JP2004101076A - 加熱調理器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】制御回路は、食品の加熱調理運転が開始されると、赤外線センサの検出温度を読み込み(S1)、1周期目の各素子の検出温度の最大値の和T1及び2周期目の各素子の検出温度の最小値の和T2、並びに12周期目の各素子の検出温度の最大値の和T3及び13周期目の各素子の検出温度の最小値の和T4を求める(S3〜S22)。そして、T1とT2の差、T3とT4の差を判定値Ta,Tbと比較し、いずれもが判定値よりも小さい場合には故障していると判断する。
【選択図】 図4
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、赤外線センサの検出結果に基づいて加熱調理を実行する加熱調理器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の電子レンジには、加熱室内の食品載置領域の一部に検出視野が形成されるように配置された複数の赤外線検出素子を有する赤外線センサと、前記赤外線センサを移動させるステッピングモータ等からなる駆動手段とを備え、前記赤外線センサの検出結果に基づいて食品の加熱調理を実行するように構成されたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−13743号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記構成の電子レンジでは、駆動手段が正常に動作しないと、加熱室内の食品が赤外線センサの検出視野のいずれの中にも含まれない事態が発生するおそれがある。このような場合には食品温度を検知することができないため、食品の温度変化に従った加熱調理ができなくなる。
【0005】
ところが、従来の電子レンジでは、駆動手段が正常に動作しているか否かを確認するための自己診断機能は備えていなかった。従って、加熱調理運転に不具合が発生した場合でも、その原因が駆動手段の故障であると判断することは難しかった。特に、駆動手段の故障診断を行うためには、赤外線センサの配設部分を分解して駆動手段の動作状態を実際に確認しなければならず、作業に長時間を要するという問題があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、赤外線センサの駆動手段に異常が発生したことを簡単に発見することができる加熱調理器を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1の加熱調理器は、被加熱物を収容する加熱室、前記加熱室内にマイクロ波を照射することにより前記被加熱物を加熱する加熱手段、前記加熱室内に設けられた被加熱物載置領域のうちの一部に検出視野を有する赤外線センサ、前記検出視野が前記被加熱物載置領域の略全体に亘って移動するように前記赤外線センサを駆動する駆動手段、前記赤外線センサの検出結果に基づき前記加熱手段の動作を制御することにより被加熱物を加熱調理する調理実行手段、前記被加熱物の調理中における前記赤外線センサの検出結果の少なくとも一周期分の変化に基づいて前記駆動手段の故障診断を行う故障診断手段を具備することを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、被加熱物の加熱調理が実行されると、故障診断手段は駆動手段の故障診断を行う。このとき、故障診断手段は、調理実行手段が加熱手段の制御に用いる赤外線センサの検出データを利用して故障診断を行う。この場合、駆動手段が正常に動作しているときは、赤外線センサの検出視野が移動するためその検出温度は一周期毎に変動する。一方、駆動手段の故障により赤外線センサの検出視野が移動しないとき、その検出温度はほとんど変化しない。従って、赤外線センサの検出温度の少なくとも一周期分の変化から駆動手段が正常に動作しているか否かを判断することができる。
【0009】
本発明の請求項2の加熱調理器は、前記赤外線センサを複数の赤外線検出素子から構成すると共に、前記故障診断手段を、調理中の一周期における前記赤外線検出素子の検出温度の最大値及び次の周期における前記赤外線検出素子の検出温度の最小値の差が全ての赤外線検出素子について判定値以下であるときに、駆動手段が故障していると判断するように構成したところに特徴を有する。
【0010】
