JP2004111824A - 磁気ランダムアクセスメモリセルの磁気配向初期化方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】局所的な熱ストレスもなく、素子の放熱性を考える必要がなく、また、素子自体に電流を流す必要がないので、素子に電界ストレスをかけることなく固定層の磁化を初期化することができる磁気ランダムアクセスメモリセルの磁気配向初期化方法を提案する。
【解決手段】第1強磁性層7と第1強磁性層7上に形成される第1絶縁膜6とその上に形成された第2強磁性層5とからなり、半導体基板上に作製された磁気トンネル接合体と、第1強磁性層7の下部に形成された反強磁性層8と、反強磁性層8及び第2強磁性層5と電気的にそれぞれ接続された第1、第2導電層9、4と、第1導電層9と接続されたトランジスタ12と、磁気トンネル接合体の下部に形成され、磁気トンネル接合体と電気的に分離された第3導電層11とを有する磁気ランダムアクセスメモリセルの第1強磁性層の磁気配向初期化方法において、セルが形成された半導体チップ自身を、外部熱源で第1温度まで昇温した後、第1、第2電流を第2、第3導電層9、11に印加する。
【選択図】 図2
【解決手段】第1強磁性層7と第1強磁性層7上に形成される第1絶縁膜6とその上に形成された第2強磁性層5とからなり、半導体基板上に作製された磁気トンネル接合体と、第1強磁性層7の下部に形成された反強磁性層8と、反強磁性層8及び第2強磁性層5と電気的にそれぞれ接続された第1、第2導電層9、4と、第1導電層9と接続されたトランジスタ12と、磁気トンネル接合体の下部に形成され、磁気トンネル接合体と電気的に分離された第3導電層11とを有する磁気ランダムアクセスメモリセルの第1強磁性層の磁気配向初期化方法において、セルが形成された半導体チップ自身を、外部熱源で第1温度まで昇温した後、第1、第2電流を第2、第3導電層9、11に印加する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気ランダムアクセスメモリセルの磁気配向初期化方法であり、特に磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)のウェハプロセス完了後に磁気トンネル接合素子の固定層の磁気配向を初期化する方法に関する。
【0002】
【従来技術】
ランダムアクセスメモリは、コンピュータ等の情報処理装置において主記憶装置として不可欠なものである。ランダムアクセスメモリはDRAM等の半導体記憶装置により構成されているが、磁気抵抗素子を使った磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)により構成することも可能である。MRAMは、1対の強磁性層の間に絶縁層または導体よりなる非磁性層を挟持した単純な構造を有し、微細化および集積化に適している。さらにMRAMは、優れた応答性を有するため、将来の超高速コンピュータのメモリとして、有望であると考えられている。
【0003】
また、MRAMは不揮発性であり、現在携帯電話などポータブルシステムに使用されているフラッシュメモリと比較して、高速、低電圧、低消費電力であるため、フラッシュメモリにとって変わる次世代の不揮発性メモリとして期待されている。
【0004】
MRAMは、メモリ担体に磁気トンネル接合素子(Magnetic Tunnel Junction、以下「MTJ」と称する)を用い、MTJは磁化方向が一方向に固定される強磁性体層(固定層)と、磁界によって磁化方向が回転する強磁性体層(自由層)とが、絶縁膜を挟んで積層された構造である。
【0005】
図4にMTJの構造を表す模式図を示す。図4において、3が固定層、2が絶縁膜、1が自由層である。図4(a)と図4(b)は各々磁界によって自由層の磁化方向が回転している状態を示している。すなわち、図4(a)は固定層3と自由層1の磁化方向が平行(同方向)の場合であり、図4(b)は固定層3と自由層1の磁化方向が反平行(逆方向)の場合を示している。
【0006】
この時、固定層3と自由層1の各磁化方向の相対的な関係によって固定層3及び自由層1間の抵抗が変化し、各々が平行(同方向)の場合は抵抗値が低く、反平行(逆方向)の場合は抵抗値が大きくなる。これは、絶縁膜2が電子の波長より十分小さい場合、トンネル効果により一方の強磁性体層内の電子は、ある確率で他方の強磁性体層へ絶縁膜2のポテンシャル障壁を越えて遷移することによる。この遷移確率は、2つの強磁性体間の相対的な磁化方向に依存し、遷移時に電子のスピン量子数の変化を伴わない磁化方向の場合(磁化方向が平行)は高く、電子のスピンの変化を伴う場合(磁化方向が反平行)の場合は低くなる。これはスピントンネル効果と呼ばれ、この電子の遷移確率の相違が電気抵抗の相違として現れる。このように、自由層1の磁化方向を制御し、MTJの電気抵抗の変化を検出することにより情報を不揮発に記憶することが可能となる。
【0007】
固定層および自由層の構成材料としては、NiFe,CoFe等の公知の強磁性材料を用いることができ、その膜厚は数nm程度である。また、良好な出力特性を得るため、固定層を複数の構成材料の積層構造をと ることができる。例えば、2つの強磁性層の間に非磁性層を挟んだ積層フェリ型磁性構造(例えば、Co/Ru/Coなど)であってもよい。
【0008】
固定層の磁化方向を固定するために、反強磁性体の交換結合磁界を用いる。このような反強磁性体は主としてMn系反強磁性合金(PtMn,NiMn,FeMn,IrMnなど)が用いられている。その膜厚は、5nm〜50nm程度とされている。なお、反強磁性体は、内部のスピンが互いに反平行に配列しており、全体としては強磁性的な振る舞いをしないが、反強磁性層と強磁性層の二層膜を形成すると、その界面で働く交換結合により反強磁性層のスピンが界面を介して強磁性層に影響を与え、強磁性層の保磁力が増大する等の現象が発現する。
【0009】
絶縁膜の構成材料は、主としてAlOが用いられているが、他に、AlN、BNなどその他公知の絶縁膜を用いることができる。その膜厚は、磁気トンネル効果による抵抗変化を生じさせるために、1nm〜5nmに設定される。
【0010】
MRAMの構造は、非特許文献1に示すように、メモリ担体であるMTJとMTJを選択する選択トランジスタからなる「1T+1MTJ」のセル構造をとり、選択トランジスタにつながるワード線とMTJにつながるビット線を選択することで、メモリセルを選択することができる。図5に、この「1トランジスタ+1MTJ」型メモリセルの構造を模式的に示す。基本的な構成としては、1つのMTJ10に対し1つの選択トランジスタ12からなり、MTJ10を選択トランジスタ12のドレインと接続することによって、メモリセルを形成する。
【0011】
MTJ10は、強磁性層5、7とその間にある絶縁膜6と、下部の強磁性層7の磁化方向を固定する反強磁性層8によって構成される。
【0012】
