【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリプレグへの加工性に優れた炭素繊維束に関する。
【0002】
【従来の技術】
炭素繊維束は、よく知られているように、そのままでは単繊維切れや毛羽立ちが起こりやすく、また、加工性や取扱性もよくないので、サイジング剤を付与して集束性や耐擦過性を与え、これらの不都合が起こりにくいようにしている。また、炭素繊維束は、最も典型的には、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)における、マトリクスたる樹脂の補強繊維として使われるが、CFRPの成形は、炭素繊維束をUDプリプレグ(一方向性プリプレグ)や織物プリプレグ等のプリプレグに加工して用いることが多い。
【0003】
さて、炭素繊維束は、耐炎化処理や炭化処理を効率よく行ってコストを下げるために、単繊維数が5,000〜50,000本といった太い繊維束として製造される傾向にある。一方、プリプレグに加工するときには、そのような太い繊維束を薄く拡げ(開繊・拡幅し)、単繊維間に樹脂が均一に含浸されるようにする必要がある。また、近年、CFRPの一層の軽量化のために、極薄プリプレグと呼ばれる、厚みが0.005〜0.015mm、目付が5〜15g/m2程度であるような極めて薄いプリプレグも要求されるようになってきているが、太い繊維束をそのような極薄プリプレグに加工する場合、開繊・拡幅性の良否がプリプレグの品質に特に大きな影響を与える。そのため、プリプレグ加工時における開繊・拡幅性を向上させるために、炭素繊維にサイジング剤を付与した後、ホットローラーで乾燥させることで、炭素繊維束をあらかじめある程度開繊・拡幅し、扁平化したうえでボビンに巻き取り、それをプリプレグ加工時に解舒して用いることが行われている(例えば特許文献1参照)。また炭素繊維束の交絡度を規定することで、開繊性や含浸性の良い炭素繊維束も提案されている(例えば特許文献2、3参照)。
【0004】
ところで、炭素繊維束のボビンへの巻き取りは、炭素繊維束に綾振運動を付与しながら行う。しかるに、扁平化された炭素繊維束は、綾振りに伴い、部分的に、特にボビンの両端部で折り曲げられたり、撚りが入ったり、繊維束幅が狭められたりする。そのため、拡幅性はよくとも、複数の繊維束を引き揃えてプリプレグ化したときに、そのような繊維束幅が狭められた部分が十分に拡がらず、プリプレグの平滑性が悪化するだけでなく、部分的に繊維が無い、いわゆるワレが発生する。また部分的に繊維が多い部分は、樹脂の含浸性が悪く、含浸斑や未含浸といった欠陥になる。また交絡度を規定しても、繊維束折れは交絡度にはあまり影響しないため、部分的な繊維束折れがプリプレグの品位を悪化させることを十分防止できない。
【0005】
このような綾振運動による繊維束の折り曲げ、撚り混入を防ぐために、パッケージ折り返し部と中央部の繊維束幅の関係を規定することが提案されている。(例えば特許文献4参照)。しかしながら一度折り曲げられた繊維束は、パッケージ上で押し拡げられていても、開繊性が悪く、プリプレグの品位を悪化させる。また解除時に繊維束折れや撚りがないように、綾角と繊維束幅のバラツキを規定してパッケージに巻き取ることが提案されている(例えば特許文献5参照)しかしながら、扁平繊維束を巻き取る限り、十分に繊維束折れ、撚りは抑制できない。
【0006】
このような理由から、太い炭素繊維束から、均質性に優れた、特に極薄プリプレグを得ることは、なかなか難しい。そもそも、集束性や耐擦過性を向上させるためにサイジング剤を付与することと、開繊・拡幅性を向上させることとは両立し難いことであり、種々の試みがなされてはいるものの、満足し得る解決策は未だ見出されていないのが現状である。
【0007】
【特許文献1】特開平01−292038号公報(第1頁)
【0008】
【特許文献2】特開平10−195718号公報(第2頁)
【0009】
【特許文献3】特開2001−254255号公報(第4頁)
【0010】
【特許文献4】特開平04−024264号公報(第2頁)
【0011】
【特許文献5】特許2000−079614号公報(第2頁)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した現状に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、開繊・拡幅性に優れ、特に極薄プリプレグに加工するのに好適な炭素繊維束を提供するにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明は、サイジング剤が付着しており、25℃におけるドレープ値が4〜8cmの範囲内にあり、扁平度が1〜20の範囲内にあり、かつ、実質的に撚りのない炭素繊維束を特徴とするものである。また、20〜80℃の温度範囲にわたってドレープ値が4〜8cmの範囲内にあることが好ましい。炭素繊維束は、単繊維数が5,000〜50,000本の範囲内にあり、繊度が1,000〜50,000dtexの範囲内にあるようなものが好ましい。
【0014】
本発明において、ドレープ値は、次のようにして測定する。すなわち、30cm程度の長さに切断した炭素繊維束の一端部を、適当な柱状体、たとえば四角柱の上面に片持支持の状態で固定する。このとき、炭素繊維束が、四角柱の側面に対して直角になるように、かつ、その側面から先端までの長さが25cmになるように固定する。すると、炭素繊維束は先端が垂れ下がるが、ドレープ値は、この垂れ下がりの程度に関連していて、四角柱の側面と炭素繊維束の先端とがなす最も近い距離(cm)をもってドレープ値とする。
【0015】
また、扁平度は、ボビン上に巻かれ、パッケージとした状態における炭素繊維束の繊維束幅Wに対する繊維束厚みTの比、すなわち、W/Tとして表される。ここで、繊維束厚みは、炭素繊維束をその形態がくずれないようにパッケージから解舒し、スケールをあてて測定した、n数10の平均値である。また、繊維束幅は、パッケージの表面に位置する炭素繊維束にスケールをあてて測定した、n数10の平均値である。
【0016】
本発明において、炭素繊維束にはサイジング剤が付着せしめられている。サイジング剤の付着量は、0.2〜5重量%の範囲内とするのが好ましい。ここで、サイジング剤の付着量は、次のようにして測定する。すなわち、2g程度の炭素繊維束をとり、その重量をW1(g)とする。これを、窒素ガスが50リットル/分の速度で流されている、450℃に設定した、容量120cm3の電気炉に入れ、15分間ほど加熱してサイジング剤を完全に熱分解させる。しかる後、乾燥した窒素ガスが20l/分の速度で流されている容器に移し、15分間冷却した後の重量をW2(g)とし、サイジング剤の付着量S(%)を、式、
S=[(W1−W2)/W1]×100
から求める。
【0017】
