JP2004108884A - 微流量ポンプ、及びそれを用いたフローインジェクション分析装置と高速液体クロマトグラフ - Google Patents
微流量ポンプ、及びそれを用いたフローインジェクション分析装置と高速液体クロマトグラフ Download PDFInfo
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Abstract
【課題】本発明の目的は、正確に作動する微小流量送液が可能な微流量ポンプを提供することにある。
【解決手段】本発明の微流量ポンプ10はシリンジ12と、該シリンジ12内の液体を吐出するプランジャー14と、を備えたシリンジ型の送液ポンプにおいて、前記プランジャー14は、前記シリンジ12の内径以下の直径を持つ太線部14aと、該太線部14aよりも小さな直径を持つ細線部14bと、を備え、軸方向に沿って直径が変化する一本のプランジャーとして構成され、前記プランジャー14を所定の方向に引き出すことにより、前記シリンジ12内を占める該プランジャー14の体積を増大させ、該シリンジ12内の液体を吐出することを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明の微流量ポンプ10はシリンジ12と、該シリンジ12内の液体を吐出するプランジャー14と、を備えたシリンジ型の送液ポンプにおいて、前記プランジャー14は、前記シリンジ12の内径以下の直径を持つ太線部14aと、該太線部14aよりも小さな直径を持つ細線部14bと、を備え、軸方向に沿って直径が変化する一本のプランジャーとして構成され、前記プランジャー14を所定の方向に引き出すことにより、前記シリンジ12内を占める該プランジャー14の体積を増大させ、該シリンジ12内の液体を吐出することを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、微流量ポンプ、特にその送液機構の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、各種の化学分析に用いられる伝統的な器具のダウンサイジングが注目され、微細加工技術を応用して、マイクロチップの上で複数の測定法や前処理を組み合わせた“μ−TAS:micro total−analysis system”等の分析システムの集積化が研究されている。
【0003】
本発明者は、内径が0.5mm以下のキャピラリー(毛管・毛細管・細管)を使用することによって、各種の化学分析法をダウンサイジング化したりマイクロ化することに着目して研究を進め、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)やフローインジェクション分析法(FIA)又は容量分析法などにおいて、試料溶液や移動相溶媒、キャリヤー液、試薬溶液又は標準溶液などを、通常の分析方法で使用されている体積の百分の一から千分の一程度で実行することを可能にした(非特許文献2参照)。例えば、反応管として内径0.2mm、長さ3〜10cmの溶解シリカキャピラリーを使用し、通常のフローインジェクション分析法(FIA)に比べ約千分の一のスケールにマイクロ化した超マイクロフローインジェクション分析法(U−MFIA)を開発した(非特許文献1参照)。そして、上記のU−MFIAをさらにマイクロ化して、その全流速を0.1μl/min(100nl/min)以下にしたナノフローインジェクション分析法(NFA)としても作動可能であることを実験的に確認した(非特許文献3参照)。
【0004】
【非特許文献1】
石井大道 「超マイクロフローインジェクション分析法の開発」 “ぶんせき” 日本分析化学会 2000年 No.11 p.690
【非特許文献2】
石井大道 「分析化学におけるキャピラリーの活用」 “分析化学” 日本分析化学会 2000年 49巻 12号 p.929
【非特許文献3】
石井、周、古野 日本分析化学会第50年会講演要旨集 2001年 p.92
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような通常の千分の一程度にマイクロ化した分析装置においては、0.1〜10μl/min程度の低流速で正確に作動する微小流量送液が可能な送液ポンプが必要になる。ところが、扱う液体の量が微量であること、またそれに伴い送液ポンプ自体も小型化されていることから、通常のシリンジ型のポンプでは、シリンジ内の液体を吐出する際に、液体を押し出すプランジャーの変形が起こり得る。その結果、プランジャーの撓みにより生じる流速の変動が大きな問題となる。
