JP2004101597A - 熱現像感光材料、および画像形成方法 - Google Patents

熱現像感光材料、および画像形成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の課題は、高照度露光で、高感度で、画像保存性に優れ、かつ加工性に優れた熱現像感光材料、および画像形成方法を提供することである。
【解決手段】支持体の一方面上に、少なくとも、感光性ハロゲン化銀、非感光性有機銀塩、銀イオンのための還元剤、及びバインダーを含有する熱現像感光材料において、1)前記感光性ハロゲン化銀がヨウ化銀含有率が5モル%以上100モル%以下であり、2)非感光性有機銀塩の銀1モル当たりの分子量が410以下であることを特徴とする熱現像感光材料。
【選択図】  なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヨウ化銀含量の高いハロゲン化銀乳剤を用いた熱現像感光材料と画像形成方法に関するものであり、特にレーザー露光に適した高感度でかぶりが少なく、かつ現像処理後の画像保存性に優れた熱現像感光材料とそれを用いた画像形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、医療分野や印刷製版分野において環境保全、省スペースの観点から写真現像処理のドライ化が強く望まれている。これらの分野では、デジタル化が進展し、画像情報をコンピューターに取り込み、保存、そして必要な場合には加工し、通信によって必要な場所で、レーザー・イメージセッターまたはレーザー・イメージャーにより感光材料に出力し、現像して画像をその場で作成するシステムが急速に広がってきている。感光材料としては、高い照度のレーザー露光で記録することができ、高解像度および鮮鋭さを有する鮮明な黒色画像を形成することがが必要とされている。このようなデジタル・イメージング記録材料としては、インクジェットプリンター、電子写真など顔料、染料を利用した各種ハードコピーシステムが一般画像形成システムとして流通しているが、医療用画像のように診断能力を決定する画質(鮮鋭度、粒状性、階調、色調)の点、記録スピード(感度)の点で、不満足であり、従来の湿式現像の医療用銀塩フィルムを代替できるレベルに到達していない。
【0003】
一方、有機銀塩を利用した熱画像形成システムが知られている。特に、感光性ハロゲン化銀、還元剤、還元可能な銀塩(例、有機銀塩)、必要により銀の色調を制御する色調剤を有機バインダー中に分散した感光性層を有する熱現像感光材料は、ドライシルバーなどの名称で一般的に市場で知られている(例えば非特許文献1参照)。
【0004】
熱現像感光材料は、画像露光後、高温(例えば80℃以上)に加熱し、ハロゲン化銀あるいは還元可能な銀塩(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応により、黒色の銀画像を形成する。酸化還元反応は、露光で発生したハロゲン化銀の潜像の触媒作用により促進される。その結果、露光領域に黒色の銀画像が形成される。熱現像感光材料は、米国特許2910377号、特公昭43−4924号をはじめとする多くの文献に開示され、また、実用的には医療用画像形成システムとして富士メディカルドライイメージャーFM−DP Lが発売された。
【0005】
この様な有機銀塩を利用した画像形成システムは、定着工程がないため現像処理後の画像保存性、特に光が当たったときのプリントアウトの悪化が大きな問題であった。このプリントアウトを改良する手段として有機銀塩をコンバージョンすることによって形成したヨウ化銀を利用する方法がUS−6143488号、EP0922995号に開示されている。しかしながらここで開示されたような有機銀塩をヨードでコンバージョンする方法では十分な感度を得ることが出来ず現実のシステムを組むことは困難であった。その他ヨウ化銀を利用した感材としてはWO97−48014号、WO48015号、US−6165705号、特開平8−297345号、特許第2785129号等に記載があるが、いずれも十分な感度・かぶりレベルを達成できておらず、レーザー露光感材としての実用に耐えるものではなかった。
ヨウ化銀写真乳剤の感度を増加させる手段としては、pAgを6以下にして色増感すること(例えば非特許文献2参照)、あるいは、亜硝酸ナトリウム、ピロガロール、ハイドロキノンなどのハロゲン受容体や硝酸銀水溶液への浸漬や、pAg7.5で硫黄増感することなどにより、増感すること(例えば非特許文献3参照)が知られていた。しかし、実施例に示した様にこれらのハロゲン受容体の増感効果は、本発明が対象とする熱現像感光材料においてはその効果は非常に小さく極めて不十分であった。そのために、高ヨウ化銀を用いた熱現像感光材料において大幅に感度が増加できる技術の開発が熱望されてきた。
【0006】
【非特許文献1】
ドナルド H.クロスタベール著「サーマリイ プロセスド シルバー システム(Thermally processed silver systems)」(イメージング・プロセッシーズ・アンド・マテリアルズ(Imaging Processes and Materials)Neblette 第8版、スタージ(Sturge)、V.ウオールワース(Walworth)、A.シェップ(Shepp) 編集、第279頁、1989年)
【非特許文献2】
W.L.ガードナー、フォトグラフィック サイエンス アンド エンジニアリング、18巻(5)、475頁(1974年発行)
【非特許文献3】
T.H.ジェームス、フォトグラフィック サイエンス アンド エンジニアリング 、5巻、216頁(1961年発行)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高ヨウ化銀を用いて、高感度でかぶりが少なく、かつ画像保存性の優れた熱現像感光材料を提供し、それを用いた画像形成方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記課題は、下記の手段によって達成された。
1) 支持体の一方面上に、少なくとも、感光性ハロゲン化銀、非感光性有機銀塩、銀イオンのための還元剤、及びバインダーを含有する熱現像感光材料において、前記感光性ハロゲン化銀がヨウ化銀含有率が5モル%以上100モル%以下であり、非感光性有機銀塩の銀1モル当たりの分子量が410以下であることを特徴とする熱現像感光材料。
2) 該感光性ハロゲン化銀のヨウ化銀含有率が10モル%以上100モル%以下であることを特徴とする1)に記載の熱現像感光材料。
3) 該感光性ハロゲン化銀のヨウ化銀含有率が40モル%以上100モル%以下であることを特徴とする1)に記載の熱現像感光材料。
4) 該感光性ハロゲン化銀のヨウ化銀含有率が70モル%以上100モル%以下であることを特徴とする1)に記載の熱現像感光材料。
5) 該感光性ハロゲン化銀のヨウ化銀含有率が90モル%以上100モル%以下であることを特徴とする1)に記載の熱現像感光材料。
6) 該感光性ハロゲン化銀の平均粒子サイズが5nm以上80nm以下であることを特徴とする1)ないし5)に記載の熱現像感光材料。
7) 該感光性ハロゲン化銀が高ヨウ化銀結晶構造に由来する直接遷移吸収を有することを特徴とする1)ないし6)に記載の熱現像感光材料。
8) 非感光性有機銀塩が、下記の一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする1)ないし7)に記載の熱現像感光材料。
一般式(1)
OOC−L−COOM
式中、L1は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、二価の複素環基、−C(C=O)−,−O−,−S−,−S(=O)−,−S(=O)−,および−N(R)−から選ばれる二価の基、またはこれらの組合せによる二価の複合基を表す。Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、アシル基、またはスルホニル基を表す。MおよびMは水素原子または対イオンを表し、少なくとも一方は銀(I)イオンを表す。
9) 該感光性ハロゲン化銀を含む画像形成層の膜厚が3μm以上15μm以下であることを特徴とする1)ないし8)に記載の熱現像感光材料。
10) 該画像形成層の支持体の同一面上に少なくとも1層の非感光性層を有し、該画像形成層と非感光性層の総厚が5μm以上20μm以下あることを特徴とする特許1)ないし9)に記載の熱現像感光材料。
11) 感光性ハロゲン化銀と非感光性有機銀塩の総銀量が1m当たり0.5g以上1.9g以下であることを特徴とする1)ないし10)に記載の熱現像感光材料。
12) 1)ないし11)のいずれかに記載の熱現像感光材料を350nm〜450nmに吸収極大を有し、1mW/mm以上の照度を有する露光光源で露光し、熱現像することを特徴とする画像形成方法。
13) 1)ないし11)のいずれかに記載の熱現像感光材料を350nm〜450nmに吸収極大を有し、1mW/mm以上の照度を有する露光光源で露光した後、80℃以上150℃以下で5秒以上20秒以下で熱現像することを特徴とする画像形成方法。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
(感光性ハロゲン化銀)
1)ハロゲン組成
本発明に用いられる感光性ハロゲン化銀は、ヨウ化銀含有率が5モル%以上、100モル%以下と高い組成のものであることが重要である。残りは特に制限はなく、塩化銀、臭化銀またはチオシアン酸銀や燐酸銀などの有機銀塩から選ぶことができるが、特に臭化銀、塩化銀であることが好ましい。この様なヨウ化銀含有率が高い組成のハロゲン化銀を用いることによって、高感度で、現像処理後の画像保存性、特に光照射によるカブリの増加が著しく小さい好ましい熱現像感光材料が設計できる。従来、感光性ハロゲン化銀のヨウ化銀含率は0〜5モル%であり、5モル%以上で用いられることは極めてまれであったので、5モル%以上ヨウ化銀を含有するハロゲン化銀を本願では高ヨウ化銀と呼ぶ。
【0010】
さらに、ヨウ化銀含有率は10モル%以上100モル%以下であると好ましく、40モル%以上100モル%以下であるとさらに好ましく、また、さらに好ましくは70モル%以上100モル%以下、最も好ましくは90モル%以上100モル%以下である。
【0011】
本発明に用いられる感光性ハロゲン化銀粒子は、直接遷移による光吸収相を有することが好ましい。六方晶系ウルツアイト構造または立方晶系ジンクブレンド構造を有する高ヨウ化銀構造を粒子内に有するハロゲン化銀粒子は、350nm〜450nmの波長領域に直接遷移による光吸収を発現することはよく知られている。しかしながら、このようなハロゲン化銀粒子は、従来のハロゲン化銀感光材料においては実用には程遠く低感度であり、写真工業的に利用価値のないものと省みられることはなかった。
【0012】
しかしながら、本発明者らによる研究により、本願の熱現像感光材料において露光照度を1mW/mm2以上の高照度で短時間(1秒以下、好ましくは10−2秒以下、さらに好ましくは10−4秒以下)で露光することにより、上記の高ヨウ化銀を用いて高感度を達成できることが見出された。
【0013】
粒子内におけるハロゲン組成の分布は均一であってもよく、ハロゲン組成がステップ状に変化したものでもよく、或いは連続的に変化したものでもよい。また、コア/シェル構造を有するハロゲン化銀粒子も好ましく用いることができる。構造として好ましいものは2〜5重構造であり、より好ましくは2〜4重構造のコア/シェル粒子を用いることができる。コア部のヨウ化銀含有率が高いコア高ヨウ化銀構造、またはシェル部のヨウ化銀含有率が高いシェル高ヨウ化銀構造も好ましく用いることができる。また、粒子の表面にエピタキシャル部分とした塩化銀や臭化銀を局在させる技術も好ましく用いることができる。
【0014】
直接遷移による光吸収についてさらに詳細に説明する。直接遷移による光吸収は、感光性ハロゲン化銀を透明支持体上に塗布したフィルムの透過分光吸収を測定することによって調べることができる。ヨウ化銀による直接遷移による光吸収は400nm〜430nmの波長領域に高ヨウ化銀の励起子に起因する特徴的な吸収が現れるので容易に認識することができる。図1に本発明の代表的なヨウ化銀乳剤の分光吸収スペクトルを示した。420nm付近の鋭い吸収ピークが明瞭に観察されるが、これが直接遷移による光吸収である。
【0015】
本発明においては、直接遷移光吸収型高ヨウ化銀相は単独で存在しても構わないが、臭化銀、塩化銀、ヨウ臭化銀、あるいはヨウ塩化銀およびこれらの混晶乳剤のような350nm〜450nmの波長域において間接遷移吸収を示すハロゲン化銀に接合して存在することも好ましく用いられる。
このような接合粒子の場合のトータルヨウ化銀含率は、5モル%以上100モル%以下であることが好ましい。より好ましい平均ヨウ化銀含率は、10モル%以上100モル%以下、さらに好ましくは、40モル%以上100モル%以下、さらに好ましくは、70モル%以上100モル%以下、最も好ましくは、90モル%以上100モル%以下である。
【0016】
2)粒子サイズ
本発明に用いる高ヨウ化銀のハロゲン化銀については、粒子サイズは特に重要である。ハロゲン化銀のサイズが大きいと、必要な最高濃度を達成するために必要なハロゲン化銀の塗布量が増加する。本発明者は、本発明で好ましく用いられるヨウ化銀含有率の高い組成のハロゲン化銀は、その塗布量が多いと現像が著しく抑制され低感化するとともに十分な画像濃度が得られず、好ましくない。
【0017】
この様に高ヨウ化銀を用いた場合、十分な最高光学濃度を達成するためには、ハロゲン化銀粒子のサイズは従来の臭化銀や低ヨウド含量のヨウ臭化銀に比べて十分に小さいことが必要である。好ましいハロゲン化銀の粒子サイズは5nm以上80nm以下であり、さらに5nm以上70nm以下であることが好ましい。特に好ましくは10nm以上50nm以下である。ここでいう粒子サイズとは、電子顕微鏡により観察した投影面積と同面積の円像に換算したときの直径の平均をいう。平板粒子の場合は主平面の投影面積で表す。
【0018】
3)塗布量
この様なハロゲン化銀粒子の塗布量は、後述する非感光性有機銀塩の銀1モルに対して0.5モル%以上15モル%以下、好ましくは0.5モル%以上12モル%以下、10モル%以下であることがさらに好ましい。1モル%以上9モル%以下であることがより好ましく、特に好ましくは1モル%以上7モル%以下である。本発明者の見出したヨウ化銀含有率の高い組成のハロゲン化銀による著しい現像抑制を押さえるためには、この添加量の選択は極めて重要である。
【0019】
4)粒子形成方法
感光性ハロゲン化銀の形成方法は当業界ではよく知られており、例えば、リサーチディスクロージャー1978年6月の第17029号、および米国特許第3,700,458号に記載されている方法を用いることができるが、具体的にはゼラチンあるいは他のポリマー溶液中に銀供給化合物及びハロゲン供給化合物を添加することにより感光性ハロゲン化銀を調製し、その後で有機銀塩と混合する方法を用いる。また、特開平11−119374号公報の段落番号0217〜0224に記載されている方法、特開平11−352627号、特願2000−42336号記載の方法も好ましい。
本発明においては、直接遷移光吸収を強く発現させることが肝要である。ヨウ化銀の含率が90モル%以上の場合は、特にハロゲン化銀粒子形成時において水溶性ハロゲン塩溶液と硝酸銀溶液の混合に配慮を施さなくとも直接遷移光吸収を強く発現させることができる。
しかしながら、ヨウ化銀の含率が90モル%以下の接合粒子の場合には、粒子形成時に水溶性臭素塩と水溶性ヨウド塩を混合溶液として添加すると直接遷移光吸収の強度が低下してしまうので好ましくない。水溶性ヨウド塩を単独、あるいは高濃度で添加するのが好ましい。それによって粒子内に高ヨウド相の領域が生まれ、直接遷移光吸収を強く発現させることができる。高ヨウド相は粒子の内部(コア部)であっても表面(シェル部)であっても良い。
【0020】
ハロゲン化銀粒子が直接遷移光吸収を有しているかどうかは、対応する波長域に直接遷移に起因する励起子吸収が見られるかどうかで容易に判断することができる。図1に高ヨウド相による直接遷移光吸収の代表的な例を示した。410nm付近の極大吸収が高ヨウ化銀の励起子による直接遷移光吸収である。ハロゲン化銀乳剤分散物を下塗りしたポリエステル支持体上に塗布、乾燥して得られたフィルムを未塗布ポリエステル支持体をリファレンスにして分光光度計で吸収スペクトルを測定することによって求めることができる。
【0021】
5)粒子形状
ハロゲン化銀粒子の形状としては立方体粒子、八面体粒子、14面体粒子、12面体粒子、平板状粒子、球状粒子、棒状粒子、ジャガイモ状粒子等を挙げることができる。とくに、12面体粒子、14面体粒子、と平板状粒子が好ましい。本発明のヨウ化銀含有率の高い組成のハロゲン化銀は複雑な形態を取り得るが、好ましい形態は例えば、R.L.JENKINS etal. J of Phot. Sci. Vol.28 (1980)のp164−Fig1に示されているような接合粒子が挙げられる。同Fig.1に示されているような平板上粒子も好ましく用いられる。ハロゲン化銀粒子のコーナーが丸まった粒子も好ましく用いることができる。感光性ハロゲン化銀粒子の外表面の面指数(ミラー指数)については特に制限はないが、分光増感色素が吸着した場合の分光増感効率が高い[100]面の占める割合が高いことが好ましい。その割合としては50%以上が好ましく、65%以上がより好ましく、80%以上が更に好ましい。ミラー指数[100]面の比率は増感色素の吸着における[111]面と[100]面との吸着依存性を利用したT.Tani;J.Imaging Sci.,29、165(1985年)に記載の方法により求めることができる。
【0022】
6)重金属
本発明の感光性ハロゲン化銀粒子は、周期律表(第1〜18族までを示す)の第8族〜第10族の金属または金属錯体を含有することができる。周期律表の第8族〜第10族の金属または金属錯体の中心金属として好ましくは、ロジウム、ルテニウム、イリジウムである。これら金属錯体は1種類でもよいし、同種金属及び異種金属の錯体を2種以上併用してもよい。好ましい含有率は銀1モルに対し1×10−9モルから1×10−3モルの範囲が好ましい。これらの重金属や金属錯体及びそれらの添加法については特開平7−225449号、特開平11−65021号段落番号0018〜0024、特開平11−119374号段落番号0227〜0240に記載されている。
【0023】
本発明においては、六シアノ金属錯体を粒子最表面に存在させたハロゲン化銀粒子が好ましい。六シアノ金属錯体としては、[Fe(CN)4−、[Fe(CN)3−、[Ru(CN)4−、[Os(CN)4−、[Co(CN)3−、[Rh(CN)3−、[Ir (CN)3−、[Cr(CN)3−、[Re(CN)3−などが挙げられる。本発明においては六シアノFe錯体が好ましい。
【0024】
六シアノ金属錯体は、水溶液中でイオンの形で存在するので対陽イオンは重要ではないが、水と混和しやすく、ハロゲン化銀乳剤の沈澱操作に適合しているナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオンおよびリチウムイオン等のアルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオン(例えばテトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン、テトラ(n−ブチル)アンモニウムイオン)を用いることが好ましい。
【0025】
六シアノ金属錯体は、水の他に水と混和しうる適当な有機溶媒(例えば、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類等)との混合溶媒やゼラチンと混和して添加することができる。
【0026】
六シアノ金属錯体の添加量は、銀1モル当たり1×10−5モル以上1×10−2モル以下が好ましく、より好ましくは1×10−4モル以上1×10−3モル以下である。
【0027】
六シアノ金属錯体をハロゲン化銀粒子最表面に存在させるには、六シアノ金属錯体を、粒子形成に使用する硝酸銀水溶液を添加終了した後、硫黄増感、セレン増感およびテルル増感のカルコゲン増感や金増感等の貴金属増感を行う化学増感工程の前までの仕込工程終了前、水洗工程中、分散工程中、または化学増感工程前に直接添加する。ハロゲン化銀微粒子を成長させないためには、粒子形成後速やかに六シアノ金属錯体を添加することが好ましく、仕込工程終了前に添加することが好ましい。
【0028】
尚、六シアノ金属錯体の添加は、粒子形成をするために添加する硝酸銀の総量の96質量%を添加した後から開始してもよく、98質量%添加した後から開始するのがより好ましく、99質量%添加した後が特に好ましい。
これら六シアノ金属錯体を粒子形成の完了する直前の硝酸銀水溶液を添加した後に添加すると、ハロゲン化銀粒子最表面に吸着することができ、そのほとんどが粒子表面の銀イオンと難溶性の塩を形成する。この六シアノ鉄(II)の銀塩は、AgIよりも難溶性の塩であるため、微粒子による再溶解を防ぐことができ、粒子サイズが小さいハロゲン化銀微粒子を製造することが可能となった。
【0029】
さらに本発明に用いられるハロゲン化銀粒子に含有することのできる金属原子(例えば[Fe(CN)4−)、ハロゲン化銀乳剤の脱塩法や化学増感法については特開平11−84574号段落番号0046〜0050、特開平11−65021号段落番号0025〜0031、特開平11−119374号段落番号0242〜0250に記載されている。
【0030】
7)ゼラチン
本発明に用いる感光性ハロゲン化銀乳剤に含有されるゼラチンとしては、種々のゼラチンが使用することができる。感光性ハロゲン化銀乳剤の有機銀塩含有塗布液中での分散状態を良好に維持するために、分子量は、500〜60,000の低分子量ゼラチンを使用することが好ましい。これらの低分子量ゼラチンは粒子形成時あるいは脱塩処理後の分散時に使用してもよいが、脱塩処理後の分散時に使用することが好ましい。
【0031】
8)化学増感
本発明に用いられる感光性ハロゲン化銀は、未化学増感でもよいが、カルコゲン増感法、金増感法、還元増感法の少なくとも1つの方法で化学増感されるのが好ましい。カルコゲン増感法としては、硫黄増感法、セレン増感法およびテルル増感法が挙げられる。
【0032】
硫黄増感においては、不安定硫黄化合物を用い、P.Grafkides著、Chimie et Physique Photographique(Paul Momtel社刊、1987年、第5版)、Research Disclosure誌307巻307105号などに記載されている不安定硫黄化合物を用いる事が出来る。
具体的には、チオ硫酸塩(例えばハイポ)、チオ尿素類(例えば、ジフェニルチオ尿素、トリエチルチオ尿素、NーエチルーN´ー(4ーメチルー2ーチアゾリル)チオ尿素、カルボキシメチルトリメチルチオ尿素)、チオアミド類(例えば、チオアセトアミド)、ローダニン類(例えば、ジエチルローダニン、5ーベンジリデン−N−エチルローダニン)、フォスフィンスルフィド類(例えば、トリメチルフォスフィンスルフィド)、チオヒダントイン類、4ーオキソーオキサゾリジンー2ーチオン類、ジスルフィド類またはポリスルフィド類(例えば、ジモルフォリンジスルフィド、シスチン、ヘキサチオカンーチオン)、ポリチオン酸塩、元素状硫黄などの公知の硫黄化合物および活性ゼラチンなども用いることができる。特にチオ硫酸塩、チオ尿素類とローダニン類が好ましい。
【0033】