赤外線センサの検出視野が移動せず、各赤外線検出素子が常に同じところにある検出視野の温度を検出している場合でも、加熱時間の経過と共に検出視野内の温度は徐々に上昇する(単調増加)。これは、検出視野内に被加熱物が存在する場合でも存在しない場合でも同様である。上記構成のように、調理中の一周期における検出温度の最大値を次の周期の最小値と比較することにより、単調増加による検出温度の変化を、検出視野の移動によるものと誤って判断してしまうことを極力なくすことができる。この場合、全ての赤外線検出素子について同一の判定値としても良く、検出素子毎に異なる判定値を設定しても良い。
【0011】
本発明の請求項3の加熱調理器は、前記赤外線センサを複数の赤外線検出素子から構成すると共に、前記故障診断手段を、調理中の一周期における各赤外線検出素子の検出温度の最大値の和と、次の周期における各記赤外線検出素子の検出温度の最小値の和との差が判定値以下であるときに、駆動手段が故障していると判断するように構成したところに特徴を有する。
【0012】
上記構成によれば、全ての検出素子の検出温度の最大値及び最小値の総和に基づいて判定することにより、判定回数を減らすことができる。また、被加熱物が存在する領域を通過する検出視野と通過しない検出視野とでは、検出視野の移動に伴う検出温度の変化量が異なるが、上記構成により、検出視野の位置によるばらつきをなくすことができる。
【0013】
ところで、加熱開始時の被加熱物の温度が室温よりも低い場合、故障診断を行うタイミングによっては被加熱載置領域のうち被加熱物が存在する場所と存在しない場所との間に温度差が殆ど生じず、駆動手段が正常に動作していても故障であると判断してしまうおそれがある。
【0014】
そこで、本発明の請求項4の加熱調理器は、前記故障診断手段を、1回の調理中に故障診断動作を複数回実行するように構成している。
【0015】
上記構成によれば、誤判断を少なくすることができ、故障診断の信頼性を高めることができる。
【0016】
また、加熱手段の加熱出力が変更可能である場合は、故障診断手段が調理中に故障診断動作を実行するタイミングや、故障診断手段が駆動手段の故障判定を行う判定値は、前記加熱手段の加熱出力に応じて異なるように設定すると良い(請求項5及び6の発明)。
【0017】
加熱出力が小さいほど被加熱物の温度上昇率が小さい。また、加熱出力が小さいほど加熱開始から所定時間が経過した時点における被加熱物が存在する領域と存在しない領域との間の温度差は小さい。上記構成によれば、加熱手段の加熱出力に応じた適宜のタイミングや適宜の判定値で故障診断することができるため、故障診断の精度をあげることができる。
【0018】
本発明の請求項7の加熱調理器は、報知手段を備え、故障診断手段は、駆動手段が故障していると判断したときにその旨を前記報知手段に出力することを特徴とする。
上記構成によれば、使用者は、駆動手段が故障していることを直ちに認識して対処することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をヒータ付き電子レンジに適用した一実施例について図面を参照しながら説明する。図1に示すように、本実施例に係る電子レンジ1は矩形箱状のキャビネット2を備えている。前記キャビネット2の内部には加熱室3(図2参照)及び機械室(図示せず)が左右に並んで配設されており、加熱室3の前面開口は扉4により開閉されるようになっている。加熱室3は水平方向の断面形状が矩形状をなしており、その底面部3a(図2参照)が食品載置領域(被加熱物載置領域)とされている。
【0020】
前記加熱室3の天井部には、オーブンヒータ5(図3参照)が配設されている。また、機械室には加熱手段としてのマグネトロン6やインバータ装置7(いずれも図3参照)、マグネトロン6等の機器を冷却するための冷却ファン(図3に冷却ファンモータ8のみ示す)が配設されている。
【0021】
前記キャビネット2の前面右部には、操作パネル9が配設されている。前記操作パネル9の裏面部には各種の電装品を実装した回路基板10(図3参照)が配設されている。前記回路基板10には、LCD11、LED群12、スイッチ群13(いずれも図3参照)などが設けられており、これらに対応して操作パネル9には透明なLCD表示部14、LED表示部と兼用のスイッチ操作部15等が設けられている。また、前記操作パネル9には、調理時間や調理温度を設定するためのダイヤル16が設けられている。
【0022】
一方、キャビネット2内には加熱室3内の温度を検出するためのサーミスタ17及び赤外線センサ18が設けられている。前記サーミスタ17は、加熱調理時に食品から発生する蒸気などを排出するための排気ダクト(図示せず)内に設けられている。
【0023】
