JP2004112964A - ケーブル導体温度推定方法、導体温度推定システム、及び導体温度推定用記録媒体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】地表面と埋設されたケーブルとを含む所定の領域を有限要素分割し、その分割モデルに有限要素法を適用することによって導体温度を含む上記領域内の各部の温度を、所定の期間にわたり時々刻々計算するシステムにおいて、地表面における熱収支量を、当該推定対象地域における気象データを用いて計算することにより、上記ケーブル導体温度の変化を精度よく推定するように構成する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、地中に埋設される電力ケーブルの導体温度を有限要素法を用いて推定する方法及び推定するシステム、並びに推定するためのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関し、有限要素法を用いた温度解析技術の分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
地中に埋設される電力ケーブルには許容導体温度が設定されており、目標とする電流を通電したときに、導体温度がこの許容温度を超えないように、ケーブルの種類やサイズ等の仕様或いは管路の構成等を設計する必要があり、その目安として、日本電線工業会より電力ケーブル許容電流計算マニュアル(JCS168号E)が提供されている。
【0003】
しかし、このマニュアルでは、管路の周囲の土壌の熱容量や熱伝導率等の熱定数が安全サイドに設定された固定値とされており、そのため、導体温度の計算値が実際より高い値となって、徒に通電電流を制限したり、必要以上にケーブルをサイズアップするなどの無駄を生じていた。
【0004】
また、基本的には通電電流が一定の定常状態として導体温度を計算すると共に、過渡状態での計算は一定の損失率を適用することで対応するようになっているが、その際の損失率も安全サイドに設定される関係で、通電電流が変化する場合に、同じく徒に通電電流を制限したり、無駄な仕様を採用することになっていた。
【0005】
これらの問題に対し、近年、電力ケーブル線路の効率的運用等を目的として、導体温度のより高精度な推定が試みられており、その一環として、電力ケーブル通線管路に隣接して埋設された空管路内の温度と、これらの管路の周辺の土壌温度及び土壌熱定数とを測定し、これらの実測データを電力ケーブル許容電流計算マニュアルに代入してケーブル導体温度を算出するようにした発明が提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
また、管路サイズや所定の土壌熱抵抗値等を用いて求めた環境からの熱影響とケーブルへの通電電流値から求めた導体の熱流値とから管路近傍の土壌の温度変化を求め、この温度変化と土壌の各深さごとの既知の基底温度とから土壌温度を計算すると共に、この土壌温度と上記導体の熱流値とを用いて導体温度を含む管路内温度を算出し、この算出管路内温度と実際に測定した管路内温度とを比較して、上記土壌熱抵抗値や基底温度、その他の熱定数を見直すようにした発明が開示されている(特許文献2参照)。
【0007】
これらの公報に開示された発明では、いずれも、電力ケーブルを設置した管路周辺の土壌の温度や熱定数として、従来より実際に近い値が採用されることになり、ケーブル導体温度がより精度よく推定されることになる。特に、後者の発明では、上記基底温度として季節変動する温度を用いると共に、これを用いる土壌温度の計算を一日ごとに行うので、導体温度の推定の精度の更なる向上が期待できる。
【0008】
【特許文献1】特開2001−165781号公報
【特許文献2】特開2000−88666号公報
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記公報に開示された発明は、いずれも、すでに埋設された管路を対象とするものであって、土壌温度や管路内温度等を実測し、その実測データを用いることによってケーブル導体温度の推定精度を向上させようとするものであり、新たに設置する電力ケーブル線路の設計、或いは既設線路の電流増量計画等に対し、事前に導体温度をシミュレーションする場合に適用できるものではない。
【0009】
また、例えば30年間等の長期にわたって所定の増加率で通電電流を増大させるような場合に、従来のものは最終時の電流値に基づいて導体温度を計算していたので、当該線路の運用開始時点や中間時点における導体温度が徒に高く算出されると共に、運用開始時点や中間時点における通電電流の余裕度が不明であるため、これらの期間における線路の有効利用が図られなかった。
【0010】
そこで、本発明は、既設の電力ケーブル線路はもとより、計画段階の電力ケーブル線路についても、導体温度を精度よく推定することができ、特に、短期的な通電負荷パターンの変更や長期スパンにわたる通電電流の変化に対しても、推定可能な方法等を提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は次のように構成したことを特徴とする。
【0012】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、地中に埋設された電力ケーブルの導体温度を推定する方法に関するものであって、気象データから地表面の熱収支量を計算すると共に、その熱収支量と、上記ケーブルの通電負荷に対応する発熱量と、土壌を含むケーブル周辺環境の熱定数とを用い、上記ケーブルの導体温度を計算することを特徴とする。
