JP2004101937A - フォント最適化方法およびフォント最適化装置ならびにフォント最適化処理プログラム - Google Patents
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Abstract
【課題】フォントの良さを定量評価できるようにし、かつ、補正すべき箇所を自動的に判定可能とする。
【解決手段】処理対象となる文字をディジタル化した文字画像として出力する画像入力部1と、このディジタル化された文字画像に対して視覚の誘導場を計算して、等ポテンシャル線の凹凸の複雑さを表す複雑度と、等ポテンシャル値の大きさから印象の強さを表す誘導場のエネルギを計算する誘導場計算部2と、この誘導場計算部2によって求められた複雑度と誘導場のエネルギに基づいて前記処理対象となる文字のフォントの良さを評価するとともに、補正すべき箇所を判定し、どのような補正を行えばよいかを示す補正内容データを出力する評価判定部4と、この評価判定部4からの出力に基づいて補正を行う補正処理部11を有する。
【選択図】 図13
【解決手段】処理対象となる文字をディジタル化した文字画像として出力する画像入力部1と、このディジタル化された文字画像に対して視覚の誘導場を計算して、等ポテンシャル線の凹凸の複雑さを表す複雑度と、等ポテンシャル値の大きさから印象の強さを表す誘導場のエネルギを計算する誘導場計算部2と、この誘導場計算部2によって求められた複雑度と誘導場のエネルギに基づいて前記処理対象となる文字のフォントの良さを評価するとともに、補正すべき箇所を判定し、どのような補正を行えばよいかを示す補正内容データを出力する評価判定部4と、この評価判定部4からの出力に基づいて補正を行う補正処理部11を有する。
【選択図】 図13
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、視覚の誘導場を指標にしてフォントの良さを評価し、さらに、その評価結果を用いてフォントの補正を可能とし、それによって、フォントの最適化を行うようにしたフォント最適化方法およびフォント最適化装置ならびにフォント最適化処理プログラムに関する。
【0002】
【従来の技術】
フォントデザインは、基本的にはデザイナなどのデザインの専門家が人手で行っている。フォントデザインを行う上で機械的に行える処理としては、既存のフォントを基本にして、拡大したり、縮小したりする程度であり、フォントデザイン自体を機械的操作で行うのは無理がある。
【0003】
一般に、デザイナなどデザインの専門家によってフォントデザインされた文字であっても、その仕上がり具合にバラツキが生じることも多くまた、その文字を表示するデバイスそのものの性能(解像度など)や表示形態によって見易さが大きく異なるのが一般的である。
【0004】
また、従来では、フォントの良さを定量的に評価したり、その評価結果に基づいて、機械的にデザインの仕上がり具合を判断して、補正すべき箇所を見つけて、それを自動補正したりすることはなされていなかった。したがって、従来では、フォントの良し悪し、つまり、読み易い文字であるかは、人間が目視で判断するのが一般的である。このため、フォントの品質評価に多くの労力とコストがかかり、また、人間の見た目での評価であるため、評価にバラツキが多いなどの問題がある。
【0005】
【非特許文献1】
長田昌次郎、安田稔、長谷川敬、吉田辰夫、福田忠彦、“文字放送の画像の好ましいコントラスト”テレビジョン学会誌Vol.39 No.6 pp.516−522(1985)
【非特許文献2】
窪田悟“液晶ディスプレイの人間工学”液晶Vol.5 No.3 pp.235−241(2001)
【非特許文献3】
長石道博“視覚の誘導場を用いた読みやすい和文プロポーショナル表示”、映像情報メディア学会誌、Vol.52,No.12,pp.1865−1872(1998)
【非特許文献4】
安本護、池田尚志、中里酉克、富田義数、“情報携帯端末用スケーラブルフォントの試作と評価”情報処理学会論文誌Vol.40 No.2 pp.507−516(1999)
【非特許文献5】
浅井宣美、渡邊朋子、薮内優香、高野作治、角田清、宮本有希生“LC(液晶)フォント”、シャープ技報、第69号pp.92−95.1997.12)
【非特許文献6】
横瀬善正著の“形の心理学”名古屋大学出版会(1986)
【非特許文献7】
三好正純、下塩義文、古賀広昭、井手口健、“視覚の誘導場理論を用いた感性にもとづく文字配置の設計”、電子情報通信学会論文誌、82−A,9,1465−1473(1999)
【非特許文献8】
長石道博“視覚の誘導場を用いた手書き文字の切り出し”電子情報通
信学会論文誌J76−D−II,9,pp.1948−1956(1993)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
まず、文字の読み易さとはどのようなものであるかについて述べ、そのあとで、フォントデザインの動向について述べる。
【0007】
文字の読み易さについては、1960年代から主にテレビジョン放送の普及に伴い、CRT(陰極線管表示装置)上での読み易さが従来からよく研究されている(非特許文献1:参照)。
【0008】
また、コントラストなど撮像装置側の物理的要因についての研究も多くなされている(非特許文献2:参照)。
【0009】
一方、文字そのものに関する要因については、文字の配列が読み易さの要因の1つであることはわかっている。最近では、文字種や文字の大きさに応じた最適な配置とする方法として、視覚の誘導場を用いるのが有力であることが報告されている(非特許文献3:参照)。
【0010】
ところで、最近では、液晶を用いた小型ディスプレイが携帯電話機や各種モバイル機器など広い分野で使用されている。この液晶を用いた小型ディスプレイは、低解像であるのが一般的であるため、文字の読み易さを向上させることがより望まれている。
【0011】
そこで、液晶など低解像度のディスプレイで文字を見易くする技術として、サブピクセルレンダリング、アンチアイリアリスがある。これらは、階調を利用して、低解像度で生じるジャギーを目立たなくするものである。すなわち、この技術は、「あら」を隠す手法であり、あくまでも補助手段として捉えることができる。
【0012】
一方、フォトデザイン自体を見直して、低解像度でも見易いフォントとする手法も使われている。その1つにストロークフォントと呼ばれる技術がある。これは、低解像度でも高解像度のような品質を保てるフォントを生成する技術である。
【0013】
これは、日本語の文字は、ストロークが基本と考え、高品位なフォントのストローク情報を抽出しておいて、解像度に応じて、その抽出されたストロークの情報をなるべく欠落させずに文字に反映させるようにしたものである(非特許文献4:参照)。
【0014】
この方法は、アウトラインフォントの生成方法を参考に、いろいろな解像度に対応できるように、機械的に自由に文字の大きさを変えることが可能であり、これによって得られたフォントは、確かに、「可読性」については低解像度でも一定品質が保持される。しかし、フォントの「良さ」という点では、やはり、丁寧にデザインしたビットマップフォントには劣る。
【0015】
このストロークフォントと呼ばれる技術は、液晶など低解像度のディスプレイで文字を機械的に見易くする技術であったが、これに対して、液晶など低解像度のディスプレイに好適なフォントを最初から専門のデザイナがデザインすることで対応することもなされている。
【0016】
一般に、携帯電話などの液晶ディスプレイ上で表示されているフォントは、もともと活字に使われているフォントを基にして、パーソナルコンピューなどのCRTを用いたディスプレイ用にビットマップを起こしたものを流用したものである。
【0017】
しかし、CRTを用いたディスプレイは、文字を表示すると周辺がにじむので、アンチアイリアリスがかかったようになるため、文字のつぶれなどの「あら」が目立たず、小さな文字でも比較的読みやすいが、液晶を用いたディスプレイは、文字の線が明瞭に表示されるため、文字のつぶれがよく目立つ。
【0018】
そこで、液晶など文字が明瞭に表示されるディスプレイ上で、文字が小さくてもつぶれないように、フォントデザイン自体を見直すことがなされ、LC(液晶)フォントとして商品化され、携帯電話機などの小型情報機器で実用化されている。
【0019】
このLCフォントの特徴は、重心、中心を合わせること、部首バランス、線分のふところの均一化を図ることなど、見た目のバランスを調整することで、低解像度であっても、線分がつぶれないように、専門のデザイナが適切にデザインし直したことである(非特許文献5:参照)。
【0020】
この、LCフォントは、活字の起原からフォントデザインはこうあるべきという見直しをしたこともあり、かなり高品位なフォントとなっているといえる。
【0021】
しかしながら、このLCフォントは、デザインにおける定量評価(どのようにデザインとすれば見易さがどのくらい向上するか)が明確ではなく、異なったサイズのフォントの作成は非常に困難であると考えられる。したがって、たとえば、解像度の異なった新製品が開発されるごとに、その都度、手作業でその製品に適合するフォントを作成しなければならない。
【0022】
以上説明したように、従来から、特に、液晶表示装置など低解像度上で文字を見易く表示させるための工夫や技術が様々提案され実用化されている。しかし、フォントの良さを定量的に評価したり、その評価結果に基づいて、機械的にデザインの仕上がり具合を判断して補正すべき箇所を見つけて、それを自動補正したりする技術は殆どないといって過言ではない。
【0023】
そこで本発明は、視覚の誘導場を指標にしてフォントの良さを定量的に評価できるようにするとともに、その評価結果に基づいて補正箇所を判定し、その判定結果を用いてフォントの自動補正を可能とし、それによって、フォントを最適化できるフォント最適化方法およびフォント最適化装置ならびにフォント最適化処理プログラムを提供することを目的としている。
【0024】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、本発明のフォント最適化方法は、処理対象文字をディジタル化した文字画像とし、そのディジタル化した文字画像に対して視覚の誘導場を計算し、その視覚の誘導場から等ポテンシャル線の形状を表すパラメータと等ポテンシャル値の大きさを表すパラメータの少なくとも一方のパラメータを計算して、これら等ポテンシャル線の形状を表すパラメータと等ポテンシャル値の大きさを表すパラメータの少なくとも一方のパラメータに基づいて前記処理対象文字のフォントの良さを評価してその評価結果を出力するようにしている。
【0025】
このようなフォント最適化方法において、前記等ポテンシャル線の形状を表すパラメータは、等ポテンシャル線の凹凸の度合いを示す複雑度であって、前記フォントの良さを評価する際は、この複雑度を、前記処理対象文字を構成する線分の滑らかさや当該文字の形状の良さを示す指標として用いている。
【0026】
また、前記等ポテンシャル値の大きさを表すパラメータは、誘導場のエネルギであって、前記フォントの良さを評価する際は、この誘導場のエネルギを、前記処理対象文字の印象の強さを示す指標として用いている。
【0027】
また、このフォント最適化方法において、前記処理対象文字のフォントの良さを評価してその評価結果を出力する処理は、補正すべき箇所を判定する処理が含まれる。
【0028】
また、このフォント最適化方法において、前記複雑度または誘導場のエネルギを計算する際、前記処理対象文字を複数の領域に分割して、それぞれの領域ごとに前記複雑度または誘導場のエネルギを計算するようにしている。
【0029】
また、このフォント最適化方法において、前記補正すべき箇所を判定する際は、前記領域ごとの複雑度と誘導場のエネルギの少なくとも一方の値を、それぞれの領域間で比較することによって補正すべき領域を判定するようにしている。
【0030】
また、このフォント最適化方法において、前記領域の分割は、前記処理対象文字の重心を中心にして放射状に分割するようにしている。
【0031】
また、このフォント最適化方法において、前記処理対象文字の重心を中心にして放射状に分割する際の分割の仕方は等分割としている。
【0032】
また、このフォント最適化方法において、前記複雑度または誘導場のエネルギをそれぞれの領域ごとに計算する際、計算された領域ごとの当該複雑度または誘導場のエネルギを当該文字全体の値に換算するための正規化を行うようにしている。
【0033】
また、このフォント最適化方法において、前記補正すべき箇所を判定する処理は、前記複雑度と誘導場のエネルギに基づいて補正すべき箇所を判定してその補正箇所を示すデータを得るとともに、その補正すべき箇所に対してどのような補正を行うかを示す補正内容データを取得して、これら補正すべき箇所を示すデータと補正内容データの出力を行うようにしている。
【0034】
また、このフォント最適化方法において、前記補正すべき箇所を判定する処理のあとに、前記補正すべき箇所に対する補正処理を行い、この補正処理によって当該補正すべき箇所を自動的に補正するようにしている。
【0035】
また、このフォント最適化方法において、前記分割されて得られた領域のうちのある領域に対して補正がなされた場合、その補正処理後に、他の領域との間の文字の線分を平滑化する処理を行うようにしている。
【0036】
また、本発明のフォント最適化装置は、処理対象文字を入力してディジタル化した文字画像として出力する画像入力部と、この画像入力部から出力される文字画像に対して視覚の誘導場を計算するとともに、その視覚の誘導場から等ポテンシャル線の形状を表すパラメータと等ポテンシャル値の大きさを表すパラメータの少なくとも一方を計算する視覚の誘導場計算手段と、この視覚の誘導場計算手段によって求められた前記等ポテンシャル線の形状を表すパラメータと等ポテンシャル値の大きさを表すパラメータの少なくとも一方のパラメータに基づいて前記処理対象文字のフォントの良さを評価してその評価結果を出力する評価判定手段とを有している。
【0037】
このようなフォント最適化装置において、前記等ポテンシャル線の形状を表すパラメータは、等ポテンシャル線の凹凸の度合いを示す複雑度であって、前記フォントの良さを評価する際は、この複雑度を、前記処理対象文字を構成する線分の滑らかさや当該文字の形状の良さを示す指標として用いるようにしている。
【0038】
また、前記等ポテンシャル値の大きさを表すパラメータは、誘導場のエネルギであって、前記フォントの良さを評価する際は、この誘導場のエネルギを、前記処理対象文字の印象の強さを示す指標として用いるようにしている。
【0039】
また、このフォント最適化装置において、前記評価判定手段は、補正すべき箇所を判定する補正箇所判定機能を有している。
【0040】
また、このフォント最適化装置において、前記複雑度または誘導場のエネルギを計算する際、前記処理対象文字を複数の領域に分割して、それぞれの領域ごとに前記複雑度または誘導場のエネルギを計算するようにしている。
【0041】
また、このフォント最適化装置において、前記補正すべき箇所を判定する際は、前記領域ごとの複雑度と誘導場のエネルギの少なくとも一方の値を、それぞれの領域間で比較することによって補正すべき領域を判定するようにしている。
【0042】
また、このフォント最適化装置において、前記領域の分割は、前記処理対象文字の重心を中心にして放射状に分割するようにしている。
【0043】
また、このフォント最適化装置において、前記処理対象文字の重心を中心にして放射状に分割する際の分割の仕方は等分割としている。
【0044】
また、このフォント最適化装置において、前記複雑度または誘導場のエネルギをそれぞれの領域ごとに計算する際、計算された領域ごとの当該複雑度または誘導場のエネルギを当該文字全体の値に換算するための正規化を行うようにしている。
【0045】
また、このフォント最適化装置において、前記補正すべき箇所を判定する処理は、前記複雑度と誘導場のエネルギから補正すべき箇所を判定してその補正箇所を示すデータを得るとともに、その補正すべき箇所に対してどのような補正を行うかを示す補正内容データを取得して、これら補正すべき箇所を示すデータと補正内容データの出力を行うようにしている。
【0046】
また、このフォント最適化装置において、前記評価判定手段により判定された補正すべき箇所に対して補正を行う補正処理手段を設け、この補正処理手段によって当該補正すべき箇所を自動的に補正するようにしている。
【0047】
また、このフォント最適化装置において、前記分割されて得られた領域のうちのある領域に対して補正がなされた場合、その補正処理後に、他の領域との間の文字の線分を平滑化する処理を行うようにしている。
【0048】
また、本発明のフォント最適化処理プログラムは、処理対象文字を入力してディジタル化した文字画像として出力する処理手順と、このディジタル化された文字画像に対して視覚の誘導場を計算するとともに、その視覚の誘導場から等ポテンシャル線の形状を表すパラメータと等ポテンシャル値の大きさを表すパラメータの少なくとも一方を計算する処理手順と、これによって求められた前記等ポテンシャル線の形状を表すパラメータと等ポテンシャル値の大きさを表すパラメータの少なくとも一方のパラメータに基づいて前記処理対象文字のフォントの良さを評価してその評価結果を出力する処理手順とを含むものである。
【0049】
このようなフォント最適化処理プログラムにおいて、前記等ポテンシャル線の形状を表すパラメータは、等ポテンシャル線の凹凸の度合いを示す複雑度であって、前記フォントの良さを評価する際は、この複雑度を、前記処理対象文字を構成する線分の滑らかさや当該文字の形状の良さを示す指標として用いている。
【0050】
