JP2004099359A - 水素エネルギーを利用したエネルギー供給システム、及びその応用形態である各種システム - Google Patents
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Abstract
【課題】水素エネルギーを利用したエネルギー供給システムと、その応用形態である各種システムの提供。
【解決手段】原子力発電所等の大規模蒸気発電設備から排出される高温の蒸気を再利用して、熱化学反応を介した水分解法を用いて安価に獲得した水素を直接または高圧乃至液化して、これを備蓄供給する水素エネルギー供給システムと、電力貯蔵・輸送を目的とする高温超伝導素材を利用する送電ネットワークシステムと、該水素資源を利用して燃料電池または内燃機関および燃焼装置等へ水素を供給する供給手段とを含み、水・水素循環型のエネルギーシステムを構成する。
【選択図】 図1
【解決手段】原子力発電所等の大規模蒸気発電設備から排出される高温の蒸気を再利用して、熱化学反応を介した水分解法を用いて安価に獲得した水素を直接または高圧乃至液化して、これを備蓄供給する水素エネルギー供給システムと、電力貯蔵・輸送を目的とする高温超伝導素材を利用する送電ネットワークシステムと、該水素資源を利用して燃料電池または内燃機関および燃焼装置等へ水素を供給する供給手段とを含み、水・水素循環型のエネルギーシステムを構成する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素エネルギーを利用したエネルギー供給システムに関し、またその応用形態である各種システムに関する。より詳しくは、水を資源とする水素エネルギーの応用技術及び再生可能エネルギー導入促進と、排熱の再利用、電力負荷平準化の改善と省エネルギー、並びに水素エネルギー供給システムに基づく循環型社会の形成およびその実現に関する。
【従来の技術】
地球の温暖化が進んでいる。化石エネルギーが生み出した二酸化炭素の増加蓄積が、環境異変を齎している。原因物質となる炭素系資源を代替するものとして、いま、新しいエネルギー資源の登場が求められている。温暖化現象はこの間にますます進行し、有効な打開策が得られないまま文明は未だに有効な手を打てずにいる。当面は省エネルギーを心がけながら、核エネルギー或いは自然エネルギー又は位置エネルギー等に基づく各種の技術を総合して、エネルギーのベストミックスで対応せざるを得ない状況にある。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながらいずれの方法も様々な課題を抱えており、それぞれに制約があって温暖化の防止には効果があるとはいうものの、副次的な課題を新たに生み出すことにもなっている。
副次的に生成するそれらの課題を一つに限り挙げるとするなら、原子力ではウランを消費して放射性廃棄物を積み増している事、自然エネルギーでは質・量ともに不安定で代替能力には程遠い事、水力発電では自然破壊を前提としなければなない事、等というような諸問題を生み出す因果の関係が抜き難く存在しているのである。
このため主要な代替エネルギーとはなり得ず、将来電源開発に行き詰まることは目に見えている。このような事情でどのエネルギーも温暖化防止の実効を上げているとは言えず、弥縫の策にとどまっているのが現状であると言わざるを得ない。
【0003】
上に記したエネルギー以外に水素の存在が知られており、新資源として兼ねてより有望視されている。水素は陽子と電子が一対となって成り立つシンプルな元素であり、いろいろな化合物を形成する中核となる基本構造をもっている。
水素は酸化反応で燃焼し、酸素と化合した末に水となる性質を持っている。即ち水素エネルギーは最終的に水を生成する系をつくるのである。生まれでた水は様々な方法で再び元素にまで分解することができ、そこで水素と酸素として再利用することができるものとなる。水から電気分解、加水分解等で水素を取り出す方法は既に確立されており、効率の改善を目指す研究が進められているところである。
これらの方法の外に、熱化学反応で水素を取り出すという技術が登場している。680℃〜810℃程度の温度領域付近で熱化学反応を生起せしめ、96%濃度の水素ガスを分離抽出するという研究が登場している。この熱化学反応を中核技術として、複数の水素抽出法を併用する新エネルギーの供給システムを考案した。本発明は代替資源となる水素エネルギーで環境負荷をなくし、省エネルギーを重ねて繰り返し利用できる水を資源として生かす、新エネルギー普及のための工夫に重点を置いたものである。
【0004】
水素濃度はいろいろな方法で高められるが、水をフィルターとすることや水素貯蔵合金、フラーレンおよびカーボンナノチューブ等に吸収させ、精錬と備蓄を同時に果たすこと等が有効である。水素吸蔵法はシンプルであり且つ安全に管理できるものとして、今後短期間に実用化されていくものと思われる。
また水素を冷却して液化する方法が実用化されており、相当数の企業から液化装置が販売されている。ガスとして高圧のまま備蓄することは可能だが、圧力レベルが高くなることから製品化されてはいるものの、安全性とその管理面等から普及するまでには及んでいない。
水素は分子であるH2の状態で安定するが、この段階で急激に膨張する。実験的に発生させた水素は、フラスコを破裂させるほどの膨張圧力を示すことがある。驚異的な膨張速度による破壊圧の存在が、水素資源の普及を抑制してきたのは事実である。この膨張圧力あるが故に、高圧による水素ガスの管理方法は容易ならざるものとなり、可燃性と相俟って水素を危険なものとして遠ざける理由となってきた。水素を扱う上で冷却して液化する技術は、低温という属性を利用することにもなるので、高温超伝導などにその応用分野を広げ、今後一層研究開発に拍車がかかるものと思われる。
【0005】
水素備蓄技術ではカーボンナノチューブ、カーボン60などの各種の構造体を用いることで、水素を吸収する密度を更に数倍〜数十倍高くする技術が報告されている。この方法は純度の高い水素ガスを得るのに、より少ないエネルギー消費で精錬と備蓄を可能とする点に特徴がある。
これらの備蓄技術等を統合して効率の良い系を構築することで、水素応用技術の実用化を図り、環境の改善と経済の賦活を果たすことをテーマとして、調査ならびに研究の成果を本発明に纏めた次第である。水素資源の実用化とその普及促進を図るために具体的プランを提供し、速やかに実行することで環境と経済の再生を共に果たすことが目標となっている。
本発明が目指すのはEcology Environment Economy等の統合的融和であり、Energy の再生を通してEarthの回復を願う“E”で始まる各カテゴリーに属する概念の総合化による平和の実現である。2001年9月11日の同時多発テロは、貧富の差が原因となって招いたものである。この認識は、世界が共通して持つものであると理解されている。
エネルギーに資源を消費しない水・水素循環型エネルギー供給システムの登場は、経済性および環境性能、そして生態系等の観点から、地球に平和を齎すものとして機能していくものと思われる。輸入していた各種の地下資源は、豊富な水資源で置き換えられていくであろう。エネルギーに費やす割合が減れば、国富は増加して社会が発展していくからである。平和は繁栄の裏付けがあってはじめて、地上に実現するものである。
【0006】
この熱化学反応プロセスが起きる680℃〜810℃程度の温度領域付近で、水から水素を取り出せることは従来の電気分解法にはない大きな特徴だといえる。即ち捨て去っていた排熱を有効利用する道が開けるからである。熱資源を再利用することができるようになり、エネルギーの高度利用をあらたな方法で図ることが可能となる。この熱化学分解反応は蒸気の状態で水を化学的に元素レベルにまで分解するもので、水蒸気が化学反応器を通過する事によって元素への分解が為されていく。従って蒸気発電の機関では熱を帯びた蒸気をそのまま利用することができる。蒸気発電に求められる温度は200℃〜800℃程度とされているので、発電した後の蒸気をこの化学反応器へ直接引き込み、必要な熱を与えてその場で水素ガスを生む回路を設営できるようになる。生まれ出た水素は一定の圧力管理下で一時備蓄を経て燃料電池へと送られ、発電に寄与するものとなる。
水素は常温常圧下で急激に膨張することは既に述べた。この水素分子発生時の圧力を制御された温度管理下で利用すれば、機械的に加圧することなく圧力容器に一定量のガスを備蓄することができる。この水素が膨張する現象を推力に変えているのがロケットエンジンの噴射である。水素を燃焼に用いるメリットとして、その燃焼速度が極めて速いことがあげられる。膨張速度を燃焼で推力に変えている噴射現象に、水素エネルギーがもつ能力を観ることができる。
【0007】
燃料電池は発電した後純水を合成する。この水を再利用して燃料電池等の資源とし、繰り返し使うことで循環型システムを成り立たせるモデルは、特願2001−153487「エネルギー供給システム」に於いてその方法が開示されている。
水素ガスを燃焼させるガスタービンや蒸気タービン等で発電を行いながら、発生した蒸気と熱を化学的に反応させて水素を抽出し、これを水素タービンや燃料電池等で再度発電に使用するようなことが可能となっている。既存の装置を組み合わせることで水素資源となる水を循環させ、炭素系資源による温暖化ガス排出の削減を果たしながら、省エネルギーと創エネルギーおよびエネルギー流通の効率化を図る点に類例の無い特徴を持っている。
【0008】
原子力発電所の蒸気発電システムでは、その効率が33%であることが公表されている。排熱から水素を導くことで燃料電池が生みだすことになる電力はおよそ35%〜60%の効率であることが知られている。これらを組み合わせることで、効率を倍増させることができる。同一の熱から35%〜60%+33%の合計である68%〜93%がその効率として得られることになるからである。燃料電池はその種類により発電効率が異なる。そのためこのような幅のある表現が求められるのである。原子力発電で用いられる蒸気の温度は300℃以下である。この排熱は冷却することで水に戻されているが、逆に加熱してやることで水素を発生するものとなる。排熱は熱化学反応が起きる一定の温度に維持され、安定的に水素を分解するための熱資源として有効利用することができる。このような循環にすれば従来冷却して捨てていた熱資源を用い、加熱することで新たな水素資源を抽出するという創エネルギーが実現するのである。
【0009】
一つのサイクルに付随させる別のサイクルから、エネルギーを生みだすことができる。原子力発電のサイクルと、燃料電池のサイクルがそれに該当する。資源を無駄無く使ってエネルギー効率を上げ、低廉な資源を投入して経済効果を引き出すと、省エネルギーを推進して産業全体を活気づかせることができる。エネルギービジネスでは経済合理性の有無が、経営判断を左右する大きな要因となる。消費する地下資源を抑制することになるので、仕入れに要する資金を抑えて、獲得した水素エネルギーで新たな収益を生みだすことができるようになる。
【0010】
水を循環させる方法は資源を徒らに消費せず、エネルギーに変換されなかった粒子を再び水素原子に戻し、これに大気中の酸素を化合させ、水を作り出すというサイクルを成り立たせる。つまり水資源を再利用するというサイクルが成り立つのである。水は備蓄が可能であり、自然界から与えられる雨水、地下水乃至海水等から、水素を低コストで取り出すことができるのである。必要となる熱資源は680℃〜810℃あればよく、かりに電力で賄うにしても単位(1m3)当たり800ワット以下と従来の電気分解法に比べ大幅に低くなっている。水素抽出のコストが低いという事は、企業経営の観点からみて極めて有利なことである。
【0011】
経済効果の外に地球の環境が改善するという更に大きな変化が見込め、京都議定書の定める温暖化ガス排出削減の目標値を達成することが具体化するのである。水素は炭素と違い、この熱化学反応では温暖化ガスを一切生むことがない。全てが無機反応のプロセスとして実行される。二酸化炭素が関与する余地は100%ない。但し炭化水素を資源とする場合は、改質器に貯留される炭素が容器内に残り、それが温暖化ガスの発生源となることは考えられる。本システムで資源としているのは炭化水素ではなく、水または蒸気から取り出した水素であることから、二酸化炭素並びにメタンなどに代表される温室効果ガスは、まったく発生しないのである。
【0012】
水素エネルギーが増えていくと、それに対応して炭素資源の消費は反比例する傾向を示すであろう。エネルギーの消費量は景気動向に左右されはするものの、全体として安定しており常に一定量の需要が存在しているからである。
所謂京都議定書の定める温暖化ガス削減は、本発明を導入する国にとって、その目標とする数値の達成が早期に実現可能となるであろう。環境を汚すことなく低廉な水を起源とする水素は、エネルギー消費を急速に拡大させる可能性がある。水素エネルギーを使えば使うほど環境の回復を早め、経済は活力を取り戻して繁栄へと向かい、平和で安定した循環型社会を築くことになるものと思われる。水素という新しいエネルギーは、現在の社会を形成するシステムに影響を及ぼし、短期間に未来型の社会を築いていくその魁となるであろう。
【0013】
基本となる資源は水であり、反応させる薬品を安定して循環させるのは熱である。液体を気体に変える相転位を経て所期の反応を得るのは、加水分解の手法と同様のプロセスだが、水そのものを比較的低温である680℃〜810℃程度の温度領域で、化学反応器により水を直接分解し水素を取り出す点に他の分解法にはない大きな特徴がある。反応の前段階で水を蒸発させ熱により分解を誘導することから、海水からであっても水分解を差し支えなく行なうことができる。このことは将来に亘って、エネルギー資源の枯渇がおきないことを意味している。
【0014】
水を熱だけで分解しようとすると、4000Kまで加熱する必要がある。また、水を電気分解する装置として実用化されているものは、単位(1m3)あたり4kwh〜6kwhの直流電流を必要としている。このため抽出した水素を用いて燃料電池等で発電するには、エネルギーの収支が釣り合わず、専ら液体水素として、または燃焼させて化合物を熱分解する手段として、産業界または宇宙開発の分野において限定的に使われているに過ぎなかった。
最近登場したブラウンガスでは水を電気分解するのに、単位(1m3)あたり2kwhの電力で済むようになっている。水を分解する方法としては電気を用いる技法が主流であり、触媒や加水分解などの補助的な技術も存在するが、単独で実用に耐えるレベルには至っていないのが現状である。
炭化水素を用いる燃料電池の改質器の技術として、加水分解法が採用されている。本発明の前提となる水を資源として水素を抽出する方式が浸透するにつれて、炭化水素系燃料電池は市場占有率を低下させていくものとみられる。これは資源に要する費用の多寡が経済合理性を決定するとみられるからで、有限な化石燃料を購入する方法よりも、豊富に存在する水を循環再利用する方が合理的であるとの認識に基づいている。熱化学分解に要する費用は排熱導入法、自然エネルギー導入法に限れば極めて低いものとなる。
【0015】
また特願平10−143770では水素エンジンシステムで燃焼させた熱で化学反応をおこし、獲得した水素の一部を還流させて再び水素エンジンシステムで熱化学反応を得るものが提案されている。しかしこの方式は構造が複雑であり、エネルギー効率からみても実用に耐え得るものとはいい難い。研究自体は着眼に見るべきものがありながら、効率の向上を優先するが故に水素発生のプロセスを重層化させ、機構そのものを複雑にするという新たな課題を生み出している。
【0016】
水素発生法はこれ以外にも様々なものがある。副生水素は化学工場で生じる副産物の余剰水素を集めたものであり、光触媒を使うモデルは光による酸化還元反応を使って、水から水素を取り出しこれを捕集するというものである。また微生物が吐き出す水素を合金等に吸蔵する方法や、バイオマス系或いは糞尿などの消化ガス等から改質器を経て水素を取り出す方法、直流電流ばかりでなく交流電流からも電気分解ができるブラウンガス応用法や、日本原子力研究所大洗研究所ですすめているヨウ素と二酸化硫黄を反応させる熱化学分解法、東京大学で研究中のリアクター内で化合物の循環反応を起こす熱化学分解法、およびマグネシウムを反応促進剤とする方法等々多岐にわたって様々な技術が存在する。
【0017】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明は、上記の様々な課題を解決し、水素エネルギーを利用したエネルギー供給システムに関し、またその応用形態である各種システムを提供する。この水素を水から抽出する技術を応用して、環境負荷のない代替エネルギーによる循環型のエネルギーモデルを考案した。
このアイデアは装置等の組み合わせを工夫することによって、省エネルギーを図りつつ環境を回復させるためのエネルギーサイクルを導くものである。循環型であるのは水をリサイクルするからであり、水素を中心とするエネルギーモデルを成り立たせている。代替資源として優れた特性を持ち、現在のエネルギーモデルにこれを置き換えていく能力を持っている。水素は21世紀以降の主要なエネルギー資源として、末永く文明を支えていくこととなろう。
【0018】
本発明の根拠となる熱化学反応に関する基本技術に係る特許は、中国に於いて既に登録されている。(2001年9月1日付け第445200号)この基本技術は、ある種の金属酸化物と塩素系化合物を反応させることで成り立つことが開示されている。しかし更に効率を改善するための研究開発が進み、より一層進化したモデルの概要が発表されている。その実用化を前にして、現在様々な計画が検討されているところである。
該発明は薬品の調合を変えることなどで多くの周辺関連特許を容易に派生し得る可能性を持ち、技術内容を開示するには慎重でなければならないものとなっている。技術内容の公開を伴う形式の特許が出願される見込みは、今のところ得られていない。熱化学反応一般から同様に水素を抽出する研究は複数存在しており、この分解プロセスに類似する水素抽出法は今後、効率の改善を目指した開発へと遷移していくものと思われる。
【0019】
本発明では効率に於いて優る熱化学反応の応用技術を採用し、水素ガス発生装置を主体に該装置から水を分解して得られる水素ガスを用いる、さまざまな応用技術に及ぶアイデアを提供することを目指している。代替エネルギーとして水素が持つ潜在能力を引き出して、既存のエネルギーシステムが抱える多くの課題に対する解を提供しようとするものである。
エネルギー効率において勝る水分解法のいずれを採用しても、本特許の対象とする水素資源の供給システムが成り立つ。電気は保存することができないという性質を持つが、水素は高圧ガスまたは液化水素及びその他の方法で備蓄することができ、システムにバッファ機能を持たせて安定供給を図る道を展くものとなる。選択の要点は経済効率の良し悪しに絞られる。効率における差こそが、経済性を規定する因子となるのである。
【0020】
早急に解決を図らなければならない問題として、温暖化ガス排出削減の実行が求められている。気候変動枠組み条約即ちCOP3と呼ばれる京都会議に於いて採択された温暖化ガスの削減案、所謂京都議定書の批准承認が相次いで成立するようになってきた。わが国では2002年度通常国会で批准され、正式に承認されている。
温暖化ガスの削減は基準となる1990年度の数値に対してその6%を2012年までに削減することが義務付けられる。その結果産業界全体に及ぼす影響は、甚だ大きなものになるとみられている。炭素資源を主流とする既存のエネルギーモデルは、より一層の省エネルギーを推進しなければならず、生産活動を制約する因子となって経済に作用する。経済が拡大を目指す限り、温暖化ガスの排出量は増大する。京都議定書を遵守する以上、温暖化ガスを削減しなければならないのは当然である。相反する事柄を調和させるのは容易な事ではない。排出権の取引などが検討されているが、実施されたとしても早晩飽和するであろう。地球が許容する温暖化ガスの量には限界があるからである。生産活動は抑制されざるを得ず、その結果景気を押し下げていくことが予測される。
【0021】
景気の回復が遅々として進まずわが国の国債に対する格付け評価が、過去に例を見ない程大幅に引き下げられ途上国並みになったことは、経済再生のプログラムにとって阻害要因となる。このような不況下にあって温暖化ガスの排出を大幅に削減するのは、まさに至難の技と言わざるを得ないのである。生産に要するエネルギーを減らすことなく、環境に負荷を与え続ける温暖化ガスを所定の数値まで減らすには、代替エネルギーとなる水素資源の早期導入が絶対的に不可欠なのである。
【0022】
そこで水素資源を水に求め、自然エネルギーなどの他熱を用いてこれを安価に分解し、抽出した水素を精錬備蓄して炭素エネルギーから水素エネルギーへの転換を図る、という経済的に有利な方法を中心にシステム構成を検討した。資源を水とすることでエネルギーコストを下げ、エネルギー自給率を向上させて、枯渇する懼れのないクリーンエネルギーを取り出すことを目指した。
相反する関係にある環境の回復と経済の回復を同時に図ることが、本発明を応用することにより可能となる。市販製品を組み合わせるだけで、水素エネルギーの供給システムは短期間に実用化する。
地球の温暖化は、炭素エネルギーを採用したことによる必然の帰結であった。やむを得ない経緯とはいうものの、最早深刻な状況となっているのは紛れもない事実である。温暖化ガス発生の主原因は二酸化炭素であることは既に明らかであり、京都議定書の批准並びに承認が世界各国で今後鋭意なされるようになっていくことは、高い確率で予測されている。
【0023】
水素を水から抽出する技術は多数存在するが、発生効率が低いという問題があって普及をみるに至っていない。しかしこの数年で新しい技術がいろいろと登場し、一部は既に市販されるようになってきたことから、水素資源の実用化が急がれる事態に対応できるようになっている。
電気分解法、ブラウンガス応用法、液化天然ガス改質法、バイオマス/メタノール改質法、光触媒分解法、熱化学反応法、加水分解法、微生物活用法、副生水素応用法等様々なものがあり、それぞれに特徴を持っている。
本発明では熱化学反応で水を分解する技術を用いる方法を中心として、排熱の再利用を図りつつ一次エネルギーを峻別して個々に成り立つ系として捉え、独立したシステム並びに該システムの統合ネットワークを提案する。熱化学反応に限らず効率よく水から水素を発生させる方法を援用して、エネルギー産業が直面する諸問題の解決を図るシステムを示す。環境と経済の再生を実現することが、本発明の目指す到達点であるといえる。
【0024】
独立したシステムを複合させエネルギー効率の向上を図り、相乗効果を生みだすよう配慮したモデルに加えて、これらをネットワークすることで安定供給の道を開き、相互にエネルギーを融通しあう流通機構を構築する。更に同様の上位階層と連携することで安定供給の道を拓き、相互補完並びに発生したエネルギーの有効利用を図る等、創エネルギーと省エネルギーに関する応用技術をシステムとして纏めたものである。
【0025】
【発明の実施の形態】
請求項1については、原子力発電所が生みだす高温の排熱と蒸気を用いて、熱資源の再利用を図ることを目的に、蒸気から熱化学反応を経て水素を抽出し、エネルギー資源とすることを目的としている。排熱の再利用を図り、水素エネルギーを蒸気から取り出す点に特徴がある。
熱化学分解による水素を水から抽出する方法は、日本原子力研究所大洗研究所で開発が進められている。この分解モデルはヨウ素と二酸化硫黄を900℃の温度領域で反応させ、水を元素に分解するというものである。該研究は現在開発の途上であり、実用に供される予定は未だ公表されていない。また東京大学でも類似の研究が進められており、一部の反応成分を循環利用して安定的に水素を発生する方法が公開されている。
中国で発明されている同様のモデルでは、反応促進剤として用いられる薬品名こそ開示されていないが、680℃〜810℃で同様の反応を生起し、使用された薬品等は八ヶ月において毎日数時間の連続的使用に耐えたことが公表されている。連続運転を停止したのは装置を改善する準備ができたためであり、尚一層の連続的使用を可能とすることが示唆されている。
この研究成果を応用して水素を排熱および排蒸気から引き出し、水素資源から燃料電池で電気エネルギーを創出したり、燃焼による熱エネルギーへと転換したり、また内燃機関等で動力としてエネルギーを取り出したりすることが、今後次々と実用化していくことが見込まれる。
【0026】
産業用水素資源として原子力発電所が生む排熱を再利用して水素を導くのは、エネルギーシステムとして合理的なものである。捨てていた資源である排熱を善用することになるからである。但し沸騰水型原子炉の蒸気は放射能汚染の心配があり、熱交換を行う方式の加圧水型原子炉で生じる蒸気発電の方式が安全だが、閉じた系であれば核による汚染物質伝播の問題はどちらも発生しないものと見られる。どちらの発電方法でも300℃以下の蒸気を用いて、原子力核反応による熱を用いた蒸気タービンで発電を行っている。この排熱を冷却するのではなく、逆に加熱することで熱化学反応を誘導し、経済的に水素を手に入れることができるようになる。
【0027】
水素資源は冷却して液化することで膨張圧力の発生を回避し、またマイナス253℃というその温度特性の低さから、金属間化合物による高温超伝導状態を維持する能力をもつ。この事は電気抵抗のない環境で大規模な電力流通を実現できることを意味し、高温超伝導電力貯蔵と高温超伝導電力輸送並びに高温超伝導フライホイール方式での電力貯蔵や、水素ステーション等の建設までネットワークとして成立せしめることを可能とするのである。(図1)
【0028】
水素分子であるH2を構成するものには、二種類のタイプがある。原子核スピンの向きが上向きに揃っているものが一つ、そして原子核の一方が反転して下向きになっているものが他の一つである。後者の方をパラ水素と呼んでいる。前者はオルソ水素と呼ばれているが、エネルギーを比較するとパラ水素の方が小さくなっている。このため液体水素を放置しておくと、徐々にパラ水素になろうとしてエネルギーの放出が起こるのである。放出されたエネルギーが発熱を誘起し、気化を進めて液体水素の比率は徐々に下がっていく。オルソ水素がエネルギーを放出して、パラ水素になるからである。その現象が発熱を齎すのである。こうして液体水素は気化していき、少しずつ減っていくことになる。存在比率は一般にオルソ水素が75%であり、パラ水素は25%となっている。気化率は一日あたり約4〜6%程度と見込まれている。
【0029】
気化と同時に発生する膨張圧力を利用して燃料電池へ水素を導けば、そのまま発電用の資源として活用することができる。加圧機を設ける必要がないのである。シンプルな発電システムを構築することができるであろう。また予めパラ水素だけにした状態を作っておけば、液体水素を気化させる発熱の問題は回避できる。パラ水素を人為的に導くのは、触媒を用いることで既に可能となっている。液体水素温度レベルでの高温超伝導現象を導くのは、研究開発の終期にある技術であると看做される。
【0030】
液体水素は適宜補充することが可能で、高温超伝導電力輸送は金属間化合物をケーブルに加工することで実用化する。金属間化合物とは特定の金属結晶の中に他の化合物を編入した複合型の構造体を指し、単なる金属同士を混ぜ合わせた合金とはまったく別種のものである。これまで高温超伝導を起こす素材は、おしなべて金属の酸化物であった。金属酸化物のことは一般にセラミックスと呼ばれている。焼き固めて作るものなので、ケーブルとするには向いていない。ところが金属間化合物による高温超伝導素材は加工ができる。金属は加撓性があり、ケーブルとして適当な素材となるのである。
【0031】
液体窒素の低温であるマイナス196℃付近の温度領域で起きる高温超伝導は、理論的に説明できない部分が残されており、また超伝導状態を常に100%維持できるという保証が与えられている訳でもない。素材となるのは金属酸化物に限られており、セラミックスというその性質上組成は脆弱なものとならざるを得ない。超伝導は単位あたり最大の電流を許容するので、この状態が安定的に維持できない素材では安全が保障されず、応用分野は限られる。民間の研究機関では電力会社と共同で、この金属酸化物による高温超伝導送電ケーブルの開発に着手している。
しかし金属間化合物による高温超伝導技術の出現は、液体窒素に代わって液体水素が超伝導現象の主な冷媒となることを示唆している。液体水素は装置を導入しさえすれば水から自在に作り出すことができ、資源としての希少性がないことからエネルギーコストを下げていくであろう。投入エネルギーは蒸気タービンの排熱等で賄えるからである。液体水素は需要地で生産することができ、そのために流通経費を削減する能力を持っている。
【0032】
熱化学分解法により得られた液体水素は、その場でエネルギーに変換することができる。液体水素流通機構の如き第三者機関等から調達するまでもなく、液体窒素を代替して現地で高温超伝導システムを成り立たせるようになる。調達の容易さとより低い温度特性から、高温超伝導をおこす領域を拡大させる効果があり、液体水素の需要は液体窒素を凌ぐようになると思われる。液体水素をつくるには水という資源があればよく、液化装置は販売実績を積んでいるので、技術的な問題は残す所機器の連携と調整程度で済むものと思われる。従って液体水素は経済性と流通面等において、液体窒素を凌ぐものとなる可能性が高いのである。
【0033】
液体水素を流通させる機構を創設して水素資源を主要なエネルギーとして活用すれば、高温超伝導を維持したあと燃料電池で発電したり、水素ステーションで電気自動車の水素燃料を供給したりするなどの仕組みを構築できる。電力事業が完全自由化されると、水素ステーションや水素を発生する能力を持つ施設等が電力事業を行うようになるであろう。
完全自由化は2007年頃として閣議で了承がなされており、市場開放圧力などもその段階までには逓減し、完全自由化した後は水素資源が温暖化ガスを希薄化していくこととなろう。
この方式を採用することで新しい産業が生まれ、経済再生を支援する効果もでてくるのである。高温超伝導物質による送電事業が成り立つと、長距離の電力輸送ばかりでなく送電の仕組みを新しいものに置き換えてゆき、産業基盤の更新需要が起きてくるものと見られる。すなわち新規需要が発生し、新市場を創出していくようになるのである。
【0034】
高圧の送電線による電力輸送で失われている電力は、概ね10%とされている。送電線が持つ固有の電気抵抗の所為で失われているもので、ジュール熱として大気中に放出されている。この熱が大気を暖める作用を持つのは言うまでもない。高温超伝導による送電が可能になると、この電気抵抗によるエネルギーのロスと熱の発生を共に無くすことができる。
【0035】
液体水素で実現できる高温超伝導は、青山学院大学工学部でなされた発明に基づいている。二硼化マグネシウム(MgB2)を用いる高温超伝導物質で、マイナス234℃より低い温度領域で超伝導が発現している。液体水素はマイナス253℃〜259℃の温度領域で液相を維持し、これを下回る温度領域では固相となる性質がある。二硼化マグネシウム(MgB2)による高温超伝導は、発現温度がこの液体水素の冷熱の範囲内に収まっている。原料となるのは硼素とマグネシウムであり、豊富に存在する物質であるところから、線材製造に要する費用は低廉でありその経済性は高いものとなる。
従来液体ヘリウムで行っていた超伝導現象を、液体水素でも引き起こせるようになるのである。水素は需要地で水から得られるので、液化装置を導入することで冷媒の入手は容易となる。液化装置はいろいろなものが市販されており、導入に問題はない。このようなことから液体水素は安価に、現地で、簡単に手に入るものとなっていくであろう。
【0036】
エネルギー資源は有限な炭素系から、再生が可能な水素系のものへと転換されていくことはほぼ確実と思われる。京都議定書の批准承認は、水素エネルギーへの転換を早めることとなろう。
原子力エネルギーもまた有限な資源に依存することから、将来は水素エネルギーへとシフトしていくものと思われる。軽い水素は放射性廃棄物を生産せず、環境に負荷を与えることがない。既存のエネルギーは地下資源であり、採掘に要する一時エネルギーには動力が求められるのである。このため資源を確保するには費用が発生している。生産コストと輸送コスト、及び備蓄精製コスト等が変動要因として関わり、国際経済を不安定なものにしている事実は歴史的なものである。
【0037】
請求項2については、請求項1と同じ基本原理から熱化学反応を介して水から水素を抽出するものであり、最小の単位となる家庭または事業所等で行う程度の水素エネルギー供給システムを対象としている。熱化学反応現象を利用して水から水素を取り出し、該水素から得た電力を自家消費する他、余剰電力を電力会社もしくはその他の電力事業者へ融通し、または電力事業の完全自由化をうけて事業者として登録し、余剰エネルギーである電気または水素或いは双方を直接第三者へ販売すること等を目的とするシステムである。
水素を液化する場合は液体水素流通機構と連携し、超伝導送電を兼ねたネットワークの一翼を担うことが可能である。水素自動車および燃料電池自動車へ、水素燃料を供給する能力も同時に発生する。余剰のエネルギーを水素として備蓄することと、超伝導による電力貯蔵との併用が成り立つのである。
【0038】
現時点で確認されている水素酸素の発生比率は、水素が96%、酸素が3%、その他不純物1%であり、発生する水素資源はこれらの混合ガスである。酸素濃度が爆発を惹起する領域である4%〜75%の範囲を回避しているので、この点から見て本熱化学反応で生成する水素の危険性は低いと言える。3%程度の酸素濃度は密閉されている限り、爆発の危険はないのである。96%の水素濃度を更に高める作業は備蓄する直前に行えばよく、酸素が関与しない密閉された回路の中で、精錬と濃縮を行うことで安全性を高めていくことができる。
また水素吸蔵合金やフラーレンに吸収させるケースでは、プロセスそのものが精錬機能を有し、金属分子または有機分子の構造体中に水素を補足するので、安全性はより高いものとなる。
【0039】
水素から電力への変換は適用可能な発電機即ち水素タービン並びに水素エンジン、燃料電池等で行うことができ、変換された電気エネルギーを自家用とする他、事業用として直接間接を問わず取引することを目的として、電力の流通ビジネスに影響を与えるであろう。
水素をガスとして燃焼に用いる場合、焼却炉、溶鉱炉等を除き、燃焼のエネルギーが強くなり過ぎる点に留意しなければならない。水素酸素の混合比率を調整すること等で出力は制御でき、家庭用の燃焼機器に応用することは不可能ではない。直火を扱うこととエネルギー効率が落ちる点を考慮し、住宅などでは燃焼に代わって電力がその役割を果たす方が望ましい。電気エネルギーは制御可能であるが、水素エネルギーの制御は安全性が確立されている訳ではない。高温を必要とする産業分野では熱効率を優先し、住宅用の民生分野では安全性を優先すべきであろう。
【0040】
一般用の燃焼器具で水素を燃やすのは危険であるばかりではなく、燃焼出力を調整することで対応しようとすればエネルギー効率は下がらざるを得ない。熱は分子の振動状態を表しており、電磁波としてその温度に固有の波長を持っている。物理法則で証明するまでもなく、火から手を遠ざけると熱を感じなくなることは、誰でも体験的によく知っていることである。このため出力調整を行うことは、エネルギーの無駄に直結することになるのである。省エネルギーと安全性の観点から、水素は燃料電池を経て電気エネルギーとする方が望ましいといえる。電気は備蓄が困難であるけれども、水素資源としてなら保存できる点に着目した。エネルギーの貯蔵をユーザーサイドで行えるよう配慮した点に特徴がある。
【0041】
調理・給湯などは電気を用いる方が簡便であり、燃焼による火災の心配もなく、また大気を暖めることもない。今までは温暖化ガスを生む発電方法が関与していたために、環境に影響を及ぼす悪性因子となっていた。また経済性の面からみても、電気よりはガスの利便性の方が注目されてきた。しかし水素エネルギーから電力が得られるようになると、電気は更に優れた性能を発揮するようになる。電磁調理器や電気給湯器、自然冷媒による貯湯が可能なエコキュート等の電機製品が多数市販されており、本発明をこれら製品群に応用していくことで、当該製品の急速な普及を促す効果を発揮するものと思われる。
経済性と環境性能を安定的に満足する汎用エネルギーモデルは、本発明に拠る解以外は現在のところ見当たらない。エネルギーを水から得るこの方法は、コストを下げると同時に温暖化ガスを減らしていくという抜きん出た特性を発揮するものである。
【0042】
超伝導技術を応用する電力貯蔵は電流をバルク材に備蓄する方法と、フライホイールによる運動エネルギーに変換する方法とがあり、共に実用化可能な段階にある。超伝導を維持する物質である液体ヘリウムが、極めて高価であることが普及を阻んでいるのである。コストに見合った収益が得られる医療用装置として、既に病院に多く導入されMRI等に実用化されていることは衆知の事実となっている。
貯蔵以外では超伝導発電機、超伝導モーターなどの存在が知られている。高温超伝導状態を維持するのは液体水素があれば良く、−150℃付近で発現する高温超伝導バルク材の冷却まで、液体窒素に代わって水から取り出した液体水素により、経済的且つ安定的にその冷却が行えるようになっている。高温超伝導とは−296℃より高い温度領域において発生する超伝導現象のことである。
【0043】
液体水素の流通インフラ構築後であれば、経済性を活かした簡便な水素資源の供給が成立する。液体水素レベルの温度領域で超伝導を発現する物質は、青山学院大学と日立製作所が共同で開発を進めている。この技術を応用すると、加撓性のある超伝導送電線の量産化が可能になる。超伝導による送電線のネットワークが、短期間で実現するであろう。
