JP2004071482A - マイクロリレー - Google Patents
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Abstract
【解決手段】第1固定接点及び固定電極を有する第1固定基板と、第2固定接点を有し前記第1固定基板に対向して配置した第2固定基板と、前記第1、第2固定基板の間に配置した可動板とを備え、前記可動板は枠部と該枠部に対して移動可能に設けた可動部とを含み、前記枠部は前記第1、第2の固定基板間で密封接合され、前記可動部は前記固定電極と対向する可動電極及び前記第1、第2固定接点に対応する位置に可動接点を備え、前記可動電極と前固定電極との間で生じる静電引力に基づいて前記第1、第2固定基板間を移動する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明はいわゆるマイクロリレーに関する。マイクロリレーは半導体製造技術を応用して製造できる。マイクロリレーは従来型のリレーと比較して小型化を促進できる等、多くの利点があり最近、注目されているデバイスの1つである。
【0002】
【従来の技術】
マイクロリレーの一般的な構造は、固定基板に対向するように可動板を備えている。マイクロリレーには、固定基板と可動板との間で所定電圧を供給したときに発生する静電引力(静電気力)を利用するものがある。このようなマイクロリレーでは、静電引力で可動板を固定板側に変移させることで接点を導通させる。また、電圧供給を解除することで接点の遮断を行う。この種のマイクロリレーについては、従来から複数の提案がある。例えば、特開平5−242788号公報では一対の固定基体の間に可動板を配設したマイクロリレーが開示されている。この公報では、微小なマイクロリレーが温度変化による歪を受け易いこと、接続電極の形成が一般に困難であること等を課題とし、これを解決した構造を備えている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報で開示する技術は、配線を外部に引出すためにマイクロリレー内部の密封性が確保されていない。リレーの特性として接点オン(ON)時での接触抵抗が低く安定していることが要求される。これは、接触抵抗が接点周囲の雰囲気に影響を受けので、密封構造となっていることが望ましいからである。特に、マイクロリレーは半導体製造技術を用いてウェハ上にマイクロチップを多数形成し、これらをダイシングして個別化することで大量生産できるという大きなメリットがある。よって、このダイシングの際に用いる水や磨耗粉から、マイクロリレー内部の微細な駆動部や接点等を守る必要がある。しかし、特開平5−242788号公報で開示するマイクロリレーでは、ダイシング前に内部の密封構造が確保されていない、よって、好ましいリレー特性を保証できないという問題がある。
【0004】
マイクロリレーは上記のように密封構造が好ましい他、さらに以下に列挙するように解決すべき複数の課題があり、これらの課題をより多く解決した構造のマイクロリレーであることがより望ましいと言える。
【0005】
▲1▼ マイクロリレーの駆動方式として静電気力を用いることは、構造が比較的簡単で低消費電力を実現できるという利点がある。その際、接点間距離をできる限り大きく取ることがアイソレーション(開離接点間での信号漏洩量を抑制すること)を向上させる上で重要である。ところが、可動板を駆動させる静電引力は、印加電圧の2乗に比例し、電極間距離の2乗に反比例する。さらにマイクロリレーで実用上使用できる駆動印加電圧(10V程度まで)やマイクロリレー自体の大きさを考慮すると、接点間距離は数μm程度と極めて小さくなる。よって、マイクロリレーに関して、接点間距離を大きく取った構造とすること自体が困難である。なお、ここでの接点間距離とは固定側の接点と可動板の接点とが開離したときの距離である。
【0006】
▲2▼ マイクロリレーは静電引力、接点サイズ、接点間距離の小ささから従来のリレーのような電力切替えよりも微弱な信号切替えに向いている。このようにマイクロリレーは、信号ラインを簡単に形成でき接点も小さいので、高周波信号切替えリレー(高周波リレー)に適している。高周波リレーでは特にアイソレーション特性を向上させることが重要であり、そのためには開離接点間の静電容量を小さくすることが必要である。このように接点間の静電容量抑制には、対向接点の面積を小さくし、前記と同様に接点間の距離を大きく取ることが有効である。
【0007】
しかし、接点の対向面積を小さくすると接点の接触面積が小さくなるので接触抵抗が大きくなってしまう。また、接点間距離は前述したように大きく取ることができない。よって、満足できる高周波特性を備えたマイクロリレーを設計することは容易ではない。
【0008】
▲3▼ さらに、静電引力を用いるマイクロリレーでは接点とは別に駆動用の電極が固定基板及び可動板に存在する。この電極間距離が小さくなれば成る程、静電引力に基づく発生力が大きくなる。そのために、接点部以外で可動板が固定電極と接触し、電極間電荷残留(チャージアップ)により、可動板が固定電極に張付いて(強固に密着して)動かなくなるとう事態が発生する場合がある。このような事態になると、マイクロリレーとしての機能を果たせなくなる。
【0009】
▲4▼ またさらには、マイクロリレーで用いる静電気力に基づいた接触力は小さい。しかし、リレー一般としては、接触力を大きく取り接触抵抗を小さく安定化させることが望ましい。よって、低圧駆動ではあるが大きい接触力があるマイクロリレーが求められるが、相反する要求でありこのようなマイクロリレーの実現は困難である。さらに、マイクロリレーに関しては、電極間距離の精度を高めて製造上の歩留まりを向上させることが求められ、ワイヤボンディング等の外部接続を廃止してパッケージサイズの小型化や信号ラインでの低抵抗化について配慮した構造が求められている。
【0010】
したがって、本発明の主な目的はアイソレーション特性を備えると共に密封性にも優れたマイクロリレーを提供すること、さらには上記他の課題も合わせて解決できるより好ましい構造を備えたマイクロリレーを提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的は請求項1に記載の如く、第1固定接点及び固定電極を有する第1固定基板と、第2固定接点を有し前記第1固定基板に対向して配置した第2固定基板と、前記第1、第2固定基板の間に配置した可動板とを備え、
前記可動板は、枠部と該枠部に対して移動可能に設けた可動部とを含み、
前記枠部は前記第1、第2の固定基板間で密封接合され、
前記可動部は、前記固定電極と対向する可動電極及び前記第1、第2固定接点に対応する位置に可動接点を備え、前記可動電極と前固定電極との間で生じる静電引力に基づいて前記第1、第2固定基板間を移動するマイクロリレーにより達成される。
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、可動電極と定電極との間で生じる静電引力に基づいて、可動部が第1、第2の固定基板の間を移動することにより接点の閉成、開離が行われる。この構造のマイクロリレーは半導体製造技術を用いて微小に形成できる。そして、前記枠部及び固定基板は密封接合されているので、可動部の移動する空間を外気から遮蔽することができる。この空間には接点、電極等が露出しているので汚染や腐食を防止することができる。よって、ウェハ上に本マイクロリレーを多数形成して、ダイシングするような工程があっても、信頼性あるマイクロリレーとして提供できる。密封接合は、第1、第2固定基板と枠部とを陽極接合されることで簡単に実現できる。また、第2固定基板側に第2固定接点を備えているので、マイクロリレーの接点構成の多様化を図ることができる。
【0013】
また、請求項2に記載するように、請求項1に記載のマイクロリレーにおいて、前記可動部が前記静電引力を受けていないときに、前記可動接点が接触する位置に前記第2固定接点が配置されている構造とすることが望ましい。本発明によると、可動部を駆動する電圧の供給がないときには可動接点が常に第2固定接点と接触することになる。すなわち、本マイクロリレーは電圧供給のない非駆動時にも、可動接点と第2固定接点とを接続できる構造となるので従来と比較して接点構成の自由度を増すことができる。
【0014】
