JP2004089824A - ホウ素結合剤 - Google Patents

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Kazuhisa Yoshimura
吉村 和久
Hiroyuki Takemura
武村 裕之
Shiro Matsuoka
松岡 史郎
Eishin Matsuo
松尾 英信
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Abstract

【課題】水試料中でホウ酸と安定且つ迅速に錯体を形成し得る新しい配位子を見出し、これを利用して効率的且つ簡便にホウ素を除去したり定量することのできる技術を提供する。
【解決手段】2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−フェノール構造を有する化合物から成るホウ素結合剤、特に、該構造を有する化合物がイオン交換体などに固定化されているホウ素結合剤による。中性領域を含む広範なpH領域において水試料中のホウ素と迅速に結合して安定な錯体を生成するので、この特質を利用して水中のホウ素の除去や定量分析に供することができる。
【選択図】   なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水中のホウ素に結合してホウ素の除去や定量に用いることのできるホウ素結合剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
水から微量のホウ素を分離、除去することは、種々の産業分野において重要である。例えば、半導体製造などの電子産業分野や医薬品製造分野では、ホウ素濃度がppbレベル以下の超純水が要求される。また、ホウ素化合物は、ガラス、メッキ、染料、顔料、写真などの各種の産業分野や清掃工場など日常生活に関連する分野においても広く利用されているが、環境や人体に与えるホウ素の影響が懸念されるに従い、それらの分野から排出される産業排水や環境水からのホウ素も厳しく規制されるようになり、ホウ素に対する最近の環境基準値は0.2mg dm−3となっている。ホウ素を含有する水からホウ素を除去する方法として従来よりよく知られたものに、アルミニウム化合物やカルシウム化合物を用いてホウ素を不溶性物質として凝集、分離する方法が挙げられる。しかし、この方法は、多量の汚泥物質を発生することが問題である。
【0003】
一方、水中のホウ素を定量分析することも、如上の各種分野における水試料中のホウ素濃度が許容レベルに低減されているか否かを確認するのに必要である。従来より、水中の微量ホウ素を定量するのによく知られているのは、ICP発光分析法によるものである。この方法は、試料を誘導結合プラズマに噴霧しホウ素による発光を測定するものであるが、大規模の装置を必要とするのでコストパフォーマンスが低く、さらにオンラインまたはオンサイト分析が困難であるなどの欠点がある。
【0004】
ホウ素は、水中でホウ酸またはホウ酸イオンとして溶存する。そして、分子内に複数の水酸基を有する多価アルコール類や糖類などは、水中でホウ酸イオンと選択的に結合して錯体(1:1錯体および1:2錯体)を形成することが知られている。近年、このような複数の水酸基を有する物質を利用するホウ素の除去法や定量法が注目されている。
【0005】
例えば、多価アルコールを官能基として導入したポリスチレン樹脂であるN−メチルグルカミン(すなわち、N−メチル−1−アミノ−1−デオキシ−D−グルシトール)系樹脂(例:アンバーライトIRA−743)がホウ素選択性吸着樹脂として市販されている。複数の水酸基を有する化合物は、その水酸基の酸解離が起こり易いほどホウ酸錯体の生成定数が大きく、また、一般に、複数のフェノール性水酸基を有する化合物の方がアルコール類や糖類よりも安定な錯体を形成することが見出されている。この点から、ホウ酸イオンに対する配位子(リガンド)として、例えば、複数のフェノール性水酸基を有する化合物の1種であるクロモトロープ酸を用いるホウ素の除去および定量法(K. Yoshimura他、J. Chem.Soc., Dalton Trans., 2000, 3136−3142 ; K. Yoshimura他、J. Chem. Soc., Dalton Trans., 1999, 1639−1644)などが提案されている。また、フェノール性水酸基とアルコール性水酸基とから成るサリチルアルコール誘導体を用い、これに溶媒抽出を組合せたホウ素除去法(K. Poslu他、Hydrometallurgy, 10 (1983)
47−60)
も案出されている。
【0006】