ベース電極9は、反強磁性層8とトランジスタ12を接続する導電線であり、また、反強磁性層8が期待される反強磁性特性を示すようにする下部層でもある。ビット線4は、MTJ10と電気的に接続する導電線であり、ビット線4と書き込みワード線(「デジット線」とも呼称される)11に電流14、15を流して、強磁性層5の磁化方向を変化させて、書き込み、消去を行う。また、読み出しは、ワード線13とビット線4に電圧を印加し、選択トランジスタ12を介してビット線電流を読み出して、状態を検知する。すなわち、「1トランジスタ+1MTJ」型メモリセルは、ビット線4と書き込みワード線11に電流14、15を流すことによってその交点にあるメモリセルの書き込み及び消去が行われ、ワード線13により選択トランジスタ12を導通し、そこに流れる電流を検出することにより情報が読み出される。このメモリセルをビット線4と書き込みワード線11に沿ってマトリクス状に配列することによりMRAMのメモリセルアレイが構成される。
【0013】
メモリセルの抵抗値、すなわちMTJの抵抗値は、前述した図4に示すように、磁化の方向を固定した磁性体層(固定層)3に対して、方向を固定しない磁性体層(自由層)1の磁化方向の相対的な関係、すなわち同じ向きか逆向きかによって大きく変化する。この「低抵抗状態」と「高抵抗状態」の比は、MR比(magneto−resistance−ratio)と定義され、良質の材料の場合、30〜50%の範囲に入る。MTJの磁気トンネル効果(スピントンネル効果)による抵抗変化率(MR比)が大きいほど、「0」状態と「1」状態に対応する抵抗値の差が大きく、MRAMの読み出し回路等の設計マージンが大きくなり、高速かつ大容量のメモリの作製が可能になる。MR比が最大になるように磁化方向を揃える、すなわち、2つの磁化方向のなす角度が0度(平行)または180度(反平行)にすることが重要である。
【0014】
書き込みは、図5に示すように、ビット線4と書き込みワード線(デジット線)11に書き込み電流14、15を流すことによって発生する磁界によって、自由層5の磁化方向をのみを変化させることになる。消去は、書き込みとは逆方向に電流を流し、自由層5の磁化方向のみ変化させる。読み出し動作は、ワード線13とビット線4よって選択されたセルのビット線電流をリファレンスと比較することによって行う。
【0015】
このようなMRAMが今後実用化され大容量化が進むと、特許文献2に示されるように階層ビット線構造が必要となる。図6に、この階層ビット線構造を示す回路図を示す。
【0016】
すなわち、グローバルビット線(GBL)21は、ビット線選択トランジスタ23によって、セルグループ16、17に分割される。ビット線選択トランジスタ23はローカルビット線(LBL)22と接続され、ローカルビット線22は、MTJ19(図では抵抗で表記)と選択トランジスタ20で構成される複数のメモリセル18と電気的に接続される。
【0017】
また、図7に階層ビット線構造のレイアウト断面の模式図を示す。すなわち、グローバルビット線(GBL)21は、ビット線選択トランジスタ23のドレイン領域に接続され、ソース領域でローカルビット線(LBL)22と接続される。さらに、LBL22に、MTJ19と選択トランジスタ20からなるメモリセル18が並列に接続される。また、書き込みワード線36は、MTJ19の下部に選択トランジスタのワード線と平行に設けられる。
【0018】
このように、階層ビット線構造を用いると、ビット線が分割されるため、ビット線抵抗が減少し、ビット線に流せる電流が同一電圧では多くなり、より大きな磁界を発生させることが可能になる。なお、階層ビット線構造を作製するためには、磁気トンネル接合体を作製した後、少なくとも2層の配線層(ローカルビット線22とグローバルビット線21)が必要となってくる。
【0019】
【特許文献1】
米国特許US6272041明細書
【特許文献2】
特開10−334420号公報
【非特許文献1】
IEEE ISSCC Digest of TechnicalPapers,vol.43(2000)(p.128)
【非特許文献2】
IEEE Transactions on Magnetics vol.35(1999) (p.2814)
【非特許文献3】
Journal of Applied Physics vol.87(2000) (p.3920)
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
磁気トンネル接合体作製後のプロセス工程数が増加すると、磁気トンネル接合体作製時に、固定層の磁化方向を外部磁界中で積層あるいは熱処理で初期化を行っても、その後の熱ストレスやプラズマダメージなどの要因により、固定層の磁化方向に若干の乱れが生じる。この磁化方向の乱れを図8(a)に示す。符号1及び3は各々MTJの自由層及び固定層を模式的に表しており、図中の矢印は各層の磁化方向を表している。すなわち、初期化時に、自由層1の磁化と平行である固定層3の磁化方向24は、MTJ作製後のプロセスダメージ等の外因による磁化方向の変化27によって、磁化方向が変化した磁化方向25になる。その結果、自由層の磁化との相対な角度がずれ、MR比が低下し、所定のMR比が得られないことが予想される。そのため、磁気トンネル接合体作製後は、できるだけ低温、低プラズマダメージのプロセスで行う必要がある。
【0021】
しかし、非特許文献2によると、MTJ作製後に熱処理を行った結果、300℃以上でMR比が劣化することが報告されている。この文献に開示されるMTJ作製後のアニール温度に対するMTJの特性を図9(a)、(b)に示す。図9(a)は処理条件に対する接合体抵抗の変化、図9(b)は処理条件に対する磁気抵抗変化率(MR比)の変化を示している。処理条件は各図の横軸に示され、例えば300_0.5hrは300℃の熱処理を0.5時間行ったことを示している。接合体抵抗は図9(a)のように330℃まで減少した後、増加し始め、MR比は図9(b)のように275℃でピークになるまで緩慢に増加し、300℃を越えると急峻に減少する。これは、絶縁膜のアルミ酸化膜の酸素が強磁性層に拡散して、絶縁膜が厚くなったためである。そのため、現行のプロセスでMTJ作製後、温度を300度以下の低温で2層の配線層を形成することが必要となるが、これは大変難しい。したがって、ウェハプロセス完了後に、変化した固定層の磁化方向を確実に初期化するプロセスを行い、初期の磁化方向に戻してMR比が最大にすることが必要となってくる。すなわち、図9(b)に示すように、プロセスダメージなどにより劣化した固定層の磁化方向25を自由層1の磁化方向と平行にするため、初期化プロセスによる磁化方向の変化28によって、初期化した磁化方向26に戻す必要がある。
【0022】
