JP2004087405A - カソード電極及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明にかかるカソード電極110は、真空外囲器内に、蛍光体膜140の付着したアノード電極130と、このアノード電極130に対向して配置されたカソード電極110と、アノード電極130とカソード電極110との間にアノード電極130とカソード電極110の双方より離間して略平行に配設されたメッシュ状のグリッド電極120とをそれぞれ少なくとも1つ有する光源管のカソード電極110であり、頂部にクレータ状の凹部110bが形成されたドーム状の凸部110aを一面側に複数有する導体基板111と、この導体基板111の凸部110aの表面と凹部110bの表面とに配置された電界放出型電子放出材料112と、導体基板111の一面側の平坦部と他面側とに配置された金属膜113とから構成されている。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、導体基板表面に電界放出型電子放出材料を配置したカソード電極とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
蛍光表示管やFED(Field Emission Display)などに代表される光源管の電子放出源として、電界放出型電子放出材料を有するカソード電極を使用することが提案されている。図4は、電界放出型電子放出材料を有するカソード電極を使用した従来の光源管の電極構造を模式的に示す断面図である。図4に示すように、従来の光源管は真空外囲器(図示せず)内において、カソード電極410に対向してアノード電極430が平行に配置されており、カソード電極410とアノード電極430の間にグリッド電極420がカソード電極410とアノード電極430のそれぞれに対して平行に配置されている。
【0003】
カソード電極410は導体基板411と電界放出型電子放出材料412とから構成されており、導体基板411のグリッド電極420に面した表面にカーボンナノチューブ等の電界放出型電子放出材料412が配置されている。グリッド電極420は、電子通過孔を有するメッシュ部420aとメッシュ部420aを保持する周辺部420bとから構成されている。アノード電極430は、カソード電極410から放出された電子が透過可能な厚さに形成された金属薄膜で構成され、カソード電極410と反対の面に蛍光体膜440が配置されている。
【0004】
この電極構造において、グリッド電極420はカソード電極410から電子を引き出す電子引き出し電極(制御電極)として作用する。すなわち、カソード電極410に対しグリッド電極420が正電位となるように高電圧を印加すると、カソード電極410の近傍に形成される強電界により電界放出型電子放出材料412から電子が放出される、いわゆる電界電子放出が起こり、カソード電極410より電子が引き出される。カソード電極410から引き出された電子のうちグリッド電極420のメッシュ部420aを通過したものは、アノード電極430に印加された正の高電圧によりさらに加速され、アノード電極430を透過しアノード電極430上に付着した蛍光体膜440に衝突する。この結果、蛍光体膜440が電子衝撃により励起され、その蛍光体に応じた色で発光する。
【0005】
ここで、カソード電極410から引き出された電子は、グリッド電極420のメッシュ部420aを通過してアノード電極430に流入するもの(アノード電流)の他に、グリッド電極420に流入するものもある(グリッド電流)。このグリッド電極420に流入する電子は光源管の発光には寄与しない。さらに、グリッド電流にはメッシュ部420aに衝突する電子によるものと周辺部420bに衝突する電子によるものがある。
【0006】
カソード電極410とグリッド電極420とを平行に設置すると、カソード電極410とグリッド電極420との間の等電位線もほぼ平行に分布することになる。すると、電子は等電位線に対して垂直にグリッド電極420に向かって引き出されるため、カソード電極410から垂直方向に、グリッド電極420に向かって引き出され、周辺部420bに衝突してグリッド電極420に流入する電子が存在する。すなわち、この周辺部420bに衝突する電子は、グリッド電流となり光源管の発光に寄与しない。このような電子の存在は、グリッド電流とアノード電流とを加えたトータル電流に対するアノード電流の比率(以下、この比率を電流分配率という)を低下させ、光源管の発光効率、ひいては発光輝度を低下させる原因となる。