ホウ酸錯体の形成を利用するこれらのホウ素の除去法や定量法は、既述したような従来技術に比べて、一般に簡便であり、また高精度の定量が可能であるが、改良すべき課題も幾つか残されている。例えば、上述したようなN−メチルグルカミン系樹脂から成るホウ素吸着剤のホウ素吸着速度は充分に大きいものではない。また、サリチルアルコール類はホウ酸と充分安定な錯体を形成するとは言えず、さらに、クロモトロープ酸がホウ酸と迅速に錯体(1:2錯体)を生成するのは、専ら低pHで大過剰の配位子存在下に限られるという問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、中性のpH域を含む広範囲のpH域において水試料中でホウ酸と安定且つ迅速に錯体を形成し得る新しい配位子を見出し、これによって、従来よりも効率的且つ簡便にホウ素を除去したり定量することのできる技術を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の課題を解決するものとして、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−フェノール構造を有する化合物から成ることを特徴とするホウ素結合剤、特に、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−フェノール構造を有する化合物が固定化されていることを特徴とするホウ素結合剤を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のホウ素結合剤を構成する2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−フェノール構造を有する化合物とは、次の一般式(1)で表わすことのできる2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−フェノールまたはその誘導体である。
【0010】
【化1】
Figure 2004089824
【0011】
式(1)中、nは0または1〜3の整数である。nが0の場合、(1)は2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−フェノールを表わす。nが1〜3の整数の場合、(1)は、Rで表わされる官能基または原子団により3,4および5位の少なくとも1つが置換されている2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−フェノール誘導体を表わす。複数のRで置換されている場合、それらのRは、一般に、同一の官能基または原子団で表わすが、別異の官能基または原子団であることもできる。Rの好ましい例としては、下記のものを挙げることができる。
【0012】
(a)親水性の官能基または原子団であり、水中で負の電荷をもつ官能基を末端に持つもの。末端の官能基は、例えば、−COOH、−SOH、−PO(OH)、−OH(フェノール性水酸基)等、およびこれらの塩。
(b)親水性の官能基または原子団であり、水中で正の電荷をもつ官能基を末端に持つもの。末端の官能基は、例えば、アミノ基、4級アンモニウム基等。
(c)(a)群または(b)群に属するもののエステル、アミド等。
(d)疎水性相互作用を増大し得る官能基または原子団。例えば、アルキル基やフェニル基などの脂肪族または芳香族の炭化水素基、ハロゲン原子、、アルコキシル基、シアノ基、−NO等の中性置換基。
(e)重合可能な官能基または原子団、例えば、ビニル基、アリル基などを末端に持つもの。
【0013】
如上の2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−フェノール構造を有する化合物は、これまでに知られている複数の水酸基を有する化合物と同様に、下記の式(2)および(3)で表わされるように、水中でホウ酸と結合して、1:1錯体(ホウ酸:配位子の組成比が1:1の錯体)および1:2錯体(ホウ酸:配位子の組成比が1:2の錯体)を生成することがNMR測定により確認されている。
【0014】
【化2】
Figure 2004089824
【0015】
【化3】
Figure 2004089824
【0016】
かくして、水中のホウ素を除去するには、対象試料となる水中に、式(1)で表わされるような2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−フェノール構造を有する化合物を添加すれば、水中のホウ素はホウ酸として式(1)の化合物と既述の(2)および(3)のように反応して錯体を形成するので、この錯体を固相との相互作用、または溶媒抽出などにより対象試料から分離すればよい。
【0017】
すなわち、ホウ素結合剤を構成する2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−フェノール構造を有する化合物として、式(1)におけるRが前記(a)群に属する官能基または原子団であるものを用いる場合には、反応後の液と陰イオン交換体とを反応させることにより、生成した錯体は該陰イオン交換体に捕捉されて分離される。同様に、式(1)におけるRが前記(b)群に属するものから成る2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−フェノール構造を有する化合物をホウ素結合剤として用いた場合には、反応後の液と陽イオン交換体とを反応させることにより錯体を分離することができ、また、式(1)におけるRが前記(c)群または(d)群に属するような官能基または原子団から成る2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−フェノール構造を有する化合物を用いた場合には、反応後の液をODS(オクタデシルシリカ)や無極性樹脂のような疎水性固相と反応させることにより、生成した錯体を分離することができる。生成した錯体を溶媒抽出により分離、除去する場合には、その有機溶媒に対する分配比を増大させるような官能基または原子団を有する2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−フェノール誘導体、すなわち、一般に、式(1)におけるRが前記(c)群または(d)群に属し特に嵩高い官能基または原子団から成る2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−フェノール構造を有する化合物を用いる。
