JP2004041103A - Aids治療薬のスクリーニング方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】宿主因子とウイルス因子の相互作用を阻害する薬物をスクリーニングし、長期加療における、レトロウイルスの中和抵抗性変異株(エスケープミュータント)の出現に対して有効な抗ウイルス剤の開発すること。
【解決手段】レトロウイルス粒子内のゲノムRNAのヘアピンループの切断の再結合に及ぼす被試験化合物の阻害効果、特に、宿主細胞由来のトポイソメラーゼIによるレトロウイルス複製過程における再接合に対する被試験化合物の阻害効果を測定することを特徴とする、該レトロウイルスに対する治療薬のスクリーニング方法、RNAウイルス粒子内のヘアピンループゲノムRNAに見られる切断のトポイソメラーゼIによる再接合に対して有意な阻害効果を有する化合物、及び、該化合物を活性成分として含有する医薬組成物。
【選択図】 図1
【解決手段】レトロウイルス粒子内のゲノムRNAのヘアピンループの切断の再結合に及ぼす被試験化合物の阻害効果、特に、宿主細胞由来のトポイソメラーゼIによるレトロウイルス複製過程における再接合に対する被試験化合物の阻害効果を測定することを特徴とする、該レトロウイルスに対する治療薬のスクリーニング方法、RNAウイルス粒子内のヘアピンループゲノムRNAに見られる切断のトポイソメラーゼIによる再接合に対して有意な阻害効果を有する化合物、及び、該化合物を活性成分として含有する医薬組成物。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、レトロウイルス粒子内のゲノムRNAのヘアピンループの切断の再結合に及ぼす被試験化合物の阻害効果を測定することを特徴とする、該レトロウイルスに対する治療薬のスクリーニング方法、該スクリーニング方法によって確認された化合物、該化合物を活性成分として含有する医薬組成物、及び、該医薬組成物を投与することからなる後天性免疫不全症の治療方法等に関する。
【0002】
【従来の技術】
AIDS(Acquired immunodeficiency syndrome)はレトロウイルス属に属する1本領RNAウイルスであるHIV−1(Human immunodeficiency virus type 1)の感染によって惹起される致死的疾患である。HIV‐1は主に、宿主CD4陽性細胞に感染し宿主免疫不全状態を招く。
【0003】
HIV−1感染者は世界で3千万人を教え、アフリカ、南アジア、中国において爆発的な感染者増加を認める。HIV−1感染後、治療を行わなければAIDSの発症が必発である。感染者が増加している環境においては感染予防に対するワクチンが必要であるが、HIV−1のゲノムはウイルス遺伝子の粗替えや突然変異(ミューテーション)が容易に生じてしまうことから、現在有効なワクチンは開発されていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
HIV‐1感染者に対して逆転写酵素阻害剤とプロテアーゼ阻害剤治療が行われているが、長期加療におけるHIV−1の中和抵抗性変異株(エスケープミュータント)の出現が問題となっており、新たな抗ウイルス剤の開発が切に望まれている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
発明者らの研究室では1990年初頭より一貫してHIV−1の研究を継続しており、平成10年からは科学技術振興事業団のCREST「脳を守る」プロジェクトの一員として、ウイルス脳症の治療法の確立を目指して研究を遂行している。その結果、発明者らは無細胞系を用いてHIV‐1ゲノムRNAの安定性が宿主トポイソメラーゼIによって調節されていること、ウイルス発芽によって安定制御機構が解除され、急速にRNAにニック(切れ目)が入ること、ニックが入ったゲノムRNAはトポイソメラーゼIによって再結合されうることを見出し、本発明を完成した。無細胞系で再現されるHIV−1ゲノムRNAの切断と再結合のアッセイは薬剤スクリーニングに応用可能であり。抗HIV−1ウイルス剤の発に重要な役割を果たすと予想される。
【0006】
即ち、本発明は、第一の態様として、レトロウイルス粒子内のゲノムRNAのヘアピンループの切断の再結合に及ぼす被試験化合物の阻害効果、特に、宿主細胞由来のトポイソメラーゼIによるレトロウイルス複製過程における再接合に対する被試験化合物の阻害効果を測定することを特徴とする、該レトロウイルスに対する治療薬のスクリーニング方法に係る。