【0007】
この問題を解決するため、図5に示すカソード電極が提案されている。図5は、電流分配率を向上させたカソード電極を使用した従来の光源管の電極構造を模式的に示す断面図である。図5の電極構造が図4と異なる点は、カソード電極510がグリッド電極520の方向に突出したドーム状の凸部510aを有することである。このカソード電極510によれば、グリッド電極520との距離が短い凸部510aの頂上では電界強度が強いために電子が放出されやすいが、凸部510aの頂上から周辺に向かって離れるにつれてグリッド電極520との距離が長くなり、電界強度も弱くなるので電子は放出されにくくなる。
【0008】
このため、カソード電極510のドーム周辺部510bがグリッド電極520の周辺部520bと対向するようにカソード電極510とグリッド電極520とを配置しても、ドーム周辺部510bからの電子の引き出しは抑制されるため、グリッド電極520の周辺部520bに衝突してグリッド電極520に流入する電子が減少するのでグリッド電流を低減することができ、電流分配率を向上させることが可能である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図5に示したカソード電極を用いた光源管には、グリッド電極520のメッシュ部520aよりも広い範囲に電子が広がるという問題があった。すなわち、電子はカソード電極510とグリッド電極520の間の等電位線に対して垂直方向に放出される傾向があるが、カソード電極510がグリッド電極520に向けて凸形状を有する場合、カソード電極510とグリッド電極520との間の等電位線がグリッド電極520の方向に突出したなだらかな凸形状を有する、すなわちグリッド電極520に対して外側を向いた傾きを有するので、電界放出された電子はカソード電極510の頂部からグリッド電極520に垂直におろした軸線から離れる方向の速度成分を持って放出されるため、グリッド電極520のメッシュ部520aを通過した後も拡散を続け、メッシュ部520aの面積よりもさらに広がってしまう。このため、放出された電子がメッシュ部520aよりも広い範囲でアノード電極530に衝突することになり、蛍光体膜540の発光領域が広がる。この結果、発光領域の中心部に比べて周辺部に流入する電子の密度が少なくなるため、発光の均一性が低下するという現象や発光パターンの輪郭がぼやけるという現象が生じる。
【0010】
また、FEDのような表示画素の近傍にスペーサや外囲器が配置された光源管においては、グリッド電極520のメッシュ部520aを通過した電子の一部が拡散してスペーサや外囲器に衝突し、これらから複数の2次電子が放出する現象が生じる。複数の2次電子が放出された結果、スペーサや外囲器は帯電し、さらに電子の軌道を乱すこととなり、発光の均一性をより阻害する。
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、電流分配率を向上させ、かつ放出電子の拡散を抑制したカソード電極とその製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するため、本発明は、真空外囲器内に、蛍光体膜の付着したアノード電極と、このアノード電極に対向して配置された導体基板表面に電界放出型電子放出材料を配置したカソード電極と、アノード電極とカソード電極との間にアノード電極とカソード電極の双方より離間して略平行に配設されたグリッド電極とをそれぞれ少なくとも1つ有する光源管のカソード電極において、導体基板がグリッド電極の方向に突出したドーム状の凸部を少なくとも1つ有し、凸部が頂部にクレータ状の凹部を少なくとも1つ有することによって特徴づけられる。このカソード電極は、凸部の頂部に凹部に代えて穴を少なくとも1つ有するようにしてもよい。また、カソード電極の一構成例は、電界放出型電子放出材料が炭素からなるナノチューブ状繊維である。
【0012】
このカソード電極は、表面に電界放出型電子放出材料が配置された導体基板からなり、この導体基板がグリッド電極の方向に突出したドーム状の凸部を有し、凸部が頂部にクレータ状の凹部又は穴を有するので、このカソード電極の凸部が形成された面に対向してグリッド電極を平行に配置し、カソード電極とグリッド電極との間にグリッド電極側が正電圧となるように高電圧を印加すると、グリッド電極に最も近いカソード電極の凸部の頂部において、端部を形成する凹部又は穴の縁部分に電界が集中する。このため、カソード電極の凸部の頂部においても凹部又は穴の縁部分以外の場所からは電子が放出されにくくなるので、グリッド電流が低減されるとともに、放出された電子の拡散が生じにくくなる。
