【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、時計用カバーガラスに係わり、特に、長期間に亘る反射防止機能と耐傷性に優れた時計用カバーガラスに関する。
【0002】
【従来の技術】
時計のカバーガラスには、青板ガラス(ソーダガラス)、白板ガラス、サファイアガラスなどが使用されている。これらのカバーガラスはいずれも可視光領域における反射率が大きく、指針や文字板の視認性が充分ではなかった。そのため、屋内、屋外、昼夜など様々な環境下で時刻を確認する時計では外光や照明が変化するため、これらの外光がカバーガラスの表面で反射し、時刻表示が見えにくい問題があった。
【0003】
そのための解決方法としてカバーガラスの両面あるいは少なくとも片面に反射防止膜をコーティングすることが既に実開昭48−77456公報に開示されている。一般に反射防止膜は適当な屈折率を有する金属あるいは無機物の酸化物膜、窒化物膜、フッ化物膜、硫化物膜を限定した波長領域において所望の反射率となるように設計し、組み合わせることにより構成される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの反射防止膜はいずれも硬度や耐傷性等に劣り、例えばフッ化マグネシウムを最表層とする反射防止膜をコーティングしたカバーガラスを具備した腕時計を長期間携帯していると反射防止膜が表面に細かい傷が入ったり、剥離したりして、表面がくもってしまい、指針や文字板が見えにくくなってしまう問題があった。
【0005】
本発明の目的は、上記課題を解決して、硬度が高く、耐摩耗性に優れ、長期間携帯しても傷の入りにくい反射防止機能を有した時計用カバーガラスを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の時計用カバーガラスは、下記記載の構成を採用する。
【0007】
本発明の時計用カバーガラスは、ガラス基材に酸化物膜または窒化物膜を積層した反射防止膜を備えた時計用カバーガラスであり、少なくとも表面の最表層にArよりも原子半径の小さい不活性元素を含有することを特徴とする。
【0008】
さらに、本発明の時計用カバーガラスでは、Arよりも原子半径の小さい不活性元素がHeまたはNeであることが好ましい。。
【0009】
さらに、本発明の時計用カバーガラスは、酸化物膜が、SiO2、Al2O3、TiO2、ZrO2またはTa2O5のうちのいずれかからなることが好ましい。
【0010】
さらに、本発明の時計用カバーガラスは、窒化物膜が、Si3N4であることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明の時計用カバーガラスは、酸化物膜または窒化物膜がスパッタリング法で作製されることが好ましい。
【0012】
(作用)
本発明者は、時計用カバーガラスにおける反射防止膜について鋭意、検討を進めた結果、ガラス基材に酸化物膜または窒化物膜を積層した反射防止膜において少なくとも表面の最表層にArよりも原子半径の小さい不活性元素を含有させることによって、硬度が高く、耐摩耗性に優れ、長期間携帯しても傷の入りにくい反射防止機能を有した時計用カバーガラスを提供することを可能にした。この際、Arよりも原子半径の小さい不活性元素はHeまたはNeであることが好ましいこと、さらに、酸化物膜としてはSiO2、Al2O3、TiO2、ZrO2またはTa2O5のうちのいずれかからなることが好ましいこと、さらに、窒化物膜としてはSi3N4であることが好ましいこと、また、これらの酸化物膜または窒化物膜がスパッタリング法で作製されることが好ましいことを見いだした。その他のフッ化物膜や硫化物膜は膜の強度(硬度)が弱く、採用することは困難であった。
【0013】
酸化物あるいは窒化物膜からなる反射防止膜を作製する方法には蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法などがあるが、硬度が高く、耐摩耗性に優れた充填密度の高い、緻密な膜を作製するためにはスパッタリング法が適している。通常、スパッタリング法ではArガスを用いるが、酸化物膜を作製する反応性スパッタリングにはO2ガスを、窒化物膜を作製する際にはN2ガスを添加するのが一般的である。この際、膜中にArガスが取り込まれることは周知の事実である。
【0014】
本発明者はArガスが膜中に取り込まれると充填密度がバルクの密度と比較すると小さくなること、また膜の表面に凸状の突起物が生成され、これらが硬度が低く、耐傷性に劣る原因であることを見いだした。この対策のための検討を行った結果、スパッタリング時にHeやNeなどのArよりも原子半径の小さい不活性ガスを導入し、膜中に含有させることによって充填密度が上昇し、また膜の表面に凸状の突起物が無くなり、緻密な強固な膜が形成されることがわかった。これはHeやNeの原子半径が小さいこと、また、ガス透過性が高く、膜中に含有される量がArよりも少なくなることが理由と考えられる。この時、膜中に取り込まれるHeやNeの含有量は1.0at%以下であった。また、HeやNeなどの不活性ガスはArよりもイオン化エネルギーが高いため、スパッタリング時にターゲットからはじき出される粒子も容易にイオン化され、このことも緻密で強固な膜が作製される要因と予想している。また、HeやNeガスによるスパッタリングでは放電が不安定になる場合もあり、その際には流量比で20%までのArを入れても効果は変わらないことを確認している。
【0015】
上記の効果は酸化物膜や窒化物膜のいずれを作製する際にも共通であり、このようにして、少なくとも表面の最表層の酸化物膜または窒化物膜にArよりも原子半径の小さいHeやNeなどの不活性元素を含有させることにより、硬度が高く、耐摩耗性に優れ、長期間携帯しても傷の入りにくい反射防止膜を具備した時計用カバーガラスを提供することが可能となる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0017】