水素の生産が需要地でできるなら、液体水素の生産も同様に現地生産が可能である。水素は液化することで備蓄可能なものとなる。高圧で備蓄することも、また水素を選択的に取り込む合金や化合物に吸収させることも同様にできる。備蓄した水素は燃料電池で任意に発電することができる。発電形態としては独立分散型に属し、エネルギーの自給自足を可能とするばかりでなく、防災対応能力まで保持するシステムとなるのである。(図2)
【0044】
請求項3については、製鉄所などの工場が持つ高温の排熱を利用し、熱化学反応で水を分解して抽出した水素で発電を行い、獲得した電力および水素資源を自家消費または外部への販売に供して企業の経営資源とする、排熱の再利用を目的としたエネルギーシステムである。水素エンジンなどの内燃機関および焼却炉、または水素タービンを用いる二次的発電システムを付加できるコ・ジェネレーションシステムであり、発電後に得られる水を循環させ、該水資源の再利用を可能とする複合型エネルギー供給システムである。(図3)
【0045】
電力事業の自由化を受けてエネルギー市場に参入する企業が増加しつつある。保有する設備の稼働率を向上させる効果と、新規市場の開拓を同時に図ることができるので、今後電力供給事業に乗り出す企業は増加していくものとみられる。既存の発電機が生む余剰電力等を活用して、低廉な電気エネルギーを供給することが一般の企業にも認められている。電力料金は低下する傾向を示しており、自由化がわが国の経済にとって有効かつ有益であることは理解されている。しかし資源を輸入に頼らざるを得ない状況は依然として存在し、電力料金は為替相場の動向に大きく左右されている。また資源の供給不安や残存埋蔵量の低下による希少性の認識等将来の不安定要因が隠されており、そのためエネルギーの安定供給が国の大きな課題となっている。これが所謂エネルギーの安全保障政策を必要ならしめているのである。エネルギー資源が高騰すれば、経済は負担を強いられ国家の成長に影響がでるからである。
水から得る水素資源が登場すると、これらの問題を解消させることができるのである。本発明はエネルギー資源に恵まれないわが国を、水を資源とすることによってエネルギー大国へと変えていく点に特徴をもつ。水素エネルギーの可能性に着目し、その実用化を進めて様々な課題を解消することを目指している。
【0046】
水がエネルギーとして利用されるようになると、資源を輸入する必要がなくなるであろう。地下資源の購入に充てていた資金を国内にとどめ、内部留保を厚くして景気浮揚を図り、更には再投資等へと富を配分できるようになる。独立分散型でのエネルギー自給自足が成り立つことから、災害などの非常時にも日常生活を営むことができ、電気と熱並びに水を一定期間確保する能力を企業や住宅がもつようになるのである。水素資源は備蓄がきき、雨や海水または地下水等からでもエネルギーを採取することができる。石油や天然ガスのように資源を消費することがない。繰り返し再生する水から、エネルギー資源である水素を取り出せるのである。循環型社会の存立は、循環型エネルギーサイクルがあって初めて実現するものである。工場などが生みだす排熱を使って、水から水素を取り出す点に特徴がある。
【0047】
請求項4については、水素を取り出す一次エネルギーを太陽光に求め、自然から得られる資源を活用して経済性の高い水素生成プロセスを導くことを目的としている。太陽光発電は年間を通じて消費する電力の、およそ50%程度を発電しているという実績をもっている。太陽電池の課題は発電能力が日照時間と入射角度で大きく変動し、不安定であることの外に発熱に弱いという問題を抱え、装置の設置面積を縮小できなくしている点にある。それが装置価格の高さと相俟って、太陽光発電システムの普及を遅らせてさせてきた主な理由となっている。
太陽のエネルギーを安定化させることを目的に、水を熱化学反応させて水素を備蓄し、相互補完と相乗効果を引き出す点に特徴をもつシステムとした。熱化学反応を維持するには0.8kwhの電力があればよい。その為通常の家庭用太陽電池では3〜5kwhの設備を必要としているものが、最低の規模なら1kwh以下で賄えるようになるのである。エネルギーの備蓄が水素を貯めておくことで可能となり、従来の太陽光発電システムが必要とした設備を最小化して、省エネルギーの実現を図ることができるからである。太陽電池を高価なものにしている大きな理由は、最大の電力に対応する設備を常に用意しなければならないという点にあり、このため屋根一面を蔽い尽くす程のモジュールを必要としたからである。
【0048】
太陽電池に熱化学反応を組み合わせて水素を備蓄するシステムを構成すれば、太陽電池を1kwh以下の小さなシステムに落とすことができる。蓄電池、蓄電器を併用することで、完全に独立した自給自足型の電力供給系統も築けるのである。住宅で必要となる電力は時間帯によって変動するため、最大需要を賄う電力は数時間程度であるに過ぎない。余った電力で水素を貯めておけば、必要な時に燃料電池が発電して、必要なだけエネルギーを供給することができる。
水素資源を貯蔵すると余剰電力が発生し易くなることから、電力会社または新設の電力事業者と系統連携をとり、相互間で電力を融通しあう仕組みを構築すればよい。家庭用の電力は常に最大量が求められている訳ではなく、無負荷に近い時間帯がかなり存在することは既に触れた。水素を備蓄するシステムにおいて、求められる最大出力は燃料電池の側にあれば良いのである。太陽電池モジュールを最小の規模にまで落とせるのは、貯蔵した水素資源と燃料電池の連携あるが故のことである。電気エネルギーの需要に対応する最小の設備で、最大の出力を供給しようとする点に特徴がある。
【0049】
電力は社会の資産とするべきであって、電力会社は発電したエネルギーを有効に使わなければならないと考える。水素を備蓄して負荷に対応する電力を燃料電池で取り出せば、最小のエネルギー設備で足りるのである。備蓄を補って余りある場合には、系統を介して売電すればよい。電力会社が買い取る量が増えると、発電しなければならない全体量を減らせるようになる。電力会社が買う電力が増えると見かけ上経常利益は減少するが、深夜電力の料金レートを適用すれば仕入れを抑える効果がでて、収支を改善させることが可能となるのである。即ち質的向上が得られると、株式の価値は上がり企業は世の信頼を得ることになる。
余剰電力を可能な限り吸収すれば、その分日中に発電しなければならい電力量を減らせるのである。電力の売買では日中の料金体系を基準にしているが、深夜電力の料金レートを適用することで差益が発生するのである。深夜電力を用いて熱化学反応で水を分解し、水素を備蓄するようにすれば深夜帯の電力需要を喚起することにもなる。家庭と電力会社が電力をやり取りするようになると、相互補完関係が成り立ち、電力の安定供給を確実なものとして、しかもエネルギー効率を上げるという相乗効果が期待できる。余剰電力で発生した水素は資源であり、その全てを備蓄するとエネルギーの無駄がないシステムが成り立つのである。
【0050】
負荷がある時は電流として、また負荷が無い時は水素資源として、需要地でエネルギーを備蓄しておけばよろず無駄がない。この仕組みは特願2000―317757で、太陽光発電と燃料電池を組み合わせた基本システムとして既に公開されている。本熱化学反応はその基本システムに組み込むことができるものである。水から水素を取り出す部分を付け加えて、環境負荷のない循環型サイクルとする点に特徴をもつシステムとなる。
系統連携して電力会社に売電するケースでは、電気料金は相殺され利潤を生むことがない。しかし水素または水でエネルギーを備蓄するようになると、余剰の電力は売るだけで良く利潤を発生するものとなる。売買のレートを深夜電力のものにシフトするだけでも、多大の収益が発生するものとなる。太陽光発電は天候に大きく左右される点に課題があり、必要量を賄うに足りる設備を導入することで、通常の電力需要に対応させてきたものである。余った電力を系統連携など任意の流通機関へ融通すれば、設備を最大に活用することができる。事業規模を拡大すれば、収益は比例して増加するからである。設備投資を促すことで経済を賦活し、その結果産業界が動意づけば景気は回復へ向けて動き出すであろう。単なる太陽光発電だけによる系統連携については、省エネルギー効果は少ない。 従って売電の料金レートを下げたとしても、双方にとって意味のある変更とはならないのである。燃料電池と蓄電池を関与させることで、大きな省エネルギー効果と同時に経済的なメリットも発生するようになるのである。
【0051】
燃料電池は水素を直接電力へと変換するので効率がよい。熱の相を経ないからである。
エネルギーは熱となる段階でその50%が消えてなくなるのである。燃料電池が優れている点の一つはここにある。
内燃機関では水素エンジンによる回転エネルギーを利用して発電を行ったり、また動力などのエネルギーに変換したりすることができる。燃焼装置では水素タービンで発電することと、焼却炉での高温による熱分解が可能となる他、ゴミ発電の主流であるコンバインドサイクルから電気エネルギーを取り出すことにも応用することができる。この場合二次燃焼器で水素を燃やす高温の熱分解ができ、NOXの排出を限りなく抑制する焼却システムが成り立つのである。
それぞれの方式で発電を行い、複合エネルギーシステムとして効率の良いサイクルを築き、環境の回復と経済効果を発揮させることができるのである。(図4)
【0052】
請求項5については、水を分解するシステムの一次側に、風力発電装置を置くことで成り立つエネルギー供給モデルである。水から水素を取り出す方式を組み込むことで、風力エネルギーを用いて水素を得てこれを備蓄し、二次側に燃料電池、内燃機関、燃焼装置等を設けて、複合発電方式から電力を安定供給しようとする点に特徴がある。この方法は風力発電の課題であるところの電圧の変動、または風力エネルギーのふらつき等を吸収し、水素資源による発電の複合化と液化水素等による資源備蓄、並びに該冷熱を活用する高温超伝導電力貯蔵と高温超伝導電力輸送を併用して、水素ステーション等へ水素資源を供給しながら、エネルギーの分散備蓄を可能とするシステムにまで発展させることを目的としている。
【0053】
自然条件である風力が満足に得られない時などには、備蓄した水素を取り出して電力に変換することで対応でき、電力事業の自由化を受けて該電力供給ビジネスの一翼を担う一大勢力にまで発展させてゆくことを見込んでいる。本方式では超伝導応用技術を加味したエネルギー備蓄と、その輸送並びに供給までを一元的に管理することを前提としている。そのため従来は電気としてのみ販売していたエネルギーを、水素および冷熱を含めた総合的なエネルギー資源として、新たな流通機構を介して各地に供給していくことができる。
【0054】
請求項6については、その他の自然エネルギー即ち地熱発電、高温岩体発電、潮汐力発電、波力発電、海洋温度差発電等の所謂再生可能エネルギーを一次エネルギーとするシステムであって、自然エネルギーの特質である資源を消費することがなく、故にエネルギー購入費用が発生しない点を採用し、経済性と環境性能の向上を目的とした水素資源の循環系を成り立たせる点に特徴がある。二次側の形態は請求項3〜5に記載するものと概ね同様であり、その一部乃至全部を複合させてエネルギー効率の向上を目指すシステムを形成することができる。この部分の組み合わせ方は事業を行う企業の投資スタンスにより、柔軟に変動して差し支えない部分であり、エネルギー効率の向上を図るための裁量余地を残している。
【0055】
請求項7については、商用電源を熱化学反応による水素発生システムの一次エネルギーとするものである。熱化学反応が要求する消費電力は単位あたり0.8kwh以下であり、電気分解法の4kwh以上のワッテージより遥かに少なくなっている。発熱体によっては更に消費電力を小さくすることが可能なヒ−ターが存在している。これらの技術を総合して、安定的に水素を抽出するシステムを建設することができる。この組み合わせをとることによって、既存の電力産業がもつ課題の一つである「電力の負荷平準化」を図ろうとする点に特徴がある。
【0056】
電力の負荷平準化とは年間の電力需要が八月中旬の午後一時頃にピークとなることから、最大需要を充分に賄うだけの電力供給能力を電力会社が負うことで発生する、エネルギーの需給ギャップに起因する問題である。そのため深夜の時間帯では電力供給能力が過剰となり、需給間の乖離幅が最大となっている。この現象を緩和するために電力料金を下げて、深夜の電力需要を引き出すなどの措置がとられている。このため電力需要を新たに喚起する必要があり、この時間帯の低廉な電力料金で熱化学反応から水を分解し、水素を取り出して高圧タンク或いは液化、または金属その他の化合物等にこれを備蓄することにより、該問題を緩和することができるようにする点にポイントをおいた。
【0057】
深夜電力を利用した熱化学分解法で水素を備蓄しておけば、余剰電力を活かして日中の電力需要に対応させることができる。備蓄した水素を用いて、燃料電池で発電を行えばよいからである。自家で消費する必要がなく余剰電力となるような場合には、系統連携をいかして発生した電流を逆潮流させ、商品として流通させればよいであろう。
電力会社はこの電気エネルギーを資産として系統に取り入れて、日中の電力供給圧力を緩和する施策を実行できる。その際、廃棄している接地電流の有効利用と、深夜電力の需要拡大効果等で利益構造を改善することができ、これが収益の増加を齎すことになると思われる。深夜電力に適用する料金体系を導入することで差益を生じ、これが収益の増加を齎すことになるのである。また売り手にとっては売却益が得られるので設備の資産効果が生じ、新規に電力事業を行う事業者となることができる。つまり双方にとって大きなメリットがでてくるのである。水から得た水素で発電した電力を売却することで収益が生じ、設備は投資と見なされて資産となる。電力会社にしてみれば需要地の近くで安価な電力を仕入れることができ、新規の電源開発に要する予算を抑える効果が得られるのである。電力会社は将来、電力商社としても機能するようになる可能性がある。破産した米国のエンロン社はその代表的な事例となろう。経営者の倫理観が欠如していたことが破綻の原因であったが、ビジネスモデルとして電力の流通市場を形成した事実は評価に値するであろう。
【0058】
この仕組みを採用すると日中における電力の供給圧力は下がり、深夜の電力需要を増加させることができる。電力の負荷平準化が目指す需給ギャップの緩和は、このような方法を導入することで果たせるのである。
安価というのは深夜電力の料金レートを適用して、電力会社とエネルギー生産者との間でバーター取引が成り立つからである。電力会社は日中の通常料金のレートを適用し、需要家にこれを転嫁すれば良い。この時の原価率はほぼ50%以下と見込まれるので、日中の電力の一部を水素エネルギーで補って電力の供給圧力を下げ、かつ収益の増加を図る戦略をとることができるようになるのである。エネルギーの生産者は独自に開拓した顧客に対して、販売価格を任意に決定することができ、戦略的な市場展開でシェアを獲得する道が開けるようになる。このため電力会社が自らの余剰電力を用いて水素資源を獲得し、水素エネルギービジネスを直接展開する事等も考えられるのである。
【0059】
余剰電力の売却を希望する者からみれば、商用電源から購入していた電気料金等の費用は相殺され、余剰に生まれる電力は売上としてそのまま計上できるものとなる。またバックアップ電源を確保して電力事業を円滑に遂行できるようになり、安定供給の保証が得られるので、双方にとって利益を期待できる有益なモデルとなるのである。現在の売電方式は太陽光発電でみた場合、日中の高い料金体系に基づいているので、電力会社にはデメリットとして作用している。このため太陽光発電システムの普及が、遅々として進まずにいるのである。この点は電力流通機構等の第三者機関が創設されると、新たに交渉の余地が生まれてビジネスチャンスが拡大するであろう。一次エネルギーを商用電源とする場合は、その販売対象とする顧客は独自に開拓する方がよい。営業力とサービス面で差別化を図るチャンスを活かせるようになる。その他の発電形態を取り入れた複合型にしてエネルギー効率を上げ、エネルギー単価の割引率を大きくする効果も引き出せる。
【0060】
このようにして需要者の近傍で電気エネルギーの生産供給が可能になると、既存の発電所の稼働率を逓減させてゆくことができ、需給ギャップを最終的に大きく圧縮することに繋がっていく。出力調整が可能な火力及び水力発電の負担を、次第に減らしていけばよいのである。問題となるのは出力調整が困難な原子力発電の方である。遠隔地からの送電が高圧の電流を要求するため、電圧調整を図る余地が残されていない。ここにこの問題の本質が存在するのである。
電力事業の完全自由化が成ると、電力会社でなくとも電力供給事業を行うことができるようになる。このため電力会社との間で売電の契約が成立しなくても、第三の事業者と契約することは可能である。事業は経済合理性の有無によって、その成否が決定される。無駄を内包するシステムは、遅かれ早かれいずれは破綻することになるのである。この淘汰圧の存在こそが市場を刺激して、品質と価格の競争を促し経済を成長させていくのである。
【0061】
系統連携を維持できない場合は電力流通機構等第三者機関の設立を待って、有利な条件で電力または水素資源の売却先を選択すればよい。水素によるクリーンエネルギーで生み出した電力は、流通市場においても差別化ができる。環境を汚さない方法で得た電力では、既存の方法にはない優れた特徴がある。生産に要するコストは低い。水分解による水素エネルギーは、原料費が殆どかからないのである。
環境を汚さず資源も消費しない方法によるエネルギー獲得は、世界中が渇望するものであり、本発明の対象である多様な応用方法が低廉且つ高効率である故に、世界的な標準化の対象として有力視されるものとなる可能性がある。とりわけ深夜の余剰電力を活かすという方法は、捨てている電流を用いて水素の資源化を図るという意味で、高い省エネルギー効果を導くものと思われる。
【0062】
エネルギー産業は完全自由化することが上程されており、流通市場がいずれ形成されるのは海外の先例から見て明らかである。電力供給事業を効率よく行うには、液体水素を用いた高温超伝導電力貯蔵と高温超伝導送配電との組み合わせが欠かせない。事業として導入する設備等は全て、償却の対象とすることができる。このため設備投資意欲を喚起して需要を拡大させる効果が、エネルギー産業全般において派生するものと思われる。このことは家庭の単位でもエネルギービジネスが成り立つことを意味し、家族を構成する個々人がエネルギー事業に投資する好機となるであろう。
【0063】
請求項8については、前記商用電源に代えて熱化学反応による水素製造の一次エネルギーに、自家発電の各種設備を導入するモデルである。既設の自家発電を装備している場合は、その電力の一部を水素発生の一次電源として補助的に用い、既述した「電力負荷平準化」問題の緩和に寄与すると同時に、余剰電力を売却して事業収益とする道が拓けるようになる。
自家発電ではいろいろの発電機が活躍している。小型の水力発電機もそうであるし、炭素系資源を燃やすマイクロガスタービン発電や蒸気タービン、または炭化水素を資源とする燃料電池やエンジン式の発電機など多くのものが挙げられる。しかしながら資源を消費する形式の発電機を新たに導入するのは、水を資源とするエネルギー創生の方法から見て、経済的に成り立たないものとなる可能性が窺える。低廉な水素資源は、有害で高価な資源を駆逐するであろう。従ってこのモデルは既存の発電機を保有している場合、または近傍に流れのある小規模な水力発電設備がある場合等に絞られていく。
【0064】
本熱化学反応による水の分解法は消費電力が少ないので、自家用の水力発電装置と組み合わせて余剰エネルギーを備蓄すると、環境負荷のない発電システムを構築することができる。発生した電流を電力会社または電力流通機構等へ売却して、投資資金の早期回収を見込むことも可能である。余剰電流は資産であり、換金が可能なエネルギー資源なのである。このため事業として自家で使用する以上の設備を導入するケースなども、今後逐次散発的に発生してゆくと思われる。民間の資本がエネルギー投資へと向かうであろう。本方式は一次エネルギーと水資源を同時に扱うことになるので、極めて効率のよいシステムとなる点にその特徴がある。
【0065】
請求項9については、その他の発電機を一次電源に充てている。その他の発電機とは回転機から電力を引き出すよう計画されたその他に分類されるシステムであり、上昇気流および下降気流を人工的に引き出すことを目的として開発されているものなどが該当する。
特開2000−303947および特開2000−356181では竜巻発電という概念が示されている。このモデルは焼却炉などの排熱から下降気流を導き、回転機を経て電力を取り出す技術に関するものである。この他にトルネード発電という名称のものが別に存在するが、これは上昇気流を利用して回転機に動力を与え発電を行うというモデルである。本来竜巻という自然現象は、上層の大気と地表との温度差が10℃以上ある場合に起る突発的な下降気流の発現形態を指し、局地的に起きる小規模な下降気流のことをダウンバーストと呼んで区別している。
上昇気流で発電を行うのは、廻り灯篭や走馬灯として古来より知られているものの応用である。熱による上昇気流を人為的に導いて回転機のフィンに動力を伝え、ファンが回ることで円運動を起こしこのエネルギーで発電するものである。
【0066】
上昇気流と下降気流をセットで扱えば、一つの排熱から循環する対流を人工的に起こすことができる。単独での使用では取り出すエネルギーの量が少ない。効率を考えると統合することが望ましい。往復の経路を分けて気流を独立した対流とし、それぞれから回転機で電力を獲得するようにすれば、相乗効果がでて効率は二倍相当のものが得られる。この組み合わせはゴミ焼却炉などを保有する地方自治体等の施設に適している。
【0067】
これ以外の発電方法は可能性があるというにとどまり、実用化のレベルに達していないことから本発明の対象とする応用技術とは看做さない。理論的に成り立つものであり且つ実用に供されているかまたはその直前の段階にあるものの中で、効率において優るコンポーネントを組み合わせることで、新しいエネルギーの統合モデルを示していくのが本発明の眼目である。基礎研究段階のレベルにある技術は、従って本発明の要素技術とはしていない。実用化可能な装置と技術とのコンビネーションで相乗効果を創出し、環境と経済の早期回復を目指せる点に特徴がある。
【0068】
請求項10については、ボイラーが生みだす高温の蒸気を再加熱し、熱化学反応を引き起こす温度で水を熱化学分解し、水素資源を取り出して燃料電池で電気に変換したり、内燃機関または水素タービンを用いて発電したりする等の他、直接燃焼させてボイラーを過熱状態に維持するものである。排熱と排水を回収して、そこから水素を取り出しこれを燃焼と発電に用いる循環型のシステムである。過熱とは沸騰させた蒸気を更に加圧して、より高い温度領域にまで熱していく過程を意味する。
この組み合わせでは既存のボイラーの蒸気圧と排熱とが利用でき、不足する分の熱を補う程度に温度を上昇させればよいので、化石燃料の消費を少なくできる点に特徴がある。熱化学反応によって獲得した水素を用いて発電を行い、また該水素を燃やして水蒸気を発生させる等のことができるので、電気または熱のいずれか一方を一次エネルギーにおくことができる。この方法は化石燃料の消費量を抑制する効果を持つものである。(図7)
【0069】
ボイラーで発生した排熱と蒸気をこの熱化学反応に導入し、電気エネルギーをその補助手段とした水の熱化学分解を行うというものである。一次エネルギーである熱資源を、二次電流の一部で支援できるよう配慮されている。電気と熱は本反応系ではそれぞれ変換可能な関係にあり、どちらを一次エネルギーの側においても、熱化学反応から水素を取り出してエネルギーに変換することができるのである。水素資源を備蓄することによって、必要な電力を必要とするその時に必要なだけ供給する、というエネルギーシステムとした点に本質的な特徴を持たせるよう配慮した。常時最大の電力負荷がある訳ではなく、電気の他に水、熱、光等を適宜用いることで水素を効率よく生産すると共に、これを備蓄保存して将来の負荷に対応させてゆくことができる。このため負荷または売電量を増やさない限り、水素の備蓄量は恒常的に増加してゆくという傾向を示すのである。
その他内燃機関を動力とする発電機及び水素と酸素を反応させてガスタービンで発電し、余剰電力を売却することで初期投資の回収を図ることができる。こうすることで設備投資意欲を刺激し、水素エネルギーの普及浸透を促進する効果を導いてゆく。
【0070】
請求項11については、コンバインドサイクルまたはインテグレーテッド(統合された)コンバインドサイクルから排熱を導き、それぞれの段階毎に発電を行い発生した電流を自家消費する他、電力会社または電力流通機構及び独自に契約した顧客等へこれを供給し、以って収益に計上するための、水素資源からなる電気エネルギーの供給システムである。
ひとつの排熱から段階的にその熱資源を用いて発電を行い、組み合わせた装置が生みだす夫々の電気エネルギーを流通させて、発電効率を向上させることを目的とする、省エネルギーを兼ねた水素資源による創エネルギーである点に特徴がある。(図8)
【0071】
ガスタービン発電と蒸気タービン発電を一つのシステムとして纏めたものをコンバインドサイクルと呼んでいる。ガスタービンは1500℃程度の熱で稼動する発電システムであり、蒸気タービンは800℃程度以下の熱で稼動する発電システムである。これらの装置を組み合わせて一つの系として独立させたものを、コンバインドサイクルと呼んでいる。発電効率は夫々およそ20%〜30%程度以下と見込まれるが、連携させるこことで発電効率を倍増させている技術である。自家発電による電力供給が自由化されると、このような仕組みで発電効率を上げるエネルギーサイクルが全国にできていく。これは省エネルギーを推進するが、熱源を水素に切り替えれば一層の総合効率を稼げるものとなる。水素は水を資源として排熱や深夜電力、その他再生可能エネルギー等から極めて安価に取り出すことができるものだからである。
【0072】
またインテグレーテッド・コンバインドサイクルでは、燃料電池を加えることで排熱の有効利用を図り、更に竜巻発電等その他の発電機を置く事で発電効率を更に上昇させる仕組みを作ることができる。即ち、コンバイドサイクルで見込む50%前後の効率に加え、固体酸化物型燃料電池(SOFC)の50%+ならびに溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)の45%+の発電効率での追加発電が見込める。更に竜巻発電による25%+程度の効率を往復で加えると、その累計は200%を優に超えるレベルの発電となり得るのである。
【0073】
これらの高い発電効率で導き出した電力は、近隣の市町村または個別契約先の企業及び工場、そして家庭などに販売していくことができる。一つの熱から複数の発電機を稼動させて、より多くの電気と水素資源を得る合理的かつ効率的なシステムとなる点に特徴がある。
一次エネルギーとして採用する熱は本来捨てられていた排熱であり、この熱をサイクルに取り込むことによって、発電コストを下げた電力の供給事業が可能になるのである。初期投資は嵩むものの発生する電力量は増え、資源を特段消費する(MCFC型燃料電池を除く)ものではないことから、低コストの電気エネルギーを多く供給できるようになる。発電コストが低いということは、価格競争力があるということである。
【0074】
このため水素資源により獲得した電力は、低コストであると同時に環境性能が高く、競って求められるようなものとなるのである。電力供給事業の自由化が目指す新市場の創出が、設備投資を促進し経済を賦活していくことは繰り返し述べてきた通りである。価格競争がおき需要者の費用負担が減れば、可処分所得はその分増加していく。消費市場が活発になれば、流動性はより多く求められるので増加する。設備投資意欲が生まれ、製品の移動が起きると、資金需要は刺激され金利は上昇する傾向を示すことになる。事業参入機会が増えると、新規創業なども増えていき、更に大きな資金需要を喚起していくであろう。節度あるインフレ指向の経済が生まれ、政府が主導する緩やかなインフレを目指す経済政策が、目で見えるようなものとなっていくのである。
【0075】
請求項12については、上に詳述した様々な方法を用いて、生み出した水素資源を備蓄することを前提としたシステムである。水素を多量に資源化できるか否かを決するのは、備蓄する技術の効率如何にかかっている。高圧で備蓄する方法では、市販されている製品が既に存在している。また液化する方法では多くの企業がこの分野に参入しており、種々様々な応用製品が揃っている。水素資源の供給ビジネスは、安定供給の能力とコストとの相関で決定される。排熱及び自然エネルギーを用いて水から取り出した水素は、経済的にみて極めて有利なものとなる。
水素吸蔵合金またはカーボンナノチューブ、カーボン60などは水素原子を選択的に取り込む性質をもち、貯蔵プロセス自体が精製過程を包摂している。水素吸蔵合金では重量比3%未満であり移動体で用いるには不適当であるが、固定設備として応用する分には適合する。フラーレンでは水素吸蔵合金の数十倍という貯蔵能力をもつものが研究室レベルで試作されており、水素エネルギーの普及に伴って今後実用化されていく見込みである。
【0076】
供給するエネルギーは水素を起源とする電気エネルギー及び液化水素、高圧水素ガス、そして燃焼または冷却した祭に得られる熱資源である。本発明が対象とする電気は、燃料電池をはじめとして水素エンジンで発電するもの、および水素タービン更に蒸気タービンなどの発電機等から生み出されたもの等である。ガスの需要に対しては高圧配管を敷設して供給する方法と、水素発生器から圧縮機と高圧タンクを経て、限られた狭い範囲の地域へ水素を供給する方法等が考えられる。また液体水素であれば二重構造の真空断熱管を用い、中継ポイント毎に気化したガスを回収し新たに液化した水素を補給して、常に一定量の水素資源を安定的に流通させる管理システムを建設することができる。また熱資源の供給は高温側の場合は燃焼による排熱と燃料電池改質器等の反応熱等であり、低温側は液体水素の保有するマイナス253℃付近の冷熱が対象となる。これらを夫々資源として供給することで、水素エネルギーによる様々な新市場を創出することができる。(図9)
【0077】
現在のエネルギー供給モデルは電気に関わる部分を電力会社が担当し、燃焼に関わる部分をガスまたは石油会社が担当している。熱は双方のエネルギーから適宜取り出している。ヒートポンプを応用したガスによる冷房や、自然冷媒を用いた給湯器などが既に市販され、一部は夙に浸透している。
しかしどちらのエネルギーも化石燃料を資源とするため、温暖化ガスを生成する結果を招かざるを得ず、今後の量的拡大を見込むことには制約がある。電力事業の完全自由化は以前から閣議決定がなされており、ガスに関しても実施時期が未定であるだけで自由化されることは決定している。そのため電力会社とガス会社または独自の通信手段を持つ大企業などが、規制緩和による自由化を機に市場の拡大を狙って、新規参入の準備を着々と進めているところである。
【0078】
そこで温暖化ガスを生まないエネルギーモデルを示し、資源を水と光、そして排熱などに求めることによりエネルギーコストを下げていく方法を発明した。既存の企業がせめぎ合うエネルギー産業の市場開放を機に、環境負荷を低減して経済効果を促す新しいエネルギービジネスを創出することで、従来の産業が解決し得なかった諸課題を無くしていくことができる点に特徴がある。この方法を示すことによって水素エネルギーのもつ優位性が理解され、一般の認識が深まるとマーケットは世界中に広がるものと思われる。本システムの普及が早まれば早まるほど、環境の回復を急ぐことができる。実用化可能な機器を組み合わせて成り立つシステムである本発明が、即効性、将来性、目標に対する明確な志向性、および未来社会が目指す循環性を具備した見本のモデルとなるであろう。
【0079】
請求項13については、獲得した水素を液化することで得られる冷熱を活かし、液体水素の温度領域で得られる高温超伝導現象から電力を貯蔵し、また当該技術を応用する高温超伝導送電ケーブルによるネットワークを構築して、電力輸送と液体水素の供給を事業として一元的に展開するシステムである。
高温超伝導によって電気抵抗を排除する条件を実現し、電力ならびに水素資源の貯蔵と輸送を、効率よく運用する供給インフラの構築を目的としている。従来のエネルギー貯蔵法は揚水型水力発電を初めとして、二次電池またはキャパシタ等の他フライホイールを使用するものなどがあり、それ以外にも様々な方法が多くの機関で研究されている。いずれも電力の負荷平準化とエネルギー備蓄とを目的としたもので、規模の大きなものでは揚水式水力発電方式が、中規模のものでは鉄道への電力供給を目的とするフライホイール方式が、それぞれ実用化されている。
【0080】
フライホイール方式は液体水素の冷熱を用いることで高温超伝導を導き、磁気を排除するマイスナー効果を応用して支点のない円運動を制御し、電流損失とジュール熱の発生を無くして効率を最大化することができる点に特徴がある。液体水素の輸送網を建設することで、そこから水素資源とその冷熱を適宜取り出すことを目指し、水素ステーション等への燃料供給までを一気に実現しようとするものである。この水素を用いて中継地点ごとに燃料電池等を介した発電を行い、その発生電流から熱化学反応を引き出し、水を原料とした水素を抽出して貯蔵並びに供給していくエネルギーモデルである。
この方式で獲得した水素を再び液化して、常に新鮮な液体水素を安定的に補給し、電力輸送と電力貯蔵を超伝導状態で維持する仕組みを構築する。液体水素による冷熱と電力輸送の配管は円環となるように接続し、資源として循環再利用することができる水・水素のサイクルと、電流の出入りを共にサイクルとして成り立たせる系を並立させることを目的としている。(図10、12、17)
【0081】
請求項14については、液体水素供給と超伝導電力輸送を兼ねる上記配管網を構築し、液体水素を任意の地点で水素ステーション等の需要者へ分配し、現在のガソリンスタンドと同様な機能を有する施設として、燃料電池自動車等へ水素資源を供給する基地にすることを目的としている。
設備を導入して水を熱化学分解し、水素を一次備蓄して水素自動車や燃料電池自動車に供給するだけでなく、設備一式を導入せずに水素資源のみをパイプラインから調達することにより、設備投資費用を抑えた水素ステーションの建設が可能となる。高温超伝導電力輸送を兼ねた液体水素の供給網から、営業販売用の液体水素または水素ガスの供給を行う点に特徴がある。
装置等のコストを省けるため低廉な水素供給が可能となり、水素の流通価格を下げる効果を引き出せる。このようにすれば石油資源を動力とする従来の移動手段である、ディーゼルエンジンなどの有害な内燃機関を水素エンジンに置き換えることができ、燃料電池自動車等のクリーンエネルギーを普及浸透させることで、より廉く、より広く、そしてより早く水素資源を供給する道が拓けるのである。経済効率を上げながら水素エネルギーの普及を促進して、環境の早期回復を進めるためのネットワークシステムである。(図10)
【0082】
水素ステーションはスタンドアローン型の場合を除き、液体水素管理供給網等の流通機構から、地中管を通して原料である水素を仕入れるようになる。地中管は高温超伝導ケーブルを収めた、高温超伝導を維持するための液体水素が流れる内管と、これを真空断熱する目的をもったステンレス製の外管とからなっており、電力の輸送を高温超伝導で行うと同時に液体水素及びその属性である冷熱とを供給分配する機能を併せ持ったものである。このため現在の高圧線に代えて高密度の電流を高温超伝導送電線に流すことができ、直流送電により一本の送電線でも大量の電力輸送を可能とするのである。現在の送電システムは交流電流からなり、高調波の発生を回避するために送電線同士の間隔を空けておかなければならない。このため鉄塔を高くして複数の送電線を張り巡らす構造となり、災害時等における電力供給に課題を残すものとなっている。しかし高温超伝導による直流送電では、この問題等は発生しない。実際に海底ケーブルを用いるシステムでは、直流に変換した状態で送電が行われ、その後再度交流に変換するような手間をかけている事例が存在している。
【0083】
高温超伝導による電力輸送では、電流損失とジュール熱双方を無くすことができる。液体水素は滞留することなく常に水圧を受けて流れ続け、水道管のように任意の地点で適宜これを取り出すことができるものとなる。水素資源を活用したエネルギー供給と管理を兼ねたネットワークが成立すれば、水素ステーション等に常時オンラインで水素燃料を供給することができるようになるのである。
【0084】
イメージとしては水道管の中を導線が通っている状態を想起すれば良い。液体水素がもっている冷熱が超伝導を維持し、電気抵抗のない送電環境が管を通して張り巡らされている姿である。中継ポイントごとに熱化学反応による水素精製と備蓄による資源の供給を行いながら、液体水素と電流とを適宜補給していくことができる。その他の電源を援用するなどして水素を可能な限り抽出し、燃料電池等が生む電力で一定の電流を供給しつつ、液体水素を常時供給する圧力系を形成することができる。水圧をかけて配管網で給水している、水道の送水システムに類似するものである。
【0085】
また超伝導状態が破れる非常事態にそなえて、地中に接地する点を随所に設ける等して、過剰な電流を逐次逃がすよう限流器を設け不測の事態に備えている。過剰な電流は速やかにアース線を経て地中へ流すよう、適当な間隔で配管に接地ポイントを設けておくことで、フェイルセーフを成り立たせていく。中継ポイント同士を繋いだ間隔を以ってユニットとし、その単位内で発生した障害はその場で復旧させていくことができるようにする。システムはユニットを繋いだ構造体の連鎖からなるもので、異常が発生した個所を除きシステム全体の殆どは保全される。不具合個所だけを集中的に入れ替えて、短時間で復旧するように配慮した点にも特徴をもたせている。(図12)
【0086】