【0013】
本発明の製造方法は、導体基板表面に電界放出型電子放出材料を配置したカソード電極の製造方法であって、炭素からなるナノチューブ状繊維の生成核となる金属を含む導体基板に、この基板の両面を覆うナノチューブ状繊維を形成しない所定の金属からなる金属膜と導体基板の一面側に配置され金属膜を貫通して基板面を露出させた少なくとも1つの平面視略円形の貫通孔と露出された基板面の中央部に配置された少なくとも1つの凹部とを形成する工程と、金属膜と貫通孔と凹部とが形成された導体基板を炭素化合物からなるガスが所定の濃度で含まれる材料ガス雰囲気中で加熱して所定の温度に保持し、露出された基板面に炭素からなるナノチューブ状繊維を成長させ、ナノチューブ状繊維を有する炭素膜を形成する工程と、炭素膜が形成された導体基板を室温に戻すことにより炭素膜が形成された領域をドーム状に突出させる工程とを有することによって特徴づけられる。この場合、導体基板を構成する金属は鉄又は鉄を含む合金である。また、ナノチューブ状繊維を形成しない所定の金属としては、例えばアルミニウム、ニッケル、銅などが用いられる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本実施の形態にかかるカソード電極を備えたFEDの部分断面図である。図1に示すように、このFEDは、ガラス基板101と、ガラス基板101上にガラス基板101と接して配置されたカソード電極110と、カソード電極110の上方に所定距離離間して配置されたグリッド電極120と、グリッド電極120の上方に所定距離離間して配置されたアノード電極130と、アノード電極130の上方にアノード電極130と接して配置された蛍光体膜140と、ガラス基板101と対向して配置され、ガラス基板101との対向面に蛍光体膜140を固着した透明なフロントガラス102とを有し、ガラス基板101とフロントガラス102とは内部にカソード電極110とグリッド電極120とアノード電極130と蛍光体膜140とを含む真空外囲器を形成している。
【0015】
カソード電極110は、平面視帯状の形状を有するとともに、グリッド電極120の方向に突出したドーム状の凸部110aを複数有し、各凸部110aは頂部にクレータ状の凹部110bを有する。図2は、本実施の形態にかかるカソード電極の構造を模式的に示す断面図である。図2に示すように、カソード電極110は、頂部にクレータ状の凹部110bが形成されたドーム状の凸部110aを一面側に複数有する導体基板111と、この導体基板111の各凸部110aの表面と各凹部110bの表面とに配置された電界放出型電子放出材料112と、導体基板111の一面側の平坦部と他面側とに配置された金属膜113とから構成されている。
【0016】
この実施の形態において、導体基板111は、炭素からなるナノチューブ状繊維の生成核となる金属である鉄又は鉄を含む合金からなる。ここで、導体基板111の厚さは、例えば0.05〜0.20mm、ドーム状の凸部110aの高さは、例えば0.02〜0.20mm、クレータ状の凹部110bの深さは、例えば導体基板111の厚さの半分である。電界放出型電子放出材料112は、例えばカーボンナノチューブなどの炭素からなるナノチューブ状繊維からなる。このナノチューブ状繊維は炭素膜を形成し、導体基板111の凸部110aの表面と凹部110bの表面とを被覆している。金属膜113は、後述する熱CVD法による炭素からなるナノチューブ状繊維を形成する工程において、導体基板111の凸部110a及び凹部110bとなる領域以外に炭素からなるナノチューブ状繊維を形成させないようにするためのマスクであり、表面に炭素からなるナノチューブ状繊維が形成されない金属である、例えばアルミニウム、ニッケル及び銅のいずれかからなる。
【0017】
グリッド電極120は、平面視帯状の形状を有するとともに、カソード電極110の凸部110aと対向する領域に電子通過孔を有するメッシュ部120aが設けられており、カソード電極110のドーム周辺部110cと対向する領域にグリッド電極120の周辺部120bが設けられている。アノード電極130と蛍光体膜140は、グリッド電極120と1対1に対応するように帯状に形成されている。
【0018】
