JP2004087831A - 配線基板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】電気絶縁材料から成る基板1と、Au、Ag、Cu、Pd、Ptの少なくとも1種より成り、前記基板1に同時焼成により形成され、かつ直径が100μm以上のアルミニウム製ボンディングワイヤ5が接合される領域を有する配線層2と、前記配線層2の少なくともボンディングワイヤ5が接合される領域に被着され、厚さが4μm乃至13μm、硬さがビッカース硬度で200Hv以上のNiから成る被覆層6とで形成された配線基板4。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体素子や容量素子、抵抗器等の電子部品が搭載される配線基板に関し、より詳細には大きな電流の流れを許容する直径の大きなボンディングワイヤが配線層に接続される配線基板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体素子や容量素子、抵抗器等の電子部品が搭載される配線基板は酸化アルミニウム質焼結体等の電気絶縁材料から成り、表面に電子部品搭載部を有する基板と、該基板に形成されたタングステン、モリブデン等の高融点金属材料から成る配線層とで構成されており、基板の搭載部に半導体素子や容量素子、抵抗器等の電子部品を搭載するとともに各電子部品の電極を配線層にボンディングワイヤを介して電気的に接続するようになっている。
【0003】
かかる配線基板は、配線層の一部を外部電気回路基板の配線導体に錫−鉛半田等の低融点ろう材を介し接続することによって外部電気回路基板上に実装され、同時に配線基板に搭載されている電子部品の各電極が所定の外部電気回路に電気的に接続されることとなる。
【0004】
なお、前記電子部品の各電極を配線層に接続するボンディングワイヤの材料としては、一般にアルミニウム、金が使用されており、特に大電流を流すためにボンディングワイヤの径を大きくする必要があるような場合には経済性を重視してアルミニウム製のボンディングワイヤが多用される。
【0005】
また前記配線層と電子部品の電極とのボンディングワイヤを介しての接続は、一般に超音波ボンダーを使用することによって行われており、具体的には配線層の表面にボンディングワイヤの一端を当接摺動させ、ボンディングワイヤと配線層表面との間に摩擦エネルギーを発生させるとともに該摩擦エネルギーでボンディングワイヤと配線層表面部分との間に金属拡散を行わせることによってボンディングワイヤは配線層に接続される。
【0006】
この場合、従来のボンディングワイヤの直径は約30μm程度であり、ボンディングワイヤは配線層の表面に対して約30gf〜50gf(0.294N〜0.49N)の荷重で押し付けられ、摺動により摩擦エネルギーが効率よく発生するようにされている。
【0007】
更に前記配線基板の配線層は、通常、その表面に平均の厚さが約3μmのNiから成る被覆層がめっき法等により被着されており、超音波ボンダーを使用してのボンディングワイヤの接続性を良好としている。なお、このようなめっき法等により被着されるNiから成る被覆層は、通常、粗結晶体皮膜であるため、その硬さはビッカース硬度で約150Hv程度である。
【0008】
しかしながら、この従来の配線基板においては、タングステンやモリブデン等で形成されている配線層の電気抵抗値が高く、配線層を伝わる電気信号に電圧降下を招来させて配線層に接続されている半導体素子等の電子部品に電気信号を正確に入出力させることができないという欠点があった。特に配線層を伝わる電気信号の電流値が大きくなるほど、この欠点が顕著となる。
【0009】
そこで上記欠点を解消するために、配線層をCu(銅)やAg(銀)、Au(金)等の電気抵抗値が低い金属材料で形成した配線基板が提案されている。
【0010】
