JP2004061352A - トルク計測装置 - Google Patents

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Shuichi Umezawa
梅沢 修一
Hajime Obikawa
帯川 元
Kiyoshi Kurosawa
黒澤 潔
Kazuomi Shirakawa
白川 和臣
Katsuaki Ohashi
大橋 克明
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Abstract

【課題】多種多様な被計測系に対して適用可能に、光学的に非接触かつより低出力のレーザ光で、安価に計測することができるトルク計測装置である。
【解決手段】トルク計測装置1は、レーザ光等の光線を出力する出力装置2と、光センサを兼ねて回転軸8に離接する方向に微調節自在に設けられた複数の照射光学系4、5と、軸方向に異なる位置で回転軸8の表面に取り付けられ、回転軸8に照射された光線の反射状態をそれぞれ変化させる複数の反射体23,24と、反射体23,24から反射される各反射光線の光強度変化をそれぞれ検出する光検知装置15,22と、この光検知装置15,22からの出力信号に基づいて回転軸8のトルクを求める信号処理装置3とで構成される。各照射光学系4,5は、照射用集光レンズ11,18をそれぞれ備え、この照射用集光レンズ11,18で各光線のビーム径、焦点距離および焦点位置を調節して回転軸8に一定の入射角で入射光線を照射し、この入射光線と回転軸8で反射した反射光線とが個別の光路を経由するようにしたものである。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転機器の回転速度および軸トルクを非接触で光学的に計測するトルク計測装置に係り、特に、コンバインドサイクル発電プラント、原子力発電プラントあるいは蒸気タービンプラントに適用されるトルク計測装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
火力発電プラントの熱効率の向上は、燃料の節約および発電コストの低減を図る上で益々重要になっている。火力発電プラントの中でも高効率、高運用性を図る立場からコンバインドサイクル発電プラントが注目される。
【0003】
コンバインドサイクル発電プラントの中には、1つのプラントに複数のユニットを備え、各ユニットは1つのユニット中にガスタービン(GT)と蒸気タービン(ST)が存在し、1つの発電機(G)に接続される一軸型の構成になっているものがある。
【0004】
一軸型のコンバインドサイクル発電プラントでは、プラント熱効率が変化した場合、その原因が発電プラントのどの構成機器にあるのかを特定することが、熱効率管理上重要である。
【0005】
しかし、一軸型のコンバインドサイクル発電プラントにおいて、プラント熱効率が低下した場合、個々の構成機器の効率精度を精度よく検出できないため、熱効率低下原因がガスタービン側にあるのか、蒸気タービン側にあるのか、あるいは他の主要構成機器にあるのかを把握し、判断することが困難であった。
【0006】
従来、コンバインドサイクル発電プラントの熱効率の変化原因を特定するために、本発明者等は特開2002−22564号公報に開示した回転体の光学的なトルク計測装置Aを、図20に示すように開発した。
【0007】
従来のトルク計測装置Aは、回転体Bに2つの反射体C、Cを軸方向に異なる位置に貼着し、両反射体C、Cにレーザ装置Dから発振されたレーザ光Eをそれぞれ照射して両反射体C、Cからの反射レーザ光FをビームスプリッターGにより分岐検出して信号処理装置Hにて信号処理する構成である。
【0008】
トルクの測定方法は、反射体Cから反射される反射レーザ光Fで回転体Bの回転周期を検出することで回転体Bの回転速度を検出し、さらに両反射体C、Cから反射されるそれぞれの反射レーザ光Fの位相差を検出することで回転体Bの軸トルクを検出するものである。
【0009】
一方、このトルク計測装置Aは、火力発電プラントのみならず、原子力発電プラントあるいはその他の機器への適用が期待される。原子力発電プラントは、高圧タービンと低圧タービンとが単一の発電機に並設された構成であり、コンバインドサイクル発電プラントの場合と同様に、プラント発電効率が低下した場合の原因が高圧タービンであるのか低圧タービンであるのかあるいは他の主要構成機器にあるのかを特定することが重要である。このため、各機器の効率精度のトルク計測装置Aによる検出が検討される。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従来のトルク計測装置Aは、レーザ装置Dからのレーザ光Eを、ビームスプリッターGを通して回転体Bの反射体Cに照射して、反射体Cからの反射レーザ光FをビームスプリッターGにより分岐検出するため、レーザ光の光損失が発生し、光損失が大きい。このため、計測に使用されるレーザ光は、光損失が発生しても必要な出力が得られる例えばHe−Neレーザ等のより高出力のレーザ光に限定される。
【0011】
また、原子力発電プラントに使用される蒸気タービンに従来のトルク計測装置Aを適用しようとする場合、その構造上、蒸気タービンの主軸上に、従来のトルク計測装置を設置するスペースが確保できず、トルク計測装置の小型化が課題となる。
【0012】
さらに、トルク計測装置の原子力発電プラントへの適用例のように、様々な被測定系に対し、より容易に適用可能とするためには、トルク計測装置の小型化、軽量化、低コスト化、計測の安定化および計測に使用するレーザ光の低出力化が求められる。
【0013】
本発明は、上述した従来の事情に対処するためになされたものであり、多種多様な被計測系に対して適用可能に、光学的に非接触かつより低出力のレーザ光で、安価に計測することができるトルク計測装置を提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明の他の目的は、照射光学系あるいは反射光学系にビームスプリッタを不要として、小型コンパクト化を図るとともに、レーザ光等の光線の光損失を小さくして計測精度を向上させたトルク計測装置を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るトルク計測装置は、上述の目的を達成するために、請求項1に記載したように、レーザ光等の光線を出力する出力装置と、光センサを兼ねて回転軸に離接する方向に微調節自在に設けられた複数の照射光学系と、軸方向に異なる位置で前記回転軸の表面に取り付けられ、回転軸に照射された光線の反射状態をそれぞれ変化させる複数の反射体と、前記反射体から反射される各反射光線の光強度変化をそれぞれ検出する光検知装置と、この光検知装置からの出力信号に基づいて回転軸のトルクを求める信号処理装置とで構成され、前記照射光学系は、照射用集光レンズをそれぞれ備え、この照射用集光レンズで各光線のビーム径、焦点距離および焦点位置を調節して回転軸に一定の入射角で入射光線を照射し、この入射光線と回転軸で反射した反射光線とが個別の光路を経由するようにしたことを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明に係るトルク計測装置は、上述の目的を達成するために、請求項2に記載したように、前記照射用集光レンズを単一のレンズで構成し、このレンズの中心軸を含む面で分割した対称領域の一方を入射光線の入射光路とし、前記対称領域の他方を反射光線の反射光路としたことを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明に係るトルク計測装置は、上述の目的を達成するために、請求項3に記載したように、前記照射用集光レンズを芯取りしたレンズとしたことを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明に係るトルク計測装置は、上述の目的を達成するために、請求項4に記載したように、前記照射光学系の光路にプリズムを設けたことを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明に係るトルク計測装置は、上述の目的を達成するために、請求項5に記載したように、前記プリズムが柱形状で両端面の法線が軸方向に対し一定の角度を有するようにしたことを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明に係るトルク計測装置は、上述の目的を達成するために、請求項6に記載したように、前記プリズムを入射光線側の入射光路に設けたことを特徴とするものである。
【0021】
また、本発明に係るトルク計測装置は、上述の目的を達成するために、請求項7に記載したように、前記照射光学系は、受光ファイバを具備し、受光ファイバのコア直径を50μmよりも大きな径としたことを特徴とするものである。
【0022】
また、本発明に係るトルク計測装置は、上述の目的を達成するために、請求項8に記載したように、前記照射光学系は、受光ファイバを具備し、受光ファイバのコア直径を分散値の影響が無視可能な径としたことを特徴とするものである。
【0023】