請求項15については、前記請求項14に記述するシステムを応用して、高温超伝導が求められるMRIなどの医療用検査装置を保有する病院、或いは高温超伝導に関する研究を行う組織等に液体水素を供給することを目的とする、独立分散型の比較的小規模な水素エネルギー供給システムである。
水素資源は水から熱化学反応で取り出すのだが、一次エネルギーは任意のいずれであっても差し支えなく、仕様を満足する機能を効率よく維持できるものが優位となるであろう。経済効率が高くなればなるほど、事業体である企業の経営に寄与するものとなっていく。導入した設備で獲得した水素資源を用い、各種のエネルギーに換えてこれを自家使用し、余剰を外部へ販売することで、水素を新たな経営資源として活用できるようにする。獲得した水素は貯蔵が可能であり、また高温超伝導を応用して電気エネルギーを長期間保存すること等ができる。高温超伝導を導入するのは電気抵抗が消え、磁気を媒質中から排除するというその特性を活かせるからである。電力貯蔵と送電でのロスを、共に無くせる点にその理由が存在する。水素を生産する過程において、水・水素循環型のサイクルを用いるベース技術を共通させ、これに高温超伝導の機器機材等を加え、水素エネルギーと電気エネルギーの備蓄供給を並立する点に特徴がある。
【0087】
請求項16については、前記請求項14、15に記述するシステムを応用して、熱核融合炉、液体水素流通機構、磁気浮上方式のリニアモーターカー、鉄道会社等大規模な組織に対して水素資源と電力の供給を目的とする、液体水素の独立型大規模エネルギー供給システムである。
抽出した水素を備蓄して資源化することで、大量の水素エネルギー供給を可能とするものである。液化冷却した水素はその冷熱及び資源としての流体特性を利用でき、化石燃料を代替する経営資源として経済活動等に貢献させることができる。水を資源とすることから費用の発生を抑え、水素エネルギーの特徴である環境性能と再生可能性を引き出して、水素エネルギーを推進する企業の経営を支援する。事業体または企業の収益向上を目指し、同時に京都議定書の定める温暖化ガス排出削減を果たすことを目的としている。
【0088】
環境負荷がないシステムでエネルギー供給を独立して行う公共関連の事業において、運転に要する資源の購入に充てていた費用を少なくする効果を引き出せる。高温超伝導による電気エネルギーの保存および供給を目的として、省エネルギーを実行しつつ事業収益の向上を図る点に特徴がある。水素エネルギーと電気エネルギー双方を同時に確保し、且つシステムの中に備蓄保存する能力を併せ持つ、エネルギー資源の安定的生産と需要に即応する信頼性の向上を目指したものである。
また国際規格であるISO14000シリーズを満足する環境性能を実現し、その認証取得を容易にして導入促進を図ることを目指している。
【0089】
請求項17については、循環型水素エネルギー供給システム同士を接続して、液体水素をはじめとする水素ガスおよび電気・熱などの各エネルギー資源を融通しあう組織を作り、相互補完関係を導いて限られた地域を対象とするエネルギー流通のネットワークシステムを構築するモデルである。この組織は液体水素の流通機構と一部機能が重複するが、電気・熱エネルギーと内燃機関まで範囲を拡大させ、汎用性を持たせた運用ができるという点に特徴がある。(図17)
【0090】
このネットワークは水素ガスと電気・熱エネルギーをそれぞれ供給するチャネルを持つ。
余剰エネルギーを回収して他に転用したり、不足するエネルギーをバックアップしたりする機能も併せ持ち、循環型を維持して環境負荷を抑えるエネルギー供給網となるのである。電力会社が電気エネルギーをネットワークして成り立っているように、液体水素と熱エネルギーを電気エネルギーと共に供給する組織となるものである。水素ガスは液体水素から発生するので、温度と圧力を調整することで気化を制御することができる。
電力会社とガス会社を一つにして、冷熱、温熱等までを加えたエネルギー供給の大系を、新たに作ろうとするものである。このシステムに類似するものは国内には存在せず、電気エネルギーとブラウンガスを併給する仕組みのものが、供給モデルとして唯一示されているに過ぎない。
【0091】
上記の電気とブラウンガスをネットワークで供給するシステムは、特願2001−153487及び特願2001−323039で扱っているものである。しかし液体水素についてはその対象とはなっていない。本項目はその部分を補完するものである。ネットワークする仕組みは基本的に同じである。家庭や事業所を単位(セル)としてこれを統合する範囲にユニット呼ぶ上部構造を設け、ユニット同士を接続して相互に補完させ、組織的連携を成り立たせていくというものである。ユニットを集合したものをブロックとして扱い、ブロック同士を接続してエネルギーを流通させる目的をもった機構である。このネットワークの最上位はエリアと呼ぶ単位であり、これはブロックの集合体を意味している。エリア同士を接続することで、エネルギーとエネルギー資源の双方を同時に果たすことを目指している。このような階層構造を持つエネルギーのネットワーク機構を建設することで、省エネルギーを進めて水素エネルギーの普及を実現していく。上部構造は接続如何で柔軟に増設することができるので、ここでいうエリアは暫定的な最上位の概念を示すものである。(図17)
【0092】
ネットワークはエネルギー流通ばかりでなく、エネルギー消費の実際をリアルタイムで認識し、エネルギー流通を効率よく運用するための管理システムであることを兼ねている。
高温超伝導送電線とは別に信号系統のラインを設けてあり、エネルギーの需給関係を常時監視して、リアルタイムで自動的にこれを制御するよう管理する。水素エネルギー資源の売買は、ネットワークを運営するエネルギー流通を担当するこの組織が行う。電力会社とガス会社を兼ねた上に熱資源の供給も行うことを前提としているので、総合エネルギー産業として大きく発展していくシステムとなるものと見られる。排熱と冷熱が、ここでいう熱エネルギーに該当する。
【0093】
請求項18については、請求項11から遡る各項目に記載する方法で獲得した水素を用いて、燃料電池自動車並びに水素エンジン自動車、船舶等に水素を供給することを目的としている。水素資源を用いる移動体一般に対して、エネルギー資源である水素の供給を行う事業主体或いはその施設等を水素ステーションと呼ぶ。水素エネルギー供給のための基地である。
水素自動車は燃料電池自動車と水素エンジン自動車の二系統がある。どちらも液体水素または高圧の水素ガスをエネルギー資源としている。水素吸蔵合金を用いる研究も進んでいるが、吸蔵効率に依然問題を抱えており、このタイプは移動体以外の用途で一次備蓄を目的とするシステムに採用されることとなろう。移動体に用いる簡易型水素備蓄装置は、水素吸蔵合金より寧ろ、フラーレンまたはカーボンナノチューブ等の方が向いている。
燃料電池自動車は電気自動車に含まれ、水素エンジン自動車はレシプロエンジンまたはロータリーエンジン等の内燃機関を動力源とする自動車に属する陸上用の移動体である。水素ステーションは水素供給に用いる設備を導入した施設であればよく、任意の設置場所で営業することが可能である。但しこの分野は法整備がなされていないため、一定の制約条件が課されるようになる可能性は将来において考えられる。技術的には家庭でも水素ステーション機能を保持することができるので、自家用の施設としての専用水素ステーションが登場する場合もあり得る。
【0094】
前記請求項17では水素資源の流通ネットワークを示しているが、ここでは水素エネルギーの供給を事業として営む、スタンドアローン型の水素ステーションを対象としている。実際の水素資源の調達方法は任意であり、事業を行う企業において経営判断を行った上で、独自に決定すべきものである。この項目は独立分散方式で水素供給を事業として行うシステムを対象として、単独で営業することを目的とした水素供給基地である点に特徴がある。
【0095】
水素を水から抽出するモデルでは、エネルギーを自給自足するシステムが構築できる。一次エネルギーは任意に決定でき、これを複合させて相乗効果を引き出し、需要地で水素エネルギーを創出して備蓄精錬すれば効率のよい水素プラントができる。循環型のエネルギーサイクルであり、環境に負荷を与えず収益の増加を果たせるのは、水・水素循環型エネルギー供給システムに共通する特徴である。
【0096】
一次資源である水は河川および海洋並びに降雨または地下水等から、費用を負担することなく容易且つ大量に確保することができる。
この水資源から電気または熱などをエネルギー源として、熱化学的プロセスにより水素を抽出備蓄し、需要に応じて随時これを供給するエネルギーシステムである点に特徴がある。この水素資源を消費することで再利用ができる水を得て、熱化学反応器で元素に繰り返し分解するという循環を形成することができる。一次エネルギーの用意がれば、水のみを適宜補給することで成り立つ水素エネルギー供給システムである。発生した水素を一時備蓄して供給するという、オンサイト型エネルギーサイクルを導くモデルである。
【0097】
移動体が搭載するシステムでは排水の回収を任意に選択でき、水資源をリサイクルするか否かの決定余地を残している。この移動体が発生する水を道路上に散布すると、夏季には気化熱が発生してヒートアイランド現象が緩和するものとみられる。しかし大量の排水は湿度も上げてしまうことになるので、二次生成した水は通常資源として再利用する方が望ましい。夏季における都市の温度上昇が続くような場合には、散水する能力を発揮させ冷却効果を誘導するような使い方ができるであろう。
冬季には路面の凍結を来たすことになるので、車両運行の安全性を損なう可能性がある。水は資源として再利用できるものであり、低い消費電力で熱化学反応を起こして水素を備蓄し、燃料電池或いは水素エンジン等でエネルギーに換えるという、その特異な性質を有効利用すべきものである。
【0098】
移動体では慣性エネルギーをサイクルに取り込むシステムの構築も可能である。キャパシタは充放電特性にすぐれており、瞬時に大電流を放出したり吸収したりすることが可能な蓄電設備である。電気自動車には常備されているのが普通で、熱化学反応の一次エネルギーを供給する用途に一部を転用することができる。これらを併用することで循環型のエネルギーサイクルを移動体において確立することができるのである。
慣性エネルギーとは加速時と制動時に発生するものであり、これをサイクルに取り込むことで電気エネルギーまたは運動エネルギー等に変えて、移動体内部においてパワーを保存しておくことができるようになる。
【0099】
請求項19については、請求項11から遡る各項目に記載する方法で、獲得した水素を用いた各種の装置から電気エネルギーを得て、この電力を一次エネルギーとしてブラウンガスを発生させることを目的としている。水素酸素の混合気体であるブラウンガスを資源として、燃料電池または燃焼装置に該ガスを供給し、発生した二次エネルギーである電熱を外部に供給することを目的としている。
ブラウンガスは水を構成する元素である水素および酸素が、二対一の割合で均等に混在するガスである。このためH2分子だけから成る水素ガスほど急激な膨張を起こさない。最大8kg/cm2以下の圧力に耐え、爆発とは逆の現象である爆縮という陰圧が人為的に発生する。
このため誘爆を惹起しないという点で、水素ガスに比べて安全性が高いものである。燃焼では水素特有の燃焼速度を生かし、金属の溶解、切断、溶接等を短時間で行うことができるという優れた特性を発揮する。直流交流のいずれでも電気分解が可能なものが存在している。原料は水であり、発電ならびに燃焼のいずれであっても無公害のエネルギーとなる。熱化学反応で水素を得て電力に変換し、その電力でブラウンガスを二次的に取り出す仕組みのものは、本項目に記載する方法が嚆矢である。
【0100】
水素と異なるブラウンガス特有の性質を活かしたエネルギーサイクルを導き、水素と同様の発電と燃焼の能力を発揮させ、水素にはない安全性を確保するシステムとして、一般家庭等の最終需要に対応させることを目的としている。産業用にも応用できる汎用性があり、独立したエネルギーシステムとして純水素資源と並立させことが可能である。水素エネルギーによりブラウンガスを水から取り出し、システムが求める仕様を満足するエネルギーとして、水素にはないブラウンガスの特性を発揮させることを目的としている。
ブラウンガスと称するものはいろいろのタイプがあり、安定性が低く備蓄できないものからある程度の圧力に耐え、長期保存が可能なものまでメーカーにより相違がある。消費電力およびガス発生量も異なり、大きさも産業用の大型モデルから医療用の超小型モデルまで多彩である。水素を含むガスを常圧または低圧で保存するところに特徴があり、家庭用として安全性の高い水素エネルギーシステムに該ガスを応用することができる。
ブラウンガスの特徴は安全性と燃焼速度、低圧備蓄、媒質を介した高温の熱分解、直流交流を選ばない低電圧での電気分解、二次電流の発生等、医療用から照明用まで応用分野が広く、その他多くの可能性を秘めている水素系のクリーンガスである。
【0101】
請求項20については、請求項11から遡る各項目に記載する方法で獲得した水素を液化して、ロケット燃料としてこれを供給しようとするものである。熱化学反応は地域の制約なく、常時行うことができる水分解法である。このためロケットを打ち上げる現地の近くで、液体水素を作りこれを供給する事業等が成り立つものとみられる。水素運搬の労を省き必要とされる量の液体水素を、いつでも随時供給することができるようになる。
【0102】
わが国におけるロケットの射場は海洋に近く、また日照も十分に得られる場所に通常立地している。風と太陽等の再生可能な自然エネルギーを使って、水素を熱化学反応で抽出して精錬の上液化備蓄し、ロケット燃料とする他余剰の水素を資源として売却し、収益の向上を目指す事業を成り立たせることができる。一次エネルギーとして求められるものは電力だけではなく、熱エネルギー単独であっても水分解は進行する。
原料である水と一次エネルギーとなる電熱が得られる地域なら、日本国中どこにでも液体水素を作るプラントを建設することができるのである。ロケット燃料を安価に製造できると、ロケット打ち上げ費用は下がり価格競争力がついてくる。宇宙開発はこれから益々重要なものとなっていくと思われるので、液体水素の調達を容易にするこの方法は、将来大きな意義をもつようになる可能性がある。
【0103】
請求項21については、既述の水素発生法とネットワークを活かして、インテグレーテッド(統合)コンバインドサイクルを構築し、ひとつの熱エネルギーから段階を経るごとに発電を行うという、エネルギー効率を高める電力供給モデルを対象としている。
インテグレーテッド(統合)コンバインドサイクルは導入部に高温を要求するガスタービンを置き、温度が下がるにつれて適合する温度領域で稼動する種々の発電装置を設けるものである。複数の発電機を組み合わせて、発電効率を向上させることができる。
【0104】
熱化学反応で獲得した水素を燃焼させる焼却炉などの排熱を引き込み、およそ1500℃程度の熱で発電するガスタービンの下に、およそ1000℃の温度領域で稼動する固体酸化物型燃料電池(SOFC)を設け、水素資源を用いて発電を行いつつ800℃程度以下の排熱で熱化学反応を起こして水素を製造し、更に蒸気発電機の熱源として再利用するのである。この熱は溶融炭酸塩型燃料電池を650℃以下の温度付近で稼動させることにも使われ、約400℃以下に温度が下がったところで下降気流を起こし、回転機を動かして発電する装置を追加する等の高度な複合化を目指している。これらの排熱は再び焼却炉へと戻り、燃焼作用を促す高温のガスとなって再利用されるのである。このようにすれば熱利用の円環構造による省エネルギーの仕組みができ、電気エネルギーを効率よく発生させるシステムが成り立つのである。
【0105】
水素を燃やすことで有害な廃棄物を出さず、その熱資源を再利用して電気エネルギーを創出するという、循環型のシステムを構成するモデルである。燃焼器にはブラウンガスを用いるアフターバーナーを設置でき、高音の熱分解で各種の酸化物を元素レベルにまで分解する能力を持たせるなどの工夫を加味することができる。CO2、NOX,SOX、ダイオキシン類、PCBなどの有害化合物まで分解するので、環境汚染物質の排出を抑える能力を発揮する。
【0106】
廃棄物を出さない仕組みというのは、水素と酸素を反応させて燃焼させる場合並びにブラウンガスを燃焼させる場合等で、水素に固有の燃焼速度と燃焼温度を併用し、高温の熱分解によって元素レベルにまで化合物を無機化することができるからである。この方法は半導体製造工場などで使用した有毒ガスを、水素と酸素を反応させた燃焼による熱分解を起こす工程と同一の結果を生むものである。水素は酸化すると水になり、炭素は酸化して温暖化ガスとなる。このため炭素資源を一次側に置くシステムは、必然的に環境に多大の負荷を与えてしまうのである。水素は燃焼という酸化現象で水に戻り、再び資源としての水素をそこから抽出するという優れた性質を持っている。
【0107】
一連のサイクルから得た電力は電力会社またはエネルギー流通機構等の第三者機関へ売却し、一部は自家消費するとしても殆どを収益として計上できると思われる。システムを導入する企業の経営にとっては、投資資金の早期回収と利益率の向上などにより、該企業を早期により大きく成長させていくものとなる。エネルギーの発生量は、導入した設備の能力に依存する。投資資金の多寡が、収益を決定づける要因となるであろう。事業化を目指さない場合は必要最小限の装置でよく、自家用としてのエネルギーを賄う程度の設計とすればよい。
【0108】
電気エネルギーのやりとりには、ネットワーク機構を持つ流通事業者を利用する。小さな規模の連携を相互接続して、少しずつ大きな連携をとるネットワークとしていくことで、相互補完による安定的な関係が成り立つようになる。電力流通は経済面でも相互作用という側面を持ち、安定供給とバックアップを兼ね備えた相互間の接続で、電力を必要とする量だけ流通させ、負荷がない状態においては水素資源に置き換えて、エネルギーを貯蔵しておく能力を維持するのである。送電には液体水素を利用する高温超伝導電力輸送システムが適している。
【0109】
インテグレーテッド(統合)コンバインドサイクルは排熱を高度に有効利用するので、省エネルギー効果を高める発電システムであると言える。水素資源による電力を流通させるについては、水素エネルギーと電気エネルギー双方を同時に管理する必要があり、ネットワークとしてエネルギー流通に関する管理全般を、24時間体制で行うシステムでなければならない。
このためエネルギーのネットワークは、情報のネットワークを兼ねるようになるのである。
【0110】
請求項22については、獲得した水素を液化するのではなく、高圧の気相でこれを備蓄し、その供給および管理を目的とするシステムである。ガスの状態で水素資源を供給する仕組みは、現在の都市ガス供給の形態と、圧力の相違を除きほぼ同一のものとなろう。気体を閉じ込めるために与えられる圧力の差は、都市ガスの供給系とは大きく違ったものである。
水素ガスを圧縮するのは高圧が必要である。水素分子に特有の性質である互いに遠ざけあう力が非常に強い所為で、水素分子が膨張する力は極めて大きなものとなる。温度条件によっては爆発的な加速度をもった膨張が発生する。引火し易い性質と、この互いに反発しあう力が同時に顕在化すると、水素は爆発現象となって現れる。水素爆発によるエネルギーの解放である。この爆発力を人為的に制御しているのが、あの重たいロケットを宇宙空間にまで打ち上げている技術なのである。かつてスペースシャトルが爆発して墜落した惨事があった。オーリングの劣化により漏れでた液体水素に、ロケットエンジンの火が燃え移ったという事例である。水素分子の小ささ故に、僅かな隙間からでも気化した水素は膨張圧力を受けて、そのエネルギーを放出しようとするのである。
【0111】
水素ガスは通常圧力をかけない限り、拡散して急激に希薄になろうとする特異な性質を持っている。備蓄する場合には圧力をかけて、膨張に勝る力を与えてこれを止めておかなければならない。従来は液化する方が簡単だった所為で、高圧ガスとして水素を備蓄保存する方法は特殊なものであった。しかし高圧の水素ガス備蓄装置が市販され供給が可能になっていることから、水素ガスの高圧供給は実施できる状況に到達している。可燃性ガスを高圧で保存するのは、固より非常に危険なことである。そのため大規模なシステムが破綻した場合、被害は想像を絶する規模となる。危険性を考慮すると、小規模なシステムに抑えておくことが求められる。
【0112】
用途として想定しているのは水素ガスを水素ステーションに供給していく他、これを燃焼させて熱エネルギーに変換する装置等の分野である。減圧するための機構を備えている燃焼器で、供給圧力を制御して燃焼を効率的に行うことは可能である。高圧を採用するリスクと減圧機構の簡素化を勘案し、エネルギー制御を可とするシステムであればよいのである。燃焼の際の排熱は、熱化学反応による水素抽出法の熱資源として再利用することができる。基本的にインテグレーテッド・コンバインドサイクルの一次側に置かれるシステムとなろう。
【0113】
液体水素を気化させれば水素ガスとなる。水素ステーションはこの液体水素と高圧の水素ガスを、燃料電池自動車または水素エンジン自動車に供給する施設である。熱化学反応で得た水素をそのまま圧縮して、高圧の供給系と連携させる水素ステーションとなる場合も考えられる。インテグレーテッド・コンバインドサイクルから熱化学反応で取り出した水素を、水素ステーションでガスとして供給するモデルがこのケースに当たる。
液体水素流通機構などの配管を通して、水素ガスを燃料電池自動車等へ供給することと、独立分散方式による熱化学反応で水素ガスを自給自足する場合などが考えられる。本項目では高圧ガスの状態で水素資源を供給するモデルを対象としている。オンサイト型水素発生システムから得た水素で、高圧による配管を経由するタイプであれば同様の応用展開が可能である。但し高圧ガス保安法の改正を必要とすることが求められよう。
【0114】
請求項23については、水素の液化保存と、その供給及び二次的に派生する電気と熱の各エネルギーをネットワークして、一元的に供給管理するための仕組みとなることを目的としている。中小規模の水素エネルギーシステム同士を繋いで、水素資源および電気或いは熱などを供給する総合的なネットワークであり、独立分散型の小規模システムから余剰エネルギーを回収し、または万一に備えたバックアップとして電気エネルギーを相互に供与しあって信頼性を高め、更に上位の大規模エネルギーシステムとも連携を取るように配慮している。概念は特願2001−323039に示すものと同一であるが、水素資源獲得方法と電気エネルギー及び熱エネルギーまでを包摂したシステムとして扱っている点に特徴があり、超伝導条件を液体水素で維持する方法を付け加えた点に大きな特徴がある。発生させたエネルギーを無駄なく使い、効率よく運用することを目的としている。エネルギーの弾力的流通を図るための、供給と管理に重点を置いたシステムである。(図12、17)
【0115】
請求項24については、前記請求項23に記載の高温超伝導電力輸送と、高温超伝導電力貯蔵を目的とする用途の他、新規に液体水素が持つ熱資源の供給を安定的に行うために、液体水素の流通ネットワークで高温超伝導条件を満たすエネルギーの流通を目的としている。水素、電気、冷熱を単一の組織が扱うことにより、エネルギー個々の需要動向にあわせた必要量を供給し、余剰分を水素資源として、また或いは高温超伝導フライホイール等の運動エネルギーとして、備蓄保存する統合されたエネルギーの流通管理システムである。発生させたエネルギーを各チャネルで供給する過程において、余剰の電気エネルギー並びに水素資源および冷熱を保存する能力を併せ持つ点に特徴がある。電力の保存はバッファー機能をシステム自身が保有することにより、電気エネルギーの流通制御を安定化するものとなる。
【0116】
請求項25については、高温超伝導現象を維持するための冷媒となる液体水素を、そのシステムを有する機関へ供給することを目的としている。高温超伝導は液体窒素レベルの冷熱で発生するものだが、液体水素が安価で容易に供給可能なものとなることから、冷媒となる物質の製造コストを下げることができる。このため価格競争力がつき、高温超伝導を成り立たせる費用を下げ、需要地で液体水素を生産することで該資源の調達を容易にする効果がある。
液体窒素は空気を冷却していくことで得られるもので、超伝導を導く冷媒としての単価は低くなっている。大気が含有する窒素の比率は78%であり、生産効率が高いため単価を抑えられるからである。高温超伝導に用いる冷媒として適しているが、金属酸化物という素材に制約されてきた。ところが金属間化合物を用いると、液体水素の熱で高温超伝導が成り立つことから、液体窒素の汎用性が失われる可能性が予測されている。
【0117】
ヘリウムは大気中に僅かしか存在しないため、冷却分離させても獲得できるその量は極めて少ない。大気中のヘリウムの存在比率は5.2ppmとされている。そのために製造単価はあがり、超伝導を維持する応用技術を高額なものにしている。水素は大気からの他水を電気分解して取り出しているが、消費電力が大きいためにこの単価は高いものとなっていた。
しかし液体水素流通機構が機能すると、液体水素の調達が容易となるので状況は一変する。輸送コストが発生しないので手間もかからない。水道と同じようにして液体水素または電気エネルギーを、任意に取り出すことができるようになっていく。総合的に判断して液体水素は、より扱い易い冷媒となる可能性があり、液体窒素のコスト優位性を凌ぐようになるであろう。このため液体窒素で行っていた高温超伝導が、冷媒調達の簡便性等から液体水素に切り替わることが考えられる。
【0118】
窒素の液化が起きるのは−196℃からである。液体水素は−253℃からであり液体ヘリウムでは−269℃から液化が発現する。通常の超伝導は液体ヘリウムの温度領域付近で起るものである。高温超伝導は−150℃付近に上限があるので、液体窒素の温度領域で超伝導特性を発生させることが可能であった。ニ硼化マグネシウムによる高温超伝導なら、−234℃付近で起きることが報告されている。この温度は液体水素がもっている冷熱で十分に対応できる領域である。液体水素を用いることで、全ての高温超伝導を導くことが可能となる。故に水素は優れたエネルギー資源であると同時に、優良な熱資源といえるのである。
【0119】
請求項26については、超伝導の条件である電気抵抗が消える現象と、磁気を外部へ排除する現象とを利用した応用技術の実現に関するものである。常伝導フライホイールは既に実用化されており、一時的な電力貯蔵装置として軍用ではガスタービンを動力とする戦車に、また民生用では鉄道施設に実績を持っている。原理は電気エネルギーをはずみ車の運動エネルギーに変換し、必要な時に電気エネルギーに戻すことで、エネルギーを円運動に換えて備蓄するというものである。常伝導での課題は軸受けの素材と回転させるその方法にあり、高速で運動する円盤を支持するため、常に支点で接触を維持し安定させていなければならない。
【0120】
ここに超伝導から発生するマイスナー効果とピン止め効果を導入すれば、磁気を排除しようとする力を利用した反発力で円盤を中空に浮かせて固定でき、摩擦抵抗を消して発熱を起こさない円滑な回転運動を長期間維持することができるのである。また超伝導電力貯蔵装置(SMES:Super conducting Magnetic EnergyStorage)では電流を直接超伝導体のバルクに保存することが可能である。超伝導では電気抵抗がゼロとなることから、電流損失が発生しない。高密度であり且つ磁場を許容しない等の特性を発揮する。
開発はいずれも研究段階の終期にあり、液体水素の冷熱で超伝導が成り立つことが分ると、民間企業による該技術の実用化は早まるであろう。
【0121】
超伝導フライホイールによる電力貯蔵のメリットは、貯蔵効率と大容量の充放電特性、汚染物質の発生がなく、直接接触する部分が極めて少ないので寿命が長い、などの特徴を挙げることができる。ホイールの半径、重量および回転数の二乗に比例するエネルギーが、円盤の運動中に保存されることが知られている。
超伝導を起こす素材によって、その臨界温度には差がみられる。従来は液体ヘリウムを用いていた技術であるが、より高温領域での超伝導が起せる素材が登場している。高温超伝導では液体窒素があればよく、高価な液体ヘリウムに依存する必要がない。しかし熱化学反応で水素を抽出し、これを液化する方法を用いることで、液体水素による高温超伝導はどこででも管理できるようなものとなる。水は水素を生み、水素は電気となりまた水に戻るのである。燃料電池は電流を供給し、水素液化器は超伝導が要求する冷熱を供給する。
【0122】
高温超伝導を長期間維持するシステムとなることから、電力貯蔵と超伝導状態を需要地で成り立たせることとなろう。そのエネルギーとなるのは冷熱であり、資源となるのは水である。装置を組みあわせることで、このようなシステムが実現する。システム自体に水素を保存する機能を設けることができ、資源の備蓄保存がバッファー効果を持つことから、発生する電力需要には随時柔軟に対応することができるのである。こうすることが余剰電力を流通させ、投資資金の回収を早めていくことに繋がるものと思われる。
【0123】
エネルギーが安価で無尽蔵なものとなれば、経済は発展し社会の姿も大きく変ってゆく。水素はあたらしい社会を築くことになる、所謂究極の資源であることは間違いない。その一次エネルギーをどうするか、が水素を普及するための基本的課題であった。効率の良いシステムの構築こそが、水素社会の扉を開く鍵となるからである。
低消費電力で成り立つ熱化学反応および排熱の有効利用を目的とする熱化学反応を応用し、効率よく水素を水から取り出すことで、水素エネルギーは国内で充分調達できるものとなる。コスト要因は設備投資とシステム運用に関する部分だけ、というモデルが実現する。エネルギー枯渇の心配がなく、製造コストも低いシステムとなる故に、エネルギー支出を抑え可処分所得を増加させ、消費の拡大を招く結果経済を発展させていくものとなる。
【0124】
請求項27については、水素を用いて発電した電力で超伝導モーターを駆動するシステムを対象としている。高温超伝導素材をモーターに採用することで、高トルク、および低消費電力のモーターを作ることができる。水素資源を水から熱化学反応で取り出す系を一次側とする、自動車、船舶用の独立分散型超伝導モーター向け電気エネルギーの供給系統が成り立つのである。
【0125】
獲得した水素を液化しその冷熱で高温超伝導を維持しつつ、水素燃料として活用するエネルギーシステムが成り立つのである。液体水素で二硼化マグネシウムを用いる高温超伝導を導き、該液体水素をガス化して燃料電池で発電するモデルである。貯水槽の水を熱化学分解して水素を取り出し、一時備蓄したものを液化して高温超伝導状態を維持した後、燃料電池等で発電した電力で高温超伝導モーターを駆動することを目的としている。
燃料電池が生成する水を回収し、資源として繰り返し再利用すればよい。請求項25に記載するものの小型化であり、独立分散型として移動体等において機能するシステムである。電力備蓄は既述の二硼化マグネシウム高温超伝導バルクまたはフライホイール用高温超伝導電力貯蔵方式を利用し、自動車等では制動時に発生する回生エネルギーを再利用することも可能となっている。この方式は自動車ばかりでなく路面電車、鉄道など移動体一般等にも幅広く応用展開することができるシステムである。(図13)
【0126】
請求項28については、熱化学反応で得た未精製の水素96%、酸素3%、その他1%からなる混合ガスを直接燃焼させるものを対象としている。既存のガス器具を水素酸素混合ガスで使用できるよう改造し、独立分散方式の熱化学反応により混合ガスを発生させ、該ガスを直接燃焼させることを目的とする水素系可燃ガスの供給システムである点に特徴がある。
一次エネルギーには商用電源または太陽光発電等の自然エネルギーを充て、発生させた水素酸素混合ガスを燃焼させる他熱化学反応の熱源とし、水を分解して水素系可燃ガスを取り出す仕組みである。発生したガスがもつ固有の膨張圧力を利用して、水素系可燃ガスを燃焼器具の終端部へ移動させ、酸化反応を導いて燃焼させることを目的としている。出力調整は該ガスの発生圧力を加減する方法と、発生した圧力を逆止弁で制御する回路で還流させる方法、大気中へ逃がす等の方法等を組み合わせて任意に選択すればよい。
低圧で水素酸素混合の可燃性ガスを燃焼器へ直接供給するモデルである。ガスの発生と消費電力との間には相関があり、電圧を変化させること及び水量調節等で供給するガスの圧力を調整することは可能である。(図14)
【0127】
請求項29については、熱化学反応で水を分解して水素を取り出すことに加えて、微生物などの菌類及び細菌等が吐き出す水素を、エネルギー供給システムの一部に取り込むことを目的としたサブシステムである。
光合成細菌を遺伝子操作で効率化する研究は、いろいろな研究機関で進められている。シロアリの消化管に共生する微生物が吐き出す水素は、多糖類を分解することで得られることが解っている。メタンを生成する細菌から水素を取り出す研究も、多くの機関が注目する技術の一つである。クロレラからも水素を取り出せるし、酵素を用いることで有機物を分解して水素を抽出すること等が可能である。
【0128】
微生物による水素の発生方法は効率が低く、単独で使えるようなものではない。しかし、今後次第に改善されていくことは考えられる。微生物を使うことで廃棄物を分解できるメリットがあることから、有機分解の過程で水素のみを選択的に切り離したり、紙のセルロースを分解して水素を吐き出させたりすることができている。廃棄物を減らして水素を得ることができれば、環境負荷を低減しながらエネルギー資源を確保する道が開ける。即ち、ゼロエミッションに近づくサイクルが実現するのである。
【0129】
発生した水素を捕集してエネルギーに変換すると、経済効率の高いエネルギー供給システムとなる。但し微生物だけでは必要量を賄う水素を生成するのは困難である。熱化学反応を補佐するサブシステムとして、廃棄物を減らしつつ創出した水素をサイクルに取り込み、相乗効果を引き出す方が現実的である。
微生物が食べる繊維または有機物、或いは光合成などを安定的に供給するシステムであるならば、水素を備蓄して電気エネルギーおよび熱エネルギー等に変換することができる。
微生物の特徴は一次エネルギーを必要としない点にある。微生物が摂取するものを用意しておけば、食べた後有機分解がなされ、不要の水素が吐き出される。この水素を捕集してエネルギー変換するための資源とし、ゴミを減らすなどして環境負荷を少なくしてゆくことができる。微生物から水素資源を得るために消費する費用は、おそらく軽微なものとなるであろう。(図15)
【0130】
請求項30については、触媒反応で水から水素を分離するモデルを対象としている。光触媒では水素発生の効率が低く、実用化には大面積を持つプールが必要であった。しかし半導体系の触媒を用いる水分解法では、光触媒に比べておよそ30倍の発生効率を実現しているものが存在している。
また白金二核錯体を触媒とするものや、水素化硼素金属錯体を用いるものなど様々な方法で研究が進められている。超流動現象から水素を導く方法なども知られているが、経済効率に鑑みると実用化には程遠いものと言わざるを得ない。
経済効率およびエネルギー効率共に優れたものは、従ってそう多くない。その中で将来実用化可能なものに絞って、熱化学反応による水分解の補助手段として水素を供給するシステムに採用していくこととなろう。(図15)
【0131】
請求項31については、化学工場などの生産過程で生じる副生成物の水素を活用することを前提とするシステムである。さまざまな反応過程で余剰的に生み出される水素を、現地でエネルギー変換することで経済効率を向上させることが可能となる。
従来副生水素は専用の輸送車で需要地に運ばれていた。しかし燃料電池を工場の中に設置することで発電機能を増加させることができる上、第三者へその電気エネルギーを転売する能力を派生し、将来の電力不足の事態に対応させることが可能となる。即ち副生成物であった水素を用いてこれを電力に換え、使い道が限られていた副生水素を経営資源とする新たな道が開けるのである。
【0132】
電力に変換された水素は送電線或いは高温超伝導方式による電力と液体水素およびその属性である冷熱の三者を伴って、配管により需要地まで長距離を移動させることができる。この方式を援用すると副生水素を生成するあらゆる化学工場が、発電所を兼ねるような存在となるのである。水素は燃焼させることも、直接電気に変換することもできるのである。
水素を燃やすことでその排熱を熱化学反応に導き、そこで水を分解して水素を抽出することができる。水素タービンでは熱の移動による複合発電形態、即ちインテグレーテッド・コンバインドサイクルが成り立つ。数次に亘って発電を行うことができるので、効率が極めて良いものとなる。変換されたエネルギーである電力は、高温超伝導応用技術で保存と輸送が可能である。高温超伝導現象を制御すると、無駄のないシステムを構築することができる。
【0133】
このため経済効率が上昇し、化学工場の収益は増加して企業の経営効率は高まっていく。エネルギーに割く費用を抑制し、地下資源を温存しながら水素の環境優位性を生かせるようになる。また内燃機関から動力としてエネルギーを取り出すことにも使える。
副生水素はもともと、処理にこまっていた二次生成物である水素を集めて、これを資源化したものである。熱化学反応と液体水素および高温超伝導現象などの技術を統合し、連携させたものを組織化してシステムを作ると、エネルギー産業の一翼を担うことができる。
水素エネルギーの登場は石油資源に出費する割合を減らし、原子力への依存比率を低下させていく。水素は炭素および原子力と違い、汚染物質をうむことがない。酸化反応で得られるものは水である。水は資源としていくらでも再利用することができ、環境を汚さず資源もまた消費しないという優れた物である。(図16)
【0134】