セレン増感においては、不安定セレン化合物を用い、特公昭43ー13489号、同44ー15748号、特開平4ー25832号、同4ー109340号、同4ー271341号、同5ー40324号、同5ー11385号、特願平4ー202415号、同4ー330495号、同4ー333030号、同5ー4203号、同5ー4204号、同5ー106977号、同5ー236538号、同5ー241642号、同5ー286916号などに記載されているセレン化合物を用いる事が出来る。
【0034】
具体的には、コロイド状金属セレン、セレノ尿素類(例えば、N,Nージメチルセレノ尿素、トリフルオルメチルカルボニルートリメチルセレノ尿素、アセチルートリメチルセレノ尿素)、セレノアミド類(例えば、セレノアミド,N,Nージエチルフェニルセレノアミド)、フォスフィンセレニド類(例えば、トリフェニルフォスフィンセレニド、ペンタフルオロフェニルートリフェニルフォスフィンセレニド)、セレノフォスフェート類(例えば、トリーp−トリルセレノフォスフェート、トリ−n−ブチルセレノフォスフェート)、セレノケトン類(例えば、セレノベンゾフェノン)、イソセレノシアネート類、セレノカルボン酸類、セレノエステル類、ジアシルセレニド類などを用いればよい。またさらに、特公昭46ー4553号、同52ー34492号などに記載の非不安定セレン化合物、例えば亜セレン酸、セレノシアン酸塩、セレナゾール類、セレニド類なども用いる事が出来る。特に、フォスフィンセレニド類、セレノ尿素類とセレノシアン酸塩が好ましい。
【0035】
テルル増感においては、不安定テルル化合物を用い、特開平4ー224595号、同4ー271341号、同4ー333043号、同5ー303157号、同6−27573号、同6−175258号、同6−180478号、同6−208186号、同6−208184号、同6−317867号、同7−140579号、同7−301879号、同7−301880号などに記載されている不安定テルル化合物を用いる事が出来る。
【0036】
具体的には、フォスフィンテルリド類(例えば、ブチルージイソプロピルフォスフィンテルリド、トリブチルフォスフィンテルリド、トリブトキシフォスフィンテルリド、エトキシージフェニルフォスフィンテルリド)、ジアシル(ジ)テルリド類(例えば、ビス(ジフェニルカルバモイル)ジテルリド、ビス(N−フェニルーN−メチルカルバモイル)ジテルリド、ビス(N−フェニルーNーメチルカルバモイル)テルリド、ビス(N−フェニルーNーベンジルカルバモイル)テルリド、ビス(エトキシカルボニル)テルリド)、テルロ尿素類(例えば、N,N´ージメチルエチレンテルロ尿素、N,N´ージフェニルエチレンテルロ尿素)テルロアミド類、テルロエステル類などを用いれば良い。特に、ジアシル(ジ)テルリド類とフォスフィンテルリド類が好ましく、特に特開平11−65021号段落番号0030に記載の文献に記載の化合物、特開平5−313284号中の一般式(II),(III),(IV)で示される化合物がより好ましい。
【0037】
特に本発明のカルコゲン増感においてはセレン増感とテルル増感が好ましく、特にテルル増感が好ましい。
【0038】
金増感においては、P.Grafkides著、Chimie et Physique Photographique(Paul Momtel社刊、1987年、第5版)、Research Disclosure誌307巻307105号に記載されている金増感剤を用いることができる。具体的には、塩化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムオーリチオシアネート、硫化金、金セレニドなどでありこれらにくわえて、米国特許第2642361号、同5049484号、同5049485号、同5169751号、同5252455号、ベルギー特許第691857などに記載の金化合物も用いることが出来る。またP.Grafkides著、Chimie et Physique Photographique(Paul Momtel社刊、1987年、第5版)、Research Disclosure誌307巻307105号に記載されている金以外の、白金、パラジュウム、イリジュウムなどの貴金属塩を用いる事も出来る。
【0039】
金増感は単独で用いることもできるが、前記のカルコゲン増感と組み合わせて用いることが好ましい。具体的には金硫黄増感、金セレン増感、金テルル増感、金硫黄セレン増感、金硫黄テルル増感、金セレンテルル増感、金硫黄セレンテルル増感である。
【0040】
本発明においては、化学増感は粒子形成後で塗布前であればいかなる時期でも可能であり、脱塩後、(1)分光増感前、(2)分光増感と同時、(3)分光増感後、(4)塗布直前等があり得る。
【0041】
本発明で用いられるカルコゲン増感剤の使用量は、使用するハロゲン化銀粒子、化学熟成条件等によって変わるが、ハロゲン化銀1モル当たり10−8〜10−1モル、好ましくは10−7〜10−2モル程度を用いる。
同様に、本発明で用いられる金増感剤の添加量は種々の条件により異なるが、目安としてはハロゲン化銀1モル当たり10−7モル〜10−2モル、より好ましくは10−6モル〜5×10−3モルである。この乳剤を化学増感する環境条件としてはいかなる条件でも選択可能ではあるが、pAgとしては8以下、好ましくは7.0以下より6.5以下、とくに6.0以下、およびpAgが1.5以上、好ましくは2.0以上、特に好ましくは2.5以上の条件であり、pHとしては3〜10、好ましくは4〜9、温度としては20〜95℃、好ましくは25〜80℃程度である。
【0042】
本発明においてカルコゲン増感や金増感に加えて、さらに還元増感も併用することができる。とくにカルコゲン増感と併用するのが好ましい。
還元増感法の具体的な化合物としてはアスコルビン酸、二酸化チオ尿素、ジメチルアミンボランが好ましく、その他に塩化第一スズ、アミノイミノメタンスルフィン酸、ヒドラジン誘導体、ボラン化合物、シラン化合物、ポリアミン化合物等を用いることが好ましい。還元増感剤の添加は、結晶成長から塗布直前の調製工程までの感光乳剤製造工程のどの過程でもよい。また、乳剤のpHを8以上またはpAgを4以下に保持して熟成することにより還元増感することも好ましく、粒子形成中に銀イオンのシングルアディション部分を導入することにより還元増感することも好ましい。
還元増感剤の添加量としては、同様に種々の条件により異なるが、目安としてはハロゲン化銀1モル当たり10−7モル〜10−1モル、より好ましくは10−6モル〜5×10−2モルである。
【0043】
本発明で用いるハロゲン化銀乳剤には、欧州特許公開第293,917号公報に示される方法により、チオスルフォン酸化合物を添加してもよい。
本発明における感光性ハロゲン化銀粒子は、金増感、カルコゲン増感、の少なくとも1つの方法で化学増感されていることが高感度の熱現像感光材料を設計する点から好ましい。
【0044】
本発明における感光性ハロゲン化銀乳剤は、1光子で2電子を発生させる化合物としてFED増感剤(Fragmentable electron donating sensitizer)を含有することが好ましい。FED増感剤としては、米国特許第5747235号、同5747236、同6054260号、同5994051号、特願2001−86161号に記載の化合物が好ましい。FED増感剤の添加する工程としては結晶成長から塗布直前の調製工程までの感光乳剤製造工程のどの過程でも好ましい。添加量としては、種々の条件により異なるが、目安としてはハロゲン化銀1モル当たり10−7モルから10−1モル、より好ましくは10−6モル〜5×10−2モルである。
【0045】
本発明は固有感度を高めるため、強色増感剤を用いることができる。本発明に用いる強色増感剤としては、欧州特許公開第587,338号、米国特許第3,877,943号、同第4,873,184号、特開平5−341432号、同11−109547号、同10−111543号等に記載の化合物が挙げられる。
【0046】
9)ハロゲン化銀の併用
本発明に用いられる熱現像感光材料中の感光性ハロゲン化銀乳剤は、一種だけでもよいし、二種以上(例えば、平均粒子サイズの異なるもの、ハロゲン組成の異なるもの、晶癖の異なるもの、化学増感の条件の異なるもの)併用してもよい。感度の異なる感光性ハロゲン化銀を複数種用いることで階調を調節することができる。これらに関する技術としては特開昭57−119341号、同53−106125号、同47−3929号、同48−55730号、同46−5187号、同50−73627号、同57−150841号などが挙げられる。感度差としてはそれぞれの乳剤で0.2logE以上の差を持たせることが好ましい。
【0047】
10)ハロゲン化銀の併用
本発明に用いられる熱現像感光材料中の感光性ハロゲン化銀乳剤は、一種だけでもよいし、二種以上(例えば、平均粒子サイズの異なるもの、ハロゲン組成の異なるもの、晶癖の異なるもの、化学増感の条件の異なるもの)併用してもよい。感度の異なる感光性ハロゲン化銀を複数種用いることで階調を調節することができる。これらに関する技術としては特開昭57−119341号、同53−106125号、同47−3929号、同48−55730号、同46−5187号、同50−73627号、同57−150841号などが挙げられる。感度差としてはそれぞれの乳剤で0.2logE以上の差を持たせることが好ましい。
【0048】
11)ハロゲン化銀と有機銀塩の混合
本発明の感光性ハロゲン化銀の粒子は、非感光性有機銀塩の存在しないところで形成され、化学増感されることが特に好ましい。有機銀塩に対してハロゲン化剤を添加することによってハロゲン化銀を形成する方法では十分な感度が達成できない場合があるからである。
ハロゲン化銀と有機銀塩を混合する方法としては、別々に調製した感光性ハロゲン化銀と有機銀塩を高速撹拌機やボールミル、サンドミル、コロイドミル、振動ミル、ホモジナイザー等で混合する方法や、あるいは有機銀塩の調製中のいずれかのタイミングで調製終了した感光性ハロゲン化銀を混合して有機銀塩を調製する方法等があげられる。いずれの方法でも本発明の効果を好ましく得ることができる。
【0049】
12)ハロゲン化銀の塗布液への混合
本発明のハロゲン化銀の画像形成層塗布液中への好ましい添加時期は、塗布する180分前から直前、好ましくは60分前から10秒前であるが、混合方法及び混合条件については本発明の効果が十分に現れる限りにおいては特に制限はない。具体的な混合方法としては添加流量とコーターへの送液量から計算した平均滞留時間を所望の時間となるようにしたタンクでの混合する方法やN.Harnby、M.F.Edwards、A.W.Nienow著、高橋幸司訳”液体混合技術”(日刊工業新聞社刊、1989年)の第8章等に記載されているスタチックミキサーなどを使用する方法がある。
【0050】
(還元剤の説明)
本発明の熱現像感光材料には有機銀塩のための還元剤である熱現像剤を含むことが好ましい。有機銀塩のための還元剤は、銀イオンを金属銀に還元する任意の物質(好ましくは有機物質)であってよい。このような還元剤の例は、特開平11−65021号の段落番号0043〜0045や、欧州特許公開第0803764A1号の第7ページ第34行〜第18ページ第12行に記載されている。
本発明において、還元剤としてはフェノール性水酸基のオルト位に置換基を有するいわゆるヒンダードフェノール系還元剤あるいはビスフェノール系還元剤が好ましく、下記一般式(R)で表される化合物がより好ましい。
一般式(R)
【0051】
【化1】
Figure 2004101597
【0052】
(一般式(R)において、R11およびR11’は各々独立に炭素数1〜20のアルキル基を表す。R12およびR12’は各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な置換基を表す。Lは−S−基または−CHR13−基を表す。R13は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表す。XおよびX’は各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な基を表す。)
【0053】
一般式(R)について詳細に説明する。
1)R11およびR11
11およびR11’は各々独立に置換または無置換の炭素数1〜20のアルキル基であり、アルキル基の置換基は特に限定されることはないが、好ましくは、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、ホスホリル基、アシル基、カルバモイル基、エステル基、ウレイド基、ウレタン基、ハロゲン原子等があげられる。
【0054】
2)R12およびR12’、XおよびX
12およびR12’は各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な置換基であり、XおよびX’も各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な基を表す。それぞれベンゼン環に置換可能な基としては、好ましくはアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルアミノ基があげられる。
【0055】
3)L
Lは−S−基または−CHR13−基を表す。R13は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表し、アルキル基は置換基を有していてもよい。R13の無置換のアルキル基の具体例はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、ウンデシル基、イソプロピル基、1−エチルペンチル基、2,4,4−トリメチルペンチル基などがあげられる。 アルキル基の置換基の例はR11の置換基と同様で、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、ホスホリル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基などがあげられる。
【0056】
4)好ましい置換基
11およびR11’として好ましくは炭素数3〜15の2級または3級のアルキル基であり、具体的にはイソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、t−アミル基、t−オクチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−メチルシクロプロピル基などがあげられる。R11およびR11’としてより好ましくは炭素数4〜12の3級アルキル基で、その中でもt−ブチル基、t−アミル基、1−メチルシクロヘキシル基が更に好ましく、t−ブチル基が最も好ましい。
【0057】
12およびR12’として好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−アミル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基、ベンジル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基などがあげられる。より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基である。
およびX’は、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基で、より好ましくは水素原子である。
【0058】
Lは好ましくは−CHR13−基である。
13として好ましくは水素原子または炭素数1〜15のアルキル基であり、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、2,4,4−トリメチルペンチル基が好ましい。R13として特に好ましいのは水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基またはイソプロピル基である。
【0059】
13が水素原子である場合、R12およびR12’は好ましくは炭素数2〜5のアルキル基であり、エチル基、プロピル基がより好ましく、エチル基が最も好ましい。
13が炭素数1〜8の1級または2級のアルキル基である場合、R12およびR12’はメチル基が好ましい。R13の炭素数1〜8の1級または2級のアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基がより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基が更に好ましい。
11、R11’、R12およびR12’がいずれもメチル基である場合には、R13は2級のアルキル基であることが好ましい。この場合R13の2級アルキル基としてはイソプロピル基、イソブチル基、1−エチルペンチル基が好ましく、イソプロピル基がより好ましい。
上記還元剤はR11、R11’、R12、R12’およびR13の組み合わせにより、熱現像性、現像銀色調などが異なる。2種以上の還元剤を組み合わせることでこれらを調整することができるため、目的によっては2種以上を組み合わせて使用することが好ましい。
【0060】
以下に本発明の一般式(R)で表される化合物をはじめとする本発明の還元剤の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0061】
【化2】
Figure 2004101597
【0062】
【化3】
Figure 2004101597
【0063】
【化4】
Figure 2004101597
【0064】
上記以外の本発明の好ましい還元剤の例は特開2001−188314号、同2001−209145号、同2001−350235号、同2002−156727号に記載された化合物である。
本発明において還元剤の添加量は0.1〜3.0g/mであることが好ましく、より好ましくは0.2〜1.5g/mで、さらに好ましくは0.3〜1.0g/mである。画像形成層を有する面の銀1モルに対しては5〜50%モル含まれることが好ましく、より好ましくは8〜30モル%であり、10〜20モル%で含まれることがさらに好ましい。還元剤は画像形成層に含有させることが好ましい。
【0065】
還元剤は溶液形態、乳化分散形態、固体微粒子分散物形態など、いかなる方法で塗布液に含有せしめ、感光材料に含有させてもよい。
よく知られている乳化分散法としては、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製する方法が挙げられる。
【0066】
また、固体微粒子分散法としては、還元剤の粉末を水等の適当な溶媒中にボールミル、コロイドミル、振動ボールミル、サンドミル、ジェットミル、ローラーミルあるいは超音波によって分散し、固体分散物を作成する方法が挙げられる。尚、その際に保護コロイド(例えば、ポリビニルアルコール)、界面活性剤(例えばトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム(3つのイソプロピル基の置換位置が異なるものの混合物)などのアニオン性界面活性剤)を用いてもよい。上記ミル類では分散媒体としてジルコニア等のビーズが使われるのが普通であり、これらのビーズから溶出するZr等が分散物中に混入することがある。分散条件にもよるが通常は1ppm〜1000ppmの範囲である。感材中のZrの含有量が銀1g当たり0.5mg以下であれば実用上差し支えない。
水分散物には防腐剤(例えばベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩)を含有させることが好ましい。
特に好ましいのは、還元剤の固体粒子分散法であり、平均粒子サイズ0.01μm〜10μm、好ましくは0.05μm〜5μm、より好ましくは0.1μm〜2μmの微粒子して添加するのが好ましい。本願においては他の固体分散物もこの範囲の粒子サイズに分散して用いるのが好ましい。
【0067】
(有機銀塩の説明)
本発明の一般式(1)で表される還元可能な銀塩について説明する。
一般式(1)
OOC−L−COOM
一般式(1)において、Lはアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、二価の複素環基、−C(=O)−、−O−、−S−、−S(=O)−、−S(=O)−、および−N(R)−から選ばれる二価の基、または、これらの組み合わせによる二価の複合基を表す。
は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、アシル基またはスルホニル基を表す。
およびMは水素原子または対イオンを表す。ただし、MおよびMの少なくとも一方は、銀(I)イオンを表す。
一般式(1)で表される化合物は、更に置換基としてカルボキシル基を有していても良い。
【0068】
一般式(1)において、Lは、好ましくは炭素数1ないし40、更に好ましくは炭素数2ないし30、特に好ましくは、炭素数2ないし24のアルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、トリデカメチレン基、テトラデカメチレン基、ペンタデカメチレン基、ヘキサデカメチレン基、1−メチルエチレン基、1−エチルエチレン基、シクロヘキシルメチレン基など)、炭素数2ないし40、更に好ましくは炭素数2ないし30、特に好ましくは、炭素数2ないし24のアルケニレン基(例えば、ビニレン基、プロペニレン基、ブチレン基、ペンチニレン基、4−メチルペンチニレン基など)、炭素数2ないし40、更に好ましくは炭素数2ないし30、特に好ましくは、炭素数2ないし24のアルキニレン基(例えば、エチニレン基、プロピニレン基、ペンチニレン基など)、炭素数3ないし40、更に好ましくは炭素数5ないし30、特に好ましくは、炭素数5ないし24のシクロアルキレン基(例えば、1,2−シクロプロピレン基、1,3−シクロペンチレン基、1,4−シクロへキシレン基など)、炭素数6ないし40、更に好ましくは炭素数6ないし30、特に好ましくは、炭素数6ないし24のアリーレン基(例えば、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、1,8−ナフチレン基、1,5−ナフチレン基など)、二価の複素環基(2,3−チオフェンジイル基、3,4−チオフェンジイル基、3,4−フランジイル基、2,3−ピロールジイル基、1,3−ピロールジイル基、1,4−イミダゾールジイル基、2,4−イミダゾールジイル基、3,4−ピラゾールジイル基、2,3−ピリジンジイル基、2,4−ピリジンジイル基、2,5−ピリジンジイル基、2,6−ピリジンジイル基、3,4−ピリジンジイル基、3,5−ピリジンジイル基、2,3−ピラジンジイル基、3,6−ピリダジンジイル基、1,2−インドールジイル基、2,8−プリンジイル基、2,4−キノリンジイル基、1,4−フタラジンジイル基、2,7−ナフチリジンジイル基、2,3−キノキサリンジイル基、2,4−キナゾリンジイル基、6,7−プテリジンジイル基、2,9−カルバゾールジイル基、2,7−カルバゾールジイル基、1,2−ピロリジンジイル基、1,3−イミダゾリンジイル基、1,2−ピラゾリジンジイル基、3,5−ピラゾリジンジイル基、1,4−ピペリジンジイル基、2,4−ピペリジンジイル基、1,3−イソインドリンジイル基、3,4−モルホリンジイル基など)、−C(=O)−、−O−、−S−、−S(=O)−、−S(=O)−、および−N(R)−から選ばれる二価の基、または、これらの組み合わせによる二価の複合基を表す。
【0069】
これらの二価の基はさらに置換基を有していても良く、置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、カルバモイル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が例として挙げられる。
