JP2004105164A - 植物のアルミニウム応答性リンゴ酸輸送体の遺伝子及び当該遺伝子がコードする蛋白質 - Google Patents
植物のアルミニウム応答性リンゴ酸輸送体の遺伝子及び当該遺伝子がコードする蛋白質 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】本発明により、コムギ由来の新規なALMT1−1 遺伝子、及びその遺伝子がコードするALMT1−1 蛋白質が得られた。ALMT1−1 蛋白質は、アルミニウムイオンにより活性化されて、細胞外にリンゴ酸を放出する機能を有する輸送体蛋白質である。リンゴ酸はアルミニウムイオンと錯体を形成してアルミニウムイオンを不活化するために、ALMT1−1 蛋白質は植物のアルミニウム耐性に関与する。よって、ALMT1−1 蛋白質をコードするALMT1−1 遺伝子を用いて、植物にアルミニウムイオン耐性を付与することができると考えられる。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、植物のアルミニウム応答性リンゴ酸輸送体の新規な遺伝子であるALMT1−1 遺伝子、及び当該遺伝子がコードするALMT1−1 蛋白質に関する。
【0002】
【従来の技術】
人口の増加や環境の変化により、将来の食料危機が予想されている。その問題に対応するべく、農業において効率よく作物を生産するための技術開発が求められている。その際に、世界には様々な不良土壌があって植物の生育を阻害していることが問題となる。中でも酸性土壌は農業利用可能地面積の40%を占め、日本を含め、中国、東南アジア、オーストラリア、北米、南米と世界中に広がっている。従って、食料増産を考える上で、酸性土壌における作物生産性を向上させることは重要である。
【0003】
酸性土壌における作物生産性の向上を目指し、コムギ、イネ、オオムギ、トウモロコシなどの主要穀類を中心に、アルミニウム耐性を示す品種選抜と他品種との掛け合わせによる品種改良が行われているが、膨大な時間と手間が必要となる。一方、遺伝子組み換え技術を用いてアルミニウム耐性作物を作出する試みも1例報告されている。これは、土壌菌由来のクエン酸合成酵素をタバコ等の作物に形質導入し、過剰につくられたクエン酸を細胞外に放出させクエン酸とアルミニウムイオンとの錯体を形成させることにより、アルミニウム耐性を獲得させるという方法である。しかし、この手法ではアルミニウムイオンの有無に関わらず植物から常にクエン酸が放出され続けるため、作物の生産性を低下させる可能性が高い。また、土壌微生物の遺伝子を導入した作物を食糧や飼料にすることの安全性が問題となる。さらにこの方法の再現性が問題視されている。
【0004】
酸性土壌における主たる植物生育阻害因子はアルミニウムイオンであることから、アルミニウム耐性遺伝子の検索が進められ、アルミニウム耐性遺伝子の存在が推定されていた。この遺伝子の発現により、コムギはアルミニウムイオンの刺激によって細胞外にリンゴ酸を放出することができると考えられている。リンゴ酸はアルミニウムイオンと錯体を形成してアルミニウムイオンを不活化するために、この遺伝子を有するコムギはアルミニウム耐性となると考えられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はアルミニウム耐性コムギに特異的に発現している遺伝子を世界で初めてクローニングし、その機能がアルミニウムイオンにより活性化され細胞外にリンゴ酸を放出する輸送体蛋白質であることを明らかにするとともに、この遺伝子をイネに形質導入することによりアルミニウム応答性リンゴ酸輸送体が発現することを示したものである。従って、本発明でクローニングしたコムギのアルミニウム応答性リンゴ酸輸送体遺伝子の高発現形質転換体を遺伝子組み換え技術を用いて作成することにより、アルミニウム耐性作物を作出しうる可能性を強く示唆している。
【0006】
また本発明は、アルミニウムイオンによって活性化されリンゴ酸を細胞外に放出する輸送体蛋白質をコードするコムギ遺伝子の塩基配列ならびにアミノ酸配列である。この遺伝子をコムギ類およびその他の作物に導入することにより、アルミニウム耐性を付与し、アルミニウム害のみられる酸性土壌における作物生産性の向上が期待できる。農業特に育種分野に有用であり、育種関連産業で利用されると思われる。
【0007】
より特異的には、前記の課題を解決するために、本出願において以下の発明を提供する。本発明は、配列表の配列番号1に示す、アミノ酸番号1−459 で示されるアミノ酸配列からなることを特徴とする蛋白質である。アルミニウムイオンにより活性化されて、細胞外にリンゴ酸を放出する機能を有し、その一部が欠損、置換若しくは付加された蛋白質もまた本発明の範囲内である。更に当該蛋白質をコードする遺伝子もまた、本発明の範囲内である。
