JP2004100205A - 建設工期算出方法と、建設工期算出システム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】建設対象の建物に係る建物用途別と建物構造種別と地下階の有無と、施工延床面積とをそれぞれ入力装置12から入力し、中央演算処理装置13により前記入力された前記建物用途別と建物構造種別と地下階の有無との各種別データに対応した回帰式及びその回帰式に係る係数とが記憶装置17から抽出されて読み込まれ、該読み込まれた回帰式及び前記係数と前記施工延床面積とから前記中央演算処理装置により建設工期が算出される建設工期算出方法である。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、建設工期算出方法とその算出システムに関し、詳しくは、建物用途別・建物構造種別毎に選択されたそれぞれのデータを用いて回帰式の係数を算出しておき、実際の建物用途及び建物構造種別を特定し、当該建物の施工延床面積のみを入力するだけで建設工期が得られる建設工期算出方法および建設工期算出システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来において、建設工期を算出する手法は様々なものがあり、それは、主な変動要因として、顧客要求、周辺環境、経済変動、労務事情、建物用途、構造種別、建築面積、延床面積、建物高さ等を設定し、更に、自然環境、施工方法、杭地業、地下階数、地上階数、設備等級、仕上げ等級等を組み込み、係数や定数等で処理している。この様々な従来の算定方式について説明する。
【0003】
(1)第1の算定方式による建設工期データの解析
この建設工期データの算出は、下記に示す式(101)の建設工期算定方法によって求めるものであり、1次式で表して、係数などで補正する方向で考え、全体工期を算出する。
【0004】
D=3・A・w・α/(28・a・Ke)……式(101)
A:延床面積、w:現場施工度(建物用途を指定)、α:構造別常数、a:工事規模補正値、Ke:施工者別経済施工速度
【0005】
この算出手法は、一次式なので、規模の大小によって差が大きくなるという欠点がある。又、工事規模補正値や施工者別経済施工速度を条件としており、これらは専門的な知識を有するものでなければ算出できないという問題がある。
【0006】
(2)第2の算定方式による工期データの解析
第2の算定方式による工期データの解析は、下記に示す式(104)〜式(109)により、全体工期を得る。
この第2の算定方式は、各工事ごとに分類し、工事毎に細部にわたり補正係数などを使用して算定し、最後にそれらを合計するが、合計の際も様々な補正係数を使用して工期を算定するというものである。
【0007】
基礎工事:A={0.6+0.02√Sn・a+1.1・Fb}・b……式(104)
躯体工事:B=[0.6+0.02√St+0.35{Fb+Fg+0.3・Fp}]・c……式(105)
仕上工事:C={2.0+0.015√St}・d……式(106)
全体工期:D={0.25+e+1.05・(A+B+C)}・f・g……式(107)
Sn:建築面積、St:延床面積、Fb:地下階数、Fg:地上階数、Fp:塔屋階数、a:杭補正、b:土質補正、c:構造補正、d:用途補正、e:準備外構補正、f:立地条件等補正、g:年度補正
【0008】
この式は、上記第1の算定方式に較べて細部まで食い込んで式を構成しているが、補正値・係数などが専門的知識を持っていないと判断できないという問題がある。
【0009】
(3)第3の算定方式による工期データの解析
第3の算定方式による工期データの解析は、下記に示す式(108)に基づいて行う。この式では係数設定のグラフが建築面積と日数の関数になっており大規模建物には適用しづらく、算出方法は全工事を13段階に分けて算出した詳細工程を積み上げて全体工程表を作成する。工程表作成ソフトウェアはこれをプログラム化したもので、精度は良いが即応性に乏しいという欠点がある。
【0010】
全体工期:D=(K1+K2)/A+K3/(A+B)/2……式(108)
K1:杭日数、K2:地中部日数、K3:地上部日数、
A:雨天決行実働日数、B:雨天休止実働日数
【0011】
この算式においては、全工程を13段階に分類している為、即効性の点で問題がある。
