JP2004088130A - Iii族窒化物半導体発光ダイオード - Google Patents

Iii族窒化物半導体発光ダイオード Download PDF

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Abstract

【目的】 窒化ガリウム・インジウムを発光層とする出力で単色性に優れるIII族窒化物半導体発光素子を提供する。
【構成】 基板結晶上にAlxGayInza1-a層(但し、Vは窒素原子以外の元素周期律第V族元素、x+y+z=1、0≦x,y,z≦1、0≦a<1)からなる第1の中間層、該中間層上に一般式AlxGayInza1-aで表わされるクラッド層、窒化ガリウム・インジウム発光層及びAlx1Gay1Inz1a11-a1層を順次積層し電極を付した構成を具備したIII族窒化物半導体発光素子であって、第1の中間層は上記基板と接合する下部を単結晶層とし、その上部を上記結晶基板の表面に略平行な格子配列を有するAlGaInNの単結晶体から構成され、発光層はインジウム組成を相違する複数の不均質層からなることを特徴とするIII族窒化物半導体発光素子とする。
【効果】 発光の単色性に優れる高出力の発光素子が提供される。

Description

 III族窒化物半導体から成る発光層を具備したIII族窒化物半導体発光素子に係わり、特に短波長可視光を高出力で放射する発光素子を提供するに適する発光層を含む発光素子に関する。
(対象とするIII族窒化物半導体と従来に於けるその利用例)
 元素周期律の第III族に属する元素にはアルミニウム(元素記号:Al)、ガリウム(元素記号:Ga)やインジウム(元素記号:In)がある。一方、第V族に属する元素には窒素(元素記号:N)の他に砒素(元素記号:As)やリン(元素記号:P)がある(此処では窒素以外の第V族元素を記号Vで一括して表す。)。これら両族の元素から構成されるIII族窒化物半導体は青色、青緑色或いは緑色等の短波長の可視光を放射する発光ダイオード(LED)や可視レーザダイオード(LD)等の発光素子にあって、素子の電気的特性を顕現するための機能層や機能層の結晶性を向上させるための緩衝層等として利用されている。III族窒化物半導体は他にもフォトダイオード(PD)等の受光素子等や光デバイスと電子デバイスとを組合わせてなる光・電子(Opto−electronic)デバイス等に利用されている。これらの素子(device)に従来から常用されるIII族窒化物半導体結晶層は、一般式AlxGayInza1-a(但し、Vは窒素以外のV族元素、0≦x,y,z≦1、x+y+z=1、0≦a<1)で表記される。特に、上記の一般式に於いてa=0に相当する窒化アルミニウム・ガリウム・インジウム混晶(AlxGayInzN(但し、0≦x,y,z≦1、x+y+z=1)はLEDにあっては従来から例えば発光層として従来から利用されている(例えば、特許文献1参照。)。また、例えば、変調ドープ(odulation oped)電界効果型トランジスタ(MOFET)にあっては電子供給層として従来から利用されている(例えば、非特許文献1参照。)。
(従来に於けるAlGaInN混晶の実用上の配置例)
 素子構造上に於けるAlxGayInzN(但し、0≦x,y,z≦1、x+y+z=1)の従来の配置例を青色、青緑色或いは緑色を発する短波長LEDを例にして説明する。先ずz=0に該当する組成のAlxGayN混晶(0≦x,y≦1、x+y=1)はクラッド層にもその通常の利用例をみることができる。既に実用化されているLEDの構造に見られる様にn型のクラッド層を窒化ガリウム(GaN;上記の一般式にあってx=z=0に相当する)から構成する例がある(例えば、特許文献2参照。)。一方、p型のクラッド層は窒化アルミニウム・ガリウムからなる混晶(AlxGayN;0≦x,y≦1、x+y=1)から構成されるのが一般的である(例えば、特許文献3参照。)。この様なIII族窒化物半導体材料からなるクラッド層としての配置例をみるに、n型窒化ガリウムクラッド層は窒化ガリウム・インジウム混晶からなる発光層の下部の基板側に配置されるのが実用上常となっている(例えば、非特許文献2参照。)。逆に、p型窒化アルミニウム・ガリウム混晶からなるクラッド層は発光層の上に配置されるのが実用上の通例となっている(例えば、特許文献4参照。)。即ち、発光層についての相対的な位置関係から従来のクラッド層の配置状況を総括すれば、n型クラッド層は下部クラッド層として発光層の下側の基板側に配置され、p型のAlxGayN混晶層は発光層上に上部クラッド層として配置し、いわゆるダブルヘテロ構造とするのが実用上の配置方法となっている。
(p型のAlxGayN混晶層の従来配置例に付随する難点)
 実用化に至っているLED等の発光素子の母体材料の構成に実際にみられる如く、p型AlxGayN混晶層(0≦x,y≦1、x+y=1)は上記の様な上部クラッド層の他、p型コンタクト(contact)層として利用されるに至っている。コンタクト層はp型上部クラッド層上にp型電極(正電極)との良好な電気的接触を期して設けられる、云わば電極接触用の低抵抗層である(例えば、特許文献5参照。)。p型コンタクト層上のp型電極は発光層から放射される発光を半ば透過する、透光性を有する薄膜平面電極と、それに電気的に導通し動作電流を供給するための結線(ボンディング(bonding)用パッド(pad)電極とから主に構成される。現状に於いては正電極は金(元素記号:Au)や或いはそれらの合金やニッケル(元素記号:Ni)やクロム(元素記号:Cr)等の遷移金属類から構成されるのが一般的である。その他、アルミニウム(元素記号:Al)及びその合金、銀(元素記号:Ag)等の多岐に亘る金属材料がp型電極用の材料として開示されている(例えば、特許文献6参照。)。しかし、電極材料の種類に殆ど依存せず充分に低い抵抗値を有する良好なオーミック特性を有するp型電極が安定して形成できないことが共通の問題として依然として残存している。特に、発光層からの発光を効率良く透過させるために電極を構成する薄膜電極の膜厚を数十ナノメーター(nm)以下とすることが不可避な透光性薄膜電極にあっては、尚一層の良好な特性のオーミック性電極を安定して実現するのは困難となる。p型AlxGayN混晶層(0≦x,y≦1、x+y=1)への電極の被着条件或いはアロイ(alloy)条件が不完全であれば、ショットキー(Schottky)接合的な整流性のある電極が形成される場合も散見される。換言すれば、電極を構成する材料の種類の如何に拘らずp型AlxGayN混晶層(0≦x,y≦1、x+y=1)に対して良好なオーミック特性を有するp型の透光性電極を安定して形成するには技術的な困難性が伴っている。元来、可視光に対し透過率の小さな金属材料の薄層化に頼って透光性を稔出する不合理な方法ではなく、本来、透明なインジウム錫(Sn)酸化物(ITO)等を透光性どころか透明電極として利用すれば従来の問題点の解決にはなる(例えば、特許文献7参照。)。現状にあって、低接触抵抗のオーミック電極の形成を可能とするに充分な数オーム・センチ(Ω・cm)程度の低い比抵抗のITOも製造されるに至っている。しかし、ITOはn型の伝導形を呈する物質である。従って、p型コンタクト層に接触する透明電極としては使用できない。何故ならば、p型であるコンタクト層とn型のITO電極との間でpn接合が形成され、LED構造にあっては発光層への動作電流等の流通が妨げられるからである。
(p型AlxGayN混晶層の代替としてのn型AlxGayN混晶層の配置例)
 単体金属或いは合金からなる低抵抗透光性電極の安定形成の困難さを伴うp型AlxGayN混晶層をp型電極形成用の層として積層構造の最表層に配置する構成に替わり、n型のAlxGayN混晶層(0≦x,y≦1、x+y=1)を最表層として配置する積層構成例も開示されている(例えば、特許文献8参照。)。積層構造の最表層に電極を形成するためのn型層を配置した構成はnサイドアップ(n side up)構造と通称されている。発光強度の増大を期して採用されるpn接合型の積層構造を例にすれば、p型基板上に先ずp型層が堆積され、その上方に発光層、更に最表層をなすクラッド層やコンタクト層等をなすn型層が重層されるのが通例である。AlxGayN混晶層を備えた通称nサイドアップ構造のpn接合型LED用途の積層構造をもって具体的に説明すれば、サファイア基板上にGaaAl1-aN(0<a≦1)緩衝層、p型不純物がドーピングされたGaaAl1-aN(0<a≦1)及びn型GaaAl1-aN(0<a≦1)が順次、積層された構造となっている(例えば、特許文献9参照。)。この積層構成に於いてp型不純物がドーピングされp型化されたGaaAl1-aN(0<a≦1)層は発光層として、また、n型GaaAl1-aN(0<a≦1)は発光層の成長プロセス中での熱分解を防止するキャップ(保護)層を兼ねるクラッド層として重層されているものである(例えば、特許文献10参照。)。
 従来のnサイドアップ構造型に於けるp型AlxGayN混晶層(0≦x,y≦1、x+y=1)に係わる積層関係を更に詳細に述べれば、この構造に於けるp型層は緩衝(buffer)層上に重層されている。p型成長層の下地層としての役目をも果たす上記の緩衝層は実用的には通常、約400℃〜約600℃のIII族窒化物半導体単結晶層の成長温度に比較して低温で成膜されるために一般には低温緩衝層と呼称されている。緩衝層は窒化アルミニウム(AlN)、窒化ガリウム、窒化インジウム(InN)、窒化アルミニウム・ガリウム混晶や窒化アルミニウム・ガリウム・インジウムから構成するのが一般的である(例えば、特許文献11参照。)。
(p型AlGaInN混晶層を低温緩衝層上に重層する際の従来技術の問題点)
 上記した従来例にみられる様に低温緩衝層上にp型の結晶層を配置した構成からなるLED等の発光素子は実用化に至っていない。これは従前の低温緩衝上にp型不純物をドーピングしたp型AlxGayInzN(但し、0≦x,y,z≦1、x+y+z=1)を積層する際に発生するp型ドーパント(dopant)に因る低温緩衝層の変性に主に起因している。従前の低温緩衝層と呼称される結晶層は非晶質或いは非晶質を主体とし、層内に単結晶粒若しくは多結晶粒が散在している層が最も良好であるとされてきた(例えば、特許文献12参照。)。単結晶からなる層は低温緩衝層には不適であると判断されてきた(例えば、特許文献13参照。)。非晶質体であれば当然の如く、非晶質体を構成する各原子間の結合力は単結晶体に比べれば遥かに弱い。このため、非晶質体を主体とする低温緩衝層は高温環境下で容易に揮散するなどの欠点を有していた。にも拘らず、従来にあっては非晶質或いは非晶質を主体とした結晶形態を呈する薄層が低温緩衝層として最適とされ従前から継続して常用されてきた。