【0008】
更に本発明は、配列表の配列番号2に示す、塩基番号1−1517で示される塩基配列からなることを特徴とする遺伝子である。細胞外にリンゴ酸を放出する機能を有する蛋白質をコードし、その一部が欠損、置換若しくは付加された遺伝子もまた、本発明の範囲内である。
【0009】
更に、上記の遺伝子を植物に導入することにより、植物にアルミニウム耐性を付与した形質転換植物もまた、本発明の範囲内である。なお更に本発明は、上記の遺伝子を植物に導入することにより、植物にアルミニウム耐性を付与する方法もまた、本発明の範囲内である。
【0010】
【発明の実施の形態】
コムギでは、アルミニウムイオンが存在する時にのみ根からリンゴ酸を放出し、リンゴ酸とアルミニウムイオンとの錯体形成によりアルミニウムを不活性化し、アルミニウム耐性を獲得するとともに酸性土壌耐性を示すことが強く示唆されていた。さらにこのアルミニウム耐性機構は単一の優勢遺伝子座(Alt1)によって制御されており、この遺伝子座に関する準同質系統株も作出されていた。
【0011】
下記の実施例において示す様に、アルミニウム感受性が異なる準同質遺伝子系統のコムギ(ET8,ES8 )を用いたサブトラクション法により、アルミニウム感受性系統(ES8 )に比較してアルミニウム耐性系統(ES8 )で強く発現している遺伝子(cDNA)をクローニングし、その遺伝子が以下に述べるように、アルミニウムにより活性化されるリンゴ酸輸送体であることが示され、ALMT1 (alminium−triggered malate transporter )と命名した。ALMT1 遺伝子の発現部位は根端特異的であり、アルミニウムイオンの刺激に依存したリンゴ酸放出部位と一致した。アルミニウム耐性系統と感受性系統において遺伝子の塩基配列は6塩基異なり、アミノ酸に関して2残基異なっており、それぞれをALMT1−1, ALMT1−2とした。アフリカツメガエル卵母細胞にALMT1−1 遺伝子の転写産物を導入しALMT1−1 蛋白質を発現させたのち、電気生理学手法を用いてALMT1−1 蛋白質がアルミニウムイオンによって特異的に活性化されるリンゴ酸輸送体であることを証明した。
【0012】
さらにALMT1−1 遺伝子をイネに形質導入した結果、ALMT1−1 の形質転換イネにおいてのみアルミニウムイオン特異的にリンゴ酸放出が起こることが示された。以上、クローニングしたALMT1−1 遺伝子は、アルミニウムイオンの刺激によって活性化されリンゴ酸を放出する新規の輸送体蛋白質をコードしており、コムギのアルミニウム耐性遺伝子(Alt1)と同一である可能性が極めて高いこと、この遺伝子をイネに形質導入することによりアルミニウム応答性リンゴ酸輸送体が発現することが示された。
【0013】
本発明であるアルミニウム応答性のリンゴ酸輸送体をコードするALMT1−1 遺伝子(図1)を形質転換用のプラスミドベクターに導入した。本発明ではハイグロマイシン耐性遺伝子を組み込んだベクターのpIG121−Hm を用い、カリフラワーモザイクウイルスの35S プロモーターの下流にALMT1−1 遺伝子の翻訳領域をつないだプラスミドを構築し、これをアグロバクテリウム菌EHA101に導入した。このアグロバクテリウムをイネ(日本晴)のカルス細胞に感染させて、ハイグロマイシン耐性カルスを選抜した後、再分化をおこさせ形質転換体を得た。形質転換体では図2に示すアミノ酸配列を持つALMT1−1 遺伝子産物が生合成されることになる。35S プロモーターの下流につないだALMT1−1 遺伝子は植物全体で発現しているものと思われるが、実際、ALMT1−1 遺伝子の発現を根及び葉の両方で確認した。
【0014】
非形質転換イネ(日本晴)とALMT1−1 遺伝子を導入した形質転換イネの根部を、各々無機塩培地に浸し、さらに0.1mM の塩化アルミニウムを添加した条件としない条件で保温し、培養液中に放出されたリンゴ酸量を比較した。その結果、形質転換イネの根にアルミニウムを添加した場合においてのみ、リンゴ酸放出が観察された。アルミニウム処理をしない形質転換イネや、非形質転換イネの根では、リンゴ酸放出は見られなかった。
【0015】
アルミニウム耐性コムギ品種の幼植物の根においてアルミニウムイオンの存在下で放出されるリンゴ酸量は、植物体あたり1時間に4〜8nmolと報告されている。ALMT1−1 遺伝子の形質転換イネの根からアルミニウムに依存して放出されるリンゴ酸量も同程度であった。