ウェハプロセス完了後に磁化方向を初期化する技術としては、特許文献2に開示されたものがある。この従来技術は、非磁性層を介して2つの強磁性層が配置された一方の強磁性層が反強磁性層に固定されたスピンバルブ素子に関し、この反強磁性層並びに固定層の磁化方向を素子の両端に接続されたリードを介してスピンバルブ素子にパルス電流を印加することにより初期化するものである。ここに開示されたスピンバルブ素子の構造を図10に示す。符号106から符号115で示される層が双スピンバルブとされ、符号106から符号109の層からなるスピンバルブ素子と符号109から符号115の層からなるスピンバルブ素子の積層構造をなしている。これら各層の内、符号106と符号114が反強磁性層であり、ここでは反強磁性層114の初期化に着目し、この初期化に関わらない他の層の詳細については省略する。この技術による初期化方法の原理は、スピンバルブ素子の両端のリード208、209に電流パルス202を印加することで、素子自体が発熱し、反強磁性層114の自発磁化をなくし、電流138によってつくる磁場によって、反強磁性層114の磁化方向を初期化するというものである。この初期化の手順をフローチャートで示したものが図11であり、主には、パルス電流202をリード208と209の間に印加するステップS201、反強磁性層114の磁化をなくし、電流138によって配向させるステップS202、パルス電流202を除去するステップS203、強磁性層113を反強磁性層114によって磁化方向を固定するステップS204、強磁性層111が交換結合層112と強磁性層113によって磁化方向が固定されるステップS205を経て行う。すなわち、スピンバルブ素子に対して、固定層の磁化方向を初期化する方向にパルス電流を通す(図11のステップS201)。すると、ジュール熱により素子自体が加熱されて反強磁性層の磁化方向が開放されるとともに、パルス電流は主として素子の導電層を流れることにより発生する磁界により、反強磁性層の磁化方向が再設定される(同ステップS202)。その後、パルス電流を除去し(同ステップS203)、強磁性層がピン止めされる(同ステップS204、S205)。
【0023】
上記の従来技術は、電流パルス印加によって素子において発生するジュール熱により、反強磁性層のブロッキング温度以上に素子を加熱させ、導電層を流れるパルス電流により発生する磁界により磁化方向ならびに交換結合を再設定するものである。ここで、ブロッキング温度とは、反強磁性層の交換結合がなくなる温度のことである。
【0024】
しかし、上記の技術は、素子自体に電流を流す必要があり、MTJに使用すると絶縁膜にジュール熱が発生する電圧をかけると、絶縁破壊が起こる可能性がある。さらに、素子の温度を局所的に高くする必要があり、素子自身が放熱性を有するため、放熱による温度の低下を補うには設定温度を維持させるのに必要な熱量以上の発熱量が必要となり、MTJの絶縁膜に必要以上の電界ストレスをかけることになるという課題がある。
【0025】
本発明は、局所的な熱ストレスもなく、素子の放熱性を考える必要がなく、また、素子自体に電流を流す必要がないので、素子に電界ストレスをかけることなく固定層の磁化を初期化することができる磁気ランダムアクセスメモリセルの磁気配向初期化方法を提案することを目的とする。
【0026】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、ウェハプロセス完了後に、外部から熱を与え、所定の温度まで昇温することにより、交換結合磁界を弱めた後、磁気トンネル接合素子のビット線と書き込みワード線(デジット線)にパルス電流を印加することによって発生する合成磁界により、固定層の磁化を所定の方向に向けることにより、局所的な加熱を行うことなく、固定層の磁化方向を初期化する。
【0027】
この初期化はウェハプロセスが完了したウェハ状態で行っても良いし、アセンブリを完了した個別の半導体装置の状態で行っても良い。
【0028】
この昇温する温度は反強磁性層のブロッキング温度であることが望ましく、ブロッキング温度が高い反強磁性層に対しては磁気ランダムアクセスメモリの最大動作温度近傍であることが望ましい。
【0029】
さらにパルス電流印加は室温以上の温度まで降温した後、停止することが望ましい。
【0030】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を説明する。
本発明の磁気ランダムアクセスメモリセルの磁気配向初期化方法の実施例について、図1〜図3を用いて説明する。図1は、実施例の磁気配向初期化方法のフローチャート図である。図2は、実施例の磁気配向初期化方法の対象となるMRAMセルアレイの回路図である。図3は、反強磁性材料のネール温度とブロッキング温度の説明する図表である。
【0031】
実施例を説明する。本実施例は、第1強磁性層と該第1強磁性層上に形成される第1絶縁膜と該第1絶縁膜上に形成された第2強磁性層とからなり、半導体基板上に作製された磁気トンネル接合体と、前記第1強磁性層の磁化を固定するために該第1強磁性層の下部に形成された反強磁性層と、該反強磁性層及び前記第2強磁性層と電気的にそれぞれ接続された第1、第2導電層と、前記第1導電層と接続されたトランジスタと、前記磁気トンネル接合体の下部に形成され、該磁気トンネル接合体と電気的に分離された第3導電層とを有する磁気ランダムアクセスメモリセルの第1強磁性層の磁気配向を初期化する方法であって、前記磁気ランダムアクセスメモリセルが形成された半導体チップ自身を、外部熱源で第1温度まで昇温した後、第1、第2電流をそれぞれ第2、第3導電層に印加する。
【0032】
本実施例の磁気ランダムアクセスメモリセルの磁気配向初期化方法について、図1のフローチャートと図2に示す4×4のMRAMメモリアレイを用いて具体的に説明する。本実施例による磁気配向方向の初期化手順の概略を示すと次のようになる。まずMRAM等MTJが形成されたウェハ基板の温度を上げる(ステップS101)。その結果、反強磁性層と固定層の間の交換結合磁界を弱めることができる(ステップS102)。次に、デジット線DL2とビット線BL4に電流パルスを加える(ステップS103)。この電流パルスによって発生する磁界が、メモリセル29に印加される(ステップS104)。この磁界により反強磁性層の磁化方向が変化し、固定層の磁化が変化する(ステップS105)。次に温度を下げて、交換結合磁界を大きくする(ステップS106)。最後に電流パルスを除去して、磁界をなくす(ステップS107)。これにより、終了となる。
【0033】
次に各ステップをより詳細に説明する。すなわち、ウェハプロセス完了後、ヒーターなどでウェハ自身を加熱する(ステップS101)。温度は、固定層を固定する反強磁性体材料によって異なるが、反強磁性体のブロッキング温度近傍が良い。
【0034】
ここで、非特許文献2で報告されている、FeMn、IrMn、PtMnの反強磁性体のネール温度およびブロッキング温度を図3に示す。ネール温度とは、反強磁性体の自発磁化が消失する温度である。図3によると、ブロッキング温度はネール温度より低く、材料的な観点からMRAMの動作温度は、ネール温度ではなく、ブロッキング温度によって決まることがわかる。ブロッキング温度近傍では交換結合力が弱く、温度上昇によって交換結合磁界を弱める(ステップS102)。その後、デジット線とビット線に例えば8mA電流を流す(ステップS103)ことによって磁界(Hdb)が発生し、セルに磁界が印加される(ステップS104)ことにより、固定層の磁化方向が変化し(ステップS105)、次に、温度を下げ(ステップS106)、電流パルスを除去する(ステップS107)。このようにして、初期化(修正)することができる。
【0035】
次にこの初期化を行うに必要な回路的な制御方法を、図2を用いて説明する。図2は、本実施例の対象となるMRAMの4×4のメモリアレイの回路図である。初期化するメモリセル29のビット線BL4とデジット線DL2に電流を流すビット線選択トランジスタ32とデジット線選択トランジスタ33をオン状態にしてセルに磁界を印加する。また、メモリセル29は、MTJ30と選択トランジスタ31によって構成される。
【0036】
初期化するセル29のビット線BL4に例えば8mA、デジット線DL2に例えば8mAの電流が流れるように、BL4とDL2に接続されているトランジスタ32、33のゲートに電圧を印加して、磁界Hdbを発生させる。