【0013】
この方法によれば、地表面における熱収支量と、ケーブルの発熱量と、ケーブルの周辺環境を構成する管路や土壌の熱容量や熱伝導率等の熱定数とから導体温度が計算されることになる。その場合に、上記地表面における熱収支量の計算を、推定対象地域及び時期の日射量や気温、湿度等を示す気象データを用いて行うことにより、地域や時期等に応じて地表面の熱収支量が精度よく計算されることになり、ひいては、従来の固定的なデータを用いる方法に比較して、導体温度が高精度に推定されることになる。
【0014】
また、請求項2に記載の発明は、上記請求項1に記載の方法において、導体温度の計算は、ケーブルの発熱量と地表面における熱収支量とを用いて定義される熱荷重ベクトルと、土壌を含むケーブル周辺環境の熱定数を用いて定義される熱容量マトリクス及び熱伝導マトリクスとを用い、地表面とケーブルとを含む所定の領域について適用される有限要素法により、所定の初期状態から所定時間間隔で領域内の各節点温度を計算することにより行うことを特徴とする。
【0015】
この方法によれば、上記領域を構成する有限要素の各節点温度が、初期状態から所定時間間隔で順次求められることになり、初期状態からのケーブル導体を含む各部の温度の変化がシミュレーションされることになる。その場合に、境界条件として熱荷重ベクトルを構成する地表面の熱収支量が、当該推定対象地域の気象データを利用して実際に近い値に計算されるからシミュレーションの精度が向上することになり、例えば、与えられた通電負荷条件に対し、一定年後の最も気象条件が厳しい日時に導体温度が何度になるか、といった推定が精度よく行われることになる。
【0016】
一方、請求項3に記載の発明は、地中に埋設された電力ケーブルの導体温度を有限要素法を用いて推定する導体温度推定システムに関するものであって、各地域各時期の気象データを記録した気象データ記録手段と、土壌を含むケーブル周辺環境構成要素の熱定数を記録した熱定数記録手段と、ケーブルの埋設パターンを設定する埋設パターン設定手段と、ケーブルへの通電電流を設定する通電負荷設定手段と、指定された推定対象地域及び時期の気象データを上記気象データ記録手段から読み出す気象データ読出し手段と、指定された周辺環境構成要素の熱定数を上記熱定数記録手段から読み出す熱定数読出し手段と、上記気象データ読出し手段で読み出した気象データに基づいて地表面の熱収支量を算出する熱収支量算出手段と、上記通電負荷設定手段で設定された通電電流に基づいてケーブルの発熱量を算出する発熱量算出手段と、上記埋設パターン設定手段で設定されたケーブルの埋設パターンを用いて地表面及びケーブルを含む所定の解析対象領域を有限要素分割して有限要素モデルを作成するモデル作成手段と、上記熱定数読出し手段で読み出した熱定数を用いて上記解析対象領域内の各節点についての熱容量マトリクス及び熱伝導マトリクスを作成するマトリクス作成手段と、上記熱収支量算出手段で算出された地表面の熱収支量と発熱量算出手段で算出されたケーブルの発熱量とを用いて上記解析対象領域内の各節点についての熱荷重ベクトルを作成するベクトル作成手段と、上記マトリクス作成手段及びベクトル作成手段で作成された熱容量マトリクス、熱伝導マトリクス及び熱荷重ベクトルを用い、所定の初期状態から所定時間間隔で上記解析対象領域内の各節点温度を計算する節点温度計算手段とを有することを特徴とする。
【0017】
この発明に係るシステムは、上記請求項1又は2に記載の導体温度推定方法の発明を実施するためのものであり、解析対象領域を構成する有限要素の各節点温度が初期状態から所定時間間隔で順次求められ、ケーブル導体を含む上記領域内各部の温度変化がシミュレーションされることになる。その場合に、熱荷重ベクトルを構成する地表面の節点における熱収支量が推定対象地域及び時期の気象データに基づいて計算されるから、上記シミュレーションが精度よく行われることになる。
【0018】
また、請求項4に記載の発明は、上記請求項3に記載のシステムにおいて、1年間の通電電流の最高値に対する各時点の通電電流の比率を記録した通電負荷率記録手段を備え、通電負荷設定手段は、入力された通電電流の最高値と上記通電負荷率記録手段から読み出した負荷率とに基づいて各時点の通電電流を設定することを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、地表面における熱収支量が季節や1日の時刻等の当該地域における各時点に応じた気象データに基づいて計算されると同時に、ケーブルの発熱量も月、日、時刻等に応じて計算されることになり、したがって、導体温度の変化が一層精度よく推定されることになる。その場合に、1年間の通電電流の最高値に対する各時点の通電電流の比率を記録した通電負荷率記録手段が備えられているから、最高値を入力するだけで、1年間の各時点の通電負荷が設定されることになる。
【0020】
また、請求項5に記載の発明は、上記請求項4に記載のシステムにおいて、通電負荷設定手段は、通電電流の最高値を、所定の期間中、所定の特性で変化するように設定可能とされていることを特徴とする。
【0021】