 p型AlxGayInzN混晶の気相(vapor phase)成長に従来からp型不純物として利用されているのは、例えばマグネシウム(元素記号:Mg)、ベリリウム(元素記号:Be)や亜鉛(元素記号:Zn)等の元素周期律の第II族に属する元素である(例えば、特許文献14参照。)。イオン化した第II族元素を注入する、所謂イオン注入法を利用したp型のAlxGayInzNの形成にはマグネシウムやカルシウム(元素記号:Ca)が利用されている(例えば、特許文献15または非特許文献3参照。)。p型不純物を導入するための何れの手段にあってもマグネシウムがp型不純物として好んで利用されている。しかし、マグネシウムは表面の平滑性、平坦性に優れるAlxGayInzN結晶層の成長を阻害するドーパントとして知られている(例えば、非特許文献4参照。)。特に、低抵抗のp型のAlxGayInzN結晶層の形成を期してマグネシウムを高濃度にドーピングした際には、AlxGayInzN成長層には亀裂(crack)をみる程、表面状態の悪化したものとなる。マグネシウムをドーピングすることによってさえ表面状態が悪化するp型のAlxGayInzN成長層を下部クラッド層として低温緩衝層上に堆積する際には更に問題は複雑となる。非晶質の緩衝層にマグネシウム等の不純物を故意に添加(=ドーピング)すれば、その層上にp型III族窒化物半導体層を成長するに有利となるとされる一方で(例えば、特許文献16参照。)、酸化還元反応性の高さからも判断される様にマグネシウム自体の化学反応性の強さから、低温緩衝層がマグネシウムの存在により変質を被るのはもはや一般的な現象として経験されるに至っている。マグネシウムが低温緩衝層内に侵入するとマグネシウムはアルミニウムやガリウム等の低温緩衝層を構成する第III族元素よりも原子半径が小さいために低温緩衝層の縮みを招く。この縮小により低温緩衝層には亀裂が発生する。低温緩衝層は元来、サファイア等の基板とする結晶とIII族窒化物半導体結晶層との間の格子の不整合性を緩和して、表面状態並びに結晶性に優れるIII族窒化物半導体堆積層の成膜を意図して設けられるものである。加えて、低温緩衝層が非晶質を主体として構成されている場合、非晶質体の構成原子間の結合の弱さから高温の成長過程へ移行する間に低温緩衝層の揮散に因る消失は免れない。マグネシウムの混入による低温緩衝層の変性や亀裂の発生に並行して低温緩衝層の損失に因る成長層とは格子不整合の関係にある基板結晶が露出するようになると、低温緩衝層はもはや格子不整合性を緩和する作用を充分に達成するには至らず、表面状態に劣るIII族窒化物半導体成長層がおこる事態となるに過ぎない。p型不純物を内在するIII族窒化物半導体の成長に適する新たな低温緩衝層の構成要件の明確化が改めて求められているところである。
(発光層の結晶性への波及的影響)
 更に、p型のAlxGayInzN成長層を下部クラッド層としてその層上に発光層を重層する場合を考慮する。低温緩衝層の変性、消失に伴い発生する亀裂に因り表面に凹凸を生じた下部クラッド層上には、当然の事ながら平滑性に優れる発光層は得られない。ましてや、マグネシウムの侵入や高温での損失に因る亀裂が発生して開口した領域では露出した格子不整合基板の表面上に、直接下部クラッド層が堆積されることとなる。このため、この領域の下部クラッド層は表面状態に劣るものとなる上に結晶性が劣悪なものとなる。結晶性の優劣は下部クラッド層上に堆積する発光層の結晶性に影響を与える。即ち、この領域では結晶性に優れる発光層が得られないため、高出力の発光をもたらす発光層を広範囲に亘り均質に得るに至らない。以上が現在に至ってもp型AlxGayInzN結晶層を下部クラッド層としたLEDが実用化されるに至っていない主たる理由である。
(発光層の構成材料)
 III族窒化物半導体材料から構成される発光素子には窒化ガリウム・インジウム(GayInzN:0≦y,z≦1、y+z=1)が発光層として常用されている(例えば、特公昭55−3834号公報明細書等参照)。発光層としての窒化ガリウム・インジウムに要求されている仕様を省みるに、それはインジウム(In)の組成比(z)が主たるものであった。これは窒化ガリウム・インジウムからの発光波長を左右する主要な因子はインジウム組成比であるとの従来の見識からである(例えば、特許文献17参照。)。一例を挙げれば視感度の高い約450ナノメーター(nm)近傍の青色発光を得ることを意図する発光層にあってはインジウム組成比(z)は約5%から約20%程度の範囲に調整されるのが通例である。混晶の形態を有する発光層からの発光の波長は混晶比によって一義的に決定され得るものである。しかしながら、同一の波長の発光を得るに際してこの様にインジウム組成比に或る程度の許容範囲があるのは窒化ガリウム・インジウム結晶層内のドーパントの有無に依存する。特に、第II族の不純物である亜鉛を窒化ガリウム・インジウム層内に存在させると亜鉛が形成する深い不純物準位(deep
level)により少ないインジウム量をもって長波長の発光を得ることが出来る(例えば、特許文献17参照)。一方、アンドープの窒化ガリウム・インジウムにあっては発光波長はインジウムの濃度に直接的に依存するため、深い準位を形成する不純物を含む窒化ガリウム・インジウムの場合に比較してより多くのインジウムを層内に存在させる必要が生ずる。上記した例えば波長を450nmとする青色発光を得るにあたり、インジウム濃度に適正範囲が存在するのはこの窒化ガリウム・インジウムへのドーピング状況に依るのである。また、発光層の層厚は一般には約100nm以下に設定される。最近では、単色性(発光の色純度)が発光層の層厚を減ずればより向上すると知れるに至り、発光スペクトルの半値幅を狭帯化させ発光の単色性(色純度)に優れるLEDを得るために発光層の層厚を以前の約1/10程度と薄くする場合もある。具体的には、層厚を約10nmとする薄い発光層をもって発光スペクトルの半値幅が従来の約1/2以下の約15〜30nmである青色帯LEDが提示されている(例えば、非特許文献5参照。)。窒化ガリウム・インジウムを発光層とする場合にあって、発光層からの発光波長並びに発光の色純度を左右する発光スペクトルの半値幅に影響を与える因子として従来技術が既に指摘しているのは、包括的且つ平均的なインジウムの濃度(混晶比)でありまた発光層の層厚であった。
(窒化ガリウム・インジウム発光層の結晶形態)
 結晶の形態上、従来から発光層としての窒化ガリウム・インジウムに要求されいる形態は単結晶であることであった。また、均質な結晶性と混晶組成比が均一な所謂単一の組成の相(phase)からなる結晶層であることであった。この結晶形態並びに均質性の要求は窒化ガリウム・インジウムからの発光強度を向上させるに都合が良いと漠然と類推されて来た事由に対応したに過ぎない。窒化ガリウム・インジウムの結晶形態に関する研究の最近の進展は、均質な混晶組成の窒化ガリウム・インジウム混晶の成長はむしろ困難であることが教示されている(例えば、非特許文献6参照。)。これは主に窒化ガリウム・インジウム結晶層が混晶組成比を相互に異にする相に分離する性質を潜在的に保有していることに因る(例えば、非特許文献7参照。)。更には、インジウムの濃度を均一とする均質で単一な相からなる窒化ガリウム・インジウム層が必ずしも発光をもたらすための必要条件ではないと解釈される結果も示されている。窒化ガリウム・インジウム発光層からの発光に関して発光波長並びに発光の色純度を左右する因子が解明されつつあり、尚且それらを制御する措置も講じられつつあるのとは対照的に、発光強度についてはそれに影響を与える主たる因子が明確に決定されていないのに加え、発光の機構(メカニズム)さえも明瞭にされていないのが現状である。
(発光層内のp型不純物の光学的作用)
 伝導形をp型とする窒化アルミニウム・ガリウム混晶等のIII族窒化物化合物半導体結晶層を得る際には、p型不純物としてマグネシウムが従来から好ましい元素として利用されているのは上記した通りである。マグネシウムはp型に不純物としての役目に加えて光学的な作用をもたらすことが知れている。マグネシウムの電気的な作用の他にその光学的な作用を省みるに、マグネシウムは亜鉛と同じく窒化ガリウム等に対して発光中心(色中心:color
center)を形成する(例えば、特許文献18または非特許文献8参照。)。マグネシウム発光中心から放射される発光はIII族窒化物半導体層内のマグネシウムの濃度に対応して変化するものである。マグネシウムの層内濃度がさほど大でない範囲では、ドナー(donar)−アクセプター(acceptor)不純物との対(pair)スペクトル(所謂、D−A
pair)の出現する波長に対応して紫(青紫)系の発色が観察される。層内のマグネシウムの濃度が大となりマグネシウムの深い準位(level)が形成されることとなると青色系の発色となる。青色発光を得るに必要なマグネシウムの濃度は約1019cm-3を越えるとされる(例えば、非特許文献9参照。)。マグネシウムの深い不純物準位に対応する青色系の発光の波長は一般的には約410nm〜約460nmの範囲である。この波長帯は正しく視感度の高さから青色LED作製に当たって目的とする約450nmの発光波長が包含される波長帯域である。このマグネシウムの光学的な働きは、例えば窒化ガリウム・インジウムからなる発光層内に所望する青色帯の波長、例えば450nmの発光を与える濃度のマグネシウムを共存させれば発光強度の増強が果たせると一見想到させる。
(発光層のp型不純物濃度による技術上の問題点)
