JP2004073058A - 重症乳児ミオクロニー癲癇におけるscn1aの変異 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明により重症乳児ミオクロニー癲癇に関与することが見出された神経の電位依存性ナトリウムチャネルα−サブユニットI型遺伝子(SCN1A)の変異部位は、図1に示されている。上記変異の検出のために使用するプライマー及びプローブ及びそれらを用いて重症乳児ミオクロニー癲癇を診断するためのキット及び方法も提供する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、重症乳児ミオクロニー癲癇(SMEI)における神経の電位依存性ナトリウムチャネルα−サブユニットI型遺伝子(SCN1A)の多頻度に生じる変異、及びその変異を利用したSMEIの診断に関する。
【0002】
【従来の技術】
重症乳児ミオクロニー癲癇(SMEI)は、次のような特徴を有する、癲癇症状であり、発症前は正常に成長をつづけるが、誕生後1年迄の間に全身性または片側の熱性間代発作が生じる。ミオクロニー発作の二次的発生およびしばしば部分発作もともなう。SMEIは難治性で運動失調および精神機能低下を伴う。家族歴および一卵性双生児での発症表現型の一致の観察から、遺伝的素因も疑われている。
【0003】
最近、SMEI患者の神経系における電位依存性ナトリウムチャネルα−サブユニットI型蛋白質をコードする遺伝子(SCN1A)に変異が発見された(Claes L, et al.,De novo mutations in the sodium−channel gene SCNIA cause severe myoclonic epilepsy of infancy. Am J Hum Genet 2001, 68:1327−1332)。これらの変異は異型接合性で、de novo であった(4つのフレームシフト、一つはナンセンス、一つはスプライス−ドナー、そして一つのミスセンス)。
【0004】
SCN1Aの変異は、熱性痙攣を伴う全般てんかんプラス(GEFS+)の原因でもあることが知られているが、それらは全てミスセンス変異である(EscaygA, et al., Mutations of SCNIA encoding a neuronal sodium channel, in two families with GEFS+2. Nat Genet 2000, 24:343−345; Wallace RH, et al, Febrile seizures and generalized epilepsy associated with a mutation in the Na+−channel β1 subunit gene SCNIB. Nat Genet 1998, 19:366−370)。
【0005】
SMEIはGEFS+に比べて症状が重篤であり、的確な診断により病状の経過を予測し、早期に治療計画をたてることが重要である。しかし、両者は症状が似ていることやいずれもSCN1Aに変異が見られることなどのため区別が難しく、SMEIをGEFS+と区別して正確、迅速かつ容易に診断する方法の開発が望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、日本人の重症乳児ミオクロニー癲癇(SMEI)患者中のSCN1A遺伝子の新規変異の発見に基づき、SMEIの診断のためにプライマーまたはプローブとして用いることができるDNA、およびそれらを用いた診断方法、さらには該方法に用いる診断用キットを提供する。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、多くのSMEI患者中の、神経系における電位依存性ナトリウムチャネルα−サブユニットI型遺伝子をコードする遺伝子(SCN1A)を分析したところ、SCN1A遺伝子中の種々の部位のナンセンス変異、フレームシフト、ミスセンス変異がSMEIの原因となっていることを見いだした。その変異を後記実施例中の表1に示す。これらの変異は、今までにGEFS+患者のSCN1A中に報告された変異とは異なるし、また、Claes L, et alにより報告された変異とも異なっている。したがって、SMEIであることが疑われる患者の組織、血液等から、DNAまたはRNAを抽出し、SCN1A遺伝子に上記変異のいずれかが存在するかを検出することにより、SMEIの新規な診断方法が可能になる。
【0008】
したがって、本発明はヒトの遺伝子試料から単離及び所望により増幅されたDNAまたはmRNAであって、配列番号1の塩基配列中において、下記の変異の少なくとも一つを有する塩基配列またはその相補配列からなる単離されたDNA、またはそれらのDNAに相補する単離されたmRNAに関する:
(1) 1213位のArgのナンセンス変異
(例えば、3637のC → T);
(2) 1408位のTrpのナンセンス変異
(例えば、4223のG → A);
(3) 1807位からのMet Phe Tyr Gluを削除する変異
(即ち、5419からの12塩基の欠失);
(4) エクソン4のスプライス部位の変異
(例えば、GT → AT);
(5) 952位のTrpのナンセンス変異
(例えば、2855のG → A);
(6) 1284位のTrpのナンセンス変異
(例えば、3852のG → A);
(7) 946位のArg以後にフレームシフトをおこす変異
(例えば、2835のCの欠失);
(8) 177位のGly以後にフレームシフトをおこす変異
(例えば、530のGの欠失);
(9)732位のGln以後にフレームシフトをおこす変異
(例えば、2196への8塩基挿入);
(10)1765位のPheのナンセンス変異
(例えば、5292へのTの挿入);
(11)103位のSerをGlyに変更する変異
(例えば、307のA → G);
(12)1685位のAlaをAspに変更する変異
(例えば、5054のC → A);