請求項32については、副生水素を活用するシステムを対象としている。水素をそのまま低圧で、或いは高圧をかけて一次備蓄し、必要の都度燃料電池等を用いて直接的に発電する方法と、インテグレーテッド コンバインドサイクル等による複合発電形式で電気エネルギーを作り出すことを目的としている。水素を液化して流通させる仕組み並びに燃焼を介して熱エネルギー、または運動エネルギーとして取り出す仕組みを有するシステムから得た電気エネルギーを、高温超伝導状態を維持する電気エネルギー輸送管を組み合わせた点に特徴がある。
【0135】
高温超伝導は液体水素レベルの温度で実現できるものとなっている。電気エネルギーと液体水素を真空断熱した配管で、遠隔地へ送り届けることは可能である。配管の途中に熱化学反応で水を分解して水素を得る基地を設け、水素を液化すると同時に燃料電池で発電した電力を高温超伝導送電線に集め、これを流通させていくのである。
超伝導は電気抵抗がないなどの多くの特徴をもち、マイスナー効果、ジョセフソン効果などを発揮する特異な物理現象である。この特性をいかして電力の輸送と備蓄を安定的に行うことができる。中継基地では一定の間隔で、超伝導電力輸送を成り立たせるトンネル効果を利用した技術が使われるであろう。つまり狭雑物を介しても、超伝導電力輸送が成り立つことが示される。
【0136】
その他高温超伝導バルク材および高温超伝導フライホイール等電力備蓄技術を援用しつつ、送電線自体にも備蓄能力を持たせてエネルギー需給の緩衝効果を導くことができる。電力は通常の負荷に対応した電流として取り出し、液体水素は冷熱の需要を満たした後、水素資源として発電並びに燃焼に用いられる。水素ステーションでは液体水素のまま燃料電池自動車に充填する方法と、気化させた高圧ガスを充填する方法とがあり、これらを任意に選択することができるようになるのである。
副生水素は化学工場の副産物である水素を活用するもので、水素の需要が低かったことからこれまで利用価値はそう高くはなかったのである。このため資源としてみた場合、副生水素はおまけのようなものであり、資源コストが低廉となることから、水素エネルギー供給システムにおいてはその存在は再評価されることとなろう。エネルギー効率と経済効率は両々相俟って、相乗効果を発揮するようなシステムを最終的に構成するからである。(図16)
【0137】
請求項33については、熱化学反応プロセスの技術内容が開示されないことを前提として、当該反応システムに関する所有権移転を伴う機器の売買を行わず、これを貸与する方式で水素エネルギーの普及を促していくことを目的としている。機器一式を貸与することでユーザーの投資リスクを回避し、所有権を留保しつつ一定の保全間隔を設けて、反応促進剤の保守点検を確実に行うことができる。
超伝導送電線には信号ラインを併設し、機器の状態をオンラインで常時モニターすることが可能である。機器を貸与することで毎月安定的に収入が得られ、反応器の内容を秘匿したまま水素資源を普及させていくことができる点に特徴がある。
【0138】
請求項34については、電力供給のシステムにおいて従来方式である交流電流を中心としたモデルから、直流電流だけで成り立つ系を構築することを目的としている。自然界に存在する電流は、すべて直流である。敢えて交流に変えているのは、送電技術と電圧調整の容易さによる。このため通常直流で発生する電流を交流に変換し、昇圧して遠くへ運ぶシステムが出来上がった。交流を直接出力する発電機を導入している場合は、変換する必要はなく損失もまた発生しないが、電気製品の回路内部では再び直流に戻さなければならないのである。
【0139】
直交変換すると電流損失を生じるだけでなく、インピーダンス等の交流であるが故の自己抵抗を発生させる。最近太陽電池、燃料電池などの新しい直流系発電装置が登場しているが、交流主体の既存システムと組み合わせることから、発生した直流電流をインバーターで交流に変換しなければならなくなっている。システムが統一されていないことから、この組合せは直交変換を必要とし、貴重なエネルギーを無駄にするという結果を招いている。
そこで独立分散型発電システムおよび超伝導電力輸送システム等において、直流のまま送電することで直交変換による電流損失をなくし、インバーター、コンバーターなどのアダプター類を省き、装置自体の簡素化による価格低下と信頼性の向上が実現する点に着目した。
直流回路で運用するシステムは、交流から直流へ戻すための部品を除外することができ、このためシンプルな回路で信頼性と安定性を増加させ、故障率と生産コストをその分引き下げる効果が得られるのである。
実際にパソコンなどの身近な装置を覗いてみれば解る通り、回路自体は直流となっているのである。燃料電池、太陽電池等の直流出力方式が主流となる時代には、省エネルギーの観点から直交変換で生じる損失等を抑え、装置の簡素化によるコストダウンが求められるようになるであろう。通常はインバーターを介して直流電流を交流電流に変換しているが、将来は直流電流のまま電力を供給する方法が主流となる。ノート型パソコンは二次電池を主電源としており、低圧の直流電流で駆動するよう設計されている。エネルギー効率と経済効率の両面からみても、この法式の方が寧ろ望ましいといえる。
【0140】
高温超伝導電力輸送システム並びに高温超伝導電力貯蔵システムでは、直流電流をそのまま流すことができる。発電機から得た直流電流で電力を備蓄保存し、また直流電流のまま送電することが可能である。交流送電の問題点は常伝導による電気抵抗と、高圧による長距離送電および高調波及び超低周波の発生、その結果である電磁波による健康被害等の面に解決すべき課題が依然として残されていることである。
高調波の問題は送電線同士の間隔を空けることで解決しているが、海底ケーブルなどでは対策がない。このため一旦直流に戻してから海底ケーブルで送電し、再度交流に変換する等の対策がとられていることは既に述べた。電気抵抗については現在のところ回避する術が無く、損失する電力に見合った分を上乗せして発電している。原子力発電所の出力値が半端な数字になっているのは、電気抵抗で失うことになる10%を上乗せしているからである。従って原子力発電の出力の実効値を求めるには、そこから一割を差し引けば良い。110万kwh出力の原子力発電の実効値は、100万kwhなのである。
長距離送電では電力需要に対応する出力調整を行うことが出来ず、電力の負荷平準化という問題を惹起している。交流送電では地域により周波数に相違があり、使えなくなる電気製品を生んできた事実がある。
【0141】
超伝導というのは、液体ヘリウムの温度領域である−269℃付近で発生する物理現象である。電気抵抗が消える等の特徴をもつ、電力の損失を起こさない特異な物理現象のことである。高温超伝導は液体ヘリウムの温度を超える領域で発生し、液体窒素の冷熱である−196℃以上の、比較的高い温度領域で発生するものが一般的であった。現段階では−150℃付近の高温域で発生するものが存在している。液体水素は水を原料として需要地で製造できることから、該資源で高温超伝導を維持する方が簡便である。将来は液体水素が、液体窒素に代わって高温超伝導を推進する冷媒となるであろう。
水素は電気エネルギーに変換できるばかりではなく、燃焼させたり液化して冷却したりすることができ、熱エネルギーとしての特徴も兼ね備えた新しい資源として改めて評価される。このため液体窒素にはない汎用性をもつ資源であることが認識されるのである。
【0142】
電磁波による健康被害は状況証拠としてだが、疾患を疑わせる事例がアメリカで報告されている。因果関係の証明がなされたという報告は、しかし得られていない。とは言うものの電磁波によるとされる一般的疾患の増加、不定愁訴等の増加が報告されていることもまた事実である。電磁波の影響によるとされる健康被害の報告は、高電圧の電流と生命システムとの間に何らかの相関があることを疑わせる。最近の報道では交流電流の属性である超低周波が、小児白血病の発症に関与している疑いが浮上している。高圧の送電線が公共施設の近傍を通る場合、欧米では一定以上の距離をおいて建設することが義務付けられているという報告がある。
【0143】
直流家電はアウトドア関連の機器で実績はあるが、多くは災害対策などの特殊用途に限られた非常に小さなマーケットであるに止まっている。しかしコンピューターなどの機器は一般に直流を基本としているので、交流を取り込む場合には専用の変換アダプターを用いることになる。直流送電または独立分散発電システムが普及すればアダプターは必要がなくなり、そのままコンピューターを立ち上げて使うことができる。
その他の家電製品も直流化することができ、部品点数を減らすことで信頼性を上げ、安定性を増強する新しいラインナップとして新市場を形成するものと思われる。二次電池を用いるタイプの電気製品は全て直流で作動するものである。交流電流を必要としているのは二次電池を充電する場合と、商用電源等から電力を取り込む場合だけなのである。太陽光発電による直流システムは、コンピューターを直接駆動する能力をもっている。
【0144】
水素エネルギーは独立分散型発電方式での電力供給を可能にする。太陽電池または810℃以下の熱があれば、電気がなくても熱化学反応プロセスにより水から水素を発生させることができる。晴天時は太陽光発電で余剰の水素を備蓄し、夜間または雨天などでは都市ガスなどの炭化水素を燃やして、必要な熱を得ることが可能である。蓄電池、蓄電器を導入するシステムでは、年間を通じてエネルギーを自給自足することができる。高温超伝導による電力貯蔵ではエネルギーの長期保存と、余剰電力の売却による事業収益を生み、炭化水素(都市ガス等)の消費さえ無くすことができるのである。
商用電源を熱源とすることもできるが、この場合温暖化ガス排出削減効果は小さい。直流回路を主体とする電気回路をもつ機器において、交流電流を取り入れるのは単純に効率を落とすことを意味する。搭載する部品点数を増やすからである。送電の際に生じる電気抵抗と、導通を確保するための接地で生じる廃棄電流の存在にも留意しなければならない。そのため現行システム自体に意義を見出すことはできず、電気製品の簡素化を阻害する結果、装備を過重なものとして価格を押し上げる結果を招いているのである。現在のエネルギーシステムは交流に依存し、そのために多くのロスを壮大な規模で生み出している。このような事実を須らく認識すべきではなかろうか。しかし高温超伝導を応用する技術は、そのエネルギーシステムを根本から覆す可能性を秘めている。
【0145】
現在は交流主体の電気エネルギー供給システムとなっている関係で、直流発電装置を用いる場合インバーターを必要とする。独立分散方式では直流主体の電気エネルギー供給システムが成り立つので、すべての回路において直流方式で統一することができる。
高温超伝導電力輸送システムができていれば、必要な電力を直流のままで調達することができる。直流方式を基本とする電力供給システムは、水素資源を利用する技術即ち燃料電池、高音超伝導電力貯蔵及び同輸送等の他、再生可能エネルギーを代表する太陽電池等を援用して、全国各地に少しずつ独立した電源を分散設置してネットワークを築き、既存のエネルギーシステムに置き換えて合理化を図ることができる。水素エネルギーのネットワークは、余剰エネルギーを流通させて省エネルギーを促進する効果を齎すのである。
【0146】
交流からの変換を前提とした既存の製品シリーズから、直流で統一した規格に基づいて製品化される、所謂直流家電の新シリーズが登場することを前提としているが、直流で運営されるエネルギーシステムであることを目的とする点に特徴がある。
直流回路からなる家電製品では、部品点数は大幅に減らせるようになって製品価格を下げられる。直交変換に伴うロスも発生しない。新しい概念の製品が省エネルギーを促進し、それ故に新市場として大きく成長していくことが、環境対策および経済性等の観点から予測できるのである。
直流家電では電圧を低く抑えることができる。交流を用いるエネルギーシステムの無駄は、この電圧の高さにも存在する。終端電圧を100VACとしている所為で、電気製品回路のいたるところに抵抗をちりばめ、電圧をわざわざ低下させ抑えつけるような事態となっている。100VACは回路内部では不必要に高いので、抵抗をかませて電圧を下げなければならないのである。実際にパソコンの信号回路は5VDC以下の低電圧で充分に働くよう設計されている。直流家電に切り替えることで、この抵抗を用いて下げている電圧を無くすことができる。初めから適合する電圧を供給すればよいからである。省エネルギーを図るには、交流送電がもつ本質的な課題を理解していなければならない。
【0147】
産業界としてみれば消費財として既に浸透している電気機器が、直流家電として最終的に総て置き換わってゆくこととなり、新規の買い替え需要が短期間に起るものと思われる。まったく新しい概念の電気製品が登場して、巨大な新市場を生みだす契機となるであろう。
水素エネルギーと自然エネルギーを組み合わせて、直流に対応する製品群の供給が可能となれば、新世紀に相応しいクリーンエネルギーが人々の生活の質を変えてゆく。電気は買う物ではなくなり、余剰のエネルギーは換金できる経営資源へと変化するのである。今までエネルギーに費やしてきた費用は軽減され、可処分所得を増加させる効果を発揮するであろう。
【0148】
水素資源が一般化してゆく過程において、液体水素で可能となる高温超伝導技術が、エネルギー流通のインフラとなることが予測できる。現在の送電系統の幹線網は不可逆的な電流制御方式で成り立っている。各種の発電所を中央で管理し、電力の需給に対応する仕組みが地域単位、事業者単位の統合形態として出来上がっている。この方法は電流を終端部で接地させることが条件となっているので、使われることがなかった電流は最終的に地中へ廃棄されてしまう。この無駄を何と呼ぶべきであろうか。
【0149】
高温超伝導電力輸送が実現するとこの接地電流は、回収可能なものとなり問題は消滅する。高温超伝導による送電線の終端部においてループを形成させれば、廃棄している電流を送電ケーブルに還流させることができる。電気は抵抗の少ない路を好んで流れようとする性質をもつ。山に降った雨が地形の凹凸によって、流れ易い路を好んで川を形成するように、高温超伝導では電流を収斂させる現象となって現れる。電気抵抗がゼロであるため、総ての電流を高温超伝導ケーブルに引き寄せてしまうからである。
【0150】
高温超伝導で電流をリサイクルすれば、生産したエネルギーは総て仕事に対応させることができ、資源を節約するばかりでなく、良質かつ低廉なエネルギーの大量供給が可能となる。
電力流通の場においては生産者と消費者は密接不可分の関係となり、生産と消費はこれを相殺してその差額だけを決済するようになると思われる。エネルギーに対する投資額の多寡が、収益のボリュームを決定する因子となろう。このような効果が発現するものとみられることから、直流を主体とした電力供給系統が、交流を主体とした電力供給系統に置き換わっていく。この省エネルギー高効率を目指すエネルギーシステムは、水素資源を使い分けることによって、世界標準となる日本型モデルを提案していくことになるであろう。
【0151】
請求項35については、前記請求項34で扱う交流による送電がもつ課題である、導通確保のための接地による廃棄電流による壮大な無駄を、可及的速やかに減少させることを目的としている。
現在のシステムは原子力発電と火力発電を主力に、水力発電その他を組み合わせて低廉な電力を安定供給するために、電力会社が相互にネットワークを組むことによって成り立っているものである。最大の電力需要に対応することを目指して相互に接続を確保しているが、原子力発電を組み込んでいるために長距離の送電を余儀なくされている。このため遠隔地からの大量送電では電流の高圧化が必要となり、現在のところ55万ボルトの高電圧をかけた状態で送電されている。この電圧を維持するために、出力調整を臨機に行うことが困難となっているのである。
【0152】
電力の負荷平準化という問題の本質を探ると、原子力発電を組み込んだことによる複合発電システムのあり方にまで遡る。電圧を上げれば上げる程、接地点から地中へ消え去ることになる電流は増加する。この消失する電流の存在が、電力の負荷平準化問題を深刻なものにしている。深夜の電力需要が減少すればするほど、地中へ流れ込む電流は増大する結果となるからである。
【0153】
そこで地中へ捨て去る前に負荷を与えて、電気エネルギーを敢えて消費することで接地電流を減らし、水素資源を新たに獲得する方法を考案した。即ち水の電気分解及び電気による熱化学反応を応用した、水素エネルギーの抽出と水素資源による新たなエネルギー備蓄に関する方法である。
燃料電池は水素が持つ電子を集めて電流とする、化学的プロセスで発電する装置である。水素は水からいくらでも取り出す事ができる元素である。水を電気で分解すると、酸素と水素が得られることは小学生レベルの知識となっている。この電気分解を効率よく行うことができるシステムが、電力の負荷平準化の解消に寄与するものとなる。
【0154】
地中へ捨て去る前の電流を利用して水を電気分解し、獲得した水素を備蓄して燃料電池で日中の電力需要に対応させてやればよい。この方法で平準化は緩和するのである。夜間の電力需要を創出し、日中でも接地させる前の電流を活用できるので、接地を維持するために生じていた無駄な電流は大幅に減るであろう。燃料電池は発電容量の変更が可能な装置である。水素の大量備蓄方法は高圧タンクまたは液体水素のどちらかを任意で選択することができる。液体水素を気化させて、高圧で二次備蓄する方法も有効である。その他の備蓄方法についてもその実用化を促し、水素エネルギーの啓蒙を行いながら来るべき時代に備えておくことができるのである。
【0155】
燃料電池の設置に関しては、屋内外を問わず電源立地に関する制約は殆どない。水素ガスの管理だけは高圧ガス保安法の規制に基づいて、安全に管理できる範囲の備蓄設備を導入しなければならない。
水素を備蓄するか否かが電力負荷平準化問題緩和の鍵となる。水素吸蔵合金、カーボンナノチューブ、カーボン60等のフラーレン、水素化硼素ナトリウム化合法、など多くの選択肢がありその他にもブラウンガスとして出力し、これを低圧で保存する方法等も安全性の面で有効である。ブラウンガスを安定的に発生する装置は市販されているが、不安定なタイプをもブラウンガスと称している事例があり、評価はしかし未だ定まってはいない。
【0156】
水分解を導入して接地電流を少なくしていくことは、そのまま省エネルギー効果となって現れる。地下資源の消費量を減らす結果となるからである。電気分解等により水素を抽出するもので、捨てていた接地電流を少なくすることから、省エネルギーを目的とする水素製造法が成り立つのである。
発電ばかりでなく燃焼用の水素資源ともなるので、水素エンジン、水素タービンを動かす燃料を水から抽出するシステムを形成する。これまで述べてきた水素資源を用いる様々な発電形態をここに組み込むことができ、効率の良い発電システムが必要な電力を、必要なタイミングで、常時安定供給するシステムへと発展させていくことができる。
【0157】
送電系統の終端付近で水素資源を確保すると、新規の電源開発に要する予算を少なくできる。原子力発電への依存比率は下がり、地下資源の大量消費を減らして環境の回復も図れるのである。このため外貨支出を抑制しつつ電力の需給ギャップまで改善するという、多くの副次的効果を齎すものとなろう。電力会社は独自の発電手段を確保することになり、システムの発電効率を改善する努力を続けることで、仕入れを減らして収益を増加させることができるようになる。
【0158】
水素による燃焼では熱エネルギーとして、これを随時取り出すことができる。水素を液化させれば超伝導現象を誘導することができ、その冷熱を用いた冷凍および保冷等のシステムを付随させることができる。液体水素を作る液化機は国内で八社が製造販売しており、備蓄方法も確立しているので普及は容易である。液化に用いる電力は接地電流を初めとして、備蓄した水素或いは再生可能エネルギー等を用いて、一層の効率改善を図ることができる。複数のエネルギーを一括して扱うシステムとなるので、この点だけからみても効率のよいエネルギーモデルとなるであろう。
【0159】
請求項36については、エネルギー資源である水の備蓄とそのエネルギー化に関するものである。水は古来より生活用水の他農業資源として重用されてきたものだが、水素をエネルギーとして用いる各種のシステムが登場するようになると、水のもつエネルギー資源としての特質が再発見されるようになるであろう。そのためエネルギーを備蓄する方法の一つとして、需要者が水を貯蔵して必要な資源とするようになることが考えられる。
水素は本質的に一次エネルギーを必要とする。主に電気または熱、光などを用いて生産されるエネルギー資源である。石油・天然ガスおよび原子力なども採掘精製するために一次エネルギーを必要としているが、水素もまた同様に資源化するためのエネルギーを外部に求めなければならないものである。一次エネルギーを必要としない燃料資源は薪であるが、特殊な資源に分類されその汎用性は既にない。
【0160】
水を貯めておきさえすれば、水分解および熱分解等のシステムを導入することにより、水素は自在に取り出すことができるものとなる。電気分解は義務教育のカリキュラムに取り上げられるほど広く一般に膾炙しており、乾電池などを一次エネルギーとして水素を抽出する等の実験が各学校で行われている。小規模の電力需要を賄うには、太陽電池があれば充分である。非常用のエネルギーとして貯水タンクと水素を備蓄する設備に加えて、あとは燃料電池を付け加えるだけで基本型のシステムができる。つまり装置一式があれば、水からエネルギーを取り出して連続運転することができるのである。
またプールの底に敷いた金属酸化物と日光を反応させる方法も注目されており、単に野外で水を貯めるだけでも、入射光の存在を条件として水素を発生させることができる。現段階では発生効率が低く、必要とする水素を得るには相当の面積をもつプールを用意しなければならない。従ってこの方法は汎用性がなく実用には向いていない。熱化学反応やブラウンガスなどを用いることで、消費電力を大幅に下げて水素をつくる方が効率は良いのである。複合させることで相乗効果を導くことはしかし、可能であろう。
【0161】
水そのものをエネルギー資源として備蓄し、生活用水として使いながら防火対策及び災害時の救難用資源としつつ、同時に水素を取り出して燃焼させ又は燃料電池等で安定的に発電する、水・水素循環型のエネルギーシステムを創ることができる。水がもつ成分をエネルギーとして取り出すシステムでは、貯水能力そのものがエネルギーの備蓄量を示すことになる。水を液相状態で安定的に貯めておくことで、エネルギー資源を需要地で確保することになるのである。
【0162】
エネルギー変換の仕組みは既に述べてきた通り、様々なものを応用して高効率のシステムとすることができ、資源に要する費用が低廉となることから、経済効率は極めて高いものとなる。しかも環境負荷がなく、エネルギー変換した後に再び水を生成するので、循環型のエネルギーモデルを形成するのである。要するに水または温泉等の水源は言うに及ばず、水道または雨水を貯めておく施設等があれば、そのまま水素エネルギー資源として利用することができるのである。
【0163】
水を資源とすることは、従来の主要な資源である石油、天然ガス、原子力などの燃料となる地下資源の輸入をなくすことを意味する。このため多くの経済効果が派生するものとみられる。エネルギーの安全保障政策等は国内問題にまで矮小化し、京都議定書の削減目標は早期実現が可能になるであろう。
水を貯めることと水素を貯めることとは同義であり、その仕組みを円滑に運用するシステムを構築すれば、エネルギー資源を備蓄して自給自足することができる。水そのものを資源として扱う所に特徴をもつ、新エネルギーシステムとなるのである。
【0164】
請求項37については、遡行する各項において既述した種々様々な装置からなるシステムを組み合わせて、相互補完と相乗効果を発揮することを目的とするエネルギーの供給系統と、当該モデルが担う熱電併給を実施するサイクルを敷延して、地域を対象とするエネルギー供給系統の複合化を目指すエネルギーサイクルを通して、既存のエネルギーシステムがもつ欠陥を解消しつつ、水素資源を用いる新エネルギーを導入することで、省エネルギーによる炭素及び原子力等所謂地下資源の温存を図る点に特徴がある。
【0165】
水素が水から安価に製造できることは繰り返し説明した通りで、この原理を応用したエネルギー供給システムを相互接続し、広域をカバーするエネルギー流通のネットワークを構築する計画に加えて、既存のインフラであるところの電力供給網がもつエネルギー損失を抑制して、新旧のエネルギーを組み合わせることでそれぞれの特徴を活かせるようになる。
旧資源である炭素・原子力の課題を少なくするために、既存の電力を用いて水を分解して水素を取り出し、エネルギーの備蓄を図ることで電力の供給圧力を下げ、接地電流を減らして省エネルギーを実行することができるのである。
【0166】
高圧の送電線を介する電気エネルギーの供給は、同時に大量のエネルギーを地中に捨て去る結果を生む。ここに現行のシステムがもつ本質的な欠陥が潜んでいる。
電流は常に流しつづけていることで成立するものであり、導通を確保するために常時接地していなければならないのである。そこで終端部付近に水素発生器を設けておけば、捨て去っている電流から水素を製造することができるようになる。
【0167】
捨てていた電流で水の電気分解または熱化学反応を導き、水素を取り出して備蓄すれば日中の電力需要には燃料電池で即対応できる。これだけでも電力の負荷平準化は、大幅に改善する筈である。効率のよいエネルギーシステムをどんどん取り入れていけば、旧資源に要するコストを下回るのは明らかなのである。装置は量産化によるコストダウンが可能であり、また償却処理の対象とすることができる。資源となるのは繰り返し使える環境負荷のない水である。システムを設置してしまえば資源である水を再利用することができ、不足する分を給水して補うことでエネルギー資源の購入費用を抑えられるのである。資源は国内で充分に得らるだけでなく輸出することができ、旧資源のために支出していた外貨を留保して富を蓄積することになるのは自明であろう。
【0168】
電流を維持するために接地しているのは、現在の方式を採用する以上避けて通ることができない。遠隔地から高圧をかけて送電するシステムである限り、接地する電流が増大するのは当然の成り行きなのである。そこでこの捨てている電流を活かす意味でも、水素エネルギープラントを各変電施設内部に設けておくことが求められるようになる。水素は電気と違って備蓄保存がきくものである。水素を貯蔵するばかりでなく、水素を液化することにもこの接地電流を使うことができる。該プラントは立地場所を選ばず、どこにでも建設することが可能である。但し水のない砂漠地帯には向いていない。しかし高温超伝導による電力流通システムを導入すれば、電気エネルギーは循環するのでこの問題は深刻なものではなくなるであろう。
【0169】
熱化学反応プロセスにおいて、反応促進剤は反応器の内部でリサイクルされ、繰り返し長期間使うことができる。この反応促進剤は入手が容易で、安価なものであることは確認されている。したがって石油を輸入したりウランを輸入したりする場合と比べても、水素資源はコストとしての優位性を保つであろう。
環境性能は至高のものである。温暖化ガスは一切発生しない。水素分子は不活性であり、そのために他の元素と反応することがない。水素分子H2は、結合することによってその活性を失うのである。但しH2同士は反発し合い、互いに遠ざけようとする性質が現れるため、急速な膨張現象を惹起することになる。
従って水素分子を大量に備蓄するのは高圧にするか、液化するか、または機能性物質中に取り込むなどの工夫が必要である。技術的には既に実用レベルまたはその付近にあり、システムに取り込むこと自体におおきな問題はみられない。
【0170】
液体水素を用いる高温超伝導電力貯蔵と高温超伝導電力輸送とは、既存の変電施設や送電システムのターミナル側に設置することができる。高温超伝導ケーブルはループさせてあれば、電流を接地させずに流しつづけることができる。水が低い方へ流れるように、電気もまた流れ易い回路を選んで流れたがる性質を持っている。超伝導は電気抵抗がゼロであることから、あらゆる電流を受け容れる能力を有するのである。(図17)
【0171】
電気抵抗がゼロであることは接地電流を呼び込むことができることを意味し、現象としては電流を恰も吸い取るかの如き様相を呈する。電流は流れ易い回路へと一気に流れ込む。このため複数の回路がある場合、電気抵抗の低い回路へその100%が流れ込む。この時電流計は電圧を表示しはするが、電流の値はゼロを指し示す。この電圧は一次側の電圧を単に反映しているものであり、電流の不在を指し示しているのである。超伝導と常伝導とを組合せる回路では、このようなことが起きるのである。
【0172】
エネルギーを効率よく使うには電流を循環させ、必要なだけ水素エネルギーで発電することを繰り返し、逐次電力を補充する程度の発電を行えばよいのである。四六時中発電しなければならないようなことは、高温超伝導応用技術を導入する限りその必要はない。電力供給量は使った分だけの補充でよくなり、必要以外の資源は液体水素・高圧水素として輸出に回すことができる。水素は水と光のある地域なら、石油よりも安価に製造することができる。このため将来のエネルギーはおしなべて、水素で賄われるようなものとなるであろう。経済合理性がエネルギーの質を決定するのである。
【0173】
今後電力の備蓄は至るとこるで行われるようになり、需要地でエネルギーを自給しまた自足できるようになると、エネルギーの安全保障政策はこの時点で過去のものとなる。エネルギーは全て水から得られるようになり、その水は繰り返し再生する性質をもち、地球上に夥しい量が存在する。従って水素資源が枯渇することは有り得ない。環境を汚すことも有り得ない。地下資源を蕩尽することも、二酸化炭素を排出することも同様に有り得ない。まことに優れた究極の資源だと言う事ができる。水素はエネルギー転換を齎す画期的な資源となる。このことが認識される新しい時代は、まさしくすぐそこに来ているのである。
【0174】
地下資源は有限であり、決して再生されないものである。石油資源の残存埋蔵量は、およそ四十年程度というのが国際機関によって報告され、大方の見解として一致している。天然ガスは七十年、ウランは六十年程度で枯渇することが、同様に分っている。石炭は二百年以上とされているが、最終的に消滅する地球起源の炭素系化合物なのである。メタンハイドレートという海底に堆積する資源もあるが、採取するためのエネルギーコストは相当に高いものとなると観られている。また強力な温暖化ガスであるメタンを、大気圏上層へ大量に放出する結果を招く危険性も秘めている。
【0175】
核エネルギーではウランからプルトニウムに転換する道も残されているが、危険性が解消されている訳ではなく、核廃棄物を一層蓄積して汚染物質を徒らに増加させる結果を招くことは明らかである。核廃棄物の最終処分方法は未だに確立しておらず、その見通しもまた得られていない。これらの点を総合的に勘案すると、環境負荷のない優れたエネルギーは水素をおいて外にはないのである。
【0176】
水素資源が齎す様々なエネルギーシステムに関するモデルを示して、該エネルギーの普及浸透を急がなければならない。環境の問題は水素資源へと切り替えることで、おそらく短期間に解消するものとなろう。本発明はそれを証明する具体的な方法を、システムとして広く内外に示すことを目的としている。水そのものをエネルギーとするシステムであり、これを実用に供して環境の回復を果たし、以って世界の平和と繁栄を実現しようとするものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のエネルギー供給システムの実施形態のシステム構成の一例を示す図である。
【図2】本発明のエネルギー供給システムの実施形態のシステム構成の一例を示す図である。
【図3】本発明のエネルギー供給システムの実施形態のシステム構成の一例を示す図である。
【図4】本発明のエネルギー供給システムの実施形態のシステム構成の一例を示す図である。
【図5】本発明のエネルギー供給システムの実施形態のシステム構成の一例を示す図である。
【図6】本発明のエネルギー供給システムの実施形態のシステム構成の一例を示す図である。
【図7】本発明のエネルギー供給システムの実施形態のシステム構成の一例を示す図である。
【図8】本発明のエネルギー供給システムの実施形態のシステム構成の一例を示す図である。
【図9】本発明のエネルギー供給システムの実施形態のシステム構成の一例を示す図である。
【図10】本発明のエネルギー供給システムの実施形態のシステム構成の一例を示す図である。
【図11】本発明のエネルギー供給システムの実施形態のシステム構成の一例を示す図である。
【図12】本発明のエネルギー供給システムの実施形態のシステム構成の一例を示す図である。
【図13】本発明のエネルギー供給システムの実施形態のシステム構成の一例を示す図である。
【図14】本発明のエネルギー供給システムの実施形態のシステム構成の一例を示す図である。
【図15】本発明のエネルギー供給システムの実施形態のシステム構成の一例を示す図である。
【図16】本発明のエネルギー供給システムの実施形態のシステム構成の一例を示す図である。
【図17】本発明のエネルギー供給システムの実施形態のシステム構成の一例を示す図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素エネルギーを利用したエネルギー供給システムに関し、またその応用形態である各種システムに関する。より詳しくは、水を資源とする水素エネルギーの応用技術及び再生可能エネルギー導入促進と、排熱の再利用、電力負荷平準化の改善と省エネルギー、並びに水素エネルギー供給システムに基づく循環型社会の形成およびその実現に関する。
【従来の技術】
地球の温暖化が進んでいる。化石エネルギーが生み出した二酸化炭素の増加蓄積が、環境異変を齎している。原因物質となる炭素系資源を代替するものとして、いま、新しいエネルギー資源の登場が求められている。温暖化現象はこの間にますます進行し、有効な打開策が得られないまま文明は未だに有効な手を打てずにいる。当面は省エネルギーを心がけながら、核エネルギー或いは自然エネルギー又は位置エネルギー等に基づく各種の技術を総合して、エネルギーのベストミックスで対応せざるを得ない状況にある。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながらいずれの方法も様々な課題を抱えており、それぞれに制約があって温暖化の防止には効果があるとはいうものの、副次的な課題を新たに生み出すことにもなっている。
副次的に生成するそれらの課題を一つに限り挙げるとするなら、原子力ではウランを消費して放射性廃棄物を積み増している事、自然エネルギーでは質・量ともに不安定で代替能力には程遠い事、水力発電では自然破壊を前提としなければなない事、等というような諸問題を生み出す因果の関係が抜き難く存在しているのである。
このため主要な代替エネルギーとはなり得ず、将来電源開発に行き詰まることは目に見えている。このような事情でどのエネルギーも温暖化防止の実効を上げているとは言えず、弥縫の策にとどまっているのが現状であると言わざるを得ない。
【0003】
上に記したエネルギー以外に水素の存在が知られており、新資源として兼ねてより有望視されている。水素は陽子と電子が一対となって成り立つシンプルな元素であり、いろいろな化合物を形成する中核となる基本構造をもっている。
水素は酸化反応で燃焼し、酸素と化合した末に水となる性質を持っている。即ち水素エネルギーは最終的に水を生成する系をつくるのである。生まれでた水は様々な方法で再び元素にまで分解することができ、そこで水素と酸素として再利用することができるものとなる。水から電気分解、加水分解等で水素を取り出す方法は既に確立されており、効率の改善を目指す研究が進められているところである。
これらの方法の外に、熱化学反応で水素を取り出すという技術が登場している。680℃〜810℃程度の温度領域付近で熱化学反応を生起せしめ、96%濃度の水素ガスを分離抽出するという研究が登場している。この熱化学反応を中核技術として、複数の水素抽出法を併用する新エネルギーの供給システムを考案した。本発明は代替資源となる水素エネルギーで環境負荷をなくし、省エネルギーを重ねて繰り返し利用できる水を資源として生かす、新エネルギー普及のための工夫に重点を置いたものである。
【0004】
水素濃度はいろいろな方法で高められるが、水をフィルターとすることや水素貯蔵合金、フラーレンおよびカーボンナノチューブ等に吸収させ、精錬と備蓄を同時に果たすこと等が有効である。水素吸蔵法はシンプルであり且つ安全に管理できるものとして、今後短期間に実用化されていくものと思われる。
また水素を冷却して液化する方法が実用化されており、相当数の企業から液化装置が販売されている。ガスとして高圧のまま備蓄することは可能だが、圧力レベルが高くなることから製品化されてはいるものの、安全性とその管理面等から普及するまでには及んでいない。
水素は分子であるH2の状態で安定するが、この段階で急激に膨張する。実験的に発生させた水素は、フラスコを破裂させるほどの膨張圧力を示すことがある。驚異的な膨張速度による破壊圧の存在が、水素資源の普及を抑制してきたのは事実である。この膨張圧力あるが故に、高圧による水素ガスの管理方法は容易ならざるものとなり、可燃性と相俟って水素を危険なものとして遠ざける理由となってきた。水素を扱う上で冷却して液化する技術は、低温という属性を利用することにもなるので、高温超伝導などにその応用分野を広げ、今後一層研究開発に拍車がかかるものと思われる。
【0005】
水素備蓄技術ではカーボンナノチューブ、カーボン60などの各種の構造体を用いることで、水素を吸収する密度を更に数倍〜数十倍高くする技術が報告されている。この方法は純度の高い水素ガスを得るのに、より少ないエネルギー消費で精錬と備蓄を可能とする点に特徴がある。