カルボキシル基を置換基として有するとき、一般式(I)で表される化合物はさらに、銀イオンなど対イオンとして有していても良い。
【0070】
更に詳しくは、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基〔直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。
それらは、アルキル基(好ましくは炭素数1から30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、イコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2―エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3から30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。〕、アルケニル基〔直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。それらは、アルケニル基(好ましくは炭素数2から30の置換または無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3から30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)を包含するものである。〕、アルキニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル基)、アリール基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル)、ヘテロ環基(好ましくは5または6員の置換もしくは無置換の、芳香族性もしくは非芳香族性のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3から30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3から20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾールー5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシ)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)、アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアニリノ基、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ、例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ、m−(n−オクチルオキシ)フェノキシカルボニルアミノ)、スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ、例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールチオ、例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2から30の置換または無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル)、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、6から30の置換または無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)、アルキル及びアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換または無置換のアルキルスルホニル基、6から30の置換または無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2から30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数4から30の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基、例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−(n−オクチルオキシ)フェニルカルボニル、2―ピリジルカルボニル、2―フリルカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)、カルボキシル基、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイル、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、アリール及びヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3から30の置換もしくは無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)、シリル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)を表わす。
上記の官能基の中で、水素原子を有するものは、これを取り去り更に上記の基で置換されていても良い。そのような官能基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基が挙げられる。その例としては、メチルスルホニルアミノカルボニル、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル、アセチルアミノスルホニル、ベンゾイルアミノスルホニル基が挙げられる。
【0071】
は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、アシル基またはスルホニル基を表す。
におけるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、アシル基またはスルホニル基は、更に置換基を有していてもよく、好ましい置換基としては前述のLの置換基の好ましい例を挙げることができる。
【0072】
として好ましくは、アルキル基(好ましくは炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、t−オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、イコシル、ヘンイコシル、ドコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2―エチルヘキシル、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシルなど)、アリール基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニルなど)、アシル基またはスルホニル基であり、更に好ましくは、アルキル基、アリール基またはアシル基であり、特に好ましくは、アシル基である。
【0073】
が二価の基の組み合わせによる複合置換基を表すとき、複合置換基の例としては、エステル(アルキルオキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、炭酸エステル)、チオカルボン酸エステル、ジチオカルボン酸エステル、アミド(カルバモイル)、尿素置換体(ウレイレン)、チオ尿素置換体、スルホンアミド(スルファモイル)、イミド、ヒドラジン、ヒドラジド(ヒドラジノカルボニル)、アミジン、エーテル、チオエーテル、アシルなどを挙げることが出来る。
これらの基は更に組み合わされていてもよく、置換基を有していても良い。
【0074】
一般式(1)の化合物の好ましい例として、Lが−N(R)−およびアルキレン基の組み合わせによる二価の複合基を少なくとも一つ有する基を表し、Rはアルキル基(好ましくは炭素数1ないし40、更に好ましくは炭素数4ないし30、特に好ましくは炭素数6ないし25)、アルケニル基(好ましくは炭素数2ないし40、更に好ましくは炭素数4ないし30、特に好ましくは炭素数6ないし25)、アルキニル基(好ましくは炭素数2ないし40、更に好ましくは炭素数4ないし30、特に好ましくは炭素数6ないし25)、アリール基(好ましくは炭素数6ないし50、更に好ましくは炭素数6ないし40、特に好ましくは炭素数6ないし30)、アシル基(好ましくは炭素数1ないし40、更に好ましくは炭素数4ないし30、特に好ましくは炭素数6ないし25)またはスルホニル基(好ましくは炭素数1ないし40、更に好ましくは炭素数4ないし30、特に好ましくは炭素数6ないし25)を表すものが挙げられる。
【0075】
が表す−N(R)−およびアルキレン基の組み合わせによる二価の複合基としては、−(CHN(R)−(CH−(n、mは好ましくは1ないし30)、−(CHN(R)−(CHN(R)−(CH−(l、n、mは好ましくは1ないし30)などが挙げられる。
これらのアルキレン基は更に置換基を有していてもよい。
【0076】
一般式(1)の化合物の好ましい例として、Lがアルキレン基(好ましくは炭素数1ないし40、更に好ましくは炭素数4ないし30、特に好ましくは炭素数6ないし25)、アルケニレン基(好ましくは炭素数2ないし40、更に好ましくは炭素数4ないし30、特に好ましくは炭素数6ないし25)、アルキニレン基(好ましくは炭素数2ないし40、更に好ましくは炭素数4ないし30、特に好ましくは炭素数6ないし25)、シクロアルキレン基(好ましくは炭素数3ないし20、更に好ましくは炭素数5ないし20、特に好ましくは炭素数6ないし15)、アリーレン基(好ましくは炭素数6ないし40、更に好ましくは炭素数6ないし30、特に好ましくは炭素数6ないし20)、および二価の複素環基(好ましくは炭素数1ないし30、更に好ましくは炭素数1ないし20、特に好ましくは炭素数2ないし15)から選択される基を少なくとも一つ有する基を表し、かつこれらの基の少なくとも一つが、−NHCO−R基、−CONHR基、−OCOR基、−CO基、−NHSO基、−SONHR基、−SO基、−OSO10基(R〜R10はRと同義である)を置換基として有するものも挙げられる。Lは鎖状であっても、分岐をしていても良い。
【0077】
式(1)の化合物の好ましい例として、Lが少なくとも一つの置換基を有するアルキレン基であるものも挙げられる。
好ましいアルキレン基の置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、−NHCOR基(RはRと同義である)、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が挙げられる。
更に好ましくは、アルキル基(好ましくは炭素数1ないし40、更に好ましくは炭素数4ないし30、特に好ましくは炭素数6ないし25)、アルケニル基(好ましくは炭素数2ないし40、更に好ましくは炭素数4ないし30、特に好ましくは炭素数6ないし25)、アルキニル基(好ましくは炭素数2ないし40、更に好ましくは炭素数4ないし30、特に好ましくは炭素数6ないし25)、アリール基(好ましくは炭素数6ないし40、更に好ましくは炭素数6ないし30、特に好ましくは炭素数6ないし25)、ヘテロ環基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1ないし40、更に好ましくは炭素数4ないし30、特に好ましくは炭素数6ないし25)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6ないし40、更に好ましくは炭素数6ないし30、特に好ましくは炭素数6ないし25)、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2ないし40、更に好ましくは炭素数4ないし30、特に好ましくは炭素数6ないし25)、カルバモイルオキシ基(好ましくは炭素数2ないし40、更に好ましくは炭素数4ないし30、特に好ましくは炭素数6ないし25)、アミノ基(好ましくは炭素数1ないし40、更に好ましくは炭素数4ないし30、特に好ましくは炭素数6ないし25)、−NHCOR基(RはRと同義である)(好ましくは炭素数1ないし40、更に好ましくは炭素数4ないし30、特に好ましくは炭素数6ないし25)、スルファモイルアミノ基(好ましくは炭素数1ないし40、更に好ましくは炭素数4ないし30、特に好ましくは炭素数6ないし25)、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1ないし40、更に好ましくは炭素数4ないし30、特に好ましくは炭素数6ないし25)、スルファモイル基(好ましくは炭素数1ないし40、更に好ましくは炭素数4ないし30、特に好ましくは炭素数6ないし25)、アルキル及びアリールスルホニル基(好ましくは炭素数1ないし40、更に好ましくは炭素数4ないし30、特に好ましくは炭素数6ないし25)、アシル基(好ましくは炭素数1ないし40、更に好ましくは炭素数4ないし30、特に好ましくは炭素数6ないし25)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数6ないし40、更に好ましくは炭素数6ないし30、特に好ましくは炭素数6ないし25)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数1ないし40、更に好ましくは炭素数4ないし30、特に好ましくは炭素数6ないし25)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1ないし40、更に好ましくは炭素数4ないし30、特に好ましくは炭素数6ないし25)が挙げられる。
【0078】
特に好ましくは、アルキル基(好ましくは炭素数1ないし40、更に好ましくは炭素数4ないし30、特に好ましくは炭素数6ないし25)、アルケニル基(好ましくは炭素数2ないし40、更に好ましくは炭素数4ないし30、特に好ましくは炭素数6ないし25)、アルキニル基(好ましくは炭素数2ないし40、更に好ましくは炭素数4ないし30、特に好ましくは炭素数6ないし25)、アリール基(好ましくは炭素数6ないし40、更に好ましくは炭素数6ないし30、特に好ましくは炭素数6ないし25)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1ないし40、更に好ましくは炭素数4ないし30、特に好ましくは炭素数6ないし25)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6ないし40、更に好ましくは炭素数6ないし30、特に好ましくは炭素数6ないし25)、−NHCOR基(RはRと同義である)(好ましくは炭素数1ないし40、更に好ましくは炭素数4ないし30、特に好ましくは炭素数6ないし25)、が挙げられる。
【0079】
一般式(1)の化合物の好ましい例として挙げられる、Lが−C(=O)−、および−O−の組み合わせによる二価の複合基の例としては、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。
【0080】
一般式(1)の化合物の好ましい例として挙げられる、Lが芳香族基を少なくとも一つ有する基であるものが挙げられる。ここで言う芳香族基とはアリール基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリール基、例えば、フェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニルなど)、芳香族複素環基(好ましくは炭素数6から30の5もしくは6員の芳香族複素環基であり、例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリルなど)を表し、これらの基は更に置換基を有してもよい。置換基の例としては、前述のL1が有してもよい置換基を挙げることができる。
【0081】
一般式(1)の化合物は、一般式(1)の化合物の分子量を、一般式(1)の化合物一分子中の銀(I)イオンの個数で割った商が、好ましくは130以上410以下、更に好ましくは160以上380以下である。
【0082】
本発明の式(1)の化合物の遊離カルボン酸の融点は、好ましくは30℃以上200℃以下、更に好ましくは50℃以上180℃以下、特に好ましくは65℃以上150℃以下である。
ここでいう、一般式(1)の化合物の遊離カルボン酸とは、一般式(1)の化合物における全てのカルボキシル基が対イオンと分子間で塩を形成していない形、すなわち、−COOHで表される構造に誘導した化合物をいう。
【0083】
また、本発明の一般式(1)の化合物の相転移温度は好ましくは50℃以上180℃以下、更に好ましくは70℃以上170℃以下、特に好ましくは85℃以上150℃以下である。
【0084】
本発明において、一般式(1)の化合物は全有機銀中の70モル%以上、好ましくは85モル%以上、好ましくは95モル%以上であることが好ましい。
【0085】
本発明の式一般式(1)の化合物は単独で用いても、二種類以上を組み合わせて用いても良い。一般式(1)の化合物を二種類以上組み合わせて用いる化合物は、平面構造式の異なる二種類以上の化合物でもよく、また、幾何異性体、立体異性体、ジアステレオマー、エナンチオマーといった異性体の混合物であっても良い。
【0086】
本発明の一般式(1)で表される化合物は既知のいかなる合成法によって製造しても良く、日本化学会編、実験化学講座第4版、22巻、1−43頁、193−227頁、ならびに、これらに記載された文献を参考にすれば、当業者であれば容易に製造できる。
【0087】
以下に、本発明の一般式(1)で表される化合物の具体例を示すが、本発明の内容はこれにより限定されるものではない。
【0088】
【化5】
Figure 2004101597
【0089】
【化6】
Figure 2004101597
【0090】
【化7】
Figure 2004101597
【0091】
【化8】
Figure 2004101597
【0092】
【化9】
Figure 2004101597
【0093】
【化10】
Figure 2004101597
【0094】
【化11】
Figure 2004101597
【0095】
【化12】
Figure 2004101597
【0096】
【化13】
Figure 2004101597
【0097】
【化14】
Figure 2004101597
【0098】
【化15】
Figure 2004101597
【0099】
【化16】
Figure 2004101597
【0100】
【化17】
Figure 2004101597
【0101】
【化18】
Figure 2004101597
【0102】
【化19】
Figure 2004101597
【0103】
【化20】
Figure 2004101597
【0104】
【化21】
Figure 2004101597
【0105】
【化22】
Figure 2004101597
【0106】
【化23】
Figure 2004101597
【0107】
【化24】
Figure 2004101597
【0108】
【化25】
Figure 2004101597
【0109】
本発明に用いられる還元可能な銀塩の製造及びその分散法は、公知の方法等を適用することができる。例えば上記の特開平10−62899号、欧州特許公開第0803763A1、欧州特許公開第0962812A1号、特開平11−349591号、特開2000−7683号、同2000−72711号、特願平11−348228〜30号、同11−203413号、特願2000−90093号、同2000−195621号、同2000−191226号、同2000−213813号、同2000−214155号、同2000−191226号等を参考にすることができる。
【0110】
なお、還元可能な銀塩の分散時に、感光性銀塩を共存させると、カブリが上昇し、感度が著しく低下するため、分散時には感光性銀塩を実質的に含まないことがより好ましい。
本発明は、分散される水分散液中での感光性銀塩量は、その液中の還元可能な銀塩1molに対し0.1mol%以下であり、積極的な感光性銀塩の添加は行わないものである。
【0111】
本発明において還元可能な銀塩水分散液と感光性銀塩水分散液を混合して感光材料を製造することが可能であるが、還元可能な銀塩と感光性銀塩の混合比率(モル比率)は目的に応じて選べるが、還元可能な銀塩に対する感光性銀塩の割合は1〜30モル%の範囲が好ましく、更に3〜20モル%、特に5〜15モル%の範囲が好ましい。
混合する際に2種以上の還元可能な銀塩水分散液と2種以上の感光性銀塩水分散液を混合することは、写真特性の調節のために好ましく用いられる方法である。
【0112】
本発明の(b)還元可能な銀塩は所望の量で使用できるが、感光性ハロゲン化銀を非感光性有機銀塩の合計の銀量として0.1〜3g/mが好ましく、さらに好ましくは0.5〜1.9g/mである。
【0113】
(現像促進剤の説明)
本発明の熱現像感光材料では、現像促進剤として特開2000−267222号明細書や特開2000−330234号明細書等に記載の一般式(A)で表されるスルホンアミドフェノール系の化合物、特開平2001−92075記載の一般式(II)で表されるヒンダードフェノール系の化合物、特開平10−62895号明細書や特開平11−15116号明細書等に記載の一般式(I)、特開2002−156727号の一般式(D)や特願2001−074278号明細書に記載の一般式(1)で表されるヒドラジン系の化合物、特開2001−264929号明細書に記載されている一般式(2)で表されるフェノール系またはナフトール系の化合物が好ましく用いられる。これらの現像促進剤は還元剤に対して0.1〜20モル%の範囲で使用され、好ましくは0.5〜10モル%の範囲で、より好ましくは1〜5モル%の範囲である。感材への導入方法は還元剤同様の方法があげられるが、特に固体分散物または乳化分散物として添加することが好ましい。乳化分散物として添加する場合、常温で固体である高沸点溶剤と低沸点の補助溶剤を使用して分散した乳化分散物として添加するか、もしくは高沸点溶剤を使用しない所謂オイルレス乳化分散物として添加することが好ましい。
本発明においては上記現像促進剤の中でも、特開2002−156727号明細書に記載の一般式(D)で表されるヒドラジン系の化合物および特開2001−264929号明細書に記載されている一般式(2)で表されるフェノール系またはナフトール系の化合物がより好ましい。
【0114】
本発明の特に好ましい現像促進剤は下記一般式(A−1)および(A−2)で表される化合物である。
一般式(A−1)
Q1−NHNH−Q2
(式中、Q1は炭素原子で−NHNH−Q2と結合する芳香族基、またはヘテロ環基を表し、Q2はカルバモイル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルホニル基、またはスルファモイル基を表す。)
【0115】