【0016】
ALMT1−1 遺伝子をアルミニウム感受性のコムギ品種に形質導入し、ALMT1−1 遺伝子の高発現形質転換体を作成すれば、形質転換体はアルミニウムイオンが存在する場合にのみリンゴ酸を放出し、アルミニウム耐性ひいては酸性土壌耐性を示す可能性が高い。また、ALMT1−1 遺伝子産物はそれ自身が単独でアルミニウムイオンにより活性化されるリンゴ酸輸送体を形成することから、他のアルミニウム感受性の植物種に形質導入した場合でも、同様の機構でアルミニウム耐性を示すことが期待される。
【0017】
形質導入する遺伝子を35S プロモーターの下流で発現させる場合、導入遺伝子は常に発現状態にある。アルミニウム耐性植物を作出するためにクエン酸合成酵素遺伝子を導入した例でも35S プロモーターを使用しており、この場合形質転換体は常にクエン酸を合成し放出し続けることになり、植物への負担は大きい。しかし、本発明のALMT1−1 遺伝子を導入する方法では、ALMT1−1 遺伝子は常に発現状態にあり、ALMT1−1 遺伝子産物のリンゴ酸輸送体はアルミニウムイオンの攻撃に常に備えているものの不活性型であり、アルミニウムイオンが存在する時にのみ活性化されリンゴ酸を放出する。従って、植物体への負担が少ない。
【0018】
本発明のALMT1−1 蛋白質は、上述したように、アルミニウムイオンにより活性化されて、細胞外にリンゴ酸を放出する機能を有する輸送体蛋白質である。放出されたリンゴ酸とアルミニウムイオンとの間に錯体が形成されるので、本発明の植物のALMT1−1 蛋白質はアルミニウム耐性に関与している可能性が高い。
【0019】
本願明細書において、配列番号1に示すアミノ酸配列の一部が欠失、置換若しくは付加された蛋白質とは、配列番号1に示すアミノ酸配列において、20個以下、好ましくは10個以下、更に好ましくは5個以下のアミノ酸が置換された蛋白質である。また、その様な蛋白質と配列番号1に示すアミノ酸配列とは、95%以上、好ましくは97%以上、更に好ましくは99%以上の相同性を有する。その様な蛋白質も、アルミニウムイオンにより活性化されて、細胞外にリンゴ酸を放出する機能を有する限り、本発明の範囲内である。
【0020】
更に本発明のALMT1−1 遺伝子は、上述したように、アルミニウムイオンにより活性化されて、細胞外にリンゴ酸を放出する機能を有する輸送体蛋白質である上記のALMT1−1 蛋白質をコードしている。
【0021】
遺伝子組み換え技術によれば、基本となるDNA の特定の部位に、当該DNA の基本的な特性を変化させることなく、あるいはその特性を改善する様に、人為的に変異を起こすことができる。本発明により提供される天然の塩基配列を有する遺伝子、あるいは天然のものとは異なる塩基配列を有する遺伝子に関しても、同様に人為的に挿入、欠失、置換を行う事により、天然の遺伝子と同等のあるいは改善された特性を有するものとすることが可能であり、本発明はそのような変異遺伝子を含むものである。
【0022】
即ち、配列表の配列番号2に示す遺伝子の一部が欠失、置換若しくは付加された遺伝子とは、配列番号2に示す塩基配列において、20個以下、好ましくは10個以下、更に好ましくは5個以下の塩基が置換された遺伝子である。また、その様な遺伝子と配列番号2に示す塩基配列とは、95%以上、好ましくは97%以上、更に好ましくは99%以上の相同性を有する。その様な遺伝子も、アルミニウムイオンにより活性化されて、細胞外にリンゴ酸を放出する機能を有する蛋白質をコードする限り本発明の範囲内である。また、その様な遺伝子はストリンジェントな条件下で配列表の配列番号2に示す遺伝子とハイブリッドを形成する。
【0023】
ハイブリダイゼーションの条件については当業者が適宜選択をすることができるが、具体的には以下の操作によってハイブリダイゼーションを行うことができる。試験すべきDNA またはRNA 分子を転写した膜と標識したプローブを、適用なハイブリダイゼーションバッファー中でハイブリダイズさせる。ハイブリダイゼーションバッファーの組成は、例えば、5 ×SSC 、 0.1重量% N−ラウロイルサルコシン、0.02重量% のSDS 、 2重量% の核酸ハイブルダイゼーション用ブロッキング試薬及び50% フォルムアミドから成る。核酸ハイブルダイゼーション用ブロッキング試薬としては、一例として、0.1Mマレイン酸と0.15M 塩化ナトリウムからなる緩衝液(pH7.5) に市販の核酸ハイブリダイゼーション用ブロッキング試薬を10% になるように溶解したものを使用することができる。20×SSC は、3M塩化ナトリウム、0.3 Mクエン酸溶液であり、SSC は、より好ましくは、3〜6×SSC 、更に好ましくは4〜5×SSC の濃度で使用する。
