【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アナログ電話回線併用ＡＤＳＬ（非対称デジタル加入者線）通信におけるノイズ除去フィルタに関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
ＡＤＳＬ通信は、インターネットの全世界的利用によってもたらされた技術であり、近年急速に普及したものである。このＡＤＳＬ通信は、アナログ電話回線の併用として利用するものであり、ＩＴＵ・Ｔ、Ｇ９９２・１及びＧ９９２・２国際電気通信連合の勧告に、特に日本規格としてのＡｎｎｅｘＥとして示されているように、使用する周波数帯域はユーザー側上り下りの情報チャンネルで、２５ｋＨｚ〜１，１０４ｋＨｚに定められている。
【０００３】
このＡＤＳＬ通信においては、特に下りの高い周波数のチャンネルが電話局からの距離の影響を大きく受けて信号の減衰が大きくなる。このため、電話回線の局からの距離により通信情報量が減って、通信スピードが低下する。このように、ＡＤＳＬ通信は、その使用環境によって理論値と実際の通信スピードとの間に大きな差が生じるため、通信スピードに関する不満と関心を持っているユーザーが多い。そこで、市場には、少しでも通信スピードの低下を防ぐため、ノイズ除去用製品が多く出回っている。現在、市場にあるノイズ除去用製品は殆どリングコアに数ターン捲いたコモン・モード・トランスによるものであり、しかも短波帯以上でインピーダンスが高くなるように設定されていた。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術は、短波帯以上におけるノイズの除去を行うように設定されていたが、この周波数帯域のノイズはＡＤＳＬ通信に影響を及ぼさないことが実証試験で確認されている。このため従来の製品ではノイズを取り除いてＡＤＳＬ通信の通信スピードを改善するには至っていなかった。
【０００５】
また、ＡＤＳＬ通信帯域内で発生するノイズに関して、ＡＤＳＬ通信帯域内の広い範囲にランダムに分布するノイズは簡単に取り除くことはできない。ところが、そのような広範囲にランダムに発生するノイズは、通信スピードに殆ど影響を与えることがない。これに対して、一定の周波数帯域に常時発生する放送電波は、ＡＤＳＬ通信における複数のチャンネルを長時間一度に使用不能にしてしまうため、通信スピードに非常に大きな影響を与えていた。
【０００６】
本発明は、上記従来技術の課題に鑑みると共に放送電波による影響に着目してなされたもので、ＡＭ放送電波による妨害を除去することで、通信スピードを改善するＡＤＳＬ通信用ノイズ除去フィルタを提供するものである。
【０００７】
【課題を解決するための手段】
本発明のＡＤＳＬ通信用ノイズ除去フィルタは、アナログ電話回線併用ＡＤＳＬ通信において、電話回線又はスプリッタとＡＤＳＬモデムとの間の２線間に、ＡＤＳＬ帯域内のＡＭ放送周波数にトラップ周波数を合わせたトラップ回路を設けてなるものである。このＡＤＳＬ通信用ノイズ除去フィルタにおける前記トラップ回路は、複数のＡＭ放送周波数にそれぞれトラップ周波数を合わせた複数のトラップ回路からなるものである。
【０００８】
【発明の実施の形態】
本発明のＡＤＳＬ通信用ノイズ除去フィルタにおいては、電話回線又はスプリッタとＡＤＳＬモデムとの間の２線間にトラップ回路を設けている。このトラップ回路はＬＣ共振回路からなり、そのトラップ周波数がＡＤＳＬ帯域内のＡＭ放送周波数に設定されている。このトラップ回路におけるトラップ周波数は、ＡＤＳＬ通信帯域内のＡＭ放送帯域にチューニングできるように構成されている。このトラップ回路を設けることにより、通信スピードに大きな影響を与えるＡＭ放送電波を除去することができ、通信スピードを改善することができる。また、トラップ回路を複数設け、そのトラップ周波数をそれぞれ複数のＡＭ放送の周波数に設定することで、複数のＡＭ放送電波もそれぞれトラップ回路で除去することができる。
【０００９】
【実施例】
以下図面に基づいて本発明の実施例を説明する。図１は本発明の一実施例に係るＡＤＳＬ通信用ノイズ除去フィルタの構成を示す回路図、図２はＡＤＳＬ通信における周波数帯域とチャンネルの状態をグラフ化した説明図、図３はＡＭ放送電波による影響の状態をグラフ化した説明図、図４は本発明のノイズ除去フィルタを使用した場合のＡＭ放送電波による影響の状態をグラフ化した説明図である。
【００１０】
図１に示すように、本実施例におけるＡＤＳＬ通信用ノイズ除去フィルタは、図中右側に接続されるアナログ電話回線（又はスプリッタからの入出力線）と図中左側に接続されるＡＤＳＬモデムとの間の２線Ｌ１，Ｌ２間にＬＣ直列共振回路からなるトラップ回路ＴＲＰを接続することにより構成されている。このトラップ回路ＴＲＰにおけるコンデンサＣは、可変コンデンサからなり、ユーザー等がトラップ周波数を可変することが出来るように構成されている。