一般式(A−1)において、Q1で表される芳香族基またはヘテロ環基としては5〜7員の不飽和環が好ましい。好ましい例としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、1,2,4−トリアジン環、1,3,5−トリアジン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、1,2,3−トリアゾール環、1,2,4−トリアゾール環、テトラゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、1,2,4−チアジアゾール環、1,2,5−チアジアゾール環、1,3,4−オキサジアゾール環、1,2,4−オキサジアゾール環、1,2,5−オキサジアゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、イソチアゾール環、イソオキサゾール環、チオフェン環などが好ましく、さらにこれらの環が互いに縮合した縮合環も好ましい。
【0116】
これらの環は置換基を有していてもよく、2個以上の置換基を有する場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、カルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、カルバモイル基、スルファモイル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、およびアシル基を挙げることができる。これらの置換基が置換可能な基である場合、さらに置換基を有してもよく、好ましい置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、カルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、シアノ基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、およびアシルオキシ基を挙げることができる。
【0117】
Q2で表されるカルバモイル基は、好ましくは炭素数1〜50、より好ましくは炭素数6〜40のカルバモイル基であり、例えば、無置換カルバモイル、メチルカルバモイル、N−エチルカルバモイル、N−プロピルカルバモイル、N−sec−ブチルカルバモイル、N−オクチルカルバモイル、N−シクロヘキシルカルバモイル、N−tert−ブチルカルバモイル、N−ドデシルカルバモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)カルバモイル、N−オクタデシルカルバモイル、N−{3−(2,4−tert−ペンチルフェノキシ)プロピル}カルバモイル、N−(2−ヘキシルデシル)カルバモイル、N−フェニルカルバモイル、N−(4−ドデシルオキシフェニル)カルバモイル、N−(2−クロロ−5−ドデシルオキシカルボニルフェニル)カルバモイル、N−ナフチルカルバモイル、N−3−ピリジルカルバモイル、N−ベンジルカルバモイルが挙げられる。
【0118】
Q2で表されるアシル基は、好ましくは炭素数1〜50、より好ましくは炭素数6〜40のアシル基であり、例えば、ホルミル、アセチル、2−メチルプロパノイル、シクロヘキシルカルボニル、オクタノイル、2−ヘキシルデカノイル、ドデカノイル、クロロアセチル、トリフルオロアセチル、ベンゾイル、4−ドデシルオキシベンゾイル、2−ヒドロキシメチルベンゾイルが挙げられる。Q2で表されるアルコキシカルボニル基は、好ましくは炭素数2〜50、より好ましくは炭素数6〜40のアルコキシカルボニル基であり、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソブチルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、ドデシルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニルが挙げられる。
【0119】
Q2で表されるアリールオキシカルボニル基は、好ましくは炭素数7〜50、より好ましくは炭素数7〜40のアリールオキシカルボニル基で、例えば、フェノキシカルボニル、4−オクチルオキシフェノキシカルボニル、2−ヒドロキシメチルフェノキシカルボニル、4−ドデシルオキシフェノキシカルボニルが挙げられる。Q2で表されるスルホニル基は、好ましくは炭素数1〜50、より好ましくは炭素数6〜40のスルホニル基で、例えば、メチルスルホニル、ブチルスルホニル、オクチルスルホニル、2−ヘキサデシルスルホニル、3−ドデシルオキシプロピルスルホニル、2−オクチルオキシ−5−tert−オクチルフェニルスルホニル、4−ドデシルオキシフェニルスルホニルが挙げられる。
【0120】
Q2で表されるスルファモイル基は、好ましくは炭素数0〜50、より好ましくは炭素数6〜40のスルファモイル基で、例えば、無置換スルファモイル、N−エチルスルファモイル基、N−(2−エチルヘキシル)スルファモイル、N−デシルスルファモイル、N−ヘキサデシルスルファモイル、N−{3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピル}スルファモイル、N−(2−クロロ−5−ドデシルオキシカルボニルフェニル)スルファモイル、N−(2−テトラデシルオキシフェニル)スルファモイルが挙げられる。Q2で表される基は、さらに、置換可能な位置に前記のQ1で表される5〜7員の不飽和環の置換基の例として挙げた基を有していてもよく、2個以上の置換基を有する場合には、それ等の置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0121】
次に、式(A−1)で表される化合物の好ましい範囲について述べる。Q1としては5〜6員の不飽和環が好ましく、ベンゼン環、ピリミジン環、1,2,3−トリアゾール環、1,2,4−トリアゾール環、テトラゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、1,2,4−チアジアゾール環、1,3,4−オキサジアゾール環、1,2,4−オキサジアゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、イソチアゾール環、イソオキサゾール環、およびこれらの環がベンゼン環もしくは不飽和ヘテロ環と縮合した環が更に好ましい。また、Q2はカルバモイル基が好ましく、特に窒素原子上に水素原子を有するカルバモイル基が好ましい。
【0122】
一般式(A−2)
【0123】
【化26】
Figure 2004101597
【0124】
一般式(A−2)においてRはアルキル基、アシル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基を表す。Rは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルオキシ基、炭酸エステル基を表す。R、Rはそれぞれ一般式(A−1)の置換基例で挙げたベンゼン環に置換可能な基を表す。RとRは互いに連結して縮合環を形成してもよい。
は好ましくは炭素数1〜20のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−オクチル基、シクロヘキシル基など)、アシルアミノ基(例えばアセチルアミノ基、ベンソイルアミノ基、メチルウレイド基、4−シアノフェニルウレイド基など)、カルバモイル基(n−ブチルカルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基、2−クロロフェニルカルバモイル基、2,4−ジクロロフェニルカルバモイル基など)でアシルアミノ基(ウレイド基、ウレタン基を含む)がより好ましい。
は好ましくはハロゲン原子(より好ましくは塩素原子、臭素原子)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、ブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−デシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ベンジルオキシ基など)、アリールオキシ基(フェノキシ基、ナフトキシ基など)である。
は好ましくは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基であり、ハロゲン原子がもっとも好ましい。Rは水素原子、アルキル基、アシルアミノ基が好ましく、アルキル基またはアシルアミノ基がより好ましい。これらの好ましい置換基の例はRと同様である。Rがアシルアミノ基である場合RはRと連結してカルボスチリル環を形成することも好ましい。
【0125】
一般式(A−2)においてRとRが互いに連結して縮合環を形成する場合、縮合環としてはナフタレン環が特に好ましい。ナフタレン環には一般式(A−1)で挙げた置換基例と同じ置換基が結合していてもよい。一般式(A−2)がナフトール系の化合物であるとき、Rはカルバモイル基であることが好ましい。その中でもベンゾイル基であることが特に好ましい。Rはアルコキシ基、アリールオキシ基であることが好ましく、アルコキシ基であることが特に好ましい。
【0126】
以下、本発明の現像促進剤の好ましい具体例を挙げる。本発明はこれらに限定されるものではない。
【0127】
【化27】
Figure 2004101597
【0128】
(水素結合性化合物の説明)
本発明における還元剤が芳香族性の水酸基(−OH)またはアミノ基(―NHR、Rは水素原子またはアルキル基)を有する場合、特に前述のビスフェノール類の場合には、これらの基と水素結合を形成することが可能な基を有する非還元性の化合物を併用することが好ましい。
水酸基またはアミノ基と水素結合を形成する基としては、ホスホリル基、スルホキシド基、スルホニル基、カルボニル基、アミド基、エステル基、ウレタン基、ウレイド基、3級アミノ基、含窒素芳香族基などが挙げられる。その中でも好ましいのはホスホリル基、スルホキシド基、アミド基(但し、>N−H基を持たず、>N−Ra(RaはH以外の置換基)のようにブロックされている。)、ウレタン基(但し、>N−H基を持たず、>N−Ra(RaはH以外の置換基)のようにブロックされている。)、ウレイド基(但し、>N−H基を持たず、>N−Ra(RaはH以外の置換基)のようにブロックされている。)を有する化合物である。
本発明で、特に好ましい水素結合性の化合物は下記一般式(D)で表される化合物である。
一般式(D)
【0129】
【化28】
Figure 2004101597
【0130】
一般式(D)においてR21ないしR23は各々独立にアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基またはヘテロ環基を表し、これらの基は無置換であっても置換基を有していてもよい。
21ないしR23が置換基を有する場合の置換基としてはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基、アシル基、アシルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホンアミド基、アシルオキシ基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基、ホスホリル基などがあげられ、置換基として好ましいのはアルキル基またはアリール基でたとえばメチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−オクチル基、フェニル基、4−アルコキシフェニル基、4−アシルオキシフェニル基などがあげられる。
21ないしR23のアルキル基としては具体的にはメチル基、エチル基、ブチル基、オクチル基、ドデシル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−アミル基、t−オクチル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基、ベンジル基、フェネチル基、2−フェノキシプロピル基などがあげられる。
アリール基としてはフェニル基、クレジル基、キシリル基、ナフチル基、4−t−ブチルフェニル基、4−t−オクチルフェニル基、4−アニシジル基、3,5−ジクロロフェニル基などが挙げられる。
アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3,5,5−トリメチルヘキシルオキシ基、ドデシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、4−メチルシクロヘキシルオキシ基、ベンジルオキシ基等が挙げられる。
アリールオキシ基としてはフェノキシ基、クレジルオキシ基、イソプロピルフェノキシ基、4−t−ブチルフェノキシ基、ナフトキシ基、ビフェニルオキシ基等が挙げられる。
アミノ基としてはジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジオクチルアミノ基、N−メチル−N−ヘキシルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ジフェニルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基等が挙げられる。
【0131】
21ないしR23としてはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基が好ましい。本発明の効果の点ではR21ないしR23のうち少なくとも一つ以上がアルキル基またはアリール基であることが好ましく、二つ以上がアルキル基またはアリール基であることがより好ましい。また、安価に入手する事ができるという点ではR21ないしR23が同一の基である場合が好ましい。
以下に本発明における一般式(D)の化合物をはじめとする水素結合性化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0132】
【化29】
Figure 2004101597
【0133】
水素結合性化合物の具体例は上述の他に欧州特許1096310号明細書、特開2002−156727号、特願2001−124796号に記載のものがあげられる。
本発明の一般式(D)の化合物は、還元剤と同様に溶液形態、乳化分散形態、固体分散微粒子分散物形態で塗布液に含有せしめ、感光材料中で使用することができるが、固体分散物として使用することが好ましい。本発明の化合物は、溶液状態でフェノール性水酸基、アミノ基を有する化合物と水素結合性の錯体を形成しており、還元剤と本発明の一般式(D)の化合物との組み合わせによっては錯体として結晶状態で単離することができる。
このようにして単離した結晶粉体を固体分散微粒子分散物として使用することは安定した性能を得る上で特に好ましい。また、還元剤と本発明の一般式(D)の化合物を粉体で混合し、適当な分散剤を使って、サンドグラインダーミル等で分散時に錯形成させる方法も好ましく用いることができる。
本発明の一般式(D)の化合物は還元剤に対して、1〜200モル%の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは10〜150モル%の範囲で、さらに好ましくは20〜100モル%の範囲である。
【0134】
(バインダーの説明)
1)ポリマーの種類
本発明の有機銀塩含有層のバインダーはいかなるポリマーを使用してもよく、好適なバインダーは透明又は半透明で、一般に無色であり、天然樹脂やポリマー及びコポリマー、合成樹脂やポリマー及びコポリマー、その他フィルムを形成する媒体、例えば、ゼラチン類、ゴム類、ポリ(ビニルアルコール)類、ヒドロキシエチルセルロース類、セルロースアセテート類、セルロースアセテートブチレート類、ポリ(ビニルピロリドン)類、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)類、ポリ(メチルメタクリル酸)類、ポリ(塩化ビニル)類、ポリ(メタクリル酸)類、スチレン−無水マレイン酸共重合体類、スチレン−アクリロニトリル共重合体類、スチレン−ブタジエン共重合体類、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)類、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(酢酸ビニル)類、ポリ(オレフィン)類、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類がある。バインダーは水又は有機溶媒またはエマルションから被覆形成してもよい。
【0135】
2)ガラス転移点
本発明では、有機銀塩を含有する層に併用できるバインダーのガラス転移温度は0℃以上80℃以下である(以下、高Tgバインダーということあり)ことが好ましく、10℃〜70℃であることがより好ましく、15℃以上60℃以下であることが更に好ましい。
【0136】
なお、本明細書においてTgは下記の式で計算した。
1/Tg=Σ(Xi/Tgi)
ここでは、ポリマーはi=1からnまでのn個のモノマー成分が共重合しているとする。Xiはi番目のモノマーの重量分率(ΣXi=1)、 Tgiはi番目のモノマーの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度)である。ただしΣはi=1からnまでの和をとる。尚、各モノマーの単独重合体ガラス転移温度の値(Tgi)はPolymer Handbook(3rd Edition)(J.Brandrup, E.H.Immergut著(Wiley−Interscience、1989))の値を採用した。
【0137】
バインダーは必要に応じて2種以上を併用しても良い。また、ガラス転移温度が20℃以上のものとガラス転移温度が20℃未満のものを組み合わせて用いてもよい。Tgの異なるポリマーを2種以上ブレンドして使用する場合には、その重量平均Tgが上記の範囲にはいることが好ましい。
【0138】
3)水性塗布
本発明においては、有機銀塩含有層が溶媒の30質量%以上が水である塗布液を用いて塗布、乾燥して被膜を形成させることが好ましい。
本発明においては、有機銀塩含有層が溶媒の30質量%以上が水である塗布液を用いて塗布し、乾燥して形成される場合に、さらに有機銀塩含有層のバインダーが水系溶媒(水溶媒)に可溶または分散可能である場合に、特に25℃60%RHでの平衡含水率が2質量%以下のポリマーのラテックスからなる場合に性能が向上する。最も好ましい形態は、イオン伝導度が2.5mS/cm以下になるように調製されたものであり、このような調製法としてポリマー合成後分離機能膜を用いて精製処理する方法が挙げられる。
【0139】
ここでいう前記ポリマーが可溶または分散可能である水系溶媒とは、水または水に70質量%以下の水混和性の有機溶媒を混合したものである。水混和性の有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール等のアルコール系、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系、酢酸エチル、ジメチルホルミアミドなどを挙げることができる。
【0140】
また「25℃60%RHにおける平衡含水率」とは、25℃60%RHの雰囲気下で調湿平衡にあるポリマーの重量W1と25℃で絶乾状態にあるポリマーの重量W0を用いて以下のように表すことができる。
25℃60%RHにおける平衡含水率=[(W1−W0)/W0]×100(質量%)
【0141】
含水率の定義と測定法については、例えば高分子工学講座14、高分子材料試験法(高分子学会編、地人書館)を参考にすることができる。
【0142】
本発明のバインダーポリマーの25℃60%RHにおける平衡含水率は2質量%以下であることが好ましいが、より好ましくは0.01質量%以上1.5質量%以下、さらに好ましくは0.02質量%以上1質量%以下が望ましい。
【0143】
本発明においては水系溶媒に分散可能なポリマーが特に好ましい。分散状態の例としては、水不溶な疎水性ポリマーの微粒子が分散しているラテックスやポリマー分子が分子状態またはミセルを形成して分散しているものなどいずれでもよいが、ラテックス分散した粒子がより好ましい。分散粒子の平均粒径は1〜50000nm、好ましくは5〜1000nmの範囲で、より好ましくは10〜500nmの範囲、さらに好ましくは50〜200nmの範囲である。分散粒子の粒径分布に関しては特に制限は無く、広い粒径分布を持つものでも単分散の粒径分布を持つものでもよい。単分散の粒径分布を持つものを2種以上混合して使用することも塗布液の物性を制御する上で好ましい使用法である。
【0144】
本発明において水系溶媒に分散可能なポリマーの好ましい態様としては、アクリル系ポリマー、ポリ(エステル)類、ゴム類(例えばSBR樹脂)、ポリ(ウレタン)類、ポリ(塩化ビニル)類、ポリ(酢酸ビニル)類、ポリ(塩化ビニリデン)類、ポリ(オレフィン)類等の疎水性ポリマーを好ましく用いることができる。これらポリマーとしては直鎖のポリマーでも枝分かれしたポリマーでもまた架橋されたポリマーでもよいし、単一のモノマーが重合したいわゆるホモポリマーでもよいし、2種類以上のモノマーが重合したコポリマーでもよい。コポリマーの場合はランダムコポリマーでも、ブロックコポリマーでもよい。これらポリマーの分子量は数平均分子量で5000〜1000000、好ましくは10000〜200000がよい。分子量が小さすぎるものは画像形成層の力学強度が不十分であり、大きすぎるものは成膜性が悪く好ましくない。また、架橋性のポリマーラッテクスは特に好ましく使用される。
【0145】
4)ラテックスの具体例
好ましいポリマーラテックスの具体例としては以下のものを挙げることができる。以下では原料モノマーを用いて表し、括弧内の数値は質量%、分子量は数平均分子量である。多官能モノマーを使用した場合は架橋構造を作るため分子量の概念が適用できないので架橋性と記載し、分子量の記載を省略した。Tgはガラス転移温度を表す。
【0146】
P−1;−MMA(70)−EA(27)−MAA(3)−のラテックス(分子量37000、Tg61℃)
P−2;−MMA(70)−2EHA(20)−St(5)−AA(5)−のラテックス(分子量40000、Tg59℃)
P−3;−St(50)−Bu(47)−MAA(3)−のラテックス(架橋性、Tg−17℃)
P−4;−St(68)−Bu(29)−AA(3)−のラテックス(架橋性、Tg17℃)
P−5;−St(71)−Bu(26)−AA(3)−のラテックス(架橋性,Tg24℃)
P−6;−St(70)−Bu(27)−IA(3)−のラテックス(架橋性)
P−7;−St(75)−Bu(24)−AA(1)−のラテックス(架橋性、Tg29℃)
P−8;−St(60)−Bu(35)−DVB(3)−MAA(2)−のラテックス(架橋性)
P−9;−St(70)−Bu(25)−DVB(2)−AA(3)−のラテックス(架橋性)
P−10;−VC(50)−MMA(20)−EA(20)−AN(5)−AA(5)−のラテックス(分子量80000)
P−11;−VDC(85)−MMA(5)−EA(5)−MAA(5)−のラテックス(分子量67000)
P−12;−Et(90)−MAA(10)−のラテックス(分子量12000)
P−13;−St(70)−2EHA(27)−AA(3)のラテックス(分子量130000、Tg43℃)
P−14;−MMA(63)−EA(35)− AA(2)のラテックス(分子量33000、Tg47℃)
P−15;−St(70.5)−Bu(26.5)−AA(3)−のラテックス(架橋性,Tg23℃)
P−16;−St(69.5)−Bu(27.5)−AA(3)−のラテックス(架橋性,Tg20.5℃)
【0147】