本発明は上記の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、正確に作動する微小流量送液が可能な微流量ポンプを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の微流量ポンプは、シリンジと、該シリンジ内の液体を吐出するプランジャーと、を備えたシリンジ型の送液ポンプであり、
前記プランジャーは、前記シリンジの内径以下の直径を持つ太線部と、該太線部よりも小さな直径を持つ細線部と、を備え、軸方向に沿って直径が変化する一本のプランジャーとして構成されたものを用いる。そして、前記プランジャーを所定の方向に引き出すことにより、前記シリンジ内を占める該プランジャーの体積を増大させ、該シリンジ内の液体を吐出することを特徴とする
【0007】
また、流路内を流れる全液体の吸引を行うシリンジ型の吸引用ポンプと、上記の微流量ポンプと、前記各ポンプのプランジャーを引き出すプランジャー駆動手段と、をそれぞれ単数又は複数備え、前記プランジャー駆動手段により、前記シリンジ型ポンプによる吸引と、前記微流量ポンプによる吐出と、を連動して行うことも好適である。
前記の微流量ポンプは、フローインジェクション分析装置や高速液体クロマトグラフに好適に使用することが可能である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して本発明の微流量ポンプの実施形態を説明する。図1に示された微流量ポンプ10は、シリンジ12とプランジャー14を備えている。プランジャー14は、シリンジの内径以下の直径を持った太線部14aと、該太線部14aよりも小さな直径を持つ細線部14bとを有している。図1中左半部が太線部14a、右半部が細線部14bとなっている。このように、プランジャー14は、その軸方向に沿って直径が変化している形状となっている。
【0009】
シリンジ12の両端面は、ゴムの栓などで密封されており、プランジャー14のみを通す微小な開口部が設けられている。その開口部を通り、プランジャー14の両端部がシリンジ12の外側に出ている。このプランジャー14の端部を引っ張ることによりプランジャー14を移動させる。液体はシリンジ12に取り付けられた注入口16からシリンジ12に注入され、微流量ポンプ10の使用時にはこの注入口16は閉じられている。
【0010】
シリンジ12内の液体の送液は、図1のようにプランジャー14の細線部14b側の端部を引き出すことにより行う。つまり、シリンジ12内を占める太線部14aの体積を増大させることで、その体積の変化分に相当した量の液体を出口18から吐出する。プランジャーの細線部14bは、プランジャー14のシリンジ12内を占める体積を変化させる手段として働く。よって、通常の押し出し型のシリンジポンプとは異なり、プランジャー14を引き出すことにより液体の吐出を行うため、プランジャー14の撓みが生じない。そのため、液体の吐出速度の変動が生じることなく、正確な微小流量送液が可能となる。
【0011】
また、上の説明では、プランジャー14の形状を太線部の一つの端部に細線部が接続されたものを説明したが、他の形状も可能である。例えば、上記プランジャーの細線部の両端部に、同じ直径を持つ太線部を接続し、吐出前には、細線部の両端の太線部がそれぞれ、その一部がシリンジ内にあるようにする。すると、プランジャーの引き出し始めは、シリンジ内を占めるプランジャーの体積の変化が起こらないが、一方の太線部がシリンジ内から完全にでた時点で、シリンジ内の液体の吐出が始まる。また、引き出す側の太線部を、他方の太線部よりも直径を小さくすることによって、液体の吐出速度を段階的に変化させることも可能である。これらの場合、シリンジの両端にあるプランジャーを通す開口部は、プランジャーの直径の変化に対応するように、ある程度の弾力性を有することが望ましい。また、プランジャー自体十分に細いものなので、シリンジ内の圧力が高すぎなければ、プランジャーと開口部と隙間がある程度あってもそこから液体は漏れ出すことはない。
【0012】
このように、プランジャーの形状を変更したり、プランジャーとシリンジの相対位置関係を変更することにより、シリンジ内の液体の吐出のタイミングを調整することも可能である。
【0013】