かかる配線基板によれば、配線層が電気抵抗値の低いCuやAg、Au等で形成されていることから配線層に電気信号を伝搬させた場合、配線層で電気信号に大きな電圧降下を招来することはなく電子部品に電気信号を正確に伝えることが可能となる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近時、配線基板はECU(Electronic Control Unit)用の基板等、約5A以上という大電流の電気信号を流す必要のある用途での使用が増加しつつあり、この場合、配線基板上に搭載されている電子部品に大電流を流すために配線層と電子部品とを接続させるボンディングワイヤの直径を100μm以上と非常に大きくする必要があり、このような直径の大きなボンディングワイヤを超音波ボンダーにより配線層に接続させようとすると、配線層と基板との間で亀裂やハガレ等の不具合が発生するという欠点が新たに発生するようになってきた。
【0012】
このように配線層と基板との間で亀裂やハガレ等の不具合が発生する原因としては、直径が100μm以上と大きなボンディングワイヤを配線層に接続する場合、ボンディングワイヤと配線層との間に大きな摩擦エネルギーを発生させる必要があり、この大きな摩擦エネルギーを発生させるためにボンディングワイヤを配線層表面に対して約90gf〜600gf(0.882N〜5.88N)という非常に大きな荷重をかけなければならず、この大きな荷重が配線層と基板との界面に作用すること、ボンディングワイヤと配線層との摺動にともなって発生する大きな機械的応力が配線層と基板との界面に作用すること、配線層の表面を被覆するNiから成る被覆層の厚さが平均で約3μm程度と比較的薄く、機械的な応力を吸収する作用が小さいため前記荷重やボンディングワイヤと配線層との摺動にともなって発生する機械的応力が被覆層で吸収・緩和されずそのまま配線層と基板との界面に作用すること、前記被覆層の硬さがビッカース硬度で約150Hv程度と比較的小さいためボンディングワイヤを配線層に押し付ける大きな荷重で被覆層が変形し、この荷重がほとんど遮断されることなく配線層と基板との界面に伝わりやすいこと等が原因であると考えられる。
【0013】
本発明は、上記欠点に鑑み案出されたもので、その目的は、配線層に直径が100μm以上と大きな径のアルミニウム製ボンディングワイヤを、配線層と基板との間に亀裂やハガレ等の不具合が発生することなく、強固に接続させることができる配線基板を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の配線基板は、電気絶縁材料から成る基板と、Au、Ag、Cu、Pd、Ptの少なくとも1種より成り、前記基板に同時焼成により形成され、かつ直径が100μm以上のアルミニウム製ボンディングワイヤが接続される領域を有する配線層と、前記配線層の少なくともボンディングワイヤが接続される領域に被着され、厚さが4μm乃至13μm、硬さがビッカース硬度で200Hv以上のNiから成る被覆層とで形成されたことを特徴とするものである。
【0015】
本発明の配線基板によれば、配線層がAu(金)、Ag(銀)、Cu(銅)、Pd(パラジウム)、Pt(白金)の少なくとも1種より成り、低電気抵抗であることから配線層に電子信号を伝搬させた際、配線層で電気信号に大きな電圧降下を招来することはなく電気信号を正確に伝えることができる。
【0016】
また本発明の配線基板によれば、前記配線層のボンディングワイヤが接続される領域に、厚さが4μm乃至13μm、硬さがビッカース硬度で200Hv以上のNiから成る被覆層を被着させ、被覆層の厚さを4μm乃至13μmと厚くしたことから配線層に直径が100μm以上と大きなボンディングワイヤを接続させる場合、ボンディングワイヤを配線層表面に押し付ける荷重、ボンディングワイヤと配線層との摺動にともなって発生する機械的応力は被覆層で吸収・緩和されて小さくなり、また同時に被覆層の硬さをビッカース硬度で200Hv以上と硬くしたことから上記の荷重で被覆層が変形して大きな荷重が配線層と基板との界面に伝わることを効果的に遮断することが可能となり、その結果、配線層と基板との界面に大きな力が作用することはなく、配線層と基板との間で亀裂やハガレ等の不具合が発生するのを有効に防止して配線層を基板に強固に接合させておくことができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
次に本発明を添付図面に基づき詳細に説明する。
図1及び図2は本発明の配線基板をECU(Electronic Control Unit)基板等の半導体素子搭載用の基板に適用した場合の一実施例を示し、1は基板、2は配線層である。この基板1と配線層2とで半導体素子3を搭載するための配線基板4が形成される。