この発明によれば、例えば複数年にわたる推定対象期間中、通電電流(最高値)を一定の上昇率で増大させた場合における各時点における導体温度や、最終時点における導体温度を推定することができ、最終時点の温度を制限温度以下にするための許容最高通電電流や、ケーブルのサイズ、埋設条件等を見出すことが可能となる。また、中間時点における導体温度から、各時点の許容通電電流に対する余裕度が判明し、例えば中間時点における臨時の通電が可能となるなど、電力ケーブル線路の有効利用が図られる。
【0022】
また、請求項6に記載の発明は、上記請求項5に記載のシステムにおいて、節点温度計算手段によって計算された各時点の解析対象領域内の各節点温度のうちの任意の時点の値を各節点温度の初期値とし、その時点から通電負荷設定手段で新たに設定された通電電流に基づいて各節点温度を再計算するリスタート手段を備えたことを特徴とする。
【0023】
この発明によれば、例えば複数年にわたるシミュレーション期間の途中で通電電流を変更したり、臨時の通電を行う場合等に、それ以降の新たな通電条件による導体温度の変化が計算されることになり、上記のような通電電流の変更や臨時の通電の可能性が推定されることになる。
【0024】
さらに、請求項7に記載の発明は、地中に埋設された電力ケーブルの導体温度を有限要素法を用いて推定するためのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関するものであって、各地域各時期の気象データを記録した気象データテーブルと、土壌を含むケーブル周辺環境構成要素の熱定数を記録した熱定数テーブルとが記録されていると共に、コンピュータを、ケーブルの埋設パターンを設定する埋設パターン設定手段、ケーブルへの通電電流を設定する通電負荷設定手段、指定された推定対象地域及び時期の気象データを上記気象データテーブルから読み出す気象データ読出し手段、指定された周辺環境構成要素の熱定数を上記熱定数テーブルから読み出す熱定数読出し手段、上記気象データ読出し手段で読み出した気象データに基づいて地表面の熱収支量を算出する熱収支量算出手段、上記通電負荷設定手段で設定された通電電流に基づいてケーブルの発熱量を算出する発熱量算出手段、上記埋設パターン設定手段で設定されたケーブルの埋設パターンを用いて地表面及びケーブルを含む所定の解析対象領域を有限要素分割して有限要素モデルを作成するモデル作成手段、上記熱定数読出し手段で読み出した熱定数を用いて上記解析対象領域内の各節点についての熱容量マトリクス及び熱伝導マトリクスを作成するマトリクス作成手段、上記熱収支量算出手段で算出された地表面の熱収支量と発熱量算出手段で算出されたケーブルの発熱量とを用いて上記解析対象領域内の各節点についての熱荷重ベクトルを作成するベクトル作成手段、並びに、上記マトリクス作成手段及びベクトル作成手段で作成された熱伝導マトリクス、熱容量マトリクス及び熱荷重ベクトルを用い、所定の初期状態から所定時間間隔で上記解析対象領域内の各節点温度を計算する節点温度計算手段として機能させるプログラムが記録されていることを特徴とする。
【0025】
この発明によれば、当該記録媒体をコンピュータに適用すれば、上記請求項3に記載のケーブル導体温度推定システムと同様のシステムが構成されることになり、請求項3のシステムと同様の作用が得られる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明に係る導体温度推定システムについてのものであるが、このシステムで用いられる導体温度のシミュレーション方法及びCD−ROMは、本発明に係る導体温度推定方法及び導体温度推定用記録媒体の実施の形態を構成する。
【0027】
図1は、導体温度推定システムを構成するコンピュータの構成を示すもので、このコンピュータ10は、中央処理装置11を中心として、各種条件の設定やシステムの制御等に用いられる入力装置12と、CD−ROM20の読込み装置13と、データやプログラムを記録する記録装置14と、入力画面や計算結果等を表示する表示装置15と、計算結果等を印刷する印刷装置16とを有する。
【0028】
上記CD−ROM20には、コンピュータ10の制御や計算動作のプログラムと、既存の土壌データ、管路データ、線路データ、地温データ、気象データ、及び負荷率等のデータをそれぞれ書き込んだテーブルT1〜T6とが記録されており、該CD−ROM20から上記読込み装置13によってこれらのプログラムやテーブルが読み込まれ、上記記録装置14にそれぞれ記録されるようになっている。また、この記録装置14には、上記中央処理装置11による計算結果も記録されるようになっている。
【0029】
上記土壌データテーブルT1には、図2に示すように、土壌の種類ごとに、その名前、質量密度、比熱、及び熱抵抗が記録されるようになっている。
【0030】
また、管路データテーブルT2には、図3に示すように、各種類の管路について、その名前、質量密度、比熱、及び熱抵抗が記録されるようになっている。また、このテーブルT2には、管路内空として空気の質量密度、比熱、及び熱抵抗も記録されるようになっている。
【0031】
また、線路データテーブルT3には、図4に示すように、各種類のケーブル線路について、適用電圧、種類名、心数、及びサイズをインデックスとして、線路を構成する導体、絶縁体及びシースについての外径、比熱容量、及び固有熱抵抗、並びに単位長さあたりの電気抵抗値であるRAC、シース損、及び誘電体損の各値がそれぞれ記録されるようになっている。
【0032】
また、地温データテーブルT4には、図5に東京のものを例にとって示すように、各地域ごとに、各深さの地温が月別に記録されるようになっている。
【0033】