図1は本発明の時計用カバーガラスの構造を示す断面模式図である。サファイヤガラス10の表面と裏面に酸化物膜あるいは窒化物膜の積層からなる反射防止膜110と120が被覆されている。図3は反射防止膜を積層するためのスパッタリング装置の断面模式図である。本発明ではDC反応性スパッタリング装置を用いた。ターゲットはSiであり、ガス導入口32よりAr、HeあるいはNe等の不活性ガス、O2、N2ガスを導入してSiターゲットに電圧を印加することによりスパッタリングを行い、サファイヤガラス10に積層する。スパッタリング法によって作製される膜は酸化物膜あるい窒化物膜であり、これは反応性ガスであるO2とN2を切り換えることにより形成が可能である。本発明では少なくとも図1の表面の反射防止膜110の最表層14を形成する際のスパッタリング時にHeガスあるいはNeガスを導入し、最表層14中にHeあるいはNeを含有させる。
【0018】
反射防止膜は積層する酸化物膜や窒化物膜の層数、配列順序、各膜の屈折率と膜厚に大きく依存しており、仕様を満足する反射率特性をシミュレーションによって計算し、最適化することができる。また、酸化物膜および窒化物膜の屈折率はスパッタリング条件によって変えることも可能である。
【0019】
また、時計用の反射防止膜としては可視光領域で反射率が5%以下であることが望ましく、そのためには図1に示すようにサファイヤガラス10の表面と裏面に反射防止膜を形成することが必須である。
【0020】
【実施例】
以下に本発明の具体的な実施例について、図1〜図4を参照しながら説明する。
(実施例1)
本実施例における時計用カバーガラスは、図1に示すようにサファイヤガラス10の表面には反射防止膜110が、裏面には反射防止膜210が被覆されている。反射防止膜110と反射防止膜210の膜構成は同じであり、いずれも4層からなっている。最表層(第4層)からSiO2、Si3N4、SiO2、Si3N4の順番であり、膜厚は最表層(第4層)から100nm、90nm、20nm、40nmである。また、SiO2の屈折率は1.45、Si3N4の屈折率は1.93である。このような反射防止膜をサファイヤガラスの表裏面に成膜することによって図4に示すような反射率特性を得ることができる。
【0021】
ここで反射率特性は積層する酸化物膜と窒化物膜の層数、配列順序、各膜の屈折率と膜厚に大きく依存しており、種々の反射率特性をシミュレーションによって計算し、最適化することができる。また、SiO2およびSi3N4の屈折率はスパッタリング条件によっても変えることも可能である。
【0022】
本実施例の反射防止膜の製造方法であるDC反応性スパッタリング装置の概念図を図3に示す。
【0023】
真空槽31の中にSiターゲット30を配置し、Siターゲット30に直流電圧を印加する。サファイヤガラス10は、Siターゲット30に対向するように設置する。Siターゲット30にはDC電源34が接続されている。
【0024】
図示していない真空ポンプにより、真空槽31内を1×10−5torrまで排気し、図示していないヒーターにより、サファイヤガラス10を約300℃に加熱する。そしてガス導入口32より、混合ガスを導入し、以下の条件でDC反応性スパッタリングを行ない、反射防止膜110を積層させた。SiO2とSi3N4の膜形成はガス種およびガス流量比を切り換えることにより可能である。以下に各層の成膜条件を下記に示す。
【0025】
以上のようにしてサファイヤガラス10の表面に反射防止膜110を積層させる。その後、サファイヤガラス10を裏返し、サファイヤガラス10の裏面に表面と同様の操作を行い、反射防止膜210を積層させた。裏面の反射防止膜210も表面の反射防止膜110と同じ成膜条件であり、その膜構成も同じである。すなわち、最表層(第4層)からSiO2、Si3N4、SiO2、Si3N4の順番であり、膜厚は最表層(第4層)から100nm、90nm、20nm、40nmとなっている。本実施例によって、図1に示すようなサファイヤガラス10の表裏面に反射防止膜が被覆された時計用カバーガラスが完成した。
【0026】
(実施例2)
次に実施例2として最表層のSiO2にHeを含有させる代わりにNeを含有させた場合の例を示す。本実施例1と同様に、サファイヤガラス10の表面には反射防止膜110が、裏面には反射防止膜210が被覆されており、最表層(第4層)からSiO2、Si3N4、SiO2、Si3N4の順番であり、膜厚は最表層(第4層)から100nm、90nm、20nm、40nmである時計用カバーガラスを作製した。SiO2の屈折率は1.40、Si3N4の屈折率は1.95である。このような反射防止膜をサファイヤガラスの表裏面に成膜することによって図4に示すような反射率特性を得ることができる。
【0027】
以下に各層の成膜条件を下記に示す。
【0028】
以上のようにしてサファイヤガラス10の表面に反射防止膜110を積層させる。その後、サファイヤガラス10をの表面を裏返し、サファイヤガラス10の裏面に表面と同様の操作を行い、反射防止膜210を積層させた。裏面の反射防止膜210も表面の反射防止膜110と同じ成膜条件であり、その膜構成も同じである。すなわち、最表層(第4層)からSiO2、Si3N4、SiO2、Si3N4の順番であり、膜厚は最表層(第4層)から100nm、90nm、10nm、40nmとなっている。本実施例によって、図1に示すようなサファイヤガラス10の表裏面に反射防止膜が被覆された時計用カバーガラスが完成した。
【0029】
(実施例3)
次に実施例3として最表層がSi3N4がであり、これにHeを含有させた場合の例を示す。図2に示すように、サファイヤガラス20の表面には反射防止膜310が、裏面には反射防止膜410が被覆されており、いずれも最表層(第5層)からSi3N4、SiO2、Si3N4、SiO2、Si3N4の順番からなる5層構造であり、膜厚は最表層(第5層)から10nm、90nm、80nm、30nm、20nmである時計用カバーガラスを作製した。SiO2の屈折率は1.45、Si3N4の屈折率は1.93である。このような反射防止膜をサファイヤガラスの表裏面に成膜することによって図4に示すような反射率特性を得ることがでたき。
【0030】
以下に各層の成膜条件を下記に示す。
【0031】