【0024】
ハイブリダイゼーションの温度は、40〜80℃、より好ましくは50〜70℃、更に好ましくは55〜65℃の範囲であり、数時間から一晩のインキュベーションを行った後、洗浄バッファーで洗浄する。洗浄の温度は、好ましくは室温、より好ましくはハイブリダイゼーション時の温度である。洗浄バッファーの組成は6×SSC +0.1重量%SDS 溶液、より好ましくは4×SSC +0.1重量%SDS 溶液、更に好ましくは2×SSC +0.1重量%SDS 溶液、更に好ましくは1×SSC +0.1重量%SDS 溶液、最も好ましくは0.1×SSC +0.1重量%SDS 溶液である。このような洗浄バッファーで膜を洗浄し、プローブがハイブリダイズしたDNA 分子またはRNA 分子をプローブに用いた標識を利用して識別することができる。
【0025】
本発明のALMT1−1 遺伝子は、アルミニウムイオンにより活性化されて、細胞外にリンゴ酸を放出する機能を有する輸送体蛋白質である上記のALMT1−1 蛋白質をコードする遺伝子であり、アルミニウムにより活性化されるリンゴ酸放出機能は植物のアルミニウムイオン耐性遺伝子に強く連鎖しているために、当該遺伝子を植物に導入する事により、アルミニウムイオンに対する耐性を付与する可能性が極めて高い。下記の実施例において単子葉植物ではイネ、双子葉植物ではタバコの形質転換体を作成しているが、本発明のALMT1 遺伝子を導入する植物の例としては、イネ、コムギ、オオムギ、トウモロコシ、アスパラガス、ソルガム等の単子葉植物、またホウレンソウ、ニンジン、ダイズ、トマト、ジャガイモ、タバコ、ワタ、ビート、シロイヌナズナ等の双子葉植物が挙げられる。しかし、形質転換を行う対象の植物はそれらの植物に限定されるものではなく、種々の植物において形質転換体を作成することができる。
【0026】
形質転換体の作製方法としては、本技術分野において知られている通常の方法を用いる事ができる。導入された遺伝子を活性化するために下記の実施例においては、本技術分野で汎用されているカリフラワーモザイクウイルス35S プロモーターを、形質導入するべき本発明の遺伝子の上流に配置している。導入された外来遺伝子を十分に発現させるためには、多くの場合には何らかのプロモーターが必要とされるが、カリフラワーモザイクウイルス35S プロモーターに限定されるものではなく、本技術分野において汎用されている他のプロモーターを用いることも可能である。その例にはイネアクチン1(Rice actin 1)プロモーター、トウモロコシユビキチン(Maize ubiquitin )プロモーター等があり、これらのプロモーターは単子葉植物で高発現させる目的に汎用されている。
【0027】
また、本発明において使用可能なベクターには例えばバイナリーベクターがあり、下記の実施例において使用したpIG121−Hm は最も好ましい。その他のバイナリーベクターには例えばpBI121及びpBI221等が挙げられるが、それらに限定されるものではない。そのようなベクターを、例えばアグロバクテリウム菌に導入して、カルス又は幼植物に感染させることにより、形質転換植物を作製する事が可能であり、更に、そのような形質転換植物に由来する種子を得る事が可能である。また、本発明の植物遺伝子を植物に導入する形質転換法は、アグロバクテリウム法に限定されるものではなく、パーティクルガン法、電気穿孔法等の、本技術分野において公知の種々の方法を用いる事も可能である。
【0028】
【実施例】
本発明者らは、アルミニウム感受性系統(ES8 )では発現せず、アルミニウム耐性系統(ET8 )において発現しているcDNAを単離するために、サブトラクティブ・ハイブリダイゼーションを行った。ET8 から得た288 の候補クローンの中の1つのクローンが、ジゴキシゲニン(DIG )でラベルされたET8 のmRNA集団由来のcDNAとハイブリダイズしたが、ES8 のmRNA集団とはハイブリダイズしなかった。クローンの配列に基づいてプライマーを設計し、完全長のcDNAを得るためにRACE(rapid amplification of cDNA ends)−PCRを行った。ポリ(A) + テイルを除き、完全長のcDNAは1517塩基対の核酸の長さのcDNAを示した。遺伝子の推定アミノ酸配列は、49.7kDa の予想分子量を有する、459 個の残基から構成されていた。得られた遺伝子(cDNA)の配列を図1に、それから得られた推定アミノ酸配列を図2に示す。
【0029】