上記構造の略号は以下のモノマーを表す。MMA;メチルメタクリレート,EA ;エチルアクリレート、MAA;メタクリル酸,2EHA;2−エチルヘキシルアクリレート,St;スチレン,Bu;ブタジエン,AA;アクリル酸,DVB;ジビニルベンゼン,VC;塩化ビニル,AN;アクリロニトリル,VDC;塩化ビニリデン,Et;エチレン,IA;イタコン酸。
【0148】
以上に記載したポリマーラテックスは市販もされていて、以下のようなポリマーが利用できる。アクリル系ポリマーの例としては、セビアンA−4635,4718,4601(以上ダイセル化学工業(株)製)、Nipol Lx811、814、821、820、857(以上日本ゼオン(株)製)など、ポリ(エステル)類の例としては、FINETEX ES650、611、675、850(以上大日本インキ化学(株)製)、WD−size、WMS(以上イーストマンケミカル製)など、ポリ(ウレタン)類の例としては、HYDRAN AP10、20、30、40(以上大日本インキ化学(株)製)など、ゴム類の例としては、LACSTAR 7310K、3307B、4700H、7132C(以 上大日本インキ化学(株)製)、Nipol Lx416、410、438C、2507(以上日本ゼオン(株)製)など、ポリ(塩化ビニル)類の例としては、G351、G576(以上日本ゼオン(株)製)など、ポリ(塩化ビニリデン)類の例としては、L502、L513(以上旭化成工業(株)製)など、ポリ(オレフィン)類の例としては、ケミパールS120、SA100(以上三井石油化学(株)製)などを挙げることができる。
【0149】
これらのポリマーラテックスは単独で用いてもよいし、必要に応じて2種以上ブレンドしてもよい。
【0150】
5)好ましいラテックス
本発明に用いられるポリマーラテックスとしては、特に、スチレン−ブタジエン共重合体のラテックスが好ましい。スチレン−ブタジエン共重合体におけるスチレンのモノマー単位とブタジエンのモノマー単位との重量比は40:60〜95:5であることが好ましい。また、スチレンのモノマー単位とブタジエンのモノマー単位との共重合体に占める割合は60〜99質量%であることが好ましい。また、本発明のポリマーラッテクスはアクリル酸またはメタクリル酸をスチレンとブタジエンの和に対して1〜6質量%含有することが好ましく、より好ましくは2〜5質量%含有する。本発明のポリマーラテックスはアクリル酸を含有することが好ましい。好ましい分子量の範囲は前記と同様である。
【0151】
本発明に用いることが好ましいスチレン−ブタジエン酸共重合体のラテックスとしては、前記のP−3〜P−8,15、市販品であるLACSTAR−3307B、7132C、Nipol Lx416等が挙げられる。
【0152】
6)好ましい塗布溶媒
本発明において感光材料の有機銀塩含有層塗布液の溶媒(ここでは簡単のため、溶媒と分散媒をあわせて溶媒と表す。)は、水を30質量%以上含む水系溶媒が好ましい。水以外の成分としてはメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、酢酸エチルなど任意の水混和性有機溶媒を用いてよい。塗布液の溶媒の水含有率は50質量%以上、より好ましくは70質量%以上が好ましい。好ましい溶媒組成の例を挙げると、水の他、水/メチルアルコール=90/10、水/メチルアルコール=70/30、水/メチルアルコール/ジメチルホルムアミド=80/15/5、水/メチルアルコール/エチルセロソルブ=85/10/5、水/メチルアルコール/イソプロピルアルコール=85/10/5などがある(数値は質量%)。
【0153】
7)併用しても良いポリマー
本発明の感光材料の有機銀塩含有層には必要に応じてゼラチン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどの親水性ポリマーを添加してもよい。これらの親水性ポリマーの添加量は有機銀塩含有層の全バインダーの30質量%以下、より好ましくは20質量%以下が好ましい。
【0154】
本発明の有機銀塩含有層(即ち、画像形成層)は、ポリマーラテックスを用いて形成されたものが好ましい。有機銀塩含有層のバインダーの量は、全バインダー/有機銀塩の重量比が1/10〜10/1、より好ましくは1/3〜5/1の範囲、さらに好ましくは1/1〜3/1の範囲である。
【0155】
また、このような有機銀塩含有層は、通常、感光性銀塩である感光性ハロゲン化銀が含有された感光性層(乳剤層)でもあり、このような場合の、全バインダー/ハロゲン化銀の重量比は400〜5、より好ましくは200〜10の範囲である。
【0156】
本発明の画像形成層の全バインダー量は好ましくは0.2〜30g/m、より好ましくは1〜15g/m、さらに好ましくは2〜10g/mの範囲である。本発明の画像形成層には架橋のための架橋剤、塗布性改良のための界面活性剤などを添加してもよい。
【0157】
(かぶり防止剤の説明)
本発明に用いることのできるカブリ防止剤、安定剤および安定剤前駆体は特開平10−62899号の段落番号0070、欧州特許公開第0803764A1号の第20頁第57行〜第21頁第7行に記載の特許のもの、特開平9−281637号、同9−329864号記載の化合物、米国特許6,083,681号、同6,083,681号、欧州特許1048975号に記載の化合物が挙げられる。また、本発明に好ましく用いられるカブリ防止剤は有機ハロゲン化物であり、これらについては、特開平11−65021号の段落番号0111〜0112に記載の特許に開示されているものが挙げられる。特に特開2000−284399号の式(P)で表される有機ハロゲン化合物、特開平10−339934号の一般式(II)で表される有機ポリハロゲン化合物、特開2001−31644号および特開2001−33911号に記載の有機ポリハロゲン化合物が好ましい。
【0158】
1)ポリハロゲン化合物
以下、本発明で好ましい有機ポリハロゲン化合物について具体的に説明する。
本発明の好ましいポリハロゲン化合物は下記一般式(H)で表される化合物である。
一般式(H)
Q−(Y)n−C(Z)(Z)X
一般式(H)において、Qはアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、Yは2価の連結基を表し、nは0または1を表し、ZおよびZはハロゲン原子を表し、Xは水素原子または電子吸引性基を表す。
一般式(H)においてQは好ましくはアリール基またはヘテロ環基である。
一般式(H)において、Qがヘテロ環基である場合、窒素原子を1ないし2含有する含窒素ヘテロ環基が好ましく、2−ピリジル基、2−キノリル基が特に好ましい。
【0159】
一般式(H)において、Qがアリール基である場合、Qは好ましくはハメットの置換基定数σpが正の値をとる電子吸引性基で置換されたフェニル基を表す。ハメットの置換基定数に関しては、Journal of Medicinal Chemistry,1973,Vol.16,No.11,1207−1216 等を参考にすることができる。このような電子吸引性基としては、例えばハロゲン原子(フッ素原子(σp値:0.06)、塩素原子(σp値:0.23)、臭素原子(σp値:0.23)、ヨウ素原子(σp値:0.18))、トリハロメチル基(トリブロモメチル(σp値:0.29)、トリクロロメチル(σp値:0.33)、トリフルオロメチル(σp値:0.54))、シアノ基(σp値:0.66)、ニトロ基(σp値:0.78)、脂肪族・アリールもしくは複素環スルホニル基(例えば、メタンスルホニル(σp値:0.72))、脂肪族・アリールもしくは複素環アシル基(例えば、アセチル(σp値:0.50)、ベンゾイル(σp値:0.43))、アルキニル基(例えば、C≡CH(σp値:0.23))、脂肪族・アリールもしくは複素環オキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル(σp値:0.45)、フェノキシカルボニル(σp値:0.44))、カルバモイル基(σp値:0.36)、スルファモイル基(σp値:0.57)、スルホキシド基、ヘテロ環基、ホスホリル基等があげられる。σp値としては好ましくは0.2〜2.0の範囲で、より好ましくは0.4から1.0の範囲である。電子吸引性基として特に好ましいのは、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アルキルホスホリル基で、なかでもカルバモイル基が最も好ましい。
Xは、好ましくは電子吸引性基であり、より好ましくはハロゲン原子、脂肪族・アリールもしくは複素環スルホニル基、脂肪族・アリールもしくは複素環アシル基、脂肪族・アリールもしくは複素環オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基であり、特に好ましくはハロゲン原子である。ハロゲン原子の中でも、好ましくは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、更に好ましくは塩素原子、臭素原子であり、特に好ましくは臭素原子である。
Yは好ましくは−C(=O)−、−SO−または−SO −を表し、より好ましくは−C(=O)−、−SO −であり、特に好ましくは−SO −である。nは、0または1を表し、好ましくは1である。
【0160】
以下に本発明の一般式(H)の化合物の具体例を示す。
【0161】
【化30】
Figure 2004101597
【0162】
上記以外の本発明の好ましいポリハロゲン化合物としては特開2001−31644号、同2001−56526号、同2001−209145号に記載の化合物が挙げられる。
本発明の一般式(H)で表される化合物は画像形成層の非感光性銀塩1モルあたり、10−4〜1モルの範囲で使用することが好ましく、より好ましくは10−3〜0.5モルの範囲で、さらに好ましくは1×10−2〜0.2モルの範囲で使用することが好ましい。
本発明において、カブリ防止剤を感光材料に含有せしめる方法としては、前記還元剤の含有方法に記載の方法が挙げられ、有機ポリハロゲン化合物についても固体微粒子分散物で添加することが好ましい。
【0163】
2)その他のかぶり防止剤
その他のカブリ防止剤としては特開平11−65021号段落番号0113の水銀(II)塩、同号段落番号0114の安息香酸類、特開2000−206642号のサリチル酸誘導体、特開2000−221634号の式(S)で表されるホルマリンスカベンジャー化合物、特開平11−352624号の請求項9に係るトリアジン化合物、特開平6−11791号の一般式(III)で表される化合物、4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン等が挙げられる。
【0164】
本発明における熱現像感光材料はカブリ防止を目的としてアゾリウム塩を含有しても良い。アゾリウム塩としては、特開昭59−193447号記載の一般式(XI)で表される化合物、特公昭55−12581号記載の化合物、特開昭60−153039号記載の一般式(II)で表される化合物が挙げられる。アゾリウム塩は感光材料のいかなる部位に添加しても良いが、添加層としては感光性層を有する面の層に添加することが好ましく、有機銀塩含有層に添加することがさらに好ましい。アゾリウム塩の添加時期としては塗布液調製のいかなる工程で行っても良く、有機銀塩含有層に添加する場合は有機銀塩調製時から塗布液調製時のいかなる工程でも良いが有機銀塩調製後から塗布直前が好ましい。アゾリウム塩の添加法としては粉末、溶液、微粒子分散物などいかなる方法で行っても良い。また、増感色素、還元剤、色調剤など他の添加物と混合した溶液として添加しても良い。本発明においてアゾリウム塩の添加量としてはいかなる量でも良いが、銀1モル当たり1×10−6モル以上2モル以下が好ましく、1×10−3モル以上0.5モル以下がさらに好ましい。
【0165】
(その他の添加剤)
1)メルカプト、ジスルフィド、およびチオン類
本発明には現像を抑制あるいは促進させ現像を制御するため、分光増感効率を向上させるため、現像前後の保存性を向上させるためなどにメルカプト化合物、ジスルフィド化合物、チオン化合物を含有させることができ、特開平10−62899号の段落番号0067〜0069、特開平10−186572号の一般式(I)で表される化合物及びその具体例として段落番号0033〜0052、欧州特許公開第0803764A1号の第20ページ第36〜56行に記載されている。その中でも特開平9−297367号、特開平9−304875号、特開2001−100358号、特願2001−104213号、特願2001−104214等に記載されているメルカプト置換複素芳香族化合物が好ましい。
【0166】
2)色調剤
本発明の熱現像感光材料では色調剤の添加が好ましく、色調剤については、特開平10−62899号の段落番号0054〜0055、欧州特許公開第0803764A1号の第21ページ第23〜48行、特開2000−356317号や特開2000−187298号に記載されており、特に、フタラジノン類(フタラジノン、フタラジノン誘導体もしくは金属塩;例えば4−(1−ナフチル)フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメトキシフタラジノンおよび2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオン);フタラジノン類とフタル酸類(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸、フタル酸二アンモニウム、フタル酸ナトリウム、フタル酸カリウムおよびテトラクロロ無水フタル酸)との組合せ;フタラジン類(フタラジン、フタラジン誘導体もしくは金属塩;例えば4−(1−ナフチル)フタラジン、6−イソプロピルフタラジン、6−t−ブチルフラタジン、6−クロロフタラジン、5,7−ジメトキシフタラジンおよび2,3−ジヒドロフタラジン);フタラジン類とフタル酸類との組合せが好ましく、特にフタラジン類とフタル酸類の組合せが好ましい。そのなかでも特に好ましい組み合わせは6−イソプロピルフタラジンとフタル酸または4メチルフタル酸との組み合わせである。
【0167】
3)可塑剤、潤滑剤
本発明の感光性層に用いることのできる可塑剤および潤滑剤については特開平11−65021号段落番号0117、超硬調画像形成のための超硬調化剤やその添加方法や量については、同号段落番号0118、特開平11−223898号段落番号0136〜0193、特開平2000−284399号の式(H)、式(1)〜(3)、式(A)、(B)の化合物、特願平11−91652号記載の一般式(III)〜(V)の化合物(具体的化合物:化21〜化24)、硬調化促進剤については特開平11−65021号段落番号0102、特開平11−223898号段落番号0194〜0195に記載されている。
【0168】
4)染料、顔料
本発明の感光性層には色調改良、レーザー露光時の干渉縞発生防止、イラジエーション防止の観点から各種染料や顔料(例えばC.I.Pigment Blue 60、C.I.Pigment Blue 64、C.I.Pigment Blue 15:6)を用いることができる。これらについてはWO98/36322号、特開平10−268465号、同11−338098号等に詳細に記載されている。
【0169】
5)超硬調化剤
印刷製版用途に適した超硬調画像形成のためには、画像形成層に超硬調化剤を添加することが好ましい。超硬調化剤やその添加方法及び添加量については、同号公報段落番号0118、特開平11−223898号公報段落番号0136〜0193、特願平11−87297号明細書の式(H)、式(1)〜(3)、式(A)、(B)の化合物、特願平11−91652号明細書記載の一般式(III)〜(V)の化合物(具体的化合物:化21〜化24)、硬調化促進剤については特開平11−65021号公報段落番号0102、特開平11−223898号公報段落番号0194〜0195に記載されている。
【0170】
蟻酸や蟻酸塩を強いかぶらせ物質として用いるには、感光性ハロゲン化銀を含有する画像形成層を有する側に銀1モル当たり5ミリモル以下、さらには1ミリモル以下で含有することが好ましい。
【0171】
本発明の熱現像感光材料で超硬調化剤を用いる場合には五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩を併用して用いることが好ましい。五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩としては、メタリン酸(塩)、ピロリン酸(塩)、オルトリン酸(塩)、三リン酸(塩)、四リン酸(塩)、ヘキサメタリン酸(塩)などを挙げることができる。特に好ましく用いられる五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩としては、オルトリン酸(塩)、ヘキサメタリン酸(塩)を挙げることができる。具体的な塩としてはオルトリン酸ナトリウム、オルトリン酸二水素ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸アンモニウムなどがある。
五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩の使用量(感光材料1mあたりの塗布量)は感度やカブリなどの性能に合わせて所望の量でよいが、0.1〜500mg/mが好ましく、0.5〜100mg/mがより好ましい。
本発明の還元剤、水素結合性化合物、現像促進剤およびポリハロゲン化合物は固体分散物として使用することが好ましく、これらの固体分散物の好ましい製造方法は特開2002−55405号に記載されている。
【0172】
(塗布液の調製および塗布)
本発明の画像形成層塗布液の調製温度は30℃以上65℃以下がよく、さらに好ましい温度は35℃以上60℃未満、より好ましい温度は35℃以上55℃以下である。また、ポリマーラテックス添加直後の画像形成層塗布液の温度が30℃以上65℃以下で維持されることが好ましい。
【0173】
(層構成および構成成分)
本発明の画像形成層は、支持体上に一またはそれ以上の層で構成される。一層で構成する場合は有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、還元剤およびバインダーよりなり、必要により色調剤、被覆助剤および他の補助剤などの所望による追加の材料を含む。二層以上で構成する場合は、第1画像形成層(通常は支持体に隣接した層)中に有機銀塩および感光性ハロゲン化銀を含み、第2画像形成層または両層中にいくつかの他の成分を含まなければならない。多色感光性熱現像写真材料の構成は、各色についてこれらの二層の組合せを含んでよく、また、米国特許第4,708,928号に記載されているように単一層内に全ての成分を含んでいてもよい。多染料多色感光性熱現像写真材料の場合、各乳剤層は、一般に、米国特許第4,460,681号に記載されているように、各感光性層の間に官能性もしくは非官能性のバリアー層を使用することにより、互いに区別されて保持される。
本発明の熱現像感光材料は、画像形成層に加えて非感光性層を有することができる。非感光性層は、その配置から(a)画像形成層の上(支持体よりも遠い側)に設けられる表面保護層、(b)複数の画像形成層の間や画像形成層と保護層の間に設けられる中間層、(c)画像形成層と支持体との間に設けられる下塗り層、(d)画像形成層の反対側に設けられるバック層に分類できる。
【0174】
また、光学フィルターとして作用する層を設けることができるが、(a)または(b)の層として設けられる。アンチハレーション層は、(c)または(d)の層として感光材料に設けられる。
【0175】
1)表面保護層
本発明における熱現像感光材料は画像形成層の付着防止などの目的で表面保護層を設けることができる。表面保護層は単層でもよいし、複数層であってもよい。
表面保護層については、特開平11−65021号段落番号0119〜0120、特開2000−171936号に記載されている。
本発明の表面保護層のバインダーとしてはゼラチンが好ましいがポリビニルアルコール(PVA)を用いる若しくは併用することも好ましい。ゼラチンとしてはイナートゼラチン(例えば新田ゼラチン750)、フタル化ゼラチン(例えば新田ゼラチン801)など使用することができる。PVAとしては、特開2000−171936号の段落番号0009〜0020に記載のものがあげられ、完全けん化物のPVA−105、部分けん化物のPVA−205,PVA−335、変性ポリビニルアルコールのMP−203(以上、クラレ(株)製の商品名)などが好ましく挙げられる。保護層(1層当たり)のポリビニルアルコール塗布量(支持体1m当たり)としては0.3〜4.0g/mが好ましく、0.3〜2.0g/mがより好ましい。
【0176】
表面保護層(1層当たり)の全バインダー(水溶性ポリマー及びラテックスポリマーを含む)塗布量(支持体1m当たり)としては0.3〜5.0g/mが好ましく、0.3〜2.0g/mがより好ましい。
【0177】
2)アンチハレーション層
本発明の熱現像感光材料においては、アンチハレーション層を感光性層に対して光源から遠い側に設けることができる。
【0178】
アンチハレーション層については特開平11−65021号段落番号0123〜0124、特開平11−223898号、同9−230531号、同10−36695号、同10−104779号、同11−231457号、同11−352625号、同11−352626号等に記載されている。
アンチハレーション層には、露光波長に吸収を有するアンチハレーション染料を含有する。露光波長が赤外域にある場合には赤外線吸収染料を用いればよく、その場合には可視域に吸収を有しない染料が好ましい。
可視域に吸収を有する染料を用いてハレーション防止を行う場合には、画像形成後には染料の色が実質的に残らないようにすることが好ましく、熱現像の熱により消色する手段を用いることが好ましく、特に非感光性層に熱消色染料と塩基プレカーサーとを添加してアンチハレーション層として機能させることが好ましい。これらの技術については特開平11−231457号等に記載されている。
【0179】
消色染料の添加量は、染料の用途により決定する。一般には、目的とする波長で測定したときの光学濃度(吸光度)が0.1を越える量で使用する。光学濃度は、0.15〜2であることが好ましく0.2〜1であることがより好ましい。このような光学濃度を得るための染料の使用量は、一般に0.001〜1g/m程度である。
【0180】
なお、このように染料を消色すると、熱現像後の光学濃度を0.1以下に低下させることができる。二種類以上の消色染料を、熱消色型記録材料や熱現像感光材料において併用してもよい。同様に、二種類以上の塩基プレカーサーを併用してもよい。
このような消色染料と塩基プレカーサーを用いる熱消色においては、特開平11−352626号に記載のような塩基プレカーサーと混合すると融点を3℃(deg)以上降下させる物質(例えば、ジフェニルスルホン、4−クロロフェニル(フェニル)スルホン)、2−ナフチルベンゾエート等を併用することが熱消色性等の点で好ましい。
【0181】
3)バック層
本発明に適用することのできるバック層については特開平11−65021号段落番号0128〜0130に記載されている。
【0182】
本発明においては、銀色調、画像の経時変化を改良する目的で300〜450nmに吸収極大を有する着色剤を添加することができる。このような着色剤は、特開昭62−210458号、同63−104046号、同63−103235号、同63−208846号、同63−306436号、同63−314535号、特開平01−61745号、特開平2001−100363などに記載されている。