以上のようにしてサファイヤガラス20の表面に反射防止膜310を積層させた。その後、サファイヤガラス20を裏返し、サファイヤガラス20の裏面に表面と同様の操作を行い、反射防止膜410を積層させた。裏面の反射防止膜410も表面の反射防止膜310と同じ成膜条件であり、その膜構成も同じである。すなわち、最表層からSi3N4、SiO2、Si3N4、SiO2、Si3N4の順番であり、膜厚は最表層(第5層)から10nm、90nm、80nm、30nm、20nmとなっている。本実施例によって、図2に示すようなサファイヤガラス20の表裏面に反射防止膜が被覆された時計用カバーガラスが完成した。
【0032】
(実施例4)
次に実施例4として最表層がSi3N4がであり、これにNeを含有させた場合の例を示す。図2に示すように、サファイヤガラス20の表面には反射防止膜310が、裏面には反射防止膜410が被覆されており、いずれも最表層(第5層)からSi3N4、SiO2、Si3N4、SiO2、Si3N4の順番からなる5層構造であり、膜厚は最表層(第5層)から10nm、90nm、70nm、20nm、10nmである時計用カバーガラスを作製した。SiO2の屈折率は1.40、Si3N4の屈折率は1.95である。このような反射防止膜をサファイヤガラスの表裏面に成膜することによって図4に示すような反射率特性を得ることができた。
【0033】
以下に各層の成膜条件を下記に示す。
【0034】
以上のようにしてサファイヤガラス20の表面に反射防止膜310を積層させた。その後、サファイヤガラス20を裏返し、サファイヤガラス20の裏面に表面と同様の操作を行い、反射防止膜410を積層させた。裏面の反射防止膜410も表面の反射防止膜310と同じ成膜条件であり、その膜構成も同じである。すなわち、最表層からSi3N4、SiO2、Si3N4、SiO2、Si3N4の順番であり、膜厚は最表層(第5層)から10nm、90nm、70nm、20nm、10nmとなっている。本実施例によって、図2に示すようなサファイヤガラス20の表裏面に反射防止膜が被覆された時計用カバーガラスが完成した。
【0035】
(比較例1)
次に比較例1として最表層のSiO2にHeやNeを含有させずに、不活性ガスとしてArのみを用いた例を示す。本実施例1と同様に、図1に示すようなサファイヤガラス10の表面には反射防止膜110が、裏面には反射防止膜210が被覆されており、最表層(第4層)からSiO2、Si3N4、SiO2、Si3N4の順番であり、膜厚は最表層(第4層)から100nm、90nm、20nm、40nmである時計用カバーガラスを作製した。SiO2の屈折率は1.45、Si3N4の屈折率は1.93である。このような反射防止膜をサファイヤガラスの表裏面に成膜することによって図4に示すような反射率特性を得ることができた。
【0036】
以下に各層の成膜条件を下記に示す。
【0037】
以上のようにしていずれの膜形成においても不活性ガスとしてはArのみを用いて、サファイヤガラス10の表面に反射防止膜110を積層させた。その後、サファイヤガラス10を裏返し、サファイヤガラス10の裏面に表面と同様の操作を行い、反射防止膜210を積層させた。裏面の反射防止膜210も表面の反射防止膜110と同じ成膜条件であり、その膜構成も同じである。すなわち、最表層(第4層)からSiO2、Si3N4、SiO2、Si3N4の順番であり、膜厚は最表層(第4層)から100nm、90nm、20nm、40nmとなっている。本比較例によって、図1に示すようなサファイヤガラス10の表裏面に反射防止膜が被覆された時計用カバーガラスが完成した。
【0038】
(比較例2)
次に比較例2として最表層のSi3N4にHeやNeを含有させずに、不活性ガスとしてArのみを用いた例を示す。実施例3と同様に、サファイヤガラス20の表面には反射防止膜310が、裏面には反射防止膜410が被覆されており、いずれも最表層(第5層)からSi3N4、SiO2、Si3N4、SiO2、Si3N4の順番からなる5層構造であり、膜厚は最表層(第5層)から10nm、90nm、80nm、30nm、20nmである時計用カバーガラスを作製した。SiO2の屈折率は1.45、Si3N4の屈折率は1.93である。このような反射防止膜をサファイヤガラスの表裏面に成膜することによって図4に示すような反射率特性を得ることができた。
【0039】
以下に各層の成膜条件を下記に示す。
【0040】
以上のようにしていずれの膜形成において不活性ガスとしてはArのみを用いて、サファイヤガラス20の表面に反射防止膜310を積層させた。その後、サファイヤガラス20を裏返し、サファイヤガラス20の裏面に表面と同様の操作を行い、反射防止膜410を積層させた。裏面の反射防止膜410も表面の反射防止膜310と同じ成膜条件であり、その膜構成も同じである。すなわち、最表層からSi3N4、SiO2、Si3N4、SiO2、Si3N4の順番であり、膜厚は最表層(第5層)から10nm、90nm、80nm、30nm、20nmとなっている。本実施例によって、図2に示すようなサファイヤガラス20の表裏面に反射防止膜が被覆された時計用カバーガラスが完成した。
【0041】
以上のようにして得られた実施例1〜4と比較例1と2について最表層のHeあるいはNeの含有量の測定分析結果と硬度および耐摩耗性を評価するため、粒径10μmのアルミナ粒を分散させたラッピングフィルムと反射防止膜をコートした時計用カバーガラスを接触荷重500gにて接触させ、カバーガラスを複数回往復運動させて、カバーガラスに傷が入り始める往復回数を評価する摺動摩耗試験をおこなった。この評価では100回以上摺動して傷が発生しなければ、その硬度、耐摩耗性は実用上充分であり、実際に携帯し、長期間使用しても傷や剥離はほとんど発生しない。その結果、表面がくもることもなく、指針や文字板が見えにくくならないことが既に本発明者において確認されている。さらにはビッーカース硬度計により表面の硬度を測定した。その結果を表1に示す。尚、HeおよびNeの含有量はSIMS(二次イオン質量分析法)の分析結果より求めた。
【0042】
【表1】
【0043】
表から分かるように、実施例1〜4においては最表層からArと共にHeあるいはNeが検出され、これらが膜中に含有されていることが確認された。一方、比較例1および2においてはいずれの層からもHeは検出されなかった。耐摩耗性を評価するための摺動摩耗試験結果では、実施例1〜4においては100回以上摺動しても傷の発生は全くなく、良好な耐摩耗性が得られ、反射率特性は摺動摩耗試験後も図4に示すままであった。
【0044】
