JP2004082212A - スズ−銀系無鉛はんだ - Google Patents
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Abstract
【課題】無電解めっきとの接合界面における初期の継手強度の向上及び熱処理後の継手強度の低下抑制を図ることができるスズ−銀系無鉛はんだを提供する。
【解決手段】鉛を含まないスズ−銀系からなるはんだにおいて、亜鉛(Zn)を添加した。
【選択図】 なし
【解決手段】鉛を含まないスズ−銀系からなるはんだにおいて、亜鉛(Zn)を添加した。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉛を含まないスズ−銀系からなるはんだに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子デバイスは、各種電気機器の小型化や高機能化に対応するため、狭ピッチ化が進んでおり、電子実装やパッケージング技術において、選択的に析出できると共に均一な被膜を形成できる無電解Ni−Pめっきが適用されている。
【0003】
他方、近年の地球環境問題から、構成元素として鉛を含まない(鉛フリー化)はんだが急速に進んでおり、諸特性を考慮すると、Sn−Ag系はんだが最も実用化に近いと考えられている。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−328880号公報
【特許文献2】
特開2001−71174号公報
【特許文献3】
特開2001−150181号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
近年、BGA(Ball Grid Array)に二元素のSn−3.5Agはんだが使用され始めている。このSn−3.5Agはんだは、無電解Ni−Pめっきとの界面において、初期の継手強度が低いだけでなく、熱処理後に継手強度が低下するという問題がある。
【0006】
また、Sn−3.5Agはんだは、融点が高いため、熱の影響による部品の破損を生じることが近年の実装評価において判明していることから、融点を有効に下げる元素であるInを添加することが検討されている。このInは、添加してもはんだ自体の機械的性質をほとんど変化させることがないことから、近年注目されている。
【0007】
しかしながら、Sn−3.5Agはんだは、Inの添加量が増えると、無電解Ni−Pめっきとの接合界面において、初期の継手強度が低下してしまい、特に、Inの添加量が5%以上となると、熱処理後の継手強度の低下が非常に大きいという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、Sn−3.5AgやSn−3.5Ag−xInと無電解めっきとの接合界面における初期の継手強度の向上及び熱処理後の継手強度の低下抑制を図ることができるスズ−銀系無鉛はんだを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、スズ−銀系はんだ組成に亜鉛を少量添加することで、無電解Ni−Pめっきとの継手強度及び界面層の変化について効果があることを知見し、本発明を完成させた。
【0010】
かかる知見に基づく第1の発明は、鉛を含まないスズ−銀系からなるはんだにおいて、亜鉛(Zn)が添加されていることを特徴とするスズ−銀系無鉛はんだにある。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、インジウム(In)がさらに添加されていることを特徴とするスズ−銀系無鉛はんだにある。
【0012】
第3の発明は、第1の発明において、亜鉛(Zn)の添加量が0.3〜1.0重量%であり、残部がスズと銀であることを特徴とするスズ−銀系無鉛はんだにある。
【0013】
第4の発明は、第2の発明において、インジウム(In)の添加量が10重量%未満であると共に、亜鉛(Zn)の添加量が0.1〜1.0重量%であり、残部がスズと銀であることを特徴とするスズ−銀系無鉛はんだにある。
【0014】
第5の発明は、第1から第4の発明のいずれかのスズ―銀系無鉛はんだで被接合体同士が接合されていることを特徴とする接合構造にある。
【0015】
第6の発明は、第5の発明において、前記被接合体の表面に無電解めっき層が設けられていることを特徴とする接合構造にある。
【0016】
第7の発明は、第6の発明において、前記無電解めっき層がNi−Pめっきであることを特徴とする接合構造にある。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明に係るスズ−銀系無鉛はんだの実施の形態を以下に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0018】
本発明に係るスズ−銀系無鉛はんだは、鉛を含まないスズ(Sn)−銀(Ag)系からなるはんだにおいて、亜鉛(Zn)が添加されているものである。
【0019】