【0037】
なお、FeMnを反強磁性層として用いる場合、ブロッキング温度近傍の150℃まで昇温させ、固定層の向きをデジット線とビット線に流れる電流の磁界で反強磁性層と固定層を初期化することができるが、ブロッキング温度の高いIrMnやPtMnなど反強磁性層として用いられている場合、250℃や300℃近くまで昇温すると、先ほど示したようにMR比が劣化する。
【0038】
そのため、MRAMの仕様の最大動作温度(例えば150℃)近くまで温度を上昇させる。前記文献によると、150℃で交換結合磁界(Hexch)が、室温よりIrMnの場合で約30%、PtMnの場合で約15%減少する。温度を上昇させて(ステップ101)、交換結合磁界を弱め(ステップ502)、デジット線とビット線にFeMnを用いた場合よりも大きな電流(例えば12mA)を流す(ステップ103)ことによって発生する磁界が、セルに印加され(ステップ104)、固定層の磁化方向が変化し(ステップ106)、初期化(修正)することができる。
【0039】
また、交換結合磁界と同等の磁界を発生させるには、デジット線とビット線に10mA以上の大電流を流す必要がある。エレクトロマイグレーションを考慮して、デジット線とビット線に流す電流を例えば100ナノ秒のパルス電流にする必要がある。
【0040】
その後、室温付近まで下げた後(ステップ106)、電流の供給を停止する(ステップ107)。また、電流の供給を停止する温度は、交換結合力が強くなり、Hdbによって変化しなくなる温度(例えば50℃)であってもよい。
【0041】
以上のようにして、MRAMセルの固定層の磁化方向を初期化することができる。
【0042】
また、上記方法をMRAMアレイ全体に行うことによりメモリアレイの固定層の磁化を初期化することもできる。また、上記方法は、ウェハテスト後、不良ビットに対して行ってもよいし、アセンブリ後に行ってもよい。
【0043】
以上、実施例で説明したように、本発明によれば、外部から熱を与えることにより、局所的な熱ストレスもなく、素子の放熱性を考える必要がなく、また、書き込みおよび消去動作と同様にデジット線とビット線に電流を流すため、素子自体に電流を流す必要がないので、素子に電界ストレスをかけることなく固定層の磁化を初期化することができる。また、ウェハプロセス完了後に、高温でビット線とデジット線に最適な電流を印加することで、MRAMセルの固定層の磁化方向を初期化することにより、MR比の最大化を図ることができ、磁気トンネル接合体作製後のプロセスによるMR比の劣化を回復することでき、MR比が最適化されたMRAMの作製が可能になる。さらには、熱ストレスあるいは電界ストレスによる破壊を回避でき、またMR比不良のセルに対して本発明による初期化を適用することでMR不良セルを救済可能なため、歩留まりが向上すると共に、MR比が大きくなるため、MRAMの読み出しマージンが向上し、高速化にも大きく貢献する。
【0044】
なお、上記実施例において、上記第1温度まで半導体チップを加熱する処理は、ウェハプロセス完了後、半導体ウェハに対して行うことは、可能である。
【0045】
また、上記実施例において、上記第1温度まで半導体チップを加熱する処理は、完成した半導体ウェハから個別の半導体装置を組み立てる後半工程が完了後、個別の半導体装置に対して行う磁気ランダムメモリの磁気配向初期化方法とすることもできる。
【0046】
そして、上記実施例において、上記第1電流と上記第2電流がともに電流パルスとすることは可能である。
【0047】
更に、上記実施例において、上記第1温度は、上記反強磁性層のブロッキング温度近傍であるとすることができる。
【0048】
また、上記実施例において、上記第1温度は、磁気ランダムアクセスメモリの最大動作温度近傍とすることが可能である。
【0049】
そして、上記実施例において、複数の前記磁気ランダムアクセスメモリセルがマトリクス状に配置された磁気ランダムアクセスメモリセルアレイに対し、上記第1電流を第2導電層に第2電流を第3導電層に印加する処理を行うことができる。
【0050】
更に、上記実施例において、上記半導体チップ自身を、上記第1温度に昇温後、上記第1電流および第2電流を第2導電層と第3導電層に印加を開始した後さらに、所定の時間保持した後、第2温度に降温し、前記第1及び第2の電流の印加を停止することは可能である。
【0051】
また、上記実施例において、上記第2温度は、室温以上であるとすることができる。
【0052】
【発明の効果】
本発明は、局所的な熱ストレスもなく、素子の放熱性を考える必要がなく、また、素子自体に電流を流す必要がないので、素子に電界ストレスをかけることなく固定層の磁化を初期化することができる磁気ランダムアクセスメモリセルの磁気配向初期化方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の磁気配向初期化方法のフローチャート図。
【図2】実施例の磁気配向初期化方法の対象となるMRAMセルアレイの回路図。
【図3】反強磁性材料のネール温度とブロッキング温度の説明する図表。
【図4】磁気トンネル接合素子の低抵抗状態と高抵抗状態の磁化方向を示す模式図。
【図5】磁気ランダムアクセスメモリのメモリセルの模式図。
【図6】磁気ランダムアクセスメモリにおける階層ビット線構造を示す回路図。
【図7】磁気ランダムアクセスメモリにおける階層ビット線構造の断面の模式図。
【図8】本発明の課題を示す模式図。
【図9】磁気トンネル接合素子のアニール温度による抵抗変化およびMR比の変化を示す図。
【図10】スピンバルブ素子の模式図。
【図11】従来技術の磁化方向初期化方法のフローチャート図。
【符号の説明】
1 自由層
2 絶縁層
3 固定層
4 ビット線
5 自由層
6 絶縁層
7 固定層
8 反強磁性層
9 ベース電極
10 磁気トンネル接合体(MTJ)
11 デジット線(書き込みワード線)
12 トランジスタ
13 ワード線
14 ビット線電流
15 デジット線電流
16 セルグループ1
17 セルグループ2
18 メモリセル
19 磁気トンネル接合素子
20 制御トランジスタ
21 グローバルビット線
22 ローカルビット線
23 選択トランジスタ
24 磁気トンネル接合体作製後の磁化方向
25 外因によって変化した磁化方向
26 初期化した磁化方向
27 熱やプラズマなどの外因による磁化方向の変化
28 初期化による磁化方向の変化
29 初期化するメモリセル
30 磁気トンネル接合素子
31 トランジスタ
36 デジット線
106 反強磁性層
107 強磁性ピン止め層
108 非磁性導電層
109 強磁性フリー層
110 非磁性導電層
111 (内側)強磁性ピン止め層
112 交換結合膜
113 (外側)強磁性ピン止め層
114 反強磁性層
115 保護皮膜層
170、171 ハード・バイアス層
202 パルス電流
206 検知電流源
207 出力センサ
208、209 リード
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気ランダムアクセスメモリセルの磁気配向初期化方法であり、特に磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)のウェハプロセス完了後に磁気トンネル接合素子の固定層の磁気配向を初期化する方法に関する。
【0002】