【0018】
前記配線基板4の基板1は半導体素子3を支持する支持部材として作用し、上面の略中央部に半導体素子3がガラス、ろう材、樹脂等の接着材を介して取着固定される。
【0019】
前記基板1は、ガラスセラミック焼結体や結晶性ガラス、マンガン化合物を添加すること等により1200℃の低温焼成を可能とした酸化アルミニウム質焼結体等の電気絶縁材料から成り、例えば、ガラスセラミック焼結体から成る場合であれば、酸化珪素、酸化ホウ素、酸化カルシウム等のガラス粉末と、酸化アルミニウム、ムライト等のセラミック粉末とから成るガラスセラミック原料粉末に適当な有機バインダ、溶剤等を添加混合して泥漿物を作るとともに該泥漿物をドクターブレード法やカレンダーロール法を採用することによってガラスセラミックグリーンシート(ガラスセラミック生シート)と成し、しかる後、前記ガラスセラミックグリーンシートに適当な打ち抜き加工を施すとともに必要に応じてこれを複数枚積層し、約900℃の温度で焼成することによって製作される。
【0020】
また前記基板1はその上面で半導体素子3が搭載実装される領域周辺から下面にかけて複数の配線層2が形成してあり、該配線層2の基板1上面に露出する部位には半導体素子3の電極がボンディングワイヤ5を介して接続され、また基板1の下面に導出する部位は外部の電気回路基板に半田等の導電性接続材を介して接続される。
【0021】
前記配線層2は半導体素子3の各電極を外部電気回路に接続するための導電路として作用し、半導体素子3の各電極をボンディングワイヤ5を介し配線層2に接続することによって半導体素子3の各電極は配線層2を介して外部電気回路に接続されることとなる。
【0022】
前記配線層2は、Au、Ag、Cu、Pd、Ptの少なくとも1種より成り、このようなAu、Ag、Cu、Pd、Pt等から成る配線層2は電気抵抗値が小さいことから配線層2に電気信号を伝搬させた場合、配線層2で電気信号に大きな電圧降下を招来することはなく半導体素子3に電気信号を正確に伝えることが可能となる。
【0023】
前記配線層2は、例えば、Agから成る場合であれば、Ag粉末に適当な有機バインダ及び溶剤を添加混合して金属ペーストを作成し、この金属ペーストを基板1となるガラスセラミックグリーンシートの表面に所定パターンに印刷塗布することによって基板1の上面から下面にかけて所定パターンに形成される。
【0024】
また前記配線層2は、基板1の上面に露出する領域に半導体素子3の電極が、直径が100μm以上のアルミニウム製ボンディングワイヤ5を介して接続され、これによって半導体素子3の各電極がボンディングワイヤ5を介して配線層2に電気的に接続されることとなる。
【0025】
前記ボンディングワイヤ5はその直径が100μm以上と大きいことからボンディングワイヤ5を介して配線層2から半導体素子3に約5A以上という大電流の電気信号を流した場合、大電流の電気信号は何ら支障をきたすことなく半導体素子3に伝搬させることができる。
【0026】
前記ボンディングワイヤ5はその直径が100μm未満となると5A以上の大電流の電気信号を伝搬させることが困難となる。従って、前記ボンディングワイヤ5はその直径が100μm以上に特定される。
【0027】
なお、前記配線層2へのボンディングワイヤ5の接続は、配線層2の表面にボンディングワイヤ5の一端を約90gf〜600gf(0.882N〜5.88N)という大きな荷重で押し付けて摺動させ、ボンディングワイヤ5と配線層2表面との間に摩擦エネルギーを発生させるとともに該摩擦エネルギーでボンディングワイヤ5と配線層2表面部分との間に金属拡散を行わせることによって行われる。
【0028】
また前記配線層2は更に少なくともボンディングワイヤ5が接続される領域に、図2に示す如く、厚さが4μm乃至13μm、硬さがビッカース硬度で200Hv以上のNiから成る被覆層6が被着されており、該Niから成る被覆層6は無電解法または電解法等のめっき法やスパッタリング法等により形成され、例えば、無電解めっき法による場合であれば、次亜リン酸ナトリウム等のリン系還元剤やジメチルアミンボラン等のホウ素系の還元剤を用いる無電解Niめっき液中に配線層2を所定時間浸漬することにより形成される。