図2は、上記の微流量ポンプをフローインジェクション分析装置や高速液体クロマトグラフ等の化学分析装置に使用する場合の好適な一実施形態である。図1に対応する部分には符号100を加えた。図2のポンプは、複数の微流量ポンプ1101〜110nと全液体を吸引するための吸引用シリンジポンプ120とを備えている。吸引用シリンジポンプ120は、通常のシリンジ型のポンプであり、シリンジ122とプランジャー124を備えている。
【0014】
プランジャー駆動手段126によって、吸引用シリンジポンプ120のプランジャー124と微流量ポンプ1101〜110nのプランジャー1141〜114nとが、連動して引き出される。それに伴い、微流量ポンプ1101〜110nのシリンジ1121〜112n内に蓄えられた液体(試薬溶液、試料溶液等)が流路へと吐出され、また、吸引用シリンジポンプ120によって、流路内を流れる全液体の吸引が行われる。また、吸引用シリンジポンプ120によって吸引される液体の流速と微流量ポンプ1101〜110nによって吐出される液体の流速との差に相当した流速で、吸引口128から試料やキャリヤー液等の液体が流路内に吸引される。
【0015】
つまり、流路内の全液体の流速は吸引用シリンジポンプ120によって制御される。微流量ポンプ1101〜110nや吸引用シリンジポンプ120のプランジャーやシリンジの大きさ、プランジャーの引き始めの時点での太線部と細線部の位置等を調節することにより、吸引口で吸引される液体の流速、各微流量ポンプによる吐出のタイミング等を制御することができる。また、プランジャー駆動手段を複数備えることにより、微流量ポンプから液体を吐出する開始時間や、吐出の持続時間、吐出の終了時間等を、各微流量ポンプ毎に異なるようにすることも可能である。
【0016】
【実施例】
図3は、本発明の微流量ポンプを使用したフローインジェクション分析装置の概念図である。図2に対応する部分には符号100の代わりに符号200を加えた。図3のフローインジェクション分析装置は、全流量を制御するための吸引用シリンジポンプ220と、試薬溶液238を送液するための微流量ポンプ210を備えている。こららのポンプはプランジャー駆動手段226としてのデジタルシリンジポンプ226(KD−Scientific製)によって、プランジャーの引き出しが行われる。
【0017】
反応管236としては、内径100μm、外径375μm、長さ5〜50mmの融解シリカキャピラリーを使用した。このキャピラリーのポリイミド樹脂の被膜を剥がした部分をマイクロフローセルとし、ここで検出器230により測定を行う。
【0018】
吸引用シリンジポンプ220のシリンジ222、微流量ポンプ210のシリンジ212には、マイクロシリンジを用いる。また、吸引用シリンジポンプ220のプランジャー224には、直径0.25mm(長さ1mm当たりの体積は49.1nl)の市販のステンレス線を使用した。また、微流量ポンプ210のプランジャー214の材料としては、その太線部214aに直径0.13mm(長さ1mm当たりの体積は13.3nl)のステンレス線を、細線部214bに直径0.075mm(長さ1mm当たりの体積は4.4nl)のステンレス線をそれぞれ使用した。図3のように微流量ポンプ214のプランジャー細線部214bとシリンジポンプのプランジャー224とを、デジタルシリンジポンプ226を用いて連動して同時に引き出すことにより、吸引用シリンジポンプ220による流路を流れる全液体の吸引と、微流量ポンプ210による試薬溶液238の吐出とが行われる。また吸引用シリンジポンプ220による吸引量と、微流量ポンプ210による試薬溶液238の吐出量との差に相当する量のキャリヤー液232または試料溶液234が、吸引口228で吸引される。
【0019】
キャリヤー液232と試料溶液234は所定の時間間隔で交互に反応管236へと送液され、反応管236にて試料溶液234と試薬溶液238とを反応させた後、検出器230で吸光度等が測定される。全流速を1〜100nl/minの各流速で変更し、実験的な検討を行ったが、フローシグナルなどの測定結果は良好なものであった。このように、本発明の微流量ポンプを、フローインジェクション分析装置に用いることにより、微量試料の分析を的確に行うことが可能になる。
【0020】
この実施例では、一台の微流量ポンプを使用したが、分析する方法に従い複数の微流量ポンプ、複数のプランジャー駆動手段を用いて複数の試薬溶液等を送液することができる。また、ポンプに使用するプランジャーの断面積の大きさを調節することにより、流路に流れる試薬溶液、キャリヤー液、試料溶液の流速比を変更することが可能である。