そして、請求項3に記載のように、請求項1又は2に記載のマイクロリレーにおいて、前記第1固定接点は信号接続用の接点であり、前記第2固定接点はグランド接続用の接点とすることができる。本発明によれば、可動部が静電引力を受け可動接点が信号用の第1固定接点に接触したときに信号ラインはオン状態となる。その逆に可動部が静電引力を受けていないオフ状態であるときには、可動接点がグランド接続用の第2固定接点に接触する。このような構造であれば、オフ時に必ず可動接点がグランド接続された第2固定接点に接触するので、可動接点と第1固定接点との静電容量結合を切ることができる。そのため、可動接点と第1固定接点との距離を短くすることができる。よって、可動部を駆動するための駆動電圧を低く抑制することができる。また、オフ時には可動接点がグランド接続されるので接点距離を短くしてもアイソレーションを向上させることもできる。本発明のマイクロリレーは低電圧駆動を実現しつつ、アイソレーションの向上も図った構造を実現している。
【0015】
また、請求項4に記載のように、請求項1又は2に記載のマイクロリレーにおいて、前記第1、第2固定接点は、共に信号接続用の接点として採用してもよい。本発明によると、信号ラインを2系統にできるので、接点構成を多様化することがきる。例えば2つのリレーを配置した部分に本マイクロリレー1つで対応できる。
【0016】
また、請求項5に記載のように、請求項1又は2に記載のマイクロリレーにおいて、前記第1固定基板の固定電極が前記固定接点よりも高く形成してもよい。本発明では、固定電極の高さが十分にあるので、可動部下に可動接点が突出した状態でも可動電極と固定電極との電極間距離を狭めることができる。よって、駆動電圧を抑制できる。また、可動接点の高さと固定接点の高さを調整することで、可動電極と固定電極とが接触することがないように調整することもできる。
【0017】
また、請求項6に記載のように、請求項1又は2に記載のマイクロリレーにおいて、前記第1固定接点が片持ち梁状に形成してもよい。本発明では、第1固定接点が片持ち梁状であるので、静電引力により可動部が第1固定基板側に吸引されたときに可動接点が第1固定接点を押すので梁が撓む。その一方、静電引力が無くなった時(オフ時)には撓んだ梁が元に復帰しようとするので、可動接点を押し返す。よって、オフ時に可動接点を第1固定接点から確実に開離させることができる。
【0018】
また、請求項7に記載のように、請求項1又は2に記載のマイクロリレーにおいて、前記可動接点が複数並設され、前記第1固定接点は前記可動接点の数に対応して分岐された構造としてもよい。本発明では1つの第1固定接点が複数の可動接点に接触できるように分岐されている。よって、接点の接触信用性が向上する。
【0019】
また、請求項8に記載のように、請求項1又は2に記載のマイクロリレーにおいて、前記可動接点が複数並設され、該可動接点の数に対応して独立の第1固定接点が前記第1固定基板に並存させた構造としてもよい。この構造では、複数の可動接点と同数の独立第1固定接点が存在する。本発明によると、接点の接触信用性が向上すると共に、信号ラインが複数存在することになるので設計の自由度も増す。
【0020】
また、上記目的は、請求項9に記載のように、第1固定接点及び固定電極を備えた第1固定基板と、第2固定接点を備え前記第1固定基板に対向して配置した第2固定基板と、前記第1、第2固定基板の間に配置した可動板とを備え、
前記可動板は枠部と可動部とを含み、可動部は前記第1、第2固定基板の表面対して垂直方向に移動可能とする弾性部材を介して前記枠部に接続され、
前記枠部は前記第1、第2の固定基板間で密封接合され、
前記可動部は、前記固定電極と対向する可動電極及び前記第1、第2固定接点に対応する位置に可動接点を備え、前記可動電極と前固定電極との間で生じる静電引力に基づいて前記第1、第2固定基板間を移動するマイクロリレーによっても達成できる。
【0021】
請求項9に記載の発明によれば、枠部と可動部との間に弾性部材が存在するので、可動部の移動が保証される。また、第1、第2固定基板及び可動板は密封接合されているので、可動部の移動する空間を外気から遮蔽することができる。
【0022】
そして、請求項10に記載のように、請求項9に記載のマイクロリレーにおいて、前記可動部が前記静電引力を受けていないときに、前記可動接点が接触する位置に前記第2固定接点が配設されていることが望ましい。請求項10の本発明では、弾性部材が可動部を当初の位置に復帰させると常に可動接点と第2固定接点とを接触させることができる。
【0023】
また、請求項11に記載のように、請求項9又は10に記載のマイクロリレーにおいて、前記弾性部材は複数のヒンジバネであり、前記可動部は対称位置に設けたヒンジバネで前記枠部に接続されている構造とすることができる。本発明は半導体製造で用いられている薄膜形成、薄膜加工技術を応用して実施できる。例えば、RIE(リアクティブ イオン エッチング)等のエッチング技術を用いることができる。本発明によると可動部の移動をスムーズにすることができる。
【0024】
また、請求項12に記載のように、請求項9又は10に記載のマイクロリレーにおいて、対向する位置に配置された前記ヒンジバネのバネ係数が異なるように設定してもよい。本発明によると可動接点が固定接点に対して擦るように接触することになる。よって、接点表面を新しい状態に維持することができる。
【0025】
また、請求項13に記載のように、請求項9又は10に記載のマイクロリレーにおいて、前記枠部及び可動部の少なくとも一方に可動部の面内方向での移動を規制するストッパを備えている構造としてもよい。本発明によると、可動部の移動方向とは異なる方向への動きを抑制できる。
【0026】
また、上記目的は、請求項14に記載の如く、第1固定接点及び固定電極を備えた第1固定基板と、第2固定接点を備え前記第1固定基板に対向して配置した第2固定基板と、前記第1、第2固定基板の間に配置した可動板とを備え、
前記可動板は、枠部と該枠部に対して移動可能に設けた可動部とを含み、
前記枠部は前記第1、第2の固定基板間で密封接合され、
前記可動部及び固定電極の少なくとも一方に、電荷を除去するための電荷除去手段を備え、
前記可動部は、前記固定電極と対向する可動電極及び前記第1、第2固定接点に対応する位置に可動接点を備え、前記可動電極と前固定電極との間で生じる静電引力に基づいて前記第1、第2固定基板間を移動するマイクロリレーによっても達成することができる。本発明によるとマイクロリレー内に不要な電荷が残存した場合にこれを除去できるので、正確な動作を保証できる。
【0027】
また、請求項15に記載のように、請求項14に記載のマイクロリレーにおいて、前記可動部が前記静電引力を受けていないときに、前記可動接点が接触する位置に前記第2固定接点が配設されている構造としてもよい。本発明によると、さらに接点構成を多様化できる。
【0028】
また、請求項16に記載のように、請求項14に記載のマイクロリレーにおいて、前記電荷除去手段は、前記可動部と固定電極との間の配線上に設けた放電抵抗とすることができる。本発明によると、配線上に放電抵抗を設けるという簡単な構成で可動部或いは固定基板側に残る無用な電荷を除去できる。
【0029】
また、上記目的は、請求項17に記載の如く、第1固定接点及び固定電極を備えた第1固定基板と、第2固定接点を備え前記第1固定基板に対向して配置した第2固定基板と、前記第1、第2固定基板の間に配置した可動板とを備え、
前記可動板は、枠部と該枠部に対して移動可能に設けた可動部とを含み、前記可動部は前記第1固定基板に張付くことを防止するための凸部を備え、
前記枠部は前記第1、第2の固定基板間で密封接合され、
前記可動部は、前記固定電極と対向する可動電極及び前記第1、第2固定接点に対応する位置に可動接点を備え、前記可動電極と前固定電極との間で生じる静電引力に基づいて前記第1、第2固定基板間を移動するマイクロリレーによっても達成できる。本発明によると、凸部を設けたことにより、可動部が固定基板に張付くことが確実に抑制できる。
【0030】
また、請求項18に記載のように、請求項17に記載のマイクロリレーにおいて、前記可動部が前記静電引力を受けていないときに、前記可動接点が接触する位置に前記第2固定接点が配設されている構造としてもよい。本発明によると、接点構成を多様化できるようになる。
【0031】
また、請求項19に記載のように、請求項17に記載のマイクロリレーにおいて、前記凸部が電荷除去手段となっている構造であること望ましい。本発明では、可動部と固定基板との張付きを防止するストッパとして作用する凸部が、さらに電荷除去も行うのでより確実に張付きが抑制でき、静電気等の外乱を除いた高精度なデバイスとして提供できる。
【0032】
さらに、開示する本発明の範疇には請求項20に記載するように、請求項1から19のいずれかに記載マイクロリレーをベース上に固定し、樹脂材で封止したマイクロリレーディバイスも含むものである。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施例を説明する。
【0034】
〔第1実施例〕