また、本発明に係るトルク計測装置は、上述の目的を達成するために、請求項9に記載したように、前記照射光学系は、受光ファイバを具備する一方、前記光検知装置が光電変換素子を具備し、前記受光ファイバのコア直径を、光電変換素子の受光面よりも小さい径としたことを特徴とするものである。
【0024】
また、本発明に係るトルク計測装置は、上述の目的を達成するために、請求項10に記載したように、前記照射光学系の反射光線の反射光路上に、受光側レンズおよび受光ファイバを備え、受光側レンズの焦点距離を12.5mmよりも小さくしたことを特徴とするものである。
【0025】
また、本発明に係るトルク計測装置は、上述の目的を達成するために、請求項11に記載したように、前記回転軸は一軸型コンバインドサイクル発電プラントのタービンと発電機あるいはガスタービンと蒸気タービンとを連結する動力伝達軸、蒸気タービンプラントの高圧タービンと中圧タービンと低圧タービンを連結する動力伝達軸、または原子力発電プラントの高圧タービンと低圧タービンと発電機あるいは低圧タービン同士を連結する動力伝達軸あるいは蒸気タービンプラントのボイラ給水ポンプとボイラ給水ポンプ駆動タービンを連結する動力伝達軸であることを特徴とするものである。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明に係るトルク計測装置の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
【0027】
図1は本発明に係るトルク計測装置の実施形態を示す構成図である。
【0028】
トルク計測装置1は、レーザ光等の光線を出力する出力装置2と信号処理装置3の間に第1の照射光学系4と第2の照射光学系5とを、光ファイバ6および信号伝送手段7を介して並列に設けた構成で、第1の照射光学系4と第2の照射光学系5とで光線のビーム径および位置をそれぞれ調整し、被測定体である回転軸8に光線を照射させて反射光線を検出することでトルクを計測するものである。
【0029】
第1の照射光学系4は、入射側となる入射光ファイバ6Aと反射光線の受光側となる受光ファイバ6Bの間に、入射側から入射側レンズ9、プリズム10、照射用集光レンズ11、および受光側レンズ12を入射光路上に直列にそれぞれ設けた構成である。プリズム10は、両端面が平行でかつ軸方向に対して45度の角度である柱形状とされ、光線の進行方向とプリズム10の端面とが45度の角度をなすように配置される。
【0030】
このとき光路は、光線がプリズム10を通過して、照射用集光レンズ11を面対称な2つの領域に分割した一方の領域を通り、回転軸8で反射した後、再び照射用集光レンズ11の面対称な2つの領域のうち他方側と通るように構成される。
【0031】
また、入射光ファイバ6Aの入射側端部は、第1の照射光学系4に設けられた光コネクタ13を介して第1の照射光学系4の外部と接続される一方、受光ファイバ6Bの反射光路の出口側端部はレンズ14を介して光線の反射光線の強度変化を検出する第1の光検知装置15に接続される。
【0032】
同様に、第2の照射光学系5は、入射側の入射光ファイバ6Aと反射側の受光ファイバ6Bの間に、入射側から入射側レンズ16、プリズム17、照射用集光レンズ18および受光側レンズ19を光路上に直列にそれぞれ設けた構成であり、入射光ファイバ6Aの入射側端部は、第2の照射光学系5に設けられた光コネクタ20を介して第2の照射光学系5の外部と接続される一方、受光ファイバ6Bの反射光路の出口側端部はレンズ21を介して第2の光検知装置22に接続される。
【0033】
また、第2の照射光学系5の光路も第1の照射光学系の光路と同様に、光線がプリズム17を通過して、照射用集光レンズ18を面対称な2つの領域に分割した一方の領域を通り、回転軸8で反射した後、再び照射用集光レンズ18の面対称な2つの領域のうち他方側と通るように構成される。さらに、第2の照射光学系5のプリズム17の形状および配置位置も第1の照射光学系のプリズム11と同等である。
【0034】
これら第1の照射光学系4と第2の照射光学系5は、回転軸8上における第1の照射光学系4が具備する照射用集光レンズ11から照射される光線の照射位置と、第2の照射光学系5が具備する照射用集光レンズ18から照射される光線の照射位置は、回転軸8の軸方向が異なる位置となるように配置される。
【0035】
さらに、第1の照射光学系4と第2の照射光学系5は、図示しない駆動装置により回転軸8の軸方向に移動調節自在にかつ回転軸8の半径方向に微調整可能に設けられる。
【0036】
また、第1の照射光学系4が具備する照射用集光レンズ11の照射位置となる回転軸8上には、光線の反射状態を変化させる第1の反射体23が設けられ、同様に、第2の照射光学系5が具備する照射用集光レンズ18の照射位置となる回転軸8上には第2の反射体24が設けられる。
【0037】
出力装置2は、指向性を持つコヒーレントな光線を出力するレーザ光源で構成される。しかし所要の出力を具備すれば各種レーザ装置も適用可能であり、また、発光ダイオードやランプなどにレンズやミラー、リフレクタを組み合せて特定方向に高強度の光線を出力できる光源も適用可能である。
【0038】
この出力装置2には光伝送光路上でレンズ25を経由して光ファイバ6が接続され、さらに光ファイバ6の他端には、分岐コネクタ26が設けられる。この分岐コネクタ26により光伝送光路および光線が光ファイバ6とともに分岐され、分岐した光ファイバ6の各他端は、第1の照射光学系4と第2の照射光学系5に設けられた各光コネクタ13,20にそれぞれ接続される。
【0039】
一方、第1の光検知装置15および第2の光検知装置22は、信号伝送手段7を介してそれぞれ信号処理装置3に接続される。
【0040】
尚、トルク計測装置1において第1の光検知装置15および第2の光検知装置22は、それぞれ、第1の照射光学系4および第2の照射光学系5内に内蔵させてもよい。
【0041】
次に、トルク計測装置1の作用について説明する。
【0042】
出力装置2は、例えばレーザ発振装置であり、ビーム径0.65mmのレーザ光が出力され、この出力レーザ光はレンズ25によって絞られて光ファイバ6に導かれ、分岐コネクタ26で第1のレーザ光と第2のレーザ光とに分岐される。
【0043】
第1のレーザ光は、光コネクタ13により第1の照射光学系4に案内され、入射側レンズ9で所要のビーム径とされた後、プリズム10内に進入し、プリズム10が具備する光線の進行方向に対して45度の傾きをもつ2つの平行な斜面のうち一方の面で全反射する。
【0044】
プリズム内の斜面で全反射した第1のレーザ光は、さらに進行方向に対して45度の傾きをもつ他方の斜面に向かって進行した後、この斜面で全反射する。この結果、第1のレーザ光は、プリズム10に進入した際の進行方向と平行な向きとされ、プリズム10の外部に進出する。
【0045】
プリズム10を通過した第1のレーザ光は、照射用集光レンズ11を面対称な2つの領域に分割した一方の領域を通過することにより絞られて、0度でない一定の、例えば7.5度の入射角で回転軸8の表面に照射される。
【0046】
この場合、第1のレーザ光のビーム径が、回転軸8の表面で焦点を結ぶように第1の照射光学系4または照射用集光レンズ11の位置調整を行なう。回転軸8の表面に照射される第1のレーザ光のビーム径は例えば1.6mmである。
【0047】
回転軸8の表面に一定の入射角で照射された第1のレーザ光は、入射角と同じ角度の反射角で、入射光線と交わることなく第1の反射体23で反射せしめられる。この反射光線は、再び照射用集光レンズ11の面対称な2つの領域のうち入射光線の入射光路ではない領域を通過して、入射時の第1のレーザ光の進行方向と同じ向きの反射光線とされる。
【0048】
照射用集光レンズ11を通過した反射光線である第1のレーザ光は、受光側レンズ12で絞られて、受光ファイバ6Bに導かれた後、再びレンズ14で所要のビーム径とされ第1の光検知装置15に入力される。
【0049】
第1の光検知装置15では、第1の反射体23で反射した第1のレーザ光の反射光線が光電変換され、光電変換された反射光線の強度に応じた電気信号が信号伝送手段7を介して信号処理装置3に出力される。
【0050】
また、分岐コネクタ26で分岐された第2のレーザ光も第1のレーザ光と全く同様の経路を通過して同様の作用を受ける。すなわち、光コネクタ20により第2の照射光学系5に案内され、入射側レンズ16で所要のビーム径とされた後、プリズム17を経由して照射用集光レンズ18を面対称な2つの領域に分割した一方の領域を通過することで回転軸8の表面に一定の入射角で絞られて照射される。
【0051】
さらに、回転軸8の表面に照射された第2のレーザ光は、入射光線と交わることなく第2の反射体24で反射して、再び、照射用集光レンズ18および受光側レンズ19でビーム径および進行方向が調整され、受光ファイバ6Bに導かれる。受光ファイバ6Bに導かれた、反射光線である第2のレーザ光は、レンズ21で所要のビーム径とされ第2の光検知装置22に入力される。
【0052】
第2の光検知装置22では、第2の反射体24で反射した第2のレーザ光の反射光線が光電変換され、光電変換された反射光線の強度に応じた電気信号が信号伝送手段7を介して信号処理装置3に出力される。