【0021】
図4は、本発明の微流量ポンプを使用した高速液体クロマトグラフの概念図である。図2に対応する部分には符号100の代わりに符号300を加えた。図4の高速液体クロマトグラフは、図3のフローインジェクション分析装置とほぼ同じ構成であり、反応管の部分にカラム340が設置されている。カラム340としては、例えばマイクロキャピラリーカラム等を用いればよい。プランジャー駆動手段326により、吸引用シリンジポンプ320と微流量ポンプ310のそれぞれのプランジャー324、314が引き出される。その結果、吸引用シリンジポンプ320により流路内の全液体が吸引され、微流量ポンプ310によりそのシリンジ内に蓄えられた試料溶液344が流路に送られる。また、移動相溶液342が吸引口328により吸引され、流路へと送液される。微流量ポンプ310により吐出された試料溶液344は分離カラム340へと送られ分離された後、検出器330によって測定が行われる。
【0022】
試料溶液344や移動相溶液342の流速の制御は、上に述べたものと同様である。つまり、吸引用シリンジポンプ320の吸引量によって、流路内の全液体の流速が決定され、微流量ポンプ310の吐出量によって、試料溶液344の吐出速度がきまる。吸引用シリンジポンプ320による全流速と微流量ポンプ310による試料溶液344の吐出速度との差に相当する流速が、吸引口328で吸引される移動相溶液342の流速となる。このように、本発明の微流量ポンプを微量試料の送液に用いているので、正確な低流速送液が可能となる。
また、本発明は上記の構成に限られるものではなく、適切に構成を変更することによりグラジエント溶出法などに適用することも容易である。
【0023】
【発明の効果】
本発明の微流量ポンプによれば、簡易な構成で、正確な微小流量の送液が可能となる。また、本発明の微流量ポンプを、フローインジェクション分析装置や高速液体クロマトグラフ等の化学分析装置に用いることで、微小試料の分析を正確に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の微流量ポンプ
【図2】本発明の微流量ポンプを用いた送液の説明図
【図3】微流量ポンプを用いたフローインジェクション分析装置
【図4】微流量ポンプを用いた高速液体クロマトグラフ
【符号の説明】
10…微流量ポンプ
12…シリンジ
14…プランジャー
14a…太線部
14b…細線部
【発明の属する技術分野】
本発明は、微流量ポンプ、特にその送液機構の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、各種の化学分析に用いられる伝統的な器具のダウンサイジングが注目され、微細加工技術を応用して、マイクロチップの上で複数の測定法や前処理を組み合わせた“μ−TAS:micro total−analysis system”等の分析システムの集積化が研究されている。
【0003】
本発明者は、内径が0.5mm以下のキャピラリー(毛管・毛細管・細管)を使用することによって、各種の化学分析法をダウンサイジング化したりマイクロ化することに着目して研究を進め、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)やフローインジェクション分析法(FIA)又は容量分析法などにおいて、試料溶液や移動相溶媒、キャリヤー液、試薬溶液又は標準溶液などを、通常の分析方法で使用されている体積の百分の一から千分の一程度で実行することを可能にした(非特許文献2参照)。例えば、反応管として内径0.2mm、長さ3〜10cmの溶解シリカキャピラリーを使用し、通常のフローインジェクション分析法(FIA)に比べ約千分の一のスケールにマイクロ化した超マイクロフローインジェクション分析法(U−MFIA)を開発した(非特許文献1参照)。そして、上記のU−MFIAをさらにマイクロ化して、その全流速を0.1μl/min(100nl/min)以下にしたナノフローインジェクション分析法(NFA)としても作動可能であることを実験的に確認した(非特許文献3参照)。
【0004】
【非特許文献1】
石井大道 「超マイクロフローインジェクション分析法の開発」 “ぶんせき” 日本分析化学会 2000年 No.11 p.690
【非特許文献2】
石井大道 「分析化学におけるキャピラリーの活用」 “分析化学” 日本分析化学会 2000年 49巻 12号 p.929
【非特許文献3】
石井、周、古野 日本分析化学会第50年会講演要旨集 2001年 p.92