一方、比較例1および2ではいずれも摺動摩耗試験20〜30往復で傷が入り、表面にくもりが発生した。その結果、反射率も図4に示す曲線よりも大きく変化し、反射率が5%を越える波長領域が発生した。ビッカース硬度計による表面硬度測定でも実施例1〜4の方が硬いことが確認された。
【0045】
このように本発明によって、表面の硬度が高く、耐摩耗性に優れ、長期間携帯しても傷の入りにくい反射防止機能を有した時計用カバーガラスを提供することが可能となる。
【0046】
これらの上記実施例では時計用カバーガラスの表面と裏面の両方の最表層にArよりも原子半径の小さい不活性元素であるHeあるいはNeを含有させたが、裏面は通常、文字板側に面しており、他の物と接触することはないので表面の最表層のみに含有させるだけで、本発明の効果を得ることが可能である。また、実施例では最表層のみにHeあるいはNeを含有させたが、これに限定せず、他のいずれかの層にも、または全ての層にも含有させてもその効果が失われることがない。また、含有させる不活性元素はHeとNeを混合させても良く、その比率もとくに限定するものではない。また、実施例では酸化物膜としてSiO2の例について示したが、他の酸化物膜であるAl2O3、TiO2、ZrO2またはTa2O5でも実施例と同様の効果が得られることが本発明者によって確認されている。また、実施例では片面に4層あるいは5層の例を示したが、反射防止膜の積層数、組合せは数多くあり、これに限定するものではない。また、ガラス基材も実施例ではサファイヤガラスの例を示したが、これに限定されるものではなく、ソーダガラスや青板ガラス、白板ガラスあるいはプラスチック製ガラスでも良い。
【0047】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明の時計用カバーガラスではガラス基材に酸化物膜または窒化物膜を積層した反射防止膜を備えており、少なくとも表面の最表層にArよりも原子半径の小さい不活性ガスを含有させることによって反射防止膜表面の硬度が上昇し、耐摩耗性が著しく上昇する。その結果、長期間携帯しても反射防止膜が表面に細かい傷が入ったり、剥離したりして、表面がくもってしまい、指針や文字板が見えにくくなってしまうことない反射防止機能を有した時計用カバーガラスを提供することが可能となる。また、本発明によれば反射防止機能の劣化がないために文字板の装飾性が経時変化によって損なわれることがなくなる効果もある。また、文字板に太陽電池が装着されており、カバーガラスを通過した光を受光して時計を駆動させるための起電力を発生させる時計の場合、本発明では反射防止機能が劣化することがないため太陽電池の発電効率の劣化も抑制できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】反射防止膜を被覆した本発明の時計用カバーガラスの構造を示す断面模式図である。
【図2】反射防止膜を被覆した本発明の時計用カバーガラスの構造を示す断面模式図である。
【図3】反射防止膜を積層するためのスパッタリング装置の断面模式図である。
【図4】反射防止膜を被覆した本発明の時計用カバーガラスの反射率の特性を示す反射率特性スペクトル図である。
【符号の説明】
10、20 サファイヤガラス
110、210、310、410 反射防止膜
30 Siターゲット
31 真空チャンバー
32 ガス導入口
34 DC電源[0001]
TECHNICAL FIELD OF THE INVENTION
The present invention relates to a watch cover glass, and more particularly to a watch cover glass having an antireflection function and a scratch resistance over a long period of time.
[0002]
[Prior art]
Blue glass (soda glass), white glass, sapphire glass and the like are used for the cover glass of the watch. Each of these cover glasses has a large reflectance in the visible light region, and the visibility of the hands and the dial is not sufficient. Therefore, in a clock that checks the time in various environments such as indoors, outdoors, and day and night, the external light and illumination change, and there is a problem that the external light is reflected on the surface of the cover glass and the time display is difficult to see. .
[0003]
As a solution for this, coating an antireflection film on both sides or at least one side of a cover glass has already been disclosed in Japanese Utility Model Laid-Open Publication No. 48-77456. Generally, an antireflection film is designed by combining a metal or inorganic oxide film, nitride film, fluoride film, and sulfide film having an appropriate refractive index so as to have a desired reflectance in a limited wavelength region, and combining them. Be composed.
