JP2004066276A - 摩擦撹拌接合継手とその接合方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】裏面側に突出した接合部を切削するなどの手間のかかる余分な作業が不要で、しかも被接合材の突き合わせ辺端部(裏面側)に未接合部が生じて亀裂が入りやすくなり疲労強度が低下するなどの課題を解決できる摩擦撹拌接合方法を提供する。
【解決手段】定盤2上で二枚の被接合材k・kの相対向する辺を突き合わせ、該突き合わせ辺に沿って接合工具11にて摩擦接合する接合方法において、
上記各被接合材k・kの上記突き合わせ辺Lの定盤2側に、接合方向に沿って連続する溝mをあらかじめ設けておくとともに、該溝mの深さを上記接合工具11の挿入されるピンツール13先端が上記溝m内に位置するが上記定盤2には達しないように設定しておき、上記定盤2と反対側の面から接合工具11のピンツール13を上記突き合わせ辺L間に挿入し、回転させながら接合方向に移動させて摩擦撹拌接合する。
【選択図】 図1
【解決手段】定盤2上で二枚の被接合材k・kの相対向する辺を突き合わせ、該突き合わせ辺に沿って接合工具11にて摩擦接合する接合方法において、
上記各被接合材k・kの上記突き合わせ辺Lの定盤2側に、接合方向に沿って連続する溝mをあらかじめ設けておくとともに、該溝mの深さを上記接合工具11の挿入されるピンツール13先端が上記溝m内に位置するが上記定盤2には達しないように設定しておき、上記定盤2と反対側の面から接合工具11のピンツール13を上記突き合わせ辺L間に挿入し、回転させながら接合方向に移動させて摩擦撹拌接合する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、定盤上において二枚の被接合材(たとえば、アルミ合金の押出形材)の相対向する辺(端面)を突き合わせて、両突き合わせ辺に沿って接合工具にて摩擦接合した摩擦撹拌接合継手とその接合方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
摩擦撹拌接合に関する先行技術として、特許第2712838号掲載公報に記載の方法がある。この方法によれば、被接合材の突き合わせ部に接合工具のピンツールを回転させて挿入することにより、被接合材は摩擦作用にて溶融撹拌され流動化して接合される。しかし、
▲1▼ 接合可能な領域はピンツール先端より0.2mm程度の狭い範囲であり、これを越えると未接合部(kissingbond)が生じること、
▲2▼ 接合する長さは、例えば鉄道車両構体長である20m以上の長い距離に及ぶことがあるので、この長い距離にわたって被接合材の裏面とピンツール先端の間隔を0.2mm以下に保って移動させるのは困難であること、
▲3▼ アルミ合金の押出形材(板材)などの被接合材の板厚には製作上の誤差(公差)があり、板厚が長さ方向で変化する(±0.2〜±0.5mm)から被接合材の裏面とピンツール先端の間隔を一定に保つのは困難なこと、
▲4▼ 製作上の誤差(公差)は基準の板厚に無関係であり(具体的には、基準板厚4mmで公差は±0.2〜±0.5mm/基準板厚2mmでも公差は±0.2〜±0.5mm)、基準の板厚が薄くなるほど公差の割合が増加すること、
▲5▼ 被接合材の接合に寄与する摩擦撹拌作用を促進させる効果がないこと、
などの問題点がある。
【0003】
さらに、先行技術として、特開平11−5179号公報に記載の方法がある。この方法は、突き合わせ接合する被接合材を載置する定盤(裏当て板)の、接合工具のピンツール直下に、接合工具を移動させ手接合する方向に沿って溝を設けて接合することを特徴としたものである。
【0004】
このように定盤に溝を設けるのは、被接合材の突き合わせ部に接合工具のピンツールを貫通して回転させて挿入することにより、未接合部の発生を抑えようとするものであるが、
▲6▼ 定盤に設けた溝に沿って被接合材の突き合わせ部を位置あわせする必要があること、
▲7▼ 反ピンツール側を車体の外板側に用いる場合には表面を平滑する加工が必要であること、
などの問題点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記の特許第2712838号掲載公報に記載の接合方法によれば、ピンツール先端と定盤との隙間管理を厳しくし未接合部の発生を抑える必要がある。
【0006】
上記の特開平11−5179号公報に記載の接合方法によれば、接合工具のピンツール先端が被接合材の突き合わせ部から裏面側に常に突出する状態で摩擦撹拌接合作業を行えば、突き合わせ辺端部に未接合部が発生するのを回避することができる。しかし、つぎのような不都合が生じる。
【0007】
すなわち、被接合材の突き合わせ部の裏面側に、摩擦撹拌作用により溶融流動化した部分が突出する。このため、その突出部分をグラインダーで切削して平担にする作業が必要になるが、この作業には手間がかかる。また、上記したように被接合材の板厚が薄くなればなるほど被接合材における製作公差の板厚に対する割合が増加するため、接合工具のピンツールが被接合材の裏面に貫通しないようにピンツール長さを被接合材の板厚に応じてその都度取り替えるという施工管理が必要になる。しかも、板厚に比べてピンツール長さが短い場合には、ピンツール先端側の突き合わせ辺端部に未接合部が生じるおそれがあり、疲労強度が低下する原因になる。