また、本発明において、実質的に撚りがないという意味は、たとえ撚りがあったとしても、1mあたり0.1ターン以下であるという意味である。また撚りがない炭素繊維束を得る手段としては、初めから撚りがない前駆体繊維束(原糸)を焼成するか、もしくは繊維束裁け防止のため一定の撚りを掛けて焼成し、撚りを解除して巻き返してもよい。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の炭素繊維束は、サイジング剤が付着しており、25℃におけるドレープ値が4〜8cmの範囲内にあり、扁平度が1〜20の範囲内にあり、かつ、実質的に撚りがない。
【0019】
炭素繊維束は、ポリアクリロニトリル系、ピッチ系等、いずれからなるものであってもよいが、高強度、高弾性率であるポリアクリロニトリル系であるのが好ましい。
【0020】
炭素繊維束は、単繊維数が5,000〜50,000本の範囲内にあり、繊度が1,000〜50,000dtexの範囲内にあるようなものが好ましい。ここにいう炭素繊維束という概念には、より高温で焼成することによって得られる黒鉛化繊維束も含まれる。また、CFRPとしたときのマトリクス樹脂との接着性を向上させるために、表面酸化処理を施した炭素繊維束からなるものであるのも好ましい。
【0021】
炭素繊維束に付与せしめるサイジング剤は、炭素繊維束の集束性や耐擦過性を向上させるもので、後述するようなエポキシ樹脂系サイジング剤が好ましく用いられる。サイジング剤の付着量は、好ましくは0.2〜5重量%、より好ましくは0.5〜3重量%の範囲内とする。0.2重量%よりも少ないと耐擦過性が低下して毛羽を生じやすくなり、5重量%よりも多いとCFRPとしたときにマトリクス樹脂との接着性が低下してCFRPの物性が悪くなる場合や、炭素繊維束が固くなり、開繊・拡幅性が悪くなる場合がある。
【0022】
本発明における炭素繊維束の25℃におけるドレープ値は、4〜8cmの範囲内、好ましくは5〜6cmの範囲内にある。ドレープ値が4cmよりも低いと、ボビンに巻き上げるときやパッケージから解舒するときに繊維束内の単繊維の移動が起こりやすくなり、単繊維の配列が乱れたり、局部的な撚りが入ったりする。また、8cmを超えるようなものは、硬く、ボビンに巻き上げた際に、ローラー端部の鍔でうまく鍔形状に沿わずに、折り曲げられたり、撚りの混入により、拡幅性が低下する。ドレープ値が4〜8cmの範囲内にあるものは、適度に柔らかく、開繊・拡幅性が大きく向上し、単繊維の配列の乱れも発生しにくい。
【0023】
また、25℃でのドレープ値が4〜8cmであっても、プリプレグ加工時の温度である70〜80℃付近でのドレープ値が8cmを超える場合には、プリプレグ加工時の開繊・拡幅性が劣ることがある。従って、20〜80℃におけるドレープ値も4〜8cmであることがより好ましい。ドレープ値がかかる範囲を満たすことにより、室温における炭素繊維束の取り扱い性と、プリプレグ加工時の温度における開繊・拡幅性の両立が可能である。
【0024】
もっとも、このような炭素繊維束は、ボビンに巻き上げてパッケージとするときや、パッケージから解舒するとき等に折り曲げられたり、繊維束折れによって繊維束幅が狭められたりすることがある。特に、パッケージを形成するときにかかる不都合が起こりやすい。そして、そのように折り曲げられたり繊維束幅が狭められたりしたような部位は、後のプリプレグ化工程における開繊・拡幅性を不均一なものとする。その結果、プリプレグ表面の平滑性が悪化することになったり、或いは単位面積あたりの炭素繊維量が少ない、いわゆる薄物のプリプレグを加工することが困難な場合がある。そこで、本発明においては、炭素繊維束の扁平度を1〜20、好ましくは2〜15の範囲内としてかかる不都合を防止するようにしている。扁平度が1未満では、繊維束が嵩高になってボビンに巻き上げるときに巻き崩れを起こしやすく、20を超えるものは、ボビンの端部で繊維束折れや撚りが発生したり、繊維束幅が狭められたりする。
【0025】
次に、本発明の炭素繊維束を製造する方法を例を挙げて説明する。本発明の炭素繊維束は、実質的に撚りのない炭素繊維束を必要に応じて水洗、乾燥した後に、サイジング剤を付与せしめるものである。ここで、実質的に撚りがないとは、初めから撚りがない前駆体繊維束を焼成するか、もしくは繊維束裁け防止のため一定の撚りを掛けて焼成し、撚りを解除して巻き返してもよい。前駆体繊維束は、単繊維数が好ましくは1000〜70000本、より好ましくは6000〜30000本の範囲内にあり、また、前駆体繊維束の繊度が0.5〜2dtexの範囲内にあるようなものが好ましい。すなわち、単繊維数がより好ましくは1000本、さらに好ましくは6000本を超えるような多数フィラメントの繊維束であっても前記ドレープ値と扁平度の両方を達成することができる。尚、70000本を超えると扁平度を前記範囲とすることが困難な場合がある。
【0026】
また、CFRPとしたときのマトリクス樹脂との接着性を向上させるために、水洗前に表面酸化処理を施すことも好ましい。また、炭素繊維束を構成する単繊維の繊度は0.3〜1dtexが好ましい、より好ましくは0.4〜0.6dtexである。1dtexを超える炭素繊維においては、単繊維内部まで均一に炭化されておらず強度が低下する傾向にある。
【0027】
上記のような実質的に撚りのない炭素繊維束において、一定のドレープ値と扁平度を達成するために、以下に述べるようなサイジング剤付与方法、とりわけサイジング剤付与後の乾燥方法を採用する。すなわち、必要に応じて水洗、乾燥させた炭素繊維束にサイジング剤を付与するのであるが、サイジング剤付与後の乾燥温度を150℃以上220℃以下とするのが好ましく、150℃以上200℃以下がより好ましく、180℃以上200℃以下がさらに好ましい。乾燥温度が150℃未満であると、サイジングの硬化進行が十分でなく、25℃におけるドレープ値が4cmに満たなかったり、サイジング剤中の溶媒が十分に除去できず、炭素繊維とマトリックス樹脂との接着特性が所望の物性に至らない場合があり、また220℃を超えるとサイジング剤の硬化が進み過ぎ、炭素繊維束が固くなって、ドレープ値が高くなり過ぎて、開繊性・拡幅性が悪くなる場合がある。サイジングの付着量を好ましくは0.2〜5重量%、より好ましくは0.5〜3重量%、更に好ましくは0.5〜1%の範囲内とする。0.2重量%よりも少ないと耐擦過性が低下して毛羽を生じやすくなり、5重量%よりも多いと、ドレープ値が高くなりすぎたり、CFRPとしたときにマトリクス樹脂との接着性が低下してCFRPの機械特性が低下することがある。
【0028】
また、サイジング剤付与後の乾燥工程においては、ローラー間で、適度に張力を付与せしめた状態で炭素繊維束を空中乾燥する方法をとることができる。すなわち、ローラー上に繊維束を押し当てた状態で乾燥すると、炭素繊維束が拡げられた状態で固定され、扁平度が20よりも大きくなってしまう可能性があるが、炭素繊維束に張力をかけ、絞られた状態(すなわち、無張力に比べ繊維束幅が小さくなった状態)で空中乾燥することにより扁平度を20以下に保った状態で固定することができる。このとき500〜3000g/dtexの範囲の張力を付与することが好ましい。500g/dtex未満の張力だと、繊維束の弛みが発生し、繊維束の幅斑が発生する可能性がある。また3000g/dtexを超える張力を掛けると糸痛みや毛羽が発生する可能性がある。