[0004]
[Problems to be solved by the invention]
However, these antireflection films are all inferior in hardness and scratch resistance. For example, when a wristwatch equipped with a cover glass coated with an antireflection film having magnesium fluoride as the outermost layer is carried for a long time, the antireflection film is However, there has been a problem that the surface is finely scratched or peeled off, and the surface becomes cloudy, making it difficult to see the hands and the dial.
[0005]
An object of the present invention is to solve the above problems and to provide a watch cover glass having a high hardness, excellent wear resistance, and an antireflection function that is hardly damaged even when carried for a long time.
[0006]
[Means for Solving the Problems]
In order to achieve the above object, a watch cover glass of the present invention employs the following configuration.
[0007]
The watch cover glass of the present invention is a watch cover glass provided with an antireflection film in which an oxide film or a nitride film is laminated on a glass substrate, and at least the outermost surface layer has an atomic radius smaller than that of Ar. It is characterized by containing an active element.
[0008]
Further, in the timepiece cover glass of the present invention, the inert element having an atomic radius smaller than Ar is preferably He or Ne. .
[0009]
Further, in the timepiece cover glass of the present invention, the oxide film is preferably made of any one of SiO 2 , Al 2 O 3 , TiO 2 , ZrO 2 and Ta 2 O 5 .
[0010]
Furthermore, in the timepiece cover glass of the present invention, the nitride film is preferably made of Si 3 N 4 .
[0011]
Further, in the timepiece cover glass of the present invention, it is preferable that an oxide film or a nitride film is formed by a sputtering method.
[0012]
(Action)
The inventor of the present invention has eagerly studied the antireflection film of the watch cover glass. As a result, the antireflection film in which the oxide film or the nitride film was laminated on the glass base material has at least the outermost layer on the surface, which is more atomic than Ar By including an inert element having a small radius, it has become possible to provide a watch cover glass having a high hardness, excellent wear resistance, and an antireflection function that is hardly damaged even when carried for a long time. . At this time, the inert element having an atomic radius smaller than Ar is preferably He or Ne. Further, as the oxide film, SiO 2 , Al 2 O 3 , TiO 2 , ZrO 2 or Ta 2 O 5 is used. It is preferable that the film is composed of any one of the above, further, it is preferable that the nitride film is Si 3 N 4 , and that these oxide films or nitride films are formed by a sputtering method. I found something. Other fluoride films and sulfide films have low strength (hardness) and are difficult to adopt.
[0013]
Methods for producing an anti-reflection film made of an oxide or nitride film include a vapor deposition method, a sputtering method, an ion plating method, a CVD method, and the like. In order to form a dense film, a sputtering method is suitable. Usually, Ar gas is used in the sputtering method, but O 2 gas is generally added in reactive sputtering for forming an oxide film, and N 2 gas is generally added in forming a nitride film. At this time, it is a well-known fact that Ar gas is taken into the film.
[0014]
The present inventor has found that when Ar gas is taken into the film, the packing density becomes smaller as compared with the bulk density, and convex protrusions are formed on the surface of the film, which have low hardness and poor scratch resistance. It was found to be the cause. As a result of investigations for this countermeasure, the packing density is increased by introducing an inert gas having a smaller atomic radius than Ar such as He or Ne at the time of sputtering into the film and increasing the packing density. It was found that the convex protrusions disappeared and a dense and strong film was formed. This is probably because the atomic radii of He and Ne are small, the gas permeability is high, and the amount contained in the film is smaller than that of Ar. At this time, the content of He and Ne taken into the film was 1.0 at% or less. In addition, since an inert gas such as He or Ne has a higher ionization energy than Ar, particles repelled from a target during sputtering are easily ionized, which is also expected to be a factor for forming a dense and strong film. I have. Further, in some cases, the discharge becomes unstable by sputtering with He or Ne gas. In this case, it has been confirmed that the effect is not changed even if Ar having a flow rate ratio of up to 20% is added.
[0015]
The above-mentioned effects are common to both oxide films and nitride films, and thus, at least the outermost oxide film or nitride film on the surface is made of He having a smaller atomic radius than Ar. It is possible to provide a watch cover glass having an antireflection film having high hardness, excellent abrasion resistance, and resistant to scratches even when carried for a long period of time by containing an inert element such as Ni or Ne. Become.
[0016]
BEST MODE FOR CARRYING OUT THE INVENTION
Hereinafter, embodiments of the present invention will be described with reference to the drawings.
[0017]
FIG. 1 is a schematic sectional view showing the structure of the watch cover glass of the present invention. The front and back surfaces of the sapphire glass 10 are coated with anti-reflection films 110 and 120 made of an oxide film or a nitride film. FIG. 3 is a schematic sectional view of a sputtering apparatus for laminating an antireflection film. In the present invention, a DC reactive sputtering device was used. The target is Si, and sputtering is performed by introducing an inert gas such as Ar, He, or Ne, or O 2 or N 2 gas from the gas inlet 32 and applying a voltage to the Si target, and laminating on the sapphire glass 10. I do. A film formed by a sputtering method is an oxide film or a nitride film, which can be formed by switching between reactive gases O 2 and N 2 . In the present invention, a He gas or a Ne gas is introduced at the time of sputtering when forming the outermost layer 14 of the antireflection film 110 on the surface of FIG. 1 at least, and He or Ne is contained in the outermost layer 14.
