JP2004084577A - 2サイクルエンジンの制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】エンジンと同期回転するリラクタのエッジを検出してリラクタ入り信号P1及びリラクタ抜け信号P2を発生し、ギアの歯を検出してギア信号を発生する信号発生装置2を設ける。入り信号P1の発生位置と抜け信号P2の発生位置との間で発生するギア信号の数、抜け信号P2の発生位置と入り信号P1の発生位置との間で発生するギア信号の数等が、エンジンの回転方向により異なることを利用して始動時の回転方向を判定し、始動時に回転方向が反転していると判定されたときにエンジンを失火させてその逆転を防止する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、2サイクルエンジンの点火動作や燃料噴射動作を制御する制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
スクーター、スノーモービル、バギー等のように、簡便であることを重視する乗り物の原動機として、2サイクルエンジンが多く用いられている。またこれらの乗り物では、スタータモータを備えた始動装置を用いずに、リコイルスタータや、キックスタータ等の、人力により操作する始動装置を用いてエンジンを始動させることが多い。
【0003】
近年、排気ガスの浄化や、燃費の節約などを図るために、エンジンの制御をきめ細かく行うことが必要になっている。そのため、2サイクルエンジンを制御する制御装置として、マイクロプロセッサを備えたものが普通に用いられるようになっている。
【0004】
マイクロプロセッサを用いてエンジンを制御する場合には、エンジンの回転速度を検出したり、演算された点火時期を検出したりするために、常にマイクロプロセッサにエンジンの回転情報(クランク角情報及び回転速度情報)を与える必要がある。
【0005】
そのため、マイクロプロセッサを用いたエンジンの制御装置においては、エンジンの回転に同期して信号を発生する信号発生装置をエンジンに取り付けて、この信号発生装置の出力からエンジンの点火時期や燃料の噴射開始時期などを制御するために必要なエンジンの回転情報を得るようにしている。
【0006】
エンジンに取り付けられる信号発生装置としては、1つのリラクタと、等角度間隔で配置された多数の歯部を有するギアとを有して、エンジンのクランク軸に取り付けられたロータと、リラクタの回転方向の前端側エッジ及び後端側エッジをそれぞれ検出してリラクタ入り信号及びリラクタ抜け信号を発生するリラクタ入り信号・抜け信号発生部と、上記ギアの各歯部の回転方向の前端側エッジ及び後端側エッジのうちのいずれか一方を検出する毎に(一定のクランク角毎に)ギア信号を発生するギア信号発生部とを備えたものがよく用いられている。
【0007】
上記入り信号・抜け信号発生部は、リラクタの回転方向の前端側エッジ及び後端側エッジをそれぞれ検出したときに極性が異なる2つのパルス信号を発生する1つのパルサと、このパルサが発生する2つのパルス信号をマイクロプロセッサが認識し得る波形のリラクタ入り信号及びリラクタ抜け信号に変換する波形整形回路とにより構成される。
【0008】
またギア信号発生部は、ロータに設けられたギアの各歯部の回転方向の前端側エッジ及び後端側エッジをそれぞれ検出したときに極性が異なる2つのパルスを発生するギアセンサ(上記はパルサと同様の構造を有するセンサ)と、該ギアセンサが出力するパルスのうち、各歯部の回転方向の前端側エッジ及び後端側エッジのうちのいずれか一方を検出したときに発生するパルスをマイクロプロセッサが認識し得る波形のギア信号に変換する波形整形回路とにより構成される。ギア信号発生部が発生する一連のギア信号は、一定の角度毎に発生する信号であり、例えば、ギアが30個の歯部を等角度間隔で有している場合には、クランク軸が12°回転する毎に発生するパルス波形の信号である。
【0009】
上記のような信号発生装置を用いる場合には、リラクタ入り信号及びリラクタ抜け信号の発生間隔や、所定個数のギア信号が発生する間の時間(クランク軸が一定角度回転するのに要する時間)からエンジンの回転速度を検出することができる。また、リラクタ入り信号及びリラクタ抜け信号からエンジンの特定のクランク角位置を検出することができ、これらの信号により検出された特定のクランク角位置を、点火時期の計測や燃料噴射開始時期(エンジンに燃料を供給する手段としてインジェクタを用いる場合)の計測を開始する基準位置として用いることができる。
【0010】
マイクロプロセッサは、信号発生装置の出力から検出した回転速度に対してエンジンの点火時期や燃料噴射開始時期を演算し、リラクタ入り信号及び(または)リラクタ抜け信号により特定のクランク角位置が検出されたときに、点火時期の計測や燃料噴射開始時期の計測を開始して、それぞれの計測が完了したときに点火動作や燃料の噴射動作を行わせる。
【0011】
ところで、2サイクルエンジンは、正逆両方向に回転することができるため、始動時に何らかの原因でクランキング速度が不足し、エンジンのピストンが上死点を越えることができない状態が生じると、エンジンが逆転するおそれがある。
【0012】
例えば、人力により操作する始動装置によりエンジンを始動する際に、操作力の不足により十分なクランキング速度が得られない場合には、エンジンのピストンが上死点を越えることができないことがある。このような状態でエンジンが点火されると、ピストンが押し戻され、エンジンの回転方向が反転するおそれがある。またマイクロプロセッサにより点火時期を制御するエンジンでは、始動時の点火時期の検出を正確に行うことができなかった場合に、過進角したタイミングでエンジンが点火されて、エンジンの回転方向が反転するおそれがある。
【0013】
そこで、始動時に逆転することを禁止する必要がある2サイクルエンジンにおいては、始動時の回転方向を判定する回転方向判定手段を設けて、該回転方向判定手段によりエンジンが逆方向に回転していると判定されたときに、エンジンを失火させて、エンジンが逆転したままの状態で運転されるのを防止するようにしている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、マイクロプロセッサを用いて2サイクルエンジンを制御する制御装置においては、エンジンに取り付けた信号発生装置からエンジンの回転速度情報とクランク角情報とを得ているが、始動時にエンジンが逆転するのを防止する必要がある場合には、速度情報及びクランク角情報に加えて、エンジンの回転方向の情報をも得る必要がある。このような場合、従来は、リラクタ入り信号・抜け信号発生部に2つのパルサを設けて、両パルサが発生するパルス信号の位相関係がエンジンの回転方向により異なることを利用して回転方向を検出するようにしていた。そのため、信号発生装置が大形化し、エンジンのコストが高くなるという問題があった。
【0015】
本発明の目的は、信号発生装置に1つのパルサとリングギアセンサとを設けるだけで、回転速度情報と、クランク角情報と、回転方向の情報とを得て、始動時にエンジンの回転方向が逆転するのを防ぐことができるようにした2サイクルエンジンの制御装置を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は、2サイクルエンジンの少なくとも点火動作を制御する制御装置を対象としたもので、本発明においては、1つのリラクタと、等角度間隔で配置された多数の歯部を有するギアとを軸線方向に位置をずらした状態で有して、エンジンのクランク軸に取り付けられたロータと、リラクタの回転方向の前端側エッジ及び後端側エッジをそれぞれ検出してリラクタ入り信号及びリラクタ抜け信号を発生するリラクタ入り信号・抜け信号発生部と、ギアの各歯部の回転方向の前端側エッジ及び後端側エッジのうちのいずれか一方を検出する毎にギア信号を発生するギア信号発生部とを備えた信号発生装置と、リラクタ抜け信号が発生してからリラクタ入り信号が発生するまでの間に発生するギア信号の数、各リラクタ入り信号が発生してから次のリラクタ入り信号が発生するまでの間に発生するギア信号の数、リラクタ入り信号が発生してからリラクタ抜け信号が発生するまでの間に発生するギア信号の数、及び各リラクタ抜け信号が発生してから次のリラクタ抜け信号が発生するまでの間に発生するギア信号の数のそれぞれが、エンジンの始動操作開始後エンジンが正回転を継続したときと、エンジンのピストンが上死点を越えることができずにエンジンが逆転したときとで異なることを利用して、エンジンの始動時の回転方向を判定する始動時回転方向判定手段と、始動時回転方向判定手段によりエンジンが正回転していると判定されたときに始動時の点火時期として予め定められた時期にエンジンを点火するために必要な処理を行い、始動時回転方向判定手段によりエンジンが逆回転していると判定されたときにはエンジンを失火させるために必要な処理を行う始動時点火制御手段とを設けた。
【0017】
上記の構成では、始動時の点火動作のみを制御しているが、燃料噴射装置により燃料が供給される2サイクルエンジンを制御する場合には、上記始動時点火制御手段の外に、始動時回転方向判定手段による判定結果に応じて始動時の燃料噴射動作を制御する始動時噴射制御手段を設けるのが好ましい。
【0018】
この始動時噴射制御手段は、例えば、始動時回転方向判定手段によりエンジンが正回転していると判定されている状態では、始動時の噴射開始時期として予め定められた時期が検出されたときにエンジンに燃料を供給する燃料噴射装置に燃料噴射を行わせるために必要な処理を行い、始動時回転方向判定手段によりエンジンが逆回転していると判定されている状態では、燃料噴射装置からの燃料噴射を中止させるために必要な処理を行うように構成する。
【0019】
本発明の好ましい態様では、上記始動時回転方向判定手段を、リラクタ抜け信号が発生してからリラクタ入り信号が発生するまでの間に発生するギア信号の数を抜け・入り間ギアカウント値として求める抜け・入り間ギア信号カウント手段と、各リラクタ入り信号が発生してから次のリラクタ入り信号が発生するまでの間に発生したギア信号の数を入り・入り間ギアカウント値として求める入り・入り間ギア信号カウント手段と、リラクタ入り信号が発生してからリラクタ抜け信号が発生するまでの間に発生したギア信号の数を入り・抜け間ギアカウント値として求める入り・抜け間ギアカウント手段と、各リラクタ抜け信号が発生してから次のリラクタ抜け信号が発生するまでの間に発生したギア信号の数を抜け・抜け間ギアカウント値として求める抜け・抜け間ギアカウント手段と、信号発生装置が発生するいずれかの信号の発生間隔からエンジンの回転速度を検出する回転速度検出手段と、回転速度検出手段により検出された回転速度がエンジンのアイドリング速度よりも低く設定された設定速度以下の状態で前記リラクタ入り信号が発生したときに抜け・入り間ギアカウント値及び入り・入り間ギアカウント値をそれぞれに対して設定した第1の判定値及び第2の判定値と比較して、抜け・入り間ギアカウント値が第1の判定値未満でかつ入り・入り間ギアカウント値が第2の判定値を超えているときにエンジンが正回転していると判定し、抜け・入り間ギアカウント値が第1の判定値以上のとき及び入り・入り間ギアカウント値が第2の判定値以下のときにエンジンが逆回転していると判定するリラクタ入り時回転方向判定手段と、エンジンの回転速度が設定速度以下の状態でリラクタ抜け信号が発生したときに入り・抜け間ギアカウント値及び抜け・抜け間ギアカウント値をそれぞれに対して設定した第3及び第4の判定値と比較して、入り・抜け間ギアカウント値が第3の判定値未満でかつ抜け・抜け間ギアカウント値が第4の判定値を超えているときにエンジンが正回転していると判定し、入り・抜け間ギアカウント値が第3の判定値以上のとき及び抜け・抜け間ギアカウント値が第4の判定値以下のときにエンジンが逆回転していると判定するリラクタ抜け時回転方向判定手段とにより構成する。
【0020】
この場合、始動時点火制御手段は、リラクタ入り時回転方向判定手段によりエンジンが正回転していると判定されたとき、及びリラクタ抜け時回転方向判定手段によりエンジンが正回転していると判定されたときにエンジンを点火するために必要な処理を行い、リラクタ入り時回転方向判定手段によりエンジンが逆回転していると判定されたとき、及びリラクタ抜け時回転方向判定手段によりエンジンが逆回転していると判定されたときにエンジンを失火させるための処理を行わせるように構成する。
【0021】
この場合も、始動時回転方向判定手段による判定結果に応じて始動時の燃料噴射動作を制御する始動時噴射制御手段を更に設けることができる。この場合に用いる始動時噴射制御手段は、リラクタ入り時回転方向判定手段によりエンジンが正回転していると判定されたとき、及びリラクタ抜け時回転方向判定手段によりエンジンが正回転していると判定されたときには始動時の噴射開始時期として予め定めた時期に燃料噴射を行わせるために必要な処理を行い、リラクタ入り時回転方向判定手段によりエンジンが逆回転していると判定されたとき、及びリラクタ抜け時回転方向判定手段によりエンジンが逆回転していると判定されたときには、燃料噴射を中止するための処理を行わせるように構成する。
