JP2004106294A - 難燃剤及びその難燃剤を含浸させた建築用木質部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、火災に際しての発煙を抑え、残炎を極めて少なくし、かつ有害物質の発生をなくした不燃化或いは難燃化の建築用木質部材を得ることのできる不燃剤或いは難燃剤を提供することである。また、これら難燃剤を含浸・塗布した建築用木質部材を提供するものである。
【解決手段】火災に対して有効な不燃化或いは難燃化の建築用木質部材を実現するために、シラスの上澄み液にホウ酸および硼砂を加えたことを特徴とする難燃剤を作製し、それを木材に加圧注入させ、上記にある付加価値を得た建築用木質部材を可能とする。
【選択図】 図7
【解決手段】火災に対して有効な不燃化或いは難燃化の建築用木質部材を実現するために、シラスの上澄み液にホウ酸および硼砂を加えたことを特徴とする難燃剤を作製し、それを木材に加圧注入させ、上記にある付加価値を得た建築用木質部材を可能とする。
【選択図】 図7
Description
【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、建築物等に使用される木質部材に適用する不燃剤或いは難燃剤及び不燃・難燃剤を含浸させた建築用木質部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
木造住宅は、日本特有の気候風土によく適応しており、特に高温多湿な夏のシーズンには、コンクリート主体の住宅に比べ、極めて快適な住空間を提供している。また住宅には、雨、風等による自然災害或いは外部の侵入者から住宅に生活している者を保護するという大きな目的もあり、さらにはその住宅の本来の性能を維持できる耐久性が必要とされる。ところでここ数年、火災発生は例年6万件程度、それによる死傷者は1万人をくだらない(消防庁「図説わかりやすい国民生活」から転載)。そのうち、内装仕上げ部材が木質系と考えると、そのほとんどの原因が木材あるいは木質系素材によるものと考えられる。またハロゲン系防炎剤を利用した防炎木材では、火災により高温に熱せられると有毒ガスや煙を発生し、近年それによる死傷者が多くなっている。このため建築用木質部材には、出火時では火元からの熱で容易に着火しない性質、さらに着火した場合でも容易に火災が拡大しないような性質が要求される。また、その際の煙や有害ガス発生量を極力押さえることも要求される。
【0003】
火災の予防においては、初期段階での着火性能を押さえること、さらに火炎の伝播拡大を抑えることが極めて重要である。そのため建築基準法では、火災発生時から30分以内での建築材料の燃焼・炎伝播状況が極めて重要であるとされ、防火・防災基準が規定されている。また材料の不燃、準不燃基準は、ある加温―時間曲線に対して、5分、10分、或いは20分での耐熱特性でその基準を数値化している。建築基準法の防火・防災規準に適合する材料として、次のような試験方法がある。
【0004】
建築基準法第2条第7号に定められる耐火性能試験に基づく加熱温度は、炉内熱電対によって測定した温度の時間経過が次式で表せる数値となるように加熱する。
T=345log10(8t+1)+20として加熱する。
ここで、T:平均炉内温度(℃)、t:試験の経過時間(分)である。この加熱温度で、板材と柱による構造壁を構成し、柱にはあらかじめ荷重を載荷しておく。この状態で上記の加熱条件で、30分間壁が燃焼しても柱が荷重に耐えうる場合を純不燃、45分を不燃、一時間を耐火材料と規定している。
【0005】
また、コ−ンカロリーメ−タでは火災初期に相当する熱量(30−50kw/平方メートル)を材料に与え、燃え広がりを評価すると同時に燃焼量の発熱量、発煙量を測定するものであり、所定の時間経過後に1)8MJ/平方メートル以下の発熱量であること、2)防火上有害な裏面まで貫通する亀裂及び穴がないこと、3)最高発熱量が、10秒以上継続して200KW/平方メートルを越えないこととなっており、格付けとして、各20分間、10分間で、5分間の総発熱量が8MJ/平方メートル以下をそれぞれ不燃、純不燃、難燃と決めている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、火災に際しての発煙を抑え、残炎を極めて少なくし、かつ有害物質の発生をなくした不燃化或いは難燃化の建築用木質部材を得ることのできる不燃剤或いは難燃剤を提供することである。