[0018]
The anti-reflection coating depends greatly on the number of oxide and nitride films to be laminated, the arrangement order, the refractive index and the thickness of each film, and the reflectance characteristics that meet the specifications are calculated by simulation and optimized. can do. Further, the refractive indexes of the oxide film and the nitride film can be changed depending on sputtering conditions.
[0019]
The antireflection film for a watch preferably has a reflectance of 5% or less in the visible light region. For this purpose, the antireflection film is formed on the front and back surfaces of the sapphire glass 10 as shown in FIG. Is required.
[0020]
【Example】
A specific embodiment of the present invention will be described below with reference to FIGS.
(Example 1)
In the watch cover glass in this embodiment, as shown in FIG. 1, the surface of the sapphire glass 10 is coated with an antireflection film 110, and the back surface is coated with an antireflection film 210. The film configurations of the anti-reflection film 110 and the anti-reflection film 210 are the same, and each has four layers. The outermost layer (fourth layer) SiO 2, Si 3 N 4, a sequence of SiO 2, Si 3 N 4, the film thickness is the outermost layer (fourth layer) from 100nm, 90nm, 20nm, 40nm. The refractive index of SiO 2 is 1.45, and the refractive index of Si 3 N 4 is 1.93. By forming such an antireflection film on the front and back surfaces of sapphire glass, it is possible to obtain a reflectance characteristic as shown in FIG.
[0021]
Here, the reflectance characteristics greatly depend on the number of layers and the arrangement order of the stacked oxide and nitride films, the refractive index and the thickness of each film, and various reflectance characteristics are calculated by simulation and optimized. can do. Further, the refractive indexes of SiO 2 and Si 3 N 4 can also be changed by sputtering conditions.
[0022]
FIG. 3 shows a conceptual diagram of a DC reactive sputtering apparatus which is a method for manufacturing the antireflection film of the present embodiment.
[0023]
The Si target 30 is placed in the vacuum chamber 31, and a DC voltage is applied to the Si target 30. The sapphire glass 10 is installed so as to face the Si target 30. A DC power supply 34 is connected to the Si target 30.
[0024]
The inside of the vacuum chamber 31 is evacuated to 1 × 10 −5 torr by a vacuum pump (not shown), and the sapphire glass 10 is heated to about 300 ° C. by a heater (not shown). Then, a mixed gas was introduced from the gas inlet 32, DC reactive sputtering was performed under the following conditions, and the antireflection film 110 was laminated. Film formation of SiO 2 and Si 3 N 4 is possible by switching the gas type and gas flow ratio. The film forming conditions for each layer are shown below.
[0025]
As described above, the antireflection film 110 is laminated on the surface of the sapphire glass 10. Thereafter, the sapphire glass 10 was turned over, and the same operation as the front surface was performed on the back surface of the sapphire glass 10 to laminate the antireflection film 210. The anti-reflection film 210 on the back surface has the same film forming conditions as the anti-reflection film 110 on the front surface, and the film configuration is also the same. That is, the order is SiO 2 , Si 3 N 4 , SiO 2 , and Si 3 N 4 from the outermost layer (fourth layer), and the film thickness is 100 nm, 90 nm, 20 nm, and 40 nm from the outermost layer (fourth layer). ing. According to this embodiment, a watch cover glass in which the antireflection film is coated on the front and back surfaces of the sapphire glass 10 as shown in FIG. 1 is completed.
[0026]
(Example 2)
Next, as Example 2, an example in which Ne is contained in the outermost layer of SiO 2 instead of containing He will be described. As in the first embodiment, the front surface of the sapphire glass 10 is coated with an anti-reflection film 110, and the back surface thereof is coated with an anti-reflection film 210. From the outermost layer (fourth layer), SiO 2 , Si 3 N 4 , A watch cover glass having a thickness of 100 nm, 90 nm, 20 nm, and 40 nm from the outermost layer (fourth layer) was prepared in the order of SiO 2 and Si 3 N 4 . The refractive index of SiO 2 is 1.40, and the refractive index of Si 3 N 4 is 1.95. By forming such an antireflection film on the front and back surfaces of sapphire glass, it is possible to obtain a reflectance characteristic as shown in FIG.
[0027]
The film forming conditions for each layer are shown below.
[0028]
As described above, the antireflection film 110 is laminated on the surface of the sapphire glass 10. Thereafter, the surface of the sapphire glass 10 was turned over, and the same operation as the front surface was performed on the back surface of the sapphire glass 10 to laminate the antireflection film 210. The anti-reflection film 210 on the back surface has the same film forming conditions as the anti-reflection film 110 on the front surface, and the film configuration is also the same. That is, the order is SiO 2 , Si 3 N 4 , SiO 2 , and Si 3 N 4 from the outermost layer (fourth layer), and the film thickness is 100 nm, 90 nm, 10 nm, and 40 nm from the outermost layer (fourth layer). ing. According to this embodiment, a watch cover glass in which the antireflection film is coated on the front and back surfaces of the sapphire glass 10 as shown in FIG. 1 is completed.
[0029]
(Example 3)
Next, Example 3 shows an example in which the outermost layer is Si 3 N 4 and He is contained therein. As shown in FIG. 2, the front surface of the sapphire glass 20 is coated with an anti-reflection film 310, and the back surface is coated with an anti-reflection film 410. In each case, the outermost layer (fifth layer) starts with Si 3 N 4 and SiO 2. , Si 3 N 4 , SiO 2 , Si 3 N 4 , a watch cover glass having a five-layer structure in the order of 10 nm, 90 nm, 80 nm, 30 nm, and 20 nm from the outermost layer (fifth layer). Produced. The refractive index of SiO 2 is 1.45, and the refractive index of Si 3 N 4 is 1.93. By forming such an antireflection film on the front and back surfaces of the sapphire glass, it is possible to obtain a reflectance characteristic as shown in FIG.