【0012】
(4)第4の算定方式による工期データの解析
第4の算定方式による工期データの解析は、工期算出ソフトウェアを利用して行い、入力画面で建物用途、構造種別等を指定し、順次、建築面積、延床面積、階数、杭、山止め、根切り等を順次入力することで概略工期と精算工期が表示される。
【0013】
この算出方式は、工期算定まで時間を必要とし、又、延床面積のみで即座に工期算定するものではない(例えば、特許文献1,特許文献2参照。)。
【0014】
【特許文献1】
特開2002−222235号公報(第1頁、第1図)
【特許文献2】
特開2002−108976号公報(第1頁、第1図)
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術で説明したように、統計的手法或いは工期算出ソフトウェアを用いて、建設工期を算定するが、何れも工期算出に手間がかかる上、専門的な知識を必要とする。しかも、工期算出ソフトウェアを用いた場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムの詳細はブラックボックスとなっていて、その精度的なものの比較ができないという問題がある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明に係る建設工期算出方法の要旨は、建設対象の建物に係る建物用途別と建物構造種別と地下階の有無と、施工延床面積とをそれぞれ入力装置から入力し、中央演算処理装置により前記入力された前記建物用途別と建物構造種別と地下階の有無との各種別データに対応した回帰式及びその回帰式に係る係数とが記憶装置から抽出されて読み込まれ、該読み込まれた回帰式及び前記係数と入力された前記施工延床面積とから前記中央演算処理装置により建設工期が算出されることである。
【0017】
また、前記読み込まれた回帰式に、該回帰式に係る係数と入力された施工延床面積とを代入して回帰式演算プログラムにより建設単位工期を演算させ、
前記建設単位工期に前記施工延床面積を乗算させて建設工期を算出させ、
該建設工期を中央演算処理装置から表示装置に出力させて表示させること、
更に、
地下階無しの建物であって、回帰式は以下の単回帰式:
Z=γ・Xα
Z:建設単位工期(day/m2)
α:地下階無し建物を回帰分析した結果の係数
γ:建物用途別・構造種別を回帰分析した結果の係数
X:地上階施工延床面積(m2)
であること、;
地下階有りの建物であって、回帰式は以下の重回帰式:
Z=γ・Xα・Yβ
Z:建設単位工期(day/m2)
X:地上階施工延床面積(m2)
Y:地下階施工延床面積(m2)
α:地下階有り建物の地上階部分を回帰分析した結果の係数
β:地下階有り建物の地下階部分を回帰分析した結果の係数
γ:建物用途別・構造種別を回帰分析した結果の係数
であることを含むものである。
【0018】
本発明に係る建設工期算出システムの上記課題を解決するための要旨は、建設対象の建物に係る建物用途別と建物構造種別と地下階の有無と、施工延床面積とをそれぞれ入力する入力装置と、前記入力された前記建物用途別と建物構造種別と地下階の有無との各種別データに対応した回帰式及びその回帰式に係る係数とを記憶装置から抽出して読み込むとともに、該読み込まれた回帰式及び前記係数と前記施工延床面積とから建設工期を算出する回帰式演算プログラムが組み込まれた中央演算処理装置と、前記算出された建設工期を表示する表示装置とからなることである。
【0019】
また、前記入力装置がネットワークに接続された入力端末装置であり、中央演算処理装置が前記ネットワークに接続された所定のサーバであり、記憶装置が前記所定のサーバにおける記憶装置であり、表示装置が前記ネットワークの入力端末装置における表示装置であることを含むものである。
【0020】
このように、建物に係る建設工期を算出するのに、単回帰式或いは重回帰式を使用することで、建物用途別・建物構造種別を指定し、更に、建物の施工延床面積を入力すること建設工期を精度良く算出することができる。これは、建設工期を算出する手法に精通していなくても、単に施工延床面積を入力するのみで、建物の建設工期を容易に得ることができるものである。