【0022】
エンジンを点火するために必要な処理とは、例えば、エンジンの点火時期の計測を開始する位置として定めた基準クランク角位置が検出されたときに、点火時期の計測を開始させ、点火時期の計測を完了したときにエンジンを点火する点火回路に点火信号を与える処理である。
【0023】
またエンジンを失火させるための処理とは、例えば、基準クランク角位置が検出されたときに点火時期の計測を中止して(点火をするための処理を行わないことにより)、点火信号の発生を禁止する処理である。
【0024】
上記のように構成すると、信号発生装置に1つのパルサとギアセンサとを設けるだけで、エンジンの回転方向の情報を得ることができるため、信号発生装置の構成を複雑にすることなく、かつエンジンの大形化を招くことなく、始動時にエンジンが逆転するのを防ぐ機能を持たせることができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明を2サイクル2気筒エンジンに適用した場合の実施形態を説明する。
【0026】
本発明の実施形態の説明は下記の目次に従って行う。
【0027】
(1)ハードウェアの構成及び動作
信号発生装置の構成及び動作
電源部の構成
点火回路の構成及び動作
燃料噴射装置の構成及び動作
(2)マイクロプロセッサにより実現される機能実現手段の構成及び動作
回転速度検出手段
始動時回転方向判定手段
始動時点火制御手段
始動時噴射制御手段
定常時点火制御手段
定常時噴射制御手段
(3)エンジンの始動時から始動完了までの動作
(4)各機能実現手段を実現するためにマイクロプロセッサに実行させるプログラムのアルゴリズム
(1)ハードウェアの構成及び動作
図1ないし図3は本発明に係わる制御装置のハードウェアの構成を示したもので、図1は電気的な構成を示したブロック図、図2及び図3はそれぞれ同実施形態で用いる信号発電機の機械的な構成を示した正面図及び断面図である。
【0028】
なお以下の説明で用いる図面において、#1及び#2の表記は、それぞれエンジンの第1気筒及び第2気筒に係わるものであることを示すものである。
【0029】
図1において1はCPU,ROM,RAM,タイマなどを有するマイクロプロセッサ、2は信号発生装置、3は電源部、4及び5はそれぞれ第1気筒用及び第2気筒用の点火回路、6及び7はそれぞれ第1気筒用及び第2気筒用の燃料噴射装置である。これらの各部の構成は下記の通りである。
【0030】
[信号発生装置の構成及び動作]
信号発生装置2は、図2及び図3に示したように、ロータ10、パルサ11及びギアセンサ12を備えた信号発電機13と、パルサ11が出力する負極性及び正極性のパルス信号Vp1及びVp2をマイクロプロセッサ1が認識し得る波形の信号P1及びP2に変換する波形整形回路14及び15と、ギアセンサ12が出力する負極性及び正極性のパルスVs1及びVs2のうちのいずれか一方(図示の例ではVs2)をマイクロプロセッサが認識し得る波形の信号Pg に変換する波形整形回路16とにより構成されている。
【0031】
図2及び図3に示した信号発電機13において、ロータ10は、鉄等の強磁性材料によりカップ状に形成されたロータヨーク17を備えていて、ロータヨーク17の周壁部17aの外周にリラクタ18が形成されている。図示のリラクタ18は、ヨーク17の周壁部の一部を径方向の内側から外側に打ち出すことにより形成された円弧状の突起からなっている。リラクタ18は、その周方向をロータヨーク17の周方向に一致させた状態で設けられていて、その極弧角は60°に設定されている。ロータヨーク17の周壁部17aの外周には、リラクタ18に対して軸線方向に位置をずらした状態で配置されたリング状のギア19が、圧力嵌めなどの方法により嵌合固定されている。図示のギア19は、鉄などの強磁性材料からなっていて、等角度間隔(12°間隔)で配置された30個の歯部19a,19a,…を有し、リラクタ18よりもヨーク17の底壁部17b側に寄った位置に固定されている。ロータヨーク17の底壁部17aの中央部に形成された孔に回転軸取り付け用のボス17cが嵌合され、ボス17cの一端に設けられたフランジ部17c1がリベット17dによりロータヨーク17の底壁部17bに締結されている。この例では、リラクタ18が外周に形成されたロータヨーク17と、ロータヨーク17に取り付けられたギア19とによりロータ10が構成されている。図示のロータ10は、そのヨーク17の底壁部17bをエンジンのケースと反対側に向けた状態でエンジンのクランク軸に取り付けられる。
【0032】
また図示の例では、ロータヨーク17の周壁部の内周に永久磁石20が固定されて、ロータヨーク17と磁石20とにより磁石回転子が構成されている。この磁石回転子は、エンジンのケースなどに固定された図示しない電機子とともに磁石発電機を構成するために用いられる。
【0033】
パルサ11は、リラクタ18に対向する磁極部11aを先端に有する鉄心と、該鉄心に巻回された信号コイル11b(図1参照)と、該鉄心に磁気結合された永久磁石とを有する公知の誘導子形の信号発電子で、その鉄心の先端の磁極部11aがリラクタ18に対向し得るように配置されて、エンジンのケース等の固定箇所に取り付けられている。
【0034】
パルサ11は、リラクタ18の回転方向の前端側エッジ18aが該パルサの磁極部11aの位置を通過する際(リラクタ18の回転方向の前端側エッジを検出した際)及びリラクタ18の回転方向の後端側エッジ18bが磁極部11aの位置を通過する際(リラクタの回転方向の後端側エッジを検出した際)にそれぞれ生じる磁束(信号コイル11bと鎖交する磁束)の変化に応答して、信号コイル11bから極性が異なるパルス信号Vp1及びVp2(図4A参照)を出力する。本明細書では、これらのパルス信号のうち、リラクタ18の回転方向の前端側エッジが検出されたとき(リラクタがパルサの磁極に対向する位置に入る際)に発生するパルス信号Vp1を「リラクタ入りパルス」と呼び、リラクタ18の回転方向の後端側エッジが検出されたとき(リラクタがパルサの磁極に対向する位置から抜ける際)に発生するパルス信号Vp2を「リラクタ抜けパルス」と呼ぶ。
【0035】
またギアセンサ12は、パルサ11と同様の構造を有する信号発電子からなるもので、その鉄心の磁極部12aがギア19の一連の歯部19a,19a,…に対向し得るように配置されて、エンジンのケースなどの固定箇所に取り付けられている。
【0036】
ギアセンサ12は、ギア19の各歯部の回転方向の前端側エッジ及び後端側エッジをそれぞれ検出したときに、その信号コイル12b(図1参照)から極性が異なるパルス信号Vs1及びVs2を発生する。
【0037】
図1に示した波形整形回路14及び15はそれぞれ、図4(A)に示したリラクタ入りパルスVp1及びリラクタ抜けパルスVp2をそれぞれ負論理のパルス波形からなるリラクタ入り信号P1及びリラクタ抜け信号P2に変換してマイクロプロセッサ1のポートA1及びA2に入力する。マイクロプロセッサ1は、リラクタ入り信号P1のダウンエッジを検出したとき及びリラクタ抜け信号P2のダウンエッジを検出したときにそれぞれリラクタ入りパルス及びリラクタ抜けパルスが発生したことを認識する。
【0038】
また波形整形回路16は、ギアセンサ12が出力するパルス信号Vs1及びVs2のうちの一方を、図4(D)に示したようなパルス波形のギア信号Pgに変換してマイクロプロセッサ1のポートA3に入力する。マイクロプロセッサは、12°間隔でギア信号Pgの各ダウンエッジを検出する毎に各ギア信号が発生したことを認識する。
【0039】
本実施形態では、パルサ11と、波形整形回路14及び15とにより、リラクタの回転方向の前端側エッジ及び後端側エッジをそれぞれ検出してリラクタ入り信号及びリラクタ抜け信号を発生するリラクタ入り信号・抜け信号発生部が構成されている。
【0040】
またギアセンサ12と波形整形回路16とにより、ギアの各歯部の回転方向の前端側エッジ及び後端側エッジのうちのいずれか一方を検出する毎にギア信号を発生するギア信号発生部が構成されている。
【0041】
図4において、#1TDCと表示されたタイミングは、エンジンの第1気筒のピストンの上死点に相当するクランク角位置に対応するタイミングであることを示し、#2TDCと表示されたタイミングは、エンジンの第2気筒のピストンの上死点に相当するクランク角位置に対応するタイミングを示している。
【0042】
またBTDCX°は上死点よりX°だけ進角したクランク角位置に対応するタイミングであることを示している。例えば、#1BTDC75°と表示されたタイミングは、第1気筒のピストンの上死点よりも75°進角したクランク角位置に対応するタイミングであることを意味している。
【0043】
BDCは、ピストンの下死点に相当するクランク角位置に対応するタイミングであることを示しており、#1BDCは、第1気筒のピストンの下死点に相当するクランク角位置に対応するタイミングであることを示している。
【0044】
本実施形態では、前述のように、リラクタ18の極弧角が60°に設定されていて、リラクタ入り信号P1が第1気筒の上死点前75°のクランク角位置で発生し、リラクタ抜け信号P2が第1気筒の上死点前15°のクランク角位置で発生するように、パルサ11の設置位置が調整されている。
【0045】
また本実施形態では、マイクロプロセッサにより、クランク軸が1回転する間にギア信号発生部が発生する30個のギア信号Pgに1ないし30の番号を付けることにより、各ギア信号を特定するようにしている。
【0046】
図4に示した例では、マイクロプロセッサがリラクタ抜け信号P2を発生した直後にマイクロコンピュータにより認識されたギア信号Pgに番号1を付け、以後順次発生するギア信号Pgに2ないし30の番号を付けることにより、各ギア信号を特定している。そして、ギアセンサ12をパルサ11から180°離れた位置に配置したときに、2番のギア信号Pgが第1気筒の上死点#1TDCに相当するクランク角位置で発生し、1番のギア信号P1が第1気筒の上死点前12°のクランク角位置で(第1気筒の始動時の点火時期に)発生するように、リラクタ18とギア19との位相関係が設定されている。
【0047】
このように、各部の位置関係を設定した場合は、17番目のギア信号Pgが発生するクランク角位置が第2気筒の上死点に相当するクランク角位置に一致し、16番目のギア信号Pgが発生するクランク角位置が第2気筒の上死点前12°のクランク角位置(第2気筒の始動時の点火時期)に一致する。
【0048】
[電源部の構成]
電源部3は、バッテリ3Aと、バッテリ3Aの出力電圧を点火回路4及び5に印加するのに適した高い電圧まで昇圧する昇圧回路(DC/DCコンバータ)3Bと、バッテリ3Aの出力電圧VB をマイクロプロセッサ1の電源電圧として適した一定の電圧(例えば5V)に変換する定電圧電源回路3Cとからなっており、定電圧電源回路3Cの出力電圧Vccはマイクロプロセッサ1の電源端子に印加されている。
【0049】
なお、図示の例では、バッテリ3Aを電源としているが、バッテリを搭載しない乗り物を駆動するエンジンを制御する制御装置においては、内燃機関に取り付けた磁石発電機の固定子側に設けたエキサイタコイル(発電コイル)と、該エキサイタコイルの半波の出力をマイクロコンピュータなどを駆動するのに適した直流定電圧に変換する定電圧電源回路とにより電源部3を構成するようにしてもよい。
【0050】
[点火回路の構成及び動作]
本実施形態ではエンジンが2つの気筒を有しているため、第1気筒用の点火回路4と第2気筒用の点火回路5とが設けられている。これらの点火回路は同一の構成を有するので、図1には、一方の点火回路4の構成のみが示されている。
【0051】
点火回路4は、点火コイルTsfと、該点火コイルの一次側に設けられて昇圧回路3Bの出力でダイオードDiを通して一方の極性に充電される点火用コンデンサCiと、点火信号Si1が与えられたときに導通して、点火用コンデンサCiの電荷を点火コイルTsfの一次コイルを通して放電させるように設けられた放電用サイリスタThiとを備えた周知のコンデンサ放電式の回路からなっており、マイクロプロセッサ1のポートB1からサイリスタThiのゲートに点火信号Si1が与えられるようになっている。点火コイルの二次コイルにはエンジンの第1気筒に取り付けられた点火プラグPL1が接続されている。
【0052】
なお図1では、点火回路4の基本構成のみを示している。実際の点火回路においては、サイリスタThiをトリガする際に昇圧回路3Bの昇圧動作を止めるための回路を付加したり、点火コイルの一次コイルに対して並列にフライホイールダイオードを接続したりするが、図1ではこれらの付加的な要素の図示が省略されている。