これらの備蓄技術等を統合して効率の良い系を構築することで、水素応用技術の実用化を図り、環境の改善と経済の賦活を果たすことをテーマとして、調査ならびに研究の成果を本発明に纏めた次第である。水素資源の実用化とその普及促進を図るために具体的プランを提供し、速やかに実行することで環境と経済の再生を共に果たすことが目標となっている。
本発明が目指すのはEcology Environment Economy等の統合的融和であり、Energy の再生を通してEarthの回復を願う“E”で始まる各カテゴリーに属する概念の総合化による平和の実現である。2001年9月11日の同時多発テロは、貧富の差が原因となって招いたものである。この認識は、世界が共通して持つものであると理解されている。
エネルギーに資源を消費しない水・水素循環型エネルギー供給システムの登場は、経済性および環境性能、そして生態系等の観点から、地球に平和を齎すものとして機能していくものと思われる。輸入していた各種の地下資源は、豊富な水資源で置き換えられていくであろう。エネルギーに費やす割合が減れば、国富は増加して社会が発展していくからである。平和は繁栄の裏付けがあってはじめて、地上に実現するものである。
【0006】
この熱化学反応プロセスが起きる680℃〜810℃程度の温度領域付近で、水から水素を取り出せることは従来の電気分解法にはない大きな特徴だといえる。即ち捨て去っていた排熱を有効利用する道が開けるからである。熱資源を再利用することができるようになり、エネルギーの高度利用をあらたな方法で図ることが可能となる。この熱化学分解反応は蒸気の状態で水を化学的に元素レベルにまで分解するもので、水蒸気が化学反応器を通過する事によって元素への分解が為されていく。従って蒸気発電の機関では熱を帯びた蒸気をそのまま利用することができる。蒸気発電に求められる温度は200℃〜800℃程度とされているので、発電した後の蒸気をこの化学反応器へ直接引き込み、必要な熱を与えてその場で水素ガスを生む回路を設営できるようになる。生まれ出た水素は一定の圧力管理下で一時備蓄を経て燃料電池へと送られ、発電に寄与するものとなる。
水素は常温常圧下で急激に膨張することは既に述べた。この水素分子発生時の圧力を制御された温度管理下で利用すれば、機械的に加圧することなく圧力容器に一定量のガスを備蓄することができる。この水素が膨張する現象を推力に変えているのがロケットエンジンの噴射である。水素を燃焼に用いるメリットとして、その燃焼速度が極めて速いことがあげられる。膨張速度を燃焼で推力に変えている噴射現象に、水素エネルギーがもつ能力を観ることができる。
【0007】
燃料電池は発電した後純水を合成する。この水を再利用して燃料電池等の資源とし、繰り返し使うことで循環型システムを成り立たせるモデルは、特願2001−153487「エネルギー供給システム」に於いてその方法が開示されている。
水素ガスを燃焼させるガスタービンや蒸気タービン等で発電を行いながら、発生した蒸気と熱を化学的に反応させて水素を抽出し、これを水素タービンや燃料電池等で再度発電に使用するようなことが可能となっている。既存の装置を組み合わせることで水素資源となる水を循環させ、炭素系資源による温暖化ガス排出の削減を果たしながら、省エネルギーと創エネルギーおよびエネルギー流通の効率化を図る点に類例の無い特徴を持っている。
【0008】
原子力発電所の蒸気発電システムでは、その効率が33%であることが公表されている。排熱から水素を導くことで燃料電池が生みだすことになる電力はおよそ35%〜60%の効率であることが知られている。これらを組み合わせることで、効率を倍増させることができる。同一の熱から35%〜60%+33%の合計である68%〜93%がその効率として得られることになるからである。燃料電池はその種類により発電効率が異なる。そのためこのような幅のある表現が求められるのである。原子力発電で用いられる蒸気の温度は300℃以下である。この排熱は冷却することで水に戻されているが、逆に加熱してやることで水素を発生するものとなる。排熱は熱化学反応が起きる一定の温度に維持され、安定的に水素を分解するための熱資源として有効利用することができる。このような循環にすれば従来冷却して捨てていた熱資源を用い、加熱することで新たな水素資源を抽出するという創エネルギーが実現するのである。
【0009】
一つのサイクルに付随させる別のサイクルから、エネルギーを生みだすことができる。原子力発電のサイクルと、燃料電池のサイクルがそれに該当する。資源を無駄無く使ってエネルギー効率を上げ、低廉な資源を投入して経済効果を引き出すと、省エネルギーを推進して産業全体を活気づかせることができる。エネルギービジネスでは経済合理性の有無が、経営判断を左右する大きな要因となる。消費する地下資源を抑制することになるので、仕入れに要する資金を抑えて、獲得した水素エネルギーで新たな収益を生みだすことができるようになる。
【0010】
水を循環させる方法は資源を徒らに消費せず、エネルギーに変換されなかった粒子を再び水素原子に戻し、これに大気中の酸素を化合させ、水を作り出すというサイクルを成り立たせる。つまり水資源を再利用するというサイクルが成り立つのである。水は備蓄が可能であり、自然界から与えられる雨水、地下水乃至海水等から、水素を低コストで取り出すことができるのである。必要となる熱資源は680℃〜810℃あればよく、かりに電力で賄うにしても単位(1m3)当たり800ワット以下と従来の電気分解法に比べ大幅に低くなっている。水素抽出のコストが低いという事は、企業経営の観点からみて極めて有利なことである。
【0011】
経済効果の外に地球の環境が改善するという更に大きな変化が見込め、京都議定書の定める温暖化ガス排出削減の目標値を達成することが具体化するのである。水素は炭素と違い、この熱化学反応では温暖化ガスを一切生むことがない。全てが無機反応のプロセスとして実行される。二酸化炭素が関与する余地は100%ない。但し炭化水素を資源とする場合は、改質器に貯留される炭素が容器内に残り、それが温暖化ガスの発生源となることは考えられる。本システムで資源としているのは炭化水素ではなく、水または蒸気から取り出した水素であることから、二酸化炭素並びにメタンなどに代表される温室効果ガスは、まったく発生しないのである。
【0012】
水素エネルギーが増えていくと、それに対応して炭素資源の消費は反比例する傾向を示すであろう。エネルギーの消費量は景気動向に左右されはするものの、全体として安定しており常に一定量の需要が存在しているからである。
所謂京都議定書の定める温暖化ガス削減は、本発明を導入する国にとって、その目標とする数値の達成が早期に実現可能となるであろう。環境を汚すことなく低廉な水を起源とする水素は、エネルギー消費を急速に拡大させる可能性がある。水素エネルギーを使えば使うほど環境の回復を早め、経済は活力を取り戻して繁栄へと向かい、平和で安定した循環型社会を築くことになるものと思われる。水素という新しいエネルギーは、現在の社会を形成するシステムに影響を及ぼし、短期間に未来型の社会を築いていくその魁となるであろう。
【0013】
基本となる資源は水であり、反応させる薬品を安定して循環させるのは熱である。液体を気体に変える相転位を経て所期の反応を得るのは、加水分解の手法と同様のプロセスだが、水そのものを比較的低温である680℃〜810℃程度の温度領域で、化学反応器により水を直接分解し水素を取り出す点に他の分解法にはない大きな特徴がある。反応の前段階で水を蒸発させ熱により分解を誘導することから、海水からであっても水分解を差し支えなく行なうことができる。このことは将来に亘って、エネルギー資源の枯渇がおきないことを意味している。
【0014】
水を熱だけで分解しようとすると、4000Kまで加熱する必要がある。また、水を電気分解する装置として実用化されているものは、単位(1m3)あたり4kwh〜6kwhの直流電流を必要としている。このため抽出した水素を用いて燃料電池等で発電するには、エネルギーの収支が釣り合わず、専ら液体水素として、または燃焼させて化合物を熱分解する手段として、産業界または宇宙開発の分野において限定的に使われているに過ぎなかった。
最近登場したブラウンガスでは水を電気分解するのに、単位(1m3)あたり2kwhの電力で済むようになっている。水を分解する方法としては電気を用いる技法が主流であり、触媒や加水分解などの補助的な技術も存在するが、単独で実用に耐えるレベルには至っていないのが現状である。
炭化水素を用いる燃料電池の改質器の技術として、加水分解法が採用されている。本発明の前提となる水を資源として水素を抽出する方式が浸透するにつれて、炭化水素系燃料電池は市場占有率を低下させていくものとみられる。これは資源に要する費用の多寡が経済合理性を決定するとみられるからで、有限な化石燃料を購入する方法よりも、豊富に存在する水を循環再利用する方が合理的であるとの認識に基づいている。熱化学分解に要する費用は排熱導入法、自然エネルギー導入法に限れば極めて低いものとなる。
【0015】
また特願平10−143770では水素エンジンシステムで燃焼させた熱で化学反応をおこし、獲得した水素の一部を還流させて再び水素エンジンシステムで熱化学反応を得るものが提案されている。しかしこの方式は構造が複雑であり、エネルギー効率からみても実用に耐え得るものとはいい難い。研究自体は着眼に見るべきものがありながら、効率の向上を優先するが故に水素発生のプロセスを重層化させ、機構そのものを複雑にするという新たな課題を生み出している。
【0016】
水素発生法はこれ以外にも様々なものがある。副生水素は化学工場で生じる副産物の余剰水素を集めたものであり、光触媒を使うモデルは光による酸化還元反応を使って、水から水素を取り出しこれを捕集するというものである。また微生物が吐き出す水素を合金等に吸蔵する方法や、バイオマス系或いは糞尿などの消化ガス等から改質器を経て水素を取り出す方法、直流電流ばかりでなく交流電流からも電気分解ができるブラウンガス応用法や、日本原子力研究所大洗研究所ですすめているヨウ素と二酸化硫黄を反応させる熱化学分解法、東京大学で研究中のリアクター内で化合物の循環反応を起こす熱化学分解法、およびマグネシウムを反応促進剤とする方法等々多岐にわたって様々な技術が存在する。
【0017】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明は、上記の様々な課題を解決し、水素エネルギーを利用したエネルギー供給システムに関し、またその応用形態である各種システムを提供する。この水素を水から抽出する技術を応用して、環境負荷のない代替エネルギーによる循環型のエネルギーモデルを考案した。
このアイデアは装置等の組み合わせを工夫することによって、省エネルギーを図りつつ環境を回復させるためのエネルギーサイクルを導くものである。循環型であるのは水をリサイクルするからであり、水素を中心とするエネルギーモデルを成り立たせている。代替資源として優れた特性を持ち、現在のエネルギーモデルにこれを置き換えていく能力を持っている。水素は21世紀以降の主要なエネルギー資源として、末永く文明を支えていくこととなろう。
【0018】
本発明の根拠となる熱化学反応に関する基本技術に係る特許は、中国に於いて既に登録されている。(2001年9月1日付け第445200号)この基本技術は、ある種の金属酸化物と塩素系化合物を反応させることで成り立つことが開示されている。しかし更に効率を改善するための研究開発が進み、より一層進化したモデルの概要が発表されている。その実用化を前にして、現在様々な計画が検討されているところである。
該発明は薬品の調合を変えることなどで多くの周辺関連特許を容易に派生し得る可能性を持ち、技術内容を開示するには慎重でなければならないものとなっている。技術内容の公開を伴う形式の特許が出願される見込みは、今のところ得られていない。熱化学反応一般から同様に水素を抽出する研究は複数存在しており、この分解プロセスに類似する水素抽出法は今後、効率の改善を目指した開発へと遷移していくものと思われる。
【0019】
本発明では効率に於いて優る熱化学反応の応用技術を採用し、水素ガス発生装置を主体に該装置から水を分解して得られる水素ガスを用いる、さまざまな応用技術に及ぶアイデアを提供することを目指している。代替エネルギーとして水素が持つ潜在能力を引き出して、既存のエネルギーシステムが抱える多くの課題に対する解を提供しようとするものである。
エネルギー効率において勝る水分解法のいずれを採用しても、本特許の対象とする水素資源の供給システムが成り立つ。電気は保存することができないという性質を持つが、水素は高圧ガスまたは液化水素及びその他の方法で備蓄することができ、システムにバッファ機能を持たせて安定供給を図る道を展くものとなる。選択の要点は経済効率の良し悪しに絞られる。効率における差こそが、経済性を規定する因子となるのである。
【0020】
早急に解決を図らなければならない問題として、温暖化ガス排出削減の実行が求められている。気候変動枠組み条約即ちCOP3と呼ばれる京都会議に於いて採択された温暖化ガスの削減案、所謂京都議定書の批准承認が相次いで成立するようになってきた。わが国では2002年度通常国会で批准され、正式に承認されている。
温暖化ガスの削減は基準となる1990年度の数値に対してその6%を2012年までに削減することが義務付けられる。その結果産業界全体に及ぼす影響は、甚だ大きなものになるとみられている。炭素資源を主流とする既存のエネルギーモデルは、より一層の省エネルギーを推進しなければならず、生産活動を制約する因子となって経済に作用する。経済が拡大を目指す限り、温暖化ガスの排出量は増大する。京都議定書を遵守する以上、温暖化ガスを削減しなければならないのは当然である。相反する事柄を調和させるのは容易な事ではない。排出権の取引などが検討されているが、実施されたとしても早晩飽和するであろう。地球が許容する温暖化ガスの量には限界があるからである。生産活動は抑制されざるを得ず、その結果景気を押し下げていくことが予測される。
【0021】
景気の回復が遅々として進まずわが国の国債に対する格付け評価が、過去に例を見ない程大幅に引き下げられ途上国並みになったことは、経済再生のプログラムにとって阻害要因となる。このような不況下にあって温暖化ガスの排出を大幅に削減するのは、まさに至難の技と言わざるを得ないのである。生産に要するエネルギーを減らすことなく、環境に負荷を与え続ける温暖化ガスを所定の数値まで減らすには、代替エネルギーとなる水素資源の早期導入が絶対的に不可欠なのである。
【0022】
そこで水素資源を水に求め、自然エネルギーなどの他熱を用いてこれを安価に分解し、抽出した水素を精錬備蓄して炭素エネルギーから水素エネルギーへの転換を図る、という経済的に有利な方法を中心にシステム構成を検討した。資源を水とすることでエネルギーコストを下げ、エネルギー自給率を向上させて、枯渇する懼れのないクリーンエネルギーを取り出すことを目指した。
相反する関係にある環境の回復と経済の回復を同時に図ることが、本発明を応用することにより可能となる。市販製品を組み合わせるだけで、水素エネルギーの供給システムは短期間に実用化する。
地球の温暖化は、炭素エネルギーを採用したことによる必然の帰結であった。やむを得ない経緯とはいうものの、最早深刻な状況となっているのは紛れもない事実である。温暖化ガス発生の主原因は二酸化炭素であることは既に明らかであり、京都議定書の批准並びに承認が世界各国で今後鋭意なされるようになっていくことは、高い確率で予測されている。
【0023】
水素を水から抽出する技術は多数存在するが、発生効率が低いという問題があって普及をみるに至っていない。しかしこの数年で新しい技術がいろいろと登場し、一部は既に市販されるようになってきたことから、水素資源の実用化が急がれる事態に対応できるようになっている。
電気分解法、ブラウンガス応用法、液化天然ガス改質法、バイオマス/メタノール改質法、光触媒分解法、熱化学反応法、加水分解法、微生物活用法、副生水素応用法等様々なものがあり、それぞれに特徴を持っている。
本発明では熱化学反応で水を分解する技術を用いる方法を中心として、排熱の再利用を図りつつ一次エネルギーを峻別して個々に成り立つ系として捉え、独立したシステム並びに該システムの統合ネットワークを提案する。熱化学反応に限らず効率よく水から水素を発生させる方法を援用して、エネルギー産業が直面する諸問題の解決を図るシステムを示す。環境と経済の再生を実現することが、本発明の目指す到達点であるといえる。
【0024】
独立したシステムを複合させエネルギー効率の向上を図り、相乗効果を生みだすよう配慮したモデルに加えて、これらをネットワークすることで安定供給の道を開き、相互にエネルギーを融通しあう流通機構を構築する。更に同様の上位階層と連携することで安定供給の道を拓き、相互補完並びに発生したエネルギーの有効利用を図る等、創エネルギーと省エネルギーに関する応用技術をシステムとして纏めたものである。
【0025】
【発明の実施の形態】
請求項1については、原子力発電所が生みだす高温の排熱と蒸気を用いて、熱資源の再利用を図ることを目的に、蒸気から熱化学反応を経て水素を抽出し、エネルギー資源とすることを目的としている。排熱の再利用を図り、水素エネルギーを蒸気から取り出す点に特徴がある。
熱化学分解による水素を水から抽出する方法は、日本原子力研究所大洗研究所で開発が進められている。この分解モデルはヨウ素と二酸化硫黄を900℃の温度領域で反応させ、水を元素に分解するというものである。該研究は現在開発の途上であり、実用に供される予定は未だ公表されていない。また東京大学でも類似の研究が進められており、一部の反応成分を循環利用して安定的に水素を発生する方法が公開されている。
中国で発明されている同様のモデルでは、反応促進剤として用いられる薬品名こそ開示されていないが、680℃〜810℃で同様の反応を生起し、使用された薬品等は八ヶ月において毎日数時間の連続的使用に耐えたことが公表されている。連続運転を停止したのは装置を改善する準備ができたためであり、尚一層の連続的使用を可能とすることが示唆されている。
この研究成果を応用して水素を排熱および排蒸気から引き出し、水素資源から燃料電池で電気エネルギーを創出したり、燃焼による熱エネルギーへと転換したり、また内燃機関等で動力としてエネルギーを取り出したりすることが、今後次々と実用化していくことが見込まれる。
【0026】
産業用水素資源として原子力発電所が生む排熱を再利用して水素を導くのは、エネルギーシステムとして合理的なものである。捨てていた資源である排熱を善用することになるからである。但し沸騰水型原子炉の蒸気は放射能汚染の心配があり、熱交換を行う方式の加圧水型原子炉で生じる蒸気発電の方式が安全だが、閉じた系であれば核による汚染物質伝播の問題はどちらも発生しないものと見られる。どちらの発電方法でも300℃以下の蒸気を用いて、原子力核反応による熱を用いた蒸気タービンで発電を行っている。この排熱を冷却するのではなく、逆に加熱することで熱化学反応を誘導し、経済的に水素を手に入れることができるようになる。
【0027】
水素資源は冷却して液化することで膨張圧力の発生を回避し、またマイナス253℃というその温度特性の低さから、金属間化合物による高温超伝導状態を維持する能力をもつ。この事は電気抵抗のない環境で大規模な電力流通を実現できることを意味し、高温超伝導電力貯蔵と高温超伝導電力輸送並びに高温超伝導フライホイール方式での電力貯蔵や、水素ステーション等の建設までネットワークとして成立せしめることを可能とするのである。(図1)
【0028】
水素分子であるH2を構成するものには、二種類のタイプがある。原子核スピンの向きが上向きに揃っているものが一つ、そして原子核の一方が反転して下向きになっているものが他の一つである。後者の方をパラ水素と呼んでいる。前者はオルソ水素と呼ばれているが、エネルギーを比較するとパラ水素の方が小さくなっている。このため液体水素を放置しておくと、徐々にパラ水素になろうとしてエネルギーの放出が起こるのである。放出されたエネルギーが発熱を誘起し、気化を進めて液体水素の比率は徐々に下がっていく。オルソ水素がエネルギーを放出して、パラ水素になるからである。その現象が発熱を齎すのである。こうして液体水素は気化していき、少しずつ減っていくことになる。存在比率は一般にオルソ水素が75%であり、パラ水素は25%となっている。気化率は一日あたり約4〜6%程度と見込まれている。
【0029】
気化と同時に発生する膨張圧力を利用して燃料電池へ水素を導けば、そのまま発電用の資源として活用することができる。加圧機を設ける必要がないのである。シンプルな発電システムを構築することができるであろう。また予めパラ水素だけにした状態を作っておけば、液体水素を気化させる発熱の問題は回避できる。パラ水素を人為的に導くのは、触媒を用いることで既に可能となっている。液体水素温度レベルでの高温超伝導現象を導くのは、研究開発の終期にある技術であると看做される。
【0030】
液体水素は適宜補充することが可能で、高温超伝導電力輸送は金属間化合物をケーブルに加工することで実用化する。金属間化合物とは特定の金属結晶の中に他の化合物を編入した複合型の構造体を指し、単なる金属同士を混ぜ合わせた合金とはまったく別種のものである。これまで高温超伝導を起こす素材は、おしなべて金属の酸化物であった。金属酸化物のことは一般にセラミックスと呼ばれている。焼き固めて作るものなので、ケーブルとするには向いていない。ところが金属間化合物による高温超伝導素材は加工ができる。金属は加撓性があり、ケーブルとして適当な素材となるのである。
【0031】
液体窒素の低温であるマイナス196℃付近の温度領域で起きる高温超伝導は、理論的に説明できない部分が残されており、また超伝導状態を常に100%維持できるという保証が与えられている訳でもない。素材となるのは金属酸化物に限られており、セラミックスというその性質上組成は脆弱なものとならざるを得ない。超伝導は単位あたり最大の電流を許容するので、この状態が安定的に維持できない素材では安全が保障されず、応用分野は限られる。民間の研究機関では電力会社と共同で、この金属酸化物による高温超伝導送電ケーブルの開発に着手している。
しかし金属間化合物による高温超伝導技術の出現は、液体窒素に代わって液体水素が超伝導現象の主な冷媒となることを示唆している。液体水素は装置を導入しさえすれば水から自在に作り出すことができ、資源としての希少性がないことからエネルギーコストを下げていくであろう。投入エネルギーは蒸気タービンの排熱等で賄えるからである。液体水素は需要地で生産することができ、そのために流通経費を削減する能力を持っている。
【0032】
熱化学分解法により得られた液体水素は、その場でエネルギーに変換することができる。液体水素流通機構の如き第三者機関等から調達するまでもなく、液体窒素を代替して現地で高温超伝導システムを成り立たせるようになる。調達の容易さとより低い温度特性から、高温超伝導をおこす領域を拡大させる効果があり、液体水素の需要は液体窒素を凌ぐようになると思われる。液体水素をつくるには水という資源があればよく、液化装置は販売実績を積んでいるので、技術的な問題は残す所機器の連携と調整程度で済むものと思われる。従って液体水素は経済性と流通面等において、液体窒素を凌ぐものとなる可能性が高いのである。
【0033】
液体水素を流通させる機構を創設して水素資源を主要なエネルギーとして活用すれば、高温超伝導を維持したあと燃料電池で発電したり、水素ステーションで電気自動車の水素燃料を供給したりするなどの仕組みを構築できる。電力事業が完全自由化されると、水素ステーションや水素を発生する能力を持つ施設等が電力事業を行うようになるであろう。
完全自由化は2007年頃として閣議で了承がなされており、市場開放圧力などもその段階までには逓減し、完全自由化した後は水素資源が温暖化ガスを希薄化していくこととなろう。
この方式を採用することで新しい産業が生まれ、経済再生を支援する効果もでてくるのである。高温超伝導物質による送電事業が成り立つと、長距離の電力輸送ばかりでなく送電の仕組みを新しいものに置き換えてゆき、産業基盤の更新需要が起きてくるものと見られる。すなわち新規需要が発生し、新市場を創出していくようになるのである。
【0034】
高圧の送電線による電力輸送で失われている電力は、概ね10%とされている。送電線が持つ固有の電気抵抗の所為で失われているもので、ジュール熱として大気中に放出されている。この熱が大気を暖める作用を持つのは言うまでもない。高温超伝導による送電が可能になると、この電気抵抗によるエネルギーのロスと熱の発生を共に無くすことができる。
【0035】
液体水素で実現できる高温超伝導は、青山学院大学工学部でなされた発明に基づいている。二硼化マグネシウム(MgB2)を用いる高温超伝導物質で、マイナス234℃より低い温度領域で超伝導が発現している。液体水素はマイナス253℃〜259℃の温度領域で液相を維持し、これを下回る温度領域では固相となる性質がある。二硼化マグネシウム(MgB2)による高温超伝導は、発現温度がこの液体水素の冷熱の範囲内に収まっている。原料となるのは硼素とマグネシウムであり、豊富に存在する物質であるところから、線材製造に要する費用は低廉でありその経済性は高いものとなる。
従来液体ヘリウムで行っていた超伝導現象を、液体水素でも引き起こせるようになるのである。水素は需要地で水から得られるので、液化装置を導入することで冷媒の入手は容易となる。液化装置はいろいろなものが市販されており、導入に問題はない。このようなことから液体水素は安価に、現地で、簡単に手に入るものとなっていくであろう。
【0036】
エネルギー資源は有限な炭素系から、再生が可能な水素系のものへと転換されていくことはほぼ確実と思われる。京都議定書の批准承認は、水素エネルギーへの転換を早めることとなろう。
原子力エネルギーもまた有限な資源に依存することから、将来は水素エネルギーへとシフトしていくものと思われる。軽い水素は放射性廃棄物を生産せず、環境に負荷を与えることがない。既存のエネルギーは地下資源であり、採掘に要する一時エネルギーには動力が求められるのである。このため資源を確保するには費用が発生している。生産コストと輸送コスト、及び備蓄精製コスト等が変動要因として関わり、国際経済を不安定なものにしている事実は歴史的なものである。
【0037】
請求項2については、請求項1と同じ基本原理から熱化学反応を介して水から水素を抽出するものであり、最小の単位となる家庭または事業所等で行う程度の水素エネルギー供給システムを対象としている。熱化学反応現象を利用して水から水素を取り出し、該水素から得た電力を自家消費する他、余剰電力を電力会社もしくはその他の電力事業者へ融通し、または電力事業の完全自由化をうけて事業者として登録し、余剰エネルギーである電気または水素或いは双方を直接第三者へ販売すること等を目的とするシステムである。
水素を液化する場合は液体水素流通機構と連携し、超伝導送電を兼ねたネットワークの一翼を担うことが可能である。水素自動車および燃料電池自動車へ、水素燃料を供給する能力も同時に発生する。余剰のエネルギーを水素として備蓄することと、超伝導による電力貯蔵との併用が成り立つのである。
【0038】
現時点で確認されている水素酸素の発生比率は、水素が96%、酸素が3%、その他不純物1%であり、発生する水素資源はこれらの混合ガスである。酸素濃度が爆発を惹起する領域である4%〜75%の範囲を回避しているので、この点から見て本熱化学反応で生成する水素の危険性は低いと言える。3%程度の酸素濃度は密閉されている限り、爆発の危険はないのである。96%の水素濃度を更に高める作業は備蓄する直前に行えばよく、酸素が関与しない密閉された回路の中で、精錬と濃縮を行うことで安全性を高めていくことができる。
また水素吸蔵合金やフラーレンに吸収させるケースでは、プロセスそのものが精錬機能を有し、金属分子または有機分子の構造体中に水素を補足するので、安全性はより高いものとなる。
【0039】
水素から電力への変換は適用可能な発電機即ち水素タービン並びに水素エンジン、燃料電池等で行うことができ、変換された電気エネルギーを自家用とする他、事業用として直接間接を問わず取引することを目的として、電力の流通ビジネスに影響を与えるであろう。
水素をガスとして燃焼に用いる場合、焼却炉、溶鉱炉等を除き、燃焼のエネルギーが強くなり過ぎる点に留意しなければならない。水素酸素の混合比率を調整すること等で出力は制御でき、家庭用の燃焼機器に応用することは不可能ではない。直火を扱うこととエネルギー効率が落ちる点を考慮し、住宅などでは燃焼に代わって電力がその役割を果たす方が望ましい。電気エネルギーは制御可能であるが、水素エネルギーの制御は安全性が確立されている訳ではない。高温を必要とする産業分野では熱効率を優先し、住宅用の民生分野では安全性を優先すべきであろう。
【0040】
一般用の燃焼器具で水素を燃やすのは危険であるばかりではなく、燃焼出力を調整することで対応しようとすればエネルギー効率は下がらざるを得ない。熱は分子の振動状態を表しており、電磁波としてその温度に固有の波長を持っている。物理法則で証明するまでもなく、火から手を遠ざけると熱を感じなくなることは、誰でも体験的によく知っていることである。このため出力調整を行うことは、エネルギーの無駄に直結することになるのである。省エネルギーと安全性の観点から、水素は燃料電池を経て電気エネルギーとする方が望ましいといえる。電気は備蓄が困難であるけれども、水素資源としてなら保存できる点に着目した。エネルギーの貯蔵をユーザーサイドで行えるよう配慮した点に特徴がある。
【0041】
調理・給湯などは電気を用いる方が簡便であり、燃焼による火災の心配もなく、また大気を暖めることもない。今までは温暖化ガスを生む発電方法が関与していたために、環境に影響を及ぼす悪性因子となっていた。また経済性の面からみても、電気よりはガスの利便性の方が注目されてきた。しかし水素エネルギーから電力が得られるようになると、電気は更に優れた性能を発揮するようになる。電磁調理器や電気給湯器、自然冷媒による貯湯が可能なエコキュート等の電機製品が多数市販されており、本発明をこれら製品群に応用していくことで、当該製品の急速な普及を促す効果を発揮するものと思われる。
経済性と環境性能を安定的に満足する汎用エネルギーモデルは、本発明に拠る解以外は現在のところ見当たらない。エネルギーを水から得るこの方法は、コストを下げると同時に温暖化ガスを減らしていくという抜きん出た特性を発揮するものである。
【0042】
超伝導技術を応用する電力貯蔵は電流をバルク材に備蓄する方法と、フライホイールによる運動エネルギーに変換する方法とがあり、共に実用化可能な段階にある。超伝導を維持する物質である液体ヘリウムが、極めて高価であることが普及を阻んでいるのである。コストに見合った収益が得られる医療用装置として、既に病院に多く導入されMRI等に実用化されていることは衆知の事実となっている。
貯蔵以外では超伝導発電機、超伝導モーターなどの存在が知られている。高温超伝導状態を維持するのは液体水素があれば良く、−150℃付近で発現する高温超伝導バルク材の冷却まで、液体窒素に代わって水から取り出した液体水素により、経済的且つ安定的にその冷却が行えるようになっている。高温超伝導とは−296℃より高い温度領域において発生する超伝導現象のことである。
【0043】
液体水素の流通インフラ構築後であれば、経済性を活かした簡便な水素資源の供給が成立する。液体水素レベルの温度領域で超伝導を発現する物質は、青山学院大学と日立製作所が共同で開発を進めている。この技術を応用すると、加撓性のある超伝導送電線の量産化が可能になる。超伝導による送電線のネットワークが、短期間で実現するであろう。
水素の生産が需要地でできるなら、液体水素の生産も同様に現地生産が可能である。水素は液化することで備蓄可能なものとなる。高圧で備蓄することも、また水素を選択的に取り込む合金や化合物に吸収させることも同様にできる。備蓄した水素は燃料電池で任意に発電することができる。発電形態としては独立分散型に属し、エネルギーの自給自足を可能とするばかりでなく、防災対応能力まで保持するシステムとなるのである。(図2)
【0044】
請求項3については、製鉄所などの工場が持つ高温の排熱を利用し、熱化学反応で水を分解して抽出した水素で発電を行い、獲得した電力および水素資源を自家消費または外部への販売に供して企業の経営資源とする、排熱の再利用を目的としたエネルギーシステムである。水素エンジンなどの内燃機関および焼却炉、または水素タービンを用いる二次的発電システムを付加できるコ・ジェネレーションシステムであり、発電後に得られる水を循環させ、該水資源の再利用を可能とする複合型エネルギー供給システムである。(図3)
【0045】
電力事業の自由化を受けてエネルギー市場に参入する企業が増加しつつある。保有する設備の稼働率を向上させる効果と、新規市場の開拓を同時に図ることができるので、今後電力供給事業に乗り出す企業は増加していくものとみられる。既存の発電機が生む余剰電力等を活用して、低廉な電気エネルギーを供給することが一般の企業にも認められている。電力料金は低下する傾向を示しており、自由化がわが国の経済にとって有効かつ有益であることは理解されている。しかし資源を輸入に頼らざるを得ない状況は依然として存在し、電力料金は為替相場の動向に大きく左右されている。また資源の供給不安や残存埋蔵量の低下による希少性の認識等将来の不安定要因が隠されており、そのためエネルギーの安定供給が国の大きな課題となっている。これが所謂エネルギーの安全保障政策を必要ならしめているのである。エネルギー資源が高騰すれば、経済は負担を強いられ国家の成長に影響がでるからである。
水から得る水素資源が登場すると、これらの問題を解消させることができるのである。本発明はエネルギー資源に恵まれないわが国を、水を資源とすることによってエネルギー大国へと変えていく点に特徴をもつ。水素エネルギーの可能性に着目し、その実用化を進めて様々な課題を解消することを目指している。
【0046】
水がエネルギーとして利用されるようになると、資源を輸入する必要がなくなるであろう。地下資源の購入に充てていた資金を国内にとどめ、内部留保を厚くして景気浮揚を図り、更には再投資等へと富を配分できるようになる。独立分散型でのエネルギー自給自足が成り立つことから、災害などの非常時にも日常生活を営むことができ、電気と熱並びに水を一定期間確保する能力を企業や住宅がもつようになるのである。水素資源は備蓄がきき、雨や海水または地下水等からでもエネルギーを採取することができる。石油や天然ガスのように資源を消費することがない。繰り返し再生する水から、エネルギー資源である水素を取り出せるのである。循環型社会の存立は、循環型エネルギーサイクルがあって初めて実現するものである。工場などが生みだす排熱を使って、水から水素を取り出す点に特徴がある。
【0047】
請求項4については、水素を取り出す一次エネルギーを太陽光に求め、自然から得られる資源を活用して経済性の高い水素生成プロセスを導くことを目的としている。太陽光発電は年間を通じて消費する電力の、およそ50%程度を発電しているという実績をもっている。太陽電池の課題は発電能力が日照時間と入射角度で大きく変動し、不安定であることの外に発熱に弱いという問題を抱え、装置の設置面積を縮小できなくしている点にある。それが装置価格の高さと相俟って、太陽光発電システムの普及を遅らせてさせてきた主な理由となっている。
太陽のエネルギーを安定化させることを目的に、水を熱化学反応させて水素を備蓄し、相互補完と相乗効果を引き出す点に特徴をもつシステムとした。熱化学反応を維持するには0.8kwhの電力があればよい。その為通常の家庭用太陽電池では3〜5kwhの設備を必要としているものが、最低の規模なら1kwh以下で賄えるようになるのである。エネルギーの備蓄が水素を貯めておくことで可能となり、従来の太陽光発電システムが必要とした設備を最小化して、省エネルギーの実現を図ることができるからである。太陽電池を高価なものにしている大きな理由は、最大の電力に対応する設備を常に用意しなければならないという点にあり、このため屋根一面を蔽い尽くす程のモジュールを必要としたからである。
【0048】
太陽電池に熱化学反応を組み合わせて水素を備蓄するシステムを構成すれば、太陽電池を1kwh以下の小さなシステムに落とすことができる。蓄電池、蓄電器を併用することで、完全に独立した自給自足型の電力供給系統も築けるのである。住宅で必要となる電力は時間帯によって変動するため、最大需要を賄う電力は数時間程度であるに過ぎない。余った電力で水素を貯めておけば、必要な時に燃料電池が発電して、必要なだけエネルギーを供給することができる。
水素資源を貯蔵すると余剰電力が発生し易くなることから、電力会社または新設の電力事業者と系統連携をとり、相互間で電力を融通しあう仕組みを構築すればよい。家庭用の電力は常に最大量が求められている訳ではなく、無負荷に近い時間帯がかなり存在することは既に触れた。水素を備蓄するシステムにおいて、求められる最大出力は燃料電池の側にあれば良いのである。太陽電池モジュールを最小の規模にまで落とせるのは、貯蔵した水素資源と燃料電池の連携あるが故のことである。電気エネルギーの需要に対応する最小の設備で、最大の出力を供給しようとする点に特徴がある。
【0049】
電力は社会の資産とするべきであって、電力会社は発電したエネルギーを有効に使わなければならないと考える。水素を備蓄して負荷に対応する電力を燃料電池で取り出せば、最小のエネルギー設備で足りるのである。備蓄を補って余りある場合には、系統を介して売電すればよい。電力会社が買い取る量が増えると、発電しなければならない全体量を減らせるようになる。電力会社が買う電力が増えると見かけ上経常利益は減少するが、深夜電力の料金レートを適用すれば仕入れを抑える効果がでて、収支を改善させることが可能となるのである。即ち質的向上が得られると、株式の価値は上がり企業は世の信頼を得ることになる。