【0021】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る建設工期算出方法と建設工期算出システムの実施形態について、図面を参照して説明する。
【0022】
本願発明の建設工期算出方法と、それを具現化することができる建設工期算出システム11は、図1に示すように、5つの項目、▲1▼建物用途別、▲2▼構造種別、▲3▼地下階の有無、▲4▼地上階施工延床面積、▲5▼地下階施工延床面積を入力するキーボード又は端末機の入力装置等の入力部12と、入力されたデータに基づいて、中央演算処理装置において単回帰式或いは重回帰式に当て嵌めて演算する回帰式演算プログラムが組み込まれる建設工期演算部13と、演算された結果の建設工期を表示する表示装置、例えば、ディスプレイ、プリンター、音声合成装置等を含む表示部14とからなる。
【0023】
前記建設工期演算部13は、地下階無しのときの建設単位工期を算出する単回帰式: Z=γ・Xα
α:地下階無し建物を回帰分析した結果の係数
γ:建物用途別・構造種別を回帰分析した結果の係数
X:地上階施工延床面積(m2)
及び、全体工期D=γ・Aα +1 (延床面積A=Xである)
を演算する地下階無し演算部15と、
地下階有りのときの単位工期を算出する重回帰式:
Z=γ・Xα・Yβ
X:地上階施工延床面積(m2)
Y:地下階施工延床面積(m2)
α:地下階有り建物の地上階部分を回帰分析した結果の係数
β:地下階有り建物の地下階部分を回帰分析した結果の係数
γ:建物用途別・構造種別を回帰分析した結果の係数
及び、全体工期D=γ・Aα +1 (延床面積A=X+Yである)
を算出する地下階有り演算部16と、
鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨造(S造)、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の建物構造種別、量販店及び倉庫の建物用途別に対応する前記係数α、β、γの値18、19が記憶装置の一部に蓄積されている係数値蓄積部17とからなる。
【0024】
このような構成からなる建設工期システム11によって、建設対象の建物に係る工期を算出するフローを説明すると、図2に示すように、パーソナルコンピュータにおけるキードボードやインターネット若しくは社内ネットワークにおける入力端末装置等の入力装置から画面の指示に従い、先ず、店舗、倉庫、事務所、住宅等の建設用途別を指定し、次に鉄筋コンクリート造、鉄骨・鉄筋コンクリート造、鉄骨造等の構造種別を指定し、更に、地下階の有無を指定する。
【0025】
前記地下階の有無の指定において「無し」を指定した場合には、地上階施工延床面積の入力に移行し、当該施工延床面積を入力部12に入力すると、前記中央演算処理装置における地下階無し演算部15が前記指定された条件に対応する回帰係数の係数α、γを係数値蓄積部17から読み出し、単回帰式の演算プログラムにより演算を行い、指定条件に合った建設単位工期Z、及び、全体工期Dを算出して、それらが表示部14に表示される。
【0026】
又、地下階有りの場合にはそれを指定し、地上階施工延床面積及び地下階施工延床面積を入力部12から入力すると、地下階有り演算部16が前記指定された条件に対応する回帰係数である係数γ、α、βを、係数値蓄積部17から読み出し、重回帰式の演算プログラムにより演算を行い、指定条件に合った建物の建設単位工期Z及び全体工期Dを算出して表示部14に表示する。このようにして、建設する施工延床面積を入力すると、その建物の建設工期が算出され表示することができるのである。
【0027】
これは、施工延床面積を数字による入力に限定されることなく、例えば、上記の▲1▼建物用途別、▲2▼建物構造種別、▲3▼地下階の有無を入力装置に入力したときに、地下階無しであれば、横軸が延床面積、縦軸に建設工期を表す単回帰式によるグラフを表示し、その表示されているグラフの延床面積を指定すれば、建設工期が判るようにしてもよい。また、地下階有りの場合も同様に、重回帰式のグラフを表示させ、地上階施工延床面積及び地下階施工延床面積を指定すれば、建設工期がわかるようにしてもよい。
【0028】
本発明の他の実施例として、上記の回帰式を搭載した建設工期サーバを構築し、そのサーバにネットワークの入力端末機からアクセスし、所望の建設工期を得るようにした建設工期算出システムについて、図3乃至図4を参照して説明する。