【従来技術】
ランダムアクセスメモリは、コンピュータ等の情報処理装置において主記憶装置として不可欠なものである。ランダムアクセスメモリはDRAM等の半導体記憶装置により構成されているが、磁気抵抗素子を使った磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)により構成することも可能である。MRAMは、1対の強磁性層の間に絶縁層または導体よりなる非磁性層を挟持した単純な構造を有し、微細化および集積化に適している。さらにMRAMは、優れた応答性を有するため、将来の超高速コンピュータのメモリとして、有望であると考えられている。
【0003】
また、MRAMは不揮発性であり、現在携帯電話などポータブルシステムに使用されているフラッシュメモリと比較して、高速、低電圧、低消費電力であるため、フラッシュメモリにとって変わる次世代の不揮発性メモリとして期待されている。
【0004】
MRAMは、メモリ担体に磁気トンネル接合素子(Magnetic Tunnel Junction、以下「MTJ」と称する)を用い、MTJは磁化方向が一方向に固定される強磁性体層(固定層)と、磁界によって磁化方向が回転する強磁性体層(自由層)とが、絶縁膜を挟んで積層された構造である。
【0005】
図4にMTJの構造を表す模式図を示す。図4において、3が固定層、2が絶縁膜、1が自由層である。図4(a)と図4(b)は各々磁界によって自由層の磁化方向が回転している状態を示している。すなわち、図4(a)は固定層3と自由層1の磁化方向が平行(同方向)の場合であり、図4(b)は固定層3と自由層1の磁化方向が反平行(逆方向)の場合を示している。
【0006】
この時、固定層3と自由層1の各磁化方向の相対的な関係によって固定層3及び自由層1間の抵抗が変化し、各々が平行(同方向)の場合は抵抗値が低く、反平行(逆方向)の場合は抵抗値が大きくなる。これは、絶縁膜2が電子の波長より十分小さい場合、トンネル効果により一方の強磁性体層内の電子は、ある確率で他方の強磁性体層へ絶縁膜2のポテンシャル障壁を越えて遷移することによる。この遷移確率は、2つの強磁性体間の相対的な磁化方向に依存し、遷移時に電子のスピン量子数の変化を伴わない磁化方向の場合(磁化方向が平行)は高く、電子のスピンの変化を伴う場合(磁化方向が反平行)の場合は低くなる。これはスピントンネル効果と呼ばれ、この電子の遷移確率の相違が電気抵抗の相違として現れる。このように、自由層1の磁化方向を制御し、MTJの電気抵抗の変化を検出することにより情報を不揮発に記憶することが可能となる。
【0007】
固定層および自由層の構成材料としては、NiFe,CoFe等の公知の強磁性材料を用いることができ、その膜厚は数nm程度である。また、良好な出力特性を得るため、固定層を複数の構成材料の積層構造をと ることができる。例えば、2つの強磁性層の間に非磁性層を挟んだ積層フェリ型磁性構造(例えば、Co/Ru/Coなど)であってもよい。
【0008】
固定層の磁化方向を固定するために、反強磁性体の交換結合磁界を用いる。このような反強磁性体は主としてMn系反強磁性合金(PtMn,NiMn,FeMn,IrMnなど)が用いられている。その膜厚は、5nm〜50nm程度とされている。なお、反強磁性体は、内部のスピンが互いに反平行に配列しており、全体としては強磁性的な振る舞いをしないが、反強磁性層と強磁性層の二層膜を形成すると、その界面で働く交換結合により反強磁性層のスピンが界面を介して強磁性層に影響を与え、強磁性層の保磁力が増大する等の現象が発現する。
【0009】
絶縁膜の構成材料は、主としてAlOが用いられているが、他に、AlN、BNなどその他公知の絶縁膜を用いることができる。その膜厚は、磁気トンネル効果による抵抗変化を生じさせるために、1nm〜5nmに設定される。
【0010】
MRAMの構造は、非特許文献1に示すように、メモリ担体であるMTJとMTJを選択する選択トランジスタからなる「1T+1MTJ」のセル構造をとり、選択トランジスタにつながるワード線とMTJにつながるビット線を選択することで、メモリセルを選択することができる。図5に、この「1トランジスタ+1MTJ」型メモリセルの構造を模式的に示す。基本的な構成としては、1つのMTJ10に対し1つの選択トランジスタ12からなり、MTJ10を選択トランジスタ12のドレインと接続することによって、メモリセルを形成する。
【0011】
MTJ10は、強磁性層5、7とその間にある絶縁膜6と、下部の強磁性層7の磁化方向を固定する反強磁性層8によって構成される。
【0012】
ベース電極9は、反強磁性層8とトランジスタ12を接続する導電線であり、また、反強磁性層8が期待される反強磁性特性を示すようにする下部層でもある。ビット線4は、MTJ10と電気的に接続する導電線であり、ビット線4と書き込みワード線(「デジット線」とも呼称される)11に電流14、15を流して、強磁性層5の磁化方向を変化させて、書き込み、消去を行う。また、読み出しは、ワード線13とビット線4に電圧を印加し、選択トランジスタ12を介してビット線電流を読み出して、状態を検知する。すなわち、「1トランジスタ+1MTJ」型メモリセルは、ビット線4と書き込みワード線11に電流14、15を流すことによってその交点にあるメモリセルの書き込み及び消去が行われ、ワード線13により選択トランジスタ12を導通し、そこに流れる電流を検出することにより情報が読み出される。このメモリセルをビット線4と書き込みワード線11に沿ってマトリクス状に配列することによりMRAMのメモリセルアレイが構成される。
【0013】
メモリセルの抵抗値、すなわちMTJの抵抗値は、前述した図4に示すように、磁化の方向を固定した磁性体層(固定層)3に対して、方向を固定しない磁性体層(自由層)1の磁化方向の相対的な関係、すなわち同じ向きか逆向きかによって大きく変化する。この「低抵抗状態」と「高抵抗状態」の比は、MR比(magneto−resistance−ratio)と定義され、良質の材料の場合、30〜50%の範囲に入る。MTJの磁気トンネル効果(スピントンネル効果)による抵抗変化率(MR比)が大きいほど、「0」状態と「1」状態に対応する抵抗値の差が大きく、MRAMの読み出し回路等の設計マージンが大きくなり、高速かつ大容量のメモリの作製が可能になる。MR比が最大になるように磁化方向を揃える、すなわち、2つの磁化方向のなす角度が0度(平行)または180度(反平行)にすることが重要である。
【0014】
書き込みは、図5に示すように、ビット線4と書き込みワード線(デジット線)11に書き込み電流14、15を流すことによって発生する磁界によって、自由層5の磁化方向をのみを変化させることになる。消去は、書き込みとは逆方向に電流を流し、自由層5の磁化方向のみ変化させる。読み出し動作は、ワード線13とビット線4よって選択されたセルのビット線電流をリファレンスと比較することによって行う。
【0015】
このようなMRAMが今後実用化され大容量化が進むと、特許文献2に示されるように階層ビット線構造が必要となる。図6に、この階層ビット線構造を示す回路図を示す。
【0016】
すなわち、グローバルビット線(GBL)21は、ビット線選択トランジスタ23によって、セルグループ16、17に分割される。ビット線選択トランジスタ23はローカルビット線(LBL)22と接続され、ローカルビット線22は、MTJ19(図では抵抗で表記)と選択トランジスタ20で構成される複数のメモリセル18と電気的に接続される。