レトロウイルスには、RNA腫瘍ウイルス、レンチウイルス、スプマウイルスの3つの亜科がある。レンチウイルスの代表的な例としては、ヒト免疫不全ウイルス(HIV−1又はHIV−2)等の免疫不全ウイルスを挙げることができる。
本発明のスクリーニング方法において、RNAウイルス粒子は当業者に公知の適当な培養細胞にDNAトランスフェクションさせることによって調製することができる。かかる培養細胞の例として、ヒト腎臓細胞株293T等のヒト由来細胞株、及びその他の哺乳動物細胞由来の細胞株を挙げることが出来る。
【0007】
本発明のスクリーニング方法の特徴の一つは、被試験化合物の阻害効果を測定する工程をインビトロの無細胞系で行なうことができることである。特に、ゲノムRNAを経時的に定量することが好ましい。阻害効果を測定する方法自体は当業者に公知の任意の手段で行うことが出来る。このような手段の例として、例えば、RT−PCR法を挙げることが出来る。
尚、本発明のスクリーニング方法において使用する試薬類の種類、反応温度及び時間などの各種測定条件は当業者が適宜選択することが出来る。
【0008】
本発明は第二の態様として、RNAウイルス粒子内のヘアピンループゲノムRNAに見られる切断のトポイソメラーゼIによる再接合に対して有意な阻害効果を有する化合物に係る。このような効果を有する化合物は本発明のスクリーニング方法によって確認し、同定することが可能である。
【0009】
本発明は更に、第三の態様として、上記化合物を活性成分として含有する医薬組成物に係る。この医薬組成物はレトロウイルスが病因となる様々な疾患の予防及び治療に使用することが出来る。このような疾患の代表的な例として、後天性免疫不全症候群(AIDS)を挙げることが出来る。本発明の医薬組成物には、上記活性成分の他に、当業者に公知の任意の様々な補助剤等を、適宜含有させることが出来る。活性成分である本発明化合物及びこのような各種補助剤の種類及び含有量、並びに該医薬組成物の形態は、当該組成物の使用目的、患者の病状・性別・年齢・体重等に応じて、当業者が適宜選択することが出来る。医薬組成物の形態としては、例えば、錠剤、粉末剤等の各種固形剤、水溶液、懸濁液及び乳濁液等の液剤、更には、エアゾール等を挙げることが出来る。
本発明は更に、第四の態様として、上記医薬組成物をヒト及び哺乳動物などの患者に投与することからなる、上記各種疾患の予防及び治療等の各種処置方法に係る。投与方法は医薬組成物の種類、並びに患者の病状・性別・年齢・体重等に応じて、当業者に公知の任意の手段で行うことが出来る。例えば、経口投与、静注及びインハレーション等を挙げることが出来る。本発明医薬組成物の一回の投与量及び投与間隔等は、患者の病状・性別・年齢・体重等に応じて、当業者が適宜選択することが出来る。
【0010】
以下、実施例に沿って本発明を説明するが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に何等拘束されるものではない。
【0011】
【実施例】
HIV−1 ゲノム RNA の切断と再結合のモニター方法
(1)非感染性ウイルス発現べクタークローニング
HIV−1は1本鎖直鎖上RNAウイルスで染色体上のプロウイルスとしては9,709 bpである。HIV‐1のプロウイルスDNAを含むプラスミドpNL43(1986年にAdachi等が発表)を哺乳類細胞へ導入するとHIV−1蛋白群が転写、翻訳され、ゲノムRNAが転写の後、感染性を有する粒子を培養細胞上精に得ることが出来る。発明者らはpNL43のNdeIサイト(6398)をT4 DNA ポリメレースによって埋め、env遺伝子が発現されない非感染性ウイルス発現べクター、pNLE(−)を作成した。
(2)ウイルス粒子発現べクターの細胞内導入
HIV‐1粒子は、ウイルスゲノム全長をヒト腎臓細胞株293Tに導入することで人為的に作成可能である。発明者らは上述のpNLE(−)を1マイクログラム、哺乳類細胞遺伝子導入試薬Fugene 6(Rosche)を用いて約10万個の293T細胞に導入し、2mlの培養液で培養した。
(3)ウイルス粒子の回収
遺伝子導入48時間後、上精を捨て、PBSにて3度細胞を洗浄した。2mlの培養液を加え5分放置した。2mlの上精をチューブに回収し室温に放置した。0秒、5分、30分、60分、2時間、3時間、8時間後に200μlの上精を回収しRNA 抽出試薬 TRIZOL (Invitrogen)を600μl加え、浸透した後‐80度に保存した。
(4)ウイルスRNAの回収とreverse transcription−polymerase chain reaction(RT−PCR)法によるRNA安定性の検討