【0029】
一例として、社内ネットワークによる前記建設工期算出システムでは、図3に示すように、前記入力装置がネットワークに接続された入力端末装置31であり、中央演算処理装置が前記ネットワークに接続された所定のサーバ41であり、記憶装置が前記所定のサーバ41における記憶装置であり、表示装置が前記ネットワークの入力端末装置31における表示装置である。
【0030】
前記建設工期算出システムは、例えば、PDA,携帯電話機及びPC等の端末機31と、該端末機31に接続されるネットワーク32と、ネットワーク32に接続された建設工期サーバ41とからなる。前記建設工期サーバ41の中央演算処理装置には、回帰式を用いて演算する回帰式演算プログラム42がインストールされており、回帰式に使用する回帰係数である係数α、β、γ値が前記サーバ41の記憶装置に、係数値蓄積部43として蓄積されている。
【0031】
前記回帰式演算プログラム42は、地下階無しの場合に、単回帰式Z=γ・Xαを演算する地下階無し演算部44と、地下階有りの場合に、重回帰式Z=γ・Xα・Yβを演算する地下階有り演算部45とからなる。
【0032】
このような構成において、例えば、端末機31から建設工期サーバ41にアクセスして、5つの項目、▲1▼建物用途別、▲2▼構造種別、▲3▼地下階の有無、▲4▼地上階施工延床面積、▲5▼地下階施工延床面積を入力すると、前記回帰式演算プログラム42は、地下階無しの場合には、入力された条件に対応した回帰係数を前記記憶装置の係数値蓄積部43から抽出して、地下階無し演算部44において、単回帰式の演算を行って、その結果を端末機31側に送る。端末機31側においては、その建設工期のデータを受信し、表示部14に表示させる。
【0033】
地下階有りの場合も同様に、地下階有り演算部45において、重回帰式の演算を行って、その結果を端末機31側に送り、その建設工期のデータを表示部14に表示させる。このようにして、いつでもどこでも所望の建物に係る建設工期が即座に得ることができるのである。
【0034】
一方、インターネットによる建設工期算出システムでは、図4に示すように、入力装置がプロバイダーを介してインターネットに接続された入力端末装置33であり、中央演算処理装置が前記インターネットに接続された所定のサーバ51であり、記憶装置が前記所定のサーバ51における記憶装置であり、表示装置が前記入力端末装置33における表示装置である。
【0035】
この場合も、前記社内ネットワークとほぼ同様の手順で建設工期が得られるものである。このインターネットを利用した建設工期算出システムの場合、客先において携帯電話等を入力端末装置33として前記所定のサーバ51にアクセスし、回帰式演算プログラムを含む建設工期算出用のWebアプリケーション(Java(登録商標)プログラム等)を起動させ、必要な条件と施工延床面積を入力することで、建物の建設工期を直ちに知ることができるようになり、顧客の要求にその場で迅速に対応できるものである。
【0036】
【実施例】
前記単回帰式若しくは重回帰式による建設単位工期と建物全体の建設工期の算出について実施例に沿って説明する。例えば、地下階無しの建物であって、建物用途別・建物構造種別毎に選択されたそれぞれのデータから、単回帰式の係数α及びγを求めておき、施工する建物の建物用途別及び建物構造種別を指定すると共に、この施工する建物の地上階施工延床面積を下記に示す単回帰式に入力して建設単位工期を算出し、建物の工期データを表示するものである。
【0037】
そこで、RC造の量販店及び倉庫に関して一般的な施工条件における標準となる工事日数を定める。この実施例において46ケースのRC造のモデル量販店及びモデル倉庫の工期データを作成する。
【0038】
前記RC造のモデル量販店の規模設定概要は、階高は1階が4.5m、その他の階が3.5m、階数は地上1〜8階、PHは1階である。
前記RC造モデル倉庫の規模設定概要は、階高は1階で5.5m、その他の階は4.5m、階数は地上1〜8階、PHは1階である。
【0039】