【0008】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、被接合材の板厚公差によるばらつきがあってもピンツールが常に突き合わせ部の全体を撹拌し、しかも突き合わせ部と定盤との間にある溝は完全に埋められて平滑になり未接合部が発生しない、摩擦撹拌接合継手とその接合方法を提供することを目的としている。
【0009】
さらに、特開平11−5179号公報による方法のように裏面側に突出した接合部を切削するなどの手間のかかる余分な作業が不要で、しかも被接合材の突き合わせ辺端部(裏面側)に未接合部が生じて亀裂が入りやすくなり疲労強度が低下するなどの課題を解決できる、摩擦撹拌接合継手とその接合方法を提供することも目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために本発明にかかる摩擦撹拌接合継手は、突き合わせの摩擦撹拌接合を行う少なくとも二枚の被接合材の突き合わせ部の定盤側に、接合方向に沿って連続する溝を接合工具のピンツール先端が該溝内に位置するが前記定盤には達しないように設け、摩擦撹拌接合したことを特徴としている。
【0011】
上記の構成を有する本発明の摩擦撹拌接合継手によれば、摩擦撹拌接合作業時に接合工具のピンツール先端が被接合材の突き合わせ部の溝内に位置するから、接合工具を接合方向へ移動した際に板厚が公差の範囲内で変化することがあっても突き合わせ辺端部に未接合部が発生することがない。このように未接合部が生じないので、突き合わせ端から亀裂が入らなくなって疲労強度が上がるから、とくに気密性が要求される新幹線車両の構体の材料として好適である。また、ピンツール先端付近の被接合材が摩擦撹拌作用により流動化され溝内を埋めるので、この塑性流動部(以下、溶融肉部ともいう)を撹拌するのが容易で効率よく接合される。さらに溶融肉部は裏面側へ突出するが、この突出する溶融肉部は、後述するように溝の容量(容積)を調整することにより溝内に収めることができ、したがって溝からはみ出さないようにする限りは、上記した従来の公報に記載の接合方法のように裏面側へはみ出した溶融肉部を切削するという、手間のかかる作業が不要になる。
【0012】
請求項2に記載の継手は、上記摩擦撹拌接合継手のピンツール挿入側と反対面を外板面とすることを特徴としている。
【0013】
この擦撹拌接合継手によれば、ピンツール挿入側と反対の面の溝は完全に埋められるので、接合工具のショルダーにより凹状部が形成されたり疵がついたりしやすいピンツール挿入側に比べて美しく、したがって外板面とするのに適する。
【0014】
請求項3に記載の継手は、上記溝の容量を、上記接合工具のショルダーによって上記二枚の被接合材の表面に形成される凹状部の容量にほぼ一致させたことを特徴としている。
【0015】
この摩擦撹拌接合継手によれば、接合作業時に回転しながら接合方向に沿って移動する接合工具のショルダーによって流動化され、被接合材の表面側から押し出される溶融肉部が裏面側の溝内に流動して溝を埋めるから、溝内は溶融肉部でほぼ埋め尽くされることになり、空間部が生じない。
【0016】
請求項4に記載の継手は、上記溝の幅を、上記接合工具のショルダーの幅よりも狭くしたことを特徴としている。
【0017】
この摩擦撹拌接合継手によれば、溝の幅を接合工具のショルダーの幅よりも狭くしたことにより、被接合材の溝の外側が定盤で支持され、接合工具のショルダーの反力が受けられる。この結果、接合工具の移動時にピンツールの上下方向における位置をほぼ一定に保って、言い換えればピンツール先端と定盤との間隔をほぼ一定に保って接合作業が行えるとともに、被接合材の突き合わせ部近傍が裏面側に変形するのが防止される。
【0018】
請求項5に記載の接合方法は、定盤上で少なくとも二枚の被接合材の相対向する辺を突き合わせ、該突き合わせ辺に沿って接合工具にて摩擦接合する接合方法において、上記各被接合材の上記突き合わせ辺の定盤側に、接合方向に沿って連続する溝をあらかじめ設けておくとともに、該溝の深さを上記接合工具の挿入されるピンツール先端が上記溝内に位置するが上記定盤には達しないように設定しておき、上記定盤と反対側の面から接合工具のピンツールを上記突き合わせ辺間に挿入し、回転させながら接合方向に移動させて摩擦撹拌接合することを特徴としている。
【0019】
この摩擦撹拌接合方法によれば、摩擦撹拌接合作業時に接合工具が上記突き合わせ辺に沿って、つまり接合方向へ移動した際に板厚が(公差の範囲内で)変化することがあっても接合工具のピンツール先端が被接合材の突き合わせ部の溝内に位置するから、未接合部が発生することがないので、突き合わせ端から亀裂が入らなくなって疲労強度が上がるなど、請求項1に記載の摩擦撹拌継手が奏する作用と共通の作用が生じる。しかも、従来の接合方法と違って、被接合材の板厚が変わる度に接合工具のピンツールが被接合材の裏面に貫通しないようにピンツール長さをその板厚に応じて取り替えるという施工管理が不要で、接合作業が容易になる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかる摩擦撹拌接合継手とその接合方法の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
(実施例1)
