JP2004082314A - 研磨工具用コンポジット構造体とその製造方法 - Google Patents

研磨工具用コンポジット構造体とその製造方法 Download PDF

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江川 総一郎
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Abstract

【課題】油脂性研磨剤の供給が不可欠であるバフ研磨において、油脂性研磨剤の供給なしに遊離砥粒を使用した連続研磨を可能にする。
【解決手段】砥粒を含む1μmから100μmの粒子径をもつ油脂粒子を核とし、バインダーをマトリックスとし、天然繊維又は合成繊維の不織布若しくは織布基材に保持、固着させた研磨工具用コンポジット構造体をバフ素材として、これを積層重合して研磨工具とする。
【選択図】  図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明の産業上の利用分野は、バフと油脂性研磨剤を用いて金属、プラスチック等を研磨、つや出しするバフ研磨に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のバフ研磨においては、油脂性研磨剤の供給が不可欠であり、研磨前又は研磨時に、バフ表面に、油脂性研磨剤が固形研磨剤であれば展着塗布し、液状研磨剤であればスプレーガンで噴射するなどの方法で供給し、研磨を行っている。
【0003】
従来のバフ研磨においては、油脂性研磨剤の供給が不可欠で、油脂性研磨剤の供給なしにバフによる連続研磨は不可能であった。しかし、油脂性研磨剤供給量の調節に熟練を要したり、塗布装置、器具の調節が不可欠であったり、工程中での断続的な油脂性研磨剤供給の前後で研磨目に違いが現れるなどの問題点もあった。さらに、油脂性研磨剤の供給時に、バフへの未付着分が周囲に飛散し、作業環境を著しく悪化していた。
【0004】
これらの問題点を解決するために、油脂性研磨剤をバフに単なる含浸などの手段によって作られた研磨工具が試みられているが、このものは、研磨時に発生する研磨熱によって油脂性研磨剤が融解し遠心力によって工具内部から流出、飛散してしまい実用的でなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、本発明の目的は、バフと油脂性研磨剤を用いて金属、プラスチック等を研磨、つや出しするバフ研磨において、油脂性研磨剤を塗布する煩雑で熟練を要する作業を無くし、塗布する装置、器具を必要とせず、均一な仕上がりで連続したバフ研磨を可能とするバフ素材と研磨工具を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、油脂性研磨剤を単に含浸させたものと異なり、砥粒を含む1μmから100μmの粒子径をもつ油脂粒子を核とし、バインダーをマトリックスとして、天然繊維又は合成繊維からなる不織布若しくは織布基材に保持、固着させたことを特徴とする研磨工具用コンポジット構造体であって、細分化された油脂性研磨剤がバインダーに覆われている海島構造である研磨工具用コンポジット構造体とその製造方法及びそれを積層重合して回転研磨工具を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。本発明品の基本的な構造は、基材部、砥粒を含む油脂粒子部、砥粒を含む油脂粒子を取り囲むバインダー部からなる。基材は、綿、サイザル麻、羊毛などの天然繊維、又はナイロン、ポリエステルなどの合成繊維からなる不織布若しくは織布であって、砥粒を含む油脂粒子の必要十分な量を保持、固着できるような嵩高の不織布、又は比較的目の粗いメッシュ状の織布などを使用する。砥粒を含む油脂粒子は、既存の油脂性バフ研磨剤又はその配合の一部を変更したものを使用する。バインダーは、その用途に合わせ、膠、ゴムなどの天然の接着剤、若しくはエポキシ、アクリル、ポリウレタン、合成ゴム、フェノール、PVA、EVA、アルキッド、ユリア、メラミン、などの合成樹脂接着剤の中から1種類若しくは2種類以上の組みあわせの中から選択される。
【0008】
本発明の研磨工具用コンポジット構造体は、砥粒を含む1μmから100μmの粒子径をもつ油脂粒子を核とし、バインダーをマトリックスとしたことを特徴とし、研磨工具内に油脂性研磨剤を細分化してバインダーに内包させることで研磨熱による油脂性研磨剤の融解があっても、工具内部からの流出、飛散は起こらず、基材及びバインダーの種類により工具磨耗を調節することで、研磨剤供給量を調節することができる。
【0009】
本発明における砥粒を含む油脂粒子の大きさは、1μmから100μmであるのが好ましく、1μm未満では十分な量の砥粒を含むことができず、100μmを超えると研磨熱により融解した油脂性研磨剤が遠心力によって過剰に流出、飛散するなど、油脂性研磨剤の供給量の適切な調節ができない。
【0010】
【実施例】
以下に実施例をあげて本発明に係る油脂性研磨剤コンポジット構造体とその製造方法及び油脂性研磨剤コンポジット構造体を利用して作られた研磨工具をより詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0011】
実施例1(部数はすべて重量部数である)
融点55℃のステアリン酸50部を加温して融解し、攪拌しながらノニオン系界面活性剤を10部加えて、さらに平均粒子径約9μmのアルミナ砥粒100部を攪拌しながら徐々に加える。さらに温水90部を攪拌しながら徐々に加え、W/Oエマルジョンを反転させてO/Wエマルジョンを得る。このエマルジョンを30℃前後に冷すことで、平均粒子径約9μmのアルミナ砥粒を含む水に分散した油脂粒子を得る。このときの油脂粒子の大きさは、5μm〜80μmであった。
【0012】
このエマルジョン100部に対して約20部のウレタン系エマルジョン(固形分約50% 平均粒子径約0.2μm)を加えて得られたスラリーをフェノール樹脂で補強した嵩高ナイロン不織布にディップコートし、乾燥固着させ研磨工具用コンポジット構造体を得た。この研磨工具用コンポジット構造体を図−2のようにディスク状とし10枚積層重合し、加圧圧着して研磨工具とした。
【0013】
実施例2
流動パラフィン50部を加温し、攪拌しながらノニオン系界面活性剤を10部加えて、さらに平均粒子径約4μm(#3000)のGC砥粒(緑色炭化珪素砥粒)100部を攪拌しながら徐々に加える。さらに温水100部を攪拌しながら徐々に加え、W/Oエマルジョンを反転させてO/Wエマルジョンを得る。このエマルジョンを30℃前後に冷すことで、平均粒子径約4μmのGC砥粒を含む水に分散した流動パラフィン粒子を得る。このときの流動パラフィン粒子の大きさは。2μm〜50μmであった。
【0014】
このエマルジョン100部に対して約25部のNBR系合成ゴムエマルジョン(固形分約40% 平均粒子径約0.12μm)を加えて得られたスラリーを綿使用のメッシュタイプの不織布にロールコートし、乾燥固着させ研磨工具用コンポジット構造体を得る。この研磨工具用コンポジット構造体を図−2のようにディスク状とし20枚積層重合し、フランジを取付けてばらバフ状の研磨工具とした。
【0015】
実施例3
融点50℃の牛脂硬化脂肪酸50部を加温して融解し、攪拌しながらノニオン系界面活性剤を10部加えて、さらに平均粒子径約1μmのアルミナ100部を攪拌しながら徐々に加える。さらに温水90部を攪拌しながら徐々に加え、W/Oエマルジョンを反転させてO/Wエマルジョンを得る。このエマルジョンを30℃前後に冷ますことで、平均粒子径約1μmのアルミナ砥粒を含む、水に分散した油脂粒子を得る。このときの油脂粒子の大きさは、1μm〜30μmであった。
【0016】
このエマルジョン100部に対して約20部のウレタン系エマルジョン(固形分約50% 平均粒子径約0.2μm)を加えて得られたスラリーを網目状起毛綿布にドクターコートし、乾燥固着させ研磨工具用コンポジット構造体を得る。この研磨工具用コンポジット構造体を図−2のようにディスク状とし20枚積層重合し、フランジを取付けてばらバフ状の研磨工具とした。
【0017】
上記のようにして製造した実施例1と実施例3の研磨工具を手持ち電動工具に装着し、ステンレス鋼の表面を10分間研磨し、同じく実施例2の研磨工具でポリカーボネート樹脂の表面を10分間研磨し、それぞれ加工物に付着した油脂分の付着を確認したのち油脂分をふき取り、同様の試験を連続120分継続した。その結果、加工物表面に付着する油脂分量に変化は見られなかった。同時に、研磨量、加工物表面粗さの測定も行ったが共に変化は見られなかった。
【0018】
【発明の効果】
本発明によって得られる研磨工具は、工具の中に油脂性研磨剤を核とし、バインダー部分をマトリックスとする研磨剤コンポジット構造体という海島構造による油脂性研磨剤の固定によって、研磨熱による油脂性研磨剤の融解があっても研磨面以外では流出、飛散は起こらない。そのため油脂性研磨剤の供給なしに、工具の摩滅状態に応じて油脂性研磨剤が自動的に供給されて遊離砥粒を使用した連続研磨を行うことが可能となった。また、本発明によって、作業環境の向上、作業の能率化、油脂性研磨剤の塗布前後の研磨目が変わることなどの問題点を解決できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の研磨工具用コンポジット構造体の断面図である。
【図2】本発明の研磨工具用コンポジット構造体をディスク状とし積層重合して、回転体とした研磨工具の斜視図である。
【符号の説明】
1 研磨工具用コンポジット構造体
2 砥粒
3 油脂
4 バインダー
5 繊維