また、気象データテーブルT5には、図6に東京のものを例にとって示すように、各地域ごとに、1年間の1時間ごとの気温、湿度、風速、日射量及び降水量の各データが記録されるようになっている。
【0034】
さらに、負荷率テーブルT6には、図7に示すように、例えば斜線で示す8月の平日の14時等の1年中で最も電気使用量が多くなる時点の通電量を1としたときの各時点の通電量の比率を、月別、曜日別(日曜、平日、土曜)、及び時間別に示したデータが記録されるようになっている。
【0035】
そして、CD−ROM20から記録装置14に読み込まれるプログラムは、上記各テーブルT1〜T6に記録されているデータと、入力装置12によって設定されるデータとに基づき、有限要素法を用いて対象地域のケーブルを含む所定の解析対象領域内各部の温度を設定された時間間隔で計算し、ケーブル導体温度の変化をシミュレーションする。
【0036】
ここで、上記プログラムによる有限要素法を用いたシミュレーションの理論的背景ないし計算方法について説明する。
【0037】
このシミュレーションは、次式、
KX(∂2θ/∂x2)+KY(∂2θ/∂y2)+Q
=ρC(∂θ/∂t) …▲1▼
で示される2次元の熱伝導方程式を基礎とする。
【0038】
この式▲1▼は、点(x,y)における各時刻tの温度θを示すものであり、KX、KYはX、Y方向の熱伝導係数、Qは単位時間、単位体積(面積)あたりの熱収支や内部発熱等に由来する熱量、ρは質量密度、Cは比熱である。
【0039】
この式▲1▼を、有限要素法の適用のためにマトリックス表示すると、
[C]・[dθ/dt]+[K]・[θ]=[Q] …▲2▼
となる。
【0040】
ここで、[C]は熱容量マトリクス、[K]は熱伝導マトリクス、[θ]は節点温度ベクトル、[dθ/dt]は節点温度の時間微分ベクトル、[Q]は熱荷重ベクトルを示し、図8に示すように、所定の解析領域を多数の要素に有限要素分割して各節点に番号1…i…j…を付したときに、熱容量マトリックス[C]を構成する項Cijは、節点i,j間の比熱容量(比熱×質量密度:J/cm3・°K)とその間における体積に関連した値の積を示し、熱伝導マトリックス[K]を構成する項Kijは、節点i,j間の各要素の熱伝導率(J/sec・cm3・°K)とその間の体積に関連した値との積を示す。
【0041】
また、熱荷重ベクトル[Q]を構成する項Qjは、地表面上の節点kの場合は、その節点によって代表される領域の地表面での単位面積、単位時間あたりの熱収支量q1(J/sec・cm2)とその面の面積Sの積を、地中内の節点については、その節点によって代表される領域における単位体積、単位時間あたりの内部発熱量q2(J/sec・cm3)とその領域の体積Vとの積をそれぞれ示すが、当該節点が地表面上になく、かつ内部発熱を伴わない領域の点である場合には、Qj=0となる。
【0042】
そして、実際のシミュレーションに際しては、上記式▲2▼に基づき、各節点の時刻tの温度θtからΔt時間後の時刻t′(=t+Δt)における温度θt′を、次式、
(2[C]t″/Δt+[K]t″)[θ]t′=
(2[C]t″/Δt−[K]t″)[θ]t +2[Q]t″ …▲3▼
に従って求めることになる。
【0043】
ここで、時刻t″は時刻tとt′の中間の時刻(=t+Δt/2)であって、この時刻t″について上記式▲2▼を示した式、
[C]t″・[dθ/dt]t″+[K]t″・[θ]t″=[Q]t″
に、
[θ]t″=([θ]t+[θ]t′)/2
[dθ/dt]t″=([θ]t′−[θ]t)/Δt
の関係を代入することにより、上記式▲3▼が得られる。
【0044】
そして、この式▲3▼において、熱容量マトリックス[C]t″を構成する各項(Cij)t″に各要素の比熱容量から求めた値を与え、熱伝導マトリックス[K]t″を構成する各項(Kij)t″に各要素の熱伝導率から求めた値を与えると共に、熱荷重ベクトル[Q]t″の各項(Qj)t″の値として、地表面上の節点には、その節点によって代表される面での時刻t″における熱の収支量を与え、導体内部の節点には、その節点によって代表される領域内での時刻t″における発熱量を与える。
【0045】
また、節点温度ベクトルの初期値[θ]t= 0として、各節点の位置(深さ)に応じた地温を各項の値とするベクトルを与え、また、節点温度の時間微分ベクトルの初期値[dθ/dt]t=0として、各項の値が0のベクトルを与え、その状態から任意の期間、時間Δtごとに節点温度ベクトル[θ]を順次算出する。
【0046】
なお、各要素の比熱容量及び熱伝導率が時間の関数として与えられるときは、上記熱容量マトリクス[C]t″の各項の値、及び熱伝導マトリックス[K]t″の各項の値は、それぞれの時間に関する関数から求められるが、時間依存性がないときは一定値が用いられる。
【0047】
一方、上記シミュレーションにおいて、熱荷重ベクトル[Q]の項Qjの値として与えられる地表面における熱収支量q1(J/sec・cm2)、及び導体内部における内部発熱量q2(J/sec・cm3)は、例えば次のように計算される。
【0048】
まず、地表面の単位時間、単位面積あたりの熱収支量q1を、
q1=日射吸収量(q11)
+大気から地表面への輻射量(q12)
−地表面から大気への輻射量(q13)
−地表面から大気への熱伝達量(q14) …▲4▼
と定義する。
【0049】
ここで、日射吸収量q11は、
q11=日射量×(1−地表面反射率)
である。
【0050】