図3は、ET8 由来のALMT1−1 遺伝子がコードする蛋白質の推定アミノ酸配列の疎水性プロファイルを示す。アミノ酸配列の疎水性は6個から8個の推定膜貫通領域を示しており、その産物は膜蛋白質であることを示唆している(図3)。このプロットは10残基のムービングウィンドウを用いて作成された(Kyte and Doolitte パラメーター)。図3において、プロット上の丸印は、ET8 系統とES8 系統の間において異なっているアミノ酸残基の位置を示す。プロット上の線は、抗血清を構築するための抗原に用いたペプチド断片を示す。
【0030】
蛋白質データベース(BLAST serch, http://www.ncbi.nlm.nih.gov/ )を検索したところ、この遺伝子の産物はシロイヌナズナとイネにおける仮想的な蛋白質のアミノ酸配列と、31から43%の相同性を有することを見いだした。動物又は微生物との相同性は報告されていなかった。
【0031】
図4は、コムギにおけるALMT1 遺伝子発現のノーザンブロット解析を示す。ノーザンブロット解析により、クローン化された遺伝子の転写産物は、ES8 と比較して、ET8 においてより量が多いことが示された(図4)。10μg の全RNA をアガロースゲル電気泳動によって分離し、rRNAを検出するために、エチジウムブロマイドによって染色した。図4Aは、アルミニウム耐性品種の根端における特異的なALMT1 遺伝子の発現を示す。図4Bは、アルミニウム処理がALMT1 のmRNAレベルに及ぼす影響を示す。
【0032】
遺伝子の発現はET8 の根端(5mm )において特異的に検出され(図4A)、その知見は、アルミニウムによって引き起こされたリンゴ酸放出とアニオン輸送体活性が、アルミニウム耐性品種の根端において特異的に観察されたという過去の知見と一致していた。遺伝子は根端において構成的に発現し、いずれの系統においてもアルミニウムによって促進されなかった(図4B)。遺伝子の構成的な高い発現はアルミニウム耐性コムギ品種アトラス66においても観察されたが、アルミニウム感受性品種スカウト66においては観察されなかった(図4B)。クローン化された遺伝子をALMT1 と命名した。
【0033】
アルミニウム耐性(ET8 及びアトラス66)品種とアルミニウム感受性(ES8 及びスカウト66)品種からのRT−PCRによって、cDNA断片の読み枠を増幅した。遺伝子特異的なプライマーを用いてアドヴァンテージGC2 PCR キット(クロンテック)によりPCR を行った。これら2つのアルミニウム耐性品種由来のALMT1 遺伝子の塩基配列(ALMT1−1 )は完全に一致した。同様に、2つのアルミニウム感受性品種由来のALMT1 遺伝子のDNA 配列(ALMT1−2 )もまた一致していた。しかしながら、ALMT1−1 配列とALMT1−2 配列は、6つの塩基(2つのアミノ酸残基)において異なっていた。図5は、ET8 由来のALMT1−1 遺伝子の塩基配列と、ES8 由来のALMT1 アレル(ALMT1−2 )の部分ヌクレオチドとその推定アミノ酸配列において、配列の異なった部分を示している。下線と二重下線は、ET8 とES8 系統の間で観察された、異なったヌクレオチドとアミノ酸残基をそれぞれ示している。
【0034】
アフリカツメガエル卵母細胞を用い、二電極膜電位固定法によって、ALMT1−1蛋白質はリンゴ酸輸送体であるかどうかの検討を行った。ALMT1−1 のcRNAとリンゴ酸を注入した卵母細胞の電気生理学的特性を、アルミニウムの存在下又は非存在下の溶液中で測定した(図6)。図6において、リンゴ酸を注入した(又はクエン酸を注入した)ALMT1−1−cRNA発現卵母細胞において、電流−電圧曲線を測定した。
【0035】
cRNAとリンゴ酸の両者を注入した卵母細胞においてのみ、アルミニウムは有意に高い内向き電流を引き起した(図6における”cRNA リンゴ酸 + Al”、黒丸)。しかし、cRNAとクエン酸の両者を注入した場合を含めて、他の処理においては内向き電流は引き起こされなかった。これらの結果は、ALMT1−1 はアルミニウムにより引き起こされるリンゴ酸透過輸送体をコードしていることを示唆している。アルミニウムにより引き起こされる内向き電流の経時変化を、固定した電圧(−100mV)において記録した。リンゴ酸が注入されてALMT1−1 を発現している卵母細胞は、アルミニウムによって増幅された電流の促進を示したが、ランタンにおいてはその現象は見られなかった。
【0036】