【0029】
前記Niから成る被覆層6はアルミニウム製のボンディングワイヤ5との間で金属拡散が生じやすく、これによって配線層2にボンディングワイヤ5の強固に接続することができる。
【0030】
また前記被覆層6は、その厚みが4μm乃至13μmと厚いことから配線層2を完全に被覆して配線層2の酸化等を有効に防止することができるとともに配線層2に直径が100μm以上と大きなボンディングワイヤ5を接続させる場合、ボンディングワイヤ5を配線層2表面に押し付ける荷重、ボンディングワイヤ5と配線層2との摺動にともなって発生する機械的応力は被覆層6で吸収・緩和されて極めて小さな値となり、その結果、配線層2と基板1との界面に大きな力が作用することはなく、配線層2と基板1との間で亀裂やハガレ等の不具合が発生するのを有効に防止して配線層2を基板1に強固に接合させておくことが可能となる。
【0031】
なお、前記被覆層6は、その厚さが4μm未満では、ボンディングワイヤ5を配線層2表面に押し付ける荷重、ボンディングワイヤ5と配線層2との摺動にともなって発生する機械的応力を十分に吸収緩和することができず、配線層2と基板1との界面に亀裂やハガレ等の不具合が生じてしまい、また、13μmを超えると、その皮膜内部応力が非常に大きくなり被覆層6と配線層2との間や、配線層2と基板1との間での接合強度が劣化し、被覆層6が配線層2より剥離したり、配線層2が基板1より剥離したりしてしまう。従って、前記被覆層6は、その厚さが4μm乃至13μmの範囲に特定される。
【0032】
また、前記被覆層6は、その厚みを5μm乃至10μmの範囲としておくと、ボンディングワイヤ5を配線層2により一層確実、強固に接続させることができるできるとともに被覆層6が配線層2より剥離したり、配線層2が基板1より剥離したりしてしまうのを完全に防止して配線基板としての信頼性をより一層良好となすことができる。したがって、前記被覆層6は、その厚さを5μm乃至10μmの範囲としておくことがより一層好ましい。
【0033】
更に前記被覆層6は、その硬さがビッカース硬度で200Hv以上と硬いことからボンディングワイヤ5を配線層2表面に押し付ける荷重で大きく変形することはなく、これによって前記荷重は配線層2と基板1との界面に伝わることが効果的に遮断され、その結果、配線層2と基板1との界面に大きな力が作用することはなく、配線層2と基板1との間で亀裂やハガレ等の不具合が発生するのが有効に防止されて配線層2を基板1に強固に接合させておくことが可能となる。
【0034】
前記被覆層6は、その硬さがビッカース硬度で200Hv未満と低くなると、直径が100μm以上と大きなボンディングワイヤ5を配線層2に接続させる際、被覆層6がボンディングワイヤ5を配線層2の表面に押し付ける荷重[約90gf〜600gf(0.882N〜5.88N)]により容易に変形して、その荷重が配線層2と基板1との界面に作用してしまい、その結果、配線層2と基板1との界面に亀裂やハガレ等の不具合を発生させてしまう。したがって、前記被覆層6は、その硬さをビッカース硬度で200Hv以上とする必要がある。
【0035】
前記被覆層6の硬さをビッカース硬度で200Hv以上と硬くするには、厚さが4μm乃至13μmとなるようにしてNiをめっき法等で配線層2の表面に被着させた後、約750℃乃至850℃の温度で熱処理を加え、Niの結晶を緻密化させて、硬さが200Hv以上となるようにする方法や、無電解めっき法でNiから成る被覆層を形成する過程で、めっき時間を長くすることによりNiの結晶の緻密化および皮膜応力の増大を図り硬さを200Hv以上と硬くする等の方法を用いることができる。
【0036】
なお、めっき法等でNiを配線層2の表面に被着させ、被覆層6を形成する場合、その硬さをビッカース硬度で500Hvを超えるようなものとしようとすると、必要以上にめっき時間を長くしたり、高温でNiを熱処理したりする必要が生じ、生産性や経済性を低下させるおそれがある。したがって、前記被覆層6は、その硬さを、ビッカース硬度で200Hv乃至500Hvの範囲とすることが好ましい。
【0037】