(13)112位のThrをIleに変更する変異
(例えば335のC → T);
(14)1231位のSerをArgに変更する変異
(例えば、3693のT → A);
(15)985位のAsnをIleに変更する変異
(例えば、2954のA → T);
(16)1831位のPheをSerに変更する変異
(例えば、5492のT → C);
(17)265位のGlyをTrpに変更する変異
(例えば、793のG → T);
(18)960位のMetをValに変更する変異
(例えば、2878のA → G);
(19)1812位のTrpをGlyに変更する変異
(例えば、5434のT → G)
【0009】
トリプレットコドンには縮重が知られているので、上記変異は括弧内に例示した以外の塩基の変異によって生じることもあり、そのような変異も本発明の対象である。
【0010】
上記のヒトSCN1A遺伝子の変異情報に基づいて、SMEIの素因をもつまたは発症中の発作がSMEIであると思われる幼児および/または両親の診断を行うことができる。
【0011】
SCN1A遺伝子
診断の一方法として、患者のSCN1A遺伝子を取り出し、その塩基配列を決定し、(1)〜(19)の変異が含まれているか調べることが可能である。SCN1A遺伝子は、例えばNat. Genet 1998, 19:366−370 又はJ. Neurosci. 2001, 21:7481−7490 に記載された方法によって、ヒトの組織または血液から単離することができる。簡単に述べると、ヘパリン処理した血液サンプルからゲノムDNAを抽出する。必要であればDNAをPCRなどの適当な手段により増幅する。PCRプライマーは、cDNA (GenBank accession no. AY043484) (配列番号1)及びゲノム配列(GenBank accession nos. AC010127及びAC021673) の比較により決定されたSCN1Aの26のエクソンを全て増幅するよう設計すればよい。例えば、配列番号2及び59に示すプライマーの対が使用できる。PCR産物の塩基配列を分析して、目的の変異を含むDNAであることを確認する。変異解析の方法は、例えば、Sugawara T, Mazaki−Miyazaki E, Ito M, Nagafuji H, Fukuma G, Mitsudome A, Wada K, Kaneko S, Hirose S, Yamakawa K (2001) Nav1.1 Mutations Cause Febrile Seizures Associated with Afebrile Partial Seizures. Neurology 57: 703−705に記載されている。ヒト組織からのゲノムDNAまたはcDNAの抽出、そのPCR増幅及びPCR産物の配列分析は、いずれも市販のキットおよび/または装置を用いて行うことができる。
【0012】
SCN1A遺伝子は患者の組織または血液からmRNAを抽出し、それを基にcDNAライブラリーを作成し、これを例えばPCRで増幅させることによって、cDNAとして調製してもよい。SCN1AのcDNA配列は、配列表の配列番号1に示される。
【0013】
変異領域を増幅させるためのプライマー
SMEIの診断は、上記患者から例えば配列番号2ないし59に示すプライマーの対によって増幅・単離したSCN1A遺伝子の塩基配列から、あるいはより簡便には、患者から単離したゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリーから、変異部位を含む領域を直接増幅することができるプライマーを用いて検出することができる。本発明はそのためのプライマーも提供する。
【0014】
本発明のプライマーは、上記(1)〜(19)の変異の少なくとも一つの領域に対応する、ヒトSCN1A遺伝子の領域を含む10〜100個の連続した塩基配列またはその相補配列を有するDNA断片からなる。好ましいプライマーの長さは、約20ヌクレオチドである。プライマーは必要により標識を結合させて用いることもできる。本発明のプライマーは、市販の核酸合成装置を用いて製造可能である。通常はプライマーは、上記領域を前後に挟んだ1対のDNA断片からなる。対の一方が変異領域を含んでも含まなくてもよい。プライマー対の一方が変異領域を含む場合、患者のSCN1A遺伝子に変異が存在する場合にのみ、DNAの増幅が生じるようにすることができて都合がよい(DNA Res 2002 Apr 30;9(2):59−62 Accuracy of genotyping for single nucleotide polymorphisms by a microarray−based single nucleotide polymorphism typing method involving hybridization of short allele−specific oligonucleotides. Iwasaki H, Ezura Y, Ishida R, Kajita M, Kodaira M, Knight J, Daniel S, Shi M, Emi M.)。
【0015】
患者組織DNAの増幅
本発明は、上記プライマーを用いて、配列番号1の塩基配列中において、上記(1)〜(19)の変異に対応する少なくとも一つの領域を増幅する方法も提供する。本発明の方法は、SMEIの素因を有する、またはSMEIであると思われるヒトの血液または組織試料から、ゲノムDNAまたはcDNAをライブラリーまたはSCN1A遺伝子もしくはその部分領域として用意し、
用意したDNAを鋳型とし、上記プライマー対の少なくとも一つを用いてDNAの増幅を行ない、そして
増幅したDNAの塩基配列を解析して、用いたプライマーに対応する変異が存在するかどうかを調べることからなる。
【0016】
上記方法の具体的各工程は、よく知られた方法を用いてよい(例えば、NEUROLOGY 2001; 57:703−705を参照)。例えば、増幅の一般的方法はPCR反応であるが、他の増幅方法も適宜使用できる。