図1から図3は、第1実施例に係るマイクロリレーについて示した図である。図1はマイクロリレーのチップ部を分解した斜視図、図2はこのマイクロリレーチップ105を完成品としてのマイクロリレーディバイス100に仕上げる様子を順に示した図、図3はマイクロリレーチップ5の断面構成例を模式的に示した図である。本第1実施例の説明では、まず図1及び図2を用いて実施例に係るマイクロリレーの概要を説明し、さらに図3を用いてより詳細に内部構成を説明する。
【0035】
本マイクロリレーチップ105は、第1固定基板となる下側の固定基板130(以下、単に固定基板130と称する)と第2の固定基板となる上側の固定基板110(以下、キャップ基板110と称する)との間に可動板120を挟んだ基本構造を有している。
【0036】
可動板120は例えばシリコン単結晶のような半導体材料を基材にして形成されている。この可動板120は、環状に形成した枠部125と、この枠部125に対しその枠内で上下動する可動部121とを含んでいる。可動部121が上下動する方向は、キャップ基板110及び固定基板130の板面に垂直な方向となる。可動部121を上下動可能とするために、可動部121は弾性変形するヒンジバネ122により枠部125に接続されている。図1で例示する枠部125は矩形であるがこれに限らず、線対称型の形状であればよい。この枠部125の対称位置に複数のヒンジバネ122を設けて可動部121が保持されている。本実施例では枠部125の四隅にヒンジバネ122を配置して可動部121を保持している。後述するように、可動部121には静電引力が作用して上下動される。その際、静電引力を有効に用いて可動部121が平行状態を維持しながら上下運動するように4本のヒンジバネ122が設定されている。
【0037】
可動部121には可動電極及び可動接点を含んでいる。図1の中段に示すように、可動部121は外観では2枚の長方形板の間に小さな突起123を介して接続したような形状を成している。この突起123は可動接点123であり、長方形板は可動電極である。可動部121の大部分は可動電極であり、その中央の一部に可動接点123が存在するという形態となる。よって、本実施例では可動部121が実質的に可動電極となっている。可動接点123と可動電極(可動接点123以外の部分)とは電気的に絶縁されている。例えば、可動部121の基材はシリコン単結晶であり、その表面に絶縁膜を形成して、可動接点123と絶縁されている。後に詳述するが、この可動接点123は可動部121に設けたスルーホールを介して、可動部121の表裏一体に存在している。この可動接点123自身或いは少なくともその表面は、金、白金、銅等の導電性材料で形成されている。
【0038】
キャップ基板110及び固定基板130は、上記可動板120を上下から挟み込むように配置される。より具体的にその構造を説明すると、可動板120の枠部125がキャップ基板110及び固定基板130に密封接合され、その内部に形成された空間で可動部121が上下動可能となっている。キャップ基板110及び固定基板130は、例えば基材がガラス等の絶縁性部材である。固定基板130は固定電極131及び第1固定接点133を有している。キャップ基板110は第2固定接点を有している。図1では固定基板130側の固定電極131と第1固定接点133とが示されているが、キャップ基板110の下面に存在する第2固定接点はここでは図示されていない。固定基板130の固定電極131と第1固定接点133は、可動部121の場合と同様に電気的に絶縁されている。
【0039】
固定基板130の固定電極131は可動電極として機能する可動部121に、またキャップ基板110及び固定基板130の第1、第2固定接点は可動部121の可動接点に対応するように配置されている。なお、図1で確認できる可動部121の上側の可動接点123はキャップ基板110に対応するものである。この図1では確認できないが可動部121は裏面側にも固定基板130に対応する下側の可動接点123を有している。上側の可動接点123と下側の可動接点123はスルーホールで接続されており一体である。固定基板130に関して説明すると、固定接点133は2つの電極が離間された構造である。可動部121が下がると、可動接点123が一対の固定接点133を導通させて信号ラインをオンするようになっている。
【0040】
また、本実施例ではキャップ基板110及び固定基板130の内部からの電気配線の引出しはスルーホール119を介して行うようになっている。よって、キャップ基板110及び固定基板130と枠部125との接合に気密性がある場合には内部の密封性を維持できる。なお、キャップ基板110上面には電極パッド117が形成されスルーホール119で内部側と導通している。電極パッド117は図示しないキャップ基板110の第2固定接点と接続されている。電極パッド117は製品化されたときに接地される。
【0041】
そして、図2に示すように、密封性を備えたマイクロリレーチップ105をベース基板140に固定し(B)、樹脂145で封止すれば好ましいマイクロリレーとなる(C)。なお、図2の(B)において可動板120は外部に接続パッド126を有しており、マイクロリレー105は段状になっている。接続パッド126はワイヤ146で電極パッド147に接続されている。上記ベース基板140に替えてリードフレームを用いてもよい。
【0042】
ところで、キャップ基板110及び固定基板130と可動板120の枠部125とを気密性を持って密封接合させた構造は、例えば可動板120を単結晶シリコンとし、キャップ基板110及び固定基板130にガラスを用いることにより実現できる。シリコンとガラスとは陽極接合により簡単かつ強固な接合を得ることができる。陽極接合は所定温度以下で平坦なガラスとシリコンの面を接触させ、ガラス側をマイナス(−)極、シリコン側をグランド(GND)に接続して、直流高電圧を印加する接合方法である。キャップ基板110及び固定基板130用のガラスとしてはパイレックス(登録商標)ガラスを用いることが推奨される。このガラスはシリコンと熱膨張係数が近いので熱的にも安定である。シリコンの他、金属を用いても陽極接合を行うことが可能であるので、可動板120の枠部125に陽極接合できる金属を用いてもよい。この陽極接合では、接着剤や接合面の一部を溶融することなどが必要でない。よって、設計した寸法の精度を高くすることができる。マイクロリレーでは可動部121と固定基板110、130との間(ギャップ)の寸法精度が高いことが望ましいので、陽極接合による構造はこのような要求に応えることができる。なお、陽極接合による接合時には酸素ガスが発生する。密封後の内部に酸素ガスが残留していると、内圧の上昇によりリレー動作への影響や密封破壊の原因となることも想定される。よって、陽極接合は不活性ガス内の減圧環境下で実行することが望ましい。
【0043】
図2で(A)の状態から(B)のベース基板140上にマイクロリレーチップ105を接続する際には、フィリップチップ接合を用いるとワイヤボンディングよる構造と比較してマイクロリレーの小型化を図ることができる。また、後述するがキャップ基板110及び固定基板130と可動板120で共用する接続線として外周に溝状のサイドキャスティングラインを形成することによっても小型化を図ることができる。
【0044】
図3は、図1及び図2で示したマイクロリレーチップ105の断面構成を模式的に示した図である。この図3では、図1及び図2で説明したマイクロリレーチップ105内の構成部の位置関係が確認し易いように模式的に示している。例えば図1では一対の固定接点133は各々が左右両端まで延在しているが、固定電極131を表すために短く表示している。この図を用いてさらに詳細に本実施例のマイクロリレーを説明する。この図ではキャップ基板110及び固定基板130並びに可動板120の構成が詳細に確認できる。この図3には、図1及び図2では確認できなかったキャップ基板110の第2固定接点113が示されている。
【0045】
下側の固定基板130の固定電極131と実質的に可動電極として機能する可動部121は対応する位置に形成されている。また、固定基板130の第1固定接点133とキャップ基板110の固定接点113は可動接点123に上下で対応する位置に形成されている。前述したように固定基板130側に設けた一対の第1固定接点133は信号ライン用の接点であり、可動接点123が降下して接触したときに離間している第1固定接点133を導通させる。これに対し、キャップ基板110側の第2固定接点113は1つである。この第2固定接点113は電極パッド117を介してグランド(GND)に接続されている。
【0046】