【００１１】
アナログ電話回線のアナログ電話通話帯域内の伝送インピーダンスは、一般に６００Ωであり、ＡＤＳＬ通信帯域内の伝送インピーダンスＺ２は１００Ωに設定されている。また、ＡＤＳＬモデムの入力インピーダンスＺ１も、伝送インピーダンスＺ２にマッチングさせるため１００Ωに設定されている。従って、トラップ回路ＴＲＰに並列に１００Ωが負荷となることとＬＣのバランスを考慮し、Ｑを出来るだけ大きく設定しトラップの効果を上げるため、インダクタンスＬの直流抵抗を低くするように設定している。尚、Ｑ＝ωＬ／Ｒの関係がある。
【００１２】
図２に示す例においては、ＡＤＳＬ通信は２５．８７５ｋＨｚ〜１，１０４ｋＨｚの周波数帯域内に１チャンネルの幅が約４．３ｋＨｚで全チャンネル（「ピン」とも呼ばれる）数が２５６チャンネルとなるようにチャンネルＣｎが設けられ、ＡＭ・ＦＭ変調を行うことで１Ｈｚ当たりのｂｉｔ数を多く通信するものとなっている。また、設定されたチャンネルＣｎにおいて、２５．８７５ｋＨｚ〜１３８ｋＨｚまでの周波数を上り帯域Ｂ１として使用し、１３８ｋＨｚ〜１，１０４ＫＨｚまでの周波数を下り帯域Ｂ２として使用している。尚、この上り帯域Ｂ１と下り帯域Ｂ２の周波数は、勧告に基づいて設定しているに過ぎないため、様々な方式により設定が異なる場合がある。
【００１３】
このＡＤＳＬ通信においては、日本で既に利用されているＡｎｎｅｘＡ及びＡｎｎｅｘＣ方式の下り帯域Ｂ２の帯域内であるところの５２０ｋＨｚ〜１，１０４ｋＨｚの帯域Ｂ３がＡＭ放送と重なる帯域となる。ＡＭ放送電波は電話回線がアンテナとなってＡＤＳＬ通信に混信する。ＡＭ放送は一つのチャンネルの周波数帯域が１０ｋＨｚであり、ＡＤＳＬ通信の２チャンネル分に相当する。ところが、強電界地域においては、ＡＭ放送電波ＡＭの帯域幅が数倍に広がるため、図３に示すように、ＡＤＳＬ通信の複数のチャンネル、例えばチャンネルＣｎ１〜Ｃｎ７に影響を与えることになる。このように隣接する複数のチャンネルＣｎ１〜Ｃｎ７にＡＭ放送電波ＡＭが影響すると、その部分の情報を読み取ることができなくなる。その結果、読み取り出来ないチャンネルが閉鎖されて得られる情報量が減少することにより、情報読み取りスピードが低下し、通信スピードが著しく遅くなる。
【００１４】
このような強電界地域におけるＡＭ放送電波ＡＭによる影響が生じる場合に、図１に示す本実施例のフィルタを設け、コンデンサＣを可変することでトラップ周波数をこのＡＭ放送電波ＡＭの周波数に設定すると、図４に示すようになる。即ち、ＡＭ放送電波ＡＭ及びその広がった部分のほとんどを除去することができ、情報が読み取れずに閉鎖されるチャンネルを非常に少なくすることができる。このため、通信スピードを著しく改善することができる。
【００１５】
また、日本全国にあるＡＭ放送局の送信所が、一地域に集中している場合には、複数のＡＭ放送電波によってＡＤＳＬ通信が妨害されることがある。このような場合には、各ＡＭ放送の周波数にそれぞれトラップ周波数を合わせたトラップ回路を複数設けることにより、ＡＭ放送電波のほとんどを除去することができ、通信スピードを改善することができる。
【００１６】
【発明の効果】
本発明によれば、ＡＤＳＬ通信に大きく且つ長時間影響を与えるＡＭ放送電波を取り除くことができ、ＡＤＳＬ通信の通信スピードを改善することができる。
【００１７】
また、複数のＡＭ放送電波による通信障害が発生する場合でも、トラップ回路を増設するだけで改善することができ、極めて簡単に対処することができる。
【００１８】
更に、構造上はトラップ回路を２線間に増設するだけであるため、このトラップ回路をアダプタ化して着脱及び多数増設可能とすることにより、ユーザー自ら簡単に通信障害に対処することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の一実施例に係るＡＤＳＬ通信用ノイズ除去フィルタの構成を示す回路図である。
【図２】ＡＤＳＬ通信における周波数帯域とチャンネルの状態をグラフ化した説明図である。
【図３】ＡＭ放送電波による影響の状態をグラフ化した説明図である。
【図４】本発明のノイズ除去フィルタを使用した場合のＡＭ放送電波による影響の状態をグラフ化した説明図である。
【符号の説明】
ＴＲＰ トラップ回路
Ｃｎ チャンネル
Ｂ１ 上り帯域
Ｂ２ 下り帯域
ＡＭ ＡＭ放送電波[0001]
TECHNICAL FIELD OF THE INVENTION
The present invention relates to a noise removal filter in ADSL (Asymmetric Digital Subscriber Line) communication using an analog telephone line.