なお、スズ−銀系無鉛はんだとは、銀(Ag)を3〜3.5重量%配合し、残部をスズ(Sn)としたものをいう。なお、スズ(Sn)に銀(Ag)3.5重量%を配合するはんだをSn−3.5 Agと記す。
【0020】
ここで、亜鉛(Zn)の添加量を0.3〜1.0重量%とすると好ましく、特に、0.7〜1.0重量%であるとさらに好ましい。なぜなら、亜鉛(Zn)の添加量が0.3重量%未満であると、初期の継手強度の向上効果が小さく、亜鉛(Zn)の添加量が1.0重量%を超えると、初期の継手強度の向上効果が小さいだけでなく、熱処理後の継手強度の低下抑制効果も小さくなるからである。
【0021】
また、本発明に係るスズ−銀系無鉛はんだにおいて、インジウム(In)がさらに添加されていると好ましい。
【0022】
このとき、インジウム(In)の添加量を10重量%未満とし、亜鉛(Zn)の添加量を0.1〜1.0重量%とすると好ましい。なぜなら、インジウム(In)の添加量が10重量%以上となると、コスト面及びはんだ付性の面から好ましくなく、また、亜鉛(Zn)の添加量が0.1重量%未満であると、継手強度の低下が大きくなり、亜鉛(Zn)の添加量が1.0重量%を超えると、ぬれ性が低下してしまうからである。
【0023】
このような本発明に係るスズ−銀系無鉛はんだを用いて被接合体同士を接合すると、接合構造の接合強度が向上するものとなる。
【0024】
特に、被接合体に無電解めっき層を設けた場合では、従来に比べて継手強度の低下を大幅に抑制することができる。
【0025】
ここで、上記無電解めっき層は、その種類を特に限定されることはないが、特に、Ni−Pめっきであると極めて有効である。
【0026】
【実施例】
本発明に係るスズ−銀系無鉛はんだの効果を確認するため、以下のような試験を行った。
【0027】
[はんだの作製]
下記の表1に示す割合で配合して300℃で溶融後に金型に注湯して室温まで冷却することにより鋳造してスズ−銀系無鉛はんだをそれぞれ作製した。
【0028】
【表1】
【0029】
[被接合体の作製]
図1(a)に示すように、銅製の板11a(10×30×1mm)に無電解のNi−10Pのめっき層11b(厚さ:約5μm程度)を施すことにより被接合体11を作製した。
【0030】
[試験片の作製]
図1(b)に示すように、二枚の上記被接合体11の間に、薄片状の前記はんだ12(2×2×0.1mm)を二つ介在させてホットプレートで加熱して(250℃×40s)接合することにより、試験片10を前記組成A1,B1,C1〜C7,D1〜D7,E1〜E5の前記はんだ12ごとにそれぞれ作製した。
【0031】
[試験方法]
各前記試験片10の熱処理前及び熱処理後の継手強度をインストロン型試験機によりそれぞれ測定した(測定条件:温度=室温、クロスヘッド速度=10mm/min、n=5)。
【0032】
また、走査型電子顕微鏡(SEM)及びエネルギー分散型X線分析装置(EDX)により接合界面を観察し、熱処理による界面層の厚さの経時変化を調べた(SEMの観察写真において任意の10点をサンプリングして測定した平均値)。
【0033】
[試験結果]
(1)組成A〜C
i)継手強度
上記組成A〜Cのはんだ12を使用した試験片10の継手強度の測定結果を下記の表2、3に示す。なお、熱処理は、100℃、125℃、150℃の各温度でそれぞれ1000時間行った。
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
上記表2,3からわかるように、組成B1(銅添加のもの)や組成C2〜C5(亜鉛添加量が0.3〜1.0重量%のもの)のはんだ12を使用した試験片10においては、組成A1(添加のないもの)のはんだ12を使用した試験片10に比べて、初期の継手強度が向上した。
【0037】
また、組成C2〜C5(亜鉛添加量が0.3〜1.0重量%のもの)のはんだ12を使用した試験片10においては、組成A1(添加のないもの)のはんだ12を使用した試験片10に比べて、熱処理後の継手強度の低下を抑制する効果がみられ、特に、組成C5(亜鉛添加量が1.0重量%のもの)のはんだ12を使用した試験片10においては、熱処理後の継手強度の低下を大幅に抑制することができた。しかしながら、組成B1(銅添加のもの)のはんだ12を使用した試験片10においては、熱処理後の継手強度の低下を抑制することができなかった。
【0038】
以上のことから、組成C2〜C5(亜鉛添加量が0.3〜1.0重量%のもの)のはんだ12は、無電解Ni−10Pめっきとの接合界面における初期の継手強度の向上及び熱処理後の継手強度の低下抑制を図ることができ、特に、組成C5(亜鉛添加量が1.0重量%のもの)のはんだ12は、その効果を顕著に奏することが明らかとなった。
【0039】
ii)界面層の厚さの変化
一般に、Sn−Ag系はんだと無電解Ni−Pめっきとの間には、Ni−Sn系反応層とP−濃縮層との二種の界面層が形成されて、熱処理に伴ってこれら層が次第に成長していくことにより、継手強度が徐々に低下していくと考えられる。そこで、組成A1(添加のないもの)、B1(銅添加のもの)、C5(亜鉛添加量が1.0重量%のもの)のはんだ12を使用した試験片10の熱処理(100℃、125℃、150℃の各温度)による上記界面層の厚さの経時変化を調べた。その結果を図2〜7に示す。なお、図2〜7において、横軸は、熱処理時間の平方根を表し、縦軸は、上記層の厚さを表す。