【0017】
また、図7に階層ビット線構造のレイアウト断面の模式図を示す。すなわち、グローバルビット線(GBL)21は、ビット線選択トランジスタ23のドレイン領域に接続され、ソース領域でローカルビット線(LBL)22と接続される。さらに、LBL22に、MTJ19と選択トランジスタ20からなるメモリセル18が並列に接続される。また、書き込みワード線36は、MTJ19の下部に選択トランジスタのワード線と平行に設けられる。
【0018】
このように、階層ビット線構造を用いると、ビット線が分割されるため、ビット線抵抗が減少し、ビット線に流せる電流が同一電圧では多くなり、より大きな磁界を発生させることが可能になる。なお、階層ビット線構造を作製するためには、磁気トンネル接合体を作製した後、少なくとも2層の配線層(ローカルビット線22とグローバルビット線21)が必要となってくる。
【0019】
【特許文献1】
米国特許US6272041明細書
【特許文献2】
特開10−334420号公報
【非特許文献1】
IEEE ISSCC Digest of TechnicalPapers,vol.43(2000)(p.128)
【非特許文献2】
IEEE Transactions on Magnetics vol.35(1999) (p.2814)
【非特許文献3】
Journal of Applied Physics vol.87(2000) (p.3920)
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
磁気トンネル接合体作製後のプロセス工程数が増加すると、磁気トンネル接合体作製時に、固定層の磁化方向を外部磁界中で積層あるいは熱処理で初期化を行っても、その後の熱ストレスやプラズマダメージなどの要因により、固定層の磁化方向に若干の乱れが生じる。この磁化方向の乱れを図8(a)に示す。符号1及び3は各々MTJの自由層及び固定層を模式的に表しており、図中の矢印は各層の磁化方向を表している。すなわち、初期化時に、自由層1の磁化と平行である固定層3の磁化方向24は、MTJ作製後のプロセスダメージ等の外因による磁化方向の変化27によって、磁化方向が変化した磁化方向25になる。その結果、自由層の磁化との相対な角度がずれ、MR比が低下し、所定のMR比が得られないことが予想される。そのため、磁気トンネル接合体作製後は、できるだけ低温、低プラズマダメージのプロセスで行う必要がある。
【0021】
しかし、非特許文献2によると、MTJ作製後に熱処理を行った結果、300℃以上でMR比が劣化することが報告されている。この文献に開示されるMTJ作製後のアニール温度に対するMTJの特性を図9(a)、(b)に示す。図9(a)は処理条件に対する接合体抵抗の変化、図9(b)は処理条件に対する磁気抵抗変化率(MR比)の変化を示している。処理条件は各図の横軸に示され、例えば300_0.5hrは300℃の熱処理を0.5時間行ったことを示している。接合体抵抗は図9(a)のように330℃まで減少した後、増加し始め、MR比は図9(b)のように275℃でピークになるまで緩慢に増加し、300℃を越えると急峻に減少する。これは、絶縁膜のアルミ酸化膜の酸素が強磁性層に拡散して、絶縁膜が厚くなったためである。そのため、現行のプロセスでMTJ作製後、温度を300度以下の低温で2層の配線層を形成することが必要となるが、これは大変難しい。したがって、ウェハプロセス完了後に、変化した固定層の磁化方向を確実に初期化するプロセスを行い、初期の磁化方向に戻してMR比が最大にすることが必要となってくる。すなわち、図9(b)に示すように、プロセスダメージなどにより劣化した固定層の磁化方向25を自由層1の磁化方向と平行にするため、初期化プロセスによる磁化方向の変化28によって、初期化した磁化方向26に戻す必要がある。
【0022】
ウェハプロセス完了後に磁化方向を初期化する技術としては、特許文献2に開示されたものがある。この従来技術は、非磁性層を介して2つの強磁性層が配置された一方の強磁性層が反強磁性層に固定されたスピンバルブ素子に関し、この反強磁性層並びに固定層の磁化方向を素子の両端に接続されたリードを介してスピンバルブ素子にパルス電流を印加することにより初期化するものである。ここに開示されたスピンバルブ素子の構造を図10に示す。符号106から符号115で示される層が双スピンバルブとされ、符号106から符号109の層からなるスピンバルブ素子と符号109から符号115の層からなるスピンバルブ素子の積層構造をなしている。これら各層の内、符号106と符号114が反強磁性層であり、ここでは反強磁性層114の初期化に着目し、この初期化に関わらない他の層の詳細については省略する。この技術による初期化方法の原理は、スピンバルブ素子の両端のリード208、209に電流パルス202を印加することで、素子自体が発熱し、反強磁性層114の自発磁化をなくし、電流138によってつくる磁場によって、反強磁性層114の磁化方向を初期化するというものである。この初期化の手順をフローチャートで示したものが図11であり、主には、パルス電流202をリード208と209の間に印加するステップS201、反強磁性層114の磁化をなくし、電流138によって配向させるステップS202、パルス電流202を除去するステップS203、強磁性層113を反強磁性層114によって磁化方向を固定するステップS204、強磁性層111が交換結合層112と強磁性層113によって磁化方向が固定されるステップS205を経て行う。すなわち、スピンバルブ素子に対して、固定層の磁化方向を初期化する方向にパルス電流を通す(図11のステップS201)。すると、ジュール熱により素子自体が加熱されて反強磁性層の磁化方向が開放されるとともに、パルス電流は主として素子の導電層を流れることにより発生する磁界により、反強磁性層の磁化方向が再設定される(同ステップS202)。その後、パルス電流を除去し(同ステップS203)、強磁性層がピン止めされる(同ステップS204、S205)。
【0023】
上記の従来技術は、電流パルス印加によって素子において発生するジュール熱により、反強磁性層のブロッキング温度以上に素子を加熱させ、導電層を流れるパルス電流により発生する磁界により磁化方向ならびに交換結合を再設定するものである。ここで、ブロッキング温度とは、反強磁性層の交換結合がなくなる温度のことである。
【0024】
しかし、上記の技術は、素子自体に電流を流す必要があり、MTJに使用すると絶縁膜にジュール熱が発生する電圧をかけると、絶縁破壊が起こる可能性がある。さらに、素子の温度を局所的に高くする必要があり、素子自身が放熱性を有するため、放熱による温度の低下を補うには設定温度を維持させるのに必要な熱量以上の発熱量が必要となり、MTJの絶縁膜に必要以上の電界ストレスをかけることになるという課題がある。
【0025】
本発明は、局所的な熱ストレスもなく、素子の放熱性を考える必要がなく、また、素子自体に電流を流す必要がないので、素子に電界ストレスをかけることなく固定層の磁化を初期化することができる磁気ランダムアクセスメモリセルの磁気配向初期化方法を提案することを目的とする。