特に、本実施例の第2固定接点113は、固定電極131側に静電吸引されていない可動接点123と接触する位置となるように配設されている。すなわち本マイクロリレーでは、可動部121と固定電極131とが電気的に導通されていないときには、ヒンジバネ122により可動部121が初期状態に維持される。このように可動部121が初期位置にあるときの可動接点123が接触する位置に、第2固定接点113が配置されている。よって、駆動電圧の供給がオフとされて可動接点123が下側の第1固定接点133から開離したときには、上側の第2固定接点113と接することになるので静電容量結合を確実に解除できる。このような構成を採用することで接点間のアイソレーションを向上させることができる。そのために、図3で確認できるように、可動部121の両面に形成される可動接点123はスルーホール119を介して一体化されている。
【0047】
また、固定基板130の固定電極131は、可動電極として機能する可動部121との間で所定電圧が印加されるようになっている。固定電極131の各々はスルーホール119を介して裏面側に引出されている。可動板120は前述したように例えばシリコンで形成され、ここに不純物をドーピングさせて導電性が付与されている。なお、スルーホール119の内部は導体で充填若しくは内壁に導体メッキが施されている。よって、固定基板130及び可動板120の枠部125で形成する内部空間の密封が破壊されない構造が確保されている。
【0048】
この図3では、可動板120と固定電極131の接続線は図示されていないが、スイッチを介して導通及び遮断ができるようになっている。
【0049】
可動板120は枠部125及び可動部121がヒンジバネ122を含んでいるが、これらはシリコンを基材にして一体に形成することができる。シリコンに不純物をドープしておくことで、枠部125から可動部121の導電性も簡単に確保できる。ただし、可動部121の構成は係る形態に限定すべきものではなく、例えばその表面に金属製の電極を形成した形態でもよい。なお、可動接点123と電気的な絶縁を形成するために、可動部121の表面には絶縁膜129が形成されている。
【0050】
そして、先の図1で確認できるように、可動部121は枠部125の四隅に設けたヒンジバネ122により上下動可能に支持されている。より具体的には、可動部121が、上記固定電極131との間で電圧が印加されると静電引力作用により固定基板130側に移動する。すなわち、静電引力により、可動部121は電圧供給のない初期位置と固定基板130との間を上下動する。その際に、可動接点123が下降したときには固定基板130の第1固定接点133と接触し、可動部121が初期位置にあるときには可動接点123はキャップ基板110の第2固定接点113と接触するという状態が形成できる。よって、信号ラインの固定接点133に対して可動接点123が接触して閉成及び離れて開離するというリレーの動作を実現する。
【0051】
図4及び図5は、前記第1実施例の変形例について示した図である。図1〜3では各基板110、130において外部への配線の引出しをスルーホール119により行っていた。しかし、各基板からの電気配線の引出しはスルーホールを用いず、基板110、130と可動板の枠部125との接合面の平坦性が確保されるように一致させて配線を埋め込んだ構造としてもよい。本変形例はこのような構造例を示している。
【0052】
図4は可動板120と固定基板130との間で埋め込み配線を用いた場合の分解斜視図、図5は図4で示すマイクロリレー105を側部断面で模式的に示している。図4で固定電極131からの引出し配線136及び第1固定接点133からの引出し配線137は、共に固定基板の表面と同一になるように埋め込まれている。このように固定基板130の表面を平坦にしておくことで、先に説明したと同様の陽極接合を行うこと内部の密封性を確保してマイクロリレーを製造できる。なお、この構造を採用する場合には引出し配線136、137が接触する枠部125に、固定基板130との電気的絶縁を確保するために絶縁膜127を形成することが必要である。キャップ基板110にいても同様の配線構造を採用することができる。
【0053】
また、図5ではより好ましい一つの形態として、可動部121の下面の一部に下方に突出する凸部124を備えている。この凸部124はストッパとして機能している。可動部121が下に移動して可動接点123が第1固定接点133と閉成した後に、さらに可動部121が静電引力により更に引き寄せられる場合があってもこのように凸部124を設けることで可動部121と固定電極133とが張付くことを防止できる。図5では上側の凸部124に対応した位置の固定電極131に凹部135が形成されている。この場合、少なくとも凸部124の高さは凹部135の深さより大きくなるように形成して、可動部121が固定電極131と強固に密着することが抑制するようにしておくことが望ましい。なお、固定電極131側に上記のように凹部を設けず、比較的低い凸部124を設ける形態としてもよい。
【0054】
図6は、図5で示した凸部124を備えた第1実施例のマイクロリレーを作動させた様子を示した図である。同図にはマイクロリレーを駆動させる駆動回路160が示されている。スイッチ165を接点161と接続すると、固定基板130の固定電極131と可動板120側間に電圧が生じる。なお、図6では、上段には可動板120に電圧を印加させない初期状態を示し、下段には可動板120に電圧を印加させた状態を示している。
【0055】
固定基板130の固定電極131は予めGND(グランド)電位にされている。図6の下段に示すように、可動板120を正極電位にすると可動部121は固定電極131側に引き付けられる。可動接点123が第1固定接点133と接触する。可動接点123が第1固定接点133に接触した後も、可動部121は固定電極131によりさらに大きな力で引き付けられる。よって、図示のように可動部121は撓みを生じ可動接点123と第1固定接点133との接触力がさらに向上する。従って、接点の接触抵抗を低減することができる。
【0056】
また、本実施例では好ましい形態として可動部121の表面に、ストッパとして機能する凸部124が形成されているので、可動部121と固定電極131との面接触を確実に防止できるようになっている。よって、固定部121が固定電極131に張付くという問題を生じない。なお、本実施例では可動部121の表面を絶縁膜129で被覆しているので、可動部121が固定電極131に接触してもショートの問題はない。しかし、凸部124で可動部121と固定電極131との接触を確実に防止できるようにすれば、この部分の絶縁膜を省略することが可能である。
【0057】
一方、図6の上段に示すように、スイッチ165を切替えて接点161との接続を切ると、可動部121は初期位置に復帰して可動接点123は第2固定接点113(GND接点)と接触する。従って、可動接点123と第1固定接点133との間の静電容量が小さくなる。よって、接点間の高周波信号の漏れを小さくできる。すなわち、本マイクロリレーではアイソレーションを向上させることができる。
【0058】
〔第2実施例〕
図7は、第2実施例のマイクロリレーについて示した図である。第1実施例の可動板120はエッチング処理により形成されていた。可動板120の枠部125の高さは前述した接点ギャップを規定することになるので、高精度に加工することが望ましい。本第2実施例はスペーサを用いてギャップを形成した場合のマイクロリレーを例示するものである。なお、本実施例のマイクロリレーの基本構成は前述した第1実施例の構造と同様であるので、同じ部位には同一の符号を付すことで重複する説明は省略する。
【0059】
本実施例の枠部125はスペーサ128を用いて形成されている。このスペーサ128は多結晶シリコン(ポリシリコン)や金属を堆積させることで形成できる。堆積には、CVD(Chemical Vapor Deposition)などの方法を採用できる。このように形成したスペーサ128も陽極接合することできるので、本実施例でも内部密封型のマイクロリレーを製造できる。エッチング処理によって高い寸法精度でギャップを形成できるが、本実施例のようにスペーサを用いた場合にも同様にギャップを形成することもできる。一般にエッチング処理には時間を要するので、スペーサによりギャップを用いてギャップを形成する本実施例によると、工程時間の短縮化を図ることができる。
【0060】
〔第3実施例〕
図8は、第3実施例のマイクロリレーについて示した図である。本実施例は固定基板の第1固定接点を片持ち梁の形状にした点に特徴がある。本実施例でも第1実施例のマイクロリレーと同様の部位には同一の符号を付している。これ以後の実施例についても同様とする。なお、この図8では特徴的部分を図示しており、キャップ基板110側の第2固定接点等の構成は図示を省略している。
【0061】