【0040】
これら図2〜7からわかるように、前記界面層は、その厚さが直線的に増えていることから、拡散律速で成長すると考えられる。
【0041】
ここで、組成C5(亜鉛添加量が1.0重量%のもの)のはんだ12を使用した試験片10の熱処理による上記界面層の厚さの経時変化は、組成B1(銅添加のもの)、C5(亜鉛添加量が1.0重量%のもの)のはんだ12を使用した試験片10の熱処理による上記界面層の厚さの経時変化に比べて、明らかに小さい。
【0042】
このことから、亜鉛の添加によって上記界面層の成長が抑制され、これにより熱処理後の継手強度の低下が抑制されていると考えられる。
【0043】
(2)組成D
i)継手強度
前記組成D1〜D7(インジウム添加のもの)のはんだ12を使用した試験片10の継手強度の測定結果を下記の表4に示す。比較のため、組成A1(添加なしのもの)のはんだ12を使用した試験片10の継手強度の測定結果も併記する。なお、熱処理は、100℃の温度で1000時間行った。
【0044】
【表4】
【0045】
表4からわかるように、組成D4〜D7(インジウム添加量が6重量%以上のもの)のはんだ12を使用した試験片10においては、組成A1(添加のないもの)のはんだ12を使用した試験片10に比べて、初期の継手強度が低下してしまった。また、組成D3〜D7(インジウム添加量が5重量%以上のもの)のはんだ12を使用した試験片10においては、組成A1(添加のないもの)のはんだ12を使用した試験片10に比べて、熱処理後の継手強度が低下してしまった。特に、組成D6(インジウム添加量が8重量%のもの)のはんだ12を使用した試験片10においては、熱処理後の継手強度が55%も低下してしまった。
【0046】
ii)界面層の厚さの変化
組成D2,D4,D6(インジウム添加量が4重量%、6重量%、8重量%のもの)のはんだ12を使用した試験片10の熱処理(100℃)による前記界面層の厚さの経時変化を調べた。その結果を図8,9に示す。比較のため、組成A1(添加なしのもの)のはんだ12を使用した試験片10の熱処理(100℃)による前記界面層の厚さの経時変化も併記する。
【0047】
図8,9からわかるように、組成D2(インジウム添加量が4重量%のもの)のはんだ12を使用した試験片10の熱処理による前記界面層の厚さの経時変化は、組成A1(添加のないもの)のはんだ12を使用した試験片10の熱処理による前記界面層の厚さの経時変化と略同等である。しかしながら、組成D4及びD6(インジウム添加量が6重量%及び8重量%のもの)のはんだ12を使用した試験片10の熱処理による前記界面層の厚さの経時変化は、組成A1(添加のないもの)のはんだ12を使用した試験片10の熱処理による前記界面層の厚さの経時変化に比べて大きくなっていた。
【0048】
このことから、インジウムの添加量が所定値を越えると、上記界面層の成長が促進されてしまい、これにより熱処理後の継手強度が低下してしまうと考えられる。
【0049】
(3)組成E
i)継手強度
継手強度の低下が最も大きかった前記組成D6(インジウム添加量が8重量%のもの)に対して亜鉛を添加した組成E1〜E5のはんだ12を使用した試験片10の継手強度の測定結果を下記の表5に示す。比較のため、上記組成D6(インジウム添加量が8重量%のもの)のはんだ12を使用した試験片10の継手強度の測定結果も併記する。なお、熱処理は、100℃の温度で1000時間行った。
【0050】
【表5】
【0051】
表5からわかるように、亜鉛を添加した組成E1〜E5のはんだ12を使用したすべての試験片10においては、亜鉛添加のない組成D6のはんだ12を使用した試験片10に比べて、初期及び熱処理後の継手強度の低下を抑制することができ、特に、組成E3〜E5(亜鉛添加量が0.5〜1.0重量%のもの)のはんだ12を使用した試験片10においては、継手強度の低下抑制効果が非常に大きいことが判明した。
【0052】
ii)界面層の厚さの変化
組成E1〜E5(亜鉛添加のもの)のはんだ12を使用した試験片10の熱処理(100℃)による前記界面層の厚さの経時変化を調べた。その結果を図10,11に示す。比較のため、組成D6(亜鉛添加なしのもの)のはんだ12を使用した試験片10の熱処理(100℃)による前記界面層の厚さの経時変化も併記する。
【0053】
図10,11からわかるように、前記界面層は、その厚さが直線的に増えていることから、拡散律速で成長すると考えられる。
【0054】
ここで、亜鉛を添加した組成E1〜E5のはんだ12を使用した試験片10の熱処理による前記界面層の厚さの経時変化は、亜鉛添加のない組成D6のはんだ12を使用した試験片10の熱処理による前記界面層の厚さの経時変化と比べて、明らかに小さかった。特に、組成E3〜E5(亜鉛添加量が0.5〜1.0重量%のもの)のはんだ12を使用した試験片10の熱処理による前記界面層の厚さの経時変化は、組成D6(亜鉛添加のないもの)のはんだ12を使用した試験片10の熱処理による前記界面層の厚さの経時変化に比べて、非常に小さくなっていた。この結果は継手強度の低下抑制効果が認められた添加量と同様であった。