RNA抽出試薬TRIZOLを用いてそれぞれ、RNAを回収し、ペレットをドライアップした。Sensiscript Reverse Transcriptase Kit(QIAGEN)の試薬とプライマーを含む全量20μlの溶液にて溶解し、37℃60分インキュベートし、cDNAを合成した。その後、93℃5分間インキュベートし氷上に放置した。このうち2μlを定量PCRに使用した。プローブとQuantiTect Probe PCR KIT(QIAGEN)の試薬を合わせ全量を25μlにし、定量PCRを以下の条件でABI PRISM 7900HTを使用して行った。
プライマー( 15 領域増幅用)
P15−F:5’−GCAATTTTAGGAACCAAAGAAAGACT−3’(nt.1931−1956, 26mer)
P15−R:5’−CTTCCTTTCCACATTTCCAACAG−3’(NT.2047−2025,23mer)
プローブ(増幅 P15 領域検出用)
FAM−TGGCTATGTGCCCTTCTTTGCCACAA−TAMRA(NT.1996−1971,26mer)
PCRの条件は以下の通りである。
95℃15分の後、95℃15秒→60℃60秒×45サイクル。
定量DNAとしてpNLE(−)を用いて定量直線を作成した。
【0012】
結果
定量PCRの結果を図1に示す。ウィルスの発芽後60分までは急速にコピー数の減少が認められる。一転して8時間まで徐々にコピー数の回復が認められる。この経過には再現性があり、急速に減少し、回復する傾向に変化がなかった。
【0013】
考察
5分間という短時間に発芽したウィルスだけをウィルスゲノムRNAの材料として用いることにより、高度にゲノムRNAの状態が同調したウィルスを採取することができた。さらに採取したウィルスのゲノムRNAを経時的に定量することにより、ゲノムRNAがウィルス発芽後、急速に崩壊し、一転して回復することが判明した。ウィルス発芽後、ゲノムRNAにはウィルスのヌクレオカプシド蛋白が結合していくことが知られている。ウィルスのヌクレオカプシド蛋白によってヘアピンループを形成したRNAの切断がエンハンスされると言う説明がよくあてはまる。またヘアピンループを認識して取り込まれると考えられる宿主トポイソメラーゼIはヘアピンループRNAの切断の再結合を試験管内で再現できていることからゆっくりしたゲノムRNAの回復はトポイソメラーゼIによって行われていると考えられる。
従って、以上の現象を利用して化合物のスクリーニングを行うことにより、ウイルス内部またはウイルスエントリー後のゲノムRNAの再結合を抑制する薬剤が見出されると考える。
【0014】
【発明の効果】
上記の研究結果に基づき、発明者らはHIV−1ゲノムRNAに対して切断後の再結合を阻害する薬剤スクリーニング方法が見出された。このスクリーニング方法によって確認又は同定された薬剤群は培養細胞のHIV−1複製系における作用と細胞毒性を調べ実用性が確認される。再結合を実際に行っているのはウイルスに取り込まれた宿主トポイソメラーゼIであると考えられるので、選択される薬剤はトポイソメラーゼI自体またはトポイソメラーゼIとウイルス因子の関係を阻害することが予測される。
宿主因子を標的としたAIDS治療の場合、ウイルス因子を対象とする場合に比べエスケープミュータントの出現効率が極めて低いと予測できる。宿主因子自体ではなく、宿主因子とウイルス因子の相互作用を阻害する薬物が選択出来れば、さらに細胞毒性の低い特異的抗ウイルス剤開発につながると考えられる。
ゲノムRNAの切断と再結合はHIV−1の高い変異効率の原因の一つでもあり、その原因を阻害する薬剤は宿主免疫によるウイルス排除機構を大幅に伸長させる効果も望まれる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のスクリーニング方法における定量PCRの結果を示す。
【発明の属する技術分野】
本発明は、レトロウイルス粒子内のゲノムRNAのヘアピンループの切断の再結合に及ぼす被試験化合物の阻害効果を測定することを特徴とする、該レトロウイルスに対する治療薬のスクリーニング方法、該スクリーニング方法によって確認された化合物、該化合物を活性成分として含有する医薬組成物、及び、該医薬組成物を投与することからなる後天性免疫不全症の治療方法等に関する。
【0002】
【従来の技術】
AIDS(Acquired immunodeficiency syndrome)はレトロウイルス属に属する1本領RNAウイルスであるHIV−1(Human immunodeficiency virus type 1)の感染によって惹起される致死的疾患である。HIV‐1は主に、宿主CD4陽性細胞に感染し宿主免疫不全状態を招く。