【0029】
本発明の炭素繊維束に付与するサイジング剤としては、好ましくは200℃で2分加熱したときに、より好ましくは200℃で0.5分加熱したときに実質的に反応が完了するエポキシ樹脂系サイジング剤が好ましく用いられる。かかる硬化挙動を示すサイジング剤を用いることにより、サイジング剤付与後の乾燥工程において、短時間でドレープ値をコントロールすることが可能となる。また、室温では、硬化反応がほとんど進行しないサイジング剤が保管面から好ましい。
【0030】
上記、特性を満たせば、サイジング剤組成は特に限定されるものではないが、エポキシ樹脂を主成分とするサイジング剤がより好ましく用いられる。ここでエポキシ樹脂とは分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物をいう。中でも、液状エポキシ樹脂が全エポキシ樹脂中70重量%以上含まれていることが好ましく、より好ましくは80重量%以上である。
【0031】
液状のエポキシ樹脂としては、分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物であって、分子量が200〜1500の低分子量のエポキシ樹脂が挙げられる。より好ましくは分子量が300〜1000の、更に好ましくは300〜500のエポキシ樹脂である。かかる低分子量のエポキシ樹脂としてはエピコート(登録商標)828(ジャパンエポキシレジン(株)製、分子量:368〜388)、エピコート807(ジャパンエポキシレジン(株)製、分子量:320〜350)、エポトート(登録商標)YD−011(東都化成(株)製、分子量:900〜1000)、エポトートYDF−170(東都化成(株)製、分子量:320〜350)等が挙げられる。このような液状エポキシ樹脂がエポキシ樹脂全量の70重量%以上含まれることにより炭素繊維束に収束性を与えると同時に、繊維束折れを抑制する適度な柔軟性を付与するという効果がある。
【0032】
さらに、本発明の炭素繊維束に用いられるサイジング剤は、室温において固形であるエポキシ樹脂を0.5〜20重量%含むことが好ましい。固形エポキシ樹脂を含むことによって、適度な硬さを付与することができるため炭素繊維束のドレープ値、扁平度を前記範囲とすることが容易になる。
【0033】
かかる固体のエポキシ樹脂としては、エポトートYD−014(融点91〜102℃:東都化成(株)社製)、エピコート1001(融点60〜70℃:ジャパンエポキシレジン(株)製)、エピコート1009(融点140〜149℃:ジャパンエポキシレジン(株)社製)、SUMI−EPOXY ESCN−220HH(融点87℃以上:住友化学工業(株)社製)等がある。
【0034】
かかる、固体エポキシ樹脂の中でも、融点が80℃以上の固体エポキシ樹脂が、全エポキシ樹脂中0.5〜5重量%含まれていることが好ましい。より好ましくは0.8〜3重量%である。融点が80℃以上の固体エポキシ樹脂が一定量以上含まれることにより、80℃まで加熱しても固体エポキシ成分が残り、炭素繊維束に適度な硬さを付与し、形状を保持するので、20〜80℃にわたってドレープ値を4〜8cmの範囲内にすることが可能となる。
【0035】
かかるサイジング剤を付与する際には、作業性および、濃度コントロール性の観点から水系分散液として炭素繊維に付与することができる。水系分散液として付与せしめる場合には、サイジング剤中に、適宜、界面活性剤を添加してもよい。
【0036】
尚、サイジング剤を付与せしめる方法としてはサイジング槽に炭素繊維束を通過させる方法、ニップローラーで付与する方法、スプレーで吹き付ける方法が挙げられるが、中でもサイジング槽を通過させる方法が、炭素繊維束内部までサイジング剤が十分浸透することから好ましい。
【0037】
炭素繊維束をボビンに巻き上げる際の巻き上げ張力は100〜1000g/dtexの範囲で巻き上げることが好ましい。100g/dtex未満の張力で巻き上げると、巻き硬度が小さくなり、パッケージの巻き崩れが発生し易くなる。また1000g/dtexを超えると、ボビン上で炭素繊維束が押し拡げられ、扁平度が崩れることがある。なお、そのような扁平度の炭素繊維束をボビンに巻き上げてパッケージとするときには、特公平7−59458号公報に記載されているように、炭素繊維束をガイドローラ等で扁平度をくずさないようにボビンに導き、ボビンの回転軸と平行な方向に綾振り運動するガイドローラを用いて巻き上げるのが好ましい。尚、パッケージに巻き取る際の綾角は3〜20°にすることが好ましい。綾角が3°未満になると、パッケージ端部での巻き崩れが発生し易く、20°を超えると、折り返し部で繊維折れ、撚りが発生し易くなる。
【0038】
【実施例】
以下、実施例によって、本発明を更に詳細に説明する。なお、実施例によって本発明が制限されることはない。なお、以下に示す実施例および比較例において、炭素繊維束およびプリプレグの特性は、次のようにして測定した。
(1)ドレープ値
30cmの長さに切断した炭素繊維束の一端部を、四角柱の上面に片持支持の状態で固定した。このとき、炭素繊維束が、四角柱の側面に対して直角になるように、かつ、四角柱の側面から、垂れ下がった炭素繊維束の先端までの長さが25cmになるように固定する。四角柱の側面と垂れ下がった炭素繊維束の先端とがなす最も近い距離(cm)を測定した。
(2)扁平度
ボビン上に巻かれ、パッケージとした状態における炭素繊維束の繊維束幅Wに対する繊維束厚みTの比、すなわち、W/Tとして表した。ここで、繊維束厚みは、炭素繊維束をその形態がくずれないようにパッケージから解舒し、高精度レーザー光変位計Z300 オムロン(株)製を使用し、炭素繊維束のほぼ中央の厚みを測定し、n数10の平均値として求めた。また、繊維束幅は、パッケージの表面に位置する炭素繊維束にスケールをあてて測定し、n数10の平均値として求めた。
(3)毛羽数
サイジング剤を付着させた炭素繊維束を、第1〜第4の4個のステンレス製クロムメッキ鏡面ガイド(直径:9.5mm)に接触角がそれぞれ57±3度になるように順次通し、室温(23℃)下に3m/分の速度でガイド表面と擦過させた。このとき、第1のガイドに導かれる炭素繊維束の張力が500gとなるように調整した。そして、第4のガイドから導き出された炭素繊維束の毛羽数を、東レエンジニアリング株式会社製毛羽計数装置“DT−105(S特)”を用いて測定した。
(4)拡幅性
また、炭素繊維束の拡幅性は、次のようにして測定した。すなわち、炭素繊維束を、80℃のドラムに巻き付けた。樹脂としては、25℃における粘度が20cPのビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いた。ドラムに巻き付けた糸幅Ws(mm)と上記の炭素繊維束の繊維束幅W(mm)とから次式を用いて算出した。
【0039】
拡幅性=(Ws/W)
ここでWsは次のようにして測定した。すなわち、Wsはドラム上で拡幅された繊維束にスケールをあてて測定し、n数10の平均値として求めた。
(5)ワレ