【0017】
増幅したDNA中の変異の検出
上記のようにして、増幅したDNA中の変異の検出は、組織DNAのSNPsを検出する方法としてよく知られている方法で行うことができる。
【0018】
例えば、DNAシークエンサーを用いて、変異を含むと思われる領域の配列を解読して検出することができる。
増幅したDNA断片を質量分析して、正常DNA断片との質量が変化していることに基づいて検出してもよい。
【0019】
変異DNA断片に特異的にハイブリダイズするプローブのハイブリダイゼーションの有無に基づいて検出することもできる。その場合のプローブは、蛍光標識、放射性標識、酵素標識等の適当な標識により、検出を容易にすることも可能である。また、プローブはDNAチップ上のマイクロアレーとして用いることもできる。
【0020】
PCR−SSCPと呼ばれる方法を使用すれば、PCR産物を変成させて一本鎖とし、その中のSNPの3次元構造の相違から、変異の有無を検出することができる。
【0021】
また、最近開発された方法では、用いたプライマーに対応する変異が試料中のSCN1A遺伝子に存在する場合にのみ、該変異領域のDNAを特異的に増幅することが可能になっている。例えば、TaqMan PCR法を利用して、PCR増幅が生じた場合に蛍光色を発生させることも可能である。この方法では、上記(1)〜(19)の変異に対応する全ての組のプライマー対を一度に用い、DNAの増幅があったときは(1)〜(19)のいずれかに対応する変異が試料のSCN1A遺伝子に存在することを一度のテストで突き止めることができる。そのため診断が非常に迅速になる。
【0022】
診断
本発明の方法により変異を含むDNAの増幅が認められたときは、試料を提供したヒトにSMEIの素因がある、またはSMEIであると診断する。そのような診断のためには、使用するプライマー対は上記(1)〜(19)の変異の複数に対応することが好ましく、より好ましくは(1)〜(19)の全部の変異に対応する全部の対のプライマーを用いて、変異を有するDNAのみを増幅させる。マイクロアレイ法を用いれば、反応毎に一対のプローブを用いつつ複数対のプライマーによる診断を一度に行うことも可能である。
【0023】
診断用プローブ
本発明によれば、上記(1) 〜(19)のいずれか1つの変異を含む10〜100の連続した塩基配列からなるDNAまたはその混合物をプローブとして用いて、SMEIの診断を行うことも可能である。好ましいプローブの長さは20である。プローブは、ハイブリダイゼーションの確認を可能にする手段、例えば蛍光等の標識やレポーター遺伝子を付してもよい。さらに、プローブは、遺伝子チップの形式で適当な担体に付着させて置くこともできる。本発明のプローブは、核酸自動合成装置を用いて合成可能である。
【0024】
プローブによるSNPsの検出法として、ASO法など(DNA Res 2002 Apr 30;9(2):59−62 Accuracy of genotyping for single nucleotide polymorphisms bya microarray−based single nucleotide polymorphism typing method involving hybridization of short allele−specific oligonucleotides. Iwasaki H, Ezura Y, Ishida R, Kajita M, Kodaira M, Knight J, Daniel S, Shi M, Emi M.)が知られている。SMEIの診断を行うためには、患者の組織・血液試料から、前記同様にゲノムDNAまたはcDNAをライブラリーとしてまたはSCN1A遺伝子もしくはその部分領域として調製する。必要なら、このDNAを増幅させてもよい。調製したDNAとプローブとが特異的にハイブリダイズするなら、患者のSCN1A遺伝子は変異を有し、当該患者がSMEIの素因を有する、またはSMEIであると判断される。
【0025】
プローブと試料DNAのハイブリダイゼーションの条件には、反応の特異性が保たれる限り特別の制限はないが、ある程度ストリンジェントな条件、より好ましくはストリンジェントな条件が好ましい。
【0026】
ストリンジェントな条件は、塩濃度、有機溶媒(例えば、ホルムアミド)、温度、及びその他の条件によって定義される。すなわち、塩濃度を減じるか、有機溶媒濃度を増加させるか、またはハイブリダイゼーション温度を上昇させることによってストリンジェンシーは増加する。例えば、ストリンジェントな塩濃度は、通常NaCl約750mM以下及びクエン酸三ナトリウム約75mM以下、より好ましくはNaCl約500mM以下及びクエン酸三ナトリウム約50mM以下、最も好ましくはNaCl約250mM以下及びクエン酸三ナトリウム約25mM以下である。
【0027】
ストリンジェントな有機溶媒濃度は、ホルムアミド約35%以上、最も好ましくは約50%以上である。ストリンジェントな温度条件は、約30℃以上、より好ましくは約37℃以上、最も好ましくは約42℃以上である。その他の条件としては、ハイブリダイゼーション時間、洗浄剤(例えば、SDS)の濃度、及びキャリアーDNAの存否等であり、これらの条件を組み合わせることによって、様々なストリンジェンシーを設定することができる。一つの好ましい態様としては、750mM NaCl、75mMクエン酸三ナトリウム及び1%SDSの条件で、30℃の温度によりハイブリダイゼーションを行う。より好ましい態様としては、500mM NaCl、50mMクエン酸三ナトリウム、1%SDS、35%ホルムアミド、100μg /mlの変性サケ精子DNAの条件で37℃の温度によりハイブリダイゼーションを行う。最も好ましい態様としては、250mM NaCl、25mMクエン酸三ナトリウム、1%SDS、50%ホルムアミド、200μg /mlの変性サケ精子DNAの条件で、42℃の温度によりハイブリダイゼーションを行う。
【0028】