このような着色剤は、通常、0.1mg/m〜1g/mの範囲で添加され、添加する層としては感光性層の反対側に設けられるバック層が好ましい。
また、ベース色調を調整するために580〜680nmに吸収ピークを有する染料を使用することが好ましい。この目的の染料としては短波長側の吸収強度が小さい特開平4−359967、同4−359968記載のアゾメチン系の油溶性染料、特願2002−96797号記載のフタロシアニン系の水溶性染料が好ましい。この目的の染料はいずれの層に添加してもよいが、乳剤面側の非感光層またはバック面側に添加することがより好ましい。
【0183】
本発明における熱現像感光材料は、支持体の一方の側に少なくとも1層のハロゲン化銀乳剤を含む感光性層を有し、他方の側にバック層を有する、いわゆる片面感光材料であることが好ましい。
【0184】
4)マット剤
本発明において、搬送性改良のためにマット剤を添加することが好ましく、マット剤については、特開平11−65021号段落番号0126〜0127に記載されている。マット剤は感光材料1m当たりの塗布量で示した場合、好ましくは1〜400mg/m、より好ましくは5〜300mg/mである。
本発明においてマット剤の形状は定型、不定形のいずれでもよいが好ましくは定型で、球形が好ましく用いられる。平均粒径は0.5〜10μmであることが好ましく、より好ましくは1.0〜8.0μm、さらに好ましくは2.0〜6.0μmの範囲である。また、サイズ分布の変動係数としては50%以下であることが好ましく、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは、30%以下である。ここで変動係数とは(粒径の標準偏差)/(粒径の平均値)×100で表される値である。また、変動係数が小さいマット剤で平均粒径の比が3より大きいものを2種併用することも好ましい。
また、乳剤面のマット度は星屑故障が生じなければいかようでも良いが、ベック平滑度が30秒以上2000秒以下が好ましく、特に40秒以上1500秒以下が好ましい。ベック平滑度は、日本工業規格(JIS)P8119「紙および板紙のベック試験器による平滑度試験方法」およびTAPPI標準法T479により容易に求めることができる。
【0185】
本発明においてバック層のマット度としてはベック平滑度が1200秒以下10秒以上が好ましく、800秒以下20秒以上が好ましく、さらに好ましくは500秒以下40秒以上である。
【0186】
本発明において、マット剤は感光材料の最外表面層もしくは最外表面層として機能する層、あるいは外表面に近い層に含有されるのが好ましく、またいわゆる保護層として作用する層に含有されることが好ましい。
【0187】
5)ポリマーラテックス
特に寸法変化が問題となる印刷用途に本発明の熱現像感光材料を用いる場合には、表面保護層やバック層にポリマーラテックスを用いることが好ましい。このようなポリマーラテックスについては「合成樹脂エマルジョン(奥田平、稲垣寛編集、高分子刊行会発行(1978))」、「合成ラテックスの応用(杉村孝明、片岡靖男、鈴木聡一、笠原啓司編集、高分子刊行会発行(1993))」、「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970))」などにも記載され、具体的にはメチルメタクリレート(33.5質量%)/エチルアクリレート(50質量%)/メタクリル酸(16.5質量%)コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート(47.5質量%)/ブタジエン(47.5質量%)/イタコン酸(5質量%)コポリマーのラテックス、エチルアクリレート/メタクリル酸のコポリマーのラテックス、メチルメタクリレート(58.9質量%)/2−エチルヘキシルアクリレート(25.4質量%)/スチレン(8.6質量%)/2−ヒドロキシエチルメタクリレート(5.1質量%)/アクリル酸(2.0質量%)コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート(64.0質量%)/スチレン(9.0質量%) /ブチルアクリレート(20.0質量%)/2−ヒドロキシエチルメタクリレート(5.0質量%)/アクリル酸(2.0質量%)コポリマーのラテックスなどが挙げられる。さらに、表面保護層用のバインダーとして、特願平11−6872号明細書のポリマーラテックスの組み合わせ、特開2000−267226号明細書の段落番号0021〜0025に記載の技術、特願平11−6872号明細書の段落番号0027〜0028に記載の技術、特開2000−19678号明細書の段落番号0023〜0041に記載の技術を適用してもよい。表面保護層のポリマーラテックスの比率は全バインダーの10質量%以上90質量%以下が好ましく、特に20質量%以上80質量%以下が好ましい。
【0188】
6)膜面pH
本発明の熱現像感光材料は、熱現像処理前の膜面pHが7.0以下であることが好ましく、さらに好ましくは6.6以下である。その下限には特に制限はないが、3程度である。最も好ましいpH範囲は4〜6.2の範囲である。膜面pHの調節はフタル酸誘導体などの有機酸や硫酸などの不揮発性の酸、アンモニアなどの揮発性の塩基を用いることが、膜面pHを低減させるという観点から好ましい。特にアンモニアは揮発しやすく、塗布する工程や熱現像される前に除去できることから低膜面pHを達成する上で好ましい。
また、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、水酸化リチウム等の不揮発性の塩基とアンモニアを併用することも好ましく用いられる。なお、膜面pHの測定方法は、特開2000−284399号明細書の段落番号0123に記載されている。
【0189】
7)硬膜剤
本発明の感光性層、保護層、バック層など各層には硬膜剤を用いても良い。硬膜剤の例としてはT.H.James著“THE THEORY OF THE PHOTOGRAPHIC PROCESS FOURTH EDITION”(Macmillan Publishing Co., Inc.刊、1977年刊)77頁から87頁に記載の各方法があり、クロムみょうばん、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジンナトリウム塩、N,N−エチレンビス(ビニルスルホンアセトアミド)、N,N−プロピレンビス(ビニルスルホンアセトアミド)の他、同書78頁など記載の多価金属イオン、米国特許4,281,060号、特開平6−208193号などのポリイソシアネート類、米国特許4,791,042号などのエポキシ化合物類、特開昭62−89048号などのビニルスルホン系化合物類が好ましく用いられる。
【0190】
硬膜剤は溶液として添加され、この溶液の保護層塗布液中への添加時期は、塗布する180分前から直前、好ましくは60分前から10秒前であるが、混合方法及び混合条件については本発明の効果が十分に現れる限りにおいては特に制限はない。具体的な混合方法としては添加流量とコーターへの送液量から計算した平均滞留時間を所望の時間となるようにしたタンクでの混合する方法やN.Harnby、M.F.Edwards、A.W.Nienow著、高橋幸司訳“液体混合技術”(日刊工業新聞社刊、1989年)の第8章等に記載されているスタチックミキサーなどを使用する方法がある。
【0191】
8)界面活性剤
本発明に適用できる界面活性剤については特開平11−65021号段落番号0132、溶剤については同号段落番号0133、支持体については同号段落番号0134、帯電防止又は導電層については同号段落番号0135、カラー画像を得る方法については同号段落番号0136に、滑り剤については特開平11−84573号段落番号0061〜0064や特願平11−106881号段落番号0049〜0062記載されている。
本発明においてはフッ素系の界面活性剤を使用することが好ましい。フッ素系界面活性剤の具体例は特開平10−197985号、特開2000−19680号、特開2000−214554号等に記載された化合物があげられる。また、特開平9−281636号記載の高分子フッ素系界面活性剤も好ましく用いられる。本発明の熱現像感光材料においては特開2002−82411号、特願2001−242357号および特願2001−264110号記載のフッ素系界面活性剤の使用が好ましい。特に特願2001−242357号および特願2001−264110号記載のフッ素系界面活性剤は水系の塗布液で塗布製造を行う場合、帯電調整能力、塗布面状の安定性、スベリ性の点で好ましく、特願2001−264110号記載のフッ素系界面活性剤は帯電調整能力が高く使用量が少なくてすむという点で最も好ましい。
本発明においてフッ素系界面活性剤は乳剤面、バック面のいずれにも使用することができ、両方の面に使用することが好ましい。また、前述の金属酸化物を含む導電層と組み合わせて使用することが特に好ましい。この場合には導電層を有する面のフッ素系界面活性剤の使用量を低減もしくは除去しても十分な性能が得られる。
フッ素系界面活性剤の好ましい使用量は乳剤面、バック面それぞれに0.1mg/m2〜100mg/m2の範囲で、より好ましくは0.3mg/m2〜30mg/m2の範囲、さらに好ましくは1mg/m2〜10mg/m2の範囲である。特に特願2001−264110号記載のフッ素系界面活性剤は効果が大きく、0.01〜10mg/m2の範囲が好ましく、0.1〜5mg/m2の範囲がより好ましい。
【0192】
9)帯電防止剤
本発明においては金属酸化物あるいは導電性ポリマーを含む導電層を有することが好ましい。帯電防止層は下塗り層、バック層表面保護層などと兼ねてもよく、また別途設けてもよい。帯電防止層の導電性材料は金属酸化物中に酸素欠陥、異種金属原子を導入して導電性を高めた金属酸化物が好ましく用いられる。金属酸化物の例としてはZnO、TiO、SnOが好ましく、ZnOに対してはAl、Inの添加、SnOに対してはSb、Nb、P、ハロゲン元素等の添加、TiOに対してはNb、Ta等の添加が好ましい。特にSbを添加したSnOが好ましい。異種原子の添加量は0.01〜30mol%の範囲が好ましく、0.1から10mol%の範囲がより好ましい。金属酸化物の形状は球状、針状、板状いずれでもよいが、導電性付与の効果の点で長軸/単軸比が2.0以上、好ましくは3.0〜50の針状粒子がよい。金属酸化物の使用量は好ましくは1mg/m〜1000mg/mの範囲で、より好ましくは10mg/m〜500mg/mの範囲、さらに好ましくは20mg/m〜200mg/mの範囲である。本発明の帯電防止層は乳剤面側、バック面側のいずれに設置してもよいが、支持体とバック層との間に設置することが好ましい。本発明の帯電防止層の具体例は特開平11−65021号段落番号0135、特開昭56−143430号、同56−143431号、同58−62646号、同56−120519号、特開平11−84573号の段落番号0040〜0051、米国特許第5,575,957号、特開平11−223898号の段落番号0078〜0084に記載されている。
【0193】
10)支持体
透明支持体は二軸延伸時にフィルム中に残存する内部歪みを緩和させ、熱現像処理中に発生する熱収縮歪みをなくすために、130〜185℃の温度範囲で熱処理を施したポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。医療用の熱現像感光材料の場合、透明支持体は青色染料(例えば、特開平8−240877号実施例記載の染料−1)で着色されていてもよいし、無着色でもよい。支持体には、特開平11−84574号の水溶性ポリエステル、同10−186565号のスチレンブタジエン共重合体、特開2000−39684号や特願平11−106881号段落番号0063〜0080の塩化ビニリデン共重合体などの下塗り技術を適用することが好ましい。
【0194】
11)その他の添加剤
熱現像感光材料には、さらに、酸化防止剤、安定化剤、可塑剤、紫外線吸収剤あるいは被覆助剤を添加してもよい。各種の添加剤は、感光性層あるいは非感光性層のいずれかに添加する。それらについてWO98/36322号、EP803764A1号、特開平10−186567号、同10−18568号等を参考にすることができる。
【0195】
12)塗布方式
本発明における熱現像感光材料はいかなる方法で塗布されても良い。具体的には、エクストルージョンコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティング、浸漬コーティング、ナイフコーティング、フローコーティング、または米国特許第2,681,294号に記載の種類のホッパーを用いる押出コーティングを 含む種々のコーティング操作が用いられ、Stephen F. Kistler、Petert M. Schweizer著“LIQUID FILM COATING”(CHAPMAN & HALL社刊、1997年)399頁から536頁記載のエクストルージョンコーティング、またはスライドコーティング好ましく用いられ、特に好ましくはスライドコーティングが用いられる。スライドコーティングに使用されるスライドコーターの形状の例は同書427頁のFigure 11b.1に ある。また、所望により同書399頁から536頁記載の方法、米国特許第2,761,791 号および英国特許第837,095号に記載の方法により2層またはそれ以上の層を同時に被覆することができる。本発明において特に好ましい塗布方法は特開2001−194748号、同2002−153808号、同2002−153803号、同2002−182333号に記載された方法である。
【0196】
本発明における有機銀塩含有層塗布液は、いわゆるチキソトロピー流体であることが好ましい。この技術については特開平11−52509号を参考にすることができる。本発明における有機銀塩含有層塗布液は剪断速度0.1S−1における粘度は400mPa・s以上100,000 mPa・s以下が好ましく、さらに好ましくは500mPa・s以上20,000 mPa・s以下である。また、剪断速度1000S−1においては1mPa・s以上200 mPa・s以下が好ましく、さらに好ましくは5mPa・s以上80 mPa・s以下である。
【0197】
本発明の塗布液を調合する場合において2種の液を混合する際は公知のインライン混合機、インプラント混合機が好ましく用いられる。本発明の好ましいインライン混合機は特開2002−85948号に、インプラント混合機は特開2002−90940号に記載されている。
本発明における塗布液は塗布面状を良好に保つため脱泡処理をすることが好ましい。本発明の好ましい脱泡処理方法については特開2002−66431号に記載された方法である。
本発明の塗布液を塗布する際には支持体の耐電による塵、ほこり等の付着を防止するために除電を行うことが好ましい。本発明において好ましい除電方法の例は特開2002−143747に記載されている。
本発明においては非セット性の画像形成層塗布液を乾燥するため乾燥風、乾燥温度を精密にコントロールすることが重要である。本発明の好ましい乾燥方法は特開2001−194749号、同2002−139814号に詳しく記載されている。
本発明の熱現像感光材料は成膜性を向上させるために塗布、乾燥直後に加熱処理をすることが好ましい。加熱処理の温度は膜面温度で60℃〜100℃の範囲が好ましく、加熱時間は1秒〜60秒の範囲が好ましい。より好ましい範囲は膜面温度が70〜90℃、加熱時間が2〜10秒の範囲である。本発明の好ましい加熱処理の方法は特開2002−107872号に記載されている。
また、本発明の熱現像感光材料を安定して連続製造するためには特開2002−156728号、同2002−182333号に記載の製造方法が好ましく用いられる。
【0198】
熱現像感光材料は、モノシート型(受像材料のような他のシートを使用せずに、熱現像感光材料上に画像を形成できる型)であることが好ましい。
【0199】
13)包装材料
本発明の感光材料は生保存時の写真性能の変動を押えるため、もしくはカール、巻癖などを改良するために、酸素透過率および/または水分透過率の低い包装材料で包装することが好ましい。酸素透過率は25℃で50ml/atm・m・day以下であることが好ましく、より好ましくは10ml/atm・m・day以下、さらに好ましくは1.0ml/atm・m・day以下である。水分透過率は10g/atm・m・day以下であることが好ましく、より好ましくは5g/atm・m・day以下、さらに好ましくは1g/atm・m・day以下である。
該酸素透過率および/または水分透過率の低い包装材料の具体例としては、たとえば特開平8−254793号。特開2000−206653号明細書に記載されている包装材料である。
【0200】
14)その他の利用できる技術
本発明の熱現像感光材料に用いることのできる技術としては、EP803764A1号、EP883022A1号、WO98/36322号、特開昭56−62648号、同58−62644号、特開平9−43766、同9−281637、同9−297367号、同9−304869号、同9−311405号、同9−329865号、同10−10669号、同10−62899号、同10−69023号、同10−186568号、同10−90823号、同10−171063号、同10−186565号、同10−186567号、同10−186569号〜同10−186572号、同10−197974号、同10−197982号、同10−197983号、同10−197985号〜同10−197987号、同10−207001号、同10−207004号、同10−221807号、同10−282601号、同10−288823号、同10−288824号、同10−307365号、同10−312038号、同10−339934号、同11−7100号、同11−15105号、同11−24200号、同11−24201号、同11−30832号、同11−84574号、同11−65021号、同11−109547号、同11−125880号、同11−129629号、同11−133536号〜同11−133539号、同11−133542号、同11−133543号、同11−223898号、同11−352627号、同11−305377号、同11−305378号、同11−305384号、同11−305380号、同11−316435号、同11−327076号、同11−338096号、同11−338098号、同11−338099号、同11−343420号、特開2000−187298号、同2000−10229号、同2000−47345号、同2000−206642号、同2000−98530号、同2000−98531号、同2000−112059号、同2000−112060号、同2000−112104号、同2000−112064号、同2000−171936号も挙げられる。
【0201】
多色カラー熱現像感光材料の場合、各乳剤層は、一般に、米国特許第4,460,681号に記載されているように、各感光性層の間に官能性もしくは非官能性のバリアー層を使用することにより、互いに区別されて保持される。
多色カラー熱現像感光材料の場合の構成は、各色についてこれらの二層の組合せを含んでよく、また、米国特許第4,708,928号に記載されているように単一層内に全ての成分を含んでいてもよい。
【0202】
(画像形成方法)
1)露光
赤〜赤外発光のHe−Neレーザー、赤色半導体レーザー、あるいは青〜緑発光のAr,He−Ne,He−Cdレーザー、青色半導体レーザーである。好ましくは、赤色〜赤外半導体レーザーであり、レーザー光のピーク波長は、600nm〜900nm、好ましくは620nm〜850nmである。 一方、近年、特に、SHG(Second Harmonic Generator)素子と半導体レーザーを一体化したモジュールや青色半導体レーザーが開発されてきて、短波長領域のレーザー出力装置がクローズアップされてきた。青色半導体レーザーは、高精細の画像記録が可能であること、記録密度の増大、かつ長寿命で安定した出力が得られることから、今後需要が拡大していくことが期待されている。青色レーザー光のピーク波長は、300nm〜500nm、特に400nm〜500nmが好ましい。青色高出力レーザーとしては日亜化学工業(株)のNLHV3000E半導体レーザーを利用することができる。
レーザー光は、高周波重畳などの方法によって縦マルチに発振していることも好ましく用いられる。
【0203】
2)熱現像
本発明の熱現像感光材料はいかなる方法で現像されても良いが、通常イメージワイズに露光した熱現像感光材料を昇温して現像される。好ましい現像温度としては80〜250 ℃であり、好ましくは100〜140℃、さらに好ましくは110〜130℃である。現像時間としては1〜60秒が好ましく、より好ましくは3〜30秒、さらに好ましくは5〜25秒、7〜15秒が特に好ましい。
【0204】
熱現像の方式としてはドラム型ヒーター、プレート型ヒーターのいずれを使用してもよいが、プレート型ヒーター方式がより好ましい。プレート型ヒーター方式による熱現像方式とは特開平11−133572号に記載の方法が好ましく、潜像を形成した熱現像感光材料を熱現像部にて加熱手段に接触させることにより可視像を得る熱現像装置であって、前記加熱手段がプレートヒーターからなり、かつ前記プレートヒーターの一方の面に沿って複数個の押えローラが対向配設され、前記押えローラと前記プレートヒーターとの間に前記熱現像感光材料を通過させて熱現像を行うことを特徴とする熱現像装置である。プレートヒーターを2〜6段に分けて先端部については1〜10℃程度温度を下げることが好ましい。例えば、独立に温度制御できる4組のプレートヒーターを使用し、それぞれ112℃、119℃、121℃、120℃になるように制御する例が挙げられる。このような方法は特開昭54−30032号にも記載されており、熱現像感光材料に含有している水分や有機溶媒を系外に除外させることができ、また、急激に熱現像感光材料が加熱されることでの熱現像感光材料の支持体形状の変化を抑えることもできる。
【0205】
熱現像機の小型化および熱現像時間の短縮のためには、より安定なヒーター制御ができることが好ましく、また、1枚のシート感材を先頭部から露光開始し、後端部まで露光が終わらないうちに熱現像を開始することが望ましい。本発明に好ましい迅速処理ができるイメージャーは例えば特願2001−088832号および同−091114号に記載されている。このイメージャーを使用すれば例えば、107℃−121℃−121℃に制御された3段のプレート型ヒーターで14秒で熱現像処理ができ、1枚目の出力時間は約60秒に短縮することができる。このような迅速現像処理のためには高感度で、環境温度の影響を受けにくい本発明の熱現像感光材料−2を組み合わせて使用することが好ましい。
【0206】
3)システム
露光部及び熱現像部を備えた医療用のレーザーイメージャーとしては富士メディカルドライレーザーイメージャーFM−DP Lを挙げることができる。FM−DP Lに関しては、Fuji Medical Review No.8,page 39〜55に記載されており、それらの技術は本発明の熱現像感光材料のレーザーイメージャーとして適用することは言うまでもない。また、DICOM規格に適応したネットワークシステムとして富士フィルムメディカルシステム(株)が提案した「AD network」のレーザーイメージャー用の熱現像感光材料としても適用することができる。
【0207】
(本発明の用途)
本発明の熱現像感光材料は、銀画像による黒白画像を形成し、医療診断用の熱現像感光材料、工業写真用熱現像感光材料、印刷用熱現像感光材料、COM用の熱現像感光材料として使用されることが好ましい。
【0208】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0209】
実施例1.