また、前記等ポテンシャル値の大きさを表すパラメータは、誘導場のエネルギであって、前記フォントの良さを評価する際は、この誘導場のエネルギを、前記処理対象文字の印象の強さを示す指標として用いている。
【0051】
また、このフォント最適化処理プログラムにおいて、前記処理対象文字のフォントの良さを評価してその評価結果を出力する処理は、補正すべき箇所を判定する処理が含まれる。
【0052】
また、このフォント最適化処理プログラムにおいて、前記複雑度または誘導場のエネルギを計算する際、前記処理対象文字を複数の領域に分割して、それぞれの領域ごとに前記複雑度または誘導場のエネルギを計算するようにしている。
【0053】
また、このフォント最適化処理プログラムにおいて、前記補正すべき箇所を判定する際は、前記領域ごとの複雑度と誘導場のエネルギの少なくとも一方の値を、それぞれの領域間で比較することによって補正すべき領域を判定するようにしている。
【0054】
また、このフォント最適化処理プログラムにおいて、前記領域の分割は、前記処理対象文字の重心を中心にして放射状に分割するようにしている。
【0055】
また、このフォント最適化処理プログラムにおいて、前記処理対象文字の重心を中心にして放射状に分割する際の分割の仕方は等分割とするようにしている。
【0056】
また、このフォント最適化処理プログラムにおいて、前記複雑度または誘導場のエネルギをそれぞれの領域ごとに計算する際、計算された領域ごとの当該複雑度または誘導場のエネルギを当該文字全体の値に換算するための正規化を行うようにしている。
【0057】
また、このフォント最適化処理プログラムにおいて、前記補正すべき箇所を判定する処理は、前記複雑度と誘導場のエネルギから補正すべき箇所を判定してその補正箇所を示すデータを得るとともに、その補正すべき箇所に対してどのような補正を行うかを示す補正内容データを取得して、これら補正すべき箇所を示すデータと補正内容データの出力を行うようにしている。
【0058】
また、このフォント最適化処理プログラムにおいて、前記補正すべき箇所を判定する処理のあとに、前記補正すべき箇所に対する補正処理を行い、この補正処理によって当該補正すべき箇所を自動的に補正するようにしている。
【0059】
また、このフォント最適化処理プログラムにおいて、前記分割されて得られた領域のうちのある領域に対して補正がなされた場合、その補正処理後に、他の領域との間の文字の線分を平滑化する処理を行うようにしている。
【0060】
このように本発明は、視覚の誘導場から等ポテンシャル線の形状を表すパラメータと等ポテンシャル値の大きさを表すパラメータの少なくとも一方のパラメータを計算して、これらのパラメータの少なくとも一方のパラメータに基づいて処理対象となる文字のフォントの良さを評価するようにしているので、フォントの良さを適切に定量評価することができる。しかも、その評価を自動的にしかも短時間で大量に行うことができ、労力、コストを大幅に削減することができる。また、人間の見た目の評価と異なり、評価のバラツキもなくなり均一評価が可能となる。
【0061】
また、このような評価はフォントデザインの支援ともなり、フォントデザインを効率よく行うことができる。
【0062】
また、等ポテンシャル線の形状を表すパラメータとしては、等ポテンシャル線の凹凸の度合いを示す複雑度を用い、この複雑度によって、個々の文字を評価するようにしているので、線分の滑らかさや文字形状の良さを適切に定量評価することができる。
【0063】
また、等ポテンシャル値の大きさを表すパラメータとしては、誘導場のエネルギを用い、この誘導場のエネルギによって個々の文字の印象の強さを評価するようにしているので、線幅の太さなど、見た目の印象の強さを適切に定量評価することができる。
【0064】
なお、上述した複雑度と誘導場のエネルギはそれぞれを単独で用いることもできるが、複雑度と誘導場のエネルギの両方を組み合わせて用いることによって、フォントの良さを、より適切に評価できることはいうまでもない。
【0065】
また、本発明は、視覚の誘導場から等ポテンシャル線の形状を表すパラメータと等ポテンシャル値の大きさを表すパラメータの少なくとも一方のパラメータを計算して、これらのパラメータの少なくとも一方のパラメータに基づいて、補正すべき箇所を判定し、その判定結果を出力するようにしているので、文字のどの部分を補正すべきかを適切にデザイナなどに知らせることができる。
【0066】
これによって、デザイナなどは指摘された箇所に対して適切な補正を行うことができる。なお、この補正はデザイナなどが手動で行うこともできるし、また、補正手段が自動で行うことも可能となる。なお、この補正処理は、従来から一般的に行われている画像処理手法を適用することができる。
【0067】
また、前記複雑度または誘導場のエネルギを計算する際、前記処理対象文字を複数の領域に分割してそれぞれの領域ごとに前記複雑度または誘導場のエネルギを計算し、これら分割されたそれぞれの領域ごとに計算された複雑度と誘導場のエネルギの少なくとも一方を、それぞれの領域間で比較することによって、補正すべき領域を判定するようにしている。このように、ある限られた領域ごとの複雑度や誘導場のエネルギに基づいて補正すべき領域を判定することによって、補正すべき箇所をより適切に特定することができる。
【0068】
また、領域の分割は、評価対象文字の重心を中心にして放射状に分割するようにしているので、文字の種類にかかわらず、領域の分割を適切に行うことができる。
【0069】
なお、この分割の仕方としては、等分割とすることによって、分割する際の処理が単純となり、また、それぞれの領域ごとの複雑度や誘導場のエネルギを計算する処理も簡単なものとなる。
【0070】
また、このように複雑度または誘導場のエネルギをそれぞれの領域ごとに計算する際、計算された値を当該文字全体の値に換算するための正規化を行うことで、文字全体の複雑度または誘導場のエネルギとの比較を容易に行うことができる。
【0071】
また、補正すべき箇所だけでなく、その補正すべき箇所に対してどのような補正を行うかの指示を行うことも可能で、これによって、補正すべき箇所に対して効率よく補正を行うことができる。
【0072】
また、ある領域に対して補正がなされた場合、その補正処理後に、他の領域との間の境界を平滑化する処理を行うことで、ある領域において補正処理が施されたあと、その領域とそれに隣接する領域間での文字を構成する線分などのつながりの不自然さを解消することができる。
【0073】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態で説明する内容は、本発明の本発明のフォント最適化方法およびフォント最適化装置ならびにフォント最適化処理プログラムの説明をすべて含むものである。
【0074】
本発明は「視覚の誘導場」という概念を文字のフォントの良さを評価する手段として用い、それによって最適なフォントを決めることができるようにするとともに、その評価結果を用いて、フォントの補正をも可能とするものである。まず、この視覚の誘導場について簡単に説明する。
【0075】
最初に、生理学および心理学的な知見に基づいた文字画像の視覚の誘導場の推定を行う例として、電子化によって得られた文字のディジタル画像から視覚の誘導場を推定する方法について説明する。
【0076】
なお、文字列内の個々の文字が読み易い状態とは、個々の文字を囲む視覚の誘導場が、できるだけ干渉し合わないような間隔で配置されていることであるとされている。
【0077】
具体的には、個々の文字を囲む視覚の誘導場の閉曲線を考えたとき、その閉曲線のポテンシャル値が高いと、他の文字との分離が難しく読みにくいということである。このことから、視覚の誘導場の広がりを基準に、文字列内の個々の文字の読み易さを定量的に評価できると考えられる。なお、視覚の誘導場については、非特許文献6に述べられている。
【0078】
この非特許文献6に示された視覚の誘導場(以下では単に誘導場と表記する)とは、図形の周囲に波及する「場」を考えることにより、視覚現象を説明するものである。この非特許文献6は、直線・円弧で構成された図形を対象としているため、任意のディジタル画像の誘導場は求められない。ここでは、最初に白黒2値のディジタル画像における誘導場の計算方法を示す。
【0079】
誘導場は基本的にクーロンポテンシャルと解釈できることから、パターンの外郭を構成する画素を点電荷と仮定し、それらが作るクーロンポテンシャルの集積から、ディジタル画像における誘導場の分布を計算する。
【0080】
図1はディジタル画像の画素配列を示す図である。図1に示すように、n個の点列から構成される曲線f(s)によって、任意の点Pに誘導場が形成されるとする。この曲線f(s)は線図形の線分や画図形の輪郭線に当たる。そして、曲線f(s)を構成する各点P1,P2,・・・,Pi,・・・,Pnを正電荷1の点電荷と仮定し、点Pから曲線f(s)上を走査して、曲線f(s)を構成するn個の点P1,P2,・・・,Pi,・・・,Pnが見つかり、走査して見つかった曲線f(s)上の各点までの距離をriとすると、点Pにおける誘導場の強さMpは次のように定義される。
【0081】
【数1】
【0082】
この(1)式を用いることにより、任意のディジタル画像の誘導場を求めることができる。また、曲線が複数ある場合、点Pにおける誘導場の強さは個々の曲線が点Pにつくる誘導場の和になる。
【0083】
なお、(1)式は点Pから発した光が直接当たる部分のみ和をとるという制約条件がつく。たとえば、点Pに対して、曲線f1(s),f2(s),f3(s)が図2に示すように存在しているとすると、点Pから見えない部分、つまり、この場合、曲線f1(s)に遮蔽されて点Pから見えない範囲Zに存在する部分の和はとらない。この図2の例では、曲線f3(s)のすべてと曲線f2(s)の一部の和はとらないことになる。これを、ここでは遮蔽条件という。
【0084】
図3(a)は「A」という文字について、前述の(1)式で計算した誘導場の例を示すものである。図3(a)の文字「A」周辺に地図の等高線状に分布している細い線Lが誘導場の等ポテンシャル線であり、中央から外に行くほど誘導場の強さは弱くなりやがて0に近づく。
【0085】
図3(a)の誘導場の分布の形状・強さにおける特徴、特に「A」の頂点付近の分布が他より鋭角な特徴は、前述した非特許文献6による四角形や三角形など、図形の角付近に関する誘導場の分布の心理実験結果と一致する。
【0086】
また、図3(b)は、前述した遮蔽条件(任意の点Pから見えない範囲Zに存在する部分の和はとらない)がなく、画素全てを電荷1の点電荷と仮定した誘導場の例であるが、誘導場の分布は全体的に丸くなり、前述の非特許文献6による心理実験結果と異なったものとなる。このように、遮蔽条件は誘導場を特徴づける上で重要なものとなる。
【0087】
このようにして、ある文字についての誘導場を得ることができる。なお、このような視覚の誘導場を用いた技術の例としては、たとえば、非特許文献7や、前述した非特許文献3がある。ちなみに、この非特許文献3の“視覚の誘導場を用いた読みやすい和文プロポーショナル表示”の著者は本発明の発明者である。
【0088】
本発明はこのような視覚の誘導場を利用して、文字のフォントデザインの定量的評価を自動的に行うとともに、フォント補正を自動的に行うことを可能とし、それによって、これまでデザイナなどが手作業に頼っていた文字のフォントデザインを自動的に最適化できるようにしたものである。
【0089】
まず、視覚の誘導場を用いてフォントデザインの評価を行う例について説明する。これは、たとえば、デザイナが作成したフォントやディスプレイに表示されたフォントの良さを機械的に定量評価するものであり、それによって、従来では、人間が目視で良し悪しを判断していた文字のフォントの良し悪しの評価を自動的に、かつ、定量的に行うことができ、しかも、大量の評価対象データを短時間で均一に評価できる。
【0090】
本発明では、フォントの良し悪しを評価する際、評価対象となる1つの文字画像を1つの誘導場計算対象とみなして、その文字画像について誘導場を計算し、それによって得られた等ポテンシャル線の形状を表すパラメータとして、等ポテンシャル線の凹凸の度合いを表す複雑度を求め、また、当ポテンシャル線のポテンシャル値の大きさを表すパラメータとして、見た目の印象の強さを表す誘導場のエネルギを求め、これら複雑度と誘導場のエネルギの少なくとも一方に基づいて文字フォントの良し悪しを評価する。なお、ここで示す実施の形態では、これら複雑度と誘導場のエネルギの両方を用いるものとする。
【0091】
まず、上述した等ポテンシャル線の凹凸の度合いを表す複雑度や当ポテンシャル線のポテンシャル値の大きさを表す誘導場のエネルギについて簡単に説明する。
【0092】
複雑度は上述したように等ポテンシャル線の凹凸の度合いを表すものであり、等ポテンシャル線の凹凸の度合いが大きければ複雑度は高く、逆に、等ポテンシャル線の凹凸の度合いが小さければ複雑度は小さいといえる。
【0093】
この複雑度は文字らしさを指標にした手書き文字の切り出し(非特許文献8:参照)や文字や写真などのレイアウトとの良さなどの評価に用いられている。
【0094】
たとえば、文字や写真などのレイアウトの良さと複雑度との関係については、文字や写真などが見やすくレイアウトされたものほど、そのレイアウト全体から得られた誘導場の等ポテンシャル線は全体に丸みを帯びた(凹凸の少ない)ものとなる傾向にあることが実験によりわかっている。
【0095】
このことから、この複雑度は文字のフォントの良さを評価するための指標の1つとして用いることができると考えられる。すなわち、個々の文字画像に対して視覚の誘導場を計算し、それによって得られた等ポテンシャル線の形状から複雑度を求め、求められた複雑度に基づいて文字のフォントの良さを評価することができる。
【0096】
そこで本発明では、この等ポテンシャル線の凹凸の度合いを等ポテンシャル線の複雑度として求め、その複雑度を評価対象となる文字画像のフォントの良さをを評価する指標の1つとして用いる。つまり、等ポテンシャル線が、凹凸が少なく丸みを帯びていればいるほど複雑度は小さくなり、等ポテンシャル線の凹凸が激しいほど複雑度は大きくなる。
【0097】
この複雑度は、i番目の等ポテンシャル線の複雑度をCiで表せば、
Ci=Li2/Si (2)
で求めることができる。なお、(2)式において、Liはi番目の等ポテンシャル線の長さ、Siはi番目の等ポテンシャル線で囲まれた面の面積を表している。なお、i番目の等ポテンシャル線の長さLiはそのポテンシャル線を構成するドット数と考えることができ、i番目の等ポテンシャル線で囲まれた面の面積Siは、i番目の等ポテンシャル線で囲まれた面に存在するドット数と考えることができる。
【0098】
この(2)式によれば、評価対象となるある1つの文字画像に対して計算された誘導場によって描かれた等ポテンシャル線の長さがその面積に比べて長いほど(凹凸が激しいほど)複雑度Ciの値は大きくなるといえる。逆に言えば、等ポテンシャル線に凹凸が少なく円に近いほど複雑度Ciは小さな値となる。
【0099】
本発明ではこの複雑度を文字のフォントの良さを評価するときの指標の1つとして用いる。たとえば、ある同じ文字について、その大きさとフォントが同じである場合の複雑度を計算すると、全体的な傾向としては、解像度が大きく文字を構成する線分が滑らかになるほど複雑度が小さくなる。これによって、複雑度はフォントデザインの良さを評価するための指標として用いることができると考えられる。これについての具体例については後に詳細に説明する。
【0100】
一方、誘導場のエネルギは、上述したように、当ポテンシャル線のポテンシャル値の大きさを表すものであり、文字線の太さや力強さなど、人間の目に与える印象の強さを反映するものとなるため、この誘導場のエネルギは見た目の印象の強さの度合いを表す指標として用いることができる。以下、この誘導場のエネルギについて説明する。
【0101】
まず、ある文字についてその文字のフォントを色々変えた場合、それぞれのフォントに対する印象の度合いを定量的に判断する例について説明する。
【0102】
図4は「あ」という文字についてフォントを色々変化させた例を示すもので、フォントの大きさはこの例では62ポイント(解像度72DPI)で統一し、フォントの種類のみを変化させ、ここではフォントの種類を12種類とした例について示し、左からフォントF1,F2,・・・,F12と表すものとする。これら12種類のフォントの「あ」という文字に対して、それぞれのフォントごとに誘導場のエネルギを求める。
【0103】
ここで、誘導場のエネルギの大きさをEで表せば、Eは次式で求めることができる。
【0104】
【数2】
【0105】
この(3)式において、iは(1)式で求められたi番目の等ポテンシャル線であり、Siはi番目の等ポテンシャル線で囲まれる面の面積、Piはi番目の等ポテンシャル線におけるポテンシャル値を示している。この(3)式は誘導場を3次元的に考えたとき、その誘導場の体積を求めるのに相当し、その体積の大きさが誘導場のエネルギの大きさといえる。
【0106】
この(3)式を用いて、図4に示すぞれぞれの「あ」に対し、1つ1つの「あ」をそれぞれの文字画像として、それぞれの「あ」ついての誘導場のエネルギを求めたものが図5である。この図5において、横軸には「あ」という文字に対する12種類のフォントF1,F2,・・・,F12をとり、縦軸にはそれぞれのフォントF1,F2,・・・,F12に対する誘導場のエネルギの大きさをとって示すものである。
【0107】
この図5からもわかるように、細い線で表された視覚的に繊細な印象を受ける「あ」は誘導場のエネルギが小さく、太い線で表された視覚的に強い印象を受ける「あ」は誘導場のエネルギが大きい。特に、フォントF1やフォントF2の「あ」のように、明朝体でしかも細い線で表された「あ」は誘導場のエネルギが小さく、フォントF11やフォントF12のように、ゴシック体のなかでもポスタの見出しなどでよく用いられる太い線で表された「あ」は誘導場のエネルギが大きいことがわかる。