【0003】
HIV−1感染者は世界で3千万人を教え、アフリカ、南アジア、中国において爆発的な感染者増加を認める。HIV−1感染後、治療を行わなければAIDSの発症が必発である。感染者が増加している環境においては感染予防に対するワクチンが必要であるが、HIV−1のゲノムはウイルス遺伝子の粗替えや突然変異(ミューテーション)が容易に生じてしまうことから、現在有効なワクチンは開発されていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
HIV‐1感染者に対して逆転写酵素阻害剤とプロテアーゼ阻害剤治療が行われているが、長期加療におけるHIV−1の中和抵抗性変異株(エスケープミュータント)の出現が問題となっており、新たな抗ウイルス剤の開発が切に望まれている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
発明者らの研究室では1990年初頭より一貫してHIV−1の研究を継続しており、平成10年からは科学技術振興事業団のCREST「脳を守る」プロジェクトの一員として、ウイルス脳症の治療法の確立を目指して研究を遂行している。その結果、発明者らは無細胞系を用いてHIV‐1ゲノムRNAの安定性が宿主トポイソメラーゼIによって調節されていること、ウイルス発芽によって安定制御機構が解除され、急速にRNAにニック(切れ目)が入ること、ニックが入ったゲノムRNAはトポイソメラーゼIによって再結合されうることを見出し、本発明を完成した。無細胞系で再現されるHIV−1ゲノムRNAの切断と再結合のアッセイは薬剤スクリーニングに応用可能であり。抗HIV−1ウイルス剤の発に重要な役割を果たすと予想される。
【0006】
即ち、本発明は、第一の態様として、レトロウイルス粒子内のゲノムRNAのヘアピンループの切断の再結合に及ぼす被試験化合物の阻害効果、特に、宿主細胞由来のトポイソメラーゼIによるレトロウイルス複製過程における再接合に対する被試験化合物の阻害効果を測定することを特徴とする、該レトロウイルスに対する治療薬のスクリーニング方法に係る。
レトロウイルスには、RNA腫瘍ウイルス、レンチウイルス、スプマウイルスの3つの亜科がある。レンチウイルスの代表的な例としては、ヒト免疫不全ウイルス(HIV−1又はHIV−2)等の免疫不全ウイルスを挙げることができる。
本発明のスクリーニング方法において、RNAウイルス粒子は当業者に公知の適当な培養細胞にDNAトランスフェクションさせることによって調製することができる。かかる培養細胞の例として、ヒト腎臓細胞株293T等のヒト由来細胞株、及びその他の哺乳動物細胞由来の細胞株を挙げることが出来る。
【0007】
本発明のスクリーニング方法の特徴の一つは、被試験化合物の阻害効果を測定する工程をインビトロの無細胞系で行なうことができることである。特に、ゲノムRNAを経時的に定量することが好ましい。阻害効果を測定する方法自体は当業者に公知の任意の手段で行うことが出来る。このような手段の例として、例えば、RT−PCR法を挙げることが出来る。
尚、本発明のスクリーニング方法において使用する試薬類の種類、反応温度及び時間などの各種測定条件は当業者が適宜選択することが出来る。
【0008】
本発明は第二の態様として、RNAウイルス粒子内のヘアピンループゲノムRNAに見られる切断のトポイソメラーゼIによる再接合に対して有意な阻害効果を有する化合物に係る。このような効果を有する化合物は本発明のスクリーニング方法によって確認し、同定することが可能である。
【0009】
本発明は更に、第三の態様として、上記化合物を活性成分として含有する医薬組成物に係る。この医薬組成物はレトロウイルスが病因となる様々な疾患の予防及び治療に使用することが出来る。このような疾患の代表的な例として、後天性免疫不全症候群(AIDS)を挙げることが出来る。本発明の医薬組成物には、上記活性成分の他に、当業者に公知の任意の様々な補助剤等を、適宜含有させることが出来る。活性成分である本発明化合物及びこのような各種補助剤の種類及び含有量、並びに該医薬組成物の形態は、当該組成物の使用目的、患者の病状・性別・年齢・体重等に応じて、当業者が適宜選択することが出来る。医薬組成物の形態としては、例えば、錠剤、粉末剤等の各種固形剤、水溶液、懸濁液及び乳濁液等の液剤、更には、エアゾール等を挙げることが出来る。