またプリプレグのワレは次のようにして測定した。すなわち、炭素繊維束に、100℃で樹脂を含浸せしめ、繊維目付100g/m2、繊維含有率70重量%のUDプリプレグシートを作製した。樹脂としては25℃における粘度が20cPのビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いた。また作製したUDプリプレグシート100m2あたりの、幅0.5mm以上の割れか、幅が0.5mm未満であっても長さが20cm以上の割れの個数(以下、ワレ数という)を測定した。
(6)プリプレグの平滑性
またプリプレグの平滑性の指標としては、プリプレグ表面の変位曲線から求められる、単位長さあたりの山の数を用いた。すなわち、表面平滑測定装置を用いて、プリプレグ表面において、強化繊維に対して90°方向の変位曲線を300mmにわたって測定し、高低差(谷と山の差)が5μm以上の凸部分の数を求めた。かかる凸部分の数を測定長で割り返し、単位長さ(100mm)あたりの数に換算したものを山数とした。
【0040】
ここでプリプレグ表面の変位曲線は、次の方法で測定した。
【0041】
プリプレグ表面の変位を測定する変位測定器としては、接触式の変位センサーを用い、触針を走査することで測定した。本実施例においては、小坂研究所株式会社製 SE−3400を用い、カットオフ値8mm、走査スピード2mm/秒で測定した。
【0042】
また、本実施例において、サイジング剤は以下の方法で調製した。すなわち、各実施例で示す組成(a)、(b)を高粘度乳化装置に仕込み80〜90℃に加熱して混合したものに、(c)、(d)を添加し均一なエマルジョンを調製した。さらに水を加えて希釈し、炭素繊維束のサイジング付着量が目標値となるように、濃度を調整した。
(実施例1)
以下の組成のサイジング剤を前記方法に従い調製した。
【0043】
(a)ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピコート828、ジャパンエポキシレジン社製) :60重量部
(b)ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピコート1009、ジャパンエポキシレジン社製):5重量部
(c)ポリオキシエチレンオレイルエーテル(EMALEX(登録商標) 508、日本エマルジョン(株)製 : 15重量部
(d)ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル(EMALEX 1815、日本エマルジョン(株)製 :20重量部
単繊維径7μm、単繊維数12,000本の無撚り炭素繊維束に前記サイジング剤1.0重量%付着せしめたのち、ローラー間で700g/dtexの張力を付与し200℃で乾燥させた。その後、300g/dtexの巻き上げ張力で綾角が5〜12°になるようにボビンに巻き上げた。前記方法に従い扁平度、ドレープ値、擦過により発生した毛羽数、拡幅性、ワレ数、平滑性(山数)を調べた。結果を表1、2及び図1〜3に示す。
(実施例2〜5、7)
ドレープ値、扁平度が表1の通りになるように、サイジング付着量、乾燥張力、乾燥温度、綾角を調整した以外は実施例1と同様にボビンに巻き上げた。前記方法に従い測定したドレープ値、扁平度、毛羽数、拡幅性、ワレ数、および山数を表2に示す。
(実施例6)
サイジング剤の組成を以下の通り変更した以外は実施例1と同様にボビンに巻き上げた。前記方法に従い測定したドレープ値、扁平度、毛羽数、拡幅性、ワレ数、および山数を表1,2に示す。
【0044】
(a)ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピコート828、ジャパンエポキシレジン社製) :60重量部
(b)ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピコート1001、ジャパンエポキシレジン社製) : 5重量部
(c)ポリオキシエチレンオレイルエーテル(EMALEX 508、日本エマルジョン(株)製 :15重量部
(d)ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル(EMALEX 1815、日本エマルジョン(株)製 :20重量部
(比較例1〜4)
サイジング付着量、乾燥張力、乾燥温度、綾角を表1のとおり変更し、さらに比較例1,3では乾燥工程にホットローラーを使用した以外は実施例1と同様にボビンに巻き上げた。ドレープ値、扁平度、毛羽数、拡幅性、ワレ数、および山数を表2に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
表1および表2から、実施例1〜7に係るものは、比較例1〜4に係るものにくらべて、個々の特性では劣るものもあるが、総合評価において優れていることがわかる。比較例4のものは、拡幅性はよいものの、毛羽数が極めて多い。
【0048】
【発明の効果】
本発明の炭素繊維束は、実施例と比較例との対比からも明らかなように、開繊・拡幅性に優れ、しかも、毛羽の発生が極めて少ない。そのため、特に極薄プリプレグを製造するのに好適であり、そのようなプリプレグを使用すれば、より軽量で強度、弾性率等の特性に優れたCFRPを得ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例におけるドレープ値の温度依存性を表すグラフである。
【図2】本発明の一実施例におけるドレープ値の温度依存性を表すグラフである。
【図3】従来の炭素繊維のドレープ値の温度依存性を表すグラフである。[0001]
TECHNICAL FIELD OF THE INVENTION
The present invention relates to a carbon fiber bundle excellent in workability into a prepreg.
[0002]
[Prior art]
As is well known, carbon fiber bundles are liable to break single fibers and fluff as they are, and also have poor workability and handling properties. These inconveniences are less likely to occur. Further, the carbon fiber bundle is most typically used as a reinforcing fiber of a resin serving as a matrix in CFRP (carbon fiber reinforced plastic). The molding of CFRP is performed by using a carbon fiber bundle as a UD prepreg (unidirectional prepreg). Often processed into prepregs such as textiles and woven prepregs.