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような通常の千分の一程度にマイクロ化した分析装置においては、0.1〜10μl/min程度の低流速で正確に作動する微小流量送液が可能な送液ポンプが必要になる。ところが、扱う液体の量が微量であること、またそれに伴い送液ポンプ自体も小型化されていることから、通常のシリンジ型のポンプでは、シリンジ内の液体を吐出する際に、液体を押し出すプランジャーの変形が起こり得る。その結果、プランジャーの撓みにより生じる流速の変動が大きな問題となる。
本発明は上記の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、正確に作動する微小流量送液が可能な微流量ポンプを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の微流量ポンプは、シリンジと、該シリンジ内の液体を吐出するプランジャーと、を備えたシリンジ型の送液ポンプであり、
前記プランジャーは、前記シリンジの内径以下の直径を持つ太線部と、該太線部よりも小さな直径を持つ細線部と、を備え、軸方向に沿って直径が変化する一本のプランジャーとして構成されたものを用いる。そして、前記プランジャーを所定の方向に引き出すことにより、前記シリンジ内を占める該プランジャーの体積を増大させ、該シリンジ内の液体を吐出することを特徴とする
【0007】
また、流路内を流れる全液体の吸引を行うシリンジ型の吸引用ポンプと、上記の微流量ポンプと、前記各ポンプのプランジャーを引き出すプランジャー駆動手段と、をそれぞれ単数又は複数備え、前記プランジャー駆動手段により、前記シリンジ型ポンプによる吸引と、前記微流量ポンプによる吐出と、を連動して行うことも好適である。
前記の微流量ポンプは、フローインジェクション分析装置や高速液体クロマトグラフに好適に使用することが可能である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して本発明の微流量ポンプの実施形態を説明する。図1に示された微流量ポンプ10は、シリンジ12とプランジャー14を備えている。プランジャー14は、シリンジの内径以下の直径を持った太線部14aと、該太線部14aよりも小さな直径を持つ細線部14bとを有している。図1中左半部が太線部14a、右半部が細線部14bとなっている。このように、プランジャー14は、その軸方向に沿って直径が変化している形状となっている。
【0009】
シリンジ12の両端面は、ゴムの栓などで密封されており、プランジャー14のみを通す微小な開口部が設けられている。その開口部を通り、プランジャー14の両端部がシリンジ12の外側に出ている。このプランジャー14の端部を引っ張ることによりプランジャー14を移動させる。液体はシリンジ12に取り付けられた注入口16からシリンジ12に注入され、微流量ポンプ10の使用時にはこの注入口16は閉じられている。
【0010】
シリンジ12内の液体の送液は、図1のようにプランジャー14の細線部14b側の端部を引き出すことにより行う。つまり、シリンジ12内を占める太線部14aの体積を増大させることで、その体積の変化分に相当した量の液体を出口18から吐出する。プランジャーの細線部14bは、プランジャー14のシリンジ12内を占める体積を変化させる手段として働く。よって、通常の押し出し型のシリンジポンプとは異なり、プランジャー14を引き出すことにより液体の吐出を行うため、プランジャー14の撓みが生じない。そのため、液体の吐出速度の変動が生じることなく、正確な微小流量送液が可能となる。
【0011】
また、上の説明では、プランジャー14の形状を太線部の一つの端部に細線部が接続されたものを説明したが、他の形状も可能である。例えば、上記プランジャーの細線部の両端部に、同じ直径を持つ太線部を接続し、吐出前には、細線部の両端の太線部がそれぞれ、その一部がシリンジ内にあるようにする。すると、プランジャーの引き出し始めは、シリンジ内を占めるプランジャーの体積の変化が起こらないが、一方の太線部がシリンジ内から完全にでた時点で、シリンジ内の液体の吐出が始まる。また、引き出す側の太線部を、他方の太線部よりも直径を小さくすることによって、液体の吐出速度を段階的に変化させることも可能である。これらの場合、シリンジの両端にあるプランジャーを通す開口部は、プランジャーの直径の変化に対応するように、ある程度の弾力性を有することが望ましい。また、プランジャー自体十分に細いものなので、シリンジ内の圧力が高すぎなければ、プランジャーと開口部と隙間がある程度あってもそこから液体は漏れ出すことはない。