【0053】
回転軸8にトルクがかけられ捩りが発生すると、第1の反射体23からの反射光線を第1の光検知装置15で変換した電気信号と、第2の反射体24からの反射光線を第2の光検知装置22で変換した電気信号との間に位相差が発生する。
【0054】
信号処理装置3では、この第1の光検知装置15から入力される電気信号と第2の光検知装置22から入力される電気信号との位相差から、回転軸8の回転周期とともにトルクを算出するように構成される。
【0055】
ところで、回転軸8に貼着される第1の反射体23および第2の反射体24には、M系列(Maximum−Length Linear Shift Register Sequence)あるいは等間隔のバーコードを有する反射シールが用いられる。
【0056】
M系列の信号は自己相関関数がデルタ関数に近く、近似的に白色雑音(ホワイトノイズ)と見なせるように、人為的にある規則に基づいて作られた不規則信号であり、等間隔のバーコード型反射シールよりも再現性がよい。M系列を第1の反射体23および第2の反射体24として使用される反射シールのバーコードに適用すると、測定環境下における埃や振動に起因する雑音の悪影響を効率よく排除できる。M系列の他に平方剰余列(L系列)や双素数列がある。
【0057】
第1の反射体23および第2の反射体24に設けられるバーコードは、例えば厚さ0.1mm,長さ13.7mmのステンレス鋼をエッチング処理して、0.05mmの深さの溝を配列したものが用いられるが、他の金属材料で形成してもよい。
【0058】
すなわち、第1の反射体23および第2の反射体24に使用される反射シールは,光の反射率が大きなホワイト部分と、光の反射率が小さな部分とを有する。
【0059】
このため、回転軸8に照射されて反射した第1のレーザ光は、第1の反射体23のうち反射率の小さな部分からの反射光線と、反射率の大きな部分からの反射光線および第1の反射体23以外の回転軸8上の部分からの反射光線で構成される。
【0060】
同様に、このため、回転軸8に照射されて反射した第2のレーザ光は、第2の反射体24のうち反射率の小さな部分からの反射光線と、反射率の大きな部分からの反射光線および第2の反射体24以外の回転軸8上の部分からの反射光線で構成される。
【0061】
また、信号処理装置3には、図示しないフィルタリング装置と相関処理装置が内蔵される。フィルタリング装置は、所定レベル以下の検出信号をカットする機能を有する一方、相関処理装置は、第1の電気信号あるいは第2の電気信号における、ある回転周期と次の回転周期の相関関数の算出、および第1の電気信号と第2の電気信号間の相関関数の算出を行なう。
【0062】
次に、第1の照射光学系4および第2の照射光学系5の特徴について説明する。
【0063】
図2は、図1に示す第1の照射光学系4および第2の照射光学系5の構造図である。
【0064】
入射光ファイバ6Aには、SMF(single mode fiber)が用いられ、受光ファイバ6Bには、MMF(multi mode fiber)が用いられる。
【0065】
また、光線の入射角および反射角はともに7.5度であり、入射光線と反射光線の中心線のなす角度は15度となる。
【0066】
トルク計測装置1では、従来は入射光線と反射光線とが単一の光路を経由し、ビームスプリッター等の分光手段で光レーザを入射光線と反射光線とに分光する構成としたが、プリズム10,17を使用し、かつ単一の照射用集光レンズ11、18を、その中心軸を含む面に対称な2つの領域に分けて考え、入射光線と反射光線の光路をそれぞれ別の領域を経由するセパレート構成とすることで、入射光線と反射光線をそれぞれ個別のセパレート光路とすることができる。すなわち、入射光路と反射光路をセパレートさせ、共通軸を有さない光路とすることができる。
【0067】
このため、トルク計測装置1では、光の損失要因である分光手段における分光を不要とし、原理的に従来、分光手段で発生していた6dB程度の光損失をゼロとすることができる。さらに、光損失をゼロとできることで、従来十分な反射光線強度を得るために必要であった、He−Neレーザ等の例えば10mW程度の高出力のレーザ光の出力を、従来の1/4にすることが可能である。
【0068】
例えば、出力が2.5mW程度の半導体レーザ等のような簡易で低出力なレーザ装置を用いても、従来と同等な反射強度を得て計測用として使用することが可能である。
【0069】
また、従来必要としていた分光手段を不要とするため、部品点数が低減してトルク計測装置1の小型化、軽量化および製造コストの低減が可能である。
【0070】
ここで、従来は、照射光学系における入射光線と反射光線の光路が単一であったため入射光線と反射光線とのビーム開き角度は0度であったが、トルク計測装置1では、入射光線と反射光線の光路を分け個別なセパレート光路としたことで、レーザ光の入射光線と反射光線のなす角度が、例えば15度となった。
【0071】
図3は、入射角0度と7.5度で光線が反射した場合における各焦点距離からの誤差と光損失量の関係を示す図である。
【0072】
図3の横軸は焦点距離からの誤差(mm)を、縦軸は光損失量(dB)をそれぞれ示す。
【0073】
図3において点線は、トルク計測装置1において入射角7.5度で反射体23,24に反射させたときの、焦点距離からの誤差と光損失量の関係を、実線は、従来のトルク計測装置において、入射角0度で、すなわち単一の光路を分光手段で分岐させた光学系における、焦点距離からの誤差と光損失量の関係をそれぞれ示す。
【0074】
尚、使用した受光ファイバ6Bのコア直径は、入射角7.5度の場合と0度の場合ともに50μmである。
【0075】
入射角が0度である場合を示す実線は、分光手段において6dBの光損失があるため、焦点距離からの誤差が0mmのとき、光損失量は6dBとなる。また、点線は下に凸であり焦点距離からの誤差が増加するにつれて、光損失量が非線形に増加することが分かる。
【0076】
一方、入射角7.5度である場合を示す点線は、焦点距離からの誤差が0mmである場合は、光損失も0dBである。しかし、点線は下に凸であり、焦点距離からの誤差が増加するとともに光損失も増加するが、この増加率は入射角が0度である場合を示す実線の増加率よりも大きい。
【0077】
例えば、焦点距離からの誤差が0.1mm以内であれば、入射角7.5度の場合のトルク計測装置1における光損失量は6dB以下となり、入射角が0度である従来のトルク計測装置よりも小さい。
【0078】
しかし、焦点距離からの誤差が0.2mm以上、例えば0.5mmであるとき、入射角が0度の場合では14dB程度となり、これは入射角が7.5度の場合おける焦点距離からの誤差が0.2mm程度の場合に相当し、入射角が7.5度であるトルク計測装置1における光損失量は、入射角が0度である従来のトルク計測装置よりも大きくなる。
【0079】
従って、図3からトルク計測装置1では、光損失量が従来のトルク計測装置よりも小さくなるように、焦点距離からの誤差が0.2mm程度を超えないように、照射用集光レンズ11,18を位置決めする必要がある。
【0080】
そこで、照射用集光レンズ11,18の焦点距離からの誤差が0.2mm以上となっても、光損失量の低減が可能となるように、トルク計測装置1では、受光ファイバ6Bのコア直径の拡張と受光側レンズ12,19の焦点距離の短縮を実施した。受光ファイバ6Bに使用する、一般に市販されるMMFは通常コア直径が50μmのものである。
【0081】
尚、入射光ファイバ6Aには、一般に市販されるコア直径が10μm以下の、例えばコア直径φfが5μmの石英SMFが用いられるが、多成分系ファイバ、プラスチック等の各種光ファイバが適用可能である。
【0082】
図4は、受光ファイバ6Bのコア直径を変化させたときの照射用集光レンズ11,18の焦点距離からの誤差と光損失量の関係を示す図であり、図5は、図4の計測条件を示す説明図である。
【0083】
図5に示すように計測条件は、光源から発せられる光線は、直径1.6mmの平行レーザ光、反射体23,24に向けてレーザ光を絞り込む照射用集光レンズ11,18は、焦点距離f=12.5mm、レンズ曲率C1=0.1178,レンズ曲率C2=0.0000、屈折率n=1.679、非球面定数k=−0.6、厚さ3mmである。ただし、レンズ曲率C2=0.0000は平面であることを示す。
【0084】
受光ファイバ6Bに反射光線を絞り込むための受光側レンズ12,19は、焦点距離f=12.5mm、レンズ曲率C1=−0.1178,レンズ曲率C2=0.0000,屈折率n=1.679,非球面定数k=−0.6,厚さ3mmである。ただし、レンズ曲率C2=0.0000は平面であることを示す。
【0085】
ここで、受光ファイバ6Bのコア直径を例えばφ=50、100、200μmの3種類として試験を実施した。
【0086】