【0053】
図示の点火回路4においては、昇圧回路3Bの出力により点火用コンデンサCiが図示の極性に充電される。マイクロプロセッサ1からサイリスタThiに点火信号Si1が与えられると、サイリスタThiが導通するため、点火用コンデンサCiの電荷がサイリスタThiと点火コイルTsfの一次コイルとを通して放電し、このとき流れる放電電流の急峻な立ち上がりにより点火コイルの一次コイルに高い電圧が誘起させられる。この電圧は点火コイルの一次、二次間の巻数比により更に昇圧されるため、エンジンの第1気筒に取り付けられた点火プラグPL1で火花放電が生じてエンジンの第1気筒が点火される。
【0054】
第2気筒用の点火回路5は、第1気筒用の点火回路4と全く同一に構成され、その点火コイルの二次コイルはエンジンの第2気筒に取り付けられた点火プラグPL2が接続されている。またマイクロプロセッサ1のポートB2から点火回路5の放電用サイリスタのゲートに点火信号Si2が与えられている。
【0055】
なお電源部3がエキサイタコイルを電源とするように構成される場合には、エンジンの回転に同期して該エキサイタコイルに誘起する交流電圧の一方の半波で点火用コンデンサCiを充電し、該エキサイタコイルの他方の半波の出力電圧を入力電圧とする定電圧電源回路から得られる一定の直流電圧でマイクロプロセッサ1などを駆動する。
【0056】
なお図1に示した点火回路においては、点火用コンデンサCiを点火コイルの一次コイルに対して直列に接続し、点火用コンデンサCiと点火コイルの一次コイルとの直列回路に対して並列に放電用サイリスタThiを接続しているが、点火用コンデンサと放電用サイリスタとの位置を入れ替えて、放電用サイリスタを点火コイルの一次コイルに対して直列に接続し、一次コイルと放電用サイリスタとの直列回路に対して並列に点火用コンデンサCiを接続する構成をとる場合もある。
【0057】
[燃料噴射装置の構成及び動作]
本実施形態では、エンジンに燃料を供給するために、エンジンの気筒内に燃料を直接噴射する方式を採用している。そのため、第1気筒に燃料を噴射する第1気筒用燃料噴射装置6と、第2気筒に燃料を噴射する第2気筒用燃料噴射装置7とが設けられている。
【0058】
第1気筒用燃料噴射装置6は、エンジンのシリンダヘッドに取り付けられて第1気筒内に直接燃料を噴射する第1気筒用のインジェクタと、マイクロプロセッサ1のポートB3から与えられる噴射信号Sj1に応答して、該噴射信号の信号幅に相当する時間の間第1気筒用のインジェクタに駆動電流を流すインジェクタ駆動回路とにより構成される。
【0059】
同様に、第2気筒用の燃料噴射装置7は、エンジンのシリンダヘッドに取り付けられて第2気筒内に直接燃料を噴射する第2気筒用のインジェクタと、マイクロプロセッサ1のポートB4から与えられる噴射信号Sj2に応答して、該噴射信号の信号幅により決まる噴射時間の間第2気筒用のインジェクタに駆動電流を流すインジェクタ駆動回路とにより構成される。
【0060】
図示してないが、燃料タンクから第1気筒及び第2気筒用のインジェクタに燃料を供給する燃料ポンプと、該燃料ポンプから第1気筒及び第2気筒用のインジェクタに供給される燃料の圧力を調整する圧力調整器とが設けられていて、各気筒用のインジェクタにほぼ一定の圧力で燃料が供給されるようになっている。
【0061】
各気筒用のインジェクタは、インジェクタ駆動回路から所定の駆動電流が与えられている間その弁を開いてエンジンの気筒内に燃料を噴射する。各インジェクタに与えられる燃料の圧力は一定に保たれているため、各インジェクタが噴射する燃料の量は各インジェクタの弁が開いている時間(噴射信号Sj1またはSj2の信号幅により決まる)により管理される。
【0062】
(2)マイクロプロセッサにより実現される機能実現手段の構成及び動作
マイクロプロセッサ1は、そのROMに記憶された所定のプログラムを実行することにより、各種の機能実現手段を構成する。本実施形態では、図7に示すように、回転速度検出手段21と、始動時回転方向判定手段22と、始動時点火制御手段23と、始動時噴射制御手段24と、定常時点火制御手段25と、定常時噴射制御手段26とが、マイクロプロセッサ1と該マイクロプロセッサが実行するプログラムとにより構成される。
【0063】
これらの機能実現手段のうち、回転速度検出手段21、始動時回転方向判定手段22、始動時点火制御手段23及び始動時噴射制御手段24と、図1に示したハードウェアとにより、本発明に係わる2サイクルエンジンの始動制御装置が構成される。
【0064】
以下、上記の各機能実現手段について項を分けて説明する。
【0065】
[回転速度検出手段]
図7において、回転速度検出手段21は、信号発生装置2が発生するリラクタ入り信号、リラクタ抜け信号及びギア信号を用いて、エンジンの回転速度の情報を含むデータを求める。
【0066】
本実施形態の回転速度検出手段21は、図4に示した3番のギア信号が発生してから7番のギア信号が発生するまでの時間を計測してその計測値(3番のギア信号の発生位置からクランク軸が48°回転するのに要する時間)を、第1気筒の噴射開始時期を検出する際及び第2気筒の点火時期の検出を行う際にそれぞれ用いる回転速度の情報を含むデータCNTRV2として検出する。
【0067】
回転速度検出手段21はまた、18番のギア信号が発生してから22番のギア信号が発生するまでの時間を計測してその計測値(18番のギア信号の発生位置からクランク軸が48°回転するのに要する時間)を第2気筒の噴射開始時期を検出する際及び第1気筒の点火時期を検出する際に用いる回転速度の情報を含むデータCNTRVT1として検出する。
【0068】
回転速度検出手段21は、更に7番のギア信号が発生してから18番のギア信号が発生するまでの時間をCNTR21として計測し、22番のギア信号が発生してから3番のギア信号が発生するまでの時間をCNTR12として計測して、CNTRV2とCNTR21とCNTRV1とCNTR12との和CNTRV2+CNTR21+CNTRV1+CNTR12(エンジンが1回転するのに要する時間)をエンジンの平均回転速度の情報を含むデータとして検出する。このデータから検出されるエンジンの平均回転速度を用いて、エンジンの点火時期や噴射開始時期を演算する。
【0069】
[始動時回転方向判定手段]
本発明においては、リラクタ抜け信号が発生してからリラクタ入り信号が発生するまでの間に発生するギア信号のカウント値、各リラクタ入り信号が発生してから次のリラクタ入り信号が発生するまでの間に発生するギア信号のカウント値、リラクタ入り信号が発生してからリラクタ抜け信号が発生するまでの間に発生するギア信号のカウント値、及び各リラクタ抜け信号が発生してから次のリラクタ抜け信号が発生するまでの間に発生するギア信号のカウント値のそれぞれが、エンジンの始動操作開始後エンジンが正回転を継続したときと、エンジンのピストンが上死点を越えることができずにエンジンが逆転したときとで異なることを利用して、エンジンの始動時の回転方向を判定する始動時回転方向判定手段を構成する。
【0070】
ここで、図4に示した例を用いて、始動時にエンジンが逆転しなかった場合及び逆転した場合にそれぞれ求められる上記カウント値について説明する。
【0071】
リラクタ入り信号及びリラクタ抜け信号によりカウント期間を定めて、ギア信号をカウンタによりカウントした場合のカウント値を「GCNT」で表し、「入り(IN)」及び「抜け(OUT)」をそれぞれ「I」及び「O」で表して、リラクタ抜け信号が発生してからリラクタ入り信号が発生するまでの間にカウントされるギア信号のカウント値を「抜け・入り間カウント値GCNTOI」、各リラクタ入り信号が発生してから次のリラクタ入り信号が発生するまでの間にカウントされるギア信号のカウント値を「入り・入り間カウント値GCNTII」、リラクタ入り信号が発生してからリラクタ抜け信号が発生するまでの間にカウントされるギア信号のカウント値を「入り・抜け間カウント値GCNTIO」、及び各リラクタ抜け信号が発生してから次のリラクタ抜け信号が発生するまでの間にカウントされるギア信号のカウント値を「抜け・抜け間カウント値GCNTOO」とすると、本実施形態において、エンジンが正回転しているときに求められる各カウント値は下記のようになる。
【0072】
抜け・入り間カウント値GCNTOI=25
入り・入り間カウント値GCNTII=30
入り・抜け間カウント値GCNTIO=5
抜け・抜け間カウント値GCNTOO=30
これに対し、エンジンが始動時に逆回転した場合には、以下に示すように、上記のカウント値が正回転時と異なる値をとる。
【0073】
エンジンが始動時に逆回転する場合、その逆回転が起こるきっかけは、いずれかの気筒で行われる点火である。また始動時にエンジンが逆回転したときには、その逆転のきっかけとなった点火が行われた気筒のピストンが上死点を超えることはない。例えば始動時にクランキング速度が不足している状態で第1気筒で点火が行われた際に、エンジンが逆転した場合、その逆転は第1気筒のピストンが上死点を越えることができずに押し戻されることにより生じたものである。
【0074】
エンジンが始動時に逆転する場合の挙動を、第1気筒の点火でエンジンが逆転した場合と、第2気筒の点火でエンジンが逆転した場合とに分けて示すと下記の通りである。
【0075】
(a)第1気筒の点火でエンジンが逆転した場合。
【0076】
(a.1) エンジンの始動時にクランク軸の正方向のクランキングにより先ずリラクタ入り信号P1が発生し、次いでリラクタ抜け信号P2が発生した後に第1気筒のピストンが上死点を越えることができずにエンジンの回転方向が反転した場合。
【0077】
この場合には、エンジンが正回転している状態でリラクタ入り信号が発生してからリラクタ抜け信号が発生するまでの間に先ず入り・抜け間カウント値GCNTIO=5がカウントされ、リラクタ抜け信号が発生した後、エンジンの回転方向が反転して、正回転時のリラクタ抜け信号の発生位置でリラクタ入り信号が発生するまでの間に抜け・入り間カウント値GCNTOIがカウントされる。リラクタ抜け信号が発生した後、エンジンの回転方向が反転して、正回転時のリラクタ抜け信号の発生位置でリラクタ入り信号が発生するまでの間には、ギア信号が2つ発生し得るが、回転方向の反転間際にクランク軸の回転速度が低下しているとギアセンサの出力がしきい値に達しないこともあるため、リラクタ抜け信号が発生した後、エンジンの回転方向が反転して、正回転時のリラクタ抜け信号の発生位置でリラクタ入り信号が発生するまでの間にカウントされる抜け・入り間カウント値GCNTOIは、2の場合も、1の場合も、0の場合もあり得る。
【0078】
エンジンが逆転した直後のリラクタ入り信号の発生位置からリラクタ抜け信号の発生位置までの期間においては、カウント値GCNTIOがカウントされるが、このカウント値GCNTOは最大で5である。
【0079】
即ち、この場合は、GCNTIO=5,GCNTOI≦2,GCNTIO≦5が順次カウントされる。
【0080】
(a.2) エンジンの始動時にクランク軸の正方向のクランキングにより先ずリラクタ入り信号P1が発生した後、リラクタ抜け信号が発生したタイミングで第1気筒のピストンが押し戻されてエンジンが逆転したたため、逆転時のリラクタ入り信号がしきい値に達することができずに、逆回転時のリラクタの後端側エッジでリラクタ抜け信号が発生した場合。
【0081】
この場合は、エンジンが正回転している状態で、リラクタ入り信号が発生してからリラクタ抜け信号が発生するまでの間に入り・抜け間カウント値GCNTIO=5がカウントされ、次いで回転方向が反転して正回転時のリラクタ入り信号の発生位置でリラクタ抜け信号が発生するまでの間に抜け・抜け間カウント値GCNTOO≦7がカウントされる。
【0082】
(a.3) エンジンが正回転している状態でリラクタ入り信号が発生した後、リラクタ抜け信号の発生位置付近で回転方向が反転したたため、リラクタ抜け信号がしきい値に達することができなかったが、反転後のリラクタの前端側エッジでリラクタ入り信号が発生した場合。
【0083】
この場合は、エンジンが正回転している状態でリラクタ入り信号が発生してから、回転方向が反転した後正回転時のリラクタの後端側エッジ(逆回転時のリラクタの前端側エッジ)でリラクタ入り信号が発生するまでの間に入り・入り間カウント値GCNTII≦7がカウントされ、逆回転時のリラクタの前端側エッジでリラクタ入り信号が発生してからリラクタの後端側エッジでリラクタ抜け信号が発生するまでの間に入り・抜け間カウント値GCNTIO=5がカウントされる。
【0084】
(a.4) エンジンが正回転している状態でリラクタ入り信号が発生した後、リラクタ抜け信号が発生する前に回転方向が反転したため、続いて逆転時のリラクタ抜け信号が発生した場合。
【0085】