また、大気から地表面への輻射量q12及び地表面から大気への輻射量q13は、σをステファンボルツマン定数(J/cm2・°K4)とし、εを輻射率(無次元)、Tを大気温度(°K)として、
q12,q13=σ×ε×T
で示される。
【0051】
その場合に、大気から地表面への輻射量q12については、輻射率εは、例えば、
降水量なし、かつ湿度50%未満で、ε=0.650
降水量なし、かつ湿度50%以上で、ε=0.850
降水量ありで、 ε=0.925
と設定する。
【0052】
また、地表面から大気への輻射量q13については、輻射率εは、降水量及び湿度に関係なく、
ε=0.965
と設定する。
【0053】
さらに、地表面から大気への熱伝達q14は、
q14=ρ′×Cp×D×(Tw−T)
と定義する。
【0054】
ここで、ρ′は空気密度(g/cm3)、Cpは空気の定圧比熱(J/g・°K)、Twは地表面における当該要素の温度(°K)、Tは大気温度(°K)であり、また、Dは外部拡散係数(cm/sec)であって、Uを風速として、例えば、
D=0.0027+0.031×U
と設定する。
【0055】
なお、上記の日射量、大気温度(気温)、湿度、降水量、風速は気象データテーブルT5から読み出される。また、地表面反射率はプログラムに組み込まれた一定値が用いられるが、例えば土壌データテーブルT1に地表面を構成する土壌ごとに反射率を記録しておき、それを読み出して用いるようにしてもよい。
【0056】
そして、式▲4▼で示される地表面でのトータルの熱収支量q1に、各節点によって代表される地表面の領域の面積(長さ×単位長さ)を掛けた値が、前述の式▲3▼で、熱荷重ベクトル[Q]の地表面に位置する節点についての項Qjの値として用いられる。
【0057】
また、ケーブル導体における内部発熱量q2については、
q2={I2×RAC×(1.0+シース損)+誘電体損}/S …▲5▼
と定義する。
【0058】
この式▲5▼の分子は、ケーブルの単位長さあたりの発熱量(J/sec・cm)を示し、これをケーブルの導体部分の断面積Sで割った値が、導体の単位時間、単位体積あたりの内部発熱量(J/sec・cm3)となる。
【0059】
ここで、Iは電流(A)、RACはケーブルの単位長さあたりの抵抗(Ω/cm)、シース損(無次元)及び誘電体損(W/cm)は、ケーブルを構成するシース層や絶縁体層における電磁誘導等に起因する損失を示す値であり、上記導体断面積、RAC、シース損、誘電体損は線路データテーブルT3から求められ、また、電流Iは、別途設定された値と負荷率テーブルT6とを用いて求められる。
【0060】
そして、式▲5▼で示される内部発熱量q2に、ケーブル導体内の節点によって代表される領域の体積(面積×単位長さ)を掛けた値が、前述の式▲3▼で、熱荷重ベクトル[Q]の当該節点についての項Qjの値として用いられる。
【0061】
以上により、解析領域の全節点の温度の初期値θ0を地温データテーブルT4から求めて与えれば、その後の各節点の温度θが時間Δtごとに順次計算されることになる。
【0062】
その場合に、各節点温度の初期値θ0として、上記地温データテーブルT4に予め記録されている値に代えて、当該地域及び時期において実測した値を用いてもよく、これによってシミュレーションの精度の向上が期待できる。
【0063】
次に、コンピュータ10による導体温度のシミュレーションのための操作及びこの操作に伴うコンピュータ10のシミュレーション動作について説明する。
【0064】
この操作は、図1に示すコンピュータ10にCD−ROM20をセットし、このCD−ROM20に記録されているプログラム及び各種テーブルT1〜T6を該コンピュータ10の記録装置14に読み込ませて、上記プログラムを立ち上げた状態で行われる。
【0065】
具体的には図9に示すフローチャートに従って行われ、まず、ステップS1として管路データを設定する。この設定は、図10に示すコンピュータ10の表示装置15に表示される画面W1上で行われ、この画面W1に表示されたフォームF1で、管路の埋設パターンを選択すると共に、管路の本数、各管路の中心位置及び外径等の管路の定義を行う。また、埋設パターンが埋め戻しパターンである場合には、埋め戻し部分の土壌が本来の土壌とは異なることになるので、その領域を管路周辺定義として設定する。
【0066】
さらに、有限要素法を適用する解析対象領域を自動で設定するか否かを符号aで示すチェックボックスで指示し、自動で設定しない場合はその領域の幅及び深さを入力する。自動で設定する場合は、幅は管路周辺の幅から自動計算され、深さは所定の値(例えば8m)に自動設定される。また、解析対象領域における土層の層数を入力し、層数が複数の場合は、最下層を除く各層の層厚を入力する。
【0067】
これにより、管路及びその周辺の土層を含む解析領域全体の構成が確定され、その領域を有限要素分割した有限要素法による解析用の全体モデルが自動作成される。今、例えば、管路の埋設パターンが図9に符号bで示す全体埋め戻しパターンであり、管路の本数が5本であり、土層の層数が2であって、管路周辺定義及び第1層の層厚が図10の画面W1に示すように設定されたものとすると、図11に示すように、次の画面W2のフォームF2に、領域全体が有限要素分割されてなる全体モデルが表示される。
【0068】