【0108】
このことから、誘導場のエネルギの大きさは、文字のフォントの印象の強さの度合いを表す指標として用いることができる。言い換えれば、フォントの印象の強さを誘導場のエネルギの大きさで定量的に示すことができると考えられる。
【0109】
図6は文字サンプル例として、「あ」という文字を同じ大きさで、しかも、同じフォントとして、その解像度だけを変化させた場合の文字画像を示すもので、ここでは、解像度が72DPIの文字を基準とし、文字の大きさは9ポイントで統一して、解像度だけを72DPIから88DPI,96DPI,104DPI,・・・というように最大408DPIまで段階的に変化させている。
【0110】
なお、図6において、それぞれの文字の下に記述されている数値(72、88,96、・・・など)はそれぞれ対応する文字の解像度を表している。これは、後に説明する図7、図9、図10についても同様であり、それぞれの文字の下に記述されている数値は、それぞれ対応する文字の解像度を表している。
【0111】
この図6に示されるそれぞれの文字を見ると、文字の大きさとフォントが同じであるので、一見同じように見えるが、よく見ると、解像度が高くなるにつれて、文字を構成する線分が滑らかで読みやすい文字となっているのがわかる。
【0112】
また、さらに細かく観察すると、低解像度(この図6の例では104DPI以下)の文字は、低い解像度であるがために文字がつぶれているが、思いのほか見やすく、逆に、それよりも解像度の高い中間的な解像度(この図6の例では112DPIから192DPI程度)の文字は、解像度が上がったわりには、文字線幅が細く、線分のジャギーも目立って読みにくい印象を受ける。
【0113】
図7はこの図6に示した「あ」の文字画像を、その大きさだけを62ポイントに拡大したもので、フォントの種類や解像度の変化も図6と同じである。この図7によれば、上述した中間的な解像度(112DPIから192DPI程度)の文字は、確かに、72DPIや88DPIなどの低解像度の文字に比べれば、解像度が上がっている分だけ、線分の滑らかさ、特に曲線部分における滑らかさは向上しているが、線幅が細く、線分のジャギーも目立っている。特に、112DPI、120DPI、144DPIの文字は、線幅が細く、線分のジャギーも目立っている。これは、アフィン変換を行うことによって生じるものと考えられる。
【0114】
図8は、図6の文字サンプル例で示したそれぞれの「あ」に対して求められた複雑度とネルギを示すもので、横軸に解像度、右縦軸に複雑度の平均、左縦軸に誘導場のエネルギをとり、複雑度の変化を破線で示し、誘導場のエネルギの変化を実線で示したものである。
【0115】
なお、ここで複雑度の平均としているのは、前述した(2)式の複雑度を求める計算式では、ある1つの文字について、ある等ポテンシャル線(i番目の等ポテンシャル線)についての複雑度であるが、複数の等ポテンシャル線についてそれぞれ複雑度を求め、求められた複数の複雑度の平均を求めることが望ましいので、ここでは、その平均の複雑度としている。ただし、ここではそれを単に複雑度ということにする。
【0116】
この図8からもわかるように、誘導場のエネルギは、100DPIから150DPIくらいまでの間(前述した112DPI、120DPI、144DPIなどの中間的な解像度)で少し小さくなる部分がある他は、解像度にかかわらずあまり大きくは変化しない。これは、解像度が異なっても、文字の大きさとフォントの種類が同じであるので、ぱっと見たときの印象の強さにはそれほど大きな違いがないことを示している。
【0117】
一方、複雑度は100DPIから150DPIくらいまでの間では特にその値が上昇するが、解像度が高くなるにしたがって、その値が小さくなる傾向にある。これは、線分の滑らかさに欠け、ジャギーが多いと、複雑度が高くなり、解像度が高く、線分が滑らかになると、複雑度は低くなることを示している。
【0118】
このように、複雑度は等ポテンシャル線の凹凸の度合いを表すので、文字を構成する線分が滑らかであればその値は小さくなる。また、複雑度は線分の滑らかさだけでなく、文字そのものの形状のまとまり具合(形状の良さ)なども適切に表現すると考えられるので、文字の線分の滑らかさや形状の良さなどを評価するときの指標として用いることができる。すなわち、文字の場合、複雑度の低いほど、線分が滑らかで、文字そのものの形状も良く、見た目にも良く読み易い文字であるといえる。
【0119】
なお、図8の例では、100DPIから150DPIくらいまでの間で複雑度が特に高い部分が存在するが、これは、図6の例では、112DPI、120DPI、144DPIの文字に対応するものである。これらの解像度の文字は、他の解像度の文字と比べると、特に、線幅が細く、ジャギーも目立つために複雑度が高くなったと考えられる。
【0120】
このことから、線幅が細くジャギーの目立つような文字の読み易さを向上させるには、文字の線幅を補正してジャギーを目立たなくすることが有効であると考えられる。そこで、図8の例における112DPI、120DPI、144DPIの文字について、これらの文字の線幅の細い部分を太くして、ジャギーを目立たなくする補正を施し、それによって複雑度がどのように変化するかを調べた。
【0121】
図9(a)は図7で示した拡大後の文字サンプル例における112DPI、120DPI、144DPIの文字を取り出して示すもので、図9(b)はこれらの文字においてそれぞれに補正を施した文字である。すなわち、図9(a)に示す補正前のそれぞれの文字において、線幅の細くジャギーの目立つ部分(主な部分に矢印Aを付す)に対して線幅に補正を施し、それによってジャギーを目立たなくした。
【0122】
この補正は、文字の大きさや解像度の関係で線幅そのものは太くすることができないので、画素間の連結が疎になっている部分(たとえば矢印Aで示す部分)に画素を追加することで、その部分の線幅が元の線幅に比べると少し太めになるが、滑らかな線分となるような補正を施した結果、図9(b)のような文字となった。
【0123】
この図9(b)によれば、112DPI、120DPI、144DPIのそれぞれの文字は、補正前の図9(a)のそれぞれの文字に比べると、互いに隣接する解像度の文字と線幅の太さがほぼ揃い、ジャギーが少なくなり形状の良さが改善され、また、見た目の印象も強くなっていることがわかる。
【0124】
図10は元の文字サンプル(図6で示す文字サンプル)と図9(b)で説明したような補正を施したあとの文字サンプルを示すもので、同図(a)は補正前(図6で示す文字サンプルそのもの)であり、同図(b)は補正後の文字サンプルを示すものである。この図10によれば、補正処理を行うことで、特に、112DPI、120DPI、144DPIのそれぞれの文字が読み易くなっているのがわかる。
【0125】
そして、このような補正を施したそれぞれの文字について、前述同様、それぞれ誘導場を計算し、その計算結果を用いて複雑度と誘導場のエネルギを計算した結果を図11に示す。
【0126】
図11は図10(b)に示される補正処理後のそれぞれの解像度の「あ」に対して求められた複雑度と誘導場のエネルギを示すもので、横軸に解像度、右縦軸に複雑度の平均、左縦軸に誘導場のエネルギをとり、誘導場のエネルギの変化を実線で示し、複雑度の変化を破線で示したものである。
【0127】
この図11からもわかるように、補正前には大きく突出していた112DPI、120DPI、144DPIの文字の複雑度(図8参照)が、補正後には小さくなっていることがわかる。また、誘導場のエネルギについても、補正前には112DPI、120DPI、144DPIの文字の誘導場のエネルギは、他の解像度の文字に比べて値が小かった(図8参照)ものが改善されている。
【0128】
このように、ジャギーの特に目立つ部分(画素間の連結が疎になっている部分)などに画素を追加して、その部分の線分が滑らかとなるような補正を施すことによって、複雑度や誘導場のエネルギが改善されることがわかる。
【0129】
このような補正により、複雑度が改善される(複雑度の値が小さくなる)ことによって、個々の文字の線分が滑らかとなり、形状の良さも改善され、読み易い文字となり、また、誘導場のエネルギが改善される(誘導場のエネルギの値が大きくなる)ことによって、個々の文字の印象が強くなり、それによっても読み易さが改善される。
【0130】
以上説明したように、等ポテンシャル線の凹凸の度合いを表す複雑度と、当ポテンシャル線のポテンシャル値の大きさを表す誘導場のエネルギは、文字フォントの良さを評価するときの指標として用いることができる。
【0131】
本発明は、これを利用して文字フォントの最適化を図ろうとするものであり、その最適化を図る上で、まず、誘導場(それによって得られる複雑度と誘導場のエネルギ)を尺度にしたフォントの評価を行い、さらに、補正すべき箇所を判定してその補正すべき箇所に対するフォント補正を行う。
【0132】
ここでは、誘導場(それによって得られる複雑度と誘導場のエネルギ)を指標にしたフォントの評価についてを第1の実施の形態として説明し、また、誘導場(それによって得られる複雑度と誘導場のエネルギ)に基づいてフォントの補正を可能とする例についてを第2の実施の形態として説明する。
【0133】
〔第1の実施の形態〕
この第1の実施の形態は、誘導場によって得られる等ポテンシャル線の凹凸の度合いを表す複雑度と、当ポテンシャル線のポテンシャル値の大きさを表す誘導場のエネルギ(誘導場のエネルギ)を用いて、デザイナが作成したフォントやディスプレイに表示されたフォントの良さを自動的に定量評価し、それによってフォントの良さを評価し、さらに、デザイナに対するデザイン支援をも可能とするものである。
【0134】
図12はこの第1の実施の形態を実現するためのフォント最適化装置の構成を示す図であり、処理対象となる文字を入力してディジタル化した文字画像として出力する画像入力部1、誘導場を計算して誘導場のエネルギと複雑度を求める誘導場計算部2、評価基準データ(後述する)が格納された評価基準データベース3、誘導場計算部によって求められた誘導場のエネルギと複雑度の少なくとも一方を用い、かつ、評価基準データベース3の内容を用いてフォントの良さの評価を行う評価判定部4、この評価判定部4の評価結果を表示する表示部5とを有した構成となっている。
【0135】
なお、評価基準データベース3に格納される評価基準データは、たとえば、複雑度については、それぞれの処理対象文字に対して求められた複雑度に対し、その複雑度がどの程度のバラツキの範囲までは許容されるかを示すデータであり、また、誘導場のエネルギについても、それぞれの処理対象文字に対して求められた誘導場のエネルギに対し、その誘導場のエネルギがどの程度のバラツキの範囲までは許容されるかを示すデータである。
【0136】
ここで今、あるデザイナがたとえば携帯情報機器などに表示するための文字としてデザインした同じ大きさの同じフォントの文字(ひらがな、漢字、数字などを含む)を多数用意し、それらを処理対象文字として、それをスキャナやカメラなどで画像入力部1が取り込んで、ディジタル化された文字画像として出力する。
【0137】
そして、誘導場計算部2では、画像入力部1から出力されたそれぞれの処理対象文字ごとの文字画像に対して誘導場を計算し、その計算結果を用いて、前述した(2)式および(3)式から、それぞれの評価対象文字ごとに複雑度と誘導場のエネルギを計算し、その計算結果を評価判定部4に渡す。このとき、この複雑度と誘導場のエネルギは、いずれか一方だけを用いてもそれなりの評価は可能であるが、その両方を用いた方がより適正な評価が行えるので、ここでは、複雑度と誘導場のエネルギの両方を用いるものとする。
【0138】
評価判定部4では、誘導場計算部2から渡されたそれぞれの評価対象文字ごとの複雑度と誘導場のエネルギを用い、かつ、評価基準データベース3の内容を用いて品質評価を行う。
【0139】
この評価基準データベース3には、上述したように、複雑度については、それぞれの処理対象文字に対して求められた複雑度に対し、その複雑度がどの程度のバラツキの範囲までは許容されるかを示すデータが格納されており、また、誘導場のエネルギについても、それぞれの処理対象文字に対して求められた誘導場のエネルギに対し、その誘導場のエネルギがどの程度のバラツキの範囲までは許容されるかを示すデータが格納されている。
【0140】
これによって、評価判定部4では、実際に計算された個々の評価対象文字ごとの複雑度および誘導場のエネルギと、評価基準データベース3に格納されている内容から、それぞれの処理対象文字ごとに評価値を求める。
【0141】
たとえば、処理対象文字として、あるデザイナのデザインした「あ」、「い」、「う」、「え」、「お」、・・・というような文字(同じ大きさで同じフォントであるとする)が画像入力部1に入力されたとすると、これらの文字に対して誘導場計算部2では誘導場の計算を行い、個々の文字ごとに複雑度と誘導場のエネルギが求められ、これら個々の文字ごとに複雑度と誘導場のエネルギは評価判定部4に渡される。
【0142】
それによって、評価判定部4では、誘導場計算部2から渡されたそれぞれの処理対象文字ごとの複雑度と誘導場のエネルギに対して、評価基準データベース3の内容を参照することで、それぞれの文字ごとに総合的な評価を行い、その評価結果を出力する。
【0143】
たとえば、「あ」に対して総合的な評価を行った結果、評価値として4.0が得られ、「い」に対して総合的な評価を行った結果、評価値として1.5が得られ、「う」に対して総合的な評価を行った結果、評価値として4.1が得られ、「え」に対して総合的な評価を行った結果、評価値として3.9が得られ、「お」に対して総合的な評価を行った結果、評価値として4.2が得られたとする。
【0144】
このようにして評価対象となるそれぞれの文字に対する評価値が得られたら、そのそれぞれの評価対象文字ごとの評価値を表示部5で表示する。このとき、それぞれの評価対象文字の画像とともにその評価値を表示すれば、どの文字がどのような評価値であるかが一目でわかる。なお、上述の評価結果の例では、「い」の文字の評価値が特に低いので、フォントの良さが他の文字比べて劣ると判断し、その文字についてはデザインを手直しするなどの措置を行う。
【0145】
以上の説明したように、この第1の実施の形態では、複雑度と誘導場のエネルギを用いて、フォントの良さを自動的に定量評価することができる。
【0146】
このように、自動的にフォントの良さを定量評価できることによって、従来では、人間が目視でフォントの良し悪しを判断していたものが自動的にしかも大量に均一評価することができ、これによって、労力、コスト、品質のバラつきなどを大幅に改善することができ、また、その評価結果はデザイナに対するデザイン支援のためのデータとしても提供することができる。
【0147】
〔第2の実施の形態〕
この第2の実施の形態は、誘導場によって得られる等ポテンシャル線の凹凸の度合いを表す複雑度と、当ポテンシャル線のポテンシャル値の大きさを表す誘導場のエネルギを用いて、デザイナが作成したフォントやディスプレイに表示されたフォントに補正すべき箇所があるか否かを判定し、補正すべき箇所があればその補正を可能としたものである。
【0148】
図13はこの第2の実施の形態を実現するためのフォント最適化装置の構成を示す図であり、その構成要素としては、第1の実施の形態で説明した図12の構成と同様、画像入力部1、誘導場計算部2、評価基準データベース3、評価判定部4、表示部5を有し、そのほかに、補正すべき箇所に対し、どのような補正を行えばよいかを示す補正内容データが格納された補正内容データベース10、この補正内容データベース10を参照して補正すべき箇所に対して補正を行う補正処理部11を有している。
【0149】
また、この第2の実施の形態においては、誘導場計算部2における複雑度と誘導場のエネルギは、処理対象文字全体から計算することができることは勿論であるが、たとえば、外部からあるいは評価判定部4からの指示によって、処理対象文字を複数の領域に分割した上でそれぞれの領域ごとに計算できるようにしている。
【0150】
また、上述の評価判定部4は第1の実施の形態で説明したようなフォントの良さを評価する処理を行う機能のほかに、補正すべき箇所を判定する機能を有している。なお、評価判定部4が補正すべき箇所を判定する場合は、誘導場計算部2で求められたそれぞれの領域ごとの複雑度と誘導場のエネルギを用いて、補正すべき領域があるか否かを判定して、補正すべき箇所があれば、その補正箇所を示すデータを出力する。このとき、その補正箇所に対してどのような補正を行えばよいかの補正内容データを、補正内容データベース10を参照して取得して、その補正内容データを上述の補正箇所を示すデータとともに補正処理部11に出力する。
【0151】
また、表示部5では、評価判定部4での評価結果や補正すべき箇所を表示し、さらに、補正処理部12での補正処理結果を表示し、さらに、手動での補正をも可能とするために、補正箇所を示すデータと補正内容データベース10から取得した補正内容データを必要に応じて表示する。
【0152】
また、この第2の実施の形態においても、前述の第1の実施の形態同様、フォントの良さの評価を行う際、複雑度と誘導場のエネルギのいずれか一方のみを用いて評価することもできるが、その両方を用いた方がより適正な品質評価が行えるので、ここでも、複雑度と誘導場のエネルギの両方を用いるものとする。
【0153】