本発明は更に、第四の態様として、上記医薬組成物をヒト及び哺乳動物などの患者に投与することからなる、上記各種疾患の予防及び治療等の各種処置方法に係る。投与方法は医薬組成物の種類、並びに患者の病状・性別・年齢・体重等に応じて、当業者に公知の任意の手段で行うことが出来る。例えば、経口投与、静注及びインハレーション等を挙げることが出来る。本発明医薬組成物の一回の投与量及び投与間隔等は、患者の病状・性別・年齢・体重等に応じて、当業者が適宜選択することが出来る。
【0010】
以下、実施例に沿って本発明を説明するが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に何等拘束されるものではない。
【0011】
【実施例】
HIV−1 ゲノム RNA の切断と再結合のモニター方法
(1)非感染性ウイルス発現べクタークローニング
HIV−1は1本鎖直鎖上RNAウイルスで染色体上のプロウイルスとしては9,709 bpである。HIV‐1のプロウイルスDNAを含むプラスミドpNL43(1986年にAdachi等が発表)を哺乳類細胞へ導入するとHIV−1蛋白群が転写、翻訳され、ゲノムRNAが転写の後、感染性を有する粒子を培養細胞上精に得ることが出来る。発明者らはpNL43のNdeIサイト(6398)をT4 DNA ポリメレースによって埋め、env遺伝子が発現されない非感染性ウイルス発現べクター、pNLE(−)を作成した。
(2)ウイルス粒子発現べクターの細胞内導入
HIV‐1粒子は、ウイルスゲノム全長をヒト腎臓細胞株293Tに導入することで人為的に作成可能である。発明者らは上述のpNLE(−)を1マイクログラム、哺乳類細胞遺伝子導入試薬Fugene 6(Rosche)を用いて約10万個の293T細胞に導入し、2mlの培養液で培養した。
(3)ウイルス粒子の回収
遺伝子導入48時間後、上精を捨て、PBSにて3度細胞を洗浄した。2mlの培養液を加え5分放置した。2mlの上精をチューブに回収し室温に放置した。0秒、5分、30分、60分、2時間、3時間、8時間後に200μlの上精を回収しRNA 抽出試薬 TRIZOL (Invitrogen)を600μl加え、浸透した後‐80度に保存した。
(4)ウイルスRNAの回収とreverse transcription−polymerase chain reaction(RT−PCR)法によるRNA安定性の検討
RNA抽出試薬TRIZOLを用いてそれぞれ、RNAを回収し、ペレットをドライアップした。Sensiscript Reverse Transcriptase Kit(QIAGEN)の試薬とプライマーを含む全量20μlの溶液にて溶解し、37℃60分インキュベートし、cDNAを合成した。その後、93℃5分間インキュベートし氷上に放置した。このうち2μlを定量PCRに使用した。プローブとQuantiTect Probe PCR KIT(QIAGEN)の試薬を合わせ全量を25μlにし、定量PCRを以下の条件でABI PRISM 7900HTを使用して行った。
プライマー( 15 領域増幅用)
P15−F:5’−GCAATTTTAGGAACCAAAGAAAGACT−3’(nt.1931−1956, 26mer)
P15−R:5’−CTTCCTTTCCACATTTCCAACAG−3’(NT.2047−2025,23mer)
プローブ(増幅 P15 領域検出用)
FAM−TGGCTATGTGCCCTTCTTTGCCACAA−TAMRA(NT.1996−1971,26mer)
PCRの条件は以下の通りである。
95℃15分の後、95℃15秒→60℃60秒×45サイクル。
定量DNAとしてpNLE(−)を用いて定量直線を作成した。
【0012】
結果
定量PCRの結果を図1に示す。ウィルスの発芽後60分までは急速にコピー数の減少が認められる。一転して8時間まで徐々にコピー数の回復が認められる。この経過には再現性があり、急速に減少し、回復する傾向に変化がなかった。
【0013】
考察
5分間という短時間に発芽したウィルスだけをウィルスゲノムRNAの材料として用いることにより、高度にゲノムRNAの状態が同調したウィルスを採取することができた。さらに採取したウィルスのゲノムRNAを経時的に定量することにより、ゲノムRNAがウィルス発芽後、急速に崩壊し、一転して回復することが判明した。ウィルス発芽後、ゲノムRNAにはウィルスのヌクレオカプシド蛋白が結合していくことが知られている。ウィルスのヌクレオカプシド蛋白によってヘアピンループを形成したRNAの切断がエンハンスされると言う説明がよくあてはまる。またヘアピンループを認識して取り込まれると考えられる宿主トポイソメラーゼIはヘアピンループRNAの切断の再結合を試験管内で再現できていることからゆっくりしたゲノムRNAの回復はトポイソメラーゼIによって行われていると考えられる。