次に、ステップS2として、上記全体モデルが表示された図11の画面W2上で、土壌データを設定する。この画面W2に表示されるフォームF3のコンボボックスには、コンピュータ10の記録装置14に記録されている土壌データテーブルT1から読み出された土壌の名前が表示され、その中から今回の解析対象地域の土壌の名前、例えばドロマイトを選択する。このとき、フォームF4に、その土壌の名前と共に、その土壌の質量密度、比熱、及び熱抵抗等の物性が上記土壌データテーブルT1から読み出されて表示される。そして、表示データを確認し、これを解析対象地域の土壌データとして設定する。
【0069】
なお、この土壌データの設定は、フォームF2に示すモデルの場合、管路周辺の埋め戻した部分の土壌c1、領域の上層の土壌c2、及び領域の下層の土壌c3について、それぞれ行うことになる。
【0070】
次に、ステップS3として、図12に示す画面W3上で線路データを設定する。この画面W3には、上記全体モデルの管路周辺部分を拡大表示したフォームF5と、線路データ設定用のフォームF6とが表示され、フォームF6には、フォームF5に表示された各管路d1〜d5ごとに、画面W1で設定した管路外径と、これに対応する内径と、管路データテーブルT2から読み出した管路の種類の一覧が表示される。
【0071】
そして、このフォームF6上で、線路タイプとして1相布設タイプまたは3条俵積タイプのいずれかを選択し、さらに、各ケーブルの電圧を入力すると共に、線路データテーブルT3から読み出されて表示されたケーブルの種類及びサイズ(心数)の一覧から該当するものを選択する。ただし、管路内にケーブル線路が布設されていない空の状態であるときは、符号eで示すチェックボックスをオフにする。以下同様にして、各管路についての線路タイプやケーブルの種類等の設定を順次行う。
【0072】
これにより、各管路の構成が確定し、その管路が占める領域を有限要素分割した解析用の管路モデルが作成される。今、例えば、図12のフォームF6に示すように、管路番号1の管路が3条俵積タイプでケーブルが布設されるように設定され、かつ、そのケーブルの種類やサイズ等が設定されたものとすると、上記線路データテーブルT3から読み出されたそのケーブルについての導体部分、絶縁体部分及びシース部分の外径寸法を用い、3条俵積タイプで当該管路内領域が自動的に有限要素分割され、図13に示すように、次の画面W4のフォームF7にその分割状態が表示される。
【0073】
次に、ステップS4として、図14に示す画面W5上で通電負荷の条件を設定する。この画面W5のフォームF8には、先に設定した各管路d1〜d5についての番号、線路タイプ及びケーブルの種類やサイズ等が表示される。そこで、番号が表示された管路について、ケーブルに通電する最大電流を入力すると共に、年上昇を考慮するか否かを選択し、考慮する場合には年上昇率を入力する。
【0074】
また、ステップS5として、図15に示す画面W6のフォームF9上で、解析対象地域を設定する。つまり、シミュレーションを開始する月、及びシミュレーションを行う地域を設定する。これは、シミュレーション開始時に解析対象領域の全域に対する温度の初期値として、地温データテーブルT4から読み出した当該地域各深さのシミュレーション開始月の地温を与え、かつ、気象データテーブルT5から解析対象地域の気象データを読み出すためである。
【0075】
さらに、ステップS6として、図16の画面W7上で、解析パラメータを設定する。即ち、画面W7のフォームF10上で、今回のシミュレーションが初期解析であるかリスタート解析であるかを選択する。初期解析の場合は、符号fで示すフレームで、解析期間を年数または終了時刻で指定すると共に、符号g、hで示すフレームで、解析時間間隔及び計算結果の出力時間間隔を指定する。ここで、出力時間間隔は、所定時間ごとの全解析結果の出力か、別途入力する時間間隔かのいずれかを選択する。
【0076】
一方、リスタート解析の場合は、上記の設定に加えて、符号iで示すフレームで、リスタートの基礎となるプロジェクトの名称及び記録装置14内の記録場所を指定すると共に、符号jで示すフレームで、基礎となるプロジェクトの継続か中間時点からのリスタートかのいずれかを選択し、後者の場合は、リスタートする時点を指定する。また、リスタートに際して通電負荷条件を変更する場合は、図14に示す画面W5のフォームF8で、通電電流の条件を再設定することになる。なお、この場合は、画面W7のフォームF11に、リスタート時点のモデルが表示される。
【0077】
以上のようにして、すべての設定が終了すると、ステップS7として、コンピュータ10はシミュレーションを開始する。
【0078】
この動作は、前述した式▲1▼〜▲5▼で示す理論に基き、図17に示すフローチャートに従って次のように行われる。なお、以下の説明では、熱容量マトリクス[C]及び熱伝導マトリクス[K]は温度及び時間に対する依存性を有しないものとし、前述の式▲3▼における[C]t″、[K]t″の各項の値は、いずれもテーブルから読み取られるデータに基づいて算出される固定値とする。
【0079】
まずステップS11で、画面W1〜W7上で設定されたデータ、或いは記録装置14に記録されているテーブルT1〜T6から必要なデータを読み込む。
【0080】
次いでステップS12で、画面W2のフォームF2及び画面W4のフォームF7に示すように有限要素分割された全体モデル及び各管路の管路モデルについて、土壌データテーブルT1及び管路データテーブルT2から読み出した該当する土壌や管路の質量密度及び比熱のデータ、並びに線路データテーブルT3から読み出した該当するケーブルの各部の比熱容量データを用いて、全解析領域にわたる各節点間の熱容量を算出し、これを各項の値とする熱容量マトリクス[C]を作成する。