図14は文字を領域に分割する例を示すもので、たとえば、「あ」という文字を例にとれば、この図14に示すように、「あ」の重心を中心に放射状に分割する。この図14の例では、8個の領域Z1,Z2,・・・.Z8に分割している。なお、この分割は等分割でなくても良いがこの第2の実施の形態では等分割とする。
【0154】
そして、このような領域分割指示が誘導場計算部2に出されると、誘導場計算部2では、それぞれの領域Z1,Z2,・・・.Z8ごとに複雑度と誘導場のエネルギを求める。
【0155】
なお、領域Z1,Z2,・・・.Z8ごとの複雑度は、それぞれの領域ごとに、その領域の等ポテンシャル線の長さとその領域の面積を用いて前述の(2)式を計算することで求められる。また、誘導場のエネルギも同様に、それぞれの領域ごとに、その領域の等ポテンシャル線で囲まれる面積とその等ポテンシャル値を用いて前述の(3)式を計算することで求められる。
【0156】
このようにして、それぞれの領域Z1,Z2,・・・.Z8ごとに複雑度と誘導場のエネルギが求められると、評価判定部4では、誘導場計算部2から渡されたそれぞれの領域Z1,Z2,・・・.Z8ごとに複雑度と誘導場のエネルギから、他の領域(周辺の領域)に対して大きく異なる値を有する領域があるか否かを判断し、複雑度と誘導場のエネルギの値が突出した領域があれば、その領域を補正すべき領域として判定する。また、評価判定部4は、補正内容データベース10を参照して、補正すべき領域において求められた複雑度や誘導場のエネルギから、どのような補正を行ったらよいかを示す補正内容データを補正内容データベース10から取得して、その補正内容データと補正すべき領域を示すデータを補正処理部11に渡す。
【0157】
これによって、補正処理部11では、評価判定部4から渡された補正内容データと補正すべき領域を示すデータに基づいて所定の補正を行う。この補正は、たとえば、複雑度が大きすぎる場合には、線分が滑らかとなるような補正を行い、また、誘導場のエネルギの値が大きすぎる場合には、線幅を細くするといった補正を行というように、補正すべき領域の状態に応じた補正を施す。
【0158】
具体的には、線幅を細くする場合は、その領域内の線分の細線化(スケルトン処理)して、そのあと肉付け処理で調整を行うといった処理を施す。また、線幅を太目とする場合は、その領域内の輪郭線抽出を行い、輪郭線外に肉付けするなどの処理を施す。また、必要に応じて連結点補正も行い、輪郭線を抽出して連結性の弱い輪郭の画素を増やすような処理を施す。
【0159】
これらの補正は画像処理でよく知られた手法であり、この補正の手法については従来から一般的に行われている画像処理手法を利用することができる。
【0160】
なお、この第2の実施の形態においては、領域ごとに補正を行うようにしているので、ある領域で上述したような補正が行われると、隣接する領域間での線分のつながりなどが不自然となる場合もある。それに対処するため、スムージング処理を施す。たとえば、その文字全体にガウスフィルタなどのフィルタをかけて適当なレベルで2値化するといった処理を行う。
【0161】
このようにして、補正処理部11で補正処理がなされたら、その補正後の文字を表示部5で表示する。このとき、どのような補正処理を行ったかも併せて表示すこともできる。また、表示部5に表示された補正後の文字を見て、満足の行く補正がなされていない場合には、補正処理部11で再度補正を行わせることもできる。
【0162】
なお、上述の例は、評価判定部4によって判定された補正箇所を補正処理部11が自動的に補正する例であったが、デザイナなどが手動で補正することもできる。この場合、評価判定部4によって判定された結果(補正すべき箇所を示すデータやどのような補正を行えばよいかを示す補正内容データ)を表示部5に表示させることによって、その表示を見ながら補正すべき箇所を手動によって補正する。
【0163】
また、この第2の実施の形態では、領域Z1,Z2,・・・,Z8ごとの複雑度や誘導場のエネルギを求めているが、文字全体の複雑度や誘導場のエネルギとの比較を容易とするために、各領域Z1,Z2,・・・,Z8ごとに求められた複雑度や誘導場のエネルギを当該文字全体の値に換算する正規化処理を行うことが有効である。たとえば、全体を8等分して8つの領域が存在する場合であれば、ある領域で求められた複雑度や誘導場のエネルギは単に8倍すればよい。
【0164】
また、この第2の実施の形態の場合、各領域Z1,Z2,・・・,Z8ごとの複雑度や誘導場のエネルギを求め、それぞれの領域間(周辺の領域間)で複雑度や誘導場のエネルギの値の大きさの違いを見て、突出した値を有する領域があるか否かによって、補正すべき箇所(領域)を判定するようにしている。
【0165】
この場合、各領域によってもともと複雑度や誘導場のエネルギが大きく異なる場合もあるので、複雑度や誘導場のエネルギの値にそれぞれ一定の範囲を設定し、それぞれの領域において求められた複雑度や誘導場のエネルギがそれぞれに設定された範囲内に入っているか否かを見て、求められた複雑度やエネルギがその範囲外となっている領域を補正対象とするというようにしてもよい。なお、それぞれの領域間で複雑度や誘導場のエネルギをそれぞれ正規化した上で、領域間の比較を行うようにしてもよいことは勿論である。
【0166】
また、前述した例では、等分割した領域を設けるようにしたが、領域の分割は等分割でなくてもよい。領域を等分割する利点は、各種の演算処理が簡単となる点である。また、等分割でない場合は、演算処理はやや複雑となるが、それぞれの文字において、文字の部分によって画素数などが異なるため、画素数の多い部分は少ない面積とするなど画素数の分布に応じた領域分割が可能となり、補正箇所の判断をより適正に判断することができる。
【0167】
以上説明したようにこの第2の実施の形態によれば、誘導場に基づいて求められた複雑度や誘導場のエネルギから、補正すべき箇所を判定するようにしている。また、この場合、文字を複数の領域に分割して、それぞれの領域ごとに誘導場に基づく複雑度や誘導場のエネルギを求めるようにしているので、補正すべき箇所を効率よくしかも適切に判定することができる。
【0168】
また、補正すべき箇所について、どのような補正を施せばよいかを示す補正内容データを取得し、それを補正処理部11に渡すことによって、補正処理部11ではその補正内容データに基づいた補正処理を自動的に行うので、フォントの補正を自動化することができる。さらに、補正すべき箇所と、どのような補正を施せばよいかを表示部5上で表示することもできるので、それを見ながらデザイナなどが手動で補正を行うことも可能となり、デザイナに対しては適切なデザイン支援を行うことができ、また、熟練したデザイナでなくてもある程度はフォントデザインを行えるようになる。
【0169】
なお、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能となるものである。たとえば、前述の第2の実施の形態において、評価対象となる文字を領域分割する際の分割数は8分割に限られるものではなく、たとえば、3分割、4分割、6分割、12分割、16分割など種々設定することができる。
【0170】
また、前述の第2の実施の形態では、文字を複数の領域に分割してそれぞれの領域ごとに複雑度や誘導場のエネルギを計算しているが、その考え方は第1の実施の形態にも適用することができる。すなわち、第1の実施の形態は、誘導場から得られる複雑度や誘導場のエネルギを文字全体から計算して求め、それによって、当該文字のフォントの良さを評価しているが、第2の実施の形態で説明したように、当該文字をそれぞれの領域(たとえば8等分)に分割して、分割された領域ごとに複雑度や誘導場のエネルギを計算し、これら複雑度や誘導場のエネルギをそれぞれの領域間で比較して、突出した値を有する領域が存在するか否かなどによって、文字全体のフォントの良さを評価することも可能である。
【0171】
また、本発明は以上説明した本発明を実現するための処理手順が記述された処理プログラムを作成し、その処理プログラムをフロッピィディスク、光ディスク、ハードディスクなどの記録媒体に記録させておくこともでき、本発明は、その処理プログラムの記録された記録媒体をも含むものである。また、ネットワークから当該処理プログラムを得るようにしてもよい。
【0172】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、視覚の誘導場から等ポテンシャル線の形状を表すパラメータと等ポテンシャル値の大きさを表すパラメータの少なくとも一方のパラメータを計算して、これらのパラメータの少なくとも一方のパラメータに基づいて前記処理対象となる文字のフォントの良さを評価するようにしているので、フォントの良さを適切に定量評価することができる。それによって、自動的にしかも短時間で大量に評価することができ、労力、コストを大幅に削減することができる。また、人間の見た目の評価と異なり、評価のバラツキも大幅に少なくすることができる。
【0173】
また、このような評価はフォントデザインの支援ともなり、フォントデザインを効率よく行うことができる。
【0174】
また、等ポテンシャル線の形状を表すパラメータとして、等ポテンシャル線の凹凸の度合いを示す複雑度を用いて個々の文字を構成する線分の滑らかさを評価するようにしているので、特に、線分の滑らかさや文字の形状の良さを適切に定量評価することができる。
【0175】
また、等ポテンシャル線の形状を表すパラメータとして、誘導場のエネルギを用いて個々の文字の印象の強さを評価するようにしているので、特に、線幅の太さなど、見た目の印象の強さを適切に定量評価することができる。なお、これら複雑度と誘導場のエネルギはそれぞれを単独で用いることもできるが、複雑度と誘導場のエネルギの両方を組み合わせて用いることによって、フォントの良さを、より適切に評価することができる。
【0176】
また、本発明は、上述した評価結果を基づいて補正すべき箇所を判定し、その判定結果を出力することもできるので、文字のどの部分を補正すべきかを適切にデザイナに知らせることができる。これによって、デザイナは指摘された箇所に対して適切な補正を行うことができる。なお、この補正は自動で行うことは勿論、手動操作で行うことも可能となる。
【0177】
また、前記複雑度または誘導場のエネルギを計算する際、前記処理対象文字を複数の領域に分割してそれぞれの領域ごとに前記複雑度または誘導場のエネルギを計算し、これら分割されたそれぞれの領域ごとの複雑度と誘導場のエネルギの少なくとも一方を、それぞれの領域間で比較することによって、補正すべき領域を判定するようにしている。このように、ある限られた領域ごとの複雑度や誘導場のエネルギを用いて補正すべきか否かを判定することによって、より適切に補正すべき箇所を特定することができる。
【0178】
このように本発明は、フォントの良さの定量評価を自動化でき、しかも、短時間で大量に、かつ、均一に評価することができる。また、補正すべき箇所を自動的に判定して、自動補正をも可能としているので、文字の拡大縮小、解像度変換などによって生ずるジャギーなどを改善することができ、デバイスや表示形態に依存しない見易い文字を表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明において用いる視覚の誘導場について説明するためのディジタル画像の画素配列を示す図である。
【図2】視覚の誘導場の強さを求める際の遮蔽条件を説明する図である。
【図3】文字「A」の視覚の誘導場の例であり、同図(a)は遮蔽条件を考慮して視覚の誘導場を求めた場合、同図(b)は遮蔽条件を考慮しないで視覚の誘導場を求めた場合を示す図である。
【図4】「あ」という文字について、文字の大きさを62ポイント(72DPI)で統一し、フォントを色々変化させた例を示す図である。
【図5】図4で示したそれぞれのフォントに対する誘導場のエネルギを示す図である。
【図6】文字サンプル例として、「あ」という文字を同じ大きさ(9ポイント)で、しかも、同じフォントとして、その解像度だけを変化させた場合の文字画像を示す図である。
【図7】図7に示したそれぞれの解像度の「あ」の文字画像を、その大きさだけを62ポイントに拡大して示す図である。
【図8】図6の文字サンプル例で示されている「あ」という文字を、大きさとフォントを同じにして解像度のみを変化させた場合におけるそれぞれの解像度の「あ」に対して求められた複雑度と誘導場のエネルギを示す
【図9】図7で示す拡大した文字サンプル例のうち、112DPI、120DPI、144DPIの文字画像を補正処理した例を説明する図であり、(a)は補正前の文字画像、(b)は補正後の文字画像を示す図である。
【図10】図6に示す文字サンプル例の文字画像を補正処理した例を説明する図であり、(a)は補正前の文字画像、(b)は補正後の文字画像を示す図である。
【図11】図10(b)に示す補正後の文字サンプル例について図8と同様にそれぞれの解像度の「あ」に対して求められた複雑度と誘導場のエネルギを示す図である。
【図12】第1の実施の形態を実現するためのフォント最適化装置の構成を示す図である。
【図13】第2の実施の形態を実現するためのフォント最適化装置の構成を示す図である。
【図14】「あ」という文字の重心を中心に放射状に等分割した例を示す図である。
【符号の説明図】
1 画像入力部
2 誘導場計算部
3 評価基準データベース
4 評価判定部
5 表示部
10 補正内容データベース
11 補正処理部
Z1,Z2,Z3,・・・,Z8 領域
【発明の属する技術分野】
本発明は、視覚の誘導場を指標にしてフォントの良さを評価し、さらに、その評価結果を用いてフォントの補正を可能とし、それによって、フォントの最適化を行うようにしたフォント最適化方法およびフォント最適化装置ならびにフォント最適化処理プログラムに関する。
【0002】
【従来の技術】
フォントデザインは、基本的にはデザイナなどのデザインの専門家が人手で行っている。フォントデザインを行う上で機械的に行える処理としては、既存のフォントを基本にして、拡大したり、縮小したりする程度であり、フォントデザイン自体を機械的操作で行うのは無理がある。
【0003】
一般に、デザイナなどデザインの専門家によってフォントデザインされた文字であっても、その仕上がり具合にバラツキが生じることも多くまた、その文字を表示するデバイスそのものの性能(解像度など)や表示形態によって見易さが大きく異なるのが一般的である。
【0004】
また、従来では、フォントの良さを定量的に評価したり、その評価結果に基づいて、機械的にデザインの仕上がり具合を判断して、補正すべき箇所を見つけて、それを自動補正したりすることはなされていなかった。したがって、従来では、フォントの良し悪し、つまり、読み易い文字であるかは、人間が目視で判断するのが一般的である。このため、フォントの品質評価に多くの労力とコストがかかり、また、人間の見た目での評価であるため、評価にバラツキが多いなどの問題がある。
【0005】
【非特許文献1】
長田昌次郎、安田稔、長谷川敬、吉田辰夫、福田忠彦、“文字放送の画像の好ましいコントラスト”テレビジョン学会誌Vol.39 No.6 pp.516−522(1985)
【非特許文献2】
窪田悟“液晶ディスプレイの人間工学”液晶Vol.5 No.3 pp.235−241(2001)
【非特許文献3】
長石道博“視覚の誘導場を用いた読みやすい和文プロポーショナル表示”、映像情報メディア学会誌、Vol.52,No.12,pp.1865−1872(1998)
【非特許文献4】
安本護、池田尚志、中里酉克、富田義数、“情報携帯端末用スケーラブルフォントの試作と評価”情報処理学会論文誌Vol.40 No.2 pp.507−516(1999)
【非特許文献5】
浅井宣美、渡邊朋子、薮内優香、高野作治、角田清、宮本有希生“LC(液晶)フォント”、シャープ技報、第69号pp.92−95.1997.12)
【非特許文献6】
横瀬善正著の“形の心理学”名古屋大学出版会(1986)
【非特許文献7】
三好正純、下塩義文、古賀広昭、井手口健、“視覚の誘導場理論を用いた感性にもとづく文字配置の設計”、電子情報通信学会論文誌、82−A,9,1465−1473(1999)
【非特許文献8】
長石道博“視覚の誘導場を用いた手書き文字の切り出し”電子情報通
信学会論文誌J76−D−II,9,pp.1948−1956(1993)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
まず、文字の読み易さとはどのようなものであるかについて述べ、そのあとで、フォントデザインの動向について述べる。
【0007】
文字の読み易さについては、1960年代から主にテレビジョン放送の普及に伴い、CRT(陰極線管表示装置)上での読み易さが従来からよく研究されている(非特許文献1:参照)。
【0008】
また、コントラストなど撮像装置側の物理的要因についての研究も多くなされている(非特許文献2:参照)。
【0009】
一方、文字そのものに関する要因については、文字の配列が読み易さの要因の1つであることはわかっている。最近では、文字種や文字の大きさに応じた最適な配置とする方法として、視覚の誘導場を用いるのが有力であることが報告されている(非特許文献3:参照)。
【0010】
ところで、最近では、液晶を用いた小型ディスプレイが携帯電話機や各種モバイル機器など広い分野で使用されている。この液晶を用いた小型ディスプレイは、低解像であるのが一般的であるため、文字の読み易さを向上させることがより望まれている。
【0011】
そこで、液晶など低解像度のディスプレイで文字を見易くする技術として、サブピクセルレンダリング、アンチアイリアリスがある。これらは、階調を利用して、低解像度で生じるジャギーを目立たなくするものである。すなわち、この技術は、「あら」を隠す手法であり、あくまでも補助手段として捉えることができる。
【0012】