余剰電力を可能な限り吸収すれば、その分日中に発電しなければならい電力量を減らせるのである。電力の売買では日中の料金体系を基準にしているが、深夜電力の料金レートを適用することで差益が発生するのである。深夜電力を用いて熱化学反応で水を分解し、水素を備蓄するようにすれば深夜帯の電力需要を喚起することにもなる。家庭と電力会社が電力をやり取りするようになると、相互補完関係が成り立ち、電力の安定供給を確実なものとして、しかもエネルギー効率を上げるという相乗効果が期待できる。余剰電力で発生した水素は資源であり、その全てを備蓄するとエネルギーの無駄がないシステムが成り立つのである。
【0050】
負荷がある時は電流として、また負荷が無い時は水素資源として、需要地でエネルギーを備蓄しておけばよろず無駄がない。この仕組みは特願2000―317757で、太陽光発電と燃料電池を組み合わせた基本システムとして既に公開されている。本熱化学反応はその基本システムに組み込むことができるものである。水から水素を取り出す部分を付け加えて、環境負荷のない循環型サイクルとする点に特徴をもつシステムとなる。
系統連携して電力会社に売電するケースでは、電気料金は相殺され利潤を生むことがない。しかし水素または水でエネルギーを備蓄するようになると、余剰の電力は売るだけで良く利潤を発生するものとなる。売買のレートを深夜電力のものにシフトするだけでも、多大の収益が発生するものとなる。太陽光発電は天候に大きく左右される点に課題があり、必要量を賄うに足りる設備を導入することで、通常の電力需要に対応させてきたものである。余った電力を系統連携など任意の流通機関へ融通すれば、設備を最大に活用することができる。事業規模を拡大すれば、収益は比例して増加するからである。設備投資を促すことで経済を賦活し、その結果産業界が動意づけば景気は回復へ向けて動き出すであろう。単なる太陽光発電だけによる系統連携については、省エネルギー効果は少ない。 従って売電の料金レートを下げたとしても、双方にとって意味のある変更とはならないのである。燃料電池と蓄電池を関与させることで、大きな省エネルギー効果と同時に経済的なメリットも発生するようになるのである。
【0051】
燃料電池は水素を直接電力へと変換するので効率がよい。熱の相を経ないからである。
エネルギーは熱となる段階でその50%が消えてなくなるのである。燃料電池が優れている点の一つはここにある。
内燃機関では水素エンジンによる回転エネルギーを利用して発電を行ったり、また動力などのエネルギーに変換したりすることができる。燃焼装置では水素タービンで発電することと、焼却炉での高温による熱分解が可能となる他、ゴミ発電の主流であるコンバインドサイクルから電気エネルギーを取り出すことにも応用することができる。この場合二次燃焼器で水素を燃やす高温の熱分解ができ、NOXの排出を限りなく抑制する焼却システムが成り立つのである。
それぞれの方式で発電を行い、複合エネルギーシステムとして効率の良いサイクルを築き、環境の回復と経済効果を発揮させることができるのである。(図4)
【0052】
請求項5については、水を分解するシステムの一次側に、風力発電装置を置くことで成り立つエネルギー供給モデルである。水から水素を取り出す方式を組み込むことで、風力エネルギーを用いて水素を得てこれを備蓄し、二次側に燃料電池、内燃機関、燃焼装置等を設けて、複合発電方式から電力を安定供給しようとする点に特徴がある。この方法は風力発電の課題であるところの電圧の変動、または風力エネルギーのふらつき等を吸収し、水素資源による発電の複合化と液化水素等による資源備蓄、並びに該冷熱を活用する高温超伝導電力貯蔵と高温超伝導電力輸送を併用して、水素ステーション等へ水素資源を供給しながら、エネルギーの分散備蓄を可能とするシステムにまで発展させることを目的としている。
【0053】
自然条件である風力が満足に得られない時などには、備蓄した水素を取り出して電力に変換することで対応でき、電力事業の自由化を受けて該電力供給ビジネスの一翼を担う一大勢力にまで発展させてゆくことを見込んでいる。本方式では超伝導応用技術を加味したエネルギー備蓄と、その輸送並びに供給までを一元的に管理することを前提としている。そのため従来は電気としてのみ販売していたエネルギーを、水素および冷熱を含めた総合的なエネルギー資源として、新たな流通機構を介して各地に供給していくことができる。
【0054】
請求項6については、その他の自然エネルギー即ち地熱発電、高温岩体発電、潮汐力発電、波力発電、海洋温度差発電等の所謂再生可能エネルギーを一次エネルギーとするシステムであって、自然エネルギーの特質である資源を消費することがなく、故にエネルギー購入費用が発生しない点を採用し、経済性と環境性能の向上を目的とした水素資源の循環系を成り立たせる点に特徴がある。二次側の形態は請求項3〜5に記載するものと概ね同様であり、その一部乃至全部を複合させてエネルギー効率の向上を目指すシステムを形成することができる。この部分の組み合わせ方は事業を行う企業の投資スタンスにより、柔軟に変動して差し支えない部分であり、エネルギー効率の向上を図るための裁量余地を残している。
【0055】
請求項7については、商用電源を熱化学反応による水素発生システムの一次エネルギーとするものである。熱化学反応が要求する消費電力は単位あたり0.8kwh以下であり、電気分解法の4kwh以上のワッテージより遥かに少なくなっている。発熱体によっては更に消費電力を小さくすることが可能なヒ−ターが存在している。これらの技術を総合して、安定的に水素を抽出するシステムを建設することができる。この組み合わせをとることによって、既存の電力産業がもつ課題の一つである「電力の負荷平準化」を図ろうとする点に特徴がある。
【0056】
電力の負荷平準化とは年間の電力需要が八月中旬の午後一時頃にピークとなることから、最大需要を充分に賄うだけの電力供給能力を電力会社が負うことで発生する、エネルギーの需給ギャップに起因する問題である。そのため深夜の時間帯では電力供給能力が過剰となり、需給間の乖離幅が最大となっている。この現象を緩和するために電力料金を下げて、深夜の電力需要を引き出すなどの措置がとられている。このため電力需要を新たに喚起する必要があり、この時間帯の低廉な電力料金で熱化学反応から水を分解し、水素を取り出して高圧タンク或いは液化、または金属その他の化合物等にこれを備蓄することにより、該問題を緩和することができるようにする点にポイントをおいた。
【0057】
深夜電力を利用した熱化学分解法で水素を備蓄しておけば、余剰電力を活かして日中の電力需要に対応させることができる。備蓄した水素を用いて、燃料電池で発電を行えばよいからである。自家で消費する必要がなく余剰電力となるような場合には、系統連携をいかして発生した電流を逆潮流させ、商品として流通させればよいであろう。
電力会社はこの電気エネルギーを資産として系統に取り入れて、日中の電力供給圧力を緩和する施策を実行できる。その際、廃棄している接地電流の有効利用と、深夜電力の需要拡大効果等で利益構造を改善することができ、これが収益の増加を齎すことになると思われる。深夜電力に適用する料金体系を導入することで差益を生じ、これが収益の増加を齎すことになるのである。また売り手にとっては売却益が得られるので設備の資産効果が生じ、新規に電力事業を行う事業者となることができる。つまり双方にとって大きなメリットがでてくるのである。水から得た水素で発電した電力を売却することで収益が生じ、設備は投資と見なされて資産となる。電力会社にしてみれば需要地の近くで安価な電力を仕入れることができ、新規の電源開発に要する予算を抑える効果が得られるのである。電力会社は将来、電力商社としても機能するようになる可能性がある。破産した米国のエンロン社はその代表的な事例となろう。経営者の倫理観が欠如していたことが破綻の原因であったが、ビジネスモデルとして電力の流通市場を形成した事実は評価に値するであろう。
【0058】
この仕組みを採用すると日中における電力の供給圧力は下がり、深夜の電力需要を増加させることができる。電力の負荷平準化が目指す需給ギャップの緩和は、このような方法を導入することで果たせるのである。
安価というのは深夜電力の料金レートを適用して、電力会社とエネルギー生産者との間でバーター取引が成り立つからである。電力会社は日中の通常料金のレートを適用し、需要家にこれを転嫁すれば良い。この時の原価率はほぼ50%以下と見込まれるので、日中の電力の一部を水素エネルギーで補って電力の供給圧力を下げ、かつ収益の増加を図る戦略をとることができるようになるのである。エネルギーの生産者は独自に開拓した顧客に対して、販売価格を任意に決定することができ、戦略的な市場展開でシェアを獲得する道が開けるようになる。このため電力会社が自らの余剰電力を用いて水素資源を獲得し、水素エネルギービジネスを直接展開する事等も考えられるのである。
【0059】
余剰電力の売却を希望する者からみれば、商用電源から購入していた電気料金等の費用は相殺され、余剰に生まれる電力は売上としてそのまま計上できるものとなる。またバックアップ電源を確保して電力事業を円滑に遂行できるようになり、安定供給の保証が得られるので、双方にとって利益を期待できる有益なモデルとなるのである。現在の売電方式は太陽光発電でみた場合、日中の高い料金体系に基づいているので、電力会社にはデメリットとして作用している。このため太陽光発電システムの普及が、遅々として進まずにいるのである。この点は電力流通機構等の第三者機関が創設されると、新たに交渉の余地が生まれてビジネスチャンスが拡大するであろう。一次エネルギーを商用電源とする場合は、その販売対象とする顧客は独自に開拓する方がよい。営業力とサービス面で差別化を図るチャンスを活かせるようになる。その他の発電形態を取り入れた複合型にしてエネルギー効率を上げ、エネルギー単価の割引率を大きくする効果も引き出せる。
【0060】
このようにして需要者の近傍で電気エネルギーの生産供給が可能になると、既存の発電所の稼働率を逓減させてゆくことができ、需給ギャップを最終的に大きく圧縮することに繋がっていく。出力調整が可能な火力及び水力発電の負担を、次第に減らしていけばよいのである。問題となるのは出力調整が困難な原子力発電の方である。遠隔地からの送電が高圧の電流を要求するため、電圧調整を図る余地が残されていない。ここにこの問題の本質が存在するのである。
電力事業の完全自由化が成ると、電力会社でなくとも電力供給事業を行うことができるようになる。このため電力会社との間で売電の契約が成立しなくても、第三の事業者と契約することは可能である。事業は経済合理性の有無によって、その成否が決定される。無駄を内包するシステムは、遅かれ早かれいずれは破綻することになるのである。この淘汰圧の存在こそが市場を刺激して、品質と価格の競争を促し経済を成長させていくのである。
【0061】
系統連携を維持できない場合は電力流通機構等第三者機関の設立を待って、有利な条件で電力または水素資源の売却先を選択すればよい。水素によるクリーンエネルギーで生み出した電力は、流通市場においても差別化ができる。環境を汚さない方法で得た電力では、既存の方法にはない優れた特徴がある。生産に要するコストは低い。水分解による水素エネルギーは、原料費が殆どかからないのである。
環境を汚さず資源も消費しない方法によるエネルギー獲得は、世界中が渇望するものであり、本発明の対象である多様な応用方法が低廉且つ高効率である故に、世界的な標準化の対象として有力視されるものとなる可能性がある。とりわけ深夜の余剰電力を活かすという方法は、捨てている電流を用いて水素の資源化を図るという意味で、高い省エネルギー効果を導くものと思われる。
【0062】
エネルギー産業は完全自由化することが上程されており、流通市場がいずれ形成されるのは海外の先例から見て明らかである。電力供給事業を効率よく行うには、液体水素を用いた高温超伝導電力貯蔵と高温超伝導送配電との組み合わせが欠かせない。事業として導入する設備等は全て、償却の対象とすることができる。このため設備投資意欲を喚起して需要を拡大させる効果が、エネルギー産業全般において派生するものと思われる。このことは家庭の単位でもエネルギービジネスが成り立つことを意味し、家族を構成する個々人がエネルギー事業に投資する好機となるであろう。
【0063】
請求項8については、前記商用電源に代えて熱化学反応による水素製造の一次エネルギーに、自家発電の各種設備を導入するモデルである。既設の自家発電を装備している場合は、その電力の一部を水素発生の一次電源として補助的に用い、既述した「電力負荷平準化」問題の緩和に寄与すると同時に、余剰電力を売却して事業収益とする道が拓けるようになる。
自家発電ではいろいろの発電機が活躍している。小型の水力発電機もそうであるし、炭素系資源を燃やすマイクロガスタービン発電や蒸気タービン、または炭化水素を資源とする燃料電池やエンジン式の発電機など多くのものが挙げられる。しかしながら資源を消費する形式の発電機を新たに導入するのは、水を資源とするエネルギー創生の方法から見て、経済的に成り立たないものとなる可能性が窺える。低廉な水素資源は、有害で高価な資源を駆逐するであろう。従ってこのモデルは既存の発電機を保有している場合、または近傍に流れのある小規模な水力発電設備がある場合等に絞られていく。
【0064】
本熱化学反応による水の分解法は消費電力が少ないので、自家用の水力発電装置と組み合わせて余剰エネルギーを備蓄すると、環境負荷のない発電システムを構築することができる。発生した電流を電力会社または電力流通機構等へ売却して、投資資金の早期回収を見込むことも可能である。余剰電流は資産であり、換金が可能なエネルギー資源なのである。このため事業として自家で使用する以上の設備を導入するケースなども、今後逐次散発的に発生してゆくと思われる。民間の資本がエネルギー投資へと向かうであろう。本方式は一次エネルギーと水資源を同時に扱うことになるので、極めて効率のよいシステムとなる点にその特徴がある。
【0065】
請求項9については、その他の発電機を一次電源に充てている。その他の発電機とは回転機から電力を引き出すよう計画されたその他に分類されるシステムであり、上昇気流および下降気流を人工的に引き出すことを目的として開発されているものなどが該当する。
特開2000−303947および特開2000−356181では竜巻発電という概念が示されている。このモデルは焼却炉などの排熱から下降気流を導き、回転機を経て電力を取り出す技術に関するものである。この他にトルネード発電という名称のものが別に存在するが、これは上昇気流を利用して回転機に動力を与え発電を行うというモデルである。本来竜巻という自然現象は、上層の大気と地表との温度差が10℃以上ある場合に起る突発的な下降気流の発現形態を指し、局地的に起きる小規模な下降気流のことをダウンバーストと呼んで区別している。
上昇気流で発電を行うのは、廻り灯篭や走馬灯として古来より知られているものの応用である。熱による上昇気流を人為的に導いて回転機のフィンに動力を伝え、ファンが回ることで円運動を起こしこのエネルギーで発電するものである。
【0066】
上昇気流と下降気流をセットで扱えば、一つの排熱から循環する対流を人工的に起こすことができる。単独での使用では取り出すエネルギーの量が少ない。効率を考えると統合することが望ましい。往復の経路を分けて気流を独立した対流とし、それぞれから回転機で電力を獲得するようにすれば、相乗効果がでて効率は二倍相当のものが得られる。この組み合わせはゴミ焼却炉などを保有する地方自治体等の施設に適している。
【0067】
これ以外の発電方法は可能性があるというにとどまり、実用化のレベルに達していないことから本発明の対象とする応用技術とは看做さない。理論的に成り立つものであり且つ実用に供されているかまたはその直前の段階にあるものの中で、効率において優るコンポーネントを組み合わせることで、新しいエネルギーの統合モデルを示していくのが本発明の眼目である。基礎研究段階のレベルにある技術は、従って本発明の要素技術とはしていない。実用化可能な装置と技術とのコンビネーションで相乗効果を創出し、環境と経済の早期回復を目指せる点に特徴がある。
【0068】
請求項10については、ボイラーが生みだす高温の蒸気を再加熱し、熱化学反応を引き起こす温度で水を熱化学分解し、水素資源を取り出して燃料電池で電気に変換したり、内燃機関または水素タービンを用いて発電したりする等の他、直接燃焼させてボイラーを過熱状態に維持するものである。排熱と排水を回収して、そこから水素を取り出しこれを燃焼と発電に用いる循環型のシステムである。過熱とは沸騰させた蒸気を更に加圧して、より高い温度領域にまで熱していく過程を意味する。
この組み合わせでは既存のボイラーの蒸気圧と排熱とが利用でき、不足する分の熱を補う程度に温度を上昇させればよいので、化石燃料の消費を少なくできる点に特徴がある。熱化学反応によって獲得した水素を用いて発電を行い、また該水素を燃やして水蒸気を発生させる等のことができるので、電気または熱のいずれか一方を一次エネルギーにおくことができる。この方法は化石燃料の消費量を抑制する効果を持つものである。(図7)
【0069】
ボイラーで発生した排熱と蒸気をこの熱化学反応に導入し、電気エネルギーをその補助手段とした水の熱化学分解を行うというものである。一次エネルギーである熱資源を、二次電流の一部で支援できるよう配慮されている。電気と熱は本反応系ではそれぞれ変換可能な関係にあり、どちらを一次エネルギーの側においても、熱化学反応から水素を取り出してエネルギーに変換することができるのである。水素資源を備蓄することによって、必要な電力を必要とするその時に必要なだけ供給する、というエネルギーシステムとした点に本質的な特徴を持たせるよう配慮した。常時最大の電力負荷がある訳ではなく、電気の他に水、熱、光等を適宜用いることで水素を効率よく生産すると共に、これを備蓄保存して将来の負荷に対応させてゆくことができる。このため負荷または売電量を増やさない限り、水素の備蓄量は恒常的に増加してゆくという傾向を示すのである。
その他内燃機関を動力とする発電機及び水素と酸素を反応させてガスタービンで発電し、余剰電力を売却することで初期投資の回収を図ることができる。こうすることで設備投資意欲を刺激し、水素エネルギーの普及浸透を促進する効果を導いてゆく。
【0070】
請求項11については、コンバインドサイクルまたはインテグレーテッド(統合された)コンバインドサイクルから排熱を導き、それぞれの段階毎に発電を行い発生した電流を自家消費する他、電力会社または電力流通機構及び独自に契約した顧客等へこれを供給し、以って収益に計上するための、水素資源からなる電気エネルギーの供給システムである。
ひとつの排熱から段階的にその熱資源を用いて発電を行い、組み合わせた装置が生みだす夫々の電気エネルギーを流通させて、発電効率を向上させることを目的とする、省エネルギーを兼ねた水素資源による創エネルギーである点に特徴がある。(図8)
【0071】
ガスタービン発電と蒸気タービン発電を一つのシステムとして纏めたものをコンバインドサイクルと呼んでいる。ガスタービンは1500℃程度の熱で稼動する発電システムであり、蒸気タービンは800℃程度以下の熱で稼動する発電システムである。これらの装置を組み合わせて一つの系として独立させたものを、コンバインドサイクルと呼んでいる。発電効率は夫々およそ20%〜30%程度以下と見込まれるが、連携させるこことで発電効率を倍増させている技術である。自家発電による電力供給が自由化されると、このような仕組みで発電効率を上げるエネルギーサイクルが全国にできていく。これは省エネルギーを推進するが、熱源を水素に切り替えれば一層の総合効率を稼げるものとなる。水素は水を資源として排熱や深夜電力、その他再生可能エネルギー等から極めて安価に取り出すことができるものだからである。
【0072】
またインテグレーテッド・コンバインドサイクルでは、燃料電池を加えることで排熱の有効利用を図り、更に竜巻発電等その他の発電機を置く事で発電効率を更に上昇させる仕組みを作ることができる。即ち、コンバイドサイクルで見込む50%前後の効率に加え、固体酸化物型燃料電池(SOFC)の50%+ならびに溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)の45%+の発電効率での追加発電が見込める。更に竜巻発電による25%+程度の効率を往復で加えると、その累計は200%を優に超えるレベルの発電となり得るのである。
【0073】
これらの高い発電効率で導き出した電力は、近隣の市町村または個別契約先の企業及び工場、そして家庭などに販売していくことができる。一つの熱から複数の発電機を稼動させて、より多くの電気と水素資源を得る合理的かつ効率的なシステムとなる点に特徴がある。
一次エネルギーとして採用する熱は本来捨てられていた排熱であり、この熱をサイクルに取り込むことによって、発電コストを下げた電力の供給事業が可能になるのである。初期投資は嵩むものの発生する電力量は増え、資源を特段消費する(MCFC型燃料電池を除く)ものではないことから、低コストの電気エネルギーを多く供給できるようになる。発電コストが低いということは、価格競争力があるということである。
【0074】
このため水素資源により獲得した電力は、低コストであると同時に環境性能が高く、競って求められるようなものとなるのである。電力供給事業の自由化が目指す新市場の創出が、設備投資を促進し経済を賦活していくことは繰り返し述べてきた通りである。価格競争がおき需要者の費用負担が減れば、可処分所得はその分増加していく。消費市場が活発になれば、流動性はより多く求められるので増加する。設備投資意欲が生まれ、製品の移動が起きると、資金需要は刺激され金利は上昇する傾向を示すことになる。事業参入機会が増えると、新規創業なども増えていき、更に大きな資金需要を喚起していくであろう。節度あるインフレ指向の経済が生まれ、政府が主導する緩やかなインフレを目指す経済政策が、目で見えるようなものとなっていくのである。
【0075】
請求項12については、上に詳述した様々な方法を用いて、生み出した水素資源を備蓄することを前提としたシステムである。水素を多量に資源化できるか否かを決するのは、備蓄する技術の効率如何にかかっている。高圧で備蓄する方法では、市販されている製品が既に存在している。また液化する方法では多くの企業がこの分野に参入しており、種々様々な応用製品が揃っている。水素資源の供給ビジネスは、安定供給の能力とコストとの相関で決定される。排熱及び自然エネルギーを用いて水から取り出した水素は、経済的にみて極めて有利なものとなる。
水素吸蔵合金またはカーボンナノチューブ、カーボン60などは水素原子を選択的に取り込む性質をもち、貯蔵プロセス自体が精製過程を包摂している。水素吸蔵合金では重量比3%未満であり移動体で用いるには不適当であるが、固定設備として応用する分には適合する。フラーレンでは水素吸蔵合金の数十倍という貯蔵能力をもつものが研究室レベルで試作されており、水素エネルギーの普及に伴って今後実用化されていく見込みである。
【0076】
供給するエネルギーは水素を起源とする電気エネルギー及び液化水素、高圧水素ガス、そして燃焼または冷却した祭に得られる熱資源である。本発明が対象とする電気は、燃料電池をはじめとして水素エンジンで発電するもの、および水素タービン更に蒸気タービンなどの発電機等から生み出されたもの等である。ガスの需要に対しては高圧配管を敷設して供給する方法と、水素発生器から圧縮機と高圧タンクを経て、限られた狭い範囲の地域へ水素を供給する方法等が考えられる。また液体水素であれば二重構造の真空断熱管を用い、中継ポイント毎に気化したガスを回収し新たに液化した水素を補給して、常に一定量の水素資源を安定的に流通させる管理システムを建設することができる。また熱資源の供給は高温側の場合は燃焼による排熱と燃料電池改質器等の反応熱等であり、低温側は液体水素の保有するマイナス253℃付近の冷熱が対象となる。これらを夫々資源として供給することで、水素エネルギーによる様々な新市場を創出することができる。(図9)
【0077】
現在のエネルギー供給モデルは電気に関わる部分を電力会社が担当し、燃焼に関わる部分をガスまたは石油会社が担当している。熱は双方のエネルギーから適宜取り出している。ヒートポンプを応用したガスによる冷房や、自然冷媒を用いた給湯器などが既に市販され、一部は夙に浸透している。
しかしどちらのエネルギーも化石燃料を資源とするため、温暖化ガスを生成する結果を招かざるを得ず、今後の量的拡大を見込むことには制約がある。電力事業の完全自由化は以前から閣議決定がなされており、ガスに関しても実施時期が未定であるだけで自由化されることは決定している。そのため電力会社とガス会社または独自の通信手段を持つ大企業などが、規制緩和による自由化を機に市場の拡大を狙って、新規参入の準備を着々と進めているところである。
【0078】
そこで温暖化ガスを生まないエネルギーモデルを示し、資源を水と光、そして排熱などに求めることによりエネルギーコストを下げていく方法を発明した。既存の企業がせめぎ合うエネルギー産業の市場開放を機に、環境負荷を低減して経済効果を促す新しいエネルギービジネスを創出することで、従来の産業が解決し得なかった諸課題を無くしていくことができる点に特徴がある。この方法を示すことによって水素エネルギーのもつ優位性が理解され、一般の認識が深まるとマーケットは世界中に広がるものと思われる。本システムの普及が早まれば早まるほど、環境の回復を急ぐことができる。実用化可能な機器を組み合わせて成り立つシステムである本発明が、即効性、将来性、目標に対する明確な志向性、および未来社会が目指す循環性を具備した見本のモデルとなるであろう。
【0079】
請求項13については、獲得した水素を液化することで得られる冷熱を活かし、液体水素の温度領域で得られる高温超伝導現象から電力を貯蔵し、また当該技術を応用する高温超伝導送電ケーブルによるネットワークを構築して、電力輸送と液体水素の供給を事業として一元的に展開するシステムである。
高温超伝導によって電気抵抗を排除する条件を実現し、電力ならびに水素資源の貯蔵と輸送を、効率よく運用する供給インフラの構築を目的としている。従来のエネルギー貯蔵法は揚水型水力発電を初めとして、二次電池またはキャパシタ等の他フライホイールを使用するものなどがあり、それ以外にも様々な方法が多くの機関で研究されている。いずれも電力の負荷平準化とエネルギー備蓄とを目的としたもので、規模の大きなものでは揚水式水力発電方式が、中規模のものでは鉄道への電力供給を目的とするフライホイール方式が、それぞれ実用化されている。
【0080】
フライホイール方式は液体水素の冷熱を用いることで高温超伝導を導き、磁気を排除するマイスナー効果を応用して支点のない円運動を制御し、電流損失とジュール熱の発生を無くして効率を最大化することができる点に特徴がある。液体水素の輸送網を建設することで、そこから水素資源とその冷熱を適宜取り出すことを目指し、水素ステーション等への燃料供給までを一気に実現しようとするものである。この水素を用いて中継地点ごとに燃料電池等を介した発電を行い、その発生電流から熱化学反応を引き出し、水を原料とした水素を抽出して貯蔵並びに供給していくエネルギーモデルである。
この方式で獲得した水素を再び液化して、常に新鮮な液体水素を安定的に補給し、電力輸送と電力貯蔵を超伝導状態で維持する仕組みを構築する。液体水素による冷熱と電力輸送の配管は円環となるように接続し、資源として循環再利用することができる水・水素のサイクルと、電流の出入りを共にサイクルとして成り立たせる系を並立させることを目的としている。(図10、12、17)
【0081】
請求項14については、液体水素供給と超伝導電力輸送を兼ねる上記配管網を構築し、液体水素を任意の地点で水素ステーション等の需要者へ分配し、現在のガソリンスタンドと同様な機能を有する施設として、燃料電池自動車等へ水素資源を供給する基地にすることを目的としている。
設備を導入して水を熱化学分解し、水素を一次備蓄して水素自動車や燃料電池自動車に供給するだけでなく、設備一式を導入せずに水素資源のみをパイプラインから調達することにより、設備投資費用を抑えた水素ステーションの建設が可能となる。高温超伝導電力輸送を兼ねた液体水素の供給網から、営業販売用の液体水素または水素ガスの供給を行う点に特徴がある。
装置等のコストを省けるため低廉な水素供給が可能となり、水素の流通価格を下げる効果を引き出せる。このようにすれば石油資源を動力とする従来の移動手段である、ディーゼルエンジンなどの有害な内燃機関を水素エンジンに置き換えることができ、燃料電池自動車等のクリーンエネルギーを普及浸透させることで、より廉く、より広く、そしてより早く水素資源を供給する道が拓けるのである。経済効率を上げながら水素エネルギーの普及を促進して、環境の早期回復を進めるためのネットワークシステムである。(図10)
【0082】
水素ステーションはスタンドアローン型の場合を除き、液体水素管理供給網等の流通機構から、地中管を通して原料である水素を仕入れるようになる。地中管は高温超伝導ケーブルを収めた、高温超伝導を維持するための液体水素が流れる内管と、これを真空断熱する目的をもったステンレス製の外管とからなっており、電力の輸送を高温超伝導で行うと同時に液体水素及びその属性である冷熱とを供給分配する機能を併せ持ったものである。このため現在の高圧線に代えて高密度の電流を高温超伝導送電線に流すことができ、直流送電により一本の送電線でも大量の電力輸送を可能とするのである。現在の送電システムは交流電流からなり、高調波の発生を回避するために送電線同士の間隔を空けておかなければならない。このため鉄塔を高くして複数の送電線を張り巡らす構造となり、災害時等における電力供給に課題を残すものとなっている。しかし高温超伝導による直流送電では、この問題等は発生しない。実際に海底ケーブルを用いるシステムでは、直流に変換した状態で送電が行われ、その後再度交流に変換するような手間をかけている事例が存在している。
【0083】
高温超伝導による電力輸送では、電流損失とジュール熱双方を無くすことができる。液体水素は滞留することなく常に水圧を受けて流れ続け、水道管のように任意の地点で適宜これを取り出すことができるものとなる。水素資源を活用したエネルギー供給と管理を兼ねたネットワークが成立すれば、水素ステーション等に常時オンラインで水素燃料を供給することができるようになるのである。
【0084】
イメージとしては水道管の中を導線が通っている状態を想起すれば良い。液体水素がもっている冷熱が超伝導を維持し、電気抵抗のない送電環境が管を通して張り巡らされている姿である。中継ポイントごとに熱化学反応による水素精製と備蓄による資源の供給を行いながら、液体水素と電流とを適宜補給していくことができる。その他の電源を援用するなどして水素を可能な限り抽出し、燃料電池等が生む電力で一定の電流を供給しつつ、液体水素を常時供給する圧力系を形成することができる。水圧をかけて配管網で給水している、水道の送水システムに類似するものである。
【0085】
また超伝導状態が破れる非常事態にそなえて、地中に接地する点を随所に設ける等して、過剰な電流を逐次逃がすよう限流器を設け不測の事態に備えている。過剰な電流は速やかにアース線を経て地中へ流すよう、適当な間隔で配管に接地ポイントを設けておくことで、フェイルセーフを成り立たせていく。中継ポイント同士を繋いだ間隔を以ってユニットとし、その単位内で発生した障害はその場で復旧させていくことができるようにする。システムはユニットを繋いだ構造体の連鎖からなるもので、異常が発生した個所を除きシステム全体の殆どは保全される。不具合個所だけを集中的に入れ替えて、短時間で復旧するように配慮した点にも特徴をもたせている。(図12)
【0086】
請求項15については、前記請求項14に記述するシステムを応用して、高温超伝導が求められるMRIなどの医療用検査装置を保有する病院、或いは高温超伝導に関する研究を行う組織等に液体水素を供給することを目的とする、独立分散型の比較的小規模な水素エネルギー供給システムである。
水素資源は水から熱化学反応で取り出すのだが、一次エネルギーは任意のいずれであっても差し支えなく、仕様を満足する機能を効率よく維持できるものが優位となるであろう。経済効率が高くなればなるほど、事業体である企業の経営に寄与するものとなっていく。導入した設備で獲得した水素資源を用い、各種のエネルギーに換えてこれを自家使用し、余剰を外部へ販売することで、水素を新たな経営資源として活用できるようにする。獲得した水素は貯蔵が可能であり、また高温超伝導を応用して電気エネルギーを長期間保存すること等ができる。高温超伝導を導入するのは電気抵抗が消え、磁気を媒質中から排除するというその特性を活かせるからである。電力貯蔵と送電でのロスを、共に無くせる点にその理由が存在する。水素を生産する過程において、水・水素循環型のサイクルを用いるベース技術を共通させ、これに高温超伝導の機器機材等を加え、水素エネルギーと電気エネルギーの備蓄供給を並立する点に特徴がある。
【0087】
請求項16については、前記請求項14、15に記述するシステムを応用して、熱核融合炉、液体水素流通機構、磁気浮上方式のリニアモーターカー、鉄道会社等大規模な組織に対して水素資源と電力の供給を目的とする、液体水素の独立型大規模エネルギー供給システムである。
抽出した水素を備蓄して資源化することで、大量の水素エネルギー供給を可能とするものである。液化冷却した水素はその冷熱及び資源としての流体特性を利用でき、化石燃料を代替する経営資源として経済活動等に貢献させることができる。水を資源とすることから費用の発生を抑え、水素エネルギーの特徴である環境性能と再生可能性を引き出して、水素エネルギーを推進する企業の経営を支援する。事業体または企業の収益向上を目指し、同時に京都議定書の定める温暖化ガス排出削減を果たすことを目的としている。
【0088】
環境負荷がないシステムでエネルギー供給を独立して行う公共関連の事業において、運転に要する資源の購入に充てていた費用を少なくする効果を引き出せる。高温超伝導による電気エネルギーの保存および供給を目的として、省エネルギーを実行しつつ事業収益の向上を図る点に特徴がある。水素エネルギーと電気エネルギー双方を同時に確保し、且つシステムの中に備蓄保存する能力を併せ持つ、エネルギー資源の安定的生産と需要に即応する信頼性の向上を目指したものである。
また国際規格であるISO14000シリーズを満足する環境性能を実現し、その認証取得を容易にして導入促進を図ることを目指している。
【0089】
請求項17については、循環型水素エネルギー供給システム同士を接続して、液体水素をはじめとする水素ガスおよび電気・熱などの各エネルギー資源を融通しあう組織を作り、相互補完関係を導いて限られた地域を対象とするエネルギー流通のネットワークシステムを構築するモデルである。この組織は液体水素の流通機構と一部機能が重複するが、電気・熱エネルギーと内燃機関まで範囲を拡大させ、汎用性を持たせた運用ができるという点に特徴がある。(図17)
【0090】
このネットワークは水素ガスと電気・熱エネルギーをそれぞれ供給するチャネルを持つ。
余剰エネルギーを回収して他に転用したり、不足するエネルギーをバックアップしたりする機能も併せ持ち、循環型を維持して環境負荷を抑えるエネルギー供給網となるのである。電力会社が電気エネルギーをネットワークして成り立っているように、液体水素と熱エネルギーを電気エネルギーと共に供給する組織となるものである。水素ガスは液体水素から発生するので、温度と圧力を調整することで気化を制御することができる。
電力会社とガス会社を一つにして、冷熱、温熱等までを加えたエネルギー供給の大系を、新たに作ろうとするものである。このシステムに類似するものは国内には存在せず、電気エネルギーとブラウンガスを併給する仕組みのものが、供給モデルとして唯一示されているに過ぎない。
【0091】
上記の電気とブラウンガスをネットワークで供給するシステムは、特願2001−153487及び特願2001−323039で扱っているものである。しかし液体水素についてはその対象とはなっていない。本項目はその部分を補完するものである。ネットワークする仕組みは基本的に同じである。家庭や事業所を単位(セル)としてこれを統合する範囲にユニット呼ぶ上部構造を設け、ユニット同士を接続して相互に補完させ、組織的連携を成り立たせていくというものである。ユニットを集合したものをブロックとして扱い、ブロック同士を接続してエネルギーを流通させる目的をもった機構である。このネットワークの最上位はエリアと呼ぶ単位であり、これはブロックの集合体を意味している。エリア同士を接続することで、エネルギーとエネルギー資源の双方を同時に果たすことを目指している。このような階層構造を持つエネルギーのネットワーク機構を建設することで、省エネルギーを進めて水素エネルギーの普及を実現していく。上部構造は接続如何で柔軟に増設することができるので、ここでいうエリアは暫定的な最上位の概念を示すものである。(図17)
【0092】
ネットワークはエネルギー流通ばかりでなく、エネルギー消費の実際をリアルタイムで認識し、エネルギー流通を効率よく運用するための管理システムであることを兼ねている。
高温超伝導送電線とは別に信号系統のラインを設けてあり、エネルギーの需給関係を常時監視して、リアルタイムで自動的にこれを制御するよう管理する。水素エネルギー資源の売買は、ネットワークを運営するエネルギー流通を担当するこの組織が行う。電力会社とガス会社を兼ねた上に熱資源の供給も行うことを前提としているので、総合エネルギー産業として大きく発展していくシステムとなるものと見られる。排熱と冷熱が、ここでいう熱エネルギーに該当する。
【0093】
請求項18については、請求項11から遡る各項目に記載する方法で獲得した水素を用いて、燃料電池自動車並びに水素エンジン自動車、船舶等に水素を供給することを目的としている。水素資源を用いる移動体一般に対して、エネルギー資源である水素の供給を行う事業主体或いはその施設等を水素ステーションと呼ぶ。水素エネルギー供給のための基地である。