【0055】
このことから、亜鉛の添加によって前記界面層の成長が抑制され、これにより熱処理後の継手強度の低下が抑制されていると考えられる。よって、継手強度の低下を抑制するには、前記界面層の成長を抑制することが極めて重要であるといえる。
【0056】
また、亜鉛の添加量とぬれ性との関係を図12に示す。図12から明らかなように、亜鉛の添加によりぬれ性が低下することが認められることから、ぬれ性を考慮すると、亜鉛の添加量を0.7重量%以下とすることが好ましい。
【0057】
また、組成D6のはんだ12を使用した試験片10の熱処理後(100℃×1000時間)の前記界面層のSEM写真を図13(a)に示し、組成E5(亜鉛添加量が1.0重量%のもの)のはんだ12を使用した試験片10の熱処理後(100℃×1000時間)の前記界面層のSEM写真を図13(b)に示す。図13からわかるように、亜鉛を添加すると、前記界面層の成長を抑制できることが明らかであり、継手強度の低下を抑制できることがわかる。
【0058】
[まとめ]
以上の実施例から、Sn−Ag系はんだと無電解Ni−Pめっきとの継手強度及び界面層の変化を調べた結果をまとめると、以下のことがいえる。
【0059】
(1)Sn−3.5Agに亜鉛を0.3〜1.0重量%添加することにより、初期の継手強度の向上及び熱処理による継手強度の低下抑制が可能であり、特に、亜鉛を0.7〜1.0重量%添加すると、その効果が著しく大きくなる。また、界面層も亜鉛添加によって成長が抑制された。
【0060】
(2)Sn−3.5Ag−xInの継手強度は、初期において、インジウムの添加量が8重量%以上となると低下し、熱処理後において、インジウムの添加量が5重量%以上となると低下し、8重量%のときに最大の低下を生じた。継手強度の低下を引き起こした試験片においては、前記界面層の成長が大きい傾向にあった。
【0061】
(3)Sn−3.5Ag−8Inに亜鉛を添加すると、初期の継手強度が向上した。亜鉛添加なしで熱処理すると、熱処理後の継手強度が約55%低下したが、亜鉛を添加すると、熱処理後の継手強度の低下を抑制することができた。このとき、亜鉛を0.1重量%添加しても継手強度の低下を抑制することができるが、0.5重量%以上添加すれば、より大きな効果を得ることができる。
【0062】
(4)Sn−3.5Ag−8Inは、熱処理すると、前記界面層が大きく成長するものの、亜鉛を0.5重量%以上添加すると、前記界面層の成長を抑制することができる。
【0063】
【発明の効果】
本発明のスズ−銀系無鉛はんだによれば、亜鉛(Zn)が添加されているので、界面層の成長を抑制することができ、初期の継手強度の向上および熱処理後の継手強度の低下の抑制を図ることができる。
【0064】
特に、めっきが施された被接合体同士を本発明のはんだにより接合すれば、初期の継手強度を向上させることができると共に、熱処理後の継手強度の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるスズ−銀系無鉛はんだの実施例で使用した試験片の概略構成図である。
【図2】組成A1のはんだを使用した試験片の熱処理によるNi−Sn系反応層の厚さの経時変化を表すグラフである。
【図3】組成B1のはんだを使用した試験片の熱処理によるNi−Sn系反応層の厚さの経時変化を表すグラフである。
【図4】組成C5のはんだを使用した試験片の熱処理によるNi−Sn系反応層の厚さの経時変化を表すグラフである。
【図5】組成A1のはんだを使用した試験片の熱処理によるP濃縮層の厚さの経時変化を表すグラフである。
【図6】組成B1のはんだを使用した試験片の熱処理によるP濃縮層の厚さの経時変化を表すグラフである。
【図7】組成C5のはんだを使用した試験片の熱処理によるP濃縮層の厚さの経時変化を表すグラフである。
【図8】組成A1,D2,D4,D6のはんだを使用した試験片の熱処理によるNi−Sn系反応層の厚さの経時変化を表すグラフである。
【図9】組成A1,D2,D4,D6のはんだを使用した試験片の熱処理によるP濃縮層の厚さの経時変化を表すグラフである。
【図10】組成D6,E1〜E5のはんだを使用した試験片の熱処理によるNi−Sn系反応層の厚さの経時変化を表すグラフである。
【図11】組成D6,E1〜E5のはんだを使用した試験片の熱処理によるP濃縮層の厚さの経時変化を表すグラフである。
【図12】Sn−Ag−In−Znはんだにおける亜鉛の添加量とぬれ性との関係を表すグラフである。
【図13】試験片の熱処理後の界面層のSEM写真であり、(a)が組成D6のはんだを使用したもの、(b)が組成E5のはんだを使用したものである。
【符号の説明】
10 試験片
11 被接合体
11a 板
11b めっき層
12 はんだ
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉛を含まないスズ−銀系からなるはんだに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子デバイスは、各種電気機器の小型化や高機能化に対応するため、狭ピッチ化が進んでおり、電子実装やパッケージング技術において、選択的に析出できると共に均一な被膜を形成できる無電解Ni−Pめっきが適用されている。