また、これら難燃剤を含浸・塗布した建築用木質部材を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決したもので、ホウ酸0.1%〜20%の水溶液にシラスの微粒子0%〜20%加えた水溶液であることを特徴とする難燃剤である。なおシラスの化学的性質は、重量比で70%前後がケイ酸、14〜15%が酸化アルミニウム、その他は酸化カルシウム・酸化マグネシウム・酸化1鉄・酸化2鉄・酸化マンガンなどである。シラスは急速加熱すると表面が軟化するとともに、内部の水分がガス化して発泡現象を生じ、断熱効果のある多孔質皮膜を形成することが知られている。この効果を期待して難燃剤を提案した。
【0008】
また、硼砂の0.1%〜20%の水溶液にシラスの微粒子0%〜20%加えた水溶液であることを特徴とする難燃剤である。
【0009】
さらに、ホウ酸0.1%〜20%の水溶液と硼砂の5%〜20%の混合水溶液にシラスの微粒子0%〜20%加えた水溶液であることを特徴とする難燃剤である。
【0010】
また、下記の工程よりなる難燃剤を含浸させた建築用木質部材。
1、予め木材に衝撃波負荷し閉塞した有縁壁孔を破壊させ、水分の透過性を向上させ、木材の水分及び油脂分を取り除き、木材の部材中の空隙を確保する。
2、上記木材に、上記請求項1〜3のいずれかに記載の難燃剤を充分に浸透させる。
3、その後、常温或いは高温にて、加圧処理を数回繰り返し、部材中に難燃剤が充分木材の中部まで浸透されたことを特徴とする木材を得る。
4、その後、適宜温度と時間により乾燥させて難燃木質部材を得る。
【0011】
【発明の実施の形態】
【実施例1】水にホウ酸5%を溶解させる(試作水溶液1)。また硼砂5%を水に溶解させる(試作水溶液2)。両者の水溶液を均等に混合する。この場合シラスは0%である。これを杉材(大きさ200mm×200mm、厚さ25mm)に対し、常温及び高温にて加圧注入法により充填を行う。加圧含浸を数回繰り返す。得られた含浸量は100kg〜460kg程度毎立方メートルであった。これを、試験材20とする。
【0012】
乾操方法は、一般の木材加温乾燥法によった。なお一例を示す。50℃にて24時間、その後60℃〜105℃にて48時間の調湿乾燥を行う。上記実施例1によって含浸処理及び乾燥させた杉材の加温性能試験を行った。図1は試験装置である。熱源15を内蔵した炉内温度をあらかじめ上昇させておく。試験材の表と裏に外部計測用熱電対12と高温側計測用熱電対13を取り付け、断熱ボード11で枠組し、炉内からの燃焼炎が外部に漏れないようにして、外部計測用熱電対12の面が炉16の外側になるようにして、炉16に取り付ける。
【0013】
炉内の温度変化を図2に示す。線21は難燃剤を未注入の場合の加温曲線である。線22はホウ酸と硼砂のみで作製した難燃剤を注入した場合の加温曲線である。線23は建築基準法第2条第7号に定められた耐火性の試験基準加温曲線である。本提案特許の難燃試験対象結果を得たいずれの加温過程は、同基準と比べ、ほぼ同様であると判断される。なお難燃剤未注入の場合は26分程度で加温曲線が止まっているが、この段階で炉16内の炎が完全に試験材の外部までまわり、完全に試験材が燃焼したため、ここで実験を終了した。
【0014】
実施例として、試験材の外部表面の温度上昇結果を図3に示す。線31は、難燃剤未注入試験材の場合の温度上昇を示す。15分過ぎてから大幅に温度が上昇し、22分で100°Cに到達26分で燃焼を起こした。これに対して、試験材20の場合は、線32に示すように、試験後30分後90°C程度まで上昇したが、表面の燃焼までは至らなかった。この場合、板厚の22%が残存した。
【0015】
【実施例2】シラス微粉を水に攪拌し、一定時間放置しその上澄みを採取する。これにホウ酸5%を完全に溶解させる(試作水溶液1)。またシラス微粉を水に攪拌し、一定時間放置しその上澄みを採取する。これに硼砂5%を完全に溶解させる(試作水溶液2)。両者の水溶液を均等に混合する。これを杉材(大きさ200mm×200mm、厚さ25mm)に対し、常温及び高温にて加圧注入法により充填を行う。加圧含浸法を数回繰り返す。得られた含浸量は100kg〜460kg毎立方メートルであった。これを試験材22とする。
【0016】