この場合は、正回転時のリラクタの前端側エッジでリラクタ入り信号が発生してから逆回転時のリラクタの後端側エッジでリラクタ抜け信号が発生するまでの間に、入り・抜け間カウント値GCNTIO≦12がカウントされる。
【0086】
(b)第2気筒の点火時にエンジンが逆転した場合
第2気筒の点火時にエンジンが逆回転した場合には、リラクタの正回転時の後端側エッジでリラクタ抜け信号が発生した後、第2気筒の上死点(17番のギア信号の発生位置)を越えることができずに回転方向が反転し、リラクタの正回転時の後端側エッジでリラクタ入り信号が発生する。従って、この場合には、抜け・入り間カウント値GCNTOI≦30がカウントされる。
【0087】
上記のように、エンジンの始動時に回転方向が反転した場合には、抜け・入り間カウント値GCNTOI、入り・入り間カウント値GCNTII、入り・抜け間カウント値GCNTIO及び抜け・抜け間カウント値GCNTOOが正回転時にとる正規の値とは異なる値をとるため、これらのカウント値を求めて、それぞに対して設定した判定値と比較することにより、エンジンの始動時にエンジンが逆回転したか否かを判定することができる。
【0088】
そのため、図7に示した例では、始動時回転方向判定手段を構成するため、リラクタ抜け信号が発生してからリラクタ入り信号が発生するまでの間に発生するギア信号の数を抜け・入り間ギアカウント値として求める抜け・入り間ギア信号カウント手段22aと、各リラクタ入り信号が発生してから次のリラクタ入り信号が発生するまでの間に発生したギア信号の数を入り・入り間ギアカウント値として求める入り・入り間ギア信号カウント手段22bと、リラクタ入り信号が発生してからリラクタ抜け信号が発生するまでの間に発生したギア信号の数を入り・抜け間ギアカウント値として求める入り・抜け間ギアカウント手段22cと、各リラクタ抜け信号が発生してから次のリラクタ抜け信号が発生するまでの間に発生したギア信号の数を抜け・抜け間ギアカウント値として求める抜け・抜け間ギアカウント手段22dとを設けている。
【0089】
上記GCNTOI,GCNTII,GCNTIO及びGCNTOOをそれぞれカウントするカウント手段は、例えば、ギア信号を計数するギア信号計数用カウンタと、リラクタ入り信号及びリラクタ抜け信号がそれぞれ入力される毎にギア信号計数用カウンタの計数値を読み取るカウンタ計数値読み取り手段と、この読み取り手段により読みとられた計数値から、リラクタ抜け信号−リラクタ入り信号間、リラクタ入り信号−リラクタ入り信号間、リラクタ入り信号−リラクタ抜け信号間及びリラクタ抜け信号−リラクタ抜け信号間にそれぞれ発生したギア信号の数を演算する計数値演算手段とにより構成することができる。
【0090】
カウント値GCNTOI,GCNTII,GCNTIO及びGCNTOOから始動時の回転方向を判定する場合の、判定手順は種々考えられるが、本実施形態では、リラクタ入り信号P1が発生したときに抜け・入り間カウント値GCNTOIと入り・入り間カウント値GCNTIIが同時に求められ、リラクタ抜け信号が発生したときに入り・抜け間カウント値GCNTIOと抜け・抜け間カウント値GCNTOOとが同時に求められることに着目して、始動時の回転方向の判定処理を、リラクタ入り信号の発生時に行う処理と、リラクタ抜け信号の発生時に行う処理とに分けるようにした。
【0091】
そのため、図7に示した例では、リラクタ入り時回転方向判定手段22eと、リラクタ抜け時回転方向判定手段22Fとを設けている。
【0092】
リラクタ入り時回転方向判定手段22eは、回転速度検出手段21により検出された回転速度がエンジンのアイドリング速度(この例では1500r/min)よりも低く設定された設定速度N1(例えば1000r/min)以下の状態でリラクタ入り信号P1が発生したときに抜け・入り間ギアカウント値GCNTOI及び入り・入り間ギアカウント値GCNTIIをそれぞれに対して設定した第1の判定値及び第2の判定値と比較して、抜け・入り間ギアカウント値GCNOIが第1の判定値未満で、かつ入り・入り間ギアカウント値GCNIIが第2の判定値を超えているときにエンジンが正回転していると判定し、抜け・入り間ギアカウント値GCNTOIが第1の判定値以上のとき及び入り・入り間ギアカウント値GCNTIIが第2の判定値以下のときにエンジンが逆回転していると判定する。
【0093】
またリラクタ抜け時回転方向判定手段22fは、エンジンの回転速度が設定速度N1以下の状態でリラクタ抜け信号が発生したときに入り・抜け間ギアカウント値GCNTIO及び抜け・抜け間ギアカウント値GCNTOOをそれぞれに対して設定した第3及び第4の判定値と比較して、入り・抜け間ギアカウント値GCNTIOが第3の判定値未満でかつ抜け・抜け間ギアカウント値GCNTOOが第4の判定値を超えているときにエンジンが正回転していると判定し、入り・抜け間ギアカウント値GCNTIOが第3の判定値以上のとき及び抜け・抜け間ギアカウント値GCNTOOが第4の判定値以下のときにはエンジンが逆回転していると判定する。
【0094】
上記設定速度N1は、エンジンの始動が完了して、回転方向が反転する現象が起こり得ない回転速度範囲の下限付近の速度(始動完了速度)に設定しておく。本実施形態では、この設定速度N1を1000r/minに設定しておく。なお本実施形態で制御の対象としている2サイクルエンジンのアイドリング速度は1500R/minである。
【0095】
このように、設定速度N1を定めて、エンジンの始動時に回転速度が設定速度以下の場合にのみ回転方向の判定を行うようにすると、エンジンの始動が完了して回転方向が反転するおそれがなくなった状態で回転方向の無駄な判定手処理が行われるのを防ぐことができる。
【0096】
また、エンジンの始動が完了した後に、ノイズなどにより回転方向が反転したとの誤判定が行われて、エンジンが失火させられるのを防ぐことができる。
【0097】
[始動時点火制御手段]
マイクロプロセッサ1は、エンジンを始動する際に、その回転速度が設定速度(始動完了速度)N1に達するまでの間制御モードを始動制御モードとして、始動時回転方向判定手段による判定結果に応じて、始動時点火制御手段及び始動時噴射制御手段によりエンジンの点火動作及び燃料噴射動作を制御する。
【0098】
図7において、始動時点火制御手段23は、リラクタ入り時回転方向判定手段22eによりエンジンが正回転していると判定されたとき、及びリラクタ抜け時回転方向判定手段22fによりエンジンが正回転していると判定されたときにエンジンを予め定めた始動時の点火時期に点火するために必要な処理を行い、リラクタ入り時回転方向判定手段22eによりエンジンが逆回転していると判定されたとき、及びリラクタ抜け時回転方向判定手段22fよりエンジンが逆回転していると判定されたときには、エンジンを点火させるために必要な処理を行わずにエンジンを失火させる。
【0099】
エンジンを点火するための処理は、第1気筒及び第2気筒の始動時の点火時期として予め定めたタイミングで発生する所定のギア信号がマイクロプロセッサに入力された時に、マイクロプロセッサのポートB1及びB2の電位をHレベル(高レベル)として点火回路4及び5に点火信号を与える処理である。
【0100】
図4に示したように、本実施形態では、リラクタ抜け信号P2が発生した直後に1番のギア信号が発生するタイミング[第1気筒のピストンの上死点に相当するクランク角位置より12°進角したクランク角位置(BTDC12°)に対応するタイミング]を第1気筒の始動時の点火時期としている。
【0101】
また16番のギア信号が発生するタイミング[#2BTDC12°に対応するタイミング]をエンジンの第2気筒の始動時の点火時期として、この点火時期に点火回路5に点火信号Si2を与える。
【0102】
従って始動時点火制御手段23は、始動時回転方向判定手段22により、エンジンの逆転が検出されてないときに、1番のギア信号(リラクタ抜け信号P2が発生した直後に発生するギア信号)が発生するタイミングでマイクロプロセッサのポートB1をHレベルとして点火回路4に点火信号を与え、16番のギア信号が発生するタイミングでポートB2をHレベルとして点火回路5に点火信号Si2を与えるように構成される。
【0103】
上記の始動時の点火時期は、信号発電機の機械的構成により決まるタイミングである。本明細書では、このように、演算により決められる点火時期ではなく、ハードウェアの構成により決まる一定の点火時期に行う点火を「ハード点火」と呼ぶ。これに対し、マイクロプロセッサに所定の演算を行わせることにより求めた(ソフトウェア的に求めた)点火時期に行う点火を「ソフト点火」と呼ぶ。
【0104】
[始動時噴射制御手段]
始動時噴射制御手段24は、リラクタ入り時回転方向判定手段22eによりエンジンが正回転していると判定されたとき、及びリラクタ抜け時回転方向判定手段22fによりエンジンが正回転していると判定されたときに予め定められた始動時の噴射開始時期に燃料噴射を行わせるために必要な処理を行い、リラクタ入り時回転方向判定手段22eによりエンジンが逆回転していると判定されたとき、及びリラクタ抜け時回転方向判定手段22fよりエンジンが逆回転していると判定されたときに燃料噴射を中止するために必要な処理を行わせる。
【0105】
ここで、燃料噴射を行わせるために必要な処理とは、マイクロコンピュータのポートB3及びB4の電位をHレベルとして、第1気筒用の燃料噴射装置6及び第2気筒用の燃料噴射装置7に噴射信号を与えるために必要な処理である。
【0106】
本実施形態では、エンジンの正回転時にパルサがリラクタの前端側エッジを検出して、リラクタ入り信号抜け信号発生部2Aがリラクタ入り信号P1を発生するタイミングが、エンジンの始動時に最初に第1気筒に燃料を噴射するタイミングとして許容されるタイミング(図4に示した例では、第1気筒の上死点に相当するクランク角位置から75゜進角したクランク角位置に対応するタイミング)となるように、リラクタの極弧角と、パルサがリラクタの前端側エッジを検出する位置とが設定されている。
【0107】
そして、エンジンの始動時においては、最初のリラクタ入り信号P1が発生したときに(第1気筒の上死点前75°のクランク角位置に対応するタイミングで)第1気筒の燃料噴射装置6に噴射信号を与えて、第1気筒に取り付けられたインジェクタからの燃料噴射を行わせる。また、最初のリラクタ抜け信号P2が発生してギア信号の番号が確定した後は、6番のギア信号の発生位置(第2気筒の上死点より132°進角した位置)で第2気筒用の燃料噴射装置7に噴射信号を与えて、第2気筒のインジェクタからの燃料噴射を行わせ、番号21のギア信号の発生位置(第1気筒の上死点より132°進角した位置)で第1気筒用の燃料噴射装置7に噴射信号を与えて、第2気筒に取り付けたインジェクタからの燃料噴射を行わせる。
【0108】
上記始動時の噴射開始時期(上死点前75°または132°のクランク角に相当するタイミング)も、信号発電機の機械的構成により決まるタイミングである。本明細書では、このように、演算により決められる噴射開始時期ではなく、ハードウェアの構成により決まる一定の噴射開始時期に行う噴射を「ハード噴射」と呼ぶ。これに対し、マイクロプロセッサに所定の演算を行わせることにより求めた(ソフトウェア的に求めた)噴射開始時期に行う燃料の噴射を「ソフト噴射」と呼ぶ。
【0109】
上記のように、始動操作開始後最初にリラクタ入り信号が発生するタイミングが第1気筒への燃料の噴射を行うタイミングとして許容し得るタイミングになるように、リラクタの極弧角とパルサが該リラクタの前端側エッジを検出するタイミングとを設定しておくと、第1気筒で第1回目に行う点火に先立って第1気筒に燃料を噴射しておくことができるため、第1気筒での最初の点火を有効にすることができ、エンジンの始動性を向上させることができる。
【0110】
[定常時点火制御手段]
マイクロプロセッサ1は、エンジンの回転速度が設定速度N1に達して、始動が完了したと判定されたときに、始動制御モードを終了して、定常時点火制御手段25及び定常時噴射制御手段26により点火時期及び噴射開始時期をそれぞれ制御する定常制御モードに移行する。
【0111】
定常時点火制御手段25は、回転速度検出手段21により検出された回転速度を含む制御条件に対してエンジンの点火時期を演算する点火時期演算手段25aと、演算された点火時期を検出する点火時期検出手段25bと、点火時期検出手段25bにより点火時期が検出されたときにマイクロプロセッサのポートB1及びB2から所定の信号幅の点火信号を点火回路4及び5に与える点火信号発生手段25cとにより構成される。
【0112】
定常運転時における点火時期は、エンジンの平均回転速度を含む制御条件に対して、点火動作を行わせるクランク角位置の形で演算される。通常、この点火時期の演算は、所定の制御条件と点火時期との関係を与えるマップを用いて行われる。
【0113】