図7に、リンゴ酸を注入してALMT1−1 を発現した卵母細胞における、内向き電流の経時変化を示す。内向き電流はアルミニウムに暴露して約1分後に増加し始めて、アルミニウムに4から5分間暴露した後に最小値に達した(図7)。過去の研究においても、根端におけるアルミニウム暴露とリンゴ酸放出の間に、又はコムギのプロトプラストにおける内向き電流の活性化の間に、5から30分間の遅延が見られた。その遅延は、輸送体活性化に何らかの中間段階が関与していることを示唆している可能性もある。
【0037】
植物におけるALMT1−1 遺伝子の輸送体機能を確かめるために、パーティクルガン法によって、ALMT1−1 遺伝子による形質転換コムギの作成を試みた。しかしながら、コムギにおける形質転換頻度は一般的に低く、その試みは成功しなかった。その代わりに、アグロバクテリウムにより仲介された形質転換方法によって、イネ植物をALMT1−1 遺伝子で形質転換することに成功した。カリフラワーモザイクウイルス35S (CaMV35S )プロモーターに連結させたALMT1−1 遺伝子を導入するために、pIG121−Hm ベクターを用いた。そのプラスミドを、イネ品種である日本晴の種子から誘導したカルスに導入した。ハイグロマイシン選抜によって、21個の推定形質転換系統(T0)が得られた。全ての形質転換体のゲノムにALMT1−1は挿入されており、その配列に特異的なプライマーを用いたPCR によってそれを確認した。ALMT1−1 のmRNAを最大量発現している形質転換体を、T1世代における更なる解析に使用した。
【0038】
導入されたALMT1−1 遺伝子の発現をノーザンブロット解析によって試験した(図8)。図8において、形質転換体と非形質転換体における、根と葉におけるALMT1−1 のmRNAのレベルを示す。形質転換系統において、根と葉の両者におけるALMT1−1 の有意な発現が構成的に示されたが、非形質転換体ではそれは見られなかった。アルミニウム処理は発現レベルには影響しなかった。
【0039】
図9は、形質転換体と非形質転換体の根と葉から調製したミクロゾーム膜画分における、ALMT1−1 蛋白質のウエスタンブロット解析を示す。矢印は、ALMT1−1蛋白質の位置(45kDa )を示す。ALMT1−1 蛋白質のポリペプチド断片に対する抗体を用いたウエスタンブロット解析によって、形質転換体の根及び葉から調製したミクロゾームの膜画分中にその蛋白質は見い出されたが、非形質転換体のその画分中には見出されなかった(図9)。ALMT1−1 蛋白質の大きさは45kDa であり、その大きさはALMT1−1 遺伝子の推定されたアミノ酸配列の分子量(49.7kDa )より小さかった。
【0040】
図10は、形質転換体からのアルミニウム依存性のリンゴ酸放出を示す。幼植物の根を100 μM の塩化アルミニウムの存在下又は非存在下で、栄養溶液(pH4.5 )中で処理した。この形質転換体において、アルミニウムは根からのリンゴ酸放出を引き起こしたが、非形質転換体においては引き起こさなかった(図10)。同様のアルミニウム処理は、形質転換体のクエン酸放出は引き起こさなかった。暴露してから24時間後まで、3価イオン(ランタン及び鉄イオン)によってリンゴ酸放出を誘導することはなかった。これらの結果は、コムギのALMT1−1 遺伝子はイネにおいて優性に発現し、アルミニウムによって引き起こされる根からのリンゴ酸放出を制御していることを示唆している。
【0041】
植物アニオン輸送体をコードしていると推定される遺伝子(例えば塩素イオンチャネル)は、ほんの僅かしか報告されていない。本発明において、ALMT1−1 はアルミニウムによりゲートの開閉が制御されるリンゴ酸透過性輸送体をコードしていることを強く示唆する、いくつかの証拠が得られた。
【0042】
更に、準同質コムギ系統である、ET8 とES8 の間に観察されたALMT1 の塩基配列が相違していること(図5)は、ALMT1 は少なくとも2つのアレルより構成されていることを示唆している。更に、ALMT1−1 遺伝子が、アルミニウムによって活性化されるリンゴ酸放出と、アルミニウム耐性の表現型をET8 において制御している優性遺伝子である、Alt1遺伝子自身であることも強く示唆している。ALMT1−1 輸送体はアルミニウムによって活性化されるがランタンによっては活性化されない。それは、アニオン輸送体を介した、ETの根とETの根の細胞のプロトプラストからのリンゴ酸の放出は、アルミニウムによって活性化されるがランタンによっては活性化されない、という過去の報告と一致していた。アルミニウムはアニオン輸送体をいかに活性化するかということについて、説明するために3つのモデルが提唱されているが、アフリカツメガエルから得られた本発明の知見は、アルミニウムはアニオン輸送体蛋白質と直接に相互作用して、その開口を引き起こすことを強く示唆している。
【0043】