図1に示すように、接合予定の2枚のアルミ合金製の押し出し形材からなる被接合材k・kは、本例では、形材が押し出されるときに裏面側の突き合わせ端辺に沿って断面直角三角形状の溝m・mが形成されるように、押出形材の金型(図示せず)の押出口の形状を調整している。被接合材k・kの端面を突き合わせた状態で2つの溝m・mによる、溝の幅Bが後述する接合工具11のピンツール13の外径dより狭く、2つの溝m・mを合わせた容量(容積)は接合工具11のショルダー12で押し込まれて溝m・m内に塑性流動化して移動する溶融肉部wの容量にほぼ匹敵する容量、いいかえれば接合作業時に接合工具11を移動した際に被接合材k・kの表面に発生する凹状部sの容積にほぼ等しくなるように設定される。具体的には、凹状部sの深さtが0.2〜0.5mm程度であり、面取り部cの長さを1mm前後にしている。
【0022】
図6に示すように、摩擦接合装置1の接合ヘッド10は上部にモータ6を備え、下端部に円柱状の接合工具11が回動自在に支承されており、この接合工具11はモータ6の駆動軸6aの下端にチャック7を介して一体回転可能に接続されている。また、接合ヘッド10は空圧シリンダ15を介してブラケット3に装着され、スクリューシャフト4とナット5とを介してサーボモータ8の回転によりブラケット3が昇降するように構成されている。空圧シリンダ15に空気圧を付加することにより一定の力で被接合材kに接合ヘッド10を押しつけることができる。
【0023】
接合工具11は、その先端側にショルダー12が一体に形成され、その先端面中心部に小径のピンツール(接合ピンともいう)13が一体に突設されている。接合工具11はショルダー12とピンツール13とを含めて、本例では被接合材kの材質がアルミ合金であるから、それよりも硬質で剛性の高い金属材料で形成されており、接合作業時には図7・図8に示すようにまたそれらの中心軸線を鉛直線に対して傾斜角αで進行方向と反対側に傾斜させて移動させる。
【0024】
2枚の被接合材k・kを平坦な定盤(ベッド)2上に載置し、図7に示すように被接合材k・kの両側から治具(図示せず)により相接近する方向に押し付け、相対向する端面を突き合わせて固定する。この状態で、被接合材k・kの表面側で突き合わせ端部Lの一端において接合工具11を回転させながら下降させ所定深さ(本例ではピンツール13先端が溝m・m内に達する深さ)まで挿入する。そして、ピンツール13の位置、いいかえれば接合工具11の上下方向の位置を一定に保持しながら、被接合材k・kの突き合わせ部Lの全長にわたり、接合工具11を回転させながら突き合わせ部Lの接合線に沿って一定速度で移動させれば、被接合材k・kの突き合わせ部Lは全長にわたって接合工具11の回転により摩擦熱が発生し、塑性流動化されて固相接合されるので、突き合わせ部Lの全長にわたり摩擦撹拌接合される(図8参照)。
【0025】
しかも、被接合材k・kの板厚が製作上の公差の範囲内で変化しても、図1のようにピンツール13の先端は定盤2に接触することがなく、かつ溝m・m内に留まるので、突き合わせ部Lの下端(裏面)に未接合部が生じることもない。また、図2(a)のように突き合わせ部Lの表面側においてショルダー12の移動路に沿って凹状部sが形成されるが、この凹状部sに相当する溶融肉部wが図2(b)のように溝m・m内に移動し、溝m・m内は溶融肉部wでほぼ埋め尽くされる。なお、図7中の符号wは摩擦撹拌接合部である。こうして摩擦撹拌接合された継手は溝m(裏面側)を外板面として、たとえば新幹線のような鉄道車両の側構体や屋根構体の素材として使用される。
【0026】
(実施例2)
図3〜図5は本発明の他の実施例にかかる被接合材を示すもので、同図に示すように本例では、被接合材k・kの溝n・n、o・o、p・pの断面形状を台形、半円形、半長円形に形成している。それぞれの溝の容積は接合工具のショルダーにより形成される凹状部sの容積とほぼ一致する。したがって、本例の場合、溝内が溶融肉部にて埋め尽くされる。また、接合工具11のピンツール13先端が接合作業の間に概ね溝内に位置しているから、被接合材k・kの突き合わせ部裏面側に未接合部が生じることがない。
【0027】
(接合方法の実施例)
図9は本発明の摩擦撹拌接合方法の一実施例を示すものであり、板厚公差が変化した場合を表している。被接合材kの基本板厚tを例えば2mmとし板厚公差が±0.2mmの場合と±0.5mmの場合の2種類について説明をする。
【0028】
(a)は板厚公差が−0.2mm、すなわち板厚t=1.8mmの場合である。被接合材kの溝の深さを1.1mm(C1.1)、被接合材表面からピンツール先端までの距離を1.4mmとすると、突合せ部全体を撹拌することができる。
【0029】
(b)は板厚公差が+0.2mm、すなわち板厚t=2.2mmの場合である。被接合材kの溝の形状、被接合材表面からピンツール先端までの距離を上記同様としても突き合わせ部全体を撹拌することができる。
【0030】
(c)は板厚公差が−0.5mm、すなわち板厚t=1.5mmの場合である。被接合材の溝の形状、被接合材表面からピンツール先端までの距離を上記同様としても突合せ部全体を撹拌し、なおかつピンツール先端は定盤には接触しないようにすることができる。
【0031】
(d)は板厚公差が+0.5mm、すなわち板厚t=2.5mmの場合である。被接合材の溝の形状、被接合材表面からピンツール先端までの距離を上記同様としても突合せ部全体を撹拌することができる。
以上のように被接合材の板厚tが2mmの場合、板厚公差が最大±0.5mmとなっても1種類のピンツールで未接合部を発生させることなく摩擦撹拌接合を行うことができるものである。
【0032】
(他の実施例)
上記に本発明の摩擦撹拌接合方法の一実施例を示したが、下記のように実施することができる。
【0033】