本実施形態で用いる点火時期検出手段25bは、ギア信号をカウントするカウンタとクロックパルスを計数して時間を計測する点火タイマとを併用して(クランク角の計測と時間の計測とを併用して)、点火時期演算手段により演算された点火時期を検出する手段であり、演算された点火時期を検出したときに、点火信号発生手段25cに指令を与えて、該点火信号発生手段から点火回路4または5に与えるための点火信号を発生させる。
【0114】
点火時期検出手段25Bは、演算された点火時期に近いギア信号の発生位置を点火タイマをスタートさせる位置として、この点火タイマのスタート位置をギア信号を計数することにより検出し、点火タイマのスタート位置が検出されたときに点火タイマに点火時期を計測するための時間(点火タイマ時間)をセットして、その計測を行わせることにより、点火時期を検出する。
【0115】
本実施形態では、エンジンの各気筒毎に特定のギア信号が発生するクランク角位置を点火時期計測用基準クランク角位置として定めておいて、各気筒の基準クランク角位置で発生する基準ギア信号が検出されたときにギアカウンタによるギア信号のカウントを開始し、所定個数のギア信号をカウントすることにより、各気筒の点火時期に近いタイミングで発生するギア信号の発生位置を、点火タイマによる点火時期の計測を開始する点火タイマ時間計測開始クランク角位置として検出する。そして、この計測開始クランク角位置が検出されたときに、点火タイマに所定の点火タイマ時間をセットして該点火タイマによる点火タイマ時間の計測を開始させ、点火タイマが点火タイマ時間の計測を終了するタイミングを点火時期とする。
【0116】
上記点火タイマにセットする点火タイマ時間は、クランク軸が、前記点火時期計測用基準クランク角位置から演算された点火時期に相当するクランク角位置まで回転するのに要する時間から、クランク軸が点火時期計測用基準クランク角位置から点火タイマ時間計測開始クランク角位置まで回転するのに要した時間を差し引いた時間である。
【0117】
ここで、一例として、29番のギア信号の発生位置と30番のギア信号の発生位置との間にあるクランク角位置で第1気筒の点火を行わせる場合を考える。このとき点火時期検出手段は、22番のギア信号が発生する位置を第1気筒の点火時期計測用基準クランク角位置として、このギア信号が発生したときにギアカウンタをスタートさせ、29番のギア信号が発生したときに、このギア信号の発生位置を第1気筒の点火タイマ時間計測開始クランク角位置として検出する。そして、この29番のギア信号が発生したときに、基準クランク角位置から演算された点火時期に相当するクランク角位置までクランク軸が回転するのに要する時間を点火時期計測用時間として演算し、この点火時期計測用時間から、クランク軸が基準クランク角位置(22番のギア信号の発生位置)から29番のギア信号の発生位置まで回転するのに要した時間を差し引くことにより点火タイマ時間を演算し、該点火タイマ時間を点火タイマにセットしてその計測を開始させる。点火タイマ時間の演算には、そのときのエンジンの回転速度が必要になるが、この回転速度としては、18番のギア信号が発生するタイミングから22番のギア信号が発生するタイミングまでの間の経過時間(クランク軸が48°回転するのに要した時間)から検出される回転速度を用いる。
【0118】
そして上記点火タイマが点火タイマ時間の計測を完了したとき(点火タイマの計測値が0になったとき)に点火信号発生手段25cに指令を与えて、マイクロプロセッサ1のポートB1の電位をHレベルにさせ、第1気筒の点火回路4に点火信号を与える。
【0119】
第2気筒の点火時期を検出する際には、7番のギア信号が発生するクランク角位置を点火時期計測用基準クランク角位置として、上記と同様の処理を行わせ、点火タイマが点火時期を検出したときに点火信号発生手段25cに指令を与えてマイクロプロセッサのポートB2の電位をHレベルとすることにより第2気筒の点火回路5に点火信号を与える。第2気筒の点火時期を検出するために点火タイマにセットする点火タイマ時間の演算に用いる回転速度としては、3番のギア信号の発生位置から7番のギア信号の発生位置までクランク軸が回転するのに要した時間から検出される回転速度を用いる。
【0120】
[定常時噴射制御手段]
定常時噴射制御手段26は、回転速度検出手段21により検出されたエンジンの回転速度、スロットル開度、大気圧、エンジンの冷却水温度などの各種の制御条件に対して燃料の噴射開始時期(気筒内への燃料の噴射を開始する時期)を演算する噴射開始時期演算手段26aと、各種の制御条件に対して噴射する燃料の量を演算する噴射量演算手段26cと、演算された噴射開始時期を検出する噴射開始時期検出手段26bと、噴射開始時期検出手段26bにより噴射開始時期が検出されたときにマイクロプロセッサのポートB3及びB4から演算された噴射量の燃料を噴射するために必要な信号幅の噴射信号を燃料噴射装置6及び7に与える噴射信号発生手段26dとにより構成される。
【0121】
定常運転時における噴射開始時期は、燃料の噴射を行わせるクランク角位置の形で演算される。この噴射開始時期の演算は、所定の制御条件と噴射開始時期との関係を与えるマップを用いて行われる。
【0122】
噴射開始時期検出手段26bは、ギア信号をカウントするカウンタと噴射タイマとを併用して、噴射開始時期演算手段により演算された噴射開始時期を検出する手段であり、演算された噴射開始時期を検出したときに、噴射信号発生手段26dに指令を与えて、該噴射信号発生手段から燃料噴射装置6または7に与える噴射信号を発生させる。
【0123】
本実施形態では、エンジンの各気筒毎に特定のギア信号が発生するクランク角位置を噴射開始時期計測用基準クランク角位置として定めておいて、各気筒の噴射開始時期計測用基準クランク角位置で発生する基準ギア信号が検出されたときにギアカウンタによるギア信号のカウントを開始し、所定個数のギア信号をカウントすることにより、各気筒の噴射開始時期に近いタイミングで発生するギア信号の発生位置を、噴射タイマによる噴射開始時期の計測を開始する噴射タイマ時間計測開始クランク角位置として検出する。そして、この噴射タイマ時間計測開始クランク角位置が検出されたときに、噴射タイマに所定の噴射タイマ時間をセットして該噴射タイマによる噴射タイマ時間の計測を開始させ、噴射タイマが噴射タイマ時間の計測を終了するタイミングを噴射開始時期とする。
【0124】
上記噴射タイマにセットする噴射タイマ時間は、クランク軸が、前記噴射開始時期計測用基準クランク角位置から演算された噴射開始時期に相当するクランク角位置まで回転するのに要する時間から、クランク軸が噴射開始時期計測用基準クランク角位置から噴射タイマ時間計測開始クランク角位置まで回転するのに要した時間を差し引いた時間である。
【0125】
ここで、一例として、20番のギア信号の発生位置と21番のギア信号の発生位置との間にあるクランク角位置で第1気筒の燃料噴射を行わせる場合を考える。このとき噴射開始時期検出手段は、7番のギア信号が発生する位置を第1気筒の噴射開始時期計測用基準クランク角位置として、このギア信号が発生したときにギアカウンタをスタートさせ、20番のギア信号が発生したときに、このギア信号の発生位置を第1気筒の噴射タイマ時間計測開始クランク角位置として検出する。そして、この20番のギア信号が発生したときに、噴射開始時期計測用基準クランク角位置から演算された噴射開始時期に相当するクランク角位置までクランク軸が回転するのに要する時間を噴射開始時期計測用時間として演算し、この噴射開始時期計測用時間から、クランク軸が基準クランク角位置(7番のギア信号の発生位置)から20番のギア信号の発生位置(噴射タイマ時間計測開始クランク角位置)まで回転するのに要した時間を差し引くことにより噴射タイマ時間を演算し、該噴射タイマ時間を噴射タイマにセットしてその計測を開始させる。噴射タイマ時間の演算に用いる回転速度としては、3番のギア信号が発生するタイミングから7番のギア信号が発生するタイミングまでの間の経過時間(クランク軸が48°回転するのに要した時間)から検出される回転速度を用いる。
【0126】
そして上記噴射タイマが噴射タイマ時間の計測を完了したとき(噴射タイマの計測値が0になったとき)に噴射信号発生手段26dに指令を与えて、マイクロプロセッサ1のポートB3の電位をHレベルにさせ、第1気筒の燃料噴射装置6に噴射信号を与える。
【0127】
第2気筒の噴射開始時期を検出する際には、22番のギア信号が発生するクランク角位置を噴射開始時期計測用基準クランク角位置として、上記と同様の処理を行わせ、噴射タイマが噴射開始時期を検出したときに噴射信号発生手段26dに指令を与えてマイクロプロセッサのポートB4の電位をHレベルとすることにより第2気筒の燃料噴射装置7に噴射信号を与える。第2気筒の噴射開始時期を検出するために噴射タイマにセットする噴射タイマ時間の演算に用いる回転速度としては、18番のギア信号の発生位置から22番のギア信号の発生位置までクランク軸が回転するのに要した時間から検出される回転速度を用いる。
【0128】
(3)エンジンの始動時から始動完了までの動作
本実施形態において、エンジンの始動操作を開始した後、エンジンの始動が完了するまでの間に行われる点火動作及び燃料噴射動作の一例を示すタイミングチャートを図5に示し、図5の各過程で行われる燃料噴射動作及び点火動作と、燃料噴射動作及び点火動作に用いる信号と、点火動作及び噴射動作が行われるクランク角位置とを図6の図表にまとめて示した。
【0129】
図6において、左端の「タイミング」の欄に示した丸数字は、図5に示した丸数字に対応している。
【0130】
図5の時刻0で始動操作が開始され、クランキングが行われると、エンジンのクランク軸の回転速度が変動を伴いながら上昇していき、パルサ及びギアセンサの出力のレベルが上昇していく。クランク軸の回転速度がある速度以上になると、ギアセンサの出力がしきい値以上になるため、所定のパルス波形のギア信号Pgが発生するようになる。またパルサの出力のレベルがしきい値以上になるため、リラクタ入り信号P1及びリラクタ抜け信号P2が発生するようになる。
【0131】
エンジンの始動時においては、先ず第1気筒の上死点前75°のクランク角位置に相応するタイミング(丸数字1のタイミング)で最初のリラクタ入り信号P1が発生したときにマイクロプロセッサのポートB3の電位をHレベルとすることにより第1気筒用の燃料噴射装置に噴射信号Sj1を与えて第1気筒のハード噴射(図6参照)を行わせる。
【0132】
次いで第1気筒の上死点前15°のクランク角位置に相当するタイミングでリラクタ抜け信号P2が発生した後、最初に発生するギア信号Pgを1番のギア信号として特定(以下順次発生するギア信号に2ないし30の番号を付けて特定する)して、この1番のギア信号が発生する丸数字2のタイミング(第1気筒の上死点前12°のクランク角位置に相当するタイミング)で、マイクロプロセッサのポートB1の電位をHレベルとすることにより点火回路4に点火信号Si1を与えて、第1気筒のハード点火を行わせる。
【0133】
次いで第2気筒の上死点前132°のクランク角位置に相当する丸数字3のタイミングで6番のギア信号Pg(図4参照)が発生したときにマイクロプロセッサのポートB4の電位をHレベルとすることにより第2気筒用の燃料噴射装置に噴射信号Sj2を与えて、第2気筒のハード噴射を行わせ、第2気筒の上死点前12°の位置で16番のギア信号が発生したときにマイクロプロセッサのポートB2の電位をHレベルとすることにより第2気筒の点火回路5に点火信号Si2を与えて、第2気筒のハード点火を行わせる。
【0134】
次いで、第1気筒の上死点前132°のクランク角位置に相当する丸数字5のタイミングで21番のギア信号が発生したときに第1気筒用の燃料噴射装置6に噴射信号Sj1を与えて第1気筒のハード噴射を行わせ、第1気筒の上死点前12°のクランク角位置に相当するタイミングで1番のギア信号が発生したときに第1気筒用の点火回路4に点火信号Si1を与えて第1気筒のハード点火を行わせる。
【0135】
以下同様にして、第2気筒の上死点前132°のクランク角位置に相当するタイミング(丸数字7のタイミング)及び第2気筒の上死点前12°のクランク角位置に相当するタイミング(丸数字8のタイミング)でそれぞれ第2気筒のハード噴射及びハード点火を行わせ、第1気筒の上死点前132°のクランク角位置に相当するタイミング(丸数字9のタイミング)及び第2気筒の上死点前12°のクランク角位置に相当するタイミング(丸数字10のタイミング)でそれぞれ第1気筒のハード噴射及びハード点火を行わせる。
【0136】
図示の例では、丸数字12のタイミングで第2気筒のハード点火を行った時点でエンジンの回転速度が設定値N1(=1000r/min)を超えたため、丸数字12のタイミングでハード点火を行った時点で始動制御モードを終了して定常制御モードに移行している。丸数字12よりも後に現れる噴射タイミング(丸数字13や丸数字15のタイミング)及び点火タイミング(丸数字14や丸数字17のタイミング)では、それぞれ各種の制御条件に対して演算された噴射開始時期及び点火時期に燃料噴射及び点火動作を行わせるソフト噴射及びソフト点火を行わせている。