一方、フォトデザイン自体を見直して、低解像度でも見易いフォントとする手法も使われている。その1つにストロークフォントと呼ばれる技術がある。これは、低解像度でも高解像度のような品質を保てるフォントを生成する技術である。
【0013】
これは、日本語の文字は、ストロークが基本と考え、高品位なフォントのストローク情報を抽出しておいて、解像度に応じて、その抽出されたストロークの情報をなるべく欠落させずに文字に反映させるようにしたものである(非特許文献4:参照)。
【0014】
この方法は、アウトラインフォントの生成方法を参考に、いろいろな解像度に対応できるように、機械的に自由に文字の大きさを変えることが可能であり、これによって得られたフォントは、確かに、「可読性」については低解像度でも一定品質が保持される。しかし、フォントの「良さ」という点では、やはり、丁寧にデザインしたビットマップフォントには劣る。
【0015】
このストロークフォントと呼ばれる技術は、液晶など低解像度のディスプレイで文字を機械的に見易くする技術であったが、これに対して、液晶など低解像度のディスプレイに好適なフォントを最初から専門のデザイナがデザインすることで対応することもなされている。
【0016】
一般に、携帯電話などの液晶ディスプレイ上で表示されているフォントは、もともと活字に使われているフォントを基にして、パーソナルコンピューなどのCRTを用いたディスプレイ用にビットマップを起こしたものを流用したものである。
【0017】
しかし、CRTを用いたディスプレイは、文字を表示すると周辺がにじむので、アンチアイリアリスがかかったようになるため、文字のつぶれなどの「あら」が目立たず、小さな文字でも比較的読みやすいが、液晶を用いたディスプレイは、文字の線が明瞭に表示されるため、文字のつぶれがよく目立つ。
【0018】
そこで、液晶など文字が明瞭に表示されるディスプレイ上で、文字が小さくてもつぶれないように、フォントデザイン自体を見直すことがなされ、LC(液晶)フォントとして商品化され、携帯電話機などの小型情報機器で実用化されている。
【0019】
このLCフォントの特徴は、重心、中心を合わせること、部首バランス、線分のふところの均一化を図ることなど、見た目のバランスを調整することで、低解像度であっても、線分がつぶれないように、専門のデザイナが適切にデザインし直したことである(非特許文献5:参照)。
【0020】
この、LCフォントは、活字の起原からフォントデザインはこうあるべきという見直しをしたこともあり、かなり高品位なフォントとなっているといえる。
【0021】
しかしながら、このLCフォントは、デザインにおける定量評価(どのようにデザインとすれば見易さがどのくらい向上するか)が明確ではなく、異なったサイズのフォントの作成は非常に困難であると考えられる。したがって、たとえば、解像度の異なった新製品が開発されるごとに、その都度、手作業でその製品に適合するフォントを作成しなければならない。
【0022】
以上説明したように、従来から、特に、液晶表示装置など低解像度上で文字を見易く表示させるための工夫や技術が様々提案され実用化されている。しかし、フォントの良さを定量的に評価したり、その評価結果に基づいて、機械的にデザインの仕上がり具合を判断して補正すべき箇所を見つけて、それを自動補正したりする技術は殆どないといって過言ではない。
【0023】
そこで本発明は、視覚の誘導場を指標にしてフォントの良さを定量的に評価できるようにするとともに、その評価結果に基づいて補正箇所を判定し、その判定結果を用いてフォントの自動補正を可能とし、それによって、フォントを最適化できるフォント最適化方法およびフォント最適化装置ならびにフォント最適化処理プログラムを提供することを目的としている。
【0024】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、本発明のフォント最適化方法は、処理対象文字をディジタル化した文字画像とし、そのディジタル化した文字画像に対して視覚の誘導場を計算し、その視覚の誘導場から等ポテンシャル線の形状を表すパラメータと等ポテンシャル値の大きさを表すパラメータの少なくとも一方のパラメータを計算して、これら等ポテンシャル線の形状を表すパラメータと等ポテンシャル値の大きさを表すパラメータの少なくとも一方のパラメータに基づいて前記処理対象文字のフォントの良さを評価してその評価結果を出力するようにしている。
【0025】
このようなフォント最適化方法において、前記等ポテンシャル線の形状を表すパラメータは、等ポテンシャル線の凹凸の度合いを示す複雑度であって、前記フォントの良さを評価する際は、この複雑度を、前記処理対象文字を構成する線分の滑らかさや当該文字の形状の良さを示す指標として用いている。
【0026】
また、前記等ポテンシャル値の大きさを表すパラメータは、誘導場のエネルギであって、前記フォントの良さを評価する際は、この誘導場のエネルギを、前記処理対象文字の印象の強さを示す指標として用いている。
【0027】
また、このフォント最適化方法において、前記処理対象文字のフォントの良さを評価してその評価結果を出力する処理は、補正すべき箇所を判定する処理が含まれる。
【0028】
また、このフォント最適化方法において、前記複雑度または誘導場のエネルギを計算する際、前記処理対象文字を複数の領域に分割して、それぞれの領域ごとに前記複雑度または誘導場のエネルギを計算するようにしている。
【0029】
また、このフォント最適化方法において、前記補正すべき箇所を判定する際は、前記領域ごとの複雑度と誘導場のエネルギの少なくとも一方の値を、それぞれの領域間で比較することによって補正すべき領域を判定するようにしている。
【0030】
また、このフォント最適化方法において、前記領域の分割は、前記処理対象文字の重心を中心にして放射状に分割するようにしている。
【0031】
また、このフォント最適化方法において、前記処理対象文字の重心を中心にして放射状に分割する際の分割の仕方は等分割としている。
【0032】
また、このフォント最適化方法において、前記複雑度または誘導場のエネルギをそれぞれの領域ごとに計算する際、計算された領域ごとの当該複雑度または誘導場のエネルギを当該文字全体の値に換算するための正規化を行うようにしている。
【0033】
また、このフォント最適化方法において、前記補正すべき箇所を判定する処理は、前記複雑度と誘導場のエネルギに基づいて補正すべき箇所を判定してその補正箇所を示すデータを得るとともに、その補正すべき箇所に対してどのような補正を行うかを示す補正内容データを取得して、これら補正すべき箇所を示すデータと補正内容データの出力を行うようにしている。
【0034】
また、このフォント最適化方法において、前記補正すべき箇所を判定する処理のあとに、前記補正すべき箇所に対する補正処理を行い、この補正処理によって当該補正すべき箇所を自動的に補正するようにしている。
【0035】
また、このフォント最適化方法において、前記分割されて得られた領域のうちのある領域に対して補正がなされた場合、その補正処理後に、他の領域との間の文字の線分を平滑化する処理を行うようにしている。
【0036】
また、本発明のフォント最適化装置は、処理対象文字を入力してディジタル化した文字画像として出力する画像入力部と、この画像入力部から出力される文字画像に対して視覚の誘導場を計算するとともに、その視覚の誘導場から等ポテンシャル線の形状を表すパラメータと等ポテンシャル値の大きさを表すパラメータの少なくとも一方を計算する視覚の誘導場計算手段と、この視覚の誘導場計算手段によって求められた前記等ポテンシャル線の形状を表すパラメータと等ポテンシャル値の大きさを表すパラメータの少なくとも一方のパラメータに基づいて前記処理対象文字のフォントの良さを評価してその評価結果を出力する評価判定手段とを有している。
【0037】
このようなフォント最適化装置において、前記等ポテンシャル線の形状を表すパラメータは、等ポテンシャル線の凹凸の度合いを示す複雑度であって、前記フォントの良さを評価する際は、この複雑度を、前記処理対象文字を構成する線分の滑らかさや当該文字の形状の良さを示す指標として用いるようにしている。
【0038】
また、前記等ポテンシャル値の大きさを表すパラメータは、誘導場のエネルギであって、前記フォントの良さを評価する際は、この誘導場のエネルギを、前記処理対象文字の印象の強さを示す指標として用いるようにしている。
【0039】
また、このフォント最適化装置において、前記評価判定手段は、補正すべき箇所を判定する補正箇所判定機能を有している。
【0040】
また、このフォント最適化装置において、前記複雑度または誘導場のエネルギを計算する際、前記処理対象文字を複数の領域に分割して、それぞれの領域ごとに前記複雑度または誘導場のエネルギを計算するようにしている。
【0041】
また、このフォント最適化装置において、前記補正すべき箇所を判定する際は、前記領域ごとの複雑度と誘導場のエネルギの少なくとも一方の値を、それぞれの領域間で比較することによって補正すべき領域を判定するようにしている。
【0042】
また、このフォント最適化装置において、前記領域の分割は、前記処理対象文字の重心を中心にして放射状に分割するようにしている。
【0043】
また、このフォント最適化装置において、前記処理対象文字の重心を中心にして放射状に分割する際の分割の仕方は等分割としている。
【0044】
また、このフォント最適化装置において、前記複雑度または誘導場のエネルギをそれぞれの領域ごとに計算する際、計算された領域ごとの当該複雑度または誘導場のエネルギを当該文字全体の値に換算するための正規化を行うようにしている。
【0045】
また、このフォント最適化装置において、前記補正すべき箇所を判定する処理は、前記複雑度と誘導場のエネルギから補正すべき箇所を判定してその補正箇所を示すデータを得るとともに、その補正すべき箇所に対してどのような補正を行うかを示す補正内容データを取得して、これら補正すべき箇所を示すデータと補正内容データの出力を行うようにしている。
【0046】
また、このフォント最適化装置において、前記評価判定手段により判定された補正すべき箇所に対して補正を行う補正処理手段を設け、この補正処理手段によって当該補正すべき箇所を自動的に補正するようにしている。
【0047】
また、このフォント最適化装置において、前記分割されて得られた領域のうちのある領域に対して補正がなされた場合、その補正処理後に、他の領域との間の文字の線分を平滑化する処理を行うようにしている。
【0048】
また、本発明のフォント最適化処理プログラムは、処理対象文字を入力してディジタル化した文字画像として出力する処理手順と、このディジタル化された文字画像に対して視覚の誘導場を計算するとともに、その視覚の誘導場から等ポテンシャル線の形状を表すパラメータと等ポテンシャル値の大きさを表すパラメータの少なくとも一方を計算する処理手順と、これによって求められた前記等ポテンシャル線の形状を表すパラメータと等ポテンシャル値の大きさを表すパラメータの少なくとも一方のパラメータに基づいて前記処理対象文字のフォントの良さを評価してその評価結果を出力する処理手順とを含むものである。
【0049】
このようなフォント最適化処理プログラムにおいて、前記等ポテンシャル線の形状を表すパラメータは、等ポテンシャル線の凹凸の度合いを示す複雑度であって、前記フォントの良さを評価する際は、この複雑度を、前記処理対象文字を構成する線分の滑らかさや当該文字の形状の良さを示す指標として用いている。
【0050】
また、前記等ポテンシャル値の大きさを表すパラメータは、誘導場のエネルギであって、前記フォントの良さを評価する際は、この誘導場のエネルギを、前記処理対象文字の印象の強さを示す指標として用いている。
【0051】
また、このフォント最適化処理プログラムにおいて、前記処理対象文字のフォントの良さを評価してその評価結果を出力する処理は、補正すべき箇所を判定する処理が含まれる。
【0052】
また、このフォント最適化処理プログラムにおいて、前記複雑度または誘導場のエネルギを計算する際、前記処理対象文字を複数の領域に分割して、それぞれの領域ごとに前記複雑度または誘導場のエネルギを計算するようにしている。
【0053】
また、このフォント最適化処理プログラムにおいて、前記補正すべき箇所を判定する際は、前記領域ごとの複雑度と誘導場のエネルギの少なくとも一方の値を、それぞれの領域間で比較することによって補正すべき領域を判定するようにしている。
【0054】
また、このフォント最適化処理プログラムにおいて、前記領域の分割は、前記処理対象文字の重心を中心にして放射状に分割するようにしている。
【0055】
また、このフォント最適化処理プログラムにおいて、前記処理対象文字の重心を中心にして放射状に分割する際の分割の仕方は等分割とするようにしている。
【0056】
また、このフォント最適化処理プログラムにおいて、前記複雑度または誘導場のエネルギをそれぞれの領域ごとに計算する際、計算された領域ごとの当該複雑度または誘導場のエネルギを当該文字全体の値に換算するための正規化を行うようにしている。
【0057】
また、このフォント最適化処理プログラムにおいて、前記補正すべき箇所を判定する処理は、前記複雑度と誘導場のエネルギから補正すべき箇所を判定してその補正箇所を示すデータを得るとともに、その補正すべき箇所に対してどのような補正を行うかを示す補正内容データを取得して、これら補正すべき箇所を示すデータと補正内容データの出力を行うようにしている。
【0058】
また、このフォント最適化処理プログラムにおいて、前記補正すべき箇所を判定する処理のあとに、前記補正すべき箇所に対する補正処理を行い、この補正処理によって当該補正すべき箇所を自動的に補正するようにしている。
【0059】
また、このフォント最適化処理プログラムにおいて、前記分割されて得られた領域のうちのある領域に対して補正がなされた場合、その補正処理後に、他の領域との間の文字の線分を平滑化する処理を行うようにしている。
【0060】
このように本発明は、視覚の誘導場から等ポテンシャル線の形状を表すパラメータと等ポテンシャル値の大きさを表すパラメータの少なくとも一方のパラメータを計算して、これらのパラメータの少なくとも一方のパラメータに基づいて処理対象となる文字のフォントの良さを評価するようにしているので、フォントの良さを適切に定量評価することができる。しかも、その評価を自動的にしかも短時間で大量に行うことができ、労力、コストを大幅に削減することができる。また、人間の見た目の評価と異なり、評価のバラツキもなくなり均一評価が可能となる。
【0061】
また、このような評価はフォントデザインの支援ともなり、フォントデザインを効率よく行うことができる。
【0062】
また、等ポテンシャル線の形状を表すパラメータとしては、等ポテンシャル線の凹凸の度合いを示す複雑度を用い、この複雑度によって、個々の文字を評価するようにしているので、線分の滑らかさや文字形状の良さを適切に定量評価することができる。
【0063】
また、等ポテンシャル値の大きさを表すパラメータとしては、誘導場のエネルギを用い、この誘導場のエネルギによって個々の文字の印象の強さを評価するようにしているので、線幅の太さなど、見た目の印象の強さを適切に定量評価することができる。
【0064】
なお、上述した複雑度と誘導場のエネルギはそれぞれを単独で用いることもできるが、複雑度と誘導場のエネルギの両方を組み合わせて用いることによって、フォントの良さを、より適切に評価できることはいうまでもない。
【0065】
また、本発明は、視覚の誘導場から等ポテンシャル線の形状を表すパラメータと等ポテンシャル値の大きさを表すパラメータの少なくとも一方のパラメータを計算して、これらのパラメータの少なくとも一方のパラメータに基づいて、補正すべき箇所を判定し、その判定結果を出力するようにしているので、文字のどの部分を補正すべきかを適切にデザイナなどに知らせることができる。
【0066】
これによって、デザイナなどは指摘された箇所に対して適切な補正を行うことができる。なお、この補正はデザイナなどが手動で行うこともできるし、また、補正手段が自動で行うことも可能となる。なお、この補正処理は、従来から一般的に行われている画像処理手法を適用することができる。
【0067】
また、前記複雑度または誘導場のエネルギを計算する際、前記処理対象文字を複数の領域に分割してそれぞれの領域ごとに前記複雑度または誘導場のエネルギを計算し、これら分割されたそれぞれの領域ごとに計算された複雑度と誘導場のエネルギの少なくとも一方を、それぞれの領域間で比較することによって、補正すべき領域を判定するようにしている。このように、ある限られた領域ごとの複雑度や誘導場のエネルギに基づいて補正すべき領域を判定することによって、補正すべき箇所をより適切に特定することができる。
【0068】
また、領域の分割は、評価対象文字の重心を中心にして放射状に分割するようにしているので、文字の種類にかかわらず、領域の分割を適切に行うことができる。
【0069】
なお、この分割の仕方としては、等分割とすることによって、分割する際の処理が単純となり、また、それぞれの領域ごとの複雑度や誘導場のエネルギを計算する処理も簡単なものとなる。
【0070】
また、このように複雑度または誘導場のエネルギをそれぞれの領域ごとに計算する際、計算された値を当該文字全体の値に換算するための正規化を行うことで、文字全体の複雑度または誘導場のエネルギとの比較を容易に行うことができる。
【0071】
また、補正すべき箇所だけでなく、その補正すべき箇所に対してどのような補正を行うかの指示を行うことも可能で、これによって、補正すべき箇所に対して効率よく補正を行うことができる。
【0072】