炉内の温度変化を図4に示す。線41は、難燃剤を未注入の場合の加温曲線である。線42は、シラスの上澄み液にホウ酸と硼砂を溶解させて作製した難燃剤を注入した場合の加温曲線である。線43は、建築基準法第2条第7号に定められた耐火性の試験基準加温曲線である。本提案特許の難燃試験対象結果を得たいずれの加温過程は、同基準と比べ、ほぼ同様であると判断される。
【0017】
試験材の外部表面の温度上昇結果を図5に示す。線51は、難燃剤未注入試験材の場合の温度上昇を参考に示す。また線52は、試験材20の温度上昇結果である。試験後30分後90°C程度まで上昇したが、表面の燃焼までは至らなかった。線53は、試験材22の温度上昇結果である。加温後15分程度までは徐々に温度が50°Cまで上昇し、その後、30分間の試験では60°C程度でほぼ一定であった。試験材20の結果と比較し、難燃性の大幅な向上が見られる。
【0018】
図6は、30分間加温試験した試験材の燃焼形状を、試験材の断面写真で示す。加熱側は炭化が進んでいることが分かるが、外部には十分木質が観察される。特に、シラスの上澄み液にホウ酸と硼砂を溶解させて作製した難燃剤を注入した試験材は、その木質部の残存が大きいことが分かる。図7は、その加温試験後、試験材の残存量の結果を示す。シラスの上澄み液にホウ酸と硼砂を溶解させて作製した難燃剤を注入した場合はおよそ50%の木質部が残存した。このように、著しい難燃特性が得られた。
【0019】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の防炎剤は、木材に浸透させることにより木材の不燃、純不燃効果が期待でき、耐火性の強い木造住宅を提供できるという大きな利点があり、従来住宅密集地での住宅外壁や壁等の材料として、利用されていなかった木材の用途開発が可能となる。このことによって木材のさらなる需要を引き起こすことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】加温試験の実施方法を示した説明図である。(実施例1)
【図2】炉内加温試験結果(実施例1)および耐火性能試験基準値を示した図である。
【図3】試験材外部温度結果(実施例1)を示した図である。
【図4】炉内加温試験結果(実施例2)を示した図である。
【図5】試験材外部温度結果(実施例2)を示した図である。
【図6】実施例1、2による試験材について、それらの燃焼結果を示した図である。
【図7】実施例1、2による試験材について、それらの燃焼残量結果を示した図である。
【符号の説明】
11 断熱ボード
12 学部計測用熱電対
13 高温側計測用熱電対
14 試験材
15 熱源
16 炉
21 難燃剤を未注入の場合の加温曲線
22 ホウ酸と硼砂のみで作製した難燃剤を注入した場合の加温曲線
23 耐火性能試験基準値
31 難燃剤未注入試験材の外部表面の温度上昇結果
32 ホウ酸と硼砂のみで作製した難燃剤を注入した試験材(試験材20)の外部表面の温度上昇結果
41 難燃剤未注入の場合の加温曲線
42 シラスの上澄み液にホウ酸と硼砂を溶解させて作製した難燃剤を注入した場合の加温曲線
43 耐火性能試験基準値
51 難燃剤未注入試験材の外部表面の温度上昇結果
52 試験材20の外部表面の温度上昇結果
53 シラスの上澄み液にホウ酸と硼砂を溶解させて作製した難燃剤を注入した試験材(試験材22)の外部表面の温度上昇結果
61 試験材20の燃焼形状(断面図)
62 試験材22の燃焼形状(断面図)
71 難燃剤未注入試験材の残存量
72 試験材20の残存量
73 試験材22の残存量
【発明が属する技術分野】
本発明は、建築物等に使用される木質部材に適用する不燃剤或いは難燃剤及び不燃・難燃剤を含浸させた建築用木質部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
木造住宅は、日本特有の気候風土によく適応しており、特に高温多湿な夏のシーズンには、コンクリート主体の住宅に比べ、極めて快適な住空間を提供している。また住宅には、雨、風等による自然災害或いは外部の侵入者から住宅に生活している者を保護するという大きな目的もあり、さらにはその住宅の本来の性能を維持できる耐久性が必要とされる。ところでここ数年、火災発生は例年6万件程度、それによる死傷者は1万人をくだらない(消防庁「図説わかりやすい国民生活」から転載)。そのうち、内装仕上げ部材が木質系と考えると、そのほとんどの原因が木材あるいは木質系素材によるものと考えられる。またハロゲン系防炎剤を利用した防炎木材では、火災により高温に熱せられると有毒ガスや煙を発生し、近年それによる死傷者が多くなっている。このため建築用木質部材には、出火時では火元からの熱で容易に着火しない性質、さらに着火した場合でも容易に火災が拡大しないような性質が要求される。また、その際の煙や有害ガス発生量を極力押さえることも要求される。