【0012】
このように、プランジャーの形状を変更したり、プランジャーとシリンジの相対位置関係を変更することにより、シリンジ内の液体の吐出のタイミングを調整することも可能である。
【0013】
図2は、上記の微流量ポンプをフローインジェクション分析装置や高速液体クロマトグラフ等の化学分析装置に使用する場合の好適な一実施形態である。図1に対応する部分には符号100を加えた。図2のポンプは、複数の微流量ポンプ1101〜110nと全液体を吸引するための吸引用シリンジポンプ120とを備えている。吸引用シリンジポンプ120は、通常のシリンジ型のポンプであり、シリンジ122とプランジャー124を備えている。
【0014】
プランジャー駆動手段126によって、吸引用シリンジポンプ120のプランジャー124と微流量ポンプ1101〜110nのプランジャー1141〜114nとが、連動して引き出される。それに伴い、微流量ポンプ1101〜110nのシリンジ1121〜112n内に蓄えられた液体(試薬溶液、試料溶液等)が流路へと吐出され、また、吸引用シリンジポンプ120によって、流路内を流れる全液体の吸引が行われる。また、吸引用シリンジポンプ120によって吸引される液体の流速と微流量ポンプ1101〜110nによって吐出される液体の流速との差に相当した流速で、吸引口128から試料やキャリヤー液等の液体が流路内に吸引される。
【0015】
つまり、流路内の全液体の流速は吸引用シリンジポンプ120によって制御される。微流量ポンプ1101〜110nや吸引用シリンジポンプ120のプランジャーやシリンジの大きさ、プランジャーの引き始めの時点での太線部と細線部の位置等を調節することにより、吸引口で吸引される液体の流速、各微流量ポンプによる吐出のタイミング等を制御することができる。また、プランジャー駆動手段を複数備えることにより、微流量ポンプから液体を吐出する開始時間や、吐出の持続時間、吐出の終了時間等を、各微流量ポンプ毎に異なるようにすることも可能である。
【0016】
【実施例】
図3は、本発明の微流量ポンプを使用したフローインジェクション分析装置の概念図である。図2に対応する部分には符号100の代わりに符号200を加えた。図3のフローインジェクション分析装置は、全流量を制御するための吸引用シリンジポンプ220と、試薬溶液238を送液するための微流量ポンプ210を備えている。こららのポンプはプランジャー駆動手段226としてのデジタルシリンジポンプ226(KD−Scientific製)によって、プランジャーの引き出しが行われる。
【0017】
反応管236としては、内径100μm、外径375μm、長さ5〜50mmの融解シリカキャピラリーを使用した。このキャピラリーのポリイミド樹脂の被膜を剥がした部分をマイクロフローセルとし、ここで検出器230により測定を行う。
【0018】
吸引用シリンジポンプ220のシリンジ222、微流量ポンプ210のシリンジ212には、マイクロシリンジを用いる。また、吸引用シリンジポンプ220のプランジャー224には、直径0.25mm(長さ1mm当たりの体積は49.1nl)の市販のステンレス線を使用した。また、微流量ポンプ210のプランジャー214の材料としては、その太線部214aに直径0.13mm(長さ1mm当たりの体積は13.3nl)のステンレス線を、細線部214bに直径0.075mm(長さ1mm当たりの体積は4.4nl)のステンレス線をそれぞれ使用した。図3のように微流量ポンプ214のプランジャー細線部214bとシリンジポンプのプランジャー224とを、デジタルシリンジポンプ226を用いて連動して同時に引き出すことにより、吸引用シリンジポンプ220による流路を流れる全液体の吸引と、微流量ポンプ210による試薬溶液238の吐出とが行われる。また吸引用シリンジポンプ220による吸引量と、微流量ポンプ210による試薬溶液238の吐出量との差に相当する量のキャリヤー液232または試料溶液234が、吸引口228で吸引される。
【0019】
キャリヤー液232と試料溶液234は所定の時間間隔で交互に反応管236へと送液され、反応管236にて試料溶液234と試薬溶液238とを反応させた後、検出器230で吸光度等が測定される。全流速を1〜100nl/minの各流速で変更し、実験的な検討を行ったが、フローシグナルなどの測定結果は良好なものであった。このように、本発明の微流量ポンプを、フローインジェクション分析装置に用いることにより、微量試料の分析を的確に行うことが可能になる。