本実施例の第1固定接点133は片持ち梁状に形成され、自由端側に降下した可動接点123が接触する構造となっている。よって、上段に示す初期状態から駆動電圧が供給されて静電引力を受けた可動部121が下降すると、可動接点123が第1固定接点133の自由端側を押し下げながら接触してオン状態とする。この後、駆動電源が遮断されたときには、変形した第1固定接点133が復元しようとするので可動接点123を押し返す。よって、駆動電源がオフとされたときにはヒンジバネ122の戻り力に加えて、片持ち梁計形状とされた第1固定接点133からの復元力が加わるので、接点の開離力が高くなる。よって、本実施例のマイクロリレーでは、オフ時での接点開離を確実に行える。
【0062】
〔第4実施例〕
図9及び図10は、第4実施例のマイクロリレーにいて示した図である。本実施例は、キャップ基板110及び固定基板130並びに可動板120で共用する配線路を設けた点に特徴があるマイクロリレーである。図9に示す本実施例のマイクロリレーチップ105もキャップ基板110と固定基板130の間に可動板120を挟んで陽極接合されて製造される点は同様である。しかし、同図の矢印Xで示すように各板110、120、130の周形状が整いすっきりとした外観となっている。そして、本実施例の場合も固定基板130及びキャップ基板110の内部側から電気配線は各々スルーホール119により反対側(外側)に取り出されている。この構成は第1実施例と同様である。
【0063】
しかし、本実施例のマイクロリレー105は、図10に示すように、外周部にキャップ基板110及び固定基板130と可動板120を接続する三層貫通の共通配線路(サイドキャステレーション)148が形成されている。なお、図10の上段に示したマイクロリレー105は右側にその裏面側を示している。この裏面側は固定基板130の底面が示される。この底面には固定基板130のグランドパッド151、電極接続パッド152さらには可動板120との接続パッド155が示されている。また、ここには、後述する放電抵抗150が示されている。
【0064】
このマイクロリレーチップ105は、中段に示すように半田ボールなどでベース基板140にフィリップチップボンディングされてマイクロリレーアッセンブリを形成する。本実施例の構成を採用することで、ワイヤボンディングが不要となる。よって、図2の場合と比較すると明らかであるがワイヤボンディングのためのベース基板面を小型化でき、ワイヤによる導体抵抗の増加を除去できる。さらに、マイクロリレーチップに接続パッドを設けるための段差を形成する必要がない。よって、3枚同じ外形状の板を貼り合わせて3層貫通するスルーホールを形成して導電性の材料を充填しておき、これをダイシング工程の際にカットすればサイドキャステレーション148を外部に備えた構造のマイクロリレーを簡単に作製できる。
【0065】
なお、本実施例のマイクロリレーチップの表面(キャップ基板裏面側)を適当な保護膜等で被覆すれば、ベース基板実装や樹脂モールドを成形することなくマイクロリレーチップ105の状態そのままで、実装可能なデバイスとなり得る。この場合には更なる小型化が促進できることが明らかである。
【0066】
〔第5実施例〕
図11及び図12は、第5実施例のマイクロリレーについて示している。図11はマイクロリレーのチップ部を分解した斜視図、図12はマイクロリレーチップ105の断面構成例を模式的に示した図である。第1実施例と比較した本実施例の特徴は、キャップ基板110側の第2固定接点113がグランド(GND)に接続される接点から信号ラインの接点に変更された点にある。
【0067】
即ち、固定基板130側の一対となっている第1固定接点133と同様に、キャップ基板110側の第2固定接点が113−1,113−2の一対となって形成されている。図11に示すようにこれに伴って、キャップ基板上の電極パッド117も117−1、117−2の一対に変更されている。本実施例のマイクロリレーは2系統の信号ラインを有するので接点構成を多様化でき、またリレーの数を低減できる。例えば、従来において1系統のリレーを2つセットしていた箇所では、本実施例のマイクロリレー1つで対応できる場合がある。
【0068】
図13及び図14は、上記第5実施例のマイクロリレーの変形例について示している。図13は固定基板130の第1固定接点133の一方とキャップ基板110の一方の第2固定接点113−1とを接続して共通にしている。このような構成を取ることによっても接点構成を多様化できる。さらに図14は前述したサイドキャステレーション148を利用して図13に示した配線を具現化する好ましい構造例である。固定基板130とキャップ基板110との共通配線を前述したサイドキャステレーション148で実現して端子の共通化を図っている。このようにサイドキャステレーションを用いると共通配線を簡単に作製できる。
【0069】
〔第6実施例〕
図15は第6実施例のマイクロリレーについて示している。このマイクロリレーでは可動部121を厚めに形成している。本実施例では可動部121が静電引力を受けて移動し、下段に示すように可動接点123が固定接点133に接触した後に撓むことがない剛性を備える程度に可動部121の厚みが設計されている。前述した第1実施例では可動部121が撓むことに配慮しており、可動電極121と固定電極131との張付きを防止するため好ましい変形例で凸部124を形成していた。しかし、本実施例の場合には可動部121が静電引力により撓むことがないので凸部を設ける必要がない。よって、第1実施例と比較して工程を簡素化できる。なお、本実施例の当然の構成として、可動接点123が第1固定接点133に接触したときに、可動部121が接触しない高さで固定電極131が形成されている。
【0070】
図16は上記第6実施例の改良例を示した図である。第6実施例のように可動板121の厚みを増すと円で囲んで示すヒンジバネ122の領域の剛性も増加することになる。しかし、ヒンジバネ122の剛性が可動部121と共に増すと、ヒンジバネ122のスチフネスが大きくなるため、可動部121が初期位置から下へ移動し難くなる。そこで、本改良例はヒンジバネ122の部分を可動部121より薄くしてスチフネスを小さくし、動き易くしている。本例によると、撓みを抑制した可動部121を確実に初期位置から下へ移動させることができる。
【0071】
〔第7実施例〕
図17は第7実施例のマイクロリレーについて示した図である。この実施例では可動板120のヒンジバネ122の部分に特徴を有している。(A)はヒンジバネ122がつづら折で折り返しをされる範囲TWを広くしてスチフネスを小さくした場合、(B)はヒンジバネ122で折り返し回数を増加させてスチフネスを小さくした場合を示している。このようにヒンジバネ122に改良を加えることによって可動部121の移動が円滑に行える。この構造は特に第6実施例の剛性を向上させた可動部121を上下動させるのに有効である。
【0072】
〔第8実施例〕
図18は、第8実施例のマイクロリレーについて示した図である。この実施例も可動板120のヒンジバネの部分に特徴を有している。(A)は4つのヒンジバネ122−1〜122−4を枠部125の4辺各々と接続して可動部121を保持する構造である。この構造によっても可動部121を上下動させることができる。しかし、この構造の場合、円内TERの部分での変移量が比較的大きくなる傾向があり、可動部121の円滑な上下動に支障が出る場合もある。
【0073】
そこで、(B)或いは(C)に示すように、枠部125の互いに対向する辺にヒンジバネ122を接続する。(B)では左辺にヒンジバネ122−1,122−4、右辺にヒンジバネ122−2,122−3を接続している。(C)の場合は上下の辺に同様に接続している。このようにヒンジバネを対称配置した構造とすると、可動部121のバランスが良くなるので、スムーズに上下動を行えるようになる。また、この構造の可動板120は安定性が増すので、第1実施例の変形例で示した凸部124の追加を考慮しなくとも良い。
【0074】
〔第9実施例〕
図19は、第9実施例のマイクロリレーについて示した図である。本実施例はヒンジバネのバネ係数のバランスを変更することで、可動接点と第1固定接点との間で極微小な摩擦を発生させるような構造を含んでいる。第1実施例の場合には可動部121の水平状態を維持しながら初期位置から下方へ移動させるようにしていた。しかし、本実施例では、積極的にヒンジバネのバネ係数を変更するようにした点で異なっている。図19で4つのヒンジバネ122−1から122−4は異なるバネ係数に設定されている。ヒンジバネ122の長さ、幅、厚さを適宜調整することでバネ係数を変更することができる。
【0075】