また、ハイブリダイゼーション後の洗浄の条件もストリンジェンシーに影響する。この洗浄条件もまた、塩濃度と温度によって定義され、塩濃度の減少と温度の上昇によって洗浄のストリンジェンシーは増加する。例えば、洗浄のためのストリンジェントな塩条件は、好ましくはNaCl約30mM以下及びクエン酸三ナトリウム約3mM以下、最も好ましくはNaCl約15mM以下及びクエン酸三ナトリウム約1.5mM以下である。洗浄のためのストリンジェントな温度条件は、約25℃以上、より好ましくは約42℃以上、最も好ましくは約68℃以上である。一つの好ましい態様としては、30mM NaCl、3mMクエン酸三ナトリウム及び0.1%SDSの条件で、25℃の温度により洗浄を行う。より好ましい態様としては、15mM NaCl、1.5mMクエン酸三ナトリウム及び0.1%SDSの条件で、42℃の温度により洗浄を行う。最も好ましい態様としては、15mM NaCl、1.5mMクエン酸三ナトリウム及び0.1%SDSの条件で、68℃の温度により洗浄を行う。
【0029】
変異部位に対する特異的抗体
SMEIの診断は、SMEI患者の変異したSCN1A遺伝子がコードする変異蛋白質またはその断片に特異的なモノクローナル抗体を用いて行うことも可能である。そのようなモノクローナル抗体は、上記(1) 〜(19)の変異のいずれか一つを含むヒトSCN1A遺伝子DNAまたは当該変異を含むSCN1A遺伝子DNA断片がコードするペプチドを哺乳類動物に投与して、該動物の抗体産生細胞を抽出し、該細胞をミエローマ細胞と融合させ、融合細胞から(1) 〜(19)のいずれか1つの変異を持つ蛋白質もしくはペプチドに特異的な抗体を産生するハイブリドーマをクローニングし、得られたハイブリドーマを抗体産生条件で培養することにより製造できる。モノクローナル抗体の製造方法はコーラー及びミルシュタインの方法として周知である。
【0030】
本発明の抗体を用い、免疫化学的検査法(例えば、サンドイッチ法、蛍光標識法、ラジオイムノアッセイ等)により患者の神経組織標本と特異的に反応するか否かに基づいて、患者がSMEIの素因を有するか否かまたは熱性痙攣がSMEIの発作であるか否かを診断することが可能である。
【0031】
診断用キット
本発明は、上記1〜20種のプライマー対の一対ないし全部の対を含む、患者がSMEIの素因を有するか否かまたはSMEIであるか否かを診断するためのキットも提供する。このキットは、プライマー対の他に、組織DNAの抽出手段、DNA希釈用緩衝液、反応容器、陽性対照サンプル、陰性対照サンプル、説明書、パッケージ等を適宜含んでよい。キットはさらに、組織DNAの増幅のための試薬を含んでもよい。
【0032】
本発明は、上記(1) 〜(19)のいずれか1つの変異を含む20〜100の連続した塩基配列からなるDNAまたはその混合物をプローブとして含む、患者がSMEIの素因を有するか否かまたはSMEIであるか否かを診断するためのキットも提供する。好ましくはプローブは20種のDNA断片の混合物として存在し、遺伝子チップを形成するために適当な材料のプレートに付着した状態でキットに含まれるのが好ましい。キットは、プローブの他に、組織DNAの抽出手段、DNA希釈用緩衝液、ハイブリダイゼーションに適切なストリンジェンシーの緩衝液、ハイブリダイゼーションに適切なストリンジェンシーの洗浄液、反応容器、陽性対照サンプル、陰性対照サンプル、説明書、パッケージ等を適宜含んでよい。
【0033】
本発明は、上記のモノクローナル抗体を含む、患者がSMEIの素因を有するか否かまたはSMEIであるか否かを診断するためのキットも提供する。キットは抗体の他に、抗体希釈用緩衝液、反応容器、陽性対照サンプル、陰性対照サンプル、説明書、パッケージ等を適宜含んでよい。
以下に、実施例を記載して本発明をより詳細に説明する。
【0034】
【実施例】
SCN1Aの変異は、熱性痙攣を伴う全般てんかんプラス(GEFS+)による全身性発作の原因でもあるが、それらは全てミスセンス変異である。本実施例により、日本人の重症乳児ミオクロニー癲癇(SMEI)患者中のSCN1Aの新規変異を調べ、SMEIとGEFS+との遺伝子型及び表現型の比較を行った。
【0035】
患者及び方法
SMEIの臨床症状を有する一卵性双生児の対及び相互に無関係な多数の患者の検討を行った。
【0036】
対象のSMEI患者は男児12名及び女児11名を含み、年齢は2〜31歳(平均15.8歳)であった。痙攣の発症は誕生から1〜11月目(大部分は3〜10月目)に生じ、片側間代痙攣または全身性の間代もしくは強直・間代痙攣(GTC)であった。患者12は出産時の軽い窒息の病歴があった、また患者17は低出生体重児として生まれたが窒息はなかった。全ての患者は( 患者12および17も含めて) 痙攣発症までは正常に発育した。全患者において、痙攣発作は重積またはシリーズとして生じる傾向があり、このことは初期の痙攣で特に顕著であった。神経画像検査では通常は正常または軽度の萎縮が認められた。精神活動の発達は2才以後遅延し、11名の患者で運動失調が見られた。
【0037】
家族の病歴は、11名の患者の親族に熱性痙攣が、2名の患者の親族に癲癇が、そして3名の患者および双子の親族には癲癇と熱性痙攣のいずれもが認められた。
【0038】
EEG(エレクトロ・エンセファログラム)の結果によると、症例のいくつかでは癲癇放電は最初の検査では観察されず、その後に明確になった。大部分の症例で瀰漫性の高振幅4〜7Hz徐波の背景活動が観察された。光過敏症は4名の患者に認められた。
【0039】
癲癇症状の経過中、ミオクロニー発作は23名の患者に、非定型欠神発作は8名の患者に、そして複雑部分発作は16名の患者に観察された。痙攣発作(GTC)は、いずれの抗癲癇薬による最高用量の治療に対しても、効果がなかった。現在、全患者でGTCが持続している。大部分の症例で、GTCの頻度は1週間〜1月の間隔であった。
【0040】