水素自動車は燃料電池自動車と水素エンジン自動車の二系統がある。どちらも液体水素または高圧の水素ガスをエネルギー資源としている。水素吸蔵合金を用いる研究も進んでいるが、吸蔵効率に依然問題を抱えており、このタイプは移動体以外の用途で一次備蓄を目的とするシステムに採用されることとなろう。移動体に用いる簡易型水素備蓄装置は、水素吸蔵合金より寧ろ、フラーレンまたはカーボンナノチューブ等の方が向いている。
燃料電池自動車は電気自動車に含まれ、水素エンジン自動車はレシプロエンジンまたはロータリーエンジン等の内燃機関を動力源とする自動車に属する陸上用の移動体である。水素ステーションは水素供給に用いる設備を導入した施設であればよく、任意の設置場所で営業することが可能である。但しこの分野は法整備がなされていないため、一定の制約条件が課されるようになる可能性は将来において考えられる。技術的には家庭でも水素ステーション機能を保持することができるので、自家用の施設としての専用水素ステーションが登場する場合もあり得る。
【0094】
前記請求項17では水素資源の流通ネットワークを示しているが、ここでは水素エネルギーの供給を事業として営む、スタンドアローン型の水素ステーションを対象としている。実際の水素資源の調達方法は任意であり、事業を行う企業において経営判断を行った上で、独自に決定すべきものである。この項目は独立分散方式で水素供給を事業として行うシステムを対象として、単独で営業することを目的とした水素供給基地である点に特徴がある。
【0095】
水素を水から抽出するモデルでは、エネルギーを自給自足するシステムが構築できる。一次エネルギーは任意に決定でき、これを複合させて相乗効果を引き出し、需要地で水素エネルギーを創出して備蓄精錬すれば効率のよい水素プラントができる。循環型のエネルギーサイクルであり、環境に負荷を与えず収益の増加を果たせるのは、水・水素循環型エネルギー供給システムに共通する特徴である。
【0096】
一次資源である水は河川および海洋並びに降雨または地下水等から、費用を負担することなく容易且つ大量に確保することができる。
この水資源から電気または熱などをエネルギー源として、熱化学的プロセスにより水素を抽出備蓄し、需要に応じて随時これを供給するエネルギーシステムである点に特徴がある。この水素資源を消費することで再利用ができる水を得て、熱化学反応器で元素に繰り返し分解するという循環を形成することができる。一次エネルギーの用意がれば、水のみを適宜補給することで成り立つ水素エネルギー供給システムである。発生した水素を一時備蓄して供給するという、オンサイト型エネルギーサイクルを導くモデルである。
【0097】
移動体が搭載するシステムでは排水の回収を任意に選択でき、水資源をリサイクルするか否かの決定余地を残している。この移動体が発生する水を道路上に散布すると、夏季には気化熱が発生してヒートアイランド現象が緩和するものとみられる。しかし大量の排水は湿度も上げてしまうことになるので、二次生成した水は通常資源として再利用する方が望ましい。夏季における都市の温度上昇が続くような場合には、散水する能力を発揮させ冷却効果を誘導するような使い方ができるであろう。
冬季には路面の凍結を来たすことになるので、車両運行の安全性を損なう可能性がある。水は資源として再利用できるものであり、低い消費電力で熱化学反応を起こして水素を備蓄し、燃料電池或いは水素エンジン等でエネルギーに換えるという、その特異な性質を有効利用すべきものである。
【0098】
移動体では慣性エネルギーをサイクルに取り込むシステムの構築も可能である。キャパシタは充放電特性にすぐれており、瞬時に大電流を放出したり吸収したりすることが可能な蓄電設備である。電気自動車には常備されているのが普通で、熱化学反応の一次エネルギーを供給する用途に一部を転用することができる。これらを併用することで循環型のエネルギーサイクルを移動体において確立することができるのである。
慣性エネルギーとは加速時と制動時に発生するものであり、これをサイクルに取り込むことで電気エネルギーまたは運動エネルギー等に変えて、移動体内部においてパワーを保存しておくことができるようになる。
【0099】
請求項19については、請求項11から遡る各項目に記載する方法で、獲得した水素を用いた各種の装置から電気エネルギーを得て、この電力を一次エネルギーとしてブラウンガスを発生させることを目的としている。水素酸素の混合気体であるブラウンガスを資源として、燃料電池または燃焼装置に該ガスを供給し、発生した二次エネルギーである電熱を外部に供給することを目的としている。
ブラウンガスは水を構成する元素である水素および酸素が、二対一の割合で均等に混在するガスである。このためH2分子だけから成る水素ガスほど急激な膨張を起こさない。最大8kg/cm2以下の圧力に耐え、爆発とは逆の現象である爆縮という陰圧が人為的に発生する。
このため誘爆を惹起しないという点で、水素ガスに比べて安全性が高いものである。燃焼では水素特有の燃焼速度を生かし、金属の溶解、切断、溶接等を短時間で行うことができるという優れた特性を発揮する。直流交流のいずれでも電気分解が可能なものが存在している。原料は水であり、発電ならびに燃焼のいずれであっても無公害のエネルギーとなる。熱化学反応で水素を得て電力に変換し、その電力でブラウンガスを二次的に取り出す仕組みのものは、本項目に記載する方法が嚆矢である。
【0100】
水素と異なるブラウンガス特有の性質を活かしたエネルギーサイクルを導き、水素と同様の発電と燃焼の能力を発揮させ、水素にはない安全性を確保するシステムとして、一般家庭等の最終需要に対応させることを目的としている。産業用にも応用できる汎用性があり、独立したエネルギーシステムとして純水素資源と並立させことが可能である。水素エネルギーによりブラウンガスを水から取り出し、システムが求める仕様を満足するエネルギーとして、水素にはないブラウンガスの特性を発揮させることを目的としている。
ブラウンガスと称するものはいろいろのタイプがあり、安定性が低く備蓄できないものからある程度の圧力に耐え、長期保存が可能なものまでメーカーにより相違がある。消費電力およびガス発生量も異なり、大きさも産業用の大型モデルから医療用の超小型モデルまで多彩である。水素を含むガスを常圧または低圧で保存するところに特徴があり、家庭用として安全性の高い水素エネルギーシステムに該ガスを応用することができる。
ブラウンガスの特徴は安全性と燃焼速度、低圧備蓄、媒質を介した高温の熱分解、直流交流を選ばない低電圧での電気分解、二次電流の発生等、医療用から照明用まで応用分野が広く、その他多くの可能性を秘めている水素系のクリーンガスである。
【0101】
請求項20については、請求項11から遡る各項目に記載する方法で獲得した水素を液化して、ロケット燃料としてこれを供給しようとするものである。熱化学反応は地域の制約なく、常時行うことができる水分解法である。このためロケットを打ち上げる現地の近くで、液体水素を作りこれを供給する事業等が成り立つものとみられる。水素運搬の労を省き必要とされる量の液体水素を、いつでも随時供給することができるようになる。
【0102】
わが国におけるロケットの射場は海洋に近く、また日照も十分に得られる場所に通常立地している。風と太陽等の再生可能な自然エネルギーを使って、水素を熱化学反応で抽出して精錬の上液化備蓄し、ロケット燃料とする他余剰の水素を資源として売却し、収益の向上を目指す事業を成り立たせることができる。一次エネルギーとして求められるものは電力だけではなく、熱エネルギー単独であっても水分解は進行する。
原料である水と一次エネルギーとなる電熱が得られる地域なら、日本国中どこにでも液体水素を作るプラントを建設することができるのである。ロケット燃料を安価に製造できると、ロケット打ち上げ費用は下がり価格競争力がついてくる。宇宙開発はこれから益々重要なものとなっていくと思われるので、液体水素の調達を容易にするこの方法は、将来大きな意義をもつようになる可能性がある。
【0103】
請求項21については、既述の水素発生法とネットワークを活かして、インテグレーテッド(統合)コンバインドサイクルを構築し、ひとつの熱エネルギーから段階を経るごとに発電を行うという、エネルギー効率を高める電力供給モデルを対象としている。
インテグレーテッド(統合)コンバインドサイクルは導入部に高温を要求するガスタービンを置き、温度が下がるにつれて適合する温度領域で稼動する種々の発電装置を設けるものである。複数の発電機を組み合わせて、発電効率を向上させることができる。
【0104】
熱化学反応で獲得した水素を燃焼させる焼却炉などの排熱を引き込み、およそ1500℃程度の熱で発電するガスタービンの下に、およそ1000℃の温度領域で稼動する固体酸化物型燃料電池(SOFC)を設け、水素資源を用いて発電を行いつつ800℃程度以下の排熱で熱化学反応を起こして水素を製造し、更に蒸気発電機の熱源として再利用するのである。この熱は溶融炭酸塩型燃料電池を650℃以下の温度付近で稼動させることにも使われ、約400℃以下に温度が下がったところで下降気流を起こし、回転機を動かして発電する装置を追加する等の高度な複合化を目指している。これらの排熱は再び焼却炉へと戻り、燃焼作用を促す高温のガスとなって再利用されるのである。このようにすれば熱利用の円環構造による省エネルギーの仕組みができ、電気エネルギーを効率よく発生させるシステムが成り立つのである。
【0105】
水素を燃やすことで有害な廃棄物を出さず、その熱資源を再利用して電気エネルギーを創出するという、循環型のシステムを構成するモデルである。燃焼器にはブラウンガスを用いるアフターバーナーを設置でき、高音の熱分解で各種の酸化物を元素レベルにまで分解する能力を持たせるなどの工夫を加味することができる。CO2、NOX,SOX、ダイオキシン類、PCBなどの有害化合物まで分解するので、環境汚染物質の排出を抑える能力を発揮する。
【0106】
廃棄物を出さない仕組みというのは、水素と酸素を反応させて燃焼させる場合並びにブラウンガスを燃焼させる場合等で、水素に固有の燃焼速度と燃焼温度を併用し、高温の熱分解によって元素レベルにまで化合物を無機化することができるからである。この方法は半導体製造工場などで使用した有毒ガスを、水素と酸素を反応させた燃焼による熱分解を起こす工程と同一の結果を生むものである。水素は酸化すると水になり、炭素は酸化して温暖化ガスとなる。このため炭素資源を一次側に置くシステムは、必然的に環境に多大の負荷を与えてしまうのである。水素は燃焼という酸化現象で水に戻り、再び資源としての水素をそこから抽出するという優れた性質を持っている。
【0107】
一連のサイクルから得た電力は電力会社またはエネルギー流通機構等の第三者機関へ売却し、一部は自家消費するとしても殆どを収益として計上できると思われる。システムを導入する企業の経営にとっては、投資資金の早期回収と利益率の向上などにより、該企業を早期により大きく成長させていくものとなる。エネルギーの発生量は、導入した設備の能力に依存する。投資資金の多寡が、収益を決定づける要因となるであろう。事業化を目指さない場合は必要最小限の装置でよく、自家用としてのエネルギーを賄う程度の設計とすればよい。
【0108】
電気エネルギーのやりとりには、ネットワーク機構を持つ流通事業者を利用する。小さな規模の連携を相互接続して、少しずつ大きな連携をとるネットワークとしていくことで、相互補完による安定的な関係が成り立つようになる。電力流通は経済面でも相互作用という側面を持ち、安定供給とバックアップを兼ね備えた相互間の接続で、電力を必要とする量だけ流通させ、負荷がない状態においては水素資源に置き換えて、エネルギーを貯蔵しておく能力を維持するのである。送電には液体水素を利用する高温超伝導電力輸送システムが適している。
【0109】
インテグレーテッド(統合)コンバインドサイクルは排熱を高度に有効利用するので、省エネルギー効果を高める発電システムであると言える。水素資源による電力を流通させるについては、水素エネルギーと電気エネルギー双方を同時に管理する必要があり、ネットワークとしてエネルギー流通に関する管理全般を、24時間体制で行うシステムでなければならない。
このためエネルギーのネットワークは、情報のネットワークを兼ねるようになるのである。
【0110】
請求項22については、獲得した水素を液化するのではなく、高圧の気相でこれを備蓄し、その供給および管理を目的とするシステムである。ガスの状態で水素資源を供給する仕組みは、現在の都市ガス供給の形態と、圧力の相違を除きほぼ同一のものとなろう。気体を閉じ込めるために与えられる圧力の差は、都市ガスの供給系とは大きく違ったものである。
水素ガスを圧縮するのは高圧が必要である。水素分子に特有の性質である互いに遠ざけあう力が非常に強い所為で、水素分子が膨張する力は極めて大きなものとなる。温度条件によっては爆発的な加速度をもった膨張が発生する。引火し易い性質と、この互いに反発しあう力が同時に顕在化すると、水素は爆発現象となって現れる。水素爆発によるエネルギーの解放である。この爆発力を人為的に制御しているのが、あの重たいロケットを宇宙空間にまで打ち上げている技術なのである。かつてスペースシャトルが爆発して墜落した惨事があった。オーリングの劣化により漏れでた液体水素に、ロケットエンジンの火が燃え移ったという事例である。水素分子の小ささ故に、僅かな隙間からでも気化した水素は膨張圧力を受けて、そのエネルギーを放出しようとするのである。
【0111】
水素ガスは通常圧力をかけない限り、拡散して急激に希薄になろうとする特異な性質を持っている。備蓄する場合には圧力をかけて、膨張に勝る力を与えてこれを止めておかなければならない。従来は液化する方が簡単だった所為で、高圧ガスとして水素を備蓄保存する方法は特殊なものであった。しかし高圧の水素ガス備蓄装置が市販され供給が可能になっていることから、水素ガスの高圧供給は実施できる状況に到達している。可燃性ガスを高圧で保存するのは、固より非常に危険なことである。そのため大規模なシステムが破綻した場合、被害は想像を絶する規模となる。危険性を考慮すると、小規模なシステムに抑えておくことが求められる。
【0112】
用途として想定しているのは水素ガスを水素ステーションに供給していく他、これを燃焼させて熱エネルギーに変換する装置等の分野である。減圧するための機構を備えている燃焼器で、供給圧力を制御して燃焼を効率的に行うことは可能である。高圧を採用するリスクと減圧機構の簡素化を勘案し、エネルギー制御を可とするシステムであればよいのである。燃焼の際の排熱は、熱化学反応による水素抽出法の熱資源として再利用することができる。基本的にインテグレーテッド・コンバインドサイクルの一次側に置かれるシステムとなろう。
【0113】
液体水素を気化させれば水素ガスとなる。水素ステーションはこの液体水素と高圧の水素ガスを、燃料電池自動車または水素エンジン自動車に供給する施設である。熱化学反応で得た水素をそのまま圧縮して、高圧の供給系と連携させる水素ステーションとなる場合も考えられる。インテグレーテッド・コンバインドサイクルから熱化学反応で取り出した水素を、水素ステーションでガスとして供給するモデルがこのケースに当たる。
液体水素流通機構などの配管を通して、水素ガスを燃料電池自動車等へ供給することと、独立分散方式による熱化学反応で水素ガスを自給自足する場合などが考えられる。本項目では高圧ガスの状態で水素資源を供給するモデルを対象としている。オンサイト型水素発生システムから得た水素で、高圧による配管を経由するタイプであれば同様の応用展開が可能である。但し高圧ガス保安法の改正を必要とすることが求められよう。
【0114】
請求項23については、水素の液化保存と、その供給及び二次的に派生する電気と熱の各エネルギーをネットワークして、一元的に供給管理するための仕組みとなることを目的としている。中小規模の水素エネルギーシステム同士を繋いで、水素資源および電気或いは熱などを供給する総合的なネットワークであり、独立分散型の小規模システムから余剰エネルギーを回収し、または万一に備えたバックアップとして電気エネルギーを相互に供与しあって信頼性を高め、更に上位の大規模エネルギーシステムとも連携を取るように配慮している。概念は特願2001−323039に示すものと同一であるが、水素資源獲得方法と電気エネルギー及び熱エネルギーまでを包摂したシステムとして扱っている点に特徴があり、超伝導条件を液体水素で維持する方法を付け加えた点に大きな特徴がある。発生させたエネルギーを無駄なく使い、効率よく運用することを目的としている。エネルギーの弾力的流通を図るための、供給と管理に重点を置いたシステムである。(図12、17)
【0115】
請求項24については、前記請求項23に記載の高温超伝導電力輸送と、高温超伝導電力貯蔵を目的とする用途の他、新規に液体水素が持つ熱資源の供給を安定的に行うために、液体水素の流通ネットワークで高温超伝導条件を満たすエネルギーの流通を目的としている。水素、電気、冷熱を単一の組織が扱うことにより、エネルギー個々の需要動向にあわせた必要量を供給し、余剰分を水素資源として、また或いは高温超伝導フライホイール等の運動エネルギーとして、備蓄保存する統合されたエネルギーの流通管理システムである。発生させたエネルギーを各チャネルで供給する過程において、余剰の電気エネルギー並びに水素資源および冷熱を保存する能力を併せ持つ点に特徴がある。電力の保存はバッファー機能をシステム自身が保有することにより、電気エネルギーの流通制御を安定化するものとなる。
【0116】
請求項25については、高温超伝導現象を維持するための冷媒となる液体水素を、そのシステムを有する機関へ供給することを目的としている。高温超伝導は液体窒素レベルの冷熱で発生するものだが、液体水素が安価で容易に供給可能なものとなることから、冷媒となる物質の製造コストを下げることができる。このため価格競争力がつき、高温超伝導を成り立たせる費用を下げ、需要地で液体水素を生産することで該資源の調達を容易にする効果がある。
液体窒素は空気を冷却していくことで得られるもので、超伝導を導く冷媒としての単価は低くなっている。大気が含有する窒素の比率は78%であり、生産効率が高いため単価を抑えられるからである。高温超伝導に用いる冷媒として適しているが、金属酸化物という素材に制約されてきた。ところが金属間化合物を用いると、液体水素の熱で高温超伝導が成り立つことから、液体窒素の汎用性が失われる可能性が予測されている。
【0117】
ヘリウムは大気中に僅かしか存在しないため、冷却分離させても獲得できるその量は極めて少ない。大気中のヘリウムの存在比率は5.2ppmとされている。そのために製造単価はあがり、超伝導を維持する応用技術を高額なものにしている。水素は大気からの他水を電気分解して取り出しているが、消費電力が大きいためにこの単価は高いものとなっていた。
しかし液体水素流通機構が機能すると、液体水素の調達が容易となるので状況は一変する。輸送コストが発生しないので手間もかからない。水道と同じようにして液体水素または電気エネルギーを、任意に取り出すことができるようになっていく。総合的に判断して液体水素は、より扱い易い冷媒となる可能性があり、液体窒素のコスト優位性を凌ぐようになるであろう。このため液体窒素で行っていた高温超伝導が、冷媒調達の簡便性等から液体水素に切り替わることが考えられる。
【0118】
窒素の液化が起きるのは−196℃からである。液体水素は−253℃からであり液体ヘリウムでは−269℃から液化が発現する。通常の超伝導は液体ヘリウムの温度領域付近で起るものである。高温超伝導は−150℃付近に上限があるので、液体窒素の温度領域で超伝導特性を発生させることが可能であった。ニ硼化マグネシウムによる高温超伝導なら、−234℃付近で起きることが報告されている。この温度は液体水素がもっている冷熱で十分に対応できる領域である。液体水素を用いることで、全ての高温超伝導を導くことが可能となる。故に水素は優れたエネルギー資源であると同時に、優良な熱資源といえるのである。
【0119】
請求項26については、超伝導の条件である電気抵抗が消える現象と、磁気を外部へ排除する現象とを利用した応用技術の実現に関するものである。常伝導フライホイールは既に実用化されており、一時的な電力貯蔵装置として軍用ではガスタービンを動力とする戦車に、また民生用では鉄道施設に実績を持っている。原理は電気エネルギーをはずみ車の運動エネルギーに変換し、必要な時に電気エネルギーに戻すことで、エネルギーを円運動に換えて備蓄するというものである。常伝導での課題は軸受けの素材と回転させるその方法にあり、高速で運動する円盤を支持するため、常に支点で接触を維持し安定させていなければならない。
【0120】
ここに超伝導から発生するマイスナー効果とピン止め効果を導入すれば、磁気を排除しようとする力を利用した反発力で円盤を中空に浮かせて固定でき、摩擦抵抗を消して発熱を起こさない円滑な回転運動を長期間維持することができるのである。また超伝導電力貯蔵装置(SMES:Super conducting Magnetic EnergyStorage)では電流を直接超伝導体のバルクに保存することが可能である。超伝導では電気抵抗がゼロとなることから、電流損失が発生しない。高密度であり且つ磁場を許容しない等の特性を発揮する。
開発はいずれも研究段階の終期にあり、液体水素の冷熱で超伝導が成り立つことが分ると、民間企業による該技術の実用化は早まるであろう。
【0121】
超伝導フライホイールによる電力貯蔵のメリットは、貯蔵効率と大容量の充放電特性、汚染物質の発生がなく、直接接触する部分が極めて少ないので寿命が長い、などの特徴を挙げることができる。ホイールの半径、重量および回転数の二乗に比例するエネルギーが、円盤の運動中に保存されることが知られている。
超伝導を起こす素材によって、その臨界温度には差がみられる。従来は液体ヘリウムを用いていた技術であるが、より高温領域での超伝導が起せる素材が登場している。高温超伝導では液体窒素があればよく、高価な液体ヘリウムに依存する必要がない。しかし熱化学反応で水素を抽出し、これを液化する方法を用いることで、液体水素による高温超伝導はどこででも管理できるようなものとなる。水は水素を生み、水素は電気となりまた水に戻るのである。燃料電池は電流を供給し、水素液化器は超伝導が要求する冷熱を供給する。
【0122】
高温超伝導を長期間維持するシステムとなることから、電力貯蔵と超伝導状態を需要地で成り立たせることとなろう。そのエネルギーとなるのは冷熱であり、資源となるのは水である。装置を組みあわせることで、このようなシステムが実現する。システム自体に水素を保存する機能を設けることができ、資源の備蓄保存がバッファー効果を持つことから、発生する電力需要には随時柔軟に対応することができるのである。こうすることが余剰電力を流通させ、投資資金の回収を早めていくことに繋がるものと思われる。
【0123】
エネルギーが安価で無尽蔵なものとなれば、経済は発展し社会の姿も大きく変ってゆく。水素はあたらしい社会を築くことになる、所謂究極の資源であることは間違いない。その一次エネルギーをどうするか、が水素を普及するための基本的課題であった。効率の良いシステムの構築こそが、水素社会の扉を開く鍵となるからである。
低消費電力で成り立つ熱化学反応および排熱の有効利用を目的とする熱化学反応を応用し、効率よく水素を水から取り出すことで、水素エネルギーは国内で充分調達できるものとなる。コスト要因は設備投資とシステム運用に関する部分だけ、というモデルが実現する。エネルギー枯渇の心配がなく、製造コストも低いシステムとなる故に、エネルギー支出を抑え可処分所得を増加させ、消費の拡大を招く結果経済を発展させていくものとなる。
【0124】
請求項27については、水素を用いて発電した電力で超伝導モーターを駆動するシステムを対象としている。高温超伝導素材をモーターに採用することで、高トルク、および低消費電力のモーターを作ることができる。水素資源を水から熱化学反応で取り出す系を一次側とする、自動車、船舶用の独立分散型超伝導モーター向け電気エネルギーの供給系統が成り立つのである。
【0125】
獲得した水素を液化しその冷熱で高温超伝導を維持しつつ、水素燃料として活用するエネルギーシステムが成り立つのである。液体水素で二硼化マグネシウムを用いる高温超伝導を導き、該液体水素をガス化して燃料電池で発電するモデルである。貯水槽の水を熱化学分解して水素を取り出し、一時備蓄したものを液化して高温超伝導状態を維持した後、燃料電池等で発電した電力で高温超伝導モーターを駆動することを目的としている。
燃料電池が生成する水を回収し、資源として繰り返し再利用すればよい。請求項25に記載するものの小型化であり、独立分散型として移動体等において機能するシステムである。電力備蓄は既述の二硼化マグネシウム高温超伝導バルクまたはフライホイール用高温超伝導電力貯蔵方式を利用し、自動車等では制動時に発生する回生エネルギーを再利用することも可能となっている。この方式は自動車ばかりでなく路面電車、鉄道など移動体一般等にも幅広く応用展開することができるシステムである。(図13)
【0126】
請求項28については、熱化学反応で得た未精製の水素96%、酸素3%、その他1%からなる混合ガスを直接燃焼させるものを対象としている。既存のガス器具を水素酸素混合ガスで使用できるよう改造し、独立分散方式の熱化学反応により混合ガスを発生させ、該ガスを直接燃焼させることを目的とする水素系可燃ガスの供給システムである点に特徴がある。
一次エネルギーには商用電源または太陽光発電等の自然エネルギーを充て、発生させた水素酸素混合ガスを燃焼させる他熱化学反応の熱源とし、水を分解して水素系可燃ガスを取り出す仕組みである。発生したガスがもつ固有の膨張圧力を利用して、水素系可燃ガスを燃焼器具の終端部へ移動させ、酸化反応を導いて燃焼させることを目的としている。出力調整は該ガスの発生圧力を加減する方法と、発生した圧力を逆止弁で制御する回路で還流させる方法、大気中へ逃がす等の方法等を組み合わせて任意に選択すればよい。
低圧で水素酸素混合の可燃性ガスを燃焼器へ直接供給するモデルである。ガスの発生と消費電力との間には相関があり、電圧を変化させること及び水量調節等で供給するガスの圧力を調整することは可能である。(図14)
【0127】
請求項29については、熱化学反応で水を分解して水素を取り出すことに加えて、微生物などの菌類及び細菌等が吐き出す水素を、エネルギー供給システムの一部に取り込むことを目的としたサブシステムである。
光合成細菌を遺伝子操作で効率化する研究は、いろいろな研究機関で進められている。シロアリの消化管に共生する微生物が吐き出す水素は、多糖類を分解することで得られることが解っている。メタンを生成する細菌から水素を取り出す研究も、多くの機関が注目する技術の一つである。クロレラからも水素を取り出せるし、酵素を用いることで有機物を分解して水素を抽出すること等が可能である。
【0128】
微生物による水素の発生方法は効率が低く、単独で使えるようなものではない。しかし、今後次第に改善されていくことは考えられる。微生物を使うことで廃棄物を分解できるメリットがあることから、有機分解の過程で水素のみを選択的に切り離したり、紙のセルロースを分解して水素を吐き出させたりすることができている。廃棄物を減らして水素を得ることができれば、環境負荷を低減しながらエネルギー資源を確保する道が開ける。即ち、ゼロエミッションに近づくサイクルが実現するのである。
【0129】
発生した水素を捕集してエネルギーに変換すると、経済効率の高いエネルギー供給システムとなる。但し微生物だけでは必要量を賄う水素を生成するのは困難である。熱化学反応を補佐するサブシステムとして、廃棄物を減らしつつ創出した水素をサイクルに取り込み、相乗効果を引き出す方が現実的である。
微生物が食べる繊維または有機物、或いは光合成などを安定的に供給するシステムであるならば、水素を備蓄して電気エネルギーおよび熱エネルギー等に変換することができる。
微生物の特徴は一次エネルギーを必要としない点にある。微生物が摂取するものを用意しておけば、食べた後有機分解がなされ、不要の水素が吐き出される。この水素を捕集してエネルギー変換するための資源とし、ゴミを減らすなどして環境負荷を少なくしてゆくことができる。微生物から水素資源を得るために消費する費用は、おそらく軽微なものとなるであろう。(図15)
【0130】
請求項30については、触媒反応で水から水素を分離するモデルを対象としている。光触媒では水素発生の効率が低く、実用化には大面積を持つプールが必要であった。しかし半導体系の触媒を用いる水分解法では、光触媒に比べておよそ30倍の発生効率を実現しているものが存在している。
また白金二核錯体を触媒とするものや、水素化硼素金属錯体を用いるものなど様々な方法で研究が進められている。超流動現象から水素を導く方法なども知られているが、経済効率に鑑みると実用化には程遠いものと言わざるを得ない。
経済効率およびエネルギー効率共に優れたものは、従ってそう多くない。その中で将来実用化可能なものに絞って、熱化学反応による水分解の補助手段として水素を供給するシステムに採用していくこととなろう。(図15)
【0131】
請求項31については、化学工場などの生産過程で生じる副生成物の水素を活用することを前提とするシステムである。さまざまな反応過程で余剰的に生み出される水素を、現地でエネルギー変換することで経済効率を向上させることが可能となる。
従来副生水素は専用の輸送車で需要地に運ばれていた。しかし燃料電池を工場の中に設置することで発電機能を増加させることができる上、第三者へその電気エネルギーを転売する能力を派生し、将来の電力不足の事態に対応させることが可能となる。即ち副生成物であった水素を用いてこれを電力に換え、使い道が限られていた副生水素を経営資源とする新たな道が開けるのである。
【0132】
電力に変換された水素は送電線或いは高温超伝導方式による電力と液体水素およびその属性である冷熱の三者を伴って、配管により需要地まで長距離を移動させることができる。この方式を援用すると副生水素を生成するあらゆる化学工場が、発電所を兼ねるような存在となるのである。水素は燃焼させることも、直接電気に変換することもできるのである。
水素を燃やすことでその排熱を熱化学反応に導き、そこで水を分解して水素を抽出することができる。水素タービンでは熱の移動による複合発電形態、即ちインテグレーテッド・コンバインドサイクルが成り立つ。数次に亘って発電を行うことができるので、効率が極めて良いものとなる。変換されたエネルギーである電力は、高温超伝導応用技術で保存と輸送が可能である。高温超伝導現象を制御すると、無駄のないシステムを構築することができる。
【0133】
このため経済効率が上昇し、化学工場の収益は増加して企業の経営効率は高まっていく。エネルギーに割く費用を抑制し、地下資源を温存しながら水素の環境優位性を生かせるようになる。また内燃機関から動力としてエネルギーを取り出すことにも使える。
副生水素はもともと、処理にこまっていた二次生成物である水素を集めて、これを資源化したものである。熱化学反応と液体水素および高温超伝導現象などの技術を統合し、連携させたものを組織化してシステムを作ると、エネルギー産業の一翼を担うことができる。
水素エネルギーの登場は石油資源に出費する割合を減らし、原子力への依存比率を低下させていく。水素は炭素および原子力と違い、汚染物質をうむことがない。酸化反応で得られるものは水である。水は資源としていくらでも再利用することができ、環境を汚さず資源もまた消費しないという優れた物である。(図16)
【0134】
請求項32については、副生水素を活用するシステムを対象としている。水素をそのまま低圧で、或いは高圧をかけて一次備蓄し、必要の都度燃料電池等を用いて直接的に発電する方法と、インテグレーテッド コンバインドサイクル等による複合発電形式で電気エネルギーを作り出すことを目的としている。水素を液化して流通させる仕組み並びに燃焼を介して熱エネルギー、または運動エネルギーとして取り出す仕組みを有するシステムから得た電気エネルギーを、高温超伝導状態を維持する電気エネルギー輸送管を組み合わせた点に特徴がある。
【0135】
高温超伝導は液体水素レベルの温度で実現できるものとなっている。電気エネルギーと液体水素を真空断熱した配管で、遠隔地へ送り届けることは可能である。配管の途中に熱化学反応で水を分解して水素を得る基地を設け、水素を液化すると同時に燃料電池で発電した電力を高温超伝導送電線に集め、これを流通させていくのである。
超伝導は電気抵抗がないなどの多くの特徴をもち、マイスナー効果、ジョセフソン効果などを発揮する特異な物理現象である。この特性をいかして電力の輸送と備蓄を安定的に行うことができる。中継基地では一定の間隔で、超伝導電力輸送を成り立たせるトンネル効果を利用した技術が使われるであろう。つまり狭雑物を介しても、超伝導電力輸送が成り立つことが示される。
【0136】
その他高温超伝導バルク材および高温超伝導フライホイール等電力備蓄技術を援用しつつ、送電線自体にも備蓄能力を持たせてエネルギー需給の緩衝効果を導くことができる。電力は通常の負荷に対応した電流として取り出し、液体水素は冷熱の需要を満たした後、水素資源として発電並びに燃焼に用いられる。水素ステーションでは液体水素のまま燃料電池自動車に充填する方法と、気化させた高圧ガスを充填する方法とがあり、これらを任意に選択することができるようになるのである。
副生水素は化学工場の副産物である水素を活用するもので、水素の需要が低かったことからこれまで利用価値はそう高くはなかったのである。このため資源としてみた場合、副生水素はおまけのようなものであり、資源コストが低廉となることから、水素エネルギー供給システムにおいてはその存在は再評価されることとなろう。エネルギー効率と経済効率は両々相俟って、相乗効果を発揮するようなシステムを最終的に構成するからである。(図16)
【0137】
請求項33については、熱化学反応プロセスの技術内容が開示されないことを前提として、当該反応システムに関する所有権移転を伴う機器の売買を行わず、これを貸与する方式で水素エネルギーの普及を促していくことを目的としている。機器一式を貸与することでユーザーの投資リスクを回避し、所有権を留保しつつ一定の保全間隔を設けて、反応促進剤の保守点検を確実に行うことができる。
超伝導送電線には信号ラインを併設し、機器の状態をオンラインで常時モニターすることが可能である。機器を貸与することで毎月安定的に収入が得られ、反応器の内容を秘匿したまま水素資源を普及させていくことができる点に特徴がある。
【0138】
請求項34については、電力供給のシステムにおいて従来方式である交流電流を中心としたモデルから、直流電流だけで成り立つ系を構築することを目的としている。自然界に存在する電流は、すべて直流である。敢えて交流に変えているのは、送電技術と電圧調整の容易さによる。このため通常直流で発生する電流を交流に変換し、昇圧して遠くへ運ぶシステムが出来上がった。交流を直接出力する発電機を導入している場合は、変換する必要はなく損失もまた発生しないが、電気製品の回路内部では再び直流に戻さなければならないのである。
【0139】
直交変換すると電流損失を生じるだけでなく、インピーダンス等の交流であるが故の自己抵抗を発生させる。最近太陽電池、燃料電池などの新しい直流系発電装置が登場しているが、交流主体の既存システムと組み合わせることから、発生した直流電流をインバーターで交流に変換しなければならなくなっている。システムが統一されていないことから、この組合せは直交変換を必要とし、貴重なエネルギーを無駄にするという結果を招いている。
そこで独立分散型発電システムおよび超伝導電力輸送システム等において、直流のまま送電することで直交変換による電流損失をなくし、インバーター、コンバーターなどのアダプター類を省き、装置自体の簡素化による価格低下と信頼性の向上が実現する点に着目した。
直流回路で運用するシステムは、交流から直流へ戻すための部品を除外することができ、このためシンプルな回路で信頼性と安定性を増加させ、故障率と生産コストをその分引き下げる効果が得られるのである。
実際にパソコンなどの身近な装置を覗いてみれば解る通り、回路自体は直流となっているのである。燃料電池、太陽電池等の直流出力方式が主流となる時代には、省エネルギーの観点から直交変換で生じる損失等を抑え、装置の簡素化によるコストダウンが求められるようになるであろう。通常はインバーターを介して直流電流を交流電流に変換しているが、将来は直流電流のまま電力を供給する方法が主流となる。ノート型パソコンは二次電池を主電源としており、低圧の直流電流で駆動するよう設計されている。エネルギー効率と経済効率の両面からみても、この法式の方が寧ろ望ましいといえる。
【0140】
高温超伝導電力輸送システム並びに高温超伝導電力貯蔵システムでは、直流電流をそのまま流すことができる。発電機から得た直流電流で電力を備蓄保存し、また直流電流のまま送電することが可能である。交流送電の問題点は常伝導による電気抵抗と、高圧による長距離送電および高調波及び超低周波の発生、その結果である電磁波による健康被害等の面に解決すべき課題が依然として残されていることである。
高調波の問題は送電線同士の間隔を空けることで解決しているが、海底ケーブルなどでは対策がない。このため一旦直流に戻してから海底ケーブルで送電し、再度交流に変換する等の対策がとられていることは既に述べた。電気抵抗については現在のところ回避する術が無く、損失する電力に見合った分を上乗せして発電している。原子力発電所の出力値が半端な数字になっているのは、電気抵抗で失うことになる10%を上乗せしているからである。従って原子力発電の出力の実効値を求めるには、そこから一割を差し引けば良い。110万kwh出力の原子力発電の実効値は、100万kwhなのである。
長距離送電では電力需要に対応する出力調整を行うことが出来ず、電力の負荷平準化という問題を惹起している。交流送電では地域により周波数に相違があり、使えなくなる電気製品を生んできた事実がある。