各ヒンジバネ122−1から122−4のバネ係数を異なるものとし、(A)で示す初期状態から静電引力を作用させると先ずバネ係数の小さい側が先導して動き、(B)で示すように可動部121の片側のみが固定電極131に強く吸引された状態となる。その後更に(C)で示すように徐々に可動板121と固定電極133との間の距離が小さくなりバネ係数の大きい側も吸引される。最終的には第1実施例の場合と同様に可動部121の両側が吸引された状態となる。しかし、状態(B)から(C)となる動作の途中では、可動接点123と第1固定接点133との接触時に僅かな擦れ(ワイピングと称される)が生じる。このとき、接点表面では僅かな擦れが生じるため、接点表面の新しい面が現れる。すなわち、接点同士の擦れ合いで接点表面に絶縁性の被膜が形成されることや、絶縁性の物質が付着することが抑制される、本実施例ではこのように常に新しい表面が形成された状態を保持できるので接触抵抗が安定する。その結果、マイクロリレーの信頼性が向上する。
【0076】
なお、ヒンジバネ122−1から122−4はバネ係数が全て異なるように設定してもよいが、ヒンジバネをグループに分けてグループ間でバネ係数を変更するようにしてもよい。例えば図18に示したヒンジバネ122−1、122−4とヒンジバネ122−2、122−3とでバネ係数が異なるように設定してもよい。
【0077】
〔第10実施例〕
図20は第10実施例のマイクロリレーについて示した図である。本実施例は固定電極131及び可動部121の剛性を高め、この両者の間で生じる静電引力を大きくできる構造例を示している。本実施例で示す可動部121は、第1実施例で示したものとは異なり一枚板となっている。この板の中央部に一対の打抜き穴118が形成されている。可動部121の裏面で、打抜き穴118の間の部分に可動接点123が形成されている。よって、第1実施例で示したように2枚の板を可動部123の位置で連結したような構造よりも剛性が高くなっている。また、可動部121の面積が増加するので、発生させる静電引力を大きくすることもできる。
【0078】
一方、固定基板130側では第1固定接点133の長さが短縮され、スルーホール119を介して裏面側に引出される配線に接続されている。この固定基板130は第1実施例の場合と比較して、第1固定接点133の長さを短縮し、固定電極131の面積が拡大されている。この構造によっても固定電極131の剛性を向上させ、可動部121に作用させる静電引力を増加させることができる。よって、本実施例では可動部121及び固定電極131の構造を堅牢にしつつ静電引力を大きくして駆動効率を高めたマイクロリレーを実現できる。
【0079】
なお、本実施例の固定電極131及び可動部121は何れか一方を採用した場合にも本実施例に準じた効果を得ることができる。
【0080】
〔第11実施例〕
図21は第11実施例のマイクロリレーについて示した図である。本実施例は固定電極131及び可動部121の電荷を除去する構造を具備したマイクロリレーである。図21はマイクロリレーを駆動する駆動回路160の周部構成を示している。(A)は放電抵抗が無いときに発生する可能性がある障害状態を示した図である。電源166がOFF状態になると固定電極131及び可動部121に電荷が残存する。これにより可動部121が保持される事態或いは漏れ電流により徐々に放電されて可動部121が初期位置に状態に戻るといった事態が生じる。さらに、残存する電荷の影響で可動部121の移動が不安定な状態となる場合もある。
【0081】
一方、(B)は、固定電極131と可動部121とを接続する配線上に放電抵抗150を設けた場合を例示している。この例の場合、固定電極131及び可動部121と並列に放電抵抗150が配設され、電源166−グランド(GND)間に放電抵抗150が存在した形態となる。このように電源166−グランド間に放電抵抗150が存在する(B)の場合、電源OFFとなったときに放電抵抗150を介して電流107が流れるので電荷が残らず可動部121を速やかに初期の状態に復帰させることができる。上記放電抵抗150として数100kΩ〜数MΩのものを用いることが好ましい。
【0082】
〔第12実施例〕
図22は可動部に設けた凸部に放電抵抗機能を付加した第12実施例のマイクロリレーについて示した図である。前述したように可動部121に設けた凸部124は、可動部121が固定電極131に張付くことを防止するストッパとして機能している。この凸部124が更に前述した放電抵抗としても作用すれば残留電荷を除去するので張付きをより効率的に防止できる。
【0083】
凸部124の表面には、例えばシリコンやポリシリコンに不純物をドーピングしたて抵抗を形成すればよい。図22は、可動部121が順次下に移動する様子を示している。電源がオフの初期状態(A)からスイッチ165が切替えられて、電源オンとなると可動部121が固定電極131に電気吸引される。この動作は、(B)の状態のように可動接点123が第1固定接点133に接触して閉成する。このとき下側にも受けた凸部124はまだ固定電極131に接触していない。さらに、可動部121が吸引されて凸部124が固定電極131に押付けられる。このとき凸部124は張付きを防止しつつ、可動部121とグランドとの間の放電抵抗として作用して電荷が残留することを防止する(C)。よって、接点閉成後の過度な静電吸引を低減できるので、可動部121の張付きを効果的に抑制できる。なお、本実施例の構造を採用する場合には時定数と可動部121の共振周波数を考慮し、振動が生じないように設計することが求められる。
【0084】
〔第13実施例〕
図23は、接点を複数個有する構造に改良した第13実施例のマイクロリレーについて示した図である。本実施例では可動部121の可動接点が123−1、123−2の2つとなっている。また、これに対応して固定基板130側に設けたそれぞれの第1固定接点133は分岐して略コ字状とされている。よって、本実施例の場合には接点構造が並列に複数存在するので一方の接点に不都合が生じたとしても信号ラインの接続、遮断を行うというリレーの機能を担保できる。図23では可動接点を2つとした場合を例示したが、もちろん3つ以上の複数としてもよい。また、図11及び図12に示した第5実施例のようにキャップ基板110の固定接点113を信号ライン用の接点とするような場合には、本実施例の構造をキャップ基板110の第2固定接点113にも同様に採用できる。
【0085】
図24は、上記第13実施例の変形例を示した図である。図23では2つの可動接点123−1、123−2に接触できるように1つの第1固定接点133を分岐した構造であったが、本例では第1固定接点133側も独立した2つの固定接点133−1、133−2としている。本構造の場合には信号ラインも独立して複数となるのでリレーの機能をより確実に担保できるようになる。
【0086】
〔第14実施例〕
図25は、第14実施例のマイクロリレーについて示した図である。本実施例は固定基板に形成する好ましい固定電極の構造を提案している。(A)及び(B)は比較のための構造例を示した図、(C)が本実施例の構造を示した図である。(A)では固定基板130の固定電極131と第1固定接点133が略同じ高さである。このように両者が同じ高さであると、固定電極131と可動電極として作用する可動部121との電極間距離が大きくなる。よって、所定の静電引力を得ようとする場合には高い電圧駆動が必要となる。この対処法として、(B)に示すように可動部121を掘り込んで可動接点123を上方に移動させた構造も考えられる。しかし、(B)の構造は加工が困難であり、しかも工程数が増すのでコストアップにもなる。
【0087】
そこで、(C)で示すように、本実施例では固定電極131の高さが第1固定接点133の高さより、高くなるように形成する。ここで、固定電極131と第1固定接点133の高さの差が、可動接点123の高さより僅かに小さいように設定することが望ましい。本実施例によると簡単な構造で、可動部121を確実に吸引できる。
【0088】
なお、本図では可動部121上側の絶縁膜やキャップ基板110側の構成は簡略化して示している。
【0089】
〔第15実施例〕
図26は、可動板120の好ましい配線構造を備えた第15実施例のマイクロリレーについて示した図である。本構造では、可動板120の配線を固定基板130にスルーホール119−2を設けて裏面側に引出す構造である。このスルーホール119−2は、可動板120の配線を固定基板130用のスルーホール119−1を形成するときに同時に形成することができる。よって、別途に可動板120用の配線を設ける場合と比較して工程を簡素化することができる。ここでは、固定基板130側にスルーホール119−2を設ける例を示したが、キャップ基板110側にスルーホール119−2を設けても勿論良い。なお、本図26では可動部周辺及びキャップ基板110側の構成は簡略化して示している。
【0090】
〔第16実施例〕