[0002]
[Prior art]
ADSL communication is a technology brought about by the worldwide use of the Internet, and has been rapidly spread in recent years. This ADSL communication is used in combination with an analog telephone line, and as shown in the recommendations of the ITU-T, G992.1 and G992.2 International Telecommunication Union, in particular, as AnnexE as a Japanese standard, The frequency band to be used is a user-side up / down information channel, and is set to 25 kHz to 1,104 kHz.
[0003]
In this ADSL communication, especially, a channel of a high frequency in the downstream is greatly affected by the distance from the central office, and signal attenuation is increased. As a result, the amount of communication information decreases due to the distance from the telephone line station, and the communication speed decreases. As described above, since the ADSL communication has a large difference between the theoretical value and the actual communication speed depending on the use environment, many users are dissatisfied and interested in the communication speed. Therefore, in order to prevent the communication speed from lowering even slightly, many products for noise removal are on the market. At present, most products for noise removal on the market are based on common mode transformers wound around a ring core for several turns, and the impedance has been set to be higher than the short wave band.
[0004]
[Problems to be solved by the invention]
The above prior art was set to remove noise in a short wave band or higher, but it has been confirmed by a demonstration test that noise in this frequency band does not affect ADSL communication. For this reason, conventional products have not been able to remove noise to improve the communication speed of ADSL communication.
[0005]
In addition, regarding noise generated in the ADSL communication band, noise randomly distributed over a wide range in the ADSL communication band cannot be easily removed. However, such noise that occurs randomly over a wide area hardly affects the communication speed. On the other hand, a broadcast radio wave constantly generated in a certain frequency band makes a plurality of channels in the ADSL communication unusable at one time for a long time, and thus has a great influence on the communication speed.
[0006]
SUMMARY OF THE INVENTION The present invention has been made in view of the above-mentioned problems of the prior art and has been made by paying attention to the influence of broadcast waves, and provides an ADSL communication noise elimination filter that improves communication speed by removing interference caused by AM broadcast waves. Things.
[0007]
[Means for Solving the Problems]
A noise reduction filter for ADSL communication according to the present invention is a trap circuit that adjusts a trap frequency to an AM broadcast frequency in an ADSL band between two lines between a telephone line or a splitter and an ADSL modem in ADSL communication using an analog telephone line. Is provided. The trap circuit in the ADSL communication noise elimination filter includes a plurality of trap circuits each having a trap frequency adjusted to a plurality of AM broadcast frequencies.
[0008]
BEST MODE FOR CARRYING OUT THE INVENTION
In the noise removal filter for ADSL communication of the present invention, a trap circuit is provided between two lines between a telephone line or a splitter and an ADSL modem. This trap circuit comprises an LC resonance circuit, and its trap frequency is set to the AM broadcast frequency in the ADSL band. The trap frequency in this trap circuit is configured so that it can be tuned to the AM broadcast band within the ADSL communication band. By providing this trap circuit, it is possible to remove AM broadcast radio waves that greatly affect the communication speed, thereby improving the communication speed. In addition, by providing a plurality of trap circuits and setting the trap frequencies to the frequencies of a plurality of AM broadcasts, a plurality of AM broadcast radio waves can be respectively removed by the trap circuits.
[0009]
【Example】
Hereinafter, embodiments of the present invention will be described with reference to the drawings. FIG. 1 is a circuit diagram showing a configuration of a noise removal filter for ADSL communication according to an embodiment of the present invention. FIG. 2 is an explanatory diagram showing a frequency band and a channel state in ADSL communication. FIG. 4 is an explanatory diagram showing a graph of the state of the influence, and FIG. 4 is an explanatory diagram showing a graph of the state of the influence of the AM broadcast wave when the noise removal filter of the present invention is used.