a.被接合材kは両端部にある程度の厚みがあれば、中空の押し出し形材であっても同様に実施できる。また、二枚の被接合材に限らず3枚以上の被接合材を相互に突き合わせた状態で同時に接合することも可能であることは言うまでもない。この場合、突き合わせ端部の裏面に溝を設けておき、突き合わせ部の数に対応する複数の接合工具11を用いて、一斉に摩擦撹拌接合作業を行えばよい。
【0034】
b.溝の断面形状については、上記実施例に限定されるものではなく適宜変更できる。
【0035】
c.接合工具の移動速度は、被接合材の材質、種類、サイズあるいは溝の断面形状等に応じて適宜変更できる。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したことから明らかなように、本発明にかかる摩擦撹拌接合継手およびその接合方法には、つぎのような優れた効果がある。
【0037】
(1)請求項1の摩擦撹拌接合継手は、摩擦撹拌接合作業時に被接合材の板厚の製作上の公差があっても突き合わせ面の裏面側に未接合部が生じないので、突き合わせ端から亀裂が入らず疲労強度が向上するから、気密性が要求される新幹線車両の構体の素材として好適である。また、被接合材の端部に溝を設けるだけの簡単な構成で、押出形材では機械加工も不要であり、上記公報に記載の定盤に溝を設ける従来の技術のように、位置合わせが不要で接合作業が容易であり、また被接合材が三枚以上になっても複数の突き合わせ部を同時に接合することができる。さらに溶融肉部は裏面側へ突出するが、この突出する溶融肉部は溝の容積を調整することにより溝内に収めることができ、したがって溝からはみ出さないようにする限りは、上記公報に記載の従来の接合方法のように裏面側へはみ出した溶融肉部を切削するという手間のかかる作業が不要になる。
【0038】
(2)請求項2に記載の継手は、ピンツール挿入側と反対の面は溝以外の箇所が平坦であり、仮に溝内に空間部が生じてもパテなどで埋めて簡単に修復できるので、接合工具のショルダーにより凹状部が形成されたり疵がついたりしやすいピンツール挿入側に比べて平坦で外観がきれいであるため、外板面とするのに適する。
【0039】
(3)請求項3に記載の継手は、接合作業時に回転しながら接合方向に沿って移動する接合工具のショルダーによって押し込まれ、塑性流動化した溶融肉部が裏面側に溝内に下りて溝をほぼ埋め尽くすので、溝内に空間部が生じにくく、仕上がりがきれいである。
【0040】
(4)請求項4に記載の継手は、被接合材裏面に設ける溝の幅を接合工具のショルダーの幅よりも狭くしたから、溝の外側が定盤で支持され、接合工具のショルダーの反力を受けるので、接合工具の移動時にピンツール先端と定盤との間隔をほぼ一定に保って接合作業が行えるとともに、被接合材の突き合わせ部近傍が裏面側に変形するのが防止される。
【0041】
(5)請求項5に記載の摩擦撹拌接合方法では、摩擦撹拌接合作業時に接合工具のピンツール先端が被接合材の突き合わせ部の溝内に位置するから、被接合材に公差があっても突き合わせ端部の裏面側に未接合部が発生せず、突き合わせ端から亀裂が入らなくなって疲労強度が上がる。しかも、従来の接合方法と違って被接合材の板厚が変わる度に接合工具のピンツールが被接合材の裏面に貫通しないようにピンツール長さがその板厚に応じた接合工具に取り替えるという施工管理が不要になり、接合作業が容易になる。そのほか、ピンツール先端は溝内に露出し空間部で回転するので、摩擦撹拌作用が促進され、効率よく接合される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例にかかる被接合材と接合工具のピンツールとの関係を示す正面図である。
【図2】図2(a)は図1の被接合材を接合する前の状態における裏面側より見た斜視図、図2(b)は図1の被接合材を接合した後の状態における裏面側より見た斜視図で、各図とも被接合材の一部を省略している。
【図3】本発明の他の実施例にかかる被接合材と接合工具のピンツールとの関係を示す正面図である。
【図4】本発明の他の実施例にかかる被接合材と接合工具のピンツールとの関係を示す正面図である。
【図5】本発明の他の実施例にかかる被接合材と接合工具のピンツールとの関係を示す正面図である。
【図6】本発明の摩擦撹拌接合方法に用いる接合装置の一例を示す側面図である。
【図7】本発明の実施例にかかる被接合材を突き合わせて接合工具にて摩擦撹拌接合する作業途中を示す斜視図である。
【図8】本発明の実施例にかかる被接合材を突き合わせて接合工具にて摩擦撹拌接合する作業途中を示す側方視断面図である。
【図9】図9(a)〜図9(d)はそれぞれ本発明の摩擦撹拌接合方法の実施例を示すものであり、被接合材の板厚公差により板厚が変化した場合でも1種類のピンツールで摩擦撹拌接合が可能であることを説明する図である。
【符号の説明】
1 摩擦撹拌接合装置
10 接合ヘッド
11 接合工具
12 ショルダー
13 ピンツール(接合ピン)
k 被接合材
m・n・o・p 溝
s 凹状部
w 溶融肉部(塑性流動部)
【発明の属する技術分野】
本発明は、定盤上において二枚の被接合材(たとえば、アルミ合金の押出形材)の相対向する辺(端面)を突き合わせて、両突き合わせ辺に沿って接合工具にて摩擦接合した摩擦撹拌接合継手とその接合方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
摩擦撹拌接合に関する先行技術として、特許第2712838号掲載公報に記載の方法がある。この方法によれば、被接合材の突き合わせ部に接合工具のピンツールを回転させて挿入することにより、被接合材は摩擦作用にて溶融撹拌され流動化して接合される。しかし、