[0003]
By the way, the carbon fiber bundle tends to be manufactured as a thick fiber bundle having a single fiber number of 5,000 to 50,000 in order to efficiently perform the flame-proofing treatment and the carbonization treatment to reduce the cost. On the other hand, when processing into a prepreg, it is necessary to spread such a thick fiber bundle thinly (spreading and widening) so that the resin is uniformly impregnated between the single fibers. In recent years, in order to further reduce the weight of CFRP, the thickness is 0.005 to 0.015 mm and the basis weight is 5 to 15 g / m, which is called an ultra-thin prepreg. 2 Ultra-thin prepregs are also required, but when processing thick fiber bundles into such ultra-thin prepregs, the quality of the prepreg is particularly affected by the quality of fiber opening and widening. give. Therefore, in order to improve the spreading and widening properties during prepreg processing, after applying a sizing agent to carbon fibers, by drying with a hot roller, the carbon fiber bundles were spread and widened to some extent in advance, and flattened. Then, it is wound on a bobbin and unwound during prepreg processing for use (for example, see Patent Document 1). In addition, a carbon fiber bundle having good spreadability and impregnating property has been proposed by defining the degree of entanglement of the carbon fiber bundle (for example, see Patent Documents 2 and 3).
[0004]
By the way, the winding of the carbon fiber bundle around the bobbin is performed while imparting a traverse motion to the carbon fiber bundle. However, the flattened carbon fiber bundle is partially bent, twisted, or narrowed in the traverse, particularly at both ends of the bobbin. Therefore, even if the widening property is good, when a plurality of fiber bundles are aligned and made into a prepreg, such a portion where the fiber bundle width is narrowed is not sufficiently expanded, and not only the smoothness of the prepreg is deteriorated but also In other words, a so-called crack occurs, in which there is no fiber partially. Further, a portion having a large amount of fibers has a poor impregnating property of the resin, resulting in defects such as impregnation spots and non-impregnation. Even if the entanglement degree is specified, the fiber bundle fold does not significantly affect the entanglement degree, so that it is not possible to sufficiently prevent the partial fiber bundle fold from deteriorating the quality of the prepreg.
[0005]
In order to prevent the fiber bundle from being bent or twisted due to such traverse motion, it has been proposed to define the relationship between the package folded portion and the fiber bundle width at the center. (For example, see Patent Document 4). However, the fiber bundle once bent has a poor spreadability even if it is pushed and spread on the package, and deteriorates the quality of the prepreg. In addition, it has been proposed that the bundle is wound around a package by defining the variation of the twill angle and the width of the fiber bundle so that the fiber bundle is not broken or twisted at the time of release (for example, see Patent Document 5). As long as the fiber bundle is broken sufficiently, twisting cannot be suppressed.
[0006]
For these reasons, it is very difficult to obtain a uniform prepreg excellent in homogeneity, particularly from a thick carbon fiber bundle. In the first place, providing a sizing agent to improve convergence and abrasion resistance is not compatible with improving spread / widening properties, and although various attempts have been made, At present, no possible solution has been found yet.
[0007]
[Patent Document 1] Japanese Patent Application Laid-Open No. 01-292038 (page 1)
[0008]
[Patent Document 2] JP-A-10-195718 (page 2)
[0009]
[Patent Document 3] Japanese Patent Application Laid-Open No. 2001-254255 (page 4)
[0010]
[Patent Document 4] Japanese Patent Application Laid-Open No. 04-024264 (page 2)
[0011]
[Patent Document 5] Japanese Patent Publication No. 2000-079614 (page 2)
[0012]
[Problems to be solved by the invention]
The present invention has been made in view of the above-mentioned situation, and an object of the present invention is to provide a carbon fiber bundle which is excellent in opening and widening properties and is particularly suitable for processing into an ultrathin prepreg.
[0013]
[Means for Solving the Problems]
The present invention for achieving the above object has a sizing agent attached thereto, a drape value at 25 ° C. in a range of 4 to 8 cm, a flatness in a range of 1 to 20, and substantially It is characterized by a carbon fiber bundle having no twist. Further, it is preferable that the drape value is in a range of 4 to 8 cm over a temperature range of 20 to 80 ° C. Preferably, the carbon fiber bundle has a single fiber number in the range of 5,000 to 50,000 and a fineness in the range of 1,000 to 50,000 dtex.
[0014]
In the present invention, the drape value is measured as follows. That is, one end of the carbon fiber bundle cut to a length of about 30 cm is fixed to an appropriate columnar body, for example, a square pillar, in an cantilevered state. At this time, the carbon fiber bundle is fixed so as to be perpendicular to the side surface of the quadrangular prism and to have a length from the side surface to the tip of 25 cm. Then, the tip of the carbon fiber bundle sags, but the drape value is related to the degree of the sag, and the closest distance (cm) between the side surface of the square pillar and the tip of the carbon fiber bundle is defined as the drape value.
[0015]
The flatness is expressed as a ratio of the fiber bundle thickness T to the fiber bundle width W of the carbon fiber bundle in the state of being wound on the bobbin, that is, W / T. Here, the fiber bundle thickness is an average value of n = 10, which is obtained by unwinding the carbon fiber bundle from the package so that its form is not lost, and applying a scale to measure. In addition, the fiber bundle width is an average value of n number 10 measured by applying a scale to a carbon fiber bundle located on the surface of the package.
[0016]
In the present invention, a sizing agent is attached to the carbon fiber bundle. The amount of the sizing agent attached is preferably in the range of 0.2 to 5% by weight. Here, the adhesion amount of the sizing agent is measured as follows. That is, a carbon fiber bundle of about 2 g is taken, and its weight is W 1 (G). This was set to 450 ° C. with a nitrogen gas flowing at a rate of 50 liter / min, and the capacity was set to 120 cm. 3 And heat it for about 15 minutes to completely pyrolyze the sizing agent. Thereafter, the dried nitrogen gas was transferred to a vessel in which the flow rate was 20 l / min, and after cooling for 15 minutes, the weight was reduced to W. 2 (G), and the amount S (%) of the sizing agent adhered is calculated by the formula:
S = [(W 1 -W 2 ) / W 1 ] X 100
Ask from.
[0017]
Further, in the present invention, the meaning that there is substantially no twist means that even if there is a twist, the number of turns is 0.1 or less per 1 m. As a means of obtaining a twisted carbon fiber bundle, a precursor fiber bundle (original yarn) having no twist is fired from the beginning, or a predetermined twist is applied to prevent the fiber bundle from being cut and fired, and the twist is released. You may rewind.
[0018]
BEST MODE FOR CARRYING OUT THE INVENTION
The carbon fiber bundle of the present invention has a sizing agent attached thereto, has a drape value at 25 ° C. within a range of 4 to 8 cm, a flatness within a range of 1 to 20, and has a substantially twist. Absent.