1.PET支持体の作成、および下塗り
1−1.製膜
【0210】
テレフタル酸とエチレングリコ−ルを用い、常法に従い固有粘度IV=0.66 (フェノ−ル/テトラクロルエタン=6/4(重量比)中25℃で測定)のPETを得た。これをペレット化した後130℃で4時間乾燥し、300℃で溶融し下記構造の染料BBを0.04wt%含有させた。その後T型ダイから押し出して急冷し、熱固定後の膜厚が175μmになるような厚みの未延伸フィルムを作成した。
【0211】
【化31】
Figure 2004101597
【0212】
これを、周速の異なるロ−ルを用い3.3倍に縦延伸、ついでテンタ−で4.5倍に横延伸を実施した。この時の温度はそれぞれ、110℃、130℃であった。この後、240℃で20秒間熱固定後これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後テンタ−のチャック部をスリットした後、両端にナ−ル加工を行い、4kg/cmで巻き取り、厚み175μmのロ−ルを得た。
【0213】
2)表面コロナ処理
ピラー社製ソリッドステートコロナ処理機6KVAモデルを用い、支持体の両面を室温下において20m/分で処理した。この時の電流、電圧の読み取り値から、支持体には0.375kV・A・分/mの処理がなされていることがわかった。この時の処理周波数は9.6kHz、電極と誘電体ロ−ルのギャップクリアランスは1.6mmであった。
【0214】
3)下塗り
1)下塗層塗布液の作成
処方▲1▼(感光層側下塗り層用)
Figure 2004101597
【0215】
処方▲2▼(バック面第1層用)
Figure 2004101597
【0216】
処方▲3▼(バック面側第2層用)
Figure 2004101597
【0217】
2)下塗り
上記厚さ175μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート支持体の両面それぞれに、上記コロナ放電処理を施した後、片面(感光性層面)に上記下塗り塗布液処方▲1▼をワイヤーバーでウエット塗布量が6.6ml/m(片面当たり)になるように塗布して180 ℃で5分間乾燥し、ついでこの裏面(バック面)に上記下塗り塗布液処方▲2▼をワイヤーバーでウエット塗布量が5.7ml/mになるように塗布して180 ℃で5分間乾燥し、更に裏面(バック面)に上記下塗り塗布液処方▲3▼をワイヤーバーでウエット塗布量が7.7ml/mになるように塗布して180 ℃で6分間乾燥して下塗り支持体を作製した。
【0218】
(バック層)
(ハレーション防止層塗布液の調製)
ゼラチン17g、ポリアクリルアミド9.6g、単分散ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒子サイズ8μm、粒径標準偏差0.4)1.5g、ベンゾイソチアゾリノン0.03g、ポリエチレンスルホン酸ナトリウム2.2g、青色染料化合物−1を0.1g、黄色染料化合物−1を0.1g、水を844ml混合し、ハレーション防止層塗布液を調製した。
【0219】
(バック面保護層塗布液の調製)
容器を40℃に保温し、ゼラチン50g、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム0.2g、N,N−エチレンビス(ビニルスルホンアセトアミド)2.4g、t−オクチルフェノキシエトキシエタンスルホン酸ナトリウム1g、ベンゾイソチアゾリノン30mg、フッ素系界面活性剤(F−1)(2質量%)を5.4ml、フッ素系界面活性剤(F−2)(2質量%)を5.4ml、アクリル酸/エチルアクリレート共重合体(共重合重量比5/95)8.8g、エアロゾールOT(アメリカンサイアナミド社製)0.6g、流動パラフィン乳化物を流動パラフィンとして1.8g、水を950ml混合してバック面保護層塗布液とした。
【0220】
(画像形成層、中間層、および表面保護層)
1.塗布用材料の準備
1)ハロゲン化銀乳剤
(ハロゲン化銀乳剤−1の調製)
蒸留水1420mlに1質量%ヨウ化カリウム溶液4.3mlを加え、さら0.5mol/L濃度の硫酸を3.5ml、フタル化ゼラチン36.7gを添加した液をステンレス製反応壺中で攪拌しながら、35℃に液温を保ち、硝酸銀22.22gに蒸留水を195.6mlに希釈した溶液Aとヨウ化カリウム21.8gを蒸留水にて容量219mlに希釈した溶液Bを一定流量で9分間かけて全量添加した。その後、3.5質量%の過酸化水素水溶液を10ml添加し、さらにベンゾイミダゾールの10質量%水溶液を10.8ml添加した。さらに、硝酸銀51.86gに蒸留水を加えて317.5mlに希釈した溶液Cとヨウ化カリウム60gを蒸留水にて容量600mlに希釈した溶液Dを、溶液Cは一定流量で120分間かけて全量添加し、溶液DはpAgを8.1に維持しながらコントロールドダブルジェット法で添加した。
【0221】
銀1モル当たり1×10−4モルになるよう六塩化イリジウム(III)酸カリウム塩を溶液Cおよび溶液Dを添加しはじめてから10分後に全量添加した。また、溶液Cの添加終了の5秒後に六シアン化鉄(II)カリウム水溶液を銀1モル当たり3×10−4モル全量添加した。0.5mol/L濃度の硫酸を用いてpHを3.8に調整し、攪拌を止め、沈降/脱塩/水洗工程をおこなった。1mol/L濃度の水酸化ナトリウムを用いてpH5.9に調整し、pAg8.0のハロゲン化銀分散物を作成した。調製できたハロゲン化銀乳剤中の粒子は、平均球相当径0.037μm、球相当径の変動係数17%の純ヨウ化銀粒子であった。粒子サイズ等は、電子顕微鏡を用い1000個の粒子の平均から求めた。
【0222】
上記ハロゲン化銀分散物を攪拌しながら38℃に維持して、0.34質量%の1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンのメタノール溶液を5ml加え、40分後に分光増感色素Aと増感色素Bのモル比で1:1のメタノール溶液を銀1モル当たり増感色素AとBの合計として1.2×10−3モル加え、1分後に47℃に昇温した。昇温の20分後にベンゼンチオスルフォン酸ナトリウムをメタノール溶液で銀1モルに対して7.6×10−5モル加え、そのあとpAg5.5に調製したあと5分後にテルル増感剤(ビス(N―フェニル−N―メチルカルバモイル)テルリド)を5.1×10−4モル/モル銀を加えて84分間熟成した。乳剤のpAgを7.5に調製したあと、N,N’−ジヒドロキシ−N”−ジエチルメラミンの0.8質量%メタノール溶液1.3mlを加え、さらに4分後に、5−メチル−2−メルカプトベンヅイミダゾールをメタノール溶液で銀1モル当たり4.8×10−3モル及び1−フェニル−2−ヘプチル−5−メルカプト−1,3,4−トリアゾールをメタノール溶液で銀1モルに対して5.4×10−3モル添加して、ハロゲン化銀乳剤−1を作成した。
【0223】
調製できたハロゲン化銀乳剤中の粒子は、平均球相当径0.040μm、球相当径の変動係数18%の純ヨウ化銀粒子であった。粒子サイズ等は、電子顕微鏡を用い1000個の粒子の平均から求めた。
【0224】
(ハロゲン化銀乳剤−2、−3、−6の調製)
ハロゲン化銀乳剤1の調製と同様にして、但し、添加するハロゲン組成をそれぞれヨウド3.5モル%、30モル%、および95モル%になるようにヨウ化カリウムと臭化カリウムの混合溶液を用いることによって、表2に記載したような均一なハロゲン組成の感光性ハロゲン化銀乳剤―2、−3、−6を調製した。
これらのハロゲン化銀乳剤の粒子サイズは、粒子形成時の温度を調整することにより、平均球相当径0.040μmに調整した。
【0225】
ハロゲン化銀乳剤―2:ヨウド含有量3.5モル%
ハロゲン化銀乳剤―3:ヨウド含有量30モル%
ハロゲン化銀乳剤―6:ヨウド含有量95モル%
【0226】
ハロゲン化銀乳剤―2と−3には直接遷移吸収は観察されなかった。ハロゲン化銀乳剤―6には410nm付近に明瞭な直接遷移吸収が観察された。
【0227】
(ハロゲン化銀乳剤−4の調製)
蒸留水1421mlに1質量%臭化カリウム溶液3.1mlを加え、さらに0.5mol/L濃度の硫酸を3.5ml、フタル化ゼラチン31.7gを添加した液をステンレス製反応壺中で攪拌しながら、30℃に液温を保ち、硝酸銀22.22gに蒸留水を加え95.4mlに希釈した溶液Aと臭化カリウム15.3gとヨウ化カリウム0.8gを蒸留水にて容量97.4mlに希釈した溶液Bを一定流量で45秒間かけて全量添加した。
【0228】
その後、3.5質量%の過酸化水素水溶液を10ml添加し、さらにベンゾイミダゾールの10質量%水溶液を10.8ml添加した。さらに、硝酸銀30.64gに蒸留水を加えて187.6mlに希釈した溶液Cと臭化カリウム21.5gを蒸留水にて容量400mlに希釈した溶液Dを、溶液Cは一定流量で12分間かけて全量添加し、溶液DはpAgを8.1に維持しながらコントロールドダブルジェット法で添加した。その後、硝酸銀22.2gに蒸留水130mlを加えた溶液Eと、ヨウ化カリウム21.7gを蒸留水にて容量217mlに希釈した溶液FとをpAg6.3に維持しながらコノトールドダブルジェット法で添加した。銀1モル当たり1×10−4モルになるよう六塩化イリジウム(III)酸カリウム塩を溶液Cおよび溶液Dを添加しはじめてから10分後に全量添加した。また、溶液Cの添加終了の5秒後に六シアン化鉄(II)カリウム水溶液を銀1モル当たり3×10−4モル全量添加した。
0.5mol/L濃度の硫酸を用いてpHを3.8に調整し、攪拌を止め、沈降/脱塩/水洗工程をおこなった。1mol/L濃度の水酸化ナトリウムを用いてpH5.9に調整し、pAg8.0のハロゲン化銀分散物を作成した。
【0229】
上記ハロゲン化銀分散物を攪拌しながら38℃に維持して、0.34質量%の1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンのメタノール溶液を5ml加え、40分後に47℃に昇温した。昇温の20分後にベンゼンチオスルホン酸ナトリウムをメタノール溶液で銀1モルに対して7.6×10−5モル加え、さらに5分後にテルル増感剤Cをメタノール溶液で銀1モル当たり2.9×10−4モル加えて91分間熟成した。
その後、N,N’−ジヒドロキシ−N”−ジエチルメラミンの0.8質量%メタノール溶液1.3mlを加え、さらに4分後に、5−メチル−2−メルカプトベンゾイミダゾールをメタノール溶液で銀1モル当たり4.8×10−3モル、1−フェニル−2−ヘプチル−5−メルカプト−1,3,4−トリアゾールをメタノール溶液で銀1モルに対して5.4×10−3モル添加して、ハロゲン化銀乳剤−4を作成した。
【0230】
ハロゲン化銀粒子は、平均球相当径0.040μm、球相当径の変動係数20%の臭化銀相70モル%にヨウ化銀相30モル%が接合した粒子であった。また、ハロゲン化銀乳剤−4は、直接遷移による光吸収を明瞭に有していた。
【0231】
(ハロゲン化銀乳剤−5の調製)
蒸留水1421mlに1質量%臭化カリウム溶液3.1mlを加え、さらに0.5mol/L濃度の硫酸を3.5ml、フタル化ゼラチン31.7gを添加した液をステンレス製反応壺中で攪拌しながら、30℃に液温を保ち、硝酸銀22.22gに蒸留水を加え95.4mlに希釈した溶液Aと臭化カリウム15.3gとヨウ化カリウム0.8gを蒸留水にて容量97.4mlに希釈した溶液Bを一定流量で45秒間かけて全量添加した。その後、3.5質量%の過酸化水素水溶液を10ml添加し、さらにベンゾイミダゾールの10質量%水溶液を10.8ml添加した。
【0232】
さらに、硝酸銀51.86gに蒸留水を加えて317.5mlに希釈した溶液Cと臭化カリウム60gを蒸留水にて容量600mlに希釈した溶液Dを、溶液Cは一定流量で120分間かけて全量添加し、溶液DはpAgを6.3に維持しながらコントロールドダブルジェット法で添加した。
銀1モル当たり1×10−4モルになるよう六塩化イリジウム(III)酸カリウム塩を溶液Cおよび溶液Dを添加しはじめてから10分後に全量添加した。また、溶液Cの添加終了の5秒後に六シアン化鉄(II)カリウム水溶液を銀1モル当たり3×10−4モル全量添加した。
0.5mol/L濃度の硫酸を用いてpHを3.8に調整し、攪拌を止め、沈降/脱塩/水洗工程をおこなった。1mol/L濃度の水酸化ナトリウムを用いてpH5.9に調整し、pAg8.0のハロゲン化銀分散物を作成した。
【0233】
以降はハロゲン化銀乳剤―4の調製と同様にしてハロゲン化銀乳剤−5を作成した。
【0234】
調製できたハロゲン化銀乳剤中の粒子は、平均球相当径0.040μm、球相当径の変動係数10%の臭化銀相30モル%にヨウ化銀相70モル%が接合した粒子であった。ハロゲン化銀乳剤−5は、直接遷移による光吸収を明瞭に有していた。
【0235】
2)非感光性有機銀塩分散物の調製
(有機銀塩分散物Aの調製)
COGNIS DEUTSCHLAND GmbH製ベヘン酸(製品名EDENOR C22−85JP GW)87.6kg、蒸留水423L、5mol/L濃度のNaOH水溶液49.2L、tert−ブタノール120Lを混合し、75℃にて1時間攪拌し反応させ、ベヘン酸ナトリウム溶液を得た。別に、硝酸銀40.4kgの水溶液206.2L(pH4.0)を用意し、10℃にて保温した。635Lの蒸留水と30Lのtert−ブタノールを入れた反応容器を30℃に保温し、十分に撹拌しながら先のベヘン酸ナトリウム溶液の全量と硝酸銀水溶液の全量を流量一定でそれぞれ93分15秒と90分かけて添加した。
このとき、硝酸銀水溶液添加開始後11分間は硝酸銀水溶液のみが添加されるようにし、そのあとベヘン酸ナトリウム溶液を添加開始し、硝酸銀水溶液の添加終了後14分15秒間はベヘン酸ナトリウム溶液のみが添加されるようにした。このとき、反応容器内の温度は30℃とし、液温度が一定になるように外温コントロールした。また、ベヘン酸ナトリウム溶液の添加系の配管は、2重管の外側に温水を循環させる事により保温し、添加ノズル先端の出口の液温度が75℃になるよう調製した。また、硝酸銀水溶液の添加系の配管は、2重管の外側に冷水を循環させることにより保温した。ベヘン酸ナトリウム溶液の添加位置と硝酸銀水溶液の添加位置は撹拌軸を中心として対称的な配置とし、また反応液に接触しないような高さに調製した。
【0236】
ベヘン酸ナトリウム溶液を添加終了後、そのままの温度で20分間撹拌放置し、30分かけて35℃に昇温し、その後210分熟成を行った。熟成終了後直ちに、遠心濾過で固形分を濾別し、固形分を濾過水の伝導度が30μS/cmになるまで水洗した。
その際、電導度低下を促す為に、ウエットケーキに純水を加えスラリー状にする操作を3回実施した。得られた脂肪酸銀のウエットケーキを遠心力Gが700の状態で1時間振り切った。尚Gは、1.119×10−5×容器の半径(cm)×回転数(rpm)であらわされる。
この様にして得られた脂肪酸銀ウエットケーキの固形分含量(ウエットケーキ1gを110℃で2h乾燥して測定する)は44%であった。
【0237】
得られたベヘン酸銀粒子の形態を電子顕微鏡撮影により評価したところ、平均値でa=0.14μm、b=0.4μm、c=0.6μm、平均アスペクト比5.2、平均球相当径0.52μm、球相当径の変動係数15%のりん片状の結晶であった。(a,b,cは本文の規定)
【0238】
乾燥固形分260kg相当のウエットケーキに対し、ポリビニルアルコール(商品名:PVA−217)19.3kgおよび水を添加し、全体量を1000kgとしてからディゾルバー羽根でスラリー化し、更にパイプラインミキサー(みづほ工業製:PM−10型)で予備分散した。
【0239】
次に予備分散済みの原液を分散機(商品名:マイクロフルイダイザーM−610、マイクロフルイデックス・インターナショナル・コーポレーション製、Z型インタラクションチャンバー使用)の圧力を1260kg/cmに調節して、三回処理し、ベヘン酸銀分散物を得た。冷却操作は蛇管式熱交換器をインタラクションチャンバーの前後に各々装着し、冷媒の温度を調節することで18℃の分散温度に設定した。
【0240】
(有機銀塩分散物B〜Nの調製)
有機銀塩分散物Aの調製と同様に、COGNIS DEUTSCHLAND GmbH製ベヘン酸(製品名EDENOR C22−85JP GW)の代わりにカルボキシル基として等モル量の本発明の一般式(1)の化合物(表1に記載)を、蒸留水423L、5mol/L濃度のNaOH水溶液49.2L、tert−ブタノール120Lを混合し、75℃にて1時間攪拌し反応させ、ナトリウム塩溶液を得た。別に、硝酸銀40.4kgの水溶液206.2L(pH4.0)を用意し、10℃℃にて保温した。635Lの蒸留水と30Lのtert−ブタノールを入れた反応容器を30℃に保温し、十分に撹拌しながら先のナトリウム塩溶液の全量と硝酸銀水溶液の全量を流量一定でそれぞれ93分15秒と90分かけて添加した。このとき、硝酸銀水溶液添加開始後11分間は硝酸銀水溶液のみが添加されるようにし、そのあとナトリウム塩溶液を添加開始し、硝酸銀水溶液の添加終了後14分15秒間はナトリウム塩溶液のみが添加されるようにした。このとき、反応容器内の温度は30℃とし、液温度が一定になるように外温コントロールした。
また、ナトリウム塩溶液の添加系の配管は、2重管の外側に温水を循環させる事により保温し、添加ノズル先端の出口の液温度が75℃になるよう調製した。また、硝酸銀水溶液の添加系の配管は、2重管の外側に冷水を循環させることにより保温した。ナトリウム塩溶液の添加位置と硝酸銀水溶液の添加位置は撹拌軸を中心として対称的な配置とし、また反応液に接触しないような高さに調製した。
【0241】
ナトリウム塩溶液を添加終了後、そのままの温度で20分間撹拌放置し、30分かけて35℃に昇温し、その後210分熟成を行った。熟成終了後直ちに、遠心濾過で固形分を濾別し、固形分を濾過水の伝導度が30μS/cmになるまで水洗した。
その際、電導度低下を促す為に、ウエットケーキに純水を加えスラリー状にする操作を3回実施した。得られた脂肪酸銀のウエットケーキを遠心力Gが700の状態で1時間振り切った。尚Gは、1.119×10−5×容器の半径(cm)×回転数(rpm)であらわされる。
【0242】
有機銀塩分散物Aと同じ銀含有率になるために必要な量のウエットケーキに対し、ポリビニルアルコール(商品名:PVA−217)19.3kgおよび水を添加し、全体量を1000kgとしてからディゾルバー羽根でスラリー化し、更にパイプラインミキサー(みづほ工業製:PM−10型)で予備分散した。
【0243】
次に予備分散済みの原液を分散機(商品名:マイクロフルイダイザーM−610、マイクロフルイデックス・インターナショナル・コーポレーション製、Z型インタラクションチャンバー使用)の圧力を1260kg/cmに調節して、三回処理し、ベヘン酸銀分散物を得た。冷却操作は蛇管式熱交換器をインタラクションチャンバーの前後に各々装着し、冷媒の温度を調節することで18℃の分散温度に設定した。
【0244】
【表1】
Figure 2004101597
【0245】
3)還元剤分散物の調製
(還元剤−1分散物の調製)
還元剤―1(2,2’−メチレンビス−(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール))10Kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の10質量%水溶液16Kgに、水10Kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて3時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて還元剤の濃度が25質量%になるように調製した。この分散液を60℃で5時間加熱処理し、還元剤―1分散物を得た。こうして得た還元剤分散物に含まれる還元剤粒子はメジアン径0.40μm、最大粒子径1.4μm以下であった。得られた還元剤分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0246】
(還元剤−2分散物の調製)
還元剤―1(6,6’−ジ−t−ブチル−4,4’−ジメチル−2,2’−ブチリデンジフェノール)10Kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の10質量%水溶液16Kgに、水10Kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて3時間30分分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて還元剤の濃度が25質量%になるように調製した。この分散液を40℃で1時間加熱した後、引き続いてさらに80℃で1時間加熱処理し、還元剤―2分散物を得た。こうして得た還元剤分散物に含まれる還元剤粒子はメジアン径0.50μm、最大粒子径1.6μm以下であった。得られた還元剤分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0247】
4)水素結合性化合物−1分散物の調製
水素結合性化合物−1(トリ(4−t−ブチルフェニル)ホスフィンオキシド)10Kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の10質量%水溶液16Kgに、水10Kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて4時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて水素結合性化合物の濃度が25質量%になるように調製した。この分散液を40℃で1時間加熱した後、引き続いてさらに80℃で1時間加温し、水素結合性化合物―1分散物を得た。こうして得た水素結合性化合物分散物に含まれる水素結合性化合物粒子はメジアン径0.45μm、最大粒子径1.3μm以下であった。得られた水素結合性化合物分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0248】
5)現像促進剤−1分散物の調製
現像促進剤−1を10Kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の10質量%水溶液20Kgに、水10Kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて3時間30分分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて現像促進剤の濃度が20質量%になるように調製し、現像促進剤−1分散物を得た。こうして得た現像促進剤分散物に含まれる現像促進剤粒子はメジアン径0.48μm、最大粒子径1.4μm以下であった。得られた現像促進剤分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。現像促進剤−2および色調調整剤−1の固体分散物についても現像促進剤−1と同様の方法により分散し、それぞれ20質量%、15質量%の分散液を得た。
【0249】
6)ポリハロゲン化合物の調製
(有機ポリハロゲン化合物−1分散物の調製)
有機ポリハロゲン化合物―1(トリブロモメタンスルホニルベンゼン)10Kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製ポバールMP203)の20質量%水溶液10Kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液0.4Kgと、水14Kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて5時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて有機ポリハロゲン化合物の濃度が26質量%になるように調製し、有機ポリハロゲン化合物―1分散物を得た。こうして得たポリハロゲン化合物分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.41μm、最大粒子径2.0μm以下であった。得られた有機ポリハロゲン化合物分散物は孔径10.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0250】
(有機ポリハロゲン化合物−2分散物の調製)