▲1▼ 接合可能な領域はピンツール先端より0.2mm程度の狭い範囲であり、これを越えると未接合部(kissingbond)が生じること、
▲2▼ 接合する長さは、例えば鉄道車両構体長である20m以上の長い距離に及ぶことがあるので、この長い距離にわたって被接合材の裏面とピンツール先端の間隔を0.2mm以下に保って移動させるのは困難であること、
▲3▼ アルミ合金の押出形材(板材)などの被接合材の板厚には製作上の誤差(公差)があり、板厚が長さ方向で変化する(±0.2〜±0.5mm)から被接合材の裏面とピンツール先端の間隔を一定に保つのは困難なこと、
▲4▼ 製作上の誤差(公差)は基準の板厚に無関係であり(具体的には、基準板厚4mmで公差は±0.2〜±0.5mm/基準板厚2mmでも公差は±0.2〜±0.5mm)、基準の板厚が薄くなるほど公差の割合が増加すること、
▲5▼ 被接合材の接合に寄与する摩擦撹拌作用を促進させる効果がないこと、
などの問題点がある。
【0003】
さらに、先行技術として、特開平11−5179号公報に記載の方法がある。この方法は、突き合わせ接合する被接合材を載置する定盤(裏当て板)の、接合工具のピンツール直下に、接合工具を移動させ手接合する方向に沿って溝を設けて接合することを特徴としたものである。
【0004】
このように定盤に溝を設けるのは、被接合材の突き合わせ部に接合工具のピンツールを貫通して回転させて挿入することにより、未接合部の発生を抑えようとするものであるが、
▲6▼ 定盤に設けた溝に沿って被接合材の突き合わせ部を位置あわせする必要があること、
▲7▼ 反ピンツール側を車体の外板側に用いる場合には表面を平滑する加工が必要であること、
などの問題点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記の特許第2712838号掲載公報に記載の接合方法によれば、ピンツール先端と定盤との隙間管理を厳しくし未接合部の発生を抑える必要がある。
【0006】
上記の特開平11−5179号公報に記載の接合方法によれば、接合工具のピンツール先端が被接合材の突き合わせ部から裏面側に常に突出する状態で摩擦撹拌接合作業を行えば、突き合わせ辺端部に未接合部が発生するのを回避することができる。しかし、つぎのような不都合が生じる。
【0007】
すなわち、被接合材の突き合わせ部の裏面側に、摩擦撹拌作用により溶融流動化した部分が突出する。このため、その突出部分をグラインダーで切削して平担にする作業が必要になるが、この作業には手間がかかる。また、上記したように被接合材の板厚が薄くなればなるほど被接合材における製作公差の板厚に対する割合が増加するため、接合工具のピンツールが被接合材の裏面に貫通しないようにピンツール長さを被接合材の板厚に応じてその都度取り替えるという施工管理が必要になる。しかも、板厚に比べてピンツール長さが短い場合には、ピンツール先端側の突き合わせ辺端部に未接合部が生じるおそれがあり、疲労強度が低下する原因になる。
【0008】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、被接合材の板厚公差によるばらつきがあってもピンツールが常に突き合わせ部の全体を撹拌し、しかも突き合わせ部と定盤との間にある溝は完全に埋められて平滑になり未接合部が発生しない、摩擦撹拌接合継手とその接合方法を提供することを目的としている。
【0009】
さらに、特開平11−5179号公報による方法のように裏面側に突出した接合部を切削するなどの手間のかかる余分な作業が不要で、しかも被接合材の突き合わせ辺端部(裏面側)に未接合部が生じて亀裂が入りやすくなり疲労強度が低下するなどの課題を解決できる、摩擦撹拌接合継手とその接合方法を提供することも目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために本発明にかかる摩擦撹拌接合継手は、突き合わせの摩擦撹拌接合を行う少なくとも二枚の被接合材の突き合わせ部の定盤側に、接合方向に沿って連続する溝を接合工具のピンツール先端が該溝内に位置するが前記定盤には達しないように設け、摩擦撹拌接合したことを特徴としている。
【0011】
上記の構成を有する本発明の摩擦撹拌接合継手によれば、摩擦撹拌接合作業時に接合工具のピンツール先端が被接合材の突き合わせ部の溝内に位置するから、接合工具を接合方向へ移動した際に板厚が公差の範囲内で変化することがあっても突き合わせ辺端部に未接合部が発生することがない。このように未接合部が生じないので、突き合わせ端から亀裂が入らなくなって疲労強度が上がるから、とくに気密性が要求される新幹線車両の構体の材料として好適である。また、ピンツール先端付近の被接合材が摩擦撹拌作用により流動化され溝内を埋めるので、この塑性流動部(以下、溶融肉部ともいう)を撹拌するのが容易で効率よく接合される。さらに溶融肉部は裏面側へ突出するが、この突出する溶融肉部は、後述するように溝の容量(容積)を調整することにより溝内に収めることができ、したがって溝からはみ出さないようにする限りは、上記した従来の公報に記載の接合方法のように裏面側へはみ出した溶融肉部を切削するという、手間のかかる作業が不要になる。
【0012】
請求項2に記載の継手は、上記摩擦撹拌接合継手のピンツール挿入側と反対面を外板面とすることを特徴としている。
【0013】
この擦撹拌接合継手によれば、ピンツール挿入側と反対の面の溝は完全に埋められるので、接合工具のショルダーにより凹状部が形成されたり疵がついたりしやすいピンツール挿入側に比べて美しく、したがって外板面とするのに適する。