[0010]
As shown in FIG. 1, the ADSL communication noise elimination filter according to the present embodiment includes an analog telephone line (or an input / output line from a splitter) connected to the right side in the figure and an ADSL modem connected to the left side in the figure. It is configured by connecting a trap circuit TRP including an LC series resonance circuit between the two lines L1 and L2. The capacitor C in the trap circuit TRP is composed of a variable capacitor, and is configured so that a user or the like can change the trap frequency.
[0011]
The transmission impedance of the analog telephone line in the analog telephone communication band is generally 600Ω, and the transmission impedance Z2 in the ADSL communication band is set to 100Ω. The input impedance Z1 of the ADSL modem is also set to 100Ω to match the transmission impedance Z2. Therefore, in consideration of the load of 100Ω in parallel with the trap circuit TRP and the balance of LC, the direct current resistance of the inductance L is set to be low in order to increase Q as much as possible and to increase the effect of the trap. . Note that there is a relationship of Q = ωL / R.
[0012]
In the example shown in FIG. 2, ADSL communication is performed so that the width of one channel is about 4.3 kHz and the number of all channels (also referred to as “pins”) is 256 in a frequency band of 25.875 kHz to 1,104 kHz. A channel Cn is provided, and the number of bits per Hz is increased by performing AM / FM modulation. Further, in the set channel Cn, a frequency from 25.875 kHz to 138 kHz is used as an up band B1, and a frequency from 138 kHz to 1,104 KHz is used as a down band B2. Note that the frequencies of the upstream band B1 and the downstream band B2 are merely set based on the recommendation, and thus the settings may be different depending on various methods.
[0013]
In this ADSL communication, a band B3 of 520 kHz to 1,104 kHz, which is within the downstream band B2 of the AnnexA and AnnexC systems already used in Japan, is a band overlapping with AM broadcasting. AM broadcast radio waves interfere with ADSL communication using a telephone line as an antenna. In AM broadcasting, the frequency band of one channel is 10 kHz, which corresponds to two channels of ADSL communication. However, in the strong electric field area, the bandwidth of the AM broadcast radio wave AM is several times larger, so that it affects a plurality of channels of ADSL communication, for example, channels Cn1 to Cn7, as shown in FIG. When the AM broadcast wave AM affects a plurality of adjacent channels Cn1 to Cn7 in this manner, it becomes impossible to read the information of that portion. As a result, the amount of information obtained by closing the unreadable channel is reduced, so that the information reading speed is reduced and the communication speed is significantly reduced.
[0014]
When the influence of the AM broadcast wave AM in such a strong electric field area occurs, the filter of the present embodiment shown in FIG. 1 is provided, and the trap frequency is set to the frequency of the AM broadcast wave AM by changing the capacitor C. , As shown in FIG. That is, it is possible to remove most of the AM broadcast wave AM and the spread portion thereof, and it is possible to greatly reduce the number of channels that cannot be read and are closed. Therefore, the communication speed can be remarkably improved.
[0015]
Further, when the transmitting stations of AM broadcasting stations nationwide are concentrated in one area, ADSL communication may be interrupted by a plurality of AM broadcasting radio waves. In such a case, by providing a plurality of trap circuits each having a trap frequency adjusted to the frequency of each AM broadcast, most of the AM broadcast radio waves can be removed, and the communication speed can be improved.
[0016]
【The invention's effect】
ADVANTAGE OF THE INVENTION According to this invention, the AM broadcast radio wave which has a large influence on ADSL communication for a long time can be removed, and the communication speed of ADSL communication can be improved.
[0017]
Further, even when a communication failure occurs due to a plurality of AM broadcast waves, it can be improved simply by adding a trap circuit, and it can be dealt with very easily.
[0018]
Further, since the trap circuit is merely added between two lines in terms of structure, the user can easily cope with a communication failure by making this trap circuit an adapter to enable detachment and addition of a large number.
[Brief description of the drawings]
FIG. 1 is a circuit diagram showing a configuration of a noise removal filter for ADSL communication according to one embodiment of the present invention.
FIG. 2 is an explanatory diagram showing a graph of a frequency band and a channel state in ADSL communication.
FIG. 3 is an explanatory diagram showing a state of influence by an AM broadcast wave in a graph.
FIG. 4 is an explanatory diagram showing a graph of a state of influence by an AM broadcast wave when the noise removal filter of the present invention is used.
[Explanation of symbols]
TRP Trap circuit Cn Channel B1 Up band B2 Down band AM AM broadcast wave