また、照射用集光レンズ11,18の中心軸をX軸、入射光線と反射光線の中心軸で形成される面上で照射用集光レンズ11,18の中心軸Xに垂直な方向軸をY軸とする2次元座標を設定して、照射用集光レンズ11,18の中心の座標を原点(X,Y)=(0、0)とすると、光源の座標は(−15、1.646)、反射体上23,24の焦点位置の座標は(12.213、0)、受光側レンズ12,19の中心の座標は(−40、−1.646)、受光ファイバ6Bの受光部の焦点位置の座標は(−52.213、−16.46)である。照射用集光レンズ11,18の主面はX=−0.287、受光側レンズ12,19の主面はX=−39.713で表される。ここで各座標の単位はミリである。
【0087】
図4において、横軸は焦点距離からの誤差(mm)を、縦軸は光損失量(dB)をそれぞれ示す。
【0088】
また、◆印のプロットは受光ファイバ6Bのコア直径をφ=50μm、■印のプロットは受光ファイバ6Bのコア直径をφ=100μm、▲印のプロットは受光ファイバ6Bのコア直径を200μmとしたときの焦点距離からの誤差と光損失量の関係を示す。
【0089】
図4の結果から、焦点距離からの誤差と光損失量の関係は、受光ファイバ6Bのコア直径が増加すると変化率が小さくなり、緩やかなカーブを描くことが分かる。これは他の条件を一定として受光ファイバ6Bのコア直径のみを増加させると、光損失量を減少させることができることを示す。
【0090】
例えば、焦点距離からの誤差が0.3mmのとき、コア直径が100μmの受光ファイバ6Bを使用すれば、光損失量は13dB程度であるが、コア直径が200μmの受光ファイバ6Bを使用すると、光損失量は1dB程度に抑えることができる。
【0091】
受光ファイバ6Bのコア直径は大きい程、光損失量が小さくなるため、コア直径を大きくすることが効果的であるが、分散値、反射光線を電気信号に変換する際の光電変換素子(APD、アバランシェ・フォト・ダイオード)の受光面の大きさおよび取り扱い安さを条件として考慮する必要がある。
【0092】
受光ファイバ6Bの分散値の影響について説明する。
【0093】
受光ファイバ6Bの分散値が、第1の光検知装置15および第2の光検知装置22におけるADコンバータのサンプリング時間、すなわち反射光線を電気信号に変換する際のAD変換速度に対して無視できない値であると、反射光線を電気変換する際に分散値の影響による誤差が発生する。
【0094】
受光ファイバ6Bには、多モード分散がほぼ0に設計され、コア中心からクラッド部に近づくに従い屈折率が徐々に減少する構造をもつグレーデッドインデックス(GI)形光ファイバが使用される。ここで、屈折率がコア内で一様であるステップ形光ファイバの分散値はGI形光ファイバにおける多モード分散値よりも大きな値となると考えられる。
【0095】
したがって、ステップインデックス形光ファイバを使用すると仮定して、その分散値がADコンバータのサンプリング時間よりも十分に小さければGI形光ファイバを使用した場合においても、条件を満たすこととなる。そこで、分散値の計算の簡略のため、ステップインデックス形光ファイバの場合で分散値の見積もり計算をする。
【0096】
ステップインデックス形光ファイバのモード分散値は、式(1)で表される。
【0097】
【数1】
Figure 2004061352
【0098】
受光ファイバ6Bのコア直径が200μmの場合、コア屈折率N1=1.4775、クラッド屈折率N2=1.45、光速c=3×10m/s、ファイバ長さL=20mであり、式1においてモード分散値を求めると△τ=1.8×10−9sとなる。
【0099】
第1の光検知装置15および第2の光検知装置22におけるADコンバータのサンプリング時間は10−7sであるため、モード分散値が1.8×10−9sであれば、ADコンバータのサンプリング時間よりも十分に小さく、分散値の影響は無視できる。このため、GI形光ファイバを使用した受光ファイバ6Bにおいても、分散値の影響は無視できることが分かる。
【0100】
同様に、受光ファイバ6Bのコア直径を400μmとしても、原理的には、コア直径が200μmである場合と同じ計算となり、分散値による影響は無視できることが分かる。
【0101】
受光ファイバ6Bの先に接続される第1の光検知装置15および第2の光検知装置22において反射光線は電気信号に変換される。この光線の電気信号への変換は、第1の光検知装置15および第2の光検知装置22が具備する、光電変換素子にて行われるが、光電変換素子の受光面の大きさは、φ1000μmであるため、受光ファイバ6Bのコア直径は、φ1000μm以下とすることが必要である。
【0102】
次に、受光ファイバ6Bの取り扱い安さは、曲げ半径が小さく可撓性が大きい程、設置が容易である。受光ファイバ6Bが細い程すなわちコア直径が小さい程、受光ファイバ6Bの曲げ半径は小さくなる。受光ファイバ6Bのコア直径が400μmにおいては設置がやや困難である。
【0103】
また、MMF(multi mode fiber)を受光ファイバ6Bとした場合、入手が容易なコア直径は50μm以外では200μmおよび400μmである。そこで、最適な受光ファイバ6Bのコア直径を決定するために、受光ファイバ6Bのコア直径が50μm、200μm、400μmの場合における分散値、光損失量、光電変換素子(APD)受光面の大きさおよび曲げ半径に対する特徴を表1に示す。表1において○は、良好であることを表し、△は不適切であることを表す。
【0104】
【表1】
Figure 2004061352
【0105】
表1の結果から、受光ファイバ6Bのコア直径は200μmとすることが妥当であると考えられる。
【0106】
図6は、受光側レンズ12,19の焦点距離を変化させたときの照射用集光レンズ11,18の焦点距離からの誤差と光損失量の関係を示す図であり、図7は、図6の計測条件を示す説明図である。
【0107】
図7に示すように、計測条件は、光源から発せられる光線は、直径1.6mmの平行レーザ光、反射体に向けてレーザ光を絞り込む照射用集光レンズ11,18は、焦点距離f=12.5mm、曲率C1=0.1178,曲率C2=0.0000、屈折率n=1.679、非球面定数k=−0.6、厚さ3mmである。ただし、曲率C2=0.0000は平面であることを示す。受光ファイバ6Bのコア直径はφ=50mmである。
【0108】
ここで受光ファイバ6Bに反射光線を絞り込むための受光側レンズ12,19を、焦点距離f=4.5mm、曲率C1=−0.3044,曲率C2=0.0000、屈折率n=1.73、非球面定数k=−0.7、厚さ2.8mmとした。ただし、曲率C2=0.0000は平面であることを示す。
【0109】
また、照射用集光レンズ11,18の中心軸をX軸とし、入射光線と反射光線の中心軸で形成される面上でX軸に垂直な方向をY軸とする2次元座標を設定して、照射用集光レンズ11,18の中心の座標を原点(X,Y)=(0、0)とすると、光源の座標は(−15、1.646)、反射体23,24上の焦点位置の座標は(12.213、0)、受光側レンズ12,19の中心の座標は(−40、−1.646)、受光ファイバ6Bの受光部の焦点位置の座標は(−44.28、−16.46)である。照射用集光レンズ11,18の主面はX=−0.287、受光側レンズ12,19の主面はX=−39.782で表される。ここで各座標の単位はミリである。
【0110】
図6において、横軸は照射用集光レンズ11,18の焦点距離からの誤差(mm)を、縦軸は光損失量(dB)をそれぞれ示す。
【0111】
また、◆印としてプロットしたデータは、図7で示される条件である受光側レンズ12,19の焦点距離をf=4.5mmとした場合のデータであり、■印のプロットは図7において受光側レンズ12,19の焦点距離をf=12.5mmとした場合のデータである。従って、受光側レンズ12,19の焦点距離をf=12.5mmとした■印のプロットは、図4において◆印のプロットと同一である。
【0112】
図6から受光側レンズ12,19の焦点距離を12.5mmとした場合の変化率よりも受光側レンズ12,19の焦点距離を4.5mmとした場合の変化率の方が小さく、緩やかなカーブを描くことがわかる。これは、他の条件を一定にして受光側レンズ12,19の焦点距離を短くすると、光損失量を低減できることを表す。
【0113】
例えば、照射用集光レンズ11,18の焦点距離からの誤差が0.1mmであるとき、焦点距離が12.5mmの受光側レンズ12,19を使用すれば、光損失量は5dB程度発生するが、焦点距離が4.5mmの受光側レンズ12,19を使用すれば、光損失量はほぼゼロにすることができる。
【0114】
トルク計測装置1における第1の照射光学系4および第2の照射光学系5においては、一定の入射角で反射体23、24に照射することで発生する光損失の問題を、受光ファイバ6Bのコア直径を従来のφ=50μmからφ=200μmに拡張し、かつ受光側レンズ12,19の焦点距離の短縮を従来の12.5mmから4.5mmに短縮することで解決し、従来発生していた6dBの光損失をゼロとすることができる。
【0115】
ここで、トルク計測装置1における第1の照射光学系4および第2の照射光学系5においては、単一の照射用集光レンズ11、18を入射光線用と反射光線用の領域に分けて使用するため、入射光線と反射光線との間の距離とレンズのサイズとを合わせる必要がある。すなわち入射光線と反射光線との間の距離が大きくなるとともにレンズのサイズが大きくなり、トルク計測装置1の小型化への抑制要因となる反面、小型化のためにレンズのサイズを小さくすると入射光線と反射光線との間の距離を小さくする必要が発生する。