【0014】
請求項3に記載の継手は、上記溝の容量を、上記接合工具のショルダーによって上記二枚の被接合材の表面に形成される凹状部の容量にほぼ一致させたことを特徴としている。
【0015】
この摩擦撹拌接合継手によれば、接合作業時に回転しながら接合方向に沿って移動する接合工具のショルダーによって流動化され、被接合材の表面側から押し出される溶融肉部が裏面側の溝内に流動して溝を埋めるから、溝内は溶融肉部でほぼ埋め尽くされることになり、空間部が生じない。
【0016】
請求項4に記載の継手は、上記溝の幅を、上記接合工具のショルダーの幅よりも狭くしたことを特徴としている。
【0017】
この摩擦撹拌接合継手によれば、溝の幅を接合工具のショルダーの幅よりも狭くしたことにより、被接合材の溝の外側が定盤で支持され、接合工具のショルダーの反力が受けられる。この結果、接合工具の移動時にピンツールの上下方向における位置をほぼ一定に保って、言い換えればピンツール先端と定盤との間隔をほぼ一定に保って接合作業が行えるとともに、被接合材の突き合わせ部近傍が裏面側に変形するのが防止される。
【0018】
請求項5に記載の接合方法は、定盤上で少なくとも二枚の被接合材の相対向する辺を突き合わせ、該突き合わせ辺に沿って接合工具にて摩擦接合する接合方法において、上記各被接合材の上記突き合わせ辺の定盤側に、接合方向に沿って連続する溝をあらかじめ設けておくとともに、該溝の深さを上記接合工具の挿入されるピンツール先端が上記溝内に位置するが上記定盤には達しないように設定しておき、上記定盤と反対側の面から接合工具のピンツールを上記突き合わせ辺間に挿入し、回転させながら接合方向に移動させて摩擦撹拌接合することを特徴としている。
【0019】
この摩擦撹拌接合方法によれば、摩擦撹拌接合作業時に接合工具が上記突き合わせ辺に沿って、つまり接合方向へ移動した際に板厚が(公差の範囲内で)変化することがあっても接合工具のピンツール先端が被接合材の突き合わせ部の溝内に位置するから、未接合部が発生することがないので、突き合わせ端から亀裂が入らなくなって疲労強度が上がるなど、請求項1に記載の摩擦撹拌継手が奏する作用と共通の作用が生じる。しかも、従来の接合方法と違って、被接合材の板厚が変わる度に接合工具のピンツールが被接合材の裏面に貫通しないようにピンツール長さをその板厚に応じて取り替えるという施工管理が不要で、接合作業が容易になる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかる摩擦撹拌接合継手とその接合方法の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
(実施例1)
図1に示すように、接合予定の2枚のアルミ合金製の押し出し形材からなる被接合材k・kは、本例では、形材が押し出されるときに裏面側の突き合わせ端辺に沿って断面直角三角形状の溝m・mが形成されるように、押出形材の金型(図示せず)の押出口の形状を調整している。被接合材k・kの端面を突き合わせた状態で2つの溝m・mによる、溝の幅Bが後述する接合工具11のピンツール13の外径dより狭く、2つの溝m・mを合わせた容量(容積)は接合工具11のショルダー12で押し込まれて溝m・m内に塑性流動化して移動する溶融肉部wの容量にほぼ匹敵する容量、いいかえれば接合作業時に接合工具11を移動した際に被接合材k・kの表面に発生する凹状部sの容積にほぼ等しくなるように設定される。具体的には、凹状部sの深さtが0.2〜0.5mm程度であり、面取り部cの長さを1mm前後にしている。
【0022】
図6に示すように、摩擦接合装置1の接合ヘッド10は上部にモータ6を備え、下端部に円柱状の接合工具11が回動自在に支承されており、この接合工具11はモータ6の駆動軸6aの下端にチャック7を介して一体回転可能に接続されている。また、接合ヘッド10は空圧シリンダ15を介してブラケット3に装着され、スクリューシャフト4とナット5とを介してサーボモータ8の回転によりブラケット3が昇降するように構成されている。空圧シリンダ15に空気圧を付加することにより一定の力で被接合材kに接合ヘッド10を押しつけることができる。
【0023】
接合工具11は、その先端側にショルダー12が一体に形成され、その先端面中心部に小径のピンツール(接合ピンともいう)13が一体に突設されている。接合工具11はショルダー12とピンツール13とを含めて、本例では被接合材kの材質がアルミ合金であるから、それよりも硬質で剛性の高い金属材料で形成されており、接合作業時には図7・図8に示すようにまたそれらの中心軸線を鉛直線に対して傾斜角αで進行方向と反対側に傾斜させて移動させる。
【0024】
2枚の被接合材k・kを平坦な定盤(ベッド)2上に載置し、図7に示すように被接合材k・kの両側から治具(図示せず)により相接近する方向に押し付け、相対向する端面を突き合わせて固定する。この状態で、被接合材k・kの表面側で突き合わせ端部Lの一端において接合工具11を回転させながら下降させ所定深さ(本例ではピンツール13先端が溝m・m内に達する深さ)まで挿入する。そして、ピンツール13の位置、いいかえれば接合工具11の上下方向の位置を一定に保持しながら、被接合材k・kの突き合わせ部Lの全長にわたり、接合工具11を回転させながら突き合わせ部Lの接合線に沿って一定速度で移動させれば、被接合材k・kの突き合わせ部Lは全長にわたって接合工具11の回転により摩擦熱が発生し、塑性流動化されて固相接合されるので、突き合わせ部Lの全長にわたり摩擦撹拌接合される(図8参照)。