[0019]
The carbon fiber bundle may be made of any of a polyacrylonitrile type, a pitch type, and the like, but is preferably a polyacrylonitrile type having high strength and a high elastic modulus.
[0020]
Preferably, the carbon fiber bundle has a single fiber number in the range of 5,000 to 50,000 and a fineness in the range of 1,000 to 50,000 dtex. The concept of a carbon fiber bundle referred to here includes a graphitized fiber bundle obtained by firing at a higher temperature. It is also preferable that the carbon fiber bundle is made of a carbon fiber bundle that has been subjected to a surface oxidation treatment in order to improve the adhesiveness of the CFRP to the matrix resin.
[0021]
The sizing agent applied to the carbon fiber bundle improves the sizing property and abrasion resistance of the carbon fiber bundle, and an epoxy resin-based sizing agent described later is preferably used. The amount of the sizing agent attached is preferably in the range of 0.2 to 5% by weight, more preferably 0.5 to 3% by weight. If the amount is less than 0.2% by weight, the abrasion resistance is reduced and fluff is likely to occur. If the amount is more than 5% by weight, the adhesiveness to a matrix resin is reduced when CFRP is used, and the physical properties of CFRP are deteriorated. In some cases, the carbon fiber bundle becomes hard, and the fiber opening / widening properties may deteriorate.
[0022]
The drape value at 25 ° C. of the carbon fiber bundle in the present invention is in the range of 4 to 8 cm, preferably in the range of 5 to 6 cm. When the drape value is lower than 4 cm, the movement of the single fibers in the fiber bundle is liable to occur when winding on a bobbin or unwinding from a package, and the arrangement of the single fibers is disturbed or a local twist occurs. . Further, a material having a size exceeding 8 cm is hard, and when rolled up on a bobbin, does not properly follow the flange shape at the flange at the end of the roller, and is bent or mixed with twists, resulting in a decrease in widening property. Those having a drape value in the range of 4 to 8 cm are moderately soft, greatly improve the spreading and widening properties, and are unlikely to cause disorder in the arrangement of single fibers.
[0023]
Further, even if the drape value at 25 ° C. is 4 to 8 cm, if the drape value at around 70 to 80 ° C., which is the temperature at the time of prepreg processing, exceeds 8 cm, the spread / widening property at the time of prepreg processing May be inferior. Therefore, the drape value at 20 to 80 ° C. is more preferably 4 to 8 cm. When the drape value satisfies this range, it is possible to achieve both the handleability of the carbon fiber bundle at room temperature and the opening and widening of the fiber at the temperature during prepreg processing.
[0024]
However, such a carbon fiber bundle may be bent when wound up on a bobbin to form a package, unwound from a package, or the like, or the fiber bundle width may be narrowed due to fiber bundle breakage. In particular, such inconvenience tends to occur when a package is formed. Such a portion that is bent or the fiber bundle width is narrowed causes unevenness of the fiber opening and widening in the subsequent prepreg forming step. As a result, the smoothness of the prepreg surface may be deteriorated, or it may be difficult to process a so-called thin prepreg having a small amount of carbon fiber per unit area. Therefore, in the present invention, the flatness of the carbon fiber bundle is set in the range of 1 to 20, preferably 2 to 15, to prevent such inconvenience. When the flatness is less than 1, the fiber bundle becomes bulky and easily breaks when wound on a bobbin. When the fiber bundle exceeds 20, the fiber bundle breaks or twists at the end of the bobbin, or the fiber bundle width is reduced. It is narrowed.
[0025]
Next, a method for producing the carbon fiber bundle of the present invention will be described with reference to examples. The carbon fiber bundle of the present invention is provided with a sizing agent after washing and drying the carbon fiber bundle having substantially no twist as required. Here, that there is substantially no twist means that a precursor fiber bundle having no twist is fired from the beginning, or a certain twist is applied to prevent the fiber bundle from being cut and fired, and the twist is released and rewinded. Good. The precursor fiber bundle preferably has a single fiber number of 1,000 to 70,000, more preferably 6,000 to 30,000, and a fineness of the precursor fiber bundle of 0.5 to 2 dtex. Are preferred. That is, even in the case of a multifilament fiber bundle in which the number of single fibers is more preferably 1,000, and still more preferably more than 6,000, both the drape value and the flatness can be achieved. If the number exceeds 70,000, it may be difficult to set the flatness within the above range.
[0026]
Further, in order to improve the adhesiveness of the CFRP to the matrix resin, it is preferable to perform a surface oxidation treatment before washing with water. Further, the fineness of the single fiber constituting the carbon fiber bundle is preferably 0.3 to 1 dtex, more preferably 0.4 to 0.6 dtex. Carbon fibers exceeding 1 dtex are not uniformly carbonized to the inside of the single fiber and tend to have low strength.
[0027]
In the carbon fiber bundle having substantially no twist as described above, in order to achieve a constant drape value and flatness, a sizing agent application method described below, particularly a drying method after the sizing agent application, is employed. That is, a sizing agent is applied to the washed and dried carbon fiber bundles as necessary, and the drying temperature after applying the sizing agent is preferably set to 150 ° C. or more and 220 ° C. or less, and 150 ° C. or more and 200 ° C. or less Is more preferable, and 180 to 200 degreeC is still more preferable. When the drying temperature is lower than 150 ° C., the curing progress of the sizing is not sufficient, and the drape value at 25 ° C. is less than 4 cm, or the solvent in the sizing agent cannot be sufficiently removed, and the carbon fiber and the matrix resin cannot be removed. In some cases, the adhesive properties may not reach the desired physical properties, and when the temperature exceeds 220 ° C., the curing of the sizing agent proceeds excessively, the carbon fiber bundle becomes hard, and the drape value becomes too high, and the spreadability and the spreadability are increased. May worsen. The amount of sizing is preferably in the range of 0.2 to 5% by weight, more preferably 0.5 to 3% by weight, and still more preferably 0.5 to 1%. If the amount is less than 0.2% by weight, the abrasion resistance is reduced and fluff is liable to occur. If the amount is more than 5% by weight, the drape value becomes too high or the adhesiveness to the matrix resin when CFRP is used. In some cases, the mechanical properties of CFRP decrease.