【0116】
入射光線と反射光線との間隔を小さくするためには、入射光ファイバ6A端部に設けられた入射側レンズ9、16と受光ファイバ6B端部に設けられた受光側レンズ12、19との間隔を小さくする必要がある。そこで、仮に入射側レンズ9、16と受光側レンズ12、19とを並列に並べて構成すると、入射側レンズ9、16と受光側レンズ12、19の構成部が物理的に干渉しない最少間隔の位置における、入射光線と反射光線との距離が最少となる。
【0117】
しかし、トルク計測装置1では、プリズム10,17を用いて入射光線の入射光路を屈折させることで、入射側レンズ9、16と受光側レンズ12、19とが物理的に干渉せずに入射光線と反射光線との距離を小さくすることができる。図2の例では、入射光ファイバ6Aと受光ファイバ6B間の距離は、21.8mmとされる。
【0118】
このとき同時に反射光線の反射光路長を入射光線の入射光路長より短くすることで、入射光線に比べて不安定である反射光線の安定性を向上させる効果が得られる。
【0119】
尚、図1および図2の例では、第1および第2の照射光学系4、5の内部において単一のプリズム10,17を、反射光線の安定性を向上させるために入射光線側の入射光路に設けたが、光路を調整する場合やその他必要に応じて反射光線側の反射光路に設けることも可能であり、また、所要の形状の複数個のプリズムを入射光線側の入射光路および反射光線側の反射光路の双方あるいは一方に設けてもよい。
【0120】
さらに、第1の照射光学系4および第2の照射光学系5に使用される照射用集光レンズ11、18には、いわゆる芯取りが行なわれ、コンパクト化が図られる。そして、筒状ユニットケース内に第1の照射光学系4あるいは第2の照射光学系5を組み込んでユニット化およびコンパクト化することが可能である。
【0121】
また、トルク計測装置1における第1の照射光学系4および第2の照射光学系5は、例えばCDのピックアップ等のように光を物体に反射させて、入射光線と反射光線の情報を信号処理する機構を具備する様々な系に対して適用が可能である。
【0122】
次に回転軸8の回転周期および軸トルクの算出方法について説明する。
【0123】
図8は、図1に示すトルク計測装置1で得られる第1および第2の検出信号を簡略化したタイミングチャートであり、図9はトルク計測装置1における回転周期の計算方法を示す説明図である。
【0124】
図1に示されるトルク計測装置1において、回転軸8の軸方向異なる2位置に第1の反射体23および第2の反射体24を貼着したため、回転軸8が回転すると、第1の反射体23および第2の反射体24で反射したレーザ光は、強弱が周期性をもって繰り返される電気信号に変換される。この電気信号から反射体23、24以外の雑音を、信号処理装置3に備えられたフィルタリング装置で除去すると、図8に示すように変形櫛歯形状の第1および第2の検出信号を回転軸8の回転毎に得ることができる。
【0125】
第1および第2の検出信号は、信号処理装置54に組み込まれた相関処理装置に送られ、時間的に異なる2つの第1の検出信号の相関関数から回転軸8の回転周期が計算される。
【0126】
回転軸8の回転周期の計算方法について説明する。
【0127】
図9のように、時間的に異なる第1の検出信号を抽出して関数F(t)とすると、2つの第1検出信号における回転周期の相関関数φ(τ)は、
【数2】
Figure 2004061352
で表わされる。
【0128】
式(2)から遅れ時間τを0から増加させて相関関数φ(τ)の値を計算する。この計算は、図9に示す最初の検出(パルス)信号を時間的に遅れさせて次のパルス信号との重なり度合を調べる操作に相当する。遅れ時間τが回転周期に近付くと、最初のパルス信号が次のパルス信号で一致するようになり、相関関数φ(τ)の値が大きくなる。この相関関数は、双方のパルス信号が最も一致した場合に最大となり、この時の遅れ時間τが回転周期となる。
【0129】
尚、回転周期は、第1の検出信号と同様に、第2の検出信号からも求めることが可能である。
【0130】
次に回転軸8のトルクの算出方法について説明する。
【0131】
図10は、トルク計測装置1におけるトルクの計算方法を示す説明図である。
【0132】
回転軸8のトルクは、第1の検出信号と第2の検出信号の相関関数φi(τ)から求められる。図10に示すように、第1の検出信号の出力信号を抽出して関数G(t)とし、第2の検出信号の出力信号を抽出して関数G(t)とすると、捩り歪み量の相関関数φi(τ)は、
【数3】
Figure 2004061352
で表わされる。
【0133】
式(3)より、遅れ時間τを0から増加させていき、捩り歪み量の相関関数φi(τ)を計算する。この計算は、第1の検出信号のパルス信号を時間的に遅れさせ、第2の検出信号のパルス信号との重なり度合を調べる操作に相当する。第1および第2の検出信号のパルス信号は同一形状の信号であるため、回転軸8に負荷が存在しない場合、遅れ時間τがなく一致する。
【0134】
一方、回転軸8に負荷が存在する場合には、第2の検出信号のパルス信号に遅れ時間τが発生する。この遅れ時間τは、時間的にずらした第1の検出信号のパルス信号が第2の検出信号のパルス信号と一致して相関関数φi(τ)が最大になった場合の遅れ時間τである。
【0135】
回転軸8に負荷が存在する場合、トルクFtは遅れ時間τから式(4)で計算することができる。
【0136】
【数4】
Figure 2004061352
【0137】
すなわち、トルク計測装置1では、信号処理装置3に内蔵された相関処理装置で、第1および第2の検出信号を回転毎に相関処理することで、回転軸8の回転周期を正確に精度よく計算することができる。さらに、第1の検出信号と第2の検出信号とを相関処理することで遅れ時間τを求め、この遅れ時間τと(4)式から回転軸8のトルクを所定の精度で求めることができる。
【0138】
尚、回転軸8のトルクおよび回転周期の計算方法は従来と同じである。
【0139】
図11は、図1に示すトルク計測装置1および従来のトルク計測装置で得られた検出信号の波形を示す図である。
【0140】
図11において(A)はプリズム10、17を用いた照射光学系4、5で得られた反射光線の検出信号である改良型波形27であり、(B)は従来のトルク計測装置が具備する照射光学系で得られた反射光線の検出信号である従来型波形28である。
【0141】
図11で(A)と(B)を比較すると、改良型波形27と従来型波形28とはいずれも同等な精度および傾向を示しており、プリズム10、17を用いた照射光学系4、5では、従来と同等の精度で、反射光線の検出信号が得られることが確認できる。
【0142】
次にトルク計測装置1のコンバインドサイクル発電プラントへの適用例について説明する。
【0143】
図12は、トルク計測装置1を適用するコンバインドサイクル発電プラントの設備概要を示す図である。
【0144】
コンバインドサイクル発電プラント30は、ガスタービンプラント31と蒸気タービンプラント32とを組み合せて構成され、ガスタービンプラント31から排出される排気ガスを排熱回収ボイラ(HRSG)33に導き、この排熱回収ボイラ33で排気ガスの廃熱が回収されるようになっている。
【0145】
ガスタービンプラント31は、空気を圧縮する空気圧縮機35と、この圧縮空気を用いて燃料を燃焼させる燃焼器36と、この燃焼器36で燃焼せしめられる燃焼ガスにより回転駆動せしめられるガスタービン(GT)37と、このガスタービン37の回転駆動により仕事をさせられる発電機(G)38とを有する。ガスタービン37で仕事をした排気ガスは排熱回収ボイラ(HRSG)33に案内されて熱回収が行なわれた後、煙突39から大気中に放出されるようになっている。
【0146】
一方、ガスタービンプラント31の発電機38は蒸気タービンプラント32の発電機を兼ねており、ガスタービン37、発電機38および蒸気タービン40が回転体としての動力伝達軸41で互いに連結され、一軸上に整列配置されるようになっている。
【0147】
蒸気タービンプラント32は、蒸気発生器を兼ねる排熱回収ボイラ33と、この排熱回収ボイラ33で発生した蒸気により駆動される蒸気タービン40と、この蒸気タービン40で仕事をした蒸気を凝縮させる復水器43と、復水器43で凝縮された復水を復水給水系44を経て排熱回収ボイラ33に案内する給水ポンプ45と、排熱回収ボイラ33でガスタービン37からの排ガスで加熱された流体を気液分離させる低圧ドラム46および高圧ドラム47とを有する。
【0148】
排熱回収ボイラ33は、ボイラ内に低圧節炭器50、低圧蒸発器51、高圧節炭器52、高圧蒸発器53,54、過熱器55が排気ガスの上流側に向って順次配設される。また、並設配置の高圧蒸発器53と54の間に硫黄分を除去する脱硝装置56が設けられる。この脱硝装置56の設置位置は高圧蒸発器53と54の間に限定されず、より上流側であっても、あるいは下流側であってもよい。
【0149】
蒸気タービンプラント32の復水給水系44から排熱回収ボイラ33に案内された給水は、低圧節炭器50で加熱されて低圧ドラム46に送られる。低圧ドラム46では低圧節炭器50から送られる流体と低圧蒸発器51から送られる流体が合流して気液分離させる一方、気液分離させられた液分は低圧蒸発器51および高圧節炭器52に各ポンプ57,58のポンプ作用を受けて送られ、加熱作用を受ける。