かくして半導体素子3が搭載された配線基板4は、半導体素子3を蓋体や封止樹脂等の封止材(不図示)を用いて封止するとともに、MOS−FET、コンデンサー等の電子部品(不図示)を搭載し、その電極を配線層2に接続することにより製品としてのECU(Electronic Control Unit)基板が完成する。
【0038】
次に本発明の作用効果を下記に示す実験例に基づき説明する。
[実験例]
まず、ガラス粉末、フィラー粉末(セラミック粉末)、さらに有機バインダ、可塑剤、有機溶剤等を混合し、シート状に成形してガラスセラミックグリーンシートを作製する。
【0039】
ガラス粉末の成分としては、例えばSiO2−B2O3系、SiO2−B2O3−Al2O3系、SiO2−B2O3−Al2O3−MO系(但し、MはCa、Sr、Mg、BaまたはZnを示す)、SiO2−Al2O3−M1O−M2O系(但し、M1およびM2は同一または異なってCa、Sr、Mg、BaまたはZnを示す)、SiO2−B2O3−Al2O3−M1O−M2O系(但し、M1およびM2は前記と同じである)、SiO2−B2O3−M3 2O系(但し、M3はLi、NaまたはKを示す)、SiO2−B2O3−Al2O3−M3 2O系(但し、M3は前記と同じである)、Pb系ガラス、Bi系ガラス等のSiO2系のものであればよく、この実験例ではSiO2−B2O3系のものを用いた。
【0040】
また、前記フィラー粉末としては、例えばAl2O3、SiO2、ZrO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物、TiO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物、Al2O3およびSiO2から選ばれる少なくとも1種を含む複合酸化物(例えばスピネル、ムライト、コージェライト)等が挙げられ、この実験例ではAl2O3を用いている。
【0041】
上記ガラス粉末とフィラー粉末との混合割合は質量比で40:60〜99:1であるのが好ましい。
【0042】
また、前記有機バインダとしては、従来からセラミックグリーンシートに使用されているものが使用可能であり、例えばアクリル系(アクリル酸、メタクリル酸またはそれらのエステルの単独重合体または共重合体、具体的にはアクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等)、ポリビニルブチラ−ル系、ポリビニルアルコール系、アクリル−スチレン系、ポリプロピレンカーボネート系、セルロース系等の単独重合体または共重合体が挙げられ、この実験例ではアクリル系のものを用いた。
【0043】
なお、シート状に成形する方法としては、従来周知のドクターブレード法、圧延法、カレンダーロール法、金型ブレス法等の成形方法を用いることができ、上記ガラス粉末、フィラー粉末、有機バインダに必要に応じて所定量の可塑剤、溶剤(有機溶剤、水等)を加えてスラリーを得て、これを上記の成形方法により厚さ約50〜500μmに成形することによって得られる。この実験例では、ドクターブレード法を用いた。
【0044】
次に、このようにして作製したガラスセラミックグリーンシートの表面にAgペーストをスクリーン印刷法により2mm×2mmの四角形状のテストパターンで印刷するとともに焼成し、試料用の配線基板を作製する。
【0045】
次に、この試料に対して、次亜リン酸ナトリウム等のリン系還元剤を用いた無電解めっき法によりNiから成る被覆層をテストパターン表面に、表1に示す厚さおよび硬度で被着させた後、表1に示す直径の異なる種々のHeraeu社製ボンディングワイヤをOrthodyne社製M360C超音波ボンダーを用いてボンディングした。
【0046】
なお、超音波ボンダーを用いての接続条件は、下記のとおりである。
【0047】
・超音波周波数:60kHz
・ボンディング時間:25−150ms
・ボンディングパワー:110−130steps
・ボンディング荷重:4.275N−5.88N
・ループ高さ:6−8mm
・ループ長さ:6−8mm
そして、次に接続したボンディングワイヤに対して引っ張り試験を行い、ボンディングワイヤの接続強度、および破壊モードを測定した。
【0048】
なお、ボンディングワイヤの破壊モードは、ボンディングワイヤの途中での破断(ワイヤー切れ)を良とし、テストパターンと基板との間や配線層と被覆層との間、被覆層とボンディングワイヤとの間等に破壊が生じたもの(パッド剥がれ)を不良として判定した。