[0028]
Further, in the drying step after the application of the sizing agent, a method of drying the carbon fiber bundle in the air while appropriately applying tension between the rollers can be employed. That is, when the fiber bundle is dried while pressed against the roller, the carbon fiber bundle is fixed in an expanded state, and the flatness may be larger than 20, but tension is applied to the carbon fiber bundle. By drying in the air in a squeezed and squeezed state (that is, a state in which the fiber bundle width is smaller than no tension), the flatness can be fixed while maintaining the flatness to 20 or less. At this time, it is preferable to apply a tension in the range of 500 to 3000 g / dtex. If the tension is less than 500 g / dtex, the fiber bundle may be loosened and the width of the fiber bundle may be uneven. In addition, when a tension exceeding 3000 g / dtex is applied, yarn pain and fluff may occur.
[0029]
The sizing agent to be applied to the carbon fiber bundle of the present invention is preferably an epoxy resin system which is substantially completed when heated at 200 ° C. for 2 minutes, more preferably when heated at 200 ° C. for 0.5 minutes. Sizing agents are preferably used. By using a sizing agent exhibiting such curing behavior, it is possible to control the drape value in a short time in the drying step after the application of the sizing agent. Also, at room temperature, a sizing agent that hardly progresses the curing reaction is preferable from the viewpoint of storage.
[0030]
The sizing agent composition is not particularly limited as long as the above properties are satisfied, but a sizing agent containing an epoxy resin as a main component is more preferably used. Here, the epoxy resin refers to a compound having two or more epoxy groups in a molecule. Among them, the liquid epoxy resin preferably contains 70% by weight or more of all epoxy resins, more preferably 80% by weight or more.
[0031]
Examples of the liquid epoxy resin include low-molecular-weight epoxy resins having a molecular weight of 200 to 1500, which are compounds having two or more epoxy groups in a molecule. More preferably, the epoxy resin has a molecular weight of 300 to 1,000, and still more preferably 300 to 500. Examples of such a low molecular weight epoxy resin include Epicoat (registered trademark) 828 (manufactured by Japan Epoxy Resin Co., Ltd., molecular weight: 368 to 388), Epicoat 807 (manufactured by Japan Epoxy Resin Co., Ltd., molecular weight: 320 to 350), Epototo ( (Registered trademark) YD-011 (manufactured by Toto Kasei Co., Ltd., molecular weight: 900 to 1000), Epototo YDF-170 (manufactured by Toto Kasei Co., Ltd., molecular weight: 320 to 350) and the like. When such a liquid epoxy resin is contained in an amount of 70% by weight or more of the total amount of the epoxy resin, the carbon fiber bundle has an effect of imparting convergence, and at the same time, imparting appropriate flexibility for suppressing fiber bundle breakage.
[0032]
Further, the sizing agent used for the carbon fiber bundle of the present invention preferably contains 0.5 to 20% by weight of an epoxy resin which is solid at room temperature. By including the solid epoxy resin, appropriate hardness can be imparted, so that the drape value and flatness of the carbon fiber bundle can be easily set in the above ranges.
[0033]
Examples of such solid epoxy resins include Epototo YD-014 (melting point 91 to 102 ° C: manufactured by Toto Kasei Co., Ltd.), Epicoat 1001 (melting point 60 to 70 ° C: manufactured by Japan Epoxy Resin Co., Ltd.), Epicoat 1009 (melting point 140-149 ° C: manufactured by Japan Epoxy Resin Co., Ltd.), SUMI-EPOXY ESCN-220HH (melting point: 87 ° C or more: manufactured by Sumitomo Chemical Co., Ltd.) and the like.
[0034]
Among such solid epoxy resins, it is preferable that the solid epoxy resin having a melting point of 80 ° C. or more is contained in the total epoxy resin in an amount of 0.5 to 5% by weight. More preferably, it is 0.8 to 3% by weight. Since the solid epoxy resin having a melting point of 80 ° C. or more is contained in a certain amount or more, the solid epoxy component remains even when heated to 80 ° C., imparts appropriate hardness to the carbon fiber bundle, and retains its shape. It is possible to set the drape value in the range of 4 to 8 cm over 〜80 ° C.
[0035]
When applying such a sizing agent, it can be applied to the carbon fiber as an aqueous dispersion from the viewpoints of workability and concentration controllability. When giving as an aqueous dispersion, a surfactant may be appropriately added to the sizing agent.
[0036]
In addition, as a method of applying the sizing agent, a method of passing a carbon fiber bundle through a sizing tank, a method of applying with a nip roller, and a method of spraying with a spray are mentioned. This is preferable because the sizing agent can sufficiently penetrate into the sizing agent.
[0037]
It is preferable that the winding tension when winding the carbon fiber bundle around the bobbin is in the range of 100 to 1000 g / dtex. When the film is wound with a tension of less than 100 g / dtex, the winding hardness is reduced, and the winding of the package is likely to collapse. If it exceeds 1000 g / dtex, the carbon fiber bundle is pushed and spread on the bobbin, and the flatness may be lost. When a flattened carbon fiber bundle is wound around a bobbin to form a package, as described in JP-B-7-59458, the flatness of the carbon fiber bundle should not be broken by a guide roller or the like. It is preferable to guide the bobbin first and wind it up using a guide roller that traverses in a direction parallel to the rotation axis of the bobbin. In addition, it is preferable that the helix angle at the time of winding on a package is 3 to 20 degrees. If the twill angle is less than 3 °, the winding collapse at the end of the package is likely to occur, and if it exceeds 20 °, the fiber will be easily broken and twisted at the folded portion.
[0038]
【Example】
Hereinafter, the present invention will be described in more detail with reference to examples. The present invention is not limited by the embodiments. In the following examples and comparative examples, the characteristics of the carbon fiber bundle and the prepreg were measured as follows.
(1) Drape value
One end of the carbon fiber bundle cut to a length of 30 cm was fixed to the upper surface of the square pillar in a cantilevered state. At this time, the carbon fiber bundle is fixed so as to be perpendicular to the side surface of the quadrangular prism, and so that the length from the side surface of the quadrangular prism to the tip of the hanging carbon fiber bundle is 25 cm. The closest distance (cm) between the side surface of the quadrangular prism and the tip of the hanging carbon fiber bundle was measured.
(2) Flatness
The ratio of the fiber bundle thickness T to the fiber bundle width W of the carbon fiber bundle in the state of being wound on a bobbin, that is, expressed as W / T. Here, the thickness of the fiber bundle is determined by unwinding the carbon fiber bundle from the package so as not to lose its shape, and using a high-precision laser light displacement meter Z300 manufactured by OMRON Corporation. It measured and calculated | required as an average value of n number 10. The fiber bundle width was measured by applying a scale to a carbon fiber bundle located on the surface of the package, and was obtained as an average value of n = 10.