【0150】
低圧蒸発器51に送られた液分は加熱作用を受けて蒸気となり、再び低圧ドラム46に送られる。低圧ドラム46の蒸気分は、蒸気配管60を通って直接あるいは図示しない低圧過熱器を経て蒸気タービン40の途中段落に供給される。
【0151】
一方、高圧節炭器52にて加熱された流体は高圧ドラム47に送られて高圧蒸発器53,54から送られる蒸気と合流し、気液分離せしめられる。気液分離された液分は、高圧蒸発器53,54にポンプ59の作動により送られて加熱作用を受け、蒸気となって再び高圧ドラム47に還流される。
【0152】
高圧ドラム47内の蒸気分は、過熱器55でスーパーヒートされて過熱蒸気となった後、主蒸気配管61を経て蒸気タービン40に送られ、この蒸気タービン40を回転駆動させている。蒸気タービン40の回転駆動により発電機38を駆動させる一方、蒸気タービン40で仕事をした蒸気は膨張して復水器43に導かれて冷却水(海水)と熱交換され、復水となる。
【0153】
図12に示されたコンバインドサイクル発電プラント30は、ガスタービン37と発電機38と蒸気タービン40とが一軸上に整列配置された一軸型コンバインドサイクルを構成している。コンバインドサイクル発電プラント30は、1つのユニット中にガスタービン37と蒸気タービン40とが存在し、1つの発電機38に接続される構成となっており、1つの発電プラント30は複数のユニット、例えば3ユニットから7ユニットを備えている。
【0154】
コンバインドサイクル発電プラント30は、高効率、高運用性を特徴とするが、運転開始後長期間経過すると、経年劣化により各ユニット効率が設計時の効率より相当程度低下しているものがある。
【0155】
コンバインドサイクル発電プラント30は、1ユニット当り15万kW、改良型コンバインドサイクル発電プラントでは55万kW程度の出力を有するが、ユニットによっては新設時のプラント効率より1%程度低下しているものがある。このプラント効率低下の原因を診断して原因機器を特定し、補修することができれば、エネルギ効率が向上し、燃料の節約を図ることができる。診断特定箇所の補修により、プラント効率が1%程度向上させることができれば、1ユニット当り、15万kWの出力で利用率が70%で場合には、年間約1億円の燃料経費を軽減させることができる。このため、コンバインドサイクル発電プラント30の熱効率管理は、燃料節約、発電コストの低減の双方から重要である。
【0156】
しかし、一軸型コンバインドサイクル発電プラント30では、熱効率が低下した場合、主要プラント構成機器の熱効率検出精度が低く、数%以下の熱効率検出が不可能なために、熱効率低下原因がガスタービン37側に起因するのか、あるいは蒸気タービン40側に起因するのか、あるいは他の主要構成機器に起因するのかを特定することが困難となっている。
【0157】
そこで、このコンバインドサイクル発電プラント30においては、発電機38を回転駆動させる動力伝達軸である回転軸41の発電機38と蒸気タービン40との間に光学的なトルク計測装置1がトルクセンサとして非接触にて計測可能に設けられる。
【0158】
図13は、コンバインドサイクル発電プラント30の回転軸41にトルク計測装置1を設置する位置を示す図である。
【0159】
トルク計測装置1は、発電機38と蒸気タービン40間の回転軸41上にトルクセンサとして設置される。発電機38は5番軸受70を具備し、蒸気タービン40は6番軸受71を具備する。これら5番軸受70と6番軸受71を介して、発電機38と蒸気タービン40は回転軸41で相互に連結される。
【0160】
そこで、5番軸受70と6番軸受71の回転軸41上で、発電機38側と蒸気タービン40側に軸方向が異なる2位置に、トルク計測装置1の第1の反射体23および第2の反射体24が周方向に少しずらして貼着されるとともに、光学センサとしての機能を有する第1の照射光学系4および第2の照射光学系5が、第1の反射体23および第2の反射体24の位置に合わせて設けられる。
【0161】
そして、トルク計測装置1にて、1つの発電機38に連結されるガスタービン37と蒸気タービン40との出力を切り分けて個別に、発電機38の回転軸41の回転速度および軸トルクを、光学的に非接触にて計測精度よく測定できる構成とされる。
【0162】
また、トルク計測装置1は改良型コンバインドサイクル発電プラントに適用することも可能である。
【0163】
図14は、改良型コンバインドサイクル発電プラントに適用する場合のトルク計測装置1を設置する位置を示す正面図であり、図15は、図14の側面図である。
【0164】
図12のコンバインドサイクル発電プラント30は、ガスタービン37と蒸気タービン40との間に発電機38が回転軸41上に整列配置された構成であるが、改良型コンバインドサイクル発電プラントは、発電機38、蒸気タービン40、ガスタービン37の順に回転軸41上に整列配置された構成である。
【0165】
改良型コンバインドサイクル発電プラントにおいては、トルク計測装置1は、ガスタービン37と蒸気タービン40との間の動力伝達軸としての回転軸41であるロードカップリング80上に周方向が異なる位置に所要個数設けられる。
【0166】
図14および図15の例では、上下の2箇所に2個のトルク計測装置1を設置したものであるが、トルク計測装置1の設置個数および設置位置は、必要に応じ自由に変更できるものとされる。
【0167】
また、ガスタービン37は、ガスタービンエンクロージャ81で、蒸気タービン40は蒸気タービンエンクロージャ82でそれぞれ、消音あるいは保護のために囲われており、このガスタービンエンクロージャ81と蒸気タービンエンクロージャ82の間に、3番軸受まわり点検通路83が設けられる。このため、作業者によるトルク計測装置1の設置等の作業が容易な構造である。
【0168】
図16は、図14のトルク計測装置1の設置位置を拡大した正面図であり図17は、図16の側面図である。
【0169】
ガスタービン37と蒸気タービン40とがロードカップリング80で連結されおり、ガスタービン37と蒸気タービン40との間は、吸気のためのスペースである吸気プレナム84とされる。
【0170】
トルク計測装置1の、光学センサとしての機能を有する第1の照射光学系4および第2の照射光学系5は、ロードカップリング80のガスタービン37側と蒸気タービン40側に、第1の反射体23および第2の反射体24とともに軸方向が異なる位置に設けられる。
【0171】
図16および図17の例では、2組の第1の照射光学系4および第2の照射光学系5がそれぞれロードカップリング80上に設けられ、一方の第1の照射光学系4および第2の照射光学系5と、他方の第1の照射光学系4および第2の照射光学系5とは、ロードカップリング80の周方向が異なる位置とされる。すなわち、一方の第1の照射光学系4および第2の照射光学系5は垂直方向上面側に設けられ、他方の第1の照射光学系4および第2の照射光学系5は垂直方向下面側に設けられる。
【0172】
また、これら2組の第1の照射光学系4および第2の照射光学系5の設置位置に対応して、2組の第1および第2の反射体23、24がそれぞれ、ロードカップリング80の周方向および軸方向が異なる位置に貼着される。これら第1および第2の反射体23、24の組数は2組に限らず、任意の組数としてもよい。
【0173】
2組の第1の照射光学系4および第2の照射光学系5が、ロードカップリング80の直径方向に対向配置されるため、回転軸41であるロードカップリング80の軸移動、すなわち水平方向の軸振れによる検出精度誤差を吸収できる。
【0174】
さらに、第1の反射体23および第2の反射体24もロードカップリング80の直径方向に対向配置あるいは周方向が異なる複数位置への配置として、ロードカップリング80の軸偏心による検出精度誤差を吸収することも可能である。
【0175】
また、これら各第1の照射光学系4および各第2の照射光学系5が適切な位置に支持するために、ロードカップリング80の近傍にセンサブラケット85が設けられる。
【0176】
そして、コンバインドサイクル発電プラント30にトルク計測装置1を適用した場合と同様に、改良型コンバインドサイクル発電プラントにおいてトルク計測装置1にて、1つの発電機38に連結されるガスタービン37と蒸気タービン40との出力を切り分けて個別に、発電機38の回転軸41の回転速度および軸トルクを、光学的に非接触にて計測精度よく測定できる構成とされる。
【0177】
次に、コンバインドサイクル発電プラント30の熱効率計算について説明する。
【0178】
図12に示すコンバインドサイクル発電プラント30においては、従来、プラント熱効率管理のために、ガスタービン(GT)設備全体、排熱回収ボイラ設備全体、蒸気タービン(ST)設備全体に関し、個別にヒートバランス解析法を用いた性能計算を行なっている。
【0179】
コンバインドサイクル発電プラント30で計測された管理用データを基に直接、ガスタービン31、排熱回収ボイラ33および蒸気タービン32の各主要設備の性能計算をした場合、現状の性能計算方法では、ガスタービンの効率ηGT、排熱回収ボイラの効率ηHRSG、および蒸気タービンの効率ηSTに、それぞれ7.8%、3.2%、15.6%程度と数%以上のバラツキがある。