[0030]
The film forming conditions for each layer are shown below.
[0031]
As described above, the antireflection film 310 was laminated on the surface of the sapphire glass 20. Thereafter, the sapphire glass 20 was turned over, and the same operation as the front surface was performed on the back surface of the sapphire glass 20 to laminate the antireflection film 410. The anti-reflection film 410 on the back surface has the same film forming conditions as the anti-reflection film 310 on the front surface, and the film configuration is also the same. That is, the order from the outermost layer Si 3 N 4, SiO 2, Si 3 N 4, SiO 2, Si 3 N 4, the film thickness is 10nm from the surface layer (fifth layer), 90 nm, 80 nm, 30 nm, 20 nm It has become. According to this example, a watch cover glass in which the front and back surfaces of the sapphire glass 20 were coated with an antireflection film as shown in FIG. 2 was completed.
[0032]
(Example 4)
Next, as Example 4, an example in which the outermost layer is Si 3 N 4 and Ne is contained therein will be described. As shown in FIG. 2, the front surface of the sapphire glass 20 is coated with an anti-reflection film 310, and the back surface is coated with an anti-reflection film 410. In each case, the outermost layer (fifth layer) starts with Si 3 N 4 and SiO 2. , Si 3 N 4 , SiO 2 , and Si 3 N 4 in the order of 5 layers, and the film thickness is 10 nm, 90 nm, 70 nm, 20 nm, and 10 nm from the outermost layer (fifth layer). Produced. The refractive index of SiO 2 is 1.40, and the refractive index of Si 3 N 4 is 1.95. By forming such an antireflection film on the front and back surfaces of sapphire glass, the reflectance characteristics as shown in FIG. 4 could be obtained.
[0033]
The film forming conditions for each layer are shown below.
[0034]
As described above, the antireflection film 310 was laminated on the surface of the sapphire glass 20. Thereafter, the sapphire glass 20 was turned over, and the same operation as the front surface was performed on the back surface of the sapphire glass 20 to laminate the antireflection film 410. The anti-reflection film 410 on the back surface has the same film forming conditions as the anti-reflection film 310 on the front surface, and the film configuration is also the same. That is, from the outermost layer, Si 3 N 4 , SiO 2 , Si 3 N 4 , SiO 2 , and Si 3 N 4 are in order, and the film thickness is 10 nm, 90 nm, 70 nm, 20 nm, and 10 nm from the outermost layer (fifth layer). It has become. According to this example, a watch cover glass in which the front and back surfaces of the sapphire glass 20 were coated with an antireflection film as shown in FIG. 2 was completed.
[0035]
(Comparative Example 1)
Next, as Comparative Example 1, an example in which He and Ne are not contained in the outermost layer of SiO 2 and only Ar is used as the inert gas will be described. As in the first embodiment, the surface of the sapphire glass 10 as shown in FIG. 1 is coated with an anti-reflection film 110, and the back surface is coated with an anti-reflection film 210. From the outermost layer (fourth layer) to SiO 2 , Si 3 N 4 , SiO 2 , and Si 3 N 4 , and a watch cover glass having a film thickness of 100 nm, 90 nm, 20 nm, and 40 nm from the outermost layer (fourth layer) was prepared. The refractive index of SiO 2 is 1.45, and the refractive index of Si 3 N 4 is 1.93. By forming such an antireflection film on the front and back surfaces of sapphire glass, the reflectance characteristics as shown in FIG. 4 could be obtained.
[0036]
The film forming conditions for each layer are shown below.
[0037]
As described above, the antireflection film 110 was laminated on the surface of the sapphire glass 10 using only Ar as the inert gas in forming any of the films. Thereafter, the sapphire glass 10 was turned over, and the same operation as the front surface was performed on the back surface of the sapphire glass 10 to laminate the antireflection film 210. The anti-reflection film 210 on the back surface has the same film forming conditions as the anti-reflection film 110 on the front surface, and the film configuration is also the same. That is, the order is SiO 2 , Si 3 N 4 , SiO 2 , and Si 3 N 4 from the outermost layer (fourth layer), and the film thickness is 100 nm, 90 nm, 20 nm, and 40 nm from the outermost layer (fourth layer). ing. According to this comparative example, a watch cover glass in which the front and back surfaces of the sapphire glass 10 were coated with an antireflection film as shown in FIG. 1 was completed.
[0038]
(Comparative Example 2)
Next, as Comparative Example 2, an example in which He and Ne are not contained in Si 3 N 4 of the outermost layer and only Ar is used as the inert gas will be described. As in the third embodiment, the front surface of the sapphire glass 20 is coated with an anti-reflection film 310, and the back surface is coated with an anti-reflection film 410. In each case, the outermost layer (fifth layer) starts with Si 3 N 4 and SiO 2. , Si 3 N 4 , SiO 2 , Si 3 N 4 , a watch cover glass having a five-layer structure in the order of 10 nm, 90 nm, 80 nm, 30 nm, and 20 nm from the outermost layer (fifth layer). Produced. The refractive index of SiO 2 is 1.45, and the refractive index of Si 3 N 4 is 1.93. By forming such an antireflection film on the front and back surfaces of sapphire glass, the reflectance characteristics as shown in FIG. 4 could be obtained.
[0039]
The film forming conditions for each layer are shown below.