これら23名の患者は、Commission of Classification and Terminology of the International League against Epilepsy (1989) の提唱するSMEIの基準(Epilepsia 1989, 30:389−399)を満たした。患者12は誕生時の問題を除いて、SMEIの定義に当てはまると診断された。
【0041】
何名かの患者の両親からの血液サンプル並びに111名の正常人志願者からの血液サンプルを試験のコントロールに用いた。
統計分析は、Kruskal−Wallis test および one−way factorial ANOVAを用いて行った。
【0042】
試験は、両親または必要な場合は責任者である成人から書面でのインフォームドコンセントを得、さらに、Shizuoka Medical Institute of Neurological Disordersの倫理委員会およびInstitutional Review Board of RIKEN−BSIの承認も得た上で行われた。
【0043】
変異の分析
SCN1Aの変異の分析は、Nat. Genet 1998, 19:366−370 及びJ. Neurosci.2001, 21:7481−7490 に記載された方法により行った。簡単に述べると、ゲノムDNAを正常人及び患者のヘパリン処理した血液サンプルから、市販のキット(QIAamp DNA Blood Midi Kit, Qiagen Research Genetics, Valencia, CA) を用いて抽出した。ゲノムDNAをPyrobest (宝酒造) を用いてPCRにより増幅し、配列解析して分析した。PCRプライマーは、cDNA (GenBank accession no. AY043484) とゲノム配列(GenBank accession nos. AC010127及びAC021673) との比較により決定された、SCN1Aの26のコードエクソンを全て増幅するよう設計され、配列番号2及び59に示す塩基配列を有する。
【0044】
Ex 1F: TCCTCTAGCTCATGTTTCAT (配列番号2)
Ex 1R: CCACCCACAAATGTGTTTCA (配列番号3)
Ex 2F: GTGATTGTGCTGGTTTCTCA (配列番号4)
Ex 2R: GGCTAATATGACAAAGATGC (配列番号5)
Ex 3F: TCCCTGAATTTTGGCTAAGC (配列番号6)
Ex 3R: GTCCTCTTGCTGCGTAATTT (配列番号7)
Ex 4F: AGGGCTACGTTTCATTTGTA (配列番号8)
Ex 4R: ACTTAGACCTTTGTTGTGCT (配列番号9)
Ex 5F: CAGAGTCTTGAGAGCTTTGA (配列番号10)
Ex 5R: TCCAAGGCTGATAAAGCTTA (配列番号11)
Ex 6F: AGCGTTGCAAACATTCTTGG (配列番号12)
Ex 6R: CCTGCAATGTGTGCTAATCA (配列番号13)
Ex 7F: TCCTGTCATTCCTGTCTATT (配列番号14)
Ex 7R: AGTTGGCTGTTATCTTCAGT (配列番号15)
Ex 8F: TATGCAGTCAAAAGTTGGGA (配列番号16)
Ex 8R: AGTCTCGTTTCAAGTTCTGC (配列番号17)
Ex 9F: GGGTGCTATGACCAACATAA (配列番号18)
Ex 9R: AATTCCTCATACAACCACCT (配列番号19)
Ex 10F: GTGAGATGATCTTCAGTCAG (配列番号20)
Ex 10R: CACCGAGCTGTAGACTTACA (配列番号21)
Ex 11F: CCCAAGGGCTAGAAACTTTC (配列番号22)
Ex 11R: CAAGATGCAGGTGCATTCAC (配列番号23)
Ex 12F: TATCTGCCATCACCAATTGA (配列番号24)
Ex 12R: AGCTCTTGAATTAGACTGTC (配列番号25)
Ex 13F: TGGGAGGTTTAGAGTAAACT (配列番号26)
Ex 13R: TAATTGCGATTTTGCAGGGG (配列番号27)
Ex 14F: TGTGGGAAAATAGCATAAGC (配列番号28)
Ex 14R: GACAATGCAAATGTTACGGA (配列番号29)
Ex 15F: AAAATTAGCCATGAGCCTGAGA (配列番号30)
Ex 15R: GCACTGCTATATTGCTGTGTTG (配列番号31)
Ex 16−1 TGTGGTGTTTCCTTCTCATC (配列番号32)
Ex 16−2 TTTGCTTTCTTCCAGATCCG (配列番号33)
Ex 16−2F: GGCAGCAGTGTTGAAAAATA (配列番号34)
Ex 16−2R: ACAGGCAATATAATGCATGT (配列番号35)
Ex 17F: TCCCCTTATTCAATCTCTCT (配列番号36)
Ex 17R: TCAAAGCATGACACTAGACT (配列番号37)
Ex 18F: TTAGAGAGCTATGCTAGCAA (配列番号38)
Ex 18R: ATAGAAGATACAAGGTGGGA (配列番号39)
Ex 19F: TAACTACTGTTTCTCTGCCC (配列番号40)
Ex 19R: CCCTTGTCTTCCAGAAATGA (配列番号41)
Ex 20F: GCCAATGAATTTTTTTCCACCTTG (配列番号42)
Ex 20R: AGAGGCCTATTTCTCTTGCAT (配列番号43)
Ex 21F: AAGAATGGAAAGACCAGAGA (配列番号44)
Ex 21R: TGGGCTCATAAACTTGTACT (配列番号45)
Ex 22F: ACTGTCTTGGTCCAAAATCTGT (配列番号46)
Ex 22R: ACCTGTCACACTTTTTCCCAA (配列番号47)
Ex 23F: GGCCAATTTCAGGGATGTTTTT (配列番号48)