 しかし、マグネシウム等の色中心を形成する不純物からの発光の波長は発光層が放つ主たる発光スペクトルの波長に正確に一致させる必要がある。発光波長が一致していなければ、発光層が放つ主たる発光スペクトルの強度の効果が一向に達成されないからである。逆に、発光波長が不一致である場合、所望する波長を有する主たる発光以外に波長からみて副次的な発光スペクトルを出現させ、結果として発光の単色性の悪化を帰結するものとなる。従って、発光の色純度を悪化させず発光層からの発光強度のみを都合良く増大させるには、(イ)発光層本来の発光波長に合致させるためのマグネシウム不純物に基づく発光波長の精密な制御、(ロ)マグネシウム不純物に基づく発光スペクトルの半値幅が発光層自体からの半値幅を以下とするための発光の単色性を精密に制御する措置が求められる。色中心を形成する不純物に因る発光の波長並びに発光スペクトルの半値幅は発光層内のその不純物の濃度に依存して敏感に変化する。故に発光層内へ取り込まれるマグネシウム等の色中心不純物の濃度を極めて精密に制御する特殊で高度な技術が要求される。この様な高度の制御技術の開発を完遂する困難さと、ディスプレイ技術の発展に伴う光の3原色を発光する色純度に優れる発光素子の需要を背景として、最近では如何にして単色性に優れる発光素子を得るかが現状での一つの技術動向となっている。即ち、上記した如く発光層は出来るだけ不純物量が少ない不純物を故意に添加しないアンドープ(undope)とするのが単色性に優れる発光をもたらすのに優位であると一般的に認識されつつある。
 nサイドアップ構造型に限定されず、発光層は色中心を形成する不純物が故意に添加された、所謂ドーピングされたp型のAlxGayInzN(但し、0≦x,y,z≦1、x+y+z=1)上に直接接合される場合が全んどである(例えば、特許文献19参照。)。この様な発光層とp型不純物がドーピングされたp型層との従来の共通的な配置例にあっては、p型層内に存在するp型不純物のアンドープ発光層への拡散に因る侵入が十二分に起こり得る。即ち、発光の単色性を期して敢えてアンドープ層とした発光層がp型不純物によって汚染される事態を招く。従来技術に於いて、発光層と接合するp型III族窒化物半導体層からアンドープ発光層へのp型不純物の侵入を防止するために有効な手段は講じられていない。
特公平6−101587号公報 Appl.Phys.Lett.、69(25)(1996)、3872〜3874頁 特開平6−260682号公報 特開平6−260683号公報 Jpn.J.Appl.Phys.,34(10B)(1995)、L1332〜L1335頁 特開平6−177423号公報 特開平6−268259号公報 英国公開特許第2250635A号公報 特公昭53−11439号公報 特開平5−63236号公報 特開平5−63236号公報 特開平5−63236号公報 特開平2−229476号公報 特開平2−229476号公報 特許第229476号公報 特開昭56−80183号公報 特開昭54−71589号公報 Appl.Phys.Lett.、68(14)(1996)、1945から1947頁 Jpn.J.Appl.Phys.、33(1994)、L1367〜L1369頁 特開平5−206519号公報 特公昭55−3834号公報 J.Appl.Phys.、Vol.34(1995)、L1332〜L1335頁 1996(平成8年)秋季第57回応用物理学会学術講演会講演予稿集No.1、講演番号8p−ZF−14、209頁 Jpn.J.Appl.Phys.,46(8)(1975)、3432 特開昭54−71589号公報 J.Appl.Phys.、47(12)(1976)、5387〜5390頁 応用物理、第60巻第2号(1991)、163〜166頁 特開平7−15041号公報
 不透明なサファイア基板を使用した発光素子において、光取出し面に透明でオーミック特性の良好な電極を形成するには、nサイドアップ構造とするのが有利である。nサイドアップ構造とする場合、低温緩衝層側にp型不純物をドープしたクラッド層が配置されることになり、その後のエピタキシャル成長過程で低温緩衝層や発光層へのp型不純物の拡散が起こり、緩衝層の機能を損ない、発光出力が上がらない原因となっている。III族窒化物半導体発光素子の母体材料となる積層構造体にあって、基板結晶上に同基板結晶と格子整合するInxGayAlzN(0≦x,y,z≦1)薄膜を備える積層構成も開示されている(特公平6−101587号公報明細書参照)。しかし、実用化されている極く一般的な積層構成は、積層構造体の構成層と基板結晶とは格子整合していない。上記の如くサファイア(Al23単結晶)を基板結晶とするのが端的な例である。このため、基板結晶とIII族窒化物半導体堆積層との間の格子不整合性を緩和するために低温緩衝層を挿入する措置が構じられている。しかし、従来の低温緩衝層は基板結晶との格子の不整合性の緩和を主たる目的として、その結晶形態や層厚などの具備すべき要件が決定されているに過ぎない。本発明が述べるp型不純物を内在するIII族窒化物半導体クラッド層を堆積する際の問題点の解決のために低温緩衝層が具備すべき結晶形態は明確とはなっていない。本発明の第1の課題は、p型不純物を内在するIII族窒化物半導体クラッド層を堆積するに適する低温緩衝層が具備すべき内部結晶組織を明らかにすることである。第2の課題は、結晶成長上内部組織的に不均質なIII族窒化物半導体発光層への、p型不純物の拡散、侵入を抑制する措置を提供することである。p型不純物の悪影響を防ぐことにより良好なnサイドアップ積層構造を達成し、透明でオーミック特性の良好なn型電極を安定して提供せんとするものである。
 即ち、本発明は格子不整合基板結晶上に窒素原子以外の元素周期律第V族元素をVとして一般式AlxGayInza1-a(但し、x+y+z=1、0≦x,y,z≦1、及び0≦a<1)で表記されるp型不純物を内在するAlxGayInza1-a下クラッド層と発光層とを、順次堆積した積層構成を含むIII族窒化物半導体発光素子にあって、p型不純物を内在するAlxGayInza1-aクラッド層の基板結晶側にAlxGayInza1-a層からなる第1の中間層を配置し、発光層側にはAlxGayInza1-aからなる第2の中間層を配置し、第2の中間層上にp型不純物の濃度を1×1018cm-3未満とするインジウム含有濃度を相違する多相構造からなる窒化ガリウム・インジウム(GaxInyN;x+y=1、0≦x,y≦1)発光層を積層し、発光層上にn型のAlxGayInza1-a上クラッド層を積層した構成を具備したIII族窒化物半導体発光素子を提供するものである。特に、上記の第1の中間層を主に単結晶体の集合体からなる層とし、第2の中間層を第1の中間層よりも配向性上の乱雑度をより小とするIII族窒化物半導体発光素子を提供するものである。
 第1の中間層は緩衝層への下クラッド層からのp型不純物の拡散を防ぐので、平滑で連続性のある表面状態に優れるp型不純物を内在するAlxGayInza1-a成長層を帰結する作用を有す。第2の中間層はp型不純物内在層からの発光層へのp型不純物の拡散を抑制する拡散阻止層と良好な表面モフォロジーを有する発光層を与える下地層としての作用を有する。このようにp型クラッド層を挟む層を一定の要件を具備するように構成することにより、良好なnサイドアップ構造となり、結果的に透明なn型オーミック電極を確実に得ることが可能となる。
 高発光出力の発光素子に適するnサイドアップ型の構造を提供できる。また、透光性電極の形成に伴う従来の技術的煩雑性を回避でき、特に単色性に優れる発光素子を提供できる。
 本発明の第1の特徴は下クラッド層として作用するp型不純物を内在するAlxGayInza1-a(但し、x+y+z=1、0≦x,y,z≦1、及び0≦a<1)層の両表面側に第1及び第2のAlxGayInza1-a層からなる中間層を配置することである。p型不純物を内在する層とは、III族窒化物半導体にアクセプターとして作用するとされる元素周期律表の第II族に属するマグネシウム、亜鉛、ベリリウム、カルシウム等をドーピングにより故意に添加してなる層、或いはこれらの元素を残留不純物として内包するいわゆるクラッド層を指す。通常第1の中間層は基板結晶とp型不純物を内在するAlxGayInza1-a層との中間に配置する。代表的な機能は第1の中間層を基板結晶表面上に配置して緩衝層として利用する例である。基板表面上に直接、堆積した低温緩衝層を介して第1の中間層を設置しても構わない。p型不純物を内在するAlxGayInza1-aクラッド層に直接接合せずとも何らかの介在層の下部に第1の中間層を配置する例もある。以下に本発明に係わる第1の中間層の配置例を基板結晶上への積層順序に従い例示する。
(1)サファイア基板/第1の中間層/p型不純物が内在するAlxGayInza1-aクラッド層。
(2)サファイア若しくは炭化珪素からなる基板/窒化ガリウム(GaN)低温緩衝層/第1の中間層/p型不純物が内在するAlxGayInza1-aクラッド層。
(3)サファイア、炭化珪素若しくはIII−V族化合物半導体からなる基板/第1の中間層/介在層/p型不純物が内在するAlxGayInza1-aクラッド層。
一般式AlxGayInza1-aで表記される第1の中間層を構成する代表的な材料には、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)や窒化アルミニウム・ガリウム混晶(AlxGa1-xN:0<x<1)及びこれらと窒化インジウム(InN)との混晶が挙げられる。
 第1の中間層はp型不純物を内在するAlxGayInza1-aクラッド層を堆積する際に下地層の役目をも果たすものである。従って、第1の中間層はp型不純物を内在するAlxGayInza1-aクラッド層の堆積時に於けるマグネシウム、ベリリウム等のp型不純物による侵食や亀裂の発生に充分耐えるものでなければならない。また、従来の低温緩衝層に付随する高温環境下で揮散するのであってはいけない。基板結晶とp型不純物を内在するAlxGayInza1-aクラッド層との格子不整合性を緩和するものでなければならない。本発明では、従来の低温緩衝層の如く非晶質を主体とするのではなく、第1の中間層はas−grown状態で単結晶体を主体として構成されるものとする。単結晶体とは第1の中間層の層厚の増加方向に層状に存在する単結晶層やこの単結晶層上に成長する単結晶の微粒の総称である。単結晶を主体とする層とは、層状であれ粒状であれその層を構成する構成要素のおおよそ50%以上が単結晶体である結晶形態を云う。単結晶体以外の構成要素は非晶質体などである。本発明の第1の中間層にあって好ましい結晶形態は下部を単結晶層とし、上部に基板結晶と略平行な格子配列を有する単結晶粒が散在してなる状態であってもよい。第1の中間層を基板結晶表面上に直接堆積した場合、第1の中間層の成長条件を適宣選択することにより、基板表面上の或る厚さに亘って存在する基板結晶の格子配列と略平行な格子配列を有する単結晶層と同層上に単結晶微粒を冠した構成からなる単結晶を主体とする第1の中間層を得ることができる。