有機ポリハロゲン化合物―2(N−ブチル−3−トリブロモメタンスルホニルベンゾアミド)10Kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製ポバールMP203)の10質量%水溶液20Kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液0.4Kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて5時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて有機ポリハロゲン化合物の濃度が30質量%になるように調製した。この分散液を40℃で5時間加温し、有機ポリハロゲン化合物―2分散物を得た。こうして得たポリハロゲン化合物分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.40μm、最大粒子径1.3μm以下であった。得られた有機ポリハロゲン化合物分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0251】
7)フタラジン化合物−1溶液の調製
8Kgのクラレ(株)製変性ポリビニルアルコールMP203を水174.57Kgに溶解し、次いでトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液3.15Kgとフタラジン化合物―1(6−イソプロピルフタラジン)の70質量%水溶液14.28Kgを添加し、フタラジン化合物―1の5質量%溶液を調製した。
【0252】
8)メルカプト化合物の調製)
(メルカプト化合物−1水溶液の調製)
メルカプト化合物―1(1−(3−スルホフェニル)−5−メルカプトテトラゾールナトリウム塩)7gを水993gに溶解し、0.7質量%の水溶液とした。
【0253】
(メルカプト化合物−2水溶液の調製)
メルカプト化合物―2(1−(3−メチルウレイド)−5−メルカプトテトラゾールナトリウム塩)20gを水980gに溶解し、2.0質量%の水溶液とした。
【0254】
9)SBRラテックス液の調製
SBRラテックスは以下により調整した。
ガスモノマー反応装置(耐圧硝子工業(株)製TAS−2J型)の重合釜に、蒸留水287g、界面活性剤(パイオニンA−43−S(竹本油脂(株)製):固形分48.5%)7.73g、1mol/リットルNaOH14.06ml、エチレンジアミン4酢酸4ナトリウム塩0.15g、スチレン255g、アクリル酸11.25g、tert−ドデシルメルカプタン3.0gを入れ、反応容器を密閉し撹拌速度200rpmで撹拌した。真空ポンプで脱気し窒素ガス置換を数回繰返した後に、1,3−ブタジエン108.75gを圧入して内温60℃まで昇温した。ここに過硫酸アンモニウム1.875gを水50mlに溶解した液を添加し、そのまま5時間撹拌した。さらに90℃に昇温して3時間撹拌し、反応終了後内温が室温になるまで下げた後、1mol/リットルのNaOHとNHOHを用いてNa+イオン:NH+イオン=1:5.3(モル比)になるように添加処理し、pH8.4に調整した。その後、孔径1.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納し、SBRラテックスを774.7g得た。イオンクロマトグラフィーによりハロゲンイオンを測定したところ、塩化物イオン濃度3ppmであった。高速液体クロマトグラフィーによりキレート剤の濃度を測定した結果、145ppmであった。
【0255】
上記ラテックスは平均粒径90nm、Tg=17℃、固形分濃度44質量%、25℃60%RHにおける平衡含水率0.6質量%、イオン伝導度4.80mS/cm(イオン伝導度の測定は東亜電波工業(株)製伝導度計CM−30S使用し、ラテックス原液(44質量%)を25℃にて測定)であった。
Tgの異なるSBRラテックスはスチレン、ブタジエンの比率を適宜変更し、同様の方法により調整できる。
【0256】
2.塗布液の調整
1)画像形成層塗布液1〜18の調製
上記で得た還元可能な銀塩分散物A〜Nそれぞれ1024g、水276ml、有機ポリハロゲン化合物−1分散物21g、有機ポリハロゲン化合物−2分散物58g、フタラジン化合物―1溶液173g、SBRラテックス(Tg:17℃)液1082g、還元剤−1分散物299g、現像促進剤−1分散物5.7g、メルカプト化合物−1水溶液9ml、メルカプト化合物−2水溶液27mlを順次添加し、塗布直前にハロゲン化銀乳剤−1〜6をそれぞれ133ml添加し、良く混合した画像形成層塗布液をそのままコーティングダイへ送液し、塗布した。
【0257】
塗布液中のジルコニウム量は銀1gあたり0.32mgであった。
【0258】
2)画像形成層塗布液−19〜38の調製
上記で得た還元可能な銀塩分散物A、B、E、およびLをそれぞれ1024g、水276ml、有機ポリハロゲン化合物−1分散物32g、有機ポリハロゲン化合物−2分散物46g、フタラジン化合物―1溶液171g、SBRラテックス(Tg:17℃)液1082g、還元剤−2分散物153g、水素結合性化合物−1分散物55g、現像促進剤−1分散物4.8g、現像促進剤−2分散物5.2g、色調調整剤−1分散物2.1g、メルカプト化合物−2水溶液8mlを順次添加し、塗布直前にハロゲン化銀乳剤−1、3,4,5,6をそれぞれ133ml添加し、良く混合した画像形成層塗布液をそのままコーティングダイへ送液し、塗布した。
【0259】
塗布液中のジルコニウム量は銀1gあたり0.25mgであった。
【0260】
3)乳剤面中間層塗布液の調製
ポリビニルアルコールPVA−205(クラレ(株)製)1000g、青色染料化合物−1(日本化薬(株)製:カヤフェクトターコイズRNリキッド150)水溶液33g、スルホコハク酸ジ(2−エチルヘキシル)ナトリウム塩5%水溶液27ml、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合重量比57/8/28/5/2)ラテックス19質量%液4200mlにエアロゾールOT(アメリカンサイアナミド社製)の5質量%水溶液を27ml、フタル酸二アンモニウム塩の20質量%水溶液を135ml、総量10000gになるように水を加え、pHが7.5になるようにNaOHで調整して中間層塗布液とし、8.9ml/mになるようにコーティングダイへ送液した。
塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター、60rpm)で58[mPa・s]であった。
【0261】
4)乳剤面保護層第1層塗布液の調製
イナートゼラチン100g、ベンゾイソチアゾリノン10mgを水840mlに溶解し、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合重量比57/8/28/5/2)ラテックス19質量%液180g、フタル酸の15質量%メタノール溶液を46ml、スルホコハク酸ジ(2−エチルヘキシル)ナトリウム塩の5質量%水溶液を5.4mlを加えて混合し、塗布直前に4質量%のクロムみょうばん40mlをスタチックミキサーで混合したものを塗布液量が26.1ml/mになるようにコーティングダイへ送液した。
塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター、60rpm)で20[mPa・s]であった。
【0262】
5)乳剤面保護層第2層塗布液の調製
イナートゼラチン100g、ベンゾイソチアゾリノン10mgを水800mlに溶解し、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合重量比57/8/28/5/2)ラテックス19質量%液180g、フタル酸15質量%メタノール溶液40ml、フッ素系界面活性剤(F−1)の1質量%溶液を5.5ml、フッ素系界面活性剤(F−2)の1質量%水溶液を5.5ml、スルホコハク酸ジ(2−エチルヘキシル)ナトリウム塩の5質量%水溶液を28ml、ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒径0.7μm)4g、ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒径4.5μm)21gを混合したものを表面保護層塗布液とし、8.3ml/mになるようにコーティングダイへ送液した。
塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター,60rpm)で19[mPa・s]であった。
【0263】
3.熱現像感光材料‐1〜18の作製
1)熱現像感光材料−1の作成
上記下塗り支持体のバック面側に、アンチハレーション層塗布液をゼラチン塗布量が0.44g/mとなるように、またバック面保護層塗布液をゼラチン塗布量が1.7g/mとなるように同時重層塗布し、乾燥し、バック層を作成した。
【0264】
バック面と反対の面に下塗り面から画像形成層、中間層、保護層第1層、保護層第2層の順番でスライドビード塗布方式にて同時重層塗布し、熱現像感光材料の試料を作成した。このとき、画像形成層と中間層は31℃に、保護層第一層は36℃に、保護層第二層は37℃に温度調整した。
画像形成層の各化合物の塗布量(g/m)は以下の通りである。
【0265】
還元可能な銀塩(銀量として)                            1.60
ポリハロゲン化合物−1                                  0.12
ポリハロゲン化合物−2                                  0.37
フタラジン化合物−1                                    0.19
SBRラテックス                                        9.98
還元剤錯体−1                                          1.41
現像促進剤−1                                          0.025
メルカプト化合物−1                                    0.002
メルカプト化合物−2                                    0.012
ハロゲン化銀(銀量として)                              0.091
【0266】
塗布乾燥条件は以下のとおりである。
塗布はスピード160m/minで行い、コーティングダイ先端と支持体との間隙を0.10〜0.30mmとし、減圧室の圧力を大気圧に対して196〜882Pa低く設定した。支持体は塗布前にイオン風にて除電した。
引き続くチリングゾーンにて、乾球温度10〜20℃の風にて塗布液を冷却した後、無接触型搬送して、つるまき式無接触型乾燥装置にて、乾球温度23〜45℃、湿球温度15〜21℃の乾燥風で乾燥させた。
乾燥後、25℃で湿度40〜60%RHで調湿した後、膜面を70〜90℃になるように加熱した。加熱後、膜面を25℃まで冷却した。
【0267】
2)熱現像感光材料−19〜38の作成
熱現像感光材料−1〜18に対して、画像形成層塗布液を画像形成層塗布液−19〜38に変更し、さらにハレーション防止層から黄色染料化合物―1を除き、バック面保護層および表面保護層のフッ素系界面活性剤のF−1およびF−2をそれぞれF−3、F−4に変更した以外は熱現像感光材料−1〜18と同様にして熱現像感光材料−19〜38を作製した。
このときの画像形成層の各化合物の塗布量(g/m)は以下の通りである。
【0268】
還元可能な銀塩(銀量として)                            1.50
ポリハロゲン化合物−1                                  0.17
ポリハロゲン化合物−2                                  0.28
フタラジン化合物−1                                    0.18
SBRラテックス                                        9.43
還元剤−2                                              0.77
水素結合性化合物−1                                    0.28
現像促進剤−1                                          0.019
現像促進剤−2                                          0.020
色調調整剤−1                                          0.008
メルカプト化合物−2                                    0.003
ハロゲン化銀(Agとして)                              0.091
【0269】
以下に本発明の実施例で用いた化合物の化学構造を示す。
【0270】
テルル増感剤B
【化32】
Figure 2004101597
【0271】
【化33】
Figure 2004101597
【0272】
【化34】
Figure 2004101597
【0273】
【化35】
Figure 2004101597
【0274】
【化36】
Figure 2004101597
【0275】
4.写真性能の評価
1)準備
得られた試料は半切サイズに切断し、25℃50%の環境下で以下の包装材料に包装し、2週間常温下で保管した後、以下の評価を行った。
2)包装材料
PET 10μ/PE 12μ/アルミ箔9μ/Ny 15μ/カーボン3%を含むポリエチレン50μ
酸素透過率:0.02ml/atm・m・25℃・day、水分透過率:0.10g/atm・m・25℃・day
【0276】
3)感光材料の露光・現像
(露光)
富士メディカルドライレーザーイメージャーFM−DP Lの露光の半導体レーザー光源に日亜化学工業(株)のNLHV3000E半導体レーザーを装着し、ビーム径を絞ることによってレーザー光の感光材料表面における照度を1mW/mm〜1000mW/mmの間で変化させ、10−6秒で露光した。レーザー光の発光波長は405nmであった。
(熱現像)
富士メディカルドライレーザーイメージャーFM−DP Lの熱現像部の4枚のパネルヒーターを112℃−115℃−115℃−115℃に設定し、感光材料の送り速度(ラインスピード)を調整することにより総熱現像時間が熱現像感光材料1〜18では24秒、熱現像感光材料19〜38では14秒で熱現像した。、
【0277】
4)評価
(感度)
カブリ+1.0の黒化濃度を与える露光量の逆数で感度を表し、試料No.1の感度を100としてそれに対する相対値で示した。
(Dmin)
非画像部の濃度をマクベス濃度計により測定した。
(Dmax)
それ以上感光量を増大しても黒化濃度が一定な状態での黒化濃度を示す。
【0278】
(経時保存性)
上記のように包装した包のまま、35℃60%RHの環境下で、1週間保管した後、写真性能を評価した。
保存前後の感度を比較し、経時保存性とした。全体に感度が低下していく傾向にあった。
経時保存性(Δ感度)=保管前の感度 ― 保管後の感度
Δ感度が小さいほど経時保存性が優れている。
【0279】
(画像保存性の評価―1)
上記方法で熱現像し得られた画像を、25℃60%RH、蛍光灯下で200ルクスのの環境下に30日間放置した。保存日数とともにプリントアウトし、未現像部分のかぶり(Dmin)が増大する傾向を示した。Dminの増加は少ない程画像保存性が優れている。
【0280】
(画像保存性の評価―2)
上記方法で熱現像し得られた画像を、30℃70%RH、蛍光灯下で4000ルクスのの環境下に8時間放置した。画像濃度1.2の個所の色調変化を官能評価した。
評価点     判断基準
0     色調の変化が認められない。
1          色調変化は認められるが実用上許容し得る。
2          わずかに色調が褐色に変化し、実用上許容できない。
3          色調が明瞭に褐色に変化し、実用上許容できない。
評価点が0〜1の範囲が好ましい。
【0281】
(膜厚の測定)
未現像試料(熱現像感光材料)の全体の厚み(D)を測定する。次に、温水を用いて表面を擦ることにより表面保護層1、表面保護層2、および中間層を除去して厚み(D)を測定する。 次に、メチルケチルケトンを用いて残った表面を擦ることにより画像形成層を除去して厚み(D)を測定する。次式より画像形成層の厚み、全塗布層厚みを計算する。
画像形成層厚み(感光性層厚み)= (D)―(D
全塗布層厚み =  (D) ―(D
測定装置として、ANRITSU Corp.製「ELECTRONIC MICROMETER K−306A」を用いた。
【0282】
(加工性の評価)
熱現像する前に試料をしあ(shear)角1°、刃先角度89°の上刃と、しあ角0°、刃先角度90°の下刃を用いて、下刃を固定し、上刃の切断スピードを下刃に対して1m/secで切断した。切断された試料の両切断面を光学顕微鏡で100倍で観察し、官能評価した。
評価点     判断基準
◎  :全く膜剥がれが生じていなく、切断面も滑らか。
○  :膜剥がれは生じていないが、切断面が滑らでなくざらついている。
△ :膜剥がれが生じている。但し、切断面を手でこすっても切りくずが剥がれ落ちてくることはないので実用上障害とならない。
×  :膜剥がれが生じている。かつ、切断面に触れると切りくずが剥がれ落ちてくる。
【0283】
得られた結果を表2〜表5に示した。本発明のサンプルは高感度で、経時保存性に優れ、画像保存性にも優れた良好な性能を示した。さらに、本発明のサンプルは加工性にも優れていることも見出された。特に、分子量が410以下の有機銀塩を用いると加工性が優れることがわかった。これによって、熱現像感光材料が塗布乾燥後に市場で使用される種々のサイズに裁断加工される際に、膜の破損故障などが発生しにくく、得率が向上した。
【0284】
【表2】
Figure 2004101597
【0285】
【表3】
Figure 2004101597
【0286】
【表4】
Figure 2004101597
【0287】
【表5】
Figure 2004101597
【0288】
実施例2
実施例2は本発明の効果が高照度露光で始めて得られるものであることを実証するための比較実験である。
実施例1の試料を下記の低照度の露光条件で露光して、その写真性能を試験した。
(露光条件)
1kWのタングステン光を光源にして、405nmの干渉フィルターを通して露光した。露光量はステップウェッジによって調整した。感光材料面の照度は、0.001mW/mm〜0.1mW/mmと実施例1の条件に比べて極めて弱い。従って、露光時間を長くして必要な画像濃度が出るように調整した。
(感度)
感度は試料4の感度を100として相対値で示した。
(結果)
得られた結果を表6に示した。表6の結果を表4の結果と比較すると明らかに、本発明の直接遷移吸収を有するハロゲン化銀で高感度が得られるのは、高照度での露光においてのみであった。
【0289】
【表6】
Figure 2004101597
【0290】
実施例3
(感光性ハロゲン化銀乳剤−7、−8の調製)
実施例1のハロゲン化銀乳剤−1と同様にして、但し、感光性ハロゲン化銀乳剤の粒子形成時の温度を変えて、粒子サイズが70nm、および100nmの純ヨウ化銀乳剤7、および8を調製した。
(塗布サンプルの作成)
実施例1の熱現像感光材料−2と同様にして、但し、感光性ハロゲン化銀乳剤−7、−8の添加量を表7に示すように変更して、サンプル39〜44を作成した。
【0291】
(性能評価結果)
実施例1と同様に写真性能を評価した。結果を表7に示した。
Dmax:最大黒化濃度を表す。
表7の結果より、ハロゲン化銀粒子サイズが小さい方が少ない塗布量で高い黒化濃度(Dmax)を得ることができ、より好ましい。
【0292】
【表7】
Figure 2004101597
【0293】
【発明の効果】
本発明により、高照度露光で、高感度で、画像保存性に優れ、かつ加工性に優れた熱現像感光材料、および画像形成方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のヨウ化銀粒子の分光吸収スペクトルである。横軸は、350nmから500nmまでの分光波長であり、縦軸は吸光度であり、任意スケールである。
410nm付近の極大吸収が高ヨウ化銀結晶に由来する直接遷移吸収である。

Claims (13)

  1. 支持体の一方面上に、少なくとも、感光性ハロゲン化銀、非感光性有機銀塩、銀イオンのための還元剤、及びバインダーを含有する熱現像感光材料において、1)前記感光性ハロゲン化銀がヨウ化銀含有率が5モル%以上100モル%以下であり、2)非感光性有機銀塩の銀1モル当たりの分子量が410以下であることを特徴とする熱現像感光材料。
  2. 該感光性ハロゲン化銀のヨウ化銀含有率が10モル%以上100モル%以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱現像感光材料。
  3. 該感光性ハロゲン化銀のヨウ化銀含有率が40モル%以上100モル%以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱現像感光材料。
  4. 該感光性ハロゲン化銀のヨウ化銀含有率が70モル%以上100モル%以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱現像感光材料。
  5. 該感光性ハロゲン化銀のヨウ化銀含有率が90モル%以上100モル%以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱現像感光材料。
  6. 該感光性ハロゲン化銀の平均粒子サイズが5nm以上80nm以下であることを特徴とする請求項1ないし5に記載の熱現像感光材料。
  7. 該感光性ハロゲン化銀が高ヨウ化銀結晶構造に由来する直接遷移吸収を有することを特徴とする請求項1ないし6に記載の熱現像感光材料。
  8. 非感光性有機銀塩が、下記の一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項1ないし7に記載の熱現像感光材料。
    一般式(1)
    OOC−L−COOM
    式中、L1は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、二価の複素環基、−C(C=O)−,−O−,−S−,−S(=O)−,−S(=O)−,および−N(R)−から選ばれる二価の基、またはこれらの組合せによる二価の複合基を表す。Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、アシル基、またはスルホニル基を表す。MおよびMは水素原子または対イオンを表し、少なくとも一方は銀(I)イオンを表す。
  9. 該感光性ハロゲン化銀を含む画像形成層の膜厚が3μm以上15μm以下であることを特徴とする請求項1ないし8に記載の熱現像感光材料。
  10. 該画像形成層の支持体の同一面上に少なくとも1層の非感光性層を有し、該画像形成層と非感光性層の総厚が5μm以上20μm以下あることを特徴とする特許請求項1ないし9に記載の熱現像感光材料。
  11. 感光性ハロゲン化銀と非感光性有機銀塩の総銀量が1m当たり0.5g以上1.9g以下であることを特徴とする特許請求項1ないし10に記載の熱現像感光材料。
  12. 特許請求項1ないし11のいずれかに記載の熱現像感光材料を350nm〜450nmに吸収極大を有し、1mW/mm以上の照度を有する露光光源で露光し、熱現像することを特徴とする画像形成方法。
  13. 特許請求項1ないし11のいずれかに記載の熱現像感光材料を350nm〜450nmに吸収極大を有し、1mW/mm以上の照度を有する露光光源で露光した後、80℃以上150℃以下で5秒以上20秒以下で熱現像することを特徴とする画像形成方法。
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