いくつかの研究グループが、有機酸生合成の鍵となる酵素をコードしている遺伝子によって植物を形質転換することにより、アルミニウム耐性の形質転換植物を作成することを試みてきた。緑膿菌由来のクエン酸合成酵素を構成的に発現している形質転換タバコ系統は、根からのクエン酸の構成的な放出によるアルミニウム耐性を示したが、他の研究グループはその知見を再現することはできなかった。ニンジン細胞由来のミトコンドリアのクエン酸合成酵素遺伝子を発現している形質転換シロイヌナズナは、構成的にクエン酸の放出を促進し、その結果アルミニウムに僅かに耐性になるという表現型を示した。
【0044】
一方、ALMT1−1 遺伝子を有する形質転換イネにおいては、アルミニウムによって活性化されるリンゴ酸透過性輸送体は構成的に発現していたが、リンゴ酸放出はアルミニウムによってのみ引き起こされた(図6−図10)。100 μM AlCl3処理によって、形質転換したイネから放出されたリンゴ酸の量は、180 ±25nmol幼植物−124時間−1(平均±SE, n=6 )であった(図10)。この値は、アルミニウム耐性コムギ遺伝子型(ET)における値と匹敵していた。そこで、アルミニウムによりゲートの開閉が制御されるリンゴ酸透過性輸送体は、アルミニウム耐性の形質転換作物を作成するために最も適した特異的な候補である。
【0045】
更に、双子葉植物であるタバコの形質転換体を作製した。タバコ培養細胞(Nicotiana tabacum L.cv.Samsun,細胞株SL)の形質転換はアグロバクテリウムによる方法を用いて行った。カリフラワーモザイクウイルス35S プロモーターに連結させたALMT1−1 遺伝子を、バイナリーベクターのpIG121−Hm を改変して組み込んだ。このプラスミドをアグロバクテリウム・ツメファシエンス(EHA101株)を介してタバコ培養細胞に導入した。コントロールとしては、pIG121−Hm よりGUS 遺伝子を除いたものを除いたものを同様に遺伝子に導入し、これをコントロール細胞とした。形質転換体の選別は抗生物質のカナマイシン(200mg/liter )を含む改変Murashige−Skoog (MS)寒天培地で行った。
【0046】
タバコ培養細胞のアルミニウム処理は、3mM 塩化カルシウムと3%蔗糖を含む単純なカルシウム培地(pH4.5 )に培養細胞を150mg 湿重量/10ml になるよう懸濁し、各濃度のアルミニウムを添加した後、暗所25℃で18時間の浸透培養(100rpm)をすることにより行った。その後、細胞を増殖用の改変MS培地に再懸濁し、一定期間培養した後に湿重量を測定し、アルミニウムを添加せずに処理した細胞の湿重量に対するアルミニウムを添加して処理した細胞の湿重量の割合で増殖能を定量化した。
【0047】
導入されたALMT1−1 遺伝子の発現量をノーザンブロット解析によって解析した(図11)。試験した3つのALMT1−1 形質転換細胞株(#3, #5, #4)と、ベクター形質転換細胞株(ALMT1−1 遺伝子を含まないバイナリーベクターのみを導入した形質転換細胞株:コントロール細胞株)におけるALMT1 mRNAのレベルを示す。ALMT1−1 形質転換細胞株では高い遺伝子発現が示され、ベクター形質転換株では発現のないことが確認された。
【0048】
ALMT1−1 遺伝子を導入した形質転換細胞株と形質転換用バイナリーベクターのみを導入したベクター形質転換細胞株を用意し、それぞれを0, 50, 100μM AlCl3 を含むカルシウム培地(pH 4.5)中で18時間処理した。その後、培地中に放出されたリンゴ酸濃度を測定し、また細胞をアルミニウムを含まない栄養培地に再懸濁し、8日間培養後の湿重量を測定し、アルミニウムを添加せずに処理した細胞の湿重量に対するアルミニウム処理した細胞の湿重量の比から増殖能を求めた。アルミニウム処理なしの細胞の湿重量は、ALMT1−1 形質転換細胞株で134.8 ±2.2mg/ml (n=5)、ベクター形質転換細胞株で127.9 ±2.6mg/ml (n=5)であった。
【0049】
ALMT1−1 遺伝子導入の形質転換体(図11)の中で最も発現量の高かったALMT1−1 形質転換細胞株(#4)と、コントロールとして形質転換用バイナリーベクターのみを導入したベクター形質転換細胞株において、アルミニウム処理18時間後の細胞からカルシウム培地中に放出されるリンゴ酸量を示す(図12)。ALMT1−1 形質転換細胞株ではアルミニウムの濃度に応じて放出されたリンゴ酸量が多くなった。しかし、ベクター形質転換細胞株ではアルミニウムに応答したリンゴ酸放出はみられなかった。
【0050】