工程表作成のための主な施工条件は、工区割りは1000〜2000m2程度とし、工区のずれは、杭工事で4日、地上躯体工事で3日である。又、プレキャストコンクリート工事での工区のずれは建方日数分とし、建設機械、労務者の投入量は大手ゼネコンの通常量である。杭は場所打ちコンクリート拡底杭とし、杭長は20mである。このように設定して得られたRC造モデル量販店及びモデル倉庫のモデル工期データを、表1及び表2に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
次に、地下無しの建物の建設単位工期を求める。
(単回帰式)Z=γ・Xα………式(1)
Z:建設単位工期(day/m2)
α:地下階無し建物を回帰分析した結果の係数
γ:建物用途別・構造種別を回帰分析した結果の係数
X:地上階施工延床面積(m2)
【0043】
ここで、建物用途は、事務所、店舗、住宅、学校、病院、工場、倉庫等であり、建物構造種別は、鉄筋コンクリート造、鉄筋鉄骨コンクリート造、鉄骨造である。
【0044】
先ず、係数γ、αを求めるには、
上記式(1)の両辺の対数をとって、次の式(2)を作成する。
Log(Z)=α・Log(X)+Log(γ)………式(2)
次に、
z=Log(Z)、x=Log(X)、α=a、c=Log(γ)……式(3)
とおいて変数変換する。
【0045】
次に、式(3)による変数変換により前記式(2)は、
z=ax+c………式(4)
と、対数座標における直線型の単回帰式になる。
建設工期データを式(4)に代入して得られた個々の工期データxi、ziを用いたときの式(4)の回帰係数a、cの値は、次の式(5)の行列式から得ることができる。
【0046】
【数1】
【0047】
上記回帰係数a、cの値から係数α、γを求める。具体的に上記表1及び表2に示すモデルデータを用いて回帰式の係数γ、αを算出するには、上記式(5)に表1(RC造量販店)及び表2(RC造倉庫)に示す工期データを入力して得る。このモデルによる、RC造量販店の単回帰式及び決定係数R2は、
Z=29.596・X−0.7546………式(6)
R2=0.9922………式(7)
となる。
【0048】
また、前記モデルデータによる、RC造倉庫の単回帰式及び決定係数R2は、
Z=27.804・X−0.7397………式(8)
R2=0.9864………式(9)
となる。
【0049】
そして、モデルデータに基づいて得られたRC造量販店の単回帰式(式(6))を対数座標により表すと、図5に示すようになる。そして、この図5に示す回帰式により、建物の延床面積から建設単位工期が求められ、それに当該延床面積を乗算することで、建物全体の工期が求められるものである。
【0050】
次に、地下階有りの建物の場合における建設工期を算出する手法について説明する。それには、まず、下記に示す重回帰式を用いて建設単位工期を算出する。
【0051】
所定の建設用途に分類される地下階の有る建設物の、階数(F)、延床面積(m2)、工事日数(day)、単位工期(day/m2)に、標準となる46ケースのデータを抽出し、このモデルデータから回帰係数である係数γ、α、βを算出し、所望の延床面積(Z(m2))を入力することにより次の演算を行い、施工する単位面積当たりの建設工期(day/m2)を求める。
(重回帰式)Z=γ・Xα・Yβ……式(28)
Z:単位工期延床面積(day/m2)、
X:地上階施工延床面積(m2)、
Y:地下階施工延床面積(m2)、
α:地下階有り建物の地上階部分を回帰分析した結果の係数、
β:地下階有り建物の地下階部分を回帰分析した結果の係数、
γ:建物用途別・構造種別を回帰分析した結果の係数、
【0052】
前記回帰係数である係数α、β、γの値を求める方法は、上記単回帰式(式(1))で述べたものと同様であるので、その説明は省略する。このようにして係数α、β、γの値を予め求めておくと、建設単位工期が求められ、建設対象の建物の地上階施工延床面積(X)と地下階施工延床面積(Y)とを、入力装置に入力することで、即座に建物全体の建設工期がわかるのである。
【0053】
このように回帰式を用いることにより、単位工期と施工延床面積との関係が得られる。更に、実際に施工したときの建設工期データを使用して、その回帰係数を算出し、対数座標に表して、前述のモデルデータによる回帰式との差を比較検討する。
【0054】
RC造量販店の工期実績データを表3及び表4に示し、RC造倉庫の工期実績データを表5及び表6に示す。