【0049】
なお、測定は、各項目について試料数5とし、ボンディングワイヤの接続強度はその算術平均値を記載している。
【0050】
上記の結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
表1に示す結果から判るように、Niの被覆層の厚さが4μm未満の場合(試料番号1)および硬さがビッカース硬度で200Hv未満の場合(試料番号2、5、12、19、26、33、40)には被覆層が応力を吸収緩和・遮断することができず配線層と基板との間で亀裂やハガレ等の破壊を生じてしまい、またNiの被覆層の厚さが13μmを超える場合(試料番号38、39、40)には被覆層の皮膜内部応力が増大して配線層と被覆層との間等で剥離が発生してしまう。従って、これらの試料はいずれもボンディングワイヤの接続強度が0.31(N)以下で、小さな力の印加により配線層が基板より剥離したり、被覆層が配線層より剥離したりしてしまう。
【0053】
これに対し、被覆層の厚さを4μm乃至13μm、かつ硬さがビッカース硬度で200Hv以上とした本発明品はボンディングワイヤの接続強度が0.63(N)以上であり、基板に対する配線層の接合、配線層に対する被覆層の被着、配線層に対するボンディングワイヤの接続を極めて強いものとなすことができる。
【0054】
なお本発明は上述の実施例、実験例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能であり、例えば、上述の実施例において前記配線層2の外周上端の角(稜線)部分を円弧状に面取りしておくと、この角部分で、配線層2と被覆層6との被着界面に応力が集中し、被覆層6に亀裂等の機械的な破壊が生じることを効果的に防止することができる。したがって、前記配線層2は、その外周上端の角(稜線)部分を円弧状に面取りしておくことが好ましい。
【0055】
【発明の効果】
本発明の配線基板によれば、配線層がAu(金)、Ag(銀)、Cu(銅)、Pd(パラジウム)、Pt(白金)の少なくとも1種より成り、低電気抵抗であることから配線層に電子信号を伝搬させた際、配線層で電気信号に大きな電圧降下を招来することはなく電気信号を正確に伝えることができる。
【0056】
また本発明の配線基板によれば、前記配線層のボンディングワイヤが接続される領域に、厚さが4μm乃至13μm、硬さがビッカース硬度で200Hv以上のNiから成る被覆層を被着させ、被覆層の厚さを4μm乃至13μmと厚くしたことから配線層に直径が100μm以上と大きなボンディングワイヤを接続させる場合、ボンディングワイヤを配線層表面に押し付ける荷重、ボンディングワイヤと配線層との摺動にともなって発生する機械的応力は被覆層で吸収・緩和されて小さくなり、また同時に被覆層の硬さをビッカース硬度で200Hv以上と硬くしたことから上記の荷重で被覆層が変形して大きな荷重が配線層と基板との界面に伝わることを効果的に遮断することが可能となり、その結果、配線層と基板との界面に大きな力が作用することはなく、配線層と基板との間で亀裂やハガレ等の不具合が発生するのを有効に防止して配線層を基板に強固に接合させておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の配線基板の一実施例を示す断面図である。
【図2】本発明の配線基板の一実施例の要部拡大断面図である。
【符号の説明】
1・・・・基板
2・・・・配線層
3・・・・半導体素子
4・・・・配線基板
5・・・・ボンディングワイヤ
6・・・・被覆層
Claims (1)
- 電気絶縁材料から成る基板と、Au、Ag、Cu、Pd、Ptの少なくとも1種より成り、前記基板に同時焼成により形成され、かつ直径が100μm以上のアルミニウム製ボンディングワイヤが接続される領域を有する配線層と、前記配線層の少なくともボンディングワイヤが接続される領域に被着され、厚さが4μm乃至13μm、硬さがビッカース硬度で200Hv以上のNiから成る被覆層とで形成された配線基板。
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