【0026】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、ウェハプロセス完了後に、外部から熱を与え、所定の温度まで昇温することにより、交換結合磁界を弱めた後、磁気トンネル接合素子のビット線と書き込みワード線(デジット線)にパルス電流を印加することによって発生する合成磁界により、固定層の磁化を所定の方向に向けることにより、局所的な加熱を行うことなく、固定層の磁化方向を初期化する。
【0027】
この初期化はウェハプロセスが完了したウェハ状態で行っても良いし、アセンブリを完了した個別の半導体装置の状態で行っても良い。
【0028】
この昇温する温度は反強磁性層のブロッキング温度であることが望ましく、ブロッキング温度が高い反強磁性層に対しては磁気ランダムアクセスメモリの最大動作温度近傍であることが望ましい。
【0029】
さらにパルス電流印加は室温以上の温度まで降温した後、停止することが望ましい。
【0030】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を説明する。
本発明の磁気ランダムアクセスメモリセルの磁気配向初期化方法の実施例について、図1〜図3を用いて説明する。図1は、実施例の磁気配向初期化方法のフローチャート図である。図2は、実施例の磁気配向初期化方法の対象となるMRAMセルアレイの回路図である。図3は、反強磁性材料のネール温度とブロッキング温度の説明する図表である。
【0031】
実施例を説明する。本実施例は、第1強磁性層と該第1強磁性層上に形成される第1絶縁膜と該第1絶縁膜上に形成された第2強磁性層とからなり、半導体基板上に作製された磁気トンネル接合体と、前記第1強磁性層の磁化を固定するために該第1強磁性層の下部に形成された反強磁性層と、該反強磁性層及び前記第2強磁性層と電気的にそれぞれ接続された第1、第2導電層と、前記第1導電層と接続されたトランジスタと、前記磁気トンネル接合体の下部に形成され、該磁気トンネル接合体と電気的に分離された第3導電層とを有する磁気ランダムアクセスメモリセルの第1強磁性層の磁気配向を初期化する方法であって、前記磁気ランダムアクセスメモリセルが形成された半導体チップ自身を、外部熱源で第1温度まで昇温した後、第1、第2電流をそれぞれ第2、第3導電層に印加する。
【0032】
本実施例の磁気ランダムアクセスメモリセルの磁気配向初期化方法について、図1のフローチャートと図2に示す4×4のMRAMメモリアレイを用いて具体的に説明する。本実施例による磁気配向方向の初期化手順の概略を示すと次のようになる。まずMRAM等MTJが形成されたウェハ基板の温度を上げる(ステップS101)。その結果、反強磁性層と固定層の間の交換結合磁界を弱めることができる(ステップS102)。次に、デジット線DL2とビット線BL4に電流パルスを加える(ステップS103)。この電流パルスによって発生する磁界が、メモリセル29に印加される(ステップS104)。この磁界により反強磁性層の磁化方向が変化し、固定層の磁化が変化する(ステップS105)。次に温度を下げて、交換結合磁界を大きくする(ステップS106)。最後に電流パルスを除去して、磁界をなくす(ステップS107)。これにより、終了となる。
【0033】
次に各ステップをより詳細に説明する。すなわち、ウェハプロセス完了後、ヒーターなどでウェハ自身を加熱する(ステップS101)。温度は、固定層を固定する反強磁性体材料によって異なるが、反強磁性体のブロッキング温度近傍が良い。
【0034】
ここで、非特許文献2で報告されている、FeMn、IrMn、PtMnの反強磁性体のネール温度およびブロッキング温度を図3に示す。ネール温度とは、反強磁性体の自発磁化が消失する温度である。図3によると、ブロッキング温度はネール温度より低く、材料的な観点からMRAMの動作温度は、ネール温度ではなく、ブロッキング温度によって決まることがわかる。ブロッキング温度近傍では交換結合力が弱く、温度上昇によって交換結合磁界を弱める(ステップS102)。その後、デジット線とビット線に例えば8mA電流を流す(ステップS103)ことによって磁界(Hdb)が発生し、セルに磁界が印加される(ステップS104)ことにより、固定層の磁化方向が変化し(ステップS105)、次に、温度を下げ(ステップS106)、電流パルスを除去する(ステップS107)。このようにして、初期化(修正)することができる。
【0035】
次にこの初期化を行うに必要な回路的な制御方法を、図2を用いて説明する。図2は、本実施例の対象となるMRAMの4×4のメモリアレイの回路図である。初期化するメモリセル29のビット線BL4とデジット線DL2に電流を流すビット線選択トランジスタ32とデジット線選択トランジスタ33をオン状態にしてセルに磁界を印加する。また、メモリセル29は、MTJ30と選択トランジスタ31によって構成される。
【0036】
初期化するセル29のビット線BL4に例えば8mA、デジット線DL2に例えば8mAの電流が流れるように、BL4とDL2に接続されているトランジスタ32、33のゲートに電圧を印加して、磁界Hdbを発生させる。
【0037】
なお、FeMnを反強磁性層として用いる場合、ブロッキング温度近傍の150℃まで昇温させ、固定層の向きをデジット線とビット線に流れる電流の磁界で反強磁性層と固定層を初期化することができるが、ブロッキング温度の高いIrMnやPtMnなど反強磁性層として用いられている場合、250℃や300℃近くまで昇温すると、先ほど示したようにMR比が劣化する。
【0038】
そのため、MRAMの仕様の最大動作温度(例えば150℃)近くまで温度を上昇させる。前記文献によると、150℃で交換結合磁界(Hexch)が、室温よりIrMnの場合で約30%、PtMnの場合で約15%減少する。温度を上昇させて(ステップ101)、交換結合磁界を弱め(ステップ502)、デジット線とビット線にFeMnを用いた場合よりも大きな電流(例えば12mA)を流す(ステップ103)ことによって発生する磁界が、セルに印加され(ステップ104)、固定層の磁化方向が変化し(ステップ106)、初期化(修正)することができる。
【0039】
また、交換結合磁界と同等の磁界を発生させるには、デジット線とビット線に10mA以上の大電流を流す必要がある。エレクトロマイグレーションを考慮して、デジット線とビット線に流す電流を例えば100ナノ秒のパルス電流にする必要がある。
【0040】
その後、室温付近まで下げた後(ステップ106)、電流の供給を停止する(ステップ107)。また、電流の供給を停止する温度は、交換結合力が強くなり、Hdbによって変化しなくなる温度(例えば50℃)であってもよい。
【0041】
以上のようにして、MRAMセルの固定層の磁化方向を初期化することができる。
【0042】
また、上記方法をMRAMアレイ全体に行うことによりメモリアレイの固定層の磁化を初期化することもできる。また、上記方法は、ウェハテスト後、不良ビットに対して行ってもよいし、アセンブリ後に行ってもよい。
【0043】