【0141】
超伝導というのは、液体ヘリウムの温度領域である−269℃付近で発生する物理現象である。電気抵抗が消える等の特徴をもつ、電力の損失を起こさない特異な物理現象のことである。高温超伝導は液体ヘリウムの温度を超える領域で発生し、液体窒素の冷熱である−196℃以上の、比較的高い温度領域で発生するものが一般的であった。現段階では−150℃付近の高温域で発生するものが存在している。液体水素は水を原料として需要地で製造できることから、該資源で高温超伝導を維持する方が簡便である。将来は液体水素が、液体窒素に代わって高温超伝導を推進する冷媒となるであろう。
水素は電気エネルギーに変換できるばかりではなく、燃焼させたり液化して冷却したりすることができ、熱エネルギーとしての特徴も兼ね備えた新しい資源として改めて評価される。このため液体窒素にはない汎用性をもつ資源であることが認識されるのである。
【0142】
電磁波による健康被害は状況証拠としてだが、疾患を疑わせる事例がアメリカで報告されている。因果関係の証明がなされたという報告は、しかし得られていない。とは言うものの電磁波によるとされる一般的疾患の増加、不定愁訴等の増加が報告されていることもまた事実である。電磁波の影響によるとされる健康被害の報告は、高電圧の電流と生命システムとの間に何らかの相関があることを疑わせる。最近の報道では交流電流の属性である超低周波が、小児白血病の発症に関与している疑いが浮上している。高圧の送電線が公共施設の近傍を通る場合、欧米では一定以上の距離をおいて建設することが義務付けられているという報告がある。
【0143】
直流家電はアウトドア関連の機器で実績はあるが、多くは災害対策などの特殊用途に限られた非常に小さなマーケットであるに止まっている。しかしコンピューターなどの機器は一般に直流を基本としているので、交流を取り込む場合には専用の変換アダプターを用いることになる。直流送電または独立分散発電システムが普及すればアダプターは必要がなくなり、そのままコンピューターを立ち上げて使うことができる。
その他の家電製品も直流化することができ、部品点数を減らすことで信頼性を上げ、安定性を増強する新しいラインナップとして新市場を形成するものと思われる。二次電池を用いるタイプの電気製品は全て直流で作動するものである。交流電流を必要としているのは二次電池を充電する場合と、商用電源等から電力を取り込む場合だけなのである。太陽光発電による直流システムは、コンピューターを直接駆動する能力をもっている。
【0144】
水素エネルギーは独立分散型発電方式での電力供給を可能にする。太陽電池または810℃以下の熱があれば、電気がなくても熱化学反応プロセスにより水から水素を発生させることができる。晴天時は太陽光発電で余剰の水素を備蓄し、夜間または雨天などでは都市ガスなどの炭化水素を燃やして、必要な熱を得ることが可能である。蓄電池、蓄電器を導入するシステムでは、年間を通じてエネルギーを自給自足することができる。高温超伝導による電力貯蔵ではエネルギーの長期保存と、余剰電力の売却による事業収益を生み、炭化水素(都市ガス等)の消費さえ無くすことができるのである。
商用電源を熱源とすることもできるが、この場合温暖化ガス排出削減効果は小さい。直流回路を主体とする電気回路をもつ機器において、交流電流を取り入れるのは単純に効率を落とすことを意味する。搭載する部品点数を増やすからである。送電の際に生じる電気抵抗と、導通を確保するための接地で生じる廃棄電流の存在にも留意しなければならない。そのため現行システム自体に意義を見出すことはできず、電気製品の簡素化を阻害する結果、装備を過重なものとして価格を押し上げる結果を招いているのである。現在のエネルギーシステムは交流に依存し、そのために多くのロスを壮大な規模で生み出している。このような事実を須らく認識すべきではなかろうか。しかし高温超伝導を応用する技術は、そのエネルギーシステムを根本から覆す可能性を秘めている。
【0145】
現在は交流主体の電気エネルギー供給システムとなっている関係で、直流発電装置を用いる場合インバーターを必要とする。独立分散方式では直流主体の電気エネルギー供給システムが成り立つので、すべての回路において直流方式で統一することができる。
高温超伝導電力輸送システムができていれば、必要な電力を直流のままで調達することができる。直流方式を基本とする電力供給システムは、水素資源を利用する技術即ち燃料電池、高音超伝導電力貯蔵及び同輸送等の他、再生可能エネルギーを代表する太陽電池等を援用して、全国各地に少しずつ独立した電源を分散設置してネットワークを築き、既存のエネルギーシステムに置き換えて合理化を図ることができる。水素エネルギーのネットワークは、余剰エネルギーを流通させて省エネルギーを促進する効果を齎すのである。
【0146】
交流からの変換を前提とした既存の製品シリーズから、直流で統一した規格に基づいて製品化される、所謂直流家電の新シリーズが登場することを前提としているが、直流で運営されるエネルギーシステムであることを目的とする点に特徴がある。
直流回路からなる家電製品では、部品点数は大幅に減らせるようになって製品価格を下げられる。直交変換に伴うロスも発生しない。新しい概念の製品が省エネルギーを促進し、それ故に新市場として大きく成長していくことが、環境対策および経済性等の観点から予測できるのである。
直流家電では電圧を低く抑えることができる。交流を用いるエネルギーシステムの無駄は、この電圧の高さにも存在する。終端電圧を100VACとしている所為で、電気製品回路のいたるところに抵抗をちりばめ、電圧をわざわざ低下させ抑えつけるような事態となっている。100VACは回路内部では不必要に高いので、抵抗をかませて電圧を下げなければならないのである。実際にパソコンの信号回路は5VDC以下の低電圧で充分に働くよう設計されている。直流家電に切り替えることで、この抵抗を用いて下げている電圧を無くすことができる。初めから適合する電圧を供給すればよいからである。省エネルギーを図るには、交流送電がもつ本質的な課題を理解していなければならない。
【0147】
産業界としてみれば消費財として既に浸透している電気機器が、直流家電として最終的に総て置き換わってゆくこととなり、新規の買い替え需要が短期間に起るものと思われる。まったく新しい概念の電気製品が登場して、巨大な新市場を生みだす契機となるであろう。
水素エネルギーと自然エネルギーを組み合わせて、直流に対応する製品群の供給が可能となれば、新世紀に相応しいクリーンエネルギーが人々の生活の質を変えてゆく。電気は買う物ではなくなり、余剰のエネルギーは換金できる経営資源へと変化するのである。今までエネルギーに費やしてきた費用は軽減され、可処分所得を増加させる効果を発揮するであろう。
【0148】
水素資源が一般化してゆく過程において、液体水素で可能となる高温超伝導技術が、エネルギー流通のインフラとなることが予測できる。現在の送電系統の幹線網は不可逆的な電流制御方式で成り立っている。各種の発電所を中央で管理し、電力の需給に対応する仕組みが地域単位、事業者単位の統合形態として出来上がっている。この方法は電流を終端部で接地させることが条件となっているので、使われることがなかった電流は最終的に地中へ廃棄されてしまう。この無駄を何と呼ぶべきであろうか。
【0149】
高温超伝導電力輸送が実現するとこの接地電流は、回収可能なものとなり問題は消滅する。高温超伝導による送電線の終端部においてループを形成させれば、廃棄している電流を送電ケーブルに還流させることができる。電気は抵抗の少ない路を好んで流れようとする性質をもつ。山に降った雨が地形の凹凸によって、流れ易い路を好んで川を形成するように、高温超伝導では電流を収斂させる現象となって現れる。電気抵抗がゼロであるため、総ての電流を高温超伝導ケーブルに引き寄せてしまうからである。
【0150】
高温超伝導で電流をリサイクルすれば、生産したエネルギーは総て仕事に対応させることができ、資源を節約するばかりでなく、良質かつ低廉なエネルギーの大量供給が可能となる。
電力流通の場においては生産者と消費者は密接不可分の関係となり、生産と消費はこれを相殺してその差額だけを決済するようになると思われる。エネルギーに対する投資額の多寡が、収益のボリュームを決定する因子となろう。このような効果が発現するものとみられることから、直流を主体とした電力供給系統が、交流を主体とした電力供給系統に置き換わっていく。この省エネルギー高効率を目指すエネルギーシステムは、水素資源を使い分けることによって、世界標準となる日本型モデルを提案していくことになるであろう。
【0151】
請求項35については、前記請求項34で扱う交流による送電がもつ課題である、導通確保のための接地による廃棄電流による壮大な無駄を、可及的速やかに減少させることを目的としている。
現在のシステムは原子力発電と火力発電を主力に、水力発電その他を組み合わせて低廉な電力を安定供給するために、電力会社が相互にネットワークを組むことによって成り立っているものである。最大の電力需要に対応することを目指して相互に接続を確保しているが、原子力発電を組み込んでいるために長距離の送電を余儀なくされている。このため遠隔地からの大量送電では電流の高圧化が必要となり、現在のところ55万ボルトの高電圧をかけた状態で送電されている。この電圧を維持するために、出力調整を臨機に行うことが困難となっているのである。
【0152】
電力の負荷平準化という問題の本質を探ると、原子力発電を組み込んだことによる複合発電システムのあり方にまで遡る。電圧を上げれば上げる程、接地点から地中へ消え去ることになる電流は増加する。この消失する電流の存在が、電力の負荷平準化問題を深刻なものにしている。深夜の電力需要が減少すればするほど、地中へ流れ込む電流は増大する結果となるからである。
【0153】
そこで地中へ捨て去る前に負荷を与えて、電気エネルギーを敢えて消費することで接地電流を減らし、水素資源を新たに獲得する方法を考案した。即ち水の電気分解及び電気による熱化学反応を応用した、水素エネルギーの抽出と水素資源による新たなエネルギー備蓄に関する方法である。
燃料電池は水素が持つ電子を集めて電流とする、化学的プロセスで発電する装置である。水素は水からいくらでも取り出す事ができる元素である。水を電気で分解すると、酸素と水素が得られることは小学生レベルの知識となっている。この電気分解を効率よく行うことができるシステムが、電力の負荷平準化の解消に寄与するものとなる。
【0154】
地中へ捨て去る前の電流を利用して水を電気分解し、獲得した水素を備蓄して燃料電池で日中の電力需要に対応させてやればよい。この方法で平準化は緩和するのである。夜間の電力需要を創出し、日中でも接地させる前の電流を活用できるので、接地を維持するために生じていた無駄な電流は大幅に減るであろう。燃料電池は発電容量の変更が可能な装置である。水素の大量備蓄方法は高圧タンクまたは液体水素のどちらかを任意で選択することができる。液体水素を気化させて、高圧で二次備蓄する方法も有効である。その他の備蓄方法についてもその実用化を促し、水素エネルギーの啓蒙を行いながら来るべき時代に備えておくことができるのである。
【0155】
燃料電池の設置に関しては、屋内外を問わず電源立地に関する制約は殆どない。水素ガスの管理だけは高圧ガス保安法の規制に基づいて、安全に管理できる範囲の備蓄設備を導入しなければならない。
水素を備蓄するか否かが電力負荷平準化問題緩和の鍵となる。水素吸蔵合金、カーボンナノチューブ、カーボン60等のフラーレン、水素化硼素ナトリウム化合法、など多くの選択肢がありその他にもブラウンガスとして出力し、これを低圧で保存する方法等も安全性の面で有効である。ブラウンガスを安定的に発生する装置は市販されているが、不安定なタイプをもブラウンガスと称している事例があり、評価はしかし未だ定まってはいない。
【0156】
水分解を導入して接地電流を少なくしていくことは、そのまま省エネルギー効果となって現れる。地下資源の消費量を減らす結果となるからである。電気分解等により水素を抽出するもので、捨てていた接地電流を少なくすることから、省エネルギーを目的とする水素製造法が成り立つのである。
発電ばかりでなく燃焼用の水素資源ともなるので、水素エンジン、水素タービンを動かす燃料を水から抽出するシステムを形成する。これまで述べてきた水素資源を用いる様々な発電形態をここに組み込むことができ、効率の良い発電システムが必要な電力を、必要なタイミングで、常時安定供給するシステムへと発展させていくことができる。
【0157】
送電系統の終端付近で水素資源を確保すると、新規の電源開発に要する予算を少なくできる。原子力発電への依存比率は下がり、地下資源の大量消費を減らして環境の回復も図れるのである。このため外貨支出を抑制しつつ電力の需給ギャップまで改善するという、多くの副次的効果を齎すものとなろう。電力会社は独自の発電手段を確保することになり、システムの発電効率を改善する努力を続けることで、仕入れを減らして収益を増加させることができるようになる。
【0158】
水素による燃焼では熱エネルギーとして、これを随時取り出すことができる。水素を液化させれば超伝導現象を誘導することができ、その冷熱を用いた冷凍および保冷等のシステムを付随させることができる。液体水素を作る液化機は国内で八社が製造販売しており、備蓄方法も確立しているので普及は容易である。液化に用いる電力は接地電流を初めとして、備蓄した水素或いは再生可能エネルギー等を用いて、一層の効率改善を図ることができる。複数のエネルギーを一括して扱うシステムとなるので、この点だけからみても効率のよいエネルギーモデルとなるであろう。
【0159】
請求項36については、エネルギー資源である水の備蓄とそのエネルギー化に関するものである。水は古来より生活用水の他農業資源として重用されてきたものだが、水素をエネルギーとして用いる各種のシステムが登場するようになると、水のもつエネルギー資源としての特質が再発見されるようになるであろう。そのためエネルギーを備蓄する方法の一つとして、需要者が水を貯蔵して必要な資源とするようになることが考えられる。
水素は本質的に一次エネルギーを必要とする。主に電気または熱、光などを用いて生産されるエネルギー資源である。石油・天然ガスおよび原子力なども採掘精製するために一次エネルギーを必要としているが、水素もまた同様に資源化するためのエネルギーを外部に求めなければならないものである。一次エネルギーを必要としない燃料資源は薪であるが、特殊な資源に分類されその汎用性は既にない。
【0160】
水を貯めておきさえすれば、水分解および熱分解等のシステムを導入することにより、水素は自在に取り出すことができるものとなる。電気分解は義務教育のカリキュラムに取り上げられるほど広く一般に膾炙しており、乾電池などを一次エネルギーとして水素を抽出する等の実験が各学校で行われている。小規模の電力需要を賄うには、太陽電池があれば充分である。非常用のエネルギーとして貯水タンクと水素を備蓄する設備に加えて、あとは燃料電池を付け加えるだけで基本型のシステムができる。つまり装置一式があれば、水からエネルギーを取り出して連続運転することができるのである。
またプールの底に敷いた金属酸化物と日光を反応させる方法も注目されており、単に野外で水を貯めるだけでも、入射光の存在を条件として水素を発生させることができる。現段階では発生効率が低く、必要とする水素を得るには相当の面積をもつプールを用意しなければならない。従ってこの方法は汎用性がなく実用には向いていない。熱化学反応やブラウンガスなどを用いることで、消費電力を大幅に下げて水素をつくる方が効率は良いのである。複合させることで相乗効果を導くことはしかし、可能であろう。
【0161】
水そのものをエネルギー資源として備蓄し、生活用水として使いながら防火対策及び災害時の救難用資源としつつ、同時に水素を取り出して燃焼させ又は燃料電池等で安定的に発電する、水・水素循環型のエネルギーシステムを創ることができる。水がもつ成分をエネルギーとして取り出すシステムでは、貯水能力そのものがエネルギーの備蓄量を示すことになる。水を液相状態で安定的に貯めておくことで、エネルギー資源を需要地で確保することになるのである。
【0162】
エネルギー変換の仕組みは既に述べてきた通り、様々なものを応用して高効率のシステムとすることができ、資源に要する費用が低廉となることから、経済効率は極めて高いものとなる。しかも環境負荷がなく、エネルギー変換した後に再び水を生成するので、循環型のエネルギーモデルを形成するのである。要するに水または温泉等の水源は言うに及ばず、水道または雨水を貯めておく施設等があれば、そのまま水素エネルギー資源として利用することができるのである。
【0163】
水を資源とすることは、従来の主要な資源である石油、天然ガス、原子力などの燃料となる地下資源の輸入をなくすことを意味する。このため多くの経済効果が派生するものとみられる。エネルギーの安全保障政策等は国内問題にまで矮小化し、京都議定書の削減目標は早期実現が可能になるであろう。
水を貯めることと水素を貯めることとは同義であり、その仕組みを円滑に運用するシステムを構築すれば、エネルギー資源を備蓄して自給自足することができる。水そのものを資源として扱う所に特徴をもつ、新エネルギーシステムとなるのである。
【0164】
請求項37については、遡行する各項において既述した種々様々な装置からなるシステムを組み合わせて、相互補完と相乗効果を発揮することを目的とするエネルギーの供給系統と、当該モデルが担う熱電併給を実施するサイクルを敷延して、地域を対象とするエネルギー供給系統の複合化を目指すエネルギーサイクルを通して、既存のエネルギーシステムがもつ欠陥を解消しつつ、水素資源を用いる新エネルギーを導入することで、省エネルギーによる炭素及び原子力等所謂地下資源の温存を図る点に特徴がある。
【0165】
水素が水から安価に製造できることは繰り返し説明した通りで、この原理を応用したエネルギー供給システムを相互接続し、広域をカバーするエネルギー流通のネットワークを構築する計画に加えて、既存のインフラであるところの電力供給網がもつエネルギー損失を抑制して、新旧のエネルギーを組み合わせることでそれぞれの特徴を活かせるようになる。
旧資源である炭素・原子力の課題を少なくするために、既存の電力を用いて水を分解して水素を取り出し、エネルギーの備蓄を図ることで電力の供給圧力を下げ、接地電流を減らして省エネルギーを実行することができるのである。
【0166】
高圧の送電線を介する電気エネルギーの供給は、同時に大量のエネルギーを地中に捨て去る結果を生む。ここに現行のシステムがもつ本質的な欠陥が潜んでいる。
電流は常に流しつづけていることで成立するものであり、導通を確保するために常時接地していなければならないのである。そこで終端部付近に水素発生器を設けておけば、捨て去っている電流から水素を製造することができるようになる。
【0167】
捨てていた電流で水の電気分解または熱化学反応を導き、水素を取り出して備蓄すれば日中の電力需要には燃料電池で即対応できる。これだけでも電力の負荷平準化は、大幅に改善する筈である。効率のよいエネルギーシステムをどんどん取り入れていけば、旧資源に要するコストを下回るのは明らかなのである。装置は量産化によるコストダウンが可能であり、また償却処理の対象とすることができる。資源となるのは繰り返し使える環境負荷のない水である。システムを設置してしまえば資源である水を再利用することができ、不足する分を給水して補うことでエネルギー資源の購入費用を抑えられるのである。資源は国内で充分に得らるだけでなく輸出することができ、旧資源のために支出していた外貨を留保して富を蓄積することになるのは自明であろう。
【0168】
電流を維持するために接地しているのは、現在の方式を採用する以上避けて通ることができない。遠隔地から高圧をかけて送電するシステムである限り、接地する電流が増大するのは当然の成り行きなのである。そこでこの捨てている電流を活かす意味でも、水素エネルギープラントを各変電施設内部に設けておくことが求められるようになる。水素は電気と違って備蓄保存がきくものである。水素を貯蔵するばかりでなく、水素を液化することにもこの接地電流を使うことができる。該プラントは立地場所を選ばず、どこにでも建設することが可能である。但し水のない砂漠地帯には向いていない。しかし高温超伝導による電力流通システムを導入すれば、電気エネルギーは循環するのでこの問題は深刻なものではなくなるであろう。
【0169】
熱化学反応プロセスにおいて、反応促進剤は反応器の内部でリサイクルされ、繰り返し長期間使うことができる。この反応促進剤は入手が容易で、安価なものであることは確認されている。したがって石油を輸入したりウランを輸入したりする場合と比べても、水素資源はコストとしての優位性を保つであろう。
環境性能は至高のものである。温暖化ガスは一切発生しない。水素分子は不活性であり、そのために他の元素と反応することがない。水素分子H2は、結合することによってその活性を失うのである。但しH2同士は反発し合い、互いに遠ざけようとする性質が現れるため、急速な膨張現象を惹起することになる。
従って水素分子を大量に備蓄するのは高圧にするか、液化するか、または機能性物質中に取り込むなどの工夫が必要である。技術的には既に実用レベルまたはその付近にあり、システムに取り込むこと自体におおきな問題はみられない。
【0170】
液体水素を用いる高温超伝導電力貯蔵と高温超伝導電力輸送とは、既存の変電施設や送電システムのターミナル側に設置することができる。高温超伝導ケーブルはループさせてあれば、電流を接地させずに流しつづけることができる。水が低い方へ流れるように、電気もまた流れ易い回路を選んで流れたがる性質を持っている。超伝導は電気抵抗がゼロであることから、あらゆる電流を受け容れる能力を有するのである。(図17)
【0171】
電気抵抗がゼロであることは接地電流を呼び込むことができることを意味し、現象としては電流を恰も吸い取るかの如き様相を呈する。電流は流れ易い回路へと一気に流れ込む。このため複数の回路がある場合、電気抵抗の低い回路へその100%が流れ込む。この時電流計は電圧を表示しはするが、電流の値はゼロを指し示す。この電圧は一次側の電圧を単に反映しているものであり、電流の不在を指し示しているのである。超伝導と常伝導とを組合せる回路では、このようなことが起きるのである。
【0172】
エネルギーを効率よく使うには電流を循環させ、必要なだけ水素エネルギーで発電することを繰り返し、逐次電力を補充する程度の発電を行えばよいのである。四六時中発電しなければならないようなことは、高温超伝導応用技術を導入する限りその必要はない。電力供給量は使った分だけの補充でよくなり、必要以外の資源は液体水素・高圧水素として輸出に回すことができる。水素は水と光のある地域なら、石油よりも安価に製造することができる。このため将来のエネルギーはおしなべて、水素で賄われるようなものとなるであろう。経済合理性がエネルギーの質を決定するのである。
【0173】
今後電力の備蓄は至るとこるで行われるようになり、需要地でエネルギーを自給しまた自足できるようになると、エネルギーの安全保障政策はこの時点で過去のものとなる。エネルギーは全て水から得られるようになり、その水は繰り返し再生する性質をもち、地球上に夥しい量が存在する。従って水素資源が枯渇することは有り得ない。環境を汚すことも有り得ない。地下資源を蕩尽することも、二酸化炭素を排出することも同様に有り得ない。まことに優れた究極の資源だと言う事ができる。水素はエネルギー転換を齎す画期的な資源となる。このことが認識される新しい時代は、まさしくすぐそこに来ているのである。
【0174】
地下資源は有限であり、決して再生されないものである。石油資源の残存埋蔵量は、およそ四十年程度というのが国際機関によって報告され、大方の見解として一致している。天然ガスは七十年、ウランは六十年程度で枯渇することが、同様に分っている。石炭は二百年以上とされているが、最終的に消滅する地球起源の炭素系化合物なのである。メタンハイドレートという海底に堆積する資源もあるが、採取するためのエネルギーコストは相当に高いものとなると観られている。また強力な温暖化ガスであるメタンを、大気圏上層へ大量に放出する結果を招く危険性も秘めている。
【0175】
核エネルギーではウランからプルトニウムに転換する道も残されているが、危険性が解消されている訳ではなく、核廃棄物を一層蓄積して汚染物質を徒らに増加させる結果を招くことは明らかである。核廃棄物の最終処分方法は未だに確立しておらず、その見通しもまた得られていない。これらの点を総合的に勘案すると、環境負荷のない優れたエネルギーは水素をおいて外にはないのである。
【0176】
水素資源が齎す様々なエネルギーシステムに関するモデルを示して、該エネルギーの普及浸透を急がなければならない。環境の問題は水素資源へと切り替えることで、おそらく短期間に解消するものとなろう。本発明はそれを証明する具体的な方法を、システムとして広く内外に示すことを目的としている。水そのものをエネルギーとするシステムであり、これを実用に供して環境の回復を果たし、以って世界の平和と繁栄を実現しようとするものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のエネルギー供給システムの実施形態のシステム構成の一例を示す図である。
【図2】本発明のエネルギー供給システムの実施形態のシステム構成の一例を示す図である。
【図3】本発明のエネルギー供給システムの実施形態のシステム構成の一例を示す図である。
【図4】本発明のエネルギー供給システムの実施形態のシステム構成の一例を示す図である。
【図5】本発明のエネルギー供給システムの実施形態のシステム構成の一例を示す図である。
【図6】本発明のエネルギー供給システムの実施形態のシステム構成の一例を示す図である。
【図7】本発明のエネルギー供給システムの実施形態のシステム構成の一例を示す図である。
【図8】本発明のエネルギー供給システムの実施形態のシステム構成の一例を示す図である。
【図9】本発明のエネルギー供給システムの実施形態のシステム構成の一例を示す図である。
【図10】本発明のエネルギー供給システムの実施形態のシステム構成の一例を示す図である。
【図11】本発明のエネルギー供給システムの実施形態のシステム構成の一例を示す図である。
【図12】本発明のエネルギー供給システムの実施形態のシステム構成の一例を示す図である。
【図13】本発明のエネルギー供給システムの実施形態のシステム構成の一例を示す図である。
【図14】本発明のエネルギー供給システムの実施形態のシステム構成の一例を示す図である。
【図15】本発明のエネルギー供給システムの実施形態のシステム構成の一例を示す図である。
【図16】本発明のエネルギー供給システムの実施形態のシステム構成の一例を示す図である。
【図17】本発明のエネルギー供給システムの実施形態のシステム構成の一例を示す図である。
Claims (37)
- 原子力発電所等の大規模蒸気発電設備から排出される高温の蒸気を再利用して、熱化学反応を介した水分解法を用いて安価に獲得した水素を直接または高圧乃至液化して、これを備蓄供給する水素エネルギー供給システムと、
電力貯蔵・輸送を目的とする高温超伝導素材を利用する送電ネットワークシステムと、
該水素資源を利用して燃料電池または内燃機関および燃焼装置等へ水素を供給する供給手段とを含み構成される、水・水素循環型のエネルギーシステム。 - 熱化学反応で水を分解し高純度の水素としてこれを発電に用い、自家消費に供する供給手段と、
自家用以外の電力流通市場をはじめとして、任意の第三者へも電力の販売を可能とする他社供給手段とを備えた、独立分散型電気エネルギーシステム。 - 製鉄所に代表される工場等が生む排熱から蒸気を導き、熱化学反応を介した水分解法を用い、獲得した水素を燃料電池または内燃機関および燃焼装置等に供給し駆動する、水・水素循環型のエネルギーシステム。
- 太陽光発電を熱化学反応の一次電源とする水分解法を用い、獲得した水素を燃料電池または内燃機関および燃焼装置等に供給し駆動する、水・水素循環型のエネルギーシステム。
- 風力発電を熱化学反応の一次電源とする水分解法を用い、獲得した水素を燃料電池または内燃機関および燃焼装置等に供給し駆動する、水・水素循環型のエネルギーシステム。
- 対抗工発電・風力発電の他の自然エネルギーを熱化学反応の一次電源とする水分解法を用い、獲得した水素を燃料電池または内燃機関および燃焼装置等に供給し駆動する、水・水素循環型のエネルギーシステム。
- 商用電源を熱化学反応の一次電源とする水分解法を用い、獲得した水素を燃料電池または内燃機関および燃焼装置等に供給し駆動する、水・水素循環型のエネルギーシステム。
- 自家発電装置を熱化学反応の一次電源とする水分解法を用い、獲得した水素を燃料電池または内燃機関および燃焼装置等に供給し駆動する、水・水素循環型のエネルギーシステム。
- 竜巻発電その他の回転機を経て発電した電力を熱化学反応の一次電源とする水分解法を用い、獲得した水素を燃料電池または内燃機関および燃焼装置等に供給し駆動する、水・水素循環型のエネルギーシステム。
- ボイラーの蒸気を再加熱して熱化学反応を介した水分解法を用い、獲得した水素を燃料電池または内燃機関および燃焼装置等に供給し駆動する、水・水素循環型のエネルギーシステム。
- コンバインドサイクルまたはこれに追加するその他の発電機を組み込んだシステムが生む排熱、あるいは電力を熱化学反応の一次エネルギーとする水分解法を用い、獲得した水素を燃料電池または内燃機関および燃焼装置等に供給し駆動する、水・水素循環型のエネルギーシステム。
- 請求項1〜11に記載の発明において、
前記のいずれかの方法で生み出した水素を備蓄してその分配を行う備蓄分配手段と、
エネルギー供給システムにおいて生み出された該資源の供給を含む電気・ガス・熱等各種エネルギーの流通を目的とする流通市場への供給手段とを備えた、エネルギー供給システム。 - 請求項1〜11に記載の発明において、
前記のいずれかの方法で生み出した水素を液化し、高温超伝導現象を維持する送電及び電力貯蔵を目的とする冷熱を定常的に供給し、以って電力の安定輸送と備蓄を可能ならしめる、液体水素によるエネルギー供給のネットワークシステム。 - 請求項1〜11に記載の方法において、
前記のいずれかの方法で生み出した水素を液化し、高温超伝導現象を維持する送電及び電力貯蔵を目的とする冷熱および水素資源の供給システムから、水素ステーション等の需要施設一般へ液体水素を供給するエネルギーシステム。 - 請求項1〜11に記載の発明において、
前記のいずれかの方法で生み出した水素を液化し、高温超伝導現象を維持する送電及び電力貯蔵を目的とする冷熱および水素資源の供給システムから、病院、研究所等の小規模な超伝導応用機器を有する各種施設へ、液体水素を直接分配することを目的とするエネルギー供給システム。 - 請求項1〜11に記載の発明において、
前記のいずれかの方法で生み出した水素を液化輸送し、熱核融合炉、液体水素流通機構、磁気浮上方式のリニアモーターカー、鉄道等の施設へ液体水素を供給する、独立分散方式による水素エネルギー製造と該資源の冷却備蓄を目的とするエネルギー供給システム。 - 請求項1〜11に記載の発明において、
前記のいずれかの方法で生み出した水素資源を用いて、液体水素、水素ガスおよび電気・熱エネルギーの流通を目的とするネットワークと、その運営管理およびエネルギー供給の相互補完並びにその安定供給を目的とする、階層構造を有する、エネルギー流通のための仕組みとその運用システム。 - 請求項1〜11に記載の発明において、
前記のいずれかの方法で生み出した水素資源を用いて、タンク、ボンベ等の小規模な貯蔵機能を有する移動体個々の備蓄設備に対し、水素資源を供給して走行の用に供する供給手段を備えた、水素ステーションにおけるエネルギー供給システム。 - 請求項1〜11に記載の発明において、
前記のいずれかの方法で生み出した水素から電力を得て、この電力を一次エネルギーとして、ブラウンガス製造装置により水素酸素混合ガスを発生させ利用する、該ガスの応用分野を拡大する水素系エネルギー供給システム。 - 請求項1〜11二記載の発明において、
前記のいずれかの方法を用いて液化水素を安価に製造し、ロケット燃料として需要地で製造精錬の上販売する供給手段を備えた、水素エネルギーの供給システム。 - 請求項1〜16に記載の発明において、
前記のいずれかの方法を応用して発生せしめた水素を備蓄し、水素燃焼タービンおよび蒸気タービン並びに高温作動型の燃料電池またはこれらを組み合わせて発電効率の向上を図ることが可能な統合コンバインドサイクル等の発電機群と、
統合コンバインドサイクル等の発電機群を介して電力を得、これを自家消費乃至は一般へ販売する供給手段を備えて設営された電気エネルギーの供給システムと、
該ネットワークの機構とその階層における上部構造による補完手段とを備えた、エネルギーの安定供給並びに省エネルギーのための応用管理システム。 - 請求項1〜16に記載の発明において、
前記のいずれかの方法を応用して発生せしめた水素をガスの状態で備蓄する備蓄手段を備えた、水素資源輸送のための高圧ガス備蓄とその供給管理システム。 - 請求項1〜16に記載の発明において、
前記のいずれかの方法を応用して発生せしめた水素を液化備蓄し、これを随時供給できるようにされた備蓄・供給手段と、
水素エネルギーと該熱資源、及び電気エネルギー等を安定的に輸送する高温超伝導条件を維持する輸送・維持手段とを備えたネットワークシステム。 - 請求項1〜16に記載の発明において、
前記のいずれかの方法を応用して発生せしめた水素を液化備蓄し、これを随時供給できるようにされた備蓄・供給手段と、
水素エネルギーと該熱資源、及び電気エネルギー等を安定的に貯蔵し、高温超伝導条件を維持する貯蔵・維持手段とを備えたエネルギー供給システム。 - 請求項1〜16に記載の発明において、
前記のいずれかの方法を応用して発生せしめた水素を液化備蓄し、これを随時供給できるようにされた備蓄・供給手段と、
水素エネルギーと該熱資源、及び電気エネルギー等を用いて液体水素レベルの温度条件下で、高温超伝導状態を維持する維持手段とを備えた、電力の貯蔵供給システム。 - 請求項1〜16に記載の発明において、
前記のいずれかの方法を応用して発生させた水素を液化備蓄し、これを随時供給できるようにされた備蓄・維持手段と、
水素エネルギーと該冷熱資源、及び電気エネルギー等を用いて高温超伝導現象を導き、高温超伝導電力貯蔵装置(SMES)、高温超伝導フライホイール型電力貯蔵装置を利用し、電力を需要者または電力会社及び電力流通機構等第三者機関へ提供する供給手段とを備えた、エネルギー供給システム。 - 請求項1〜16に記載の発明において、
前記のいずれかの方法を応用して発生せしめた水素を液化備蓄し、エネルギー変換して得た電気を用い、高温超伝導モーターを駆動するための冷熱と電力とを併給するエネルギーシステム。 - 熱化学反応で得た未精錬の水素酸素混合ガスを用い、燃焼器具を介して直接燃やすことを特徴とする水素エネルギー供給システム。
- 請求項1〜27に記載の発明において、
水素を導くための資源を微生物などの資源を細菌類等の微生物にもとめ、水から水素を取り出す主目的以外のサブシステムとしてサイクルに導入し、以って有機廃棄物の発生量を減らして水素エネルギーシステムの高度化を推進する、生物起源型水素と水分解水素または電解水素等との統合利用をすることが可能なエネルギー供給システム。 - 請求項1〜27に記載の発明において、
水素を導く補助手段として、光触媒、光化学反応等その他の水素抽出技術を援用して、その効率化を図ることが可能なエネルギー供給システム。 - 化学工場などで発生する副生水素を用いて、燃料電池または内燃機関および燃焼装置等を駆動する水素エネルギー供給システム。
- 請求項31に記載の発明において、
請求項15〜請求項27のいずれかに記載の水素資源の活用法を用いることにより、低廉な副生水素の利用拡大と該エネルギー流通を可能にした、水素資源によるエネルギー供給システム。 - 熱化学反応装置を組み込んだ各種のシステムを貸与して、水素エネルギーの導入促進を図るためのシステムであって、
設置されたシステムと、システムを監視する監視手段、またはシステムを管理するための通信手段を、オンラインで接続された設置場所および管理サービスの管理場所に設け、該エネルギー応用技術の早期普及を行う、オンラインによる24時間体制の管理サービスシステム。 - 請求項1〜27二記載の発明において、
電気エネルギーの流通及び消費のための供給手段において、全ての段階で直流電流のままこれを送電し、また直流回路を持つ電機器具を駆動する方式を採用することにより、直交変換に伴う電流損失等をなくし、搭載する部品点数を減らすこと等でコスト低減と信頼性および安定性の維持向上を測ることが可能な、電気エネルギー流通システム。 - 既存の送配電システムに追加して設置され、
送配電システムの最終端付近に水素発生器を置くなどして備え、接地して廃棄する電流を用いて水から水素を取り出し、該水素資源から電気エネルギー及び運動エネルギー乃至は熱エネルギーなどを得て、各種エネルギー需要に対応させ省エネルギーを図る、水素またはブラウンガスの備蓄を目的とするエネルギーの高度利用システム。 - 請求項1〜28に記載の発明において、
水素を導くための資源を水に求め、これを液相状態である水のまま備蓄する、水素エネルギーの備蓄供給システム。 - 請求項1〜26のいずれかに記載のシステムを任意に組み合わせることによって、相乗効果を引き出し、電熱併給の効率化を図ることが可能な、水素資源によるエネルギーサイクルであって、既存のインフラに該サイクルを導入することにより、エネルギーの高度利用を図ることが可能な、省エネルギーを目的とする水素エネルギー供給システム。
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