【0137】
(4)各機能実現手段を構成するためにマイクロプロセッサに実行させるプログラムのアルゴリズム
上記の各機能実現手段を構成するためにマイクロプロセッサに実行させるプログラムのアルゴリズムの一例を示すフローチャートの要部を図8ないし図20に示した。
【0138】
[リラクタ入り割り込みルーチン](図8)
マイクロプロセッサは、信号発生装置2がリラクタ入り信号P1を発生する毎に、図8に示すリラクタ入り割り込みルーチンを実行する。
【0139】
この割り込みルーチンでは、先ずステップ1において、回転速度検出手段21により検出されたエンジンの平均回転速度が設定速度N1以下であるか否かを判定する。その結果、回転速度が設定速度を超えていると判定された場合には、何もしないでメインルーチンに戻る。回転速度を判定した結果、回転速度が設定速度N1以下であると判定されたときには、ステップ2に進んで、始動操作開始後初回のリラクタ抜け割り込み(後述する)が行われたか否かを判定する。その結果、初回のリラクタ抜け割り込みが行われていないと判定されたときには、ステップ3に移行して第1気筒のハード噴射を行わせた後、メインルーチンに戻る。
【0140】
ステップ2において、初回のリラクタ抜け割り込みが既に行われたと判定されたときには、ステップ4に移行して逆転フラグが1にセットされているか否かを判定する。その結果、逆転フラグが1にセットされている場合には、何もしないでメインルーチンに復帰し、逆転フラグが1にセットされていないと判定されたときには、ステップ5に進んでギア信号Pgをカウントしているギアカウンタ(フリーランカウンタ)のカウント値を読み込んで、このカウント値と、既に読み込まれているカウント値とから、リラクタ抜け信号が発生してから今回のリラクタ入り信号が発生するまでの間にカウントされた抜け・入り間ギアカウント値GCNTOIと、前回のリラクタ入り信号P1が発生してから今回のリラクタ入り信号が発生するまでの間にカウントされた入り・入り間ギアカウント値GCNTIIを求める。この過程により、図7に示した抜け・入り間ギア信号カウント手段22aと、入り・入り間ギア信号カウント手段22bが構成される。
【0141】
次いで、ステップ6において、抜け・抜け間ギアカウント値GCNTOIと比較する第1の判定値を26として、GCNTOI≧26であるか否かの判定を行い、この条件が成立しているときにエンジンが逆転していると判定して、ステップ7に進んで逆転フラグを1にセットする。
【0142】
ステップ6において、GCNTOI≧26の条件が成立してないと判定されたときには、次いでステップ8に進んで、入り・入り間ギアカウント値GCNTIIと比較する第2の判定値を10として、GCNTII≦10の条件が成立しているか否かを判定する。その結果この条件が成立しているときには、エンジンが逆転していると判定して、ステップ7に移行し、逆転フラグを1にセットする。ステップ8においてGCNTII≦10の条件が成立していないと判定されたときには、ステップ9に進んで、ギア信号をカウントする第1気筒のn3.IGギアカウンタ(ギア信号を計数する点火時期計測用カウンタ)に、リラクタ抜け信号P2が発生した後、最初に発生するギア信号(1番のギア信号)を検出するために必要な計数値(=6)をセットして、その計数動作を行わせる。
【0143】
[リラクタ抜け割り込みルーチン](図9)
信号発生装置2がリラクタ抜け信号P2を発生する毎に、図9に示したリラクタ抜け割り込みルーチンが実行される。
【0144】
この割り込みルーチンでは、先ずステップ1において、回転速度検出手段21により検出されたエンジンの平均回転速度が設定速度N1以下であるか否かを判定する。その結果、回転速度が設定速度を超えていると判定された場合には、何もしないでメインルーチンに戻る。回転速度を判定した結果、回転速度が設定速度N1以下であると判定されたときには、ステップ2に進んで、今回の割り込みが始動操作開始後初回のリラクタ抜け割り込みであるか否かを判定する。その結果、初回のリラクタ抜け割り込みである場合には、ステップ3に進んで第1気筒のn3.IGギアカウンタ(ギア信号を計数する第1気筒用の点火時期計測用ギアカウンタ)に、リラクタ抜け信号が発生した後1回目に発生するギア信号(#1BTDC12°の位置で発生する1番のギア信号)を検出するための計数値(=1)をセットして、その計数を行わせ、ステップ4において、第2気筒のn3.INJギアカウンタ(ギア信号を計数する第2気筒用の噴射開始時期計測用ギアカウンタ)に、リラクタ抜け信号が発生した後6回目に発生するギア信号(#2BTDC132°の位置で発生する6番のギア信号)を検出するために必要な計数値(=6)をセットして、その計数動作を開始させる。またステップ5において、第1気筒のn3.INJギアカウンタ(ギア信号を計数する第1気筒用の噴射開始時期計測用ギアカウンタ)に、リラクタ抜け信号が発生した後21回目に発生するギア信号(#1BTDC132°の位置で発生する21番のギア信号)を検出するために必要な計数値(=21)をセットして、その計数動作を開始させた後メインルーチンに復帰する。
【0145】
ステップ2において、今回の割り込みが初回のリラクタ抜け割り込みでないと判定されたときには、ステップ6に移行して、逆転フラグが1にセットされているか否かを判定する。その結果、逆転フラグが1にセットされている場合には、何もしないでメインルーチンに復帰し、逆転フラグが1にセットされていないと判定されたときには、ステップ7に進んでギア信号Pgをカウントしているギアカウンタ(フリーランカウンタ)のカウント値を読み込んで、このカウント値と、既に読み込まれているカウント値とから、リラクタ入り信号が発生してから今回のリラクタ抜け信号が発生するまでの間にカウントされた入り・抜け間ギアカウント値GCNTIOと、前回のリラクタ抜け信号P2が発生してから今回のリラクタ抜け信号P2が発生するまでの間にカウントされた抜け・抜け間ギアカウント値GCNTOOとを求める。この過程により、図7に示した入り・抜け間ギア信号カウント手段22cと、抜け・抜け間ギア信号カウント手段22dとが構成される。
【0146】
次いで、ステップ8において、入り・抜け間ギアカウント値GCNTIOと比較する第3の判定値を7として、GCNTIO≧7であるか否かの判定を行い、この条件が成立しているときにエンジンが逆転していると判定して、ステップ9に進んで逆転フラグを1にセットする。
【0147】
ステップ8においてGCNTIO≧7の条件が成立してないと判定されたときには、ステップ10に進み、抜け・抜け間ギアカウント値GCNTOOと比較する第4の判定値を10として、GCNTOO≦10の条件が成立しているか否かを判定する。その結果この条件が成立しているときには、エンジンが逆転していると判定して、ステップ9に移行し、逆転フラグを1にセットする。ステップ10においてGCNTOO≦10の条件が成立していないと判定されたときには、エンジンは逆転していないと判定してメインルーチンに復帰する。
【0148】
この例では、図8の割り込みルーチンのステップ1,2,4及び5ないし8とによりリラクタ入り時回転方向判定手段22eが構成され、図9の割り込みルーチンのステップ1,2及び6ないし10により、リラクタ抜け時回転方向判定手段22fが構成されている。
【0149】
また図8の割り込みルーチン及び図9の割り込みルーチンにより、始動時回転方向判定手段22が構成されている。
[ギア割り込み](図10)
マイクロプロセッサ1はまた、所定のギア信号が発生したときに図10に示す割り込みを実行する。この割り込みルーチンでは、ステップ1において、予め定めたギア割り込みスケジュールに従って、予め実行順序が定められた一連のギア割り込み#2_n1,#2_n2,#1_n1及び#1_n2のうち、今回実行させるべき割り込みがいずれであるかを判断し、実行すべきであると判断した割り込みを実行させる。
【0150】
本実施形態では、図4に示したように、今回発生したギア信号が3番のギア信号であるときに、図11の#2_n1割り込みを実行させ、今回発生したギア信号が7番のギア信号であるときに、図12に示した#2_n2割り込みを実行させる。また今回発生したギア信号が18番のギア信号であるときに、図13に示した#1_n1割り込みを実行させ、今回発生したギア信号が22番のギア信号であるときに図14に示した#1_n2割り込みを実行させる。
【0151】
[#2_n1割り込み](図11)
マイクロプロセッサは、3番目のギア信号を検出したときに図11に示す#2_n1割り込みを実行する。この割り込みでは、ステップ1において22番のギア信号が発生してから今回の3番のギア信号が発生するまでの間に経過した時間CNTR12を求め、次いでステップ2において、#2_n2割り込みを実行するタイミングを与える7番のギア信号を検出するために必要なカウント値(=4)をギアカウンタにセットしてメインルーチンに戻る。
【0152】
[#2_n2割り込み](図12)
マイクロプロセッサは、7番目のギア信号が発生したときに図12に示した割り込みルーチンを実行する。この割り込みルーチンでは、先ずステップ1において、3番のギア信号が発生してから7番のギア信号が発生するまでの時間CNTRV2を演算し、次いでステップ2において、メインルーチン等の他のルーチンで既に検出されている回転速度(エンジンが1回転するのに要した時間から検出した平均回転速度)を読み込む。次いで、ステップ3において、次のギア割り込みである#1_n1割り込みを実行するタイミングを与えるギア信号(18番のギア信号)を検出するために計数すべきカウント値(=11)をギアカウンタにセットしてその計数を行わせる。
【0153】
またステップ4において、平均回転速度が設定速度N1以下であるか否かを判定し、平均回転速度が設定速度N1以下である場合には、ステップ5に進んでハードフラグを0とする。次いでステップ6において第2気筒のハード噴射を行うタイミングで発生する6番のギア信号を検出するために計数する必要があるカウント値(=30)を第2気筒の噴射開始時期計測用ギアカウンタ(n3.INJカウンタ)にセットする。その後ステップ7において逆転フラグが1であるか否かを判定し、その結果、逆転フラグが1であるとき(始動制御モードが終了しているとき)には、何もしないでメインルーチンに戻る。
【0154】
ステップ7において、逆転フラグが1でないと判定されたとき(始動制御モードであると判定されたとき)には、ステップ8に進んで第2気筒のハード点火を行わせる16番のギア信号を検出するために計数する必要があるカウント値(=10)を点火時期計測用ギアカウンタ(n3.IGギアカウンタ)にセットしてその計数を開始させた後メインルーチンに戻る。
【0155】
図12のステップ4において平均回転速度が設定速度N1を超えていると判定されたときには、ステップ9に進んでハードフラグを1にセットし、次いでステップ20においてメインルーチンで演算されている点火時期を検算する。その後、ステップ11において、ステップ10で読み込んだ点火時期に最も近いタイミングで発生するギア信号を検出するために計数する必要があるカウント値を第2気筒の点火時期計測用ギアカウンタ(n3.IGギアカウンタ)にセットしてその計数を開始させる。
【0156】
次いでステップ12において、他のルーチンで演算されている噴射開始時期を読み込み、ステップ13において、第2気筒の噴射開始時期に最も近いタイミングで発生するギア信号を検出するために計数する必要があるカウント値を第2気筒の噴射時期計測用ギアカウンタ(n3.INJギアカウンタ)にセットしてその計数を開始させた後、メインルーチンに復帰する。
【0157】
[#1_n1割り込み](図13)
マイクロプロセッサは、18番のギア信号が発生したことを検出したときに図13に示す#1_n1割り込みを実行する。この割り込みでは、ステップ1において7番のギア信号が発生してから18番のギア信号が発生するまでの時間CTR21を演算し、ステップ2において、#1_n2割り込みを行わせるタイミングを与える22番のギア信号を検出するために計数する必要があるカウント値(=4)をギアカウンタにセットしてメインルーチンに復帰する。
【0158】
[#1_n2割り込み](図14)
マイクロプロセッサは、22番のギア信号が発生したことを検出したとき(ギアカウンタが図13の割り込みによりセットされたカウント値を計数したとき)に図14に示した割り込みルーチンを実行する。
【0159】