【0003】
火災の予防においては、初期段階での着火性能を押さえること、さらに火炎の伝播拡大を抑えることが極めて重要である。そのため建築基準法では、火災発生時から30分以内での建築材料の燃焼・炎伝播状況が極めて重要であるとされ、防火・防災基準が規定されている。また材料の不燃、準不燃基準は、ある加温―時間曲線に対して、5分、10分、或いは20分での耐熱特性でその基準を数値化している。建築基準法の防火・防災規準に適合する材料として、次のような試験方法がある。
【0004】
建築基準法第2条第7号に定められる耐火性能試験に基づく加熱温度は、炉内熱電対によって測定した温度の時間経過が次式で表せる数値となるように加熱する。
T=345log10(8t+1)+20として加熱する。
ここで、T:平均炉内温度(℃)、t:試験の経過時間(分)である。この加熱温度で、板材と柱による構造壁を構成し、柱にはあらかじめ荷重を載荷しておく。この状態で上記の加熱条件で、30分間壁が燃焼しても柱が荷重に耐えうる場合を純不燃、45分を不燃、一時間を耐火材料と規定している。
【0005】
また、コ−ンカロリーメ−タでは火災初期に相当する熱量(30−50kw/平方メートル)を材料に与え、燃え広がりを評価すると同時に燃焼量の発熱量、発煙量を測定するものであり、所定の時間経過後に1)8MJ/平方メートル以下の発熱量であること、2)防火上有害な裏面まで貫通する亀裂及び穴がないこと、3)最高発熱量が、10秒以上継続して200KW/平方メートルを越えないこととなっており、格付けとして、各20分間、10分間で、5分間の総発熱量が8MJ/平方メートル以下をそれぞれ不燃、純不燃、難燃と決めている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、火災に際しての発煙を抑え、残炎を極めて少なくし、かつ有害物質の発生をなくした不燃化或いは難燃化の建築用木質部材を得ることのできる不燃剤或いは難燃剤を提供することである。また、これら難燃剤を含浸・塗布した建築用木質部材を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決したもので、ホウ酸0.1%〜20%の水溶液にシラスの微粒子0%〜20%加えた水溶液であることを特徴とする難燃剤である。なおシラスの化学的性質は、重量比で70%前後がケイ酸、14〜15%が酸化アルミニウム、その他は酸化カルシウム・酸化マグネシウム・酸化1鉄・酸化2鉄・酸化マンガンなどである。シラスは急速加熱すると表面が軟化するとともに、内部の水分がガス化して発泡現象を生じ、断熱効果のある多孔質皮膜を形成することが知られている。この効果を期待して難燃剤を提案した。
【0008】
また、硼砂の0.1%〜20%の水溶液にシラスの微粒子0%〜20%加えた水溶液であることを特徴とする難燃剤である。
【0009】
さらに、ホウ酸0.1%〜20%の水溶液と硼砂の5%〜20%の混合水溶液にシラスの微粒子0%〜20%加えた水溶液であることを特徴とする難燃剤である。
【0010】
また、下記の工程よりなる難燃剤を含浸させた建築用木質部材。
1、予め木材に衝撃波負荷し閉塞した有縁壁孔を破壊させ、水分の透過性を向上させ、木材の水分及び油脂分を取り除き、木材の部材中の空隙を確保する。
2、上記木材に、上記請求項1〜3のいずれかに記載の難燃剤を充分に浸透させる。
3、その後、常温或いは高温にて、加圧処理を数回繰り返し、部材中に難燃剤が充分木材の中部まで浸透されたことを特徴とする木材を得る。
4、その後、適宜温度と時間により乾燥させて難燃木質部材を得る。
【0011】
【発明の実施の形態】
【実施例1】水にホウ酸5%を溶解させる(試作水溶液1)。また硼砂5%を水に溶解させる(試作水溶液2)。両者の水溶液を均等に混合する。この場合シラスは0%である。これを杉材(大きさ200mm×200mm、厚さ25mm)に対し、常温及び高温にて加圧注入法により充填を行う。加圧含浸を数回繰り返す。得られた含浸量は100kg〜460kg程度毎立方メートルであった。これを、試験材20とする。
【0012】