【0081】
また、ステップS13で、土壌データテーブルT1及び管路データテーブルT2から読み出した該当する土壌や管路の熱抵抗データ、及び線路データテーブルT3から読み出した該当するケーブルの各部の固有熱抵抗データを用いて、全解析領域にわたる各節点間の熱伝導率を算出し、これを各項の値とする熱伝導マトリクス[K]を作成する。
【0082】
さらに、ステップS14で、当該時点における熱荷重ベクトル[Q]t″を作成する。この熱荷重ベクトル[Q]t″の各項のうち、地表面に位置する節点に対応する項の値は、気象データベースT5から読み出した該当する地域の当該時点の気象データを用い、前述の式▲4▼に従って算出される熱収支量に基づいて設定される。
【0083】
また、ケーブルの導体内に位置する節点に対応する項については、負荷率テーブルT6から読み出した該当する月、曜日、時間の負荷率と画面W5上で設定した最大電流及び年上昇率とから当該時点の通電電流を算出すると共に、その電流値と、線路データテーブルT3から読み出した該当するケーブルのRAC、シース損及び誘電体損の各データとを用いて、前述の式▲5▼から算出される内部発熱量に基づいて設定される。
【0084】
さらに、地表面及び導体内部のいずれにも位置しない節点に対応する項の値は0とされ、これにより、現時点における熱荷重ベクトル[Q]の各項の値が設定される。そして、この熱荷重ベクトル[Q]を前述の式▲3▼における[Q]t″とする。
【0085】
以上のようにして、熱容量マトリクス[C]、熱伝導マトリクス[K]、及び熱荷重ベクトル[Q]t″が作成されると、次にステップS15で、前述の式▲3▼にこれらを代入し、時刻tでの節点温度ベクトル[θ]tから、時間Δt後の節点温度ベクトル[θ]t′を求める。つまり、温度ベクトル[θ]tの各項の値として、対応する各節点の深さに応じて、地温データテーブルT4から読み出した当該地域、当該開始月の各深さの地温を代入することにより、節点温度ベクトルの初期値[θ]t=0を作成し、また、各項の値が0の節点温度の時間微分ベクトルの初期値[dθ/dt]t=0を作成すれば、これらを基礎としてΔt時間後の温度ベクトル[θ]t′が順次計算されることになる。
【0086】
そして、ステップS16で、このΔt時間後の温度ベクトル[θ]t′を記録装置14に記録した上で、ステップS17で、所定の解析期間が終了したか否かを判定し、この期間が終了するまで、上記ステップS14〜S17を繰り返す。
【0087】
これにより、画面W7上で期間または終了時刻として設定した解析期間が終了するまで、同じく画面W7上で設定した解析時間間隔ごとに、全解析対象領域の節点の温度が求められることになる。
【0088】
そして、その解析結果が、図9のフローチャートのステップS8としてコンピュータ10の表示装置15に表示され、或いは印刷装置16によってプリントアウトされる。
【0089】
ここで、30年間のシミュレーション結果に対して、20年目からリスタートした場合のシミュレーション結果を図18、図19に示す。図18の画面W8は、1番目の管路におけるいずれかのケーブルの導体温度のリスタート後10年間の変化をグラフで示すものであり、図19の画面W9は、同じく1番目の管路のケーブルを含む内部温度の特定時点における分布を色分けして表示したものである。
【0090】
なお、図10〜図16に示すように、画面W1〜W7の上部には、図▲9▼のフローチャートのステップS1〜S6、S8のいずれかを任意に行うためのナビゲーションボタンB1〜B7が設けられており、これらのボタンを選択的にクリックすることにより、対応する画面が表示されるようになっている。
【0091】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、地中に埋設された或いは計画段階にある電力ケーブル線路の導体温度の変化を短期的に或いは長期スパンにわたって推定することが可能となると共に、特に導体温度に影響を与えるケーブル埋設個所の地表面における熱収支量を気象データを用いて計算するようにしたので、地表面における熱収支量が実際に近い値に計算されることになり、その結果、導体温度の変化が精度よく推定されることになる。
【0092】
これにより、既設の電力ケーブル線路については、その効率的運用が図られると共に、新たな線路の布設に際してはコストの削減が実現されるなどの効果が実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の全体の構成を示すシステム図である。
【図2】同実施の形態で用いられる土壌データテーブルの説明図である。
【図3】管路データテーブルの説明図である。
【図4】線路データテーブルの説明図である。
【図5】地温データテーブルの説明図である。
【図6】気象データテーブルの説明図である。
【図7】負荷率テーブルの説明図である。
【図8】熱容量マトリクス及び熱伝導マトリクスの説明図である。
【図9】解析操作の流れを示すフローチャートである。
【図10】管路データ設定画面の説明図である。
【図11】土壌データ設定画面の説明図である。
【図12】線路データ設定画面の説明図である。
【図13】有限要素分割されたモデルの表示画面の説明図である。
【図14】負荷条件設定画面の説明図である。
【図15】地域設定画面の説明図である。
【図16】解析条件設定画面の説明図である。
【図17】解析動作の流れを示すフローチャートである。
【図18】解析結果をグラフで示す画面の説明図である。