【0025】
しかも、被接合材k・kの板厚が製作上の公差の範囲内で変化しても、図1のようにピンツール13の先端は定盤2に接触することがなく、かつ溝m・m内に留まるので、突き合わせ部Lの下端(裏面)に未接合部が生じることもない。また、図2(a)のように突き合わせ部Lの表面側においてショルダー12の移動路に沿って凹状部sが形成されるが、この凹状部sに相当する溶融肉部wが図2(b)のように溝m・m内に移動し、溝m・m内は溶融肉部wでほぼ埋め尽くされる。なお、図7中の符号wは摩擦撹拌接合部である。こうして摩擦撹拌接合された継手は溝m(裏面側)を外板面として、たとえば新幹線のような鉄道車両の側構体や屋根構体の素材として使用される。
【0026】
(実施例2)
図3〜図5は本発明の他の実施例にかかる被接合材を示すもので、同図に示すように本例では、被接合材k・kの溝n・n、o・o、p・pの断面形状を台形、半円形、半長円形に形成している。それぞれの溝の容積は接合工具のショルダーにより形成される凹状部sの容積とほぼ一致する。したがって、本例の場合、溝内が溶融肉部にて埋め尽くされる。また、接合工具11のピンツール13先端が接合作業の間に概ね溝内に位置しているから、被接合材k・kの突き合わせ部裏面側に未接合部が生じることがない。
【0027】
(接合方法の実施例)
図9は本発明の摩擦撹拌接合方法の一実施例を示すものであり、板厚公差が変化した場合を表している。被接合材kの基本板厚tを例えば2mmとし板厚公差が±0.2mmの場合と±0.5mmの場合の2種類について説明をする。
【0028】
(a)は板厚公差が−0.2mm、すなわち板厚t=1.8mmの場合である。被接合材kの溝の深さを1.1mm(C1.1)、被接合材表面からピンツール先端までの距離を1.4mmとすると、突合せ部全体を撹拌することができる。
【0029】
(b)は板厚公差が+0.2mm、すなわち板厚t=2.2mmの場合である。被接合材kの溝の形状、被接合材表面からピンツール先端までの距離を上記同様としても突き合わせ部全体を撹拌することができる。
【0030】
(c)は板厚公差が−0.5mm、すなわち板厚t=1.5mmの場合である。被接合材の溝の形状、被接合材表面からピンツール先端までの距離を上記同様としても突合せ部全体を撹拌し、なおかつピンツール先端は定盤には接触しないようにすることができる。
【0031】
(d)は板厚公差が+0.5mm、すなわち板厚t=2.5mmの場合である。被接合材の溝の形状、被接合材表面からピンツール先端までの距離を上記同様としても突合せ部全体を撹拌することができる。
以上のように被接合材の板厚tが2mmの場合、板厚公差が最大±0.5mmとなっても1種類のピンツールで未接合部を発生させることなく摩擦撹拌接合を行うことができるものである。
【0032】
(他の実施例)
上記に本発明の摩擦撹拌接合方法の一実施例を示したが、下記のように実施することができる。
【0033】
a.被接合材kは両端部にある程度の厚みがあれば、中空の押し出し形材であっても同様に実施できる。また、二枚の被接合材に限らず3枚以上の被接合材を相互に突き合わせた状態で同時に接合することも可能であることは言うまでもない。この場合、突き合わせ端部の裏面に溝を設けておき、突き合わせ部の数に対応する複数の接合工具11を用いて、一斉に摩擦撹拌接合作業を行えばよい。
【0034】
b.溝の断面形状については、上記実施例に限定されるものではなく適宜変更できる。
【0035】
c.接合工具の移動速度は、被接合材の材質、種類、サイズあるいは溝の断面形状等に応じて適宜変更できる。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したことから明らかなように、本発明にかかる摩擦撹拌接合継手およびその接合方法には、つぎのような優れた効果がある。
【0037】
(1)請求項1の摩擦撹拌接合継手は、摩擦撹拌接合作業時に被接合材の板厚の製作上の公差があっても突き合わせ面の裏面側に未接合部が生じないので、突き合わせ端から亀裂が入らず疲労強度が向上するから、気密性が要求される新幹線車両の構体の素材として好適である。また、被接合材の端部に溝を設けるだけの簡単な構成で、押出形材では機械加工も不要であり、上記公報に記載の定盤に溝を設ける従来の技術のように、位置合わせが不要で接合作業が容易であり、また被接合材が三枚以上になっても複数の突き合わせ部を同時に接合することができる。さらに溶融肉部は裏面側へ突出するが、この突出する溶融肉部は溝の容積を調整することにより溝内に収めることができ、したがって溝からはみ出さないようにする限りは、上記公報に記載の従来の接合方法のように裏面側へはみ出した溶融肉部を切削するという手間のかかる作業が不要になる。
【0038】
(2)請求項2に記載の継手は、ピンツール挿入側と反対の面は溝以外の箇所が平坦であり、仮に溝内に空間部が生じてもパテなどで埋めて簡単に修復できるので、接合工具のショルダーにより凹状部が形成されたり疵がついたりしやすいピンツール挿入側に比べて平坦で外観がきれいであるため、外板面とするのに適する。
【0039】
(3)請求項3に記載の継手は、接合作業時に回転しながら接合方向に沿って移動する接合工具のショルダーによって押し込まれ、塑性流動化した溶融肉部が裏面側に溝内に下りて溝をほぼ埋め尽くすので、溝内に空間部が生じにくく、仕上がりがきれいである。
【0040】