 単結晶体を構成する原子は、非晶質(amorphous)に比較すれば相互に堅牢、強固に結束している。従って、単結晶体を主体とするは高温下に暴露された際にも容易には揮散せず残存する。これより、第1の中間層が基板表面上に直接堆積され、第1の中間層上にp型不純物を内在するAlxGayInza1-aクラッド層を配置する構成にあって、第1の中間層の残存によりp型AlxGayInza1-aクラッド層とは格子不整合の関係にある基板結晶の表面が露呈する不具合が回避される。即ち、基板結晶とp型不純物を内在するAlxGayInza1-aクラッド層との格子不整合性に起因する成長層の表面状態の劣化が防止される利点が生まれる。第1の中間層に珪素やインジウム等の結晶を硬化させる(ハードニング)元素を添加すれば、第1中間層の高温での損失を防止するに尚一層の効果を奏するものである。第1の中間層を単結晶体を主体として構成する他の利点は、p型不純物を内在するAlxGayInza1-aクラッド層からの亜鉛或いはカルシウム等のp型不純物の侵入による低温緩衝層の亀裂等の発生が抑制可能なことである。これも単結晶であるが故の構成原子相互間の結合力の強靭性に依る。即ち、発光層と基板結晶間に配置する第1の中間層を従来の緩衝層には無い単結晶を主体とする結晶形態に変更を加えることをもって、従来の緩衝層に付随する問題点は解決することが可能となる。
 本発明に係わる単結晶を主体とする第1の中間層は、常圧或いは減圧有機金属熱分解気相成長法(所謂、MOCVD或いはMOVPEなどと略称される方法)や分子線エピタキシャル成長(MBE)法或いはハロゲン若しくはハイドライド(水素化物)気相成長法(所謂、VPE法)等の気相成長法を利用して成長することができる。例えば、常圧MOCVD法により窒化アルミニウムからなる第1の中間層の形成を例にすれば、成長温度、成長雰囲気及び窒素源の供給量等の成長条件を精密に制御すれば単結晶体を主体とする第1の中間層を形成することができる。ちなみに面方位を(0001)とするc面サファイア基板結晶上に成長温度を450℃、成長雰囲気を水素のみで構成し、窒素源としてのアンモニア(NH3)ガスを雰囲気を構成する水素ガスの1/8程度の割合で供給し、尚且、20℃の恒温に保持されたアルミニウム源とするトリメチルアルミニウム((CH33Al)をバブリング(発泡)する水素ガスの流量を毎分20ccに成長条件を設定したとする。この成長条件下で3分間に亘り窒素源及びアルミニウム源の供給を継続すると層厚を約20ナノメーター(nm)とする窒化アルミニウム層が得られる。一般的な透過型電子顕微鏡(TEM)を利用する断面TEM技法に依る観察から、この窒化アルミニウム層はサファイア基板の表面上、約5nmの領域にはサファイアc面の結晶格子に略平行な格子面を保有する単結晶層として存在し、その上方には球状、紡錘状或いは多角形状等の単結晶粒が存在してなるのが判別される。即ち、上記の様な成長条件の精密な制御によって本発明の云う結晶形態を満足する第1の中間層を得ることができる。雰囲気構成ガス並びに原料ガスの流量を変更せずに成長温度を上昇させると、同一の成長時間で得られる第1の中間層の層厚は増加する。全体の層厚が増加する一方で、基板表面直上の層状単結晶の領域幅は相変わらず約5nmに留まる。即ち、成長温度の増加に伴い層状単結晶上に成長する粒状単結晶の大きさ、高さ或いは数量が増大して全体の層厚が増加する。層厚の増加と共に粒状単結晶の成長が進行する状態となると単結晶粒中で格子を基板結晶と略平行としない単結晶粒の量が増大する。層厚が増加し格子面を相互に平行としない単結晶粒が層の表面に多く存在するとなると、その上に堆積する層の成長方向が一定方向に定まらず、成長速度の異方性による相違に起因して表面の平滑状態は悪化する。平滑な成長面の表面状態に優れる堆積層を与える単結晶体を主体とする第1の中間層の層厚は窒化アルミニウムからなる場合大凡、5〜40nmの範囲である。
 第1の中間層にn型或いはp型不純物を内在させるか否かは適宣選択できる。上方に堆積するp型不純物を内在するAlxGayInza1-aクラッド層との電気伝導形の統一を図るならばp型不純物をドーピングして第1の中間層の伝導形をp型とする手段も有り得る。p型不純物としては公知のマグネシウム、ベリリウム、亜鉛、カルシウム等の第II族元素が使用できる。特に、p型の伝導性の付与にはIII族窒化物半導体でのアクセプター準位の浅さからマグネシウムが好んで使用できる。第II族不純物と共にハードニング効果を発揮する珪素等のドナー不純物をドーピングしても差し支えない。ドナー不純物としてはその他、錫(元素記号:Sn)やゲルマニウム(元素記号:Ge)等の第IV族元素及び硫黄(元素記号:S)やセレン(元素記号:Se)等の第VI族元素が使用できる。故意に不純物を添加しないアンドープであっても、第1の中間層の本質的な効果は低減しない。
 纏めれば、単結晶体を主体として構成する第1の中間層は熱的な耐性且つ化学的な耐性に優れるが故に、その後堆積するp型不純物を内在するAlxGayInza1-aクラッド層の表面状態の向上に寄与できるものである。p型不純物を内在するAlxGayInza1-aクラッド層の表面状態の向上はその上方に堆積される発光層の表面状態の改善に波及的に貢献する。本発明の第2の特徴は、p型不純物を内在するAlxGayInza1-aクラッド層から発光層へのp型不純物の侵入を抑制するのを主たる目的としてp型不純物を内在するAlxGayInza1-aクラッド層と発光層との中間にAlxGayInza1-aからなる第2の中間層を配置する。p型不純物を内在するAlxGayInza1-aクラッド層と発光層間に於ける第2の中間層の配置例を次に例示する。
(a)p型不純物を内在するAlxGayInza1-aクラッド層/第2の中間層/発光層。
(b)p型不純物を内在するAlxGayInza1-aクラッド層/第2の中間層/発光層と接合をなす接合層/発光層。
(c)p型不純物を内在するAlxGayInza1-aクラッド層/第2の中間層のその1/第2の中間層のその2/発光層など。
 第2の中間層は窒化ガリウム、窒化アルミニウム・ガリウム混晶や窒化アルミニウム・ガリウム・インジウム混晶、或いはまた窒素以外の第V族元素である砒素(元素記号:As)やリン(元素記号:P)を含む窒化砒化ガリウム(GaAsN)混晶等から構成する。第2の中間層はp型不純物を内在するAlxGayInza1-aクラッド層から発光層へのp型不純物の熱拡散等に起因する侵入を抑制するために設置する層であることから、p型不純物に対し強い親和力を保有する材料から構成するのが望ましい。代表的なp型不純物であるマグネシウムを内在するAlxGayInza1-aクラッド層に係わる第2の中間層には、窒化アルミニウム・ガリウム混晶等のアルミニウムを構成元素として含む材質が好ましい。アルミニウムとマグネシウムは親和性が高く、マグネシウムを捕獲するのに効果があるからである。マグネシウムをドーピングした窒化アルミニウム・ガリウム混晶(AlxGa1-xN:0≦x≦1)がその好例である。
 第2の中間層の層厚は発光層内部のp型不純物の総量を1018cm-3未満に維持するために、発光層内部へのp型不純物の侵入を抑制できる様に設定する。第2の中間層を窒化アルミニウム・ガリウム混晶(AlxGa1-xN:0≦x≦1)から構成する場合、窒化アルミニウム・ガリウム混晶のアルミニウムの組成比(x)は概ね、0.25(25%)以下である。好ましいxの範囲は約0.02(2%)〜約0.20(20%)である。窒化アルミニウム・ガリウムから第2の中間層を構成する場合にあって、そのアルミニウム組成比を極端に大とするとその上方に配置する窒化ガリウム・インジウム発光層へも歪等をもたらす応力が波及するため、発光層からの発光波長が変化し、長波長側へシフト(shift)を来す場合がある。また、アルミニウム組成比が大となるに伴い窒化ガリウム・インジウム発光層の表面状態がより悪化する不具合を招く。アルミニウム原子濃度にして1019cm-3程度のマグネシウムを内在する窒化ガリウム層に対するアルミニウム組成比を0.05(5%)とする窒化アルミニウム・ガリウム混晶(Al0.05Ga0.95N)からなる第2の中間層を例とすれば、望ましい層厚は約1nm〜約50nmである。第2の中間層として好ましい層厚の範囲は約5nm〜約40nmである。更に、好ましいのは約10nm〜30nmの層厚範囲である。第2の中間層の層厚が約1nmと極端に薄いと発光層へのp型不純物の侵入を抑制するに充分ではない。逆に、第2の中間層が概ね、50nmを越えて極端に厚くなると、上記の第1の中間層について述べた如く結晶格子面の配向方位を互いに異にする単結晶体が出現する確率が増す。第2の中間層は発光層の成長に当たって下地層となるものである。従って、層厚が極端に増加した第2の中間層の表面には配向方向を相互に異にする単結晶粒が露呈する事態を招き、これが発光層の表面状態の劣化を帰結する。また、第2の中間層に接合させて発光層を配置する場合を例にして、電気的な要求の面から第2の中間層の適当な層厚を例示する。特に、第2の中間層が高い抵抗を保有する結晶層であれば、発光層への動作電流の注入の容易さを考慮すればトンネル(tunnel)効果が期待される約40nm以下の層厚とすべきである。電気的に良好な伝導が付与されたドーピング結晶層であれば、層厚をトンネル効果が発揮されない程度の厚さに設定することもできるが、上述の如く極端に厚膜とすると上層の表面状態に悪化を来たし好ましくはない。
 第2の中間層を発光層の下部に挿入することに因って、p型不純物を内在するAlxGayInza1-aクラッド層内のp型不純物の発光層への侵入を抑制することができる。発光層内のp型不純物濃度を1018cm-3以下とする効果は、発色の単色性に顕著に具現される。例えば、p型不純物としてその代表であるマグネシウムを例にすれば、マグネシウムの原子濃度を1018cm-3以下に制限すればマグネシウム原子に起因する青色発光は無視できる程度に小となる。また、発光層からの主たる発光スペクトルの波長以外の領域に副次的なスペクトルが縦しんば出現すると想定してもそれらの副次的なスペクトルの強度は微弱であるため、多波長の発光をもたらすに至るのは希有である。