【0018】
本発明に従い2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−フェノール構造を有する化合物を用いるホウ素の除去は、以上のように、当該化合物を対象試料(被処理水)に添加した後、適当な手段で錯体を除去することによっても行ない得るが、一般的には、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−フェノール構造を有する化合物を固定化して実施するのが便宜であり好ましい。すなわち、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−フェノール構造を有する化合物を適当なポリマーに担持させることにより固定化するか、または、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−フェノール構造を有する化合物自体を重合させポリマー化することにより固定化する。
【0019】
2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−フェノール構造を有する化合物を固定化する態様として好ましい例は、該化合物を陰イオン交換体に静電的相互作用を介して固定化することである。すなわち、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−フェノール構造を有する化合物として、式(1)におけるRが(a)群に属する官能基または原子団から成るものを用い、この2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−フェノール誘導体の水溶液に陰イオン交換体を添加して充分にイオン交換を行なわせた後、陰イオン交換体をろ過、水洗するという比較的簡単な操作によりホウ素選択性吸着剤が得られる(後述の実施例参照)。
同様に、式(1)におけるRが前記(b)群に属するような官能基または原子団から成る2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−フェノール誘導体を陽イオン交換体に固定することによってもホウ素選択性吸着剤を得ることができる。
【0020】
本発明のホウ素結合剤を構成する2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−フェノール構造を有する化合物は、以上のように、静電的相互作用を介して陰イオン交換体または陽イオン交換体に担持されて固定化されるほか、疎水性相互作用を介してODSや無極性樹脂等から成る担体に担持されて固定化されることもできる。この場合は、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−フェノール構造を有する化合物として、式(1)におけるRが前記(c)または(d)群に属する官能基または原子団から成るものを用いる。
【0021】
さらには、適当なポリマーに化学的に結合させて固定化することもできる。例えば、−NH(アミノ基)を置換基として持つポリマーに、式(1)におけるRが前記(a)群に属する−COOHや−SOH等の官能基から成る2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−フェノール誘導体をアミド結合等で固定したり、さらには還元して結合を強固にすることによっても、ホウ素選択性吸着剤が得られる。逆に、−COOHや−SOH等を置換基として持つポリマーに、式(1)におけるRが前記(b)群に属する−NHや、(a)群に属する−OH等の官能基から成る2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−フェノール誘導体をアミド結合やエステル結合等を介して固定することもできる。
【0022】
2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−フェノール構造を有する化合物の固定化は、以上のように、適当な樹脂(ポリマー)等の固相に担持させる手法によるのみならず、この2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−フェノール誘導体自体を重合させポリマー化することによっても可能である。例えば、式(1)におけるRが前記(e)群に属するビニル基あるいはアリル基である2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−フェノール誘導体を単独重合させたり、またはジビニルベンゼン等と共重合させることによりポリマー化して固定化することもできる。