【0003】
他方、近年の地球環境問題から、構成元素として鉛を含まない(鉛フリー化)はんだが急速に進んでおり、諸特性を考慮すると、Sn−Ag系はんだが最も実用化に近いと考えられている。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−328880号公報
【特許文献2】
特開2001−71174号公報
【特許文献3】
特開2001−150181号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
近年、BGA(Ball Grid Array)に二元素のSn−3.5Agはんだが使用され始めている。このSn−3.5Agはんだは、無電解Ni−Pめっきとの界面において、初期の継手強度が低いだけでなく、熱処理後に継手強度が低下するという問題がある。
【0006】
また、Sn−3.5Agはんだは、融点が高いため、熱の影響による部品の破損を生じることが近年の実装評価において判明していることから、融点を有効に下げる元素であるInを添加することが検討されている。このInは、添加してもはんだ自体の機械的性質をほとんど変化させることがないことから、近年注目されている。
【0007】
しかしながら、Sn−3.5Agはんだは、Inの添加量が増えると、無電解Ni−Pめっきとの接合界面において、初期の継手強度が低下してしまい、特に、Inの添加量が5%以上となると、熱処理後の継手強度の低下が非常に大きいという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、Sn−3.5AgやSn−3.5Ag−xInと無電解めっきとの接合界面における初期の継手強度の向上及び熱処理後の継手強度の低下抑制を図ることができるスズ−銀系無鉛はんだを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、スズ−銀系はんだ組成に亜鉛を少量添加することで、無電解Ni−Pめっきとの継手強度及び界面層の変化について効果があることを知見し、本発明を完成させた。
【0010】
かかる知見に基づく第1の発明は、鉛を含まないスズ−銀系からなるはんだにおいて、亜鉛(Zn)が添加されていることを特徴とするスズ−銀系無鉛はんだにある。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、インジウム(In)がさらに添加されていることを特徴とするスズ−銀系無鉛はんだにある。
【0012】
第3の発明は、第1の発明において、亜鉛(Zn)の添加量が0.3〜1.0重量%であり、残部がスズと銀であることを特徴とするスズ−銀系無鉛はんだにある。
【0013】
第4の発明は、第2の発明において、インジウム(In)の添加量が10重量%未満であると共に、亜鉛(Zn)の添加量が0.1〜1.0重量%であり、残部がスズと銀であることを特徴とするスズ−銀系無鉛はんだにある。
【0014】
第5の発明は、第1から第4の発明のいずれかのスズ―銀系無鉛はんだで被接合体同士が接合されていることを特徴とする接合構造にある。
【0015】
第6の発明は、第5の発明において、前記被接合体の表面に無電解めっき層が設けられていることを特徴とする接合構造にある。
【0016】
第7の発明は、第6の発明において、前記無電解めっき層がNi−Pめっきであることを特徴とする接合構造にある。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明に係るスズ−銀系無鉛はんだの実施の形態を以下に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0018】
本発明に係るスズ−銀系無鉛はんだは、鉛を含まないスズ(Sn)−銀(Ag)系からなるはんだにおいて、亜鉛(Zn)が添加されているものである。
【0019】
なお、スズ−銀系無鉛はんだとは、銀(Ag)を3〜3.5重量%配合し、残部をスズ(Sn)としたものをいう。なお、スズ(Sn)に銀(Ag)3.5重量%を配合するはんだをSn−3.5 Agと記す。
【0020】
ここで、亜鉛(Zn)の添加量を0.3〜1.0重量%とすると好ましく、特に、0.7〜1.0重量%であるとさらに好ましい。なぜなら、亜鉛(Zn)の添加量が0.3重量%未満であると、初期の継手強度の向上効果が小さく、亜鉛(Zn)の添加量が1.0重量%を超えると、初期の継手強度の向上効果が小さいだけでなく、熱処理後の継手強度の低下抑制効果も小さくなるからである。
【0021】
また、本発明に係るスズ−銀系無鉛はんだにおいて、インジウム(In)がさらに添加されていると好ましい。
【0022】