 良好な表面状態(表面モフォロジー)の発光層を得るために本発明では、第2の中間層に関して上記の層厚に加えその配向度を規定する。第2の中間層を構成するAlxGayInza1-a層の結晶の配向度は、第1の中間層の配向度を基準にして、それよりも良好であるとする。換言すれば、第2の中間層は第1の中間層よりも結晶の配向性(orientation)の乱雑度を小とする。これは第2の中間層上に堆積される発光層の内部結晶組織の観点から要求される仕様である。第2の中間層の配向上の乱雑度は、発光層と第2の中間層との間の介在層の有無に拘らず発光層の結晶性に波及する。配向の乱雑度を極度に大とする第2の中間層を下地として堆積した発光層の乱雑度はやはり大となる。乱雑度を大とする発光層には多数のドメインが発生する。特に発光層を熱的に拡散し易いインジウムを含有するIII族窒化物半導体層から構成すると、インジウムの各ドメインの境界に選択的に蓄積される傾向がある。即ち、発光層の内部に於けるインジウム含有相の不均等分布を招く。そもそも、粒界等に蓄積するインジウムは発光強度等の発光特性の向上に殆ど寄与せず、発光を支配するインジウム含有相の形成に必要な核の発生密度を減ずる不具合を生ずるからである。結晶の配向の乱雑度は一般的なX線二結晶回折法で定量できる。X線二結晶回折法では配向の乱雑度はX線ロッキングカーブ(rocking
curve)の半値幅(FWHM)に反映される。X線四結晶回折法に代表される微小角散乱X線回折法を利用すれば更に配向の乱雑度を精密に測定することができる。一般的な値に代表させて第1の中間層の配向の乱雑度はFWHMにして約600秒(sec.)から約1000秒である。第2の中間層のそれは約300秒から約500秒である。微小角散乱X線回折法に依る測定結果を紹介すれば、配向の乱雑度の指標である回折方位角の偏差(一般にωで表記され、モザイク(mosaic)度と呼称される。)は第1の中間層にあっては±1.0度(°)程度であり、第2の中間層のそれは±0.8度程度であるのが一般的である。第2の中間層の乱雑度がこの程度であれば、その上に直接重層させたインジウム含有発光層であっても、インジウム含有相の発生を促進するインジウム原子が粒界に捕獲される割合を低く保つことができる。
 第2の中間層の形成にあって、配向の乱雑度はその層の成長に供する原料種に依る顕著な差異は認められない。III族原料としてトリメチルガリウム((CH33Ga)、トリエチルガリウム((C253Ga)、トリメチルアルミニウム((CH33Al)、トリイソブチルアルミニウム(i−(C493Al)、V族元素としてアンモニア、メチルヒドラジン等のヒドラジン類やターシャリィブチルアミン等のアミン類を利用しても、第2の中間層の配向上の乱雑度には有位差は生じない。第2の中間層を表面の平滑性に欠け、亀裂が在る様な不連続なp型不純物を内在するAlxGayInza1-aクラッド層の上方に配置する場合、第2の中間層の配向上の乱雑度を成長速度等の成長に係わる因子をもって安定して小さく制御するのは困難である。下地(被堆積層)としてのAlxGayInza1-aクラッド層上の凹凸、亀裂等に因る表面の非平滑性が堆積層たる第2の中間層の結晶配向上の乱雑度を劣悪なものに決定づけるからである。本発明の第1の中間層の挿入によって表面状態に改善が果たされたp型不純物を内在するAlxGayInza1-aクラッド層表面上に、第2の中間層を直接重層させる場合、第2の中間層の乱雑度は主に成長温度、III族元素原料に対するV族元素の供給比率所謂、V/III比率、成長速度をもって制御できる。特に、成長速度は第2の中間層の乱雑度に影響を与える重要な因子である。成長速度を小とするに伴い第2中間層の配向の乱雑度は減少する傾向にある。従って、第2の中間層の成長時に於ける成長(堆積)速度は第1の中間層の成長速度以下に設定する。第2の中間層をアルミニウム組成比を約0.10(10%)とする窒化アルミニウム・ガリウム混晶(Al0.10Ga0.90N)から構成する場合、成長速度を1/2に減ずると上記のωには約±0.2度或いはそれ以上の減少が観測される。
 第1及び第2の中間層は同一のAlxGayInza1-a材料から構成しても構わない。第1及び第2の中間層を双方共に窒化アルミニウムから構成する例がそれに該当する。また、異種の材料から構成するのも許容される。第1の中間層を窒化アルミニウムから構成し、第2の中間層を窒化アルミニウム・ガリウム混晶(AlcGa1-cN:0≦c<1)から構成するのが第1及び第2の中間層の材質を異にする例である。AlxGayInza1-a(x+y+z=1、0≦x,y,z≦1、及び0≦a<1)で表記される材質内での選択が許容されると同様に、第1及び第2の中間層の成長は必ずしも同一温度で実施する必要はない。成長温度を同一とするのも選択の一余地である。肝要なのは、上記の如く第1の中間層にあっては単結晶体を主体として構成することであり、また、単結晶体とその上に発生する単結晶粒との構成比率の適正なる調整、即ち層厚の調整である。第2の中間層にあっては、第1の中間層に比較してより結晶の配向の乱雑度を小さくすることである。これらの構成要件を満たす成長温度は、成長方法、成長雰囲気、なによりもまして成長装置の構成等に依って微妙に変化するのはもはや常識として周知されている。従って、上記の要件を満足できる成長条件並びに成長設備環境に鑑み成長温度を適宣、選択、決定する猶予は存在する。
 第2の中間層を介して上層として堆積する発光層は、敢えて単一の組成の窒化ガリウム・インジウム層とはしなくてもよい。また、ガリウムとインジウムとを含む如くの不確実な言及をもって内部結晶組織に何等の規定がなされていない層(特開平6−196757号公報明細書参照)を発光層とするのではない。本発明の発光層はインジウム濃度を互いに相違する複数の相から構成される窒化ガリウム・インジウム層を発光層として採用する(特願平8−261044号参照)。即ち、本発明では従前の単一相からなる均質層を発光層とせずに、敢えて複数の相(phase)からなる内部結晶組織的に不均質な層から発光層を構成する。発光層内部の結晶組織の観点からすれば、従来とは明らかに異なる構成とする。
 複数相からなる不均質層とは、インジウム組成比を互いに異にする複数の相が混在することを意味している。具体的に例を示すならば窒化ガリウム・インジウム発光層と一括して云えども、その層はGaN(インジウム組成比=0に相当する。)、Ga0.10In0.90NやGa0.80In0.20Nなどインジウム組成比を相互に異にする複数の相が混在してなるインジウム組成比に関して不均一な層であることを意味する。形態的な観点から観れば、或るインジウム組成比の主たる相の内部に、それとはインジウム組成比を異にする相が略球状或いは島状の微結晶体をなして存在する場合が殆どである。この様な組織的に不均質な窒化ガリウム・インジウム層を発光層とするのは主に次の事由による。
(イ)窒化ガリウム・インジウム等の如くの非混和性の強い材料にあっては(1996年(平成8年度)秋季第57回応用物理学会学術講演会講演予稿集No.1、講演番号8p−ZF−14、209頁参照)、相分離が生じ易い。従って、この様な多相構造からなる窒化ガリウム・インジウム発光層は窒化ガリウム・インジウム混晶の熱力学的諸特性に裏付けられる様に合理的に帰結されるからである(Solid
State Commun.、11(1972)、617.)。
(ロ)不均一な組成構成の窒化ガリウム・インジウムからは強度的に優れる発光を帰結するからである(特願平8−208486号参照)。
即ち、本発明の発光層の結晶組織上の構成は、発光層を構成するIII族窒化物半導体が熱的な影響を受けて形態を変化させる現象を適格に見計らった上で規定されたものである。この規定により敢えて不自然な均質化を達成しようとする技術的な困難さから開放される。また、不均質な窒化ガリウム・インジウム発光層は例えば、MOCVD(有機金属気相成長方法)により窒化ガリウム・インジウム結晶層を成膜する際に設定される条件の一つであるインジウム気相組成比(一般には、成長環境に供給されるIII族元素原料の総量に対するインジウム原料の濃度比を云う。)、成膜温度や成膜後の過程での被熱量等の因子を調整することによりほぼ一義的に制御できるものである。要約すれば、本発明に規定されるところの発光層は、従前の不自然な「単一相からなる均質層」に比較すればより経常的に形成され得る結晶組織構造を保有するものである。
 本発明の第1及び第2の中間層と発光層とを含めた積層構成を含む発光素子を以下に例示すると共にその積層構造を模式的に図7から図8に示す。
(ア)単結晶体を主体とする窒化ガリウムからなり、層厚が約5〜約30nmの第1の中間層(102)/p型不純物としてマグネシウムをドーピングしたμm単位の層厚のGaN下クラッド層(106)/アンドープの層厚を約10nm〜30nmとする窒化アルミニウム・ガリウム混晶層からなる第2の中間層(107)/窒化ガリウム・インジウム発光層(108)/n型GaN上クラッド層(109)からなるDH構造発光部を備えた発光素子(図7参照)。
(イ)層厚を約20nmとする窒化アルミニウムからなる単結晶体を主体とする低温緩衝層(113)/層厚を約10nm前後とする窒化ガリウムからなる第1の中間層(102)/マグネシウムをドーピングした層厚を約200nm前後とする窒化ガリウム下クラッド層(106)/層厚を約15〜25nmとするアンドープの窒化アルミニウム・ガリウムからなる第2の中間層(107)/アンドープn型窒化ガリウム・インジウム発光層(108)/層厚を約10nm以下とするアンドープ窒化アルミニウム・ガリウム介在層(114)/n型GaN上クラッド層(109)からなる積層構成を備えたnサイドアップ型の発光素子(図8参照)。
(ウ)上記の(イ)の積層構造に於いて、発光層を層厚を約2nm〜約200nmとする量子井戸の量子準位とは異なる量子準位間遷移機構を利用して発光を得るアンドープ窒化ガリウム・インジウム層とする発光素子。
(エ)上記の(イ)の積層構造に於いて、アンドープ窒化ガリウム・インジウム層と不純物をドーピングした窒化ガリウム・インジウム層との多層構造からなる合計の層厚を約80nm〜約100nm或いはそれを越える層厚の発光層を備えてなる発光素子。