従って、以上の現象を利用して化合物のスクリーニングを行うことにより、ウイルス内部またはウイルスエントリー後のゲノムRNAの再結合を抑制する薬剤が見出されると考える。
【0014】
【発明の効果】
上記の研究結果に基づき、発明者らはHIV−1ゲノムRNAに対して切断後の再結合を阻害する薬剤スクリーニング方法が見出された。このスクリーニング方法によって確認又は同定された薬剤群は培養細胞のHIV−1複製系における作用と細胞毒性を調べ実用性が確認される。再結合を実際に行っているのはウイルスに取り込まれた宿主トポイソメラーゼIであると考えられるので、選択される薬剤はトポイソメラーゼI自体またはトポイソメラーゼIとウイルス因子の関係を阻害することが予測される。
宿主因子を標的としたAIDS治療の場合、ウイルス因子を対象とする場合に比べエスケープミュータントの出現効率が極めて低いと予測できる。宿主因子自体ではなく、宿主因子とウイルス因子の相互作用を阻害する薬物が選択出来れば、さらに細胞毒性の低い特異的抗ウイルス剤開発につながると考えられる。
ゲノムRNAの切断と再結合はHIV−1の高い変異効率の原因の一つでもあり、その原因を阻害する薬剤は宿主免疫によるウイルス排除機構を大幅に伸長させる効果も望まれる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のスクリーニング方法における定量PCRの結果を示す。
Claims (21)
- レトロウイルス粒子内のゲノムRNAのヘアピンループの切断の再結合に及ぼす被試験化合物の阻害効果を測定することを特徴とする、該レトロウイルスに対する治療薬のスクリーニング方法。
- 宿主細胞由来のトポイソメラーゼIによるレトロウイルス複製過程における再接合に対する被試験化合物の阻害効果を測定することを特徴とする、請求項1記載のスクリーニング方法。
- レトロウイルスがレンチウイルスである、請求項1又は2記載のスクリーニング方法。
- レンチウイルスが免疫不全ウイルスである、請求項3記載のスクリーニング方法。
- 免疫不全ウイルスがヒト免疫不全ウイルス(HIV−1)である、請求項4記載のスクリーニング方法。
- レトロウイルス粒子を培養細胞にDNAトランスフェクションさせることによって調製することを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
- 培養細胞がヒト由来細胞株である、請求項項1ないし6のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
- ヒト由来細胞株がヒト腎臓細胞株293Tである、請求項7記載のスクリーニング方法。
- インビトロの無細胞系で行なうことを特徴とする、請求項1ないし8のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
- ゲノムRNAを経時的に定量することにより、被試験化合物の抑制効果を測定することを特徴とする、請求項1ないし9のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
- RT−PCRによりゲノムRNAを定量することを特徴とする、請求項10に記載のスクリーニング方法。
- レトロウイルス粒子内のヘアピンループゲノムRNAに見られる切断のトポイソメラーゼIによる再接合に対して有意な阻害効果を有する化合物。
- レトロウイルス粒子内のヘアピンループゲノムRNAに見られる切断のトポイソメラーゼIによる再接合に対して有意な阻害効果が、請求項1ないし11のいずれか一項に記載のスクリーニング方法によって確認された、請求項12記載の化合物。
- レトロウイルスがレンチウイルスである、請求項12又は13記載の化合物。
- レトロウイルスが免疫不全ウイルスである、請求項14記載の化合物。
- 免疫不全ウイルスがヒト免疫不全ウイルス(HIV−1)である、請求項15記載の化合物。
- 請求項12ないし16のいずれか一項に記載の化合物を活性成分として含有する医薬組成物。
- 後天性免疫不全症候群(AIDS)治療薬であることを特徴とする、請求項17記載の医薬組成物。
- 請求項17又は18記載の医薬組成物を患者に投与することからなる、レトロウイルスが病因となる疾患の処置方法。
- 請求項17又は18記載の医薬組成物を患者に投与することからなる、後天性免疫不全症の処置方法。
- 請求項17又は18記載の医薬組成物を患者に投与することからなる、ヒト後天性免疫不全症の処置方法。
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