この割り込みでは、ステップ1において、18番のギア信号が発生してから今回の22番のギア信号が発生するまでの時間CTRV1を演算し、次いでステップ2において、次の#2_n1割り込み(図11の割り込み)を実行するタイミングを与える3番のギア信号を検出するために計数すべきカウント値(=11)をギアカウンタにセットしてその計数を開始させる。またステップ3においてハードフラグが1にセットされているか否かを判定し、ハードフラグが1でない場合には、ステップ4に進んで第1気筒の噴射時期計測用ギアカウンタ(n3.INJギアカウンタ)に始動時の第1気筒の噴射開始時期を与える21番のギア信号を検出するために計数する必要があるカウント値をギアカウンタにセットしてその計数を開始させる。
【0160】
またステップ3においてハードフラグが1にセットされていると判定されたときには、ステップ5に進んで、メインルーチンで演算されている第1気筒の点火時期を読み込み、ステップ6において、第1気筒の点火時期に最も近いタイミングで発生するギア信号を検出するために計数する必要があるカウント値を点火時期計測用ギアカウンタ(n3.IGギアカウンタ)にセットして、その計数を開始させる。次いで、ステップ7において、メインルーチンで演算されている第1気筒の噴射開始時期を読み込み、ステップ8において、その噴射回時期に最も近いタイミングで発生するギア信号を検出するために計数する必要があるカウント値を第1気筒の噴射開始時期計測用ギアカウンタ(n3.INJギアカウンタ)にセットしてその計数を開始させた後メインルーチンに戻る。
【0161】
[n3.IG割込み](図15)
マイクロコンピュータは、点火時期計測用ギアカウンタ(n3.IGギアカウンタ)がセットされたカウント値を計数したときに図15に示す割り込みルーチンを実行する。この割り込みでは、ステップ1において今回点火を行うのは第1気筒であるか否かを判定し、第1気筒である場合には、ステップ2に進んでハードフラグが1であるか否かを判定する。その結果ハードフラグが1でない場合には、ステップ3に進んで第1気筒のハード点火を行わせ、ハードフラグが1である場合には、ステップ4においてソフト点火を行う点火時期を検出するために計測する必要がある点火タイマ時間を第1気筒の点火タイマにセットしてメインルーチンに復帰する。
【0162】
またステップ1において今回点火を行う気筒が第1気筒でないと判定されたときには、ステップ5においてハードフラグ1であるか否かを判定し、その結果ハードフラグが1でない場合には、ステップ6に進んで第2気筒のハード点火を行わせる。ステップ5においてハードフラグが1であると判定されたときには、ステップ7に進んで第2気筒の点火時期を検出するために計測する必要がある点火タイマ時間を第2気筒の点火タイマにセットしてメインルーチンに戻る。
【0163】
[#1_n3.INJ割り込み](図16)
マイクロプロセッサは、第1気筒の噴射開始時期計測用ギアカウンタ(n3.INJギアカウンタ)がセットされたカウント値の計数を行う毎に図16に示す#1_n3.INJ割り込みを実行する。
【0164】
この割り込みでは、先ずステップ1においてハードフラグが1であるか否かを判定し、ハードフラグが1である場合には、ステップ2に移行して第1気筒のハード噴射を行わせる。またステップ1においてハードフラグが1であると判定されたときには、ステップ3に移行して第1気筒のソフト噴射を行うタイミングを検出するために計測する必要がある噴射タイマ時間を噴射タイマにセットしてその計測を開始させた後、メインルーチンに戻る。
【0165】
[#2_n3.INJ割り込み](図17)
マイクロプロセッサは、第2気筒の噴射開始時期計測用ギアカウンタ(n3.INJギアカウンタ)がセットされたカウント値を計数する毎に図17の割り込みルーチンを実行させる。
【0166】
この割り込みルーチンでは、先ずステップ1においてハードフラグが1であるか否かを判定し、ハードフラグが1である場合には、ステップ2に移行して第2気筒のハード噴射を行わせる。またステップ1においてハードフラグが1であると判定されたときには、ステップ3に移行して第2気筒のソフト噴射を行うタイミングを検出するために計測する必要がある噴射タイマ時間を噴射タイマにセットしてその計測を開始させた後、メインルーチンに戻る。
【0167】
[点火タイマ割り込み](図18)
マイクロプロセッサは、点火タイマがセットされた点火タイマ時間を計測する毎に図18に示した点火タイマ割り込みを実行する。
【0168】
この割り込みでは、ステップ1において、既に点火信号が発生しているか否か(点火中であるか否か)を判定し、点火信号が発生していないと判定されたときにステップ2に進んでマイクロコンピュータのポートB1またはB2をHレベルにすることにより、点火回路4または5に点火信号を与える。
【0169】
次いでステップ3において点火タイマに点火信号停止時間(点火信号の信号幅に相当する時間)をセットしてその計測を開始させる。点火信号を発生した後、点火タイマが点火信号停止時間を計測して再びこの割り込みが実行されたときには、ステップ1において点火中であると判定されるため、ステップ4に移行して点火信号の出力を停止させる。これにより、点火回路のサイリスタに与える点火信号の信号幅を所定の幅に制限する。
【0170】
[#1.INJタイマ割り込み](図19)
マイクロプロセッサは、第1気筒用の噴射タイマがセットされた噴射タイマ時間を計測したときに図19の割り込みを実行する。
【0171】
この割り込みにおいては、ステップ1において第1気筒の燃料噴射装置が噴射中であるか否かを判定し、この判定により、噴射中でないと判定されたときに、ステップ2に進んでマイクロプロセッサのポートB3をHレベルにすることにより、第1気筒の燃料噴射装置に噴射信号を与える。次いでステップ3において噴射タイマに噴射量演算手段により演算されている噴射量により決まる噴射時間をセットして、メインルーチンに戻る。噴射タイマが噴射時間を計測して、再びこの割り込みが実行されたときには、ステップ1において噴射中であると判定されるため、ステップ4に移行して、噴射信号の出力を停止させる。これにより、第1気筒用の燃料噴射装置に与える噴射信号の信号幅を噴射量に相応した幅とする。
【0172】
[#2.INJタイマ割り込み](図20)
マイクロプロセッサは、第2気筒用の噴射タイマがセットされた噴射タイマ時間を計測したときに図20の割り込みを実行する。
【0173】
この割り込みにおいては、ステップ1において第2気筒の燃料噴射装置が噴射中であるか否かを判定し、この判定により、噴射中でないと判定されたときに、ステップ2に進んでマイクロプロセッサのポートB4をHレベルにすることにより、第2気筒の燃料噴射装置に噴射信号を与える。次いでステップ3において噴射タイマに噴射量演算手段により演算されている噴射量により決まる噴射時間をセットして、メインルーチンに戻る。噴射タイマが噴射時間を計測して、再びこの割り込みが実行されたときには、ステップ1において噴射中であると判定されるため、ステップ4に移行して、噴射信号の出力を停止させる。これにより、第2気筒用の燃料噴射装置に与える噴射信号の信号幅を、噴射量に相応した幅とする。
【0174】
本実施形態においては、図12のステップ4,5及び9により、回転速度が設定速度N1以下であるときに制御モードを始動モードとし、回転速度が設定速度を超えているときに制御モードを定常制御モードとする制御モード切替手段が構成される。
【0175】
また図12の割り込みルーチンのステップ4ないし6と、図14の割り込みルーチンのステップ3及び4と、図16の割り込みルーチンのステップ1及び2と、図17の割り込みルーチンのステップ1及び2と、図19及び図20の割り込みルーチンとにより、始動時噴射制御手段が構成される。
【0176】
更に、図8の割り込みルーチンのステップ7及び9と、図9の割り込みルーチンのステップ2ないし5及びステップ9と、図12のステップ4,5,7及び8と、図15の割り込みルーチンのステップ2,3,5及び6とにより、始動時点火制御手段が構成される。
【0177】
また図14の割り込みルーチンのステップ3,5,6と、図15の割り込みルーチンにのステップ4及び7と、図18の割り込みルーチンとにより、定常時点火制御手段が構成される。
【0178】
更に図12の割り込みルーチンのステップ12及び13と、図14の割り込みルーチンのステップ7及び8と、図16の割り込みルーチンのステップ1及び3と、図17の割り込みルーチンのステップ1及び3と、図19及び図20の割り込みルーチンとにより、定常時噴射制御手段が構成される。
【0179】
上記の説明では、メインルーチンの構成に触れなかったが、メインルーチンでは、一連のギア信号を特定するための処理、割り込みの制御、回転速度検出用の時間CNTRV1,CNTRV2,CNTR21,CNTR22から回転速度を求めるための演算、演算された回転速度に対して点火時期や噴射開始時期を求めるマップ演算、大気圧やスロットル開度などの各種の制御条件に対して行う燃料噴射量の演算などが行われる。
【0180】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、信号発生装置に1つのパルサとギアセンサとを設けるだけで、エンジンの回転方向の情報を得ることができるため、信号発生装置の構成を複雑にすることなく、かつエンジンの大形化を招くことなく、始動時にエンジンが逆転するのを防ぐ機能を持たせることができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる制御装置のハードウェアの構成例を示したブロック図である。
【図2】本発明の実施形態で用いる信号発電機の構成例を示した正面図である。
【図3】図2の信号発電機の断面図である。
【図4】本発明の実施形態において、エンジンの始動時に各部に得られる信号波形を模式的に示したタイミングチャートである。
【図5】本発明の実施形態の始動操作開始時から始動完了時までの動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図6】図5のタイミングチャートの各部において行われる点火動作及び噴射動作と、各点火動作及び噴射動作に用いられる信号と点火動作及び噴射動作が行われるクランク角位置とをまとめて示した図表である。
【図7】本発明の実施形態においてマイクロプロセッサが実現する機能実現手段を示した機能ブロック図である。
【図8】本発明の実施形態においてマイクロプロセッサが実行するリラクタ入り割り込みのアルゴリズムを示したフローチャートである。
【図9】本発明の実施形態においてマイクロプロセッサが実行するリラクタ抜け割り込みのアルゴリズムを示したフローチャートである。
【図10】本発明の実施形態においてマイクロプロセッサが実行するギア割り込みルーチンのアルゴリズムを示したフローチャートである。
【図11】本発明の実施形態において、マイクロプロセッサが実行する他の割り込みルーチンを示したフローチャートである。
【図12】本発明の実施形態において、マイクロプロセッサが実行する更に他の割り込みルーチンを示したフローチャートである。
【図13】本発明の実施形態において、マイクロプロセッサが実行する更に他の割り込みルーチンを示したフローチャートである。
【図14】本発明の実施形態において、マイクロプロセッサが実行する更に他の割り込みルーチンを示したフローチャートである。
【図15】本発明の実施形態において、マイクロプロセッサが実行する更に他の割り込みルーチンを示したフローチャートである。
【図16】本発明の実施形態において、マイクロプロセッサが実行する更に他の割り込みルーチンを示したフローチャートである。
【図17】本発明の実施形態において、マイクロプロセッサが実行する更に他の割り込みルーチンを示したフローチャートである。
【図18】本発明の実施形態において、マイクロプロセッサが実行する更に他の割り込みルーチンを示したフローチャートである。
【図19】本発明の実施形態において、マイクロプロセッサが実行する更に他の割り込みルーチンを示したフローチャートである。
【図20】本発明の実施形態において、マイクロプロセッサが実行する更に他の割り込みルーチンを示したフローチャートである。
【符号の説明】
1…マイクロプロセッサ、2…信号発生装置、2A…リラクタ入り信号・抜け信号発生部、2B…ギア信号発生部、3…電源部、4…第1気筒用の点火回路、5…第2気筒用の点火回路、6…第1気筒用燃料噴射装置、7…第2気筒用燃料噴射装置、10…ロータ、11…パルサ、12…ギアセンサ、13…信号発電機、18…リラクタ、19…ギア、22…始動時回転方向判定手段、22a…抜け・入り間ギア信号カウント手段、22b…入り・入り間ギア信号カウント手段、22c…入り・抜け間ギア信号カウント手段、22d…抜け・抜け間ギア信号カウント手段、22e…リラクタ入り時回転方向判定手段、22f…リラクタ抜け時回転方向判定手段、23…始動時点火制御手段、24…始動時噴射制御手段、25…定常時点火制御手段、26…定常時噴射制御手段。