本実施の形態において、マトリクス状に配置されるFEDの各画素を点灯制御するため、平面視帯状に形成されたカソード電極110とグリッド電極120とは、互いに直交するマトリクスの行と列とにそれぞれ対応するように配置され、各行と各列とがそれぞれ真空外囲器の外部に配置されるカソード電源やグリッド電源と接続可能に構成されている。また、アノード電極130は真空外囲器の外部に配置されるアノード電源と接続可能に構成されている。
【0019】
カソード電極110間には、グリッド電極120をカソード電極110から所定距離に離間し保持するとともに、カソード電極110間を絶縁する第1の絶縁スペーサ103が配置されている。また、グリッド電極120間には、アノード電極130をグリッド電極120から所定距離に離間するとともに、グリッド電極120間及びアノード電極130間を絶縁する第2の絶縁スペーサ104が配置されている。なお、このFEDを構成する各部材については、カソード電極110を除き、従来のFEDに用いられている部材と同様であるので、説明を省略する。
【0020】
次に、図2を参照し、この実施の形態にかかるカソード電極の電子放出について説明する。このカソード電極110のドーム状の凸部110aが形成された面に対向してグリッド電極120を配置し、カソード電極110とグリッド電極120との間にグリッド電極120側が正電圧となるように高電圧を印加した場合、グリッド電極120との距離が最も短いカソード電極110の凸部110aの頂部に形成されている凹部110bの縁部分に電界が集中するため、この縁部分の炭素からなるナノチューブ状繊維からの電子放出が多くなる一方、グリッド電極120から離れる凸部110aの側面部分や凹部110bの底部付近からは電子が放出されにくくなる。
【0021】
このため、グリッド電極120のメッシュ部120aよりも広い範囲に電子が広がることがないので、発光均一性が低下する現象や発光パターンの輪郭がぼやける現象が抑制される。また、グリッド電極120の周辺部120bと対向するカソード電極110のドーム周辺部110cには、電子放出源となる炭素からなるナノチューブ状繊維が存在しないので電子放出がなく、グリッド電極120の周辺部120bに衝突してグリッド電極120に流入する電子をほぼなくすることができるのでグリッド電流を低減することができ、電流分配率が向上する。なお、カソード電極110のドーム状凸部110a頂上付近に形成される凹部110bは、その周縁部が平面視円形をなすように形成することができるが、円形に限られるものではなく、楕円又は多角形とすることも可能である。また、ドーム状に形成されたカソード電極110の頂部に凹部に代えて穴を設けてもよい。
【0022】
次に、この実施の形態にかかるカソード電極110の製造方法の一例について図3を参照して説明する。図3は、本実施の形態にかかるカソード電極の製造工程を模式的に示す説明図である。まず、図3(a)に示すように、鉄又は鉄を含む合金からなる基板301を用意する。基板301に鉄又は鉄を含む合金を用いるのは、熱CVD法により炭素からなるナノチューブ状繊維を形成することができるのは、鉄又は鉄を含む合金に限られているためである。
【0023】
ここで、鉄を用いる場合は工業用純鉄(99.96Fe)を使用するが、その純度は特に規定の純度が必要なわけではなく、例えば、純度97%や99.9%などでもよい。また、鉄を含む合金としては、例えば、SUS304などのステンレス鋼や42合金、42−6合金などが使用できるが、これに限られるものではない。この実施の形態では生産コストや入手の容易さを考慮して、厚さ0.05〜0.20mmの42−6合金の薄板を基板301に用いた。
【0024】
次に、図3(b)に示すように、基板301の一面側の凸部を形成する領域を除く基板301の全面にアルミニウム、ニッケル及び銅のいずれか1つの金属膜302を形成する。この実施の形態では、略円形に基板面の露出した領域がFEDの画素ピッチに対応した間隔でマトリクス状に残るように金属膜302を形成する。ここで、基板301の全面にアルミニウム、ニッケル及び銅のいずれか1つの金属膜302を形成するのは、熱CVD法ではこれらの金属膜301上には炭素からなるナノチューブ状繊維が形成されないためである。これらの金属膜302は周知のメッキ法や蒸着法などにより形成することができる。
【0025】