【図19】解析結果をコンター図で示す画面の説明図である。
【符号の説明】
10 コンピュータ
11 中央処理装置
14 記憶装置
20 CD−ROM
T1〜T6 テーブル
Claims (7)
- 地中に埋設された電力ケーブルの導体温度を推定する方法であって、気象データから地表面の熱収支量を計算すると共に、その熱収支量と、上記ケーブルの通電負荷に対応する発熱量と、土壌を含むケーブル周辺環境の熱定数とを用い、上記ケーブルの導体温度を計算することを特徴とするケーブル導体温度推定方法。
- 導体温度の計算は、ケーブルの発熱量と地表面における熱収支量とを用いて定義される熱荷重ベクトルと、土壌を含むケーブル周辺環境の熱定数を用いて定義される熱容量マトリクス及び熱伝導マトリクスとを用い、地表面とケーブルとを含む所定の領域について適用される有限要素法により、所定の初期状態から所定時間間隔で領域内の各節点温度を計算することにより行うことを特徴とする請求項1に記載のケーブル導体温度推定方法。
- 地中に埋設された電力ケーブルの導体温度を有限要素法を用いて推定する導体温度推定システムであって、各地域各時期の気象データを記録した気象データ記録手段と、土壌を含むケーブル周辺環境構成要素の熱定数を記録した熱定数記録手段と、ケーブルの埋設パターンを設定する埋設パターン設定手段と、ケーブルへの通電電流を設定する通電負荷設定手段と、指定された推定対象地域及び時期の気象データを上記気象データ記録手段から読み出す気象データ読出し手段と、指定された周辺環境構成要素の熱定数を上記熱定数記録手段から読み出す熱定数読出し手段と、上記気象データ読出し手段で読み出した気象データに基づいて地表面の熱収支量を算出する熱収支量算出手段と、上記通電負荷設定手段で設定された通電電流に基づいてケーブルの発熱量を算出する発熱量算出手段と、上記埋設パターン設定手段で設定されたケーブルの埋設パターンを用いて地表面及びケーブルを含む所定の解析対象領域を有限要素分割して有限要素モデルを作成するモデル作成手段と、上記熱定数読出し手段で読み出した熱定数を用いて上記解析対象領域内の各節点についての熱容量マトリクス及び熱伝導マトリクスを作成するマトリクス作成手段と、上記熱収支量算出手段で算出された地表面の熱収支量と発熱量算出手段で算出されたケーブルの発熱量とを用いて上記解析対象領域内の各節点についての熱荷重ベクトルを作成するベクトル作成手段と、上記マトリクス作成手段及びベクトル作成手段で作成された熱容量マトリクス、熱伝導マトリクス及び熱荷重ベクトルを用い、所定の初期状態から所定時間間隔で上記解析対象領域内の各節点温度を計算する節点温度計算手段とを有することを特徴とするケーブル導体温度推定システム。
- 1年間の通電電流の最高値に対する各時点の通電電流の比率を記録した通電負荷率記録手段を有し、通電負荷設定手段は、入力された通電電流の最高値と上記通電負荷率記録手段から読み出した負荷率とに基づいて各時点の通電電流を設定することを特徴とする請求項3に記載のケーブル導体温度推定システム。
- 通電負荷設定手段は、通電電流の最高値を、所定の期間中、所定の特性で変化するように設定可能とされていることを特徴とする請求項4に記載のケーブル導体温度推定システム。
- 節点温度計算手段によって計算された各時点の解析対象領域内の各節点温度のうちの任意の時点の値を各節点温度の初期値とし、その時点から通電負荷設定手段で新たに設定された通電電流に基づいて各節点温度を再計算するリスタート手段を有することを特徴とする請求項3から請求項5のいずれかに記載のケーブル導体温度推定システム。
- 地中に埋設された電力ケーブルの導体温度を有限要素法を用いて推定するための記録媒体であって、各地域各時期の気象データを記録した気象データテーブルと、土壌を含むケーブル周辺環境構成要素の熱定数を記録した熱定数テーブルとが記録されていると共に、コンピュータを、ケーブルの埋設パターンを設定する埋設パターン設定手段、ケーブルへの通電電流を設定する通電負荷設定手段、指定された推定対象地域及び時期の気象データを上記気象データテーブルから読み出す気象データ読出し手段、指定された周辺環境構成要素の熱定数を上記熱定数テーブルから読み出す熱定数読出し手段、上記気象データ読出し手段で読み出した気象データに基づいて地表面の熱収支量を算出する熱収支量算出手段、上記通電負荷設定手段で設定された通電電流に基づいてケーブルの発熱量を算出する発熱量算出手段、上記埋設パターン設定手段で設定されたケーブルの埋設パターンを用いて地表面及びケーブルを含む所定の解析対象領域を有限要素分割して有限要素モデルを作成するモデル作成手段、上記熱定数読出し手段で読み出した熱定数を用いて上記解析対象領域内の各節点についての熱容量マトリクス及び熱伝導マトリクスを作成するマトリクス作成手段、上記熱収支量算出手段で算出された地表面の熱収支量と発熱量算出手段で算出されたケーブルの発熱量とを用いて上記解析対象領域内の各節点についての熱荷重ベクトルを作成するベクトル作成手段、並びに、上記マトリクス作成手段及びベクトル作成手段で作成された熱伝導マトリクス、熱容量マトリクス及び熱荷重ベクトルを用い、所定の初期状態から所定時間間隔で上記解析対象領域内の各節点温度を計算する節点温度計算手段として機能させるプログラムが記録されていることを特徴とするコンピュータ読み取り可能な導体温度推定用記録媒体。
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