また、ある領域に対して補正がなされた場合、その補正処理後に、他の領域との間の境界を平滑化する処理を行うことで、ある領域において補正処理が施されたあと、その領域とそれに隣接する領域間での文字を構成する線分などのつながりの不自然さを解消することができる。
【0073】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態で説明する内容は、本発明の本発明のフォント最適化方法およびフォント最適化装置ならびにフォント最適化処理プログラムの説明をすべて含むものである。
【0074】
本発明は「視覚の誘導場」という概念を文字のフォントの良さを評価する手段として用い、それによって最適なフォントを決めることができるようにするとともに、その評価結果を用いて、フォントの補正をも可能とするものである。まず、この視覚の誘導場について簡単に説明する。
【0075】
最初に、生理学および心理学的な知見に基づいた文字画像の視覚の誘導場の推定を行う例として、電子化によって得られた文字のディジタル画像から視覚の誘導場を推定する方法について説明する。
【0076】
なお、文字列内の個々の文字が読み易い状態とは、個々の文字を囲む視覚の誘導場が、できるだけ干渉し合わないような間隔で配置されていることであるとされている。
【0077】
具体的には、個々の文字を囲む視覚の誘導場の閉曲線を考えたとき、その閉曲線のポテンシャル値が高いと、他の文字との分離が難しく読みにくいということである。このことから、視覚の誘導場の広がりを基準に、文字列内の個々の文字の読み易さを定量的に評価できると考えられる。なお、視覚の誘導場については、非特許文献6に述べられている。
【0078】
この非特許文献6に示された視覚の誘導場(以下では単に誘導場と表記する)とは、図形の周囲に波及する「場」を考えることにより、視覚現象を説明するものである。この非特許文献6は、直線・円弧で構成された図形を対象としているため、任意のディジタル画像の誘導場は求められない。ここでは、最初に白黒2値のディジタル画像における誘導場の計算方法を示す。
【0079】
誘導場は基本的にクーロンポテンシャルと解釈できることから、パターンの外郭を構成する画素を点電荷と仮定し、それらが作るクーロンポテンシャルの集積から、ディジタル画像における誘導場の分布を計算する。
【0080】
図1はディジタル画像の画素配列を示す図である。図1に示すように、n個の点列から構成される曲線f(s)によって、任意の点Pに誘導場が形成されるとする。この曲線f(s)は線図形の線分や画図形の輪郭線に当たる。そして、曲線f(s)を構成する各点P1,P2,・・・,Pi,・・・,Pnを正電荷1の点電荷と仮定し、点Pから曲線f(s)上を走査して、曲線f(s)を構成するn個の点P1,P2,・・・,Pi,・・・,Pnが見つかり、走査して見つかった曲線f(s)上の各点までの距離をriとすると、点Pにおける誘導場の強さMpは次のように定義される。
【0081】
【数1】
【0082】
この(1)式を用いることにより、任意のディジタル画像の誘導場を求めることができる。また、曲線が複数ある場合、点Pにおける誘導場の強さは個々の曲線が点Pにつくる誘導場の和になる。
【0083】
なお、(1)式は点Pから発した光が直接当たる部分のみ和をとるという制約条件がつく。たとえば、点Pに対して、曲線f1(s),f2(s),f3(s)が図2に示すように存在しているとすると、点Pから見えない部分、つまり、この場合、曲線f1(s)に遮蔽されて点Pから見えない範囲Zに存在する部分の和はとらない。この図2の例では、曲線f3(s)のすべてと曲線f2(s)の一部の和はとらないことになる。これを、ここでは遮蔽条件という。
【0084】
図3(a)は「A」という文字について、前述の(1)式で計算した誘導場の例を示すものである。図3(a)の文字「A」周辺に地図の等高線状に分布している細い線Lが誘導場の等ポテンシャル線であり、中央から外に行くほど誘導場の強さは弱くなりやがて0に近づく。
【0085】
図3(a)の誘導場の分布の形状・強さにおける特徴、特に「A」の頂点付近の分布が他より鋭角な特徴は、前述した非特許文献6による四角形や三角形など、図形の角付近に関する誘導場の分布の心理実験結果と一致する。
【0086】
また、図3(b)は、前述した遮蔽条件(任意の点Pから見えない範囲Zに存在する部分の和はとらない)がなく、画素全てを電荷1の点電荷と仮定した誘導場の例であるが、誘導場の分布は全体的に丸くなり、前述の非特許文献6による心理実験結果と異なったものとなる。このように、遮蔽条件は誘導場を特徴づける上で重要なものとなる。
【0087】
このようにして、ある文字についての誘導場を得ることができる。なお、このような視覚の誘導場を用いた技術の例としては、たとえば、非特許文献7や、前述した非特許文献3がある。ちなみに、この非特許文献3の“視覚の誘導場を用いた読みやすい和文プロポーショナル表示”の著者は本発明の発明者である。
【0088】
本発明はこのような視覚の誘導場を利用して、文字のフォントデザインの定量的評価を自動的に行うとともに、フォント補正を自動的に行うことを可能とし、それによって、これまでデザイナなどが手作業に頼っていた文字のフォントデザインを自動的に最適化できるようにしたものである。
【0089】
まず、視覚の誘導場を用いてフォントデザインの評価を行う例について説明する。これは、たとえば、デザイナが作成したフォントやディスプレイに表示されたフォントの良さを機械的に定量評価するものであり、それによって、従来では、人間が目視で良し悪しを判断していた文字のフォントの良し悪しの評価を自動的に、かつ、定量的に行うことができ、しかも、大量の評価対象データを短時間で均一に評価できる。
【0090】
本発明では、フォントの良し悪しを評価する際、評価対象となる1つの文字画像を1つの誘導場計算対象とみなして、その文字画像について誘導場を計算し、それによって得られた等ポテンシャル線の形状を表すパラメータとして、等ポテンシャル線の凹凸の度合いを表す複雑度を求め、また、当ポテンシャル線のポテンシャル値の大きさを表すパラメータとして、見た目の印象の強さを表す誘導場のエネルギを求め、これら複雑度と誘導場のエネルギの少なくとも一方に基づいて文字フォントの良し悪しを評価する。なお、ここで示す実施の形態では、これら複雑度と誘導場のエネルギの両方を用いるものとする。
【0091】
まず、上述した等ポテンシャル線の凹凸の度合いを表す複雑度や当ポテンシャル線のポテンシャル値の大きさを表す誘導場のエネルギについて簡単に説明する。
【0092】
複雑度は上述したように等ポテンシャル線の凹凸の度合いを表すものであり、等ポテンシャル線の凹凸の度合いが大きければ複雑度は高く、逆に、等ポテンシャル線の凹凸の度合いが小さければ複雑度は小さいといえる。
【0093】
この複雑度は文字らしさを指標にした手書き文字の切り出し(非特許文献8:参照)や文字や写真などのレイアウトとの良さなどの評価に用いられている。
【0094】
たとえば、文字や写真などのレイアウトの良さと複雑度との関係については、文字や写真などが見やすくレイアウトされたものほど、そのレイアウト全体から得られた誘導場の等ポテンシャル線は全体に丸みを帯びた(凹凸の少ない)ものとなる傾向にあることが実験によりわかっている。
【0095】
このことから、この複雑度は文字のフォントの良さを評価するための指標の1つとして用いることができると考えられる。すなわち、個々の文字画像に対して視覚の誘導場を計算し、それによって得られた等ポテンシャル線の形状から複雑度を求め、求められた複雑度に基づいて文字のフォントの良さを評価することができる。
【0096】
そこで本発明では、この等ポテンシャル線の凹凸の度合いを等ポテンシャル線の複雑度として求め、その複雑度を評価対象となる文字画像のフォントの良さをを評価する指標の1つとして用いる。つまり、等ポテンシャル線が、凹凸が少なく丸みを帯びていればいるほど複雑度は小さくなり、等ポテンシャル線の凹凸が激しいほど複雑度は大きくなる。
【0097】
この複雑度は、i番目の等ポテンシャル線の複雑度をCiで表せば、
Ci=Li2/Si (2)
で求めることができる。なお、(2)式において、Liはi番目の等ポテンシャル線の長さ、Siはi番目の等ポテンシャル線で囲まれた面の面積を表している。なお、i番目の等ポテンシャル線の長さLiはそのポテンシャル線を構成するドット数と考えることができ、i番目の等ポテンシャル線で囲まれた面の面積Siは、i番目の等ポテンシャル線で囲まれた面に存在するドット数と考えることができる。
【0098】
この(2)式によれば、評価対象となるある1つの文字画像に対して計算された誘導場によって描かれた等ポテンシャル線の長さがその面積に比べて長いほど(凹凸が激しいほど)複雑度Ciの値は大きくなるといえる。逆に言えば、等ポテンシャル線に凹凸が少なく円に近いほど複雑度Ciは小さな値となる。
【0099】
本発明ではこの複雑度を文字のフォントの良さを評価するときの指標の1つとして用いる。たとえば、ある同じ文字について、その大きさとフォントが同じである場合の複雑度を計算すると、全体的な傾向としては、解像度が大きく文字を構成する線分が滑らかになるほど複雑度が小さくなる。これによって、複雑度はフォントデザインの良さを評価するための指標として用いることができると考えられる。これについての具体例については後に詳細に説明する。
【0100】
一方、誘導場のエネルギは、上述したように、当ポテンシャル線のポテンシャル値の大きさを表すものであり、文字線の太さや力強さなど、人間の目に与える印象の強さを反映するものとなるため、この誘導場のエネルギは見た目の印象の強さの度合いを表す指標として用いることができる。以下、この誘導場のエネルギについて説明する。
【0101】
まず、ある文字についてその文字のフォントを色々変えた場合、それぞれのフォントに対する印象の度合いを定量的に判断する例について説明する。
【0102】
図4は「あ」という文字についてフォントを色々変化させた例を示すもので、フォントの大きさはこの例では62ポイント(解像度72DPI)で統一し、フォントの種類のみを変化させ、ここではフォントの種類を12種類とした例について示し、左からフォントF1,F2,・・・,F12と表すものとする。これら12種類のフォントの「あ」という文字に対して、それぞれのフォントごとに誘導場のエネルギを求める。
【0103】
ここで、誘導場のエネルギの大きさをEで表せば、Eは次式で求めることができる。
【0104】
【数2】
【0105】
この(3)式において、iは(1)式で求められたi番目の等ポテンシャル線であり、Siはi番目の等ポテンシャル線で囲まれる面の面積、Piはi番目の等ポテンシャル線におけるポテンシャル値を示している。この(3)式は誘導場を3次元的に考えたとき、その誘導場の体積を求めるのに相当し、その体積の大きさが誘導場のエネルギの大きさといえる。
【0106】
この(3)式を用いて、図4に示すぞれぞれの「あ」に対し、1つ1つの「あ」をそれぞれの文字画像として、それぞれの「あ」ついての誘導場のエネルギを求めたものが図5である。この図5において、横軸には「あ」という文字に対する12種類のフォントF1,F2,・・・,F12をとり、縦軸にはそれぞれのフォントF1,F2,・・・,F12に対する誘導場のエネルギの大きさをとって示すものである。
【0107】
この図5からもわかるように、細い線で表された視覚的に繊細な印象を受ける「あ」は誘導場のエネルギが小さく、太い線で表された視覚的に強い印象を受ける「あ」は誘導場のエネルギが大きい。特に、フォントF1やフォントF2の「あ」のように、明朝体でしかも細い線で表された「あ」は誘導場のエネルギが小さく、フォントF11やフォントF12のように、ゴシック体のなかでもポスタの見出しなどでよく用いられる太い線で表された「あ」は誘導場のエネルギが大きいことがわかる。
【0108】
このことから、誘導場のエネルギの大きさは、文字のフォントの印象の強さの度合いを表す指標として用いることができる。言い換えれば、フォントの印象の強さを誘導場のエネルギの大きさで定量的に示すことができると考えられる。
【0109】
図6は文字サンプル例として、「あ」という文字を同じ大きさで、しかも、同じフォントとして、その解像度だけを変化させた場合の文字画像を示すもので、ここでは、解像度が72DPIの文字を基準とし、文字の大きさは9ポイントで統一して、解像度だけを72DPIから88DPI,96DPI,104DPI,・・・というように最大408DPIまで段階的に変化させている。
【0110】
なお、図6において、それぞれの文字の下に記述されている数値(72、88,96、・・・など)はそれぞれ対応する文字の解像度を表している。これは、後に説明する図7、図9、図10についても同様であり、それぞれの文字の下に記述されている数値は、それぞれ対応する文字の解像度を表している。
【0111】
この図6に示されるそれぞれの文字を見ると、文字の大きさとフォントが同じであるので、一見同じように見えるが、よく見ると、解像度が高くなるにつれて、文字を構成する線分が滑らかで読みやすい文字となっているのがわかる。
【0112】
また、さらに細かく観察すると、低解像度(この図6の例では104DPI以下)の文字は、低い解像度であるがために文字がつぶれているが、思いのほか見やすく、逆に、それよりも解像度の高い中間的な解像度(この図6の例では112DPIから192DPI程度)の文字は、解像度が上がったわりには、文字線幅が細く、線分のジャギーも目立って読みにくい印象を受ける。
【0113】
図7はこの図6に示した「あ」の文字画像を、その大きさだけを62ポイントに拡大したもので、フォントの種類や解像度の変化も図6と同じである。この図7によれば、上述した中間的な解像度(112DPIから192DPI程度)の文字は、確かに、72DPIや88DPIなどの低解像度の文字に比べれば、解像度が上がっている分だけ、線分の滑らかさ、特に曲線部分における滑らかさは向上しているが、線幅が細く、線分のジャギーも目立っている。特に、112DPI、120DPI、144DPIの文字は、線幅が細く、線分のジャギーも目立っている。これは、アフィン変換を行うことによって生じるものと考えられる。
【0114】
図8は、図6の文字サンプル例で示したそれぞれの「あ」に対して求められた複雑度とネルギを示すもので、横軸に解像度、右縦軸に複雑度の平均、左縦軸に誘導場のエネルギをとり、複雑度の変化を破線で示し、誘導場のエネルギの変化を実線で示したものである。
【0115】
なお、ここで複雑度の平均としているのは、前述した(2)式の複雑度を求める計算式では、ある1つの文字について、ある等ポテンシャル線(i番目の等ポテンシャル線)についての複雑度であるが、複数の等ポテンシャル線についてそれぞれ複雑度を求め、求められた複数の複雑度の平均を求めることが望ましいので、ここでは、その平均の複雑度としている。ただし、ここではそれを単に複雑度ということにする。
【0116】
この図8からもわかるように、誘導場のエネルギは、100DPIから150DPIくらいまでの間(前述した112DPI、120DPI、144DPIなどの中間的な解像度)で少し小さくなる部分がある他は、解像度にかかわらずあまり大きくは変化しない。これは、解像度が異なっても、文字の大きさとフォントの種類が同じであるので、ぱっと見たときの印象の強さにはそれほど大きな違いがないことを示している。
【0117】
一方、複雑度は100DPIから150DPIくらいまでの間では特にその値が上昇するが、解像度が高くなるにしたがって、その値が小さくなる傾向にある。これは、線分の滑らかさに欠け、ジャギーが多いと、複雑度が高くなり、解像度が高く、線分が滑らかになると、複雑度は低くなることを示している。
【0118】
このように、複雑度は等ポテンシャル線の凹凸の度合いを表すので、文字を構成する線分が滑らかであればその値は小さくなる。また、複雑度は線分の滑らかさだけでなく、文字そのものの形状のまとまり具合(形状の良さ)なども適切に表現すると考えられるので、文字の線分の滑らかさや形状の良さなどを評価するときの指標として用いることができる。すなわち、文字の場合、複雑度の低いほど、線分が滑らかで、文字そのものの形状も良く、見た目にも良く読み易い文字であるといえる。
【0119】
なお、図8の例では、100DPIから150DPIくらいまでの間で複雑度が特に高い部分が存在するが、これは、図6の例では、112DPI、120DPI、144DPIの文字に対応するものである。これらの解像度の文字は、他の解像度の文字と比べると、特に、線幅が細く、ジャギーも目立つために複雑度が高くなったと考えられる。
【0120】
このことから、線幅が細くジャギーの目立つような文字の読み易さを向上させるには、文字の線幅を補正してジャギーを目立たなくすることが有効であると考えられる。そこで、図8の例における112DPI、120DPI、144DPIの文字について、これらの文字の線幅の細い部分を太くして、ジャギーを目立たなくする補正を施し、それによって複雑度がどのように変化するかを調べた。
【0121】
図9(a)は図7で示した拡大後の文字サンプル例における112DPI、120DPI、144DPIの文字を取り出して示すもので、図9(b)はこれらの文字においてそれぞれに補正を施した文字である。すなわち、図9(a)に示す補正前のそれぞれの文字において、線幅の細くジャギーの目立つ部分(主な部分に矢印Aを付す)に対して線幅に補正を施し、それによってジャギーを目立たなくした。
【0122】
この補正は、文字の大きさや解像度の関係で線幅そのものは太くすることができないので、画素間の連結が疎になっている部分(たとえば矢印Aで示す部分)に画素を追加することで、その部分の線幅が元の線幅に比べると少し太めになるが、滑らかな線分となるような補正を施した結果、図9(b)のような文字となった。
【0123】