金属膜302形成後、図3(c)に示すように、個々の凸部を形成する領域の中央部にクレータ状の凹部301aを形成する。この実施の形態では、基板301にエッチング処理を行い、個々の略円形に基板面が露出した領域の中央部に深さが基板301の厚さの半分程度となるように、略円形のクレータを形成する。なお、凹部301aを形成方法はエッチングに限られるものではなく、例えば画素サイズと画素ピッチが大きな場合には機械的に加工してもよい。また、基板301に金属膜302を形成する前にクレータ状の凹部301aを形成するようにしてもよい。
【0026】
次に、図3(d)に示すように、例えば石英管などから構成された反応炉303内に、図3(a)〜(c)の工程を経た基板301を載置し、反応炉303の一方より原料ガスと水素ガス(キャリアガス)を流した状態で、ヒータ304により基板301を加熱する熱CVD工程を行う。原料ガスとしては、一酸化炭素,アセチレン,エチレン,エタン,プロピレン,プロパン,又はメタンガスなどのC1〜C3の炭化水素ガスを用いればよく、流量は20〜2000sccm程度とすればよい。また、基板301の加熱温度は、700〜1000℃程度とすればよい。以上の熱CVD工程を10〜60分間行うことで、基板301の露出面に炭素からなるナノチューブ状繊維を有する炭素膜305が形成される。
【0027】
電界放出型電子放出材料となる炭素からなるナノチューブ状繊維は、太さが2nm以上1μm未満程度で、長さが1μm以上100μm未満程度の炭素で構成された物質であり、グラファイトの単層が円筒状に閉じ、かつ円筒の先端部に五員環が形成された単層構造のカーボンナノチューブや、複数のグラファイトの層が入れ子構造的に積層し、それぞれのグラファイト層が円筒状に閉じた同軸多層構造のカーボンナノチューブであってもよいし、構造が乱れて欠陥をもつ中空のグラファイトチューブやチューブ内に炭素が詰まったグラファイトチューブでもよい。また、これらが混在したものであってもよい。
【0028】
熱CVD工程が終了し、基板301の温度が室温に戻る過程で基板301の炭素からなるナノチューブ状繊維を有する炭素膜305が形成された領域が突出する変形が生じ、図3(e)に示すようにドーム状の凸部305aが形成される。このようなドーム状の凸部305aが形成されるのは、基板301露出面に形成された炭素膜305と基板材料の熱膨張率が大きく異なるため、熱CVD工程での高温により膨張していた基板301が室温に戻る過程で一面側の炭素膜305形成領域と、炭素膜305形成領域の他面側とで収縮量に差が生じ、バイメタルのような変形が生じるためではないかと考えられる。
【0029】
以上の工程により、導電基板に対する電界放出型電子放出材料の配設と、頂部にクレータ状の凹部が形成されたドーム状の凸部の形成とを行う。この製造方法によれば、ドーム状の凸部の形成が電界放出型電子放出材料となる炭素からなるナノチューブ状繊維の形成により行われるので、従来のようにドーム状の凸部をプレス成型で形成する必要がない。このため、FEDのようなプレス成型では困難な微小な電子放出部が要求される場合であっても、凸部を形成することが可能である。
【0030】
この実施の形態では、FEDに用いるカソード電極を例にしたので、電子放出部となる凸部を複数有するものとして説明したが、凸部が1つであってもよい。また、カソード電極の凸部の頂部に凹部を1つ設けたカソード電極を例に説明したが、凸部の頂部に設ける凹部の数は1つに限られるものではなく、凹部の面積を小さくすることにより複数設けるようにしてもよい。この場合、電子放出領域がより均一化できるので、発光均一性をより高めることが期待できる。
【0031】
また、製造工程において、基板をFEDの全カソードを形成可能なサイズとし、凹部のエッチングを行う工程において、カソード電極間にスリットを形成するようにしてもよい。この場合、スリット形成部を基板の両面からエッチングされるようにすれば、凹部の形成と同時にスリット形成を行うことができる。これにより、1枚の基板からFEDの全カソードを同時に製造することができ、製造工程が簡単になる。
【0032】