(4)請求項4に記載の継手は、被接合材裏面に設ける溝の幅を接合工具のショルダーの幅よりも狭くしたから、溝の外側が定盤で支持され、接合工具のショルダーの反力を受けるので、接合工具の移動時にピンツール先端と定盤との間隔をほぼ一定に保って接合作業が行えるとともに、被接合材の突き合わせ部近傍が裏面側に変形するのが防止される。
【0041】
(5)請求項5に記載の摩擦撹拌接合方法では、摩擦撹拌接合作業時に接合工具のピンツール先端が被接合材の突き合わせ部の溝内に位置するから、被接合材に公差があっても突き合わせ端部の裏面側に未接合部が発生せず、突き合わせ端から亀裂が入らなくなって疲労強度が上がる。しかも、従来の接合方法と違って被接合材の板厚が変わる度に接合工具のピンツールが被接合材の裏面に貫通しないようにピンツール長さがその板厚に応じた接合工具に取り替えるという施工管理が不要になり、接合作業が容易になる。そのほか、ピンツール先端は溝内に露出し空間部で回転するので、摩擦撹拌作用が促進され、効率よく接合される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例にかかる被接合材と接合工具のピンツールとの関係を示す正面図である。
【図2】図2(a)は図1の被接合材を接合する前の状態における裏面側より見た斜視図、図2(b)は図1の被接合材を接合した後の状態における裏面側より見た斜視図で、各図とも被接合材の一部を省略している。
【図3】本発明の他の実施例にかかる被接合材と接合工具のピンツールとの関係を示す正面図である。
【図4】本発明の他の実施例にかかる被接合材と接合工具のピンツールとの関係を示す正面図である。
【図5】本発明の他の実施例にかかる被接合材と接合工具のピンツールとの関係を示す正面図である。
【図6】本発明の摩擦撹拌接合方法に用いる接合装置の一例を示す側面図である。
【図7】本発明の実施例にかかる被接合材を突き合わせて接合工具にて摩擦撹拌接合する作業途中を示す斜視図である。
【図8】本発明の実施例にかかる被接合材を突き合わせて接合工具にて摩擦撹拌接合する作業途中を示す側方視断面図である。
【図9】図9(a)〜図9(d)はそれぞれ本発明の摩擦撹拌接合方法の実施例を示すものであり、被接合材の板厚公差により板厚が変化した場合でも1種類のピンツールで摩擦撹拌接合が可能であることを説明する図である。
【符号の説明】
1 摩擦撹拌接合装置
10 接合ヘッド
11 接合工具
12 ショルダー
13 ピンツール(接合ピン)
k 被接合材
m・n・o・p 溝
s 凹状部
w 溶融肉部(塑性流動部)
Claims (5)
- 突き合わせの摩擦撹拌接合を行う少なくとも二枚の被接合材の突き合わせ部の定盤側に、接合方向に沿って連続する溝を接合工具のピンツール先端が該溝内に達するが上記定盤には達しないように設け、摩擦撹拌接合したこと
を特徴とする摩擦撹拌接合継手。 - 上記摩擦撹拌接合継手のピンツール挿入側と反対面を外板面とすること
を特徴とする請求項1記載の摩擦撹拌接合継手。 - 上記溝の容量を、上記接合工具のショルダーによって上記二枚の被接合材の表面に形成される凹状部の容量にほぼ一致させたこと
を特徴とする請求項1又は2記載の摩擦撹拌接合継手。 - 上記溝の幅を、上記接合工具のショルダーの幅よりも狭くしたこと
を特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の摩擦撹拌接合継手。 - 定盤上で少なくとも二枚の被接合材の相対向する辺を突き合わせ、該突き合わせ辺に沿って接合工具にて摩擦接合する接合方法において、
上記各被接合材の上記突き合わせ辺の定盤側に、接合方向に沿って連続する溝をあらかじめ設けておくとともに、該溝の深さを上記接合工具の挿入されるピンツール先端が上記溝内に位置するが上記定盤には達しないように設定しておき、
上記定盤と反対側の面から接合工具のピンツールを上記突き合わせ辺間に挿入し、回転させながら接合方向に移動させて摩擦撹拌接合すること
を特徴とする摩擦撹拌接合方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2002226479A JP2004066276A (ja) | 2002-08-02 | 2002-08-02 | 摩擦撹拌接合継手とその接合方法 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2008307598A (ja) * | 2007-06-18 | 2008-12-25 | Hidetoshi Fujii | 摩擦撹拌接合用の裏当部材、及び摩擦撹拌接合方法 |
JP2009241110A (ja) * | 2008-03-31 | 2009-10-22 | Tokyu Car Corp | 摩擦撹拌接合用の裏当部材及び摩擦撹拌接合方法 |
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2002
- 2002-08-02 JP JP2002226479A patent/JP2004066276A/ja active Pending
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JP2009241110A (ja) * | 2008-03-31 | 2009-10-22 | Tokyu Car Corp | 摩擦撹拌接合用の裏当部材及び摩擦撹拌接合方法 |
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