Claims (4)
- 2サイクルエンジンの少なくとも点火動作を制御する制御装置において、
1つのリラクタと、等角度間隔で配置された多数の歯部を有するギアとを軸線方向に位置をずらした状態で有して、前記エンジンのクランク軸に取り付けられたロータと、前記リラクタの回転方向の前端側エッジ及び後端側エッジをそれぞれ検出してリラクタ入り信号及びリラクタ抜け信号を発生するリラクタ入り信号・抜け信号発生部と、前記ギアの各歯部の回転方向の前端側エッジ及び後端側エッジのうちのいずれか一方を検出する毎にギア信号を発生するギア信号発生部とを備えた信号発生装置と、
前記リラクタ抜け信号が発生してからリラクタ入り信号が発生するまでの間に発生する前記ギア信号の数、各リラクタ入り信号が発生してから次のリラクタ入り信号が発生するまでの間に発生する前記ギア信号の数、前記リラクタ入り信号が発生してからリラクタ抜け信号が発生するまでの間に発生する前記ギア信号の数、及び各リラクタ抜け信号が発生してから次のリラクタ抜け信号が発生するまでの間に発生する前記ギア信号の数のそれぞれが、前記エンジンの始動操作開始後前記エンジンが正回転を継続したときと、前記エンジンのピストンが上死点を越えることができずに前記エンジンが逆転したときとで異なることを利用して、前記エンジンの始動時の回転方向を判定する始動時回転方向判定手段と、
前記始動時回転方向判定手段により前記エンジンが正回転していると判定されているときに、始動時の点火時期として予め定められた時期に前記エンジンを点火するために必要な処理を行い、前記始動時回転方向判定手段により前記エンジンが逆回転していると判定されているときには前記エンジンを失火させるために必要な処理を行う始動時点火制御手段と、
を具備してなる2サイクルエンジンの制御装置。 - 2サイクルエンジンの少なくとも点火動作と燃料噴射動作とを制御する制御装置において、
1つのリラクタと、等角度間隔で配置された多数の歯部を有するギアとを軸線方向に位置をずらした状態で有して、前記エンジンのクランク軸に取り付けられたロータと、前記リラクタの回転方向の前端側エッジ及び後端側エッジをそれぞれ検出してリラクタ入り信号及びリラクタ抜け信号を発生するリラクタ入り信号・抜け信号発生部と、前記ギアの各歯部の回転方向の前端側エッジ及び後端側エッジのうちのいずれか一方を検出する毎にギア信号を発生するギア信号発生部とを備えた信号発生装置と、
前記リラクタ抜け信号が発生してからリラクタ入り信号が発生するまでの間に発生する前記ギア信号の数、各リラクタ入り信号が発生してから次のリラクタ入り信号が発生するまでの間に発生する前記ギア信号の数、前記リラクタ入り信号が発生してからリラクタ抜け信号が発生するまでの間に発生する前記ギア信号の数、及び各リラクタ抜け信号が発生してから次のリラクタ抜け信号が発生するまでの間に発生する前記ギア信号の数のそれぞれが、前記エンジンの始動操作開始後前記エンジンが正回転を継続したときと、前記エンジンのピストンが上死点を越えることができずに前記エンジンが逆転したときとで異なることを利用して、前記エンジンの始動時の回転方向を判定する始動時回転方向判定手段と、
前記始動時回転方向判定手段により前記エンジンが正回転していると判定されているときには、始動時の点火時期として予め定められた時期に前記エンジンを点火するために必要な処理を行い、前記始動時回転方向判定手段により前記エンジンが逆回転していると判定されているときには前記エンジンを失火させるために必要な処理を行う始動時点火制御手段と、
前記始動時回転方向判定手段により前記エンジンが正回転していると判定されている状態では、始動時の噴射開始時期として予め定められた時期が検出されたときに前記エンジンに燃料を供給する燃料噴射装置に燃料噴射を行わせるために必要な処理を行い、前記始動時回転方向判定手段により前記エンジンが逆回転していると判定されている状態では、前記燃料噴射装置からの燃料噴射を中止させるために必要な処理を行う始動時噴射制御手段と、
を備えたことを特徴とする2サイクルエンジンの制御装置。 - 2サイクルエンジンの少なくとも点火動作を制御する制御装置において、
1つのリラクタと、等角度間隔で配置された多数の歯部を有するギアとを軸線方向に位置をずらした状態で有して、前記エンジンのクランク軸に取り付けられたロータと、前記リラクタの回転方向の前端側エッジ及び後端側エッジをそれぞれ検出してリラクタ入り信号及びリラクタ抜け信号を発生するリラクタ入り信号・抜け信号発生部と、前記ギアの各歯部の回転方向の前端側エッジ及び後端側エッジのうちのいずれか一方を検出する毎にギア信号を発生するギア信号発生部とを備えた信号発生装置と、
前記リラクタ抜け信号が発生してからリラクタ入り信号が発生するまでの間に発生するギア信号の数を抜け・入り間ギアカウント値として求める抜け・入り間ギア信号カウント手段と、
各リラクタ入り信号が発生してから次のリラクタ入り信号が発生するまでの間に発生したギア信号の数を入り・入り間ギアカウント値として求める入り・入り間ギア信号カウント手段と、
前記リラクタ入り信号が発生してからリラクタ抜け信号が発生するまでの間に発生したギア信号の数を入り・抜け間ギアカウント値として求める入り・抜け間ギアカウント手段と、
各リラクタ抜け信号が発生してから次のリラクタ抜け信号が発生するまでの間に発生したギア信号の数を抜け・抜け間ギアカウント値として求める抜け・抜け間ギアカウント手段と、
前記信号発生装置が発生するいずれかの信号の発生間隔から前記エンジンの回転速度を検出する回転速度検出手段と、
前記回転速度検出手段により検出された回転速度が前記エンジンのアイドリング速度よりも低く設定された設定速度以下の状態で前記リラクタ入り信号が発生したときに前記抜け・入り間ギアカウント値及び入り・入り間ギアカウント値をそれぞれに対して設定した第1の判定値及び第2の判定値と比較して、前記抜け・入り間ギアカウント値が第1の判定値未満でかつ前記入り・入り間ギアカウント値が第2の判定値を超えているときに前記エンジンが正回転していると判定し、前記抜け・入り間ギアカウント値が第1の判定値以上のとき及び前記入り・入り間ギアカウント値が第2の判定値以下のときには前記エンジンが逆回転していると判定するリラクタ入り時回転方向判定手段と、
前記エンジンの回転速度が前記設定速度以下の状態で前記リラクタ抜け信号が発生したときに前記入り・抜け間ギアカウント値及び抜け・抜け間ギアカウント値をそれぞれに対して設定した第3及び第4の判定値と比較して、前記入り・抜け間ギアカウント値が第3の判定値未満でかつ前記抜け・抜け間ギアカウント値が第4の判定値を超えているときに前記エンジンが正回転していると判定し、前記入り・抜け間ギアカウント値が第3の判定値以上のとき及び前記抜け・抜け間ギアカウント値が第4の判定値以下のときには前記エンジンが逆回転していると判定するリラクタ抜け時回転方向判定手段と、
前記リラクタ入り時回転方向判定手段により前記エンジンが正回転していると判定されたとき、及び前記リラクタ抜け時回転方向判定手段により前記エンジンが正回転していると判定されたときには始動時の点火時期として予め定めた時期に前記エンジンを点火するために必要な処理を行い、前記リラクタ入り時回転方向判定手段により前記エンジンが逆回転していると判定されたとき、及び前記リラクタ抜け時回転方向判定手段により前記エンジンが逆回転していると判定されたときには前記エンジンを失火させるための処理を行わせる始動時点火制御手段と、
を具備してなる2サイクルエンジンの制御装置。 - 2サイクルエンジンの少なくとも点火動作と燃料噴射動作とを制御する制御装置において、
1つのリラクタと、等角度間隔で配置された多数の歯部を有するギアとを軸線方向に位置をずらした状態で有して、前記エンジンのクランク軸に取り付けられたロータと、前記リラクタの回転方向の前端側エッジ及び後端側エッジをそれぞれ検出してリラクタ入り信号及びリラクタ抜け信号を発生するリラクタ入り信号・抜け信号発生部と、前記ギアの各歯部の回転方向の前端側エッジ及び後端側エッジのうちのいずれか一方を検出する毎にギア信号を発生するギア信号発生部とを備えた信号発生装置と、
前記リラクタ抜け信号が発生してからリラクタ入り信号が発生するまでの間に発生するギア信号の数を抜け・入り間ギアカウント値として求める抜け・入り間ギア信号カウント手段と、
各リラクタ入り信号が発生してから次のリラクタ入り信号が発生するまでの間に発生したギア信号の数を入り・入り間ギアカウント値として求める入り・入り間ギア信号カウント手段と、
前記リラクタ入り信号が発生してからリラクタ抜け信号が発生するまでの間に発生したギア信号の数を入り・抜け間ギアカウント値として求める入り・抜け間ギアカウント手段と、
各リラクタ抜け信号が発生してから次のリラクタ抜け信号が発生するまでの間に発生したギア信号の数を抜け・抜け間ギアカウント値として求める抜け・抜け間ギアカウント手段と、
前記信号発生装置が発生するいずれかの信号の発生間隔から前記エンジンの回転速度を検出する回転速度検出手段と、
前記回転速度検出手段により検出された回転速度が前記エンジンのアイドリング速度よりも低く設定された設定速度以下の状態で前記リラクタ入り信号が発生したときに前記抜け・入り間ギアカウント値及び入り・入り間ギアカウント値をそれぞれに対して設定した第1の判定値及び第2の判定値と比較して、前記抜け・入り間ギアカウント値が第1の判定値未満でかつ前記入り・入り間ギアカウント値が第2の判定値を超えているときに前記エンジンが正回転していると判定し、前記抜け・入り間ギアカウント値が第1の判定値以上のとき及び前記入り・入り間ギアカウント値が第2の判定値以下のときには前記エンジンが逆回転していると判定するリラクタ入り時回転方向判定手段と、
前記エンジンの回転速度が前記設定速度以下の状態で前記リラクタ抜け信号が発生したときに前記入り・抜け間ギアカウント値及び抜け・抜け間ギアカウント値をそれぞれに対して設定した第3及び第4の判定値と比較して、前記入り・抜け間ギアカウント値が第3の判定値未満でかつ前記抜け・抜け間ギアカウント値が第4の判定値を超えているときに前記エンジンが正回転していると判定し、前記入り・抜け間ギアカウント値が第3の判定値以上のとき及び前記抜け・抜け間ギアカウント値が第4の判定値以下のときには前記エンジンが逆回転していると判定するリラクタ抜け時回転方向判定手段と、
前記リラクタ入り時回転方向判定手段により前記エンジンが正回転していると判定されたとき、及び前記リラクタ抜け時回転方向判定手段により前記エンジンが正回転していると判定されたときには始動時の点火時期として予め定めた点火時期に前記エンジンを点火するために必要な処理を行い、前記リラクタ入り時回転方向判定手段により前記エンジンが逆回転していると判定されたとき、及び前記リラクタ抜け時回転方向判定手段により前記エンジンが逆回転していると判定されたときには前記エンジンを失火させるための処理を行わせる始動時点火制御手段と、
前記リラクタ入り時回転方向判定手段により前記エンジンが正回転していると判定されたとき、及び前記リラクタ抜け時回転方向判定手段により前記エンジンが正回転していると判定されたときには始動時の噴射開始時期として予め定めた時期に燃料噴射を行わせるために必要な処理を行い、前記リラクタ入り時回転方向判定手段により前記エンジンが逆回転していると判定されたとき、及び前記リラクタ抜け時回転方向判定手段により前記エンジンが逆回転していると判定されたときには、前記燃料噴射を中止するための処理を行わせる始動時噴射制御手段と、
を具備してなる2サイクルエンジンの制御装置。
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JP2002247521A JP2004084577A (ja) | 2002-08-27 | 2002-08-27 | 2サイクルエンジンの制御装置 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009236082A (ja) * | 2008-03-28 | 2009-10-15 | Mitsuba Corp | 点火信号発生装置及びそれを備えた磁石発電機 |
JP2011226318A (ja) * | 2010-04-16 | 2011-11-10 | Mitsubishi Electric Corp | 内燃機関の燃料噴射装置 |
GB2518238A (en) * | 2013-09-17 | 2015-03-18 | Mbe Systems Ltd | Engine starting system |
-
2002
- 2002-08-27 JP JP2002247521A patent/JP2004084577A/ja active Pending
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