図27は好ましい可動板120を有する第16実施例のマイクロリレーについて示した図である。本実施例では、可動部121の外周と枠部125との間に所定の隙間157を確保し、可動部121の周部から枠部125の内面に向けて突出させた外周ストッパ158を複数設けている。このような構造であれば可動部121の横方向(可動部の面内方向)への動きを規制できる。この外周ストッパ158は可動部121と一体に成形してもよいが、弾性に優れた部材を付加すれば特に耐衝撃性にも優れた構造とすることができる。
【0091】
この外周ストッパ158は可動部121の周部の対称となる位置に設けることが望ましい。また、外周ストッパ158は部分的な凸部であるので、空気流が可動部121が上下動することの障害となることはない。また、可動部121と一体に形成する場合には工程の増加を伴うことなく簡単に形成できる。
【0092】
この図27では、可動部121側に外周ストッパ158を設けた例を示したが、枠部125側、或いは可動部121及び枠部125の双方に設けてもよい。
【0093】
なお、前述したマイクロリレーに関する複数の実施例に関して、図1の上段に示したようにキャップ基板110の表面(可動板120とは反対の面)全体に接地したグランドパッドを設けると、信号ラインのシールド性を向上させることができると共に、静電引力に及ぼす静電気等の外乱に対するシールド性も向上した誤動作のない構造とすることができる。図示は省略するが、マイクロリレーチップの積層構造の側面に、絶縁膜を介して金属層を設けた構造とした場合にもこれと同様の効果を得ることができる。また、前述した可動接点123及び第1固定接点133及び第2固定接点113は、例えば下層にAuを配した上にRh、Ru、Pdのいずれかで表層を形成した構造とすることが推奨される。下層のAuは所定のクッション効果を備え、接点表面には硬度の高い金属を有するので、張付き難い接点とすることができる。
【0094】
さらに、図28から図31を参照して、スペーサを用いてギャップを形成している第2実施例のマイクロリレーチップ105の製造工程を説明する。図28は固定基板130の製造工程、図29はキャップ基板110の製造工程、図30は可動板120の製造工程、図31はこれらを組み付けたマイクロリレーチップを完成するまでの製造工程を示している。これらの工程は半導体製造技術を使用しており、成膜、露光、エッチング等の技術が利用されている。
【0095】
図28に示した工程により、固定基板130が製造される。0.2〜0.4mm程度の厚みのガラス基板を準備する(▲1▼)。このガラス基板としてはパイレックス(登録商標)ガラスを用いることが推奨される。後述するように、可動板に単結晶シリコンを用いたときに熱膨張係数が近く、精度良く接合ができるからである。
【0096】
この基板に、スルーホール形成用の穴を設ける(▲2▼)。この様な穴はレーザ、サンドブラスト等を用いて作成することができる。この穴(スルーホール)にメッキ等を用いて導電性材料を充填する(▲3▼)。導電性材料として、例えば金、銅、アルミ等を用いることができる。
【0097】
さらに、スパッタリング法等により固定電極131、第1固定接点133を形成する(▲4▼)。これらを形成する材料としては、金、白金等を用いることができる。下層に金をひいてその上に白金系の元素Rh、Ru、Pd、Pt等を載せてもよい。特に可動接点と接する第1固定接点133は、耐磨耗がある白金系の金属を表面に有していることが望ましく、その下に弾性ある金が存在するとクッションとして機能したり、導体抵抗が小さくなるのでより好適な構造となる。ガラス基板上に固定電極131、第1固定接点133が形成されて、固定基板130となる。最下段▲5▼に示すように、固定電極表面にCVD等を用いてSi3N4等による保護膜を必要により、適宜形成してもよい。図29はキャップ基板110の製造工程を示している。キャップ基板110は図28で示した固定基板130の場合と比較して電極形成を省いて同様に製造できる。
【0098】
図30は可動板120の製造工程を示している。ただし、可動板120は固定基板130と接合されてから最終形態に加工されるので、図30では半完成状態までの工程を示している。まず、SOI基板が準備される(▲1▼)。このSOI基板は、厚い支持層171上にSiO2等による酸化層172を介して単結晶シリコン等による活性層173が積層された構造を有している。
【0099】
このSOI基板に可動接点123を形成するためのスルーホール119用の穴が形成される(▲2▼)。前述したように可動接点123は可動部121の両面に突出するので、スルーホール119を介して一体化されている。穴の周部をエッチングして可動接点123を形成できるように拡大する(▲3▼)。そして、活性層173に不純物をドーピングして導電性を付与する(▲4▼)。さらに、その表面にスパッタリング等により例えばSiO2の絶縁膜を形成する(▲5▼)。この絶縁膜は可動電極となる可動板121とその中に形成する可動接点123との電気的に絶縁するために形成している。
【0100】
その後、スルーホール119にメッキ法或いはスパッタリング法等を用いて導電性金属材料を充填して可動接点123の半分を形成する(▲6▼)。そして、可動板120の枠部125に相当する外環部分にギャップ形成用のポリシリコンを堆積させてスペーサ128を形成する。また、ストッパ用の凸部124もここで形成する。
【0101】
図31は、上記のように作製した固定基板130、キャップ基板110及び可動板120を積層状態に組み付けてマイクロリレーを製造する様子を示している。図31で、先ず、固定基板130上に半完成状態の可動板120を接合する(▲1▼)。図30に示した未完成の可動板120をひっくり返した状態にして固定基板130上に配置して、密封接合する。この接合には陽極接合を用いることが望ましい。固定基板130側にマイナス(−)、可動板120側をグランド電位として陽極接合すると、簡易に両者を密着させて接合できる。
【0102】
続いて、半完成状態にある可動板120の残り半分の構造を完成させる工程を継続する。その前に、まず支持層171、酸化膜172を除去する(▲2▼)。その後は図30で示したと同様の処理をここでも繰り返す。すなわち、反対側の可動接点123を形成するためにスルーホール119の上部を同様にエッチングし(▲3▼)、不純物をドーピングして導電性を付与する(▲4▼)。さらに、表面に絶縁膜を形成し(▲5▼)、可動接点の半分を形成して可動接点123の全体を完成させる(▲6▼)。さらに、枠部125に相当する部分に同様にポリシリコン等を堆積してスペーサ128を設ける(▲7▼)。
【0103】
この後、可動板120のスリット形成を行う。このスリット形成で枠部125と可動部121とが弾性のあるヒンジバネ122で接続された構造を作製する(▲8▼)。特に可動板120に単結晶シリコンを用いていれば、RIE処理により枠部125と可動部121とが、つづら折り状に形成したヒンジバネ122で接続された構造を簡単に形成できる。
【0104】
最後に、可動板120の上にキャップ基板110を載せて、固定基板130の場合と同様に陽極接合する。この陽極接合の際には、減圧雰囲気、より好ましくは不活性ガスの雰囲気で実行する。これにより、内部に不要なガスを残留させずにマイクロリレーを密封できる。よって、このように製造されたマイクロリレーチップをさらにダイシング工程で個片化しても、内部が影響を受けることが無いので信頼性のあるマイクロリレーチップを製造できる。このようなマイクロリレーチップは、さらに前記図2で示したものと同様の工程を経て製品としてのマイクロリレーディバイス100にされる。
【0105】
以上本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0106】
【発明の効果】
以上詳述したところから明らかなように、本発明のマイクロリレーは、半導体製造技術を用いて微小に形成できる。そして、前記枠部及び固定基板は密封接合されているので、可動部の移動する空間を外気から遮蔽することができる。この空間には接点、電極等が露出しているので汚染や腐食を防止することができる。よって、ウェハ上に本マイクロリレーを多数形成して、ダイシングするような工程があっても、信頼性あるマイクロリレーとして提供できる。また、第2固定基板側に第2固定接点を備えているので、マイクロリレーの接点構成の多様化を図ることができる。
【0107】
特に、第2固定接点をグランド接続しておき、電源オフ時には可動接点が第2可動接点に接触する構造としておくと、可動接点と第1固定接点との静電容量結合を確実に切ることができる。これにより、可動接点と第1固定接点との距離を短くすることができる。よって、可動部を駆動するための駆動電圧を低く抑制することができる。また、電源がオフの時には可動接点がグランド接続されるので接点距離を短くしてもアイソレーションを向上させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例のマイクロリレーのチップ部を分解した斜視図である。