図2は、加熱室3の内部を視認できるように加熱室3の底面部3a及び右側壁部3bのみを示す図である。この図2に示すように、前記加熱室3の右側面の上奥部に設けられた窓部19には、センサダクト20が機械室側から取付けられている。前記赤外線センサ18は、センサダクト20の端部(奥部)に配設されており、前記窓部19を介して加熱室3内の赤外線をキャッチする。
【0024】
前記赤外線センサ18は、ICチップ上に例えば8個の赤外線検出素子(サーモパイル、図示せず)が直線状に配列されて構成されている。前記赤外線センサ18の検出視野は、8個の赤外線検出素子の個々が形成する検出視野A1〜A8の集合体である。本実施例では、検出視野A1〜A8が前記底面部3aの左右方向に対向する2辺の一方から他方に向かって略直線状に並ぶように前記赤外線検出素子は配置されている。
【0025】
また、前記センサダクト20には、赤外線センサ18を矢印P1方向に揺動するステッピングモータ21(駆動手段に相当,図3にのみ示す)が設けられている。前記ステッピングモータ21によって赤外線センサ18が回動されることにより検出視野A1〜A8が移動する。具体的には、赤外線センサ18が矢印P1方向に一往復揺動することにより、検出視野A1〜A8は矢印P2で示すように、加熱室3の手前の位置から後方の位置に向かって移動され、再び手前の位置に戻される。尚、底面部3a上に投影される検出視野A1〜A8のうち欠けている部分は、加熱室3の左側面や扉4の後面に投影される。上記構成により、赤外線センサ18の検出視野は加熱室3の底面部3a、即ち食品載置領域の略全体に投影されるようになっている。
【0026】
図3は、電子レンジ1の概略的な電気的構成を示すブロック図である。制御回路22は、マイクロコンピュータを主体としてCPUやROM,RAMなどのメモリを備えて構成されている。前記メモリには、マイクロコンピュータが実行する制御プログラムが格納されている。後述するように、前記制御回路22は調理実行手段、故障診断手段として機能する。
【0027】
前記制御回路22には、重量センサ23、サーミスタ17、赤外線センサ18の検出信号が、重量センサインターフェース24、サーミスタインターフェース25、赤外線センサインターフェース26を介して入力される。前記重量センサ23は、加熱室3内に収容された食品(被加熱物)の重量を検出する。また、前記制御回路22には、エンコーダ27のパルス信号、スイッチ群13のスイッチ信号が、それぞれインターフェース28、29を介して入力される。前記エンコーダ27は、前記ダイヤル16の回動量をパルス信号にて出力するものである。
【0028】
また、前記制御回路22は、マグネトロン6をインバータインターフェース30及びインバータ装置7を介して駆動制御する。更に、前記制御回路22は、オーブンヒータ5、冷却ファンモータ8、ステッピングモータ21、ブザー31、LCD11、LED群12を、それぞれヒータ駆動回路32、ファンインターフェース33、ステッピングモータインターフェース34、ブザー駆動回路35、LCD駆動回路36、LED駆動回路37を介して制御する。
【0029】
次に、上記構成の作用を図4ないし図12を参照しながら説明する。
まず、赤外線センサ18による加熱室3内の食品載置領域の温度検出動作について説明する。制御回路22は、ステッピングモータ21の駆動を制御することにより、赤外線センサ18の検出視野が、加熱室3の底面部3aの手前側の位置から奥側の位置まで移動し、再び手前側の位置に戻るように前記赤外線センサ18を往復移動させる。赤外線センサ18の一回の往復移動が一周期であり、その時間(即ち赤外線センサ18の移動周期)は5秒に設定されている。制御回路22は、赤外線センサ18が一往復する間に16ポイント(往路8ポイント、復路8ポイント)ずつ各赤外線検出素子の検出出力を読込み、各検出視野の温度を検出する。
【0030】
制御回路22は、食品の加熱調理運転を実行する毎にこのような温度検出動作を実行し、この温度検出結果に基づいてインバータ装置7を介してマグネトロン6を駆動制御する。この結果、加熱室3内に収容された食品は、その温度が設定温度(加熱終了温度)に到達するまで加熱される。
【0031】
また、制御回路22は、食品の加熱調理運転を実行する毎に、赤外線センサ18の検出結果に基づいてステッピングモータ21の故障診断を行う。図4及び図5は、ステッピングモータ21の故障診断処理のフローチャートを示している。故障診断処理は、加熱調理運転の開始と共にスタートする。即ち、ステップS1にて、制御回路22は赤外線センサ18の各検出素子の検出温度の読込みを開始する。
【0032】
ステップS2では、加熱調理運転を終了するか否かを判断し、終了しない場合には(NO)、ステップS3に移行する。ステップS3では、赤外線センサ18の移動周期が1周期目であるか否かを判断する。そして、1周期目である場合には(YES)、制御回路22は最初の検出ポイント(第1ポイント)における各検出素子の検出温度を最大値として記憶する(ステップS4)。