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】
【表5】
【0057】
【表6】
【0058】
上記表3〜表6に示した工期実績データに基づいて、先の単回帰式(式(1))の係数γ、αを求めるには、式(5)に個々の工期実績データを入力すればよい。それにより、RC造量販店の単回帰式及び決定係数R2は、
Z=26.919・X−0.7564………式(10)
R2=0.8619………式(11)
となる。
【0059】
また、RC造倉庫の単回帰式及び決定係数R2は、
Z=27.558・X−0.7346………式(12)
R2=0.8751………式(13)
となる。
【0060】
この工期実績データに基づくRC造量販店の単回帰式(式(10))と、モデルデータに基づくRC造量販店の単回帰式(式(6))とを対数座標により表すと、図6に示すようになって、単位工期と施工延床面積との関係を直線的に捉えることができる。この図中で、四角形状の印は工期実績データに基づく建設工期をプロットしたものである。モデルデータに基づく単回帰式(式(6))は、工期実績データに基づく単回帰式(式(10))と近傍位置を略平行に推移すると共に、工期実績データに基づくプロットしたデータに即して推移していることがわかる。
【0061】
また、図6は、RC造倉庫の単回帰式(式(12))と、モデルデータに基づくRC造倉庫の単回帰式(式(8))とを対数座標により表したものであり、丸形状の印は工期実績データをプロットしたものである。
【0062】
この図6からも明らかなように、前述の図5に示すRC造量販店の場合と同様に、工期のモデルデータに基づく単回帰式(式(8))は、工期実績データに基づく単回帰式(式(12))と略平行で推移することがわかる。
【0063】
これらのことから、工期データにバラツキがある工期実績データを使用しなくとも、過去の施工条件に合った工期のモデルデータを予め作成し、そのモデルデータに基づく単回帰式により建設工期を得るようにしても、実務に即した結果を得ることができるのである。尚、上記例に限らず、構造種別のSRC造、RC造、S造を特定し、用途別、たとえば、倉庫、量販店、学校、事務所等を特定して得られた実績工期データの中から標準となる回帰式の諸係数を求めればよい。
【0064】
こうして、単回帰式若しくは重回帰式を用いて、単に建物の建設延床面積を入力するのみで、その建設用途の建設工期を簡単に得ることができるのである。
【0065】
【発明の効果】
上記説明したように、本発明に係る建設工期算出方法は、建設対象の建物に係る建物用途別と建物構造種別と地下階の有無と、施工延床面積とをそれぞれ入力装置から入力し、中央演算処理装置により前記入力された前記建物用途別と建物構造種別と地下階の有無との各種別データに対応した回帰式及びその回帰式に係る係数とが記憶装置から抽出されて読み込まれ、該読み込まれた回帰式及び前記係数と前記施工延床面積とから前記中央演算処理装置により建設工期が算出されるので、建設対象の建物に係る延べ床面積により、該建物の建設工期を直ちに知ることができると言う優れた効果を奏するものである。
【0066】
また、前記回帰式に、該回帰式に係る係数と入力された施工延床面積とを代入して回帰式演算プログラムにより建設単位工期を演算させ、前記建設単位工期に前記施工延床面積を乗算させて建設工期を算出させ、該建設工期を中央演算処理装置から表示装置に出力させて表示させることで、入力端末装置に建設工期を表示させることができて、用意に建設工期を把握できるものである。
【0067】
更に、請求項3又は請求項4に記載したようにすることで、建物に地下階があるかどうかの有無によって、高精度に建設工期を知ることができるようになると言う優れた効果を奏するものである。
【0068】
本発明に係る建設工期算出システムは、建設対象の建物に係る建物用途別と建物構造種別と地下階の有無と、施工延床面積とをそれぞれ入力する入力装置と、前記入力された前記建物用途別と建物構造種別と地下階の有無との各種別データに対応した回帰式及びその回帰式に係る係数とを記憶装置から抽出するとともに、該抽出された回帰式及び前記係数と前記施工延床面積とから建設工期を算出する回帰式演算プログラムが組み込まれた中央演算処理装置と、前記算出された建設工期を表示する表示装置とからなるこので、用意に建設工期を求めることができると言う優れた効果を奏するものである。