これら細胞株のアルミニウム処理後の増殖能を比較した結果、ALMT1−1 形質転換細胞株においてアルミニウム濃度を50, 100 μM と高くするにつれ増殖率は低下するものの、ベクター形質転換細胞株よりも高い増殖率を維持していた(図12)。特に、100 μM のアルミニウム処理ではALMT1−1 形質転換細胞株はベクター形質転換細胞株の3倍の増殖能を示した。
【0051】
双子葉植物であるタバコの培養細胞にALMT1−1 遺伝子を導入した結果、ALMT1−1 形質転換体においてアルミニウム依存的に高いリンゴ酸放出が見られたことから、ALMT1−1 遺伝子は双子葉植物においても機能することが示された。さらに、ALMT1−1 形質転換細胞株がアルミニウム耐性を獲得したことから、ALMT1−1 遺伝子がアルミニウム耐性遺伝子であることが確認された。
【0052】
【発明の効果】
本発明により、コムギ由来の新規なALMT1−1 遺伝子、及びその遺伝子がコードするALMT1−1 蛋白質が得られた。ALMT1−1 蛋白質は、アルミニウムイオンにより活性化されて、細胞外にリンゴ酸を放出する機能を有する輸送体蛋白質である。リンゴ酸はアルミニウムイオンと錯体を形成してアルミニウムイオンを不活化するために、ALMT1−1 蛋白質は植物のアルミニウム耐性に関与する。よって、ALMT1−1 蛋白質をコードするALMT1−1 遺伝子を用いて、植物にアルミニウムイオン耐性を付与することができると考えられる。
【0053】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、ALMT1−1 遺伝子の(cDNA)の塩基配列を示す図である。
【図2】図2は、ALMT1−1 蛋白質のアミノ酸配列を示す図である。
【図3】図3は、ET8 由来のALMT1−1 遺伝子がコードする蛋白質の推定アミノ酸配列の疎水性プロファイルを示す図である。
【図4】図4は、コムギにおけるALMT1 遺伝子発現のノーザンブロット解析を示す写真である。
【図5】図5は、ALMT1−1 遺伝子の塩基配列とALMT1−2 遺伝子の塩基配列との相違、及びそれらの推定アミノ酸配列における相違を示す図である。
【図6】図6は、ALMT1−1 蛋白質を発現させたアフリカツメガエル卵母細胞における、電流−電圧曲線をアルミニウム存在下と非存在下において示すグラフである。
【図7】図7は、ALMT1−1 蛋白質を発現させたアフリカツメガエル卵母細胞における内向き電流の経時変化を示すグラフである。
【図8】図8は、イネの形質転換体と非形質転換体における、根と葉におけるALMT1−1 遺伝子の発現レベルを示す、ノーザンブロットの写真である。
【図9】図9は、イネの形質転換体と非形質転換体における、根と葉におけるALMT1−1 蛋白質の発現レベルを示す、ウエスタンブロットの写真である。
【図10】図10は、イネの形質転換体と非形質転換体からのアルミニウム依存性のリンゴ酸放出を示すグラフである。
【図11】図11は、タバコ培養細胞のALMT1−1 形質転換細胞株とベクター形質転換細胞株における遺伝子発現レベルを示す、ノーザンブロットの写真である。
【図12】図12は、タバコ培養細胞のALMT1−1 形質転換細胞株とベクター形質転換細胞株におけるリンゴ酸放出量を示すグラフである。
【図13】図13は、タバコ培養細胞のALMT1−1 形質転換細胞株とベクター形質転換細胞株における増殖能を示すグラフである。
Claims (5)
- 以下の(a)または(b)に示すアミノ酸配列からなることを特徴とする蛋白質。
(a)配列表の配列番号1に示す、アミノ酸番号1−459 で示されるアミノ酸配列からなることを特徴とする蛋白質。
(b)アルミニウムイオンにより活性化されて、細胞外にリンゴ酸を放出する機能を有する、(a)の一部が欠損、置換若しくは付加された蛋白質。 - 請求項1記載の蛋白質をコードする遺伝子。
- 以下の(c)または(d)に示す塩基配列からなることを特徴とする遺伝子。
(c)配列表の配列番号2に示す、塩基番号1−1517で示される塩基配列からなることを特徴とする遺伝子。
(d)アルミニウムイオンにより活性化されて、細胞外にリンゴ酸を放出する機能を有する蛋白質をコードし、(c)の一部が欠損、置換若しくは付加された遺伝子。 - 請求項2又は請求項3記載の遺伝子を植物に導入することにより、植物にアルミニウムイオンに対する耐性を付与した、形質転換植物。
- 請求項2又は請求項3記載の遺伝子を植物に導入することにより、植物にアルミニウムイオンに対する耐性を付与する方法。
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