 本発明を第1及び第2の中間層を具備した積層構造体から構成した発光ダイオードを例として説明する。積層構造体を構成する各積層体構成層は一般的な常圧(大気圧)方式のMOCVD成長装置を利用し、次記の手順により形成した。基板(101)として直径約1インチ(直径約25mm)の厚さを約90μmとする(0001)(c面)−サファイア(α−Al23単結晶)を使用した。この結晶基板(101)を同基板(101)上に成膜を実施するためのアルカリ金属類の含有量が低い半導体工業用高純度石英反応管内の支持台(サセプター)上に水平に載置した。支持台は高純度のグラファイト素材を加工した垂直断面を楔型とするものである。反応炉の鉛直断面の形状は長方形であって、その断面積は約10.5cm2である。反応炉内を通常の油回転式真空ポンプを具備した真空排気経路を介して真空に排気した。約10-3トール(Torr)の真空度に到達して約10分間、同真空度の状態に保持した後に約3リットル/分の流量の精製アルゴンガス(Ar)を反応炉内に流通させて炉内の圧力をほぼ大気圧に復帰させた。
 約5分間に亘り反応炉内を精製された高純度のアルゴンガスで掃気した後、アルゴンガスの反応炉への供給を停止した。代わりに露点を約マイナス90℃とする精製水素ガス(H2)の反応炉内への供給を開始した。水素ガスの流量は約8リットル/分に電子式質量制御計(所謂、マスフローコントロラー(MFC))で維持した。然る後、垂直断面を円形とする反応炉の外周に設けた円状に巻かれた高周波加熱コイルに一般的な高周波電源から周波数400キロヘルツ(kHz)の高周波電源を投入した。これにより、基板(101)の温度を室温(約25℃)から450℃に上昇させた。基板(101)の温度は上記の支持台の中腹に搾孔された直径約5mmの貫通孔に挿入したモリブデン(Mo)シース型の白金−白金・ロジウム合金熱電対(日本工業規格JIS−R規格に準拠した熱電対)により測温した。基板温度は熱電対から発生される熱起電力信号を入力するPID方式の市販の温度制御器により±1℃以内に精密に制御した。基板(101)の温度が450℃に到達してから約20分経過して、窒素源とした液化アンモニアガスの気化により発生したアンモニアガス(NH3)を毎分1リットルの割合で反応炉への供給を開始した。同時に反応炉へアルミニウム(Al)源としてのトリメチルアルミニウム((CH33Al)を供給した。トリメチルアルミニウムを収納した316ステンレス鋼製バブラー(発泡)容器はペルチェ効果を利用した電子式恒温槽で20℃に保持した。この容器内のトリメチルアルミニウムを毎分20ccの流量の水素ガスでバブリングし、トリメチルアルミニウムの蒸気を随伴する水素バブリングガスを反応炉へ供給することをもってトリメチルアルミニウムの供給となした。このトリメチルアルミニウムを随伴する水素ガスとアンモニアガスの反応炉への供給を正確に6分間継続した。これより、層厚を20nmとする窒化アルミニウムからなる第1の中間層(102)を形成した。第1の中間層(102)の成長は反応炉へのトリメチルアルミニウムの蒸気を随伴する水素ガスの供給の停止をもって終了した。基板と第1の中間層からなる積層体を一旦室温迄冷却し、一部の切片を第1の中間層の内部結晶構造の同定並びに結晶配向の乱雑度の測定に供した。
 as−grown状態で第1の中間層(102)の内部結晶組織を一般的な断面TEM技法で観察した。断面TEM観察に先立ち、アルゴン(Ar)イオンを用いるスパッタリングで観察試料を薄層化した。加速電圧を200キロボルト(KV)として撮像された断面TEM像を図1に模式的に示す。基板(101)の表面から約5nmの厚さの領域には単結晶層(103)が存在していた。単結晶層(103)の内部に観測される格子像(104)は基板(101)の格子像に略平行に配列しているのが認められた。単結晶層(103)の上方には基板(101)及び単結晶層(103)内の格子像(104)と略平行の格子像(104)を内包する単結晶粒(105)が存在していた。以上の観察結果を総合すれば、単結晶層は全厚の約25%を占有し、残部の厚さにして約15nmの領域は単結晶粒が主に占有する領域であった。この構成は従来の一部の低温緩衝層で観察されている層のほぼ全域が層状の単結晶となっているのとも構成を異にするものであった(J.Electron.Mater.、24(4)(1995)、241〜247頁参照)。
 同じくas−grown状態で四結晶X線回折法を利用して第1の中間層を構成する窒化アルミニウム層の配向の乱雑度を測定した。モザイク度は散乱方位角(記号ωで一般に表記される。)にして概ね、±1.0度(°)であった。
 上記の積層体の残部をサセプター上に載置して再び反応炉内に挿入した。然る後、反応炉への4リットル/分の流量をもってアルゴンガスの供給を開始した。高周波コイルに印加する電力量を増し、基板(101)の温度を室温から1050℃に平均して約100℃/分の速度で昇温した。中途、基板(101)の温度が450℃を通過した時点で流量を1リットル/分とするアンモニアガスの反応炉への供給量を開始した。熱電対で測温される基板温度が1050℃となった時点で直ちにアンモニアの反応炉への供給量を毎分1リットルから毎分3.5リットルへと電子式質量流量計をもって増加させた。同時にアルゴンガスの供給量を4リットル/分より1.3リットル/分に減じると共に、水素ガスの反応炉への供給を毎分1.3リットルの流量をもって再開した。これにより、高純度石英管から構成される反応炉へは合計して6.1リットル/分の水素、アルゴン及びアンモニアからなる混合ガスが流通する状況とした。基板(101)の温度が1050℃に到達して5分間待機した後、第1の中間層(102)上には、マグネシウムをドーピングした窒化ガリウムからなる上クラッド層(106)を重層した。ガリウム源にはトリメチルガリウムを使用した。トリメチルガリウムを収容する316ステンレス鋼製バブラー容器は電子式恒温槽により正確に0℃に保持した。バブリング用且つトリメチルガリウムの蒸気の随伴用の水素ガスの流量は毎分30ccとした。マグネシウムのドーピング源にはビス−メチルシクロペンタジエニルマグネシウム(bis−(CH3542Mg)を使用した。マグネシウムドーピング源を収容するステンレス鋼製のシリンダー容器は電子式恒温槽により45℃の恒温に保持した。同温度に保持して液化させたビス−メチルシクロペンタジエニルマグネシウム内にはバブリング用ガスとして電子式質量流量計により流量を毎分20ccに精密に調整して制御された水素ガスを流通した。ガリウム源及びマグネシウム源の蒸気を随伴する水素ガスの反応炉への供給を60分間に亘り継続して層厚を3.2μmとするマグネシウムを内在した窒化ガリウム層(106)を形成した。ガリウム源並びにマグネシウム源の反応炉への供給を停止することをもってマグネシウムドープ窒化ガリウム層(106)の成長を終了した。
 p型不純物を内在する窒化ガリウム層(106)の成長が終了した後は基板(101)の温度を1050℃に維持したままで、尚且キャリアガスの混合組成並びに流量とアンモニアガスの流量を不変としたままで3分間待機した。待機後、上記のアルミニウム源とガリウム源を反応炉に供給して第2の中間層(107)の成長を開始した。この際、トリメチルガリウムをバブリングし、トリメチルガリウムの蒸気を随伴する水素ガスの流量は毎分5ccとした。また、トリメチルアルミニウムをバブリングし、トリメチルアルミニウムの蒸気を随伴する水素ガスの流量は毎分10ccに設定した。トリメチルガリウム並びにトリメチルアルミニウムの蒸気を随伴する水素ガスの反応炉への供給を正確に3分間に亘り継続して層厚を25nmとするアンドープの第2の中間層(107)を形成した。第2の中間層(107)の成長はIII族原料の蒸気を随伴する水素バブリングガスの反応炉への供給を停止することをもって終了した。
 第2の中間層(107)の成長を終了した後は、同層(107)の結晶の配向の乱雑度及びアルミニウム組成比の測定に付すために室温迄冷却した。乱雑度及びアルミニウム組成比は第1の中間層の場合と同様に上記の四結晶X線回折法を利用して測定した。モザイク度はωにして±0.5度の範囲内にあった。アルミニウム組成比については窒化ガリウム層(106)からの回折X線ピークが出現する位置を基準にした離角の程度から約0.06(6%)程度であると判定された。この結果を基に第2の中間層(107)は第1の中間層(106)に比較して配向上の乱雑度が小さい、アルミニウム組成比を0.06とする窒化アルミニウム・ガリウム混晶(Al0.06Ga0.94N)からなるものと同定された。
 測定終了後、第2の中間層(107)を最表層とする積層体を反応炉内に挿入し、アルゴン雰囲気内に於いて室温から890℃に平均して100℃/分の速度で昇温した。基板(101)の温度が890℃に安定する迄3分間待機した。然る後、流量を毎分3.0リットルとするアルゴンと同じく毎分3.0リットルとするアンモニアガスから構成される成長雰囲気内へのガリウム源及びインジウム源の供給を開始して第2の中間層(107)上へのアンドープの窒化ガリウム・インジウム(Ga0.94In0.06N)発光層(108)の成長を開始した。ガリウム(Ga)源には上記のトリメチルガリウムを利用し、ガリウム源のバブラー容器の温度は0℃とした。トリメチルガリウムの蒸気を随伴するためのバブリング用水素ガスの流量は電子式質量流量計により毎分5ccに制御した。インジウムの供給源にはトリメチルインジウム((CH33In)を使用した。トリメチルインジウムは内容積を約100ccとするステンレス鋼製のシリンダー容器内に収納し、同シリンダー容器は電子式恒温槽を利用して正確に35℃に保持した。インジウム源を収納するシリンダー容器内には、昇華したトリメチルインジウムの蒸気を反応炉内に随伴するために毎分13.3ccの流量の水素ガスを流通させた。反応炉内に供給するガリウム源とインジウム源の総量に対するインジウム源の供給量の比率所謂、インジウムの気相組成比は0.10となった。インジウムの気相組成比は0℃に於けるトリメチルガリウムの蒸気圧を約64.4トール(Torr)とし、35℃に於けるトリメチルインジウムの蒸気圧を3.0トールとして求めた。窒素(N)源となすアンモニアガスの流量を毎分3.5リットルに、またアルゴンガスの流量を2.6リットル/分に維持したままで正確に15分間に亘りIII族、V族元素原料及び水素、アルゴンキャリアガスの供給を継続しての層厚を6nmとするアンドープの窒化ガリウム・インジウム発光層(108)を成膜した。