【0069】
また、前記入力装置がネットワークに接続された入力端末装置であり、中央演算処理装置が前記ネットワークに接続された所定のサーバであり、記憶装置が前記所定のサーバにおける記憶装置であり、表示装置が前記ネットワークの入力端末装置における表示装置であることで、社内に限らず外出先においても客先の要望に応じて、直ぐに建設工期を算出することができるようになり、ネットワーク社会に即応した建設工期算出システムとなるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る建設工期算出システムの構成を示したブロック図である。
【図2】本発明に係る建設工期算出方法のフローを示す説明図である。
【図3】社内のネットワークによる建設工期システムの実施例を示す略示的な概略構成図である。
【図4】インターネットによる建設工期システムの実施例を示す略示的な概略構成図である。
【図5】RC造モデル量販店における単位工期の回帰分析をグラフで表したものである。
【図6】RC造モデル倉庫における単位工期の回帰分析をグラフで表したものである。
【符号の説明】
11 建設工期算出システム、 12 入力部、
13 建設工期演算部、 14 表示部、
15 地下無し演算部、 16 地下有り演算部、
17 計数値蓄積部、 31 入力端末機、
32 ネットワーク、 41 建設工期サーバ、
42 回帰式演算プログラム、 43 係数値蓄積部、
44 地下階無し演算部、 45 地下階有り演算部。
Claims (6)
- 建設対象の建物に係る建物用途別と建物構造種別と地下階の有無と、施工延床面積とをそれぞれ入力装置から入力し、
中央演算処理装置により前記入力された前記建物用途別と建物構造種別と地下階の有無との各種別データに対応した回帰式及びその回帰式に係る係数とが記憶装置から抽出されて読み込まれ、
該読み込まれた回帰式及び前記係数と入力された前記施工延床面積とから前記中央演算処理装置により建設工期が算出されること、
を特徴とする建設工期算出方法。 - 読み込まれた回帰式に、該回帰式に係る係数と入力された施工延床面積とを代入して回帰式演算プログラムにより建設単位工期を演算させ、
前記建設単位工期に前記施工延床面積を乗算させて建設工期を算出させ、
該建設工期を中央演算処理装置から表示装置に出力させて表示させること、
を特徴とする請求項1に記載の建設工期算出方法。 - 地下階無しの建物であって、回帰式は以下の単回帰式:
Z=γ・Xα
Z:建設単位工期(day/m2)
α:地下階無し建物を回帰分析した結果の係数
γ:建物用途別・構造種別を回帰分析した結果の係数
X:地上階施工延床面積(m2)
であることを特徴とする請求項1または2に記載の建設工期算出方法。 - 地下階有りの建物であって、回帰式は以下の重回帰式:
Z=γ・Xα・Yβ
Z:建設単位工期(day/m2)
X:地上階施工延床面積(m2)
Y:地下階施工延床面積(m2)
α:地下階有り建物の地上階部分を回帰分析した結果の係数
β:地下階有り建物の地下階部分を回帰分析した結果の係数
γ:建物用途別・構造種別を回帰分析した結果の係数
であることを特徴とする請求項1または2に記載の建設工期算出方法。 - 建設対象の建物に係る建物用途別と建物構造種別と地下階の有無と、施工延床面積とをそれぞれ入力する入力装置と、
前記入力された前記建物用途別と建物構造種別と地下階の有無との各種別データに対応した回帰式及びその回帰式に係る係数とを記憶装置から抽出して読み込むとともに、該読み込まれた回帰式及び前記係数と前記施工延床面積とから建設工期を算出する回帰式演算プログラムが組み込まれた中央演算処理装置と、
前記算出された建設工期を表示する表示装置とからなること、
を特徴とする建設工期算出システム。 - 入力装置がネットワークに接続された入力端末装置であり、
中央演算処理装置が前記ネットワークに接続された所定のサーバであり、
記憶装置が前記所定のサーバにおける記憶装置であり、
表示装置が前記ネットワークの入力端末装置における表示装置であること、
を特徴とする請求項5に記載の建設工期算出システム。
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