以上、実施例で説明したように、本発明によれば、外部から熱を与えることにより、局所的な熱ストレスもなく、素子の放熱性を考える必要がなく、また、書き込みおよび消去動作と同様にデジット線とビット線に電流を流すため、素子自体に電流を流す必要がないので、素子に電界ストレスをかけることなく固定層の磁化を初期化することができる。また、ウェハプロセス完了後に、高温でビット線とデジット線に最適な電流を印加することで、MRAMセルの固定層の磁化方向を初期化することにより、MR比の最大化を図ることができ、磁気トンネル接合体作製後のプロセスによるMR比の劣化を回復することでき、MR比が最適化されたMRAMの作製が可能になる。さらには、熱ストレスあるいは電界ストレスによる破壊を回避でき、またMR比不良のセルに対して本発明による初期化を適用することでMR不良セルを救済可能なため、歩留まりが向上すると共に、MR比が大きくなるため、MRAMの読み出しマージンが向上し、高速化にも大きく貢献する。
【0044】
なお、上記実施例において、上記第1温度まで半導体チップを加熱する処理は、ウェハプロセス完了後、半導体ウェハに対して行うことは、可能である。
【0045】
また、上記実施例において、上記第1温度まで半導体チップを加熱する処理は、完成した半導体ウェハから個別の半導体装置を組み立てる後半工程が完了後、個別の半導体装置に対して行う磁気ランダムメモリの磁気配向初期化方法とすることもできる。
【0046】
そして、上記実施例において、上記第1電流と上記第2電流がともに電流パルスとすることは可能である。
【0047】
更に、上記実施例において、上記第1温度は、上記反強磁性層のブロッキング温度近傍であるとすることができる。
【0048】
また、上記実施例において、上記第1温度は、磁気ランダムアクセスメモリの最大動作温度近傍とすることが可能である。
【0049】
そして、上記実施例において、複数の前記磁気ランダムアクセスメモリセルがマトリクス状に配置された磁気ランダムアクセスメモリセルアレイに対し、上記第1電流を第2導電層に第2電流を第3導電層に印加する処理を行うことができる。
【0050】
更に、上記実施例において、上記半導体チップ自身を、上記第1温度に昇温後、上記第1電流および第2電流を第2導電層と第3導電層に印加を開始した後さらに、所定の時間保持した後、第2温度に降温し、前記第1及び第2の電流の印加を停止することは可能である。
【0051】
また、上記実施例において、上記第2温度は、室温以上であるとすることができる。
【0052】
【発明の効果】
本発明は、局所的な熱ストレスもなく、素子の放熱性を考える必要がなく、また、素子自体に電流を流す必要がないので、素子に電界ストレスをかけることなく固定層の磁化を初期化することができる磁気ランダムアクセスメモリセルの磁気配向初期化方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の磁気配向初期化方法のフローチャート図。
【図2】実施例の磁気配向初期化方法の対象となるMRAMセルアレイの回路図。
【図3】反強磁性材料のネール温度とブロッキング温度の説明する図表。
【図4】磁気トンネル接合素子の低抵抗状態と高抵抗状態の磁化方向を示す模式図。
【図5】磁気ランダムアクセスメモリのメモリセルの模式図。
【図6】磁気ランダムアクセスメモリにおける階層ビット線構造を示す回路図。
【図7】磁気ランダムアクセスメモリにおける階層ビット線構造の断面の模式図。
【図8】本発明の課題を示す模式図。
【図9】磁気トンネル接合素子のアニール温度による抵抗変化およびMR比の変化を示す図。
【図10】スピンバルブ素子の模式図。
【図11】従来技術の磁化方向初期化方法のフローチャート図。
【符号の説明】
1 自由層
2 絶縁層
3 固定層
4 ビット線
5 自由層
6 絶縁層
7 固定層
8 反強磁性層
9 ベース電極
10 磁気トンネル接合体(MTJ)
11 デジット線(書き込みワード線)
12 トランジスタ
13 ワード線
14 ビット線電流
15 デジット線電流
16 セルグループ1
17 セルグループ2
18 メモリセル
19 磁気トンネル接合素子
20 制御トランジスタ
21 グローバルビット線
22 ローカルビット線
23 選択トランジスタ
24 磁気トンネル接合体作製後の磁化方向
25 外因によって変化した磁化方向
26 初期化した磁化方向
27 熱やプラズマなどの外因による磁化方向の変化
28 初期化による磁化方向の変化
29 初期化するメモリセル
30 磁気トンネル接合素子
31 トランジスタ
36 デジット線
106 反強磁性層
107 強磁性ピン止め層
108 非磁性導電層
109 強磁性フリー層
110 非磁性導電層
111 (内側)強磁性ピン止め層
112 交換結合膜
113 (外側)強磁性ピン止め層
114 反強磁性層
115 保護皮膜層
170、171 ハード・バイアス層
202 パルス電流
206 検知電流源
207 出力センサ
208、209 リード
Claims (9)
- 第1強磁性層と該第1強磁性層上に形成される第1絶縁膜と該第1絶縁膜上に形成された第2強磁性層とからなり、半導体基板上に作製された磁気トンネル接合体と、前記第1強磁性層の磁化を固定するために該第1強磁性層の下部に形成された反強磁性層と、該反強磁性層及び前記第2強磁性層と電気的にそれぞれ接続された第1、第2導電層と、前記第1導電層と接続されたトランジスタと、前記磁気トンネル接合体の下部に形成され、該磁気トンネル接合体と電気的に分離された第3導電層とを有する磁気ランダムアクセスメモリセルの第1強磁性層の磁気配向を初期化する方法において、
前記磁気ランダムアクセスメモリセルが形成された半導体チップ自身を、外部熱源で第1温度まで昇温した後、第1、第2電流をそれぞれ第2、第3導電層に印加することを特徴とする磁気ランダムアクセスメモリセルの磁気配向初期化方法。 - 上記第1温度まで半導体チップを加熱する処理は、ウェハプロセス完了後、半導体ウェハに対して行う請求項1記載の磁気ランダムアクセスメモリセルの磁気配向初期化方法。
- 上記第1温度まで半導体チップを加熱する処理は、完成した半導体ウェハから個別の半導体装置を組み立てる後半工程が完了後、個別の半導体装置に対して行う請求項1記載の磁気ランダムアクセスメモリセルの磁気配向初期化方法。
- 上記第1電流と上記第2電流がともに電流パルスである請求項1記載の磁気ランダムアクセスメモリセルの磁気配向初期化方法。
- 上記第1温度は、上記反強磁性層のブロッキング温度近傍である請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁気ランダムアクセスメモリセルの磁気配向初期化方法。
- 上記第1温度は、磁気ランダムアクセスメモリの最大動作温度近傍である請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁気ランダムアクセスメモリセルの磁気配向初期化方法。
- 複数の前記磁気ランダムアクセスメモリセルがマトリクス状に配置された磁気ランダムアクセスメモリセルアレイに対し、上記第1電流を第2導電層に第2電流を第3導電層に印加する処理を行う請求項1〜6のいずれか1項に記載の磁気ランダムアクセスメモリセルの磁気配向初期化方法。
- 上記半導体チップ自身を、上記第1温度に昇温後、上記第1電流および第2電流を第2導電層と第3導電層に印加を開始した後さらに、所定の時間保持した後、第2温度に降温し、前記第1及び第2の電流の印加を停止する請求項1〜7のいずれか1項に記載の磁気ランダムアクセスメモリの磁気配向初期化方法。
- 上記第2温度は、室温以上である請求項8記載の磁気配向初期化方法。
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