Claims (3)

  1. 砥粒を含む1μmから100μmの粒子径をもつ油脂粒子を核とし、バインダーをマトリックスとして、天然繊維又は合成繊維からなる不織布若しくは織布基材に保持、固着させたことを特徴とする研磨工具用コンポジット構造体。
  2. 請求項1の研磨工具用コンポジット構造体の製造方法であって、油脂を加熱融解し、砥粒、乳化剤及び水とを加えて砥粒を含む1μmから100μmの油脂粒子を含むO/Wエマルジョンとし、このエマルジョンと水系バインダーを混合して得られるスラリーを天然繊維又は合成繊維からなる不織布若しくは織布基材に含浸し、水分を蒸発させバインダーを固化して作ることを特徴とする製造方法。
  3. 請求項1記載の研磨工具用コンポジット構造体を積層重合して回転体としたことを特徴とする研磨工具。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010240751A (ja) * 2009-04-01 2010-10-28 Joibondo Kk 研磨用および表面保護材塗布用可塑性柔軟組成物
JP2014500158A (ja) * 2010-12-14 2014-01-09 スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー 内蔵型繊維性バフ研磨物品
JP2021049586A (ja) * 2019-09-20 2021-04-01 富士紡ホールディングス株式会社 刃物用研磨パッド

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