【0180】
現状の各主要設備の性能計算の精度では、通常起こり得る2%程度のコンバインドサイクル発電プラント30のプラント熱効率変化に対してその性能劣化原因を診断するには不充分であった。
【0181】
まず、従来の性能計算方法について説明する。
【0182】
コンバインドサイクル発電プラント30のGT効率ηGTは、算出式
【数5】
Figure 2004061352
で表わされ、この式(5)の算出式から両辺を微分して整理すると、GT効率の精度は、
【数6】
Figure 2004061352
で表わされる。
【0183】
同様に、排熱回収ボイラの効率ηHRSGの算出式は、
【数7】
Figure 2004061352
で表わされ、この算出式(7)から両辺を微分して整理すると、排熱回収ボイラ効率の精度は、
【数8】
Figure 2004061352
となる。
【0184】
さらに、蒸気タービン(ST)の効率の算出式は、
【数9】
Figure 2004061352
で表わされ、この算出式(9)の両辺を微分して整理すると、
【数10】
Figure 2004061352
で表わされる。
【0185】
すなわち従来の性能計算方法は、ガスタービン31および蒸気タービン32の出力を直接測定することができなかったため、まず、ガスタービン31の出力を燃料の発生熱量と排ガス流量とから間接的に求め、さらに、蒸気タービン32の出力を発電機出力からガスタービン31の出力を差し引いて計算するものであった。このため計算精度も不十分であった。
【0186】
しかしながら、図1に示されるトルク計測装置1を用いて回転軸41の軸トルクを算出し、計測された軸トルクからガスタービン31および蒸気タービン32の出力切分けを行ない、ヒートバランス解析法により熱効率診断を行なうと、各主要機器の性能誤差評価は、表2に示すように、桁違いに算出精度が向上し、1%以下の精度で熱効率診断を行なうことができる。
【0187】
すなわち、ガスタービン31あるいは蒸気タービン32の一方の出力を直接測定して、発電機出力との差をとり、ガスタービン31および蒸気タービン32の出力を求めることで、計算精度の向上が可能となった。
【0188】
【表2】
Figure 2004061352
【0189】
次に、トルク計測装置1を用いたコンバインドサイクル発電プラント30の熱効率の算出の根拠について説明する。
【0190】
トルク計測装置1により得た回転軸41の軸トルクおよび回転周期から、蒸気タービンの出力WSTを計算する。
【0191】
蒸気タービンの出力は、式(11)で計算できる。
【0192】
【数11】
Figure 2004061352
ここで、ねじれ時間とは、回転軸41の軸方向が異なる位置に貼られた第1および第2の反射体23、24が、それぞれ第1および第2の照射光学系4、5から光線が照射される位置を横切るときの時間差である。また、回転数は3000rpmである。
【0193】
式(11)で蒸気タービンの出力を求め、さらに、発電機出力と蒸気タービンの出力との差から、ガスタービン31の出力を求めることができる。
【0194】
一方、蒸気タービン効率ηSTの算出式は式(12)で表わされる。
【0195】
【数12】
Figure 2004061352
【0196】
この算出式の両辺を微分して整理して、式(11)で求めた蒸気タービンの出力を用いると、蒸気タービン効率の精度は、
【数13】
Figure 2004061352
となる。
【0197】
ガスタービン効率ηGTの算出式は式(14)で
【数14】
Figure 2004061352
表わされる。
【0198】
この式(14)の算出式の両辺を微分して整理すると、ガスタービン効率の精度は、
【数15】
Figure 2004061352
となる。
【0199】
排熱回収ボイラの効率ηHRSGの算出式は式(16)で表わされる。
【0200】
【数16】
Figure 2004061352
【0201】
このHRSG効率の算出式から両辺を微分して整理すると、
【数17】
Figure 2004061352
となる。
【0202】
コンバインドサイクル発電プラント30の熱効率管理を、トルク計測装置1を用いてヒートバランス解析法による熱効率診断を行なうと、各熱効率性能計算の算出精度が、現状の熱効率管理方法に較べ、桁違いに向上するので、ガスタービン、蒸気タービン、排熱回収ボイラの各主要機器の性能変化診断、特に性能劣化診断を1%以下の熱効率精度で正確に精度よく評価することができ、性能劣化が生じた主要機器の特定が容易となる。
【0203】
次にトルク計測装置1の原子力発電プラントへの適用例について説明する。
【0204】
図18は、トルク計測装置1の適用位置を示す原子力発電プラントの回転軸の断面図であり、図19はトルク計測装置1を原子力発電プラントの回転軸に設置した状態を示す図である。
【0205】
原子力発電プラントは、高圧蒸気タービン90、複数の例えば3台の低圧蒸気タービン91および図示しない発電機が直列に単一の動力伝達軸であるロータ92上に設けられた構成である。
【0206】
原子力発電プラントにおいても、コンバインドサイクル発電プラント30と同様に、従来、主要プラント構成機器の効率検出精度が低いために、プラント効率低下の原因が高圧蒸気タービン90側に起因するのか、あるいは低圧蒸気タービン91側に起因するのか、あるいは他の主要構成機器に起因するのかを特定することが困難であった。
【0207】
そこで、トルク計測装置1を原子力発電プラントに適用し、プラント効率低下の原因を診断して原因機器が、高圧蒸気タービン90であるか、または低圧蒸気タービン91であるかを特定して、補修することができればエネルギ効率を向上させることができる。
【0208】
従って、高圧蒸気タービン90と低圧蒸気タービン91のそれぞれの出力を求めることが求められるが、そのためには、高圧蒸気タービン90と低圧蒸気タービン91の間のロータ92上にトルク計測装置1を設置して、軸トルクおよび回転周期を計測する必要がある。
【0209】
高圧蒸気タービン90と低圧蒸気タービン91の間のロータ92は、第2軸受93と第3軸受94で支えられ、直径は80cm程度である。トルク計測装置1の設置可能なスペースとしては、第3軸受94近傍である。
【0210】
この第3軸受94近傍のロータ92上の軸方向が異なる位置、すなわち高圧蒸気タービン90側と低圧蒸気タービン91および発電機側に、第1および第2の照射光学系4,5が設けられる一方、第1および第2の反射体23、24がロータ92上に貼着される。
【0211】
第3軸受94は第3軸受台95上に設けられており、この第3軸受台95の両側面近傍に、トルク計測装置1が具備する光学センサとしての、第1および第2の照射光学系4,5が設けられるとともに、第1および第2の反射体23、24がロータ92上に貼着される。
【0212】
第1および第2の照射光学系4,5を設置可能でかつ光線を照射可能なロータ92の範囲は狭いため、小型化された第1および第2の照射光学系4,5が効果的である。第1および第2の照射光学系4,5は、それぞれ第3軸受台95上に設けられたブラケット96で支持される。
【0213】
次にトルク計測装置1を原子力発電プラントの蒸気タービンに適用したときの診断精度について説明する。
【0214】
原子力発電プラントにおいてトルク計測装置1は、高圧蒸気タービン90と低圧蒸気タービン91の間に設けられるため、高圧蒸気タービン90の出力を計測することができる。
【0215】
高圧蒸気タービン90の出力をWHP、低圧蒸気タービン91の出力をWLP、原子力発電プラントの総出力をとすると式(18)が成立する。
【0216】
【数18】
Figure 2004061352
【0217】
従って、高圧蒸気タービン90の出力WHPを計測すれば、低圧蒸気タービン91の出力WLPを求めることができる。
【0218】
一方、高圧蒸気タービン90の出力WHPは式(19)で表される。
【0219】
【数19】
Figure 2004061352
【0220】
式(19)を変形すると式(20)が得られる。
【0221】
【数20】
Figure 2004061352
【0222】
ここで従来は、高圧蒸気タービン90の出力WHPを計測することができなかったため、高圧蒸気タービンの性能診断に必要な高圧蒸気タービン内部効率ηHPの計算が不可能であったが、トルク計測装置1を用いることで高圧蒸気タービン90の出力WHPが得られ高圧蒸気タービン内部効率ηHPの計算が可能となった。
【0223】
式(20)から、誤差伝搬式により高圧蒸気タービン内部効率ηHPの精度を表すと式(21)が得られる。
【0224】
【数21】
Figure 2004061352
【0225】
ここで、式(21)に条件を代入して、高圧蒸気タービン内部効率ηHPの精度を計算した結果を式(22)に示す。
【0226】
【数22】
Figure 2004061352
【0227】