【0033】
また、制御回路22は、第2ポイント以降の各検出素子の検出温度と最大値とを比較し、検出温度が最大値よりも大きい場合には、最大値を更新する(ステップS5)。第16ポイントにおける各検出素子の検出温度と最大値との比較が行われ、1周期目が終了すると(ステップS6にてYES)、制御回路22は各検出素子の最大値の和T1を算出する(ステップS7)。
【0034】
2周期目が開始すると(ステップS8)、制御回路22は、第1ポイントの各検出素子の検出温度を最小値として記憶し(ステップS9)、第2ポイント以降の各検出素子の検出温度と最小値とを比較する。そして、検出温度が最小値よりも小さい場合には、最小値を更新する(ステップS10)。第16ポイントにおける各検出素子の検出温度と最小値との比較、更新が行われ、2周期目が終了すると(ステップS11)、制御回路22は、各素子の最小値の和T2を算出する(ステップS12)。
【0035】
また、赤外線センサ18の12番目の移動周期が開始すると(ステップS13)、制御回路22は1周期目と同様に各検出素子の検出温度の最大値を求め、それらの和T3を算出する(ステップS14〜S17)。また、13周期目が開始すると(ステップS18)、2周期目と同様に各検出素子の検出温度の最小値を求め、それらの和T4を算出する(ステップS19〜S22)。
【0036】
ステップS23では、1周期目の最大値の和T1と2周期目の最小値の和T2との差(T1−T2)を判定値Taと比較する。そして、差(T1―T2)の方が判定値Taよりも小さいと判断した場合(YES)は、ステップS24に移行して、12周期目の最大値の和T3と13周期目の最小値の和T4との差(T3−T4)と判定値Tbとを比較する。尚、判定値Ta及びTbは同じ値に設定しも良く、異なる値に設定しても良い。
【0037】
そして、差(T3−T4)の方が判定値Tbよりも小さいと判断した場合(YES)は、赤外線センサ18の検出温度の読込みを終了する(ステップS25)。また、インバータ装置7の駆動を停止して加熱調理運転を停止し、調理を終了させた旨及びステッピングモータ21が故障している旨を例えばエラーコードをLCD表示部14に表示することにより報知する(ステップS26)。
【0038】
一方、ステップS23及びステップS24のいずれかにおいて、最大値と最小値との差が判定値以上であるであると判断された場合には、ステップS2に戻る。そして、加熱調理運転の終了と共に赤外線センサ18の読込みを終了する(ステップS27)。
【0039】
ここで、図6ないし図12を参照しながら、加熱調理運転中における赤外線センサ18の各検出素子の検出温度の変化について説明する。図6ないし図12は、いずれも水が入ったガラス製の容器(ビーカー)を底面部3aの中央付近に載置してマグネトロン6による加熱調理を行った場合の赤外線検出素子の検出温度を示す折れ線グラフである。
【0040】
図6及び図7はステッピングモータ21が正常に動作している場合の温度変化を示すもので、図7は、図5のうち加熱時間が60秒から70秒までの部分を温拡大して示している。
【0041】
これら図6及び図7に示すように、ステッピングモータ21が正常に動作しているときは、各検出素子の検出視野が周期的に移動されるため、各検出素子の検出温度も周期的に増減する。特に、加熱開始から60秒経過するとビーカー内の水の温度が上昇するため、ビーカーが載置されている領域を通過する検出視野を有する検出素子の検出温度は、その検出視野にビーカーが存在するときと存在しないときとで大きく変化する。
【0042】
例えば、図7において太い実線で示す折れ線Lは、検出視野A5の温度変化を示している。この折れ線グラフに示すように、12周期目に相当する加熱時間60秒から65秒までの一周期、及び13周期目に相当する65秒から70秒までの一周期における検出視野A5の温度は大きく変化する。
【0043】
そして、12周期目の検出視野A5の温度の最大値と、13周期目の検出視野A5の検出温度の最小値との間には約8度の差があることがわかる。
【0044】
尚、赤外線センサ18が移動してもその検出視野内に食品が存在しない場合(例えば食品載置領域の端部に位置する検出視野A1やA8)であっても、加熱室3内のマイクロ波分布が均一ではないため一周期の間に各検出素子の検出温度は変動する。
【0045】