[0040]
As described above, the antireflection film 310 was laminated on the surface of the sapphire glass 20 using only Ar as the inert gas in any of the film formations. Thereafter, the sapphire glass 20 was turned over, and the same operation as the front surface was performed on the back surface of the sapphire glass 20 to laminate the antireflection film 410. The anti-reflection film 410 on the back surface has the same film forming conditions as the anti-reflection film 310 on the front surface, and the film configuration is also the same. That is, the order from the outermost layer Si 3 N 4, SiO 2, Si 3 N 4, SiO 2, Si 3 N 4, the film thickness is 10nm from the surface layer (fifth layer), 90 nm, 80 nm, 30 nm, 20 nm It has become. According to this example, a watch cover glass in which the front and back surfaces of the sapphire glass 20 were coated with an antireflection film as shown in FIG. 2 was completed.
[0041]
In order to evaluate the hardness and abrasion resistance of the examples 1 to 4 and the comparative examples 1 and 2 obtained as described above in order to evaluate the measurement results of the content of He or Ne in the outermost layer and the hardness and wear resistance, alumina particles having a particle size of 10 μm were used. A watch cover glass coated with an anti-reflective film and a wrapping film in which the glass is dispersed is contacted with a contact load of 500 g, and the cover glass is reciprocated a plurality of times to evaluate the number of reciprocations at which the cover glass starts to be scratched. An abrasion test was performed. In this evaluation, if scratches do not occur after sliding 100 times or more, the hardness and abrasion resistance are practically sufficient, and scars and peeling hardly occur even when actually carried and used for a long time. As a result, it has already been confirmed by the present inventor that the surface does not become cloudy and the hands and the dial do not become difficult to see. Further, the surface hardness was measured with a Vickers hardness tester. Table 1 shows the results. The contents of He and Ne were determined from SIMS (secondary ion mass spectrometry) analysis results.
[0042]
[Table 1]
[0043]
As can be seen from the table, in Examples 1 to 4, He or Ne was detected together with Ar from the outermost layer, and it was confirmed that these were contained in the film. On the other hand, in Comparative Examples 1 and 2, He was not detected from any of the layers. According to the sliding wear test results for evaluating the abrasion resistance, in Examples 1 to 4, no scratch was generated even after sliding 100 times or more, good abrasion resistance was obtained, and the reflectance characteristics were Even after the sliding wear test, it was as shown in FIG.
[0044]
On the other hand, in Comparative Examples 1 and 2, scratches were formed in the sliding wear test in 20 to 30 reciprocations, and clouding occurred on the surface. As a result, the reflectance also changed more greatly than the curve shown in FIG. 4, and a wavelength region where the reflectance exceeded 5% occurred. It was also confirmed that Examples 1 to 4 were harder in surface hardness measurement with a Vickers hardness meter.
[0045]
As described above, according to the present invention, it is possible to provide a watch cover glass having an anti-reflection function having a high surface hardness, excellent abrasion resistance, and resistant to scratches even when carried for a long period of time.
[0046]
In these examples, the outermost layer on both the front and back surfaces of the watch cover glass contains He or Ne, which is an inert element having an atomic radius smaller than Ar, but the back surface is usually faced to the dial side. Since it does not come into contact with other objects, the effect of the present invention can be obtained only by containing it in the outermost surface layer. In the examples, He or Ne is contained only in the outermost layer. However, the present invention is not limited to this, and the effect may be lost even if it is contained in any other layer or in all the layers. Absent. The inert element to be contained may be a mixture of He and Ne, and the ratio is not particularly limited. Further, in the example, the example of SiO 2 was shown as the oxide film. However, the same effect as that of the example can be obtained by using another oxide film such as Al 2 O 3 , TiO 2 , ZrO 2 or Ta 2 O 5. This has been confirmed by the present inventors. Further, in the embodiment, an example in which four or five layers are provided on one surface is shown. However, the number and combination of antireflection films are many, and the present invention is not limited to this. Further, the glass substrate is exemplified by sapphire glass in the embodiment, but is not limited thereto, and may be soda glass, blue plate glass, white plate glass, or plastic glass.
[0047]
【The invention's effect】
As described above, the watch cover glass of the present invention includes an antireflection film in which an oxide film or a nitride film is laminated on a glass substrate, and has at least the outermost surface layer having an atomic radius smaller than that of Ar. By containing an inert gas, the hardness of the surface of the antireflection film is increased, and the wear resistance is significantly increased. As a result, the anti-reflection film had an anti-reflection function that did not cause fine scratches on the surface or peeled off even if it was carried for a long time, and the surface became cloudy, making it difficult to see the hands and dial. It becomes possible to provide a watch cover glass. Further, according to the present invention, since there is no deterioration of the anti-reflection function, there is also an effect that the decorativeness of the dial is not impaired by aging. Further, in the case of a timepiece in which a solar cell is mounted on the dial and light is received through the cover glass to generate an electromotive force for driving the timepiece, the antireflection function is not deteriorated in the present invention. Therefore, there is an effect that deterioration of the power generation efficiency of the solar cell can be suppressed.
[Brief description of the drawings]
FIG. 1 is a schematic cross-sectional view showing the structure of a watch cover glass of the present invention coated with an antireflection film.
FIG. 2 is a schematic cross-sectional view showing the structure of the watch cover glass of the present invention covered with an antireflection film.
FIG. 3 is a schematic sectional view of a sputtering apparatus for laminating an antireflection film.
FIG. 4 is a reflectance characteristic spectrum diagram showing the reflectance characteristics of the watch cover glass of the present invention coated with an antireflection film.
[Explanation of symbols]
10, 20 Sapphire glass 110, 210, 310, 410 Antireflection film 30 Si target 31 Vacuum chamber 32 Gas inlet 34 DC power supply