この図9(b)によれば、112DPI、120DPI、144DPIのそれぞれの文字は、補正前の図9(a)のそれぞれの文字に比べると、互いに隣接する解像度の文字と線幅の太さがほぼ揃い、ジャギーが少なくなり形状の良さが改善され、また、見た目の印象も強くなっていることがわかる。
【0124】
図10は元の文字サンプル(図6で示す文字サンプル)と図9(b)で説明したような補正を施したあとの文字サンプルを示すもので、同図(a)は補正前(図6で示す文字サンプルそのもの)であり、同図(b)は補正後の文字サンプルを示すものである。この図10によれば、補正処理を行うことで、特に、112DPI、120DPI、144DPIのそれぞれの文字が読み易くなっているのがわかる。
【0125】
そして、このような補正を施したそれぞれの文字について、前述同様、それぞれ誘導場を計算し、その計算結果を用いて複雑度と誘導場のエネルギを計算した結果を図11に示す。
【0126】
図11は図10(b)に示される補正処理後のそれぞれの解像度の「あ」に対して求められた複雑度と誘導場のエネルギを示すもので、横軸に解像度、右縦軸に複雑度の平均、左縦軸に誘導場のエネルギをとり、誘導場のエネルギの変化を実線で示し、複雑度の変化を破線で示したものである。
【0127】
この図11からもわかるように、補正前には大きく突出していた112DPI、120DPI、144DPIの文字の複雑度(図8参照)が、補正後には小さくなっていることがわかる。また、誘導場のエネルギについても、補正前には112DPI、120DPI、144DPIの文字の誘導場のエネルギは、他の解像度の文字に比べて値が小かった(図8参照)ものが改善されている。
【0128】
このように、ジャギーの特に目立つ部分(画素間の連結が疎になっている部分)などに画素を追加して、その部分の線分が滑らかとなるような補正を施すことによって、複雑度や誘導場のエネルギが改善されることがわかる。
【0129】
このような補正により、複雑度が改善される(複雑度の値が小さくなる)ことによって、個々の文字の線分が滑らかとなり、形状の良さも改善され、読み易い文字となり、また、誘導場のエネルギが改善される(誘導場のエネルギの値が大きくなる)ことによって、個々の文字の印象が強くなり、それによっても読み易さが改善される。
【0130】
以上説明したように、等ポテンシャル線の凹凸の度合いを表す複雑度と、当ポテンシャル線のポテンシャル値の大きさを表す誘導場のエネルギは、文字フォントの良さを評価するときの指標として用いることができる。
【0131】
本発明は、これを利用して文字フォントの最適化を図ろうとするものであり、その最適化を図る上で、まず、誘導場(それによって得られる複雑度と誘導場のエネルギ)を尺度にしたフォントの評価を行い、さらに、補正すべき箇所を判定してその補正すべき箇所に対するフォント補正を行う。
【0132】
ここでは、誘導場(それによって得られる複雑度と誘導場のエネルギ)を指標にしたフォントの評価についてを第1の実施の形態として説明し、また、誘導場(それによって得られる複雑度と誘導場のエネルギ)に基づいてフォントの補正を可能とする例についてを第2の実施の形態として説明する。
【0133】
〔第1の実施の形態〕
この第1の実施の形態は、誘導場によって得られる等ポテンシャル線の凹凸の度合いを表す複雑度と、当ポテンシャル線のポテンシャル値の大きさを表す誘導場のエネルギ(誘導場のエネルギ)を用いて、デザイナが作成したフォントやディスプレイに表示されたフォントの良さを自動的に定量評価し、それによってフォントの良さを評価し、さらに、デザイナに対するデザイン支援をも可能とするものである。
【0134】
図12はこの第1の実施の形態を実現するためのフォント最適化装置の構成を示す図であり、処理対象となる文字を入力してディジタル化した文字画像として出力する画像入力部1、誘導場を計算して誘導場のエネルギと複雑度を求める誘導場計算部2、評価基準データ(後述する)が格納された評価基準データベース3、誘導場計算部によって求められた誘導場のエネルギと複雑度の少なくとも一方を用い、かつ、評価基準データベース3の内容を用いてフォントの良さの評価を行う評価判定部4、この評価判定部4の評価結果を表示する表示部5とを有した構成となっている。
【0135】
なお、評価基準データベース3に格納される評価基準データは、たとえば、複雑度については、それぞれの処理対象文字に対して求められた複雑度に対し、その複雑度がどの程度のバラツキの範囲までは許容されるかを示すデータであり、また、誘導場のエネルギについても、それぞれの処理対象文字に対して求められた誘導場のエネルギに対し、その誘導場のエネルギがどの程度のバラツキの範囲までは許容されるかを示すデータである。
【0136】
ここで今、あるデザイナがたとえば携帯情報機器などに表示するための文字としてデザインした同じ大きさの同じフォントの文字(ひらがな、漢字、数字などを含む)を多数用意し、それらを処理対象文字として、それをスキャナやカメラなどで画像入力部1が取り込んで、ディジタル化された文字画像として出力する。
【0137】
そして、誘導場計算部2では、画像入力部1から出力されたそれぞれの処理対象文字ごとの文字画像に対して誘導場を計算し、その計算結果を用いて、前述した(2)式および(3)式から、それぞれの評価対象文字ごとに複雑度と誘導場のエネルギを計算し、その計算結果を評価判定部4に渡す。このとき、この複雑度と誘導場のエネルギは、いずれか一方だけを用いてもそれなりの評価は可能であるが、その両方を用いた方がより適正な評価が行えるので、ここでは、複雑度と誘導場のエネルギの両方を用いるものとする。
【0138】
評価判定部4では、誘導場計算部2から渡されたそれぞれの評価対象文字ごとの複雑度と誘導場のエネルギを用い、かつ、評価基準データベース3の内容を用いて品質評価を行う。
【0139】
この評価基準データベース3には、上述したように、複雑度については、それぞれの処理対象文字に対して求められた複雑度に対し、その複雑度がどの程度のバラツキの範囲までは許容されるかを示すデータが格納されており、また、誘導場のエネルギについても、それぞれの処理対象文字に対して求められた誘導場のエネルギに対し、その誘導場のエネルギがどの程度のバラツキの範囲までは許容されるかを示すデータが格納されている。
【0140】
これによって、評価判定部4では、実際に計算された個々の評価対象文字ごとの複雑度および誘導場のエネルギと、評価基準データベース3に格納されている内容から、それぞれの処理対象文字ごとに評価値を求める。
【0141】
たとえば、処理対象文字として、あるデザイナのデザインした「あ」、「い」、「う」、「え」、「お」、・・・というような文字(同じ大きさで同じフォントであるとする)が画像入力部1に入力されたとすると、これらの文字に対して誘導場計算部2では誘導場の計算を行い、個々の文字ごとに複雑度と誘導場のエネルギが求められ、これら個々の文字ごとに複雑度と誘導場のエネルギは評価判定部4に渡される。
【0142】
それによって、評価判定部4では、誘導場計算部2から渡されたそれぞれの処理対象文字ごとの複雑度と誘導場のエネルギに対して、評価基準データベース3の内容を参照することで、それぞれの文字ごとに総合的な評価を行い、その評価結果を出力する。
【0143】
たとえば、「あ」に対して総合的な評価を行った結果、評価値として4.0が得られ、「い」に対して総合的な評価を行った結果、評価値として1.5が得られ、「う」に対して総合的な評価を行った結果、評価値として4.1が得られ、「え」に対して総合的な評価を行った結果、評価値として3.9が得られ、「お」に対して総合的な評価を行った結果、評価値として4.2が得られたとする。
【0144】
このようにして評価対象となるそれぞれの文字に対する評価値が得られたら、そのそれぞれの評価対象文字ごとの評価値を表示部5で表示する。このとき、それぞれの評価対象文字の画像とともにその評価値を表示すれば、どの文字がどのような評価値であるかが一目でわかる。なお、上述の評価結果の例では、「い」の文字の評価値が特に低いので、フォントの良さが他の文字比べて劣ると判断し、その文字についてはデザインを手直しするなどの措置を行う。
【0145】
以上の説明したように、この第1の実施の形態では、複雑度と誘導場のエネルギを用いて、フォントの良さを自動的に定量評価することができる。
【0146】
このように、自動的にフォントの良さを定量評価できることによって、従来では、人間が目視でフォントの良し悪しを判断していたものが自動的にしかも大量に均一評価することができ、これによって、労力、コスト、品質のバラつきなどを大幅に改善することができ、また、その評価結果はデザイナに対するデザイン支援のためのデータとしても提供することができる。
【0147】
〔第2の実施の形態〕
この第2の実施の形態は、誘導場によって得られる等ポテンシャル線の凹凸の度合いを表す複雑度と、当ポテンシャル線のポテンシャル値の大きさを表す誘導場のエネルギを用いて、デザイナが作成したフォントやディスプレイに表示されたフォントに補正すべき箇所があるか否かを判定し、補正すべき箇所があればその補正を可能としたものである。
【0148】
図13はこの第2の実施の形態を実現するためのフォント最適化装置の構成を示す図であり、その構成要素としては、第1の実施の形態で説明した図12の構成と同様、画像入力部1、誘導場計算部2、評価基準データベース3、評価判定部4、表示部5を有し、そのほかに、補正すべき箇所に対し、どのような補正を行えばよいかを示す補正内容データが格納された補正内容データベース10、この補正内容データベース10を参照して補正すべき箇所に対して補正を行う補正処理部11を有している。
【0149】
また、この第2の実施の形態においては、誘導場計算部2における複雑度と誘導場のエネルギは、処理対象文字全体から計算することができることは勿論であるが、たとえば、外部からあるいは評価判定部4からの指示によって、処理対象文字を複数の領域に分割した上でそれぞれの領域ごとに計算できるようにしている。
【0150】
また、上述の評価判定部4は第1の実施の形態で説明したようなフォントの良さを評価する処理を行う機能のほかに、補正すべき箇所を判定する機能を有している。なお、評価判定部4が補正すべき箇所を判定する場合は、誘導場計算部2で求められたそれぞれの領域ごとの複雑度と誘導場のエネルギを用いて、補正すべき領域があるか否かを判定して、補正すべき箇所があれば、その補正箇所を示すデータを出力する。このとき、その補正箇所に対してどのような補正を行えばよいかの補正内容データを、補正内容データベース10を参照して取得して、その補正内容データを上述の補正箇所を示すデータとともに補正処理部11に出力する。
【0151】
また、表示部5では、評価判定部4での評価結果や補正すべき箇所を表示し、さらに、補正処理部12での補正処理結果を表示し、さらに、手動での補正をも可能とするために、補正箇所を示すデータと補正内容データベース10から取得した補正内容データを必要に応じて表示する。
【0152】
また、この第2の実施の形態においても、前述の第1の実施の形態同様、フォントの良さの評価を行う際、複雑度と誘導場のエネルギのいずれか一方のみを用いて評価することもできるが、その両方を用いた方がより適正な品質評価が行えるので、ここでも、複雑度と誘導場のエネルギの両方を用いるものとする。
【0153】
図14は文字を領域に分割する例を示すもので、たとえば、「あ」という文字を例にとれば、この図14に示すように、「あ」の重心を中心に放射状に分割する。この図14の例では、8個の領域Z1,Z2,・・・.Z8に分割している。なお、この分割は等分割でなくても良いがこの第2の実施の形態では等分割とする。
【0154】
そして、このような領域分割指示が誘導場計算部2に出されると、誘導場計算部2では、それぞれの領域Z1,Z2,・・・.Z8ごとに複雑度と誘導場のエネルギを求める。
【0155】
なお、領域Z1,Z2,・・・.Z8ごとの複雑度は、それぞれの領域ごとに、その領域の等ポテンシャル線の長さとその領域の面積を用いて前述の(2)式を計算することで求められる。また、誘導場のエネルギも同様に、それぞれの領域ごとに、その領域の等ポテンシャル線で囲まれる面積とその等ポテンシャル値を用いて前述の(3)式を計算することで求められる。
【0156】
このようにして、それぞれの領域Z1,Z2,・・・.Z8ごとに複雑度と誘導場のエネルギが求められると、評価判定部4では、誘導場計算部2から渡されたそれぞれの領域Z1,Z2,・・・.Z8ごとに複雑度と誘導場のエネルギから、他の領域(周辺の領域)に対して大きく異なる値を有する領域があるか否かを判断し、複雑度と誘導場のエネルギの値が突出した領域があれば、その領域を補正すべき領域として判定する。また、評価判定部4は、補正内容データベース10を参照して、補正すべき領域において求められた複雑度や誘導場のエネルギから、どのような補正を行ったらよいかを示す補正内容データを補正内容データベース10から取得して、その補正内容データと補正すべき領域を示すデータを補正処理部11に渡す。
【0157】
これによって、補正処理部11では、評価判定部4から渡された補正内容データと補正すべき領域を示すデータに基づいて所定の補正を行う。この補正は、たとえば、複雑度が大きすぎる場合には、線分が滑らかとなるような補正を行い、また、誘導場のエネルギの値が大きすぎる場合には、線幅を細くするといった補正を行というように、補正すべき領域の状態に応じた補正を施す。
【0158】
具体的には、線幅を細くする場合は、その領域内の線分の細線化(スケルトン処理)して、そのあと肉付け処理で調整を行うといった処理を施す。また、線幅を太目とする場合は、その領域内の輪郭線抽出を行い、輪郭線外に肉付けするなどの処理を施す。また、必要に応じて連結点補正も行い、輪郭線を抽出して連結性の弱い輪郭の画素を増やすような処理を施す。
【0159】
これらの補正は画像処理でよく知られた手法であり、この補正の手法については従来から一般的に行われている画像処理手法を利用することができる。
【0160】
なお、この第2の実施の形態においては、領域ごとに補正を行うようにしているので、ある領域で上述したような補正が行われると、隣接する領域間での線分のつながりなどが不自然となる場合もある。それに対処するため、スムージング処理を施す。たとえば、その文字全体にガウスフィルタなどのフィルタをかけて適当なレベルで2値化するといった処理を行う。
【0161】
このようにして、補正処理部11で補正処理がなされたら、その補正後の文字を表示部5で表示する。このとき、どのような補正処理を行ったかも併せて表示すこともできる。また、表示部5に表示された補正後の文字を見て、満足の行く補正がなされていない場合には、補正処理部11で再度補正を行わせることもできる。
【0162】
なお、上述の例は、評価判定部4によって判定された補正箇所を補正処理部11が自動的に補正する例であったが、デザイナなどが手動で補正することもできる。この場合、評価判定部4によって判定された結果(補正すべき箇所を示すデータやどのような補正を行えばよいかを示す補正内容データ)を表示部5に表示させることによって、その表示を見ながら補正すべき箇所を手動によって補正する。
【0163】
また、この第2の実施の形態では、領域Z1,Z2,・・・,Z8ごとの複雑度や誘導場のエネルギを求めているが、文字全体の複雑度や誘導場のエネルギとの比較を容易とするために、各領域Z1,Z2,・・・,Z8ごとに求められた複雑度や誘導場のエネルギを当該文字全体の値に換算する正規化処理を行うことが有効である。たとえば、全体を8等分して8つの領域が存在する場合であれば、ある領域で求められた複雑度や誘導場のエネルギは単に8倍すればよい。
【0164】
また、この第2の実施の形態の場合、各領域Z1,Z2,・・・,Z8ごとの複雑度や誘導場のエネルギを求め、それぞれの領域間(周辺の領域間)で複雑度や誘導場のエネルギの値の大きさの違いを見て、突出した値を有する領域があるか否かによって、補正すべき箇所(領域)を判定するようにしている。
【0165】
この場合、各領域によってもともと複雑度や誘導場のエネルギが大きく異なる場合もあるので、複雑度や誘導場のエネルギの値にそれぞれ一定の範囲を設定し、それぞれの領域において求められた複雑度や誘導場のエネルギがそれぞれに設定された範囲内に入っているか否かを見て、求められた複雑度やエネルギがその範囲外となっている領域を補正対象とするというようにしてもよい。なお、それぞれの領域間で複雑度や誘導場のエネルギをそれぞれ正規化した上で、領域間の比較を行うようにしてもよいことは勿論である。
【0166】
また、前述した例では、等分割した領域を設けるようにしたが、領域の分割は等分割でなくてもよい。領域を等分割する利点は、各種の演算処理が簡単となる点である。また、等分割でない場合は、演算処理はやや複雑となるが、それぞれの文字において、文字の部分によって画素数などが異なるため、画素数の多い部分は少ない面積とするなど画素数の分布に応じた領域分割が可能となり、補正箇所の判断をより適正に判断することができる。
【0167】
以上説明したようにこの第2の実施の形態によれば、誘導場に基づいて求められた複雑度や誘導場のエネルギから、補正すべき箇所を判定するようにしている。また、この場合、文字を複数の領域に分割して、それぞれの領域ごとに誘導場に基づく複雑度や誘導場のエネルギを求めるようにしているので、補正すべき箇所を効率よくしかも適切に判定することができる。
【0168】
また、補正すべき箇所について、どのような補正を施せばよいかを示す補正内容データを取得し、それを補正処理部11に渡すことによって、補正処理部11ではその補正内容データに基づいた補正処理を自動的に行うので、フォントの補正を自動化することができる。さらに、補正すべき箇所と、どのような補正を施せばよいかを表示部5上で表示することもできるので、それを見ながらデザイナなどが手動で補正を行うことも可能となり、デザイナに対しては適切なデザイン支援を行うことができ、また、熟練したデザイナでなくてもある程度はフォントデザインを行えるようになる。