これに対して、図8及び図9はステッピングモータ21の故障により赤外線センサ18が停止した状態で温度検出動作が行われた場合の温度変化を示しており、図8及び図9はそれぞれ図6及び図7に相当する。この場合は、赤外線センサ18の各検出素子は常に同じところの温度を検出する。従って、各検出素子の検出温度には、単調増加(加熱時間の経過による温度上昇)及び測定値のばらつきによる変動がみられるだけで、周期的な変動はみられない。これは、検出視野にビーカーが存在する場合も存在しない場合も同様である。
【0046】
また、図10ないし図12はステッピングモータ21が正常に動作し、且つ、ビーカーに収容された水の温度が室温よりも低い場合の温度変化を示している。このうち図10及び図11は、それぞれ図6及び図7に相当するものであり、図12は図10のうち加熱開始から10秒間の部分を拡大して示す図である。図12においても、検出視野A5の温度変化を示す折れ線Lを太い実線で示している。
【0047】
図10に示すように、加熱開始時の被加熱物の温度が室温よりも低い場合も、各素子の検出視野が移動することにより検出温度は周期的に変動する。しかし、加熱時間が経過すると水の温度が上昇して底面部3aの温度に近づくため、ビーカーが載置されている領域を通過する検出視野を有する検出素子の検出温度であっても、その変動量は小さい(図11参照)。
【0048】
これに対して、図12に示すように、加熱開始直後は水の温度が底面部3aの温度よりも低いため、検出視野A5の検出温度は、ビーカーが存在する領域を通過するときと存在しない領域を通過するときとで大きく変動する。
【0049】
上記した現象を考慮して、本実施例では、ステッピングモータ21が正常に動作しているか否かの判定を、加熱開始直後の1周期目及び2周期目、被加熱物の温度が上昇する12周期目及び13周期目に行うように構成した。このように、判定回数を2回にしたため、故障診断の信頼性を高めることができる。しかも、2回の判定結果がいずれもステッピングモータ21の動作異常を示唆するものである場合に故障であると判断するように構成した。このため、食品の種類がどのようなものであっても、ステッピングモータ21が故障しているか否かを正確に判断することができる。
【0050】
また、検出視野が移動しない場合でも、加熱時間の経過に伴い食品温度や底面部3aの温度は上昇する。従って、同一周期内の最大値と最小値とを比較した場合には、ステッピングモータ21が故障している場合でも正常であると誤って判断してしまうおそれがある。これに対して本実施例では、調理中の一周期の各素子の検出温度の最大値を次の周期の検出温度の最小値と比較してステッピングモータ21の故障診断を行うように構成した。これにより、加熱時間の経過に伴う温度上昇の影響を除外することができる。
【0051】
更に、本実施例では、全ての検出素子の最大値及び最小値の総和を求め、これら最大値の総和と最小値の総和との差と判定値とを比較することにより、ステッピングモータ21の故障診断を行うように構成した。従って、各検出素子の最大値と最小値の差を判定値と比較する構成に比べて判定回数が少なくなり、その分、故障診断処理プログラムが簡単になる。また、被加熱物が存在する領域を通過する検出視野と通過しない検出視野とでは、検出視野の移動に伴う検出温度の変化量が異なるが、上記構成により、検出視野の位置によるばらつきをなくすことができる。
【0052】
尚、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような変形、拡張が可能である。
【0053】
1個の赤外線検出素子を有する赤外線センサ18の検出視野を加熱室3の底面部全体に移動させる構成の加熱調理器にも適用できる。
【0054】
複数回の故障診断結果のいずれかで駆動手段が故障であると判定されたときに報知手段に故障が発生した旨を報知させるように構成しても良い。
【0055】
一周期における各赤外線検出素子の検出温度の変化パターンに基づいて故障であるか否かを判断するように構成することも可能である。例えば、一周期に2回のピークが現れるような変化パターンのとき、駆動手段は正常に動作していると判断できる。
【0056】
調理中の全ての周期における検出温度の変化に基づいて駆動手段の故障診断を行うように構成しても良い。
【0057】
マグネトロン6の出力を変更可能な構成においては、前記マグネトロン6の出力に応じて故障診断を行うタイミングや故障診断のための判定値を変更しても良い。例えば、加熱出力が小さい場合は、被加熱物の温度上昇率が小さいため、故障診断を行うタイミングを遅くしたり、故障診断判定値を小さくしたりすることができる。
【0058】
また、被加熱物の種類に応じて故障診断を行うタイミングや故障診断のための判定値を変更することも可能である。