このとき、インジウム(In)の添加量を10重量%未満とし、亜鉛(Zn)の添加量を0.1〜1.0重量%とすると好ましい。なぜなら、インジウム(In)の添加量が10重量%以上となると、コスト面及びはんだ付性の面から好ましくなく、また、亜鉛(Zn)の添加量が0.1重量%未満であると、継手強度の低下が大きくなり、亜鉛(Zn)の添加量が1.0重量%を超えると、ぬれ性が低下してしまうからである。
【0023】
このような本発明に係るスズ−銀系無鉛はんだを用いて被接合体同士を接合すると、接合構造の接合強度が向上するものとなる。
【0024】
特に、被接合体に無電解めっき層を設けた場合では、従来に比べて継手強度の低下を大幅に抑制することができる。
【0025】
ここで、上記無電解めっき層は、その種類を特に限定されることはないが、特に、Ni−Pめっきであると極めて有効である。
【0026】
【実施例】
本発明に係るスズ−銀系無鉛はんだの効果を確認するため、以下のような試験を行った。
【0027】
[はんだの作製]
下記の表1に示す割合で配合して300℃で溶融後に金型に注湯して室温まで冷却することにより鋳造してスズ−銀系無鉛はんだをそれぞれ作製した。
【0028】
【表1】
【0029】
[被接合体の作製]
図1(a)に示すように、銅製の板11a(10×30×1mm)に無電解のNi−10Pのめっき層11b(厚さ:約5μm程度)を施すことにより被接合体11を作製した。
【0030】
[試験片の作製]
図1(b)に示すように、二枚の上記被接合体11の間に、薄片状の前記はんだ12(2×2×0.1mm)を二つ介在させてホットプレートで加熱して(250℃×40s)接合することにより、試験片10を前記組成A1,B1,C1〜C7,D1〜D7,E1〜E5の前記はんだ12ごとにそれぞれ作製した。
【0031】
[試験方法]
各前記試験片10の熱処理前及び熱処理後の継手強度をインストロン型試験機によりそれぞれ測定した(測定条件:温度=室温、クロスヘッド速度=10mm/min、n=5)。
【0032】
また、走査型電子顕微鏡(SEM)及びエネルギー分散型X線分析装置(EDX)により接合界面を観察し、熱処理による界面層の厚さの経時変化を調べた(SEMの観察写真において任意の10点をサンプリングして測定した平均値)。
【0033】
[試験結果]
(1)組成A〜C
i)継手強度
上記組成A〜Cのはんだ12を使用した試験片10の継手強度の測定結果を下記の表2、3に示す。なお、熱処理は、100℃、125℃、150℃の各温度でそれぞれ1000時間行った。
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
上記表2,3からわかるように、組成B1(銅添加のもの)や組成C2〜C5(亜鉛添加量が0.3〜1.0重量%のもの)のはんだ12を使用した試験片10においては、組成A1(添加のないもの)のはんだ12を使用した試験片10に比べて、初期の継手強度が向上した。
【0037】
また、組成C2〜C5(亜鉛添加量が0.3〜1.0重量%のもの)のはんだ12を使用した試験片10においては、組成A1(添加のないもの)のはんだ12を使用した試験片10に比べて、熱処理後の継手強度の低下を抑制する効果がみられ、特に、組成C5(亜鉛添加量が1.0重量%のもの)のはんだ12を使用した試験片10においては、熱処理後の継手強度の低下を大幅に抑制することができた。しかしながら、組成B1(銅添加のもの)のはんだ12を使用した試験片10においては、熱処理後の継手強度の低下を抑制することができなかった。
【0038】
以上のことから、組成C2〜C5(亜鉛添加量が0.3〜1.0重量%のもの)のはんだ12は、無電解Ni−10Pめっきとの接合界面における初期の継手強度の向上及び熱処理後の継手強度の低下抑制を図ることができ、特に、組成C5(亜鉛添加量が1.0重量%のもの)のはんだ12は、その効果を顕著に奏することが明らかとなった。
【0039】
ii)界面層の厚さの変化
一般に、Sn−Ag系はんだと無電解Ni−Pめっきとの間には、Ni−Sn系反応層とP−濃縮層との二種の界面層が形成されて、熱処理に伴ってこれら層が次第に成長していくことにより、継手強度が徐々に低下していくと考えられる。そこで、組成A1(添加のないもの)、B1(銅添加のもの)、C5(亜鉛添加量が1.0重量%のもの)のはんだ12を使用した試験片10の熱処理(100℃、125℃、150℃の各温度)による上記界面層の厚さの経時変化を調べた。その結果を図2〜7に示す。なお、図2〜7において、横軸は、熱処理時間の平方根を表し、縦軸は、上記層の厚さを表す。
【0040】
これら図2〜7からわかるように、前記界面層は、その厚さが直線的に増えていることから、拡散律速で成長すると考えられる。
【0041】
ここで、組成C5(亜鉛添加量が1.0重量%のもの)のはんだ12を使用した試験片10の熱処理による上記界面層の厚さの経時変化は、組成B1(銅添加のもの)、C5(亜鉛添加量が1.0重量%のもの)のはんだ12を使用した試験片10の熱処理による上記界面層の厚さの経時変化に比べて、明らかに小さい。
【0042】
このことから、亜鉛の添加によって上記界面層の成長が抑制され、これにより熱処理後の継手強度の低下が抑制されていると考えられる。
【0043】
(2)組成D
i)継手強度