一方、高圧蒸気タービン内部効率ηHPの場合と同様に、低圧蒸気タービン91の性能診断に必要な低圧蒸気タービン内部効率ηLPについても、従来は、低圧蒸気タービン91の出力WLPが計測されず、計算は不可能であった。しかし、トルク計測装置1を用いることで高圧蒸気タービン90の出力WHPが得られるため式(18)から低圧蒸気タービン内部効率ηLPについても計算可能となった。
【0228】
低圧蒸気タービン91の出力WLPは、ドレンや蒸気が、給水加熱のために抽気される点が高圧蒸気タービン90の出力WHPと異なり、式(23)で表される。ただし、式(23)は、抽気ポイントが2カ所の場合の計算式である。
【0229】
【数23】
Figure 2004061352
【0230】
式(23)から低圧蒸気タービン内部効率ηLPは式(24)で表される。
【0231】
【数24】
Figure 2004061352
【0232】
式(24)から、誤差伝搬式で低圧蒸気タービン内部効率ηLPの精度を表すと式(25)が得られる。
【0233】
【数25】
Figure 2004061352
【0234】
式(25)に条件を代入して低圧蒸気タービン内部効率ηLPを計算した結果を式(26)に示す。
【0235】
【数26】
Figure 2004061352
【0236】
すなわち、原子力発電プラントにトルク計測装置1を適用することで従来不可能であった、高圧蒸気タービン90と低圧蒸気タービン91の性能診断を可能とすることができる。したがって、プラント効率低下の際、原因機器が高圧蒸気タービン90であるか、または低圧蒸気タービン91であるかの判断を行うことを可能とし、原子力発電プラントのエネルギ効率を向上させることができる。
【0237】
尚、トルク計測装置1の適用については、一軸型コンバインドサイクル発電プラントの発電機とタービンを連結する回転軸41であるロードカップリング80および原子力発電プラントの蒸気タービンを接続するロータ92に適用した例を示したが、このトルク計測装置は、蒸気タービンプラントの高圧タービンと中・低圧タービンとを備えた回転軸41や、蒸気タービンプラントのボイラ給水ポンプとボイラ給水ポンプ駆動タービンを連結する動力伝達軸あるいはその他の回転軸41に適用することも可能である。
【0238】
【発明の効果】
本発明に係るトルク計測装置においては、入射光線と反射光線の光路を個別にセパレートすることで光損失を軽減し、計測に使用する照射光線の出力を低減させることを可能とし、より安価にトルクを計測することができる。
【0239】
また、従来使用していた分光器を不要とし、構成要素の数を減らすことが可能であるため、トルク計測装置を小型化させ、被計測系に容易に適用可能とするとともに、製造コストを低減させることができる。
【0240】
このトルク計測装置は、一軸型コンバインドサイクル発電プラントや蒸気タービンプラント、あるいは原子力発電プラントの動力伝達軸に適用すれば、各プラント主要構成機器の効率管理を高精度にかつ容易に行なうことができ、各構成機器の効率変化の高精度診断が可能となる。各構成機器の効率劣化機器の特定が可能となるので、劣化機器の補修を行なうことが容易となり、プラントの燃料を節約して効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るトルク計測装置の実施形態を示す構成図。
【図2】図1に示す第1のビーム調整装置および第2のビーム調整装置の構造図。
【図3】入射角0度と7.5度で光線が反射した場合における各焦点距離からの誤差と光損失量の関係を示す図。
【図4】受光ファイバのコア直径を変化させたときの照射用集光レンズの焦点距離からの誤差と光損失量の関係を示す図。
【図5】図4の計測条件を示す説明図。
【図6】受光ファイバ側の集光レンズの焦点距離を変化させたときのレンズ1の焦点距離からの誤差と光損失量の関係を示す図。
【図7】図6の計測条件を示す説明図。
【図8】図1に示すトルク計測装置で得られる第1および第2の検出信号を簡略化したタイミングチャート。
【図9】トルク計測装置における回転周期の計算方法を示す説明図。
【図10】トルク計測装置におけるトルクの計算方法を示す説明図。
【図11】図1に示すトルク計測装置および従来のトルク計測装置で得られた検出信号の波形を示す図。
【図12】トルク計測装置を適用するコンバインドサイクル発電プラントの設備概要を示す図。
【図13】コンバインドサイクル発電プラントの回転軸にトルク計測装置を設置する位置を示す図。
【図14】改良型コンバインドサイクル発電プラントに適用する場合のトルク計測装置を設置する位置を示す正面図。
【図15】図14の側面図。
【図16】図14のトルク計測装置の設置位置を拡大した正面図。
【図17】図16の側面図。
【図18】トルク計測装置の適用位置を示す原子力発電プラントの回転軸の断面図。
【図19】トルク計測装置を原子力発電プラントの回転軸に設置した状態を示す図。
【図20】従来のトルク計測装置を示す構成図。
【符号の説明】
1 トルク計測装置
2 出力装置
3 信号処理装置
4 第1の照射光学系
5 第2の照射光学系
6 光ファイバ
6A 入射光ファイバ
6B 受光ファイバ
7 信号伝送手段
8 回転軸
9 レンズ
10 プリズム
11 照射用集光レンズ
12 受光側レンズ
13 光コネクタ
14 レンズ
15 第1の光検知装置
16 入射側レンズ
17 プリズム
18 照射用集光レンズ
19 受光側レンズ
20 光コネクタ
21 レンズ
22 第2の光検知装置
23 第1の反射体
24 第2の反射体
25 レンズ
26 分岐コネクタ
27 改良型波形
28 従来型波形
30 コンバインドサイクル発電プラント
31 ガスタービンプラント
32 蒸気タービンプラント
33 排熱回収ボイラ(HRSG)
35 空気圧縮機
36 燃焼器
37 ガスタービン(GT)
38 発電機
39 煙突
40 蒸気タービン
41 動力伝達軸(回転体)
43 復水器
44 復水給水系
45 給水ポンプ
46 低圧ドラム
47 高圧ドラム
50 低圧節炭器
51 低圧蒸発器
52 高圧節炭器
53,54 高圧蒸発器
55 過熱器
56 脱硝装置
57,58,59 ポンプ
60 蒸気配管
61 主蒸気管

Claims (11)

  1. レーザ光等の光線を出力する出力装置と、光センサを兼ねて回転軸に離接する方向に微調節自在に設けられた複数の照射光学系と、軸方向に異なる位置で前記回転軸の表面に取り付けられ、回転軸に照射された光線の反射状態をそれぞれ変化させる複数の反射体と、前記反射体から反射される各反射光線の光強度変化をそれぞれ検出する光検知装置と、この光検知装置からの出力信号に基づいて回転軸のトルクを求める信号処理装置とで構成され、前記照射光学系は、照射用集光レンズをそれぞれ備え、この照射用集光レンズで各光線のビーム径、焦点距離および焦点位置を調節して回転軸に一定の入射角で入射光線を照射し、この入射光線と回転軸で反射した反射光線とが個別の光路を経由するようにしたことを特徴とするトルク計測装置。
  2. 前記照射用集光レンズを単一のレンズで構成し、このレンズの中心軸を含む面で分割した対称領域の一方を入射光線の入射光路とし、前記対称領域の他方を反射光線の反射光路としたことを特徴とする請求項1記載のトルク計測装置。
  3. 前記照射用集光レンズを芯取りしたレンズとしたことを特徴とする請求項1記載のトルク計測装置。
  4. 前記照射光学系の光路にプリズムを設けたことを特徴とする請求項1記載のトルク計測装置。
  5. 前記プリズムが柱形状で両端面の法線が軸方向に対し一定の角度を有するようにしたことを特徴とする請求項4記載のトルク計測装置。
  6. 前記プリズムを入射光線側の入射光路に設けたことを特徴とする請求項4記載のトルク計測装置。
  7. 前記照射光学系は、受光ファイバを具備し、受光ファイバのコア直径を50μmよりも大きな径としたことを特徴とする請求項1記載のトルク計測装置。
  8. 前記照射光学系は、受光ファイバを具備し、受光ファイバのコア直径を分散値の影響が無視可能な径としたことを特徴とする請求項1記載のトルク計測装置。
  9. 前記照射光学系は、受光ファイバを具備する一方、前記光検知装置が光電変換素子を具備し、前記受光ファイバのコア直径を、光電変換素子の受光面よりも小さい径としたことを特徴とする請求項1記載のトルク計測装置。
  10. 前記照射光学系の反射光線の反射光路上に、受光側レンズおよび受光ファイバを備え、受光側レンズの焦点距離を12.5mmよりも小さくしたことを特徴とする請求項1記載のトルク計測装置。
  11. 前記回転軸は一軸型コンバインドサイクル発電プラントのタービンと発電機あるいはガスタービンと蒸気タービンとを連結する動力伝達軸、蒸気タービンプラントの高圧タービンと中圧タービンと低圧タービンを連結する動力伝達軸、または原子力発電プラントの高圧タービンと低圧タービンと発電機あるいは低圧タービン同士を連結する動力伝達軸あるいは蒸気タービンプラントのボイラ給水ポンプとボイラ給水ポンプ駆動タービンを連結する動力伝達軸であることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載のトルク計測装置。
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