 上記のガリウム源及びインジウム源の反応炉への供給を中断して発光層(108)の成膜を終了させた。アルゴン及びアンモニア両ガスの流量を上記の値に保持した状態で支持台の中腹に挿入した熱電対からの熱起電力信号を基に高周波コイルに印加する高周波電源からの電力量を調節しながら基板(101)の温度を890℃から1050℃に昇温した。昇温過程での不用意に緩やかな昇温に因るインジウムを含有する発光層(108)の揮散を抑制する目的で890℃から1050℃へは3分間で昇温した。基板(101)の温度が1050℃に到達した後、直ちにアルゴンの流量を毎分1.3リットルに減じると同時に流量を毎分1.3リットルとする水素ガスを流通させた。これより、流量を合計して6.1リットル/分とする水素−アルゴン−アンモニア混合ガスからなる成長雰囲気を創出した。瞬時にして水素及びアルゴンの流量の調整を終了した後、間断なく発光層(108)上へ珪素(Si)ドープn型窒化ガリウム層(109)を成長させた。n型窒化ガリウム層(109)の成長時には、0℃に保持し液化したトリメチルガリウムに毎分30ccの流量の水素ガスでバブリング操作を施し、トリメチルガリウムを随伴した水素バブリングガスを反応炉内に供給した。珪素は高純度の水素で体積濃度にして約1ppmに希釈されたジシラン(Si26)をドーピング源として添加した。ジシランドーピングガスの流量は電子式質量流量計により毎分20ccに設定した。ガリウム源の蒸気を随伴する水素バブリングガス並びに珪素ドーピング源ガスの反応炉への供給を正確に6分間に亘り継続して層厚を300nmとするSiドープn型窒化ガリウム層(109)を得た。
 n型窒化ガリウム層(109)の成膜を停止するためにガリウム源の反応炉内への流通を中断した。同時に珪素ドーピングガス及び水素ガスの反応炉内への供給を停止した。アンモニアガスの流量は毎分3.5リットルに維持した。これより、反応炉内に流通するガス種をアルゴンガスとアンモニアとした。反応炉内の雰囲気をアルゴンとアンモニアガスで構成した状態で、高周波コイルに印加する高周波電力量を低減して基板(101)の温度を1050℃から約2分間で950℃に低下させた。基板(101)の温度が950℃近傍となった時点で反応炉内に流通するアルゴンの流量を毎分1.3リットルから2.6リットルへ増量した。アルゴンとアンモニアから構成される混合雰囲気内で950℃から650℃へは毎分15℃の速度で20分間を要して降温した。650℃に降温した時点でアンモニアガスの反応炉内への供給を遮断し、反応炉に流通するガスをアルゴンのみとした。係る状態で室温迄冷却した。
 冷却後、一般的な電解C−V法により測定したn型窒化ガリウム層(109)の表面のキャリア濃度は約1×1018cm-3であった。積層構造体の一部切片を使用して2次イオン質量分析法(SIMS)により構成元素並びにドーパントの深さ方向の濃度分布を測定した。特に、第2の中間層と発光層との界面近傍の領域並びに発光層内部のマグネシウムの分布及び濃度に注目して測定した。図2に掲示する如くマグネシウムドープ窒化ガリウム層(106)内のマグネシウムは層厚方向にほぼ一様に分布しており、その濃度は約2×1019cm-3であった。第2の中間層(107)内ではマグネシウムドープ窒化ガリウム層(106)と第2の中間層(107)との接合界面から発光層(108)との接合界面に向けて指数関数的に減少するのが認められた。第2の中間層(107)と発光層(108)との接合界面では、マグネシウム濃度は約6×1017cm-3に減じていた。発光層(108)の内部では、マグネシウムの濃度は珪素ドープn型窒化ガリウム層(109)側に向けて減少しており、おしなべて約4×1017cm-3となった。
 上記の成長操作で得た積層体の断面をアルゴンイオンでスパッタリング処理を施し、加速電圧200KVとする断面TEM観察に適する層厚とした。第1の中間層(102)の内部構造を観察すると、as−grown状態ではサファイア基板(101)との界面近傍のみの領域が層状の単結晶であると認められたものが、積層体の形成を終了した後は第1の中間層(102)のほぼ全領域に亘り層状の単結晶と化していた。第1の中間層(102)の内部には亀裂等に因り層の連続性が損なわれている領域は認知されず、また、マグネシウムをドーピングした窒化ガリウム層(106)との接合界面もほぼ平坦であった。第1の中間層(102)とマグネシウムドープ窒化ガリウム層(106)との接合界面に端を発すると見受けられる明視野断面TEM像上に線状の黒色コントラストとして撮像される多くの転位が第2の中間層(107)とマグネシウムドープ窒化ガリウム層(106)との接合界面で途絶しているのも視認された。第2の中間層(107)は層厚方向のほぼ全域に亘り層状の単結晶から構成されていた。窒化ガリウム・インジウム(Ga0.94In0.06N)発光層(108)の部分を撮像した断面TEM像からは、この層(108)が不均質な組織からなるものであると認められた。形態的に記述すれば層状体の中に略球状の微結晶体が存在するものであった。略球状の結晶体の直径は撮像された円形状のコントラストから最大でも約3nmであった。また、結晶体は発光層の内部の特定領域に偏析せず、ほぼ一様に分布していた。断面TEM像に撮像された微結晶体の数は横50nmで縦(層厚)が約6nmの撮像面積で概ね、2個であった。
 薄層化した上記の試料の断面を一般的な分析用電子顕微鏡で観察して発光層(108)の内部の組成を解析した。インジウムの濃度を分析するために行ったEPMA(lectron−robe icro−nalysis)の分析結果からは微結晶体には他の領域所謂、母相の内部に比較してより多くのインジウムが含有されているのが認められた。母相からもインジウムの特性X線に起因すると推定される信号(signal)が検知はされるものの、S/N比が低くその信号を明確にインジウムの特性X線信号とは認知出来なかった。即ち、母相を構成するのはインジウム濃度が低いため殆ど窒化ガリウムの組成に極めて近いものであると判断された。検出されるインジウムのkα特性X線の強度から判断すれば、微結晶体の相互間にもインジウム濃度の相違が%の単位で存在することを教示する結果が得られたが、濃度の相違を正確に定量するにはEPMA分析器の検出性能上至らなかった。しかし、微結晶体に含有するインジウムの濃度は最大でも数%であり、10%を越えてインジウムを含む微結晶体は希有であった。また、微結晶体とその周囲の母相との境界には歪等に因ると思われる結晶格子の配列が乱れた領域が存在した。
 nサイドアップ構造型の上記の積層構造体を母体材料として発光ダイオードを作製した。p型電極(正電極)(110)を形成する予定領域のマグネシウムドープ窒化ガリウム層(106)上に在る第2の中間層(107)、発光層(108)及びn型窒化ガリウム層(109)をアルゴン−メタン(CH4)−水素混合ガスを使用するマイクロ波プラズマエッチング技術によりエッチングして除去した。このエッチングはマグネシウムをドーピングした窒化ガリウム層(106)の表層部を約150nm除去するに至る迄継続した。然る後、エッチングにより露呈したマグネシウムドープ窒化ガリウム層(106)の表面に透光性、透過性の電極を付帯しないパッド電極(110)を形成した。パッド電極(110)は金・ベリリウム(Au・Be)合金と金(Au)との重層電極とした。一方、最表層であるSiドープn型窒化ガリウム層(109)上には、n型伝導を呈するインジウム・錫酸化物(ITO)膜からなる膜厚を約200nmとする透光性電極(111)を被着した。透光性電極(111)は上記のエッチングによりメサ型に残存させたn型層(109)のほぼ全域に形成した。透光性電極(111)の表面上に直接、パッド電極を形成する方法もあるが、本実施例では透光性電極(111)の一部を除去してアルミニウムからなるn型(負電極)用のパッド電極(112)を形成した。即ち、アルミニウムパッド電極(112)の底部はn型窒化ガリウム層(109)の表面に接地させた。アルミニウムパッド電極(112)とITO透光性電極(111)との剥がれ強度はほぼ同等であった。ちなみに、約200nmの膜厚のITO透光性電極の波長450nmに対する透過率は、膜厚を約25nmとする従来の金・ニッケル(Au・Ni)透光性金属薄膜の約43%に対し約2倍以上の高い透過性を示した。図3はLEDの平面模式図である。図4にその断面構造を模式的に示す。
 隣接する電極間((110)及び(112))間に直流電圧を印加した。1ボルト(V)未満の直流電圧例えば、0.4Vの印加により既に青色の発光が得られた。印加する電圧値の増大と共に青色発光の強度は増加した。一般の積分球を利用した測定では6.0Vの直流電圧を印加し、順方向電流を38ミリアンペア(mA)通流した際の発光出力は2.0ミリワット(mW)となった。一方、通常のフォトルミネッセンス測光装置に付属する分光器を利用した発光スペクトルの測定では、主たる発光スペクトルの発光波長が452nmであるのが知れた。主たる発光スペクトルの他には波長365nm近傍の窒化ガリウムのバンド(band)端発光に起因すると考慮される以外のスペクトルの出現は認められなかった。この云わば副次的なスペクトルの発光強度は主たるスペクトルのそれに比較すれば優に1/100未満の非常に微弱なものであった。また、主たる発光スペクトルの半値幅は室温で130ミリエレクトロンボルト(meV)と狭帯化されていた。このため、LEDは強度的にも単色性にも優れたものとなった。
 両電極間の電流−電圧特性(I−V特性)には整流性がみられた。逆方向の電流を10マイクロアンペア(μA)とした際の逆方向耐圧(電圧)は10Vを越えるものとなった。これより、マグネシウムをドーピングした窒化ガリウム層(106)は上記の成長期間中により低抵抗となり、整流性を与えるに充分なpn接合が帰結されることが示唆された。