前記組成D1〜D7(インジウム添加のもの)のはんだ12を使用した試験片10の継手強度の測定結果を下記の表4に示す。比較のため、組成A1(添加なしのもの)のはんだ12を使用した試験片10の継手強度の測定結果も併記する。なお、熱処理は、100℃の温度で1000時間行った。
【0044】
【表4】
【0045】
表4からわかるように、組成D4〜D7(インジウム添加量が6重量%以上のもの)のはんだ12を使用した試験片10においては、組成A1(添加のないもの)のはんだ12を使用した試験片10に比べて、初期の継手強度が低下してしまった。また、組成D3〜D7(インジウム添加量が5重量%以上のもの)のはんだ12を使用した試験片10においては、組成A1(添加のないもの)のはんだ12を使用した試験片10に比べて、熱処理後の継手強度が低下してしまった。特に、組成D6(インジウム添加量が8重量%のもの)のはんだ12を使用した試験片10においては、熱処理後の継手強度が55%も低下してしまった。
【0046】
ii)界面層の厚さの変化
組成D2,D4,D6(インジウム添加量が4重量%、6重量%、8重量%のもの)のはんだ12を使用した試験片10の熱処理(100℃)による前記界面層の厚さの経時変化を調べた。その結果を図8,9に示す。比較のため、組成A1(添加なしのもの)のはんだ12を使用した試験片10の熱処理(100℃)による前記界面層の厚さの経時変化も併記する。
【0047】
図8,9からわかるように、組成D2(インジウム添加量が4重量%のもの)のはんだ12を使用した試験片10の熱処理による前記界面層の厚さの経時変化は、組成A1(添加のないもの)のはんだ12を使用した試験片10の熱処理による前記界面層の厚さの経時変化と略同等である。しかしながら、組成D4及びD6(インジウム添加量が6重量%及び8重量%のもの)のはんだ12を使用した試験片10の熱処理による前記界面層の厚さの経時変化は、組成A1(添加のないもの)のはんだ12を使用した試験片10の熱処理による前記界面層の厚さの経時変化に比べて大きくなっていた。
【0048】
このことから、インジウムの添加量が所定値を越えると、上記界面層の成長が促進されてしまい、これにより熱処理後の継手強度が低下してしまうと考えられる。
【0049】
(3)組成E
i)継手強度
継手強度の低下が最も大きかった前記組成D6(インジウム添加量が8重量%のもの)に対して亜鉛を添加した組成E1〜E5のはんだ12を使用した試験片10の継手強度の測定結果を下記の表5に示す。比較のため、上記組成D6(インジウム添加量が8重量%のもの)のはんだ12を使用した試験片10の継手強度の測定結果も併記する。なお、熱処理は、100℃の温度で1000時間行った。
【0050】
【表5】
【0051】
表5からわかるように、亜鉛を添加した組成E1〜E5のはんだ12を使用したすべての試験片10においては、亜鉛添加のない組成D6のはんだ12を使用した試験片10に比べて、初期及び熱処理後の継手強度の低下を抑制することができ、特に、組成E3〜E5(亜鉛添加量が0.5〜1.0重量%のもの)のはんだ12を使用した試験片10においては、継手強度の低下抑制効果が非常に大きいことが判明した。
【0052】
ii)界面層の厚さの変化
組成E1〜E5(亜鉛添加のもの)のはんだ12を使用した試験片10の熱処理(100℃)による前記界面層の厚さの経時変化を調べた。その結果を図10,11に示す。比較のため、組成D6(亜鉛添加なしのもの)のはんだ12を使用した試験片10の熱処理(100℃)による前記界面層の厚さの経時変化も併記する。
【0053】
図10,11からわかるように、前記界面層は、その厚さが直線的に増えていることから、拡散律速で成長すると考えられる。
【0054】
ここで、亜鉛を添加した組成E1〜E5のはんだ12を使用した試験片10の熱処理による前記界面層の厚さの経時変化は、亜鉛添加のない組成D6のはんだ12を使用した試験片10の熱処理による前記界面層の厚さの経時変化と比べて、明らかに小さかった。特に、組成E3〜E5(亜鉛添加量が0.5〜1.0重量%のもの)のはんだ12を使用した試験片10の熱処理による前記界面層の厚さの経時変化は、組成D6(亜鉛添加のないもの)のはんだ12を使用した試験片10の熱処理による前記界面層の厚さの経時変化に比べて、非常に小さくなっていた。この結果は継手強度の低下抑制効果が認められた添加量と同様であった。
【0055】
このことから、亜鉛の添加によって前記界面層の成長が抑制され、これにより熱処理後の継手強度の低下が抑制されていると考えられる。よって、継手強度の低下を抑制するには、前記界面層の成長を抑制することが極めて重要であるといえる。
【0056】
また、亜鉛の添加量とぬれ性との関係を図12に示す。図12から明らかなように、亜鉛の添加によりぬれ性が低下することが認められることから、ぬれ性を考慮すると、亜鉛の添加量を0.7重量%以下とすることが好ましい。
【0057】