【0023】
2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−フェノール構造を有する化合物から成る本発明のホウ素結合剤は、上述のように、ホウ素を含有する各種の水試料からホウ素を選択的に除去するのに用いられるのみならず、それらの水試料中のホウ素の含有量を定量するのにも適用される。
【0024】
このようなホウ素の定量は、ホウ素の除去法に関連して既述したようなイオン交換法やHPLC(高速液体クロマトグラフィー)などによりホウ酸錯体を分離するための手段と、ホウ酸錯体を検出するための吸光光度法とを組み合わせて行なうことができる。HPLCを利用する場合は、ホウ素結合剤として式(1)におけるRが(a)、(b)、(c)または(d)群に属する官能基または原子団から成る2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−フェノール誘導体を用い、また、陰イオン交換体を利用するような場合は、式(1)におけるRが(a)群に属するような官能基または原子団から成る2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−フェノール誘導体を用いるのが一般的である。
【0025】
【実施例】
以下に、本発明の特徴を更に具体的に明らかにするため実施例を示すが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。
実施例1:2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−フェノール誘導体の錯体生成能
この実施例は、本発明に従う2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−フェノール構造を有する化合物が、水中のホウ酸ときわめて錯体を生成し易いことを示すものである。本発明に従う配位子として下記の式(4)で示される2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−p−クレゾールを用いた。さらに、比較のため、サリチルアルコール誘導体として下記の式(5)で表わされるサリチルアルコールを配位子とする場合についても同様に錯体生成実験を行なった。
【0026】
【化4】
Figure 2004089824
【0027】
【化5】
Figure 2004089824
【0028】
pHを7.0、イオン強度を0.1mol dm−3に調整した水溶液中で、1mmol dm−3のホウ素と10 mmol dm−3の各配位子を25℃で反応させ、11B NMRスペクトルを測定し、遊離のホウ酸、1:1錯体(ホウ酸:配位子の組成比が1:1)および1:2錯体(ホウ酸:配位子の組成比が1:2)の存在比を、得られたシグナルのピークに基づき調べた。
【0029】
この結果、サリチルアルコールの場合、未反応のホウ素90%、1:1錯体7%および1:2錯体3%であった。これに対し、本発明に従う2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−p−クレゾールの場合は、未反応のホウ素43%、1:1錯体17%および1:2錯体40%であった。すなわち、サリチルアルコールの場合、ホウ素の反応率は僅か10%であるのに対し、本発明に従う2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−p−クレゾールの場合の反応率は57%であり、約6倍も高い値である。ちなみに既述の(2)および(3)をもとにした生成定数は、サリチルアルコールの場合、3400(1:1錯体)および47(1:2錯体)であるのに対し、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−p−クレゾールについては、15000(1:1錯体)および260(1:2錯体)であった。
【0030】
このように、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−フェノール構造を有する化合物は、複数の水酸基を有するホウ素結合性化合物として従来より知られたサリチルアルコール系化合物に比べても、水中におけるホウ酸との錯体生成率が非常に高く、ホウ素の除去や定量に有用なホウ素結合剤としてきわめて優れていることが理解される。
【0031】
実施例2:ホウ素選択性吸着樹脂の調製
本発明に従い配位子として下記の式(6)で表わされる2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−4−ヒドロキシ安息香酸を用い、これを静電的相互作用により陰イオン交換体に固定してホウ素選択性吸着樹脂を調製した。
【0032】
【化6】
Figure 2004089824
【0033】
陰イオン交換体として、強塩基性陰イオン交換樹脂Dowex 1−X8(100〜200メッシュ)Cl型の乾燥樹脂12gを用いた。一方、式(6)の2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−フェノール誘導体から成る50.5mmol/200cmの配位子水溶液を調製した。