(3) Number of fluff
The carbon fiber bundle to which the sizing agent is attached is sequentially passed through four first to fourth stainless steel chrome-plated mirror surface guides (diameter: 9.5 mm) so that the contact angles become 57 ± 3 degrees, respectively, and room temperature is applied. (23 ° C.) at a speed of 3 m / min. At this time, the tension of the carbon fiber bundle guided to the first guide was adjusted to be 500 g. Then, the number of fluffs of the carbon fiber bundle derived from the fourth guide was measured using a fluff counting device “DT-105 (S-Toku)” manufactured by Toray Engineering Co., Ltd.
(4) Widening
The widening property of the carbon fiber bundle was measured as follows. That is, the carbon fiber bundle was wound around a drum at 80 ° C. As the resin, a bisphenol A type epoxy resin having a viscosity of 20 cP at 25 ° C. was used. It was calculated from the yarn width Ws (mm) wound around the drum and the fiber bundle width W (mm) of the carbon fiber bundle using the following equation.
[0039]
Widening property = (Ws / W)
Here, Ws was measured as follows. That is, Ws was measured by applying a scale to the fiber bundle widened on the drum, and determined as an average value of n number 10.
(5) Crack
The cracking of the prepreg was measured as follows. That is, a carbon fiber bundle is impregnated with a resin at 100 ° C., and the fiber basis weight is 100 g / m 2. 2 A UD prepreg sheet having a fiber content of 70% by weight was produced. As the resin, a bisphenol A type epoxy resin having a viscosity of 20 cP at 25 ° C. was used. The prepared UD prepreg sheet 100m 2 The number of cracks having a width of 0.5 mm or more or cracks having a length of 20 cm or more even if the width was less than 0.5 mm (hereinafter referred to as crack number) was measured.
(6) Smoothness of prepreg
As the index of smoothness of the prepreg, the number of peaks per unit length obtained from the displacement curve of the prepreg surface was used. That is, using a surface smoothness measuring device, a displacement curve in the 90 ° direction was measured over 300 mm on the prepreg surface with respect to the reinforcing fiber, and the number of convex portions having a height difference (difference between a valley and a peak) of 5 μm or more was determined. Was. The number of such convex portions was divided by the measurement length, and the number converted to the number per unit length (100 mm) was defined as the number of peaks.
[0040]
Here, the displacement curve of the prepreg surface was measured by the following method.
[0041]
As a displacement measuring device for measuring the displacement of the prepreg surface, a contact type displacement sensor was used, and measurement was performed by scanning a stylus. In this example, measurement was performed at a cutoff value of 8 mm and a scanning speed of 2 mm / sec using SE-3400 manufactured by Kosaka Laboratory Co., Ltd.
[0042]
In this example, a sizing agent was prepared by the following method. That is, the compositions (a) and (b) shown in each Example were charged into a high-viscosity emulsifying apparatus and heated and mixed at 80 to 90 ° C., and (c) and (d) were added to prepare a uniform emulsion. did. Further, water was added for dilution, and the concentration was adjusted so that the sizing adhesion amount of the carbon fiber bundle became a target value.
(Example 1)
A sizing agent having the following composition was prepared according to the above method.
[0043]
(A) Bisphenol A type epoxy resin (Epicoat 828, manufactured by Japan Epoxy Resin Co.): 60 parts by weight
(B) Bisphenol A type epoxy resin (Epicoat 1009, manufactured by Japan Epoxy Resin): 5 parts by weight
(C) Polyoxyethylene oleyl ether (EMALEX (registered trademark) 508, manufactured by Nippon Emulsion Co., Ltd.): 15 parts by weight
(D) Polyoxyethylene isostearyl ether (EMALEX 1815, manufactured by Nippon Emulsion Co., Ltd.): 20 parts by weight
The sizing agent was applied to a non-twisted carbon fiber bundle having a single fiber diameter of 7 μm and 12,000 single fibers in an amount of 1.0% by weight, and then a tension of 700 g / dtex was applied between rollers, followed by drying at 200 ° C. Then, it was wound up on a bobbin with a winding tension of 300 g / dtex so that the twill angle was 5 to 12 °. According to the above method, the flatness, the drape value, the number of fluffs generated by rubbing, the widening property, the number of cracks, and the smoothness (number of peaks) were examined. The results are shown in Tables 1 and 2 and FIGS.
(Examples 2 to 5, 7)
It was wound up on a bobbin in the same manner as in Example 1 except that the sizing adhesion amount, the drying tension, the drying temperature and the helix angle were adjusted so that the drape value and flatness were as shown in Table 1. Table 2 shows the drape value, the flatness, the number of fluffs, the widening property, the number of cracks, and the number of peaks measured according to the above method.
(Example 6)
The sizing agent was wound around a bobbin in the same manner as in Example 1 except that the composition of the sizing agent was changed as follows. Tables 1 and 2 show the drape value, the flatness, the number of fluffs, the widening property, the number of cracks, and the number of peaks measured according to the above method.
[0044]
(A) Bisphenol A type epoxy resin (Epicoat 828, manufactured by Japan Epoxy Resin Co.): 60 parts by weight
(B) Bisphenol A type epoxy resin (Epicoat 1001, manufactured by Japan Epoxy Resin Co.): 5 parts by weight
(C) Polyoxyethylene oleyl ether (EMALEX 508, manufactured by Nippon Emulsion Co., Ltd.): 15 parts by weight
(D) Polyoxyethylene isostearyl ether (EMALEX 1815, manufactured by Nippon Emulsion Co., Ltd.): 20 parts by weight
(Comparative Examples 1-4)
The sizing adhesion amount, drying tension, drying temperature, and helix angle were changed as shown in Table 1, and in Comparative Examples 1 and 3, winding was performed on a bobbin in the same manner as in Example 1 except that a hot roller was used in the drying step. Table 2 shows the drape value, the flatness, the number of fluffs, the widening property, the number of cracks, and the number of peaks.
[0045]
[Table 1]
[0046]
[Table 2]
[0047]
From Tables 1 and 2, it can be seen that the products according to Examples 1 to 7 are inferior in individual characteristics to those according to Comparative Examples 1 to 4, but are superior in the overall evaluation. In Comparative Example 4, although the widening property was good, the number of fluff was extremely large.
[0048]
【The invention's effect】
The carbon fiber bundle of the present invention is excellent in spreadability and widening, and has extremely little fluff, as is clear from the comparison between Examples and Comparative Examples. Therefore, it is particularly suitable for producing an ultra-thin prepreg. Use of such a prepreg makes it possible to obtain CFRP which is lighter in weight and excellent in properties such as strength and elastic modulus.
[Brief description of the drawings]
FIG. 1 is a graph showing the temperature dependence of a drape value in one embodiment of the present invention.
FIG. 2 is a graph showing the temperature dependence of a drape value in one embodiment of the present invention.
FIG. 3 is a graph showing the temperature dependence of the drape value of a conventional carbon fiber.