Ex 23R: GGATAGTGAATGACAGAGGAAG (配列番号49)
Ex 24F: TCCTCTAACTCTTTGCTACA (配列番号50)
Ex 24R: AGATGATGCTCTACAAGTGA (配列番号51)
Ex 25R: AAAATCAGGGCCAATGACTA (配列番号52)
Ex 25F: GATTATCTCTGATTGCTGGG (配列番号53)
Ex 26−1F: ATATAACTGGGTTCAGGACT (配列番号54)
Ex 26−1R: CACAGTCTCCCTTAACTGAG (配列番号55)
Ex 26−2F: ATGTTAAGAGGGAAGTTGGG (配列番号56)
Ex 26−2R: TAGTGATTGGCTGATAGGAG (配列番号57)
Ex 26−3F: CCAAACAAACTCCAGCTCAT (配列番号58)
Ex 26−3R: GCACTGACCTTAAGGAGATT (配列番号59)
【0045】
各患者からのPCR産物は、それぞれダイデオキシターミネーターキットにより直接配列解析し、自動シークエンサー(model ABI3700, Applied Biosystems; NJ) で分析した。分析により、大部分のSMEI患者はSCN1A遺伝子に変異が生じていた。
【0046】
発見された変異を表1に示す。表1において、例えば「c.2101C−>T, R701X」と記載されている変異は、cDNAの2101位のシトシン(C)がチミン(T)に変化した結果701番目のアルギニンコドンがナンセンス変異したことを示し、「del」は塩基の欠失を意味し、「fs」はフレームシフトを意味し、「ins」は塩基の挿入を意味する。
【0047】
結果
SMEIの臨床症状を有する患者のSCN1A遺伝子の全コードエクソンおよびスプライス部位について、変異分析を行った。SCN1A遺伝子中に合計20の異型接合変異が検出され、つまり4名の患者の4つのフレームシフト変異、5名の患者の4つのナンセンス変異、9名の患者の9つのミスセンス変異および2名の患者の2つの他の変異であった。各変異のSCN1A遺伝子中の位置は、図1に示す(図1には、本発明と平行して行った小児難治大発作てんかんICEGTCの臨床症状を有する患者のSCN1A遺伝子の変異も示されている)。
【0048】
上記4つのフレームシフト変異は、1塩基挿入(患者11のc.5292insT)、8塩基挿入(患者10のc.2196−2203insCACCCTGT)および二種の1塩基欠失(患者8のc.2835delCおよび患者9のc.530delG)を含み、遺伝子の途中に停止コドンを生じていた(患者11のF1765fsX1794、患者10のQ732fsX749、患者8の946RfsX953、および患者9のG177 fsX180)。
【0049】
上記4つのナンセンス変異は、患者1および2の c.3637C−>T, R1213X 、患者3の c.4223G−>A, W1408X 、患者6の c.2855G−>A, W952Xおよび患者7の c.3852G−>A, W1284X を含み、これらもまた、チャネルタンパク質の短縮を生じた。
【0050】
エクソン4スプライス部位の変異(GT−>AT)は、スプライシングの隠蔽またはエクソンのスキッピングをもたらし、チャネルを変化させたと思われる。12塩基欠失(患者4のc.5419delATGTTCTATGAG, 1807delMFYE)はC−末端領域に存在した。
【0051】
上記ミスセンス変異のうち9つは、患者12のc.307A−>G, S103G、患者13のc.5054C−>A, A1685D、患者14のc.335C−>T, T112I、患者15のc.3693T−>A, S1231R、患者16のc.2954A−>T, N985I、患者17のc.5492T−>C, F1831S、患者18のc.793G−>T, G265W、患者19のc.2878A−>G, M960Vおよび患者20のc.5434T−>G, W1812Gを含み、コントロール集団(n=93ないし111)には存在しないアミノ酸配列をもたらした。しかし、ミスセンス変異のうち、患者9、11、12、20および21で検出された変異(c.3199A−>G, T1067A)は、103名のコントロール集団の20人の異型接合および2人の同型接合の個体にも存在するアミノ酸配列を生じた。このミスセンス変異では、アミノ酸はかなり保存的であった。
【0052】
患者22および23では、SCN1A遺伝子のコード領域に変異は観察されなかった。
患者1、2、8、13、18および20の両親は、正常対立遺伝子を有しており、これらの患者の変異がde novoであることを示唆した。
【0053】
上記結果をまとめると、23名のSMEI患者の5名はナンセンス変異を、2名はフレームシフト変異を、2名はフレームシフト変異とミスセンス変異を、10名はミスセンス変異を、2名はそれ以外の変異を有し、そして2名には変異が見られなかった。本発明と平行して行ったICEGTC患者の調査では、10名のうち、7名はミスセンス変異を有し、そして3名には変異が見られなかった。表現型および遺伝型の関連についてみると、ナンセンス変異およびフレームシフト変異は、SMEI患者のみに見られた。これに対して、ICEGTC患者では変異が存在してもミスセンス変異のみであった。
【0054】
【表1】
【0055】
考察