この実施の形態にかかるカソード電極は、前述した製造工程により製造したため凸部以外を金属膜が覆っているが、この金属膜がなくともよい。また、凸部形成面の平坦部には炭素からなるナノチューブ状繊維が配置されないが、平坦部は凸部よりもグリッド電極から離れているため、電子が放出される可能性がさらに少ないので、この平坦部に炭素からなるナノチューブ状繊維が配置されていてもよい。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のカソード電極は、導体基板表面に電界放出型電子放出材料を配置しており、導体基板がグリッド電極の方向に突出したドーム状の凸部を少なくとも1つ有し、凸部が頂部にクレータ状の凹部又は穴を少なくとも1つ有することによりカソード電極の凸部の頂部において、端部を形成する凹部又は穴の縁部分に電界が集中するので、凹部又は穴の縁部分以外の場所からは電子が放出されにくくなる。これによりカソード電極から引き出される電子において光源管の発光に寄与しないグリッド電極の周辺部に衝突する電子が引き出されるのを防ぎ、グリッド電流を抑えることができるので、光源管の電流分配率が上昇するのに伴って光源管の発光輝度が向上する効果が得られる。また、カソード電極の凸部の側面部分から電子が引き出されるのを防ぐため拡散する電子が生じにくくなるので、発光均一性の向上効果や発光パターンの輪郭のぼやけを抑制する効果を有する。
また、本発明の製造方法によれば、導体基板上の炭素からなるナノチューブ状繊維の形成箇所にドーム状の凸部が自発的に形成されるので、製造工程が簡略化される効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態にかかるカソード電極を備えたFEDの部分断面図である。
【図2】実施の形態にかかるカソード電極の構造を模式的に示す断面図である。
【図3】実施の形態にかかるカソード電極の製造工程を模式的に示す説明図である。
【図4】電界放出型電子放出材料を有するカソード電極を使用した従来の光源管の電極構造を模式的に示す断面図である。
【図5】電流分配率を向上させたカソード電極を使用した従来の光源管の電極構造を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
101…ガラス基板、102…フロントガラス、103,104…絶縁スペーサ、110,410,510…カソード電極、110a,305a,510a…凸部、110b,301a,305b…凹部、110c,510b…ドーム周辺部、111,411,511…導体基板、112,412,512…電界放出型電子放出材料、113,302…金属膜、120,420,520…グリッド電極、120a,420a,520a…メッシュ部、120b,420b,520b…周辺部、130,430,530…アノード電極、140,440,540…蛍光体膜、301…基板、303…反応炉、304…ヒータ、305…炭素膜。
Claims (5)
- 真空外囲器内に、蛍光体膜の付着したアノード電極と、このアノード電極に対向して配置された導体基板表面に電界放出型電子放出材料を配置したカソード電極と、前記アノード電極と前記カソード電極との間に前記アノード電極と前記カソード電極の双方より離間して略平行に配設されたグリッド電極とをそれぞれ少なくとも1つ有する光源管のカソード電極において、
前記導体基板は前記グリッド電極の方向に突出したドーム状の凸部を少なくとも1つ有し、
前記凸部は頂部にクレータ状の凹部を少なくとも1つ有する
ことを特徴とするカソード電極。 - 請求項1記載のカソード電極において、
前記凸部は頂部に前記凹部に代えて穴を少なくとも1つ有する
ことを特徴とするカソード電極。 - 請求項1又は請求項2記載のカソード電極において、
前記電界放出型電子放出材料は、炭素からなるナノチューブ状繊維である
ことを特徴とするカソード電極。 - 導体基板表面に電界放出型電子放出材料を配置したカソード電極の製造方法であって、
炭素からなるナノチューブ状繊維の生成核となる金属を含む導体基板に、この基板の両面を覆う前記ナノチューブ状繊維を形成しない所定の金属からなる金属膜と前記導体基板の一面側に配置され前記金属膜を貫通して基板面を露出させた少なくとも1つの平面視略円形の貫通孔と露出された前記基板面の中央部に配置された少なくとも1つの凹部とを形成する工程と、
前記金属膜と前記貫通孔と前記凹部とが形成された前記導体基板を炭素化合物からなるガスが所定の濃度で含まれる材料ガス雰囲気中で加熱して所定の温度に保持し、露出された前記基板面に炭素からなるナノチューブ状繊維を成長させ、前記ナノチューブ状繊維を有する炭素膜を形成する工程と、
前記炭素膜が形成された前記導体基板を室温に戻すことにより前記炭素膜が形成された領域をドーム状に突出させる工程と
を有することを特徴とするカソード電極の製造方法。 - 請求項4記載のカソード電極の製造方法において、
前記導体基板を構成する金属は、鉄又は鉄を含む合金である
ことを特徴とするカソード電極の製造方法。
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