 (比較例)第2の中間層のみを削除したことのみを相違し、他は上記実施例と同一の構成からなる積層構造体を形成した。換言すれば、上記の実施例に記載の条件に従い第2の中間層が省かれ、マグネシウムをドープした窒化ガリウム層(106)と窒化ガリウム・インジウム発光層(108)との直接接合を含む積層構造体を得た。図5に積層構造体の断面構造を模式的に示す。第2の中間層を削除した理由は、第2の中間層の有無に依る積層構造体の表面状態並びに発光層へのp型不純物(マグネシウム)の侵入の度合いの差異を示すためである。一般的な微分干渉型の光学顕微鏡による観察によれば、積層構造体の表面には多数の半球状の突起が存在した。この突起の発生起源を探るため積層構造体の最表層のn型窒化ガリウム層(109)よりプラズマエッチングによるステップエッチングを繰り返し、逐次表面を観察した。その結果、半球状の突起は発光層の領域で既に発生しているのが視認され、発光層の表面も平滑ではなく波状の“うねり”のあるものとなった。しかし、発光層(108)の直下のマグネシウムドープ窒化ガリウム層(106)の表面近傍の領域には半球状の突起は殆ど認めらず、また、亀裂もなく平滑で平坦な表面となっていた。これより、突起は発光層(108)を起源として多く発生しており、従って、発光層の表面状態自体をも損なうものと判断された。図6にはSIMSによるマグネシウム原子の深さ方向の分布を提示する。第2の中間層を挿入した上記実施例の場合と明らかに異なり、マグネシウムの発光層(108)への顕著な侵入が認められた。発光層(108)内のマグネシウムの濃度は約6×1018cm-3と定量された。
 実施例と同様の電極構成のLEDを作製した。発光強度自体、実施例に比較すれば弱く約0.2〜0.6mWと実施例のLEDのそれに比較すれば約1/3未満であった。また、主たる発光スペクトルの波長は実施例とほぼ同じく約440nm前後であったものの、波長約425〜約430nmの領域並びに波長約400nmの領域に副次的な発光が発生した。このため、実施例のLEDの発光は青色であると観測されたが、比較例のLEDはむしろ白みを帯びた青紫色となり、単色性にものとなった。
第1の中間層の内部の結晶構造を示す断面TEM像の一例である。 実施例のマグネシウム濃度の深さ方向の分布を示すSIMS分析結果である。 実施例に記載のLEDの平面模式図である。 図3に示す平面模式図に於ける破線A−A’に沿った断面構造を示す模式図である。 比較例に於ける積層構造体の断面模式図である。 比較例に於けるマグネシウムの深さ方向の分布を示すSIMS分析結果である。 本発明の他の実施態様の断面模式図である。 本発明の他の実施態様であって、特に発光層上に介在層を備えた積層構造体の断面を模式的に示す図である。
符号の説明
(101) 基板
(102) 第1の中間層
(103) 第1の中間層内部の単結晶層
(104) 断面TEM像に撮像される結晶格子像
(105) 第1の中間層内部の単結晶粒
(106) 下クラッド層(Mgドープp型窒化ガリウム)
(107) 第2の中間層(窒化アルミニウム・ガリウム)
(108) 発光層(窒化ガリウム・インジウム)
(109) 上クラッド層(Siドープn型窒化ガリウム)
(110) p型パッド電極
(111) 透光性n型電極
(112) n型パッド電極
(113) 低温緩衝層
(114) 介在層

Claims (27)

  1. 基板結晶上にAlxGayInza1-a層(但し、Vは窒素原子以外の元素周期律第V族元素、x+y+z=1、0≦x,y,z≦1、0≦a<1)からなる第1の中間層、該中間層上に一般式AlxGayInza1-aで表わされるクラッド層、窒化ガリウム・インジウム(GaxInyN;x+y=1、0≦x,y≦1)発光層及びAlx1Gay1Inz1a11-a1層(但し、Vは窒素原子以外の元素周期律第V族元素、x1+y1+z1=1、0≦x1,y1,z1≦1、0≦a1<1)を順次積層し電極を付した構成を具備したIII族窒化物半導体発光素子であって、第1の中間層は上記基板と接合する下部を単結晶層とし、その上部を上記結晶基板の表面に略平行な格子配列を有するAlGaInN(0≦X≦1,0≦Y≦1,0≦Z≦1、且つX+Y+Z=1)の単結晶体から構成され、発光層はインジウム組成を相違する複数の不均質層からなることを特徴とするIII族窒化物半導体発光素子。
  2. 発光層内の不均質層が、略球状の微結晶体であることを特徴とする請求項1に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
  3. 微結晶体の周囲に歪みが存在することを特徴とする請求項1または2に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
  4. 発光層が量子井戸構造であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
  5. 井戸層の層厚が、2nm〜200nmの範囲内であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
  6. 発光層を、アンドープの窒化ガリウム・インジウム(組成式GaInN:0≦Y≦1,0≦Z≦1、且つY+Z=1)層と、不純物をドープしたGaInN(0≦Y≦1,0≦Z≦1、且つY+Z=1)層との多層構造から形成することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
  7. クラッド層が、p型不純物をドープした層であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
  8. クラッド層と発光層の間に、AlxGayInza1-a(但し、Vは窒素原子以外の元素周期律第V族元素、x+y+z=1、0≦x,y,z≦1、0≦a<1)からなる第2の中間層を有することを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
  9. 第2の中間層の内部では、マグネシウム濃度が発光層側に向けて指数関数的に減少していることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
  10. 発光層が、p形不純物の濃度を1×1018cm-3未満とするインジウム含有濃度を異にする多層構造からなることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
  11. Alx1Gay1Inz1a11-a1層がn型層であることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
  12. 第1の中間層に含まれる単結晶層の上方には、球状、紡錘状あるいは多角形状の単結晶粒が存在することを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
  13. 第1の中間層の配向の乱雑度が、散乱方位角で±1.0度以内であることを特徴とする請求項1〜12の何れか1項に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
  14. 第1の中間層を、AlGaInN(0≦X≦1,0≦Y≦1,0≦Z≦1、且つX+Y+Z=1)で構成することを特徴とする請求項1〜13の何れか1項に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
  15. 第1の中間層の層厚が、5〜40nmの範囲内であることを特徴とする請求項1〜14の何れか1項に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
  16. 第1の中間層に含まれる単結晶層の層厚が5nm以下であることを特徴とする請求項1〜15の何れか1項に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
  17. 第1の中間層が窒化ガリウムであることを特徴とする請求項1〜16の何れか1項に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
  18. 第1の中間層が窒化アルミニウムであることを特徴とする請求項1〜17の何れか1項に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
  19. 第2の中間層を、AlGaInN(0≦X≦1,0≦Y≦1,0≦Z≦1、且つX+Y+Z=1)で構成することを特徴とする請求項1〜18の何れか1項に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
  20. 第2の中間層を、層厚が10nm〜30nmの範囲内の窒化アルミニウム・ガリウム(組成式AlGaN:0≦X≦0.25,0≦Y≦1,0、且つX+Y=1)で構成することを特徴とする請求項1〜19の何れか1項に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
  21. 第1の中間層と第2の中間層とで組成が相違することを特徴とする請求項1〜20の何れか1項に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
  22. クラッド層が窒化ガリウムであることを特徴とする請求項1〜21の何れか1項に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
  23. n型のAlxGayInza1-a層がn型の窒化ガリウムであることを特徴とする請求項1〜22の何れか1項に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
  24. n型のAlxGayInza1-a層のドーパントが珪素(元素記号:Si)であることを特徴とする請求項1〜23の何れか1項に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
  25. n型のAlxGayInza1-a層のドーピング源としてジシラン(分子式:Si)を用いることを特徴とする請求項1〜24の何れか1項に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
  26. 基板結晶がサファイアであることを特徴とする請求項1〜25の何れか1項に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
  27. 第1の中間層を、常圧(略大気圧)下で有機金属熱分解(MOCVD)法により気相成長させることを特徴とする請求項1〜26の何れか1項に記載のIII族窒化物半導体発光素子の製造方法。
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