【0169】
なお、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能となるものである。たとえば、前述の第2の実施の形態において、評価対象となる文字を領域分割する際の分割数は8分割に限られるものではなく、たとえば、3分割、4分割、6分割、12分割、16分割など種々設定することができる。
【0170】
また、前述の第2の実施の形態では、文字を複数の領域に分割してそれぞれの領域ごとに複雑度や誘導場のエネルギを計算しているが、その考え方は第1の実施の形態にも適用することができる。すなわち、第1の実施の形態は、誘導場から得られる複雑度や誘導場のエネルギを文字全体から計算して求め、それによって、当該文字のフォントの良さを評価しているが、第2の実施の形態で説明したように、当該文字をそれぞれの領域(たとえば8等分)に分割して、分割された領域ごとに複雑度や誘導場のエネルギを計算し、これら複雑度や誘導場のエネルギをそれぞれの領域間で比較して、突出した値を有する領域が存在するか否かなどによって、文字全体のフォントの良さを評価することも可能である。
【0171】
また、本発明は以上説明した本発明を実現するための処理手順が記述された処理プログラムを作成し、その処理プログラムをフロッピィディスク、光ディスク、ハードディスクなどの記録媒体に記録させておくこともでき、本発明は、その処理プログラムの記録された記録媒体をも含むものである。また、ネットワークから当該処理プログラムを得るようにしてもよい。
【0172】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、視覚の誘導場から等ポテンシャル線の形状を表すパラメータと等ポテンシャル値の大きさを表すパラメータの少なくとも一方のパラメータを計算して、これらのパラメータの少なくとも一方のパラメータに基づいて前記処理対象となる文字のフォントの良さを評価するようにしているので、フォントの良さを適切に定量評価することができる。それによって、自動的にしかも短時間で大量に評価することができ、労力、コストを大幅に削減することができる。また、人間の見た目の評価と異なり、評価のバラツキも大幅に少なくすることができる。
【0173】
また、このような評価はフォントデザインの支援ともなり、フォントデザインを効率よく行うことができる。
【0174】
また、等ポテンシャル線の形状を表すパラメータとして、等ポテンシャル線の凹凸の度合いを示す複雑度を用いて個々の文字を構成する線分の滑らかさを評価するようにしているので、特に、線分の滑らかさや文字の形状の良さを適切に定量評価することができる。
【0175】
また、等ポテンシャル線の形状を表すパラメータとして、誘導場のエネルギを用いて個々の文字の印象の強さを評価するようにしているので、特に、線幅の太さなど、見た目の印象の強さを適切に定量評価することができる。なお、これら複雑度と誘導場のエネルギはそれぞれを単独で用いることもできるが、複雑度と誘導場のエネルギの両方を組み合わせて用いることによって、フォントの良さを、より適切に評価することができる。
【0176】
また、本発明は、上述した評価結果を基づいて補正すべき箇所を判定し、その判定結果を出力することもできるので、文字のどの部分を補正すべきかを適切にデザイナに知らせることができる。これによって、デザイナは指摘された箇所に対して適切な補正を行うことができる。なお、この補正は自動で行うことは勿論、手動操作で行うことも可能となる。
【0177】
また、前記複雑度または誘導場のエネルギを計算する際、前記処理対象文字を複数の領域に分割してそれぞれの領域ごとに前記複雑度または誘導場のエネルギを計算し、これら分割されたそれぞれの領域ごとの複雑度と誘導場のエネルギの少なくとも一方を、それぞれの領域間で比較することによって、補正すべき領域を判定するようにしている。このように、ある限られた領域ごとの複雑度や誘導場のエネルギを用いて補正すべきか否かを判定することによって、より適切に補正すべき箇所を特定することができる。
【0178】
このように本発明は、フォントの良さの定量評価を自動化でき、しかも、短時間で大量に、かつ、均一に評価することができる。また、補正すべき箇所を自動的に判定して、自動補正をも可能としているので、文字の拡大縮小、解像度変換などによって生ずるジャギーなどを改善することができ、デバイスや表示形態に依存しない見易い文字を表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明において用いる視覚の誘導場について説明するためのディジタル画像の画素配列を示す図である。
【図2】視覚の誘導場の強さを求める際の遮蔽条件を説明する図である。
【図3】文字「A」の視覚の誘導場の例であり、同図(a)は遮蔽条件を考慮して視覚の誘導場を求めた場合、同図(b)は遮蔽条件を考慮しないで視覚の誘導場を求めた場合を示す図である。
【図4】「あ」という文字について、文字の大きさを62ポイント(72DPI)で統一し、フォントを色々変化させた例を示す図である。
【図5】図4で示したそれぞれのフォントに対する誘導場のエネルギを示す図である。
【図6】文字サンプル例として、「あ」という文字を同じ大きさ(9ポイント)で、しかも、同じフォントとして、その解像度だけを変化させた場合の文字画像を示す図である。
【図7】図7に示したそれぞれの解像度の「あ」の文字画像を、その大きさだけを62ポイントに拡大して示す図である。
【図8】図6の文字サンプル例で示されている「あ」という文字を、大きさとフォントを同じにして解像度のみを変化させた場合におけるそれぞれの解像度の「あ」に対して求められた複雑度と誘導場のエネルギを示す
【図9】図7で示す拡大した文字サンプル例のうち、112DPI、120DPI、144DPIの文字画像を補正処理した例を説明する図であり、(a)は補正前の文字画像、(b)は補正後の文字画像を示す図である。
【図10】図6に示す文字サンプル例の文字画像を補正処理した例を説明する図であり、(a)は補正前の文字画像、(b)は補正後の文字画像を示す図である。
【図11】図10(b)に示す補正後の文字サンプル例について図8と同様にそれぞれの解像度の「あ」に対して求められた複雑度と誘導場のエネルギを示す図である。
【図12】第1の実施の形態を実現するためのフォント最適化装置の構成を示す図である。
【図13】第2の実施の形態を実現するためのフォント最適化装置の構成を示す図である。
【図14】「あ」という文字の重心を中心に放射状に等分割した例を示す図である。
【符号の説明図】
1 画像入力部
2 誘導場計算部
3 評価基準データベース
4 評価判定部
5 表示部
10 補正内容データベース
11 補正処理部
Z1,Z2,Z3,・・・,Z8 領域
Claims (36)
- 処理対象文字をディジタル化した文字画像とし、そのディジタル化した文字画像に対して視覚の誘導場を計算し、その視覚の誘導場から等ポテンシャル線の形状を表すパラメータと等ポテンシャル値の大きさを表すパラメータの少なくとも一方のパラメータを計算して、これら等ポテンシャル線の形状を表すパラメータと等ポテンシャル値の大きさを表すパラメータの少なくとも一方のパラメータに基づいて前記処理対象文字のフォントの良さを評価してその評価結果を出力することを特徴とするフォント最適化方法。
- 前記等ポテンシャル線の形状を表すパラメータは、等ポテンシャル線の凹凸の度合いを示す複雑度であって、前記フォントの良さを評価する際は、この複雑度を、前記処理対象文字を構成する線分の滑らかさや当該文字の形状の良さを示す指標として用いることを特徴とする請求項1記載のフォント最適化方法。
- 前記等ポテンシャル値の大きさを表すパラメータは、誘導場のエネルギであって、前記フォントの良さを評価する際は、この誘導場のエネルギを、前記処理対象文字の印象の強さを示す指標として用いることを特徴とする請求項1または2記載のフォント最適化方法。
- 前記処理対象文字のフォントの良さを評価してその評価結果を出力する処理は、補正すべき箇所を判定する処理が含まれることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のフォント最適化方法。
- 前記複雑度または誘導場のエネルギを計算する際、前記処理対象文字を複数の領域に分割して、それぞれの領域ごとに前記複雑度または誘導場のエネルギを計算することを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載のフォント最適化方法。
- 前記補正すべき箇所を判定する際は、前記領域ごとの複雑度と誘導場のエネルギの少なくとも一方の値を、それぞれの領域間で比較することによって補正すべき領域を判定することを特徴とする請求項5記載のフォント最適化方法。
- 前記領域の分割は、前記処理対象文字の重心を中心にして放射状に分割することを特徴とする請求項5または6記載のフォント最適化方法。
- 前記処理対象文字の重心を中心にして放射状に分割する際の分割の仕方は等分割とすることを特徴とする請求項7記載のフォント最適化方法。
- 前記複雑度または誘導場のエネルギをそれぞれの領域ごとに計算する際、計算された領域ごとの当該複雑度または誘導場のエネルギを当該文字全体の値に換算するための正規化を行うことを特徴とする請求項5から8のいずれかに記載のフォント最適化方法。
- 前記補正すべき箇所を判定する処理は、前記複雑度と誘導場のエネルギに基づいて補正すべき箇所を判定してその補正箇所を示すデータを得るとともに、その補正すべき箇所に対してどのような補正を行うかを示す補正内容データを取得して、これら補正すべき箇所を示すデータと補正内容データの出力を行うことを特徴とする請求項4から9のいずれかに記載のフォント最適化方法。
- 前記補正すべき箇所を判定する処理のあとに、前記補正すべき箇所に対する補正処理を行い、この補正処理によって当該補正すべき箇所を自動的に補正することを特徴とする請求項4から10のいずれかに記載のフォント最適化方法。
- 前記分割されて得られた領域のうちのある領域に対して補正がなされた場合、その補正処理後に、他の領域との間の文字の線分を平滑化する処理を行うことを特徴とする請求項5から11のいずれかに記載のフォント最適化方法。
- 処理対象文字を入力してディジタル化した文字画像として出力する画像入力部と、
この画像入力部から出力される文字画像に対して視覚の誘導場を計算するとともに、その視覚の誘導場から等ポテンシャル線の形状を表すパラメータと等ポテンシャル値の大きさを表すパラメータの少なくとも一方を計算する視覚の誘導場計算手段と、
この視覚の誘導場計算手段によって求められた前記等ポテンシャル線の形状を表すパラメータと等ポテンシャル値の大きさを表すパラメータの少なくとも一方のパラメータに基づいて前記処理対象文字のフォントの良さを評価してその評価結果を出力する評価判定手段と、
を有することを特徴とするフォント最適化装置。 - 前記等ポテンシャル線の形状を表すパラメータは、等ポテンシャル線の凹凸の度合いを示す複雑度であって、前記フォントの良さを評価する際は、この複雑度を、前記処理対象文字を構成する線分の滑らかさや当該文字の形状の良さを示す指標として用いることを特徴とする請求項13記載のフォント最適化装置。
- 前記等ポテンシャル値の大きさを表すパラメータは、誘導場のエネルギであって、前記フォントの良さを評価する際は、この誘導場のエネルギを、前記処理対象文字の印象の強さを示す指標として用いることを特徴とする請求項13または14記載のフォント最適化装置。
- 前記評価判定手段は、補正すべき箇所を判定する補正箇所判定機能を有していることを特徴とする請求項13から15のいずれかに記載のフォント最適化装置。
- 前記複雑度または誘導場のエネルギを計算する際、前記処理対象文字を複数の領域に分割して、それぞれの領域ごとに前記複雑度または誘導場のエネルギを計算することを特徴とする請求項14から16のいずれかに記載のフォント最適化装置。
- 前記補正すべき箇所を判定する際は、前記領域ごとの複雑度と誘導場のエネルギの少なくとも一方の値を、それぞれの領域間で比較することによって補正すべき領域を判定することを特徴とする請求項17記載のフォント最適化装置。
- 前記領域の分割は、前記処理対象文字の重心を中心にして放射状に分割することを特徴とする請求項17または18記載のフォント最適化装置。
- 前記処理対象文字の重心を中心にして放射状に分割する際の分割の仕方は等分割とすることを特徴とする請求項19記載のフォント最適化装置。
- 前記複雑度または誘導場のエネルギをそれぞれの領域ごとに計算する際、計算された領域ごとの当該複雑度または誘導場のエネルギを当該文字全体の値に換算するための正規化を行うことを特徴とする請求項17から20のいずれかに記載のフォント最適化装置。
- 前記補正すべき箇所を判定する処理は、前記複雑度と誘導場のエネルギから補正すべき箇所を判定してその補正箇所を示すデータを得るとともに、その補正すべき箇所に対してどのような補正を行うかを示す補正内容データを取得して、これら補正すべき箇所を示すデータと補正内容データの出力を行うことを特徴とする請求項16から21のいずれかに記載のフォント最適化装置。
- 前記評価判定手段により判定された補正すべき箇所に対して補正を行う補正処理手段を設け、この補正処理手段によって当該補正すべき箇所を自動的に補正することを特徴とする請求項16から22のいずれかに記載のフォント最適化装置。
- 前記分割されて得られた領域のうちのある領域に対して補正がなされた場合、その補正処理後に、他の領域との間の文字の線分を平滑化する処理を行うことを特徴とする請求項17から23のいずれかに記載のフォント最適化装置。
- 処理対象文字を入力してディジタル化した文字画像として出力する処理手順と、
このディジタル化された文字画像に対して視覚の誘導場を計算するとともに、その視覚の誘導場から等ポテンシャル線の形状を表すパラメータと等ポテンシャル値の大きさを表すパラメータの少なくとも一方を計算する処理手順と、
これによって求められた前記等ポテンシャル線の形状を表すパラメータと等ポテンシャル値の大きさを表すパラメータの少なくとも一方のパラメータに基づいて前記処理対象文字のフォントの良さを評価してその評価結果を出力する処理手順と、
を含むことを特徴とするフォント最適化処理プログラム。 - 前記等ポテンシャル線の形状を表すパラメータは、等ポテンシャル線の凹凸の度合いを示す複雑度であって、前記フォントの良さを評価する際は、この複雑度を、前記処理対象文字を構成する線分の滑らかさや当該文字の形状の良さを示す指標として用いることを特徴とする請求項25記載のフォント最適化処理プログラム。
- 前記等ポテンシャル値の大きさを表すパラメータは、誘導場のエネルギであって、前記フォントの良さを評価する際は、この誘導場のエネルギを、前記処理対象文字の印象の強さを示す指標として用いることを特徴とする請求項25または26記載のフォント最適化処理プログラム。
- 前記処理対象文字のフォントの良さを評価してその評価結果を出力する処理は、補正すべき箇所を判定する処理が含まれることを特徴とする請求項25から27のいずれかに記載のフォント最適化処理プログラム。
- 前記複雑度または誘導場のエネルギを計算する際、前記処理対象文字を複数の領域に分割して、それぞれの領域ごとに前記複雑度または誘導場のエネルギを計算することを特徴とする請求項26から28のいずれかに記載のフォント最適化処理プログラム。
- 前記補正すべき箇所を判定する際は、前記領域ごとの複雑度と誘導場のエネルギの少なくとも一方の値を、それぞれの領域間で比較することによって補正すべき領域を判定することを特徴とする請求項29記載のフォント最適化処理プログラム。
- 前記領域の分割は、前記処理対象文字の重心を中心にして放射状に分割することを特徴とする請求項29または30記載のフォント最適化処理プログラム。
- 前記処理対象文字の重心を中心にして放射状に分割する際の分割の仕方は等分割とすることを特徴とする請求項31記載のフォント最適化処理プログラム。
- 前記複雑度または誘導場のエネルギをそれぞれの領域ごとに計算する際、計算された領域ごとの当該複雑度または誘導場のエネルギを当該文字全体の値に換算するための正規化を行うことを特徴とする請求項29から32のいずれかに記載のフォント最適化処理プログラム。
- 前記補正すべき箇所を判定する処理は、前記複雑度と誘導場のエネルギから補正すべき箇所を判定してその補正箇所を示すデータを得るとともに、その補正すべき箇所に対してどのような補正を行うかを示す補正内容データを取得して、これら補正すべき箇所を示すデータと補正内容データの出力を行うことを特徴とする請求項28から33のいずれかに記載のフォント最適化処理プログラム。
- 前記補正すべき箇所を判定する処理のあとに、前記補正すべき箇所に対する補正処理を行い、この補正処理によって当該補正すべき箇所を自動的に補正することを特徴とする請求項28から34のいずれかに記載のフォント最適化処理プログラム。
- 前記分割されて得られた領域のうちのある領域に対して補正がなされた場合、その補正処理後に、他の領域との間の文字の線分を平滑化する処理を行うことを特徴とする請求項29から35のいずれかに記載のフォント最適化処理プログラム。
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Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20060110 |