つに記載の蛋白質のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、TMEFF2と同一の生物活性を有する蛋白質;
    2)被験物質を添加しない培地で培養した哺乳動物由来培養細胞における、上記1)の▲1▼乃至▲5▼のいずれか一つに記載の蛋白質の発現量を該蛋白質に特異的に結合する抗体またはリガンドを用いて検出する工程;
    3)上記1)で検出された蛋白質の発現量と、上記2)で検出された該蛋白質の発現量の差を解析し、被験物質の癌に対する治療効果及び/または予防効果を判定する工程。
  16. 下記の工程1)乃至3)を含むことからなる、癌の治療効果及び/または予防効果を有する物質のスクリーニング方法:
    1)被験物質を投与された哺乳動物個体より採取した検体における、下記の▲1▼乃至▲5▼のいずれか一つに記載の蛋白質の発現量を該蛋白質に特異的に結合する抗体またはリガンドを用いて検出する工程;
    ▲1▼配列表の配列番号2のアミノ酸番号1乃至374のアミノ酸配列からなる蛋白質、
    ▲2▼配列表の配列番号4のアミノ酸番号1乃至374のアミノ酸配列からなる蛋白質、
    ▲3▼配列表の配列番号6のアミノ酸番号1乃至346のアミノ酸配列からなる蛋白質、
    ▲4▼配列表の配列番号8のアミノ酸番号1乃至374のアミノ酸配列からなる蛋白質、
    ▲5▼上記▲1▼乃至▲4▼のいずれか一つに記載の蛋白質のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、TMEFF2と同一の生物活性を有する蛋白質;
    2)被験物質を投与されなかった哺乳動物個体より採取した検体における、上記1)の▲1▼乃至▲5▼のいずれか一つに記載の蛋白質の発現量を該蛋白質に特異的に特異的に結合する抗体またはリガンドを用いて検出する工程;
    3)上記1)で検出された蛋白質の発現量と、上記2)で検出された該蛋白質の発現量の差を解析し、被験物質の癌に対する治療効果及び/または予防効果を判定する工程。
  17. 哺乳動物培養細胞が請求項8に記載の癌細胞であることを特徴とする請求項13または15に記載のスクリーニング方法。
  18. 哺乳動物個体が請求項9に記載の非ヒト哺乳動物であることを特徴とする請求項14または16に記載のスクリーニング方法。
  19. 下記の1)乃至5)からなる群から選択される少なくとも一つ以上を含む、被験物質の癌に対する治療効果及び/または予防効果判定用、及び/または、癌の検出用、キット:
    1)配列表の配列番号1、3、5乃至7からなる群から選択されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドを特異的に増幅するための15乃至30塩基長の連続したオリゴヌクレオチドプライマー;
    2)配列表の配列番号1、3、5乃至7からなる群から選択されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドにストリンジェントな条件でハイブリダイズし、該ポリヌクレオチドを検出するための15ヌクレオチド以上の連続したポリヌクレオチドプローブ;
    3)配列表の配列番号1、3、5乃至7からなる群から選択されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドが固定された固相化試料;
    4)配列表の配列番号2、4、6乃至8からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる蛋白質に特異的に結合し、該蛋白質を検出するための抗体;
    5)上記4)に記載の抗体に結合し得る二次抗体。
  20. ポリヌクレオチドの発現量を測定する方法が、ノーザンブロット法、ドットブロット法、スロットブロット法、RT−PCR、リボヌクレアーゼ保護アッセイまたはランオン・アッセイであることを特徴とする、請求項10、11、13、14、17及び18のいずれか一つに記載の方法。
  21. ポリヌクレオチドの発現量を測定する方法が動物組織または動物細胞由来の相補的DNA群または該DNA群の各DNAの部分配列からなるDNAで作製された遺伝子チップまたはアレイを用いることを特徴とする請求項10、11、13、14、17及び18のいずれか一つに記載の方法。
  22. 蛋白質の発現量の測定方法が、ウエスタンブロット法、ドットブロット法、スロットブロット法または固相酵素免疫定量法(ELISA法)であることを特徴とする、請求項10、12、15、16、17及び18のいずれか一つに記載の方法。
  23. 下記の1)乃至5)からなる群から選択される少なくとも一つのヌクレオチド配列または該配列の部分配列に相補的なヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオオチドを含む癌の治療及び/または予防用医薬組成物:
    1)配列表の配列番号1のヌクレオチド番号395乃至1519からなるヌクレオチド配列;
    2)配列表の配列番号3のヌクレオチド番号395乃至1519からなるヌクレオチド配列;
    3)配列表の配列番号5のヌクレオチド番号393乃至1433からなるヌクレオチド配列;
    4)配列表の配列番号7のヌクレオチド番号351乃至1475からなるヌクレオチド配列:
  24. TMEFF2を特異的に認識する抗体を含有する癌の治療及び/または予防用医薬組成物。
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