【0059】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明は、加熱室内の被加熱物載置領域のうちの一部に検出視野を有する赤外線センサを移動させることにより被加熱物の温度を検出し、その検出結果に基づいて被加熱物を加熱調理する加熱調理器において、前記被加熱物の調理中における前記赤外線センサの検出結果の少なくとも一周期分の変化に基づいて前記赤外線センサの駆動手段の故障診断を行う故障診断手段を設けたので、駆動手段の故障の発生を簡単且つ迅速に発見することができる。また、加熱手段の制御に用いる赤外線センサの検出データを利用して故障診断を行う構成であるため、ハードウェアの追加が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示すものであり、電子レンジの外観を示す斜視図
【図2】赤外線センサの検出視野を説明するための図
【図3】電気的構成を示すブロック図
【図4】ステッピングモータの故障診断処理のフローチャート(その1)
【図5】ステッピングモータの故障診断処理のフローチャート(その2)
【図6】赤外線センサを移動させたときの各赤外線検出素子の検出温度の変化を示す図
【図7】図6のうち加熱時間60秒から70秒までの部分を拡大して示す図
【図8】赤外線センサを停止させたときの図6相当図
【図9】図8のうち加熱時間60秒から70秒までの部分を拡大して示す図
【図10】室温よりも低い温度の水を加熱したときの図6相当図
【図11】図10のうち加熱時間60秒から70秒までの部分を拡大して示す図
【図12】図10のうち加熱開始時から加熱時間20秒までの部分を拡大して示す図
【符号の説明】
図中、1は電子レンジ(加熱調理器)、3は加熱室、3aは底面部(被加熱物載置領域)、6はマグネトロン(加熱手段)、18は赤外線センサ、21はステッピングモータ(駆動手段)、22は制御回路(調理実行手段、故障診断手段)を示す。
Claims (7)
- 被加熱物を収容する加熱室、
前記加熱室内にマイクロ波を照射することにより前記被加熱物を加熱する加熱手段、
前記加熱室内に設けられた被加熱物載置領域のうちの一部に検出視野を有する赤外線センサ、
前記検出視野が前記被加熱物載置領域の略全体に亘って移動するように前記赤外線センサを駆動する駆動手段、
前記赤外線センサの検出結果に基づき前記加熱手段の動作を制御することにより前記被加熱物を調理する調理実行手段、
前記被加熱物の調理中における前記赤外線センサの検出結果の少なくとも一周期分の変化に基づいて前記駆動手段の故障診断を行う故障診断手段を具備することを特徴とする加熱調理器。 - 赤外線センサは、複数の赤外線検出素子を備えて構成され、故障診断手段は、調理中の一周期における前記赤外線検出素子の検出温度の最大値及び次の周期における前記赤外線検出素子の検出温度の最小値の差が全ての赤外線検出素子について判定値以下であるときに、駆動手段が故障していると判断することを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
- 赤外線センサは複数の赤外線検出素子を備えて構成され、
故障診断手段は、調理中の一周期における各赤外線検出素子の検出温度の最大値の和と、次の周期における各記赤外線検出素子の検出温度の最小値の和との差が判定値以下であるときに、駆動手段が故障していると判断することを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。 - 故障診断手段は、1回の調理中に故障診断動作を複数回実行するように構成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の加熱調理器。
- 加熱手段は、その加熱出力を変更可能に構成され、
故障診断手段が調理中に故障診断動作を実行するタイミングは前記加熱手段の加熱出力に応じて異なることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の加熱調理器。 - 加熱手段は、その加熱出力を変更可能に構成され、
故障診断手段が駆動手段の故障判定を行う判定値は、前記加熱手段の加熱出力に応じて異なるように設定されていることを特徴とする請求項2ないし5のいずれかに記載の加熱調理器。 - 報知手段を備え、
故障診断手段は、駆動手段が故障していると判断したときにその旨を前記報知手段に出力することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の加熱調理器。
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