ポリ容器に入れた配位子水溶液中にCl型樹脂を加え、25℃で一昼夜振盪した。その後、200cmメスフラスコに反応母液を移し反応母液中の全配位子量を吸光光度法(λmax=249nm、pH6.4)により定量した。合成樹脂をカラムに充填し水で洗浄し、溶出液を集めた。溶出液中の全配位子量を定量しながら配位子の漏出が無くなるまで(10−5mol dm−3程度)水を通液した後、樹脂を風乾した。溶出液および母液中の配位子量より樹脂中に固定された配位子量を計算したところ、得られた樹脂中の配位子濃度(樹脂の乾燥重量当たりの配位子量)は20.6mmol/14.7g(1.40mmolg−1)であった。また、メスシリンダー静置法により膨潤樹脂体積を測定したところ、2.21cm−1であった。
【0034】
以上のようにして調製したホウ素選択性吸着樹脂の水溶液からのホウ素除去性能を調べた実施例を以下に示す。下記の実施例において、ホウ素溶液はホウ酸を水に溶かして調製した。なお、溶液の準備と定量時の操作にはガラス器具を用いたが、反応容器およびカラムには非ガラス器具を用いてガラス器具からのホウ素の汚染を除いた。ホウ素の定量には反応溶液の上澄みの一部を用いたアゾメチンH法(λmax=412nm、pH5、25℃、検出下限:0.1mmol dm−3)を利用し、配位子〔2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−4−ヒドロキシ安息香酸〕については249nm(pH6.4)付近の吸光度を元に定量し、漏出量は樹脂中の配位子が全て漏出した場合の量を100%としたときの値で示した。樹脂の秤量には乾燥樹脂を用い、特に断らない場合は水による事前の樹脂の膨潤を行なわなかった。また、特に断らない限りは吸着平衡時に測定したpHを表記した。
【0035】
実施例3:ホウ素吸着試験(バッチ法)
実施例2のようにして調製したホウ素選択性吸着樹脂のホウ素に対する吸着能(結合能)をバッチ法により調べた。
[I] 過剰ホウ素溶液中でのホウ素吸着挙動
先ず、樹脂の交換容量に比べてホウ素が過剰に存在する条件下において、ホウ素選択性吸着樹脂へのホウ素吸着容量を調べた。ホウ素選択性吸着樹脂0.20gを、任意のpHに調整した30mmol dm−3のホウ素溶液20cmに加えて25℃で3日間振盪した。振盪後、水溶液のpHとホウ素の残留濃度を測定し、樹脂1g当たりのホウ素吸着量を調べたところ、下記の表1に示す結果が得られた。
【0036】
【表1】
Figure 2004089824
【0037】
[II] 低濃度ホウ素溶液中でのホウ素吸着挙動
次に、ホウ素選択性吸着樹脂の低濃度ホウ素溶液からのホウ素除去率を調べた。ホウ素選択性吸着樹脂0.20gを任意のpHに調整した3.0mmol dm−3のホウ素溶液20cmに加えて25℃で3日間振盪した。振盪後、水溶液のpHとホウ素の残留濃度を測定し、水溶液中からのホウ素の除去率を調べたところ、下記の表2に示す結果が得られた。
【0038】
【表2】
Figure 2004089824
【0039】
以上の[I]および[II]の実験結果に示されるように、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−フェノール構造を有する化合物が陰イオン交換体に固定化されたホウ素選択性吸着剤は、広いpH領域においてホウ素吸着能を有し、ホウ素を除去するのにきわめて有用であることが分かる。特に中性のpH領域における吸着能に優れ、低濃度ホウ素水溶液からは中性領域においてほぼ100%のホウ素除去が可能である。
【0040】
[III] 反応速度と分配比
樹脂の交換容量に比べてホウ素が半分程度存在する条件下において、微量ホウ素の除去について調べた。ホウ素選択性吸着樹脂2.5gを水5cmに加えて一晩膨潤させた。これに10mmol dm−3のホウ素溶液100cmに加えて25℃で振盪した。振盪後、水溶液のpHとホウ素の残留濃度、配位子の漏出量を測定した。
【0041】
水溶液中のホウ素濃度は15分後には0.6mmol dm−3以下となり、95%以上が樹脂に吸着、除去されていた。なお、前述したように既に市販されている吸着剤として、N−メチルグルカミン系樹脂(例:アンバーライトIRA−743)があるが、この樹脂と発明によるホウ素選択性吸着樹脂の中性領域でのホウ素の吸着速度を吸着平衡時のホウ素吸着量を基準にして比較すると、市販の樹脂が1時間反応させて約90%であるのに対して(参考文献:日本化学会誌、1987(4)、753ページ)、本発明による樹脂は僅か15分間の反応で95%以上を吸着し、吸着速度がきわめて大きく対象試料からホウ素を効率的に除去し得ることが理解される。さらに、市販の樹脂は比較的高価であるのに対して、本実施例で使用されるような配位子の原料は安価であるのでコストパフォーマンスの点からも優れた吸着剤となる。
【0042】
また、一昼夜振盪後、誘導結合プラズマ質量分析法(検出下限:1μmol dm−3)により水溶液中のホウ素濃度を測定したところ、30μmol dm−3であり、配位子の水溶液中への漏出量は0.03mmol dm−3以下(0.1%以下、検出限界以下)であった。したがって、分配比D(cm−1)はlogD値として5以上であった。なお、Dの定義は、D=樹脂中のホウ素濃度(mol g−1)/溶液中のホウ素濃度(mol cm−3)である。このように、ホウ素濃度が交換容量の半分程度の溶液における分配比が非常に大きいことから、本発明に従うホウ素選択性吸着剤が極低濃度領域でのホウ素除去剤としても有用であることが理解される。