また、組成D6のはんだ12を使用した試験片10の熱処理後(100℃×1000時間)の前記界面層のSEM写真を図13(a)に示し、組成E5(亜鉛添加量が1.0重量%のもの)のはんだ12を使用した試験片10の熱処理後(100℃×1000時間)の前記界面層のSEM写真を図13(b)に示す。図13からわかるように、亜鉛を添加すると、前記界面層の成長を抑制できることが明らかであり、継手強度の低下を抑制できることがわかる。
【0058】
[まとめ]
以上の実施例から、Sn−Ag系はんだと無電解Ni−Pめっきとの継手強度及び界面層の変化を調べた結果をまとめると、以下のことがいえる。
【0059】
(1)Sn−3.5Agに亜鉛を0.3〜1.0重量%添加することにより、初期の継手強度の向上及び熱処理による継手強度の低下抑制が可能であり、特に、亜鉛を0.7〜1.0重量%添加すると、その効果が著しく大きくなる。また、界面層も亜鉛添加によって成長が抑制された。
【0060】
(2)Sn−3.5Ag−xInの継手強度は、初期において、インジウムの添加量が8重量%以上となると低下し、熱処理後において、インジウムの添加量が5重量%以上となると低下し、8重量%のときに最大の低下を生じた。継手強度の低下を引き起こした試験片においては、前記界面層の成長が大きい傾向にあった。
【0061】
(3)Sn−3.5Ag−8Inに亜鉛を添加すると、初期の継手強度が向上した。亜鉛添加なしで熱処理すると、熱処理後の継手強度が約55%低下したが、亜鉛を添加すると、熱処理後の継手強度の低下を抑制することができた。このとき、亜鉛を0.1重量%添加しても継手強度の低下を抑制することができるが、0.5重量%以上添加すれば、より大きな効果を得ることができる。
【0062】
(4)Sn−3.5Ag−8Inは、熱処理すると、前記界面層が大きく成長するものの、亜鉛を0.5重量%以上添加すると、前記界面層の成長を抑制することができる。
【0063】
【発明の効果】
本発明のスズ−銀系無鉛はんだによれば、亜鉛(Zn)が添加されているので、界面層の成長を抑制することができ、初期の継手強度の向上および熱処理後の継手強度の低下の抑制を図ることができる。
【0064】
特に、めっきが施された被接合体同士を本発明のはんだにより接合すれば、初期の継手強度を向上させることができると共に、熱処理後の継手強度の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるスズ−銀系無鉛はんだの実施例で使用した試験片の概略構成図である。
【図2】組成A1のはんだを使用した試験片の熱処理によるNi−Sn系反応層の厚さの経時変化を表すグラフである。
【図3】組成B1のはんだを使用した試験片の熱処理によるNi−Sn系反応層の厚さの経時変化を表すグラフである。
【図4】組成C5のはんだを使用した試験片の熱処理によるNi−Sn系反応層の厚さの経時変化を表すグラフである。
【図5】組成A1のはんだを使用した試験片の熱処理によるP濃縮層の厚さの経時変化を表すグラフである。
【図6】組成B1のはんだを使用した試験片の熱処理によるP濃縮層の厚さの経時変化を表すグラフである。
【図7】組成C5のはんだを使用した試験片の熱処理によるP濃縮層の厚さの経時変化を表すグラフである。
【図8】組成A1,D2,D4,D6のはんだを使用した試験片の熱処理によるNi−Sn系反応層の厚さの経時変化を表すグラフである。
【図9】組成A1,D2,D4,D6のはんだを使用した試験片の熱処理によるP濃縮層の厚さの経時変化を表すグラフである。
【図10】組成D6,E1〜E5のはんだを使用した試験片の熱処理によるNi−Sn系反応層の厚さの経時変化を表すグラフである。
【図11】組成D6,E1〜E5のはんだを使用した試験片の熱処理によるP濃縮層の厚さの経時変化を表すグラフである。
【図12】Sn−Ag−In−Znはんだにおける亜鉛の添加量とぬれ性との関係を表すグラフである。
【図13】試験片の熱処理後の界面層のSEM写真であり、(a)が組成D6のはんだを使用したもの、(b)が組成E5のはんだを使用したものである。
【符号の説明】
10 試験片
11 被接合体
11a 板
11b めっき層
12 はんだ
Claims (7)
- 鉛を含まないスズ−銀系からなるはんだにおいて、
亜鉛(Zn)が添加されている
ことを特徴とするスズ−銀系無鉛はんだ。 - 請求項1において、
インジウム(In)がさらに添加されている
ことを特徴とするスズ−銀系無鉛はんだ。 - 請求項1において、
亜鉛(Zn)の添加量が0.3〜1.0重量%であり、
残部がスズ及び銀である
ことを特徴とするスズ−銀系無鉛はんだ。 - 請求項2において、
インジウム(In)の添加量が10重量%未満であると共に、
亜鉛(Zn)の添加量が0.1〜1.0重量%であり、
残部がスズ及び銀である
ことを特徴とするスズ−銀系無鉛はんだ。 - 請求項1から請求項4のいずれかのスズ―銀系無鉛はんだで被接合体同士が接合されている
ことを特徴とする接合構造。 - 請求項5において、
前記被接合体の表面に無電解めっき層が設けられている
ことを特徴とする接合構造。 - 請求項6において、
前記無電解めっき層がNi−Pめっきである
ことを特徴とする接合構造。
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