【0020】
この実施例では、一台の微流量ポンプを使用したが、分析する方法に従い複数の微流量ポンプ、複数のプランジャー駆動手段を用いて複数の試薬溶液等を送液することができる。また、ポンプに使用するプランジャーの断面積の大きさを調節することにより、流路に流れる試薬溶液、キャリヤー液、試料溶液の流速比を変更することが可能である。
【0021】
図4は、本発明の微流量ポンプを使用した高速液体クロマトグラフの概念図である。図2に対応する部分には符号100の代わりに符号300を加えた。図4の高速液体クロマトグラフは、図3のフローインジェクション分析装置とほぼ同じ構成であり、反応管の部分にカラム340が設置されている。カラム340としては、例えばマイクロキャピラリーカラム等を用いればよい。プランジャー駆動手段326により、吸引用シリンジポンプ320と微流量ポンプ310のそれぞれのプランジャー324、314が引き出される。その結果、吸引用シリンジポンプ320により流路内の全液体が吸引され、微流量ポンプ310によりそのシリンジ内に蓄えられた試料溶液344が流路に送られる。また、移動相溶液342が吸引口328により吸引され、流路へと送液される。微流量ポンプ310により吐出された試料溶液344は分離カラム340へと送られ分離された後、検出器330によって測定が行われる。
【0022】
試料溶液344や移動相溶液342の流速の制御は、上に述べたものと同様である。つまり、吸引用シリンジポンプ320の吸引量によって、流路内の全液体の流速が決定され、微流量ポンプ310の吐出量によって、試料溶液344の吐出速度がきまる。吸引用シリンジポンプ320による全流速と微流量ポンプ310による試料溶液344の吐出速度との差に相当する流速が、吸引口328で吸引される移動相溶液342の流速となる。このように、本発明の微流量ポンプを微量試料の送液に用いているので、正確な低流速送液が可能となる。
また、本発明は上記の構成に限られるものではなく、適切に構成を変更することによりグラジエント溶出法などに適用することも容易である。
【0023】
【発明の効果】
本発明の微流量ポンプによれば、簡易な構成で、正確な微小流量の送液が可能となる。また、本発明の微流量ポンプを、フローインジェクション分析装置や高速液体クロマトグラフ等の化学分析装置に用いることで、微小試料の分析を正確に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の微流量ポンプ
【図2】本発明の微流量ポンプを用いた送液の説明図
【図3】微流量ポンプを用いたフローインジェクション分析装置
【図4】微流量ポンプを用いた高速液体クロマトグラフ
【符号の説明】
10…微流量ポンプ
12…シリンジ
14…プランジャー
14a…太線部
14b…細線部
Claims (4)
- シリンジと、該シリンジ内の液体を吐出するプランジャーと、を備えたシリンジ型の送液ポンプにおいて、
前記プランジャーは、前記シリンジの内径以下の直径を持つ太線部と、該太線部よりも小さな直径を持つ細線部と、を備え、軸方向に沿って直径が変化する一本のプランジャーとして構成され、
前記プランジャーを所定の方向に引き出すことにより、前記シリンジ内を占める該プランジャーの体積を増大させ、該シリンジ内の液体を吐出することを特徴とする微流量ポンプ。 - 流路内を流れる全液体の吸引を行うシリンジ型の吸引用ポンプと、請求項1記載の微流量ポンプと、前記各ポンプのプランジャーを引き出すプランジャー駆動手段と、をそれぞれ単数又は複数備え、
前記プランジャー駆動手段により、前記シリンジ型ポンプによる吸引と、前記微流量ポンプによる吐出と、を連動して行うことを特徴とする微流量ポンプ。 - 請求項1または2の微流量ポンプを備えたことを特徴とするフローインジェクション分析装置。
- 請求項1または2の微流量ポンプを備えたことを特徴とする高速液体クロマトグラフ。
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2002
- 2002-09-17 JP JP2002270308A patent/JP2004108884A/ja active Pending
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