【図2】図1のマイクロリレーチップを完成品としてのマイクロリレーディバイスに仕上げる様子を順に示した図である。
【図3】図1のマイクロリレーチップの断面構成例を模式的に示した図である。
【図4】第1実施例の変形例で、可動板と固定基板との間で埋め込み配線を用いた場合の分解斜視図である。
【図5】図4で示したマイクロリレーの側部断面を模式的に示した図である。
【図6】第1実施例のマイクロリレーを作動させた様子を示した図である。
【図7】第2実施例のマイクロリレーについて示した図である。
【図8】第3実施例のマイクロリレーにいて示した図である。
【図9】第4実施例のマイクロリレーにいて示した図である。
【図10】第4実施例のマイクロリレーについて示した図である。
【図11】第5実施例のマイクロリレーについて示した図である。
【図12】第5実施例のマイクロリレーについて示した図である。
【図13】第5実施例のマイクロリレーの変形例について示した図である。
【図14】第5実施例のマイクロリレーの変形例について示した図である。
【図15】第6実施例のマイクロリレーについて示した図である。
【図16】第6実施例の改良例を示した図である。
【図17】第7実施例のマイクロリレーについて示した図である。
【図18】第8実施例のマイクロリレーについて示した図である。
【図19】第9実施例のマイクロリレーについて示した図である。
【図20】第10実施例のマイクロリレーについて示した図である。
【図21】第11実施例のマイクロリレーについて示した図である。
【図22】第12実施例のマイクロリレーについて示した図である。
【図23】第13実施例のマイクロリレーについて示した図である。
【図24】第13実施例の変形例のマイクロリレーについて示した図である。
【図25】第14実施例のマイクロリレーについて示した図である。
【図26】第15実施例のマイクロリレーについて示した図である。
【図27】第16実施例のマイクロリレーについて示した図である。
【図28】実施例の固定基板の製造工程を示した図である。
【図29】実施例のキャップ基板の製造工程を示した図である。
【図30】実施例の可動板の製造工程を示した図である。
【図31】マイクロリレーチップを完成するまでの製造工程を示した図である。
【符号の説明】
100 マイクロリレーディバイス
105 マイクロリレーチップ
110 キャップ基板(固定基板)
113 第2固定接点
119 スルーホール
120 可動板
121 可動部、可動電極
122 ヒンジバネ(弾性部材)
123 可動接点
124 凸部
125 枠部
130 固定基板
131 固定電極
133 第1固定接点
150 放電抵抗
160 駆動回路
Claims (20)
- 第1固定接点及び固定電極を有する第1固定基板と、第2固定接点を有し前記第1固定基板に対向して配置した第2固定基板と、前記第1、第2固定基板の間に配置した可動板とを備え、
前記可動板は、枠部と該枠部に対して移動可能に設けた可動部とを含み、
前記枠部は前記第1、第2の固定基板間で密封接合され、
前記可動部は、前記固定電極と対向する可動電極及び前記第1、第2固定接点に対応する位置に可動接点を備え、前記可動電極と前固定電極との間で生じる静電引力に基づいて前記第1、第2固定基板間を移動することを特徴とするマイクロリレー。 - 請求項1に記載のマイクロリレーにおいて、
前記可動部が前記静電引力を受けていないときに、前記可動接点と接触する位置に前記第2固定接点が配置されていることを特徴とするマイクロリレー。 - 請求項1又は2に記載のマイクロリレーにおいて、
前記第1固定接点は信号接続用の接点であり、前記第2固定接点はグランド接続用の接点であることを特徴とするマイクロリレー。 - 請求項1又は2に記載のマイクロリレーにおいて、
前記第1、第2固定接点は、共に信号接続用の接点であることを特徴とするマイクロリレー。 - 請求項1又は2に記載のマイクロリレーにおいて、
前記第1固定基板の固定電極が前記固定接点よりも高く形成されていることを特徴とするマイクロリレー。 - 請求項1又は2に記載のマイクロリレーにおいて、
前記第1固定接点が片持ち梁状に形成されていることを特徴とするマイクロリレー。 - 請求項1又は2に記載のマイクロリレーにおいて、
前記可動接点が複数並設され、前記第1固定接点は前記可動接点の数に対応して分岐されていることを特徴とするマイクロリレー。 - 請求項1又は2に記載のマイクロリレーにおいて、
前記可動接点が複数並設され、該可動接点の数に対応して独立の第1固定接点が前記第1固定基板に並存することを特徴とするマイクロリレー。 - 第1固定接点及び固定電極を備えた第1固定基板と、第2固定接点を備え前記第1固定基板に対向して配置した第2固定基板と、前記第1、第2固定基板の間に配置した可動板とを備え、
前記可動板は枠部と可動部とを含み、可動部は前記第1、第2固定基板の表面対して垂直方向に移動可能とする弾性部材を介して前記枠部に接続され、
前記枠部は前記第1、第2の固定基板間で密封接合され、
前記可動部は、前記固定電極と対向する可動電極及び前記第1、第2固定接点に対応する位置に可動接点を備え、前記可動電極と前固定電極との間で生じる静電引力に基づいて前記第1、第2固定基板間を移動することを特徴とするマイクロリレー。 - 請求項9に記載のマイクロリレーにおいて、
前記可動部が前記静電引力を受けていないときに、前記可動接点が接触する位置に前記第2固定接点が配設されていることを特徴とするマイクロリレー。 - 請求項9又は10に記載のマイクロリレーにおいて、
前記弾性部材は複数のヒンジバネであり、前記可動部は対称位置に設けたヒンジバネで前記枠部に接続されていることを特徴とするマイクロリレー。 - 請求項9又は10に記載のマイクロリレーにおいて、
前記弾性部材は複数のヒンジバネであり、前記可動部は対称位置に設けたヒンジバネで前記枠部に接続されている、対向する位置に配置された前記ヒンジバネのバネ係数が異なることを特徴とするマイクロリレー。 - 請求項9又は10に記載のマイクロリレーにおいて、
前記枠部及び可動部の少なくとも一方に可動部の面内方向での移動を規制するストッパを備えていることを特徴とするマイクロリレー。 - 第1固定接点及び固定電極を備えた第1固定基板と、第2固定接点を備え前記第1固定基板に対向して配置した第2固定基板と、前記第1、第2固定基板の間に配置した可動板とを備え、
前記可動板は、枠部と該枠部に対して移動可能に設けた可動部とを含み、
前記枠部は前記第1、第2の固定基板間で密封接合され、
前記可動部及び固定電極の少なくとも一方に、電荷を除去するための電荷除去手段を備え、
前記可動部は、前記固定電極と対向する可動電極及び前記第1、第2固定接点に対応する位置に可動接点を備え、前記可動電極と前固定電極との間で生じる静電引力に基づいて前記第1、第2固定基板間を移動することを特徴とするマイクロリレー。 - 請求項14に記載のマイクロリレーにおいて、
前記可動部が前記静電引力を受けていないときに、前記可動接点が接触する位置に前記第2固定接点が配設されていることを特徴とするマイクロリレー。 - 請求項14に記載のマイクロリレーにおいて、
前記電荷除去手段は、前記可動部と固定電極との間の配線上に設けた放電抵抗であることを特徴とするマイクロリレー。 - 第1固定接点及び固定電極を備えた第1固定基板と、第2固定接点を備え前記第1固定基板に対向して配置した第2固定基板と、前記第1、第2固定基板の間に配置した可動板とを備え、
前記可動板は、枠部と該枠部に対して移動可能に設けた可動部とを含み、前記可動部は前記第1固定基板に張付くことを防止するための凸部を備え、
前記枠部は前記第1、第2の固定基板間で密封接合され、
前記可動部は、前記固定電極と対向する可動電極及び前記第1、第2固定接点に対応する位置に可動接点を備え、前記可動電極と前固定電極との間で生じる静電引力に基づいて前記第1、第2固定基板間を移動することを特徴とするマイクロリレー。 - 請求項17に記載のマイクロリレーにおいて、
前記可動部が前記静電引力を受けていないときに、前記可動接点が接触する位置に前記第2固定接点が配設されていることを特徴とするマイクロリレー。 - 請求項17に記載のマイクロリレーにおいて、
前記凸部が電荷除去手段となっていることを特徴とするマイクロリレー。 - 請求項1から19のいずれかに記載のマイクロリレーをベース上に固定し、樹脂材で封止したマイクロリレーディバイス。
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