乾操方法は、一般の木材加温乾燥法によった。なお一例を示す。50℃にて24時間、その後60℃〜105℃にて48時間の調湿乾燥を行う。上記実施例1によって含浸処理及び乾燥させた杉材の加温性能試験を行った。図1は試験装置である。熱源15を内蔵した炉内温度をあらかじめ上昇させておく。試験材の表と裏に外部計測用熱電対12と高温側計測用熱電対13を取り付け、断熱ボード11で枠組し、炉内からの燃焼炎が外部に漏れないようにして、外部計測用熱電対12の面が炉16の外側になるようにして、炉16に取り付ける。
【0013】
炉内の温度変化を図2に示す。線21は難燃剤を未注入の場合の加温曲線である。線22はホウ酸と硼砂のみで作製した難燃剤を注入した場合の加温曲線である。線23は建築基準法第2条第7号に定められた耐火性の試験基準加温曲線である。本提案特許の難燃試験対象結果を得たいずれの加温過程は、同基準と比べ、ほぼ同様であると判断される。なお難燃剤未注入の場合は26分程度で加温曲線が止まっているが、この段階で炉16内の炎が完全に試験材の外部までまわり、完全に試験材が燃焼したため、ここで実験を終了した。
【0014】
実施例として、試験材の外部表面の温度上昇結果を図3に示す。線31は、難燃剤未注入試験材の場合の温度上昇を示す。15分過ぎてから大幅に温度が上昇し、22分で100°Cに到達26分で燃焼を起こした。これに対して、試験材20の場合は、線32に示すように、試験後30分後90°C程度まで上昇したが、表面の燃焼までは至らなかった。この場合、板厚の22%が残存した。
【0015】
【実施例2】シラス微粉を水に攪拌し、一定時間放置しその上澄みを採取する。これにホウ酸5%を完全に溶解させる(試作水溶液1)。またシラス微粉を水に攪拌し、一定時間放置しその上澄みを採取する。これに硼砂5%を完全に溶解させる(試作水溶液2)。両者の水溶液を均等に混合する。これを杉材(大きさ200mm×200mm、厚さ25mm)に対し、常温及び高温にて加圧注入法により充填を行う。加圧含浸法を数回繰り返す。得られた含浸量は100kg〜460kg毎立方メートルであった。これを試験材22とする。
【0016】
炉内の温度変化を図4に示す。線41は、難燃剤を未注入の場合の加温曲線である。線42は、シラスの上澄み液にホウ酸と硼砂を溶解させて作製した難燃剤を注入した場合の加温曲線である。線43は、建築基準法第2条第7号に定められた耐火性の試験基準加温曲線である。本提案特許の難燃試験対象結果を得たいずれの加温過程は、同基準と比べ、ほぼ同様であると判断される。
【0017】
試験材の外部表面の温度上昇結果を図5に示す。線51は、難燃剤未注入試験材の場合の温度上昇を参考に示す。また線52は、試験材20の温度上昇結果である。試験後30分後90°C程度まで上昇したが、表面の燃焼までは至らなかった。線53は、試験材22の温度上昇結果である。加温後15分程度までは徐々に温度が50°Cまで上昇し、その後、30分間の試験では60°C程度でほぼ一定であった。試験材20の結果と比較し、難燃性の大幅な向上が見られる。
【0018】
図6は、30分間加温試験した試験材の燃焼形状を、試験材の断面写真で示す。加熱側は炭化が進んでいることが分かるが、外部には十分木質が観察される。特に、シラスの上澄み液にホウ酸と硼砂を溶解させて作製した難燃剤を注入した試験材は、その木質部の残存が大きいことが分かる。図7は、その加温試験後、試験材の残存量の結果を示す。シラスの上澄み液にホウ酸と硼砂を溶解させて作製した難燃剤を注入した場合はおよそ50%の木質部が残存した。このように、著しい難燃特性が得られた。
【0019】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の防炎剤は、木材に浸透させることにより木材の不燃、純不燃効果が期待でき、耐火性の強い木造住宅を提供できるという大きな利点があり、従来住宅密集地での住宅外壁や壁等の材料として、利用されていなかった木材の用途開発が可能となる。このことによって木材のさらなる需要を引き起こすことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】加温試験の実施方法を示した説明図である。(実施例1)
【図2】炉内加温試験結果(実施例1)および耐火性能試験基準値を示した図である。
【図3】試験材外部温度結果(実施例1)を示した図である。
【図4】炉内加温試験結果(実施例2)を示した図である。