【0043】
実施例4:ホウ素吸着試験(カラム法)
実施例2のように調製したホウ素選択性吸着樹脂について、カラム法によってもそのホウ素に対する吸着能を調べた。
事前(数日前)に膨潤させておいたホウ素選択性吸着樹脂2.2cmを内径1.0cmのカラムに充填した。水を通液した後、可及的にカラム上の水を減らした。このカラムに10mmol dm−3のホウ素溶液を0.52cmmin−1(空間速度(SV)14 beds h−1)で通液した。カラムからの流出液を10cmずつ分取してホウ素の定量を行なった。
流出液が60cmまでは流出液中にホウ素は検出されなかった。流出液量が70cmのときに流出液のホウ素濃度は0.7mmol dm−3、80cmのときに7.0mmol dm−3、90cmのときに9.9mmol dm−3となり、それ以降は全てのホウ素が漏出した。樹脂中へのホウ素の全吸着量は0.72mmolであった。このように、SV=14 beds h−1という速い条件下のカラム法においてもアゾメチンH法の検出限界以上のホウ素の漏出は観測されず、本発明のホウ素選択性吸着剤が連続法により水試料からホウ素を分離除去するのにも使用できることが理解される。
【0044】
実施例5:ホウ素定量分析への適用
この実施例は、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−フェノール構造を有する化合物を配位子として用いることにより、水中のホウ素の定量分析を行なうこともできることを例示するためのものである。
バッチ法で反応させたホウ酸錯体を強塩基性陰イオン交換体に吸着させ、配位子の吸収極大波長における吸光度の減少量よりホウ素定量を行った。すなわち、強塩基性イオン交換樹脂Dowex 1−X8(100〜200メッシュ)Cl型0.02gを、pH8.8に調整した2.0mmol dm−3の配位子〔式(6)で表わされる2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−4−ヒドロキシ安息香酸〕と任意の濃度のホウ素を含む溶液20cmに加えて25.0℃で一晩振盪した。振盪後、配位子の吸収極大波長(249nm)における吸光度を測定し、試薬ブランクからの減少量と初期ホウ素濃度との関係を調べたところ、表3および図1に示される結果を得た。表3および図1において、Abs.(X)は、初期ホウ素濃度Xにおける吸光度を表わし、Abs.(A(O)−A(X))が試薬ブランクからの吸光度の減少量を表わす。
【0045】
【表3】
Figure 2004089824
【0046】
図1のように、吸光度とホウ素濃度に基づく回帰曲線は良好な相関関係を示し、このような検量線を利用してホウ素の定量分析を行なうことができる。
【0047】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−フェノール構造を有する化合物から構成される本発明のホウ素結合剤は、特に中性領域を含む広範なpH領域において水試料中のホウ素と迅速に結合して安定な錯体を生成し、この特質を利用して水中のホウ素の除去や定量分析のための新しい技術の開発に資することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−フェノール構造を有する化合物から成る本発明のホウ素結合剤を用いて水中のホウ素を定量する場合のホウ素濃度と配位子の吸光度との関係を例示するグラフである。

Claims (3)

  1. 2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−フェノール構造を有する化合物から成ることを特徴とするホウ素結合剤。
  2. 2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−フェノール構造を有する化合物が固定化されていることを特徴とする請求項1に記載のホウ素結合剤。
  3. 2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−フェノール構造を有する化合物が陰イオン交換体に固定化されていることを特徴とする請求項2に記載のホウ素結合剤。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011163888A (ja) * 2010-02-09 2011-08-25 Takaoka Kasei Kogyo Kk ホウ素の分析方法
JP2014098720A (ja) * 2008-09-25 2014-05-29 E M D Millipore Corp 水中のホウ素を検出する電気化学的方法
CN111729661A (zh) * 2020-06-09 2020-10-02 苏州赛分科技有限公司 用于分离含硼物质的层析介质

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