本発明者らは、以前、ナンセンス変異およびフレームシフト変異がSMEIの主な遺伝子型であることを報告した(Sugawara et al, Neurology 2002; 58s: 1122−4 )。本発明によれば、SMEIは他にもミスセンス変異および他のタイプの変異遺伝子型変異として生じることが判明した。しかし、フレームシフト変異およびナンセンス変異はSMEI患者にみられる主な異常であり、以前の報告と合わせると、39名のSMEI患者のうちフレームシフト変異の患者が7名およびナンセンス変異の患者が12名であった。そのうち、コントロール集団にもみられたミスセンス変異(c.3199A−>G, T0167A) は、疾患に無関係の良性変異であり、以下の考察からは除外する。残りの11名のミスセンス変異はSMEIの病因に関連すると考えられる。本発明の研究では3名、以前の研究では4名のSMEI患者にSCN1A遺伝子の変異がみられなかった。しかし、それらの患者において、プロモーターの変異またはRNA転写のスプライシングに影響するイントロン配列内の変異の可能性もあり、SCN1A遺伝子が変異している可能性は排除できない。あるいは、SCN1A以外の遺伝子の変異が原因である可能性もあり、例えば、Harkin et alは、GABAA−receptor g2サブユニット遺伝子の変異を示唆している(Am J Hum Genet 2002; 70: 530−6)。
【0056】
本発明では、SCN1A遺伝子の異なる変異または無変異がSMEIに異なる臨床症状を生じるかも検討した。フレームシフト変異、ナンセンス変異、ミスセンス変異および無変異患者の、大発作の発症平均年齢は、それぞれ10.7月、16月、25月および17.9月であった。小発作の発症は、フレームシフト変異の場合に、ミスセンス変異より早期に生じる傾向があった(p=0.0489)。痙攣発作の頻度はミスセンス変異の患者ではナンセンス変異の患者に比べて若干少ない傾向があった(p=0.0683)。詳しくは、GTCが週1回以上生じた患者の比率は、フレームシフト変異患者では57.1%、ナンセンス変異患者では66.7%、ミスセンス変異患者では27.3%、そして無変異の患者では57.1%であった。このように、臨床症状における相違はあまりなかったが、症例が増えれば違いが明確になる可能性もある。
【0057】
SMEIとICEGTCとの区別
本発明と平行して小児難治大発作てんかん(ICEGTC)の患者も調査した。ICEGTCの患者も主な発作症状として、全身性強直間代発作(GTC)を示す。SMEI患者とICEGTC患者の間に、発症年齢、性差、家族歴、神経学的異常、EEG所見(エレクトロ・エンセファログラム)、および臨床経過についての差異はなかった。両疾患は、表現型を微妙に異にする連続症状であることも考えられる。
【0058】
本発明および本発明者らの以前の研究にて行った分子遺伝学分析の結果では、両疾患のSCN1A遺伝子に70〜82%の高率で変異が認められ、SMEIではフレームシフト変異またはナンセンス変異が、そしてミスセンス変異は両疾患に認められた。したがって、SCN1A遺伝子の変異が、これらの疾患における激しい癲癇発作症状に絶対的とは言えないまでも、重要な役割を担うようであり、そしてこれら二種の疾患の遺伝型上の関連を示唆している。表現型の関連を調べる前に、フレームシフト変異、ナンセンス変異、およびミスセンス変異の遺伝子型の相違が、生理学的に異なる影響を及ぼすか調べる必要がある。
【0059】
SMEIとGEFS+との関連
本発明で調べた癲癇の共通の特徴は、発熱が発作の引金になることであり、これはGEFS+においても特徴的である。したがって、本発明の研究は、発熱による発作の危険性増大はSCN1A遺伝子の変異を示唆するのではないかとの、一般に受け入れられている仮説を確認した。ある研究者は、SMEIがGEFS+の最も重症型であると仮定している(Scheffer et al, Brain Dev 2001; 23: 749−56; Veggiotti et al, Epileptic Disorders 2001; 3: 29−32)。本発明者らによると、これまで調べたSMEI患者の変異はde novoであり、フレームシフト変異およびナンセンス変異を含んでいる。このことは、GEFS+のスペクトルに関する報告とは異なっている(Ito et al, Epilepsy Res 2002; 48: 15−23)。
【0060】
しかしながら、本発明と平行して行った研究で、ICEGTCの2名の子供の母親がその子供と同じミスセンス変異をSCN1A遺伝子に有することが見いだされた。2名の母親は熱性痙攣および熱性痙攣にひきつづく無熱性発作を有し、GEFS+とみなされた。このように、ICEGTCをGEFS+家系と関連させた報告は初めてであり、ICEGTCタイプの癲癇がGEFS+スペトクルの最も重症の形であることを示唆している。このことが、SMEIにも当てはまるかは、さらに多くの患者およびその家族の変異を観察する必要がある。生理学的研究により、これらの重大な小児の難病およびそのGEFS+との関連のさらに十分な理解をもたらすことが期待される。
【0061】
GEFS+においてはSCN2A中の変異が関与することが報告されているので(Proc Natl Acad Sci USA 2001, 98:6384−6389) 、本発明者らはSCN2Aのコード領域も分析した。これら4人(患者2、5、8及び9)のSMEI患者のSCN2Aコード領域には、変異は検出されなかった。
【0062】
SCN1A中の変異及び患者の詳細な臨床症状は、Neurologyのウェブサイト(go to www.neurology.org) に記載した。比較の便宜のため他の文献と一致させた番号表示も含めてある。
【0063】
【発明の効果】
本発明は、SMEIの診断及び予後診断の直接的進歩をもたらし、この難病の新治療法の開発に多大な貢献をする。また、本発明は、SMEIの分子病理学的な原因解明のための、短縮NaV1.1(電位依存性ナトリウムチャネルα−サブユニットI型)の機能及び動物モデルによる研究の突破口になると期待される。
【0064】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、電位依存性ナトリウムチャネルα−サブユニットI型(NaV1.1)中の、変異部位いくつかを示す模式図である。
Claims (14)
- 配列番号1のcDNA塩基配列中における、下記(1) ないし(19)に対応する領域の変異の少なくとも一つを有する塩基配列またはその相補配列からなる単離されたヒトSCN1A遺伝子DNA、またはそれらのDNAに相補する単離されたmRNA:
(1) 1213位のArgのナンセンス変異
(例えば、3637のC → T);
(2) 1408位のTrpのナンセンス変異
(例えば、4223のG → A);
(3) 1807位からのMet Phe Tyr Gluを削除する変異
(即ち、5419からの12塩基の欠失);
(4) エクソン4のスプライス部位の変異
(例えば、GT → AT);
(5) 952位のTrpのナンセンス変異
(例えば、2855のG → A);
(6) 1284位のTrpのナンセンス変異
(例えば、3852のG → A);
(7) 946位のArg以後にフレームシフトをおこす変異
(例えば、2835のCの欠失);
(8) 177位のGly以後にフレームシフトをおこす変異
(例えば、530のGの欠失);
(19)732位のGln以後にフレームシフトをおこす変異
(例えば、2196への8塩基挿入);
(10)1765位のPheのナンセンス変異
(例えば、5292へのTの挿入);
(11)103位のSerをGlyに変更する変異
(例えば、307のA → G);
(12)1685位のAlaをAspに変更する変異
(例えば、5054のC → A);
(13)112位のThrをIleに変更する変異
(例えば335のC → T);
(14)1231位のSerをArgに変更する変異
(例えば、3693のT → A);
(15)985位のAsnをIleに変更する変異
(例えば、2954のA → T);
(16)1831位のPheをSerに変更する変異
(例えば、5492のT → C);
(17)265位のGlyをTrpに変更する変異
(例えば、793のG → T);
(18)960位のMetをValに変更する変異
(例えば、2878のA → G);
(19)1812位のTrpをGlyに変更する変異
(例えば、5434のT → G) - 請求項1に記載したDNAまたはRNAの一部であって、(1) 〜(19)のいずれか1つの変異を含む10〜100個の連続した塩基配列からなるDNA、RNAまたはその混合物。
- 請求項1に記載した(1) 〜(19)のいずれか1つの変異の前後に対応するヒトSCN1A遺伝子の領域を含む10〜100個の連続した塩基配列またはその相補配列からなるDNA断片。
- 請求項1に記載した(1)〜(19)のいずれか1つの変異の前後に対応するヒトSCN1A遺伝子の領域をそれぞれ含む、連続した塩基配列またはその相補配列を有する一対のDNA断片からなるプライマー対。
- 各々が、10〜100個の連続した塩基配列を有する一対のDNA断片からなる請求項4のプライマー対。
- 各々が、20〜100個の連続した塩基配列を有する一対のDNA断片からなる請求項5のプライマー対。
- SMEIの素因を有する、またはSMEIであると思われるヒトの血液または組織試料から調製したゲノムDNA抽出物またはcDNAを用意し、
請求項4、5または6のプライマー対の一対ないし全部の対を用い、上記DNAを鋳型としてDNAの増幅を行ない、
増幅したDNAの塩基配列を解析して、増幅したDNAが請求項1の(1) 〜(19)のいずれか1つの変異を含むか否かを調べ、そして
変異が存在する場合は、当該ヒトの血液または組織試料に含まれるSCN1A遺伝子にSMEIに関連する変異が存在すると判断する方法。 - SMEIの素因を有する、またはSMEIであると思われるヒトの血液または組織試料から調製したゲノムDNA抽出物またはcDNAを用意し、
請求項4、5または6のプライマー対の一対ないし全部の対を用い、上記DNAを鋳型としてDNAの増幅を行ない、そして
当該ヒトの血液または組織試料に含まれるSCN1A遺伝子にSMEIに関連する変異が存在する場合に特異的に、前記試料中のDNAを増幅させる方法。 - SMEIの素因を有するまたはSMEIであると思われるヒトの血液または組織試料から調製したゲノムDNAまたはcDNAを用意し、
必要なら該DNAを増幅させ、
該ゲノムDNAまたはcDNAに、請求項2のDNAまたはその混合物をプローブとして接触させ、
該ゲノムDNAまたはcDNAがSMEIに関連する変異を含む場合に特異的に、プローブとのハイブリダイゼーションを生じさせる方法。 - 請求項4、5または6に記載したプライマー対の一対ないし全部の対を含む、SMEIの素因を有するか否かまたは熱性痙攣がSMEIの発作であるか否かを診断するためのキット。
- 請求項8の方法で増幅させた、(1) 〜(19)の少なくとも1つの変異を含むヒトSCN1A遺伝子断片。
- 請求項1の変異を含むヒトSCN1A遺伝子DNAまたは請求項11の変異を含むヒトSCN1A遺伝子断片がコードするペプチドを、哺乳類動物に投与して、該動物の抗体産生細胞を採取し、該細胞をミエローマ細胞と融合させ、融合細胞から目的の抗体を産生するハイブリドーマをクローニングすることからなる、(1) 〜(19)のいずれか1つの変異に特異的な抗体を産生するハイブリドーマの製造方法。
- 請求項12のハイブリドーマが産生する、(1) 〜(19)のいずれか1つの変異を含むヒトSCN1A遺伝子がコードする蛋白質に特異的なモノクローナル抗体。
- 請求項13に記載したモノクローナル抗体を含む、SMEIの素因を有するか否かまたは熱性痙攣がSMEIの発作であるか否かを診断するためのキット。
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US8916743B2 (en) | 2010-01-29 | 2014-12-23 | National University Corporation Okayama University | Method for assessment of potential for development of dravet syndrome and use thereof |
-
2002
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