【図5】試験材外部温度結果(実施例2)を示した図である。
【図6】実施例1、2による試験材について、それらの燃焼結果を示した図である。
【図7】実施例1、2による試験材について、それらの燃焼残量結果を示した図である。
【符号の説明】
11 断熱ボード
12 学部計測用熱電対
13 高温側計測用熱電対
14 試験材
15 熱源
16 炉
21 難燃剤を未注入の場合の加温曲線
22 ホウ酸と硼砂のみで作製した難燃剤を注入した場合の加温曲線
23 耐火性能試験基準値
31 難燃剤未注入試験材の外部表面の温度上昇結果
32 ホウ酸と硼砂のみで作製した難燃剤を注入した試験材(試験材20)の外部表面の温度上昇結果
41 難燃剤未注入の場合の加温曲線
42 シラスの上澄み液にホウ酸と硼砂を溶解させて作製した難燃剤を注入した場合の加温曲線
43 耐火性能試験基準値
51 難燃剤未注入試験材の外部表面の温度上昇結果
52 試験材20の外部表面の温度上昇結果
53 シラスの上澄み液にホウ酸と硼砂を溶解させて作製した難燃剤を注入した試験材(試験材22)の外部表面の温度上昇結果
61 試験材20の燃焼形状(断面図)
62 試験材22の燃焼形状(断面図)
71 難燃剤未注入試験材の残存量
72 試験材20の残存量
73 試験材22の残存量
Claims (4)
- ホウ酸の0.1%〜20%の水溶液にシラスの微粒子を0%〜20%加えた水溶液であることを特徴とする難燃剤。
- 硼砂の0.1%〜20%の水溶液にシラスの微粒子を0%〜20%加えた水溶液であることを特徴とする難燃剤。
- ホウ酸0.1%〜20%の水溶液と硼砂0.1%〜20%の水溶液の混合物にシラスの微粒子を0%〜20%加えた水溶液であること特徴とする難燃剤。
- 下記の工程よりなる難燃剤を加圧注入させた建築用木質部材。
1、予め木材に衝撃波負荷し閉塞した有縁壁孔を破壊させ、水分の透過性を向上させ、木材の水分及び油脂分を取り除き、木材の部材中の空隙を確保する。
2、上記木材に、上記請求項1〜3のいずれかに記載の難燃剤を充分に浸透させる。
3、その後、常温或いは高温にて、加圧処理を数回繰り返し、部材中に難燃剤が充分木材の中部まで浸透されたことを特徴とする木材を得る。
4、その後、適宜温度と時間により乾燥させて難燃木質部材を得る。
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Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002270659A Pending JP2004106294A (ja) | 2002-09-17 | 2002-09-17 | 難燃剤及びその難燃剤を含浸させた建築用木質部材 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004106294A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2013024944A1 (ko) * | 2011-08-17 | 2013-02-21 | 전북대학교산학협력단 | 목재함침용 난연수지 |
KR101843137B1 (ko) | 2015-06-09 | 2018-03-29 | (주)웹스 | 합성목재 조성물 및 이로부터 제조된 합성목재 |
CN115972328A (zh) * | 2022-12-13 | 2023-04-18 | 浙江农林大学 | 一种具有火灾预警功能的高强度阻燃木材的制备方法 |
-
2002
- 2002-09-17 JP JP2002270659A patent/JP2004106294A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2013024944A1 (ko) * | 2011-08-17 | 2013-02-21 | 전북대학교산학협력단 | 목재함침용 난연수지 |
KR101843137B1 (ko) | 2015-06-09 | 2018-03-29 | (주)웹스 | 합성목재 조성물 및 이로부터 제조된 합성목재 |
CN115972328A (zh) * | 2022-12-13 | 2023-04-18 | 浙江农林大学 | 一种具有火灾预警功能的高强度阻燃木材的制备方法 |
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